JP2008524984A - 油性生物体中の多価不飽和脂肪酸および含油量変更のためのジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ - Google Patents

油性生物体中の多価不飽和脂肪酸および含油量変更のためのジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ Download PDF

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Abstract

油性酵母(例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))におけるω脂肪酸に富んだ微生物油の製造で使用するのに適したアシルトランスフェラーゼが提供される。具体的にはジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT1)をコードする遺伝子が、Y.リポリティカ(lipolytica)およびクサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)から単離された。これらの遺伝子は、酵母における油生合成の最終段階に関与する酵素をコードする。それぞれは、油性酵母の油中に生成される多価不飽和脂肪酸量を変更するのに重要な役割を果たすことが期待される。

Description

関連出願との関係
本願明細書は、2004年11月4日に出願された米国特許仮出願第60/624812号明細書の利益を主張する。
本発明は、バイオテクノロジー分野にある。より具体的には本発明は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT1)およびアシル−CoA:ステロール−アシルトランスフェラーゼをコードする核酸断片の同定に関する。これらの酵素は、油性酵母菌などの油性微生物中の油の量を変更させるのに有用である。
本発明は、長鎖ω−3および/またはω−6多価不飽和脂肪酸(「PUFA」、例えば18:3、18:4、20:3、20:4、20:5、および22:6脂肪酸)が豊富な油を蓄積する、油性酵母菌の開発に向けたものである。このような目的で、遺伝子操作における進歩によって油性酵母の自然の能力(主に18:2脂肪酸の生成に限定される)が増強されており、形質転換体ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中で、20:4(アラキドン酸または「ARA」)、20:5(エイコサペンタエン酸または「EPA」)、および22:6(ドコサヘキサエン酸または「DHA」)PUFAの生成がもたらされている。これらのω−3およびω−6脂肪酸は、油性の宿主(その内容全体を参照によって本願明細書に引用する同時係属中の特許文献1を参照されたい)中に、ω−3/ω−6の生合成経路をコードする異種の遺伝子を導入し発現させて生成された。しかしこれらの特定の宿主生物体に適切な脂肪酸デサチュラーゼおよびエロンガーゼを導入する技術を開発するのに加えて、PUFAの合成に続いてそれらの貯蔵脂質プールへの転移を増大させることもまた必要である。
ほとんどの遊離脂肪酸は補酵素A(CoA)にエステル化されて、アシル−CoAを生じる。次にこれらの分子は、細胞の小胞体中でグリセロ脂質合成基質となり、ホスファチジン酸およびジアシルグリセロール(DAG)が生成される。これらの代謝中間体のどちらが膜リン脂質(例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン)に向けられてもよく、またはDAGが真核生物細胞中の脂質の主要な備蓄であるトリアシルグリセロール(TAG)を形成するのに向けられてもよい。
関与遺伝子およびTAG合成をもたらす代謝中間体に関する詳細を含めた、酵母菌におけるTAG生合成に関する2つの包括的なミニレビューは、非特許文献1および非特許文献2である。しかし著者らは、これまでに実施されたほとんどの研究が酵母サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)に集中しており、TAG形成および制御に関する多数の疑問が残されていることを認めている。
手短に述べると、S.セレヴィシエ(S.cerevisiae)については、TAG合成のための3つの経路について述べられている(非特許文献3)。最初にTAGは、主にジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(すなわちDGA1遺伝子によってコードされるDGAT2)の活性によって、DAGおよびアシル−CoAから合成される。しかしより最近では、リン脂質およびDAGをリゾリン脂質およびTAGにそれぞれ変換することで、アシル−CoA−非依存性機序(非特許文献4)を通じたTAG生成に関与する、リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(すなわちPDATによってコードされるLRO1遺伝子)もまた同定されている。最後にアシル−CoAおよびステロールを利用してステロールエステル(および少量のTAG、非特許文献5参照)を生成する2つのアシル−CoA:ステロール−アシルトランスフェラーゼ(ARE1およびARE2遺伝子によってコードされる)が知られている。PDATおよびDGAT2を合わせると、S.セレヴィシエ(S.cerevisiae)油生合成のおよそ95%に関与している。
様々なその他の生物体で、上述の各アシルトランスフェラーゼ遺伝子の相同体が同定され、公共の文献で開示されているが、油性として分類される生物体からはわずかな遺伝子しか入手できない。酵母に関してはヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポミセス(Lipomyces)属に含まれ、それらの乾燥細胞重量の少なくとも25%を油として蓄積できる種が油性として分類される。しかしこのユニークな酵母のファミリー内では、2つのアシルトランスフェラーゼのみが単離され、特性決定されている。これらとしてはヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からのDGAT2およびPDATが挙げられる(その内容全体を参照によって本願明細書に引用する同時係属中の特許文献2を参照されたい)。しかしサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)における知見とは対照的に、Y.リポリティカ(lipolytica)DGAT2およびPDATは、生物体の全油生合成に部分的にのみ関与することが発見された。
PFUA生成のために、油性酵母における発現に有用なジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT1)およびアシル−CoA:ステロール−アシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を同定する必要性がなおも残っている。本研究は、油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)における油生合成に関与する追加的遺伝子を同定し、特性決定するために行われた。この生物体における油生合成の天然機序の理解は、組み換え的に生成された脂肪酸(例えばARA、EPA、およびDHAなどの長鎖PUFA)の形質転換油性酵母内の貯蔵脂質プール(すなわちTAG画分)への転移を修正する技術の開発に先だって、有用である。
出願人は、油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT1)およびアシル−CoA:ステロール−アシルトランスフェラーゼ(ARE2)をコードする遺伝子を単離することで、既述の問題を解決した。ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のPDAT、DGAT2、およびDGAT1は、合わせて約95%までの油生合成に関与する(一方、ARE2が油生合成に対するさらにマイナーな寄与体であってもよい)。さらにオルソロガスDGAT1遺伝子をクサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)(油性真菌)からクローンして、公共配列データベースからの別の4つの真菌DGAT1オルソログ(すなわちニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ジベレラ・ゼアエ(Gibberella zeae)PH−1、マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)、およびアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans))が同定された。これらの真菌DGAT1タンパク質配列によって、出願人は、このタンパク質ファミリー内で引き続く遺伝子を同定するのに有用な診断用の特徴を発見した。これらのDGAT1遺伝子は、油性酵母において長鎖遊離脂肪酸(例えばω−3および/またはω−6脂肪酸)のTAGプールへの転移を修正できるようにするのに有用であろう。
米国特許出願第10/840579号明細書 米国特許出願第10/882760号明細書 D.ソルガー(Sorger)およびG.ダウム(Daum)著、「Appl.Microbiol.Biotechnol.」61:289〜299頁(2003年) H.ミュルナー(Muellner)およびG.ダウム(Daum)著、「Acta Biochimica Polonica」51(2):323〜347頁(2004年) サンダガー(Sandager),L.ら著、J.Biol.Chem.277(8):6478〜6482頁(2002年) ダルキビスト(Dahlqvist)ら著、PNAS.97(12):6487〜6492頁(2000年) サンダガー(Sandager),L.ら著、Biochem.Soc.Trans.28(6):700〜702頁(2000年)
本発明は、アシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の発見に関する。遺伝子およびコードされる酵素は、微生物、特に油性酵母菌において、商業的に有用な油の生産を操作する上で有用である。したがって本発明は、
(a)配列番号14および18よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子、
(b)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、および2×SSC、0.1%SDSで洗浄、次いで0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズする単離された核酸分子、または
(c)(a)または(b)と完全に相補である単離された核酸分子
よりなる群から選択される、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする単離された核酸分子を提供する。
同様に、本発明は、
(a)配列番号16に記載のアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子、
(b)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、および2×SSC、0.1%SDSで洗浄、次いで0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズする単離された核酸分子、または
(c)(a)または(b)と完全に相補である単離された核酸分子
よりなる群から選択されるアシル−CoA:ステロール−アシルトランスフェラーゼをコードする単離された核酸分子を提供する。
さらに本発明は、本発明の単離された核酸分子によってコードされるポリペプチド、ならびに該物質を発現する遺伝的キメラおよび宿主細胞を提供する。
別の実施態様では、本発明は、
a)配列番号31、
b)配列番号32、
c)配列番号33、
d)配列番号34、
e)配列番号35、
f)配列番号36、
g)配列番号37、
h)配列番号23、
i)配列番号24、
j)配列番号25、
k)配列番号26、
l)配列番号27、
m)配列番号28、
n)配列番号29、および
o)配列番号30よりなる群から選択されるアミノ酸モチーフ配列をコードする単離された核酸分子を提供する。
別の実施態様では、本発明は、
a)配列番号31、
b)配列番号32、
c)配列番号33、
d)配列番号34、
e)配列番号35、
f)配列番号36、
g)配列番号37、
h)配列番号23、
i)配列番号24、
j)配列番号25、
k)配列番号26、
l)配列番号27、
m)配列番号28、
n)配列番号29、および
o)配列番号30よりなる群から選択されるアミノ酸モチーフ配列を提供する。
本発明の好ましい実施態様では、
(a)(i)適切な制御配列の制御下にある配列番号14、18、19、20、21、および22よりなる群から選択される、アミノ酸配列を有するジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子、および
(ii)脂肪酸供給源
を含んでなる、形質転換された宿主細胞を準備し、
(b)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が発現する条件下でステップ(a)の細胞を生育させて、脂肪酸をトリアシルグリセロールに転移させ、
(c)ステップ(b)のトリアシルグリセロールを場合により回収すること
を含んでなる形質転換された宿主細胞中のトリアシルグリセロール含量の増大方法を提供する。
同様に、本発明は、
(a)(i)機能性ω−3/ω−6脂肪酸生合成経路をコードする遺伝子、
(ii)適切な制御配列の制御下にある配列番号14、18、19、20、21、および22よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有するジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子
を含んでなる形質転換された宿主細胞を準備し、
(b)(i)および(ii)の遺伝子が発現する条件下でステップ(a)の細胞を生育させて、少なくとも1つのω−3またはω−6脂肪酸の生産、およびそのトリアシルグリセロールへの転移がもたらされ、
(c)ステップ(b)のトリアシルグリセロールを場合により回収すること
を含んでなる形質転換された宿主細胞中のトリアシルグリセロールのω−3またはω−6脂肪酸含量の増大方法を提供する。
関連して本発明は、
(a)(i)適切な制御配列の制御下にある、
1)配列番号31、
2)配列番号32、
3)配列番号33、
4)配列番号34、
5)配列番号35、
6)配列番号36、および
7)配列番号37に記載のアミノ酸モチーフの全てを含んでなる、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子、および
(ii)脂肪酸供給源
を含んでなる形質転換宿主細胞を準備し、
(b)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が発現し、脂肪酸をトリアシルグリセロールに転移させる条件下で、ステップ(a)の細胞を生育させ、
(c)ステップ(b)のトリアシルグリセロールを場合により回収すること
を含んでなる形質転換宿主細胞中のトリアシルグリセロール含量の増大方法を提供する。
同様にして本発明は、
(a)(i)適切な制御配列の制御下にある、
1)配列番号23、
2)配列番号24、
3)配列番号25、
4)配列番号26、
5)配列番号27、
6)配列番号28、
7)配列番号29、および
8)配列番号30に記載のアミノ酸モチーフの全てを含んでなる、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子、および
(ii)脂肪酸供給源
を含んでなる形質転換宿主細胞を準備し、
(b)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が発現し、脂肪酸をトリアシルグリセロールに転移させる条件下で、ステップ(a)の細胞を生育させ、
(c)ステップ(b)のトリアシルグリセロールを場合により回収すること
を含んでなる形質転換宿主細胞中のトリアシルグリセロール含量の増大方法を提供する。
代案として本発明は、
(a)(i)機能性のω−3/ω−6脂肪酸生合成経路をコードする遺伝子、および
(ii)適切な制御配列の制御下にある、
1)配列番号31、
2)配列番号32、
3)配列番号33、
4)配列番号34、
5)配列番号35、
6)配列番号36、および
7)配列番号37に記載のアミノ酸モチーフの全てを含んでなる、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子
を含んでなる形質転換宿主細胞を準備し、
(b)(i)および(ii)の遺伝子が発現し、少なくとも1つのω−3またはω−6脂肪酸の生成、およびそのトリアシルグリセロールへの転移がもたらされる条件下で、ステップ(a)の細胞を生育させ、
(c)ステップ(b)のトリアシルグリセロールを場合により回収すること
を含んでなる形質転換宿主細胞中のトリアシルグリセロールのω−3またはω−6脂肪酸含量の増大方法を提供する。
別の実施態様では、本発明は、
(a)(i)機能性のω−3/ω−6脂肪酸生合成経路をコードする遺伝子、および
(ii)適切な制御配列の制御下にある、
1)配列番号23、
2)配列番号24、
3)配列番号25、
4)配列番号26、
5)配列番号27、
6)配列番号28、
7)配列番号29、および
8)配列番号30に記載のアミノ酸モチーフの全てを含んでなる、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子
を含んでなる形質転換宿主細胞を準備し、
(b)(i)および(ii)の遺伝子が発現し、少なくとも1つのω−3またはω−6脂肪酸の生成、およびそのトリアシルグリセロールへの転移がもたらされる条件下で、ステップ(a)の細胞を生育させ、
(c)ステップ(b)のトリアシルグリセロールを場合により回収すること
を含んでなる形質転換宿主細胞中のトリアシルグリセロールのω−3またはω−6脂肪酸含量の増大方法を提供する。
一実施態様では、本発明は、
(a)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1活性を有することが疑われるポリペプチドのアミノ酸配列を得て、
(b)ステップ(a)のポリペプチドのアミノ酸配列中で、
1)配列番号31、
2)配列番号32、
3)配列番号33、
4)配列番号34、
5)配列番号35、
6)配列番号36、および
7)配列番号37に記載のアミノ酸モチーフ配列の全ての存在を同定すること
を含んでなり、
ポリペプチド中のステップ(a)のモチーフ配列の全ての存在が、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1活性の徴候である、
ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1活性を有するポリペプチドの同定法を提供する。
別の実施態様では、本発明は、
(a)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1活性を有することが疑われる真菌ポリペプチドのアミノ酸配列を得て、
(b)ステップ(a)のポリペプチドのアミノ酸配列中で、
1)配列番号23、
2)配列番号24、
3)配列番号25、
4)配列番号26、
5)配列番号27、
6)配列番号28、
7)配列番号29、および
8)配列番号30に記載のアミノ酸モチーフ配列の全ての存在を同定すること
を含んでなり、
ポリペプチド中のステップ(a)モチーフ配列の全ての存在が、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1活性の徴候である、
ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1活性を有する真菌ポリペプチドの同定法を提供する。
配列説明
本願明細書の一部を形成する以下の詳細な説明および添付の配列説明によって、本発明をより完全に理解できるであろう。
以下の配列は、37C.F.R.§1.821〜1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列開示を含む特許出願の要件−配列規則」)を満たし、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)およびEPOおよびPCTの配列表要件(規則5.2および49.5(aの2)、および実施細則第208号および附属書C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データのために使用される記号および型式は、37C.F.R.§1.822で述べられる規則に従う。
配列番号1〜38、112〜115、117〜120、122、123、125、126、130、131、133〜136、140、141、および169〜174は、表1に同定されるような遺伝子またはタンパク質(またはその一部)またはタンパク質モチーフをコードするORFである。
Figure 2008524984
Figure 2008524984
Figure 2008524984
配列番号55、82、110、121、124、128、129、137〜139、144、164、165、および168は、表2で同定されるようなプラスミドである。
Figure 2008524984
配列番号39および40は、TEFプロモーターを単離するのに使用されるプライマーTEF5’およびTEF3’にそれぞれ対応する。
配列番号41および42は、XPR2転写ターミネーターを単離するのに使用されるプライマーXPR5’およびXPR3’にそれぞれ対応する。
配列番号43〜54は、プラスミド構築のために使用されるプライマーYL5、YL6、YL9、YL10、YL7、YL8、YL3、YL4、YL1、YL2、YL61、およびYL62にそれぞれ対応する。
配列番号56は、大腸菌(E.coli)ハイグロマイシン抵抗性遺伝子を含有する1kBのDNA断片(アミノ酸配列は配列番号57として提供される)に対応する。
配列番号58は、プライマーKU5およびKU3(それぞれ配列番号60および61)によって増幅されたヤロウィア(Yarrowia)Ura3遺伝子(アミノ酸配列は配列番号59として提供される)を含有する、1.7kBのDNA断片に対応する。
配列番号62および64は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DGAT2の単離のために使用される、P7およびP8としてそれぞれ同定される変性プライマーである。
配列番号63および65は、変性プライマーP7およびP8にそれぞれ対応するアミノ酸の共通配列である。
配列番号66〜68は、染色体歩行のために使用される、プライマーP80、P81、およびLinkAmpプライマー1にそれぞれ対応する。
配列番号69〜72は、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)DGAT2遺伝子の標的を定めた中断のために使用される、プライマーP95、P96、P97、およびP98にそれぞれ対応する。
配列番号73〜75は、中断されたY.リポリティカ(Y.lipolytica)DGAT2遺伝子の標的を定めた組み込みをスクリーンするのに使用される、プライマーP115、P116、およびP112にそれぞれ対応する。
配列番号76および78は、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)PDATの単離のために使用される、P26およびP27としてそれぞれ同定される変性プライマーである。
配列番号77および79は、変性プライマーP26およびP27にそれぞれ対応する、アミノ酸共通配列である。
配列番号80、81、83、および84は、Y.リポリティカ(lipolytica)PDAT遺伝子の標的を定めた中断のために使用されるプライマーP39、P42、P41、およびP40にそれぞれ対応する。
配列番号85〜88は、中断されたY.リポリティカ(lipolytica)PDAT遺伝子の標的を定めた組み込みをスクリーンするのに使用される、プライマーP51、P52、P37、およびP38にそれぞれ対応する。
配列番号89は、レスキューされたプラスミドから完全長のY.リポリティカ(lipolytica)DGAT2遺伝子を増幅するのに使用される、プライマーP79に対応する。
配列番号90および91は、レスキューされたプラスミドから完全長のY.リポリティカ(Y.lipolytica)PDAT遺伝子を増幅するのに使用される、プライマーP84およびP85にそれぞれ対応する。
配列番号92および93は、Y.リポリティカ(lipolytica)DGAT1の単離のために使用される、P201およびP203としてそれぞれ同定される縮重プライマーである。
配列番号94〜99は、Y.リポリティカ(lipolytica)DGAT1遺伝子の標的を定めた中断のために使用される、プライマーP214、P215、P216、P217、P218、およびP219にそれぞれ対応する。
配列番号100および101は、中断されたY.リポリティカ(lipolytica)DGAT1遺伝子の標的を定めた組み込みをスクリーンするために使用される、プライマーP226およびP227にそれぞれ対応する。
配列番号102および103は、Y.リポリティカ(lipolytica)ARE2の単離のために使用される、P205およびP208としてそれぞれ同定される縮重プライマーである。
配列番号104〜109は、Y.リポリティカ(lipolytica)ARE2遺伝子の標的を定めた中断のために使用される、プライマーP220、P221、P222、P223、P224、およびP225にそれぞれ対応する。
配列番号111、116、127、および132は、次のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)プロモーターにそれぞれ対応する。フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ+イントロン(FBAIN、973bp)、フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(FBA、1001bp)、フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ+変性イントロン(FBAINm、924bp)、グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ(GPAT、1130bp)。
配列番号142および143は、Y.リポリティカ(lipolytica)DGAT1 ORFの配列決定のために使用される、プライマーP239およびP240にそれぞれ対応する。
配列番号145〜147は、BD−クロンテック・クリエイター・スマート(BD−Clontech Creator Smart)(登録商標)cDNAライブラリー・キット・プライマー・スマート(SMART)IVオリゴヌクレオチド、CDSIII/3’PCRプライマー、および5’−PCRプライマーに対応する。
配列番号148は、M.アルピナ(alpina)cDNAライブラリーの配列決定のために使用される、M13順方向プライマーに対応する。
配列番号149は、推定上のM.アルピナ(alpina)DGAT1遺伝子をコードする、部分的cDNA配列(601bp)に対応する。
配列番号150および151は、推定上のM.アルピナ(alpina)DGAT1遺伝子の5’末端領域をクローニングするために使用される、プライマーMARE2−N1およびMARE2−N2にそれぞれ対応する。
配列番号152および153は、ゲノム歩行のために使用されるクロンテック(ClonTech)のユニバーサル・ゲノム歩行TMキットからのゲノム歩行アダプターに対応する。
配列番号154および155は、M.アルピナ(alpina)DGAT1の5’末端領域を単離するゲノム歩行のために使用される、プライマーAP1およびAP2にそれぞれ対応する。
配列番号156は、M.アルピナ(alpina)DGAT1 cDNA断片の5’末端配列(1683bp)に対応する。
配列番号157および158は、推定上のM.アルピナ(alpina)DGAT1遺伝子の3’末端領域をクローニングするために使用される、プライマーARE−N3−1およびARE−N3−2にそれぞれ対応する。
配列番号159および160は、M.アルピナ(alpina)DGAT1の3’末端領域を単離するゲノム歩行のために使用される、プライマーAPおよびUAPにそれぞれ対応する。
配列番号161は、M.アルピナ(alpina)DGAT1 cDNA断片の3’末端配列(184bp)に対応する。
配列番号162および163は、M.アルピナ(alpina)DGAT1 ORFをクローニングするために使用される、プライマーMACAT−F1およびMACAT−Rにそれぞれ対応する。
配列番号166および167は、「対照」プラスミドpZUF−MOD−1を作り出すために使用される、プライマーpzuf−mod1およびpzuf−mod2にそれぞれ対応する。
本発明に従って、出願人は、脂肪酸を貯蔵トリアシルグリセロール(TAG)中に転移するために有用なジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT1)酵素をコードする、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)遺伝子を単離し、アイデンティティを確認した。オルソロガス遺伝子もまたクサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)から単離され、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ジベレラ・ゼアエ(Gibberella zeae)PH−1、マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)、およびアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)中で同定された。さらに本発明は、真菌生物体からのその他のDGAT1遺伝子を容易に同定するためのモチーフを提供する。別の実施態様では、アシル−CoA:ステロール−アシルトランスフェラーゼ(ARE2)酵素をコードするヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)遺伝子が単離された。これらの各遺伝子は、形質転換油性酵母中で生成される長鎖多価不飽和脂肪酸(PUFA)の量を変更するのに有用かもしれない。
PUFAの重要性には議論の余地がない。例えば特定のPUFAは、健康な細胞の重要な生物学的構成要素であり、哺乳類において新規に(de novo)合成できず、その代わりに食餌中で得なくてはならず、またはリノール酸(LA)またはα−リノレン酸(ALA)のさらなる不飽和化および延長によって送達されなくてはならない「必須」脂肪酸として、リン脂質またはTAGなどの形態であってもよい細胞の原形質膜の構成物として、(特に発達中の幼児の脳における)適切な発達、組織形成および修復のために必要なものとして、哺乳類において重要ないくつかの生物学的に活性なエイコサノイドの前駆物質(例えばプロスタサイクリン、エイコサノイド、ロイコトリエン、プロスタグランジン)として認識される。さらに長鎖ω−3PUFAの大量摂取からは、心臓血管保護効果が生じる(ダイヤーバーグ(Dyerberg),J.ら著、「Amer.J.Clin Nutr.」28:958〜966頁(1975年);ダイヤーバーグ(Dyerberg),J.ら著、「Lancet」 2(8081):117〜119頁(1978年7月15日);シモカワ(Shimokawa),H.著、「World Rev Nutr Diet」、88:100〜108頁(2001年);フォンシャッキー(von Schacky),C.およびダイヤーバーグ(Dyerberg),J.著、「World Rev Nutr Diet」、88:90〜99頁(2001年))。そしてその他の多数の研究は、ω−3および/またはω−6脂肪酸の投与によって得られる、多様な症状および疾患(例えば喘息、乾癬、湿疹、糖尿病、癌)に対する多岐にわたる健康上の利点を実証している。
したがって本発明には多くの用途がある。本願明細書で開示される方法によって蓄積されるPUFA、またはその誘導体は、食餌代用品、またはサプリメント、特に乳児用調製粉乳として、静脈内栄養補給を受けている患者のために、または栄養不良を防止または処置するために使用できる。代案としては精製されたPUFA(またはその誘導体)は、正常な使用で受容者が食餌栄養補給のための所望量を受容するように調合された、料理用油、脂肪またはマーガリンに組み込まれてもよい。PUFAはまた、乳児用調製粉乳、栄養サプリメントまたはその他の食品に組み込まれてもよく、抗炎症薬またはコレステロール低下剤としての用途があるかもしれない。場合により組成物は、医薬品用途(ヒトまたは獣医学)のために使用されてもよい。この場合、PUFAは一般に経口投与されるが、例えば非経口的(例えば皮下、筋肉内または静脈内)、経直腸、経腟または局所的(例えば皮膚用軟膏またはローションとして)など、それによって成功裏に吸収されるあらゆる経路で投与することができる。
組み換え手段によって製造されたPUFAによるヒトまたは動物の栄養補給は、追加的なPUFA、ならびにそれらの代謝子孫の増大したレベルをもたらすことができる。例えばARAによる処置は、ARAの増大したレベルだけでなく、プロスタグランジンなどのARAの下流生成物をももたらすことができる。複雑な制御機序は、このような機序を防止、制御または克服して、個人(個体)における特定なPUFAの所望レベルを達成するために、様々なPUFAを組み合わせ、または異なるPUFAコンジュゲートを追加することを望ましいものにできる。
定義
本開示中では、いくつかの用語および略語を使用する。以下の定義が提供される。
「読み取り枠」はORFと略記される。
「ポリメラーゼ連鎖反応」はPCRと略記される。
「米国微生物系統保存機関」はATCCと略記される。
「多価不飽和脂肪酸」はPUFAと略記される。
「アシル−CoA:ステロール−アシルトランスフェラーゼ」はARE2と略記される。
「リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ」はPDATと略記される。
「ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ」はDAG AT またはDGATと略記される。
「ジアシルグリセロール」はDAGと略記される。
「トリアシルグリセロール」はTAGと略記される。
「Co−酵素A」はCoAと略記される。
「脂肪酸」という用語は、(より長い、およびより短い鎖長の酸の双方も知られているが)約C12〜C22の様々な鎖長の長鎖脂肪族酸(アルカン酸)を指す。優勢な鎖長はC16〜C22の間である。脂肪酸の構造は単純な表記法システム「X:Y」によって表され、ここでXは特定の脂肪酸中の炭素(C)原子の総数であり、Yは二重結合の数である。
一般に脂肪酸は、飽和または不飽和として分類される。「飽和脂肪酸」という用語は、炭素主鎖間に「二重結合」を有さない脂肪酸を指す。対照的に「不飽和脂肪酸」は、それらの炭素主鎖に沿って「二重結合」を有する(それらは最も一般的にcis−配置にある)。「一不飽和脂肪酸」は、(例えばパルミトレイン酸(16:1)およびオレイン酸(18:1)のように通常9および10番目の炭素原子の間に)炭素主鎖に沿って1個の「二重結合」のみを有し、他方「多不飽和脂肪酸」(または「PUFA」)は、(例えばリノール酸(18:2)のように9および10番目、および12および13番目の炭素原子間、およびα−リノレン酸(18:3)のように9および10番め、12および13番め、および15および16番目の炭素原子間に)炭素主鎖に沿って少なくとも2個の二重結合を有する。
