JP2009006251A - 角閃石系アスベスト含有物の無害化方法 - Google Patents

角閃石系アスベスト含有物の無害化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】1700℃程度の高温度でないと分解し難い角閃石系アスベストの含有物を蛇紋岩系アスベストの加熱無害化処理温度と同程度の低温度で熱処理し無害化する技術を提供すること。
【解決手段】ウスタイト及びマグネタイトおよびゲーレン石を主要構成鉱物とする電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物とを重量比で10:1〜3:1で湿式混合粉砕して最大粒径(篩の残分が5重量%以下となる目開き寸法)100μm以下とした後、該混合粉砕物を焼成炉に投入して1150〜1300℃で部分溶融する角閃石系アスベスト含有物の無害化方法とした。
【選択図】 なし

Description

本発明は、1700℃程度の高温度でないと分解し難い角閃石系アスベスト含有物の無害化方法に関するもので、特に産業副産物である電気炉酸化スラグを有効利用しつつ、角閃石系アスベスト含有物を1200℃程度の低温度で熱処理し無害化する技術に関するものである。
アスベストは無機結晶性繊維材(珪酸塩鉱物)の総称であり、蛇紋岩系アスベストと角閃石系アスベストとに分類される。
蛇紋岩系アスベストは、主に化学式Mg6 Si4 10(OH)8 で表されるクリソタイルという層状珪酸塩鉱物から構成される。蛇紋岩系アスベストは、概ねSiO2 を40重量%、Al2 3 を1 重量%、FeO+Fe2 3 を1重量%、MgOを40重量%程度含む。
一方、角閃石系アスベストは、クロシドライト、アモサイト、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトなどで知られ、クロシドライトの化学式はNa2(Fe,Mg)3 Fe2 Si8 22(OH)2 、アモサイトの化学式は(Fe,Mg)7 Si8 22(OH)2 、アンソフィライトの化学式は(Mg,Fe)7 Si8 22(OH)2 、トレモライトの化学式はCa2 (Mg,Fe)5 Si8 22(OH)2 、アクチノライトの化学式はCa2 (Fe,Mg)5 Si8 22(OH)2 で各々表され、例えば、アモサイトは、概ねSiO2 を55重量%、FeOを40重量%、MgOを4重量%程度含み、また、アクチノライトは、概ねSiO2 を58重量%、FeOを21重量%、MgOを9重量%、CaOを13重量%程度含む。すなわち、蛇紋岩系アスベストに比して、角閃石系アスベストは多くのFeイオンを含み、該Feイオンが結晶中において結合に主要な役割を果している。
ここで、蛇紋岩系アスベストは、約700℃で脱水、変態化し、例えば約900℃で無害なフォレストライト(2MgO・SiO2 )が生成するため、約1200℃の低温での無害化が容易である。これに対し、角閃石系アスベストは、分解温度が高く、無害化するためには約1700℃の高温で加熱して溶融処理する必要があることから、特殊な設備を必要とし、またエネルギー消費量も多いことから、無害化にコストがかかる。また、一般的に使用されている建材に含まれるアスベストの多くは蛇紋岩系アスベストであることから、アスベスト含有建材の無害化処理においても蛇紋岩系アスベストの無害化処理技術(例えば、特許文献1〜3)が先行し、角閃石系アスベストについては実用的な無害化処理技術は未だ見出されていないのが現状である。
一方、スラグ、石炭灰、再生骨材副生物等の産業副産物の発生を抑制し、あるいは産業副産物を有効利用することにより、廃棄物として処理しなければならない産業副産物を減容し、環境問題解決に貢献するという観点も重要である。
このような産業副産物の一つとして、鉄スクラップから鋼を製造する際に大量に発生する電気炉スラグがある。電気炉スラグには、生成過程の違いにより酸化スラグと還元スラグとがあり、酸化スラグは溶鋼中に酸素を吹き込んで不要な成分を酸化させる酸化精錬時に生成されるスラグであり、還元スラグは酸化精錬終了後のスラグを排出し、新たに還元剤や石灰などを装入し、溶鋼中の酸素を除去する還元精錬時に生成されるスラグである。
全国では、電気炉酸化スラグが年間約200トン、還元スラグが約100トン発生しており、その内、電気炉酸化スラグは化学的に安定で、水に溶解したり、崩壊したりすることがないので、その一部が路盤材やコンクリート骨材(例えば、特許文献4,5)などとして利用されているが、廃棄物として埋め立て処分されているものも有り、有効な利用技術の開発が強く望まれている。
