JP2008526983A - T細胞の機能性を調節する方法 - Google Patents

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Abstract

哺乳類においてTH1細胞の機能性を調節する方法であって、1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物もしくはその誘導体、またはそのアンタゴニストの有効量を該哺乳類に投与する段階を含む。

Description

発明の分野
本発明は全体として、細胞の機能性を調節する方法およびそれに有用な薬剤に関する。より詳細には、本発明は式(I)の化合物などの、トリプトファン代謝物またはその誘導体を利用してTH1細胞の機能性を調節する方法に関する。とりわけ、本発明の方法は、自己反応性TH1応答をTH2応答に傾斜させることにより、多発性硬化症などの、異常な、望ましくないまたはその他の点で不適切なTH1細胞の機能性、具体的には、自己免疫TH1の機能性によって特徴づけられる状態の処置および/または予防で有用である。
発明の背景
本明細書のなかで著者により参照される刊行物の文献的詳細は、明細書の最後にアルファベット順にまとめられている。
「自己免疫疾患」とは、免疫系が間違った方向に向けられるようになっており、免疫系が実際には保護するように意図された臓器の1つまたは複数を攻撃する病気の群を表す。自己免疫疾患の約75%が女性で、最も多くは出産適齢期に起こる。
免疫系は細胞および細胞成分の複雑なネットワークであり、これは身体を防御するようにならびに細菌、ウイルス、およびその他の進入微生物によって引き起こされる感染をなくすように通常は働いている。ある者が自己免疫疾患を抱える場合、免疫系は自身を誤って攻撃し、その者自身の身体の細胞、組織、および臓器を標的にする。標的部位の免疫系細胞および分子の一群は、大まかに炎症と称される。
多くの異なるタイプの自己免疫疾患が存在しており、それらはそれぞれ異なる方法で身体に影響を及ぼしうる。例えば、自己免疫反応は多発性硬化症ではミエリンにおよびクローン病では腸に向けられる。全身性エリテマトーデス(狼瘡)などのその他の自己免疫疾患では、罹患した組織および臓器は、その疾患を有する個体間で異なることがある。狼瘡を有するある者は罹患した皮膚および関節を持ちうるが、別の者は罹患した皮膚、腎臓、および肺を持ちうる。最終的に、免疫系によるある組織の損傷は、1型糖尿病での膵臓のインスリン産生細胞の破壊のように、持続的でありうる。
自己免疫疾患の引き金は多様であり、単独でまたは組合せで作用する免疫因子、遺伝因子、ウイルス因子、薬物性の因子およびホルモン因子を含む。現時点では、多くの個々の機構が同定されているが、それらがどのように免疫ネットワークと相互作用してそうした異常な応答を誘発するかは、状況または疾患状態によって異なる可能性が高く、大部分は解明されていない。自己寛容の破綻を最終的に引き起こすことが明らかにされている機構には、以下が含まれる:
(1) ウイルスによる体細胞組織の感染、
(2) 細胞表面とのある種の薬物の結合による変化した自己抗原の発生、
(3) 細菌の抗原および自己決定基とのある抗原の交差反応性、
(4) 身体内での新たに露出された抗原の発生、
(5) ホルモンの影響、および
(6) 自己を認識する免疫ネットワークの破綻。
自己免疫疾患は慢性であることが多く、生涯にわたる配慮やモニタリングを必要とする。現在のところ、治療できる自己免疫疾患はほとんどない。
多発性硬化症(MS)は、軸索損傷や神経細胞消失と関連した中枢神経系での脱髄病変によって特徴づけられる神経性の自己免疫疾患である。臨床症状としては、視力喪失、外眼運動障害、知覚障害、感覚の喪失、脆弱性、構音障害、痙縮、運動失調、および膀胱機能障害が挙げられる。通常のパターンは、再発性発作の1つに続く部分的回復であるが、急性激症型や慢性進行型も起こる。再ミエリン化や神経細胞消失が自発的に修復されることはないので、自己免疫の攻撃により引き起こされる損傷は、疾患の進行とともに悪化しうる持続性の神経学的障害をもたらす。
したがって、異常な免疫細胞の機能性によって特徴づけられる、自己免疫疾患などの、疾患を処置する新規の手段を開発する必要が継続して存在する。ステロイドおよび免疫抑制に基づく処置の代替選択肢を提供する治療的および/または予防的処置計画の開発は、これらの現在の処置に付随しうる副作用の重症度という観点で考慮された場合、非常に有益であろう。
トリプトファンは、その他のアミノ酸に比べてその相対的希少性のため、感染に対する防御で独自の役割を果たす。感染の間に、身体は感染生物を餓死させる目的で、トリプトファンの希少性を高めるトリプトファン異化酵素を誘導する[Brown, et al., 1991](非特許文献1)。未解決の慢性感染症では、トリプトファン代謝は乱れたままである。広範囲に及ぶトリプトファン欠乏によって引き起こされる生物学的障害は、認知障害、神経内分泌調節異常、ならびにAIDS、自己免疫疾患、およびその他の慢性疾患状態と関連する免疫不全のいくつかに実質的に関与している可能性がある。
トリプトファンは異なる酵素系によりいくつかの組織で代謝される。トリプトファン異化の主要な部位は肝臓であり、ここではトリプトファン酸化酵素が酸化剤として酸素分子でトリプトファンを代謝する。酸素を用いてトリプトファン分子の5員窒素含有環を開裂し、キヌレニン(KYN)誘導体を生成する。
10年余り前、トリプトファン酸化酵素は、唯一のトリプトファン異化酵素であると広く考えられていた。その後、日本人の研究者らが、インドール酸化酵素とも呼ばれるインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)を発見した。末梢組織ではおよび脳では、IDOは唯一のトリプトファン異化酵素であり、超酸化物陰イオンを酸化剤として用いる。IDOはより一般的な酵素である。それは、トリプトファンに化学的に関連するインドールと呼ばれる広範な化合物群を酸化する能力に限界がある。IDOは肝臓のトリプトファン酸化酵素よりもトリプトファンに対する特異性が低い。
本発明に至るまでの研究のなかで、IDO酵素系により生成されるトリプトファン代謝物、およびトラニラストなどのその誘導体は、TH1応答をTH2応答に傾斜させるという関連においてTH1細胞の機能性を下方制御することが分かった。これらの発見は大きな意義がある。それはTH1細胞の機能性を下方制御する手段の解明によって、TH1細胞の免疫応答、具体的には脱髄状態などの自己免疫状態を選択的に調節する手段が得られるからである。したがって、本発明は、今回、従来の免疫抑制、つまり全免疫細胞の機能性の下方制御を対象とするこの従来型の免疫抑制に付随する副作用を回避する形でTH1細胞の機能性を選択的に下方制御する強力な手段を提供する。
Brown, et al., 1991
発明の概要
本明細書および追随する特許請求の範囲の全体にわたって、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という単語、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変化形は、記述された要素もしくは段階または要素もしくは段階の群の包含を意味するが、他の如何なる要素もしくは段階または要素もしくは段階の群の排除を意味するわけではないことが理解されよう。
本明細書には、参考文献一覧の後に本明細書において提示されている、プログラムPatentIn Version 3.1を用いて作成されたヌクレオチドおよびアミノ酸配列情報が含まれる。
各ヌクレオチド配列は、数字表示<210>後の配列識別子(例えば、<210>1、<210>2など)により配列表のなかで識別される。配列の長さ、タイプ(DNA、アミノ酸など)および各ヌクレオチド配列に対する供給源生物は、それぞれ数字表示域<211>、<212>および<213>に規定の情報により識別される。本明細書のなかで参照されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、表示SEQ ID NO:後の配列識別子(例えば、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2など)により識別される。本明細書のなかで参照される配列識別子は、配列表中の数字表示域<400>後の配列識別子(例えば、<400>1、<400>2など)に規定の情報に相関する。すなわち、本明細書のなかで詳述されるSEQ ID NO:1は、配列表のなかで<400>1と表示される配列に相関する。
本発明の1つの局面は、哺乳類においてTH1細胞の機能性を下方制御する方法を対象とし、該方法は1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含む。
別の態様では、哺乳類において自己免疫TH1細胞の機能性を下方制御する方法が提供され、該方法は、TH1細胞応答をTH2細胞応答に傾斜させるのに十分な時間および条件の下で1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含む。
好ましい態様では、IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体は式(I)の化合物である:
Figure 2008526983
式中
XがNおよびCR6から選択され;
Figure 2008526983
が単結合または二重結合を表し;
R1がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2HおよびCO2C1〜4アルキルから選択され;
R2がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロから選択されるか、またはR1およびR2が一緒に置換されてもよい縮合フェニル環を形成し;
R3がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシおよびハロから選択され;
R4がH、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキルおよび
Figure 2008526983
から選択され;
R5がC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、NH2およびNHR12から選択され;
R6がH、C1〜4アルキル、OHおよびC1〜4アルコキシから選択され;
R7、R8、R9およびR10が各々独立してHおよびC1〜4アルキルであり、またはR7およびR8が一緒にオキソ基を形成し、またはR7およびR9が結合を形成し;
R11がCH(CO2H)NH2、CH(CO2C1〜4アルキル)NH2、C(O)CO2H、C(O)CO2C1〜4アルキル、C(O)H、CO2H、CO2C1〜4アルキル、C(O)NH2、C(O)NHR13、CH2NH2、CH2NHC1〜4アルキルおよびCH2N(C1〜4アルキル)2から選択され;
R12がH、C1〜4アルキルおよびC(O)Hから選択され; ならびに
R13がH、C1〜4アルキルおよび置換されてもよいフェニルであり、ここで置換されてもよいフェニルは1つまたは複数の、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、ハロ、NH2、NHC1〜4アルキルおよびN(C1〜4アルキル)2で置換されてもよい。
1つの好ましい態様では、IDO仲介性のトリプトファン代謝物は、3-ヒドロキシキヌレン酸(3-HKA)、3-ヒドロキシアントラニル酸(3-HAA)、ピコリン酸(PA)またはキノリン酸(QA)である。
別の好ましい態様では、IDO仲介性のトリプトファン代謝物の誘導体は式(II)の化合物である:
Figure 2008526983
式中R1およびR2の各々が水素原子またはC1〜C4アルキル基から独立して選択され、R3およびR4が各々水素原子であり、または一緒に別の化学結合を形成し、各Xがヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基もしくはC1〜C4アルコキシ基から独立して選択され、または2つのX基がアルキルもしくはアルコキシ基である場合、それらが一緒に連結されて環を形成してもよく、ならびにnが1〜3の整数である。
カルボキシル基が芳香環の2-、3-または4-位にあってもよい。好ましくは、カルボキシル基が2-位にある。
好ましくは、R1およびR2の少なくとも一方が水素原子である。より好ましくは、R1およびR2の両方が水素原子である。
好ましくは、R3およびR4が一緒になって化学結合を形成する。不飽和結合を有するそのような化合物は、EまたはZ幾何異性体の形態であってもよい。
好ましくは、nが1または2であり、および同じでもまたは異なってもよい各Xがハロゲン、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシから選択される。好ましくは、XがハロゲンおよびC1〜C4アルコキシから選択される。より好ましくは、nが2であり、および両方のXがC1〜C4アルコキシから選択され、特に両方のXがメトキシである。
本発明で有用な特に好ましい化合物は、式(II)のものである:
Figure 2008526983
式(II)の化合物の例としては、
2-[[3-(2-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;2-[[3-(2-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; および
2-[[3-(3,4-エチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸が挙げられる。
本発明で用いられる式(II)の特に好ましい化合物は2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸(トラニラスト、TNL)である。
