歯科医学において、印象は完全もしくは部分的な義歯といった歯の構造の復元に備えて無歯の患者の顎および歯肉領域の陰型を形成するために使用されることが多い。満足な印象を得るために歯科技工士または歯科医(以下「オペレータ」と記載する)の手腕は、成形可能な材料(以下「印象材料」と記載する)と組み合わされて使用される歯科印象トレイによって影響される(以下「歯科印象トレイ」または「歯科トレイ」のいずれかで記載される)。
印象の正確さは、歯科トレイが患者の口腔にどのくらいうまく収容されるかに依存する。より正確な印象を取るために、多くの種類の歯科トレイが開発されてきた。それらのいくつかは、多くの用途のために設計されており、標準歯科トレイと呼ばれる。いくつかの歯科トレイは、患者の口の一端のみのために設計された歯科トレイといった単一の目的のために特に設計されている。ある歯科トレイは、2002年10月1日に発行された米国特許第6457973号(Fetz他)に開示されているような少なくともいくつかの歯を依然として有する患者に使用されるように設計されている。また或る歯科トレイは、2002年8月6日に発行された米国特許第6428315号(Prestipino他)に開示されたような、1つの歯科トレイが患者の多くにフィットするように調整可能である。2003年11月4日に発行された米国特許第6641393号(Trichas)に開示されるように、いくつかの歯科トレイは、患者の口腔にトレイを挿入した後に、印象材料が歯科トレイを介して患者の口腔に配置されるように設計されている。強化トレイ(enhanced tray)と呼ばれる歯科トレイは、印象を取るのを助けるために、患者の舌を持ち上げて顎から離すのを助けるより大きな装置である。従来の技術において非常に一般的な歯科トレイは、印象を取る間に、印象材料を歯科トレイに保持するのを助けるために接着剤を使用する必要がある。接着剤は、臭気があり、味も悪く、その使用は患者を不快にさせる。
従来の技術の各種トレイは、正確な印象を取るためにある問題に対処する一方、新たな問題を作り出したり、今日の幅広い種類の印象材料とうまくあわなかったりする。問題の一つとしては、従来の技術では、余分な印象材料が患者の喉の後方に押し出され、不快感や時には吐き気を引き起こすことである。別の問題は、従来の技術は無歯の患者の顎および歯肉領域の解剖学的構造に適合するようには構成されていないということである。これにより、歯科トレイが患者の顎および歯肉領域を変形させ、正確な印象を妨げる結果となり、妥当な印象を取るために過剰な印象材料を使用しなくてはならない結果にもなり、患者の不快感および吐き気を催させる。更に別の問題は、従来の技術は、歯科トレイの開口部が小さすぎるかまたは大きすぎるため、その密度において非常に軽量なものから非常に重いものまで今日利用可能なすべての範囲の印象材料にはうまく適合しない。歯科トレイが小さい開口部を備えている場合、この歯科トレイは、中程度から非常に重い(密度が大きい)印象材料をうまく分配することができない。歯科トレイが大きな開口部を備えている場合、この歯科トレイは超軽量なものから中程度の密度の印象材料をうまく分配することができない。このことにより、他の種類の印象材料または異なる種類の印象材料の組合せがよりよい結果となる場合にも、オペレータは歯科トレイとうまく合う印象材料を使用することとなる。更に別の問題は、従来の技術は患者の口内に歯科トレイおよび印象材料を配置させるために歯科トレイに圧力を均一に加える手段を具備しないことである。歯科トレイおよび印象材料を患者の口内に挿入するときに、オペレータは顎および歯肉領域の周囲にそれらを配置させるためにトレイを押圧しなくてはならない。先行技術はこの圧力を歯科トレイに均一に分配する方法を提供せず、歯科トレイはこの圧力が加えられる地点により深く不適切に配置されることが多く、不正確な印象がなされてしまう。また別の問題は、患者の口内に歯科トレイおよび印象材料を配置し、これら歯科トレイおよび印象材料を配置させるために歯科トレイに圧力を加える間、オペレータが人間工学的に正確な位置に手、手首、腕を保つことができる方法を先行技術は提供していないということである。これは、オペレータの疲労、不快感、および作業性の低下を導くのはまだ良いほうで、手、手首、腕を苦しい位置に繰り返し置かなくてはいけない状況の中でオペレータに障害を与える可能性もある。
