この米国特許出願は、2004年11月22日に提出された米国仮出願番号第60/630,320号及び2004年11月22日に提出された米国仮出願番号第60/678,165号(両方とも本明細書において援用される)の優先権を主張する。この出願は、「APPARATUS AND SYSTEM HAVING DRY GENE SILENCING COMPOSITIONS」と題し、2005年11月18日に提出された米国実用特許出願番号未詳、代理人整理番号第16542.1.1号;「APPARATUS AND SYSTEM HAVING DRY GENE SILENCING POOLS」と題し、2005年11月18日に提出された米国実用特許出願番号未詳、代理人整理番号第16542.1.2号;「APPARATUS AND SYSTEM HAVING DRY CONTROL GENE SILENCING COMPOSITIONS」と題し、2005年11月18日に提出された米国実用特許出願番号未詳、代理人整理番号第16542.1.3号;及び「METHOD OF DETERMINING A CELLULAR RESPONSE TO A BIOLOGICAL AGENT」と題し、2005年11月18日に提出された米国実用特許出願番号未詳、代理人整理番号第16542.1.4号(ここで、各々は本明細書において援用される)も請求する。
発明の要旨
一般に、本発明の態様は、細胞において遺伝子サイレンシングを達成するためのウェルプレート、キット、システム及びそれを使用する方法を含む。従って、本発明は、RNAi経路を介して遺伝子サイレンシングを達成するため、細胞内へsiRNAを送達するための改良されたRTFプロトコルを実行する、ウェルプレート、キット及びシステムを提供する。加えて、本ウェルプレート、キット及びシステムは、リバーストランスフェクション間の安定性を増強する様式で、RTFプロトコルで実行されるように設定されたsiRNAを含むことが可能である。さらに、本発明は、こうしたウェルプレート、キット及びシステムを使用する方法を含む。
一つの態様において、本発明は、遺伝子サイレンシングを達成するため、細胞内へsiRNAを導入するように設定されたリバーストランスフェクション装置を含む。本ウェルは、少なくとも第一の標的遺伝子を沈黙させる少なくとも第一のsiRNAを有する、実質的乾燥遺伝子サイレンシング組成物を含むことが可能である。遺伝子サイレンシング組成物は、siRNAがウェル中で細胞をトランスフェクトするために十分な量で水性媒質中に可溶化又は懸濁化されることができるように設定されている。場合により、遺伝子サイレンシング組成物中のsiRNAの総量は、一つのウェルのみについて、リバーストランスフェクションを実行するために十分である。加えて、siRNAはループ、修飾又はコンジュゲートを有している少なくとも一つのヘアピン構造を有していてもよい。また、siRNAは、非標的遺伝子の有意なサイレンシングを誘導しない効率的な様式で、標的遺伝子を特異的に沈黙させるように合理的に設計することが可能である。さらに、遺伝子サイレンシング組成物は、同一遺伝子の異なったポリヌクレオチドを標的とするsiRNAのプールを含むことが可能である。
一つの態様において、本発明は、前記の特徴付けのいずれかと一致したウェルプレートを含む、キット又はシステムを提供する。加えて、こうしたキット又はシステムはポリヌクレオチド担体を含むことが可能である。ポリヌクレオチド担体は、カチオン性脂質、ポリマー、ポリペプチド、リポポリマー、脂質−ポリペプチド組み合わせなどであることができる。加えて、本キット又はシステムは、以下により詳細に議論される多様な可溶化溶液、試薬、細胞培養培地などを含むことが可能である。
一つの態様において、本発明は遺伝子サイレンシングを達成するため、細胞内にsiRNAを導入するためのリバーストランスフェクションの方法を含む。こうした方法は、前記の特徴付けに従ったウェルプレートを提供することを含むことが可能である。遺伝子サイレンシング組成物及び/又はsiRNAを溶液内に懸濁又は可溶化するように、水性媒質をウェルへ加えることが可能である。加えて、siRNAが細胞へ入ることを可能にする条件下で、細胞をウェルに加えることが可能である。例えば、細胞を96ウェルプレート中の異なったウェルに、約0.3cm2〜約0.35cm2の細胞増殖表面領域当たり、約1x103〜約3.5x104細胞、より好ましくは、2x103〜約3x104の量で加えることが可能である。
一つの態様において、本方法は、siRNA−担体複合体を形成するように、ポリヌクレオチド担体を加えることを含むことが可能である。siRNA−担体複合体は、水性媒質中に懸濁又は可溶化することが可能であり、そして細胞内への侵入(それはいずれのエンドサイトーシス過程であってもよい)を誘導するために細胞と接触させることが可能である。そのようなものとして、ポリヌクレオチド担体を、水性媒質の一部として又はそれに加えて、ウェルへ加えることが可能である。ポリヌクレオチド担体は、カチオン性脂質、ポリマー、リポポリマー、ポリペプチド、抗体−ポリペプチドコンジュゲートなどであることができる。もしくは、エレクトロポレーション、沈降、物理的衝撃、オプトポレーションなどを含む他のポリヌクレオチド送達法を、細胞内へsiRNAを送達するために使用することが可能である。
ウェル中で細胞をsiRNA組成物と混合した後、ウェルプレートを細胞増殖、細胞分割及び/又は遺伝子サイレンシングが起こるような条件下で維持することが可能である。こうした条件は、通常は当該技術分野ではよく知られている正常細胞培養条件である。そのようなものとして、siRNAは標的遺伝子をサイレンシングし、少なくとも50%まで、より好ましくは少なくとも70%まで、及び最も好ましくは少なくとも90%まで標的ポリペプチドの産生を抑制することが可能である。
本発明のこれら及び他の態様及び特色は、以下の記述及び付随する特許請求の範囲からより明らかになるであろうし、又は以下に示した本発明の実施により学ぶことができる。
発明の詳細な説明
一般的には、本発明は細胞中で遺伝子サイレンシングを達成することに使用するための装置及びシステムに関する。本装置は、RTFプロトコルで使用するために可溶化又は懸濁化することが可能である、siRNAを含んでなる乾燥遺伝子サイレンシング組成物を有する、ウェルを伴ったプレートを含む。キットとして提供することが可能である本システムは、プレート、及びsiRNAを送達するために細胞に侵入することが可能なトランスフェクション複合体を形成するためのsiRNAと混合できるポリヌクレオチド担体を含む。加えて、本キットは、siRNA可溶化又は懸濁化水性媒質、対応する担体溶液中のポリヌクレオチド担体、細胞培養培地などを含むことが可能である。
本発明のウェルプレート、システム、キット及び方法は、実験室自動化設備の使用を伴った又は伴わない、高含量スクリーニング(「HCS」)及び高スループットスクリーニング(「HTS」)応用での使用に設定することが可能である。また、本ウェルプレート、システム、キット及び方法は、ロボットシステムのような自動化システムで使用することも可能である。しかしながら、本ウェルプレート、システム、キット及び方法は、自動化送達システム又はロボット工学の助けなしにRTFプロトコルで使用することも可能であり、そしてそれ故、手動処理を使用する、実験室のための高価なロボット送達システムの効率的な代替手段を提供することが可能である。それ故、本ウェルプレート、システム、キット及び方法は、高スループットスクリーニングを費用的に効率的な様式で行うことが可能であるように、選択における多用途性を提供する。
以下の用語法は、本発明の態様を記述する際に使用される用語を明確にするために本明細書で定義され、制限することを意図するものではない。そのようなものとして、以下の用語法は、関連する分野の当業者によるこうした用語の理解を補足するために提供される。
本明細書において用語「2’修飾」とは、二番目の位置の原子で起こる、ヌクレオチドの化学修飾を指すことが意図される。そのようなものとして、2’修飾は、ヌクレオチド、又はオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド内ヌクレオチドのリボース環の2’炭素への、化学修飾基のコンジュゲーションを含むことが可能である。それ故、2’修飾は、ヌクレオチドの2’位原子で起こる。
本明細書において用語「脂肪族」とは、主鎖中に20又はそれ未満の炭素又はヘテロ原子を有する、アルキル基のような炭化水素部分を指すことが意図され、それは直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和、及び/又は置換又は未置換であることができる。脂肪族基は、直線状、分枝状、環式及び/又はヘテロ環式である部分を含んでなることができ、及びエーテル、ケトン、アルデヒド、カルボキシレートなどのような官能基を含むことができる。脂肪族基内の置換は、限定されるわけではないが、ハロゲン、硫黄、チオール、チオエーテル、チオエステル、アミン(第一、第二又は第三)、アミド、エーテル、エステル、アルコール、酸素などを含む、脂肪族部分に許容できるいずれかの原子又は基を含むことが可能である。さらに脂肪族基は、例えば、窒素、酸素、リン又は硫黄のようなヘテロ原子よるヘテロ置換(これらは炭素原子の置換である)も含むことができる。
本明細書において用語「アルキル」とは、鎖中に炭素及び水素両方を有するヒドロカルビル部分を指すことが意図される。好ましくは、アルキル部分は水素及び炭素のみから成っている。アルキル部分は、直線状、分枝状及び/又は環式であることができる。好ましくは、アルキル部分は枝分れされてなく、環式ではなく、完全に飽和されており、そして置換されていない。
アルキル基の例には、限定されるわけではないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル及びより多い炭素数のアルキル基、並びに、2−メチルプロピル、2−メチル−4−エチルブチル、2,4−ジエチルプロピル、3−プロピルブチル、2,8−ジブチルデシル、6,6−ジメチルオクチル、6−プロピル−6−ブチルオクチル、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチルなどが含まれる。用語アルキルは、ビニルのようなアルケニル基、アリル、アラルキル及びアルキニル基も包含する。アルキル基の置換は、こうした置換が、アルキル基が置換されている分子の機能を実質的に妨害しない限り、いずれかの適した原子に行うことが可能である。
本明細書において用語「アンチセンス鎖」とは、目的の標的核酸と少なくとも実質的に(例えば、約80%又はそれ以上)又は100%相補的であるポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドの領域を指すことが意図される。また、dsRNAのアンチセンス鎖はそのセンス鎖と相補的である。アンチセンス鎖は、RNA、DNA又はキメラRNA/DNAであるポリヌクレオチドを含んでなることができる。加えて、アンチセンス鎖内のいずれのヌクレオチドもそれらにカップルされた置換基を導入することにより修飾することが可能である(2’での修飾のような)。アンチセンス鎖は、小分子及び/又はコンジュゲートの多様な基で修飾することが可能である。例えば、アンチセンス鎖は、全部又は一部が、メッセンジャーRNA(「mRNA」)の分子、非翻訳領域RNAを含んでいるmRNAではないRNA配列(例えば、tRNA及びrRNA)、又は翻訳領域あるいは非翻訳領域であるDNAの配列と相補的であることができる。用語「アンチセンス鎖」及び「アンチセンス領域」は均等であることが意図されており、相互交換的に使用される。
本明細書において用語「相補的」及び「相補性」とは、お互いに塩基対を形成するポリヌクレオチドの能力を指すことが意図される。塩基対は典型的には、逆平行ポリヌクレオチド鎖中のヌクレオチドユニット間の水素結合により形成される。相補的ポリヌクレオチド鎖は、ワトソン−クリック様式(例えば、AとT、AとU、CとG)で、又は二重鎖の形成を可能にするいずれか他の様式で塩基対を作ることが可能である。当業者には認識されるように、DNAに対するものとしてRNAを使用した場合、アデノシンに相補的であると考えられている塩基は、チミンよりもむしろウラシルである。
完全相補性又は100%相補性とは、一つのポリヌクレオチド鎖の各ヌクレオチドユニットが逆平行ポリヌクレオチド鎖のヌクレオチドユニットと水素結合可能である状況を指す。完全相補性未満の相補性とは、二つの鎖の、全部ではないがいくつかのヌクレオチドユニットがお互いに水素結合可能である状況を指す。例えば、二つの20−merについて、もし各鎖上の二つのみの塩基対がお互いに水素結合可能であれば、ポリヌクレオチド鎖は10%相補性を示す。同じ例において、もし各鎖上の18の塩基対がお互いに水素結合可能であれば、ポリヌクレオチド鎖は90%相補性を示す。「実質的な相補性」とは、非相補的となるように選択された、オーバーハングのようなポリヌクレオチド鎖の領域を除いて、79%又はより多い相補性を示しているポリヌクレオチド鎖を指す。従って、相補性は、逆平行鎖上のヌクレオチドと同一又は相補的でないように選択されたオーバーハングを考慮しない。
本明細書において用語「コンジュゲート」とは、siRNAのセンス鎖かあるいはアンチセンス鎖と結合されている分子、大分子又は高分子構造を指すことが意図される。即ち、siRNAに結合されている部分がコンジュゲートと考えられる。目的を明確にするため、siRNAは、共有結合、イオン相互作用及び類似のカップリングによりカップルされているコンジュゲートを含むことが可能である。通常、コンジュゲートは安定化又は標的化特異性以外の機能性を与えるためにsiRNAとカップルされる。例えば、コレステロールのようないくつかのコンジュゲートは、細胞へ侵入するsiRNAの能力を増強するために使用することが可能である。他のコンジュゲートは、トランスフェクション又は細胞中でのsiRNAの存在を検出するために使用されるラベルであることができる。通常、コンジュゲートはリンカーを介してsiRNAとカップルされる。
本明細書において用語「デオキシヌクレオチド」とは、その糖部分の2’位のヒドロキシル基(例えば、OH基)を欠くヌクレオチドを指すことが意図される。代わりに、水素が2’炭素に結合されている。それ故、一つ又はそれより多くのデオキシヌクレオチドを含んでなるRNA分子は、糖部分の2’位でのOH基の欠如を示し、2’炭素に直接結合された水素を有する。同様に、用語「デオキシリボヌクレオチド」及び「DNA」は、その2’位に水素を有する、少なくとも一つの糖部分を含んでなるリボヌクレオチド又はポリリボヌクレオチドを含む。
本明細書において、遺伝子サイレンシング組成物に関連して使用される用語「乾燥された」又は「乾燥」とは、流体ではなくそして流動しない組成物を指すことが意図される。しかしながら、これは少量の水又は他の溶媒を排除するものではなく、調製物が実質的には液体形態ではないが、ウェル中で「乾燥されて」いるように、例えば、1気圧、室温及び外界湿度のような標準又は外界条件で平衡化されたRNA調製物に残存する水分量を含む。例えば、もし約1気圧で、約20〜40℃で、そして約50〜約95%の湿度で、調製物が平衡化され、ウェルプレートが、反転された場合、又は、例えば水平から90゜へ傾けられても、RNA調製物が移動しない又はウェル内で流れないならば、siRNA調製物は「乾燥されている」又は実質的に「乾燥している」。このことは、傾けられた場合に流れる又は広がるであろう液体調製物と比較される。種々の態様において、トランスフェクションを実施するために乾燥遺伝子サイレンシング組成物を使用する方法は、混合物を形成させるため、乾燥調製物を適した媒質に可溶化させること又は懸濁させることを含むことができる。加えて、適した水性媒質は、細胞内へのsiRNAの導入を容易にすること、及びトランスフェクションを達成するために混合物を一つ又はそれより多くの細胞に暴露することが可能なポリヌクレオチド担体を含むことができる。
本明細書において用語「二重鎖領域」とは、ワトソン−クリック塩基対形成かあるいはポリヌクレオチド鎖間の安定化された二重鎖を可能にする他の様式により、お互いに塩対を形成する二つの相補的又は実質的に相補的なポリヌクレオチド中の領域を指すことが意図される。例えば、21ヌクレオチドユニットを有している一つのポリヌクレオチド鎖は、たとえ「二重鎖領域」が19塩基対を有するように、各鎖上の19塩基のみが相補的であっても、別の21ヌクレオチドユニットのポリヌクレオチドと塩基対形成可能である。残りの塩基は、例えば、5’及び/又は3’オーバーハングとして存在することができる。さらに、二重鎖領域内で100%相補性は必要とされず、実質的相補性が二重鎖領域内で許容可能である。実質的相補性とは79%又はそれ以上の相補性を指し、結果としてミスマッチ及び/又はバルジを生じることが可能である。例えば、19塩基対から成る二重鎖領域中の単一ミスマッチは94.7%相補性となり、二重鎖領域を実質的に相補性を与えている。
本明細書において用語「機能性」とは、siRNAにより誘導された遺伝子特異的サイレンシングのレベルを指すことが意図される。一般に、機能性は遺伝子サイレンシングのパーセンテージで表現されている。それ故、遺伝子(例えば、F90)の90%サイレンシングとは、正常レベルの10%のみの遺伝子発現が観察される状況を指す。同様に、遺伝子(例えば、F90)の80%サイレンシングとは、正常レベルの20%のみの遺伝子発現が観察される状況を指す。
本明細書において用語「遺伝子サイレンシング」とは、特異的遺伝子産物の発現が、少なくなっている、弱められている及び/又は停止されていることにより抑制されるプロセスを指すことが意図される。遺伝子サイレンシングは多様な経路により起こすことが可能である。一つの例において、遺伝子サイレンシングはRNAi経路によって生じる遺伝子産物発現の減少を指すことが可能であり、ここにおいてsiRNAは宿主タンパク質(例えば、RISC)と協力して働き、配列依存的様式で遺伝子産物を減少させる。もしくは、遺伝子サイレンシングは、siRNA仲介翻訳阻害によって生じる遺伝子産物の減少を指すことが可能である。さらに別の方法において、遺伝子サイレンシングは、siRNA仲介転写阻害によって生じる遺伝子産物の減少を指すことが可能である。遺伝子サイレンシングのレベルは、ノーザンブロット分析による転写レベルの測定、B−DNA技術、転写感受性レセプター構築物、発現プロファイリング(例えば、DNAチップ)及び関連する技術及びアッセイを含むことが可能な種々の方法により測定することが可能である。もしくは、遺伝子サイレンシングのレベルは、対応するmRNAから翻訳された特異的遺伝子によりコードされたタンパク質のレベルを評価することにより測定することが可能である。このことは、ウェスタン分析、比色又は蛍光特性(例えば、GEP)、酵素活性(例えば、アルカリホスファターゼ)のようなレポータータンパク質の発現のレベルを測定すること、又は他のよく知られた分析法を含む、いくつかの研究法を実行することにより達成することが可能である。
本明細書において用語「ヌクレオチド間結合(linkage)」とは、ポリヌクレオチド中の二つのヌクレオチドユニット間に存在する化学結合(bond)又は連結(link)のタイプを指すことが意図され、ここにおいて結合は修飾されていても修飾されていなくてもよい。句「修飾ヌクレオチド間結合」は、現在知られている又は後で開発されるすべての修飾ヌクレオチド間結合を含む。ヌクレオチド間結合は付随する対イオンを有していてもよく、そして前記の句は、こうした対イオン及びヌクレオチド間結合で形成可能ないずれの配位錯体も含むことが意図される。
本明細書において用語「ミスマッチ」は、センス鎖のヌクレオチド及びアンチセンス鎖のヌクレオチド間でワトソン−クリック塩基対形成が起こっていない状況を含み、ここで非塩基対形成ヌクレオチドには、非塩基対形成ヌクレオチド直後に始まるミスマッチから5’方向に(例えば、5’方向に)、そして非塩基対形成ヌクレオチドの直後に始まるミスマッチから3’方向に(例えば、3’方向に)、塩基対を含んでなる二重鎖が隣接する。ミスマッチの例は、Gの向かいにA、Aの向かいにC、Cの向かいにU、Aの向かいにA、Gの向かいにG、Cの向かいにCなどであろう。ミスマッチは、ヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドの向かいに塩基脱落残基、ヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドの向かいに非環式残基、ギャップ又は不対ループを含むことも意図される。その最も広い意味においては、本明細書で使用されるミスマッチは、特定の位置での二重鎖の熱力学的安定性がその位置でのワトソン−クリック塩基対の熱力学的安定性よりも小さいように、改変が出現した位置の又は近傍の熱力学的安定性を減少させる、所与の位置でのいずれかの改変を含む。