電気炉酸化スラグは、通常、CaOを10〜26重量%、SiO2 を8〜22重量%、MnOを4〜7重量%、MgOを2〜8重量%、FeOを13〜32重量%、Fe2 3 を9〜45重量%、Al2 3 を4〜16重量%、Cr2 3 を1〜4重量%程度含み、さらに微量成分としてTiO2 を0.25〜0.70重量%、P2 5 を0.15〜0.50重量%程度含み、安定な鉱物組成を得るためのFeを20〜45重量%程度含むものである。すなわち、電気炉酸化スラグは、Fe成分を非常に多く含む材料である。
特開2002−167262号公報 特開2000−271561号公報 特開平9−206726号公報 特開平10−15523号公報 特開平8−157246号公報
本発明は、上述した背景技術に鑑み成されたものであって、その目的は、1700℃程度の高温度でないと分解し難い角閃石系アスベスト含有物を蛇紋岩系アスベストの加熱無害化処理温度と同程度の低温度で熱処理し無害化する技術を提供することにある。
本発明者等は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、角閃石系アスベストは上記したようにFe成分が結晶中において結合に主要な役割をはたしており、このFe成分を奪い去るような多成分系での部分溶融反応を起こさせることができれば、比較的低温度での角閃石系アスベストの分解が可能であり、このような部分溶融反応を起こさせるには、Fe成分を非常に多く含む電気炉酸化スラグを用いればよいとの知見に基づき、本発明を完成させた。
即ち、本発明に係る角閃石系アスベスト含有物の無害化方法は、次のものである。
〔1〕 電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物とを湿式で混合粉砕し、該混合粉砕物を焼成炉に投入して部分溶融することを特徴とする、角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
〔2〕 上記電気炉酸化スラグが、構成鉱物として少なくともウスタイト及びマグネタイトを合量で30〜40重量%、ゲーレン石を30〜40重量%含有することを特徴とする、上記〔1〕に記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
〔3〕 上記電気炉酸化スラグのFe/Si比が、2.5〜4であることを特徴とする、上記〔1〕に記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
〔4〕 上記電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物との混合重量比が、10:1〜3:1であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
〔5〕 上記焼成炉における部分溶融温度が、1150〜1300℃であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
〔6〕 上記混合粉砕によって、電気炉還元スラグと角閃石系アスベスト含有物との混合物を最大粒径で100μm以下に粉砕することを特徴とする、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
〔7〕 上記混合粉砕に際し、ベントナイト懸濁水を添加することを特徴とする、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
〔8〕 上記ベントナイト懸濁水の濃度が2〜6重量%であり、上記電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物との混合物に、該ベントナイト懸濁水を略等重量添加することを特徴とする、上記〔7〕に記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
なお、本明細書において『最大粒径』とは、篩の残分が5重量%以内となる目開き寸法をいう。
上記した本発明に係る角閃石系アスベスト含有物の無害化方法によれば、1700℃程度の高温度でないと分解し難い角閃石系アスベスト含有物を1200℃程度の低温度で熱処理し無害化することができる。
より具体的には、アスベスト含有建材の廃材を加熱して無害化処理するに際し、該廃材に含まれるアスベストの種類を気にすることなく処理ができ、処理物中に未処理なアスベストが残存する危険性もなくなる。また、本発明においては、角閃石系アスベスト含有物の無害化に産業副産物である電気炉酸化スラグを用いるものであるため、その有効利用をはかることができる。更に、寸法や形状を制御すれば、焼成物は土工資材として種々活用することもできる。
以下、上記した本発明に係る角閃石系アスベスト含有物の無害化方法の実施の形態を、詳細に説明する。
