JP2008519829A - Notch経路活性化の阻害による腸腺腫および/または腺癌の処置 - Google Patents

Notch経路活性化の阻害による腸腺腫および/または腺癌の処置 Download PDF

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Abstract

本発明は、生化学および医学の分野に関する。より具体的には、本発明は、腸腫瘍形成の処置のための方法および医用薬剤に関する。本発明は、Notch経路活性化の阻害剤(例えば、γ-セクレターゼ阻害剤)が、腸腺腫および/または腺癌の処置において極めて有用であるという驚くべき所見を開示する。

Description

本発明は、生化学および医学の分野に関する。より具体的には、本発明は、腸腺腫(ポリープとも呼ばれる)および/または腺癌の処置のための方法ならびに医用薬剤に関する。
小腸は消化管の最も大きな構成要素であり、かつ消化および吸収の主要な部位である。胃からの糜粥を受けることに加えて、小腸の最初の分節、十二指腸は、胆嚢から胆汁、および膵臓から消化酵素を受ける。膵酵素は不活性型で産生され、十二指腸の管腔において活性になるのみである。小腸は3つの部分、十二指腸、空腸、および回腸に分けられる。
管腔表層は、長さが0.5〜1.5mmの絨毛と呼ばれる多数の指状または葉状突起により完全に覆われている。絨毛のコアは固有層の延長部分であり、それの表面は単層円柱上皮により覆われている。絨毛の根元における管腔表層上への開口部は、腸腺またはリーベルキューンの陰窩と呼ばれる単層管状構造である。陰窩は粘膜筋板へと下方に広がっている。それらを裏打ちする単層円柱上皮は絨毛を覆うものに続いている。上皮の主要な細胞型は腸細胞または吸収細胞である。各腸細胞は、それの管腔表層に約3000個の微絨毛を有し、光学顕微鏡において絨毛の表面上にけばだった線状の縁のように見える。輪状襞と呼ばれる粘膜下組織における襞と共に、絨毛および微絨毛は小腸の吸収表面を約600倍増加させる。
小腸の上皮は以下の細胞型からなる:腸細胞、杯細胞、パネート細胞、腸内分泌細胞、M細胞(microfold cell)、および未分化細胞。これらの細胞の一部はより詳細に考察される。
腸細胞(吸収細胞とも呼ばれる)は、物質の輸送に専門化された、微絨毛および基底核を有する長い円柱細胞である。それらは接合部複合体により、お互いとおよび他の細胞型と結合している。アミノ酸および単糖は能動輸送により吸収され、モノグリセリドおよび脂肪酸は受動的に微絨毛膜を横断する。吸収された物質は、上皮直下の固有層における有窓毛細血管か、またはリンパ乳び管(ほとんどの脂質およびリポタンパク質粒子)のいずれかに入る。腸細胞は約5〜6日間の寿命をもつ。
杯細胞は粘液分泌細胞であり、2番目に豊富な上皮細胞である。それらは他の細胞型の間に散在して見出される。それらの粘液は細胞の先端部に蓄積する非常に大きな糖タンパク質である。細胞の細長い基盤は核および細胞小器官を有する。杯細胞の量は十二指腸から回腸末端まで増加する。それらの寿命もまた、5〜6日間である。
未分化細胞は幹細胞であり、陰窩の根元にのみ見出され、すべての他の細胞型を生じる。杯細胞または腸細胞であるように運命づけられた細胞は、幹細胞のプールを出た後約2回の追加の分裂を起こし、陰窩から絨毛へ遊走する。それは絨毛の先端で脱落する。
大腸は、結腸、盲腸、虫垂、直腸、および肛門管からなる。結腸の主要な機能は電解質および水の再吸収、ならびに未消化の食物および廃棄物の排出である。粘膜は絨毛をもたないため肉眼的レベルにおいてなめらかに見える。多数のまっすぐな管状腺が存在する。それらは粘膜筋板までずっと伸びている。腺および表層は細胞型が小腸について記載されている単層円柱上皮で裏打ちされている。しかしながらパネート細胞は通常成人ヒトに存在せず、腸内分泌細胞はまれである。円柱吸収細胞および杯細胞は豊富である。杯細胞は表層に沿ってより陰窩においてより蔓延しており、それらの数は直腸に向かって遠心に増加する。粘液はますます固くなっていく結腸内容物の通過を促進し細菌および粒子状物質を覆う。吸収細胞は短く不規則な微絨毛をもち、それらは糖衣を分泌するが、それは消化酵素を含むとは示されていない。吸収細胞は能動的に電解質を輸送する。水もまた受動的に電解質について来るように吸収される。小腸においてのように、未分化細胞は陰窩の根元に見出される。