別の局面では、哺乳類における自己免疫TH1細胞の機能性を下方制御する方法が提供され、該方法は、対象のTH1細胞応答をTH2細胞応答に傾斜させるのに十分な時間および条件の下で1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含み、そこで該代謝物またはその誘導体がTH2サイトカイン産生を上方制御する。
別の局面では、哺乳類におけるミエリンタンパク質に向けられた自己免疫TH1細胞の機能性を下方制御する方法が提供され、該方法は、対象のTH1細胞応答をTH2細胞応答に傾斜させるのに十分な時間および条件の下で1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含み、その中において該代謝物またはその誘導体がTH2サイトカイン産生を上方制御する。
本発明のさらなる局面は、哺乳類における阻害されたTH1細胞の機能性を上方制御する方法を対象とし、該方法は、式(I)もしくは式(II)のIDO仲介性のトリプトファン代謝物もしくは化合物または薬学的に許容されるその塩のアンタゴニストの有効量を該哺乳類に投与する段階を含む。
本発明のさらなる局面は、哺乳類における異常なTH1細胞の機能性によって特徴づけられる状態の処置および/または予防の方法を対象とし、該方法は、該TH1の機能性を下方制御するのに十分な時間および条件の下で1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含む。
さらなる局面では、哺乳類における自己免疫TH1細胞の機能性によって特徴づけられる状態の処置および/または予防の方法が提供され、該方法は、TH1細胞応答をTH2細胞応答に傾斜させるのに十分な時間および条件の下で1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含む。
さらなる局面では、哺乳類におけるミエリン塩基性タンパク質に向けられた自己免疫TH1細胞の機能性によって特徴づけられる状態の処置および/または予防の方法が提供され、該方法は、TH1細胞応答をTH2細胞応答に傾斜させるのに十分な時間および条件の下で1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含み、その中において該代謝物またはその誘導体がTH2サイトカイン産生を上方制御する。
本発明の別の局面は、異常なTH1細胞の機能性によって特徴づけられる状態の処置のための医薬の製造でのIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の使用を対象とし、その処置において該化合物の投与が該TH1細胞の機能性を下方制御する。
本発明の別の局面は、多発性硬化症の処置のための医薬の製造でのIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の使用を対象とする。
本発明の別の局面は、上記に規定される通り、本発明の方法で用いられる、上記に規定されるような代謝物もしくは誘導体または薬学的に許容されるその塩あるいはそのアンタゴニストに関する。
発明の詳細な説明
本発明は、一つには、IDO仲介性のトリプトファン代謝物およびその誘導体がTH1細胞の機能性を下方制御するという意外な判定に関して予測される。より具体的には、TH1サイトカインの放出がTH2サイトカインの産生の上方制御と同時に下方制御される。これは必然的にTH1応答からTH2応答へのTH細胞応答の傾斜をもたらし、それによってさらなるTH1応答性を抑制する。これらの発見によって、今回、自己免疫TH1細胞の機能性などの、異常なTH1細胞の機能性によって特徴づけられる状態を治療的にまたは予防的に処置する手段の合理的なデザインが可能になった。そのような状態の例としては、多発性硬化症などの自己免疫性脱髄疾患が挙げられる。
したがって、本発明の1つの局面は、哺乳類においてTH1細胞の機能性を下方制御する方法を対象とし、該方法は1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含む。
より詳細には、哺乳類において自己免疫TH1細胞の機能性を下方制御する方法が提供され、該方法は、TH1細胞応答をTH2細胞応答に傾斜させるのに十分な時間および条件の下で1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含む。
「IDO仲介性のトリプトファン代謝物」に対する言及は、IDO酵素系を介したトリプトファンの代謝にしたがって生成される任意の分子に対する言及と理解されるべきである。そのような代謝物の例としては3-ヒドロキシキヌレン酸(3-HKA)、3-ヒドロキシアントラニル酸(3-HAA)、ピコリン酸(PA)、およびキノリン酸(QA)が挙げられるが、これらに限定されることはない。本発明は同様に、トラニラストなどの、IDO仲介性のトリプトファン代謝物の誘導体の使用にまで及ぶものと理解されるべきである。N-[3,4-ジメトキシシンナモイル]-アントラニル酸(2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸、トラニラスト、TNLとも呼ばれる)は、肥満細胞脱顆粒の阻害剤としてもともと同定された抗アレルギー剤である(Zampini P et al., 1983)。本発明によれば、3-HAAの合成誘導体であるこの分子は、自己免疫TH1応答をTH2応答に傾斜させるように機能し、それによってTH1応答を効果的に抑制することが分かった。
したがって、1つの好ましい態様では、IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体は式(I)の化合物である:
Figure 2008526983
式中
XがNおよびCR6から選択され;
Figure 2008526983
が単結合または二重結合を表し;
R1がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2HおよびCO2C1〜4アルキルから選択され;
R2がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロから選択されるか、またはR1およびR2が一緒に置換されてもよい縮合フェニル環を形成し;
R3がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシおよびハロから選択され;
R4がH、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキルおよび
Figure 2008526983
から選択され;
R5がC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、NH2およびNHR12から選択され;
R6がH、C1〜4アルキル、OHおよびC1〜4アルコキシから選択され;
R7、R8、R9およびR10が各々独立してHおよびC1〜4アルキルであり、またはR7およびR8が一緒にオキソ基を形成し、またはR7およびR9が結合を形成し;
R11がCH(CO2H)NH2、CH(CO2C1〜4アルキル)NH2、C(O)CO2H、C(O)CO2C1〜4アルキル、C(O)H、CO2H、CO2C1〜4アルキル、C(O)NH2、C(O)NHR13、CH2NH2、CH2NHC1〜4アルキルおよびCH2N(C1〜4アルキル)2から選択され;
R12がH、C1〜4アルキルおよびC(O)Hから選択され; ならびに
R13がH、C1〜4アルキルおよび置換されてもよいフェニルであり、ここで置換されてもよいフェニルは1つまたは複数の、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、ハロ、NH2、NHC1〜4アルキルおよびN(C1〜4アルキル)2で置換されてもよい。
1つの好ましい態様では、IDO仲介性のトリプトファン代謝物は、3-HKA、3-HAA、PAまたはQAである。
別の好ましい態様では、IDO仲介性のトリプトファン代謝物の誘導体は式(II)の化合物である:
Figure 2008526983
式中R1およびR2の各々が水素原子またはC1〜C4アルキル基から独立して選択され、R3およびR4が各々水素原子であり、または一緒に別の化学結合を形成し、各Xがヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基もしくはC1〜C4アルコキシ基から独立して選択され、または2つのX基がアルキルもしくはアルコキシ基である場合、それらが一緒に連結されて環を形成してもよく、ならびにnが1〜3の整数である。
カルボキシル基が芳香環の2-、3-または4-位にあってもよい。好ましくは、カルボキシル基が2-位にある。
好ましくは、R1およびR2の少なくとも一方が水素原子である。より好ましくは、R1およびR2の両方が水素原子である。
好ましくは、R3およびR4が一緒になって化学結合を形成する。不飽和結合を有するそのような化合物は、EまたはZ幾何異性体の形態であってもよい。
好ましくは、nが1または2であり、および同じでもまたは異なってもよい各Xがハロゲン、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシから選択される。好ましくは、XがハロゲンおよびC1〜C4アルコキシから選択される。より好ましくは、nが2であり、および両方のXがC1〜C4アルコキシから選択され、特に両方のXがメトキシである。
本発明で有用な特に好ましい化合物は、式(III)のものである:
Figure 2008526983
式(II)の化合物の例としては、
2-[[3-(2-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;2-[[3-(2-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(4-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(2,3-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸;
2-[[3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; および
2-[[3-(3,4-エチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸が挙げられる。
本発明で用いられる式(III)の特に好ましい化合物は2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸(トラニラスト、TNL)である。
本明細書において用いられる「C1〜C4アルキル」という用語は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状炭化水素鎖をいう。そのような基の例としてはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルが挙げられる。
本明細書において用いられる「C2〜C4アルケニル」という用語は、2〜4個の炭素原子および1つまたは2つの二重結合を有する直鎖状または分枝状炭化水素鎖をいう。そのような基の例としてはビニル、プロペニル、ブテニルおよびブタジエニルが挙げられる。
本明細書において用いられる「C1〜C4アルコキシ」という用語は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基で置換されたヒドロキシ基をいう。そのような基の例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシおよびtert-ブトキシが挙げられる。
本明細書において用いられる「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロまたはブロモ原子をいう。
適当な薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、および臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の塩、または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸(salicyclic)、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸および吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩を含むが、これらに限定されることはない。
塩基塩はナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムなどの、薬学的に許容される陽イオンと形成されるものを含むが、これらに限定されることはない。
塩基性窒素含有基は塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどの低級ハロゲン化アルキル、硫酸ジメチルおよびジエチルのような硫酸ジアルキルならびにその他のような薬剤で四級化されてもよい。
式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩は、公知であり、当技術分野において知られる方法によって調製することができる。米国特許第3,940,422号を参照されたく、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
式(I)の化合物のなかには不斉中心を保有するものもあり、それ故に2つ以上の立体異性体で存在できるものもあることが同様に認識されよう。本発明はこのように、1つまたは複数の不斉中心で実質的に純粋な、例えば、約95%もしくは97% eeのような、約90% eeを超えるまたは99% eeを超える異性体での化合物、およびその、ラセミ混合物を含め、混合物にも関する。そのような異性体は、例えばキラル中間体を用いて不斉合成により、またはキラル分割により調製することができる。