本明細書において用語「ヌクレオチド」は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド又はそれらの修飾形、ならびにそれらの類似体を指すことが意図される。ヌクレオチドは、プリン類、例えば、アデニン、ヒポキサンチン、グアニン及びそれらの誘導体及び類似体、ならびにピリミジン類、例えば、シトシン、ウラシル、チミン及びそれらの誘導体及び類似体を含んでなる化学種を含む。ヌクレオチドは当該技術分野では公知である。ヌクレオチド類似体には、限定されるわけではないが、5’位ピリミジン修飾、8’位プリン修飾、シトシン環外アミンでの修飾、5−ブロモ−ウラシルの置換及び2’位糖修飾(例えば、2’修飾)を含む、塩基、糖及び/又はリン酸の化学構造中に修飾を有しているヌクレオチドが含まれる。こうした修飾には、2’−OHがH、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2又はCN(式中Rは、アルキル又は脂肪族部分である)のような基により置き換えられている糖修飾リボヌクレオチドが含まれる。ヌクレオチド類似体には、イノシン、キュェオシン、キサンチンのような塩基、2’−メチルリボースのような糖、メチルホスホネート、ホスホロチオエート及びペプチドのような非天然ホスホジエステル結合を有するヌクレオチドも含まれる。また、第一のヌクレオチド又は第一位のヌクレオチドに関しては、二重鎖領域の最も5’位のヌクレオチドを指し、そして第二のヌクレオチドは3’末端に向かって次のヌクレオチドである。siRNAの末端に伸びる二重鎖領域の例では、5’末端ヌクレオチドが第一のヌクレオチドでありうる。
本明細書において用語「修飾塩基」は、例えば、一つ又はそれより多くの原子又は基の置き換え又は付加により修飾されているアデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、キサンチン、イノシン及びキュェオシンのようなヌクレオチド塩基を指すことが意図される。塩基部分への修飾のタイプのいくつかの例には、限定されるわけではないが、個々に又は組み合わされた、アルキル化、ハロゲン化、チオール化、アミノ化、アミド化又はアセチル化塩基が含まれる。より具体的な例には、例えば、5−プロピニルウリジン、5−プロピニルシチジン、6−メチルアデニン、6−メチルグアニン、N,N,−ジメチルアデニン、2−プロピルアデニン、2−プロピルグアニン、2−アミノアデニン、1−メチルイノシン、3−メチルウリジン、5−メチルシチジン、5−メチルウリジン及び5位に修飾を有する他のヌクレオチド、5−(2−アミノ)プロピルウリジン、5−ハロシチジン、5−ハロウリジン、4−アセチルシチジン、1−メチルアデノシン、2−メチルアデノシン、3−メチルシチジン、6−メチルウリジン、2−メチルグアノシン、7−メチルグアノシン、2,2−ジメチルグアノシン、5−メチルアミノエチルウリジン、5−メチルオキシウリジン、7−デアザ−アデノシンのようなデアザヌクレオチド、6−アゾウリジン、6−アゾシチジン、6−アゾチミジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン及び4−チオウリジン及び2−チオシチジンのような他のチオ塩基、ジヒドロウリジン、プソイドウリジン、キュェオシン、アーケオシン、ナフチル及び置換ナフチル基、N6−メチルアデノシンのようないずれかのO−及びN−アルキル化プリン及びピリミジン、5−メチルカルボニルメチルウリジン、ウリジン 5−オキシ酢酸、ピリジン−4−オン、ピリジン−2−オン、アミノフェノール又は2,4,6−トリメトキシベンゼンのようなフェニル及び修飾フェニル基、G−クランプ(clamp)ヌクレオチドとして働く修飾シトシン、8−置換アデニン及びグアニン、5−置換ウラシル及びチミン、アザピリミジン、カルボキシヒドロキシアルキルヌクレオチド、カルボキシアルキルアミノアルキルヌクレオチド、及びアルキルカルボニルアルキル化ヌクレオチドが含まれる。修飾ヌクレオチドは、糖部分に関して修飾されたヌクレオチド、ならびにリボシルではない糖又は類似体を有するヌクレオチドも含む。例えば、糖部分は、マンノース、アラビノース、グルコピラノース、ガラクトピラノース、4’−チオリボース及び他の糖、ヘテロ環又は炭素環であること、または基づくことができる[注:必要に応じ調査及び編集されたい]。
加えて、用語「ヌクレオチド」は、ユニバーサル塩基として当該技術分野で公知のものを含むことが意図される。例としては、限定されるわけではないが、3−ニトロピロール、5−ニトロインドール又はネブラリンが含まれる。用語「ヌクレオチド」は、アミン基によるリボシル3’酸素の置換により生じるN3’からP5’へのホスホロアミデートを含むことも意図する。
本明細書において用語「オフターゲット」及び「オフターゲット効果」は、合成siRNA又はshRNAのようなsiRNAが所与の標的mRNAに対して方向付けられているが、非標的タンパク質発現を減少させる様式で、別のmRNA、DNA、細胞性タンパク質又は他の部分と直接的か又は間接的に相互作用することにより意図されない影響を生じるいずれかの例を指すことが意図される。しばしば、siRNAがsiRNAと同一の又は類似のポリヌクレオチド配列を有する非標的mRNAと相互作用した場合にこのことを起こすことができる。例えば、「オフターゲット効果」は、非標的mRNAとsiRNAのセンス及び/又はアンチセンス鎖間の部分的相同性又は相補性による他の非標的mRNAの同時分解がある場合に起こってもよい。
本明細書において用語「オンターゲット」は、標的mRNA又はDNAによりコードされているポリペプチドの産生を抑制するため、siRNAが優先的に標的mRNA又はDNAを標的とし及び相互作用するであろう可能性を増加させる、siRNAの修飾の一組を指すことが意図される。これは、標的遺伝子をサイレンシングすることについてsiRNAの特異性を増加させる。例えば、オンターゲット修飾は、センス領域の第一及び第二のヌクレオチドが各々2’−O−メチル部分を有し、そしてアンチセンス鎖がその5’末端でリン酸化されているsiRNAを含むことができ、こうしたオンターゲット修飾は、
On−Target(商標)(Dharmacon,Inc.)と名付けられた専売の修飾も指す。いずれにしても、オンターゲット修飾はオフターゲット効果を減少させるのを助けるために使用することが可能である。また、siRNAは、siRNAのアンチセンス領域に相補性を有するセンス領域を有することが可能であり、ここでアンチセンス領域は標的mRNAに相補性を有する領域である。
本明細書において用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド間結合を介してお互いに連結されたヌクレオチドのポリマーを指すことが意図される。また、ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、規則的に及び/又は不規則に交互するデオキシリボシル部分及びリボシル部分のポリヌクレオチド鎖を含むDNA/RNAハイブリッド(即ち、交互するヌクレオチドユニットは、糖部分の2’位に−OH、次に−H、次に−OH、次に−Hなどを有する)、及びこれらの種類のポリヌクレオチドの修飾物を含む。また、ポリヌクレオチドは、種々の修飾を有する又はいずれかの位置でヌクレオチドユニットへの種々のエンティティー又は部分の付着を有するヌクレオチドも含む。
本明細書において用語「ポリリボヌクレオチド」は、2つ又はそれより多くの修飾又は無修飾リボヌクレオチド及び/又はそれらの類似体を含んでなるポリヌクレオチドを指すことが意図される。用語「ポリリボヌクレオチド」は用語「オリゴリボヌクレオチド」と相互交換的に使用される。
本明細書において用語「合理的設計」及び「合理的に設計された」は、標的配列とは無関係である一つ又はそれより多くの基準に基づいて、遺伝子サイレンシング応用に使用するための一つ又はそれより多くのsiRNA(単数又は複数)の選択又は設計を指すことが意図される。そのようなものとして、合理的に設計されたsiRNAが、選択されたmRNAと特異的に相互作用しそして選択されたmRNAからのポリペプチド翻訳を阻害するように選択される。それ故、いずれか一つの標的mRNAについて、標的mRNAと100%相補的である18〜31塩基対を有する数百の潜在的siRNAが存在することができる。一部、このことは単一mRNAが、siRNAにより特異的に標的とされることが可能である複数の配列を有することができるからである。しかしながら、すべてのsiRNAが等しい機能性を有しないであろうことはあり得ることである。経験的研究を通して、特定の位置における特定の窒素性塩基の存在又は不在、相対的GC含量などを含む多数の他の因子が、特定的なsiRNAの機能性に影響することが可能である。合理的に設計されたsiRNAに関する追加の情報は、2003年11月14日に提出された、共同所有の米国特許出願10/714,333、WO2004/045543 A2として2004年6月3日に公開された関連PCT出願PCT/US03/36787、2004年9月14日に提出され、米国特許出願公開2005/0255487として公開された米国特許出願10/940,892、2004年5月12日に提出された関連PCT出願 PCT/US04/14885、及び米国特許出願公開2005/0246794(各々は本明細書において援用される)に見ることが可能である。
本明細書において用語「リバーストランスフェクション」及び略語「RTF」は各々、細胞内へsiRNAのような核酸を導入するためのプロセスを指すことが意図される。細胞内へのsiRNAのこうした導入は、ウェル中で核酸及び細胞を混合することにより達成することが可能であり、ここで細胞はまだ増殖表面に前もって付着又は維持されていない。リバーストランスフェクションは、核酸が細胞内に侵入できるような様式で、細胞表面上に核酸を接触させることにより進行する。通常、siRNAは、細胞へ接触させることに先だって、脂質又は他のポリヌクレオチド担体と複合体形成される。リバーストランスフェクションは、siRNAの添加前にウェル又は他の容器の細胞増殖表面に播種及び維持されていないので、フォワードトランスフェクションとは異なる。
本明細書において用語「リボヌクレオチド」、「リボ核酸」及び「RNA」は、少なくとも一つのリボヌクレオチドユニットを含んでなる修飾又は無修飾ヌクレオチド又はポリヌクレオチドを指すことが意図される。典型的には、すべてのヌクレオチドユニットはリボヌクレオチドである。無修飾リボヌクレオチドユニットは、リボシル部分の1’位にN−グリコシド結合で付着された窒素性塩基を有するリボシル部分の2’位へ付着されたヒドロキシル基、及び別のヌクレオチドへの結合を可能にするか又は結合を防止する部分を含んでなる。リボヌクレオチド、リボ核酸及びRNAは当該技術分野では公知である。
本明細書において用語「センス鎖」は、メッセンジャーRNA又はDNAの配列のような標的核酸と、全体が又は一部が、同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド又は領域を指すことが意図される。用語「センス鎖」は、別のポリヌクレオチドのアンチセンス領域と二重鎖を形成するポリヌクレオチドのセンス領域を含む。また、センス鎖は、第一及び第二のポリヌクレオチド配列の両方を含む同一の単分子ポリヌクレオチド上の第二のポリヌクレオチド配列と二重鎖を形成する第一のポリヌクレオチド配列であることができる。そのようなものとして、センス鎖は、shRNAのようなヘアピン構造を形成することができる単分子siRNAの一つの部分を含むことが可能である。配列が提供された場合、慣例により、特に指摘しない限り、それはセンス鎖又は領域であり、相補的アンチセンス鎖又は領域の存在が暗に示されている。句「センス鎖」及び「センス領域」は均等であることが意図されており、相互交換的に使用される。
本明細書において用語「siRNA」は、RNA干渉(「RNAi」)経路内で作動することにより遺伝子サイレンシングを誘導する、スモールインヒビトリー(small inhibitory)RNA二重鎖を指すことが意図される。これらのsiRNAは、長さが変化可能であり、アンチセンス及びセンス鎖間、及びアンチセンス鎖及び標的配列間の異なった程度の相補性を含有することが可能なdsRNAである。各siRNAは17〜31の間の塩基対、より好ましくは18〜26の間の塩基対、及び最も好ましくは19〜21の間の塩基対を含むことが可能である。全てではないがいくつかのsiRNAはセンス鎖及び/又はアンチセンス鎖の5’及び/又は3’末端上に不対のオーバーハングヌクレオチドを有する。加えて、用語「siRNA」は、二つの別々の鎖の二重鎖、ならびにショートヘアピン(short hairpin)RNA(「shRNA」)と呼ぶことができる、二重鎖領域を含んでなるヘアピン構造を形成することが可能な一本鎖を含む。
本明細書において用語「siRNAライブラリー」又は「RTF siRNAライブラリー」は、特定の生物学的経路又は遺伝子標的を分析する際に使用するためのsiRNAのアレーを指すことが意図される。siRNAライブラリーは特定の経路又は遺伝子標的を分析するための多様なsiRNAプールを含んでなる。プールは典型的には、単一標的遺伝子に対して方向付けられた2つ又はそれより多くの同一でないsiRNAを含んでなる。通常、プールは、合理的に設計された4つ又はそれより多くの同一でないsiRNAを含む。siRNAライブラリーの例示的リストが下記表1に提供されている。プール試薬を含む特定のsiRNAライブラリーで使用される配列は、援用された仮出願の表I及び表IIに提供されている。
本明細書において用語「siRNAプール」、「プール」、「siRNAのプール」及び「プール試薬」は、単一標的遺伝子、mRNA及び/又はタンパク質の翻訳に向かって方向付けられた2つ又はそれより多くのsiRNA(典型的には4siRNA)を指すことが意図される。プール試薬のsiRNAは、非標的特異的判断基準に従って選択することにより、合理的に設計することが可能である。例えば、100nM siRNA濃度を使用し、複数の96ウェルプレートの約200ウェル中の細胞をトランスフェクトするのに、各プール試薬は2ナノモルで十分可能である。プール試薬はプールとしてプレートすることが可能である(即ち、単一のトランスフェクションウェル中に、DharmaconのSMARTpool(登録商標)試薬の2つ又はそれより多くのsiRNA)。時々本明細書においてSMARTselection(商標)siRNA(Dharmacon, Inc.)と称される、SMARTpool(登録商標)試薬を含んでなる個々のsiRNAは、SMARTpool(登録商標)試薬と同一のプレートに個々にプレートすることが可能である。
本明細書において用語「標的」は、この文書を通してさまざまな異なった形態で使用され、それが使用される文脈により定義される。用語「標的遺伝子」は、siRNAによりサイレンシングされるべきタンパク質をコードし、及び標的mRNAの産生をコードする遺伝子を指すことが意図される。用語「標的mRNA」は、所与のsiRNAがポリペプチド産物の転写をサイレンシングするように方向付けられているmRNAを指すことが意図される。用語「標的配列」及び「標的部位」は、siRNAのセンス鎖がさまざまな程度の相同性を示し、そしてアンチセンス鎖がさまざまな程度の相補性を示す、mRNA、miRNA又はDNAコード又はプロモーター領域内の配列を指すことが意図される。用語「標的ポリペプチド」又は「標的タンパク質」は、標的遺伝子、標的mRNA及び/又は標的配列によりコードされた遺伝子産物を指すことが意図される。用語「siRNA標的」は、siRNAがサイレンシングのために方向付けられている遺伝子、mRNA又はタンパク質を指すことが可能である。同様に、「標的サイレンシング」は、遺伝子又は対応するmRNA又はタンパク質をサイレンシングする状態を指すことが可能である。
本明細書において用語「トランスフェクション」は、核酸が細胞内に導入されるプロセスを指すことが意図される。トランスフェクト可能である核酸のリストは巨大であり、そして限定されるわけではないが、siRNA、shRNA、センス及び/又はアンチセンス配列、DNA、RNAなどが含まれる。細胞内へ核酸をトランスフェクトするためには複数の様式があり、限定されるわけではないが、エレクトロポレーション、粒子衝撃、リン酸カルシウム送達、DEAE−デキストラン送達、脂質送達、ポリマー送達、分子コンジュゲート送達(例えば、ポリリジン−DNA又は−RNAコンジュゲート、抗体−ポリペプチドコンジュゲート、抗体−ポリマーコンジュゲート又はペプチドコンジュゲート)、マイクロインジェクション、レーザー又は光補助マイクロインジェクション、オプトポレーション又は可視及び/又は電磁放射線の非可視波長でのフォトポレーションなどが含まれる。トランスフェクションは「フォワードトランスフェクション」であり得、そこでは細胞が最初にウェル中に蒔かれて次ぎに核酸で処理されるが、あるいはそれは「リバーストランスフェクション」(RTF)でもあり得、そこでは細胞がウェルの底に蒔かれる及び/又は付着する前に又はその間に、核酸を細胞と混合する。上に記載したような、細胞をトランスフェクトするいずれの様式も、リバーストランスフェクションを実行するため、水性媒質にsiRNAを可溶化又は懸濁化した後に細胞内へ導入されるべき核酸を誘導することにより、本発明で使用することが可能である。リバーストランスフェクションの様式に関する詳細は、以下により詳細に記載されている。
本明細書において用語「ウェルプレート」は、一つの分離した領域から別の分離した領域への移動を防止する、分離した領域内へ分割された基材を指すことが意図され、ここで分離した領域はウェルである。例えば、多ウェルウェルプレートの各ウェルは、傾斜していても平らでもよい水平基底を含むことができ、ならびに側壁を有する。もしくは、側壁は、分離した水平基底部分がないように、特定の角度又は曲率で一緒になることができる。以下に記載するように、平らな又は実質的に平らな水平面を有するウェルプレートが、本発明の多くの態様、特に付着細胞を使用する場合に好ましい。形にかかわらず、最も重要なことは、ウェルプレート中の各ウェルが物理的に他のウェルから分離していることである。ウェルは典型的には、容易な物質の添加及び除去を可能にするために上端が開口している。普通のウェルプレートは典型的には48、96、384又は1356ウェルを含んでなり、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ガラス又は均等な物質からできている。プレート中のウェルはさまざまな化合物でコートする、又はsiRNA及び/又は細胞付着を増強することができるさまざまな物理的処理にかけられている。プレート中のウェルは、さまざまな液体容量を保つように、そして特に水平基底に沿ったさまざまな表面領域を提供するように設計することも可能である。本明細書の図のウェルは、単純化するために四角として図式的に示されているが、いずれかの適した形であることも可能である。加えて、ウェルプレートは当該技術分野で公知である。
濃度、重量及び容量のような測定可能な物質量を定義するための単位の使用は、当業者により日常的に用いられているものであることが意図される。加えて、好ましくは、単位はメートル法に対応して説明される。また、「ug」又は「uL」における「u」の使用は、各々、マイクログラム及びマイクロリットルに応用される「マイクロ」を指すことが意図される。
加えて、前記の用語定義は当業者の知識を補完することが意図されており、この文書内の全ての用語が定義されてはいない。そのようなものとして、未定義の用語は当業者の知識及び/又は用語の明白な意味で解釈されるべきことが意図されている。加えて、前記の用語は本明細書に提供された例に限定されることは意図されておらず、本明細書に記載した本発明の理解及び実施に有用であることが意図されている。
I.リバーストランスフェクション
一般的には、本発明はsiRNAのリバーストランスフェクションを実行するためのウェルプレート、システム、キット及び方法を提供する。本発明は、改良され及びより効率的である、siRNAを用いたリバーストランスフェクションプロトコルを提供する。これらの改良は、マニュアルアッセイならびに高スループットスクリーニングに特好都合である。
一つの態様において、本発明は遺伝子サイレンシングを達成するために細胞内にsiRNAを導入するためのリバーストランスフェクション法を含む。こうした方法は、実質的乾燥遺伝子サイレンシング組成物を有しているウェルを含むウェルプレートを提供することを含むことが可能である。遺伝子サイレンシング組成物は、対応する遺伝子産物の産生が抑制又は停止されるように、標的遺伝子を沈黙させるsiRNAを含むことが可能である。siRNAは、RTFプロトコルが実施されるかなり前に、プレートを製造する、封じ、貯蔵し及び/又は出荷することが可能であるように、乾燥遺伝子サイレンシング組成物の一部としてウェル中に存在する。一部、このことは、乾燥遺伝子サイレンシング組成物がウェル中、機能的状態でsiRNAを安定に保持でき、及びRTFプロトコル間に水性溶液で懸濁化又は再溶解化できるためである。それ故、遺伝子サイレンシング組成物を有しているウェルプレートは、不活性環境下で製造する、及び密封することが可能であり、ここでプレートは特異的遺伝子標的について前もって決められたタイプのsiRNAを有する異なったウェルを含むことが可能である。サイレンシングのためのこうしたsiRNAのタイプ及び位置された遺伝子標的は、以下により詳細に記述されている。