本発明に係る角閃石系アスベスト含有物の無害化方法は、電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物とを湿式で混合粉砕し、該混合粉砕物を焼成炉に投入して部分溶融するものである。
電気炉酸化スラグは、概ね上記〔0006〕段に記載した化学組成を有するものであるが、本発明において用いる電気炉酸化スラグは、特に構成鉱物として少なくともウスタイト(FeO)及びマグネタイト(FeO・Fe23)を合量で30〜40重量%、ゲーレン石を30〜40重量%含有するものであることが好ましい。これは上記範囲の場合には、粉砕性や部分溶融時の反応性が良いためである。また、本発明において用いる電気炉酸化スラグは、Fe/Si比が2.5〜4であることがやはり粉砕性や部分溶融時の反応性の面で好ましい。これは、Fe/Si比が2.5に満たない場合には、Fe分の量比が小さく、角閃石系アスベスト含有物への混合量を大きくする必要が生じるために好ましくない。逆にFe/Si比が4を超える場合には、硬質となり粉砕性が悪くなるので好ましくない。かかる観点から、Fe/Si比は3〜4であることがさらに好ましい。
また、本発明においては、取扱性および角閃石系アスベスト含有物との混合粉砕性の観点から、最大粒径10mm以下の粒状の電気炉酸化スラグを用いることが好ましい。粒状の電気炉酸化スラグを得るためには、水砕法および破砕法の二つの方法がある。水砕法にあっては、電気炉酸化スラグの溶融物を高速回転する羽根付きドラムに注入し、該溶融物を該羽根付きドラムによって破砕粒状化し、粒状化した該溶融物を水ミスト雰囲気中で急冷改質処理する方法が採られる。このようにして得られた電気炉酸化スラグは、通常5mm以下の粒径を有し、粒径2.5mm以下のものは略球状のものとなる。破砕法にあっては、上記電気炉酸化スラグは溶融状態で耐熱容器中に所定の厚みに流し出され、上から水をかけることによって急冷改質処理が施される。この急冷によってスラグ溶融物は急速に硬化するが、この際自己破砕によって容器中のスラグ溶融物の厚さ程度の径を有するスラグ原塊が得られる。このスラグ原塊をジョークラッシャなどの破砕機によって破砕し、上記した所定粒径以下の電気炉酸化スラグとすればよい。
本発明において無害化するアスベスト含有物は、角閃石系アスベスト含有物であり、該角閃石系アスベストを含有する建築物への吹き付け用アスベスト材、石綿スレート、石綿セメント板、屋根瓦、樹脂製水道管、自動車のブレーキパッド、さらにはガスケット、シーリング材などの角閃石系アスベスト含有物建材などの廃材が主たる対象となる。これらに含まれるアスベストの主体が蛇紋岩系アスベストであろうと角閃石系アスベストであろうと特に差異はなく、角閃石系アスベストを含むものは全て本発明の対象となり得る。なお、これらの角閃石系アスベスト含有物は、大きな塊である場合、例えば石綿スレート、石綿セメント板などである場合には、破砕した後に上記電気炉酸化スラグとの混合粉砕が行われることが好ましい。角閃石系アスベストは蛇紋岩系アスベストと比べて構成成分にFe成分が多い〔(FeO+Fe2 3 )/SiO2 量比が蛇紋岩系アスベストがゼロに対し、角閃石系アスベストは0.12〜0.73程度である〕ので、反応系のFe成分を多くすることで、系に安定に存在する鉱物相が輝石類に変わるとともに、角閃石系アスベストは容易に分解しその成分は輝石類の成分となる。この際、形状も変わるので、アスベストの危険性は鉱物相及び形状の両面で改善され無害化できる。
上記角閃石系アスベスト含有物の破砕に際しては、粉塵の飛散防止処理を行った後に行うことが好ましく、この粉塵の飛散防止処理は、例えば、建築物に取り付けられた石綿スレート、石綿セメント板などである場合には、その解体時におけるポリマーエマルジョン、各種ラテックスなどの飛散防止剤の吹き付け処理が成されていればそれでもよいが、該飛散防止剤が乾いてしまい、再飛散が懸念される場合などには、破砕の直前において該角閃石系アスベスト含有物に対してあらためて粉塵の飛散防止処理を施すことが好ましい。
上記粉塵の飛散防止処理の方法としては、大きな塊である角閃石系アスベスト含有物をチクソトロピー性を有しているベントナイト懸濁水が入れられた水槽に浸漬する、あるいは角閃石系アスベスト含有物にベントナイト懸濁水を噴霧することにより行われることが好ましい。これは、ベントナイト懸濁水は、何ら角閃石系アスベスト含有物の破砕に支障を与えることなく、有効に破砕時における粉塵の飛散を防止することができるとともに、本発明は、この角閃石系アスベスト含有物の破砕後に、該破砕物と電気炉酸化スラグとを混合粉砕することを必須としており、この混合粉砕工程への搬送時、あるいは該混合粉砕時においても、飛散防止剤として用いた該ベントナイト懸濁水が有効に飛散防止剤として機能することとなるために好ましい。