本発明を特定の理論または作用機序に限定するわけではないが、式(I)の化合物は経口的に活性な抗アレルギー化合物である。本発明の特に好ましい化合物は、化学名N-[3,4-ジメトキシシンナモイル]-アントラニル酸または2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸のいずれかで公知であり、トラニラストと呼ばれることもある。さらに、それは化学式C18H17NO5でおよび商標名リザベン(Rizaben)で知られる。N-[3,4-ジメトキシシンナモイル]-アントラニル酸の構造を以下に描く:
Figure 2008526983
「TH1細胞」または「TH2細胞」に対する言及は、CD4とともにT細胞受容体を発現する免疫細胞であって、体液性免疫応答または細胞性免疫/炎症に向けたエフェクター細胞の誘導因子として働く免疫細胞に対する言及と理解されるべきである。本発明を特定の理論または作用機序に限定するわけではないが、これらの細胞は、抗原提示細胞の表面に発現されたMHCクラスII分子との関連において提示される抗原を認識し、それに結合する。より具体的には、TH1細胞は、とりわけ、IL-2、IFN-γ、およびTNF-αを産生しかつ細胞性/炎症性免疫応答を仲介するTH細胞と機能的に規定される。TH2細胞は、とりわけ、IL-4、IL-5およびIL-10を産生しかつ体液性応答を仲介するTH細胞と機能的に規定される。特定のサブクラスに特徴的なサイトカインの産生は、そのサブクラスのTH細胞の増殖および機能性を促進させながらも、他のサブクラスの機能性を下方制御させるという点でこれらのTHサブクラスの交差阻害が行われる。
本発明を決して限定するわけではないが、多発性硬化症などの自己免疫疾患では、TH1分化自己反応性CD4+細胞が炎症過程を推進している。実際に、改変ペプチドリガンド(APL)、HMG-CoA還元酵素阻害剤(「スタチン」)またはIL-4の遺伝子導入と併せたDNAワクチン投与の利用を介するような、治療的手法ではミエリン特異的な自己免疫TH細胞のサイトカインプロファイルをTH1からTH2に傾斜させることを目的とする。これらは多発性硬化症の動物モデルでうまくいくことが明らかにされている(Brocke, S, et al., Nature 379, 343-6, 1996; Garren, H., et al., Immunity 15, 15-22, 2001; Youssef, S., et al., Nature 420, 78-84, 2002)。さらに、多発性硬化症の最近認可された処置は、多発性硬化症を有する患者のサイトカインプロファイルのTH2転換を誘導することが明らかにされている(Steinman, L., Science 305, 212-6, 2004)。「T細胞」に対する言及は同様に、T細胞突然変異体に対する言及を包含すると理解されるべきである。「突然変異体」は、遺伝子操作されている細胞などの、天然にまたは非天然に改変されたT細胞を含むが、これに限定されることはない。「T細胞」に対する言及は同様に、T細胞像に係わり合いを示す細胞にまで及ぶと理解されるべきである。これらの細胞は発生の任意の分化段階にあってもよい。
TH1の「機能性」に対する言及は、発生の任意の分化段階にあるTH1細胞が実行可能な機能活性のいずれかの1つまたは複数に対する言及と理解されるべきである。これは、例えば、TH1の増殖、分化産生および/またはサイトカイン産生を含む。それは同様に、サブクラスの交差阻害によって、TH1の機能性を効果的に下方制御するTH2の機能性の上方制御にまで及ぶことも理解されるべきである。好ましくは、TH1の機能性はTH2サイトカインの産生の上方制御を介して下方制御される。
この好ましい態様によれば、哺乳類における自己免疫TH1細胞の機能性を下方制御する方法が提供され、該方法は、対象のTH1細胞応答をTH2細胞応答に傾斜させるのに十分な時間および条件の下で1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含み、そこで該代謝物またはその誘導体がTH2サイトカイン産生を上方制御する。
対象のTH1細胞が「自己免疫」細胞であることに対する言及は、該TH1細胞のT細胞受容体(TCR)が自己抗原に向けられることを意味すると理解されるべきである。この点に関し、TH1細胞のTCRは自己抗原に一意的におよび排他的に向けられてもよく、それは非自己抗原に向けられてもよいがそれでもなお自己抗原との交差反応性を示し、またはそれは自己抗原に向けられるがそれでもなお非自己抗原との交差反応性を示してもよい。本発明を特定の理論または作用機序に限定するわけではないが、自己抗原によるT細胞のエフェクター機能の活性化および誘導は、自己免疫応答に相当する。好ましくは、対象の自己抗原はミエリンタンパク質であり、さらにより好ましくは、ミエリン塩基性タンパク質である。
それ故に、より好ましくは哺乳類におけるミエリンタンパク質に向けられた自己免疫TH1細胞の機能性を下方制御する方法が提供され、該方法は、対象のTH1細胞応答をTH2細胞応答に傾斜させるのに十分な時間および条件の下で1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含み、その中において該代謝物またはその誘導体がTH2サイトカイン産生を上方制御する。
好ましくは、ミエリンタンパク質はミエリン塩基性タンパク質である。
好ましい態様では、IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体は式(I)の化合物である:
Figure 2008526983
式中
XがNおよびCR6から選択され;
Figure 2008526983
が単結合または二重結合を表し;
R1がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2HおよびCO2C1〜4アルキルから選択され;
R2がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロから選択されるか、またはR1およびR2が一緒に置換されてもよい縮合フェニル環を形成し;
R3がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシおよびハロから選択され;
R4がH、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキルおよび
Figure 2008526983
から選択され;
R5がC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、NH2およびNHR12から選択され;
R6がH、C1〜4アルキル、OHおよびC1〜4アルコキシから選択され;
R7、R8、R9およびR10が各々独立してHおよびC1〜4アルキルであり、またはR7およびR8が一緒にオキソ基を形成し、またはR7およびR9が結合を形成し;
R11がCH(CO2H)NH2、CH(CO2C1〜4アルキル)NH2、C(O)CO2H、C(O)CO2C1〜4アルキル、C(O)H、CO2H、CO2C1〜4アルキル、C(O)NH2、C(O)NHR13、CH2NH2、CH2NHC1〜4アルキルおよびCH2N(C1〜4アルキル)2から選択され;
R12がH、C1〜4アルキルおよびC(O)Hから選択され; ならびに
R13がH、C1〜4アルキルおよび置換されてもよいフェニルであり、ここで置換されてもよいフェニルは1つまたは複数の、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、ハロ、NH2、NHC1〜4アルキルおよびN(C1〜4アルキル)2で置換されてもよい。
さらにより好ましくは、IDO仲介性のトリプトファン代謝物は、3-HKA、3HAA、PAまたはQAである。
別の好ましい態様では、IDO仲介性のトリプトファン代謝物の誘導体は式(II)の化合物である:
Figure 2008526983
式中R1およびR2の各々が水素原子またはC1〜C4アルキル基から独立して選択され、R3およびR4が各々水素原子であり、または一緒に別の化学結合を形成し、各Xがヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基もしくはC1〜C4アルコキシ基から独立して選択され、または2つのX基がアルキルもしくはアルコキシ基である場合、それらが一緒に連結されて環を形成してもよく、ならびにnが1〜3の整数である。
本発明の方法による調節の対象であるTH1細胞は哺乳類内に局在しており、それ故に本方法はインビボで行われる必要があると理解されるべきである。対象の細胞が、単離されているかまたは単離されていない、細胞の群または組織の1つである場合、本方法はその群中のTH1細胞全てまたはその群中のTH1細胞の亜群だけの機能性を調節することができる。同様に、哺乳類の生物学的機能性の調節との関連で、本調節は全身的にまたは局所的な形でTH1細胞の機能性を調節するという関連で達成されうると理解されるべきである。さらに、利用される手段に関係なく、TH1細胞の機能性の変化による細胞の影響は細胞全てまたは関連する環境内の細胞の亜群だけとの関連で起こりうる。
TH1細胞の機能活性を「下方制御する」との言及は、該活性の1つまたは複数の局面を阻止する、低減させる(例えば、減速させる)または別の方法で阻害するとの言及と理解されるべきであり、その一方、これに関連して「上方制御する」との言及は、逆の意味を有すると理解されるべきである。
本明細書において用いられる「哺乳類」という用語は、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ)、実験室試験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)および捕獲野生動物(例えば、キツネ、カンガルー、シカ)を含む。好ましくは、哺乳類はヒトまたは実験室試験動物である。さらにより好ましくは、哺乳類はヒトである。
好ましい方法はTH1細胞の機能性を下方制御することであるが、ある特定の状況では、この活性の上方制御を誘導することが望ましいこともある。例えば、ある特定の条件では、上記に規定される、式(I)の代謝物または化合物の投与は、適切な全身療法でありうる。したがって、そのような療法の副作用は、ある特定の細胞群においてまたはある特定の組織部位でTH1細胞の機能性の不要な下方制御であろう。式(I)の代謝物または化合物の投与を中断することでこの状況を是正することが不可能である限りでは、(例えば、部位特異的な形で)その分子のアンタゴニスト剤を投与することが望ましいかもしれない。別の例では、式(I)の代謝物または化合物を用いた療法では、哺乳類に導入されたものの機能活性を遅くするかまたは停滞させる必要がある化合物の機能性を阻害するため、これらの分子のアンタゴニストの使用が必要になるかもしれない。「阻害されたTH1細胞の機能性」に対する言及は、それ故に、哺乳類のTH1細胞の機能性の少なくとも一部が式(I)もしくは式(II)の本代謝物もしくは化合物または薬学的に許容されるその塩の効果によって、阻害された、減速された、またはそうでなければ停滞した機能性を示すことを意味すると理解されるべきである。
したがって、本発明の別の局面は、哺乳類において、阻害されたTH1細胞の機能性を上方制御する方法を対象とし、該方法は、式(I)もしくは式(II)のIDO仲介性のトリプトファン代謝物もしくは化合物または薬学的に許容されるその塩のアンタゴニストの有効量を該哺乳類に投与する段階を含む。
「アンタゴニスト」に対する言及は、式(I)もしくは式(II)の代謝物もしくは化合物または薬学的に許容されるその塩による細胞の機能性の阻害活性を直接的にまたは間接的に阻害する、停滞させる、またはそうでなければ下方制御する任意のタンパク性または非タンパク性分子に対する言及と理解されるべきである。本発明で用いるのに適したアンタゴニストの同定は、当業者に周知の方法を利用して日常的に達成することができる。
本発明のさらなる局面は、疾患状態もしくはその他の不要な状態またはそのような状態の発症の素因の処置および/または予防との関連での本発明の使用に関する。より詳細には、本発明は自己免疫TH1反応性などの、異常なまたは不要なTH1細胞の機能性によって特徴づけられる疾患状態の処置を対象とする。本発明を特定の理論または作用機序に限定するわけではないが、本発明の方法によって処置できる状態は、TH1仲介性の自己免疫状態を含むが、これに限定されることはない。好ましくは、前記の状態は多発性硬化症、急性炎症性多発神経根症(ギランバレー症候群)、多発神経根障害または慢性炎症性脱髄などの、中枢神経系または末梢の自己免疫性脱髄疾患である。
したがって、本発明の別の局面は、哺乳類における異常なTH1細胞の機能性によって特徴づけられる状態の処置および/または予防の方法を対象とし、該方法は、該TH1の機能性を下方制御するのに十分な時間および条件の下で1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含む。
より詳細には、哺乳類における自己免疫TH1細胞の機能性によって特徴づけられる状態の処置および/または予防の方法が提供され、該方法は、TH1細胞応答をTH2細胞応答に傾斜させるのに十分な時間および条件の下で1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含む。
好ましくは、前記の代謝物またはその誘導体はTH2サイトカイン産生を上方制御する。
より好ましくは、前記の自己免疫TH1細胞はミエリンタンパク質に向けられる。さらにより好ましくは、前記のミエリンタンパク質はミエリン塩基性タンパク質である。
