JP2009006293A - 複層塗膜の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、光輝材凝集ブツを防止し得る複層塗膜の形成方法および当該方法に適用可能な水性メタリックベース塗料組成物の提供を目的とする。
【解決手段】被塗物に、中塗り塗膜、メタリックベース塗膜およびクリヤー塗膜を順次形成する複層塗膜の形成方法であって、
前記メタリックベース塗膜を形成する水性メタリックベース塗料組成物が、
アクリルエマルション樹脂、
平均粒径20〜300nmの疎水性メラミン樹脂水分散体、
光輝性顔料、および
水に対する溶解度が0.01〜5.0質量%であり、沸点が160〜200℃であるアルコール系有機溶剤を塗料内の樹脂固形分の質量に基づいて5〜45質量%含有し、
前記疎水性メラミン樹脂水分散体が、酸価105〜200mgKOH/g、水酸基価50〜200mgKOH/gおよび数平均分子量1000〜5000であるアクリル樹脂の存在下、前記アクリル樹脂/前記疎水性メラミン樹脂の質量比(固形分)が5/95〜25/75となるように混合し、70〜100℃の温度で1〜10時間反応して得られることを特徴とする、
複層塗膜の形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、光輝材凝集ブツを防止し得る複層塗膜の形成方法および当該方法に適用可能な水性メタリックベース塗料組成物に関する。
自動車などの外観は、鋼板などの被塗物に防錆性の高い電着塗装を施した後、中塗り塗料を塗装し、その後、優れた意匠および高外観を付与するために、着色ベース塗料およびクリヤー塗料を塗装して完成する。着色ベース塗料には、金属的なきらきら感を付与するために、メタリック顔料などの光輝材を含むメタリックベース塗料を用いることが多い。自動車への塗装は、環境への配慮から、溶剤系塗料から水性塗料への移行が進んでおり、近年では、メタリックベース塗料もまた水性メタリックベース塗料へと移行している。
より環境への負荷を少なくするために、水性メタリックベース塗料を塗布した後、加熱硬化せずにクリヤー塗料を塗布し、両方の塗料を一度に加熱硬化する方法(ツーコート・ワンベーク塗装法)が採用されている。そのようなツーコート・ワンベーク塗装法に用いられる水性メタリックベース塗料としては、アクリルエマルション樹脂、メラミン樹脂および光輝性顔料(すなわち、光輝材)を含有するものが一般的である(例えば、特開昭63−193968号公報(特許文献1)および特開2002―308993号公報(特許文献2))。
このような塗装方法により得られるメタリックベース塗膜は、外観に優れ、自動車などの多くの被塗物に応用されている。しかし、消費者の嗜好がより優れた外観を要求するようになってきており、超高級車を中心に、より高外観のメタリックベース塗膜を提供する必要が生じてきた。しかし、従来のメタリックベース塗膜では、例えば、アルミニウム顔料などの光輝材を用いた場合、光輝材凝集ブツが問題となってきている。
光輝材凝集ブツとは、メタリック顔料の分布や配向が崩れた部分がスポット的に存在し、部分的に白く見える現象である。光輝材凝集ブツは、従来から、メタリック顔料を含有する溶剤型塗料の場合に散見されていた現象であるが、判別が困難な程度の微少なものであったため、一般には問題になることが無かった。しかし、水性メタリックベース塗料を用いて塗膜を形成する場合、特に、上述の超高級車の市場では、微少な光輝材凝集ブツも塗膜欠陥としてとらえられ、改善が必要となってきた。
特開昭63−193968号公報 特開2002−308993号公報
本発明は、光輝材凝集ブツを防止し得る複層塗膜の形成方法および当該方法に適用可能な水性メタリックベース塗料組成物の提供を目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、この光輝材凝集ブツという現象が、水性メタリックベース塗料を塗装する際に生じる光輝性顔料濃度の高い塗粒(ダスト)が、通常より長い時間かかって被塗物表面に到着することに起因することが分かった。このダストは、通常より長い時間かかって被塗物に到着するので、水を中心とする溶剤が容易に揮散し、塗料成分が高濃度化する。この高濃度ダストが被塗物表面に塗着したときに周囲の塗料と馴染んでしまえば何の欠陥も生じないが、高濃度ダストが周囲の塗料と馴染まないで、高濃度状態のまま被塗物表面に存在し、そのままの状態でクリヤー塗料が塗布され、加熱硬化されるために、周囲の塗膜とは異なる硬化表面、すなわち、光輝材凝集ブツが形成される。
そこで、本発明者らは、メタリックベース塗膜を形成する水性メタリックベース塗料組成物中に、平均粒径20〜300nmの疎水性メラミン樹脂水分散体、水に対する溶解度が0.01〜5.0質量%であり、沸点が160〜200℃であるアルコール系有機溶剤、および、必要に応じて、さらに、水に対する溶解度が0.01〜5.0質量%であり、沸点が205〜240℃であるグリコールエーテル系有機溶剤を添加することによって、ダストが周囲の塗料(メタリックベース)になじみやすくなり、光輝材凝集ブツを有意に防止できることを見出した。従って、本発明は以下を提供する。
被塗物に、中塗り塗膜、メタリックベース塗膜およびクリヤー塗膜を順次形成する複層塗膜の形成方法であって、
前記メタリックベース塗膜を形成する水性メタリックベース塗料組成物が、
アクリルエマルション樹脂、
平均粒径20〜300nmの疎水性メラミン樹脂水分散体、
光輝性顔料、および
水に対する溶解度が0.01〜5.0質量%であり、沸点が160〜200℃であるアルコール系有機溶剤を塗料内の樹脂固形分の質量に基づいて5〜45質量%含有し、
前記疎水性メラミン樹脂水分散体が、酸価105〜200mgKOH/g、水酸基価50〜200mgKOH/gおよび数平均分子量1000〜5000であるアクリル樹脂の存在下、前記アクリル樹脂/前記疎水性メラミン樹脂の質量比(固形分)が5/95〜25/75となるように混合し、70〜100℃の温度で1〜10時間反応して得られることを特徴とする、
複層塗膜の形成方法。
前記アクリルエマルション樹脂が、エステル部の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸エステルを65質量%以上含む酸価3〜50mgKOH/gのα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を乳化重合して得られることを特徴とする、上記複層塗膜の形成方法。
前記水性メタリックベース塗料組成物が、さらに、水に対する溶解度が0.01〜5.0質量%であり、沸点が205〜240℃であるグリコールエーテル系有機溶剤を塗料内の樹脂固形分の質量に基づいて5〜45質量%含有することを特徴とする、上記複層塗膜の形成方法。
前記アルコール系有機溶剤/前記グリコールエーテル系有機溶剤の質量比が1/1〜3/1であることを特徴とする、上記複層塗膜の形成方法。
上記複層塗膜の形成方法に用いる水性メタリックベース塗料組成物。
本発明によって、光輝材凝集ブツを防止し得る複層塗膜の形成方法および当該方法に適用可能な水性メタリックベース塗料組成物を提供することができる。
本発明は、被塗物に、中塗り塗膜、メタリックベース塗膜およびクリヤー塗膜を順次形成する複層塗膜の形成方法に関する。本発明の複層塗膜形成方法は、メタリックベース塗膜を形成し得る水性メタリックベース塗料組成物に含まれる成分、特に、塗料組成物に含まれる疎水性メラミン樹脂水分散体および特定の有機溶剤に特徴があり、光輝材凝集ブツを有意に防止することができる。以下、被塗物、中塗り塗膜を形成し得る中塗り塗料組成物、メタリックベース塗膜を形成し得る水性メタリックベース塗料組成物およびクリヤー塗膜を形成し得るクリヤー塗料組成物について詳細に説明する。
被塗物
本発明で使用する被塗物は、特に限定されず、例えば、金属製品ならびにプラスチック製品およびその発泡体等が挙げられる。
金属製品の材料としては、例えば、鉄、鋼、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛などの金属およびこれらの金属を含む合金などが挙げられる。金属製品として、具体的には、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体および自動車車体用の部品などが挙げられる。これらの金属製品としては、予めリン酸塩、クロム酸塩等で化成処理されたものが特に好ましい。
