JP2008536889A - 負傷した動物の回復速度及び/又は創傷治癒速度を上げるための方法 - Google Patents

負傷した動物の回復速度及び/又は創傷治癒速度を上げるための方法 Download PDF

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Abstract

本発明は動物食品の分野に関し、特に負傷した動物のための食品に関する。驚くべきことに、ここで、負傷した動物の回復速度及び/又は創傷治癒速度は、該動物に一定量の天然免疫賦活成分、例えばベータ-グルカン及び/又は植物ホルモン、例えばオーキシン又はジベレリン酸を与えることによって増加し得ることが見出された。また、これらの物質の組み合わせ、特にベータ-グルカン及び植物ホルモンの組み合わせが、これら個々の成分単独と比べて動物の回復速度を向上させるという相乗効果を有することが示された。

Description

発明の詳細な説明
本発明は、動物性食品の分野、特に負傷した動物のための食品の分野に関する。本発明の食品は、負傷した動物の創傷治癒速度を上げる。
創傷治癒は、皮膚及び他の柔らかい組織への負傷に続く修復プロセスである。創傷治癒の徴候は、膨脹、硬直、圧痛、変色、皮膚緊張、痂皮形成、そう痒、及び瘢痕形成を含む。
創傷は外傷又は外科的切開から生じ得る。創傷は骨折又は出産からも生じ得る。さらに、皮膚潰瘍の1タイプである圧迫潰瘍(褥瘡性潰瘍又は床ずれとしても知られている)も、創傷とみなされ得る。創傷を治療する能力は、ひとつにはその深さ並びに個人の全体的な健康及び栄養状態に依存する。
負傷すると炎症反応が起こり、皮膚下の細胞(最も深い皮膚層)がコラーゲン(結合組織)生成を増加し始める。その後、上皮組織(外側の皮膚層)が再生される。食習慣の改善及び栄養及び草本補助剤は、これらの修復プロセスによるか、又は炎症の損傷効果を制限することにより創傷治癒の質を向上させ得る。
店頭販売されている局所用抗生物質、例えばネオスポーリン(Myciguent(登録商標))、バシトラシン(Baciguent(登録商標))、及び該2種とポリミキシンB(Neosporin(登録商標)、Polysporin(登録商標))の組み合わせを用い、皮膚感染を治療し且つ創傷治癒を促進する。処方用量の局所用抗生物質、例えばメトロニダゾール(MetroGel(登録商標))及びムピロシン(Bactroban(登録商標))は、感染を治療し且つ治癒を促進するのに必要となり得る。
他の治療法は、創傷を清潔、乾燥、及び遮蔽して保つことを含む。外科治療、例えば縫い合わせ及び損傷組織の除去が推奨され得る。
組織を構築及び修復するには、皮膚及び下にある組織が蛋白質からなるように、修復機構を活気づけるために適切な量のカロリー及び蛋白質が必要である。広範な負傷又は重大な外科手術からの主要な創傷は蛋白質及びカロリー要求を著しく上昇させ、軽症の最適な治癒は典型的な健康によい食習慣からの変化を必要としない1。皮膚潰瘍を有する栄養不良の人々の研究では、24%の蛋白質を含有する食事を与えられた人は、潰瘍のサイズを著しく減少させることが示され、14%の蛋白質を含有する食事を与えられた人は有意な改善を示さなかった2。この研究は、食事蛋白質の増加は栄養不良の人々における創傷治癒を向上できることを示している。同一の利益は、よく栄養を取っている人々で観察されるか否かは知られていない。
外科的処置の前及び後に、パイナップルの茎から生じる酵素であるブロメラインを補充すると、膨張、挫傷、治癒時間、及び疼痛を減らすことが示された3。ブロメライン補充はまた、男性ボクサーの柔らかい組織の負傷の治癒を促進することも示された4。これらの研究に用いられたブロメラインの量は、腸溶性錠剤の形態で1日当たり40mgを4回であった。腸溶性は、胃酸がブロメラインを部分的に破壊することを妨げる。現在最も有用なブロメライン製品は腸溶性ではなく、そのような製品が腸溶性ブロメラインと同様に有効であるか否かは知られていない。
チアミン(ビタミンB1)5、パントテン酸(ビタミンB5)6、及び他のBビタミン7は全て、動物研究で創傷治癒を担うことが示されている。このため、ヒト研究が不足しているが、数名の新しいヘルスケア開業医は創傷治癒を促進させるために高い有効性のBビタミン補助剤を推奨している。