本発明のこの好ましい局面によれば、哺乳類におけるミエリン塩基性タンパク質に向けられた自己免疫TH1細胞の機能性によって特徴づけられる状態の処置および/または予防の方法が提供され、該方法は、TH1細胞応答をTH2細胞応答に傾斜させるのに十分な時間および条件の下で1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階を含み、その中において該代謝物またはその誘導体がTH2サイトカイン産生を上方制御する。
好ましくは、前記の状態は中枢神経系または末梢の自己免疫性脱髄疾患である。より好ましくは、前記の末梢の脱髄疾患は急性炎症性多発神経根症、多発神経根障害または慢性炎症性脱髄である。
最も好ましくは、前記の状態は多発性硬化症である。
好ましい態様では、IDO仲介性のトリプトファン代謝物は、式(I)の化合物である:
Figure 2008526983
式中
XがNおよびCR6から選択され;
Figure 2008526983
が単結合または二重結合を表し;
R1がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2HおよびCO2C1〜4アルキルから選択され;
R2がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロから選択されるか、またはR1およびR2が一緒に置換されてもよい縮合フェニル環を形成し;
R3がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシおよびハロから選択され;
R4がH、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキルおよび
Figure 2008526983
から選択され;
R5がC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、NH2およびNHR12から選択され;
R6がH、C1〜4アルキル、OHおよびC1〜4アルコキシから選択され;
R7、R8、R9およびR10が各々独立してHおよびC1〜4アルキルであり、またはR7およびR8が一緒にオキソ基を形成し、またはR7およびR9が結合を形成し;
R11がCH(CO2H)NH2、CH(CO2C1〜4アルキル)NH2、C(O)CO2H、C(O)CO2C1〜4アルキル、C(O)H、CO2H、CO2C1〜4アルキル、C(O)NH2、C(O)NHR13、CH2NH2、CH2NHC1〜4アルキルおよびCH2N(C1〜4アルキル)2から選択され;
R12がH、C1〜4アルキルおよびC(O)Hから選択され; ならびに
R13がH、C1〜4アルキルおよび置換されてもよいフェニルであり、ここで置換されてもよいフェニルは1つまたは複数の、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、ハロ、NH2、NHC1〜4アルキルおよびN(C1〜4アルキル)2で置換されてもよい。
好ましくは、前記のIDO仲介性のトリプトファン代謝物は、3-HKA、3-HAA、PAまたはQAである。
別の好ましい態様では、IDO仲介性のトリプトファン代謝物の誘導体は式(II)の化合物である:
Figure 2008526983
式中R1およびR2の各々が水素原子またはC1〜C4アルキル基から独立して選択され、R3およびR4が各々水素原子であり、または一緒に別の化学結合を形成し、各Xがヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基もしくはC1〜C4アルコキシ基から独立して選択され、または2つのX基がアルキルもしくはアルコキシ基である場合、それらが一緒に連結されて環を形成してもよく、ならびにnが1〜3の整数である。
式(I)、式(II)の代謝物、誘導体および化合物または薬学的に許容されるその塩は同様に、別の療法、例えば、自己免疫状態が処置される限りにおいて免疫抑制または抗炎症の処置計画と併用することができる。
「有効」量は、少なくとも部分的に、所望の応答を得るのに、または処置される特定の状態の、発症を遅延させるのにもしくは進行を阻害するのにもしくはその発症もしくは進行を全体で食い止めるのに必要な量を意味する。この量は、処置される個体の健康および身体状態、処置される個体の分類群、所望される保護の程度、組成物の処方、医学的状態の評価、ならびにその他の関連する要因に応じて変わる。この量は、日常の試験を通じて判定されうる比較的広い範囲内に入るものと予想される。
本明細書において「処置」および「予防」に対する言及は、その最も広い意味において考慮されるべきである。「処置」という用語は、必ずしも被験体が完全回復まで処置されることを意味しない。同様に、「予防」は必ずしも被験体が疾患状態に最終的にかからないことを意味しない。したがって、処置および予防は、特定の状態の症状の改善または特定の状態を来たす危険性を予防するかもしくは別の方法で低減させることを含む。例えば、多発性硬化症との関連において、これはいくつかの神経領域の、しかし必ずしも全てとは限らない神経領域の炎症の改善または予防を含むことができる。これは、例えば、本化合物がいくつかの、しかし全てではない罹患組織に局所的に投与される場合に起きうるであろう。「予防」という用語は、特定の状態の重症度または発症を低減させることと考えられてもよい。「処置」は同様に、既存の状態の重症度を低減させることができる。
薬学的組成物の形態での、式(I)、式(II)の化合物もしくは薬学的に許容されるその塩またはそのアンタゴニスト(本明細書において「調節剤」と称される)の投与は、任意の好都合な手段によって行うことができる。薬学的組成物の調節剤は、特定の症例に依存する量で投与される場合に治療活性を示すことが企図される。用量の変化は、例えば、ヒトまたは動物および選択の調節剤に依存する。広範囲の用量が適用可能となりうる。患者を考慮すると、例えば、約0.1 mg〜約1 mgの調節剤を1日につき体重1キログラム当たり投与することができる。用法用量は、最適の治療反応をもたらすように調整することができる。例えば、数回に分けた用量を毎日、毎週、毎月、またはその他の適当な時間間隔で投与してもよく、あるいは状況の必要性によって適応されるように用量を均等に減らしてもよい。
調節剤は、経口、静脈内(水溶性の場合)、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内もしくは坐剤経路または埋込み(例えば、徐放性分子を使用する)によるような、都合の良い方法で投与することができる。調節剤は、酸添加塩または例えば、亜鉛、鉄などとの金属錯体のような、薬学的に許容される無毒性の塩(本出願の目的のための塩とみなされる)の形態で投与することができる。塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩などはこのような酸添加塩の例である。活性成分が錠剤の形態で投与されることになる場合、錠剤は、トラガカント、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤、アルギン酸などの、崩壊剤、およびステアリン酸マグネシウムなどの、滑沢剤を含有してもよい。
調節剤は任意のタンパク性または非タンパク性分子と連結されても、結合されてもまたは別の方法で結び付けられてもよい。例えば、本発明の1つの態様では、調節剤は、局所領域への標的化を可能にする分子と結び付けられてもよい。
投与経路としては、気道、気管内、鼻咽頭、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、皮内、筋肉内、眼内、くも膜下腔内、脳内、鼻腔内、注入、経口、直腸、IV点滴経由、パッチおよび埋込みが挙げられるが、これらに限定されることはない。
これらの方法によれば、本発明によって規定される薬剤は1つまたは複数のその他の化合物または分子と同時投与することができる。「同時投与する」とは、同一もしくは異なる経路による同一処方物でのもしくは2つの異なる処方物での同時投与または同一もしくは異なる経路による逐次投与を意味する。例えば、本薬剤はその効果を増強するためアゴニスト剤と一緒に投与することができる。「逐次」投与とは、2種類の分子の投与間の数秒、数分、数時間または数日の時間差を意味する。これらの分子は任意の順序で投与されてもよい。
本発明の別の局面は、異常なTH1細胞の機能性によって特徴づけられる状態の処置のための医薬の製造でのIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の使用を対象とし、その処置において該化合物の投与が該TH1細胞の機能性を下方制御する。
好ましくは、前記の状態は自己免疫状態であり、さらにより好ましくは、ミエリンタンパク質に向けられた免疫応答によって特徴づけられる自己免疫状態である。より好ましくは、前記の状態はCNSまたは末梢の自己免疫性脱髄疾患である。最も好ましくは、前記の状態は多発性硬化症である。
本発明の別の局面は、多発性硬化症の処置のための医薬の製造でのIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の使用を対象とする。
1つの態様では、前記のIDO仲介性のトリプトファン代謝物は、式(I)の化合物である:
Figure 2008526983
式中
XがNおよびCR6から選択され;
Figure 2008526983
が単結合または二重結合を表し;
R1がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2HおよびCO2C1〜4アルキルから選択され;
R2がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロから選択されるか、またはR1およびR2が一緒に置換されてもよい縮合フェニル環を形成し;
R3がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシおよびハロから選択され;
R4がH、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキルおよび
Figure 2008526983
から選択され;
R5がC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、NH2およびNHR12から選択され;
R6がH、C1〜4アルキル、OHおよびC1〜4アルコキシから選択され;
R7、R8、R9およびR10が各々独立してHおよびC1〜4アルキルであり、またはR7およびR8が一緒にオキソ基を形成し、またはR7およびR9が結合を形成し;
R11がCH(CO2H)NH2、CH(CO2C1〜4アルキル)NH2、C(O)CO2H、C(O)CO2C1〜4アルキル、C(O)H、CO2H、CO2C1〜4アルキル、C(O)NH2、C(O)NHR13、CH2NH2、CH2NHC1〜4アルキルおよびCH2N(C1〜4アルキル)2から選択され;
R12がH、C1〜4アルキルおよびC(O)Hから選択され; ならびに
R13がH、C1〜4アルキルおよび置換されてもよいフェニルであり、ここで置換されてもよいフェニルは1つまたは複数の、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、ハロ、NH2、NHC1〜4アルキルおよびN(C1〜4アルキル)2で置換されてもよい。
好ましくは、前記のIDO仲介性のトリプトファン代謝物は、3-HKA、3HAA、PAまたはQAである。
別の好ましい態様では、前記のIDO仲介性のトリプトファン代謝物の誘導体は式(II)の化合物である:
Figure 2008526983
式中R1およびR2の各々が水素原子またはC1〜C4アルキル基から独立して選択され、R3およびR4が各々水素原子であり、または一緒に別の化学結合を形成し、各Xがヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基もしくはC1〜C4アルコキシ基から独立して選択され、または2つのX基がアルキルもしくはアルコキシ基である場合、それらが一緒に連結されて環を形成してもよく、ならびにnが1〜3の整数である。
本発明は、本代謝物の投与を単独でかあるいは本明細書において規定される該代謝物もしくは薬学的に許容されるその塩またはそのアンタゴニストならびに1つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む薬学的組成物としてのいずれかを企図する。前記の薬剤は活性成分と称される。
注射用用途に適した薬学的形態は、滅菌水溶液(水溶液の場合)または分散液および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含み、あるいはクリームの形態または局所塗布に適したその他の形態であってもよい。それは製造および保存の条件下において安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適当な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒とすることができる。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の阻止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合には、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含有させることが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収を、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用によってもたらすことができる。