よって、下記の方法により、無歯の患者の顎および歯肉領域の正確な印象を提供する新規かつ改良された歯科トレイのニーズがある。その方法とは、患者の顎および歯肉領域が歯科トレイおよび印象材料によって変形または影響されないように、かつ印象工程の間に印象材料が歯科トレイによって接着剤を使用すること無しに保持されるように無歯の患者の口に解剖学的により密に適合させることと、印象を取るために最良の印象材料または印象材料の最良の組合せを使用することができるように今日利用可能な印象材料の全範囲の使用を可能にすることと、患者の少ない不快感で正確な印象を取るために印象材料が患者の口内に正しく配置されるように歯科トレイに均一に圧力を伝達する手段を提供することと、無歯の患者の歯の印象を取る工程の間に患者の口内に歯科トレイおよび印象材料を配置して患者の口内に歯科トレイおよび印象材料を配置させる間にオペレータが人間工学的に正確かつ快適な位置に手、手首、腕を保つことができる歯科トレイ提供することである。
本発明の目的は、無歯の患者の口の顎および歯肉領域の正確な印象を取るための新規な歯科トレイを提供することである。また、この歯科トレイは、印象工程の間に患者の顎および歯肉領域が歯科トレイによって変形されたり影響をされたりしないようすることである。さらに、印象材料を保持するのを助けるために歯科トレイ上に接着剤を使用する必要無しに印象材料が歯科トレイによって保持されるように無歯の患者の顎および歯肉領域の解剖学的な形状に適合する所定の形状を有する。
本発明の別の目的は、無歯の患者の口の顎および歯肉領域の印象を取るための新規な歯科トレイを提供することである。また、この歯科トレイは、密度において超軽量なものから非常に重いものまで全ての範囲の印象材料と共に使用することができ、かつ正確な印象を取るために異なる密度の歯科印象材料の組合せと共に使用することができるものである。
本発明の更に別の目的は、無歯の患者の口の顎および歯肉領域の印象を取るための新規な歯科トレイを提供することである。また、この歯科トレイは、患者への不快感が少なくてかつ正確な印象を取るために歯科トレイと印象材料の組合せが患者の口内に正しく配置されるようにオペレータによって与えられた圧力が歯科トレイに均一に伝達する手段を具備するものである。
本発明の上記目的を達成するために、この新規なトレイは、本体と、少なくとも2つの指受け部と、取手とを備えている。本体は前端(以下、本体前端)と後端(以下本体後端)とを有している。取手は、印象材料が歯科トレイの本体に与えられたときに、歯科トレイを患者の口に挿入または患者の口から取り外すために使用することができるように、本体前端に取り付けられており、オペレータの指の自由を奪うことなくオペレータが歯科トレイの配置をうまく行うことができるように十分に細い。各指受け部は、本体の底面に沿って長手方向に配置されており、具体的には、各指受け部に加えられる圧力がその指受け部の長さ方向に沿って本体に均一に伝達するように本体に配置されている。各指受け部の長手方向の長さは、オペレータの異なる大きさの指がその指受け部に沿ってどこにでも適合できる長さである。本体、取手、各指受け部の組合せが歯科トレイを形成するように、各指受け部は取手に連結されており、この取手も本体に取り付けられている。