ビタミンCは、皮膚、筋肉、及び血管を強化するコラーゲン(結合組織)を製造し、適切な創傷治癒を保証するのに必要である。深刻な負傷はビタミンC要求を増加し8、ビタミンC欠乏症は治癒を遅らせると考えられている9。予備的なヒト研究は、非欠乏症の人へのビタミンC補充が、手術、軽症、ヘルニア様内部椎間板、及び皮膚潰瘍を含む種々のタイプの創傷及び外傷の治癒を促進できることを示している10 11。1日当たり1-3gのビタミンC及び1日当たり200-900mgのパントテン酸の組み合わせは、皮膚組織を治癒する強度のわずかな改善を生じた12 13
亜鉛は、創傷を修復するのに必要なものをいくつか含む多くの酵素の成分である。亜鉛の軽い欠乏でさえ、日常的な組織損傷、並びにさらに重大な外傷からの最適な回復を妨害し得る14 15。ある管理下での治験は、外科的創傷の治癒時間が、硫酸亜鉛の形態で1日3回の亜鉛50mgを経口補充することにより43%減少することを見出した16
深刻な火傷及び他のタイプの負傷22を有する人の予備20及び管理21研究は、1日当たり10-30gのオルニチンアルファ-ケトグルタレート(OKG)の補充が著しく創傷治癒を向上させ、入院期間を減らすことを示した。重大な外傷及び手術からの治癒の改善はまた、1日当たり数グラムのグルタミンを含む経口補充で示された23
ビタミンAは創傷治癒で中心的な役割を担うが24、軽症に苦しんでいるがビタミンA-欠乏症ではない人における追加のビタミンAの効果は不明瞭なままである。ビタミンA補助剤は、動物研究において治癒を向上させることが示され25、コルチコステロイド療法を受けている人の皮膚損傷のための局所用軟膏に特に有用となり得る26。ヒトにおける研究はないが、数名の医師は、1日当たり25,000IUのビタミンAを手術前2週間から開始して手術後4週間続けることを推奨している。
動物研究は、ビタミンEを補充すると外科的創傷に続く望ましくない癒着の形成が減少し得ることを示した。さらに、創傷治癒は、ビタミンE-リッチな食事を与えられた動物の方が、標準的な食事を与えられた動物よりも迅速であった27。しかし、別の研究では、創傷治癒は大量のビタミンE(約35,000IUに相当)の補充により阻害された28。このビタミンEの副作用は、ビタミンAの補充により妨げられる。これらの研究とヒトに対する関連性は明らかではないが、多くの医師は、創傷治癒を強化し且つ癒着形成を妨げるためにビタミンA及びE両方の補充を推奨している。推奨される典型的な量は、1日当たり25,000IUのビタミンA及び1日当たり400IUのビタミンEであり、手術2週間前から開始して手術後4週間続ける。
ビタミンEの局所的投与は、時折手術後の瘢痕を予防又は治療するために推奨されているが、わずかに3つの管理下研究のみが報告されている。これらの治験の2つは手術後の瘢痕予防における効果を見出しておらず29 30、1つの治験は、ビタミンEがケロイドと呼ばれる広範な瘢痕におけるシリコン包帯の効果を向上させることを見出した31
銅は酵素リシルオキシダーゼのために必要な補因子であり、結合組織の架橋(及び強化)を担う32。医師はしばしば、創傷治癒を促進させるための総合的栄養プログラムの一部として銅補助剤を推奨している。推奨される典型量は1日当たり2-4mgであり、手術2週間前から開始して手術後4週間続ける。
他の微量ミネラル、例えばマンガン、銅、及びケイ素は、組織治癒の生化学に重要であることが知られている33 34 35 36。しかし、治癒速度におけるこれらのミネラルの経口補充の効果を調査する管理下治験は一つもない。
硫酸グルコサミン及び硫酸コンドロイチンは共に、人体に必要な原材料を与え、皮膚、腱、靭帯、及び関節で見出される結合組織を製造することにより、創傷治癒における役割を担い得る37。試験管及び動物研究は、これらの物質及びそれらに類似するその他が向上した組織治癒を促進し得ることを見出した38 39 40 41 42。人体におけるある管理下試験は、創傷が硫酸コンドロイチン含有粉末で局所的に治療されるときにより強く治癒することを見出した43。しかし、ヒトの創傷治癒のためのグルコサミン又はコンドロイチンの経口補充量の値を調査した研究はない。
アルギニン補充は動物の蛋白質合成を増加し、創傷治癒を向上させる44。2つの試みにより、1日当たり17-25gの経口アルギニンを投与された人では、外科的創傷における組織合成が増加することが示された45 46
カルノシンは、アミノ酸ヒスチジン及びアラニンからなる小さな分子である。カルノシンの正確な生物学的役割は完全には理解されていないが、動物研究はそれが創傷治癒を促進することを示している47
多くの草本が創傷治癒に有用となり得、任意の草本製剤が投与される前に創傷が適切に洗浄されることが重要である。これは感染を予防する。