多数の癌型(固形腫瘍および身体の遠位部分における関連した転移から身体中を循環する血液細胞の白血病まで外見が様々である、ならびに完全に良性であるものから侵襲性の悪性であるものまで様々である)に関する広範な知識にもかかわらず癌の効果的治療は困難であり、一般的に3つの型;放射線による、化学療法による、および手術による処置、に限定される。
特定の癌または癌の群の根底にある原因に対して向けられたより特異的な治療についての可能性は、現在、事実上存在していない。多大な努力は、特定の癌治療のための候補薬物を同定しようとする薬物発見の試みを通してそのような特異的薬物を供給することに向けられている。
癌の発生は、しばしば、その最初の細胞の絶えず分裂する細胞の集団への無制限の発達および分裂へ導く細胞における変化から始まる。これらの変化は、しばしば、年代順に生じる鍵遺伝子における突然変異または他の変化の蓄積であり、それにより、突然変異した細胞集団は、それの本来の、しばしば特定化された特徴を喪失し、癌性性質をますます獲得する。細胞の増殖制御の正常な過程は、変化した細胞において機能不全に陥っている。その細胞型において正常にはほんの少ししか発現されない遺伝子の転写は癌細胞においてもはや制御されない。
特定の細胞型において、さもなければ休眠していたであろう転写因子による遺伝子の転写の活性化は、例えば、癌のそのような典型的な無制限増殖および腫瘍性性質へ導きうる。
例は、特定化された細胞においてもはや役に立たない転写経路を抑制しているタンパク質を産生することにより正常に機能する抑制遺伝子における突然変異である。突然変異した抑制遺伝子は、追い詰められてもはや細胞の増殖を維持するのを助けない。細胞増殖または発達を制御する転写経路における特定のタンパク質-タンパク質またはタンパク質-DNA相互作用に対して向けられる、または、相互作用に介入する薬物が、特異的癌治療で、特にそのような経路がつまずいていて無制限増殖細胞へ導いている場合に、用いる典型的な候補薬物と考えられうる。
狂っていて癌の発生へ導く転写経路の典型的な例は、大腸腺腫様ポリポーシス(APC)に関して見出されうる。この遺伝子における突然変異はヒトにおける最も一般的な疾患を引き起こす事象の一つであり、集団の約50%が、普通の生涯の間にAPC突然変異により惹起される結腸直腸ポリープを発生する。APC突然変異を受け継ぐ個体は何千個という結腸直腸腫瘍を発生する。APCタンパク質は、APC関連増殖制御を伝達することに関与しうる少なくとも6つの他のタンパク質;β-カテニン、γ-カテニン、チューブリン、EB1、hDLG、およびZW3/GSKβキナーゼと相互作用する。突然変異体APCをもつ結腸癌細胞は多量の単量体の細胞質β-カテニンを含む。野生型APCの再導入はβ-カテニンの全体量を低下させる。
特に最近の10年間、結腸直腸癌の分子遺伝的分析により、最初、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)の原因である遺伝子として同定された大腸腺様ポリポーシス(APC)腫瘍抑制遺伝子は、結腸直腸腫瘍形成において律速的役割を果たす:それは散発性結腸直腸腫瘍の大部分において突然変異されており、両方のAPC対立遺伝子の不活性化はマウスおよびヒトにおいて腫瘍発生の初期段階に生じることが明らかにされている。
さらに、結腸直腸腫瘍はFAPの顕著な特徴を表すが、生殖系列APC突然変異は、しばしば、結果として、外胚葉、中胚葉、および内胚葉起源の広範囲の病変を生じる。実際、FAP患者は、類線維腫(線維腫)、十二指腸、および胃腫瘍、網膜上皮の先天性肥大(CHRPE)、表皮嚢腫、骨腫、CNS腫瘍などの発生のリスクが高い。後者の観察は、明らかにAPC遺伝子が生物体中の多くの異なる部位で組織恒常性の維持に重要な役割を果たしていることを示している。