滅菌注射用溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、上記に列挙される様々なその他の成分とともに適切な溶媒に組み入れた後、ろ過滅菌によって調製される。一般に、分散液は、様々な滅菌済みの活性成分を、基本的な分散媒体および上記に列挙されるもののうち必要なその他の成分を含有する滅菌基剤に組み入れることによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分に加えて任意のさらなる望ましい成分の粉末を、予め滅菌ろ過されたその溶液から生じる真空乾燥や凍結乾燥の技術である。
活性成分が適当に保護されている場合には、それらは、例えば、不活性希釈剤とともにまたは吸収性の食用担体とともに経口的に投与されてもよく、あるいは硬または軟シェルゼラチンカプセルに封入されてもよく、あるいは錠剤に打錠されてもよく、あるいは食材とともに直接的に取り入れられてもよい。経口治療投与の場合、活性化合物を賦形剤とともに組み入れ、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、オブラートなどの形態で使用することができる。そのような組成物および調製物は、少なくとも1重量%の活性化合物を含むはずである。組成物および調製物の割合は、もちろん、変えられてもよく、好都合には単位重量の約5〜約80%であってもよい。そのような治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、適当な投与量が得られるようなものである。本発明による好ましい組成物または調製物は、経口投与単位剤形が約0.1 μg〜2000 mgの活性化合物を含むように調製される。
錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなども、以下に掲載される成分を含んでもよい: ガム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチンのような結合剤; リン酸二カルシウムのような賦形剤; トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などのような崩壊剤; ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤; およびスクロース、ラクトースまたはサッカリンのような甘味剤が添加されてもよい、あるいはペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリーフレーバーのような香料添加剤。投与単位剤形がカプセルである場合、それは上記の種類の材料に加えて、液体担体を含有してもよい。コーティングとしてまたは投与単位の物理的形態を別の方法で改変するために、様々なその他の材料が存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルはシェラック、糖、またはその両方でコーティングされてもよい。シロップまたはエリキシルは活性化合物、甘味剤としてスクロース、保存剤としてメチルおよびプロピルパラベン、色素ならびにチェリーまたはオレンジフレーバーなどの香料添加剤を含有してもよい。もちろん、任意の投与単位剤形を調製する際に使用される任意の材料は薬学的に純粋であるべきであり、利用される量で実質的に無毒であるべきである。さらに、活性化合物は徐放性調製物および処方物に組み入れられてもよい。
本発明の別の局面は、上記に規定される通り、本発明の方法で用いられる、上記に規定されるような代謝物もしくは誘導体または薬学的に許容されるその塩あるいはそのアンタゴニストに関する。
本発明はTH2の機能性を、このサブクラスの方向にTH細胞応答を傾斜させることに基づいて上方制御する方法にまで及ぶものと同様に理解されるべきである。TH1応答の傾斜に向けられる開示の方法論の適用によって、TH1応答の下方制御とTH2応答の同時の上方制御とをともに本質的に達成するような、本明細書において論じられる方法により、これは達成される。TH2応答は体液性応答を補助するので、TH2応答の上方制御により、そのような免疫応答結果の誘導から利益を享受する治療および/または予防計画の合理的なデザインが可能になる。
本発明は同様に、本発明の薬学的組成物の成分の1つまたは複数で満たされた1つまたは複数の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。このような容器とともに、医薬品または生物学的製品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された通知が付随されうる。この通知は、ヒトへの投与についての製造、使用または販売の機関による承認を示す。
以下の実施例は、本発明を組み立て、利用する方法の完全な開示と記述を当業者に提供するために示されており、本発明者らがその発明とみなすものの範囲を限定することを意図しておらず、またそれらは、以下の実験が、行われる全てのまたは唯一の実験であることを示すとも意図していない。使われている数字(例えば、量、温度など)に関しては、正確さを保証する努力をしたが、ある程度の実験の誤差および偏差が考慮されるべきである。特に指定のない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、および圧力は大気圧またはその付近である。
本明細書に引用される全ての刊行物および特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が参照により組み入れられることを具体的かつ個別的に示しているかのごとくに、参照により本明細書に組み入れられる。
本発明の実践に好ましい様式を含むことが本発明者により見出されたまたは提唱された特定の態様に関して本発明を記述してきた。本発明の開示に照らして、本発明の意図する範囲から逸脱することなく、例示されている特定の態様のなかで数々の修正および変更が行われうることが当業者には理解されよう。例えば、コドン重複性によって、タンパク質配列に影響を及ぼすことなく、基礎となるDNA配列の変更を行うことができる。さらに、生物学的機能等価の考慮により、種類または量での生物学的作用に影響を及ぼすことなくタンパク質構造の変更を行うことができる。そのような全ての修正は、添付の特許請求の範囲のなかに含まれることが意図される。本明細書における任意の先行技術に対する言及は、その先行技術がオーストラリアでの共通の一般知識の一部を形成するという認識またはいかなる形の示唆でもなく、それと解釈されるべきではない。本発明は、以下の非限定的な例によってさらに規定される。
実施例1 経口的に活性な合成TRP代謝物3,4-DAAによる樹立自己免疫性神経炎症の処置
結果
APLで処理されたT細胞において差別的に調節される遺伝子転写物を同定した。すなわち、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)ペプチドAc1-11に特異的なトランスジェニックTCRを有するマウスからT細胞系を作出し、遺伝子チップ解析を行った。改変ペプチドリガンドAc1-11[4Y]は、天然ペプチドよりも高い親和性で主要組織適合性複合体(MHC)クラスII I-Auに結合する。Ac1-11はTH1応答を主に誘発するのに対し、Ac1-11[4Y]はTH2応答を促進する(Pearson et al., J Exp Med. 185:583-99, 1997)。マイクロアレイ解析によって、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の転写物が、Ac1-11活性化細胞に比べてAc1-11[4Y]活性化T細胞で48時間後に70倍を超えて上方制御されることが明らかになった(表1)。
(表1) APL MBP Ac1-11 [4Y]によって特異的に誘導されるT細胞転写物
Figure 2008526983
Figure 2008526983
IDOによって作出されるTrp代謝物には、3-ヒドロキシキヌレン酸(3-HKA)、3-ヒドロキシアントラニル酸(3-HAA)、ピコリン酸(PA)およびキノリン酸(QA)が含まれる(R. Schwarcz, Curr. Opin. Pharmacol. 4:12-7, 2004)。キヌレニンがミエリン特異的なT細胞の活性化において役割を果たすという仮説を検証するため、ミエリンペプチドのミエリン塩基性タンパク質(MBP)ペプチドAc1-11に特異的なトランスジェニックT細胞受容体(TCR)を有するB10.PLマウスから単離された脾細胞をTrp代謝物PA、QA、3-HAA、3-HKAおよび合成誘導体3,4-DAAと組合せてMBP Ac1-11で刺激した。3,4-DAAは3-HKAおよび3-HAAとアントラニル酸コアを共有しており(図1A)、ヒトにおいて有益な薬物動態を有する経口的に活性な化合物である(Isaji et al., Cardiovascular Drug Reviews, 16:288-299, 1998)。3-HAA、3-HKAおよび3,4-DAAによるMBP Ac1-11 TCRトランスジェニックCD4+細胞の抗原特異的増殖の用量依存的な抑制が認められた(図1B)。3,4-DAAによるT細胞応答の抑制は、細胞毒性のせいではなかったが、CD4細胞でのG1/S期停止と関係していた。実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、つまり多発性硬化症の動物モデルなどの、TH1仲介性の自己免疫疾患は、IFN-γおよびTNF-αなどの炎症性サイトカインを分泌する自己反応性CD4+細胞によって引き起こされる(L. Steinman, J Exp Med. 197:1065-71, 2003)。したがって、MBP Ac1-11刺激TCRトランスジェニック脾細胞のサイトカインプロファイルに及ぼすTrp代謝物の効果を分析した。天然のTrp代謝物でも3,4-DAAでも、活性化CD4細胞からのIL-2ならびにTH1サイトカインIFN-γおよびTNF-αの放出が減少した。逆に、TH2サイトカインIL-4およびIL-10は、抗原での刺激後にMBP Ac1-11 TCRトランスジェニックT細胞で上方制御された(図1C、表3)。このように、天然のTrp代謝物および3,4-DAAはともにミエリン特異的なTヘルパー細胞のサイトカインプロファイルをTH1からTH2表現形に傾斜させる。
(表3) Trp代謝物による脾細胞サイトカインプロファイルの調節
Figure 2008526983
MBP Ac1-11 TCRトランスジェニックマウス由来の脾細胞を200 μM (IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-6およびIL-12/23 p40)または30 μM (IL-4、IL-10)のTrp代謝物PA、QA、3-HKA、3-HAA、3,4-DAAの存在下または非存在下、MBP Ac1-11 (0.5〜2.5 μg/ml)で活性化した。サイトカイン放出をELISAにより48時間(IL-2、IL-6、IL-12/23 p40)、72時間(IFN-γ、TNF-α)または120時間(IL-4、IL-10)後に測定した。
インビボでのミエリン特異的なT細胞に及ぼす3,4-DAAの効果を調べた。MBP Ac1-11 TCRトランスジェニックマウスに3,4-DAAを5日間与えた。脾細胞をエクスビボにおいてMBP Ac1-11で刺激した場合、MBP Ac1-11特異的なT細胞増殖の抑制が認められた。同様に、抗原誘導性の炎症性サイトカインIFN-γ、TNF-αおよびIL-12/23 p40放出が3,4-DAA処置マウス由来の脾細胞において大いに抑制された(図2A)ことから、3,4-DAAが抗原特異的な自己反応性TH1細胞の生成を抑制するのに経口的に活性であることが示唆された。さらに、FACS解析によってCD11b+単球上のMHCクラスIIおよび副刺激分子の発現の下方制御が明らかになった(図2B、表3)ことから、3,4-DAAがインビボにおいて抗原提示細胞の活性化を抑制することが示唆された。CD4+ TH細胞に抗原を効率的に提示するには、MHCクラスII分子上での抗原の提示やCD40、CD80、およびCD86などの副刺激分子の送達が必要になる。MHCクラスII、および副刺激分子の発現はIFN-γにより誘導される(Carreno et al, Annu Rev Immunol. 20:29-53, 2002)。
抗原提示に及ぼすTrp代謝物の効果を評価するため、EOC20ミクログリア細胞をモデルとして用いた。EOC20細胞はMHCクラスIIおよび副刺激分子を低いレベルで構成的に発現しており、そのレベルはIFN-γによって迅速に上方制御される。3,4-DAAは、IFN-γによって誘導されたMHCIIおよび副刺激分子の発現の用量依存的な減少を引き起こしたが、これらの分子の構成的発現は変化していなかった(図2C)。注目すべきは、3,4-DAAはプロピジウムヨード染色によって評価した場合、最大で200 μMまでの濃度で細胞生存度に影響を与えなかった。EOC20細胞におけるIFN-γ誘導性MHCクラスII発現の3,4-DAAを介した抑制は、クラスII転写活性化因子CIITAの阻害に相関していた(図2D)。さらに、3,4-DAAは誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現やIFN-γおよびリポ多糖体(LPS)によって誘導されるEOC20細胞からの一酸化窒素(NO)放出を抑制した(図2E、F)。このように、3,4-DAAは概してIFN-γシグナル伝達を妨げる。EOC20細胞を3,4-DAAとプレインキュベートした場合、IFN-γによって誘導されるSTAT1αのリン酸化が用量依存的に阻害された(図2G)。このように、3,4-DAAはIFN-γシグナル伝達を妨げることで、抗原提示細胞の活性化を阻害する。