「PUFA」は、(脂肪酸炭素鎖のメチル末端に最も近い第1の二重結合の位置(n)次第で)2つの主要ファミリーに分類できる。したがって「ω−6脂肪酸」(ω−6またはn−6)は、分子のω(メチル)末端から6個目の炭素原子に第1の不飽和二重結合を有し、さらに全部で2つ以上の二重結合を有して、それぞれの続く不飽和は、分子のカルボキシル末端に向かって3つのさらに別の炭素原子で生じる。対照的に「ω−3脂肪酸」(ω−3またはn−3)は、第1の不飽和二重結合を分子のω末端から3個離れた炭素原子に有し、さらに全部で3つ以上の二重結合を有して、それぞれの続く不飽和は、分子のカルボキシル末端に向かって3つのさらに別の炭素原子で生じる。
本開示の目的のために、ω参照システムを使用して、炭素数、二重結合数、およびω炭素(この目的では1番めとする)から数えたω炭素に最も近い二重結合の位置を示す。この命名法を下の表3で、「省略表記法」と題された欄に示す。表の残りは、ω−3およびω−6脂肪酸の共通の名称、明細書全体で使用される略語、および各化合物の化学名をまとめる。
Figure 2008524984
「微生物油」または「単細胞油」は、微生物(例えば藻類、油性酵母菌、および糸状菌)によって、それらの生涯において天然に生成される油である。「油」という用語は、25℃で液体であり、通常多価不飽和脂質である脂質物質を指す。対照的に「脂肪」という用語は、25℃で固形物であり、通常飽和である脂質物質を指す。
「リピッドボディ」とは、通常、特定のタンパク質およびリン脂質単層に結合する脂肪滴を指す。これらの細胞小器官は、ほとんどの生物体が中性脂質を輸送/貯蔵する部位である。リピッドボディは、TAG−生合成酵素を含有する小胞体のミクロドメインから発生すると考えられ、それらの合成およびサイズは、特定のタンパク質構成要素によって制御されているように見える。
「中性脂質」とは、貯蔵脂肪および油として一般にリピッドボディの細胞に見られる脂質を指し、細胞pHでは脂質が荷電群を有さないことからこう呼ばれる。一般にこれらは完全に非極性で水に対する親和性がない。中性脂質とは、一般に脂肪酸とグリセロールのモノ−、ジ−、および/またはトリエステルを指し、それぞれモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールまたはTAG(または集合的にアシルグリセロール)とも称される。アシルグリセロールから遊離脂肪酸を放出するためには、加水分解反応が起きなくてはならない。
「トリアシルグリセロール」、「油」、および「TAG」という用語は、グリセロール分子とエステル化する3つの脂肪酸アシル残基から構成される中性脂質を指す(そしてこのような用語は、本開示の全体を通して区別なく使用される)。このような油は、長鎖PUFA、ならびにより短い飽和および不飽和脂肪酸、および鎖長のより長い飽和脂肪酸を含有できる。したがって「油生合成」は、一般に細胞におけるTAG合成を指す。
「DAG AT」という用語は、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(アシル−CoA−ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼまたはジアシルグリセロールO−アシルトランスフェラーゼとしても知られる)(EC2.3.1.20)を指す。この酵素は、アシル−CoAおよび1,2−ジアシルグリセロールのTAGおよびCoAへの変換に関与する(したがってTAG生合成の最終段階に関与する)。DGAT1およびDGAT2の2つのDAGAT酵素ファミリーが存在する。前者のファミリーはアシル−CoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)遺伝子ファミリーと類似しており、後者のファミリーは関連性がない(ラルディザバル(Lardizabal)ら著、「J.Biol.Chem.」276(42):38862〜28869頁(2001年))。
「PDAT」という用語は、リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.158)を指す。この酵素は、リン脂質のsn−2位から1,2−ジアシルグリセロールのsn−3位へのアシル基転移に関与し、その結果リゾリン脂質およびTAGが得られる(したがってTAG生合成の最終段階に関与する)。この酵素はアシル−CoA−非依存性機序を通じてTAGを合成することで、DGAT(EC2.3.1.20)とは異なる。
「ARE2」という用語は、アシル−CoA+コレステロール=CoA+コレステロールエステルの反応を触媒するアシル−CoA:ステロール−アシルトランスフェラーゼを指す(EC2.3.1.26、ステロール−エステルシンターゼ2酵素としてもまた知られている)。
「PUFA生合成経路酵素」と言う用語は、Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、Δ9デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼをはじめとする、PUFAの生合成に関連する酵素(および前記酵素をコードする遺伝子)のいずれかを指す。
「ω−3/ω−6脂肪酸生合成経路」という用語は、適切な条件下で発現されると、ω−3およびω−6脂肪酸のいずれかまたは双方の生成を触媒する酵素をコードする遺伝子の組を指す。典型的にω−3/ω−6脂肪酸生合成経路に関与する遺伝子は、次の酵素のいくつかまたは全てをコードする。Δ12デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、エロンガーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、Δ9デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、およびΔ4デサチュラーゼ。代表的な経路は図2に図示され、様々な中間体を経由するオレイン酸のDHAへの転換が提供され、ω−3およびω−6脂肪酸の双方が、共通の原料からどのように生成されてもよいかを実証する。経路は自然に2つの部分に別れ、1つの部分はω−3脂肪酸、別の部分はω−6脂肪酸のみを発生させる。ω−3脂肪酸のみを発生させる部分を本願明細書でω−3脂肪酸生合成経路と称するのに対し、ω−6脂肪酸のみを発生させる部分は、本願明細書でω−6脂肪酸生合成経路と称する。
「機能性」という用語は、本願明細書でω−3/ω−6脂肪酸生合成経路に関する文脈で、経路中の遺伝子のいくつか(または全て)が、活性酵素を発現することを意味する。いくつかの脂肪酸生成物は、この経路の遺伝子のサブセットの発現のみを必要とするので、「ω−3/ω−6脂肪酸生合成経路」または「機能性ω−3/ω−6脂肪酸生合成経路」は、上の段落で列挙される全遺伝子が必要とされることを暗示しないものとする。
「デサチュラーゼ」と言う用語は、不飽和化できる、すなわち1個(つ)もしくはそれ以上の脂肪酸中に二重結合を導入して、一価または多価不飽和脂肪酸を生じるポリペプチドを指す。特定の脂肪酸を指すために、本願明細書全体を通じてω参照システムを使用するのにもかかわらず、Δシステムを使用して基質のカルボキシル末端から数えることで、デサチュラーゼの活性を示す方が都合よい。ここで特に関心が高いのは、分子のカルボキシル末端から数えて12および13番目の炭素原子間で脂肪酸を不飽和化し、オレイン酸からLAへの変換を触媒するΔ12デサチュラーゼ、LAからALAへの変換を触媒するΔ15デサチュラーゼ、ARAからEPAへのおよび/またはDGLAからETAへの変換を触媒するΔ17デサチュラーゼ、LAからGLAへのおよび/またはALAからSTAへの変換を触媒するΔ6デサチュラーゼ、DGLAからARAへのおよび/またはETAからEPAへの変換を触媒するΔ5デサチュラーゼ、DPAからDHAへの変換を触媒するΔ4デサチュラーゼ、EDAからDGLAへのおよび/またはETrAからETAへの変換を触媒するΔ8デサチュラーゼ、およびパルミチン酸からパルミトレイン酸(16:1)および/またはステアリン酸からオレイン酸(18:1)への変換を触媒するΔ9デサチュラーゼである。
「エロンガーゼ」と言う用語は、脂肪酸炭素鎖を伸長して、エロンガーゼが作用した脂肪酸基質よりも炭素2個分長い酸を生成できるポリペプチドを指す。この延長プロセスは、CoAがアシルキャリアである脂肪酸合成酵素と関連した多段階機序で起きる(ラスナー(Lassner)ら著、「The Plant Cell」 8:281〜292頁(1996年))。手短に述べると、マロニル−CoAが長鎖アシル−CoAと縮合して、CO2およびβ−ケトアシル−CoAを生じる(アシル部分が炭素原子2個分伸長される)。引き続く反応には、β−ヒドロキシアシル−CoAへの還元、エノイル−CoAへの脱水、および伸長されたアシル−CoAを生じる第2の還元が含まれる。エロンガーゼによって触媒される反応の例は、GLAからDGLA、STAからETA、およびEPAからDPAへの変換である。したがってエロンガーゼは、異なる特異性を有することができる。例えばC16/18エロンガーゼはC16基質を好み、C18/20エロンガーゼはC18基質を好み、C20/22エロンガーゼはC20基質を好む。同様にΔ9エロンガーゼは、LAおよびALAからEDAおよびETrAへの変換をそれぞれ触媒できる。
「油性」と言う用語は、それらのエネルギー源を脂質の形態で保存する傾向がある生物体を指す(ウィーテ(Weete)著、「真菌脂質生化学(Fungal Lipid Biochemistry)」第2版、Plenum、1980年)。一般にこれらの微生物細胞の油含量はS字形曲線に従い、対数増殖後期または定常増殖初期において脂質濃度が最大に達するまで増大し、次に定常増殖後期および死滅期において徐々に減少する(ヨンマニットチャイ(Yongmanitchai)およびワード(Ward)著、「Appl.Environ.Microbiol.」57:419〜25頁(1991年))。
「油性酵母菌」と言う用語は、油を生成できる酵母菌として分類される微生物を指す。一般に、油性微生物の細胞油またはトリアシルグリセロール含量はS字形曲線に従い、脂質濃度は対数増殖後期または定常増殖初期において最大に達するまで増大し、次に定常増殖後期および死滅期において徐々に減少する(ヨンマニットチャイ(Yongmanitchai)およびワード(Ward)著、「Appl.Environ.Microbiol.」57:419〜25頁(1991年))。油性微生物が25%を超えるその乾燥細胞重量を油として蓄積するのは珍しくない。油性酵母菌の例としては、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポマイセス(Lipomyces)属が挙げられるが、決してこれに限定されるものではない。
「発酵性炭素源」と言う用語は、微生物が代謝してエネルギーを引き出す炭素源を意味する。本発明の典型的な炭素源としては、単糖類、少糖類、多糖類、アルカン、脂肪酸、脂肪酸エステル、モノグリセリド、二酸化炭素、メタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸、および炭素含有アミンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
「単離された核酸断片」および「単離された核酸分子」と言う用語は区別なく使用され、場合により合成、非天然または修飾ヌクレオチド塩基を含有する一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNAのポリマーを意味する。DNAポリマーの形態の単離された核酸断片は、1つまたはそれ以上のcDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの断片を含んでなってもよい。
核酸分子は、適切な温度および溶液イオン強度条件下で、核酸分子の一本鎖形態がその他の核酸分子とアニールできる場合、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAなどの別の核酸分子と「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件についてはよく知られており、サムブルック(Sambrook),J.、フリッチュ(Fritsch),E.F.、およびマニアティス(Maniatis),T.著、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」第2版、コールドスプリングハーバー研究所(Cold Spring Harbor Laboratory)、ニューヨーク州(NY)コールドスプリングハーバー、(1989年)の特に第11章およびその表11.1で例示される(その内容全体を参照によって本願明細書に引用する)。温度およびイオン強度条件が、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を定める。ストリンジェンシー条件は、(遠縁の生物からの相同的配列などの)中程度に類似した断片をスクリーニングするため、そして(機能性酵素を複製する近縁の生物からの遺伝子などの)高度に類似した断片をスクリーニングするために調節できる。ハイブリダイゼーション後の洗浄が、ストリンジェンシー条件を決定する。1つの好ましい条件の組は、室温において6×SSC、0.5%SDSで15分間に始まり、次に45℃において2×SSC、0.5%SDSで30分間を反復し、次に50℃において0.2×SSC、0.5%SDSで30分間を2回反復する、一連の洗浄を使用する。より好ましいストリンジェンシー条件の組はより高い温度を使用し、そこでは洗浄は、最後の0.2×SSC、0.5%SDS中での2回の30℃の洗浄温度を60℃に増大させること以外は上述したのと同一である。別の好ましい高度にストリンジェンシー条件の組は、65℃において0.1×SSC、0.1%SDS中での2回の最終洗浄を使用する。さらに別のストリンジェンシー条件の組は、例えば0.1×SSC、0.1%SDS、65℃でのハイブリダイゼーション、および2×SSCでの洗浄、0.1%SDS、それに続く0.1×SSC、0.1%SDSを含む。
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー次第で塩基間のミスマッチは可能であるが、ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補的配列を含有することを要求する。核酸がハイブリダイズする適切なストリンジェンシーは、技術分野でよく知られた変数である核酸の長さおよび相補性の程度に左右される。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が高い程、これらの配列を有する核酸ハイブリッドのTm値は大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対安定性(より高いTmに対応する)は、次の順で低下する。RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。長さがヌクレオチド100個を超えるハイブリッドでは、Tmを計算する式が導かれている(サムブルック(Sambrook)ら著、前出、9.50〜9.51参照)。より短い核酸、すなわちオリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションのためにはミスマッチの配置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(サムブルック(Sambrook)ら、前出、11.7〜11.8参照)。一実施態様では、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは、少なくともヌクレオチド約10個である。ハイブリダイズ可能な核酸の好ましい最小の長さは、少なくともヌクレオチド約15個、より好ましくは少なくともヌクレオチド約20個、そして最も好ましくは長さが少なくともヌクレオチド約30個である。さらに当業者は、温度および洗浄液の塩濃度が、プローブの長さなどの要因次第で必要に応じて調節できることを認識する。
アミノ酸またはヌクレオチド配列の「かなりの部分」とは、当業者による配列の手動評価によって、あるいはBLAST((「基礎的局在性配列探索ツール(Basic Local Alignment Search Tool)」アルトシュル(Altschul),S.F.ら著、「J.Mol.Biol.」215:403〜410頁(1993年))などのアルゴリズムを使用したコンピュータ自動化配列比較および同定によって、遺伝子またはポリペプチドの推定上の同定を得るのに十分なポリペプチドまたは遺伝子のヌクレオチド配列のアミノ酸配列を含んでなる部分である。推定的にポリペプチドまたは核酸配列が既知のタンパク質または遺伝子に相同的であると同定するためには、一般に10個以上の隣接するアミノ酸または30個以上のヌクレオチド配列が必要である。さらにヌクレオチド配列に関して、20〜30個の隣接するヌクレオチドを含んでなる遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを配列依存遺伝子同定法(例えばサザンハイブリダイゼーション)および単離(例えば細菌コロニーまたはバクテリオファージ・プラークの原位置(in situ)ハイブリダイゼーション)において使用してもよい。さらにプライマーを含んでなる特定の核酸断片を得るために、塩基12〜15個の短いオリゴヌクレオチドを増幅プライマーとしてPCRで使用してもよい。したがってヌクレオチド配列の「かなりの部分」は、配列を含んでなる核酸断片を特異的に同定および/または単離できるようにする十分な配列を含んでなる。本願明細書は、1つまたはそれ以上の特定の酵母および糸状菌タンパク質をコードする部分的または完全アミノ酸およびヌクレオチド配列を教示する。当業者は本願明細書で報告される配列の恩恵を被り、当業者に既知の目的のために、今や開示された配列の全てまたはかなりの部分を使用できる。したがって本発明は、添付の配列表で報告される完全な配列、ならびに上で定義される配列のかなりの部分を含んでなる。
「相補的」と言う用語は、互いにハイブリダイズできるヌクレオチド塩基間の関係について述べるために使用される。例えばDNAについて、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって本発明は添付の配列表で報告されるような完全な配列に相補である単離された核酸断片、ならびに実質的に類似した核酸配列も含む。
技術分野で既知の「パーセント同一性」と言う用語は、配列を比較して判定される2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列の関係である。技術分野において「同一性」は、場合によってはこのような配列ストリング間のアラインメントによって判定されるような、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」および「類似性」は、1)レスク(Lesk),A.M.編、「計算分子生物学(Computational Molecular Biology)」、ニューヨーク州(NY)オックスフォードユニバーシティ(1988年)、2)スミス(Smith),D.W.編、「バイオコンピューティング:情報科学およびゲノムプロジェクト(Biocomputing:Informatics and Genome Projects)」、ニューヨーク州アカデミック(Academic、NY)(1993年)、3)グリフィン(Griffin),A.M.およびグリフィン(Griffin),H.G.編、「配列データのコンピュータ分析(Computer Analysis of Sequence Data)」第一部、ニュージャージー州ヒューマニア(Humania、NJ)(1994年)、4)フォン・ハインェ(von Heinje),G.編、「分子生物学における配列分析(Sequence Analysis in Molecular Biology)」、ニューヨーク州アカデミック(Academic、NY)(1987年)、5)グリブスコフ(Gribskov),M.およびデュヴルー(Devereux),J.編、「配列分析入門(Sequence Analysis Primer)」、ニューヨーク州ストックトン(Stockton、NY)(1991年)で述べられるものをはじめとするが、これに限定されるものではない、既知の方法によって容易に計算できる。同一性を判定する好ましい方法は、試験される配列間に最良のアラインメントを与えるように設計される。同一性および類似性を判定する方法は、一般に入手できるコンピュータプログラムで体系化されている。配列アラインメントおよび同一性百分率の計算は、ウィスコンシン州マディソンのDNASTAR(DNASTAR Inc.(Madison,WI))からのレーザージーン(LASERGENE)バイオインフォマティクス計算スイートのメガライン(Megalign)プログラムを使用して実施してもよい。クラスタル法によるアラインメント(ヒギンズ(Higgins)およびシャープ(Sharp)著、CABIOS.5:151〜153頁(1989年))を使用して、特に断りのない限りデフォルトのパラメーター(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=10)で、配列の複数の配列アラインメントを実施する。クラスタル法を使用した対アラインメントのデフォルトのパラメーターは、KTUPLE 1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5、およびDIAGONALS SAVED=5である。
適切な核酸断片(本発明の単離ポリヌクレオチド)は、本願明細書で報告するアミノ酸配列と少なくとも約70%同一の、好ましくは少なくとも約75%同一の、そしてより好ましくは少なくとも約80%同一のポリペプチドをコードする。好ましい核酸断片は、本願明細書で報告するアミノ酸配列と約85%同一のアミノ酸配列をコードする。より好ましい核酸断片は、本願明細書で報告するアミノ酸配列と少なくとも約90%同一のアミノ酸配列をコードする。最も好ましい核酸断片は、本願明細書で報告するアミノ酸配列と少なくとも約95%同一のアミノ酸配列をコードする。適切な核酸断片は上の相同性を有するだけでなく、典型的に少なくとも50個のアミノ酸、好ましくは少なくとも100個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも150個のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも200個のアミノ酸、そして最も好ましくは少なくとも250個のアミノ酸を有するポリペプチドをコードする。
「コドン縮重」とは、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列に影響することなく、ヌクレオチド配列の変更を可能にする遺伝コードにおける性質を指す。当業者は、任意のアミノ酸を特定化するためのヌクレオチドコドンの利用において、特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」を十分承知している。したがって宿主細胞中における改善された発現のために遺伝子を合成する場合、コドン使用頻度が宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に近くなるように、遺伝子をデザインすることが望ましい。
遺伝子または核酸分子のコード領域に関連して、「コドン最適化された」という用語は、改変されるコドンが、DNAがコードするポリペプチドを変更させることなく、宿主生物体の典型的なコドン使用を反映するようなコドンの修正を指す。
「化学的に合成された」とは、DNA配列に関連して構成要素ヌクレオチドが、生体外で(in vitro)構築されたことを意味する。確立した手順を使用してDNAの手動化学合成を達成してもよく、あるいはいくつかの市販の機器の1つを使用して自動化学合成を実施できる。「合成遺伝子」は、当業者に知られた手順を使用して化学的に合成されるオリゴヌクレオチド構成単位から構築できる。これらの構成単位をライゲートしアニールして遺伝子セグメントを形成し、次にそれを酵素的にアセンブルして遺伝子全体を構成する。したがって遺伝子をヌクレオチド配列の最適化に基づいて、最適な遺伝子発現のために調整し、宿主細胞のコドンバイアスを反映させることができる。当業者は、コドン利用が宿主によって好まれるコドンに偏っている場合の遺伝子発現成功の見込みを理解する。好ましいコドンの判定は、配列情報が利用できる宿主細胞から誘導された遺伝子の調査に基づくことができる。
「遺伝子」とは、コード配列に先行する(5’非コード配列)およびそれに続く(3’非コード配列)制御配列を含む、特定のタンパク質を発現する核酸断片を指す。「天然遺伝子」とは、自然界にそれ自体の制御配列と共に見られる遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」とは、自然界に共に見られない制御およびコード配列を含んでなる天然遺伝子でないあらゆる遺伝子を指す。したがってキメラ遺伝子は、異なる供給源から誘導される制御配列およびコード配列、あるいは同一供給源から誘導されるが、自然界に見られるのとは異なるやり方で配列する制御配列およびコード配列を含んでなってもよい。「内在性遺伝子」とは、生物体ゲノムにおいてその天然位置にある天然遺伝子を指す。「外来性」遺伝子とは、宿主生物体において常態では見られないが、遺伝子移入によって宿主生物体に導入される遺伝子を指す。外来性遺伝子は、非天然生物体中に挿入された天然遺伝子、あるいはキメラ遺伝子を含んでなることができる。「導入遺伝子」とは、形質転換手順によってゲノム中に導入された遺伝子である。「コドン最適化遺伝子」とは、そのコドン使用頻度が宿主細胞の好むコドン使用頻度を模倣するようにデザインされた遺伝子である。
「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「適切な制御配列」とは、コード配列の上流(5’非コード配列)、配列内、または下流(3’非コード配列)に位置して、転写、RNAプロセシングまたは安定性、または関連コード配列の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセッシング部位、エフェクター結合部位、およびステム−ループ構造を含んでもよい。
「プロモーター」とは、コード配列または機能性RNAの発現を調節できるDNA配列を指す。一般にコード配列は、プロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーターは、そっくりそのまま天然遺伝子から誘導されてもよく、あるいは自然界に見られる異なるプロモーターから誘導される異なる要素からなってもよく、あるいは合成DNAセグメントを含んでなってもよい。異なるプロモーターは、異なる組織または細胞タイプ中で、あるいは異なる開発段階において、あるいは異なる環境または生理学的条件に呼応して、遺伝子の発現を導いてもよいことが当業者には理解される。ほとんどの細胞タイプ中でほとんどの場合に遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは、一般に「構造プロモーター」と称される。ほとんどの場合、制御配列のはっきりした境界は完全に画定されていないので、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有してもよいこともさらに認識される。
「3’非コード配列」または「転写ターミネーター」と言う用語は、コード配列の下流に位置するDNA配列を指す。これには、mRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響できる調節シグナルをコードするポリアデニル化認識配列およびその他の配列が含まれる。ポリアデニル化シグナルは、通常mRNA前駆物質の3’末端へのポリアデニル酸トラクトの付加に影響することで特徴づけられる。3’領域は、転写、RNAプロセッシングまたは安定性、または関連コード配列の翻訳に影響できる。
「RNA転写物」とは、RNAポリメラーゼが触媒するDNA配列の転写から得られる生成物を指す。RNA転写物がDNA配列の完全な相補的コピーである場合、それは一次転写物と称され、あるいはそれは一次転写物の転写後プロセッシングから誘導されるRNA配列であるかもしれず、成熟RNAと称される。「メッセンジャーRNA」または「mRNA」とはイントロンがなく、細胞によってタンパク質に翻訳されることができるRNAを指す。「cDNA」とは、mRNAに対して相補的であり、それから誘導される二重鎖DNAを指す。「センスRNA」とは、mRNAを含み、細胞によってタンパク質に翻訳されることができるRNA転写物を指す。「アンチセンスRNA」とは、標的一次転写物またはmRNAの全部または一部に相補的であり、標的遺伝子の発現をブロックするRNA転写物を指す(米国特許第5,107,065号明細書、国際公開第99/28508号パンフレット)。アンチセンスRNAの相補性は、特定遺伝子転写物のあらゆる部分、すなわち5’非コード配列、3’非コード配列、イントロン、またはコード配列にあってもよい。「機能性RNA」とは、翻訳されないがそれでもなお細胞プロセスに影響するアンチセンスRNA、リボザイムRNA、またはその他のRNAを指す。
「作動可能に連結した」と言う用語は、1つの機能が他方の機能によって影響されるような、単一核酸断片上の核酸配列のつながりを指す。例えばプロモーターがコード配列の発現に影響できる(すなわちコード配列がプロモーターの転写調節下にある)場合、それはそのコード配列と作動可能に連結する。コード配列はセンスまたはアンチセンスオリエンテーションで、制御配列に作動可能に連結できる。
「発現」と言う用語は、本願明細書の用法では、本発明の核酸断片から誘導されるセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定した蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指してもよい。
「形質転換」とは、遺伝的に安定した遺伝形質をもたらす、宿主生物体中への核酸分子の転移を指す。核酸分子は、例えば自律的に複製するプラスミドであってもよく、またはそれは宿主生物体のゲノム中に組み込まれてもよい。形質転換核酸断片を含有する宿主生物体は、「遺伝子導入」または「組み換え」または「形質転換」生物体と称される。
「プラスミド」、「ベクター」、および「カセット」と言う用語は、細胞の中心的代謝の一部ではない遺伝子を運ぶことが多く、通常環状二本鎖DNA断片の形態である染色体外因子を指す。このような因子は、あらゆる供給源から誘導される一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの配列、ゲノム一体化配列、直鎖または環状のファージまたはヌクレオチド配列を自律的に複製するかもしれず、そこではいくつかのヌクレオチド配列が独自の構成に連結または組み換えされ、それは選択された遺伝子産物のために、適切な3’非翻訳配列と共にプロモーター断片およびDNA配列を細胞中に導入することができる。「形質転換カセット」とは、外来性遺伝子を含有し、外来遺伝子に加えて特定の宿主細胞の形質転換を容易にする因子を有する特定のベクターを指す。「発現カセット」とは、外来性遺伝子を含有し、外来性遺伝子に加えて外来性宿主におけるその遺伝子の促進された発現を可能にする因子を有する特定のベクターを指す。
「相同的組換え」と言う用語は、(交差中の)2つのDNA分子間のDNA断片の交換を指す。交換される断片は、2個のDNA分子間で同一ヌクレオチド配列の部位(すなわち「相同性領域」)に挟まれる。「相同性領域」と言う用語は、相同的組換えに関与する、核酸断片上の互いに相同性を有するひと続きのヌクレオチド配列を指す。効果的な相同的組換えは、一般に長さが少なくとも約10bpである相同性領域で起き、少なくとも約50bpの長さが好ましい。典型的に遺伝子組み換えが意図される断片は、標的を定めた遺伝子中断または置換が所望される少なくとも2つの相同性領域を含有する。
「配列分析ソフトウェア」と言う用語は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の分析のために有用なあらゆるコンピュータアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを指す。「配列分析ソフトウェア」は、市販のものでも、あるいは独立して開発されてもよい。典型的な配列分析ソフトウェアとしては、1.)GCG一連のプログラム(GCG suite of programs)(ウィスコンシン州マディソンのジェネティックス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group(GCG)(Madison,WI)ウィスコンシン・パッケージ(Wisconsin Package)バージョン9.0、2.)BLASTP、BLASTN、BLASTX(アルシュール(Altschul)ら著、J.Mol.Biol.215:403〜410頁(1990年))、3.)ウィスコンシン州マディソンのDNASTAR(DNASTAR,Inc.(Madison,WI)からのDNASTAR、4.)ミシガン州アンアーバーのジーンコーズ社(Gene Codes Corporation(Ann Arbor,MI))からのシーケンチャー(Sequencher)、および5.)スミス−ウォーターマン・アルゴリズムを組み入れたFASTAプログラム(W.R.ピアソン(Pearson)著、「Comput.Methods Genome Res.」[Proc.Int.Symp.](1994年)、1992年会議、111〜20頁、スハイ、サンドル(Suhai,Sandor)編、Plenum、New York,NY)が挙げられるが、これに限定されるものではない。本願明細書の文脈内では、配列分析ソフトウェアを分析のために使用する場合、分析結果は特に断りのない限り、言及されるプログラムの「デフォルト値」に基づくものと理解される。本願明細書の用法では、「デフォルト値」とは、最初に初期化されるときにソフトウェアに最初にロードされる、あらゆる値またはパラメーターの組を意味する。
「保存ドメイン」または「モチーフ」という用語は、進化的に関連したタンパク質のアラインメント配列に沿った特定位置において保存されたアミノ酸の組を意味する。その他の位置のアミノ酸が相同的なタンパク質間で異なることができるのに対し、特定の位置で高度に保存されたアミノ酸は、タンパク質の構造、安定性、または活性に必須のアミノ酸を示唆する。それらはタンパク質相同体ファミリーのアラインメント配列におけるそれらの高度な保存によって同定されるので、それらは新たに判定された配列のタンパク質が、以前同定されたタンパク質ファミリーに属するかどうかを判別するための識別子、または「シグネチャ」として使用できる。DGAT1酵素中に普遍的に見られるモチーフ(すなわち動物、植物、および真菌)は配列番号31〜37として提供され、真菌生物体に特異的なDGAT1中に見られるモチーフは、配列番号23〜30として提供される。
本願明細書で使用される標準組み換えDNAおよび分子クローニング技術は技術分野でよく知られており、サムブルック(Sambrook),J.、フリッチュ(Fritsch),E.F.、およびマニアティス(Maniatis),T.著、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」第2版、コールドスプリングハーバー研究所(Cold Spring Harbor Laboratory)、ニューヨーク州コールドハーバー(Cold Spring Harbor,NY)(1989年)(以下マニアティス(Maniatis));シルハビー(Silhavy),T.J.、ベンナン(Bennan),M.L.、およびエンクイスト(Enquist),L.W.著、「遺伝子融合実験(Experiments with Gene Fusions)」、コールドスプリングハーバー研究所(Cold Spring Harbor Laboratory):ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor,NY)(1984年);およびオースベル(Ausubel),F.M.ら著、「分子生物学現代プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscienceによる出版(1987年)で述べられている。