本体は、直立外壁部と、溝部と、中央支持部とを備えており、中央支持部は無歯の患者の顎および歯肉領域の解剖学的な形状に適合する所定の形状と、複数の開口部(以下、本体開口部)と有している。本体の形状は、無歯の患者の顎および歯肉領域の解剖学的な形状に実質的に近似しており、本体が、印象材料を流出させること無く、かつ顎および歯肉領域に影響するかまたはこれらを変形すること無しに幅広い範囲の印象材料を保持することができるように設計されている。複数の本体開口部は、複数のダンベル形状の本体開口部と、複数の円形状の本体開口部とを備えている。複数のダンベル形状の本体開口部は、様々な大きさおよび方向を有しており、複数の円形状の本体開口部は所定の大きさを有している。ダンベル形状の本体開口部および円形状の本体開口部は本体の所定の位置に設けられている。これらの開口部の組み合わせによって、印象材料が顎および歯肉領域の印象を取るために最小の抵抗でこれらの開口部を通して排出することができ、一方、印象材料の歪曲を防ぐために硬化されるまで印象材料を保持するように作用する。本発明の別の実施例において、本体は厚肉縁部と複数の縁部切り欠きとを備える。厚肉縁部は、所定の直径を有する略円形状であると共に、患者の口の解剖学的な特徴を捉えるために本体の直立外壁部と溝部と中央支持部の外縁に沿って形成されており、一方、複数の縁部溝が、印象材料の歪曲を防ぐために硬化されるまで厚肉縁部上に印象材料の層を保持するために更なる表面領域を提供する。これらの特徴により、密度において軽量なものから非常に重いものまで幅広い範囲の印象材料をうまく使用することができる。
本発明において記載された新規な歯科トレイは、歯のないあるいは歯冠のない無歯の患者のためのものである。歯科トレイは、無歯の患者の顎および歯肉領域の解剖学的な形状に適合する所定の形状を有するように設計されており、印象材料の流れを妨げたり流出させたりすること無しにかつ顎および歯肉領域に影響したりこれらを変形したりすること無しに歯科トレイが印象材料を保持することができ、印象材料によって顎および歯肉領域の印象を取ることができる。歯科トレイはこれらの特徴によって、本体が、密度において超軽量から非常に重い幅広い範囲の印象材料をうまく使用することができる。歯科トレイは、歯科専門家が入手できる超軽量なものから非常に重いものまで全ての範囲の印象材料の任意の一つまたは異なる密度の印象材料の任意の組合せを保持するためのキャリアとして機能する。複数のダンベル形状の本体開口部と複数の円形状の本体開口部の組合せによって、印象材料が顎および歯肉領域の印象を取るために最小の抵抗でこれらの開口部を通して排出することができ、一方、印象材料の歪曲を防ぐために硬化されるまで印象材料を保持するように作用する。本体の曲線的な厚肉縁部によって、印象材料が無歯の患者の解剖学的な特徴を捉えることができ、縁部溝が厚肉縁部および本体上の印象材料の層を硬化するまで保持するのを助ける。特殊な指受け部の開発によって、患者の口内にトレイを均一に配置することがで、一方、オペレータは手、手首、腕を人間工学的に正しい位置に保つことができる。この歯科トレイは、最も多くの無歯の患者に適合する様々な大きさで形成されている。この歯科トレイは、金属や、別の金属でメッキされた金属や、成形可能なプラスチック材料から形成することができる。成形可能なプラスチック歯科トレイの肉厚は、本体の所定の形状のオペレータによる局所的な作り直しを歯科用バーでの切削または火で加熱することによってなされ、患者の顎および歯肉領域によりフィットするように個別に合わせた歯科トレイを形成するために再成形することができるように決められる。本発明はユニークである。なぜなら、無歯の患者の解剖学的な形状に密に適合するように形成されており、トレイの本体に異なる形状の孔の組合せを使用している。また、成形可能なプラスチック材料から形成された場合には歯科トレイの本体は局所的にその形を作り直することができる。そして、印象材料が患者の顎および歯肉領域を変形せずに、無歯の患者の口の解剖額的な形状を捉えることができるように、縁部に溝を備えた曲線的な厚肉縁部を備えている。正確な印象を取るために歯科トレイを均一に配置させる各指受け部を使用する。オペレータが印象工程の際に歯科トレイおよび印象材料を挿入、配置、保持する間に、人間工学的に正しい位置に、オペレータの手、手首、腕を保つことができるように取手と各指受け部の組合せが協調している。また、歯科トレイと共に使用することができる印象材料の種類を制限することなく印象を取るために最小限の印象材料を使用できるためである。