水性媒質は、siRNAを溶液内に懸濁又は可溶化するように、遺伝子サイレンシング組成物を含有する各ウェルに加えることが可能である。水性媒質は、十分な持続時間、siRNAを可溶化することを可能にする。場合により、水性媒質又は追加の媒質は、ポリヌクレオチド担体を含んでなる。そのようなものとして、ポリヌクレオチド担体を遺伝子サイレンシング組成物を有している各ウェルへも加えることが可能であり、そしてsiRNA−担体複合体が形成するのに十分なインキュベーション期間、プレートを維持することが可能である。しかしながら、ポリヌクレオチド担体はいくつかの態様においては必要ではなく、トランスフェクションの他の様式を使用してsiRNAを細胞内にトランスフェクトすることが可能である。
siRNAが適切に可溶化又は懸濁化された後、siRNAが細胞内に導入されるのを可能にする条件下、ウェルに細胞を加える。細胞は、約0.35cm2〜約0.35cm2の細胞増殖表面当たり、約1x103〜約3.5x104細胞の量で加えることが可能である。siRNAが細胞内へ侵入することを促進する条件は、当該技術分野で公知である細胞を播種することに使用される典型的な細胞培養技術により記述することが可能である。即ち、細胞を、通常の播種と同様の様式で、siRNAを含有するウェルに加えることが可能である。siRNA及び細胞を含有するウェルは、遺伝子サイレンシングが起こるのに十分な持続時間、インキュベートすることが可能であり、それは典型的には72時間未満、より好ましくは48時間未満、そして最も好ましくは約24時間又はそれ未満である。
一つの態様において、RTFプロトコルは、siRNA−担体複合体を形成するために、ウェル中にポリヌクレオチド担体を添加することを含むことが可能であり、ここでsiRNA−担体複合体は溶液中に懸濁化又は可溶化されている。細胞が加えられた後、siRNA−担体複合体は細胞に接触することが可能であり、複合体のエンドサイトーシスを誘導する。そのようなものとして、ポリヌクレオチド担体を水性媒質の一部として加えるか、又はそれに加えて加えることが可能である。それ故、ポリヌクレオチド担体は、水性媒質に可溶化され、又は懸濁されて水性媒質中に存在することが可能である。ポリヌクレオチド担体は、脂質、カチオン性ポリマー、リポポリマーなどであり得る。
細胞をsiRNAと混合した後、ウェルプレートは、細胞増殖、細胞分割及び/又は遺伝子サイレンシングが起こるような条件下で維持することが可能である。通常、細胞を、siRNA存在下、遺伝子サイレンシングを評価する前に約6〜約72時間、より好ましくは約12〜約36時間、及び最も好ましくは約24〜約48時間維持する。しかしながら、対応する遺伝子産物の量が減少できるように、遺伝子をサイレンシングするのに十分な期間、細胞をsiRNAとインキュベートすることを認識すべきである。そのようなものとして、標的ポリペプチドの産生は、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%、さらにより好ましくは少なくとも約80%、そして最も好ましくは少なくとも約90%まで沈黙させることが可能である。
懸濁液中で増殖する細胞が標的細胞である例においては、こうした細胞を適切な細胞密度でウェルに加えることが可能であり、そしてプレートを細胞生存率に有害ではない低い重力下で回転させることが可能であり、細胞及び脂質をウェルの底で近接近させる。
一つの態様において、RTFフォーマットにおいてsiRNAでトランスフェクトされた細胞は、細胞生存率、遺伝子サイレンシングなどについて評価することが可能である。細胞製造率研究は、公知の方法に従ってウェルプレート中で実施することが可能である。加えて、遺伝子サイレンシングは、標的タンパク質の存在又は不存在を評価するための、当該技術分野で公知の多様な技術によりウェル中の内容物で評価することも可能である。もしくは、遺伝子サイレンシングの量は、公知のアッセイにより、ウェルから内容物を取り除くことによって評価することが可能である。多様な態様において、例えば、UV、発光、蛍光又は光散乱検出システムのような光学検出システムに適合するように設計される。光学検出システムに適合した態様において、ウェルの壁は、不透明に、又は光学的検出を妨害することが可能な光散乱が減少する、又は最少になるように作製することが可能である。
一つの態様において、遺伝子サイレンシングを誘導するためのRTFプロトコルの結果は、高含量スクリーニング(「HCS」)又は高スループットスクリーニング(「HTS」)を実施するためのシステムを使用して検出する又はモニターすることが可能である。HCS分析は、特異的トランスロケーション及び形態学変化、レセプター輸送、細胞毒性、細胞移動度、細胞伸展などを測定するために使用することが可能である。HCS研究は、ArrayScan(登録商標) HCSリーダー又はKineticScan(登録商標) HCSリーダー(Cellomics, Inc.)で実施することが可能である。HCSについての追加の情報は、米国特許第6,902,883、6,875,578、6,759,206、6,716,588、6,671,624、6,620,591、6,573,039、6,416,959、5,989,835号(これらの各々は本明細書において援用される)に見ることができる。HTS分析(典型的には単一測定としての各ウェルからの蛍光)は、種々の利用可能なリーダーを使用して実行することが可能である。
一つの態様において、本発明は、siRNA RTFプロトコルの結果の検出が実施される場所、装置又はシステムへウェルの内容物を有するように構成されたウェルプレートを含む。そのようなものとして、細胞がウェルからニトロセルロースのような基材へ移されるシステムを含む、湿式移送検出システムを用いることが可能である。ウェル内容物の前記基材への移送に続いて、検出プロトコルを実行することが可能である。こうしたウェルプレート移送システムの例はニトロセルロースを含むことが可能であり、ここで細胞内内容物に到達するため細胞膜を透過性にする、又は破壊するように、ウェル内容物を処理することが可能である。ニトロセルロースへのウェル内容物の移送は、重力又は真空マニフォールドの使用を含むいずれかの適した方法により達成することが可能である。ウェル内容物を含有しているニトロセルロースは次ぎに、特定のウェルを含んでなる、一つまたはそれより多くの細胞の内容物の存在又はレベルを検出するため、抗体に基づいた検出システムなどを使用する検出プロトコルをさらに受けることが可能である。
II.siRNA RTFの最適化
RNAi経路の独特の及び高度に鋭敏な性質のため、細胞内にsiRNAのプールを導入するための、特別に有用な方法論が開発された。従って、新規RTF方法論はsiRNAのプールを使用するために開発された(「siRNA RTF」)。そのようなものとして、siRNA RTFを実行するために最近開発されたプロトコルは、合理的設計、siRNA安定化、siRNA標的化特異性及びsiRNAをプールすることに基づいた最近開発されたsiRNA技術でこうしたプロトコルを増強することにより改変された。それ故、siRNA RTFプロトコルで遺伝子サイレンシングを実行するための改良された方法が本明細書に示されている。
一つの態様において、本発明は植物及び動物界の種の多様な組からの細胞の多様なタイプに関して使用することができる。好ましくは、細胞は哺乳類種からのものであり、ヒト、他の霊長類、ウマ、ブタ及びマウスからの細胞が含まれる。例えば、細胞はHT−29細胞、LNCaP−FGC細胞、A549細胞、MDA−MB453細胞、HepG2細胞、THP−I細胞、miMCD−3細胞、HEK293細胞、3T3細胞、HeLaS3細胞、MCF7細胞、Cos−7細胞、CHO−K1細胞、BxPC−3細胞、DU145細胞、ジャーカット細胞、PC−3細胞、Capan−1細胞、HuVEC細胞、HuASMC細胞などであり得る。加えて、植物のいずれの種も、遺伝子サイレンシングの効果を決定するために使用することができる。
細胞密度と称される、ウェル当たりの細胞数は、siRNA RTFを成功させるための重要なパラメーターである。siRNA RTFプロトコルは、DNAを使用するRTFプロトコルと比較して、より低い細胞密度でより良好な結果を得ることができる。例えば、96ウェルプレートは、ウェル当たり約1,000〜35,000細胞、より好ましくはウェル当たり約2,000〜30,000細胞、さらにより好ましくはウェル当たり約2,500〜20,000細胞の細胞密度、さらにより好ましくはウェル当たり約3,000〜15,000細胞、そして最も好ましくはウェル当たり約3,500〜10,000細胞の細胞密度である。また、ウェル当たりの細胞数は、異なった細胞培養面積を有するウェルに外挿することが可能である。所与のウェルに播種される、細胞の適切な数を計算するための一つの可能な式は、約0.3cm2〜約0.35cm2の細胞培養面積を有する96ウェルプレートに基づいており(式中、ウェル#2は96ウェルプレートである)、以下のように表される:ウェル#1中の細胞=(ウェル#1の面積/ウェル#2の面積)xウェル#2中の細胞。
加えて、siRNA RTFプロトコルは、トランスフェクションの特定の様式が有用であるか、又は最適な結果を提供するかを決定するために、最適化することが可能である。従って、トランスフェクションのいずれの様式も、本明細書に記載したsiRNA RTFプロトコルで使用することが可能である。陽性対照siRNAのような、よく特徴付けられたsiRNAを有する頑強で容易にトランスフェクトされる細胞株(例えば、HeLa)を使用することにより、ポリヌクレオチド担体を広い範囲の濃度を越えて使え、細胞密度及び総siRNA濃度の通常使用される範囲を越えて使用できる。従って、細胞生存率及びトランスフェクション効率を、前記濃度勾配でアッセイすることが可能である。それ故、どのトランスフェクション様式が好ましくない細胞毒性を含むことなしに高度に効率的な遺伝子サイレンシングを生み出すことができるかどうかを決定するため、最適化研究をトランスフェクションの特定の様式又はポリヌクレオチド担体濃度勾配で実施することが可能である。
一つの態様において、本発明は、RNAi経路を介した遺伝子サイレンシングを実行するためのsiRNA RTFプロトコルの最適化に関する。そのようなものとして、siRNA RTFの最適化は次のいずれかを含むことが可能である:(1)プレートのタイプを選択すること;(2)ウェル中に沈着され、及び乾燥されているsiRNAを可溶化又は懸濁化するための適切な溶液を選択すること;(3)具体的遺伝子を沈黙させるための特定のsiRNAを選択すること;(4)siRNA安定性及び/又は特異性を増強するために個々のsiRNAに対して応用可能ないずれかの修飾又はコンジュゲートを同定すること;(5)siRNAが適した水性媒質に可溶化又は懸濁化できるように、固体表面上にsiRNAを応用すること及び乾燥させること;(6)トランスフェクションの適した様式を選択すること;(7)脂質のような、siRNAのためのポリヌクレオチド担体を選択すること;(8)siRNAを可溶化すること、又は懸濁化すること;(9)siRNAをポリヌクレオチド担体と複合体形成させてsiRNA−担体複合体を形成させること;及び(10)siRNA−担体複合体と細胞タイプ又は選択されたタイプと混合させること。それ故、siRNA RTFプロトコルを最適化することで、従来のフォワード及びリバーストランスフェクション法よりも劇的な改良を生じることが可能である。
一つの態様において、本発明は、前記の最適化を伴って実行するためのsiRNA RTFプロトコルを含むことが可能であり、次のいずれかを含むことができる:(a)多ウェルプレートの2又はそれより多くのウェルに少なくとも一つのsiRNAを応用すること、ここでsiRNAは標準遺伝子を標的としている対照siRNAである;(b)各ウェルの底にsiRNAを乾燥させること;(c)siRNAを可溶化又は懸濁化するため、各ウェル中のsiRNAに媒質又は緩衝液のような水性溶液を加えること、及び場合により、溶液はsiRNA−担体複合体が形成可能なように、ポリヌクレオチド担体を含み;(d)siRNAが単独で又はsiRNA−担体複合体として溶液中ぬ存在する各ウェルに適切な数の細胞を添加すること;(e)細胞が添加された後、トランスフェクションのいずれかの様式により可能である、siRNAの細胞内への侵入を起こすこと;及び(f)siRNAによる細胞のトランスフェクションが起こりうる条件下にプレートを維持すること。トランスフェクションに続いて、細胞増殖及び/又は細胞分割が起こるであろう、及び遺伝子サイレンシングが起こることができる条件(液体媒質、温度、ガス分圧など)に細胞をさらす。これらの条件は、必須ではないが、トランスフェクションが起こる条件と同一であることができ、当該技術分野では公知である。
III.ウェルプレート
一つの態様において、本発明は、ウェルプレート中の底で乾燥された遺伝子サイレンシング溶液の使用を含む。本発明に関連して使用されるウェルプレートは、好ましくは、NUNC(商標)、NUNCLON(商標)、MICROWELL(商標)及びFLUORONUNC(商標)プレート(例えば、それらの各々はNalge Nunc International of Rochester, NY、及びNunc A/S of Denmark から得ることができる)、COSTAR(商標)、COSTAR THERMOWELL(商標)及びCORNING(商標)プレート(例えば、それらの各々はCorning から入手可能である)、BD FALCON(商標)及びOPTILUX(商標)プレート(例えば、Becton, Dickinson and Company から入手可能である)及びGREINER(商標)、CELL COAT(商標)及びCELLSTAR(商標)プレート(例えば、Greiner Bio-One から入手可能)のような製品を含む、細胞培養プレート及び他の細胞培養表面含有装置のかなり多数の商業的供給元から購入可能である、フォーマットされた、及び区別できるウェルアレー(例えば、48、96、384又は1536−ウェルプレート)である。
一つの態様において、本ウェルプレートは、細胞生長及び増殖に適するように構成されていることで特徴付けることが可能である。ウェルプレートは、ガラス、ポリスチレン又はいずれかの均等材料により作成することが可能であり、丸い及び/又は平たいウェル床を有することが可能である。しかしながら、特定の分析機器は、平底表面を使用した場合に増強された機能性を有することが可能である。加えて、実質的に平たい床を有しているウェルは、均一な細胞間隔及び単層形成を提供することができる。それ故、実質的に平底表面を有するのがウェル床には好ましい。ウェル床は、ポリスチレンの照射、コロナ放電、プラズマ放電又はマイクロ波プラズマ放電のような物理的又は化学的処理を受けることが可能である。こうした処理は、組織培養品表面では慣用的であることができ、それにより接着性真核細胞が接着し及び成長することができる。加えて、ウェルはいずれの化学コーティングによっても修飾することができないが、ポリ−L−リジン(「PLL」)、ラミニン、コラーゲン、又は細胞の接着性を改良する均等物でコートすることが可能である。
加えて、各ウェルが、6〜2000の間のウェル、及びより好ましくは1536ウェル、384ウェル又は96ウェルを有することが好ましい。また、約5〜約2000マイクロリットル(「uL」)の間で変化する容量、及び約0.02cm2〜約4.2cm2、96ウェルプレートについて約0.3cm2〜約0.35cm2の間の範囲にある、ウェル底表面又は細胞床により表される総培養面積を有するウェルが好ましい。
さらに、いくつかの例において、ウェルはMATRIGEL(商標)(Beckinson Dickerson)のような物質でコートされておらず、又はCELLBIND(商標)プレート(Corning)を構築するために使用されているものと同一の方法で製造されていないことが好ましい。このことは、一部、これらの技術の両方が細胞接着を増強するために慣用的に使用されているが、RTFプロトコルにおいてはsiRNA取り込み及び/又は遺伝子サイレンシングを減少させる又は減弱させることが観察されているからである。
さらに、処理ポリスチレンのような単一材料で形成された多ウェルプレートを本発明で使用することができる一方、2つ又はそれより多くの材料から形成されたプレートも使用することができる。こうした多材料ウェルプレートは、その各々が本明細書において援用される米国特許第6,514,464、5,457,527、RE38,214及び5,487,872号に概説されている。従って、多材料ウェルプレートは、組織培養及びRNAi沈着に適したウェル床表面を含む所望の構造特性を提供することが可能である(ここで、壁は適していない)。また、ウェル床は、特定の下流アッセイに適している光学特性を有することが可能である。例えば、ウェル床真下のプラスチック又はガラスは可視及び/又はUV光に対して透明であり、各ウェルの側壁を取り囲んでいるプラスチックは、隣接するウェル間の光の通過を遮断している。
一つの態様において、プレートは除去可能な底を含んでなる。そのようなものとして、除去可能な底は、ウェル内容物を基材へ移送することにおいて好ましい。また、除去可能な底を有するプレートは、本明細書に記載した態様のいずれに関連しても使用することが可能である。除去可能な底を有するプレートの態様の一例は、底として除去可能なフィルムを有するプレートである。除去可能フィルムは、いずれの適した材料、例えば、ポリオレフィンから作製することが可能である。除去可能フィルムは、光学検出システムに適合可能である(即ち、例えば、可視又はUV光に対して透明であるように、電磁照射の一つまたはそれより多くの波長に対して透明である)。除去可能フィルムを含んでなる態様において、フィルムがプレートから除去される前に、ウェルの内容物の少なくともいくばくかをフィルムに付着させるように、ウェルの内容物を容量で減少させることが可能である。プレートの除去に続いて、フィルムは、ウェルの位置に対応するフィルム上の位置に付着したプレートの内容物を含む。フィルムは次ぎに、いずれか適した検出法で使用することが可能である。一つの例において、ウェル内容物を、例えば、ニトロセルロースのような別の基材に移すためにフィルムを使用することが可能である。また、フィルムがプレートから除去される前に細胞内内容物を暴露させるように、各ウェル中の細胞を破壊することが可能である。基材へ移されたら、前記基材はウェルの内容物を含んでおり、いずれか適した検出法にかけることが可能である。検出法のいくつかの例には、ウェスタンブロッティング、タンパク質−タンパク質ブロッティング、リガンドブロッティング及び核酸ハイブリダイゼーションが含まれる。プレートの内容物をフィルムに付着させる一つの方法は、ウェルの内容物を蒸発させること、及びウェルの水分含量を減少させることである。
一つの態様において、こうしたフィルムを、選択的に透過性である材料で作成することが可能であり、ここで選択的透過性は、例えば、分子サイズに基づいている。この態様において、フィルムはモレキュラーシーブであることができる。一つの例において、フィルムは、陽圧(例えば、ウェルの上から)又は陰圧(例えば、ウェルの下から)が適用された場合、約10kDaより小さな分子が膜を横切るのを可能にするモレキュラーシーブを含んでなることができる。フィルムがモレキュラーシーブを含んでなるところでは、シーブを介して透過可能液体を引き出すこと、そしてウェル内容物を含んでなるより大きな分子を後に残すことによりウェル内容物の水分を減少させることが可能である。
一つの態様において、シーブを含んでなるフィルムを上端に適用できる。ウェル内容物がシーブと接触するように、プレートを反転させることが可能である。プレートの底に穴を開けることができ、又は、もしプレート底にフィルムが存在するならば、フィルムを除去する。モレキュラーシーブに向かってウェル内容物に陽圧を適用することが可能である。もしくは、シーブの下方から陰圧を適用することが可能である。この様式において、ウェルの水分含量が除去され、その間、ウェル内容物がシーブの表面に移される。シーブはその後、本来のプレートと同じ相対的位置に、プレートのウェル内容物を含むであろう。もし望むなら、シーブは次ぎに、例えば、ニトロセルロースのような適した基材に、ウェル内容物を移すために使用することができる(ウェル内容物の既知の位置に)。
一つの態様において、特定の光学特性を与えるために、プレートと組み合わせて用いることが可能である。これらの態様において、プレートの上端及び/又は底の少なくとも一部に、電磁照射の特定の波長に対して選択的に不透明又は選択的に透明であるフィルムを適用することが可能である。フィルムは、電磁照射の一つまたはそれより多くの波長に対するフィルムフィルターとして使用される。例えば、フィルムはUV光に対して不透明であり、可視光に対しては透明であることが可能である(又はその逆)。フィルムはプレートの上部を覆って置くことが可能であり、また、プレートの底に置くことも可能である。電磁照射が下方から試料に到達する態様においては、フィルムをプレートの底に置くことが可能である。電磁照射が上方から試料に到達する態様においては、フィルムをプレートの上端に置くことが可能である。フィルムフィルターは典型的には、プレート基材と接触するであろう。2つ以上のフィルムを一緒に使用することが可能である。2つ又はそれより多くのフィルムを、お互いに隣接させてプレートに適用することにより使用することが可能である(例えば、第一のフィルムを適用し、次ぎに第一にフィルム上に第二のフィルムを適用する)。