脂肪酸およびトリアシルグリセロールの微生物生合成
一般に油性微生物中の脂質の蓄積は、増殖培地中に存在する全体的な炭素と窒素の比率に応答してトリガーされる(図1)。細胞が利用できる窒素供給を消耗した場合(例えば炭素と窒素の比率が約40を超える場合)、細胞アデノシン一リン酸(AMP)の枯渇は、ミトコンドリア中のAMP−依存イソクエン酸デヒドロゲナーゼ活性の休止、およびクエン酸の蓄積、クエン酸の細胞質ゾル内への輸送、そして引き続くATPクエン酸リアーゼによるクエン酸の切断をもたらして、アセチル−CoAおよびオキサロ酢酸が生成する。アセチル−CoAは、脂肪酸の新規(de novo)生合成の主要構成ブロックである。効果的にアセチル−CoAに代謝されることができるあらゆる化合物が、脂肪酸前駆物質の役割を果たせるが、このタイプの反応ではグルコースが炭素の主な供給源である(図1)。グルコースは解糖を通じてピルビン酸に変換され、次にピルビン酸はミトコンドリア中に輸送され、そこでピルビン酸デヒドロゲナーゼ(「PD」)によってアセチル−CoAに変換される。アセチル−CoAはミトコンドリア膜を越えて細胞質中に直接輸送できないので、アセチル−CoAからの2個の炭素がオキサロ酢酸と縮合して、クエン酸を生成する(クエン酸合成酵素によって触媒される)。クエン酸は細胞質内に直接輸送されて、そこでATP−クエン酸リアーゼによって切断され、アセチル−CoAおよびオキサロ酢酸が再生する。オキサロ酢酸はリンゴ酸への変換を通じて、トリカルボン酸サイクルに再び入る。
マロニル−CoAの合成は、細胞質内で起きる脂肪酸生合成の最初の関与段階である。マロニル−CoAは、アセチル−CoAカルボキシラーゼ(「ACC」)によって、アセチル−CoAのカルボキシル化を通じて生成される。脂肪酸合成は、多酵素脂肪酸合成酵素複合体(「FAS」)によって触媒され、8個の二炭素断片(アセチル−CoAからのアセチル基)の縮合によって起き、炭素16個の飽和脂肪酸であるパルミチン酸が形成する。より具体的にはFASは以下が関与する7つの一連の反応を触媒する(スミス(Smith)S.著、「FASEB J.」、8(15):1248〜59頁(1994年))。
1.アセチル−CoAおよびマロニル−CoAが、FASのアシルキャリアペプチド(ACP)に転移される。次にアセチル基がマロニル基に転移されて、β−ケトブチリル−ACPが形成し、CO2が放出される。
2.β−ケトブチリル−ACPが還元(β−ケトアシル還元酵素による)および脱水(β−ヒドロキシアシルデヒドラターゼによる)を被り、trans−単不飽和脂肪アシル基が形成する。
3.二重結合がNADPHによって還元され、最初のものよりも炭素が2個分長い飽和脂肪−アシル基が生じる。次に新しいマロニル基と縮合して、延長プロセスを繰り返すブチリル基の能力が再生する。
4.脂肪アシル基が炭素16個の長さになったら、チオエステラーゼ活性がそれを加水分解して遊離パルミチン酸(16:0)を放出する。
パルミチン酸合成がサイトゾル内で起きるのに対し、より長鎖の飽和および不飽和脂肪酸誘導体の形成はミトコンドリアおよび小胞体(ER)の双方で起き、そこではERが支配的なシステムである。具体的にはエロンガーゼおよびデサチュラーゼの作用を通じて、パルミチン酸(16:0)は、ステアリン酸(18:0)、パルミトレイン酸(16:1)、およびオレイン酸(18:1)の前駆物質である。例えばパルミチン酸およびステアリン酸は、Δ9デサチュラーゼの作用によって、それらの不飽和誘導体であるパルミトレイン酸(16:1)およびオレイン酸(18:1)にそれぞれ変換される。
TAG(脂肪酸の主要な貯蔵単位)は、以下が関与する一連の反応によって形成される。1.)リゾホスファチジン酸を生じる、アシルトランスフェラーゼによるアシル−CoAの1分子のグリセロール−3−リン酸塩へのエステル化、2.)1,2−ジアシルグリセロールリン酸塩(一般にホスファチジン酸として同定される)を生じる、アシルトランスフェラーゼによるアシル−CoAの第2の分子のエステル化、3.)1,2−ジアシルグリセロール(DAG)を生じる、ホスファチジン酸ホスファターゼによるリン酸塩の除去、および4.)TAGを形成する、別のアシルトランスフェラーゼの作用による第3の脂肪酸の付加(例えばPDAT、DGAT1またはDGAT2)(図1)。
飽和および不飽和脂肪酸および短鎖および長鎖脂肪酸をはじめとする、幅広い脂肪酸をTAGに組み込むことができる。アシルトランスフェラーゼ(例えばDAG ATまたはPDAT)によってTAGに組み込むことができる脂肪酸の制限を意図しない例のいくつかとしては、カプリン(10:0)、ラウリン(12:0)、ミリスチン(14:0)、パルミチン(16:0)、パルミトレイン(16:1)、ステアリン(18:0)、オレイン(18:1)、バクセン(18:1)、リノール(18:2)、エレオステアリン(18:3)、γ―リノレン(18:3)、α−リノレン(18:3)、ステアリドン(18:4)、アラキジン(20:0)、エイコサジエン(20:2)、ジホモ−γ−リノール(20:3)、エイコサトリエン(20:3)、アラキドン(20:4)、エイコサテトラエン(20:4)、エイコサ−ペンタエン(20:5)、ベヘン(22:0)、ドコサ−ペンタエン(22:5)、ドコサ−ヘキサエン(22:6)、リグノセリン(24:0)、ネルボン(24:1)、セロチン(26:0)、およびモンタン(28:0)脂肪酸が挙げられる。本発明の好ましい実施態様では、TAGへのPUFAの組み込みが最も望ましい。
アシルトランスフェラーゼおよびTAG生合成の最終段階におけるそれらの役割
DGAT1をコードする遺伝子
歴史的に、(アシル−CoA基がアシル−CoAからDAGのsn−3位に転移してTAGを形成する、第3のアシルトランスフェラーゼ反応に関与する)DGAT1が、特異的にTAG合成に関与する唯一の酵素と考えられていた。この酵素は、アシル−CoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)と相同的であることが知られていた。しかし最近の研究から、ACAT遺伝子ファミリーとは関係のないDAGアシルトランスフェラーゼの新しいファミリー(DAG AT)が同定されている。したがって命名法は今や、ACAT遺伝子ファミリーに関連性があるDAG AT酵素(DGAT1ファミリー)と、関連性のないもの(DGAT2ファミリー)との間で区別する(ラルディザバル(Lardizabal)ら著、「J.Biol.Chem.」276(42):38862〜28869頁(2001年))。
DGAT1酵素をコードする多くの遺伝子が遺伝的手段を通じて同定されており、これらの遺伝子のいくつかのDNA配列は公的に入手できる。例えばいくつかの制限を意図しない例としては、以下のジェンバンク登録番号が挙げられる。AY445635(オリブ)、AF384160(マウス)、NM_053437(ドブネズミ)、NM_174693(ウシ)、AY116586(ブタ)、AY327327およびAY327326(トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii))、AF298815(シソ(Perilla frutescens))、およびAF164434(アブラナ(Brassica napus))。さらに特許文献は、DGAT1遺伝子の多くのさらに別のDNA配列(および/または上のいくつかの遺伝子に関連した詳細とそれらの単離法)を提供する。例えば米国特許第6,100,077号明細書(ヒト)、米国特許第6,552,250号明細書(アブラナ属(Brassica))、米国特許第6、344,548号明細書(ヒト、マウス、アラビドプシス(Arabidopsis))、米国特許出願公開第2004/0088759A1号明細書(植物)、およびファレーゼ(Farese)らの米国特許出願公開第2004/0078836A1号明細書を参照されたい。
DGAT2をコードする遺伝子
DGAT2ファミリーのメンバーは、全ての主要な真核生物門(真菌、植物、動物、および基底真核生物)に存在するようである。したがってDGAT2酵素をコードする多くの遺伝子が遺伝的手段を通じて同定されており、これらの遺伝子のいくつかのDNA配列は公的に入手できる。例えばいくつかの制限を意図しない例としては、以下のジェンバンク登録番号が挙げられる。NC_001147(遺伝子座NP_014888(サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)))、NM_012079(ヒト)、NM_127503、AF051849およびAJ238008(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、NM_026384、NM_010046およびAB057816(マウス)、AY093657(ブタ)、AB062762(ラット)、AF221132(エレガンス線虫(Caenorhabditis elegans))、AF391089およびAF391090(クサレケカビ・ラマニアナ(Mortierella ramanniana))、AF129003(タバコ(Nicotiana tabacum))、そしてAF251794およびAF164434(アブラナ(Brassica napus))。さらに特許文献は、DGAT2遺伝子の多くのさらに別のDNA配列(および/または上のいくつかの遺伝子に関連した詳細とそれらの単離法)を提供する。例えばケーシズ(Cases)らの米国特許出願公開第2003/124126号明細書、バナーズ(Banas)らの国際公開第2001/034814号パンフレット、およびラルディザバル(Lardizabal)らの米国特許出願公開第2003/115632号明細書、米国特許出願公開第2003/0028923号明細書、および米国特許出願公開第2004/0107459号明細書を参照されたい。ラルディサバル(Lardizabal)らの研究は、例えばクサレケカビ・ラマニアナ(Mortierella ramanniana)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、オオムギ(Hordeum vulgare)、トウモロコシ(Zea mays)、ダイズ(Glycine max)、コムギ(Triticum aestivum)、ショウジョウバエ(Drosophila)、ヒト(Homo sapiens)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、およびシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)からのDGAT2のDNA配列を含む。
ごく最近では、油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からのDGAT2酵素が、同時係属米国特許出願第10/882760号明細書で単離され、特性決定されている(その内容全体を参照によって本願明細書に引用する)。簡単に述べると、Y.リポリティカ(lipolytica)からの部分的な推定上DGAT2 DNA断片のクローニングに続いて、内在性Y.リポリティカ(lipolytica)遺伝子の標的を定めた中断を実施して、断片のアイデンティティを試験した。中断された株中のより低い含油量は、天然DGAT2活性が排除されたことを裏付けた。引き続いて全長Y.リポリティカ(lipolytica)DGAT2遺伝子(2119bp、配列番号1)をアセンブルし、それは次の3つの入れ子になった読み取り枠を含んだ。1.)ORF1:配列番号2(514個のアミノ酸残基)によってコードされるタンパク質に対応する、配列番号1のヌクレオチド+291〜+1835、2.)ORF2:配列番号3(1380個の塩基)と、配列番号4(459個のアミノ酸残基)によってコードされるタンパク質とに対応する、配列番号1のヌクレオチド+456〜+1835、および3.)ORF3:配列番号5(1068個の塩基)と、配列番号6(355個のアミノ酸残基)によってコードされるタンパク質とに対応する、配列番号1のヌクレオチド+768〜+1835。
PDATをコードする遺伝子
ダルキビスト(Dahlqvist)ら(「Proc.Nat.Acad.Sci.」(USA)97:6487〜6492頁(2000年))およびエルカース(Oelkers)ら(「J.Biol.Chem.」275:15609〜15612頁(2000年))によって最近発見されたように、TAG合成はアシル−CoA−非依存性PDAT酵素を通じてアシル−CoAの不在下でもまた起きることができる。具体的にはPDATがホスファチジルコリン基質のsn−2位からアシル基を除去して、DAGのsn−3位に転移させてTAGを生じる。そしてPDATの機能はDGAT2程にはよく特性決定されていないが、PDATは、いくつかの油料種子においてリン脂質から「異常な」脂肪酸を除去する上で主要な役割を果たすと見なされている(バナーズ(Banas),A.ら著、Biochem.Soc.Trans.28(6):703〜705頁(2000年))。
PDATは、タンパク質のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)ファミリーに構造的に関連している。PDAT酵素をコードするいくつかの遺伝子が遺伝的手段を通じて同定されており、これらの遺伝子のいくつかのDNA配列は公的に入手できる。例えばいくつかの制限を意図しない例としては、以下のジェンバンク登録番号が挙げられる。P40345(サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae))、O94680およびNP_596330(シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、およびNP_190069およびAB006704[gi:2351069](シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))。さらに特許文献は、PDAT遺伝子のさらに別の多くのDNA配列(および/または上のいくつかの遺伝子に関連した詳細とそれらの単離法)を提供する。例えばダルキビスト(Dahlqvist)らの国際公開第2000/060095号パンフレットを参照されたい。
そして本願明細書の開示と特に関連深いことに、DGAT2について上述したのと同様にして、同時係属米国特許出願第10/882760号明細書において油性酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からのPDAT酵素が単離され、特性決定されている。ここでも推定上のPDAT遺伝子に中断を有する株のより低い含油量は、天然PDAT活性の排除を裏付けた。引き続いて全長Y.リポリティカ(lipolytica)PDAT遺伝子(2326bp、配列番号7)がアセンブルされた。
ARE2をコードする遺伝子
酵母中のステロールのエステル化プロセスは、最初にH.ヤン(Yang)ら(「Science.」272(5266):1353〜1356頁(1996年))によって研究され、そこでは2つの遺伝子(ARE1およびARE2)が、コレステロールをエステル化させるACAT関連酵素をコードすることが発見された。わずか2、3のARE2遺伝子のDNA配列が公的に入手できる。例えばジェンバンク登録番号Q876L2(サッカロミセスバヤヌ(Saccharomyces bayanus))、P53629(S.セレヴィシエ(S.cerevisiae))、およびQ10269(シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))を参照されたい。
PDAT、DGAT1、DGAT2、およびARE2間の相互作用
S.セレヴィシエ(S.cerevisiae)では、4つの遺伝子(すなわちARE1、ARE2、DGA1[DGAT2をコードする]、およびLRO1[PDATをコードする])が油生合成に寄与する。PDATおよびDGAT2は、油生合成のおよそ95%に関与する(サンダガー(Sandager),L.ら著、「J.Biol.Chem.」277(8):6478〜6482頁(2002年))、エルカース(Oelkers)ら(「J.Biol.Chem.」277:8877頁(2002年))。
意外にも、同時係属米国特許出願第10/882760号明細書で述べられる研究によれば、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中では、PDATおよびDGAT2は、油生合成に部分的にのみ関与するように見える。したがってTAG形成において、少なくとも1つの他のDAG ATが役割を果たさなくてはならないのは明らかである。本願明細書で述べられるように、酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中の油生合成はPDAT、DGAT1、およびDGAT2の活性を必要とし、一方ARE2は油生合成のさらにマイナーな貢献要素であるかもしれない。これはDGAT2およびPDATのみが主要なDAG ATである、S.セレヴィシエ(S.cerevisiae)中で油生合成に関与する酵素とは好対照である。
ω−3およびω−6多価不飽和脂肪酸の生合成
LAをGLA、DGLA、およびARA(ω−6経路)に、ALAをSTA、ETA、EPA、DPA、およびDHA(ω−3経路)に変換する代謝プロセスは、2−炭素単位の付加を通じた炭素鎖の延長と、二重結合の添加を通じた分子の不飽和化を伴う(図2)。これは一連の不飽和化および延長酵素を必要とする。具体的にはオレイン酸は、Δ12デサチュラーゼの作用によって、最初のω−6脂肪酸であるLA(18:2)に変換される。引き続くω−6脂肪酸は、次のようにして生成される。1.)LAがΔ6デサチュラーゼの作用によってGLAに変換され、2.)GLAがエロンガーゼの作用によってDGLAに変換され、3.)DGLAがΔ5デサチュラーゼの作用によってARAに変換される。同様にしてリノール酸(LA)は、Δ15デサチュラーゼの作用によって、最初のω−3脂肪酸であるALAに変換される。引き続くω−3脂肪酸は、ω−6脂肪酸と類似した一連のステップで生成される。具体的には1.)ALAがΔ6デサチュラーゼ活性によってSTAに変換され、2.)STAがエロンガーゼ活性によってETAに変換され、3.)ETAがΔ5デサチュラーゼ活性によってEPAに変換される。代案としてはETAおよびEPAは、Δ17デサチュラーゼ活性によって、DGLAおよびARAからそれぞれ生成できる。EPAは、エロンガーゼおよびΔ4デサチュラーゼ活性によってDHAにさらに変換できる。
代案の実施態様では、Δ9エロンガーゼがLAおよびALAの、EDAおよびETrAへの変換をそれぞれ触媒できる。次にΔ8デサチュラーゼが、これらの生成物をDGLAおよびETAにそれぞれ変換する。
藻類、細菌、カビ、真菌および酵母菌をはじめとする多くの微生物は、通常の細胞代謝経路内でPUFAおよびω脂肪酸を合成できる。特に良く研究されているのは、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)属の種であるスキゾキトリウム・アグレガトム(Schizochytrium aggregatm)、およびクサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)をはじめとする真菌である。さらに多くの渦鞭毛藻類(渦鞭毛藻綱)は、高濃度のPUFAを自然に生成する。したがってPUFA生成に関与する多様なデサチュラーゼおよびエロンガーゼ遺伝子が遺伝的手段を通じて同定されており、これらのいくつかの遺伝子のDNA配列は公的に入手できる(制限を意図しない例は次のとおり)。AY131238、Y055118、AY055117、AF296076、AF007561、L11421、NM_031344、AF465283、AF465281、AF110510、AF465282、AF419296、AB052086、AJ250735、AF126799、AF126798(Δ6デサチュラーゼ)、AF199596、AF226273、AF320509、AB072976、AF489588、AJ510244、AF419297、AF07879、AF067654、AB022097(Δ5デサチュラーゼ)、AF489589.1、AY332747(Δ4脂肪酸デサチュラーゼ)、AAG36933、AF110509、AB020033、AAL13300、AF417244、AF161219、AY332747、AAG36933、AF110509、AB020033、AAL13300、AF417244、AF161219、X86736、AF240777、AB007640、AB075526、AP002063(Δ12デサチュラーゼ)、NP_441622、BAA18302、BAA02924、AAL36934(Δ15デサチュラーゼ)、AF338466、AF438199、E11368、E11367、D83185、U90417、AF085500、AY504633、NM_069854、AF230693(Δ9デサチュラーゼ)、およびAX464731、NM_119617、NM_134255、NM_134383、NM_134382、NM_068396、NM_068392、NM_070713、NM_068746、NM_064685(エロンガーゼ)。
さらに特許文献は、PUFA生成に関与する多くのさらに別の遺伝子のDNA配列(および/または上の遺伝子のいくつかに関する詳細およびそれらの単離方法)を提供する。例えば米国特許第5,968,809号明細書(Δ6デサチュラーゼ)、米国特許第5,972,664号明細書および米国特許第6,075,183号明細書(Δ5デサチュラーゼ)、国際公開第91/13972号パンフレットおよび米国特許第5,057,419号明細書(Δ9デサチュラーゼ)、国際公開第93/11245号パンフレット(Δ15デサチュラーゼ)、国際公開第94/11516号パンフレット、米国特許第5,443,974号明細書および国際公開第03/099216号パンフレット(Δ12デサチュラーゼ)、国際公開第00/12720号パンフレットおよび米国特許出願公開第2002/0139974 A1号明細書(エロンガーゼ)、米国特許出願公開第2003/0196217 A1号明細書(Δ17デサチュラーゼ)、国際公開第00/34439号パンフレット(Δ8デサチュラーゼ)、および国際公開第02/090493号パンフレット(Δ4デサチュラーゼ)を参照されたい。これらの各特許および出願は、その内容全体を参照によって本願明細書に引用する。
宿主細胞、基質の入手可能性、および所望の最終生成物次第で、いくつかのデサチュラーゼおよびエロンガーゼが、PUFAの生産において使用する上で重要である。デサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有する特定のポリペプチドを選択する上での考察としては、以下が挙げられる。1)ポリペプチドの基質特異性、2)ポリペプチドまたはその構成要素が律速酵素であるかどうか、3)所望のPUFAの合成のためにデサチュラーゼまたはエロンガーゼが必須であるかどうか、4)および/またはポリペプチドが必要とする補助因子。発現するポリペプチドは、好ましくはその宿主細胞中における位置の生化学的環境と適合性のパラメーターを有する。例えばポリペプチドは、宿主細胞内で基質獲得のためにその他の酵素と競争しなくてはならないかもしれない。したがって特定の宿主細胞においてPUFA生成を修正する特定のポリペプチドの適性を判定する上で、ポリペプチドのKMおよび特異的活性分析が考慮される。特定の宿主細胞で使用されるポリペプチドは、意図される宿主細胞中に存在する生化学的条件下で機能できるものであるが、その他の点では所望の脂肪酸基質を変性できる、デサチュラーゼ活性またはエロンガーゼを有するあらゆるポリペプチドであることができる。
DGAT1アシルトランスフェラーゼの配列同定
油性酵母菌(例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))における異種発現のために使用できる、DGAT1(前出)をコードするいくつかの遺伝子が利用できるにもかかわらず、可能なら、異種(または「外来性」)酵素よりも天然酵素の発現の方が好ましいことがある。この選択の理由は次のようである。1.)天然酵素は細胞中のその他の酵素およびタンパク質との相互作用のために最適化されており、2.)異種遺伝子が、宿主生物体において同一コドン選択をすることはありそうにない。宿主生物体の天然DGAT1の配列の知識はまた、標的を定めた中断による相同染色体の遺伝子の中断を容易にする。そして本発明が示したように、生物体中でTAG合成ができるようにするアシルトランスフェラーゼ遺伝子の完全相補体の理解は、宿主生物体が多様なやり方で生成する含油量を容易に操作できるようにする。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DGAT1ヌクレオチド塩基(配列番号13)および推定アミノ酸(配列番号14)配列と公共データベースとの比較は、低複雑性フィルターおよび次のパラメーターがあるBLASTP法によるアラインメントを使用して、最も類似した既知の配列が、本願明細書で報告するDGAT1のアミノ酸配列とアミノ酸526個の長さにわたり約55%同一であることを明らかにする。期待値=10、マトリックス=Blosum 62(アルシュール(Altschul)ら、「Nucleic Acids Res.」25:3389〜3402頁(1997年))。
クサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)DGAT1ヌクレオチド塩基(配列番号17)および推定アミノ酸(配列番号18)配列と公共データベースとの比較は、BLASTP法によるアラインメント(アルシュール(Altschul)ら、前出)を使用して、最も類似した既知の配列が、本願明細書で報告するDGAT1のアミノ酸配列とアミノ酸525個の長さにわたり約49%同一であることを明らかにする。さらにY.リポリティカ(lipolytica)DGAT1とM.アルピナ(alpina)DGAT1との比較は、2つのタンパク質が32.4%同一であることを明らかにする。
同様に、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)DGAT1アミノ酸(配列番号19)配列とヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DGAT1アミノ酸(配列番号14)との比較は、アミノ酸533個の長さにわたる約37%の同一性を明らかにする。ジベレラ・ゼアエ(Gibberella zeae)PH−1 DGAT1アミノ酸(配列番号20)配列とY.リポリティカ(lipolytica)DGAT1アミノ酸(配列番号14)との比較は、アミノ酸499個の長さにわたる約38.1%の同一性を明らかにする。マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)DGAT1アミノ酸(配列番号21)配列とY.リポリティカ(lipolytica)DGAT1アミノ酸(配列番号14)との比較は、アミノ酸503個の長さにわたる約36.2%同一性を明らかにし、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)DGAT1アミノ酸(配列番号22)配列とY.リポリティカ(lipolytica)DGAT1アミノ酸(配列番号14)との比較は、アミノ酸458個の長さにわたる約41.7%同一性を明らかにする。
より好ましいDGAT1アミノ酸断片は、本願明細書の配列(すなわち配列番号14、18、19、20、21、22)と少なくとも約70%〜80%同一であり、85%〜90%同一の配列が特に適切であり、約95%同一の配列が最も好ましい。同様に本ORF(すなわち配列番号13および17)に対応する核酸配列をコードする好ましいDGAT1は、本願明細書で報告するDGAT1をコードする核酸配列と少なくとも約70%〜80%同一の活性タンパク質をコードするものであり、85%〜90%同一の配列が特に適切であり、約95%同一の配列が最も好ましい。
ARE2アシルトランスフェラーゼの配列同定
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ARE2ヌクレオチド塩基(配列番号15)および推定アミノ酸(配列番号16)配列と公共データベースとの比較は、低複雑性フィルターおよび次のパラメーターがあるBLASTP法によるアラインメントを使用して、最も類似した既知の配列が、アミノ酸543個の長さにわたり本願明細書で報告するARE2のアミノ酸配列と約44%同一であることを明らかにする。期待値=10、マトリックス=Blosum 62(アルシュール(Altschul)ら、「Nucleic Acids Res.」25:3389〜3402頁(1997年))。より好ましいARE2アミノ酸断片は、本願明細書の配列と少なくとも約70%〜80%同一であり、85%〜90%同一の配列が特に適切であり、約95%同一の配列が最も好ましい。同様に本ORFに対応する核酸配列をコードする好ましいARE2は、本願明細書で報告するARE2をコードする核酸配列と少なくとも約70%〜80%同一の活性タンパク質をコードするものであり、85%〜90%同一の配列が特に適切であり、約95%同一の配列が最も好ましい。
相同体の単離
本発明の各アシルトランスフェラーゼ核酸断片を使用して、同一のまたは他の微生物種からの相同的タンパクをコードする遺伝子を単離してもよい。配列依存プロトコルを使用した相同的遺伝子の単離は、技術分野で周知である。配列依存プロトコルの例としては以下が挙げられるが、これに限定されるものではない。1.)核酸ハイブリダイゼーション法、2.)核酸増幅技術の様々な使用で例示されるようなDNAおよびRNA増幅法[例えばマリス(Mullis)らに付与された米国特許第4,683,202号明細書のポリメラーゼ連鎖反応(PCR);タボール(Tabor),S.ら著、「Proc.Acad.Sci.USA」82;1074頁(1985年)のリガーゼ連鎖反応(LCR);または(ウォーカー(Walker)ら著、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、89、392頁(1992年)の連鎖置換増幅(SDA)]、および3.)相補性によるライブラリー構築およびスクリーニング法。
例えば本願明細書で述べるDGAT1およびARE2に類似したタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子は、当業者によく知られている方法を使用して、本核酸断片の全てまたは一部をDNAハイブリダイゼーションプローブとして使用して、あらゆる所望の酵母菌または真菌からライブラリーをスクリーニングして直接単離できる。本核酸配列に基づく特異的オリゴヌクレオチドプローブは、技術分野で既知の方法によってデザインおよび合成できる(マニアティス(Maniatis)、前出)。さらに当業者に既知の方法(例えばランダムプライマーDNA標識、ニック翻訳または末端標識技術)によって、配列全体を直接使用してDNAプローブを合成でき、または利用できる生体外(in vitro)転写システムを使用してRNAプローブを合成できる。さらに特異的プライマーをデザインして使用し、本配列の一部(または全長)を増幅できる。得られた増幅生成物を増幅反応中に直接標識し、または増幅反応後に標識して、適切なストリンジェンシー条件下でプローブとして使用し、完全長DNA断片を単離できる。
典型的にPCR−タイプ増幅技術では、プライマーは異なる配列を有し、互いに相補的でない。所望の試験条件次第で、プライマーの配列は、標的核酸の効率的かつ忠実な複製を提供するようにデザインされるべきである。PCRプライマーデザインの方法は技術分野で一般的であり、よく知られている。(K.E.デービス(Davis)編、「ヒトにおける遺伝病:実際的アプローチ(Human Genetic Diseases:A Practical Approach)」よりテイン(Thein)およびウォリス(Wallace)著、「遺伝的障害診断における特異的ハイブリダイゼーションプローブとしてのオリゴヌクレオチドの使用(The use of oligonucleotides as specific hybridization probes in the Diagnosis of Genetic Disorders)」(1986年)33〜50頁、IRL:ヘルンドン(Herndon),VA;およびホワイト(White),B.A.編、「分子生物学における方法(Methods in Molecular Biology」よりライクリック(Rychlik),W.著、「PCRプロトコル:最近の方法と応用(PCR Protocols:Current Methods and Applications)」(1993年)Vol.15、31〜39頁、Humania:ニュージャージー州トトワ(Totowa,NJ))。
一般にポリメラーゼ連鎖反応プロトコルにおいて、本配列の2本の短い断片を使用して、DNAまたはRNAからの相同遺伝子をコードするより長い核酸断片を増幅してもよい。またクローンされた核酸断片ライブラリーに対してポリメラーゼ連鎖反応を実施してもよく、そこでは1つのプライマーの配列が本核酸断片から誘導され、別のプライマーの配列は、微生物遺伝子をコードするmRNA前駆物質の3’末端のポリアデニル酸トラクトの存在を利用する。
代案としては第2のプライマー配列は、クローニングベクターから誘導される配列に基づいてもよい。例えば当業者は、RACEプロトコル(フローマン(Frohman)ら著、「PNAS USA」85:8998頁(1988年))に従って、PCRを使用して転写物の一点と3’または5’末端との間の領域のコピーを増幅し、cDNAを作り出すことができる。3’および5’方向を向いたプライマーは、本配列からデザインできる。例えばメリーランド州ゲイザーズバーグのBRL(BRL(Gaithersburg,MD))から市販される3’RACEまたは5’RACEシステムを使用して、特定の3’または5’cDNA断片を単離できる(オハラ(Ohara)ら著、PNAS USA 86:5673頁(1989年);ロー(Loh)ら著、「Science」243:217頁(1989年))。
代案としては相同体の同定のために、本DGAT1およびARE2配列をハイブリダイゼーション試薬として用いてもよい。核酸ハイブリダイゼーション試験の基本的構成要素には、プローブ、関心のある遺伝子または遺伝子断片を含有することが疑われるサンプル、および特定のハイブリダイゼーション法が含まれる。本発明のプローブは典型的に検出する核酸配列に相補である一本鎖核酸配列である。プローブは、検出される核酸配列と「ハイブリダイズ可能」である。プローブの長さは、5個の塩基から数万個の塩基の間で変動してもよく、実施される特定の試験に左右される。典型的に約15個の塩基から約30個の塩基のプローブ長が適切である。プローブ分子の一部のみが、検出される核酸配列に相補的であればよい。さらにプローブと標的配列との間の相補性は完璧でなくてもよい。ハイブリダイゼーションは不完全に相補である分子間でも生じ、その結果、ハイブリダイズした領域の特定塩基の一部は、適切な相補的塩基と対合形成しない。
ハイブリダイゼーション法についてはよく定義されている。典型的には、プローブおよびサンプルは、核酸ハイブリダイズ可能な条件下で混合されなくてはならない。これは適切な濃度および温度条件下において、無機または有機塩存在下で、プローブとサンプルを接触させることを伴う。プローブとサンプル核酸の間であらゆる可能なハイブリダイゼーションが起きるように、プローブおよびサンプル核酸は、十分長い時間接触しなくてはならない。混合物中のプローブまたは標的濃度が、ハイブリダイゼーションが生じるのに必要な時間を決定する。プローブまたは標的濃度が高いほど、必要なハイブリダイゼーションインキュベーション時間は短くなる。場合により、カオトロピック剤を添加してもよい。カオトロピック剤は、ヌクレアーゼ活性を阻害することによって核酸を安定化させる。さらにカオトロピック剤は、室温において短いオリゴヌクレオチドプローブの高感度でストリンジェントなハイブリダイズが可能になる(ヴァン・ネス(Van Ness)およびチェン(Chen)著、「Nucl.Acids Res.」19:5143〜5151頁(1991年))。適切なカオトロピック剤としては、特に塩化グアニジニウム、グアニジニウムチオシアネート、ナトリウムチオシアネート、リチウムテトラクロロ酢酸、過塩素酸ナトリウム、ルビジウムテトラクロロ酢酸、ヨウ化カリウム、およびセシウムトリフルオロ酢酸が挙げられる。典型的にカオトロピック剤は、約3Mの最終濃度で存在する。所望するならば、ハイブリダイゼーション混合物にホルムアミドを典型的に30〜50%(v/v)で添加できる。