皮膚炎症の動物研究では、局所的及び経口的アロエの両方が、炎症を減少させ且つ細胞修復を促進するのに有益であることが証明された48 49。局所的アロエはさらに、管理下ヒト研究における創傷治癒を容易にする50。しかし、ある管理下治験では、局所的アロエゲルは外科的創傷の従来の管理より劣っていた51
ある予備的な治験は、ゴツコラ抽出物が感染した創傷(それらが骨に達していない場合)を治癒するのに役立つことを見出した52。フランスの研究のレビューは、局所的なゴツコラが創傷に役立ち得ることを示している53。1種の研究は、ゴツコラ抽出物が広範な瘢痕(ケロイド)を予防及び治療するのに有用であることを見出した54。100%以下の全トリテルペノイドを含有するゴツコラの標準化抽出物が一般的に摂取され、1日当たり60mgを1度又は2度与える。動物研究は、アシアチコシド(asiaticosides)と呼ばれるゴツコラの成分が創傷治癒中の抗酸化レベルを増加し、結合組織の修復を容易にすることを示した55 56
セイヨウトチノキは抗炎症剤として作用し、且つ外傷、特にスポーツの負傷、手術、及び頭部の負傷後の浮腫(体液による膨脹)を減らすアエスチン(aescin)と呼ばれる化合物を含有する57。局所用アエスチン製剤は、スポーツイベント中の急性捻挫の治療のために欧州では一般的である。
コルチコステロイド及びアンチヒスタミンと組み合わされたカモミールの局所用製剤は、不適切な血行によって引き起こされる鬱血性潰瘍を有する高齢者58、並びに入れ墨を除去した人59の創傷治癒を促進させるのに用いられる。カモミール軟膏の局所的使用は単独で、寝たきりの高齢者における軽い鬱血性潰瘍を好結果で治療することが見出された60
蜂蜜の局所的投与は、古代から皮膚創傷治癒を促進するのに用いられている61。蜂蜜は、創傷感染に関与する数種の生物体の成長を阻害することが示されている62 63 64。ある予備的な研究では、従来の治療では治癒することができない大きな開放性感染創傷を有する9人の幼児を、蜂蜜の局所的投与により好結果で治療した65。新鮮な未加工の蜂蜜を、21日間1日に2度5-10mLの量で創傷に投与した。全ての幼児は5日後に著しい臨床的改善を示し、創傷は閉じて21日目まで感染はなかった。創傷を治療するための蜂蜜の使用は、医師によって管理されるべきである。
局所的に用いると、一部の開業医は、アルニカを最も傷に効く(創傷治癒)草本の中で有用であると考えている66。アルニカの局所的使用は、創傷治癒を向上させるために独国政府によって承認されている67。アルニカは内的に摂取すると有毒である。
キンセンカの花は、歴史的に創傷治癒に有益であると考えられ、天然殺菌剤として炎症を減らし且つ感染と戦う68。エキネシアのように、キンセンカは、独国で不十分な創傷治癒を治療するのに使用することが承認されている69。一般的に大さじ1杯(15g)のキンセンカの花を15分間温水に浸し、続いて布を該液体に浸して圧搾する。そのような湿布を少なくとも15分間、最初は1日当たり数回塗布し、続いて創傷改善と共に回数を減らすべきである。
伝統的な植物学者は、時折、創傷治癒を促進するためにオトギリ草、キンセンカ、カモミール、及びオオバコなどの草本の単独又は組み合わせ局所的使用を推奨している。ヒト臨床治験は、まだこの伝統的な習慣を確証していない。
エキネシアは漢方療法の欧州開業医の中で用いられて創傷治癒を促進し70、この使用のために独国政府によって承認されている71。クリーム又は軟膏を1日に数回軽症に投与する。
コンフリーは、該草本が局所的に投与されると激しく減少させ得る抗炎症特性を有する72。コンフリーはまた、局所用投与として従来の医療に広く用いられており、創傷治癒を助ける73。マンサクも局所的に用いられ、炎症を減少させて出血を止めることができる74。アメリカ先住民は、マンサクの葉及び樹皮の湿布を用いて、創傷、虫刺され、及び潰瘍を治療していた75。ツクシを内的及び局所的の両方で用い、炎症を減らし且つ創傷治癒を促進させることができる76
創傷治癒の速度を向上させ得る全てのこれらの生成物に関わらず、依然としてこの有益な方法で役割を担い得る別の生成物のための余地がある。
驚くべきことに、ここで、負傷した動物の回復速度及び/又は創傷治癒速度は、該動物に一定量の天然免疫賦活成分、例えばベータ-グルカン及び/又は植物ホルモン、例えばオーキシン又はジベレリン酸を与えることによって増加し得ることが見出された。また、これらの物質の組み合わせ、特にベータ-グルカン及び植物ホルモンの組み合わせ、さらに特にベータ-グルカン及び遊離IAAの組み合わせが、これら個々の成分単独と比べて動物の回復速度及び/又は創傷治癒速度を向上させるという相乗効果を有することが示された。