本明細書に記載した態様のいずれかに使用されたフィルムは、特定の適用に有用ないずれかの適した材料から作製することが可能である。フィルムは薄く及び柔軟性であるか、又は薄く及び硬質であることができる。フィルムは、ロボットシステムに適合するように作製することも可能である。典型的には、ロボットシステムに適合したフィルムは、一旦フィルムがプレートから除去されたらウェル内容物のパターン又は配置に支障を来すことなく操作可能なように、比較的硬質であろう。
IV.遺伝子サイレンシングプレート
本発明の一つの態様において、前記に従ったウェルプレートは、遺伝子サイレンシングプレートであるように構成することが可能である。従って、ウェルプレートは一つまたはそれより多くのウェル中に遺伝子サイレンシング組成物を含むことが可能である。遺伝子サイレンシング組成物は、サイレンシングのために少なくとも第一の遺伝子を標的とする、少なくとも第一のsiRNAを含む。また、遺伝子サイレンシング組成物は、関係する遺伝子のファミリーに対して方向付けられた単一siRNAを有することが可能である。加えて、ウェルプレートは単一遺伝子を標的としている多siRNA、又は多遺伝子を標的としている多siRNAを有しているウェルを有することが可能である。ウェルプレートは、少なくとも一つのウェルに適用されたsiRNA含有溶液を有していることにより遺伝子サイレンシングプレートであることができ、それは次ぎに、溶液を除去する様式で乾燥され、乾燥遺伝子サイレンシング組成物を残す。
いくつかの例において、適応する、沈着する及び/又はウェル床上にsiRNA溶液をスポットする、及びプレート上に物質を乾燥することに先だって、溶液のこれらのタイプのいくつかの一つに可溶化する。通常、限外濾過によるような、RNaseの夾雑を除去するためのさまざまな当該技術分野で認識されている技術の一つにより処理された蒸留水中に、siRNAを溶解する。もしくは、限定されるわけではないが、リン酸緩衝液、ハンクスBSS、アールBSS又は生理学的食塩水を含む、いくつかの生理学的に適合したRNaseフリー緩衝液の一つにsiRNAを溶解することができる。これらの溶液は、siRNAの特性を変化させることなく又はRTF法の続いての段階で加えられる細胞を損傷させることなしに、siRNAの安定性を増強する(例えば、RNase阻害剤)又はスポッティング又は乾燥効率を増強するために溶液の粘度を改変する(例えば、スクロース)、一つまたはそれより多くの追加の試薬を含有することができる。
さらに別の場合において、siRNAは、選択されたプレートへのスポッティング、乾燥又はスティッキングを増強するであろう溶液又は媒質に可溶化することができる。場合により、siRNAに適合している揮発性溶媒を使用することが可能である。一つの例には、エタノールのようなアルコールの使用が含まれ、容易に乾燥することが可能であり、そしてウェル床上に乾燥遺伝子サイレンシング組成物を残すことが可能である揮発性溶媒を形成させるため、水と混合することが可能である。いくつかの例において、siRNAの溶液は、時間経過により容易に酸化され、細胞へ毒性であることが可能である脂質を含んでいない。他の例においては、ウェル床上に沈着され及び乾燥される前に、siRNAをポリヌクレオチド担体と前複合体形成される。
従って、siRNAが乾燥されそして再懸濁された時に、対照siRNAの既知の量又は濃度が遺伝子サイレンシングに利用可能であるように、ウェルに前もって決定された量のsiRNAを投与することが可能である。各ウェルの底に沈着されたsiRNA溶液の容量は、保存溶液の濃度、siRNAの機能性、及び遺伝子サイレンシングに利用可能な所望のsiRNA量又は濃度に依存することが可能である。一般に、効率的に標的とされた遺伝子を沈黙させるために必要とされるトランスフェクション間のsiRNAの濃度は、siRNAの機能性に依存する。例えば、トランスフェクション間のsiRNAの濃度は、高度に機能的なsiRNA(例えば、50〜100nMで標的発現の>90%を沈黙させる)についてピコモル(例えば、300〜900pM)から、中程度に機能的なsiRNA(例えば、50〜100nMで標的発現の70%〜90%のサイレンシング)についてナノモル(例えば、100nM)まで、及び低機能性についてマイクロモル(例えば、1uM)までの範囲であることができる。例えば、96ウェルプレートについて、1uM siRNA含有溶液の5〜50uLの沈着が、RTFプロトコルについてのsiRNAの受容可能な濃度を発生させるために十分である。より小さな又はより大きなサイズのウェルについては、siRNAの量及び濃度を、各ウェルの最終濃度について補正することにより調整することが可能である。
一つの態様において、遺伝子サイレンシング組成物中のsiRNAの総量は、細胞が含まれているウェルのみのトランスフェクトしている細胞についての量で表現することが可能である。そのようなものとして、RTF間に水性媒質中に可溶化され又は懸濁化されている場合、siRNAの総濃度は約100nM未満であることができる。より好ましくは、RTF間に水性媒質中に可溶化され又は懸濁化されている場合、siRNAの総濃度は約50nM未満であることができる。さらにより好ましくは、RTF間に水性媒質中に可溶化され又は懸濁化されている場合、siRNAの総濃度は約25nM未満であることができる。その上に好ましくは、RTF間に水性媒質中に可溶化され又は懸濁化されている場合、siRNAの総濃度は約10nM未満であることができる。最も好ましくは、RTF間に水性媒質中に可溶化され又は懸濁化されている場合、siRNAの総濃度は約1nM未満であることができる。例えば、96ウェルプレート中のsiRNAの量は、ウェル当たり0.1ピコモル(pm」)〜約100pm、より好ましくは約1pm〜約75pm、そして最も好ましくは約10pm〜約62.5pmであることが可能であり、ここで他の数のウェルを有しているプレートについては、対応するsiRNAの量を計算することが可能である。
加えて、各ウェルに加えられたsiRNAの量は、そのウェル内での単一RTFプロトコルで使用するためには十分であることができる。即ち、遺伝子サイレンシング組成物中のsiRNAは、ウェルへ加えられる細胞で使用されるだけの量で存在することが可能である。そのようなものとして、ウェル中に乾燥されたsiRNAの量は、二つの異なったウェルで二つのRTFプロトコルを実施するには不十分である。このことは、遺伝子サイレンシング組成物中に提供されたsiRNAの量は、最適な結果を生み出すため、単一RTFプロトコルのために構成されているからである。また、このことは、多ウェル内に移される保存siRNA溶液を作製する必要性を除去し、それによりRTFプロトコルの複雑さを減少させ、効率を増加させている。
siRNA含有溶液は、手作業の及び自動化プロセスを含むことが可能である、ウェルプレートのウェル内に液体を沈着させるために当該技術分野の多様な公知の技術を使用して沈着させることが可能である。多様な方法を、siRNA含有溶液を遺伝子サイレンシング組成物に乾燥させるために使用することが可能である。一つの態様において、プレートを滅菌環境で室温にて乾燥させると、沈着溶液を蒸発させて、siRNA及び塩、糖などのような他の条件付け化合物を後に残す。乾燥プレートは、好ましくは、真空で封じるか又は滅菌容器内で不活性ガスの存在下で封じ、サイレンシング機能性を喪失することなく長時間、−80℃〜37℃の範囲の温度で貯蔵される。それ故、少なくとも一つのウェル中に、実質的に乾燥された遺伝子サイレンシング組成物を有しているプレートは、室温で貯蔵し、そして従来の経路を介して出荷することが可能であり、それでもsiRNAの完全性及び機能性を維持している。
一つの態様において、ウェルプレートは、対照及び較正機能に使用することが可能である、種々の他のウェルを有することができる。そのようなものとして、ウェルプレートはsiRNAを欠いている、又は実質的に欠いている少なくとも一つのウェルを有することが可能である。また、ウェルプレートは、トランスフェクション対照、陽性対照又は陰性対照であり得る、少なくとも第一の対照siRNAを含む少なくとも一つのウェルを有することが可能である。例えば、対照siRNAは以下の少なくとも一つを含むことが可能である:(a)既知の遺伝子をサイレンシング可能であるsiRNA;(b)トランスフェクション対照siRNA;(c)蛍光マーカーを有しているsiRNA;(d)少なくとも一つの毒性モチーフを有しているsiRNA;(e)非機能的siRNA;又は(f)RISCにより用いられることを阻害し、及び加工されるsiRNA。
V.siRNA
一つの態様において、前記乾燥遺伝子サイレンシング組成物は、少なくとも第一の標的遺伝子を沈黙させる少なくとも第一のsiRNAを含む。本遺伝子サイレンシングは、siRNAがウェル中で細胞をトランスフェクトするために十分な量で水性媒質中に可溶化又は懸濁化されることが可能であるように構成されている。場合により、ウェル中のsiRNAの総量は、そのウェルについてのみリバーストランスフェクションを実行するために十分である。加えて、siRNAが、少なくとも一つのループを有するヘアピン構造、修飾又はコンジュゲートを有していてもよい。また、siRNAは、遺伝子を標的とするように合理的に設計することが可能である。さらに、遺伝子サイレンシング組成物は、siRNAのプールを含むことが可能である。
一つの態様において、siRNAは標的遺伝子をサイレンシングすることにおいて機能的に最適化するように選択される。好ましくは、siRNAは50%〜100%の間の遺伝子サイレンシング機能性を有する。より好ましくは、siRNAは70%〜100%の間の遺伝子サイレンシング機能性を有する。さらにより好ましくは、siRNAは90%〜100%の間の遺伝子サイレンシング機能性を有する。機能的遺伝子の設計は、オンターゲッティングを増加させ、オフターゲッティングを減少させ、安定性を増加させる修飾を提供することに基づいており、特定のmRNA遺伝子及びそれらの組合わせについて合理的に設計される。
加えて、siRNAアンチセンス鎖は、標的配列(例えば、mRNA)と多様なレベルの相補性を有することが可能である。即ち、アンチセンス鎖は、標的配列の遺伝子サイレンシングを誘導することについて機能的である。そのようなものとして、センス鎖は、標的配列と実質的に相同であり得る。好ましくは、アンチセンス鎖は標的配列と50〜100%の相補性を有することが可能である。より好ましくは、アンチセンス鎖は標的配列と70〜100%の相補性を有することが可能である。さらにより好ましくは、アンチセンス鎖は標的配列と80〜100%の相補性を有することが可能である。さらにまたより好ましくは、アンチセンス鎖は標的配列と90〜100%の相補性を有することが可能である。最も好ましくは、アンチセンス鎖は標的配列と100%の相補性を有することが可能である。
100%未満の相補性を有している配列は、一つまたはそれより多くのヌクレオチドのバルジ、オーバーハング、又は一つまたはそれより多くのヌクレオチドミスマッチを有することが可能である。加えて、siRNAは、センス又はアンチセンス鎖の3’及び/又は5’末端に付随した1〜6ヌクレオチドのオーバーハングを有することが可能である。加えて、オーバーハングは相補性の計算から除外されるが、標的配列との相同性又は相補性を有することが可能なことを認識すべきである。化学修飾、バルジ又はミスマッチは、特定の位置でsiRNA又はshRNAを切断するために、RNase−III Dicerを方向付けることが可能である。二つのヌクレオチド3’オーバーハングは、天然のsiRNAを模倣することができ、普通に使用されているが必須ではない。好ましくは、オーバーハングは二つのヌクレオチド、最も好ましくはdTdT又はUUを含むことが可能である。また、オーバーハングは、標的配列と相補性又は相同性を有しているセンス及び/又はアンチセンス鎖の3’末端に二つのヌクレオチドを含むことが可能である。siRNAは二つのヌクレオチドオーバーハングを有することが可能であり、ここで内部位置についてはC>U>G>A、及び末端位置についてはA>G>U>Cのヒエラルキーが好ましい。siRNA構造の追加の情報及びDicer特異性は、Vermeulen A, et. al; The contributions of dsRNA structure to Dicer specificity and efficiency; RNA (2005), 11 :674-682 に見ることができる。
一つの態様において、合理的に設計されているとして同定されているリストからsiRNAを選択することが好ましい。そのようなものとして、siRNAを出願番号60/678,165を有する援用された米国仮出願の表Iから選択することが可能である。表Iは「siGENOME Sequences for Human siRNA」と題し、カラム「遺伝子名」、「寄託番号」、「配列」及び「配列番号」から成っている。表Iは約92、448の19−mer siRNAセンス鎖配列を掲げており、ここでアンチセンス鎖配列は、明瞭さのため割愛されている。表Iに掲げられているsiRNA配列は配列番号1から約92,448を含んでおり、ここで各々は、好ましくは、センス鎖上の及び/又はアンチセンス鎖上の3’UUオーバーハングも含むことが可能である。表Iの約92,448配列の各々は、アンチセンス鎖上に5’リン酸も含むことが可能である。援用された仮出願の表Iに掲げられた約92,448配列の内、約19,559は、修飾のオンターゲッティングセットを含む。オンターゲット修飾を有する、配列番号により同定された配列のリストが、「List of Table I Sequences Having On-Target Modifications Identified by SEQ.ID NO.」と題された表IIに示されている。オンターゲット修飾は配列番号1〜22,300にある。遺伝子サイレンシング組成物のsiRNAは、個々に(例えば、ウェル当たり一つのsiRNA配列)又はプールのセットの一部として使用することができる。
一つの態様において、siRNAはショートヘアピンsiRNA(「shRNA」)として構成することができる。このことは、shRNAが、センス領域とアンチセンス領域を連結しているループ構造を含んでヘアピン構造を形成する、siRNAの一つの形態であるためである。また、shRNAは、siRNAの他のタイプと比較して実質的に類似の機能性を有することが可能である。加えて、shRNAは、ヌクレオチドが以下により詳細に記載される修飾を含んでいない限り、修飾siRNAとは考えられない。siRNAがヘアピンshRNAとして存在する場合、鎖のサイズ及び配向は変化しうる。好ましくは、遺伝子サイレンシング組成物中に存在するshRNAは、センス鎖又は領域及びアンチセンス鎖又は領域を有する。shRNAのセンス領域及びアンチセンス領域は、約18〜31塩基対のステム中に組織化されている、より長い単分子構造の一部である。センス領域及びアンチセンス領域はポリヌクレオチド又は他の連結基、ならびにそれらの組み合わせを含んでなることが可能であるループ構造を介して連結されている。好ましくは、ポリヌクレオチドループは4〜10の間のヌクレオチドから成っている。より好ましくは、ステムは26〜31の間の塩基対であり、ループはヒトmRNA hsa−mir−17(配列5’→3’:−AUAUGUG−、配列番号1)から誘導される。shRNAは、siRNAの他のタイプに類似した3’及び/又は5’オーバーハングも含むことが可能である。もし存在する場合、オーバーハングはdTdT、UUであり得るか、又は標的配列と相同性又は相補性を有することが可能である。
shRNAは、右回りか又は左回りであるヘアピン、ならびに折れたヘアピンを含むことが可能である。右回りshRNAとは、その5’→3’配向中にセンス領域、ループ領域そして次ぎにアンチセンス領域を有する単分子配列を指すことを意味する。同様に、左回りshRNAとは、その5’→3’配向中にアンチセンス領域、ループ領域そして次ぎにセンス領域を有する単分子配列を指すことを意味する。最も好ましくは、shRNAは:(1)アンチセンス−ループ−センス組織化で組織化され;(2)26〜31ヌクレオチドのステム長を有し;及び(3)ヒトmiRNA hsa−mir−17から誘導されたループを有する。ヘアピン構造を有しているsiRNAの記述及びさらなる例は、本明細書で援用される、「Hairpin Constructs」と題され、2005年3月29日に提出された米国仮特許出願題60/666,474号、及び米国特許出願2004/0058886に見ることができる。
A.化学修飾
一つの態様において、遺伝子サイレンシング組成物中のsiRNAは、化学合成(例えば、本発明で援用される米国特許第5,889,136号の2’−ACE化学)、酵素的方法を使用する合成(例えば、長いdsRNAのインビトロDicer消化)、又はプラスミド又はベクター構築物からの発現を含む、いくつかの本分野で認められている手段の一つにより発生することが可能である。siRNAを製造するためにACE化学が使用される例において、siRNAを可溶化するために使用される溶液は、2’−ACE保護基の保存に適合しているpHを有することが好ましい。それ故、6.0以上、より好ましくは約7.0〜約8.0の間、そして最も好ましくは約7.5〜約8.0の間のpHを溶液が持つようにするのが好ましい。ACE基は存在しないが、他の化学修飾が存在する場合、pHは約pH7.0〜約7.3の間であることができる。
簡単に記載したように、遺伝子サイレンシング組成物中のsiRNAは、特異性及び/又は安定性を増加させるように修飾することが可能である。従って、オフターゲッティングを減少させるために特異性修飾をいずれのsiRNA内にも取り込むことが可能である。こうした特異性修飾はオンターゲッティングの一つの側面であることが可能である。加えて、siRNAは特異性及び安定性修飾の両方を有することが可能である。特異性を増強する修飾のさらなる記述には、2004年4月1日に提出されたPCT特許出願番号PCT/US04/10343、公開番号WO2005/097992を有するPCT出願、及び米国仮特許出願番号60/542,668及び60/543,661(これらの開示は本明細書において援用される)に記載されているものが含まれる。
オフターゲット効果を減少できる化学修飾の例には、siRNAのリボース基上の多様な2’修飾が含まれ、及びリン酸基を含むことができる5’ホスホリル修飾も含むことが可能である。こうした化学修飾は、各々、二重鎖領域の第一の5’センスヌクレオチド及び第二の5’センスヌクレオチドである、センス鎖の1位及び2位のヌクレオチド上の2’修飾を含むことが可能である。加えて、化学修飾は、各々、二重鎖領域の第一の5’アンチセンスヌクレオチド及び第二の5’アンチセンスヌクレオチドである、アンチセンス鎖の1位及び2位のヌクレオチド上の2’修飾を含むことが可能である。化学修飾は、アンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドの5’炭素上での、リン酸基のようなホスホリル部分も含むことが可能である。
特異性増強化学修飾の例は、第一及び第二センスヌクレオチドでの2’修飾を含むことができ、及びアンチセンス5’末端ヌクレオチドの5’炭素上でのホスホリル部分を含むことが可能である。第二の例は、第一及び第二センスヌクレオチド及び第一及び第二アンチセンスヌクレオチドでの2’修飾を含むことができ、及びアンチセンス5’末端ヌクレオチドの5’炭素上でのホスホリル部分を含むことが可能である。第三の例は、第一及び第二センスヌクレオチド及び第二アンチセンスヌクレオチドでの2’修飾を含むことができ、及びアンチセンス5’末端ヌクレオチドの5’炭素上でのホスホリル部分を含むことが可能である。第四の例は、センス5’末端ヌクレオチド上の5’デオキシ基修飾、及び第一及び第二センスヌクレオチドでの2’修飾を伴った又は伴わない第一及び/又は第二アンチセンスヌクレオチドでの2’修飾、ならびにアンチセンス5’末端ヌクレオチドの5’炭素上でのホスホリル部分を含むことが可能である。さらに、いずれの2’修飾も不在下で、一アンチセンスヌクレオチドの5’炭素上のリン酸基の修飾を含むことは、オフターゲッティングを減少させるためにいくらかの利点を与えることが可能である。いくつかの例において、センス5’末端ヌクレオチドの5’炭素がリン酸基を有していないことが好適である。
例えば、オンターゲット修飾は、センス鎖のヌクレオチド位1及び2(例えば、5’末端の第一及び第二ヌクレオチド)上の2’−O−メチル、及びアンチセンス鎖上の5’ リン酸を含むことが可能である。加えて、オンターゲット修飾は、アンチセンス鎖の1及び/又は2位のヌクレオチド(アンチセンス鎖の5’末端から二番目のヌクレオチド)上の2’修飾、及びアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドの5’位のリン酸部分を含むことが可能である。好ましい修飾は、第一及び第二センスヌクレオチド及び第二アンチセンスヌクレオチドでの2’修飾、及びアンチセンス5’末端ヌクレオチド上のリン酸基を含む。