また、被塗物としては、下塗り塗装として電着塗装が可能であることから、金属製品(特に、金属表面を有する金属製品および鋳造物)が特に好ましい。下塗り塗膜として形成されていてもよい電着塗膜の電着塗料としては、特に限定はなく、カチオン型およびアニオン型の電着塗料が挙げられるが、防食性に優れた塗膜を与えるという観点から、カチオン型電着塗料が好ましい。
プラスチック製品の材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。プラスチック製品としては、具体的には、スポイラー、バンパー、ミラーカバー、グリル、ドアノブ等の自動車部品などが挙げられる。さらに、これらのプラスチック製品は、純水および/または中性洗剤で洗浄されたものが好ましい。また、静電塗装を可能にするためのプライマー塗装が施されていてもよい。
中塗り塗料組成物
上記被塗物上に中塗り塗膜が形成され得る。中塗り塗膜の形成には中塗り塗料組成物が用いられる。この中塗り塗料組成物は、塗膜形成性樹脂、硬化剤、有機系や無機系の各種着色顔料および体質顔料等の顔料を含有する。
上記中塗り塗料組成物に含まれる塗膜形成性樹脂は、特に限定されるものではなく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の塗膜形成性樹脂が利用でき、これらは、後述の水性メタリックベース塗料組成物のところで挙げた硬化剤と組み合わせて用いられる。得られた塗膜の諸性能、コストの点から、硬化剤として、アミノ樹脂および/または(ブロック)イソシアネート樹脂が一般的に用いられる。
上記中塗り塗料組成物に含まれる顔料としては、後述の水性メタリックベース塗料組成物の記載で挙げた顔料を同様に用いることができる。標準的には、カーボンブラックと二酸化チタンとを主要顔料としたグレー系中塗り塗料組成物や上塗りとの明度を合わせたセットグレーや各種の着色顔料を組み合わせた、いわゆるカラー中塗り塗料組成物を用いることができる。中塗り塗料組成物には、さらに、アルミニウム粉、マイカ、タルク粉等の扁平顔料が添加されていてもよい。
これらの中塗り塗料組成物中には、上記成分の他に塗料に通常添加される添加剤、例えば、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤等が配合されていてもよい。
中塗り塗料組成物の調製方法としては特に限定されず、当業者に公知の方法に従って中塗り塗料組成物を調製することができる。また、市販の中塗り塗料組成物を使用してもよい。
水性メタリックベース塗料組成物
本発明の複層塗膜形成方法に用いられる、メタリックベース塗膜を形成し得る、水性メタリックベース塗料組成物は、アクリルエマルション樹脂、平均粒径20〜300nmの疎水性メラミン樹脂水分散体、顔料、ならびに、下記に詳細に説明する、特定のアルコール系有機溶剤、必要に応じて、特定のグリコールエーテル系有機溶剤を含むことを特徴とする。
アクリルエマルション樹脂
アクリルエマルション樹脂は、α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物の乳化重合によって得ることができる。
上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物は、エステル部の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸エステルを65質量%以上含んでいる。65質量%未満であると、得られる塗膜の外観が低下する。上記エステル部の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルが挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルとメタアクリル酸エステルとの両方を意味するものとする。
また、このα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物および得られるアクリルエマルション樹脂は、酸価が3〜50mgKOH/gであり、好ましくは7〜40mgKOH/gである。酸価が3mgKOH/gを下回ると、塗装作業性が低下し、50mgKOH/gを上回ると、塗膜の耐水性が低下する。更に、このα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物および得られるアクリルエマルション樹脂は、水酸基価が10〜150mgKOH/gであり、好ましくは20〜100mgKOH/gである。水酸基価が10mgKOH/gを下回ると、充分な硬化性が得られず、水酸基価が150mgKOH/gを上回ると、塗膜の耐水性が低下する。また、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を共重合して得られるポリマーのガラス転移温度は、−20〜80℃の間であることが、得られる塗膜の機械的物性の点から好ましい。
上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物および得られるアクリルエマルション樹脂は、酸基または水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーをその中に含むことにより、上記酸価および水酸基価を有することができる。
酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イソクロトン酸、α−ハイドロ−ω−((1−オキソ−2−プロペニル)オキシ)ポリ(オキシ(1−オキソ−1,6−ヘキサンジイル))、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、3−ビニルサリチル酸、3−ビニルアセチルサリチル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中で好ましいものは、アクリル酸、メタクリル酸である。
水酸基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アリルアルコール、(メタ)アクリルアルコール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物を挙げることができる。これらの中で好ましいものは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物である。
さらに、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物はさらにその他のα,β−エチレン性不飽和モノマーを含んでいてもよい。上記その他のα,β−エチレン性不飽和モノマーとしては、エステル部の炭素数3以上の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル等)、重合性アミド化合物(例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N−モノブチル(メタ)アクリルアミド、N−モノオクチル(メタ)アクリルアミド 2,4−ジヒドロキシ−4’−ビニルベンゾフェノン、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等)、重合性芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、パラクロロスチレン及びビニルナフタレン等)、重合性ニトリル(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、α−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン等)を挙げることができる。これらは目的により選択することができるが、親水性を容易に付与する場合には(メタ)アクリルアミドを用いることが好ましい。
なお、これらのエステル部の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸エステル以外の上記α,β−エチレン性不飽和モノマーは、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物中の含有量が35質量%未満に設定されなければならない。