負傷した動物又は損傷した動物という用語は、ここでは例えば物理的外傷、例えば骨折、軽傷、体内損傷を受けた動物、又は最近出産をしたか手術を受けた動物を意味するために用いられる。細菌及び寄生虫などの微生物による感染もまた、本発明の製剤でより良く治癒することのできる創傷を引き起こし得る。
植物ホルモンは、ここでは植物成長及び発育を調整する役割を果たす分子として定義される。植物ホルモンと考えられる化合物は、例えば:インドール-3-酢酸(オーキシン)、サイトカイニン、ジベレリン、ジベレリン酸、エチレン、アブシジン酸である。さらに、ブラシノステロイド、ジャスモン酸及びサリチル酸が重要な成長調節活性を有することが示され、植物ホルモンとして機能すると考えられている。
特に良好な結果は、単独か又はベータ-グルカンと組み合わされた動物飼料に、共役IAAの代わりに遊離IAAが加えられたときに得られた。“遊離IAA”という用語は、ここでは遊離IAAが遊離又は酸形態であることを意味するために用いられ、“共役IAA”という用語は、エステル結合又はアミド結合を介して共役されているIAAを指す。
遊離IAA及び共役IAAは公知の化合物である。遊離IAAは、広く研究されている天然植物成長植物ホルモンである。植物では、IAAの大部分が共役形態で生じ(Slovin et al. 1999, Biochemistry and molecular biology of plant hormones, Elsevier, Amsterdam. P115-140)、エステル結合を介して糖に共役されているか、又はアミド結合を介してアミノ酸及びペプチドに共役されている。
遊離IAAは、市販の製品として容易に入手可能である。化学的に合成されても生物学的方法で調製されてもよい。IAA製造微生物は天然に広く存在する。酵母菌、真菌及び多くの細菌並びに植物は、IAAの前駆体を遊離IAAに転化することが知られている。細菌によるL-トリプトファン転化に加え、遊離IAAへのL-トリプトファン独立生化学的ルートも広く記載されている(J. Plant Growth Regul (2001) 20: 198-216)。
遊離IAAを製造することのできるよく知られている細菌は、Azospirillum Brasilense(AB)である。通常の発酵方法における成長期の終わりに、ABはL-トリプトファンを遊離IAAに転化することができる。この転化率を増加させるために、少量の合成遊離IAAを該培地に加えてよい。フィードバック機構により、ABは遊離IAAへのL-トリプトファンの転化を増加させる。
1gの遊離IAA/リットルの培養液の最終濃度を製造するのは容易であるが、用いた微生物に依存してさらに高い濃度も可能である。
発酵終了後、微生物を溶解してよく、遊離IAAが豊富な粉末は噴霧乾燥又は培養液を乾燥させる任意の他の従来技術によって得られ得る。他の技術を用いて液体を部分的又は完全に除去してもよい。
1956年というかなり前から人体における遊離IAAの効果が研究されており、0.1g/kgの単回投与は無毒性であることが示された(Mirsky A and Diengott D, Hypoglycemic action of indole-3-acetic acid by mouth in patients with diabetes mellitus, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 93: 109-110.1956)。1964年には、遊離IAAの光-酸化生成が微生物の成長阻害剤として作用することが見出された(Still C, Fukuyama T and Moyed H, Inhibitory Oxidation Products of indole-3-acetic acid, J. Biological Chemistry, 240.6,2612-2618,1964)。
また、遊離IAA及びその誘導体の一部の医療用途は以前から記載されている。欧州特許第1.296.676号明細書は、特に人の腫瘍性疾患を治療するための医薬品としての遊離IAAの使用を記載している。WO 02/080906は、女性の子宮内膜症を治療するための遊離IAAの使用を記載している。Nachsonら(Food and Chemical Toxocology 41, 745-752)は、ヒト前立腺癌細胞系におけるアポトーシスの増殖及び誘導における一部の遊離IAA誘導体(インドール-3-カルビノール及び3,3'-ジインドリルメタン)の効果を報告し、Rossiterら(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 12, 2523-2526)並びにFolkesら(Biochemical Pharmacology 63, 265-272)は、酵素-プロドラッグ指定癌治療における遊離IAA及び一部の誘導体の使用を記載した。