一つの態様において、本発明は、安定性増強修飾を有しているsiRNAを含む。そのようなものとして、安定性修飾は、特異性修飾に加えて、又は代わりに使用することが可能である。加えて、安定性修飾を有しているsiRNAは、ヌクレアーゼによる分解を防止できるので都合がよい。従って、安定性修飾はsiRNAの可能な有効期間を延長でき、長時間にわたって、乾燥遺伝子サイレンシング組成物を有しているプレートを製造及び貯蔵する能力を増加させることが可能である。さらに、安定性修飾は、長時間にわたって、標的サイレンシングを誘導するために使用することが可能である。こうした安定性修飾は、米国特許出願番号60/542,646,60/543,640及び60/572,270、米国出願番号2004/0266707及び2004/0198640及び国際公開番号WO2005/097992及びWO2004/090105(各々が本明細書において援用される)に記載されている。細胞中で延長された遺伝子サイレンシングはいくつかの理由で都合がよい。いくつかの例において、標的化された遺伝子のタンパク質は長い半減期(例えば、24〜48時間を超えた)を有することが可能であり、タンパク質の量を減少させるためには延長された遺伝子サイレンシングを必要とする。
一つの態様において、本発明は、センス鎖、アンチセンス鎖及び/又はsiRNA二重鎖の安定性を増強するように設計された化学修飾パターンを含有するsiRNAを含む。例えば、安定化siRNAは、第一及び第二センスヌクレオチド上の2’修飾、少なくとも一つのからすべてのピリミジンセンスヌクレオチド上の2’修飾、第一及び/又は第二アンチセンスヌクレオチド上の2’修飾、少なくとも一つのからすべてのピリミジンアンチセンスヌクレオチド上の2’修飾、及び/又はセンス又はアンチセンス5’末端ヌクレオチドでのリン酸修飾を有している5’炭素を含有することが可能である。2’修飾は2’−O−脂肪族修飾又は2’−ハロゲン修飾であり得る。安定性修飾は、ホスホロチオエート又はメチルホスホネートによるヌクレオチド間修飾も含むことが可能である。
第一の例において、安定化siRNAは、第一センス及び第二センスヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾、少なくとも一つのからすべてのセンスピリミジンヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾又は無修飾、少なくとも一つのからすべてのアンチセンスピリミジンヌクレオチド上の2’−ハロゲン修飾、及びアンチセンス5’末端ヌクレオチドでの5’炭素ホスホリル修飾を含むことが可能である。第二の例は、第一センス及び第二センスヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾、少なくとも一つのからすべてのセンスピリミジンヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾又は無修飾、少なくとも一つのからすべてのアンチセンスピリミジンヌクレオチド上の2’−ハロゲン修飾、アンチセンス5’末端ヌクレオチドでの5’炭素ホスホリル修飾、及び第一センスヌクレオチドの5’炭素上のコレステロールコンジュゲートを含むことが可能である。第三の例は、第一センス及び第二センスヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾、少なくとも一つのからすべてのセンスピリミジンヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾又は無修飾、少なくとも一つのからすべてのアンチセンスピリミジンヌクレオチド上の2’−ハロゲン修飾、アンチセンス5’末端ヌクレオチドでの5’炭素ホスホリル修飾、及び第一センスヌクレオチドの5’炭素上の蛍光タグコンジュゲートを含むことが可能であり、ここで蛍光タグは、Cy3のようないずれか公知の蛍光基によることができる。第四の例は、第一センス及び第二センスヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾、少なくとも一つのからすべてのセンスピリミジンヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾又は無修飾、第一及び/又は第二アンチセンスヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾、少なくとも一つのからすべてのアンチセンスピリミジンヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾又は無修飾、及び第一センスヌクレオチドの5’炭素上の蛍光タグコンジュゲートを含むことが可能である。第五の例は、第一センス及び第二センスヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾、少なくとも一つのからすべてのセンスピリミジンヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾又は無修飾、第一及び/又は第二アンチセンスヌクレオチド上の2’−O−脂肪族修飾、少なくとも一つのからすべてのアンチセンスピリミジンヌクレオチド上の2’−ハロゲン修飾又は無修飾、及びアンチセンス5’末端ヌクレオチドでの5’炭素ホスホリル修飾を含むことが可能である。加えて、2’−ハロゲンのいずれもを2’又は3’原子のホスホロチオエート基で置き換えることが可能である。また、siRNAのいずれもが、アンチセンス鎖の3’末端にオーバーハングを含むことが可能である。場合により、第二アンチセンスヌクレオチドは、2’−O−メチルのような2’−O−アルキル基を含んでなることが可能であり、及び第一アンチセンスヌクレオチドは、2’−OH又は2’−O−メチルを含んでなることが可能である。別の選択肢において、オーバーハングヌクレオチドは2’修飾を含むことが可能である。
前記に従うと、2’修飾は2’−O−脂肪族修飾であり得る。また、2’−O−脂肪族修飾はセンス鎖及び/又はアンチセンス鎖のいずれのヌクレオチドにも存在することが可能である。脂肪族基は、1〜20炭素又はヘテロ原子を有する飽和又は不飽和、置換又は非置換、及び分枝又は非分枝鎖を含むことが可能である。より好ましくは、脂肪族基は10未満の炭素又はヘテロ原子、より好ましくは5未満の炭素又はヘテロ原子を有し、又はアルキル基である。一つの選択肢において、2−O−脂肪族修飾は2’−O−芳香族置換で置き換えること、又は芳香族基を含むことが可能である。別の選択肢において、脂肪族基は環式であることが可能である。例えば、2’−O−アルキルは、2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−O−プロピル、2’−O−イソプロピル、2’−O−ブチル、2’−O−イソブチル、2’−O−エチル−O−メチル(即ち、−CH2CH2OCH3)、2’−O−エチル−OH(即ち、−OCH2CH2OH)、2’−オルトエステル、2’−ACE基オルトエステル及びそれらの組み合わせから成る群より選択することが可能である。最も好ましくは、2’−O−アルキル修飾は2’−O−メチル部分である。加えて、siRNAが修飾を有する多ヌクレオチドを含む場合、修飾が修飾ヌクレオチドの各々について同一であるという要求はない。しかしながら、本発明の分子を合成することに関して実際的な問題として、全体を通して同一の修飾を使用することが望ましい。
一つの態様において、2’修飾がオルトエステルであるのが好ましい。そのようなものとして、2’修飾は2’−ACE基であり得る。2’−ACE基修飾は、米国特許番号第6,590,093、6,008,400,及び5,889,136号(各々が本明細書において援用される)に概説されている。
加えて、2’−ハロゲン修飾は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素から成る群より選択することが可能である;しかしながら、フッ素が好ましい。特異性修飾と同様に、各それぞれの鎖を通して同一の2’修飾を使用することが望ましい。例えば、2’−O−メチルをセンス鎖上で使用することができ、及び2’−Fをアンチセンス鎖で使用することができる。しかしながら、異なった2’修飾を、同一鎖の異なったヌクレオチド上で使用することも可能である。
B.コンジュゲート
本発明の一つの態様において、siRNAは、センス及び/又はアンチセンス鎖へカップリングされたコンジュゲートを含むことが可能である。コンジュゲートは多様な機能を遂行することができ、又はsiRNAに追加の機能性を提供する。例えば、コンジュゲートは担体と複合体形成されていても又はいなくても、細胞膜を通したsiRNAの貫入を増加させることが可能である。加えて、コンジュゲートはラベルすることが可能であり、ラベルされたsiRNAが細胞に侵入したかどうかを決定するためにモニターする、又は同定することが可能である。
例えば、コンジュゲートはアミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、抗原、毒素、ホルモン、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ポリヌクレオチド、糖、ステロイド、炭水化物、ポリサッカリド、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコール、コレステロール、リン脂質、ジ−及びトリ−アシルグリセロール、脂肪酸、脂肪族、酵素基質、ビオチン、ジゴキシゲニン、ヘキシル−S−トリチルチオールのようなチオエーテル、チオコレステロール、ドデカンジオール又はウンデシル基のようなアシル鎖、ジ−ヘキサデシル−rac−グリセロール、トリエチルアンモニウム 1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート、ポリリシン及びポリエチレンイミンのようなポリアミン、アダマンタン酢酸、パルミチル部分、オクタデシルアミン部分、ヘキシルアミノカルボニル−オキシコレステロール、ファルメシル、ゲラニル ゲラニルゲラニル部分、ローダミン及びフルオレセインのような蛍光ラベル、放射活性ラベル、酵素ラベルなどを含むことが可能である。好ましいコンジュゲートは、コレステロール及び蛍光ラベルを含む。
コレステロール,ポリエチレングリコール又はポリペプチドのようなコンジュゲートは、細胞内へのsiRNAの送達を容易にすることができる。好ましくは、コンジュゲートが脂質である場合、脂質はsiRNAに付随している時には細胞毒性を誘発しない。加えて、ポリペプチド又は脂肪酸又はコレステロールのような脂質コンジュゲートについては、siRNA−担体複合体(例えば、リポプレックス)を形成する必要性を除くことが可能である。一部、このことは、ポリペプチド又は脂質が、細胞膜を横切って輸送することに貢献することが可能であるためである。
例えば、コレステロールコンジュゲートは、サイレンシング剤としてのsiRNAの効力を改良するために用いることが可能である。この改良は、修飾及び無修飾siRNA、ならびにshRNAで得ることが可能である。センス鎖へのコレステロールのカップリングは、センス鎖への2’修飾による負の効果を軽減することができる。いくつかの場合において、コレステロールは、ポリヌクレオチド担体を使用することなしに、細胞内へのsiRNAの受動送達を可能にすることができる;しかしながら、脂質のようなポリヌクレオチド担体は、コレステロールコンジュゲートと共に使用することが可能である。従って、孔を形成し、それを通ってsiRNAが通過することができることによるか、又は膜内へ取り込まれ、続いてエンドサイトーシス経路又は膜リサイクリングにより細胞内へ送達されることによりsiRNA−コレステロールが送達される。
加えて、蛍光コンジュゲートのようなラベルは、細胞内へのsiRNAの送達をモニターするために使用することが可能である。蛍光ラベルは、細胞内への対照siRNAの送達を測光法的にモニターするために使用することが可能である。好ましくは、蛍光ラベルはローダミン又はフルオレセインである;しかしながら、siRNAとカップルすることができる他の蛍光分子も使用することが可能である。蛍光ラベルの具体的例には、Cy3(商標)、Cy5(商標)(Amersham)、他のシアナイン誘導体、FITC、ALEXA(商標)又はBODIPY(商標)色素の一つ(Molecular Probes、Eugene,OR)、ダンシル部分などが含まれる。粒子がトランスフェクション効率に影響しないサイズを有する限り、無機蛍光粒子のような蛍光微粒子を使用することも可能である。ラベルは、トランスフェクトされた細胞内のラベルされたsiRNAの分布を可視化するために使用することができる。加えて、ラベルは、トランスフェクト細胞と非トランスフェクト細胞を区別するために使用することが可能である。そのようなものとして、細胞の集団をラベルされたsiRNAでトランスフェクトし、そしてFACSにより選別することができる。さらに、蛍光ラベルはHCS及びHTC分析技術に特によく適している。例えば、トランスフェクトされた細胞を同定し、次ぎにHCS分析を使用してさらに試験することが可能である。
ラベルされたヌクレオチドの使用は当業者には公知であり、質量又は放射活性ラベルのような蛍光ラベル以外のラベルを、こうしたタイプのラベルが都合がよいであろう応用で使用することができる。siRNAリバーストランスフェクションに適用可能であるラベルされた分子のさらなる記述は、米国仮特許出願番号60/542,646、60/543,640及び60/572,270、及びPCT出願番号PCT/US04/10343(各々が本明細書において援用される)に見られる。
コンジュゲートはsiRNAに直接又はリンカーを介して結合させることが可能である。コンジュゲートは、siRNA内のいずれのセンス又はアンチセンスヌクレオチドへも結合させることが可能であるが、3’末端ヌクレオチド及び/又は5’末端ヌクレオチドを介したカップリングが好ましい。内部コンジュゲートは、リボース基の2’位のヌクレオチドへ、又は別の適した位置へ直接的に又はリンカーを介して間接的に結合することができる。例えば、コンジュゲートは5−アミノアリルウリジンへカップリングさせることが可能である。好ましくは、コンジュゲートを、センス3’末端ヌクレオチド、アンチセンス3’末端ヌクレオチド及びアンチセンス5’末端ヌクレオチドへ結合することが可能である。
例えば、リンカーは、修飾又は無修飾ヌクレオチド、ヌクレオシド、ポリマー、糖、炭水化物、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのようなポリアルキレン、ポリアルコール、ポリプロピレン、エチレン及びプロピレングリコールの混合物、ポリアルキアミン、ポリリジン及びスペルミジンのようなポリアミン、ポリ(エチルアクリレート)のようなポリエステル、ポリリン酸ジエステル、脂肪族化合物、及びアルキレンを含んでなることが可能である。コンジュゲート及びそのリンカーの例は、コレステロール−TEG−ホスホラミダイトであり、ここでコレステロールはコンジュゲートであり、テトラエチレングリコール(「TEG」)及びリン酸はリンカーとして働く。
加えて、コンジュゲート、コンジュゲートの使用、及びコンジュゲートを含んでなるdsRNAを作製する方法を例示している例は、以下の参照文献に開示されている:2003年4月2日に提出され、米国特許出願番号2004/0198640として公開された米国特許出願番号10/406,908;2003年7月1日に提出され、2004年12月30日に米国特許出願番号2004/0266707 A1として公開された米国特許出願番号10/613,077;及び、国際出願日2004年4月1日、2004年10月21日にWO2004/090105A2として公開されたPCT/US04/10343;ここで前記出願の各々が本明細書において援用される。しかしながら、コンジュゲートを含んでなるsiRNAは、当該技術分野で公知のいずれか適した方法により合成することが可能である。
VI.オフターゲッティングを減少させること
オフターゲッティングは、一つの遺伝子を標的とし、及び沈黙させるように設計されたsiRNAが意図せずに一つまたはそれより多くの追加の遺伝子を標的とし、及び沈黙させた場合に起こる。こうしたオフターゲッティングは、siRNAのセンス及び/又はアンチセンスと意図されていない標的mRNA間の相補性レベルを変化させることにより起こすことが可能である。オフターゲッティングにより生じる結果は重大な遺伝子のサイレンシングを含むことができ、そして多様な表現型(例えば、細胞死、細胞分化)を生じさせる。また、オフターゲッティングは種々の表現型スクリーニングにおいて偽陽性を発生させることが可能である。そのようなものとして、オフターゲッティングの結果は、大規模なゲノム全域にわたるsiRNAに基づいた表現型スクリーニングの実行には、取り組みがいのある障害を代表している。従って、いずれのオフターゲッティング遺伝子サイレンシングも減少させる、及び除去することが有利である。
一つの態様において、siRNAのプールを使用することにより、オフターゲッティングの結果を最小化又は抑制することが可能である。siRNAのプールは、単一siRNAと比較してより少ないオフターゲット効果を発生することが示されている。上で指摘したように、プールは一つの標的mRNAの異なった配列と実質的に相補的である二つ又はそれより多くのsiRNAを含んでなることができ、又はそれらは異なった標的mRNAの配列と実質的に相補的であることができる。例えば、第一のsiRNA及び第二のsiRNAは、一つの標的mRNAの第一の及び第二の副配列と実質的に相補的であるアンチセンス配列を含むことが可能である。第一の及び第二の副配列は、相互に排他的に、又はオーバーラップさせることが可能である。遺伝子サイレンシング組成物は、二つ、三つ、四つ、五つ又はそれより多くの異なったsiRNAを有するプールを含むことが可能である。siRNAのプールによるオフターゲット効果を減少させることの利点は、少なくとも二つのsiRNAが同一の標的に対して方向付けられている場合に特に顕著である。また、修飾siRNAのプール、ヘアピン構造を有しているsiRNAのプール、又はコンジュゲートを有しているsiRNAのプールも都合がよい。siRNAのプールを使用することの利点は、2003年11月14日に提出された米国特許出願10/714,333;WO2004/045543 A2として2004年6月3日に公開された関連PCT出願PCT/US03/36787;2004年9月14日に提出され、米国特許出願公開2005/0255487として公開された米国特許出願10/940,892、及び米国特許出願公開2005/0246794(各々が本明細書において援用される)、に記載されている。
オフターゲッティングの減少又は増加した特異性は、オフターゲット効果を誘発するレベル以下であるsiRNA濃度を使用することによっても達成することが可能である。例としては、100nMでの単一siRNAのトランスフェクションは90%サイレンシングを誘導でき、けれども、siRNAの高い濃度はオフターゲット効果も誘導することができる。対照的に、四つのsiRNAのプール(例えば、100nMの総濃度、各25 nM)も同様に90%サイレンシングを誘導できる。各siRNAは4分の1のより低い濃度であるので、オフターゲットの総数はより少ない。それ故、抑制された又はオフターゲット効果がないサイレンシングを得るためには、高度に機能的なsiRNAを低濃度で使用するか、又は同一の遺伝子を標的とするsiRNAのプール(ここでプールの各siRNAはオフターゲット効果を最少にするために十分に低い脳で有している)を使用することができる。好ましくは、siRNAの総濃度が100nMに等しいか又はそれ未満の濃度で送達することが可能である。より好ましくは、siRNAの総濃度が50nMに等しいか又はそれ未満の濃度で送達することが可能である。さらにより好ましくは、siRNAの総濃度が25nMに等しいか又はそれ未満の濃度で送達することが可能である。さらにより好ましくは、siRNAの総濃度が10nMに等しいか又はそれ未満の濃度で送達することが可能である。最も好ましくは、siRNAの総濃度が1nMに等しいか又はそれ未満の濃度で送達することが可能である。
別の態様において、オフターゲット効果を抑制する又は停止するための別の方法は、第二のアンチセンスヌクレオチドの二重鎖塩基対形成内に熱力学的不安定性を導入することである。例えば、このことは前記siRNAアンチセンスヌクレオチド及び標的mRNA中で存在すべき補体に位置しているヌクレオチド間のミスマッチを介して達成することが可能である。もしくは、siRNAアンチセンス鎖又はセンス鎖中のヌクレオチドの挿入又は欠失が、siRNAアンチセンス鎖又はセンス鎖と標的mRNA又はオフターゲットされた配列間に形成される二重鎖中にバルジを発生させることが可能である。加えて、熱力学的不安定性は、5’末端から三番目、四番目、五番目、六番目及び/又は七番目のアンチセンスヌクレオチドに導入することも可能である。しかしながら、生じた熱力学的不安定性は、他の配列のサイレンシングを導くことも可能であるが(即ち、他の又は二次的オフターゲット効果)、合理的に設計された熱力学的不安定性により避けることが可能である。