本発明の水性メタリックベース塗料組成物に含まれるアクリルエマルション樹脂は、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を乳化重合して得られるものである。ここで行われる乳化重合は、通常よく知られている方法を用いて行うことができ、特に限定されない。具体的には、例えば、水、または必要に応じてアルコール、エーテル(例えば、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルなど)などのような有機溶剤を含む水性媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物および重合開始剤を滴下することにより行うことができる。乳化剤と水とを用いて予め乳化したα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を同様に滴下してもよい。
好適に用いうる重合開始剤としては、例えば、アゾ系の油性化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)など)、および水性化合物(例えば、アニオン系の4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン)、およびカチオン系の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン));並びにレドックス系の油性過酸化物(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドおよびt−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートなど)、および水性過酸化物(例えば、過硫酸カリおよび過硫酸アンモニウムなど)などが挙げられる。
乳化剤には、当業者に通常使用されているものを用い得るが、反応性乳化剤、例えば、アントックス(Antox)MS−60(日本乳化剤社製)、エレミノールJS−2(三洋化成工業社製)、アデカリアソープNE−20(旭電化社製、α−[1−[(アリルオキシ)メチル]−2−(ノニルフェノキシ)エチル]−ω−ヒドロキシオキシエチレン)およびアクアロンHS−10(第一工業製薬社製、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル)などが特に好ましい。
また、分子量を調節するために、ラウリルメルカプタンのようなメルカプタンおよびα−メチルスチレンダイマーなどのような連鎖移動剤を必要に応じて用いてもよい。
反応温度は開始剤により決定され、通常、40〜180℃であり、例えば、アゾ系開始剤では60〜90℃であり、レドックス系では30〜70℃で行うことが好ましい。一般に、反応時間は1〜8時間である。α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物の総量に対する開始剤の量は、一般に0.1〜5重量%であり、好ましくは0.2〜2重量%である。
上記乳化重合は多段階で行うことができ、例えば、二段階で行うことができる。すなわち、まず上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物のうちの一部(α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物1)を乳化重合し、ここに上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物の残り(α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物2)をさらに加えて乳化重合を行うものである。
ここでクリアコートとのなじみ防止の点から、α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物1はアミド基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーを含有していることが好ましい。またこの時、α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物2は、アミド基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーを含有していないことがさらに好ましい。なお、α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物1および2を一緒にしたものが、上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物であるため、先に示した上記α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物の要件は、α,β−エチレン性不飽和モノマー混合物1および2を一緒にしたものが満たすことになる。
このようにして得られる上記アクリルエマルション樹脂の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲であることが好ましい。平均粒径が0.01μm未満であると作業性の改善の効果が小さく、1.0μmを上回ると得られる塗膜の外観が悪化する恐れがある。さらに好ましくは0.05〜0.5μmである。この平均粒径の調節は、例えば、モノマー組成や乳化重合条件を調整することにより可能である。尚、上記平均粒径は、レーザー光散乱法により測定した体積平均粒径により表示したものである。
上記アクリルエマルション樹脂は、必要に応じて塩基で中和することにより、pH5〜10で用いることができる。これは、このpH領域における安定性が高いからである。この中和は、乳化重合の前または後に、ジメチルエタノールアミン(ジメチルアミノエタノール)やトリエチルアミンなどの3級アミンを系に添加することにより行うことが好ましい。
本発明の水性メタリックベース塗料組成物におけるアクリルエマルション樹脂の含有量(質量%)は、水性メタリックベース塗料組成物中の樹脂固形物の質量に基づいて、20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%、より好ましくは35〜45質量%である。
アクリルエマルション樹脂の含有量が、20質量%未満の場合、塗装作業性が低下するなどの問題の恐れがあり、60質量%を超過する場合、塗膜性能が低下するなどの問題の恐れがある。
疎水性メラミン樹脂水分散体
疎水性メラミン樹脂水分散体は、特定のアクリル樹脂および疎水性メラミン樹脂を反応させ、水中に分散させることにより得られる平均粒径20〜300nmの疎水性メラミン樹脂水分散体である。本発明の水性メタリックベース塗料組成物は、このような疎水性メラミン樹脂水分散体を用いるので、優れた発色性を有する塗膜を得ることができる。平均粒径が20nmを下回ると、塗料固形分の著しい低下が生じ、300nmを上回ると、水分散性が低下することに起因して、形成される塗膜の密着性、表面平滑性が低下する恐れがある。平均粒径は、30〜250nmであることが好ましく、100〜200nmであることがより好ましい。なお、上記平均粒径は、前述したアクリルエマルション樹脂の粒径と同様の方法により測定した値である。
疎水性メラミン樹脂水分散体は、酸価105〜200mgKOH/g、水酸基価50〜200mgKOH/gおよび数平均分子量1000〜5000であるアクリル樹脂の存在下、アクリル樹脂/疎水性メラミン樹脂の質量比(固形分)が5/95〜25/75となるように混合し、70〜100℃の温度で1〜10時間反応して調製することができ、詳細には、酸価105〜200mgKOH/g、水酸基価50〜200mgKOH/g、数平均分子量1000〜5000であるアクリル樹脂と、疎水性メラミン樹脂とを混合・反応する工程(1)、および上記工程(1)で得られた反応生成物を水分散する工程(2)を含む製造方法により得られる疎水性メラミン樹脂水分散体が好ましい。これにより、発色性、リコート密着性、耐チッピング性、耐水付着性を向上させることができる。
上記アクリル樹脂の酸価が105mgKOH/gを下回ると、平均粒径が大きくなり塗料に配合した場合の貯蔵安定性が低下する恐れがある。酸価が200mgKOH/gを上回ると、反応制御が著しく困難になる恐れがある。酸価は、105〜180mgKOH/gであることが好ましい。上記アクリル樹脂の水酸基価が50mgKOH/gを下回ると、平均粒径が大きくなり塗料にした場合の貯蔵安定性が低下する恐れがある。水酸基価が200mgKOH/gを上回ると、反応制御が著しく困難になる恐れがある。水酸基価は60〜180mgKOH/gであることが好ましい。上記アクリル樹脂の数平均分子量が1000を下回ると、粒径が大きくなり塗料にした場合の貯蔵安定性が低下する恐れがある。数平均分子量が5000を上回ると、反応制御が著しく困難になる恐れがある。数平均分子量は、1500〜4000であることが好ましい。なお、上記アクリル樹脂の数平均分子量は、GPC法によるポリスチレン標準で測定した値である。