植物ホルモン及びベータ-グルカンは、動物における創傷治療の速度を向上させるための広い範囲の濃度で作用すると考えられる。最適な濃度は異なる種類の間でいくらか変化するが、当業者は所定種に最適な濃度を得る方法を知っており、例えば、該動物飼料への所望の化合物の滴定及びこれが最適な効果を有するときの試験による。以下を本方法の手引きとして用いてよい。
当業者は、飼料に用いるための遊離IAAを調整して、動物に有効量の遊離IAAを与える必要があることを理解する。飼料における遊離IAA濃度を調節し、遊離IAAの一定の一日摂取量を達成させるためには、動物又は動物群の飼料摂取量から見積もる必要がある。当業者は、特別な(種類又は群の)動物の飼料摂取量を知っており、典型的には、1日当たりの飼料摂取量は動物の体重の0.05〜10%であり、時折例外的に20%程度である。老いた動物は食べる量が少なくなる傾向があり、1日当たりにそれらの体重の0.1〜5%、典型的には1%の飼料摂取量を有すると考えられる。
負傷した動物がそれらの負傷からより良く且つ素早く回復するには、遊離IAAがそれらの1日摂取量が1日に生体重(life weight)1kg当たり0.004〜40mg(mg/kglw/日)の範囲であるようにそれらの飼料に与えられたときに見出された。コスト及び利益の間の最適値は0.04〜4mg/kglw/日の濃度で達成され、特に0.4mg/kglw/日の遊離IAAを含有する飼料が非常に有効であった。
従って、一つの特徴では、本発明は、負傷した動物体を治療するための方法であって、該動物に1日に生体重1kg当たり0.004〜40mg、好ましくは0.04〜4mg/kglw/日、さらに好ましくは0.4mg/kglw/日の遊離IAAを投与することによって創傷治癒を向上させる方法に関する。
遊離IAAを該動物に投与する1つの特に良好な方法は、飼料1kg当たり1〜100mg、好ましくは飼料1kg当たり10〜100mgの遊離IAAを含む動物飼料による。
従って、別の特徴では、本発明は、負傷した動物における創傷治癒の速度を上げるための薬剤の調製のための遊離IAAの使用に関する。好ましくは、該薬剤は、1日に生体重1kg当たり0.004〜40mg、好ましくは0.04〜4mg/kglw/日、さらに好ましくは0.4mg/kglw/日の遊離IAA、例えば1kg当たり1〜100mgの遊離IAAの一日摂取量を指示される治療に好適な濃度で遊離IAAを含む。
IAAを含む動物飼料は当技術分野で記載されており、例えば米国特許出願第2925341号明細書は、飼料1kg当たり10-50mgのインドール酢酸を含む飼料添加剤を開示している。
回復及び創傷治癒の速度を向上させる効果はまた、負傷した動物の飼料にジベレリン又はジベレリン酸が補充されたときにも観察された。ここで最適な濃度は、0.0004〜4mg/kglw/日の範囲内で見出された。負傷した動物の回復速度を向上させる効果は、特に0.004〜0.4mg/kglw/日の範囲のジベレリンであると表明された。最適な結果は0.01〜0.1mg/kglw/日、例えば0.04mg/kglw/日で達成された。
従って、一つの特徴では、本発明は、負傷した動物体を治療する方法であって、0.0004〜4mg/kglw/日、好ましくは0.004〜0.4mg/kglw/日、さらに好ましくは0.01〜0.1mg/kglw/日、例えば0.04mg/kglw/日のジベレリンを該動物に投与することによって創傷治癒を向上させ、及び/又は回復速度を向上させる方法に関する。
ジベレリンを該動物に投与する一つの特に良好な方法は、飼料1kg当たり0.1〜100mg、好ましくは飼料1kg当たり1〜10mgのジベレリンを含む動物飼料による。
従って、別の特徴では、本発明は、負傷した動物における創傷治癒の速度を増加させ、及び/又は回復速度を増加させるための薬剤の調製のためのジベレリンの使用に関する。好ましくは、そのような薬剤は、0.0004〜4mg/kglw/日、好ましくは0.004〜0.4mg/kglw/日、さらに好ましくは0.01〜0.1mg/kglw/日、最も好ましくは0.04mg/kglw/日のジベレリンの一日摂取量、例えば1〜10mg/kgの飼料を指示される治療に好適な濃度でジベレリンを含む。