VII.ポリヌクレオチド担体
一つの態様において、本発明は、siRNAと相互作用可能で、細胞膜を横切ってsiRNAを輸送するポリヌクレオチド担体を含む。しかしながら、本発明の他の態様において、エレクトロポレーション、沈降、粒子衝撃、オプトポレーション及びマイクロインジェクションによるような、トランスフェクション様式は担体なしで実行することが可能である。通常、ポリヌクレオチド担体は、ポリヌクレオチド主鎖上の陰性に荷電されたリン酸と相互作用する陽性電荷を含む。ポリヌクレオチド担体は、細胞性核酸送達の分野では公知である。好ましいポリヌクレオチド担体には、siRNAと複合体形成でき、そして過度に毒性ではなく遺伝子サイレンシング機能性を保持した様式で細胞内へsiRNAを送達できる、ポリマー、脂質、リポポリマー、脂質−ペプチド混合物などが含まれる。そのようなものとして、特定のシステム又は細胞についての最適なポリヌクレオチド担体を同定するため、ルーチン実験をRTFを最適化することに関して本明細書で記載された方法で実行することが可能である。
一つの態様において、脂質又は脂質−ペプチド混合物は、標的細胞内にsiRNAを導入することについて好適である。典型的には、脂質はカチオン性脂質である。細胞内にsiRNAを導入するために使用することが可能であるカチオン性脂質は、ほとんど又は全く毒性を有しないこと(例えば、15〜20%未満の毒性として定義される)により特徴付けられ、それはアラマーブルー(AlamarBlue)又は等価な細胞生存率アッセイにより測定することが可能である。加えて、脂質は、遺伝子サイレンシングを誘発するため、細胞内へ十分な量のsiRNAを送達することが可能である。脂質は、限定されるわけではないが、Invitrogen(LIPOFECTAMINE(商標)、LIPOFECTAMINE(商標)2000)、Ambion(siPORT(商標))、B-Bridge International(siFECTOR(商標))、Mirus(TransIT−TKO(商標))及びQiagen(RNAiFECT(商標))を含む多様な商業的供給元から入手可能である。しかしながら、すべての脂質が機能的に等価ではなく、特定の脂質が具体的細胞株でより良好に実施できる。それ故、前記最適化過程を、具体的細胞株についてsiRNAを送達するための適切な脂質及び脂質濃度を決定するために用いることが可能である。また、脂質−ペプチド混合物は、細胞内へのsiRNAの増強された送達を提供することが可能である。一つまたはそれより多くのタンパク質、脂質、脂質−ポリサッカリド又は細胞膜の他の成分に親和性を有するペプチドをsiRNAにコンジュゲートすることが可能であり、脂質とは独立して、又は一つまたはそれより多くの脂質と都合よく混合してポリヌクレオチド担体を形成させて使用する。こうした脂質−ペプチド混合物は、siRNAのRTFを増強できる。コレステロールコンジュゲートは同様にsiRNAとカップリングでき、ポリヌクレオチド担体とは独立して、又はそれらと都合よく混合して使用することが可能である。
簡単に説明すると、所与の脂質がsiRNA RTFに許容できるかどうかを同定するため、二つ又はそれより多くのよく特徴付けられたsiRNAを、本明細書に記載した最適化RTF法を使用して、種々の脂質、媒質及びsiRNA濃度下で試験することが可能である。引き続いて、標的化遺伝子のサイレンシングのレベル及び細胞死のレベルを当該技術分野で許容されている技術を使用して定量する。siRNA RTFに適した脂質には、限定されるわけではないが、OLIGOFECTAMINE(商標)、TransIT−TKO(商標)又はTBIO Lipid6(商標)(Transgenomic 部品番号24-1001-05)が含まれる。より好ましくは、本発明はLIPOFECTAMINE(商標)2000(Invitrogen)を使用する。そして最も好ましくは、本発明は、siRNAの送達のために特別に設計された脂質:DharmaFECT(商標)1、DharmaFECT(商標)2、DharmaFECT(商標)3、DharmaFECT(商標)4(Dharmacon、Inc.)を使用する。用語「DharmaFECT(商標)」(番号1、2、3又は4のいずれかが続く)又は句「DharmaFECT(商標)トランスフェクション試薬」とは、より大きな核酸(例えば、プラスミド)よりもむしろsiRNAをトランスフェクトするために最適化されている一つまたはそれより多くの脂質に基づいたトランスフェクション試薬を指す。
機能性siRNA−脂質複合体の形成は、siRNA及び脂質を混合することにより調整することが可能である。そのようなものとして、選択された濃度の脂質の適切な容量を、媒質及び/又は緩衝液の容量と混合することにより、適した濃度の脂質を有している脂質−媒質又は脂質−緩衝液を形成させる。例えば、約5〜50マイクロリットル(「uL」)の範囲の脂質媒質の容量は、96ウェルプレートの各ウェル内に導入されるべき約0.03〜2マイクログラム(「ug」)の脂質を含むことができ、他のウェルサイズに対応して脂質の量を変化させることが可能である。siRNA RTFのための媒質及び/又は緩衝液の選択で、RTFプロトコルの効率を改良することが可能である。いくつかの媒質は、RTFの間に細胞毒性及び/又は非特異的遺伝子変調を誘導する、一つまたはそれより多くの添加物を含んでいる。好ましい媒質又は緩衝液の例には、Opti−MEM(商標)(GIBCO、カタログ番号31985-070)、HyQ−MEM−RS(商標)(HyClone、カタログ番号SH30564.01)、ハンクス平衡塩溶液(商標)又は均等な媒質が含まれる。適した媒質は、本明細書に記載した最適化プロトコルを用いることにより同定することが可能である。
脂質−媒質又は脂質−緩衝液は、ハンドヘルドシングル又はマルチチャネルピペッター、又はウェル内に液体溶液の一定量を注入可能なより進化した及び自動化送達システムを含む種々の方法により、ウェル内へ導入することが可能である。液体溶液は、乾燥遺伝子サイレンシング組成物を含有するウェル中で、siRNAを可溶化又は懸濁するのに十分な時間インキュベートし、siRNA−脂質複合体(例えば、リポプレックス)を形成させる。一般に、siRNA可溶化及びリポプレックス形成のプロセスは約20分を必要とするが、通常120分は超えない。複合体形成プロセスは一般には室温で実施されるが、4〜37℃の範囲のオンで実施することが可能である。いくつかの例において、脂質及びsiRNAは、siRNA可溶化及び複合体形成の速度を促進するため、短期間(例えば、秒〜分)、プレートを激しく動かすことにより(例えば、旋回、ボルテックス、超音波処理)混合することが可能である。
VIII.ウェル配置
一つの態様において、異なった乾燥遺伝子サイレンシング組成物を有している多ウェルsiRNA RTFプレートは、前もって決定された配置に組織化されたウェルを有することが可能である。こうした配置は、siRNA RTFプレートに用いられているアッセイのタイプに対応することが可能である。即ち、遺伝子のファミリーが研究されている場合、同一の遺伝子を標的とするsiRNAは、一つのカラム又は列に組織化することができ、一方、異なった遺伝子を標的としているsiRNAは異なったカラム又は列に組織化することができる。それ故、ウェルを、特定のsiRNAがプレート上の前もって選択されたパターンになるように、前もって選択された配置に組織化することが可能である。前もって選択されたパターンは、一つまたはそれより多くの陰性及び/又は陽性siRNA対照、及びトランスフェクション対照を含むウェルのような、対照ウェルを含むことが可能である。また、前もって選択されたパターンは、対照及び較正として使用することが可能である、空又は実質的にsiRNAを欠いているウェルも含むことが可能である。
多数のプレートを同時に調製することができるように、異なったウェルプレートのウェル中に前もって乾燥されたsiRNAを有することが有利である。このことは、ウェルプレートがsiRNAの標準化された位置及び量で遺伝子サイレンシング組成物を有することを可能にし、それはプレート間に可変性を導入することなしに長い間にわたって実施することが可能な多数の実験において、標準化ウェルプレートを使用するために有利である。標準化されたプレート配置の使用は、長い間にわたって使用することが可能な一連のプレートを提供することが可能であり、一緒に分析することが可能であるデータを提供する。
例えば、複数のウェルのカラムを含んでなるプレートは、第一のカラムにトランスフェクション対照、第二のカラムにRNAiのための陽性対照、第三のカラムにRNAiのための陰性対照、第四のカラムに単一標的に対して方向付けられたsiRNAのプールを含み、及び第四のカラムに含まれているsiRNAプールの個々のメンバーは、五番目から十二番目のカラムのような続いてのカラムである。もしくは、五番目から十二番目のカラムは第四のカラムのプール中の各siRNAの異なった濃度を含んでなることが可能であり、siRNAの量をウェルからウェルへ増加させ、又はウェルからウェルへ減少させる。各ウェルはプール中の各siRNAの一つの濃度、又は異なったウェル中にあることができるプールの各siRNAの二つ、三つ、四つ、五つ又はそれより多くの濃度を含むことが可能である。使用することが可能なsiRNAの濃度の数は、プレート上のウェルの数のみにより制限される;しかしながら、多プレートは、プレートのすべてを横切って広がる前もって決められたパターンと一緒に使用されるように構成することが可能である。
従って、特定のsiRNAの多数の濃度で、特定のsiRNAによるサイレンシングのレベルを観察することにより、プール中の各siRNAの最適濃度が決定できるように、siRNA濃度勾配の前もって選択されたパターンを、観察可能なパターンとして使用することが可能である。例えば、第四のカラム中の連続した列は、全プールsiRNAの連続的に増加する、又は減少する量を有することが可能である。加えて、連続的カラムは、プールの個々のsiRNAの連続的に増加する、又は減少する量を含むことが可能である。
図1A及び1Bは、前記の濃度配置と類似したプレート配置の態様を例示している。ウェルは四角であるように示されているが、それはいずれの形状でも可能なことを認識すべきである。また、ウェルプレートはかなり多数のウェルを含むことが可能であり、描かれているウェルの数は単なる例である。図において、ウェルは以下のように定義される:「Tc」は、トランスフェクション対照ウェルを示しており、ここで増加している対応数字は異なった対照を同定している;ブランクウェルは、いずれかのsiRNAを欠く又は実質的に欠くウェルを示している;「+」は陽性対照を示している;「−」は陰性対照を示している;「P1」〜「P1N」は、濃度勾配での第一の遺伝子を沈黙させる第一のプールを示している;「P2」〜「P2N」は、濃度勾配での第二の遺伝子を沈黙させる第二のプールを示している;「1A」〜「1N」は、濃度勾配での第一のプールの第一の個々のsiRNAを示している;「2A」〜「2N」は、濃度勾配での第一のプールの第二の個々のsiRNAを示している;「3A」〜「3N」は、濃度勾配での第一のプールの第三の個々のsiRNAを示している;「4A」〜「4N」は、濃度勾配での第二のプールの第一の個々のsiRNAを示している;「5A」〜「5N」は、濃度勾配での第二のプールの第二の個々のsiRNAを示している;及び「6A」〜「6N」は、濃度勾配での第二のプールの第三の個々のsiRNAを示している。それ故、図1Aは、単一プールをアッセイしているウェルプレートを例示し、図1Bは、多プールをアッセイしているウェルプレートを例示している。加えて、ウェルプレートは、二つより多くのプールを含むことが可能である。また、プール及び単一siRNAは、合理的に設計すること、及び/又は修飾又はコンジュゲートを有することが可能である。
加えて、プレート配置の態様は、プレートが単一の生物学的に関連する経路、細胞プロセス、細胞的事象、調節タンパク、胚性プロセス、染色体中の特異的座位、細胞周期、有機体又は器官の発生、細胞の分化、炎症プロセス、増殖プロセス、血管新生などに対して方向付けられたsiRNAを含んでなるように組織化することが可能である。別の態様において、疾患又は障害、又は疾患又は障害に先だった生物学的プロセスに結びつけられることが既知である及び/又は疑われているsiRNA標的化遺伝子でプレートを整列させることが可能である。別の態様において、ウェルプレートは、mRNA阻害剤として機能するsiRNAを含むことが可能である。別の態様において、既知の又は疑われる上流及び下流効果が付随するsiRNAで生物学的経路を研究するためのプレート配置の原理は、キナーゼではないタンパク質に応用することが可能である。多様な研究のための、これら及び他のプレート配置の追加の記述は、援用される米国仮出願番号60/678,165に概説されている。
別の態様において、ウェルプレートは、一つまたはそれより多くの単一ヌクレオチド多型(「SNP」)を有する遺伝子を標的とするsiRNAで配置することが可能である。こうしたウェルプレートは、表現型、生物学的機能、疾患状態又は他の事象への、特別のSNPの寄与を評価するために調製することが可能である。例えば、SNPプレートは、異なったsiRNA(単数又は複数)を有するウェルを含んでなることができ、以下を含んでいる:(i)第一の標的に対して方向付けられた第一のsiRNA;(ii)第一のsiRNAとは一つの塩基対が異なる第二のsiRNA、SNPを含む;(iii)第一のsiRNA及び第二のsiRNAを含んでなるsiRNAプール;及び(iv)対照siRNA。また、第一の標的及び第二の標的は潜在的致死的対をコードすることが可能である。このようにして、研究者は、癌、神経学上の疾患、糖尿病、代謝病、骨の疾患、軟骨、筋肉、心臓、腎臓、肝臓、前立腺、胃腸管及びその他に付随する状態を含む多様な疾患を研究することが可能である。これらのプレートのウェルは、個々の又はプールのsiRNAを含んでなることができる。
加えて、異なったウェルに、修飾された及び/又は修飾されていない多数の異なったsiRNAを含むように、ウェルプレートを配置することが可能である。例えば、96ウェルプレートは以下のものを含むことができる:修飾されていない第一のsiRNAの10−12ウェル;修飾されている第一のsiRNAの10−12ウェル;修飾されていない第二のsiRNAの10−12ウェル;修飾されている第二のsiRNAの10−12ウェル;修飾されていない第三のsiRNAの10−12ウェル;修飾されている第三のsiRNAの10−12ウェル;修飾されていない第四のsiRNAの10−12ウェル;及び修飾されている第四のsiRNAの10−12ウェル。第一、第二、第三及び第四のsiRNAは、それらが重複できる又はできない、又はそれらが無関係のタンパク質又は同一の生物学的経路において類似の機能を有する又は作用するタンパク質をコードする異なったmRNAへ方向付けることができるように、同一標的mRNAの異なった領域へ方向付けることができる。
別の態様において、ウェルのいくつかがプール含んでなり、そしてウェルのいくつかがsiRNAの単一のタイプを含んでなるようにウェルプレートを配置することが可能である。それ故、ウェルプレートは、以下のものを含んでなる異なったウェルを有することができる:(i)第一のsiRNA、第二のsiRNA、第三のsiRNA、第四のsiRNA及び第五のsiRNA、そのいずれもが修飾されていてもよいし又は修飾されていなくてもよい;(ii)第一のsiRNA、第二のsiRNA、第三のsiRNA及び第四のsiRNA、そのいずれもが修飾されていてもよいし又は修飾されていなくてもよい;(iii)第一のsiRNA、第二のsiRNA、第三のsiRNA及び第五のsiRNA、そのいずれもが修飾されていてもよいし又は修飾されていなくてもよい;(iv)第一のsiRNA、第二のsiRNA、第四のsiRNA及び第五のsiRNA、そのいずれもが修飾されていてもよいし又は修飾されていなくてもよい;(v)第一のsiRNA、第三のsiRNA、第四のsiRNA及び第五のsiRNA、そのいずれもが修飾されていてもよいし又は修飾されていなくてもよい;(vi)第二のsiRNA、第三のsiRNA、第四のsiRNA及び第五のsiRNA、そのいずれもが修飾されていてもよいし又は修飾されていなくてもよい;(vii)第五のsiRNA、それは修飾されていてもよいし又は修飾されていなくてもよい;(vii)第六のsiRNA、それは修飾されていてもよいし又は修飾されていなくてもよい;(viii)第七のsiRNA、それは修飾されていてもよいし又は修飾されていなくてもよい;(ix)第八のsiRNA、それは修飾されていてもよいし又は修飾されていなくてもよい;(x)第九のsiRNA、それは修飾されていてもよいし又は修飾されていなくてもよい;(xi)対照siRNA。
加えて、ウェルプレート配置は、siRNAのライブラリーを研究するために組織化することができ、それはアレーフォーマットで提供することが可能である。好ましくは、アレーはRTF siRNAライブラリーを含んでなる。RTF siRNAライブラリーは、全遺伝子ファミリー又は調節経路を研究するために使用することが可能である。これらのsiRNAライブラリーは、特定の経路に関係あること又は指示された遺伝子ファミリーに系統学的に関係することが確認されている、siRNA試薬標的化遺伝子の合理的に設計されたプールの前もって選択された群を含む。加えて、こうしたsiRNAライブラリーの例は、表1で再検討することが可能である。
表1のsiRNAライブラリーを含んでなるsiRNAの説明、表1に特定された経路を研究するための遺伝子サイレンシングの使用のより完全な説明、及びプレート配置及びsiRNAのプールを使用して研究することが可能な遺伝子のタイプの追加の説明は、米国仮出願番号60/678,165に提供されている。
以下の実施例は、本発明のいくつかの態様を、本発明を実施するために当業者が使用することが可能である様式で記述するために提供する。従って、以下の実施例は、実際に実行された実験ならびに机上の実験を含む。追加の実験及び以下の実施例の補足の情報は、「APPARATUS AND SYSTEM HAVING DRY GENE SILENCING POOLS」と題し、発明者としてBarbara Robertson, Ph.D., et al.による、代理人整理番号第16542.1.2号;「APPARATUS AND SYSTEM HAVING DRY CONTROL GENE SILENCING COMPOSITIONS」と題し、発明者としてBarbara Robertson, Ph.D., et al.による、代理人整理番号第16542.1.3号;及び米国仮出願番号60/678,165 、を有する援用された参照文献に概説されている。本実験で使用されたポリヌクレオチド配列は、米国仮出願番号60/678,165 の表I〜IVに見ることができる。
実施例1
本発明のポリヌクレオチドは、siRNAを形成するポリヌクレオチドを製造するために使用することが可能である、現在既知の又は将来開発されるいずれの方法によっても合成することが可能である。本明細書に記載した修飾を含むsiRNA二重鎖の一本鎖は、Scaringe, S.A. (2000) Advanced 5’-silyl-2’-orthoester Approach to RNA Oligonucleotide Synthesis, Methods Enzymol., 317, 3-18; Scaringe, S.A. (2001) RNA Oligonucleotide Synthesis via 5’-silyl-2’-orthoester Chemistry, Methods, 23, 206-217; 米国特許第5,889,136号;米国特許第6,008,400号;米国特許第6,111,086号;及び米国特許第6,590,093号;その各々は本明細書において援用される;に記載されている材料の組成物及び方法を使用して、化学的に合成することができる。簡単には、合成法は、特異的siRNA配列を有しているポリヌクレオチド内に修飾又は無修飾ヌクレオチドを取り込ませるため、ヌクレオシド塩基保護5’−O−シリル-2’−O−オルトエステル−3’−O−ホスホラミダイト又は他のブロッキング剤を利用することが可能である。合成は、典型的には、3’から5’方向に、固体支持体からポリヌクレオチドが伸張するように実施した。
実施例2