上記アクリル樹脂は、例えば、水溶性有機溶剤中でカルボン酸基含有不飽和モノマー、水酸基含有不飽和モノマー、必要に応じてその他のエチレン性不飽和モノマーを含むモノマー組成物を、例えば、従来公知の重合開示剤(例えば、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートなど)および乳化剤(例えば、メチルプロピレンジグリコールなど)の存在下、乳化重合等の公知の重合方法を用いて得ることができる。
上記カルボン酸基含有不飽和モノマーとしては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イソクロトン酸、α−ハイドロ−ω−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ポリ[オキシ(1−オキソ−1,6−ヘキサンジイル)]、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、3−ビニルサリチル酸、3−ビニルアセチルサリチル酸等を挙げることができる。
上記水酸基含有不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アリルアルコール、(メタ)アクリルアルコール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン付加物を挙げることができる。これらの中で好ましいものは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン付加物等を挙げることができる。
上記その他のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、エステル部の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸エステル〔(メタ)アクリル酸メチルまたは(メタ)アクリル酸エチル〕;エステル部の炭素数3以上の(メタ)アクリル酸エステル〔例えば、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニル等〕、重合性アミド化合物〔例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N−モノブチル(メタ)アクリルアミド、N−モノオクチル(メタ)アクリルアミド、2,4−ジヒドロキシ−4’−ビニルベンゾフェノン、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等〕;重合性芳香族化合物〔例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、パラクロロスチレンおよびビニルナフタレン等〕;重合性ニトリル〔例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等〕;α−オレフィン〔例えば、エチレン、プロピレン等〕;ビニルエステル〔例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等〕;ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン等)等を挙げることができる。
上記疎水性メラミン樹脂は、従来公知のものを使用することができるが、溶解性パラメーターδ(Sp)が9.0≦Sp≦11.5、好ましくは9.5≦Sp≦11.0の範囲のものであることが好ましい。上記Spが9.0未満であると、平均粒径が300nmを超える恐れがあり、11.5を超えると、平均粒径が300nmを超え、また、塗膜にした場合に耐水性等の性能が低下する恐れがある。
上記溶解性パラメーターδ(Sp)は、樹脂の親水性または疎水性の度合いを示す尺度であり、また樹脂間の相溶性を判断する上でも重要な尺度である。一般に、樹脂の溶解性パラメーターδ(Sp)は、溶解性パラメーターδのSpが既知の良溶媒に樹脂を溶解させておき、その溶媒より低Spの貧溶媒および高Spの良溶媒でそれぞれ濁度滴定することにより、当該樹脂のSp値を決定できることが知られている(参考文献1:C.M.Hansen J.Paint.Tech.,39[505]、104(1967)、および参考文献2:小林敏勝 色材、77[4]、188−192(2004))。
例えば、溶解性パラメーターδ(Sp)は、以下に示すサンプル、良溶媒および貧溶媒を用いて、以下に詳細に説明する濁度滴定(測定温度20℃)によって、求めることができる。
サンプル:樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒10mlをホールピペットを用いて加え、マグネチックスターラーにより溶解して得られる測定樹脂サンプル。
良溶媒:アセトン(Hansen(参考文献1)の測定によるSp:δg=9.77)
貧溶媒:ヘキサン(Hansen(参考文献1)の測定によるSp:δpl=7.24)、および、脱イオン水(Hansen(参考文献1)の測定によるSp:δph=23.50)
濁度滴定
50mlのビュレットを用いて貧溶媒であるヘキサンをサンプルに滴下し、濁りが生じた点のヘキサンの滴下量を記録し、用いたヘキサンの体積分率φplを以下の式から求める。
φpl=(濁りが生じた点のヘキサンの滴下量)/
((濁りが生じた点のヘキサンの滴下量)+(良溶媒の容量))
次いで、50mlのビュレットを用いて貧溶媒である脱イオン水をサンプルに滴下し、濁りが生じた点の脱イオン水の滴下量を記録し、用いた脱イオン水の体積分率φphを以下の式から求める。
φph=(濁りが生じた点の脱イオン水の滴下量)/
((濁りが生じた点の脱イオン水の滴下量)+(良溶媒の容量))
ヘキサンを滴下して生じた濁点における樹脂(混合様態)のSp値δml、および脱イオン水を滴下して生じた濁点における樹脂(混合様態)のSp値δmhは、それぞれ、以下の式(1)および式(2)から求めることができ、δmlおよびδmhの平均値が樹脂のSp値(δpoly)であり、以下の式(3)から求めることができる。
δml=φplδpl+(1−φpl)δg 式(1)
δmh=φphδph+(1−φph)δg 式(2)
δpoly=(δml+δmh)/2 式(3)
上記工程(1)では、上記アクリル樹脂の存在下、上記アクリル樹脂/上記疎水性メラミン樹脂の質量比(固形分)が5/95〜25/75となるように混合する工程を包含することが好ましい。上記工程(1)を行うことにより、上記アクリル樹脂と上記疎水性メラミン樹脂との反応生成物を得ることができる。上記混合比が、5/95よりアクリル樹脂の配合量が少ないと、平均粒径が300nmを超える恐れがある。上記混合比が、25/75よりアクリル樹脂の配合量が多いと、塗料のNV(固形分濃度)の著しい低下が生じる恐れや反応制御が著しく困難になる恐れがある。更に好ましくは10/90〜20/80である。
なお、アクリル樹脂と疎水性メラミン樹脂との混合方法は、従来公知の方法により行うことができるが、例えば、予め上記疎水性メラミン樹脂と、上記アクリル樹脂とを上記アクリル樹脂が有機溶剤(例えば、ジプロピレングリコールメチルエーテル等)を溶媒とする溶剤型のアクリル樹脂の状態で混合し、均一な状態になるまで撹拌する行程を包含することができる。その後、アミン(例えば、ジメチルエタノールアミン等)等の塩基性物質または界面活性剤等を使用して水中に分散してもよい。この場合、上記アクリル樹脂は、疎水性メラミン樹脂の保護樹脂として働くので、分散されたメラミン樹脂粒子の安定性が良く、好ましい。
また、本発明では、上記工程(1)において、疎水性メラミン樹脂に対するアクリル樹脂の配合量が少ないため、得られる疎水性メラミン樹脂水分散体を硬化剤として使用した場合、硬化剤としての機能が低下することが少ない。そして、アクリル樹脂の配合量が少ないにもかかわらず、水分散後の平均粒径が20〜300nmである。このため、本発明により得られる疎水性メラミン樹脂水分散体を水性メタリックベース塗料組成物の硬化剤として好適に用いることができる。なお、上記工程(1)において、上記アクリル樹脂、疎水性メラミン樹脂以外に、本発明の効果を疎外しない範囲内で、ポリエステル樹脂等の他の樹脂を含んでもよい。