本発明の他の特徴、態様および利点は下記の記載と添付の図面を参照にしてより十分に理解されよう。
図では同じ番号は同じ要素を示しており、特に図1を参照にすると、歯科印象トレイ10の上面図が示されている。これは、無歯の患者の口の顎および歯肉領域の印象を取るための印象材料または複数の印象材料の組合せと組み合わされて使用される。(印象材料は図示されていない。)図1〜12に示されるように、歯科印象トレイ10は本体12と、少なくとも2つの指受け部26と、取手14を備える。図1に示されるように、本体12は本体前端28と、本体後端30と、本体12の所定の形状と、複数の本体開口部16とを有している。図1〜6は本発明の一実施例を示しており、図7〜12は本発明の第2の実施例を示している。本体12の所定の形状は無歯の患者の口の解剖学的な形状に適合し、顎および歯肉領域の全体に配置される一方、印象材料を保持するように寸法決めされて形成されている。
歯科印象トレイ10は、様々な材料から作ることができ、例えば、金属や、別の金属でメッキされた金属(クロムでメッキされた鋼もしくはステンレス鋼でメッキされた鋼など)や、プラスチック材料でコーティングされた金属(高分子もしくは樹脂材料でコーティングされた鋼など)や、熱成形可能なプラスチィック材料(高分子もしくは樹脂など)等である。本発明の好適な実施例において、歯科印象トレイ10は熱可塑性高分子材料から作られており、好適な熱可塑性高分子材料はポリスチレンである。
本体12が患者の口によりフィットするようにオペレータが歯科印象トレイ10の本体12の形状を局所的に作り直すことができるようにすることが望ましい。本体12は2ミリ〜4ミリの隙間(クリアランス)を空けて無歯の隆起に快適にフィットすべきである。この隙間を得るために本体12の形を作り直すことができることは、正確な印象を取るために極めて重要である。従来技術では、歯科トレイの本体の形は作り直すことができない。なぜなら、それらは金属から作られているか、再形成のための再加熱ができないプラスチック材料から作られているか、加熱もしくは再成形するには薄すぎるか厚すぎる本体の厚みを備えるプラスチックから作られているからである。加熱成形可能なプラスチック材料(例えばポリスチレン材料)のために、0.072〜0.094インチの厚みを備える本体12が下記の方法によってその形を作り直すことができる。(1)本体12において、制御された状態でその形を作り直す必要のある部分を裸火で加熱することと、(2)本体12がまだ暖かいうちにオペレータの指で本体12の加熱された部分を再成形することと、(3)本体12が再び固まるまで冷水の器に本体12を配置することによって本体12をその新しい形で固まらせることである。本体12の厚みが0.072インチ未満である場合、本体12が加熱されたときに折り重なったり新しい再成形位置に保持されない傾向にあるため、手作業で再成形することに耐えられず、本体12が0.094インチより厚い場合、本体12をオペレータの指だけで適切に調整することができるほど十分均一に加熱することができないことが分かった。本体12の厚みは、本体12を削って本体12の形を作り直すオペレータの手腕にも影響する(歯科用バーといった外部カッターがその切削(トリミング)を行う)。本体12が薄すぎる場合、オペレータは本体12をすぐに思ったよりも多く切削してしまい、その歯科トレイは廃棄となってしまう。本体12が厚すぎる場合、オペレータはその材料を切削するためにより多くの時間を費やさなくてはならず、十分に除去することができない恐れがある。熱成形可能なプラスチック材料(ポリスチレン材料等)で本体12の0.072インチ〜0.094インチの厚みは、本体12の形を作り直すために歯科用バーがプラスチック材料を容易に除去することができる妥当な厚みであった。