3,4-DAAが自己反応性TH1の機能を抑制するかどうかを評価するため、その化合物を自己免疫疾患モデルで試験した。PLP139-151でのSJ/Lマウスの免疫付与によって、再発寛解型EAE、つまり多発性硬化症の原型的動物モデルが生じる(L. Steinman, Nat Immunol. 2:762-4, 2001)。再発寛解型多発性硬化症を有する患者は、典型的にはさらなる発病を阻止するため臨床症状の最初の発症後に処置される。したがって、臨床設定に見立てるため、処置は疾患の発症後の動物において、動物がその最大の機能的無能に達した時点で開始された。臨床スコアによる無作為化の後、マウスを経口胃管栄養法により、免疫付与から第15日または第16日後の時点から始めて1日2回処置した。動物の大部分は初期の急性期後に回復した。媒体処置動物が疾患の全期間にわたって重度の再発を示したのに対し、3,4-DAAで処置された動物は再発性疾患の臨床的徴候をほとんど示さなかった(図3A)。いくつかの用量レベルで、臨床疾患指数(CDI)およびピーク再発スコアの有意な減少が認められた(表2)。
(表2) 3,4-DAAは樹立EAEの臨床的徴候を改善する
Figure 2008526983
7〜8週齢の雌性SJ/LマウスをPLP139-151で免疫し、媒体のみ(Na-CMC)または表示濃度の3,4-DAAで処置した。CDI (累積疾患指数)を60日間にわたるまたは表示の期間にわたるスコアの合計として計算した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
興味深いことに、鐘形の用量反応曲線が100〜200 mg/kg/dの最も有効な用量で観察された(表2)。これは、EAEに拮抗作用を及ぼしうる3,4-DAAによって変えられる独特のかつ異なる機構に起因する可能性がある。第一に、3,4-DAAは活性化ミエリン特異的T細胞によるIFN-γの生成を抑制する(表1)。さらに、3,4-DAAは抗原提示細胞においてIFN-γシグナル伝達を抑止する(図3)。IFN-γRの遺伝子除去または中和抗体を通じたIFN-γシグナル伝達の抑制は、EAEを悪化させることが明らかになった。さらに、STAT1の遺伝子除去は、恐らくTR細胞の発達障害によって(Nishibori et al., J Exp Med. 199:25-34, 2004)多臓器炎症を引き起こし(Wang et al., Proc Natl Acad Sci USA. 99:16209-14, 2002)、STAT1欠損マウスは野生型マウスよりも重篤なEAEを発症する(Bettelli et al., J Exp Med. 200:79-87, 2004)。さらに、NODマウスはSTAT1を介したIFN-γシグナル伝達の欠陥による自己免疫の素因があり、これによってTrp異化の誘導障害が起こりうる(Grohmann et al., J Exp Med. 198:153-60, 2003)。他方では、3,4-DAAは一酸化窒素の放出や抗原提示細胞上でのMHCIIおよび副刺激分子の発現を抑制する(図2E)。3,4-DAAは、一つには、Trp異化の要件を迂回して、ミエリン特異的なCD4+ T細胞の直接的抑制を通じ自己反応性TH1細胞の生成を抑制すると考えられる。インビトロアッセイで用いられる3,4-DAAの高マイクロモル用量は、インビボにおいて十分に達成される。ガスクロマトグラフィーを利用し、100 mg/kg/dで44.3 μMおよび300 mg/kg/dで314.9 μMのSJ/Lマウスでの定常血漿中濃度が観察された(データは示されていない)。さらに、経口摂取後のピーク血漿中濃度はヒトにおいて200 mgで125 μMであり(Charng et al., J Food Drug Anal. 10:135-8, 2002)、経口摂取後の定常血漿中濃度はマウスにおいて550 mg/kg/日で52 μMおよびヒトにおいて600 mg/日で50〜200 μMであることが報告されている(Izawa et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol. 21:1172-8)。
3,4-DAAがインビトロにおいてミエリン特異的なTH1細胞の活性化を抑制するという所見と一致して、活性化T細胞の頻度は、3,4-DAAで処置された、EAEを抱えるEAE誘導マウスにおいて減少することが分かった。活性化マーカーCD25、CD44またはCD69を同時に発現しているCD4細胞の40%の低下が認められた(図3B)。さらに、それに応じてPLP特異的なT細胞の増殖が、3,4-DAAで処置された動物において減少した。さらに、炎症性サイトカインIFN-γ、TNF-αおよびIL-12/23 p40の放出が、3,4-DAAで処置されたマウスにおいて低下した(図3C)。注目すべきは、ConA誘導性のT細胞増殖は3,4-DAA処置マウスで変わらなかったことから、PLP特異的なT細胞に対する特異的効果が示唆された(データは示されていない)。次に、EAEを抱えるマウスの脳および脊髄を炎症の兆候がないか評価した。媒体処置マウスに比べて3,4-DAAで処置されたマウスからのCNS組織において柔組織のおよび全体の炎症性病巣の低下が認められた(図3D)。CNS抗原提示細胞の活性化がインビボで抑制されるかどうかを評価するため、一連の免疫組織化学およびRT-PCR実験を行った。図4Aに示されるように、媒体で処置された、EAEを抱えるSJ/Lマウスの脊髄においてミクログリア形態を有する実質細胞でのMHCクラスII、CD40、CD80、CD86およびiNOSの強力な発現が認められる。対照的に、3,4-DAAで処置された動物では、これらの分子の発現が劇的に低下する。さらに、RT-PCR実験によって、クラスII転写活性化因子CIITA、TNF-αおよびIL-12/23 p40の発現は3,4-DAAで処置された動物の脊髄で低下することが明らかであり(図4B)、抗原提示細胞の抑制が3,4-DAAの免疫抑制効果における重要な機構であると示唆される。
3,4-DAAはそれ故に、IL-12/23の抑制およびSTAT分子を通じたシグナル伝達の阻害を含めて、独特の免疫調節特性を有する合成Trp代謝物に相当する。Trp代謝物および3,4-DAAなどの、その誘導体はこのように、TH1仲介性の自己免疫疾患の処置のための新たなクラスの薬物に相当しうる。
(表4) 3,4-DAAはインビボにおいて単球上でのMHCIIおよび副刺激分子の発現を抑制する。
Figure 2008526983
MBP Ac1-11 TCRトランスジェニックマウスを経口胃管栄養法により5日間1日2回、3,4-DAA (500 mg/kg/d)または媒体のみ(Na-CMC 0.5%)で処置した。脾細胞をフローサイトメトリーにより解析した。値はCD11b+単球集団のうちの陽性細胞の割合として示されている。データは各群内の異なる3頭の動物由来プール脾細胞の代表である。
(表5) 半定量PCR用のプライマー配列
Figure 2008526983
材料と方法
動物。雌性SJL/Jマウスを5週齢でJackson Laboratory (Bar Harbor)から購入した。C. Janeway Jr. (Hardardottir et al., Proc Natl Acad Sci USA 92:354-8, 1995)から得たMBP Ac1-11 TCRトランスジェニックマウスをB10.PLバックグラウンドに戻し交配した。全ての動物プロトコルは米国立衛生研究所のガイドラインにしたがい、スタンフォード大学の比較医学部会(Division of Comparative Medicine at Stanford University)およびカリフォルニア大学サンフランシスコ校の動物に関する研究委員会(Committee of Animal Research at the University of California San Francisco)の承認を受けた。
試薬。ピコリン酸、キノリン酸、3-ヒドロキシ-アントラニル酸および3-ヒドロキシ-キヌレン酸はSigmaから購入した。マウス組換えIFN-γおよびIL-6はBiosourceから入手した。3,4-DAAはAngiogen Pharmaceuticals Pty. Ltdによって合成され、提供された。ペプチドMBP Ac1-11 (Ac-ASQKRPSQRHG) (SEQ ID NO:36)およびPLP p139-151 (HCLGKWLGHPDKF) (SEQ ID NO:37)は、標準的な9-フルオレニルメトキシカルボニル化学反応によりペプチド合成機(モデル9050; MilliGen)で合成し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。アミノ酸配列はアミノ酸分析および質量分析により確認した。各ペプチドの純度は95%を超えていた。
ミクログリアおよびマクロファージ。非ウイルス不死化手順を用いてC3H/HeJ CH-2kマウスから得られたミクログリアEOC 20細胞(Walker et al., J Neuroimmunol. 63:163-74, 1995)は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手し、1 mMピルビン酸ナトリウム、10% (v/v)ウシ胎仔血清(FCS)およびCSF-1の供給源としてのLADMACマウス骨髄細胞(ATCC, CRL-2420)による20% (v/v)条件培地を補充したDMEM培地によって増殖させた。初代ミクログリアを既報のように(Youssef et al., Nature 420:78-84, 2002)、1〜3日齢の129Sv/Evマウスから単離した。初代ミクログリアは蛍光活性化細胞分類(FACS)により95% CD11b+であった。3% (w/v)チオグリコール酸1 mlによる腹腔内注射から24時間後に、初代マクロファージ(腹腔滲出細胞(PEC))をB10.PLマウスから回収した。PECを72時間培地のみで培養し、その後IFN-γ (100 U ml-1)で活性化し、または培地のみで処理した。PECはFACS解析により98%(w/v) CD11b+であった。
3,4-DAA処置。3,4-DAA (Angiogen Pharmaceuticals, Pty. Ltd.)をカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC, 0.5%)に懸濁させた。20-mmの経口ゾンデ(Popper and Sons Inc.)を用いて、3,4-DAAを1日2回Na-CMC 0.5 ml中にて経口投与した。
実験的自己免疫性脳脊髄炎の誘導。4 mg ml-1の加熱死結核(Mycobacterium tuberculosis)菌H37Ra (Difco Laboratories)を含有する完全フロインドアジュバント(CFA)に乳化されたPLP p139-151 100 μgでの皮下接種によりEAEをSJL/Jマウスに誘発させた。マウスをEAEの臨床スコアについて毎日検査し、以下のようにスコア化した: 0、麻痺なし; 1、尾部緊張性の喪失; 2、後肢脱力; 3、後肢麻痺; 4、後肢および前肢麻痺; 5、瀕死または死。
フローサイトメトリー。免疫蛍光染色を記述のように行った。48時間のインキュベーション後、細胞をFACS緩衝液(0.1% (w/v)アジ化ナトリウムおよび2% (v/v) FCSを含有するPBS)で洗浄し、抗マウスCD16/CD32モノクローナル抗体(クローン2.4G2, PharMingen)と4℃で10分間プレインキュベートして、Fc受容体との非特異的な結合を遮断した。蛍光色素結合モノクローナル抗体(ラット抗マウスMac-1/CD11b-PE (M1/70, IgG2b)、マウス抗マウスMHCクラスII (I-Ak)-FITC (10-3.6, IgG2b)、ハムスター抗マウスCD40-FITC (HM40-3, IgM)、ハムスター抗マウスCD80-FITC (16-10A1, IgG)、ラット抗マウスCD86-FITC (GL1, IgG2a)、抗CD4-FITC、抗CD4-PE、抗CD44-PE、抗CD25-FITCおよび抗CD69-PEはPharMingenから購入された。バックグラウンドの蛍光は、対応するアイソタイプ対照抗体(PharMingen)で細胞を染色することにより評価した。インキュベーション後、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いてFACScanにより解析した。細胞周期の解析の場合、脾細胞を洗浄し、抗CD4-FITC (Pharmingen)で染色した。細胞を90%氷冷エタノールで固定した後に、細胞を100 U/ml RNase A含有PBS中のヨウ化プロピジウム(50 g/ml)で30分間染色した。
T細胞増殖アッセイ。脾細胞またはリンパ節細胞(LNC)を、EAEを抱えるマウスから単離し、免疫付与に使われた特異的な脳炎誘発性ペプチド(PLP p139-151)とともにまたはコンカナバリンA (Con A) (陽性対照)もしくはオボアルブミン(陰性対照)とともにインビトロで培養した。細胞を96ウェルマイクロタイタープレート中にて細胞2〜5×106個ml-1の濃度で培養した。培地はL-グルタミン(2 mM)、ピルビン酸ナトリウム(1 mM)、非必須アミノ酸(0.1 mM)、ペニシリン(100 U ml-1)、ストレプトマイシン(0.1 mg ml-1)、2-メルカプトエタノール(5×10-5 M)および10% (v/v) FBSを補充したRPMI 1640からなった。SJL/Jマウス由来の脾細胞およびLNCを72時間インキュベートし、その一方でMBPAc-1-11 Tgマウス由来の培養物を48時間インキュベートした。次いで、培養物を回収前に1ウェル当たり1 μCiの[3H]チミジンで18時間パルスした。
サイトカイン分析。増殖アッセイの試験で用いられた細胞と並行して培養された脾細胞およびLNC由来の上清をサイトカイン分析に使用した。上清をサイトカインレベルの測定のため異なる時点で回収した: IL-2およびIL-12/23 p40およびIL-6の場合48時間、IFN-γおよびTNF-αの場合72時間、ならびにIL-4およびIL-10の場合120時間。サイトカインレベルは製造元のプロトコルにしたがい、対応するサイトカインに特異的な酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(抗マウスOPTEIAキット, PharMingen)を用いることで測定した。