なお、ベントナイト懸濁水が有するチクソトロピー性とは、剪断力が加わったときにはその溶液中の懸濁粒子の結合構造が破壊され、粘度が下がって流動化(ゾル化)し、静止状態になったときには速やかに構造を回復し、粘度が上がって固形化(ゲル化)する性質を言う。
粉塵の飛散防止処理が施された角閃石系アスベスト含有物は、破砕機などによって電気炉酸化スラグとの混合粉砕が容易な粒径にまで破砕される。破砕機としては、ロールクラッシャ、ジョークラッシャ、コーンクラッシャ、インパクトクラッシャ、ハンマークラッシャなどを用いることができる。角閃石系アスベスト含有物の破砕粒径は、取扱性および後の電気炉酸化スラグとの混合粉砕性の観点から、最大粒径10mm以下とすることが好ましい。
適度な粒径に破砕された角閃石系アスベスト含有物、あるいは破砕の必要がなかった例えば吹き付け用アスベスト材などの角閃石系アスベスト含有物は、上記電気炉酸化スラグと湿式混合粉砕される。この湿式混合粉砕する装置としては、湿式ボールミル、湿式ロッドミル、湿式振動ミル、媒体攪拌ミルなどを挙げることができ、これらの装置を単独で用いてもよく、また多段に構成してもよい。
上記電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物との湿式混合粉砕に際しての割合は、重量比で、電気炉酸化スラグ:角閃石系アスベスト含有物の比が10:1〜3:1が好ましい。これは、上記重量比よりも電気炉酸化スラグの割合が少ない場合には、角閃石系アスベスト含有物に対し十分なFe成分を反応系中に存在させることができず、後の焼成炉における部分溶融による角閃石系アスベストの分解による無害化がし難くなるために好ましくない。一方、角閃石系アスベスト含有物の混合割合が上記重量比よりも少ない場合には、効率的な角閃石系アスベスト含有物の無害化をはかることができない。かかる観点から、電気炉酸化スラグ:角閃石系アスベスト含有物の混合重量比は、7:1〜4:1がさらに好ましい。
また、上記電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物とを湿式混合粉砕することによる固形分の目標粉砕粒径は、最大粒径で100μm以下が好ましい。これは、上記粒径よりも混合粉砕物の最大粒径が大きい場合には、後の焼成炉における加熱によって該混合粉砕物が部分溶融し難く、角閃石系アスベスト含有量が多いと無害化に長時間を要し、また加熱温度を上昇させる必要が生じるために好ましくない。かかる観点から、混合粉砕による目標粉砕粒径は、最大粒径で75μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書においていう上記『最大粒径』とは、先にも記載したように、篩の残分が5重量%以下となる目開き寸法をいう。
上記電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物との湿式混合粉砕に際しては、単に水を添加して湿式混合粉砕してもよいが、アスベスト含有粉塵の飛散をさらに効果的に防止する観点、また混合粉砕後の取扱性および安全性の観点から、ベントナイト懸濁水を添加して湿式混合粉砕することが好ましい。これは、ベントナイト懸濁水を添加した状態で混合粉砕すれば、万一混合粉砕中に飛び出す飛沫があったとしても、微細なベントナイト粒子がアスベスト粒子を取り囲んで固定するので、アスベスト粒子そのものが飛散することはなく安全となる。また、混合粉砕後においては、該混合粉砕物を静止状態に保持した場合には、ベントナイトのチクソトロピー性によりゲル状態で混合粉砕物を固定することができ、その飛散を効果的に防止することができる。一方、ゲル状態の液に剪断力を加えることによりゾル化して流動化できるので、例えばポンプなどで吸引することにより効率的に該混合粉砕物を捕集あるいは搬送することができ、取扱性および安全性が良好なものとなる。上記ベントナイト懸濁水を調整する場合は、その濃度は2〜6重量%、好ましくは約3重量%である。また、ベントナイト懸濁水の添加量は、電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物との混合物に対し略等重量(ベントナイト懸濁水:電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物との混合物=1:0.9〜1:1.1)を添加することが好ましい。なお、〔0018〕段に示すような、ベントナイト懸濁水を用いて粉塵の飛散防止処理を行った角閃石系アスベスト含有物との混合物に対しては、ベントナイト懸濁水は添加量を調整して添加する。