上記工程(1)において、上記アクリル樹脂と、上記疎水性メラミン樹脂との反応条件は、反応温度が70〜100℃、好ましくは75〜90℃である。また、反応時間は、1〜10時間であることが好ましく、1〜5時間であることがより好ましい。反応温度および反応時間ともに下限未満であると、平均粒径が300nmを超える恐れがある。上限を超えると、反応制御が著しく困難になる恐れがある。
上記加熱混合工程(ホットブレンド工程)を行うことにより、上記アクリル樹脂と上記疎水性メラミン樹脂との一部またはある程度架橋した反応生成物を得ることができる。ある程度架橋させることで、得られたメラミン樹脂分散体の平均粒径が変化し難く、塗料化した後の貯蔵安定性にも優れる。
上記疎水性メラミン樹脂の混合・分散には、ディスパー、ホモミキサー、ミル等を用いることができるが、必要に応じて、上記アミン等の塩基性物質、または界面活性剤等を併用することができる。分散時間を短縮し、得られた分散体を安定化することができる。
上記工程(2)では、上記工程(1)を行うことにより得られた反応生成物を水分散することによって、平均粒径20〜300nmの疎水性メラミン樹脂水分散体を得る工程を行うものである。上記工程(2)を行うことによって、平均粒径20〜300nmの樹脂粒子が水中で分散している水分散体(水分散液)を得ることができる。
上記工程(2)において、上記工程(1)で得られた反応生成物を水分散する方法としては特に限定されず、通常の樹脂の水分散方法を用いることができるが、上記反応生成物を温度50℃以下に冷却した後、水を用いて希釈することによって水分散することが好ましい。これにより、平均粒径20〜300nmの疎水性メラミン樹脂水分散体を好適に得ることができる。50℃以下に冷却しない場合には、平均粒径が20〜300nmのものを得ることができない恐れがある。30〜40℃に冷却した後、水で希釈することによって水分散することがより好ましい。
上記工程(2)において、必要に応じてアミン(例えば、ジメチルエタノールアミンなど)等の塩基性物質を併用することにより、pH=5〜10で用いることができる。これは、このpH領域における疎水性メラミン樹脂水分散体の安定性が高いためである。この中和は、上記アクリル樹脂と上記疎水性メラミン樹脂との反応の前または後に、ジメチルエタノールアミンやトリエチルアミンのような3級アミンを系に添加することにより行うことが好ましい。なかでも、上記アクリル樹脂と上記疎水性メラミン樹脂との反応の後に、3級アミンを添加し、次いで、反応生成物を温度50℃以下に冷却した後、水を用いて希釈することによって水分散することが特に好ましい。これにより、平均粒径20〜300nmの疎水性メラミン樹脂水分散体を好適に得ることができる。
上記硬化剤の他に、塗料一般に用いられているその他の硬化剤を使用することができる。このようなものとして、ブロックイソシアネート樹脂、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、金属イオン等が挙げられる。
上記その他の硬化剤の配合量は、水性メタリックベース塗料組成物中の樹脂固形分当たり、0〜40重量%であることが好ましく、1〜35重量%であることが更に好ましい。40重量%を超えると硬く脆い塗膜になる。
上記疎水性メラミン樹脂水分散体の水性メタリックベース塗料組成物への配合量は、塗料内の全樹脂成分と、上記分散体内の疎水性メラミン樹脂との質量混合比(疎水性メラミン樹脂/全樹脂成分)で、10/90〜50/50であることが好ましく、25/75〜45/55であることが更に好ましい。10/90を下回ると塗膜の硬化性が低下し、50/50を上回ると塗膜が硬く脆くなる。
上記水性メタリックベース塗料組成物は、必要によりその他の塗膜形成性樹脂を含んでいてもよい。その他の塗膜形成性樹脂としては、特に限定されるものではなく、水溶性アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の塗膜形成性樹脂などが利用できる。
また、上記その他の塗膜形成性樹脂は、数平均分子量3000〜50000、好ましくは6000〜30000であることが好ましい。3000より小さいと作業性および硬化性が十分でなく、50000を越えると塗装時の不揮発分が低くなりすぎ、かえって作業性が悪くなる。
上記その他の塗膜形成性樹脂は10〜100mgKOH/g、更に20〜80mgKOH/gの酸価を有することが好ましく、酸価が100mgKOH/gを越えると塗膜の耐水性が低下し、10mgKOH/gを下回ると樹脂の水分散性が低下する。また、その他の塗膜形成性樹脂が、20〜180mgKOH/g、更に30〜160mgKOH/gの水酸基価を有することが好ましく、水酸基価が180mgKOH/gを越えると塗膜の耐水性が低下し、20mgKOH/gを下回ると塗膜の硬化性が低下する。
顔料
顔料としては、光輝性顔料および着色顔料が挙げられる。光輝性顔料としては、形状は特に限定されず、また着色されていてもよいが、例えば、平均粒径(D50)が2〜50μmであり、かつ厚さが0.1〜5μmであるものが好ましい。また、平均粒径が10〜35μmの範囲のものが光輝感に優れ、さらに好適に用いられる。具体的には、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム等の金属または合金等の無着色あるいは着色された金属製光輝剤およびその混合物が挙げられる。この他に干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料などもこの中に含めるものとする。なお、光輝性顔料の平均粒径は、レーザー光回折法により測定することができる。
一方、着色顔料としては、例えば、有機系のアゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、無機系では黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等が挙げられ、体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等が挙げられる。
上記水性メタリックベース塗料組成物中の全顔料濃度(PWC)としては、0.1〜50%であることが好ましい。さらに好ましくは、0.5〜40%であり、特に好ましくは、1.0〜30%である。50%を越えると塗膜外観が低下する。また、光輝性顔料が含まれる場合、その顔料濃度(PWC)としては、一般的に18.0%以下であることが好ましい。この場合、PWCが18.0%を越えると塗膜外観が低下する。さらに好ましくは、0.01〜15.0%であり、特に好ましくは、0.01〜13.0%である。
有機溶剤
本発明の水性メタリックベース塗料組成物は、水に対する溶解度が0.01〜5.0質量%であり、沸点が160〜200℃であるアルコール系有機溶剤、および、必要に応じて、さらに、水に対する溶解度が0.01〜5.0質量%であり、沸点が205〜240℃であるグリコールエーテル系有機溶剤を含む。なお、上記溶解度とは、20℃において水100質量部に溶解する有機溶剤の質量を百分率で示したものである。
アルコール系有機溶剤の水に対する溶解度が0.01質量%未満の場合、塗料粘度が著しく上昇する等の問題の恐れがあり、溶解度が5.0質量%を超過する場合、塗料粘度が著しく低下し、塗装作業性が低下する等の問題の恐れがある。アルコール系有機溶剤の水に対する溶解度は、好ましくは0.05〜3.0質量%である。
アルコール系有機溶剤の沸点が160℃未満である場合、塗装作業性、特に、ワキ性が低下する等の問題の恐れがあり、沸点が200℃を超過する場合、塗装作業性、特に、タレ性が低下する等の問題の恐れがある。アルコール系有機溶剤の沸点は、好ましくは170〜190℃である。
上記アルコール系有機溶剤(溶解度、沸点)は、ヘプタノール(0.5質量%、168℃)、2−エチルヘキシルアルコール(0.1質量%、184℃)およびシクロヘキサノール(4.0質量%、161℃)からなる群から選択され、アクリルエマルション樹脂や、疎水性メラミン樹脂水分散体の安定性(粒径)の観点から、2−エチルヘキシルアルコールが好ましい。
水性メタリックベース塗料組成物におけるアルコール系有機溶剤の含有量は、水性メタリックベース塗料組成物内の樹脂固形分の質量に基づいて、5〜45質量%であり、含有量が5質量%未満であると、光輝材凝集ブツ防止効果が低下する等の問題の恐れがあり、含有量が45質量%を超過すると、ワキ性等の塗装作業性が低下する等の問題の恐れがある。
上記アルコール系有機溶剤を水性メタリックベース塗料組成物に添加すると、塗装時の微粒化が向上するので、光輝材凝集ブツを有意に防止することができる。