半定量的PCR。マウスを免疫付与から60日後に殺処理し、無菌の冷PBS 20 mlでかん流した。オンカラムDNA消化段階を含めて、Absolutely RNA Mini Kit (Stratagene)を製造元のプロトコルにしたがい用いて、脊髄組織またはミクログリア細胞培養物から全RNAを単離した。第一鎖cDNA合成のためSuperScript II RNase H-逆転写酵素(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて全RNA 3 μgをcDNAに変換した。cDNA産物は高速サーマルサイクター(LightCycler3; Roche Diagnostics, Indianapolis, IN)およびSYBR Green I (Qiagen)による産物の検出を用いたリアルタイム定量的PCRに使用した。PCRプライマーは補足表1に掲載されている。増幅サイクルは以下とした: 95℃、900秒間; 94℃、15秒間、56℃、20秒間、72℃、15秒間を60サイクル; 65℃、15秒間、および40℃、30秒間。β-アクチンをハウスキーピング遺伝子として全てのサンプルから増幅させて、発現を規準化した。対照(逆転写なし)を各プライマーセットに含めて、DNAの混入を管理した。融解曲線によって、ただ一つの産物しか増幅されていないことが確認された。定量化のため、濃縮全cDNAの10倍希釈系列を各反応に含めた。
iNOS活性。iNOS活性は既報のように(Platten et al., Biochem Pharmacol 66:1263-70, 2003)、Griessアッセイによって評価した。手短に言えば、培養上清を室温で5分間、1%スルファニルアミド、0.1%ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩および2.5% H3PO4を含有するGriess試薬の等量とインキュベートした。吸光度を546 nmで測定した。DMEMに希釈されたNaNO2を標準物質として役立てた。細胞数を管理するため、細胞をクリスタルバイオレットで染色した。iNOS活性は、48時間/細胞105個で蓄積された亜硝酸塩と表される。
ウエスタンブロット分析。ミクログリア細胞を、20 mg ml-1アプロチニン、20 mg ml-1ロイペプチン、1.6 mM Pefablock SC (Roche)、10 mM NaF、1 mM Na3VO4および1 mM Na4P2O7 (Sigma)を含有するタンパク質抽出緩衝液に溶解させた。溶解物を40 mM DTT入りの2×SDSローディング緩衝液(Cell Signaling Technology)に加えた。産物を10% SDS-PAGEゲルでの電気泳動により分離した。ゲルを25 mM Tris、192 mMグリシンおよび20% (v/v)メタノール中にて100 VでPVDF膜にブロットし、次に0.1% (v/v) Tween-20および5% (w/v)無脂肪粉乳を含有するTris緩衝生理食塩水(TBS)で室温にて1時間ブロッキングした。TBSおよび0.1% (v/v) Tween 20中で洗浄後、膜をTBS、0.1% (v/v) Tween 20および5% (w/v) BSAに1,000分の1希釈された抗ホスホSTAT1α抗体または抗ホスホSTAT3抗体(Cell Signaling Technology, Inc.)と4℃で一晩ハイブリダイズした。次いで、この膜をバンドの可視化のためECL Plusプロトコル(Amersham BioSciences, Inc.)によって処理した。膜を対照として抗-抗STAT-1αで再プローブして、タンパク質等負荷を確認した。STAT分子は90 kDaの相対分子量に移動した。
組織病理学。麻酔したマウスを冷PBS 20 mlでかん流した。脳および脊髄を4% (w/v)パラホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン包埋した。切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。選択の脳、胸髄および腰髄切片は、動物の処置状態に盲目とされた試験者が評価した。
統計解析。データは平均および標準誤差(s.e.m)として示されている。臨床スコアの場合、各2群間の有意性を、多重比較のため一元配置多重範囲分散分析検定(ANOVA)によって調べた。p < 0.05の値は有意と考えられた。
本明細書において記述される本発明は、具体的に記述されるもの以外の変形および変更を許容することを当業者は理解するであろう。本発明はそのような全ての変形および変更を含むものと理解されるべきである。本発明はまた、個別的にまたは集合的に、本明細書に記載されるまたは示される段階、特徴、組成物および化合物の全て、ならびにその段階または特徴のいずれかの2つまたはそれ以上のありとあらゆる組合せを含む。
参考文献一覧
Figure 2008526983
A〜Cは、Trp代謝物によるT細胞増殖の調節。(A) Trp代謝物の化学構造。3-HKA、3-ヒドロキシ-キヌレン酸; 3-HAA、3-ヒドロキシ-アントラニル酸; PA、ピコリン酸; QA、キノリン酸; 3,4-DAA、N-[3,4,-ジメトキシシンナモイル]-アントラニル酸。(B) MBP Ac1-11 TCRトランスジェニックマウス由来の脾細胞をTrp代謝物PA、QA、3-HKA、3-HAA、3,4-DAA (200 μM)とインキュベートし、MBP Ac1-11 (5 μg/ml)で刺激した。増殖を評価するため、48時間後に細胞を3H-チミジンで18時間パルスした。データは3本立ての平均カウント毎分(cpm)およびSEMを表し、4回の独立した実験の代表である。p<0.05、***p<0.001。(C) MBP Ac1-11 TCRトランスジェニックマウス由来の脾細胞を200 μM (IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-6およびIL-12/23 p40)または30 μM (IL-4、IL-10)のTrp代謝物PA、QA、3-HKA、3-HAA、3,4-DAAの存在下または非存在下、MBP Ac1-11 (0.5〜2.5 μg/ml)で活性化した。サイトカイン放出をELISA (OptEIA Cytokine Sets, BD Pharmingen)により48時間(IL-2、IL-6、IL-12/23 p40)、72時間(IFN-γ、TNF-α)または120時間(IL-4、IL-10)後に測定した。データはヒートマップとして示されている。 A〜Gは、3,4-DAAにより調節されるAPCおよびT細胞機能の機構。(A, B) MBP Ac1-11 TCRトランスジェニックマウス(1群当たりn=3)に3,4-DAAを5日間与えた(500 mg/kg/d)。(A) 媒体(Na-CMC)処置(白棒)または3,4-DAA処置(黒棒)マウスのプール脾細胞をインビトロにおいてMBP Ac1-11 (5 μg/ml)またはConA (2 μg/ml)で刺激した。増殖およびサイトカイン分析は図1のように行われた。3本立ての平均値およびSEMが示されており、データは2回の独立した実験の代表である。p<0.05、**p<0.01。(B) フローサイトメトリーを利用しCD11bおよびMHCクラスII (I-AS)の細胞表面発現についてプール脾細胞を分析した。右側のパネルは、抗MHCIIで染色されたCD11b+単球のヒストグラムを表す。値はMHCクラスII+ CD11b+細胞の割合を表す。データは2回の独立した実験の代表である。(C〜G) EOC20細胞を培地のみ、媒体(DMSO)または表示される濃度の3,4-DAAとインキュベートし、IFN-γ (200 U/ml)および/またはLPS (200 ng/ml)で刺激した。(C) フローサイトメトリーを利用して48時間後にMHCクラスII (I-Ak)、CD40、CD80およびCD86の細胞表面発現を測定した。ヒストグラムは3回の独立した実験の代表であり、値は平均蛍光インデックスを表す。(D) RNAを24時間後に抽出し、逆転写した。リアルタイムPCRを用いてCIITA cDNA発現を半定量した。値はβ-アクチンの発現に対して規準化された3本立ての任意の平均発現レベルおよびSEMを表す。データは2回の独立した実験の代表である。p<0.05。(E) Griessアッセイを用いて48時間後に未刺激細胞(菱形)、IFN-γ刺激細胞(丸形)またはIFN-γおよびLPS刺激細胞の亜硝酸塩放出を測定した。値は3本立ての平均亜硝酸塩濃度およびSEMであり、3回の独立した実験の代表である。(F) RNAを24時間後に抽出し、逆転写した。リアルタイムPCRを用いてiNOS cDNA発現を半定量した。未刺激(白棒)およびIFN-γ刺激(黒棒)の値は、β-アクチンの発現に対して規準化された3本立ての任意の平均発現レベルおよびSEMを表す。データは2回の独立した実験の代表である。(G) IFN-γでの刺激から15分後に抽出された全細胞タンパク質の、リン酸特異的なSTAT1 α抗体によるウエスタンブロット分析。この膜をリン酸非特異的なSTAT1 α抗体で再プローブして、等負荷を裏付けた。 A〜Dは、3,4-DAAは樹立EAEを改善する。(A-D) 7〜8週齢の雌性SJ/LマウスをPLP139-151で免疫した。処置は1日2回、経口胃管栄養法によりd16で始めた。(A) 媒体処置マウス(白色菱形)および100 mg/kg/d (灰色丸形)または300 mg/kg/d (黒色丸形)の3,4-DAAで処置されたマウスの臨床スコア(0、無症状; 1、だらりとした尻尾; 2、部分的な後肢不全麻痺; 3、後肢(hind limp)麻痺; 4、四肢麻痺; 5、瀕死または死)を毎日評価した。データは平均スコア(n=9、媒体および300 mg/kg/d; n=10、100 mg/kg/日(day))およびSEMを表す。(B) 免疫付与から60日後に単離された媒体処置(n=6)、または3,4-DAA処置(n=7、100 mg/kg/d; n=6、300 mg/kg/d)マウスのプール脾細胞のフローサイトメトリー分析。値は二重陽性細胞を表す。(C) 媒体処置(n=6、白棒)、または3,4-DAA処置(n=7、100 mg/kg/d、灰棒; n=6、300 mg/kg/d、黒棒)のプール脾細胞を60日後に単離し、インビトロにおいてPLP139-151 (20 μg/ml)で刺激した。細胞を培養の72時間後にパルスしたことを除いて、増殖を図3のように評価した。サイトカインを図3のように分析した。データは3本立ての平均値およびSEMを表す。p<0.05、**p<0.01。(D) 脳および脊髄を免疫付与から60日後に抽出した。処置に盲目とされた神経病理学者が、媒体処置(n=3、白棒)および3,4-DAA処置(n=3、100 mg/kg/d、黒棒)から無作為に選択された脳での炎症細胞の浸潤をカウントした。データは炎症病巣の平均数およびSEMを表す。p<0.05。 A〜Bは、3,4-DAAはEAEにおいてCNS抗原提示細胞の活性化を抑制する。(A) 7〜8週齢の雌性SJ/Lマウスを処置の開始から2日後にPLP139-151で免疫した。脳または脊髄をMHCクラスII (I-Ak)、CD40、CD80、CD86およびiNOSについて染色した。(B) 7〜8週齢の雌性SJ/LマウスをPLP139-151で免疫した。処置は1日2回、経口胃管栄養法によりd16で始めた。実験未使用の動物を対照として役立てた。RNAを免疫付与から60日後に脊髄から単離した(n=3)。逆転写後、表示されている転写産物のcDNA発現をリアルタイムPCRによって分析した。値はβ-アクチンの発現に対して規準化された3本立ての任意の平均発現レベルおよびSEMを表す。データは3回の独立した実験の代表である。p<0.05、**p<0.01。

Claims (39)

  1. 哺乳類においてTH1細胞の機能性を下方制御する方法であって、以下の段階を含む方法:
    1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を該哺乳類に投与する段階。
  2. 1つまたは複数のIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の有効量を哺乳類に投与する段階がTH1細胞応答をTH2細胞応答に傾斜させるのに十分な時間および条件の下で行われる、請求項1記載の方法。
  3. 代謝物およびその誘導体がTH2サイトカイン産生を上方制御する、請求項2記載の方法。
  4. ミエリンタンパク質に向けられた自己免疫TH1細胞の機能性を下方制御する、請求項3記載の方法。
  5. IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体が式(I)の化合物である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法:
    Figure 2008526983
    式中
    XがNおよびCR6から選択され;
    Figure 2008526983
    は単結合または二重結合を表し;
    R1がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2HおよびCO2C1〜4アルキルから選択され;
    R2がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロから選択されるか、またはR1およびR2が一緒に置換されてもよい縮合フェニル環を形成し;
    R3がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシおよびハロから選択され;