上記のようにべントナイト懸濁水を添加して電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物とを湿式混合粉砕して得られた混合物粉砕物は、クリーム状のスラリーとなり、密閉容器などで容易に保管できる。またホースポンプ、モーノポンプなどで安全に搬送し易い利点がある他、電気炉酸化スラグ中のウスタイト及びマグネタイトの存在により、スラリー自体に磁性が付与され、飛散した飛沫を電磁石と言った吸引排気動作を使わない安全な方法で回収することもできる。
電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物との混合粉砕物は、焼成炉に投入されて部分溶融することにより無害化される。本発明において言う部分溶融反応とは、反応系の鉱物粒子同士が、その物理化学特性に応じて部分的に溶融して、互に反応しながら他の安定な鉱物相に変化する反応を言い、完全に溶融する場合に比べて格段にエネルギー消費量が少ない。また、焼成炉への投入方法としては、モーノポンプなどによる圧送がある。
焼成炉における部分溶融温度は、1150〜1300℃程度で十分である。本来、角閃石系アスベストを溶融分解させるためには、1700℃程度の高温で加熱処理する必要があるが、本発明においてはFe成分に富む電気炉酸化スラグの粉砕物とともに焼成するため、部分溶融した反応系中にはFe成分が多くなり、相平衡の原理(図1参照)に従って、反応系内で安定に存在する鉱物相が輝石類などに変わるため、1150〜1300℃の温度で、角閃石系アスベストは結合の要となるFe成分を放出して容易に分解し、その成分は輝石類などに変わるために無害化される。なお、角閃石系アスベスト含有物中に蛇紋岩系アスベストが混在していたとしても、上記温度で蛇紋岩系アスベストも分解されるため、何ら問題ない。
上記無害化に使用される焼成炉としては、部分溶融した混合粉砕物の転動によるクリンカリングが期待できるロータリーキルンが、処理能力及び既存設備の有効利用の観点からも好ましい。得られたクリンカ(部分溶融物)は、もはや無害であるため、サンドコンパクション、路盤材、埋め戻し材などの土工資材として各種の用途に有効に用いることができる。また、そのまま使用しても良いが、必要に応じて粉砕あるいは造粒し、粒度調整して用いてもよい。
試験例
以下、本発明を見出した試験例を記載する。
−使用材料−
・『電気炉酸化スラグ』
(A) T1社の産業副産物(ウスタイト及びマグネタイトの合計含有量35重量%,ゲーレン石含有量32重量%,Fe/Si=3.6,最大粒径10mm)
使用した電気炉酸化スラグ(A)の主な化学組成を表1にスラグ(A)として示す。また、X線回折分析結果を図2に示す。
(B) T2社の産業副産物(ウスタイト及びマグネタイトの合計含有量30重量%,ゲーレン石含有量29重量%,Fe/Si=2.3,最大粒径10mm)
使用した電気炉酸化スラグ(B)の主な化学組成を表1にスラグ(B)として示す。
Figure 2009006251
・『角閃石系アスベスト含有物』
(a) 九州産の緑色岩の破砕物(最大粒径8mm)
代替物として角閃石を多く含む天然岩(緑色岩)を用いた。なお、アスベストは天然の鉱物であって、岩石からこれを抽出・濃縮したものであり、角閃石を多く含む緑色岩は角閃石系アスベスト含有物と言えるものである。そこで、本試験においては、安全性を考慮し、角閃石系アスベスト含有物として緑色岩を用いた。この使用した緑色岩のX線回折分析結果を図3に示す。
・『ベントナイト懸濁水』(5重量%水溶液)
〔試験例1〕
ディスク振動ミル(川崎重工業社製、T−100)に、上記電気炉酸化スラグ(A)を23g、緑色岩を5g、ベントナイト懸濁水を25gそれぞれ投入し、5分間湿式混合粉砕を行った。
得られた混合粉砕物は、暗灰色クリーム状のスラリーであった。固形分の最大粒径(篩の残分が4重量%となった目開き寸法)は95μmであった。また、スラリーの顕微鏡写真によれば、針状物質が観測された。
得られたクリーム状のスラリー(混合粉砕物)を磁気皿に乗せ、電気炉(アズワン社製:HPM−1)にて、表2の条件で焼成した。
Figure 2009006251
〔試験例2〕
ディスク振動ミル(川崎重工業社製、T−100)に、上記電気炉酸化スラグ(B)を35g、緑色岩を5g、ベントナイト懸濁水を25gそれぞれ投入し、5分間湿式混合粉砕を行った。
得られた混合粉砕物は、暗灰色クリーム状のスラリーであった。固形分の最大粒径(篩の残分が3重量%となった目開き寸法)は95μmであった。また、スラリーの顕微鏡写真によれば、針状物質が観測された。
得られたクリーム状のスラリー(混合粉砕物)を磁気皿に乗せ、電気炉(アズワン社製:HPM−1)にて、上記表2の条件で焼成した。
〔試験例3〕