必要に応じて、本発明の水性メタリックベース塗料組成物に、水に対する溶解度が0.01〜5.0質量%であり、沸点が205〜240℃であるグリコールエーテル系有機溶剤を添加してもよい。
グリコールエーテル系有機溶剤の水に対する溶解度が0.01質量%未満の場合、塗料粘度が著しく上昇する等の問題の恐れがあり、溶解度が5.0質量%を超過する場合、塗料粘度が著しく低下し、塗装作業性が低下する等の問題の恐れがある。グリコールエーテル系有機溶剤の水に対する溶解度は、好ましくは0.05〜3.0質量%である。
グリコールエーテル系有機溶剤の沸点が205℃未満である場合、塗装作業性、特に、ワキ性が低下する等の問題の恐れがあり、沸点が240℃を超過する場合、塗装作業性、特に、タレ性が低下する等の問題の恐れがある。グリコールエーテル系有機溶剤の沸点は、好ましくは210〜230℃である。
上記グリコールエーテル系有機溶剤(溶解度、沸点)は、エチレングリコール モノヘキシルエーテル(ヘキシルグリコール、1.0質量%、208℃)、エチレングリコール モノ2−エチルヘキシルエーテル(2−エチルヘキシルグリコール、0.2質量%、225℃)およびジプロピレングリコール モノブチルエーテル(5.0質量%、215℃)からなる群から選択され、アクリルエマルション樹脂や、疎水性メラミン樹脂水分散体の安定性(粒径)の観点から、エチレングリコール モノ2−エチルヘキシルエーテルが好ましい。
水性メタリックベース塗料組成物におけるグリコールエーテル系有機溶剤の含有量は、水性メタリックベース塗料組成物内の樹脂固形分の質量に基づいて、5〜45質量%であり、含有量が5質量%未満であると、光輝材凝集ブツ防止効果が低下する等の問題の恐れがあり、含有量が45質量%を超過すると、ワキ性などの塗装作業性が低下する等の問題の恐れがある。
上記アルコール系有機溶剤に加えて、上記グリコールエーテル系有機溶剤を水性メタリックベース塗料組成物に添加することは、アクリルエマルション樹脂や、疎水性メラミン樹脂水分散体の安定性(粒径)に優れている等の利点がある。
本発明の水性メタリックベース塗料組成物がアルコール系有機溶剤およびグリコールエーテル系有機溶剤を含む場合、アルコール系有機溶剤/グリコールエーテル系有機溶剤の質量比は1/1〜3/1であり、質量比が1/1未満である場合、塗料粘性が低下し、塗装作業性の不具合が起こる等の問題の恐れがあり、質量比が3/1を超過する場合、経時でのアクリルエマルション樹脂や、疎水性メラミン樹脂水分散体の安定性の低下が起こる等の問題の恐れがある。
また、水性メタリックベース塗料組成物にグリコールエーテル系有機溶剤を単独で添加してもよい。
本発明の水性メタリックベース塗料組成物には、上記成分の他に塗料に通常添加される添加剤、例えば、界面活性剤、分散剤、表面調整剤、粘性調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤、pH調整剤等が配合されていてもよい。
水性メタリックベース塗料組成物の製造方法としては、上記成分を均一に分散できれば特に限定はないが、当業者に公知の方法、例えば、ニーダー、ミルまたはロールミルなどの方法などが挙げられる。
上述の通り、本発明の水性メタリックベース塗料組成物が、水に対する溶解度が0.01〜5.0質量%であり、沸点が160〜200℃であるアルコール系有機溶剤、および、必要に応じて、さらに、水に対する溶解度が0.01〜5.0質量%であり、沸点が205〜240℃であるグリコールエーテル系有機溶剤を含むことによって、光輝材凝集ブツの形成を有意に防止することができ、さらに、疎水性メラミン樹脂水分散体の製造にホットブレンド工程を採用することによって、光輝材凝集ブツをさらに抑制することが可能である。
クリヤー塗料組成物
クリヤー塗料組成物は、メタリックベース塗膜上に塗布され、クリヤー塗膜を形成することができ、メタリックベース塗膜の凹凸、チカチカ等を平滑することができ、また、ベース塗膜を保護し、外観を向上させることができる。
クリヤー塗料組成物としては、特に限定されず、例えば、塗膜形成性樹脂、必要に応じて硬化剤およびその他の添加剤を含む塗料組成物を挙げることができる。
塗膜形成性樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
透明性又は耐酸エッチング性等の点から、上記塗膜形成樹脂としてアクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂と、硬化剤としてアミノ樹脂及び/又はポリイソシアネート樹脂との組み合わせ、あるいは、カルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂等を用いることが好ましい。
塗膜層間のなじみや反転、又は、タレ等の防止のため、粘性制御剤を添加剤として含有することが好ましい。上記粘性制御剤の添加量は、クリヤー塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部であり、好ましくは、0.02質量部〜8質量部、より好ましくは、0.03質量部〜6質量部である。添加量が10質量部を超えると、得られた塗膜の外観が低下し、0.01質量部未満であると、粘性制御効果が得られず、塗膜形成時にタレ等の不具合を起こす原因となる。
上記クリヤー塗料組成物の塗料形態としては、有機溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、エマルジョン)、非水分散型、粉体型のいずれでもよく、また必要により、硬化触媒、表面調整剤等の添加剤を用いることができる。
なお、上記水性型クリヤー塗料組成物の例としては、上記クリヤー塗料組成物の例として挙げたものに含有される塗膜形成性樹脂を塩基で中和して水性化した樹脂を含有するものも挙げることができる。この中和は重合の前又は後に、ジメチルエタノールアミンおよびトリエチルアミンのような3級アミンを添加することにより行うことができる。
クリヤー塗料組成物の調製方法としては特に限定されず、当業者に公知の方法に従ってクリヤー塗料組成物を調製することができる。また、市販のクリヤー塗料組成物を使用してもよい。
複層塗膜形成方法
本発明の複層塗膜の形成方法は以下の工程を包含する:
電着塗膜などの下塗り塗膜を有していてもよい被塗物(例えば、リン酸塩処理などの化成処理が施されていてもよい鋼板など)に中塗り塗料組成物を塗布して中塗り塗膜を形成する行程(複数の段階に分けて複数回塗装してもよい)、
中塗り塗膜に水性メタリックベース塗料組成物を塗布してメタリックベース塗膜を形成する行程(複数の段階に分けて複数回塗装してもよい)、
メタリックベース塗膜にクリヤー塗料組成物を塗布してクリヤー塗膜を形成する工程(複数の段階に分けて複数回塗装してもよい)。
また、本発明で使用する複層塗膜は、さらに、下層にプライマー、上層にオーバーコートクリアなどの複数の塗膜を適宜含んでいてもよい。
塗料組成物の塗布は、一般に、エアースプレーによる静電塗装によって行われ、例えば、エアー霧化型塗装機(オートREA)、回転遠心霧化型塗装機(ベル、マイクロベル、マイクロマイクロベル、カートリッジベル)等を利用することができる。
本発明の複層塗膜の形成方法は、各工程の後、必要に応じて、プレヒート工程を包含していてもよい。なお、プレヒートとは、形成された塗膜を硬化させない程度に加熱乾燥させることを意味し、通常、形成された塗膜を40〜80℃で5〜10分間加熱する。
また、各工程後、それぞれ、焼き付け乾燥工程(例えば、120〜160℃で10〜40分)によって塗膜を硬化させてもよい。
硬化後の膜厚は、例えば、下塗り電着塗膜において15〜25μm、中塗り塗膜において10〜50μmが好ましく、メタリックベース塗膜において10〜35μmが好ましく、クリヤー塗膜において20〜80μmが好ましい。
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例中、「部」は、特に断りのない限り、「質量部」を意味する。
製造例1:アクリルエマルション樹脂Aの製造