    R4がH、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキルおよび
    Figure 2008526983
    から選択され;
    R5がC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、NH2およびNHR12から選択され;
    R6がH、C1〜4アルキル、OHおよびC1〜4アルコキシから選択され;
    R7、R8、R9およびR10が各々独立してHおよびC1〜4アルキルであり、またはR7およびR8が一緒にオキソ基を形成し、またはR7およびR9が結合を形成し;
    R11がCH(CO2H)NH2、CH(CO2C1〜4アルキル)NH2、C(O)CO2H、C(O)CO2C1〜4アルキル、C(O)H、CO2H、CO2C1〜4アルキル、C(O)NH2、C(O)NHR13、CH2NH2、CH2NHC1〜4アルキルおよびCH2N(C1〜4アルキル)2から選択され;
    R12がH、C1〜4アルキルおよびC(O)Hから選択され; ならびに
    R13がH、C1〜4アルキルおよび置換されてもよいフェニルであり、ここで置換されてもよいフェニルは1つまたは複数の、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、ハロ、NH2、NHC1〜4アルキルおよびN(C1〜4アルキル)2で置換されてもよい。
  6. IDO仲介性のトリプトファン代謝物が3-ヒドロキシキヌレン酸(3-HKA)、3-ヒドロキシアントラニル酸(3-HAA)、ピコリン酸(PA)またはキノリン酸(QA)から選択される、請求項5記載の方法。
  7. IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体が式(II)の化合物である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法:
    Figure 2008526983
    式中R1およびR2の各々が水素原子またはC1〜C4アルキル基から独立して選択され、R3およびR4が各々水素原子であり、または一緒に別の化学結合を形成し、各Xがヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基もしくはC1〜C4アルコキシ基から独立して選択され、または2つのX基がアルキルもしくはアルコキシ基である場合、それらが一緒に連結されて環を形成してもよく、ならびにnが1〜3の整数である。
  8. CO2H基が芳香環の2-、3-または4-位に存在する、請求項7記載の方法。
  9. CO2Hが2-位にある、請求項8記載の方法。
  10. R1およびR2の少なくとも一方が水素原子である、請求項7記載の方法。
  11. R1およびR2の両方が水素原子である、請求項10記載の方法。
  12. R3およびR4が一緒になって化学結合を形成する、請求項7記載の方法。
  13. 化学結合がEまたはZ幾何異性体の形態での不飽和結合である、請求項11記載の方法。
  14. nが1または2であり; 各Xが同じものまたは異なるものであり、およびハロゲン、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシから選択される、請求項7記載の方法。
  15. XがハロゲンおよびC1〜C4アルコキシから選択される、請求項14記載の方法。
  16. nが2であり、および両方のXがC1〜C4アルコキシから選択される、請求項15記載の方法。
  17. 両方のXがメトキシである、請求項16記載の方法。
  18. IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体が2-[[3-(2-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノj安息香酸; 2-[[3-(3,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; および2-[[3-(3,4-エチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸から選択される化合物である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
  19. IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体が2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸(トラニラスト、TNL)である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
  20. IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の効果を増強するためアゴニスト剤を投与する段階をさらに含む、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
  21. 請求項1〜20記載の方法のいずれかで用いられる組成物。
  22. 請求項1〜20のいずれか一項記載の方法のための医薬の製造でのIDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体の使用。
  23. IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体、および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
  24. IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体が式(I)の化合物である、請求項23記載の薬学的組成物:
    Figure 2008526983
    式中
    XがNおよびCR6から選択され;
    Figure 2008526983
    は単結合または二重結合を表し;
    R1がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2HおよびCO2C1〜4アルキルから選択され;
    R2がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロから選択されるか、またはR1およびR2が一緒に置換されてもよい縮合フェニル環を形成し;
    R3がH、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシおよびハロから選択され;
    R4がH、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキルおよび
    Figure 2008526983
    から選択され;
    R5がC1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、ハロ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、NH2およびNHR12から選択され;
    R6がH、C1〜4アルキル、OHおよびC1〜4アルコキシから選択され;
    R7、R8、R9およびR10が各々独立してHおよびC1〜4アルキルであり、またはR7およびR8が一緒にオキソ基を形成し、またはR7およびR9が結合を形成し;
    R11がCH(CO2H)NH2、CH(CO2C1〜4アルキル)NH2、C(O)CO2H、C(O)CO2C1〜4アルキル、C(O)H、CO2H、CO2C1〜4アルキル、C(O)NH2、C(O)NHR13、CH2NH2、CH2NHC1〜4アルキルおよびCH2N(C1〜4アルキル)2から選択され;
    R12がH、C1〜4アルキルおよびC(O)Hから選択され; ならびに
    R13がH、C1〜4アルキルおよび置換されてもよいフェニルであり、ここで置換されてもよいフェニルは1つまたは複数の、C1〜4アルキル、OH、C1〜4アルコキシ、CO2H、CO2C1〜4アルキル、ハロ、NH2、NHC1〜4アルキルおよびN(C1〜4アルキル)2で置換されてもよい。
  25. IDO仲介性のトリプトファン代謝物が3-ヒドロキシキヌレン酸(3-HKA)、3-ヒドロキシアントラニル酸(3-HAA)、ピコリン酸(PA)またはキノリン酸(QA)から選択される、請求項23記載の薬学的組成物。
  26. IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体が式(II)の化合物である、請求項23記載の薬学的組成物:
    Figure 2008526983
    式中R1およびR2の各々が水素原子またはC1〜C4アルキル基から独立して選択され、R3およびR4が各々水素原子であり、または一緒に別の化学結合を形成し、各Xがヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基もしくはC1〜C4アルコキシ基から独立して選択され、または2つのX基がアルキルもしくはアルコキシ基である場合、それらが一緒に連結されて環を形成してもよく、ならびにnが1〜3の整数である。
  27. CO2H基が芳香環の2-、3-または4-位に存在する、請求項26記載の薬学的組成物。
  28. CO2Hが2-位にある、請求項27記載の薬学的組成物。
  29. R1およびR2の少なくとも一方が水素原子である、請求項26記載の薬学的組成物。
  30. R1およびR2の両方が水素原子である、請求項26記載の薬学的組成物。
  31. R3およびR4が一緒になって化学結合を形成する、請求項26記載の薬学的組成物。
  32. 化学結合がEまたはZ幾何異性体の形態での不飽和結合である、請求項31記載の薬学的組成物。
  33. nが1または2であり、 各Xが同じものまたは異なるものであり、およびハロゲン、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシから選択される、請求項26記載の薬学的組成物。
  34. XがハロゲンおよびC1〜C4アルコキシから選択される、請求項26記載の薬学的組成物。
  35. nが2であり、および両方のXがC1〜C4アルコキシから選択される、請求項26記載の薬学的組成物。
  36. 両方のXがメトキシである、請求項26記載の薬学的組成物。
  37. IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体が2-[[3-(2-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-エチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-プロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-フルオロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(4-ブロモフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,4-ジメチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,4-ジエトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,4-ジプロポキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,4-ジエチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,4-ジプロピルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-3-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-4-メチルフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-3-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-4-クロロフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-3-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(2,3-トリメチレンフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; 2-[[3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸; および2-[[3-(3,4-エチレンジオキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸から選択される化合物である、請求項26記載の薬学的組成物。
  38. IDO仲介性のトリプトファン代謝物またはその誘導体が2-[[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-オキソ-2-プロペニル]アミノ]安息香酸(トラニラスト、TNL)である、請求項26記載の薬学的組成物。
  39. TH1細胞の機能性を哺乳類において上方制御する方法であって、式(I)もしくは式(II)のIDO仲介性のトリプトファン代謝物もしくは化合物または薬学的に許容されるその塩のアンタゴニストの有効量を該哺乳類に投与する段階を含む方法。
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