様々なハイブリダイゼーション溶液を用いることができる。それらは典型的に約20〜60容量%、好ましくは30容量%の極性有機溶剤からなる。一般的なハイブリダイゼーション溶液は、約30〜50%v/vのホルムアミドと、約0.15〜1Mの塩化ナトリウムと、(例えばクエン酸ナトリウム、トリス−HCI、PIPESまたはHEPES(pH範囲約6〜9)などの)約0.05〜0.1Mの緩衝液と、(例えばドデシル硫酸ナトリウムなどの)約0.05〜0.2%の洗剤、または0.5〜20mMのEDTA、ファーマシア(Pharmacia Inc.)からのFICOLL(約300〜500kdal)、ポリビニルピロリドン(約250〜500kdal)、および血清アルブミンを用いる。また典型的なハイブリダイゼーション溶液には、約0.1〜5mg/mLの非標識の担体核酸、(例えば仔ウシ胸腺またはサケ精子DNA、または酵母菌RNAなどの)核酸DNA断片、および場合により約0.5〜2%重量/容積のグリシンも含まれる。様々な(例えばポリエチレングリコールなどの)極性水溶性または水性膨張剤、(例えばポリアクリレートまたはポリメチルアクリレートなどの)陰イオンポリマー、(例えば硫酸デキストランなどの)陰イオン糖類ポリマーをはじめとする容積排除剤などのその他の添加剤を含めてもよい。
核酸ハイブリダイゼーションは多様なアッセイ型式に適合できる。最も適切なもの1つは、サンドイッチアッセイ型式である。サンドイッチアッセイは、特に非変性条件下でのハイブリダイゼーションに適合できる。サンドイッチ−タイプアッセイの主要構成要素は個体担体である。個体担体はそれに吸着され、あるいはそれと共有結合的に結合する、未標識で配列の一部と相補である固定核酸プローブを有する。サンドイッチタイプのアッセイの主要構成要素は、固体担体である。固体担体は、未標識で配列の一部と相補的である固定化核酸プローブをそれに吸着し、またはそれと共有結合する。
本ヌクレオチドおよび推定されたアミノ酸配列が利用できれば、DNA発現ライブラリーの免疫学的スクリーニングが容易になる。本アミノ酸配列の一部をなす合成ペプチドを合成してもよい。これらのペプチドを使用して、アミノ酸配列を含んでなるペプチドまたはタンパク質に対して特異性があるポリクローナルまたはモノクローナル抗体を生成するように、動物を免疫できる。次にこれらの抗体を使用してDNA発現ライブラリーをスクリーニングし、関心のある完全長DNAクローンを単離できる(レーナー(Lerner)R.A.、「Adv.Immunol.」36:1頁(1984年)、マニアティス(Maniatis)、前出)。
改善された異種発現のための遺伝子最適化
特定宿主生物内で所望される特定のTAG組成物次第で、本アシルトランスフェラーゼおよび/またはPUFA生合成経路酵素の発現を修正して、それぞれの最適変換効率を達成することが望ましいかもしれない。このように多様な技術を使用して、代案の宿主における関心のあるポリペプチドの発現を改善および/または最適化できる。このような2つの技術としては、コドン最適化および遺伝子の変異誘発が挙げられる。
コドン最適化
当業者によって理解されるように、修正ポリペプチドが代案の宿主に好まれるコドンを使用するように、異種宿主中で発現される特定ポリペプチドをコードするコドンの一部を修正するのは有用なことが多い。宿主が好むコドンの使用は、ポリペプチドをコードする異種遺伝子の発現を実質的に増強できる。
一般に宿主が好むコドンは、タンパク質(好ましくは最大量で発現するもの)中でのコドン使用を調べ、いずれのコドンが最高頻度で使用されるかを判定することにより、関心のある特定の宿主種内で判定できる。したがって宿主種で好まれるコドンを使用して、アシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドのコード配列を全部または部分的に合成できる。DNAの全部(または一部)はまた、転写mRNA中に存在するあらゆる不安定化配列または二次構造領域を除去するように合成できる。DNAの全部(または一部)はまた、塩基組成を所望の宿主細胞中でより好まれるものに改変するように合成できる。
したがって例えば酵素の基質特異性が、本願明細書で開示されるY.リポリティカ(lipolytica)DGAT1とは異なる場合、DGAT1活性を有するクサレケカビ(Mortierella)ポリペプチドをコードするコドンの一部を修正して、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)遺伝子の発現を増強することが望ましいかもしれない。この特定の生物体(すなわちY.リポリティカ(lipolytica))に関するコドン使用頻度プロフィール、および「ATG」翻訳開始コドン周囲の共通配列は同時係属米国特許出願第10/840478号明細書(その内容全体を参照によって本願明細書に引用する)で教示され、同様にY.リポリティカ(lipolytica)中での発現のために最適化された遺伝子の迅速な合成のための方法もまた提供される。
変異誘発
配列を合成し、配列を一緒にまとめる方法は、文献においてよく確立されている。例えば生体外(in vitro)での変異誘発および選択、部位特異的変異誘発、誤りがちなPCR(メルニコフ(Melnikov)ら著、「Nucleic Acids Research」、27(4):1056〜1062頁(1999年2月15日))、「遺伝子シャフリング」またはその他の手段を用いて、天然由来アシルトランスフェラーゼの変異を得ることができる。これによって生体内(in vivo)でアシルトランスフェラーゼ活性を有し、宿主細胞中での機能により望ましい物理的および動力学的パラメーター(例えばより長い半減期またはより高速の脂肪酸からのTAG合成)がある、ポリペプチドの生成が可能になる。
所望ならば、酵素活性に重要なDGAT1またはARE2ポリペプチドの領域は、ルーチンの変異誘発、得られる変異体ポリペプチドの発現、およびそれらの活性測定を通じて判定できる。変異体は、欠失、挿入、および点変異、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。典型的な機能分析は、欠失変異を誘発して機能に必要なタンパク質のN−およびC−末端限界を判定するのに始まって、次に内部欠損、挿入または点変異体を作り出し、機能に必要な領域をさらに判定する。カセット変異誘発または完全合成などのその他の技術もまた使用できる。例えば欠失変異誘発は、エキソヌクレアーゼを使用して5’または3’コーディング領域を逐次除去して達成される。このような技術のためのキットが入手できる。欠失後、5’または3’欠失の後ろの欠失コーディング領域に、開始または停止コドンを含有するオリゴヌクレオチドをそれぞれライゲーションして、コーディング領域を完成させる。代案としては部位特異的変異誘発、変異原性PCRをはじめとする多様な方法によって、または既存の制限部位における消化DNA上へのライゲーションによって、開始または停止コドンをコードするオリゴヌクレオチドをコーディング領域に挿入する。内部欠損は、部位特異的変異誘発または変異原性PCRを通じた変異原性プライマーの使用によって、DNA中の既存の制限部位の使用をはじめとする多様な方法を通じて同様に作り出せる。挿入は、リンカー−スキャニング変異誘発、部位特異的変異誘発または変異原性PCRなどの方法を通じて作り出される。点変異は、部位特異的変異誘発または変異原性PCRなどの技術を通じて作り出される。
化学変異誘発もまた、活性に重要なアシルトランスフェラーゼポリペプチドの領域を同定するために使用できる。変異コンストラクトが発現し、得られる改変タンパク質がアシルトランスフェラーゼとして機能する能力をアッセイする。このような構造−機能分析は、どの領域が欠失してもよいか、どの領域が挿入を許容するか、どの点変異によって変異体タンパク質が、天然アシルトランスフェラーゼと実質的に同じように機能できるようにするかを判定できる。
本願明細書で述べるDGAT1およびARE2遺伝子から誘導されるこのような全ての変異体タンパク質、およびそれらをコードするヌクレオチド配列は、本発明の範囲内である。
脂肪酸およびトリアシルグリセロールの微生物による生成
微生物による脂肪酸およびTAGの生成には、魚または植物などの天然供給源からの精製に比べて、いくつかの利点がある。例えば、
1.)多くの微生物は、油組成が高等生物のものと比べてはるかに単純であることが知られており、所望の構成要素の精製を容易にする。
2.)微生物による生成には、天候および食物供給などの外的変数によって引き起こされるばらつきがない。
3.)微生物的に生成された油は、実質的に環境汚染物質による混入がない。
4.)微生物による油生成は、培養条件を制御することで、特に微生物的発現酵素のための特定基質を提供することで、または化合物の添加または遺伝子工学的アプローチによって望まれない生化学的経路を抑制することで操作できる。
微生物は、特定用途があるかもしれない特定形態で脂肪酸を提供できるので、特にω−3および/またはω−6脂肪酸、およびこれらのPUFAを含有するTAGの生産に関して、さらに別の利点がある。また組み換え微生物は、宿主中に新しい生合成経路を提供することで、あるいは所望されない経路を抑制することで、所望のPUFAまたはその共役形態のレベルを増大させ、所望されないPUFAのレベルを減少させることにより、天然由来微生物脂肪酸プロフィールを変更する能力を提供する。
したがって本アシルトランスフェラーゼ遺伝子の配列の知識は、油性酵母菌、特にヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)において脂肪酸生合成および蓄積を操作するのに有用であろう。これは脂肪酸またはTAG生合成経路内における代謝エンジニアリング、または炭素から脂肪酸への生合成経路に寄与する経路の追加的操作を必要とするかもしれない。生化学的経路を操作するのに有用な方法は、当業者によく知られている。
油性酵母菌における脂肪酸合成および油蓄積に影響する遺伝子および生合成経路を上方制御する代謝エンジニアリング
適切なプロモーターの制御下における、本願明細書で述べるアシルトランスフェラーゼをコードするキメラ遺伝子の導入からは、脂肪酸から貯蔵TAGへの転移の増大がもたらされることが予期される。したがって本発明は、脂肪酸を生成する形質転換された油性酵母菌宿主細胞において、脂肪酸がTAGプールに転移するように、本発明の少なくとも1つのアシルトランスフェラーゼを発現するステップを含んでなる、油性酵母菌のTAG含量の増大方法を包含する。
アシルトランスフェラーゼ遺伝子(例えばDGAT1、ARE2)の追加的コピーを宿主に導入して、脂肪酸からTAG画分への転移を増大させてもよい。遺伝子の発現はまた、mRNAまたはコードされたタンパク質のいずれかから不安定化配列を除去/消去することで、または安定化配列をmRNAに追加することで、(制御されたまたは構成的な)より強力なプロモーターの使用を通じて発現増大を引き起こして、転写レベルで増大できる(米国特許第4,910,141号明細書)。異種遺伝子の発現を増大させるさらに別のアプローチは、選択された宿主微生物中において、天然遺伝子中のコドンを最適の遺伝子発現のためのコドンで置換することにより、コードされたmRNAの翻訳効率を増大させることである。
ω−3および/またはω−6脂肪酸生合成に必要な各酵素をコードする発現カセットを生物体に導入することが可能であるため、1つの具体的実施態様では、本発明は、油性酵母菌においてTAGのω−3および/またはω−6脂肪酸含量の増大方法を包含する(これらの生物体において天然に生成されるPUFAは、18:2(すなわちLA)、およびもっとまれには18:3(すなわちALA)脂肪酸に限定されるため)。したがって方法は、
a)機能性ω−3/ω−6脂肪酸生合成経路および少なくとも1つの本発明のアシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を有する、形質転換した油性酵母菌宿主細胞を準備し、
b)発酵性炭素基質の存在下でステップ(a)の酵母菌細胞を生育させることで、ω−3/ω−6脂肪酸生合成経路の遺伝子およびアシルトランスフェラーゼが発現することにより、ω−3および/またはω−6脂肪酸が生成し、それによってω−3および/またはω−6脂肪酸がTAGに転移するステップ
を含んでなる。
脂肪酸基質、および宿主細胞中に形質転換されるω−3/ω−6脂肪酸生合成経路の遺伝子次第で、(TAGへの転移に先だって)多様なPUFA生成物が生成できる。したがって所望の脂肪酸生成物の生成は、直接(脂肪酸基質が中間ステップまたは経路中間体なしに、所望の脂肪酸生成物に直接変換する)、または間接的に(一連の反応が起きて所望のPUFAを生成するように、PUFA生合成経路をコードする複数の遺伝子を組み合わせて使用してもよい)起きることができる。具体的には例えばEPAの過剰生産のために、Δ12デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、エロンガーゼ、Δ5デサチュラーゼ、およびΔ17デサチュラーゼを含んでなる発現カセットで、油性酵母菌を形質転換することが望ましいかもしれない。当業者にはよく知られているように、本願明細書で述べるアシルトランスフェラーゼと共に、宿主において次の様々なその他の酵素活性の組み合わせを発現することが有用かもしれない。Δ15デサチュラーゼ、Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、Δ9デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼ(図2参照)。特定発現カセット内に含まれる特定遺伝子は、宿主細胞(およびそのPUFAプロフィールおよび/またはデサチュラーゼプロフィール)、基質の利用可能性、および所望の最終生成物に左右される。
したがって本発明の文脈で、上述のいずれか1つの方法によって、TAG生合成経路の発現を調節することが有用かもしれない。例えば本発明は、脂肪酸生合成経路において重要な酵素をコードする遺伝子を提供し、TAGの貯蔵をもたらす。これらの遺伝子は、DGAT1およびARE2酵素をコードする。宿主生物体の代謝エンジニアリングの様々な手段を使用して、油性酵母菌におけるこれらの遺伝子の発現レベルを修正し、TAGの生産および蓄積を最大化することが特に有用であろう。好ましい実施態様では、ω−3/ω−6生合成遺伝子の発現と組み合わせた、これらの遺伝子の発現レベルの修正を使用して、TAGプールにおける好ましいPUFAの生産および蓄積を最大化できる。
油性酵母菌における脂肪酸合成および油蓄積に影響する望ましくない遺伝子および生合成経路を下方制御するための代謝エンジニアリング
実施態様によっては、本願明細書で述べる完全な配列、これらの完全な配列の相補体、それらの配列のかなりの部分、それから誘導されるコドン最適化アシルトランスフェラーゼ、および実質的にそれと相同である配列に基づいて、宿主生物体の天然DGAT1および/またはARE2を中断させ、または不活性化することが有用かもしれない。
遺伝子中断では、そのコード配列を妨害し、それによって遺伝子を機能的に不活性化するために、中断させたい構造的遺伝子中に外来DNA断片(典型的に選択可能マーカー遺伝子)を挿入して中断させる。中断カセットの宿主細胞中への形質転換は、相同的組み換えによって、機能的天然遺伝子の非機能的中断遺伝子による置換をもたらす(例えばハミルトン(Hamilton)ら著、「J.Bacteriol.」171:4617〜4622頁(1989年);バルバス(Balbas)ら著、「Genes」、136:211〜213頁(1993年);ゲルデナー(Gueldener)ら著、「Nucleic Acid Res.」24:2519〜2524頁(1996年);およびスミス(Smith)ら著、「Methods Mol.Cell.Biol.」5:270〜277頁(1996年)参照)。
アンチセンス技術は、標的遺伝子配列が既知の場合に遺伝子を下方制御する別の方法である。これを達成するために、所望の遺伝子からの核酸セグメントをクローンして、RNAのアンチセンス鎖が転写されるようにプロモーターに作動可能に連結する。次にこのコンストラクトを宿主細胞に導入し、RNAのアンチセンス鎖を生成する。アンチセンスRNAは、関心のあるタンパク質をエンコードするmRNAの蓄積を防止することで、遺伝子発現を阻害する。当業者は特定遺伝子の発現を低下させるために、アンチセンス技術の使用に特別な考慮が伴うことを理解する。例えばアンチセンス遺伝子の適切な発現レベルは、当業者には既知の異なる調節因子を使用した、異なるキメラ遺伝子の使用を必要とするかもしれない。
配列が既知の場合、標的を定めた遺伝子中断およびアンチセンス技術が遺伝子を下方制御する効果的手段を提供するが、配列ベースではないその他のより特異性が低い方法が開発されている。例えば細胞をUV放射線に暴露して、次に所望の表現型についてスクリーンしてもよい。変異体を作り出すために、化学薬品による変異誘発もまた効果的であり、一般に使用される物質としては、非複製DNAに影響する化学物質(例えばHNO2およびNH2OH)、ならびに複製DNAに影響する薬剤(例えばフレームシフト変異を引き起こすことで注目に値するアクリジン染料)が挙げられる。放射線または化学薬品を使用して変異体を作り出す具体的方法は、技術分野でよく実証されている。例えばトーマスD.ブロック(Thomas D.Brock)著、「バイオテクノロジー:工業微生物学テキストブック(Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology)第2版(1989年)「Sinauer Associates」:マサチューセッツ州サンダーランド(Sunderland,MA)、またはデシュパンデ,ムカンド(Deshpande,Mukund)V.著、「Appl.Biochem.Biotechnol.」、36:227頁(1992年)を参照されたい。
別の非特異的遺伝子中断法は、転移因子またはトランスポゾンの使用である。トランスポゾンは、DNAに無作為に挿入される遺伝的因子であるが、後で配列に基づいて探索して、挿入がどこで起きたのか判定できる。生体内(in vivo)および生体外(in vitro)転位法の双方が知られている。どちらの方法にもトランスポザーゼ酵素と組み合わさった転移因子の使用が関与する。転移因子またはトランスポゾンがトランスポザーゼ存在下で核酸断片に接触すると、転移因子が核酸断片中に無作為に挿入される。中断された遺伝子は転移因子の配列に基づいて同定されてもよいので、技術はランダム変異誘発のため、そして遺伝子単離のために有用である。生体外(in vitro)転位のためのキットは市販されている。例えば1.)ニュージャージー州ブランチバーグのパーキン・エルマー・アプライド・バイオシステムズ(Perkin Elmer Applied Biosystems(Branchburg,NJ))から入手できる酵母菌Ty1因子ベースのプライマー・アイランド転位キット、2.)マサチューセッツ州のニュー・イングランド・バイオ・ラブズ(New England Biolabs)、(マサチューセッツ州ベバリー(Beverly,MA))から入手できる細菌性トランスポゾンTn7ベースのゲノム・プライミング・システム、および3.)ウィスコンシン州マディソンのエピセンター・テクノロジーズ(Epicentre Technologies(ウィスコンシン州マディソン(Madison,WI)))から入手できるTn5細菌性転移因子ベースのEZ::TNトランスポゾン挿入システムを参照されたい。
したがって本発明の文脈で、本発明のアシルトランスフェラーゼ遺伝子の1つを中断することが有用かもしれない。例えば既存の脂肪酸プールを減少させるおよび/またはTAGを加水分解する遺伝子および経路を中断して、TAG蓄積を調節する(および/または最大化する)ことが必要かもしれない。
発現システム、カセット、およびベクター
本願明細書で述べる本配列の遺伝子および遺伝子産物は、微生物宿主細胞、特に油性酵母菌(例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))の細胞中で生成されてもよい。組み換え微生物宿主における発現は、様々な脂肪酸のTAGへの転移のために有用かもしれない。
外来タンパク質の高レベル発現を指示する調節配列を含有する、微生物の発現システムおよび発現ベクターは、当業者によく知られている。これらのいずれも本アシルトランスフェラーゼ配列の遺伝子産物生成のためのキメラ遺伝子を構築するのに使用できる。次に形質転換を通じてこれらのキメラ遺伝子を適切な微生物に導入して、コードされた酵素の高レベル発現を提供できる。
適切な宿主細胞の形質転換に有用なベクターまたはDNAカセットは、技術分野でよく知られている。コンストラクト中に存在する配列の具体的選択は、所望の発現産物(前出)、宿主細胞の性質、および提案される形質転換細胞と非形質転換細胞とを分離する手段に左右される。しかし典型的にベクターまたはカセットは、関連遺伝子の転写および翻訳を導く配列、選択マーカー、および自律複製または染色体組み込みを可能にする配列を含有する。適切なベクターは、転写開始を制御する遺伝子の5’領域、および転写終結を制御するDNA断片の3’領域を含んでなる。双方の制御領域が、形質転換された宿主細胞の遺伝子に由来することが最も好ましいが、このような制御領域は、必ずしも生成宿主として選択された特定種に天然の遺伝子に由来しなくてよいものと理解される。
所望の宿主細胞中で、本ORFの発現を推進するのに有用な開始制御領域またはプロモーターは多数あり、当業者にはなじみが深い。選択された宿主細胞中でこれらの遺伝子の発現を導くことができる、実質的にあらゆるプロモーターが本発明に適する。宿主細胞中での発現は、一時的または安定様式で達成できる。一時的発現は、関心のある遺伝子に作動可能に連結された、調節可能プロモーターの活性を誘導することで達成できる。安定発現は、関心のある遺伝子に作動可能に連結された構成的プロモーターの使用によって達成できる。一例として宿主細胞が酵母菌の場合、酵母菌細胞中で機能する転写および翻訳領域は、特に宿主種から提供される。転写開始調節領域は、例えば次から得ることができる。1.)アルコールデヒドロゲナーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸−デヒドロゲナーゼ(参照によってここに編入する米国特許出願第10/869630号明細書参照)、ホスホグリセリン酸ムターゼ(米国特許出願第10/869630号明細書参照)、フルクトース−ビスリン染色体外因子アルドラーゼ(参照によってここに編入する米国仮特許出願第60/519971号明細書参照)、ホスホグルコース−異性化酵素、ホスホグリセラートキナーゼ、グリセロール−3−ホスフェートO−アシルトランスフェラーゼ(米国仮特許出願第60/610060号明細書参照)などの解糖経路中の遺伝子、または2.)酸ホスファターゼ、ラクターゼ、メタロチオネイン、グルコアミラーゼ、翻訳延長因子EF1−α(TEF)タンパク質(米国特許第6,265,185号明細書)、リボソームタンパク質S7(米国特許第6,265,185号明細書)などの調節可能遺伝子。構成的または誘導的転写が所望されるかどうか、関心のあるORFを発現する上でのプロモーター効率、構築の容易さなど次第で、いくつかの調節配列のいずれか1つを使用できる。
翻訳開始コドン「ATG」を取り囲むヌクレオチド配列が、酵母菌細胞中の発現に影響することが分かっている。所望のポリペプチドの酵母菌中での発現が不良であれば、外来性遺伝子のヌクレオチド配列を修正して効率的な酵母菌翻訳開始配列を含めさせ、最適の遺伝子発現を得ることができる。酵母菌中での発現のために、これは非効率的に発現する遺伝子を内在性酵母菌遺伝子、好ましくは高度に発現する遺伝子にインフレームで融合させることによる、部位特異的変異誘発によって実施できる。代案としては宿主中の共通翻訳開始配列を判定して、関心のある宿主中でのそれらの最適発現のために、この配列を異種性遺伝子内に組み換えできる。(例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に適用可能な具体的教示については米国特許出願第10/840478号明細書を参照されたい)。
終結領域は、それから開始領域が得られた遺伝子の3’領域から、または異なる遺伝子から誘導されることができる。多数の終結領域が知られており、(それらが由来するのと同一および異なる属および種の双方で使用した際に)多様な宿主において満足に機能する。終結領域は、通常特定の特性のためと言うよりも便宜上で選択される。好ましくは終結領域は、特にサッカロミセス(Saccharomyces)、分裂酵母(Schizosaccharomyces)、カンジダ(Candida)、ヤロウィア(Yarrowia)またはクリヴェロミセス(Kluyveromyces)である酵母菌遺伝子から誘導される。γ−インターフェロンおよびα−2インターフェロンをコードする哺乳類の遺伝子の3’領域もまた、酵母菌中で機能することが知られている。終結制御領域もまた、好ましい宿主に天然の様々な遺伝子から誘導されてもよい。場合により終結部位は不必要かもしれないが、含まれることが最も好ましい。
当業者は気づいているように、遺伝子をクローニングベクターに単に挿入するだけでは、それが必要なレベルで成功裏に発現することは確証されない。高発現率の必要性に答えて、転写、翻訳、タンパク質安定性、酸素限界、および宿主細胞からの分泌の側面を制御するいくつかの異なる遺伝的要素を操作することで、多くの特殊化した発現ベクターが作り出されている。より具体的には遺伝子発現を制御するように操作される分子の特徴のいくつかとして以下が挙げられる。1.)関連転写プロモーターおよびターミネーター配列の性質、2.)クローンされた遺伝子のコピー数、および遺伝子がプラスミド上にあるかまたは宿主細胞のゲノム中に組み込まれているかどうか、3.)合成された外来タンパク質の最終細胞内位置、4.)宿主生物体中の翻訳効率、5.)宿主細胞内のクローン遺伝子タンパク質の本質的な安定性、および6.)頻度が宿主細胞の好むコドン使用頻度に近づくようなクローン遺伝子内のコドン使用。これらの各タイプの修正は、アシルトランスフェラーゼの発現をさらに最適化する手段として本発明中に包含される。
アシルトランスフェラーゼの組み換え発現のための好ましい微生物宿主
本DGAT1およびARE2遺伝子および核酸断片の発現のための宿主細胞としては、広範な温度およびpHで、単純または複合炭水化物、有機酸およびアルコール、および/または炭化水素をはじめとする多様な原材料上で生育する微生物宿主が挙げられる。本発明で述べられる遺伝子は、油性酵母菌および特にヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)における発現のために単離されているが、転写、翻訳、およびタンパク質生合成器官は高度に保存されているので、あらゆる細菌、酵母菌、藻類および/または糸状菌が、本核酸断片の発現のための適切な宿主になることが考察される。
好ましい微生物宿主は、油性酵母菌などの油性生物体である。これらの油性生物体は自然に油の合成および蓄積ができ、総油含量は細胞乾燥重量の約25%を超え、より好ましくは細胞乾燥重量の約30%を超え、最も好ましくは細胞乾燥重量の約40%を超える量を構成できる。さらにその内容全体を本願明細書に引用した同時係属米国特許出願第10/840579号明細書に記載のように、PUFAの生産のためにこれらの生物体を使用する根拠がある。
油性酵母菌として典型的に同定されている属としては、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポマイセス(Lipomyces)が挙げられるが、これに限定されるものではない。より具体的には例示的な油合成酵母菌として、ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、リポマイセス・スターケイ(Lipomyces starkeyii)、L.リポフェラス(L.lipoferu)、カンジダ・レブカウフィ(Candida revkaufi)、C.プルケリマ(C.pulcherrima)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ユチリス(C.utilis)、トリコスポロン・プランス(Trichosporon pullans)、T.クタネウム(T.cutaneum)、ロドトルラ・グルティナス(Rhodotorula glutinus)、R.グラミニス(R.graminis)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(以前はカンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)として分類された)が挙げられる。
最も好ましいのは油性酵母菌ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)であり、さらに別の実施態様で最も好ましいのは、ATCC#20362、ATCC#8862、ATCC#18944、ATCC#76982、ATCC#90812および/またはLGAMS(7)1と称されるY.リポリティカ(lipolytica)株である(パパニコラオウ(Papanikolaou)S.、およびアゲリス(Aggelis)G.著、Bioresour.Technol.82(1):43〜9頁(2002年))。
微生物宿主の形質転換
油性酵母菌中での発現に適したポリペプチドをコードするDNAがひとたび得られると、それは宿主細胞中で自律複製できるプラスミドベクター中に入れられ、またはそれは宿主細胞のゲノム中に直接組み込まれる。発現カセットの組み込みは、宿主ゲノム内で無作為に起きることができ、または宿主遺伝子座内における遺伝子組み換えを標的とするのに十分な宿主ゲノムとの相同性領域を含有するコンストラクトの使用を通じて、標的を定めることができる。コンストラクトが内在性遺伝子座に標的を定めると、全てまたはいくつかの転写および翻訳調節領域が、内在性遺伝子座によって提供できる。
別々の複製ベクターから2つ以上の遺伝子が発現する場合、各ベクターが異なる選択手段を有することが望ましく、他のコンストラクトに対する相同性を欠いて、安定した発現を維持し、コンストラクト中の要素の再集合を防止すべきである。調節領域、選択手段、および導入コンストラクト増殖方法の思慮深い選択は、全ての導入された遺伝子が必要なレベルで発現して、所望の生成物の合成を提供するように実験的に判定できる。
関心のある遺伝子を含んでなるコンストラクトは、あらゆる標準的技術によって宿主細胞に導入してもよい。これらの技術としては、形質転換(例えば酢酸リチウム形質転換[「Methods in Enzymology」、194:186〜187頁(1991年)])、プロトプラスト融合、微粒子銃衝撃、電気穿孔、マイクロインジェクション、または宿主細胞中に関心のある遺伝子を導入するその他のあらゆる方法が挙げられる。油性酵母菌(すなわちヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))に適用できるより具体的な教示としては、米国特許第4,880,741号明細書および米国特許第5,071,764号明細書、およびチエン(Chen)D.C.ら著、「Appl Microbiol Biotechnol.」48(2):232〜235頁(1997年)が挙げられる。
便宜上、DNA配列(例えば発現カセット)を取り込むように、あらゆる方法によって操作されている宿主細胞を「形質転換された」または「組み換え」と本願明細書中で称する。形質転換された宿主は、遺伝子がゲノム中に組み込まれるか、増幅されるか、または複数のコピー数を有する染色体外因子上に存在するかどうか次第で、発現コンストラクトの少なくとも1つのコピーを有し、2つ以上を有してもよい。形質転換された宿主細胞は、導入されたコンストラクト上に含有されるマーカーの選択によって同定できる。代案としては多くの形質転換技術が多くのDNA分子を宿主細胞中に導入するので、別のマーカーコンストラクトを所望のコンストラクトと共に同時形質転換してもよい。典型的に形質転換された宿主は、選択的培地上で生育するそれらの能力について選択される。選択培地には抗生物質が組み込まれていてもよく、または栄養素または成長因子などの非形質転換宿主の生育に必要な要素が欠如していてもよい。導入されたマーカー遺伝子は、形質転換された宿主中で発現すると、抗生物質抵抗性を与え、または必須成長因子または酵素をコードしてもよく、それによって選択培地上での生育を可能にしてもよい。発現したマーカータンパク質が直接または間接に検出できる場合にもまた、形質転換された宿主の選択ができる。マーカータンパク質は単独で、または別のタンパク質と融合して発現してもよい。マーカータンパク質は、次によって検出できる。1.)その酵素活性(例えばβガラクトシダーゼは、基質X−gal[5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド]を着色生成物に変換でき、ルシフェラーゼはルシフェリンを発光生成物に変換できる)、または2.)その光生成または修正特性(例えばオワンクラゲ(Aequorea victoria)の緑色蛍光タンパク質は青色光で照明されると蛍光を発する)。代案としては抗体を使用して、例えば関心のあるタンパク質上のマーカータンパク質、または分子タグを検出できる。マーカータンパク質またはタグを発現する細胞は、例えば視覚的に、またはFACS、または抗体を使用したパニングなどの技術によって選択できる。酵母菌形質転換体の選択のためには、酵母菌中で機能するあらゆるマーカーを使用してもよい。望ましくはカナマイシン、ハイグロマイシン、およびアミノグリコシドG418に対する抵抗性、ならびにウラシルまたはロイシンを欠く培地で生育する能力も重要である。
形質転換に続いて、本配列の遺伝子産物(そして場合により、宿主細胞内で発現するその他のPUFA酵素)に適した基質が、宿主によって自然にまたは遺伝子導入的に生成されてもよく、またはそれらは外来性に提供されてもよい。
トリアシルグリセロール生合成および蓄積のための発酵プロセス
形質転換された微生物宿主細胞を脂肪酸生合成遺伝子およびアシルトランスフェラーゼ遺伝子活性を最適化する条件下で生育させる。これによって脂肪酸の最大かつ最も経済的な収率の生成がもたらされ、それは次に貯蔵のためにTAGに転移できる。一般に最適化されてもよい培地条件としては、炭素源のタイプおよび量、窒素源のタイプおよび量、炭素−対−窒素比、酸素レベル、生育温度、pH、バイオマス生成相の長さ、油蓄積相の長さ、および細胞収穫時間が挙げられる。油性酵母菌などの関心のある微生物を複合培地(例えば酵母菌抽出物−ペプトン−デキストロース液体培地(YPD))、または生育に必要な構成要素が欠如する合成最少培地(例えばミシガン州デトロイトのディフコ・ラボラトリーズ(DIFCO Laboratories(Detroit,MI))からの酵母菌窒素ベース)上で生育させて、所望の発現カセットの選択を強要する。
本発明における発酵培地は、適切な炭素源を含有しなくてはならない。適切な炭素源としては、単糖類(例えばグルコース、フルクトース)、二糖類(例えばラクトース、スクロース)、少糖類、多糖類(例えばデンプン、セルロースまたはそれらの混合物)、糖アルコール(例えばグリセロール)または再生可能原材料からの混合物(例えば乳清透過液、コーンスティープリカー、甜菜モラセス、大麦の麦芽)が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに炭素源としては、アルカン、脂肪酸、脂肪酸エステル、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質、および植物油(例えばダイズ油)および動物脂肪をはじめとする脂肪酸の様々な商業的供給源が挙げられる。さらに炭素基質としては、重要な生化学的中間体への代謝変換が実証されている一炭素基質(例えば二酸化炭素、メタノール、ホルムアルデヒド、ホルメート、炭素含有アミン)が挙げられる。したがって本発明で使用される炭素源は多種多様な炭素含有基質を包含し、および宿主生物体の選択によってのみ制限されることが考察された。上述の全ての炭素基質およびそれらの混合物が本発明で適切であることが期待されるが、好ましい炭素基質は糖および/または脂肪酸である。最も好ましいのは、10〜22個の炭素を含有するグルコースおよび/または脂肪酸である。