ジベレリンを含む動物飼料組成物は、当技術分野で容易に入手可能である。米国特許出願第2943938号明細書及びSvihusら(Journal of Animal Science, 64, 1997, p257-272)は、組成物1kg当たり好適な量のジベレリン酸を含み得る動物飼料を記載している。
米国特許第6174541号明細書は、試験管における線維芽細胞の転移におけるIAA及びジベレリン及びそれらの誘導体の効果を記載した。ジベレリン以外のIAAが、試験管における線維芽細胞の転移に効果を有することが見出された。従って、我々の本研究で観察された効果は、線維芽細胞転移とは別の機構によって引き起こされるに違いない。
また、上記植物ホルモンの効果は、ベータ-グルカンの添加によって強化され得ることも見出された。特に、1,3及び1,6ベータ-グルカンは、負傷した動物の回復速度及び/又は創傷治癒速度を向上させるのに非常に有用であった。
負傷した動物に1〜1000mg/kglw/日の乾燥Agaricus blazei murillを与えると、負傷した動物の回復速度が向上する所望の効果を生み出すことが見出された。これは、約0.1〜100mg/kglw/日の1,3及び1,6ベータ-グルカンに相当する。優れた結果は1〜10mg/kglw/日の1,3及び1,6ベータ-グルカンを該動物に与えることで得られ、コストと利益の最適値は50mg/kglw/日の乾燥ABMに相当する約5mg/kglw/日で見出された。好ましくは、1,3及び1,6ベータ-グルカンは、精製された1,3及び1,6ベータ-グルカンである。
従って、一つの特徴では、本発明は、負傷した動物体を治療する方法であって、0.1〜100mg/kglw/日、好ましくは1〜10mg/kglw/日、さらに好ましくは5mg/kglw/日の1,3及び1,6ベータ-グルカンを該動物に投与することによって創傷治癒を向上させ、及び/又は回復速度を向上させる方法に関する。
1,3及び1,6ベータ-グルカンを該動物に投与する一つの特に良好な方法は、飼料1kg当たり0.05〜500mg、好ましくは飼料1kg当たり0.5〜50mg、例えば飼料1kg当たり1〜10mgの1,3及び1,6ベータ-グルカンを含む動物飼料による。
従って、別の特徴では、本発明は、負傷した動物における創傷治癒の速度及び/又は回復の速度を上げるための薬剤の調製のための1,3及び1,6ベータグルカンの使用に関する。好ましくは、該薬剤は、0.1〜100mg/kglw/日、好ましくは1〜10mg/kglw/日、さらに好ましくは5mg/kglw/日の1,3及び1,6ベータグルカンの一日摂取量を指示される治療に好適な濃度で1,3及び1,6ベータグルカンを含む。
そのような1,3及び1,6ベータグルカンの特に良好な供給源は、Agaricus blazei murill又は酵母菌細胞壁の調合物で見出され得る。
それとは別に、ベータ-グルカンを含む動物飼料調合物は、当技術分野で容易に入手可能である。文献WO 02/091850、WO 02/37988、WO 2004/066863、WO 2004/014320、米国特許第2004/097584号及び米国特許出願第5702719号明細書の全ては、本発明における使用に好適となり得るベータ-グルカンを含む動物飼料組成物を記載している。
驚くべきことに、植物ホルモンとベータ-グルカンの組み合わせが相乗効果を有することが観察された。該組み合わせ治療の効果は、個々の治療の結果から期待され得るものよりも優れているものと思われる。
従って結果として、本発明はまた、回復速度を向上させ及び/又は創傷治癒を促進させる負傷した動物の治療のための薬剤の調製のために上記物質のいかなる使用をも指す。
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実施例
実施例1
Azospirillum brasilence Sp7(ATCC)を、培養チューブにおいて寒天培養として得た。LB培地を用い、終夜28℃の175rpmで菌株を成長させた。グリセロールを10%まで該培養物に加え、混合し、及びNalgene creovials上で分割し、-80℃で凍結させた。系統は-80℃でcreovialsに保存した。
A. brasilenceの種培養物を調製するために、1つの系統(1.2〜1.8mL)を解凍して1リットルのLB培地に加え、約20時間28℃の175rpmで約2.5の光学密度(OD620nm)まで成長させた。