ディスク振動ミル(川崎重工業社製、T−100)に、上記電気炉酸化スラグ(A)を25g、緑色岩を10g、ベントナイト懸濁水を30gそれぞれ投入し、10分間湿式混合粉砕を行った。
得られた混合粉砕物は、暗灰色クリーム状のスラリーであった。固形分の最大粒径(篩の残分が3重量%となった目開き寸法)は50μmであった。また、スラリーの顕微鏡写真によれば、針状物質が観測された。
得られたクリーム状のスラリー(混合粉砕物)を磁気皿に乗せ、電気炉(アズワン社製:HPM−1)にて、上記表2の条件で焼成した。
〔試験例4〕
ディスク振動ミル(川崎重工業社製、T−100)に、上記電気炉酸化スラグ(A)を35g、緑色岩を5g、ベントナイト懸濁水を25gそれぞれ投入し、3分間湿式混合粉砕を行った。
得られた混合粉砕物は、暗灰色クリーム状のスラリーであった。固形分の最大粒径(篩の残分が4重量%となった目開き寸法)は150μmであった。また、スラリーの顕微鏡写真によれば、針状物質が観測された。
得られたクリーム状のスラリー(混合粉砕物)を磁気皿に乗せ、電気炉(アズワン社製:HPM−1)にて、表3の条件で焼成した。
Figure 2009006251
〔試験例5〕
ディスク振動ミル(川崎重工業社製、T−100)に、上記電気炉酸化スラグ(A)を23g、緑色岩を5g、ベントナイト懸濁水を25gそれぞれ投入し、10分間湿式混合粉砕を行った。
得られた混合粉砕物は、暗灰色クリーム状のスラリーであった。固形分の最大粒径(篩の残分が3重量%となった目開き寸法)は50μmであった。また、スラリーの顕微鏡写真によれば、針状物質が観測された。
得られたクリーム状のスラリー(混合粉砕物)を磁気皿に乗せ、電気炉(アズワン社製:HPM−1)にて、表4の条件で焼成した。
Figure 2009006251
−結 果−
各試験例において得られたクリンカ(部分溶融物)を粉砕したものの顕微鏡写真によれば、焼成前においては観測された針状物質は消失していた。また、試験例1のクリンカのX線回折分析結果を図4に示す。図3および図4から、緑色岩中に存在していた角閃石は分解し、輝石類に変化していることがわかる。他の試験例においても、緑色岩中に存在していた角閃石は分解し、輝石類に変化していた。
FeO−Fe23 −SiO2 系の相平衡図である。 試験に使用した電気炉酸化スラグ(A)のX線回折分析結果を示した図である。 試験に使用した緑色岩のX線回折分析結果を示した図である。 試験例1により得られたクリンカ(部分溶融物)のX線回折分析結果を示した図である。

Claims (8)

  1. 電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物とを湿式で混合粉砕し、該混合粉砕物を焼成炉に投入して部分溶融することを特徴とする、角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
  2. 上記電気炉酸化スラグが、構成鉱物として少なくともウスタイト及びマグネタイトを合量で30〜40重量%、ゲーレン石を30〜40重量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
  3. 上記電気炉酸化スラグのFe/Si比が、2.5〜4であることを特徴とする、請求項1に記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
  4. 上記電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物との混合重量比が、10:1〜3:1であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
  5. 上記焼成炉における部分溶融温度が、1150〜1300℃であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
  6. 上記混合粉砕によって、電気炉還元スラグと角閃石系アスベスト含有物との混合物を最大粒径で100μm以下に粉砕することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
  7. 上記混合粉砕に際し、ベントナイト懸濁水を添加することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
  8. 上記ベントナイト懸濁水の濃度が2〜6重量%であり、上記電気炉酸化スラグと角閃石系アスベスト含有物との混合物に、該ベントナイト懸濁水を略等重量添加することを特徴とする、請求項7に記載の角閃石系アスベスト含有物の無害化方法。
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