成形可能なプラスチック材料(ポリスチレン材料等)から作られ、0.072インチ〜0.094インチの厚みを有する本体12は、以下の方法によってその局所的な形の作り直しが可能になる。その方法は、(1)本体12を加熱および再成形すること(加熱は外部加熱ソース(裸火等)でなされる)、または(2)本体12の形の作り直しによって本体12の所定の形状を患者の顎および歯肉領域に特に適合するように修正することができ、印象を取るために歯科印象トレイ10が印象材料と共に使用されるときに患者の口の顎および歯肉領域の変形を防ぐことができるように本体12を切削する(切削は外部カッター(歯科用バーなど)によってなされる)ことである。
図1、2、5、6、7、8、9、11、12に示されるように、本体12は直立外壁部40と、溝部36と、中央支持部38とを備えており、直立外壁部40は本体12を形成するために溝部36によって中央支持部38に連結されている。直立外壁部40は、外壁部40の頂縁部に沿って設けられた第1の壁部切り欠き44と第2の壁部切り欠き46と第3の壁部切り欠き48とを有し、第1の壁部切り欠き44、第2の壁部切り欠き46、第3の壁部切り欠き48は患者の顎領域の筋肉付着部に適合する。第1の壁部切り欠き44、第2の壁部切り欠き46、第3の壁部切り欠き48は略V字型である。第1の壁部切り欠き44は、直立外壁部40の本体前端28の中央に位置する。第2の壁部切り欠き46および第3の壁部切り欠き48は、本体前端28と本体後端30との間の距離の約三分の一の距離に直立外壁部40の側部に位置しており、第2の壁部切り欠き46と第3の壁部切り欠き48は本体後端30よりも本体前端28に近い。中央支持部38は本体後端20で実質的に湾曲した端部を有している。図1に示される中央支持部38の実質的に湾曲した端部は上顎の機能上の硬・軟口蓋喉を捉えるためである。図7〜12に示される中央支持部38の実質的に湾曲した端部は、下顎の舌下腺(sublingual gland)および脂肪組織に適合し、顎舌骨(mylohyoid)の空間を捉えることを可能にする。図1〜12に示されるように、(1)第1の壁部切り欠き44と、第2の壁部切り欠き46と、第3の壁部切り欠き48とを備える直立外壁部40と、(2)溝部36と、(3)本体後端30に湾曲した端部を備える中央支持部38との組合せは、所定の形状を備えると共に複数の本体開口部16を備える。所定の形状は、無歯の患者の口の解剖学的な形状に適合し、印象材料を保持する一方、顎および歯肉領域全体に配置されるように寸法決めされている。
図1〜12に示されるように、直立外壁部40、溝部36、中央支持部38は、複数の本体開口部16を備える。これら複数の本体開口部16は複数の略ダンベル形状の開口部18と、複数の略円状の開口部20とを備えている。ダンベル形状の開口部18は、歯科印象トレイ10における位置によって様々な大きさおよび方向を有する。円形状の開口部20は、本発明の一実施例として図1〜6に示され、また別の実施例として図7〜12に示されるような所定の大きさを有する。図1〜12に示されるように、ダンベル形状の開口部18および円形状の開口部20は、直立外壁部40、溝部36、中央支持部38に印象材料または複数の印象材料の組合せを保持することができる。また、ダンベル形状の開口部18および円形状の開口部20の大きさ、形状、位置の組合せが直立外壁部40、溝部36および中央支持部38と協調するように直立外壁部40、溝部36および中央支持部38の所定の位置に配置されている。(1)顎および歯肉領域に存在し得る空間に印象材料が容易に流れ込むように従来技術よりも開口部を多くし、かつ大きくすることによって印象材料または複数の印象材料の組合せをダンベル形状の開口部18および円形状の開口部20を通して排出することができる。そして、患者の顎および歯肉領域の印象を取る。(2)接着剤の使用無しで印象材料または複数の印象材料の組合せのためにより大きな表面領域を提供する。特に、ダンベル形状の開口部18および円形状の開口部20の組合せは、ポリビニルシロキサン印象材料に「ロック」するように設計されており、臭気があり不味いトレイ接着剤の使用を不必要なものにする。