窒素は、無機源(例えば(NH42SO4)または有機源(例えば尿素、グルタミン酸)から供給されてもよい。適切な炭素および窒素源に加えて、発酵培地はまた、適切なミネラル、塩、補助因子、緩衝液、ビタミン、および微生物の生育と、脂肪酸生成に必須の酵素的経路の促進とに適した、当業者に既知であるその他の構成要素を含有しなくてはならない。脂質およびPUFAの合成を促進するいくつかの金属イオン(例えばMn+2、Co+2、Zn+2、Mg+2)が注目されている(D.J.カイル(Kyle)およびR.コリン(Colin)編、「単細胞油の工業的応用(Industrial Applications of Single Cell Oils)」より、ナカハラ(Nakahara)T.ら、61〜97頁(1992年))。
本発明における好ましい増殖培地は、ミシガン州デトロイトのディフコ・ラボラトリーズ(DIFCO Laboratories(Detroit,MI))からの酵母菌窒素ベースなどの一般的な市販の調製培地である。その他の合成または人工増殖培地もまた使用されてもよく、特定微生物の生育に適する培地は、微生物学または発酵科学の当業者に知られている。発酵に適したpH範囲は、典型的に約pH4.0〜pH8.0の間であり、pH5.5〜pH7.0が初期生育条件の範囲として好ましい。発酵は好気性または好気性条件下で実施されてもよく、微好気条件が好ましい。
典型的に油性酵母菌細胞中の脂肪酸およびTAGの高レベルの蓄積は、代謝状態が生育と脂肪合成/貯蔵との間で「平衡状態」でなくてはならないので、二段階プロセスを必要とする。したがって最も好ましくは、油性酵母菌における油生成には、二段階発酵プロセスが必要である。このアプローチでは、発酵の第1段階は細胞集団の生成および蓄積のみを行い、迅速な細胞生育および細胞分割によって特徴づけられる。発酵の第2段階では、培養内の窒素欠乏条件を確立して、高レベルの脂質蓄積を促進することが好ましい。この窒素欠乏の効果は、細胞内のAMPの有効濃度を低下させることにより、ミトコンドリアのNAD−依存イソクエン酸デヒドロゲナーゼ活性を低下させることである。これが起きるとクエン酸が蓄積するので、細胞質中に豊富なアセチル−CoAのプールが形成し、脂肪酸合成の下準備をする。したがってこの相は、細胞分割休止と、それに続く脂肪酸合成およびTAG蓄積によって特徴づけられる。
細胞は典型的に約30℃で生育させるが、いくつかの研究は、より低い温度における不飽和脂肪酸合成の増大を示している(ヨンマニットチャイ(Yongmanitchai)およびワード(Ward)著、「Appl.Environ.Microbiol.」57:419〜25頁(1991年))。プロセスの経済に基づけば、この温度シフトは、生物生育の大部分が起きる二段階発酵の第1相の後に起きるべきである。
本アシルトランスフェラーゼ遺伝子を使用した脂肪酸およびTAGの商業生産が所望される場合、多様な発酵プロセスデザインを適用してもよいことが考察される。例えば組み換え微生物宿主からのPUFAを含有するTAGの商業生産は、バッチ、供給バッチまたは連続発酵プロセスによって生産されてもよい。
バッチ発酵プロセスは閉鎖システムであり、培地組成がプロセス開始時に設定され、プロセス中にpHおよび酸素レベル維持のために必要とされるもの以外は、さらなる追加を受けない。したがって培養プロセスの始めに所望の生物体を培地に接種し、培地への追加的基質(すなわち炭素および窒素源)の添加なしに、生育または代謝活動を生じさせる。バッチプロセスでは、システムの代謝産物およびバイオマスの組成は、培養が終結するまで絶えず変化する。典型的なバッチプロセスでは、細胞は静止遅滞期から高対数増殖期を通過して、最終的に発育速度が低下または停止する定常期に減速する。処置されない場合、定常期の細胞は次第に死滅する。標準バッチプロセスのバリエーションが供給バッチプロセスであり、発酵プロセス経過中に基質が発酵槽に連続的に添加される。供給バッチプロセスもまた、本発明に適している。供給バッチプロセスは、分解産物抑制が細胞代謝を阻害する傾向がある場合に、またはあらゆる時点で培地中に限定量の基質を有することが望ましい場合に有用である。供給バッチシステム中の基質濃度の測定は困難であるので、pH、溶解酸素、および排ガス(例えばCO2分圧)などの測定可能な要素の変化に基づいて推定してもよい。バッチおよび供給バッチ培養方法は一般的であって技術分野でよく知られており、実例が以下にある。トーマス(Thomas)D.ブロック(Brock)著、バイオテクノロジー:工業的微生物学テキストブック(Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology)第2版、「Sinauer Associates」:マサチューセッツ州サンダーランド(Sunderland,MA)(1989年)、またはデシュパンデ,ムカンド(Deshpande,Mukund)V.著、「Appl.Biochem.Biotechnol.」、36:227頁(1992年)。これらは参照によってここに編入される。
本遺伝子を使用した脂肪酸の商業生産はまた、連続発酵プロセスによって達成されてもよく、そこでは生成物の回収のため等量の培養物を除去するのと同時に、合成培地をバイオリアクター内に連続的に添加する。連続培養は、一般に細胞を一定細胞密度の対数増殖期に保つ。連続または半連続培養法は、細胞生育または最終生成物濃度に影響する1つの因子またはあらゆる数の因子の調節を可能にする。例えば1つのアプローチでは炭素源を制限して、あらゆるその他のパラメーターが代謝を調節できるようにしてもよい。別のシステムでは、培地濁度によって測定される細胞濃度を一定に保ちながら、生育に影響するいくつかの因子を連続的に変化させてもよい。連続システムは定常状態生育を維持することを目指すので、細胞生育率は、培養から培地が抜き取られることによる細胞損失に対してバランスが取れていなくてはならない。連続培養プロセスのために栄養素および成長因子を調節する方法、ならびに生成物形成速度を最大化する技術は工業微生物学の技術分野でよく知られており、多様な方法が前出のブロック(Brock)で詳述される。
脂肪酸の精製
PUFAをはじめとする脂肪酸は、遊離脂肪酸として、またはアシルグリセロール、リン脂質、スルホリピドまたは糖脂質などのエステル化形態で宿主微生物中に見ることができ、技術分野でよく知られている多様な手段を通じて宿主細胞から抽出されてもよい。酵母菌脂質の抽出技術、品質分析、および許容性基準に関する1つのレビューは、Z.ジェーコブス(Jacobs)著、「Critical Reviews in Biotechnology」12(5/6):463〜491頁(1992年)である。下流プロセスに関する簡潔なレビューはまた、A.シン(Singh)およびO.ワード(Ward)著、「Adv.Appl.Microbiol.」45:271〜312頁(1997年)にもある。
一般に(PUFAをはじめとする)脂肪酸の精製手段は、有機溶剤、超音波処理、(例えば二酸化炭素を使用した)超臨界流体抽出による抽出と、鹸化と、圧搾などの物理的手段またはそれらの組み合わせを含んでもよい。特に興味深いのは、水存在下でのメタノールおよびクロロホルムによる抽出である(E.G.ブライ(Bligh)およびW.J.ダイヤー(Dyer)著、「Can.J.Biochem.Physiol.」37:911〜917頁(1959年))。望ましい場合、水層を酸性化して負の電荷を帯びた部分をプロトン化することで、有機層中への所望の生成物の分配を増大できる。抽出後、有機溶剤は窒素流下で蒸発によって除去できる。コンジュゲートされた形態で単離されると、生成物は酵素的にまたは化学的に切断されて、関心のある遊離脂肪酸またはより単純なコンジュゲートを放出してもよく、次にさらに操作されて所望の最終生成物を生成できる。望ましくはコンジュゲートされた形態の脂肪酸は、水酸化カリウムによって切断される。
さらに精製が必要ならば、標準方法を用いることができる。このような方法としては、抽出、尿素処理、分別結晶化、HPLC、分留、シリカゲルクロマトグラフィー、高速遠心分離または蒸留、またはこれらの技術の組み合わせが挙げられる。酸またはアルケニル基などの反応性基の保護は、既知の技術(例えばアルキル化、ヨウ素化)を通じて、あらゆるステップで実施してもよい。使用される方法としては、メチルエステルを生成するための脂肪酸のメチル化が挙げられる。同様に、保護基をあらゆるステップで除去してもよい。望ましくはGLA、STA、ARA、DHA、およびEPAを含有する画分の精製は、尿素および/または分留による処置によって達成されてもよい。
好ましい実施態様の説明
本願明細書で述べる研究の究極の目的は、ω−3および/またはω−6 PUFAが濃縮されたTAGを蓄積する油性酵母菌の開発である。このような目的で、貯蔵脂質プールおける好ましいTAGの合成および高い蓄積を可能にするために、油性酵母菌において効率的に機能するアシルトランスフェラーゼが同定されなくてはならない。具体的にはこれらのアシルトランスフェラーゼの発現レベルの修正が、脂肪酸(特にPUFA)のTAGへの転移増大を可能にする。したがって宿主細胞において生産されるTAG画分に組み込まれるω−3/ω−6 PUFA量の操作のために、効率的なアシルトランスフェラーゼの同定が必要である。
本発明では、出願人は、DGAT1およびARE2をコードするヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)から遺伝子を単離し、クローンした。この研究は、Y.リポリティカ(lipolytica)DGAT2およびPDATが、油生合成に部分的にのみ関与するという意外な発見(ダブルノックアウト突然変異体の分析に基づく、同時係属米国特許出願第10/882760号明細書参照)に続いて行われた。DGAT1遺伝子の活性の確認は、相同的組換え(実施例9)を通じた標的を定めた遺伝子置換によって天然DGAT1の中断が起きた、ヤロウィア(Yarrowia)株中のより低い含油量(乾燥細胞重量の%としての全脂肪酸)に基づいて、本願明細書で提供された。さらに本発明のDGAT1およびARE2遺伝子の過剰発現は、ヤロウィア(Yarrowia)DGAT1が過剰発現して得られる結果に基づいて、含油量(乾燥細胞重量の%としての全脂肪酸)を増大させることが期待される(実施例12)。
Y.リポリティカ(lipolytica)DGAT1(配列番号13および14)の同定に続いて、クサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)cDNA配列の非公開データベースを探索し、オルソロガス遺伝子を同定した。これはDGAT1相同体の同定をもたらし、その完全ヌクレオチド配列が決定された(配列番号17)。これらの2つの新規配列に基づいて、次に出願人らは、TAG合成に関与する一連のユニークな真菌DGAT1オルソログを同定することができた。より具体的にはこれらのDGAT1は、当業者によく知られているBLASTアルゴリズムを使用して、ヤロウィア(Yarrowia)およびクサレケカビ(Mortierella)のDNA配列とジェンバンクデータベースとの比較に基づいて、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)(配列番号19)、ジベレラ・ゼアエ(Gibberella zeae)PH−1(配列番号20)、マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea)(配列番号21)、およびアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)(配列番号22)から同定された。
しかしこれらの6つのDGAT1の配列分析をマウス(配列番号169)、ダイズ(配列番号170)、アラビドプシス(Arabidopsis)(配列番号171)、コメ(配列番号172)、シソ(Perilla)(配列番号173)、および小麦(配列番号174)からのDGAT1配列と比較すると、真菌に特異的で、上述の非真菌生物体(すなわち真菌モチーフ#1〜8、本願明細書で配列番号23〜30として述べられる)からのDGAT1に欠けているユニークな特性が明らかになる。さらにより広い文脈では、DGAT1酵素に普遍的に見出だされる一般的なモチーフもまた発見された(配列番号31〜37)。これらのユニークな真菌および普遍的保存ドメインは、配列番号14に関して、アミノ酸97〜105、278〜284、334〜341、364〜374、418〜424、415〜424、456〜466、および513〜519の間にある。したがって当業者によく知られているように、これらのモチーフがDGAT1の指標となり、新規DGAT1の迅速な同定を可能にする。本願明細書で述べられるモチーフは、最近にラルディサバル(Lardizabal)ら(米国特許出願第04/0107459 A1号明細書)によって述べられ、好ましくは真菌起源のDGAT2を同定するのに有用な「FxxPxYR」モチーフ(配列番号38)とは区別される。
出願人は、これらのDGAT1およびARE2アシルトランスフェラーゼ遺伝子が、様々な微生物宿主における発現、特に油性酵母(例えばヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))中での過剰発現のために有用であるという結論を出す。アシルトランスフェラーゼの発現はまた、天然遺伝子の調節的束縛のない強力な構成的または制御プロモーターの制御下に置くことができるので、追加的利点が帰結するかもしれない。
以下の実施例で本発明をさらに定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施態様を示しながら、例示のみの目的で提供されるものとする。上の考察およびこれらの実施例から、当業者は本発明の必須特性を把握でき、その精神と範囲を逸脱することなく、本発明の様々な変更および修正を行って、それを様々な使用法および条件に適合できる。
一般方法
実施例で使用する標準組み換えDNAおよび分子クローニング技術は、技術分野でよく知られており、1.)サムブルック(Sambrook),J.、フリッチュ(Fritsch),E.F.およびマニアティス(Maniatis),T.著、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」第2版、コールドスプリングハーバー研究所(Cold Spring Harbor Laboratory):ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor,NY)(1989年)、マニアティス(Maniatis)、2.)T.J.シルハビー(Silhavy)、M.L.ベンナン(Bennan)、およびL.W.エンクイスト(Enquist)著、「遺伝子融合実験(Experiments with Gene Fusions)」、コールドスプリングハーバー研究所(Cold Spring Harbor Laboratory):ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor,NY)(1984年)、および3.)オースベル(Ausubel),F.M.ら著、「分子生物学現代プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、Greene Publishing and Wiley−Interscienceによる出版(1987年)で述べられる。
微生物培養の維持および生育に適した材料および方法は、技術分野でよく知られている。以下の実施例で使用するのに適した技術は、次で述べられる。フィリップ・ゲアハルト(Phillipp Gerhardt)、R.G.E.マレー(R.G.E.Murray)、ラルフN.コスティロウ(Ralph N.Costilow)、ユージーンW.ネスター(Eugene W.Nester)、ウィリスA.ウッド(Willis A.Wood)、ノエルR.クリーグ(Noel R.Krieg)およびG.ブリッグス・フィリップス(G.Briggs Phillips)編、「一般微生物学方法マニュアル(Manual of Methods for General Bacteriology」、米国微生物学会、ワシントンD.C.(Washington,D.C.)(1994年)、またはトーマス(Thomas),D.ブロック(Brock)著、「バイオテクノロジー:工業的微生物学テキストブック(Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology)」第2版、Sinauer Associates:Sunderland,MA(1989年)。微生物細胞の生育および維持のために使用される全ての試薬および材料は、特に断りのない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))、ミシガン州デトロイトのディフコ・ラボラトリーズ(DIFCO Laboratories(Detroit,MI))、メリーランド州ゲーサーズバーグのギブコ/BRL(GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD))、またはミズーリ州セントルイスのシグマケミカル(Sigma Chemical Company(St.Louis,MO))から得た。
大腸菌(E.coli)TOP10細胞および大腸菌(E.coli)エレクトロマックス(Electromax)DH10B細胞は、カリフォルニア州カールズバッドのインビトロジェン(Invitrogen(Carlsbad,CA))から得た。大腸菌(E.coli)DH5αのマックス・エフィシェンシー(Max Efficiency)コンピテント細胞は、メリーランド州ゲイザーズバーグのGIBCO/BRL(GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD))から得た。大腸菌(E. coli)(XL1−Blue)コンピテント細胞は、カリフォルニア州サンディエゴのストラタジーン((Stratagene(San Diego,CA))から購入した。大腸菌(E.coli)株は、典型的にルリア・ベルターニ(Luria Bertani)(LB)プレート上で37℃で生育させた。一般分子クローニングは、標準方法に従って実施した(サムブルック(Sambrook)ら、前出)。オリゴヌクレオチドは、テキサス州スプリングのシグマ−ジェノシス(Sigma−Genosys(Spring,TX))によって合成された。
全てのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、ポリメラーゼ製造業者によって推奨される緩衝液中のDNAポリメラーゼを使用して、サーモサイクラー内で実施した。特に断りのない限り、次のようにして増幅を実施した。95℃で1分間の初期変性、続いて95℃で30秒間の変性、55℃で1分間のアニーリング、72℃で1分間の延長を30サイクル。72℃で10分間の最終鎖延長サイクルを実施し、4℃での反応終結がそれに続いた。PCR生成物は、特に断りのない限りウィスコンシン州マディソンのプロメガ(Promega(Madison,WI))からのpGEM−T−イージーベクター中にクローンした。
DNA配列は、ベクターとインサート特異的プライマーとの組み合わせを使用して、染料ターミネーター技術(米国特許第5,366,860号明細書、欧州特許第272,007号)を使用して、ABI自動シーケンサー上で生成した。ミシガン州アンアーバーのジーン・コーズ社(Gene Codes Corporation(Ann Arbor,MI))からのシーケンチャー(Sequencher)中で配列編集を実施した。全配列は、双方向で少なくとも2回のカバレッジを表す。遺伝的配列の比較は、ウィスコンシン州マディソンのDNASTAR(DNASTAR Inc.(Madison,WI))からのDNASTARソフトウェアを使用して達成された。以下のパラメーターでクラスタルWを使用して、DNASTARのメガライン(Megalign)プログラムを使用して、これらのタンパク質間の%同一性を判定した。ギャップ・ペナルティ=10、ギャップ長ペナルティ=0.2、発散数列(%)=30、DNA遷移重量=0.5、およびゴネット・シリーズによるタンパク質重量マトリックス。
略語の意味は以下の通り。「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「d」は日を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」はマイクロモル濃度を意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmole」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「U」は単位を意味し、「bp」は塩基対を意味し、「kB」はキロベースを意味する。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の形質転換および培養
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362、#76982、および#90812株は、メリーランド州ロックビル(Rockville,MD)の米国微生物系統保存機関から購入した。Y.リポリティカ(Y.lipolytica)株は、YPD寒天(1%酵母菌抽出物、2%バクトペプトン、2%グルコース、2%寒天)上において通常28℃で生育させた。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の形質転換は、特に断りのない限りチェン(Chen),D.C.ら著、「Appl Microbiol Biotechnol.」48(2):232〜235頁(1997年)の方法に従って実施した。簡単に述べると、ヤロウィア(Yarrowia)をYPDプレート上に画線し、30℃でおよそ18時間生育させた。いくつかの大型白金耳を満たす細胞をプレートからこすり取り、平均分子量3350の2.25mLの50%PEG、pH6.0の0.125mLの2M酢酸Li、0.125mLの2M DTT、および50μgの剪断サケ精子DNAを含有する1mLの形質転換緩衝液に再懸濁した。次に約500ngの直線化プラスミドDNAを100μLの再懸濁細胞内でインキュベートし、15分間隔でボルテックス混合しながら39℃に1時間保った。細胞を選択培地プレートに蒔いて、30℃に2〜3日間保った。
形質転換体の選択のために、一般に最少培地(「MM」)を使用した。MMの組成は次のとおり。ミシガン州デトロイトのディフコ・ラボラトリーズ(DIFCO Laboratories(Detroit,MI))からの硫酸アンモニウムまたはアミノ酸を含まない0.17%酵母菌窒素ベース、2%グルコース、0.1%プロリン、pH6.1。適切ならばアデニン、ロイシン、リジンおよび/またはウラシルのサプリメントを最終濃度0.01%に添加した(それによって20g/Lの寒天で調製される「MMA」、「MMLe」、「MMLy」、および「MMU」選択培地を生成した)。
代案として、形質転換体は、次を含んでなる5−フルオロオロチン酸(「FOA」、また5−フルオロウラシル−6−カルボン酸一水和物とも)選択培地上で選択される。ミシガン州デトロイトのディフコ・ラボラトリーズ(DIFCO Laboratories(Detroit,MI))からの硫酸アンモニウムまたはアミノ酸を含まない0.17%酵母窒素ベース、2%グルコース、0.1%プロリン、75mg/Lのウラシル、75mg/Lのウリジン、カリフォルニア州オレンジのザイモリサーチ社(Zymo Research Corp.(Orange,CA))からの900mg/L FOAおよび20g/Lの寒天。
油生成条件を促進するために、高グルコース培地(「HGM」)を次のように調製した。14g/LのKH2PO4、4g/LのK2HPO4、2g/LのMgSO4・7H20、80g/Lのグルコース(pH6.5)。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)の脂肪酸分析
脂肪酸分析のために、ブライ(Bligh),E.G.およびダイヤー(Dyer),W.J.著、Can.J.Biochem.Physiol.37:911〜917頁(1959年)で述べられるように、細胞を遠心分離し収集して脂質を抽出した。ナトリウムメトキシドでの脂質抽出物のエステル交換反応によって、脂肪酸メチルエステルを調製し(ローガン(Roughan),G.およびニシダ(Nishida),I.著、Arch Biochem Biophys.276(1):38〜46頁(1990年))、引き続きヒューレットパッカード(Hewlett−Packard)からの30m×0.25mm(内径)HP−INNOWAXカラムを装着したヒューレットパッカード(Hewlett−Packard)6890 GCで分析した。オーブン温度は3.5℃/分で、170℃(25分間保持)から185℃であった。
直接塩基エステル交換のために、ヤロウィア(Yarrowia)培養物(3mL)を収集し、蒸留水で1回洗浄し、スピードバック(Speed−Vac)内で真空下において5〜10分乾燥させた。ナトリウムメトキシド(100μLの1%)をサンプルに添加して、次にサンプルをボルテックスし20分間振盪した。3滴の1M NaClおよび400μLのヘキサンを添加した後、サンプルをボルテックスして遠心分離した。上層を除去して上述のようにGCで分析した。
実施例1
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)における遺伝子発現に適したプラスミドの構築
本実施例は、プラスミドpY5、pY5−13、pY20、およびpLV5の構築について述べる。
プラスミドpY5の構築
フランス国ティベルバル−グリニョン、F−78850、国立作物学研究所、バイオテクノロジー農業関連産業センター、遺伝分子および細胞研究所INRA−CNRS(Insitut National Agrinomique,Centre de Biotechnologie Agro−Industrielle,laboratoire de Genetique Moleculaire et Cellularie INRA−CNRS(F−78850,Thiverval−Grignon,France)のクロード・ガィヤルダン(Claude Gaillardin)博士から贈与されたpINA532の誘導体であるプラスミドpY5を図3に図解するようにヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)における異種性遺伝子発現のために構築した。
最初に、pINA532のARS18配列およびLEU2遺伝子を含有する部分的に消化された3598bpのEcoRI断片をカリフォルニア州サンディエゴのストラタジーン(Stratagene)(San Diego,CA))からのpBluescriptのEcoRI部位にサブクローニングしてpY2を生成した。TEF5’(配列番号39)およびTEF3’(配列番号40)をプライマーとして使用して、PCRによりY.リポリティカ(Y.lipolytica)ゲノムDNAから、TEFプロモーター(ミュラー(Muller),S.ら著、「Yeast」、14:1267〜1283頁(1998年))を増幅した。100ngのヤロウィア(Yarrowia)ゲノムDNAと、10mMのKCl、10mMの(NH42SO4、20mMのトリス−HCl(pH8.75)、2mMのMgSO4、0.1%トリトンX−100、100μg/mLのBSA(最終濃度)を含有するPCR緩衝液と、各200μMのデオキシリボヌクレオチド三リン酸と、10pmoleの各プライマーと、ストラタジーン(Stratagene)からの1μLのPfuTurbo DNAポリメラーゼとを含有する、50μLの総容積内でPCR増幅を実施した。増幅は次のように実施した。95℃で3分の初期変性、続いて95℃で1分間、56℃で30秒間、72℃で1分間を35サイクル。72℃で10分間の最終延長サイクルを実施し、続いて4℃での反応終結。418bpのPCR生成物をpCR−BluntにライゲーションしてpIP−tefを生成した。pIP−tefのBamHI/EcoRV断片をpY2のBamHI/SmaI部位にサブクローニングして、pY4を生成した。
テンプレートとしてpINA532、プライマーとしてXPR5’(配列番号41)およびXPR3’(配列番号42)を使用して、PCRによってXPR2転写ターミネーターを増幅した。上述の構成要素および条件を使用して、PCR増幅を50μLの総容積内で実施した。179bpのPCR生成物をSacIIで消化し、pY4のSacII部位にライゲーションしてpY5を生成した。したがってpY5(図3に示す)は、次を含有するヤロウィア(Yarrowia)−大腸菌(E.coli)シャトルプラスミドとして有用である。ヤロウィア(Yarrowia)自律複製配列(ARS18)、ColE1プラスミド複製起点、大腸菌(E.coli)における選択のためのアンピシリン抵抗性遺伝子(AmpR)、ヤロウィア(Yarrowia)における選択のためのヤロウィア(Yarrowia)LEU2遺伝子(E.C.1.1.1.85、イソプロピルリンゴ酸異性化酵素をコードする)、ヤロウィア(Yarrowia)における異種性遺伝子発現のための翻訳延長プロモーター(TEF)、およびヤロウィア(Yarrowia)中の異種性遺伝子発現の転写終結のための細胞外プロテアーゼ遺伝子ターミネーター(XPR2)。
プラスミドpY5−13の構築
pY5の誘導体としてpY5−13を構築し、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)中のサブクローニングおよび異種性遺伝子発現を容易にした。具体的にはpY5をテンプレートとして使用して、6ラウンドの部位特異的変異誘発により、pY5−13を構築した。オリゴヌクレオチドYL5およびYL6(配列番号43および44)を使用して、部位特異的変異誘発によってSalIおよびClaI部位の双方をpY5から除去し、pY5−5を生成した。オリゴヌクレオチドYL9およびYL10(配列番号45および46)を使用して、部位特異的変異誘発によって、LEU2遺伝子とTEFプロモーター間のpY5−5にSalI部位を導入し、pY5−6を生成した。オリゴヌクレオチドYL7およびYL8(配列番号47および48)を使用して、LEU2遺伝子とARS18の間のpY5−6にPacI部位を導入し、pY5−8を生成した。オリゴヌクレオチドYL3およびYL4(配列番号49および50)を使用して、TEFプロモーターの翻訳開始コドン周囲のpY5−8にNcoI部位を導入し、pY5−9を生成した。YL1およびYL2オリゴヌクレオチド(配列番号51および52)を使用して、pY5−9のLEU2遺伝子の内側のNcoI部位を除去し、PY5−12を生成した。最後にオリゴヌクレオチドYL61およびYL62(配列番号53および54)を使用して、ColEIとXPR2領域間のpY5−12にBsiWI部位を導入し、pY5−13を生成した。
プラスミドpY20およびpLV5の構築
プラスミドpY20(配列番号55)はpY5の誘導体である。これはキメラハイグロマイシン抵抗性遺伝子を含有するNot I断片をpY5のNot I部位に挿入して構築された。具体的には発現のために、大腸菌(E.coli)ハイグロマイシン抵抗性遺伝子(配列番号56、「HPT」、カスター(Kaster),K.R.ら著、「Nucleic Acids Res.」11:6895〜6911頁(1983年))をPCR増幅した。キメラ遺伝子は、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)TEFプロモーターの制御下にあるハイグロマイシン抵抗性ORFを有した。
プラスミドpLV5はpY20の誘導体である。これはハイグロマイシン抵抗性遺伝子をヤロウィア(Yarrowia)Ura3遺伝子で置換して構築された。オリゴヌクレオチドKU5およびKU3(配列番号60および61)をプライマーとして、ヤロウィア(Yarrowia)ゲノムDNAをテンプレートとして使用して、ヤロウィア(Yarrowia)Ura3遺伝子を含有する1.7kBのDNA断片(配列番号58)をPCR増幅した。
実施例2
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)アシル−CoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT2)遺伝子の一部のクローニング、および内在性DGAT2遺伝子の中断
本実施例は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DGAT2の部分的コーディング配列を単離するための変性PCRプライマーの使用、およびY.リポリティカ(Y.lipolytica)の天然遺伝子を中断させるための部分的配列の使用について述べる。
変性PCRプライマーおよび染色体歩行を使用したPCRによるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からの推定上の部分的DGAT2配列のクローニング
キアゲン(Qiagen)からのDNeasy組織キット(カタログ番号69504)を使用して、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)(ATCC#76982)からゲノムDNAを単離し、DNA濃度0.5μg/μLでキット緩衝液AEに再懸濁した。テンプレートとしてゲノムDNAを使用し、異なる既知のDGAT2(すなわちジェンバンク登録番号NC_001147[サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)]およびAF391089およびAF391090[クサレケカビ・ラマニアナ(Mortierella ramanniana)])の間で保存されるアミノ酸配列をコードするようにデザインされた、いくつかの変性プライマーセットを使用して、PCR増幅を実施した。下の表で示すように、変性プライマーP7およびP8によって最良の結果が得られた。
Figure 2008524984
ストラタジーン(Stratagene)からのロボサイクラー・グラディエント(RoboCycler Gradient)40 PCRマシン内で、製造業者の推奨およびインビトロジェン(Invitrogen)からのアキュープライム(Accuprime)Taqポリメラーゼを使用して、PCRを実施した。増幅を一般方法で述べられるようにして実施した。
予期されたPCR生成物(約264bp)を4%NuSieve(FMC)アガロースゲル電気泳動法によって検出し、単離精製して、インビトロジェン(Invitrogen)からのTOPO(登録商標)クローニングベクター中にクローンし、配列決定した。得られた配列(配列番号1内に含有される)は、BLAST((「基礎的局在性配列探索ツール(Basic Local Alignment Search Tool)」アルトシュル(Altschul),S.F.ら著、「J.Mol.Biol.」215:403〜410頁(1993年))に基づいて、既知のDGAT2との相同性を有した。
インビトロジェン(Invitrogen)からのTOPO(登録商標)歩行キット(カタログ番号K8000−01)を使用して、264bpの断片を開始点として使用し、染色体歩行によって673bpの断片を得た。染色体歩行を次で簡潔に述べるようにして6段階で実施した。
1.)ゲノムDNA(5μg)を制限酵素Pst IまたはSac Iで、3’のオーバーハングを残して消化した。
2.)消化したDNAを0.1Uの子ウシ小腸由来アルカリホスファターゼで処理し、DNAを脱リン酸した。
3.)DGAT2特異的プライマーP80(配列番号66)およびTaqポリメラーゼを使用して、プライマー延長を実施した。
4.)TOPO(登録商標)リンカー(1μL)を添加し、反応を37℃で5分インキュベートして、TOPO(登録商標)リンカーをDNAにライゲートした。
5.)DGAT2遺伝子特異的プライマー、P81(配列番号67)およびLinkAmpプライマー1(配列番号68)を使用して、PCRを実施した。
6.)プライマーP81およびLinkAmpプライマー1によって、新たに増幅された断片を配列決定した。
染色体歩行によって得られた673bpの断片の配列もまた、既知のDGAT2配列に対する相同性を示した。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DGAT2遺伝子の標的を定めた中断