Notchシグナル伝達は、動物界中において空間的パターン形成および細胞運命の決定を調節する(Artavanis-Tsakonas et al 1999)。Notch遺伝子は大きな1回膜貫通受容体をコードする。Notch受容体とリガンド間の相互作用は結果として受容体のタンパク分解性切断を生じる。その結果として生じた遊離Notch細胞内ドメイン(NICD)は核へ転位置し、転写因子RBP-JK(CSLまたはCBF1)に結合し、それに従って標的遺伝子転写を活性化する(Baron 2003, Mumm & Kopan 2000)。最も良く特徴付けられたNotch標的遺伝子は、hairy/enhancer of split(HES)転写リプレッサーである。HESタンパク質は次には下流遺伝子の発現を抑制する(Heitzler et al 1996, Oellers et al 1994)。
Notch経路構成要素はマウス腸において発現されているが(Schroder & Gossler 2002)上皮細胞運命の調節におけるこれらの構成要素の関与についての遺伝的証拠は、現在得られていない。他の組織においてNotch標的遺伝子を代表することが知られているHES-1欠損の動物は、吸着細胞を犠牲にして粘液分泌細胞および腸内分泌細胞における相対的増加を示す(Jensen et al 2000)。腸におけるHES-1抑制の推定上の下流標的、Math-1(Jensen et al 2000)(Zheng et al 2000)は、遺伝子ノックアウトにより明らかにされているように、分泌系統への傾倒に必要である(Yang et al 2001)。これらの結果は、Notchシグナル伝達が、一過性増殖コンパートメント(transit amplifying compartment)を出た陰窩細胞を腸細胞表現型へ分化する運命を歪めることを示すと解釈されている。このスキームにおいて、Notchシグナル伝達は、HES1のような転写因子遺伝子を活性化し、次には、Math1様遺伝子を抑制し、分化中の細胞を分泌系統から追い出す。
Notchによる腸細胞運命の調節に対する間接的支持は、アルツハイマー病について最初開発されたように、γ-セクレターゼ阻害剤の使用に端を発する。Notchはいくつかの公知のγ-セクレターゼ基質の一つである。γ-セクレターゼによるNotchのタンパク分解性プロセシングは経路の活性化後の必須段階である。結果として、γ-セクレターゼ阻害剤の効果の一つはNotch経路活性化の抑止である(De Strooper et al 1999, Kopan & Goate 2000)。これらの阻害剤に関する齧歯類毒物学的研究により、粘液分泌性杯細胞のサイズおよび数における増加が明らかにされた(Searfoss et al 2003; Wong et al 2004; Milano et al, 2004)。これらの種の研究により、多数の有望なγ-セクレターゼ阻害剤が、それらが腸異常を引き起こすのではないかとひどく疑われるために、アルツハイマーの処置のためのそれらのさらなる臨床的開発において中止されている。
本発明は、Notch経路活性化の阻害剤(例えば、γ-セクレターゼ阻害剤)が、腸腺腫および/または腺癌の処置に極めて有用であるという驚くべき知見を開示する。Notch経路活性化の阻害剤による腸腺腫および/または腺癌の処置は、結果として、形質転換細胞/悪性細胞の増殖を阻害し、かつ杯細胞のような分裂終了(すなわち、もはや(目に見えて)分裂しない)細胞へのそれらの分化をもたらす。これらの分化した細胞は相対的に短い寿命(5〜6日間)をもち、身体はそれらの死後それらを除去し、腸腺腫および/または腺癌は、サイズ/容積において少なくとも一部減少する。
第一の態様において、本発明は、Notch経路活性化に影響を及ぼす段階を含む、腺腫および/または腺癌細胞の運命を変更するための方法を提供する。より具体的には、本発明は、腺腫および/または腺癌細胞においてNotch経路活性化を少なくとも一部阻害する段階を含む、腺腫および/または腺癌細胞から分裂終了細胞の形成を誘導するための(インビトロおよび/またはインビボ)方法を提供する。分裂終了細胞の例は、杯細胞である。