10リットルの発酵槽を水ですすぎ、pH電極を較正した。9リットルのLB培地を調製し、1g/LのL-トリプトファン及び0.1g/Lの遊離IAAを加えた。該培地を2mLの抗発泡剤と共に発酵槽に入れた。該発酵槽を30分間121℃で滅菌した。28℃に冷却後、O2プローブをN2及びO2で較正し、それぞれ0及び100%の空気飽和状態とした。
種培養物を、オートクレーブで別々に滅菌したフラスコ及びパイプで発酵槽に移した。添加が完了したら該パイプ及びフラスコを取り除き、発酵を以下のパラメーターで開始した:
攪拌器速度 400rpm
温度 28℃
通気 0.75Nl/分
PH 7
15分後、サンプルを取り出してOD620nmを測定し、pHを確認した。サンプルを一定間隔で取り出し、A. brasilenceの成長を定量した。成長速度を落とした追加の培地を加え、十分なバイオマスが遊離IAAの製造のために形成されることを保証した。遊離IAAの製造は、活性な成長段階が終わり、延長期間が続いたときに開始することが見出された。遊離IAA濃縮工程に続いてLC-MSを行う。遊離IAAの濃度が約1g/Lとなったとき、発酵が終了して細胞が収穫され、約1400barの非ジェット式ホモジナイザーを用いて溶解した。残りの上澄み液及び溶解した細胞を滅菌し、噴霧乾燥して所望の生成調合物を得た。
実施例2:ベータ-グルカンを含有する犬飼料の調製
5,0gの量の乾燥Agaricus Blazei Murill(Agaricus Farm)、自然源のベータ-グルカンを100mLのオリーブオイルに懸濁した。本発明の犬飼料は、1kgの市場で入手可能なRoyal Canin Mini Adult飼料を100mLのオイル懸濁液で真空含浸することによって調製した。対照飼料は、同量の飼料をオリーブオイルのみで真空含浸することによって調製した。
実施例3:植物成長ホルモンを含有する犬飼料の調製
40mgの遊離IAAに相当する実施例1に記載の噴霧乾燥調合物の一定量を、100mLのオリーブオイルに懸濁した。本発明の犬飼料は、1kgの市場で入手可能なRoyal Canin Mini Adult飼料を100mLのオイル懸濁液で真空含浸することによって調製した。対照飼料は、同量の飼料をオリーブオイルのみで真空含浸することによって調製した。
実施例4:ベータ-グルカン及び植物成長ホルモンを共に含有する犬飼料の調製
5,0グラムの量の乾燥Agaricus Blazei Murill(Agaricus Farm)、自然源のベータ-グルカン及び40mgの遊離IAAに相当する実施例1に記載の一定量の噴霧乾燥調合物を、100mLのオリーブオイルに懸濁した。本発明の犬飼料は、1kgの市場で入手可能なRoyal Canin Mini Adult飼料を100mLのオイル懸濁液で真空含浸することによって調製した。対照飼料は、同量の飼料をオリーブオイルのみで真空含浸することによって調製した。
実施例5 犬の回復速度の向上
実験装置を組み立て、本発明の食品の効率を試験した。大きな動物クリニックで、子宮腫瘍(pyometra)のために訪れた犬の全ての所有者に、二重盲目研究に参加するよう求めた。“子宮腫瘍”という用語は、腫瘍を意味するラテン語の“pyo”及び子宮を意味する“metra”から派生している。子宮腫瘍は、腫瘍化した膿感染子宮である。毒素及び細菌は子宮壁を通って血流に漏れ、生命を脅かす毒性効果を引き起こす。治療をせずに死は回避できない。
標準的には、患者は老いた雌犬である。通常は、該雌犬は1-2ヶ月前に熱サイクルを終えている。該雌犬は食欲が乏しく、過剰量の水を嘔吐又は飲用し得る。さらに通常の“開放性子宮腫瘍”では子宮頸部が開いており、化膿した子宮の中身が漏れ出し、臭い膣排出物が通常は見られる。
研究の対象動物には、実施例2、3又は4の回復飼料を与えた。対照グループには対照飼料を与えた。1年後、124匹の犬が研究に参加した。獣医師は犬の回復プロセスのアンケートに記入した。判断基準は、熱の消失速度、食欲の再発生、該動物の移動度及び活性度及び手術切開の事実上の治癒とした。これらの判断基準を1〜5のスケールで評点し、1は非常に遅く、5は非常に早いとした。これらの判断基準は手術後1、2、4及び7日後、及び3週間後に評点した。
研究の1年後、規約を解除して結果を分析した。実施例2及び3の飼料を与えられた動物が、対照飼料を与えられた動物よりも著しく優れているように思われた。3週間後、グループ間に何ら差異は見出せなかった。実施例4の飼料を与えられたグループは全ての他のグループの結果よりも優れており、それらの回復がかなり早かった。再び、3週間後に何ら差異は見出せなかった。
表1
Figure 2008536889
実施例6:ベータグルカンを含有する魚飼料の調製