反応容器に脱イオン水126.5部を加え、窒素気流中で撹拌しながら80℃に昇温した。次いで、第1段目のα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物として、メタクリル酸メチル24.42部、アクリル酸エチル25.78部、スチレン10.00部、アクリルアミド4.00部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル5.80部、アクアロンHS−10(ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル、第一工業製薬社製)0.5部、アデカリアソープNE−20(α−[1−[(アリルオキシ)メチル]−2−(ノニルフェノキシ)エチル]−ω−ヒドロキシオキシエチレン、旭電化社製、80%水溶液)0.5部および脱イオン水80部からなるモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム0.24部および脱イオン水10部からなる開始剤溶液とを2時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間同温度で熟成を行った。
さらに、80℃で第2段目のα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物として、アクリル酸エチル24.45部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル2.48部、メタクリル酸3.07部、アクアロンHS−10を0.2部および脱イオン水10部からなるモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム0.06部および脱イオン水10部からなる開始剤溶液とを0.5時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。
次いで、40℃まで冷却し、400メッシュフィルターで濾過した後、ジメチルアミノエタノール0.32部を加え、pH6.5に調整し、平均粒子径150nm、不揮発分30%、固形分酸価20mgKOH/g、水酸基価40mgKOH/gのアクリルエマルション樹脂Aを得た。
製造例2:水溶性アクリル樹脂B(塗膜形成性樹脂)の製造
反応容器にジプロピレングリコールメチルエーテル23.89部およびプロピレ
ングリコールメチルエーテル16.11部を加え、窒素気流中で混合撹拌しながら105℃に昇温した。次いで、メタクリル酸メチル13.1部、アクリル酸エチル68.4部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル11.6部およびメタクリル酸6.9部と、ジプロピレングリコールメチルエーテル10.0部およびt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート1部からなる開始剤溶液とを3時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。
さらに、ジプロピレングリコールメチルエーテル5.0部およびt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート0.3部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。
脱溶剤装置により、減圧下(70 Torr)110℃で溶剤を16.11部留去した後、脱イオン水204部およびジメチルアミノエタノール7.14部を加えて水溶性アクリル樹脂Bを得た。得られた水溶性アクリル樹脂Bの不揮発分は30.0%、固形分酸価40mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/gであった。
製造例3:メラミン分散用アクリル樹脂Cの製造
反応容器にMFDG(メチルプロピレンジグリコール、日本乳化剤社製)50部を添加し、窒素気流中で撹拌しながら130℃に昇温した。次いで、メタクリル酸16.9部、アクリル酸メチル5.4部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル14.5部およびアクリル酸エチル54.7部と、ジプロピレングリコールメチルエーテル10.0部およびt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート13部からなる開始剤溶液とを3時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。
更に、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート0.5部およびジプロピレングリコールメチルエーテル5部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり滴下した。滴下終了後1時間同温度で熟成を行った。次いで、50℃まで冷却し、不揮発分60%、固形分酸価110mgKOH/g、水酸基価70mgKOH/g、数平均分子量3000のアクリル樹脂Cを得た。
製造例4:疎水性メラミン樹脂水分散体(1)の製造
製造例3のアクリル樹脂C 8.1部(固形分5部)及び日本サイテック社製ユーバン20SB(完全ブチル化メラミン樹脂、Sp値9.7、固形分60%)50部(固形分30部)を混合し、80℃で4時間撹拌した。その後、ジメチルエタノールアミンを0.8部加えて均一になるまで十分に攪拌し、40℃まで冷却した後、イオン交換水41部を1時間で滴下することにより、平均粒径150nmである疎水性メラミン樹脂水分散体(1)(固形分35%)を得た。
メラミン樹脂「ユーバン20SB」のSp値は、以下の良溶媒および貧溶媒を用いて濁度滴定することによって、測定した(測定温度:20℃)。
良溶媒:アセトン(Sp:δg=9.77)
貧溶媒:ヘキサン(Sp:δpl=7.24)および
脱イオン水(Sp:δph=23.50)
サンプル調製
メラミン樹脂「ユーバン20SB」0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒(アセトン)10mlをホールピペットを用いて加え、マグネチックスターラーにより溶解し、測定樹脂サンプルを調製した。
濁度滴定
50mlのビュレットを用いてヘキサンを上記測定樹脂サンプルに滴下し、濁りが生じた点のヘキサンの滴下量を記録した(58.21ml)。用いたヘキサンの体積分率φplは、0.8534であった。
φpl=(58.21)/(58.21+10)≒0.8534
次いで、50mlのビュレットを用いてヘキサンの場合と同様に脱イオン水を上記測定樹脂サンプルに滴下し、濁りが生じた点の脱イオン水の滴下量を記録した(1.74ml)。用いた脱イオン水の体積分率φphは、0.1482であった。
φph=(1.74)/(1.74+10)≒0.1482
上記式(1)、式(2)および式(3)から求めたメラミン樹脂「ユーバン20SB」のSp値(δpoly)は9.7であった。
δml=φpl×δpl+(1−φpl)×δg=(0.8534)(7.24)+(1−0.8534)(9.77)≒7.6109
δmh=φph×δph+(1−φph)×δg=(0.1482)(23.50)+(1−0.1482)(9.77)≒11.8048
δpoly=(δml+δmh)/2=(7.6109+11.8048)/2≒9.7
製造例5:疎水性メラミン樹脂水分散体(2)の製造
製造例3のアクリル樹脂C 8.1部(固形分5部)及び日本サイテック社製ユーバン20SB(固形分60%)50部(固形分30部、Sp値9.7)を混合し、室温(20℃)で4時間攪拌した。その後、ジメチルエタノールアミンを0.8部添加して十分に攪拌した後、さらに脱イオン水41部を1時間で滴下することにより、平均粒子径が250nmである疎水性メラミン樹脂水分散体(2)(固形分35%)を得た。
製造例6:疎水性メラミン樹脂水分散体(3)の製造
製造例3のアクリル樹脂C 8.1部(固形分5部)及びジメチルエタノールアミン0.8部を添加して十分に攪拌した後、さらに脱イオン水41部を攪拌しながら除々に添加することにより、均一な水溶性アクリル樹脂Cの水溶液を得た。次に、日本サイテック社製ユーバン20SB(固形分60%)50部(固形分30部、Sp値9.7)を徐々に添加し、アクリル樹脂Cを保護樹脂とする疎水性メラミン樹脂水分散体を得た。更に室温で1時間攪拌し、平均粒子径が300nmである疎水性メラミン樹脂水分散体(3)(固形分35%)を得た。
製造例7:リン酸基含有アクリル樹脂(分散剤)の製造