図1〜12に示されるように、直立外壁部40、溝部36、中央支持部38は、これらの外縁部に沿って設けられている厚肉縁部22を有する。厚肉縁部22は、歯科印象トレイ10上の印象材料の保持性を改善すると共に顎および歯肉領域への圧力を減少させるようにより多くの表面領域を提供するため、厚肉縁部22の直径が本体12の厚みより僅かに大きくなるように略円形状であって所定の直径を有する。厚肉縁部22は、本体12に印象材料を保持する間、不要な圧力をかけずに無歯の尾根状の隆起部およびその周辺の解剖学的な構造の全範囲を捉えるように設計されている。最高の結果が得られるのは厚肉縁部22の直径が0.075インチ〜0.142インチであって、これにより印象を得るために厚肉縁部22上に印象材料の層を保持するように、厚肉縁部22が本体12ならびに印象材料および複数の印象材料の組合せと協調する。
図1〜12に示されるように、厚肉縁部22は複数の縁部切り欠き24を備えている。この複数の縁部切り欠き24は、厚肉縁部22の内部および外部の所定の位置で厚肉縁部22に直角になるように設けられており、厚肉縁部22上に印象材料の層を保持するために付加的な表面領域を提供することによって本体12上の印象材料を保持するように厚肉縁部22および印象材料と協調する。
図2、3、4、5、8、9、10、11に示されるように、歯科印象トレイ10は少なくとも2つの指受け部26を備えている。各指受け部26は、患者の顎および歯肉領域に配置される溝部36の底部に実質的に位置しており、本体12の溝部36の外部に長手方向に設けられた略方形の隆起であると共に、各指受け部26上に与えられた圧力がその長さ方向に沿って本体12に均一に伝達するように本体12の溝部36に位置決めされている。各指受け部26は取手14に連結されており、この取手14は更に溝部36を支持しており、取手14と各指受け部26が協調し、顎および歯肉領域が歯科印象トレイ10と印象材料もしくは複数の印象材料の組合せとの組合せに係合するのに使用される機構を提供する。各指受け部26は、異なるオペレータの指の長さに適合するために溝部36の底部の全長に亘って配置されている。例えば、オペレータの指が短い場合、その指を指受け部26の本体前端28に近いところに置くことができ、オペレータの指が長い場合、その指を指受け部26の本体後端30に近いところに置くことができる。各指受け部26は、オペレータによって各指受け部26に加えられた圧力を歯科印象トレイ10上に均一に分配するように設計されており、無歯の患者の口の顎および歯肉領域の周辺に歯科印象トレイ10と印象材料とを正確に配置させる。各指受け部26は、最適な安定化のための圧力をオペレータの指から歯科印象トレイ10に伝達でき、一方、オペレータがその手、手首および腕の人間工学的に正しい位置を維持することができるように設計されている。
図2、3、8、9に示されているように、取手14は本体前端28で本体12に取り付けられている。図2および8に示されているように、取手14は、寸法“A”によって示される所定の幅寸法を備えている。図3および9に示されているように、取手14は、寸法“B”によって示される所定の長さ寸法を備えており、かつ寸法“C”によって示される所定の偏位寸法を備えており、この偏位寸法は本体12の底部の取手14が本体12に取り付けられている箇所と、取手14の底部との間の距離である。