3,0gの量のAgaricus Blazei Murill(Agaricus Farm)、自然源のベータ-グルカンを100mLのオリーブオイルに懸濁した。本発明の魚飼料は、1kgの市場で入手可能な(Coppens) Cyprico White 3mmのフローター(floater)飼料を100mLのオイル懸濁液で真空含浸することによって調製した。対照飼料は、同量の飼料をオリーブオイルのみで真空含浸することによって調製した。
実施例7:植物成長ホルモンを含有する魚飼料の調製
12mgの遊離IAAに相当する実施例1に記載の噴霧乾燥調合物の一定量を、100mLのオリーブオイルに懸濁した。本発明の魚飼料は、1kgの市場で入手可能な(Coppens) Cyprico White 3mmのフローター飼料を100mLのオイル懸濁液で真空含浸することによって調製した。対照飼料は、同量の飼料をオリーブオイルのみで真空含浸することによって調製した。
実施例8:ベータ-グルカン及び植物成長ホルモンを共に含有する魚飼料の調製
3,0グラムの量のAgaricus Blazei Murill(ABM、Agaricus Farm)、自然源のベータ-グルカン及び12mgの遊離IAAに相当する実施例1に記載の一定量の噴霧乾燥調合物を、100mLのオリーブオイルに懸濁した。本発明の魚飼料は、1kgの市場で入手可能な(Coppens) Cyprico White 3mmのフローター飼料を100mLのオイル懸濁液で真空含浸することによって調製した。対照飼料は、同量の飼料をオリーブオイルのみで真空含浸することによって調製した。
実施例9:創傷の回復速度を向上させるための、ベータ-グルカン及び植物成長ホルモンを含む魚飼料の使用
全体重が約50kgの鯉50匹が全てに入っているそれぞれ40立方メートルの4つの池を用いて、創傷治癒における本発明の魚飼料の効果を確認した。対照として用いた1つの池(池1)では魚に対照飼料を与え、他の池の魚には上記実施例6〜8で調製された本発明の飼料を与えた。
対照池の魚に、1日当たり10gのCyprico White 3 mmフローター飼料を与え、他の池の魚には、実施例2、3及び4に記載の10gの飼料を与えた(表2)。全ての魚の約10%が寄生虫による創傷を受けていた。
獣医師は、魚の回復プロセスに関するアンケートに記入した(表3)。判断基準は創傷の消失速度とした。この判断基準は1〜5のスケールで評点し、1は非常に遅く、5は非常に早いとした。これらの判断基準は飼料を与えて1、2、4、7及び21日目に評点した。
表2
Figure 2008536889
表3
Figure 2008536889

Claims (10)

  1. 動物に有効量の植物ホルモンを投与することによる、該動物体の回復速度及び/又は創傷治癒速度を向上させるための方法。
  2. 植物ホルモンが遊離IAAである、請求項1記載の方法。
  3. 遊離IAAが、1日に生体重1kg当たり0.004〜40mg、好ましくは0.04〜0.4mg/kglw/日、さらに好ましくは0.4mg/kglw/日の投与量で投与される、請求項2記載の方法。
  4. 植物ホルモンが、ジベレリン又はジベレリン酸である、請求項1記載の方法。
  5. ジベレリン又はジベレリン酸が、0.0004〜4mg/kglw/日、好ましくは0.004〜0.4mg/kglw/日、さらに好ましくは0.01〜0.1mg/kglw/日、例えば0.04mg/kglw/日の投与量で投与される、請求項4記載の方法。
  6. 植物ホルモンが1,3-1,6ベータ-グルカンで補充される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. ベータ-グルカンが、0.1〜100mg/kglw/日、好ましくは1〜10mg/kglw/日、さらに好ましくは5mg/kglw/日の投与量で投与される、請求項6記載の方法。
  8. 動物における回復速度及び/又は創傷治癒速度を向上させるための薬剤の調製のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の動物飼料の使用。
  9. 飼料1kg当たり1〜100mgの遊離IAA及び飼料1kg当たり0.05〜500mgのベータ-グルカンを含む、動物飼料。
  10. 飼料1kg当たり0.1〜100mgのジベレリン及び飼料1kg当たり0.05〜500mgのベータ-グルカンを含む、動物飼料。
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