攪拌機、温度調整器、冷却管を備えた1リットルの反応容器にエトキシプロパノール40部を仕込み、これにスチレン4部、n−ブチルアクリレート35.96部、エチルヘキシルメタアクリレート18.45部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート13.92部、メタクリル酸7.67部、エトキシプロパノール20部に、ホスマーPP(ユニケミカル社製アシッドホスホオキシヘキサ(オキシプロピレン)モノメタクリレート)20部を溶解した溶液40部、およびアゾビスイソブチロニトリル1.7部からなるモノマー溶液121.7部を120℃で3時間滴下した後、1時間さらに攪拌を継続した。得られた樹脂は、酸価105mgKOH/g、うちリン酸基による酸価55mgKOH/g、水酸基価60mgKOH/g、数平均分子量6000のアクリルワニスで、不揮発分が63%であった。
実施例1:水性メタリックベース塗料組成物の製造
製造例1のアクリルエマルション樹脂Aを133.3部、製造例2の水溶性アクリル樹脂Bを50.0部、製造例4の疎水性メラミン樹脂水分散体(1)を101.1部、アルペーストMH−8801(旭化成工業社製アルミニウム製光輝性顔料、有効成分75%)を16.7部、デグサカーボンFW−200P(デグサジャパン株式会社製カーボン黒顔料)を0.5部、製造例7のリン酸基含有アクリル樹脂5.4部、三菱化学社製の2−エチルヘキシルアルコール(2EHOH)を40部(樹脂固形分に対して40質量%)、サンノプコ社製粘性調整剤「SNシックナーN−1(固形分25%)」を1.0部、日本ペイント社製架橋樹脂粒子(粘性調整剤、固形分30%)25部および10質量%のジメチルエタノールアミン(DMEA)水溶液を10部とを添加し、均一分散することにより水性メタリックベース塗料組成物を得た。
実施例2:水性メタリックベース塗料組成物の製造
実施例1に従って、2EHOHを20部(樹脂固形分に対して20質量%)使用し、さらに、日本乳化剤社製のエチレングリコール モノ2−エチルヘキシルエーテル(EHG)20部(樹脂固形分に対して20質量%)を添加して水性メタリックベース塗料組成物を調製した(表1)。
実施例3:水性メタリックベース塗料組成物の製造
実施例1に従って、2EHOHを使用せず、EHG40部(樹脂固形分に対して40質量%)を添加して水性メタリックベース塗料組成物を調製した(表1)。
比較例1〜3:水性メタリックベース塗料組成物の製造
実施例1に従って、以下の表2に示す成分を混合して水性メタリックベース塗料組成物を調製した(比較例1〜3)。
複層塗膜の形成
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、縦30cm、横40cmのダル鋼板に、カチオン電着塗料「パワートップU−50」(日本ペイント社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間加熱した。更にその塗板に、25秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に、予め希釈されたグレー中塗り塗料「オルガP−30」(日本ペイント社製ポリエステル・メラミン系塗料)を、乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレーで2ステージ塗装し、140℃で30分間、加熱した。
冷却後、実施例の水性メタリックベース塗料組成物を、脱イオン水を用いて30秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈したものを用いて、室温25℃、湿度85%の条件下で、乾燥膜厚20μmとなるように水系塗料塗装用「μμベルCOPES−IV型」(ABBインダストリー社製)で、2ステージ塗装した。2回の塗布の間に、1分間のインターバルをとった。2回目の塗布後、5分間のセッティングを行った。その後、80℃で5分間のプレヒートを行った。
プレヒート後、塗装板を室温まで放冷した後、クリヤー塗料として「マックフローO−1820クリヤー」(日本ペイント社製酸/エポキシ硬化系クリヤー塗料)を、乾燥膜厚40μmとなるように1ステージ塗装し、7分間セッティングした。ついで、塗装板を乾燥機で140℃30分間加熱して、電着塗膜、中塗り塗膜、メタリックベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる複層塗膜を有する塗装板を得た。
光輝材凝集ブツ防止効果
水性メタリックベース塗料組成物の光輝材凝集ブツ防止効果を以下の評価方法および評価基準に従って評価した。結果を以下の表1および表2に示す。
A3サイズのブリキ板にABBインダストリー社製カートリッジベルを用いて以下の塗装条件で実施例または比較例の水性メタリックベース塗料組成物を水平塗装した。
次いで、以下のダスト発生条件で水性メタリックベース塗料組成物をさらに塗布し、1分後、80℃の雰囲気の乾燥炉でプレヒートした。
140℃で30分間焼き付けし、光輝材凝集ブツの発生件数を評価した。
塗装条件
回転数:25000rpm
吐出量:200cc/分
シェービングエア(SA)圧:600NL/min
印加電圧:−90kV
ガン距離:30cm
ガン速度:900mm/秒
パスピッチ:65mm
2ステージ塗装:インターバル=1分20秒
塗装ブース環境:温度=23℃、湿度=68%
ダスト発生条件
回転数:10000rpm
吐出量:300cc/分
シェービングエア(SA)圧:520NL/min
印加電圧:−90kV
ガン距離:50cm
ガン速度:900mm/秒
パスピッチ:130mm
2ステージ塗装:インターバル=1分20秒
塗装ブース環境:温度=23℃、湿度=68%
光輝材凝集ブツ発生件数の評価基準
○ :10以下
○△:10〜30
△ :30〜100
△×:100〜200
× :200以上
Figure 2009006293
Figure 2009006293
アルペーストMH−8801:旭化成工業社製のアルミニウム製光輝性顔料(有効成分75%)
デグサカーボンFW−200P:デグサジャパン株式会社製カーボンブラック顔料
2EHOH:三菱化学社製の2−エチルヘキシルアルコール
EHG:日本乳化剤社製のエチレングリコール モノ2−エチルヘキシルエーテル
SNシックナーN−1:サンノプコ社製の粘性調整剤(固形分25%)
架橋樹脂粒子:日本ペイント社製の粘性調整剤(固形分30%)
DMEA:日本乳化剤社製の10質量%ジメチルエタノールアミン水溶液
本発明によって、光輝材凝集ブツの形成を抑制および/または防止することができ、本発明は、例えば、自動車車体、特に、超高級車等の塗装に有用である。

Claims (5)

  1. 被塗物に、中塗り塗膜、メタリックベース塗膜およびクリヤー塗膜を順次形成する複層塗膜の形成方法であって、
    前記メタリックベース塗膜を形成する水性メタリックベース塗料組成物が、
    アクリルエマルション樹脂、
    平均粒径20〜300nmの疎水性メラミン樹脂水分散体、
    光輝性顔料、および
    水に対する溶解度が0.01〜5.0質量%であり、沸点が160〜200℃であるアルコール系有機溶剤を塗料内の樹脂固形分の質量に基づいて5〜45質量%含有し、
    前記疎水性メラミン樹脂水分散体が、酸価105〜200mgKOH/g、水酸基価50〜200mgKOH/gおよび数平均分子量1000〜5000であるアクリル樹脂の存在下、前記アクリル樹脂/前記疎水性メラミン樹脂の質量比(固形分)が5/95〜25/75となるように混合し、70〜100℃の温度で1〜10時間反応して得られることを特徴とする、
    複層塗膜の形成方法。
  2. 前記アクリルエマルション樹脂が、エステル部の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸エステルを65質量%以上含む酸価3〜50mgKOH/gのα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を乳化重合して得られることを特徴とする、請求項1に記載の複層塗膜の形成方法。
  3. 前記水性メタリックベース塗料組成物が、さらに、水に対する溶解度が0.01〜5.0質量%であり、沸点が205〜240℃であるグリコールエーテル系有機溶剤を塗料内の樹脂固形分の質量に基づいて5〜45質量%含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の複層塗膜の形成方法。
  4. 前記アルコール系有機溶剤/前記グリコールエーテル系有機溶剤の質量比が1/1〜3/1であることを特徴とする、請求項3に記載の複層塗膜の形成方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層塗膜の形成方法に用いる水性メタリックベース塗料組成物。
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