siRNA二重鎖のセンス鎖及びアンチセンス鎖は、実施例1に記載した方法とは別の反応手順で化学的に合成した。簡単には、各合成手順は類似しており、そして最も3’のヌクレオシドが共有結合で繋留されている固体ポリスチレン支持体から連続的に伸張されているヌクレオチドで開始され、ここでセンスヌクレオシドX21及びアンチセンスヌクレオシドY21が支持体に繋留されている。ヌクレオシドを次ぎに、3’から5’方向の配列特異的様式で、反復サイクルを使用して支持体結合化学種に加えた。反応サイクルは以下のように実施した:第一のサイクルはX21にセンスヌクレオシドX20又はY21にアンチセンスヌクレオシドY20を加え;第二のサイクルは、X20X2IにセンスヌクレオシドX19又はY20Y21にアンチセンスヌクレオシドY19を加え;そしてセンス又はアンチセンス鎖が完成するまで続けた。各サイクルは4工程から成っている:支持体結合化学種の5’−ヒドロキシル基の脱保護;支持体結合化学種の5’−ヒドロキシル基への入来ヌクレオシド上の反応性カップリング基のカップリング;未反応5’−ヒドロキシル基のキャッピング;及びヌクレオチド結合の酸化。典型的には、反応性カップリング基は、5’−O−ベンズヒドロキシビス(トリメチルシリロキシ)シリル−2’−O−ビス(2−アセトキシエチル)オルソホルミル−3’−O−(N,N−ジイソプロピル)メチルホスホラミダイト(例えば、構造1)のような5’−シリル−2’−オルトエステル−3’−ホスホラミダイトである。センス鎖は、1及び2位に2’−O−メチルヌクレオシドを有するように合成することが可能である(例えば、mXq、q=1及び2)。これらの修飾ヌクレオシドは、配列に適切な5’−シリル−2’−O−メチル−3’−ホスホラミダイト、特に、5’−O−ベンズヒドロキシ−ビス(トリメチルシリルオキシ)−シリル−2’−O−メチル−3’−O−(N,N−ジイソプロピル)メチルホスホラミダイト(例えば、構造2)を使用して組み込まれる。構造1及び2は以下のことにより特徴付けられる:Bはアデノシン、グアノシン、シチジン又はウリジンのようなヌクレオシド塩基であり;及びZは、環外アミンのための保護基である(例えば、A及びGについてはイソブチリル、Cについてはアセチル)。アンチセンス鎖は5’−末端ヌクレオチド(例えば、1位)上にリン酸基を有するように合成した。このリン酸基は、N,N−ジイソプロピルアミノ−ビス(2−シアノエチル)ホスホラミダイト(例えば、構造3)を使用して導入される。完全センス鎖は以下の通りである:
5’> HO-mX1mX2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12X13X14X15X16X17X18X19X20X21-OH<3’ 。完全アンチセンス鎖は以下の通りである: 3’> HO-Y2IY2OYI9YI8Y17YI6YI5YI4YI3Y12Y11Y10Y9Y8Y7X6Y5Y4Y3Y2Y1-PO4<5’ 。Xq及びYqヌクレオシドはA、C、G又はUを含む。mXqヌクレオシドは、2’−O−メチル−A、2’−O−メチル−C、2’−O−メチル−G及び2’−O−メチル−Uを含んでいる2’−O−メチルヌクレオシドである。センス鎖及びアンチセンス鎖は、二重鎖siRNAを形成することが可能である。
実施例3
別のsiRNA二重鎖は、実施例2に記載したものと実質的に同一合成手順で製造した。より特別には、センス鎖は実施例2に記載した通りに製造し、そしてアンチセンス鎖は、ヌクレオシドmY1及びmY2が2’−O−メチルヌクレオシドを含むことを除いて、同様に製造した。従って、アンチセンス鎖上の2’−O−メチルヌクレオシドは、センス鎖について実施例2に記載した通りに組み込んだ。完全センス鎖は以下の通りである:5’> HO-mX1mX2X3X4X5X6X7X8X9X1OX11X12X13X14X15X16X17X18X19X20X21-OH <3’ 。完全アンチセンス鎖は以下の通りである: 3’> HO-Y2lY20Yl9Yl8Yl7Yl6Yl5Yl4Yl3Yl2YllYl0Y9Y8Y7X6Y5Y4Y3mY2mY1-P04<5’ 。Xq及びYqヌクレオシドはA、C、G又はUを含む。mXq及びmYqヌクレオシドは、2’−O−メチル−A、2’−O−メチル−C、2’−O−メチル−G及び2’−O−メチル−Uを含んでいる2’−O−メチルヌクレオシドである。センス鎖及びアンチセンス鎖は、実施例2に記載した通り、二重鎖siRNAを形成することが可能である。
実施例4
別のsiRNA二重鎖は、実施例2に記載したものと実質的に同一合成手順で製造した。より特別には、センス鎖は実施例2に記載した通りに製造し、そしてアンチセンス鎖は、ヌクレオシドmY2が2’−O−メチルヌクレオシドを含むことを除いて、同様に製造した。従って、アンチセンス鎖上の2’−O−メチルヌクレオシドは、センス鎖について実施例2に記載した通りに組み込んだ。完全センス鎖は以下の通りである:5’> HO-mX1mX2X3X4X5X6X7X8X9X1OX11X12X13X14X15X16X17X18X19X20X21-OH <3’ 。完全アンチセンス鎖は以下の通りである: 3’> HO-Y2lY20Yl9Yl8Yl7Yl6Yl5Yl4Yl3Yl2YllYl0Y9Y8Y7X6Y5Y4Y3mY2Y1-P04<5’ 。Xq及びYqヌクレオシドはA、C、G又はUを含む。mXq及びmYqヌクレオシドは、2’−O−メチル−A、2’−O−メチル−C、2’−O−メチル−G及び2’−O−メチル−Uを含んでいる2’−O−メチルヌクレオシドである。センス鎖及びアンチセンス鎖は、実施例2に記載した通り、二重鎖siRNAを形成することが可能である。
実施例5
以下の実施例において、遺伝子サイレンシング、mRNA検出、細胞毒性、トランスフェクション効率などを研究するために細胞培養を使用する。従って、細胞培養物は、当該技術分野で公知の技術により維持及び培養することが可能である。発現のレベル及び遺伝子サイレンシングは分枝(branched)DNA(「B−DNA」)アッセイ(Genospectra, Fremont, CA)又は均等物、当該技術分野で認められている技術により研究することができる。細胞毒性を、アラマーブルーアッセイ(Biosource International, Camarillo California)を使用し、遺伝子サイレンシング研究のために評価することが可能であり、それは実験手順により生じる細胞死の程度を評価するために実施した。
実施例6
リバーストランスフェクション(「RTF」)プロトコルを、DNAのために構成されたRTFプロトコルがsiRNAにそのまま応用できるかどうかを決定するため、DNA及びsiRNAについて実施した。従って、DNA及びsiRNAを、種々の脂質、脂質濃度及びプラスミド又はsiRNA濃度を使用して細胞内へリバーストランスフェクトした。プラスミドDNAのRTFは、96ウェルポリ−L−リジンプレートを使用して実施し、ここで、50uL(「uL」)の容量中の62.5〜250ugのpCMV−Luc(例えば、公知のルシフェラーゼ発現プラスミド)溶液をウェル内へ沈着させ、乾燥した。続いて、異なったウェルにおいて、pCMV−LucをLIPOFECTAMINE(商標)2000−媒質、OLIGOFECTAMINE(商標)−媒質、及びTRANSIT−TKO(商標)−媒質(Opti−MEM(商標))で可溶化し複合体形成させ、ここで脂質は、30uLの総容量中、ウェル当たり0.125〜1マイクログラム(「ug」)で加えた。複合体を30〜60分形成させた後、70uLの媒質中の10,000のHeLa細胞を加え、100uLの総容量とした。プレートを48時間インキュベートし、STEADYGLOW(商標)キット(Promega)を使用してルシフェラーゼ発現を試験した。
対照として、フォワードトランスフェクション法を使用して、pCMV−Lucを細胞内に導入した。具体的には、HeLa細胞を96ウェルプレートのウェル当たり10,000細胞の密度で播種した。次の日、さまざまな量のpCMV−LucをLIPOFECTAMINE(商標)2000と室温で20分複合体形成させ、そしてOpti−MEM(商標)と混合した(例えば、各20uLのLIPOFECTAMINE(商標)2000−プラスミド混合物について80uLのOpti−MEM(商標))。各ウェルから培養培地を除去し、50uLのOpti−MEM(商標)及び50uLの脂質−CMV−Lucプラスミド−媒質複合体を連続して加えた。これらの手順の結果として、CMV−Lucプラスミド及び脂質の最終量は各々、ウェル当たり5〜50ug、及び0.125〜1.0ugの間であった。
対照siRNAを、DNA RTFと比較するために、同一細胞株内へリバーストランスフェクトした。25uLの容量中の約62.5〜250ナノグラムのシクロフィリンB siRNA(例えば、cyclo3)を96ウェルポリ−L−リジンプレートに沈着し、及び乾燥した。異なったウェルにおいて、siRNAをLIPOFECTAMINE(商標)2000−媒質、OLIGOFECTAMINE(商標)−媒質、及びTransit−TKO(商標)−媒質、又は「siRNA168」−媒質(Opti−MEM(商標))で可溶化し複合体形成させ、ここで脂質は、25uLの総容量中、ウェル当たり約0.156〜1.25ug送達した。siRNA168はsiRNA送達のための脂質処方である。複合体を30〜60分形成させた後、75uLの媒質中の10,000のHeLa細胞を加え、100uLの総容量とした。プレートを48時間インキュベートし、B−DNAアッセイを使用して、ヒトシクロフィリンB mRNAの下方調節レベルについて評価した。
これらの研究の結果は、図2A−2Fに提供されており、RTF法の効率を図示しているグラフである。グラフは、RTF法がDNA及びsiRNA間の送達に不釣合なレベルを有していることを表現している。pCMV−Lucはフォワードトランスフェクションプロトコルを使用した細胞において容易にトランスフェクトされ及び発現されている一方、RTFプロトコルは貧弱な送達を示した。対照的に、cyclo 3 siRNAのRTFの条件は同一であったが、LIPOFECTAMINE(商標)2000を使用することは成功しており、優れた遺伝子サイレンシングを提供した。これらの結果は、RTFプロトコルにおけるDNA及びsiRNAの本質的に異なる性質を示している。加えて、データは、siRNA RTFにおける脂質の有効性がかなり変化することを示している。
実施例7
遺伝子サイレンシングを達成するRTFプロトコルの能力を、siRNA機能性に関して研究した。さまざまなsiRNA機能性(例えば、F50〜F95)を、100mL当たり、0.031〜0.5ugの脂質の脂質濃度を使用し、単一細胞密度又はウェル当たり10,000細胞でリバーストランスフェクトした。具体的には、各々、95、90、75及び50のサイレンシング機能性を有する、cyclo3、cyclo14、cyclo28及びcyclo37を、さまざまな濃度でRNase−フリーH2Oに懸濁し、96ウェルプレートウェル床上に沈着させ、乾燥した。100uL当たり0.031〜0.5ugの最終脂質濃度を達成するため約25uLのDharmaFECl(商標)1−OptiMEM(商標)を各ウェルに加え、室温で30〜60分、siRNAを可溶化及び複合体形成させた後、10,000のHeLa細胞を各ウェルに加えた。遺伝子サイレンシングを4日間にわたって研究した。
図3A−3Fは、遺伝子サイレンシングアッセイから得られた結果のグラフ的表現である。グラフに表現したように、高度に機能的なsiRNA(例えば、cyclo3及び14)は、中程度に機能的なsiRNA(例えば、cyclo28、2日間)又は不十分に機能的なsiRNA(例えば、cyclo37、0日間)と比較して、より長い期間(例えば、4日間)、サイレンシングを示した。それ故、合理的設計による機能的siRNAの選択は、遺伝子サイレンシングの長寿命を大きく改良することが可能である。
実施例8
オフターゲット効果を誘発するsiRNAの能力はフォワードトランスフェクションプロトコルを使用してアッセイした。具体的には、修飾及び無修飾IGF1R−73 siRNAを、フォワードトランスフェクションフォーマットで細胞内へトランスフェクトし、細胞溶解物からmRNAを単離し、Agilent microArraysを使用して分析した。修飾には、第一及び第二センスヌクレオチドへの2’−O−メチル基の付加、加えて、第二アンチセンスヌクレオチドへの2’−O−メチル基の付加、加えて、アンチセンス5’末端ヌクレオチドの5’位へのリン酸基の付加が含まれる。簡単には、未処理又はsiRNA処理細胞から単離された1ugの全RNAを増幅し、Agilent’s Low Input RNA Fluorescent Linear Amplification Kitを使用して、Cy5(商標)又は Cy3(商標)(Perkin Elmer)でラベルした。ハイブリダイゼーションは、Agilent’s Human 1A(V2)Oligo Microarrays(例えば、22,000配列)を使用し、標準プロトコルに従い、各750ナノグラムのCy−3(商標)及びCy−5(商標)ラベル化物質を各アレー上に加えた。スライドを、各々0.025%N−ラウロイルザルコシンを含む6X及び0.06X SSPEを使用して洗浄し、Agilent’s非水乾燥及び安定化溶液を使用して乾燥した。各試料アレーの生物学的複製物は、Agilent Microarray Scanner(モデルG2505B)でスキャンし、生の画像をFeature Extraction ソフトウェアー(v6.1.1又はv7.5.1)で加工した。さらなる分析を、Spotfire Decision Site 7.2ソフトウェアー及びSpotfire Functional Genomics Module を使用して実施した。緑及び赤加工シグナル合計の10を底にしたlogから計算された自己−自己ハイブリダイゼーションにおいて、2.8未満を有する低いシグナルの遺伝子は分析から除外した。2倍カットオフ(例えば、>0.3又は<−0.3のLog比)を、比較分析で使用した遺伝子に適用した。異常フラッギングは使用しなかった。
図4は、これらの実験の結果を示している画像であり、siRNA IGF1R−73が広範囲の遺伝子のアレーを下方調節することを示している。図4において、オフターゲットは、無修飾siRNAである、画像の上側のより明るい色のラインとして示されている。一方、修飾siRNAは実質的にオフターゲッティングを示さなかった。これらのオフターゲット効果は高度に有害であり、ゲノム全体のsiRNAスクリーンの間に偽陽性を発生することができる。
実施例9
オフターゲット効果を減少させ、及びオフターゲット発生表現型を減少させる修飾siRNAの能力を、毒性モチーフを有しているsiRNAで研究した。毒性siRNAは、第一及び第二センスヌクレオチドへの2’−O−メチル基の付加、加えて、第二アンチセンスヌクレオチドへの2’−O−メチル基の付加、加えて、アンチセンス5’末端ヌクレオチドの5’位へのリン酸基の付加により修飾した。この修飾は、二重鎖により発生されるオフターゲット効果を有意に減少させた。
図5は、毒性siRNAが修飾された場合に生じる細胞毒性のグラフ的表現である。グラフは、八つの無修飾毒性siRNA(例えば、MAP2K2 d3、SRD5A1 dl、SRD5A1 d2、SRD5A1 d4、SRD5A2 d3、PDE8A、STK11及びCHD4)はすべて細胞生存率を75%以下に減少させた。対照的に、8二重鎖すべての化学修飾は、標的特異的サイレンシングを有意に変化させることなく、siRNA誘発毒性を著しく減少させた。これらの発見は、siRNAへの化学修飾の付加がオフターゲット発生表現型を除去できることを示している。
実施例10
ヌクレアーゼに対するsiRNAの安定性を、siRNAを100%ヒト血清とインキュベートすることにより調べた。siRNAは次ぎにエチジウムブロミドにより染色したアガロースゲルで試験した。図6はゲルの画像であり、無修飾siRNAは、RNaseの存在下、迅速に分解され、数分以内と測定された半減期を有していた。示されているように、明確にするため、現れたポリヌクレオチドバンドの上に線が加えられている。従って、修飾siRNAは研究期間にわたって、それらの完全性を維持することが可能であった。それ故、この結果は、修飾siRNAがより長い期間にわたってそれらの完全性を維持することが可能であることを示している。このことは、本発明に従ったプレートは乾燥siRNAを含み、これらのプレートは数週から数ヶ月を超える貯蔵寿命を必要とするので重要であり得るが、RNAase夾雑及びsiRNA分解の可能性は存在する。
実施例11
RNaseによる分解に抵抗する修飾siRNA安定化の能力を研究した。安定化siRNAは以下のように修飾されている:第一及び第二センスヌクレオチド上の2’−O−メチル基;すべてのセンスピリミジンヌクレオチド(例えば、C及びU)上の2’−O−メチル基;すべてのアンチセンスピリミジンヌクレオチド上の2’−F修飾;及びアンチセンス5’末端ヌクレオチドの5’炭素上のリン酸基。図7は四つの修飾siRNA(例えば、M1−M4)及び四つの無修飾siRNA(例えば、U1−U4)のグラフ的表示を含んでいる。グラフは、修飾siRNAが無修飾siRNAと比較して有意に分解に抵抗していることを示している。修飾パターンはsiRNAの血清半減期を数分から100時間を超えるまで延長した。
実施例12
RNaseによる分解にかけられた安定化修飾siRNAが機能性を保持する能力を研究した。機能性試験は、フォワードトランスフェクションにより実施例11に記載したごとく実施し、無修飾siRNAと比較した。図8は、より長い期間にわたって意図された標的の機能的サイレンシングを保存する化学修飾パターンを示している。無修飾siRNAによるサイレンシングが4〜5日間続く一方、修飾siRNAは指示した標的を7日よりも長く沈黙させた。それ故、化学修飾は、RTFフォーマットを使用するサイレンシングの効率を増強することも可能である。
実施例13
RTFプロトコルにおいて安定化修飾siRNAの使用する能力を、無修飾siRNAと比較して研究した。安定化修飾siRNAは実施例11に記載したものと同一の修飾をsiRNA上に有し、ヒトシクロフィリンB(cyclo 3)を標的化している。水性溶液中のsiRNAを96ウェルポリ−L−リジン処理プレートのウェル中で乾燥し、125uLの脂質−媒質及び細胞が加えられた場合、61.5、125又は250nMの濃度となる。LIPOFECTAMINE(商標)2000−Opti−MEM(商標)、TKO−Opti−MEM(商標)又はDharmaFECT(商標)1−Opti−MΕM(商標)の脂質溶液を、100uL当たり0.125、0.25又は0.5全ugでウェルへ加え、30〜60分、siRNAを可溶化し、及び複合体形成させた。約10,000のHeLa細胞を各ウェルへ加え、48時間維持した後、毒性及びシクロフィリンB mRNAサイレンシングをアッセイした。
図9Aは、修飾及び無修飾siRNAが同様に機能することをグラフにより説明しており、100uL当たり0.125ugのLIPOFECTAMINE(商標)2000のみが細胞生存率の許容可能なレベルであった。より高いレベルの脂質は、細胞死の許容不可能なレベルを生じたが、それは100uL当たり0.25ugの脂質で観察され、修飾二重鎖は無修飾二重鎖よりもより少ない毒性を誘発した。この観察は、修飾パターンが、RTFにより誘発されるsiRNAの細胞毒性を制限する付加的利点を有することを示唆している。図9Bは、LIPOFECTAMINE(商標)2000を使用し、修飾及び無修飾二重鎖により遺伝子サイレンシングがほとんど同一であったことをグラフにより説明している。
図10Aは、100uL当たり0.125〜0.5ugの脂質のTKO脂質濃度が、対照で観察された細胞生存率の約80%以下の細胞生存率には変化させないことをグラフにより説明している。残念ながら、これらの条件下でのsiRNAのサイレンシング実力は図10Bに示されたようにより限定されているが、siRNAのほとんどすべての濃度がシクロフィリンBを沈黙させており、100uL当たり0.125ugの脂質で40%のみ、100uL当たり0.25ugの脂質で約50〜70%、及び100uL当たり0.5ugの脂質で80〜90%であった。これらの結果は、化学修飾がsiRNAの毒性及びサイレンシング効率を認め得るほどは変化させないことを示している。さらに、このことは、すべての脂質がRTFフォーマットにおいて均等な送達を提供するとは限らないことを示している。
図11Aは、DharmaFECT(商標)1の毒性が、100uL当たり0.125ugの修飾及び無修飾siRNAと同等であったこと、及びLIPOFECTAMINE(商標)2000及びTKO研究と比較してより毒性が弱かったことをグラフにより説明している。加えて、DharmaFECT(商標)1は、無修飾siRNAと比較して修飾siRNAと一緒の場合により毒性が弱かった。図11Bは、100uL当たり0.125ugで比較されるべき遺伝子サイレンシング効率をグラフにより説明している。それ故、これらの条件下、siRNAへの記述した化学修飾の付加は、二重鎖のサイレンシング効率を変化させない。
実施例14
四つの別々の遺伝子を沈黙させるsiRNAの合理的に設計されたプールの能力を、G6PD、GAPDH、PLK及びUQCを標的とするsiRNAで研究した。siRNAのプール(例えば、遺伝子当たり4siRNA)を、LIPOFECTAMINE(商標)2000を使用し、siRNA当たり100nM、6.25nMの濃度で細胞内にフォワードトランスフェクトし、24時間後、B−DNAによりアッセイした。図12は、合理的に設計された分子のプールが四つの異なった遺伝子を同時にサイレンシングできることを示す、グラフ的表現である。RTFフォーマットにおける標的多遺伝子に対する能力は、siRNAの大きな(例えば、ゲノムのサイズの)コレクションのスクリーニングにRTFを使用する能力を著しく単純化するであろう。