従来の技術の取手の位置および大きさは、正確な印象を取るための障害となり、それは、これらの取手は、(1)歯科印象を取る工程においてオペレータが歯科用トレイおよび印象材料を患者の口内に配置する間と、歯科印象トレイおよび印象材料を患者の口内に配置させる間に手、手首、腕を不適当かつ不快な位置に配置させ、時が経つにつれてオペレータに障害を与える可能性があり、(2)オペレータが歯科トレイおよび印象材料の配置を試みるときにその指を閉じ込めたり、ブロックしたりするほど歯科トレイが幅広く、(3)患者の唇を変形させ、オペレータが正確な印象を取るのを妨げ、患者の唇に圧力を与えるときに患者に不快感を与え、(4)歯科トレイおよび硬化した印象材料を除去するのにオペレータが十分な時間をかけることができず、印象の損傷または歪曲を引き起こす恐れがあるからである。
理想的には、歯科印象トレイ10および印象材料を配置するための圧力を加えるために、オペレータが歯科印象トレイ10の底部に届くことができるように、取手14の幅寸法はオペレータの指の間にフィットするように十分細い必要がある。一方、印象材料を保持しつつ歯科印象トレイ10を挿入し、取り外すために使用できるように十分幅広い必要もある。取手14の長さ寸法は、歯科印象トレイ10および印象材料を挿入し、取り外すのに効果的に使用することができるように、印象を取るときに患者の唇を超えて延びるのに十分長い必要がある。しかし、オペレータが歯科印象トレイ10および印象材料を配置させるときにオペレータの邪魔にならないように十分に短い必要がある。取手14の偏位寸法は、取手14が患者の唇の間を通過するに十分な長さである必要があるが、オペレータの邪魔になり、患者の唇を変形するほど長くてはいけない。
取手の幅または“A”寸法の望ましい寸法は0.455インチ〜0.590インチであって、取手14の長さまたは“B”寸法の望ましい寸法は0.970インチ〜1.398インチであって、取手14の偏位または“C”寸法の望ましい寸法は0.309インチ〜0.441インチである。これらの寸法によって、(1)取手14を歯科印象トレイ10および印象材料を患者の口に容易に挿入し、患者の口から容易に取り外すのに使用することができ、(2)取手14を歯科印象トレイ10および印象材料を配置させるために各指受け部26の底部に容易に圧力を与えることができるようにするためにオペレータの指の間に快適に受け入れられるようにすると共に、手、手首および腕を人間工学的に正しい位置に保つことができ、(3)取手14を患者の唇とぴったり合うようにし、印象を取るときに患者の唇を超えて延びることができ、取手14が患者の唇を変形しないようにし、これにより正確な印象を取ることができると共に患者の不快感を減少させることができる。
図1〜12に示されるように、取手14は第1の取手部50と第2の取手部56とを備える。第1の取手部50は、本体12の中央に第2の取手部56によって本体前端28で本体12の直立外壁部40および溝部36に連結されている。第1の取手部50は球状湾曲部52と開口部54(以下、第1取手部開口部)とを備える略長方形の薄板であって、この球状湾曲部52は本体前端28を前方から見た場合に水平面である。球状湾曲部52はオペレータの指または親指のパッドとして受けるように設計されており、印象工程の間にオペレータが歯科印象トレイ10の第1の取手部50を握る能力を顕著に向上させる。従来の技術は、印象工程の間に握りにくい直線状または平坦な取手を備えている。第2の取手部56は、所定の形状を有しており、本体12の直立外壁部40および溝部36に取り付けられており、取手14の所定の偏位をなす。顎および歯肉領域が歯科印象トレイ10と印象材料もしくは複数の印象材料を組合せたものとの、組合せに係合するのに使用される機構を提供するために第1の取手部50と第2の取手部56と各指受け部26とが協調するように、第2の取手部56は、溝部36の底部に取り付けられる各指受け部26にも連結されている。
本発明を添付の図面を参照して記載してきたが、本発明に記載または示唆された以外に更に別の変更も本発明の主旨および範囲内でなされ得ることが理解されるべきである。