プラスミドpY21DGAT2と称される標的カセットによる内在性DGAT2遺伝子の相同的遺伝子組み換え媒介置換によって、Y.リポリティカ(lipolytica))ATCC#90812およびATCC#76982中のDGAT2遺伝子の標的を定めた中断を実施した。pY21DGAT2は、プラスミドpY20から誘導された(実施例1、配列番号55)。具体的にはpY21DGAT2は、570bpのHind III/Eco RI断片を同様に直線化されたpY20中に挿入して作り出された。この570bpの断片は(5’から3’に向けて)次を含有した。(配列番号1中のコード配列(ORF)の)位置+1090〜+1464の3’相同配列、(配列番号1中のコード配列(ORF)の)位置+906から+1089のBglII制限部位および5’相同配列。2組のPCRプライマーP95およびP96(配列番号69および70)、そしてP97およびP98(配列番号71および72)をそれぞれ使用して、染色体歩行によって得られた673bpのDGAT2 PCR生成物からの3’および5’配列のPCR増幅によって断片を調製した。
pY21DGAT2をBgl II制限酵素消化によって直線化し、一般方法で述べるようにして、対数増殖中期のY.リポリティカ(lipolytica)ATCC#90812およびATCC#76982細胞中に形質転換した。YPDハイグロマイシン選択プレート上に細胞を播種して、30℃に2〜3日間保った。
4個のY.リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#76982ハイグロマイシン抵抗性コロニーおよび14個のY.リポリティカ(lipolytica)ATCC#90812ハイグロマイシン抵抗性コロニーを単離し、PCRによって標的を定めた中断についてスクリーニングした。PCRプライマー(P115およびP116[それぞれ配列番号73および74])の1つの組をデザインし、相同的組換えに続いて特定の接合部断片を増幅した。PCRプライマー(P115およびP112[配列番号75])の別の組をデザインして、天然遺伝子を検出した。
ATCC#76982株の全て(4個中4個)のハイグロマイシン抵抗性コロニーが接合部断片について陽性であり、天然断片について陰性であった。ATCC#90812株の14個のハイグロマイシン抵抗性コロニー中の2個が、接合部断片について陽性であり、天然断片について陰性であった。したがってこれらの6菌株において、標的を定めた組み込みが確認された。「S−D2」と称される中断された菌株の1つの総脂質のGC分析によって、遺伝子の中断がさらに確認された(実施例9参照)。
実施例3
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)リン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)遺伝子の一部のクローニング、および内在性PDAT遺伝子の中断
本実施例は、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)PDATの部分的コード配列を単離するための変性PCRプライマーの使用、およびY.リポリティカ(Y.lipolytica)の天然遺伝子を中断させるための部分的配列の使用について述べる。
変性PCRプライマーおよび染色体歩行を使用したPCRによるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からの推定上の部分的PDAT配列のクローニング
キアゲン(Qiagen)からのDNeasy組織キット(カタログ番号69504)を使用して、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)(ATCC#76982)からゲノムDNAを単離し、DNA濃度0.5μg/μLでキット緩衝液AEに再懸濁した。テンプレートとしてゲノムDNAを使用し、異なる既知のPDAT(ジェンバンク登録番号NP 190069およびAB006704[gi:2351069シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)]、およびNP_596330[分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe];およびサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)Lro1遺伝子[ダルキビスト(Dahlqvist)ら著、Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:6487頁(2000年)])間で保存されるアミノ酸配列をコードする変性プライマーのいくつかの組を使用して、PCR増幅を実施した。下の表で示すように、変性プライマーP26およびP27によって最良の結果が得られた。
Figure 2008524984
ストラタジーン(Stratagene)からのロボサイクラー・グラディエント(RoboCycler Gradient)40 PCRマシン内で、一般方法で述べられる増幅条件を使用してPCRを実施した。予期されたPCR生成物(約600bp)を4%NuSieve(FMC)アガロースゲル電気泳動法によって検出し、単離精製して、インビトロジェン(Invitrogen)からのTOPO(登録商標)クローニングベクター中にクローンし、配列決定した。得られた配列(配列番号7内に含有される)は、BLASTプログラム分析(アルトシュル(Altschul),S.F.ら著、「J.Mol.Biol.」215:403〜410頁(1993年))に基づいて、既知のPDATとの相同性を有した。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)PDAT遺伝子の標的を定めた中断
この約600bpのPDATコード領域部分の配列決定に続いて、この配列をコードするより大きいDNA断片が、「酵母菌プロジェクト・ジェノレビュール(Genolevures)」(バイオインフォマティクス・センター(Center for Bioinformatics)、LaBRI、フランス国タランスセデックス(Cedex))の公共Y.リポリティカ(lipolytica)タンパク質データベースに発見された(ドゥジョン(Dujon),B.ら、Nature 430(6995):35〜44頁(2004年)もまた参照されたい)。これによりPCRプライマーP39およびP42(配列番号80および81)を使用して、Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC#90812からのPDAT遺伝子の一部を含んでなる1008bpゲノムDNA断片の単離が可能になった。
pLV13(配列番号82)と称されるターゲティングカセットによる、内在性PDAT遺伝子の相同的組換え媒介置換によって、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#90812におけるPDAT遺伝子の標的を定めた中断を実施した。PLV13はプラスミドpLV5(実施例1)から誘導された。具体的には992bpのBam HI/Eco RI断片を同様に直線化されたpLV5に挿入して、pLV13を作り出した。992bpのDNA断片は、(5’から3’に向けて)次を含有した。(配列番号7中のコード配列(ORF)の)位置+877〜+1371の3’相同配列、Bgl II制限部位、および(配列番号7中のコーディング配列(ORF)の)位置+390〜+876の5’相同配列。PCRプライマーP39およびP41(配列番号80および83)、そしてP40およびP42(配列番号84および81)をそれぞれ使用して、上述の1008bpのPCR生成物からの3’および5’配列のPCR増幅によって、断片を調製した。
pLV13をBgl II制限消化によって直線化し、酢酸リチウム法によって対数増殖中期のY.リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#90812細胞中に形質転換した(一般方法)。細胞をBio101 DOB/CSM−ウルトラ選択プレート上に播いて、2〜3日間30℃に保った。
10個のY.リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#90812コロニーが単離され、PCRによって標的を定めた中断についてスクリーニングされた。1組のPCRプライマー(P51およびP52[それぞれ配列番号85および86])をデザインし、ターゲティングカセットを増幅した。PCRプライマー(P37およびP38[それぞれ配列番号87および88])の別の組をデザインし、天然遺伝子を検出した。10菌株中の10菌株が接合部断片について陽性であり、10菌株中の3菌株が天然断片について陰性であったので、これらの3菌株における標的を定めた組み込みの成功が確認された。「S−P」と称される中断された菌株の1つの総脂質のGC分析によって、遺伝子の中断がさらに確認された(実施例9参照)。
実施例4
PDATおよびDGAT2遺伝子の双方に中断を含有するヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ダブルノックアウト菌株の構築
本実施例は、PDATおよびDGAT2遺伝子の双方が中断された、ダブルノックアウト菌株の作成について述べる。
具体的には実施例3で述べるように、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)ATCC#90812ハイグロマイシン抵抗性「S−D2」変異株(実施例2からのDGAT2中断を含有する)をプラスミドpLV13(実施例3からの)で形質転換し、形質転換体をPCRによってスクリーニングした。12個の形質転換体中2個が、DGAT2およびPDAT遺伝子の双方で中断されていることが確認された。「S−D2−P」と称される中断された菌株の1つの総脂質のGC分析によって、遺伝子の中断がさらに確認された(実施例9参照)。
実施例5
完全長のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DGAT2およびPDAT遺伝子のクローニング
本実施例は、天然遺伝子の天然ORFをPCRするための、レスキューされたプラスミド中の配列を使用したプラスミドレスキューによる、中断されたDGAT2およびPDAT遺伝子の傍らにあるゲノム配列の回復について述べる。完全長の遺伝子およびそれらの推定アミノ酸配列をその他の真菌DGAT2およびPDAT配列と、それぞれ比較する。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DGAT2およびPDAT遺伝子のプラスミドレスキュー
アシルトランスフェラーゼ遺伝子は、大腸菌(E.coli)アンピシリン抵抗性遺伝子および大腸菌(E.coli)oriをそれぞれ含有する完全なpY21DGAT2およびpLV13ベクターの挿入によって中断されたので、大腸菌(E.coli)中の隣接PDATおよびDGAT2配列をレスキューすることが可能であった。このためにDNeasy組織キットを使用して、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)株「S−D2」(中断されたDGAT2遺伝子を保有する、実施例2)およびY.リポリティカ(Y.lipolytica)株「S−P」(中断されたPDAT遺伝子を保有する、実施例3)のゲノムDNAを単離した。具体的には200μLの反応容積内で、10μgのゲノムDNAをDGAT2のためにはAge IおよびNhe I、PDATのためにはKpn I、Pac I、およびSac Iの制限酵素50Uで消化した。消化DNAをフェノール:クロロホルムで抽出し、40μLの脱イオン水に再懸濁した。3UのT4 DNAリガーゼを含有する200μLのライゲーション混合物中で、消化DNA(10μL)を自己ライゲートした。各ライゲーション反応を16℃で12時間実施した。ライゲートしたDNAをフェノール:クロロホルムで抽出し、40μLの脱イオン水に再懸濁した。最後に1μLの再懸濁したライゲートDNAを使用して、電気穿孔によって大腸菌(E.coli)を形質転換し、アンピシリン(Ap)を含有するLB上に播種した。Ap抵抗性形質転換体を単離し、プラスミドの存在について分析した。以下の挿入サイズが、再生またはレスキューされたプラスミド内に見出された(表6および7)。
Figure 2008524984
Figure 2008524984
DGAT2レスキューされたプラスミドの配列決定は、配列決定プライマーP79(配列番号89)およびP95(配列番号69)で開始した。対照的にPDATプラスミドの配列決定は、配列決定プライマーP84(配列番号90)およびP85(配列番号91)で開始した。
配列決定結果に基づいて、Y.リポリティカ(Y.lipolytica)DGAT2遺伝子をコードする完全長の遺伝子(2119bp、配列番号1)をアセンブルした。具体的には配列は、1545個の塩基(配列番号1のヌクレオチド+291〜+1835)の読み取り枠(ORF)をコードし、一方推定アミノ酸配列は、長さが残基514個(配列番号2)であった。このORFは、位置1、ならびに位置56および160に開始コドン(「ATG」)を有するので、それは少なくとも2個のさらに別の入れ子になった(より小さな)ORFを含有する。具体的には1個のORFは長さが塩基1380個(配列番号1のヌクレオチド+456〜+1835、配列番号3に対応する)であり、推定アミノ酸配列は残基459個(配列番号4)である。別のORFは長さが1068個の塩基(配列番号1のヌクレオチド+768〜+1835、配列番号5に対応する)であり、推定アミノ酸配列は残基355個(配列番号6)である。
配列番号5によってコードされるORFは、その他の既知のDGAT2酵素に対して高度の類似性を有し、配列番号5における中断が天然遺伝子のDAG AT機能を除去したために、配列番号6のポリペプチドは、明らかにDGAT2機能性を有すると同定されている。
上述のDGAT2タンパク質の配列決定および分析に続いて、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DGAT2タンパク質配列を「酵母菌プロジェクト・ジェノレビュール(Genolevures)」(バイオインフォマティクスセンター(Center for Bioinformatics)、LaBRI、ビルディングA30、ボルドー大学1、351、クールデラリベラシオン、フランス国タランスセデックス(Cedex) 33405の後援)の公共Y.リポリティカ(Y.lipolytica)タンパク質データベース内で公開した((ドゥジョン(Dujon),B.ら、「Nature」430(6995):35〜44頁(2004年)もまた参照されたい)。具体的には本願明細書で開示される配列を514個のアミノ酸をコードするORF YALI−CDS2240.1として同定し、タンパク質はtr|Q08650サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)YOR245C DGA1アシル−CoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼといくつかの類似性を有すると報告された。
DGAT2の完全長の配列を推定するのに使用されるやり方と同様にして、配列決定結果に基づいてY.リポリティカ(Y.lipolytica)PDAT遺伝子をコードする完全長の遺伝子をアセンブルした(2326bp、配列番号7)。具体的には配列が塩基1944個の読み取り枠(配列番号7のヌクレオチド+274〜+2217)をコードするのに対し、推定アミノ酸配列(配列番号8)は長さが残基648個であった。
上述のPDATタンパク質の配列決定および分析に続いて、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)PDATタンパク質配列を「酵母菌プロジェクト・ジェノレビュール(Genolevures)」(前出)の公共Y.リポリティカ(Y.lipolytica)タンパク質データベースの一部として公開した。そこで開示されるPDAT配列を648個のアミノ酸をコードするORF YALI−CDS1359.1として同定し、タンパク質は、ジアシルグリセロールのエステル化を媒介するレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ様遺伝子であるsp|P40345サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)YNR008w LRO1といくつかの類似性を有すると報告された。
実施例6
追加的な推定上のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DAG ATの同定
ヤロウィア(Yarrowia)中の追加的DAG ATを同定するために、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)ARE1(Sc ARE1、ジェンバンク登録番号CAA42296)およびARE2(Sc ARE2、ジェンバンク登録番号P53629)タンパク質配列(ヤン(Yang),H.ら(「Science.」272(5266):1353〜1356頁(1996年))を使用して、酵母菌プロジェクト・ジェノレビュール(Genolevures)(前出)の公共Y.リポリティカ(lipolytica)タンパク質データベースを探索した。双方の探索から、次のY.リポリティカ(lipolytica)ORFがそれぞれ第1および第2のヒットとして同定された。
(1)YALI−CDS2011.1:「sp|P53629サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)YNR019w ARE2アシル−CoAステロールアシルトランスフェラーゼに類似、仮説的開始」と注釈される、長さアミノ酸543個(配列番号9および10)、および
(2)YALI−CDS2141.1:「無名タンパク質生成物、tr|Q9FUL6シソ(Perilla frutescens)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PfDGAT1)に弱く類似、仮説的開始」と注釈される、長さアミノ酸526個(配列番号11および12)。
これらのタンパク質間の%同一性は、一般方法で述べられるパラメーターに従って、クラスタルWを使用して、DNASTARのメガライン(Megalign)プログラムを使用して判定された。同一性を下に示し、そこでは%同一性は、2つのタンパク質間で同一のアミノ酸の百分率として定義される。
Figure 2008524984
この比較に基づいて、(本願明細書でそれぞれ「YlDGAT1」および「YlARE2」と称する)YALI−CDS2141.1およびYALI−CDS2011.1は、ヤロウィア(Yarrowia)中でDAGAT機能性を有するタンパク質をコードする可能性があるORFの候補であった。
上述のタンパク質分析に続いて、ジェンバンクにおいてジェノレビュール(Genolevures)プロジェクトの一部としてヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株CLIB99の完全なゲノムを公開した。したがってYALI−CDS2011.1として同定されたORFはジェンバンク登録番号NC_006072、遺伝子座_tag=「YALI0F06578g」に対応し、YALI−CDS2141.1として同定されたORFはジェンバンク登録番号CR382130、遺伝子座_tag=「YALI0D07986g」に対応する。
実施例7
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)アシル−CoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT1)遺伝子のクローニングおよび内在性DGAT1遺伝子の中断
本実施例は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DGAT1(ORFYALI−CDS2011.1(実施例6)によってコードされる)の全長コード配列を単離するための縮重PCRプライマーの使用、およびY.リポリティカ(lipolytica)中の天然遺伝子を中断するための配列の使用について述べる。
縮重PCRプライマーを使用したPCRによるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からの推定上のDGAT1配列クローニング
縮重PCRプライマーP201およびP203(それぞれ配列番号92および93)、およびテンプレートとして(実施例2からの)Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC#76982ゲノムDNAを使用して、PCRによって全長Yl DGAT1 ORFをクローンした。Yl DGAT1をコードするヌクレオチド配列が分かっていなかったので、縮重プライマーが必要であった。
ロボサイクラー・グラディエント(RoboCycler Gradient)40 PCRマシン内で、一般方法で述べられる構成要素およびサーモサイクラー条件を使用して、PCRを実施した。アガロースゲル電気泳動法によって予期されたPCR生成物(約1.6kB)を検出し、単離して精製し、インビトロジェン(Invitrogen)からのTOPO(登録商標)クローニングベクター中にクローンして、部分的に配列決定してその同一性を確認した。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DGAT1遺伝子の標的を定めた中断
(実施例2で述べられる方法を使用して)内在性DGAT1遺伝子のターゲティングカセットとの相同的組換え媒介置換によって、Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC#90812中の推定上のDGAT1遺伝子の標的を定めた中断を実施した。具体的には1.6kBの単離されたYl DGAT1 ORF(配列番号13)をPCRテンプレート分子として使用し、5’相同的Yl DGAT1配列、ヤロウィア(Yarrowia)ロイシン2(Leu2)遺伝子、および3’相同的Yl DGAT1配列からなるYl DGAT1ターゲティングカセットを構築した。このために、以下に記載するプライマーを使用して、最初にターゲティングカセットの各部分を個別に増幅した。
5’相同的DGAT1配列の増幅のための上方プライマーP214および下方プライマーP215(それぞれ配列番号94および95)、
3’相同的DGAT1配列の増幅のための上方プライマーP216および下方プライマーP217(それぞれ配列番号96および97)、および
Leu2遺伝子(ジェンバンク登録番号AAA35244)増幅のための上方プライマーP218および下方プライマーP219(それぞれ配列番号98および99)。
一般方法で述べられるようにして、ストラタジーン(Stratagene)からのPfuウルトラポリメラーゼ(カタログ番号600630)を使用してPCRを実施し、精製した。PCRプライマーP214およびP219(配列番号94および99)を使用した第2のPCR反応のためのテンプレート分子として、3つの正しいサイズの精製断片を共に混合し、Yl DGAT1中断カセットを得た。
ターゲティングカセットをゲル精製して使用し、対数増殖中期の野生型Y.リポリティカ(lipolytica)(ATCC#90812)を形質転換した。一般方法で述べられるようにして形質転換を実施した。
形質転換体をBio101 DOB/CSM−Leu選択プレート上に播種して、30℃に2〜3日間保った。いくつかのロイシン原栄養株をPCRによってスクリーンし、標的を定めたDGAT1中断を確認した。具体的には一組のPCRプライマー(P226およびP227[それぞれ配列番号100および101])をデザインして、中断カセットと天然標的遺伝子間の接合部を増幅した。PCRプライマーの別の組(P214およびP217[それぞれ配列番号94および97])をデザインして、天然遺伝子を検出した。
全てのロイシン原栄養株コロニーは、接合部断片について陽性であり、天然断片について陰性であった。したがってこれらの株において、標的を定めた組み込みが確認された。「S−D1」と命名された中断された株の1つの全脂質のGC分析によって、遺伝子の中断をさらに確認した(実施例9参照)。
同様に、DGAT1ターゲティングカセットを使用して、PDAT(実施例3からの「S−P」)、DGAT2(実施例2からの「S−D2」)のいずれかの単一中断、またはPDATおよびDGAT2(実施例4「S−D2−P」)中の二重中断を含有する株中のDGAT1遺伝子を中断した。これはDGAT1およびPDAT(「S−D1−P」)中、DGAT2およびDGAT1(「S−D2−D1」)中にダブルノックアウトがある株、DGAT2、DGAT1、およびPDAT(「S−D2−D1−P」)中にトリプルノックアウトがある株の生成をもたらした。
実施例8
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)アシル−CoA:ステロール−アシルトランスフェラーゼ(ARE2)遺伝子のクローニングおよび内在性ARE2遺伝子の中断
本実施例は、(ORF YALI−CDS2141.1(実施例6)によってコードされる)ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ARE2の全長コード配列単離するための縮重PCRプライマーの使用、およびY.リポリティカ(lipolytica)中の天然遺伝子を中断するための配列の使用について述べる。
縮重PCRプライマーを使用したPCRによるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からの推定上のARE2配列のクローニング
縮重PCRプライマーP205およびP208(それぞれ配列番号102および103)、およびテンプレートとしてY.リポリティカ(lipolytica)ATCC#76982(実施例2からの)ゲノムDNAを使用したPCRによって全長Yl ARE2 ORFをクローンした。Yl ARE2をコードするヌクレオチド配列が分かっていなかったので、縮重プライマーが必要であった。実施例7で述べられるプロトコルを使用して、PCRを実施した。予期されたサイズのPCR生成物が検出された。
ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ARE2遺伝子の標的を定めた中断(予言的)
(実施例7で述べられるようにして)内在性ARE2遺伝子のターゲティングカセットとの相同的組換え媒介置換によって、Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC#90812中のARE2遺伝子の標的を定めた中断が実施される。具体的には推定上のYlARE2タンパク質(配列番号15)をコードする約1.6kBの単離されたORFをPCRテンプレート分子として使用し、5’相同的Yl ARE2配列、ヤロウィア(Yarrowia)ロイシン2(Leu2)遺伝子、および3’相同的Yl ARE2配列からなるYl ARE2ターゲティングカセットを構築する。このために、実施例7で述べられるようにして、以下に記載するプライマーを使用して、最初にターゲティングカセットの各部分が個別に増幅される。
5’相同的ARE2配列の増幅のための上方プライマーP220および下方プライマーP221(それぞれ配列番号104および105)、
3’相同的ARE2配列の増幅のための上方プライマーP222および下方プライマーP223(それぞれ配列番号106および107)、および
Leu2遺伝子増幅のための上方プライマーP224および下方プライマーP225(それぞれ配列番号108および109)。
精製に続いて、正しいサイズの各断片を混合して、プライマーP220およびP223を使用したPCR反応におけるテンプレート分子として利用し、ターゲティングカセットを得る。生成物のゲル精製に続いて、ターゲティングカセットを使用して、PDAT(実施例3からの「S−P」)、DGAT2(実施例2からの「S−D2」)、DGAT1(実施例7からの「S−D1」)中に単一中断を含有し、PDATおよびDGAT2(実施例4からの「S−D2−P」)中に二重中断を含有し、PDATおよびDGAT1(実施例7からの「S−D1−P」)中に二重中断を含有し、DGAT1およびDGAT2(実施例7からの「S−D1−D2」)中に二重中断を含有し、またはPDAT、DGAT2、およびDGAT1(実施例7からの「S−D1−D2−P」)中に三重中断を含有する、対数増殖中期の野生型および突然変異Y.リポリティカ(lipolytica)株(ATCC#90812)を形質転換する。一般方法で述べられるようにして形質転換を実施する。
形質転換体をBio101 DOB/CSM−Leu選択プレート上に播種して、30℃に2〜3日間保つ。実施例7で述べられた方法を使用して、いくつかのロイシン原栄養株をPCRによってスクリーンし、標的を定めたARE2中断を確認する。
実施例9
突然変異および野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株(ATCC#90812)中のTAG含量測定
本実施例は、野生型および次を含有する突然変異Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC#90812中のTAG含量の比較について述べる。(1)PDAT、DGAT2、およびDGAT1中の単一中断、(2)PDATおよびDGAT2、DGAT1およびPDAT、およびDGAT1およびDGAT2中の二重中断、および(3)PDAT、DGAT2、およびDGAT1中の三重中断。
具体的には野生型の単一コロニーと、PDAT(実施例3からの「S−P」)、DGAT2(実施例2からの「S−D2」)、DGAT1(実施例7からの「S−D1」)中に単一中断、PDATおよびDGAT2(実施例4からの「S−D2−P」)、DGAT1およびPDAT(実施例7からの「S−D1−P」)、DGAT1およびDGAT2(実施例7からの「S−D1−D2」)中に二重中断、および三重中断(実施例7からの「S−D1−D2−P」)を含有する突然変異Y.リポリティカ(lipolytica)の単一コロニーとを油生成を誘導する条件を使用して別々に生育させた。各培養からのループ1つ分の細胞を3mLのYPD培地中にそれぞれ別々に接種して、30℃で(300rpm)振盪機上で一晩生育させた。細胞を採取して0.9%NaClで1回洗浄し、50mLのHGMに再懸濁した。次に振盪機上で細胞を48時間生育させた。細胞を水で洗浄し、細胞ペレットを凍結乾燥した。TLC(下記)およびGC分析に続く、GC分析による全脂肪酸および油分画のために20mgの乾燥細胞重量を使用した。
薄層クロマトグラフィー(TLC)
TLCのために使用される方法は、以下の5段階で述べられる。1)内部標準15:0脂肪酸(10μLの10mg/mL)を2〜3mgの乾燥細胞塊に添加し、メタノール/クロロホルム法を使用した総脂質の抽出がそれに続いた。2)25〜50μLの微量ピペットを使用して、5×20cmシリカゲル60プレートの下端からおよそ1インチのところに鉛筆で薄く描いた線を横切って、抽出した脂質(50μL)をブロットした。3)次にTLCプレートをN2下で乾燥させ、約100mLの80:20:1のヘキサン:エチルエーテル:酢酸溶剤を含有するタンクに挿入した。4)バンドの分離後、プレートの片面にヨウ素蒸気を吹き付けてバンドを同定した。これによってさらなる分析のために、カミソリの刃を使用してプレートのもう一方の面のサンプルがこすり取れるようになった。5)こすり取ったサンプルの塩基性エステル交換反応、およびGC分析を一般方法で述べられるようにして実施した。
GC分析からの結果
GC結果を下の表9に示す。培養は「S」株(野生型)、「S−P」(PDATノックアウト)、「S−D1」(DGAT1ノックアウト)、「S−D2」(DGAT2ノックアウト)、「S−D1−D2」(DGAT1およびDGAT2ノックアウト)、「S−P−D1」(PDATおよびDGAT1ノックアウト)、「S−P−D2」(PDATおよびDGAT2ノックアウト)、および「S−P−D1−D2」(PDAT、DGAT1、およびDGAT2ノックアウト)として既述される。使用される略語は次のとおり。「WT」=野生型。「FA」=脂肪酸、「dcw」=乾燥細胞重量、および「FA%dcw、重量%」=野生型中の%に対するFA%dcw、「S」株は野生型である。
Figure 2008524984
表9中の結果は、DGAT1の中断が野生型株と比較してより低い含油量をもたらすので、それがDAG ATであるという証拠を提供する。上に示す結果はまた、油生合成に対する3つのDAG ATの相対的貢献度も示唆する。DGAT2の貢献が最も大きいのに対し、PDATおよびDGAT1は等しく貢献するがDGAT2よりも小さい。三重ノックアウト株中の約3%の残留含油量は、Yl ARE2の貢献によるかもしれない(実施例8参照)。
実施例10
EPA産生ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362 MU株およびY2067U株の発生
本実施例は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362にそれぞれ由来する、MU株およびY2067U株の構築について述べ、各株は全脂質と比較して顕著な濃度のEPAを生成できた(図5)。実施例11、12、および15(下記)で述べられるように、TAG含量および/または脂肪酸組成の分析に基づいて、これらのEPA生成株中で、様々なアシルトランスフェラーゼノックアウトおよびアシルトランスフェラーゼ遺伝子過剰発現の効果を調べた。
本願明細書でMU株の開発は、M4株(8%のDGLAを生成する)、Y2034株(10%のARA)、E株(10%のEPAを生成する)、EU株(10%のEPAを生成する)、およびM26株(14%を生成する)の構築を必要とした。Y2067U株の開発は、最初にY2067株(15%のEPAを生成する)と称されるEU株の誘導体を作り出すことを必要とした。
8%のDGLAを生成するM4株の構築
コンストラクトpKUNF12T6E(図6A、配列番号110)を生成して、野生型ヤロウィア(Yarrowia)ATCC#20362株のUra3遺伝子座に、4つのキメラ遺伝子(Δ12デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、および2つのエロンガーゼを含んでなる)を組み入れ、それによってDGLAの生成を可能にした。pKUNF12T6Eプラスミドは次の構成要素を含有した。
Figure 2008524984
pKUNF12T6EプラスミドをAscI/SphIで消化し、次に一般方法に従って使用して野生型Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC#20362を形質転換した。形質転換体細胞をFOA選択培地プレート上に播種して、30℃に2〜3日間保った。FOA抵抗性コロニーを拾って、MMおよびMMU選択プレート上に画線培養した。MMUプレート上で生育できるが、MMプレート上で生育できないコロニーをUra-株として選択した。次にUra-株の単一コロニーを30℃の液体MMUに接種して、250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心分離によって収集し、脂質を抽出して、エステル交換によって脂肪酸メチルエステルを調製し、引き続いてヒューレットパッカード(Hewlett−Packard)6890 GCで分析した。
GC分析は、DGLAの存在をpKUNF12T6Eの4つのキメラ遺伝子を含有する形質転換体中に示したが(図6A)、野生型ヤロウィア(Yarrowia)対照株中には示さなかった。選択された32Ura-株のほとんどは、全脂質の約6%のDGLAを生成した。全脂質の約8%のDGLA生成する2つの株(すなわち株M4および13−8)があった。
約10%のARAを生成するY2034株の構築
コンストラクトpDMW232(図6B、配列番号121)を生成して、2つのΔ5キメラ遺伝子をヤロウィア(Yarrowia)M4株のLeu2遺伝子に組み入れた。プラスミドpDMW232は、次の構成要素を含有した。
Figure 2008524984