実施例15
RTFプロトコルにおける細胞密度の重要性を研究した。cyclo3、cyclo14、cyclo28及びcyclo37 siRNAの溶液を4nM、8nM、15.5nM、31nM、62.5nM、125nM及び250nMの最終濃度となるように、ポリ−L−リシンでコートした96ウェルプレートの底に沈着させ、乾燥した。DharmaFECT(商標)1−Opti−MEM(商標)の脂質溶液を、各ウェルに25uL加え、100uL当たり0.015ug、0.031ug、0.063ug、0.125ug又は0.25ug脂質の最終濃度を得た。DharmaFECJ(商標)1−Opti−MEM(商標)混合物は、30〜60分、乾燥siRNAを可溶化及び複合体形成させた後、ウェル当たり、5,000、10,000、20,000又は40,000細胞でHeLa細胞を添加した。「サイレンシング」は約80%サイレンシング又はそれ以上として定義される。
図13Aは、ウェル当たり5,000細胞の細胞密度で2日目の遺伝子サイレンシングのグラフによる説明である。グラフは、100uL当たり0.031ugまでの脂質及び125〜250nM siRNAは、試験された四つのsiRNAの内の三つ(例えば、cyclo3及びcyclo14及びcyclo28)でサイレンシングの許容可能なレベルが提供された。図13Bは、毒性の対応するグラフによる説明であり、脂質が100uL当たり0.125ugに増加するまでの毒性の最小レベルを示している。すべての他の条件は、試験されたsiRNAのコレクションにわたって許容不可能なレベルのサイレンシング及び/又は細胞死を引き起こした。
図14Aは、ウェル当たり5,000細胞の細胞密度で4日目の遺伝子サイレンシングのグラフによる説明である。グラフは、100uL当たり0.063ugまでの脂質及び15.5nM〜62.5nM siRNAは、試験された四つのsiRNAの内の二つ(例えば、cyclo3及びcyclo14)でサイレンシングの許容可能なレベルが提供された。図14Bは、毒性の対応するグラフによる説明であり、100uL当たり0.063ugの脂質及び15.5nM〜62.5nM siRNAが、cyclo37を除いて許容可能な毒性を示している。すべての他の条件は、試験されたsiRNAのコレクションにわたって許容不可能なレベルのサイレンシング及び/又は細胞死を引き起こした。
図15Aは、ウェル当たり5,000細胞の細胞密度で8日目の遺伝子サイレンシングのグラフによる説明である。グラフは、試験レベルのすべてが不十分であったことを示している。図15Bは、毒性のグラフによる説明であり、すべての条件が過度に毒性であることを示しており、条件の実際の毒性というよりもむしろ持続の機能であってもよい。
図16Aは、ウェル当たり10,000細胞の細胞密度で1日目の遺伝子サイレンシングのグラフによる説明である。グラフは、100uL当たり0.063ugまでの脂質は、試験された四つのsiRNAの内の二つ(例えば、cyclo3及びcyclo14)でサイレンシングの許容可能なレベルが提供された。図16Bは、毒性のグラフによる説明であり、最適サイレンシング条件下で最小であった。すべての他の条件は、試験されたsiRNAのコレクションにわたって許容不可能なレベルのサイレンシング及び/又は細胞死を引き起こした。
図17Aは、ウェル当たり10,000細胞の細胞密度で2日目の遺伝子サイレンシングのグラフによる説明である。グラフは、100uL当たり0.063ugまでの脂質は、試験された四つのsiRNAの内の二つ(例えば、cyclo3及びcyclo14)でサイレンシングの許容可能なレベルが提供された。図17Bは、毒性のグラフによる説明であり、最適サイレンシング条件下で最小であった。すべての他の条件は、試験されたsiRNAのコレクションにわたって許容不可能なレベルのサイレンシング及び/又は細胞死を引き起こした。
図18Aは、ウェル当たり10,000細胞の細胞密度で4日目の遺伝子サイレンシングのグラフによる説明である。グラフは、100uL当たり0.063ugまでの脂質、及び4〜31nMのsiRNAは、試験された四つのsiRNAの内の二つ(例えば、cyclo3及びcyclo14)でサイレンシングの許容可能なレベルが提供された。図18Bは、毒性のグラフによる説明であり、最適サイレンシング条件下で最小であった。すべての他の条件は、試験されたsiRNAのコレクションにわたって許容不可能なレベルのサイレンシング及び/又は細胞死を引き起こした。
図19Aは、ウェル当たり20,000細胞の細胞密度で1日目の遺伝子サイレンシングのグラフによる説明である。グラフは、100uL当たり0.125ugまでの脂質、及び125〜250nM siRNAは、試験された四つのsiRNAの内の一つ(例えば、cyclo14)でサイレンシングの許容可能なレベルが提供された。図19Bは、毒性のグラフによる説明であり、最適サイレンシング条件下で最小であった。すべての他の条件は、試験されたsiRNAのコレクションにわたって許容不可能なレベルのサイレンシング及び/又は細胞死を引き起こした。
図20Aは、ウェル当たり20,000細胞の細胞密度で2日目の遺伝子サイレンシングのグラフによる説明である。グラフは、100uL当たり0.125ugまでの脂質は、試験された四つのsiRNAの内の二つ(例えば、cyclo3及びcyclo14)でサイレンシングの許容可能なレベルが提供された。図20Bは、毒性のグラフによる説明であり、最適サイレンシング条件下で最小であった。すべての他の条件は、試験されたsiRNAのコレクションにわたって許容不可能なレベルのサイレンシング及び/又は細胞死を引き起こした。
図21Aは、ウェル当たり40,000細胞の細胞密度で1日目の遺伝子サイレンシングのグラフによる説明である。グラフは、すべての条件が許容不可能であったことを示している。加えて、図21Bは、許容可能な毒性を示していない。本結果は、リバーストランスフェクションのプロセスは細胞密度に非常に感受性であること、及びこのフォーマットで遺伝子ノックダウンを成功させるには、ウェル(96ウェルプレート中の)当たり40,000未満の密度が好ましいことを示唆している。
実施例16
キナーゼ経路に含まれる遺伝子をsiRNA RTFにより研究し、細胞生存率の原因である遺伝子を決定した。キナーゼの779メンバーを標的としている合理的に設計されたsiRNAをRNaseフリー水に溶解し、PLLコート96ウェルプレートの個々のウェルで乾燥した。各siRNAの量は、125uLの全溶液についておよそ25nMである。25uLの全容量のハンクス平衡塩緩衝液中に0.1ugのDharmaFECT(商標)1脂質を有する脂質溶液を各ウェルに加え、20〜40分インキュベートして、siRNAを可溶化及び複合体化した後、媒質中の10,000HeLa細胞を加え、125uLの最終容量とした。プレートを24〜72時間の間維持し、細胞生存率についてアッセイした。脂質単独で処理した培養物(即ち、対照ウェル)及びキナーゼsiRNAアレーの個々のメンバーで処理した培養物の細胞生存率間の比較は、HeLa細胞生存率に必須である遺伝子の同定を可能にする。
実施例17
サイトカインレセプターファミリーに含まれる遺伝子をsiRNA RTFにより研究し、細胞生存率の原因である遺伝子を決定した。サイトカインレセプターファミリーの166メンバーを標的としている合理的に設計されたsiRNAをRNaseフリー水に溶解し、PLLコート96ウェルプレートの個々のウェルで乾燥した。各siRNAの量は、125uLの全溶液についておよそ25nMである。25uLの全容量のハンクス平衡塩緩衝液中に0.1ugのDharmaFECT(商標)1脂質を有する脂質溶液を各ウェルに加え、20〜40分インキュベートして、siRNAを可溶化及び複合体化した後、媒質中の10,000HT−29細胞を加え、125uLの最終容量とした。プレートを24〜72時間の間維持し、細胞生存率についてアッセイした。脂質単独で処理した培養物(即ち、対照ウェル)及びサイトカインレセプターファミリーsiRNAアレーの個々のメンバーで処理した培養物の細胞生存率間の比較は、HT−29細胞生存率に必須である遺伝子の同定を可能にする。
実施例18
siRNA RTFプロトコルにおいて、細胞毒性を減少させる、又は抑制する、異なった脂質含有溶液(水性に基づいた)の能力を、毒性モチーフを有するsiRNAで研究した。単独で又は他のストレス誘発因子(例えば、毒性小分子、脂質溶液、脂質)と組み合わされて投与された場合に細胞ストレス又は死を誘発することが可能である、モチーフAAA/UUU 又はGCCA/UGGC を含有するsiRNAのグループを研究した。具体的には、SRD5al(センス、5’ CCGGAAATTTGAAGAGTAT 配列番号2)遺伝子に対して方向付けられた毒性siRNAを、PPL=コートプレート上に乾燥した。これらの研究に使用された毒性siRNAは、無修飾であるか又は修飾されている。第一の修飾は、第一及び第二センスヌクレオチド上に2’−O−メチル基;第二アンチセンスヌクレオチド上に2’−O−メチル基;及びアンチセンス鎖(Mod T1)のアンチセンス5’末端ヌクレオチドの5’炭素上にリン酸基を含む。第二の修飾は、センス5’末端ヌクレオチド上に5’デオキシヌクレオチド;第二アンチセンスヌクレオチド上に2’−O−エタノール基;及びアンチセンス5’末端ヌクレオチド(Mod T2)の5’炭素上にリン酸基を含む。
図22は、Opti−MEM(商標)及びHBSS中のLIPOFECTAMINE(商標)2000を使用したOpti−MEM(商標)中において、無修飾毒性siRNAは、脂質濃度と関係なく、すべての条件下で20%を超える細胞死を誘発する(例えば、10nM及び100nM siRNA)。しかしながら、100uL当たり0.04ugの脂質は、80%に接する細胞生存率を有していた。加えて、両方の修飾siRNAは、80%を超える細胞生存率を有していた。HBSSにおいて、無修飾毒性siRNAは100uL全溶液当たり0.04及び0.06ugの脂質では細胞毒性を誘発しなかった。20%を超える細胞毒性は、100uL全溶液当たり01ugの脂質において100nM無修飾siRNAでのみ観察された。すべての修飾siRNAは最小毒性を示した。これらの結果は、RTFプロトコルにおいて、HBSSが毒性を減少できることを示している。さらに、これらの結果は化学的に修飾されたsiRNAはRTFプロトコルに適合しており、ストレス及び毒性を発生するオフターゲット効果を制限できることを示している。
実施例19
siRNA RTFプロトコルにおいて、細胞毒性を減少させる、又は抑制する、異なった脂質の能力を、毒性モチーフを有するsiRNAで研究した。これらの分子により発生された毒性は、オフターゲット分子への不完全な結合を防止する、制限する、又は改変する化学修飾の付加により無効にすることが可能である。具体的には、SRD5al遺伝子(センス、5’ CCGGAAATTTGAAGAGTAT 配列番号2)に対して方向付けられた毒性siRNAを、PPL=コートプレートのウェル床上に沈着させそして乾燥し、10又は100nMの最終濃度を達成した。これらの研究に使用された毒性siRNAは、実施例18のように、無修飾であるか又は修飾されている。
図23Aは、異なった脂質についての細胞生存率のグラフ的表現である。LIPOFECTAMINE(商標)2000−Opti−MEM(商標)無修飾毒性siRNAは、脂質濃度に関わらず(例えば、100uL溶液当たり、0.04、0.06、0.08、及び0.1ug)、すべての条件下で(例えば、10nM及び100nM siRNA)20%を超える細胞死を誘発した。これについての一つの境界線例外は、100uL当たり、0.04ugで観察され、培養物生存率は80%に接していた。加えて、修飾siRNAは細胞毒性を減少させた。DharmaFECT(商標)1−Opti−MEM(商標)無修飾毒性siRNAは、10nM siRNAでは、100uL当たり、0.04及び0.06ugの脂質で無毒であった。20%を超える細胞毒性は、10nM及び100nM siRNAの両方において、100uL全溶液当たり、0.08及び0.1ugの脂質で観察された。すべての修飾siRNAは最小毒性を示した。
図23Bは、各条件下で提供されたサイレンシングのレベルをグラフにより示しており、すべての試料において大まかには均等であるように描かれている。それ故、この結果は、DharmaFECT(商標)1が広い範囲の脂質濃度にわたって細胞にストレスを与える配列により誘発される毒性のレベルを最小にすることにより、RTFプロトコルに改善を提供することを示している。さらに、これらの結果は、化学的に修飾されたsiRNAは記載されたリバーストランスフェクションフォーマットに適合しており、ストレス及び毒性を発生するオフターゲット効果を除去することにおいて有効であることを示している。
実施例20
選択された遺伝子に対して方向付けられているsiRNAのプールの能力を、RTFプロトコルにおいて研究した。単一標的個別siRNAに対して方向付けられているsiRNAのプール及びGAPDH、MAP2K1又はMAP2K2に対して方向付けられている3又は4のsiRNAのプールの有効性を評価するため、DharmaFECT(商標)1を使用してHeLa細胞内にリバーストランスフェクトした。
この研究において、siRNAが以下のように設計され、以下のような配列を含む(例えば、センス鎖、5’→3’にリストされている):GAPDH siRNA二重鎖1(CAACGGAUUUGGUCGUAUU,配列番号3)、二重鎖2(CAACGGAUUUGGUCGUAUU, 配列番号3)、二重鎖3(GAAUUUGGCUACAGCAACA, 配列番号4)及び二重鎖4(GAAAUCCCAUCACCAUCUU, 配列番号5);MAP2K1 siRNA二重鎖1(GCACAUGGAUGGAGGUUCU, 配列番号6)、二重鎖2(GCAGAGAGAGCAGAUUUGA, 配列番号7)、二重鎖4(GAGCAGAUUUGAAGCAACU, 配列番号8)及び二重鎖5(CCAGAAAGCUAAUUCAUCU, 配列番号9); MAP2K2 siRNA二重鎖1(CAAAGACGAUGACUUCGAA, 配列番号10)、二重鎖2(GAUCAGCAUUUGCAUGGAA, 配列番号11)、二重鎖4(GGAAGCUGAUCCACCUUGA, 配列番号12)及び二重鎖7(GAAAGUCAGCAUCGCGGUU, 配列番号13)。
図24Aは、GAPGHサイレンシングの態様の結果のグラフによる表現であり、プールは個々のsiRNAと同等に又はより良好に作用することを示している。図24Bは、MAP2K2サイレンシングの態様の結果のグラフによる表現であり、プールは個々のsiRNAと同等に又はより良好に作用することを示している。図24Cは、GAPGHサイレンシングの態様の結果のグラフによる表現であり、プールは個々のsiRNAと同等に又はより良好に作用することを示しており、10nMにおいてプールは、いずれの個々のsiRNAよりも優れたサイレンシングを提供した。試験されたすべてのケースにおいて、個々のsiRNA又はプールを使用する遺伝子サイレンシングは、全体の細胞毒性を変化させなかった(データは示されていない)。プールの別の利点には、実行のコンシステンシーが含まれる。例えば、GAPDH及びMAP2K2を標的とする個々の二重鎖は適切に実行されるが(例えば、8siRNAすべてについて1nM〜100nM間の濃度で80%を超えるサイレンシング)、単一siRNAのみ(例えば、二重鎖4)、単一濃度で(例えば、50nM)MAP2K1について80%を超えるサイレンシングを提供した。対照的に、三つすべての標的を標的とするプールされたsiRNAは、10nM、50nM及び100nMの濃度で80%又はそれ以上のサイレンシングを発生した。これらの結果は、プール化は、RTFフォーマットの遺伝子サイレンシングにおいて増加したコンシステンシーを提供できることを示している。
実施例21
選択された遺伝子に対して方向付けられているsiRNAのプールの能力を、RTFプロトコルにおいて研究した。個別siRNAの単一標的組み合わせに対して方向付けられているsiRNAのプールの有効性を評価するため、多標的に方向付けた。GAPDH、MAP2K1又はMAP2K2に対して方向付けられているsiRNAは、DharmaFECT(商標)1を使用してHeLa細胞内にリバーストランスフェクトした。これらのアッセイで使用されたsiRNAは、実施例20と同一である。
図25A〜25Cは、多遺伝子ノックダウンとの適合性を示しているグラフによる表現である。図25Aは、GAPDH二重鎖1、MAP2K2二重鎖1及びMAP2K1二重鎖1(1、l&l)存在下でのGAPDHノックダウン;GAPDH二重鎖2、MAP2K2二重鎖2及びMAP2K1二重鎖2(2、2&2)存在下でのGAPDHノックダウン;GAPDH二重鎖4、MAP2K2二重鎖4及びMAP2K1二重鎖3(4、4&3)存在下でのGAPDHノックダウン;GAPDH二重鎖5、MAP2K2二重鎖7及びMAP2K1二重鎖4(5、7&4)存在下でのGAPDHノックダウン;及び前記の二重鎖のすべてから成るGAPDH、MAP2K2及びMAP2K1プール存在下でのGAPDHノックダウンを示している。図25Bは、図25Aに記載したすべての二重鎖組み合わせの存在下でのMAP2K2ノックダウンを示している。図25Cは、図25Aに記載したすべての二重鎖組み合わせの存在下でのMAP2K1ノックダウンを示している。MAP2K1及びMAP2K2標的に対して方向付けられた競合siRNAの存在下でさえも、75%を超えるサイレンシングが、試験されたすべてのGAPDH siRNAについて達成可能である。同様に、GAPDH及びMAP2K1に対して方向付けられたsiRNAの存在下でさえも、MAP2K2について75%を超えるサイレンシングが達成可能である。MAP2K1については、どの個別のsiRNAも75%を超えるサイレンシングを提供しなかったが、MAP2K1標的化siRNAのプールは、GAPDH及びMAP2K2を標的とするsiRNAのプール存在下で、適切に機能することが可能であった(1〜100nMで)。多遺伝子標的化フォーマットについての本発明の適合性は著しい改良であり、使用者が大きなゲノム全体にわたるスクリーンを単純化することを可能にする。
実施例32
前記実施例が使用するいくつかの例示のsiRNA配列が下記表2に出ている。すべての配列はセンス鎖を示しており、5’→3’方向に配向している。すべてのアンチセンス鎖は、上記明細書の本文で示されない限り、二重鎖領域にわたって、下記センス鎖と100%相補的であると推測される。いずれのdTdTオーバーハングも二重鎖領域の一部ではない。追加のsiRNA配列は、援用された仮出願の表I−IVで再調査することが可能である。
実施例31
一つの実施例において、siRNAでRTFを最適化するために、多ウェルRTFプレート又は一連のプレートを設計することが可能である。従って、プレートは以下の変数のいずれかを含むために構成することが可能である:(1)0.01〜250nMの間、より好ましくは0.05〜100nMの間、さらにより好ましくは0.1〜50nMの間、まださらに好ましくは0.5〜25nMの間、及び最も好ましくは0.75〜10nMの間又は約1nMである個別の又はプールのsiRNAの濃度;(2)DharmaFECT(商標)1、DharmaFECT(商標)2、DharmaFECT(商標)3又はDharmaFECT(商標)4のような脂質であるポリヌクレオチド担体のタイプ;(3)100uL溶液当たり0.05〜1ugの濃度、より好ましくは100uL溶液当たり0.05〜0.5ugの脂質の濃度、さらにより好ましくは100uL溶液当たり0.05〜0.25ugの脂質の濃度、及び最も好ましくは100uL溶液当たり0.05〜0.1ugの濃度である脂質ポリヌクレオチド担体の濃度;(4)脂質を複合体形成するために使用される媒質及び/又は緩衝液のタイプは、好ましくはOpti−MΕM(商標)、より好ましくはHyQ−MΕM(商標)及び最も好ましくはハンクス緩衝塩溶液のような緩衝化塩溶液又は均等な混合物であること;及び(5)約0.3cm2〜約0.35cm2当たり1,000〜35,000細胞の密度、2,000〜30,000細胞の好ましい密度、より好ましくは2,000〜20,000細胞、さらにより好ましくは2,000〜15,000細胞、及び最も好ましくは約0.3cm2〜約0.35cm2当たり2,000〜10,000細胞の細胞密度を有する細胞のタイプ及び量。siRNAは、選択された標的遺伝子のサイレンシングの研究に使用することが可能であり、又は対照siRNAは、既知の遺伝子を再現可能な様式で沈黙させるために使用することが可能である。
本発明は、その精神又は必須の特性から離れることなく、他の特定の形態に具体化することができる。記載された態様は、すべてに関して例示としてのみ考えるべきであり、制限的ではない。本発明の範囲は、それ故、前記の記述よりもむしろ付随する特許請求の範囲により示されている。特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲内にはいるすべての変更は、それらの範囲内に包含されるべきである。