プラスミドpDMW232をAscI/SphIで消化し、次に一般方法に従って使用してM4株を形質転換した。形質転換に続いて細胞をMMLeプレート上に播種して、30℃に2〜3日間保った。MMLeプレート上に生育した各形質転換からの個々のコロニーを拾って、MMおよびMMLeプレート上に画線培養した。MMLeプレート上で生育できるが、MMプレート上で生育できないコロニーをLeu2-株として選択した。次にLeu2-株の単一コロニーを30℃の液体MMLe培地に接種して、250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心分離によって収集し、脂質を抽出して、エステル交換によって脂肪酸メチルエステルを調製し、引き続いてヒューレットパッカード(Hewlett−Packard)6890 GCで分析した。
GC分析は、ARAの存在をpDMW232形質転換体中に示したが、親M4株中には示さなかった。具体的には48個の選択されたpDMW232によるLeu2-形質転換体の内、34株が組み換えヤロウィア(Yarrowia)中の全脂質の5%未満のARAを生成し、11株が6〜8%のARAを生成し、3株が約10%のARAを生成した。10%のARAを生成する株の1つを「Y2034」と命名した。
約10%のEPAを生成するE株の構築
コンストラクトpZP3L37(図6C、配列番号124)を作り出して、3つの合成Δ17デサチュラーゼキメラ遺伝子をY2034株のアシル−CoAオキシダーゼ3(すなわちPOX3)遺伝子中に組み入れた。プラスミドpZP3L37は、次の構成要素を含有した。
Figure 2008524984
プラスミドpZP3L37をAscI/SphIで消化し、次に一般方法に従って使用してY2034株を形質転換した。形質転換に続いて細胞をMMプレート上に播種して、30℃に2〜3日間保った。MMプレート上に生育した全部で48個の形質転換体を拾って、新鮮なMMプレート上に再度画線培養した。ひとたび生育すると、これらの株を30℃の液体MMに個別に接種して、250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心分離によって収集し、脂質を抽出して、エステル交換によって脂肪酸メチルエステルを調製し、引き続いてヒューレットパッカード(Hewlett−Packard)6890 GCで分析した。
GC分析は、EPAの存在をpZP3L37による形質転換体中に示したが、親株(すなわちY2034)中には示さなかった。48個の選択されたpZP3L37による形質転換体の内、18株が組み換えヤロウィア(Yarrowia)の全脂質の2%未満のEPAを生成し、14株が2〜3%のEPAを生成し、1株が約7%のEPAを生成した。
7%のEPAを生成する株を次のように培養(「二段階生育条件」)した後に、株をさらに分析した。最初に、細胞を30℃の液体MM中で250rpm/分で48時間振盪して、三連で生育させた。細胞を遠心分離によって収集し、液体上清を抜き出した。ペレット化細胞をHGMに再懸濁し、30℃で72時間250rpm/分で振盪して生育させた。細胞を遠心分離によって再度収集し、液体上清を抜き出した。
GC分析は、組み換え株が二段階生育後に、全脂質の約10%のEPAを生成することを示した。株を「E」株と命名した。
約10%のEPAを生成するEU株の構築
5−FOA抵抗性であるE株の突然変異細胞を同定して、EU(Ura-)株を作り出した。具体的にはループ1つ分のヤロウィア(Yarrowia)E株細胞を3mLのYPD培地に接種して、30℃で24時間250rpm/分で振盪して生育させた。培養をOD6000.4にYPDで希釈して、次にさらに4時間インキュベートした。培養をFOA選択プレート上に播種(100μL/プレート)して、30℃に2〜3日間保った。全部で16個のFOA抵抗性コロニーを拾って、MMおよびFOA選択プレート上に画線培養した。これらから10個のコロニーがFOA選択プレート上で生育したが、MMプレートでは生育せず、可能なUra-株として選択された。
これらの株の1つをキメラGPD::フザリウム・モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)Δ15::XPR2遺伝子、および選択マーカーとしてUra3遺伝子を含んでなるpY37/F15での形質転換のための宿主として使用した(図6D、配列番号128)。MMプレート上での3日間の選択後、数百のコロニーがプレート上に生育し、プラスミドを持たない形質転換対照コロニーの生育はなかった。この5−FOA抵抗性株を「EU」株と命名した。
次にEU株の単一コロニーを0.1g/Lのウリジンをさらに含有する液体MMUに接種して、30℃で2日間250rpm/分で振盪して培養した。細胞を遠心分離によって収集し、脂質を抽出して、エステル交換によって脂肪酸メチルエステルを調製し、引き続いてヒューレットパッカード(Hewlett−Packard)6890 GCで分析した。GC分析は、EU株が全脂質の約10%のEPAを生成したことを示した。
14%のEPAを生成するM26株の構築
コンストラクトpZKO2UM26E(図6E、配列番号129)を使用して、(エロンガーゼ、Δ6デサチュラーゼ、およびΔ12デサチュラーゼを含んでなる)3つのキメラ遺伝子およびUra3遺伝子のクラスターをEU株のヤロウィア(Yarrowia)Δ12デサチュラーゼ遺伝子部位に組み入れた。プラスミドpKO2UM26Eは、次の構成要素を含有した。
Figure 2008524984
プラスミドpKO2UM26EをSphI/AscIで消化し、次に一般方法に従って使用してEU株を形質転換した。形質転換に続いて細胞をMMプレート上に播種して、30℃に2〜3日間保った。
MMプレート上に生育した全部で48個の形質転換体を拾って、新鮮なMMプレート上に再度画線培養した。ひとたび生育すると、これらの株を30℃の液体MMに個別に接種して、250rpm/分で1日間振盪して生育させた。細胞を遠心分離によって収集し、脂質を抽出して、エステル交換によって脂肪酸メチルエステルを調製し、引き続いてヒューレットパッカード(Hewlett−Packard)6890 GCで分析した。
GC分析は、MM培地中での1日間の生育後に、pKO2UM26Eによるほとんど全ての形質転換体においてEPAが生成されたことを示した。48個の選択された形質転換体の内、5株は組み換えヤロウィア(Yarrowia)中の全脂質の4%未満のEPAを生成し、23株は4〜5.9%のEPAを生成し、9株は6〜6.9%のEPAを生成し、11株は7〜8.2%のEPAを生成した。8.2%のEPAを生成する株を二段階生育手順(すなわち48時間のMM+HGM中で96時間)を使用して、さらなる分析のために選択した。GC分析は、組み換え株が全脂質の約14%のEPAを生成したことを示した。株を「M26」株と命名した。野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に関するM26株の最終遺伝子型は、次のとおり。Pox3-、Y.Δ12-、FBA::F.Δ12::Lip2、FBAIN::MΔ12::Pex20、TEF::Δ6S::Lip1、FBAIN::Δ6B::Pex20、FBAIN::E1S::Pex20;GPAT::E1S::Xpr、TEF::E2S::Xpr;FBAIN::MAΔ5::Pex20、TEF::MAΔ5::Lip1、FBAIN::Δ17S::Lip2、FBAINm::Δ17S::Pex16、およびTEF::Δ17S::Pex20。
EPAを生成するMU株の構築
MU株はM26株のUra栄養要求株であった。この株はPacIおよびHincIIで消化された5μgのプラスミドpZKUM(図7A、配列番号137)で、M26株を形質転換して作られた。形質転換は、カリフォルニア州オレンジのザイモリサーチ社(Zymo Research Corporation(Orange,CA))からの凍結EZ酵母形質転換キットを使用して実施され、形質転換体は、100μLの形質転換細胞ミクスを次の培地を含む寒天プレート上に播種して選択された。ミシガン州デトロイトのディフコ・ラボラトリーズ(DIFCO Laboratories(Detroit,MI))からの6.7g/Lの酵母窒素ベース、20g/Lのデキストロース、50mg/Lのウラシル、および800mg/LのFOA。7日後、小型コロニーが出現し、それをMMおよびMMU寒天プレート上に播種した。全てUra栄養要求株であった。株の1つを「MU」と命名した。
約15%のEPAを生成するY2067株の構築
プラスミドpKO2UF2PE(図7B、配列番号138)を作り出して、(異種のΔ12デサチュラーゼおよびエロンガーゼを含んでなる)2つのキメラ遺伝子およびUra3遺伝子を含有するクラスターをEU株(前出)の天然ヤロウィア(Yarrowia)Δ12デサチュラーゼ遺伝子に組み入れた。プラスミドpKO2UF2PEは、次の構成要素を含有した。
Figure 2008524984
プラスミドpKO2UF2PEをAscI/SphIで消化し、次に一般方法に従って使用してEU株を形質転換した(ただしEU株は形質転換緩衝液への懸濁に先だってYPDプレート上に画線培養して[18時間に対して]およそ36時間生育させた)。形質転換に続いて細胞をMMプレート上に播種して、30℃に2〜3日間保った。MMプレート上で生育した全部で72個の形質転換体を拾って、新鮮なMMプレート上に個別に再度画線培養した。ひとたび生育すると、これらの株を30℃の液体MMに個別に接種して、250rpm/分で2日間振盪した。細胞を遠心分離によって収集し、脂質を抽出して、エステル交換によって脂肪酸メチルエステルを調製し、引き続いてヒューレットパッカード(Hewlett−Packard)6890 GCで分析した。
GC分析は、pKO2UF2PEによるほとんど全ての形質転換体においてEPAの存在を示した。より具体的には72個の選択された形質転換体の内、17株は組み換えヤロウィア(Yarrowia)中の全脂質の8〜9.9%のEPAを生成し、27株は10〜10.9%のEPAを生成し、16株は11〜11.9%のEPAを生成し、7株は12〜12.7%のEPAを生成した。12.7%のEPAを生成する株を二段階生育条件を使用してさらに分析した。GC分析は、組み換え株が二段階生育後、全脂質の約15%のEPAを生成したことを示した。株を「Y2067」株と命名した。
Ura-表現型による約14%のEPAを生成するY2067U株の構築
Y2067株中のUra3遺伝子を中断するために、コンストラクトpZKUT16(図7C、配列番号139)を作り出して、TEF::rELO2S::Pex20キメラ遺伝子をY2067株のUra3遺伝子に組み入れた。rELO2Sは、16:0を18:0に延長するラット肝酵素をコードする、コドン最適化rELO遺伝子である。プラスミドpZKUT16は、次の構成要素を含有した。
Figure 2008524984
プラスミドpZKUT16をSalI/PacIで消化し、次に一般方法に従って使用して、Y2067株を形質転換した。形質転換に続いて、細胞をFOA選択プレート上に播種して、30℃に2〜3日間保った。
FOAプレート上に生育した全部で24個の形質転換体を拾って、MMプレートおよびFOAプレート上に別個に再度画線培養した。FOA選択プレート上で生育できるが、MMプレートでは生育できない株をUra-株として選択した。全部で10個のUra-株を個別に30℃の液体MMUに接種して、250rpm/分で1日間振盪して生育させた。細胞を遠心分離によって収集し、脂質を抽出して、エステル交換によって脂肪酸メチルエステルを調製し、引き続いてヒューレットパッカード(Hewlett−Packard)6890 GCで分析した。
GC分析は、MMU培地中での1日間の生育後にpZKUT16による全ての形質転換体中に5〜7%のEPAの存在を示した。6.2%のEPAを生成する株を二段階生育条件(48時間MM+HGM中で96時間)を使用して、さらに分析した。GC分析は、組み換え株が全脂質の約14%のEPAを生成することを示した。株を「Y2067U」株と命名した。野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362に関するこの株の最終遺伝子型は次のとおり。Ura3-、Pox3-、Y.Δ12-、FBA::F.Δ12::Lip2、FBAINm::F.Δ12::Pex20、TEF::Δ6S::Lip1、FBAIN::E1S::Pex20;GPAT::E1S::Oct、TEF::E2S::Xpr;FBAIN::MAΔ5::Pex20、TEF::MAΔ5::Lip1、FBAIN::Δ17S::Lip2、FBAINm::Δ17S::Pex16、TEF::Δ17S::Pex20、およびTEF::rELO2S::Pex20。
実施例11
EPA生合成のために組み換えた突然変異および野生型ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica) MU株のTAG含量の測定
本実施例は、MU株(ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362の組み換え株、10%を超えるEPAを生成できる)の様々なアシルトランスフェラーゼノックアウト株中のTAG含量および脂肪酸組成について述べる。より具体的にはMU株において、PDAT、DGAT2、およびDGAT1中の単一中断、PDATおよびDGAT2中の二重中断が作り出された。4つの異なる生育条件での生育に続いて、これらの各株中で脂質含量および組成物を比較する。
より具体的には(DGAT1中断の選択がURA3遺伝子に依存したこと以外は)実施例2、3、および7で述べられる方法を使用して、MU株(前出、実施例10)において、PDAT、DGAT2、DGAT1中の単一中断を作り出した。これは「MU−D1」(DGAT1中断)、「MU−D2」(DGAT2中断)、および「MU−P」(PDAT中断)として同定された単一ノックアウト株をもたらした。個々のノックアウト株は、PCRによって確認された。さらにMU−D2株をPDAT遺伝子について中断し、中断をPCRによって確認した。得られた二重ノックアウト株を「MU−D2−P」と命名した。
下で述べるように、MU−D1、MU−D2、MU−P、およびM−D2−Pノックアウト株を分析して、脂質含量および組成物に対する各ノックアウトの効果を判定した。さらに油脂生成を促進する生育条件もまた考察して、全脂質含量に対するそれらの効果を判定した。したがって「実験A」、「実験B」、「実験C」、および「実験E」と同定される全部で4つの異なる実験を行った。具体的には上の各株を含有するプレートからループ3つ分の細胞をMMU[実験BおよびCでは3mL、実験AおよびEでは50mL]に接種して、30℃で24時間(実験A、B、およびC)または48時間(実験E)振盪して生育させた。細胞を採取してHGM中で1回洗浄し、HGM(実験AおよびEでは50mL、実験Bでは3mL)またはウラシル添加HGM(「HGMU」)(実験Cでは3mL)のいずれかに再懸濁し、上記のように4日間培養した。一般方法で述べられるように、1アリコート(1mL)をGCによる脂質分析のために使用する一方、第2のアリコートを600nmで培養ODを測定するために使用した。実験AおよびEの残る培養物を採取して水で1回洗浄し、乾燥細胞重量(dcw)測定のために凍結乾燥した。対照的に実験BおよびCのdcwは、それらの関係を示す式を使用してそれらのOD600から判定された。実験A、B、C、およびEの異なる各株の脂肪酸組成もまた判定した。
結果を下の表16に示す。培養物は、「MU」株(親EPA生成株)、「MU−P」(PDATノックアウト)、「MU−D1」(DGAT1ノックアウト)、「MU−D2」(DGAT2ノックアウト)、および「MU−D2−P」(DGAT2およびPDATノックアウト)として表現される。使用した略語は次のとおり。「WT」=野生型(すなわちMU)、「OD」=光学濃度、「dcw」=乾燥細胞重量、「TFA」=全脂肪酸、および「TFA%dcw、重量%」=野生型(「MU」)株と比較したTFA%dcw。脂肪酸は16:0、16:1、18:0、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、GLA、DGLA、ARA、ETA、およびEPAとして同定される。各組成は全脂肪酸の%として表される。
Figure 2008524984
データは形質転換された細胞内の脂質含量が、生育条件次第で変動することを示した。さらに脂質含量に対する各アシルトランスフェラーゼの貢献もまた、変動した。具体的には実験B、C、およびEでは、DGAT2が、PDATまたはDGAT1のどちらよりも油生合成により大きく貢献した。対照的に実験Aで実証されたように、DGAT2、DGAT1、およびPDAT中の単一ノックアウトは、脂質含量にほぼ同等の損失をもたらした(すなわちそれぞれ48%、49%、および42%の損失[「TFA%dcw、重量%」を参照されたい])。
実施例12
ヤロウィア(Yarrowia)プロモーターの制御下にあるヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DGAT1の配列決定およびORF発現
本実施例は、YlDGAT1の配列決定、および野生型ヤロウィア(Yarrowia)株中のヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)TEFプロモーター、YlDGAT1、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ペルオキシン(Pex20)ターミネーター(すなわちTEF::YlDGAT1::Pex20遺伝子)を含んでなるキメラ遺伝子の過剰発現について述べる。
Y.リポリティカ(lipolytica)DGAT1の配列決定
最初に、Y.リポリティカ(lipolytica)ATCC#90812の縮重プライマーP201およびP203(配列番号92および93)、およびテンプレートとしてゲノムDNA(実施例2から)を使用して、Y.リポリティカ(lipolytica)DGAT1のORFをPCR増幅した。一般方法で述べられるようにして、インディアナ州インディアナポリスのロシュ・アプライド・サイエンス(Roche Applied Sciences(Indianapolis,IN))からのエキスパンド・ハイ・フィディリティ(Expand High Fidelity)PCRシステムを使用してPCRを実施した。
予期された1.6kBの断片を標準アガロースゲル電気泳動法によって単離して精製し、カリフォルニア州カールズバッドのインビトロジェン(Invitrogen(Carlsbad,CA))からのpCR4−TOPOベクター中にクローンしてプラスミドpYAP42−23を得た。プラスミドpYAP42−23を大腸菌(E.Coli)XL2に形質転換し、プラスミドミニプレップ分析およびNotIまたはNcoIのいずれかでの制限酵素消化によって、pYAP42−23を含んでなる形質転換体を確認した。配列決定プライマーT7、T3、P239(配列番号142)、およびP240(配列番号143)を使用して、一般方法で述べられる方法に従って、プラスミドpYAP42−23中のDNAインサートを配列決定して、YlDGAT1 ORFの完全なヌクレオチド配列を得た。
YlDGAT1 ORFのヌクレオチド配列は、配列番号13として提供され、翻訳生成物は、配列番号14で提供されるアミノ酸配列を有する。得られた配列をBLAST((「基礎的局在性配列探索ツール(Basic Local Alignment Search Tool)」アルトシュル(Altschul),S.F.ら著、「J.Mol.Biol.」215:403〜410頁(1993年))に基づいて、その他の知られているタンパク質と比較した。特に配列番号13は、縮重PCRプライマー領域における6つのサイレント突然変異の存在以外は、実施例7で得られたYlDGAT1の部分的配列と同一であった。これらの突然変異には、位置6におけるAからGへの突然変異、位置21におけるAからGへの突然変異、位置24におけるAからGへの突然変異、位置1548におけるTからCへの突然変異、位置1552におけるCからTへの突然変異、および位置1557におけるTからCへの突然変異が含まれた。これらの突然変異は縮重PCRプライマーの使用から帰結するので、配列番号13の推定アミノ酸配列、すなわち配列番号14は、ORF YALI−CDS2141.1(配列番号12、ジェンバンク登録番号NC_006072に対応する、遺伝子座_tag=「YALI0F06578g」)と同一である。
AY.リポリティカ(lipolytica)DGAT1キメラ遺伝子の構築
プラスミドpYAP23−42をNcoIおよびNot Iで1時間消化して、YlDGAT1を含有する1.6kBの断片を単離し、ORFがTEFプロモーターの制御下でクローンされ、組み込みベクター中のPEX20−3’ターミネーター領域がヤロウィア(Yarrowia)POX2遺伝子中に標的を定めるように、NcoI−およびNot I消化pZP2l7+Ura(配列番号144、図7DA)にインサートした。ミニプレップ分析によって正しい形質転換体を確認し、得られたプラスミドを「pYDA1」と命名した。
一般方法に従って、プラスミドpZP2l7+UraおよびpYDA1をY.リポリティカ(lipolytica)(前出、実施例11)の「MU−D2」株中に形質転換した。形質転換体をMM上に播種し、単一コロニーを拾って精製し分析して、過剰発現されたDGAT1の脂質含量に対する効果を判定した。具体的には次の培養中で脂質含量を分析した。「MU」(「野生型」)、pZP2l7+Uraで形質転換されたMU−D2、およびpYDA1(クローン#5、6、7および16)で形質転換されたMU−D2。上記の各株からの数ループ分の細胞を50mLのMMに接種し、振盪機内で30℃で48時間生育させた。細胞を採取してHGM中で1回洗浄し、30mLのHGM培地に再懸濁して、さらに4日間上記のように生育させた。生育後、各培養からの100μLのアリコートを使用して、600nmでの吸光度(OD600)を測定し、1mLのアリコートをGC分析のために使用した。このために1mLのサンプルを採取して、水で1回洗浄し遠沈してペレット化し、塩基法による直接エステル交換反応に続く脂質測定およびGC分析に使用した(一般方法で述べられるように)。残る培養物を採取して水で1回洗浄し、凍結乾燥して乾燥細胞重量を得た。
結果を下の表に示す。培養は「MU」株(「野生型」)および「MU−D2」(DGAT2ノックアウト)として述べられる。使用した略語は次のとおり。「WT」=野生型(すなわちDGAT2ノックアウトを有するMU−D2株)、「OD」=光学濃度、「dcw」=乾燥細胞重量、「TFA」=全脂肪酸、および「TFAs%dcw、重量%」=野生型(「MU−D2」)株と比較したTFAs%dcw。
Figure 2008524984
一般に結果は、MU−D2株においてDGAT1の過剰発現がDGAT2活性の欠如を補償でき、MU株とほぼ等しいまたはそれを超える脂質含量をもたらすことを示した(すなわちMU−D2+pYDA1クローン#5、6、および16は、MU株とほぼ等しいまたはそれを超える(TFAs%dcwとして測定される)脂質含量を有する)。MU−D2+pYDA1、クローン#5、6、および16中のこの脂質含量は、対照株MU−D2+pZP2l7+Uraの2倍を超えた。これらの結果は、ヤロウィア(Yarrowia)DGAT1が、油生合成に関与する機能性DAG ATをコードすることのさらなる裏付けをを提供した。
形質転換体MU−D2+pYDA1クローン#7は、クローン#5、6、および16と比較して、脂質含量の増大を示さなかった。しかしこれらの染色体の組み込みは一般にランダムであるので、このようなバリエーションは予期された。
実施例13
クサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)cDNAライブラリーの構築および配列決定
本実施例は、クサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)のDNAライブラリーの構築、および引き続くライブラリーの配列決定について述べる。
M.アルピナ(alpina)cDNAの合成
カナダ国オンタリオ州ミシサーガのBDクロンテック(BD−Clontech(Mississauga,ON,Canada)からのクリエーター・スマートCreator Smart(登録商標)cDNAライブラリーキットを使用して、製造業者のプロトコルに従ってM.アルピナ(alpina)cDNAを合成した。
具体的にはM.アルピナ(alpina)ATCC#16266株を60mLのYPD培地(2%バクトイースト抽出物、3%バクトペプトン、2%グルコース)中で3日間23℃で生育させた。ベックマン(Beckman)GH3.8ローター内での3750rpmで10分間の遠心分離によって細胞をペレット化し、インビトロジェン(Invitrogen)からの6×0.6mLのトリゾール試薬中に再懸濁した。再懸濁した細胞をそれぞれ0.6mLの0.5mmガラスビーズを含有する6本の2mLネジ蓋管に移した。オクラホマ州バートルズビルのバイオスペック(Biospec(Bartlesville,OK))からのミニビーズビーターの均質化設定において、細胞を2分間均質化した。管を短時間遠沈して、ビーズを沈下させた。液体を4本の新鮮な1.5mL微量遠心管に移して、各管に0.2mLのクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)を添加した。管を手で1分間振盪し、3分間静置した。次に管を4℃において14,000rpmで10分間遠沈した。上層を4本の新しい管に移した。各管にイソプロピルアルコール(0.5mL)を添加した。管を室温で15分インキュベートし、続いて4℃において14,000rpmで10分間遠心分離した。ペレットをRNA分解酵素を含まない水で作った75%エタノール各1mLで洗浄し風乾した。次に全RNAサンプルを500μLの水に再溶解し1:50希釈RNAサンプルを使用して、A260nmでRNA量を測定した。全部で3.14mgのRNAが得られた。
この全RNAサンプルをキアゲン(Qiagen)RNeasy全RNA Midiキットで、製造業者のプロトコルに従ってさらに精製した。このようにして全RNAサンプルを2mLに希釈して、80μLのβ−メルカプトエタノールおよび5.6mLの100%エタノールを添加した8mLのRLT緩衝液と混合した。サンプルを4つの部分に分割し、4本のRNeasy Mididカラムに装入した。次にカラムを5分間4500×gで遠心分離した。カラムを洗浄するために2mLのRPE緩衝液を装入し、カラムを2分間4500×gで遠心分離した。洗浄ステップを1回繰り返したが、遠心分離時間は5分間に延長した。各カラムに250μLのRNA分解酵素を含まない水を適用して全RNAを溶出し、1分間待って4500×gで3分間遠心処理した。
次にファーマシア(Pharmacia)のキットプロトコルに従って、上の全RNAサンプルからPolyA(+)RNAを単離した。簡単に述べると、2オリゴ−dT−セルロースカラムを使用した。カラムを各1mLの高塩濃度緩衝液で2回洗浄した。前段階からの全RNAサンプルを2mLの全容積に希釈して、10mMトリス/HCl、pH8.0、1mM EDTAに調節した。サンプルを65℃で5分間加熱し、次に氷上にのせた。サンプル緩衝液(0.4mL)を添加して、次にサンプルを重力供給法下で2本のオリゴ−dT−セルロースカラムに装入した。カラムを350×gで2分間遠心分離し、各0.25mLの高塩濃度緩衝液で2回洗浄し、毎回それに350×gで2分間の遠心分離が続いた。カラムを低塩濃度緩衝液でさらに3回洗浄し、同一の遠心分離ルーチンが続いた。カラムを65℃に予熱された溶出緩衝液各0.25mLで4回洗浄して、Poly(A)+RNAを溶出し、同一の遠心分離手順が続いた精製プロセス全体を1回繰り返した。精製poly(A)+RNAを濃度30.4ng/μLで得た。
BDクロンテック(BD−Clontech)によって規定されるLD−PCR法、および0.1μgのpolyA(+)RNAサンプルを使用して、cDNAを発生させた。具体的には第1ストランドcDNA合成のために、3μLのpoly(A)+RNAサンプルと、1μLのSMART IVオリゴヌクレオチド(配列番号145)および1μLのCDSIII/3’PCRプライマー(配列番号146)とを混合した。混合物を72℃に2分間加熱して、氷上で2分間冷却した。2μLの第1ストランド緩衝液、1μLの20mM DTT、1μLの10mM dNTPミクス、および1μLのパワースクリプト(Powerscript)逆転写酵素を管に添加した。混合物を42℃で1時間インキュベートし、氷上で冷却した。
第1ストランドcDNA合成混合物をPCR反応のためのテンプレートとして使用した。具体的には反応混合物は、次を含有した。2μLの第1ストランドcDNA混合物、2μLの5’−PCRプライマー(配列番号147)、2μLのCDSIII/3’−PCRプライマー(配列番号146)、80μLの水、10μLの10×アドバンテージ(Advantage)2PCR緩衝液、2μLの50×dNTPミクス、および2μLの50×アドバンテージ(Advantage)2ポリメラーゼミクス。サーモサイクラー条件を95℃で20秒間に設定し、GenAmp9600装置上において95℃で5秒間および68℃で6分間を14サイクルがそれに続いた。PCR生成物をアガロースゲル電気泳動法および臭化エチジウム染色によって定量した。
75μLの上のPCR生成物(cDNA)と、キットで提供される3μLの20μg/μLタンパク質分解酵素Kとを混合した。混合物を45℃で20分間インキュベートし、次に75μLの水を添加して、混合物を150μLのフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール混合物(25:24:1)で抽出した。水相を150μLのクロロホルム:イソアミルアルコール(25:1)でさらに抽出した。次に水相を15μLの3M酢酸ナトリウム、2μLの20μg/μLのグリコーゲン、および400μLの100%エタノールと混合した。混合物を即座に微量遠心管中で、室温において14000rpmで20分間遠心分離した。ペレットを150μLの80%エタノールで1回洗浄し、風乾させて79μLの水に溶解した。
溶解したcDNAを引き続いてSfiIで消化した(79μLのcDNAと、10μLの10×SfiI緩衝液、10μLのSfiI酵素、および1μLの100×BSAとを混合し、混合物を50℃で2時間インキュベートした)。キシレンシアノール染料(2μLの1%)を添加した。次に製造業者の手順に正確に従って、混合物をキットで提供されるクロマスピン(Chroma Spin)400カラム上で画分した。画分をカラムから収集し、アガロースゲル電気泳動法で分析した。cDNAを含有する第1の3つの画分をプールして、cDNAをエタノールで沈殿した。沈殿したcDNAを7μLの水に再溶解して、キットで提供されるpDNR−LIBにライゲートした。
ライブラリー配列決定
ライゲーション生成物を使用して、ストラタジーン(Stratagene)からの大腸菌(E.Coli)XL−1ブルー電気穿孔コンピテント細胞を形質転換した。推定総数2×106個のコロニーが得られた。マサチューセッツ州ベバリーのアージンコート・バイオサイエンス社(Agencourt Bioscience Corporation(Beverly,MA))によってM13順方向プライマー(配列番号148)を使用して、cDNAライブラリーの配列決定が実施された。
実施例14
クサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT1)遺伝子の同定およびクローニング
本実施例は、9,984個のcDNA配列の1つの内の推定上のM.アルピナ(alpina)DGAT1の同定について述べる。具体的にはBLAST((「基礎的局在性配列探索ツール(Basic Local Alignment Search Tool)」アルトシュル(Altschul),S.F.ら著、「J.Mol.Biol.」215:403〜410頁(1993年))を使用して、Y.リポリティカ(lipolytica)DGAT1タンパク質配列(実施例7、配列番号14)をM.アルピナ(alpina)cDNAの各配列に対するクエリー配列として使用した。1つのcDNA断片はY.リポリティカ(lipolytica)DGAT1との顕著な相同性を有したので、M.アルピナ(alpina)DGAT1(配列番号175)として暫定的に同定された。引き続く公的に入手できる配列データベースに対するクエリーとして配列番号175を用いたBLAST分析は、cDNAといくつかのその他の種からのDGAT1との顕著な類似度を確認した。次にcDNA末端迅速増幅(RACE)技術およびゲノム歩行を使用して、そのクサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)コード配列全体を単離した。
ゲノムDNAの単離
キアゲン(Qiagen)からのキアプレップ(QiaPrep)スピンミニプレップキット(カタログ番号627106)を使用してクサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)(ATCC#16266)からゲノムDNAを単離した。YPD寒天プレート上に生育した細胞をこすり取り1.2mLのキット緩衝液P1に再懸濁した。再懸濁した細胞をそれぞれ0.6mLのガラスビーズ(0.5mm径)を含有する2本の2.0mLネジ蓋管に入れた。オクラホマ州バートルズビルのバイオスペック(Biospec(Bartlesville,OK))からのミニビーズビーターの均質化設定において、細胞を2分間均質化した。次に管をエッペンドルフ(Eppendorf)微量遠心管内で14,000rpmで2分間遠心分離した。上清(0.75mL)を3本の1.5mL微量遠心管に移した。各管に等容積のキット緩衝液P2を添加した。管を反転して3回混合した後、0.35mLの緩衝液N3を各管に添加した。管を5回反転させて内容物を再度混合した。混合物をエッペンドルフ(Eppendorf)微量遠心管中で14,000rpmで5分間遠心分離した。各管からの上清を別々のキットスピンカラムに移した。カラムを14,000rpmで1分間遠心分離し、緩衝液PEで1回洗浄し、再度14,000rpmで1分間遠心分離し、続いて14,000rpmで1分間、最終遠心分離した。各カラムに緩衝液EB(50μL)を添加して、1分間静置した。次にゲノムDNAを14,000rpmで1分間の遠心分離によって溶出した。
推定上のDGAT1遺伝子の5’末端領域のクローニング
カリフォルニア州パロアルトのクロンテック(Clontech(Palo Alto,CA))からのユニバーサル・ゲノム歩行TMキットを利用して、M.アルピナ(alpina)DGAT1の5’末端領域に対応する1辺のゲノムDNAを得た。クローニングで使用するために、入手できる部分的DGAT1遺伝子配列(配列番号149)に基づいて、プライマーMARE2−N1およびMARE2−N2(配列番号150および151)を合成した。
簡単に述べると、各2.5μgのM.アルピナ(alpina)ゲノムDNAをDraI、EcoRV、PvuIIまたはStuIで個別に消化し、キアゲン(Qiagen)キアクイック(QiaQuick)PCR精製キットを使用して、消化DNAサンプルを精製して各30μLのキット緩衝液EBで溶出し、次に精製サンプルを下に示すようなゲノム歩行アダプター(配列番号152[上のストランド]および153[下のストランド])にライゲートした。
Figure 2008524984
具体的には各ライゲーション反応混合物は、1.9μLの25μMゲノム歩行アダプター、1.6μLの10×ライゲーション緩衝液、0.5μLのT4DNAリガーゼ、および4μLの精製消化ゲノムDNAサンプルの1つを含有した。反応混合物を16℃で一晩インキュベートした。反応を70℃で5分間のインキュベーションによって終結した。次に72μLの10mMトリスHCl、1mM EDTA、pH7.4の緩衝液を各ライゲーション反応ミクスに添加した。
次に各ライゲーション生成物をテンプレートとして使用して、4つのPCR反応を実施した。各PCR反応混合物は、1μLのライゲーション混合物、1μLの20μM MARE2−N1(配列番号150)、2μLの10μMキットプライマーAP1(配列番号154)、21μLの水、および日本国滋賀県大津市520−2193のタカラバイオ(TaKaRa Bio Inc.)からの25μLのExTaqプレミクスTaq 2×PCR溶液を含有した。PCR増幅を次のように実施した。94℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、および72℃で90秒間の延長を30サイクル。72℃で7分間の最終延長サイクルを実施し、続いて4℃での反応終結。
次に1μLの1:50希釈した第1のPCR生成物をテンプレートとして使用し、1μLの20μM MARE2−N2(配列番号151)、2μLの10uMキットプライマーAP2(配列番号155)、21μLの水、およびタカラ(TaKaRa)からの25μLのExTaqプレミクスTaq 2×PCR溶液を使用して、第2のPCR反応を実施した。上述と同一の条件を使用して、PCR反応を30サイクル実施した。
DraI消化されアダプターにライゲートされたゲノムDNAをテンプレートとして使用すると、約1.6kbのPCR生成物が観察された。この断片をキアゲン(Qiagen)PCR精製キットを使用して精製し、pCR2.1−TOPOにライゲートして配列決定した。配列(配列番号156)の分析は、このDNA断片がDGAT1 cDNA断片の5’末端延長であることを示した。
推定上のDGAT1遺伝子の3’末端領域のクローニング
RACEによる推定上のDGAT1遺伝子の3’末端領域をクローニングするために、プライマーARE−N3−1およびARE−N3−2(それぞれ配列番号157および158)を合成した。
インビトロジェン(Invitrogen)の3’末端RACEキットを使用し、製造業者のプロトコルに従って3’末端RACEを実施した。簡単に述べると、11μLの水中の90ngのM.アルピナ(alpina)polyA(+)RNAサンプルと1μLの10μMアダプタープライマー(AP、配列番号159)溶液とを混合した。混合物を70℃で10分間加熱して、氷上で2分間冷却した。次に各2μLの10×PCR緩衝液、25mMのMgCl2、および0.1MのDTT、および1μLの10mM dNTPミクスを添加した。反応混合物を42℃で3分間加熱し、次にキットで提供されるスーパースクリプト(Superscript)II逆転写酵素(1μL)を添加した。反応を42℃で50分間進行させた。その後反応混合物を70℃で15分間加熱して、氷上で2分間冷却した。キットからのRNA分解酵素H(1μL)を添加して、全混合物を37℃で20分間インキュベートした。
反応混合物(2μL)をPCRテンプレートとして直接使用した。PCR反応混合物は、1μLの20μM ARE−N3−1(配列番号157)、2μLの10uMキットプライマーUAP(配列番号160)、タカラ(TaKaRa)からの25μLのExTaqプレミクスTaq 2×PCR溶液、および20μLの水を含有した。PCR増幅を上で既述したように実施した。次にプライマーAREN3−1をプライマーARE−N3−2(配列番号158)で置き換えたこと以外は同一条件を使用して、希釈PCR反応混合物(1μLの1:10希釈)を2回目のPCRのためにテンプレートとして使用した。
約300bpの断片がPCRから得られた。キアゲン(Qiagen)のキアクイック(QiaQuick)PCR精製キットでの精製後、断片をpCR2.1−TOPO中にクローンして配列決定した。配列分析は、配列がpolyA末端(配列番号161)を含むDGAT1 cDNAの3’末端をコードすることを確認した。
M.アルピナ(alpina)のDGAT1をコードするヌクレオチド配列の完全なアセンブリー
5’領域(配列番号156)配列、オリジナルのcDNA断片(配列番号149)、および3’領域(配列番号161)のアセンブリーからは、M.アルピナ(alpina)DGAT1コード配列(配列番号17)が生じた。5’領域ゲノムの配列は、イントロン(配列番号17内のヌクレオチド塩基449〜845)を含んだ。
実施例15
多価不飽和脂肪酸を生じるように組み換えたクサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)DGAT1Inヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)Y2067U株の発現
本実施例は、Y.リポリティカ(lipolytica)Y2067U株におけるM.アルピナ(alpina)DGAT1(前出、実施例10)の発現、および生成されるEPAおよびその他のPUFAの最終濃度に対するMDGAT1発現の効果について述べる。
M.アルピナ(alpina)DGAT1 ORFを次のようにしてクローンした。最初にcDNAのクローニングを助けるために、DGAT1の第2のコドン配列を「ACA」から「GCA」に変化させ、スレオニンからアラニンへのアミノ酸変化がもたらされた。これは、M.アルピナ(alpina)DGAT1 ORFの完全なコード領域をプライマーMACAT−F1およびMACAT−R(それぞれ配列番号162および163)で増幅して達成された。具体的にはPCR反応混合物は、20μMのプライマーMACAT−F1およびMACAT−R溶液各1μL、1μLのM.アルピナ(alpina)cDNA(前出、実施例13)、22μLの水、およびの日本国滋賀県大津市520−2193のタカラバイオ(TaKaRa Bio Inc.)からの25μLのExTaqプレミクスTaq 2×PCR溶液を含有した。増幅を次のようにして実施した。94℃で150秒間の初期変性、続いて94℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、および72℃で90秒間の延長を30サイクル。72℃で10分間の最終延長サイクルを実施し、続いて4℃での反応終結。約1600bpのDNA断片がPCR反応から得られた。これをキアゲン(Qiagen)のPCR精製キットを使用して、製造業者のプロトコルに従って精製した。
FBAINプロモーター(配列番号111)およびPEX20−3’ターミネーター領域の制御下でORFがクローンされるように、M.アルピナ(alpina)DGAT1 ORFをNco I−およびNot I−消化プラスミドpZUF17(配列番号164、図7E)に挿入した。しかしDGAT1 ORFは内部NcoI部位を含有したので、クローニングのために2つの別々の制限酵素消化を実施することが必要であった。最初に約2μgの精製PCR生成物をBamHIおよびNco Iで消化した。反応混合物は全容積60μL中に、プロメガ(Promega)からの各20Uの酵素、および6μLの制限緩衝液Dを含有した。混合物を37℃で2時間インキュベートした。約320bpの断片をアガロースゲル電気泳動法によって分離し、キアゲン(Qiagen)キアエクス(Qiaex)IIゲル精製キットを使用して精製した。Nco IをNot Iで置換したたこと以外は、上と同一の反応条件を使用して、別々に約2μgの精製PCR生成物をBamHIおよびNot Iで消化した。上記のように約1280bpの断片が単離され、精製された。最後に約3μgのpZUF17を上述のようにNco IおよびNot Iで消化し精製して、約7kBの断片を生じさせた。
約7kBのNco I/Not IpZUF17断片、約320bpのNco I/BamHIDGAT1断片、および約1280bpのBamHI/Not IDGAT1断片を三元ライゲーションで共にライゲートし、室温で一晩インキュベートした。ライゲーション混合物は全容積20μL中に、7kBの断片100ngおよび320bpおよび1280bpの断片各200ng、2μLのリガーゼ緩衝液、およびプロメガ(Promega)からの2U T4 DNAリガーゼを含有した。ライゲーション生成物を使用して、製造業者のプロトコルに従ってインビトロゲン(Invitrogen)からの大腸菌(E.Coli)Top10化学コンピテント細胞を形質転換した。
ミニプレップ分析のために、形質転換からの個々のコロニー(総計12個)を使用して培養を接種した。制限酵素地図および配列決定は、12個のコロニー中5個が「pMDGAT1−17」と命名された所望のプラスミドを持つことを示した(図4C、配列番号165)。
「対照」ベクターpZUF−MOD−1(配列番号168)を次のようにして調製した。最初にプライマーpzuf−mod1(配列番号166)およびpzuf−mod2(配列番号167)を使用し、カリフォルニア州パロアルトのクロンテック(ClonTech(PaloAlto,CA))からのpDNR−LIBをテンプレートとして使用して、252bpの「スタッファー」DNA断片を増幅した。増幅された断片をキアゲン(Qiagen)キアクイック(QiaQuick)PCR精製キットによって精製し、標準条件を使用してNcoIおよびNotIで消化して、次にキアクイック(QiaQuick)PCR精製キットによって再度精製した。この断片を同様に消化されたNcoI−/NotI−cut pZUF17ベクター(配列番号164、図10E)にライゲートして、得られたライゲーション混合物を使用してインビトロゲン(Invitrogen)からの大腸菌(E.Coli)Top10細胞を形質転換した。得られた4個のコロニーからキアゲン(Qiagen)キアプレップ(QiaPrep)スピンミニプレップキットを使用して、プラスミドDNAを精製した。精製プラスミドをNcoIおよびNotIで消化して、約250bpの断片の存在を確認した。得られたプラスミドを「pZUF−MOD−1」と命名した(図4D、配列番号168)。
Y.リポリティカ(lipolytica)Y2067U株(実施例10、全脂質の14%のEPAを生成する)を一般方法に従ってそれぞれpMDGAT1−17およびpZUF−MOD−1で形質転換した。形質転換体をアミノ酸強化した合成MM中で2日間生育させ、HGM中での4日間がそれに続いた。(一般方法で述べられるような)GC分析に基づく、pMDGAT1−17を含有する2つの形質転換体、およびpZUF−MOD−1を含有する2つの形質転換体の脂肪酸プロフィールを下の表18に示す。脂肪酸は18:0、18:1(オレイン酸)、18:2(LA)、GLA、DGLA、ARA、ETA、およびEPAとして同定され、各組成物は全脂肪酸の%で表される。
Figure 2008524984
上で実証されるように、プラスミドpMDGAT1−17からのM.アルピナ(alpina)DGAT1の発現は、EPA濃度を「対照」株中での約13.3%から、約14.1%(「Y2067U+pMDGAT1−17#1」)および約15.1%(「Y2067U+pMDGAT1−17#2」)にそれぞれ増大させる。
実施例16
DGAT1真菌相同体の同定
本実施例は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)およびクサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)DGAT1配列(それぞれ配列番号13および17)を使用した、その他の真菌中のオルソロガスタンパク質の同定について述べる。
BLAST「nr」データベース(全ての非冗長ジェンバンクCDS翻訳、3次元構造ブルックヘブンタンパク質データバンクに由来する配列、スイスPROTタンパク質配列データベース、EMBLおよびDDBJデータベースを含んでなる)に含まれる配列に対する類似性についてBLAST探索を行って、オルソロガスDGAT1真菌タンパク質を同定した。国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)によって提供されるBLASTNアルゴリズムを使用して、「nr」データベースに含まれる公共的に入手できる全てのDNA配列との類似性について、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)およびクサレケカビ・アルピナ(Mortierella alpina)DGAT1配列(配列番号13および17)を分析した。DNA配列を全ての読み枠で翻訳し、NCBIによって提供されるBLASTXアルゴリズム(ギッシュ(Gish),W.およびステーツ(States),「D.J.Nature Genetics」3:266〜272頁(1993年))を使用して、「nr」データベースに含まれる全ての公共的に入手できるタンパク質配列との類似性について比較した。これらの探索は、4個のオルソロガスタンパク質の同定をもたらした(下で表19に示す)。表19は、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)DGAT1配列(配列番号13)と、本願明細書で開示される各DGAT1タンパク質との配列比較結果を観察された「%同一性」に関してさらに示す(2個のタンパク質間で同一のアミノ酸の百分率として定義される)。
Figure 2008524984
実施例17
普遍的および真菌DGAT1モチーフの同定
本実施例は、その他の既知のDGAT1配列に関連して、本発明のDGAT1配列を使用した真菌および普遍的DGAT1モチーフの同定について述べる。
DGAT1タンパク質の徴候であるモチーフ(すなわち進化的に関連したタンパク質のアラインメント配列に沿って特異的位置で保存されるアミノ酸の組)を同定するために、DGAT1配列の配列アラインメントを生成することが最初に必要であった。このために、配列番号14、18、19、20、21、および22の真菌配列を使用した。さらに次の6個の非真菌源からのDGAT1オルソログもまた、配列アラインメントに含めた。マウス(MmDGAT1、ジェンバンク登録番号AF384160、本願明細書の配列番号169に対応する)、ダイズ(Gm DGAT1、米国公開特許第20040088759 A1号の配列番号16、本願明細書の配列番号170に対応する)、アラビドプシス(Arabidopsis)(At DGAT1、米国公開特許第20040088759 A1号の配列番号2、本願明細書の配列番号171に対応する)、コメ(Os DGAT1、米国公開特許第20040088759 A1号の配列番号14、本願明細書の配列番号172に対応する)、小麦(Ta DGAT1、米国特許出願公開第20040088759 A1号明細書の配列番号22、本願明細書の配列番号174に対応する)、およびシソ(Perilla frutescens)(Pf、ジェンバンク登録番号AF298815、本願明細書の配列番号173に対応する)。
次のパラメーターでクラスタルWを使用して、DNASTARのメガライン(Megalign)プログラムを使用して、配列アラインメントを行った。ギャップペナルティ=10、ギャップ長ペナルティ=0.2、遅延発散数列(%)=30、DNA遷移重量=0.5、およびゴンネット(Gonnet)シリーズによるタンパク質重量マトリックス。この配列アラインメントの結果を図8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g、および8hに示す。配列アラインメントの分析に基づいて、8個のモチーフが真菌DGAT1配列に特有であるとして同定された。さらに植物、動物、および真菌からのDGAT1配列中に普遍的に存在する、7個のモチーフもまた推定された。
Figure 2008524984
タンパク質相同体ファミリーの配列アラインメントにおいて、(配列アラインメント位置は配列番号14に対する)位置97〜104、278〜284、334〜340、364〜374、418〜424、415〜424、456〜466、および513〜519に位置するモチーフは、DGAT1タンパク質内に高度の保存を有するので、その中に位置するアミノ酸残基は、構造、安定性、またはタンパク質活性に必須であることが予期される。観察された配列保存に基づいて、当業者はどのようにモチーフを使用して、配列番号23〜37を識別子または「シグネチャ」として提供し、新たに判定された配列があるタンパク質が本願明細書で述べられるDGAT1タンパク質ファミリーに属するかどうかを判定するかを理解するであろう。
油性酵母菌における脂質蓄積のための生化学的機序の概略図を示す。 ω−3およびω−6脂肪酸生合成経路を図示する。 ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)における遺伝子発現のためのプラスミドベクターpY5の構築を図示する。 (A)pY20、(B)pLV13、(C)pMDGAT1−17、および(D)pZUF−Mod−1のプラスミドマップを提供する。 全脂質画分中に15%までのEPAを生成する、様々なヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)株の開発を図解する。 (A)pKUNF12T6E、(B)pDMW232、(C)pZP3L37、(D)pY37/F15、および(E)pKO2UM26Eのプラスミドマップを提供する。 (A)pZKUM、(B)pKO2UF2PE、(C)pZKUT16、(D)pZP2l7+Ura、および(E)pZUF17のプラスミドマップを提供する。 クラスタルWを使用したDNASTARのメガライン(Megalign)を使用した、DGAT1タンパク質の配列アラインメントである。 クラスタルWを使用したDNASTARのメガライン(Megalign)を使用した、DGAT1タンパク質の配列アラインメントである。 クラスタルWを使用したDNASTARのメガライン(Megalign)を使用した、DGAT1タンパク質の配列アラインメントである。 クラスタルWを使用したDNASTARのメガライン(Megalign)を使用した、DGAT1タンパク質の配列アラインメントである。 クラスタルWを使用したDNASTARのメガライン(Megalign)を使用した、DGAT1タンパク質の配列アラインメントである。 クラスタルWを使用したDNASTARのメガライン(Megalign)を使用した、DGAT1タンパク質の配列アラインメントである。 クラスタルWを使用したDNASTARのメガライン(Megalign)を使用した、DGAT1タンパク質の配列アラインメントである。 クラスタルWを使用したDNASTARのメガライン(Megalign)を使用した、DGAT1タンパク質の配列アラインメントである。

Claims (39)

  1. (a)配列番号14および18よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子、
    (b)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、および2×SSC、0.1%SDSで洗浄、次いで0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズする単離された核酸分子、または
    (c)(a)または(b)と完全に相補である単離された核酸分子
    よりなる群から選択される、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする単離された核酸分子。
  2. 配列番号13および17よりなる群から選択される請求項1に記載の単離された核酸分子。
  3. 請求項1に記載の単離された核酸分子によってコードされるポリペプチド。
  4. 請求項2に記載の単離された核酸分子によってコードされるポリペプチド。
  5. 配列番号14に記載の配列を有するポリペプチドと比較して、BLASTP法によるアラインメントに基づいて少なくとも70%の同一性を有する少なくともアミノ酸526個のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする第1のヌクレオチド配列、または
    第1のヌクレオチド配列の相補体を含んでなる第2のヌクレオチド配列
    を含んでなる単離された核酸分子。
  6. 配列番号18に記載の配列を有するポリペプチドと比較して、BLASTP法によるアラインメントに基づいて少なくとも70%の同一性を有する少なくともアミノ酸525個のジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする第1のヌクレオチド配列、または
    第1のヌクレオチド配列の相補体を含んでなる第2のヌクレオチド配列
    を含んでなる単離された核酸分子。
  7. (a)配列番号16に記載のアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子、
    (b)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、および2×SSC、0.1%SDSで洗浄、次いで0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズする単離された核酸分子、または
    (c)(a)または(b)と完全に相補である単離された核酸分子
    よりなる群から選択される、アシル−CoA:ステロール−アシルトランスフェラーゼをコードする単離された核酸分子。
  8. 配列番号15よりなる群から選択される請求項7に記載の単離された核酸分子。
  9. 請求項7に記載の単離された核酸分子によってコードされるポリペプチド。
  10. 請求項8に記載の単離された核酸分子によってコードされるポリペプチド。
  11. 配列番号16に記載の配列を有するポリペプチドと比較して、BLASTP法によるアラインメントに基づいて少なくとも70%の同一性を有する少なくともアミノ酸543個のアシル−CoA:ステロール−アシルトランスフェラーゼをコードする第1のヌクレオチド配列、または
    第1のヌクレオチド配列の相補体を含んでなる第2のヌクレオチド配列
    を含んでなる単離された核酸分子。
  12. 適切な制御配列に作動的に結合した請求項1または7のいずれかに記載の単離された核酸分子を含んでなるキメラ遺伝子。
  13. 請求項12に記載のキメラ遺伝子を含んでなる形質転換宿主細胞。
  14. 藻類、細菌、カビ、真菌、および酵母よりなる群から選択される請求項13に記載の形質転換宿主細胞。
  15. 酵母が油性酵母である請求項14に記載の形質転換宿主細胞。
  16. 油性酵母細胞が、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポミセス(Lipomyces)よりなる群から選択される請求項15に記載の形質転換宿主細胞。
  17. 宿主細胞がヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である請求項16に記載の形質転換宿主細胞。
  18. ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#8862、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#18944、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#76982、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#90812、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LGAMS(7)1よりなる群から選択される株である請求項17に記載の形質転換宿主細胞。
  19. a)ゲノムライブラリーを請求項1に記載の核酸分子で探索し、
    b)請求項1に記載の核酸分子とハイブリダイズするDNAクローンを同定し、
    c)ステップ(b)で同定されたクローンを含んでなるゲノム断片を配列決定することを含んでなり、
    配列決定されたゲノム断片が、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする、
    ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする核酸分子の取得方法。
  20. a)配列番号13および17よりなる群から選択される配列の一部に対応する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、
    b)ステップ(a)のオリゴヌクレオチドプライマーを使用してクローニングベクター中に存在するインサートを増幅させることを含んでなり、
    増幅されたインサートが、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1をコードするアミノ酸配列の一部をコードする
    ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする核酸分子の取得方法。
  21. 請求項19または20に記載の方法の生成物。
  22. a)配列番号31、
    b)配列番号32、
    c)配列番号33、
    d)配列番号34、
    e)配列番号35、
    f)配列番号36、
    g)配列番号37、
    h)配列番号23、
    i)配列番号24、
    j)配列番号25、
    k)配列番号26、
    l)配列番号27、
    m)配列番号28、
    n)配列番号29、および
    o)配列番号30よりなる群から選択されるアミノ酸モチーフをコードする単離された核酸分子。
  23. a)配列番号31、
    b)配列番号32、
    c)配列番号33、
    d)配列番号34、
    e)配列番号35、
    f)配列番号36、
    g)配列番号37、
    h)配列番号23、
    i)配列番号24、
    j)配列番号25、
    k)配列番号26、
    l)配列番号27、
    m)配列番号28、
    n)配列番号29、および
    o)配列番号30よりなる群から選択されるアミノ酸モチーフ配列。
  24. (a)(i)適切な制御配列の制御下にある配列番号14、18、19、20、21、および22よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有するジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子、および
    (ii)脂肪酸供給源
    を含んでなる、形質転換された宿主細胞を準備し、
    (b)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が発現する条件下でステップ(a)の細胞を生育させて、脂肪酸をトリアシルグリセロールに転移させ、
    (c)ステップ(b)のトリアシルグリセロールを場合により回収すること
    を含んでなる形質転換された宿主細胞中のトリアシルグリセロール含量の増大方法。
  25. (a)(i)機能性ω−3/ω−6脂肪酸生合成経路をコードする遺伝子、
    (ii)適切な制御配列の制御下にある配列番号14、18、19、20、21、および22よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有するジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子
    を含んでなる形質転換された宿主細胞を準備し、
    (b)(i)および(ii)の遺伝子が発現する条件下でステップ(a)の細胞を生育させて、少なくとも1つのω−3またはω−6脂肪酸の生産、およびそのトリアシルグリセロールへの転移がもたらされ、
    (c)ステップ(b)のトリアシルグリセロールを場合により回収すること
    を含んでなる形質転換された宿主細胞中のトリアシルグリセロールのω−3またはω−6脂肪酸含量の増大方法。
  26. (a)(i)適切な制御配列の制御下にある、
    1)配列番号31、
    2)配列番号32、
    3)配列番号33、
    4)配列番号34、
    5)配列番号35、
    6)配列番号36、および
    7)配列番号37に記載のアミノ酸モチーフの全てを含んでなる、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子、および
    (ii)脂肪酸供給源
    を含んでなる形質転換宿主細胞を準備し、
    (b)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が発現し、脂肪酸をトリアシルグリセロールに転移させる条件下で、ステップ(a)の細胞を生育させ、
    (c)ステップ(b)のトリアシルグリセロールを場合により回収すること
    を含んでなる形質転換宿主細胞中のトリアシルグリセロール含量の増大方法。
  27. (a)(i)適切な制御配列の制御下にある、
    1)配列番号23、
    2)配列番号24、
    3)配列番号25、
    4)配列番号26、
    5)配列番号27、
    6)配列番号28、
    7)配列番号29、および
    8)配列番号30に記載のアミノ酸モチーフの全てを含んでなる、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子、および
    (ii)脂肪酸供給源
    を含んでなる形質転換宿主細胞を準備し、
    (b)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が発現し、脂肪酸をトリアシルグリセロールに転移させる条件下で、ステップ(a)の細胞を生育させ、
    (c)ステップ(b)のトリアシルグリセロールを場合により回収すること
    を含んでなる形質転換宿主細胞中のトリアシルグリセロール含量の増大方法。
  28. (a)(i)機能性のω−3/ω−6脂肪酸生合成経路をコードする遺伝子、および
    (ii)適切な制御配列の制御下にある、
    1)配列番号31、
    2)配列番号32、
    3)配列番号33、
    4)配列番号34、
    5)配列番号35、
    6)配列番号36、および
    7)配列番号37に記載のアミノ酸モチーフの全てを含んでなる、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子
    を含んでなる形質転換宿主細胞を準備し、
    (b)(i)および(ii)の遺伝子が発現し、少なくとも1つのω−3またはω−6脂肪酸の生成、およびそのトリアシルグリセロールへの転移がもたらされる条件下で、ステップ(a)の細胞を生育させ、
    (c)ステップ(b)のトリアシルグリセロールを場合により回収すること
    を含んでなる形質転換宿主細胞中のトリアシルグリセロールのω−3またはω−6脂肪酸含量の増大方法。
  29. (a)(i)機能性のω−3/ω−6脂肪酸生合成経路をコードする遺伝子、および
    (ii)適切な制御配列の制御下にある、
    1)配列番号23、
    2)配列番号24、
    3)配列番号25、
    4)配列番号26、
    5)配列番号27、
    6)配列番号28、
    7)配列番号29、および
    8)配列番号30に記載のアミノ酸モチーフの全てを含んでなる、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子
    を含んでなる形質転換宿主細胞を準備し、
    (b)(i)および(ii)の遺伝子が発現し、少なくとも1つのω−3またはω−6脂肪酸の生成、およびそのトリアシルグリセロールへの転移がもたらされる条件下で、ステップ(a)の細胞を生育させ、
    (c)ステップ(b)のトリアシルグリセロールを場合により回収すること
    を含んでなる形質転換宿主細胞中のトリアシルグリセロールのω−3またはω−6脂肪酸含量の増大方法。
  30. 機能性のω−3/ω−6脂肪酸生合成経路をコードする遺伝子が、デサチュラーゼおよびエロンガーゼよりなる群から選択される請求項25、28または29のいずれか一項に記載の方法。
  31. デサチュラーゼが、Δ9デサチュラーゼ、Δ12デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ17デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼ、およびΔ4デサチュラーゼよりなる群から選択される請求項30に記載の方法。
  32. 宿主細胞が、藻類、細菌、カビ、真菌、および酵母よりなる群から選択される請求項24〜29のいずれか一項に記載の方法。
  33. 宿主細胞が油性酵母である請求項32に記載の方法。
  34. 油性酵母が、ヤロウィア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、ロドトルラ(Rhodotorula)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、およびリポミセス(Lipomyces)よりなる群から選択される属のメンバーである請求項33に記載の方法。
  35. 油性酵母がヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である請求項34に記載の方法。
  36. ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#20362、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#8862、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#18944、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#76982、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)ATCC#90812、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)LGAMS(7)1よりなる群から選択される株である請求項35に記載の方法。
  37. 脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、γ−リノール酸、ジホモ−γ−リノール酸、アラキドン酸、α−リノール酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、エイコサジエン酸、およびエイコサトリエン酸よりなる群から選択される請求項24、25、26、27、28または29のいずれか一項に記載の方法。
  38. (a)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1活性を有することが疑われるポリペプチドのアミノ酸配列を得て、
    (b)ステップ(a)のポリペプチドのアミノ酸配列中で、
    1)配列番号31、
    2)配列番号32、
    3)配列番号33、
    4)配列番号34、
    5)配列番号35、
    6)配列番号36、および
    7)配列番号37に記載のアミノ酸モチーフ配列の全ての存在を同定すること
    を含んでなり、
    ポリペプチド中のステップ(a)のモチーフ配列全ての存在が、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1活性の徴候である
    ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1活性を有するポリペプチドの同定法。
  39. (a)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1活性を有することが疑われる真菌ポリペプチドのアミノ酸配列を得て、
    (b)ステップ(a)のポリペプチドのアミノ酸配列中で、
    1)配列番号23、
    2)配列番号24、
    3)配列番号25、
    4)配列番号26、
    5)配列番号27、
    6)配列番号28、
    7)配列番号29、および
    8)配列番号30に記載のアミノ酸モチーフ配列の全ての存在を同定すること
    を含んでなり、
    ポリペプチド中のステップ(a)のモチーフ配列の全ての存在が、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1活性の徴候である
    ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ−1活性を有する真菌ポリペプチドの同定法。
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