さらなる態様において、本発明は、動物においてNotch経路活性化を少なくとも一部阻害する段階を含む、動物に存在する腸腺腫および/または腺癌を少なくとも一部減少させるための方法を提供する。
Notch経路活性化は、典型的には、以下の事象に沿って進む。Notchは、複数のタンパク分解性切断を通して活性化されうる膜貫通表面受容体であり、それらの一つは、γ-セクレターゼと呼ばれるプロテアーゼ活性をもつタンパク質の複合体により切断される。ガンマ(γ)-セクレターゼは、膜内でそれの切断活性を実行するプロテアーゼである。ガンマ(γ)-セクレターゼは、多成分酵素であり、少なくとも4つの異なるタンパク質、すなわち、プレセニリン(プレセニリン1または2)、ニカストリン、PEN-2、およびAPH-1で構成されている。プレセニリンは、γ-セクレターゼの触媒中心である。リガンド上においてNotch受容体を結合することが、メタロプロテアーゼであるADAMプロテアーゼの作用を通して外部ドメインが脱落するのを可能にする立体構造変化を起こす。この後すぐに、結果として、Notch細胞内ドメイン(NICD)の放出を生じるγ-セクレターゼ複合体の作用が続く。NICDは、核へ転位置し、CSL(C-プロモーター結合因子/組換えシグナル配列結合タンパク質Jκ/Supressor-of-Hairless/Lag1)と相互作用する。NICDの結合は、CSLを転写リプレッサーからアクチベーターへ変換し、結果として、Notch標的遺伝子の発現を生じる。
本発明者らは、APC突然変異体minマウス、家族性腺腫性ポリポーシスおよび腸癌についての信頼性のある動物モデル、において自発的に生じる腺腫における、様々なNotch経路構成要素および標的遺伝子の発現を研究した。本発明者らは、Notch2およびDelta様1を含むNotch経路の多数の構成要素の腺腫における発現を確立した。さらに、本発明者らは、Notch標的遺伝子Hes1が腺腫において発現されていることを測定し、これは活性Notchシグナル伝達がこれらの腺腫で起こることを示している。次の段階において、本発明者らは、Notch経路活性化の阻害剤の腺腫への効果を測定した。
腸腺腫および/または腺癌に関与する悪性細胞/形質転換細胞へのNotch経路活性化の阻害剤を供給することにより、その細胞の運命は、有糸分裂後の運命へ、例えば、杯細胞型へ、変化させられる。そのような細胞は、相対的に短い寿命(5〜6日間)をもち、阻害剤を供給された後短時間で死に、結果として、腸腺腫および/または腺癌細胞の量の減少、すなわち、少なくとも1つの腺腫および/または腺癌の容積の減少を生じる。
Notch経路活性化の阻害剤を供給することにより、腸腺腫および/または腺癌の増殖能力は、少なくとも一部減少する。スキャンまたは診査的操作で目に見える程度の減少が好ましい。腸腺腫および/または腺癌の減少は完全である、すなわち、(目に見える)残存する悪性細胞/形質転換細胞がないことがより一層好ましい。
本明細書において、動物は、非ヒト動物またはヒトとして定義される。
Notch経路活性化の(少なくとも一部であるが、好ましくは完全な)阻害は、本明細書の下記において(非限定的に)概略を述べられている、異なる方法で達成される。好ましくは、阻害は、局所的に、すなわち、非腺腫および/または非腺癌細胞におけるNotch経路シグナル伝達に干渉することなく、腺腫および/または腺癌細胞において実施される。
さらに、Notch経路活性化は、Notch様分子および/またはNotch(様)分子の異なる対立遺伝子変異体の経路活性化を含むと定義される。
腸腺腫は、典型的には、ポリープのような良性腫瘍として定義される。腺癌は、典型的には、悪性腫瘍として定義され、結腸直腸癌とも呼ばれる。「腸腺腫および/または腺癌」という用語は、腺癌由来の転移もまた含むと本明細書で定義される。好ましくは、その転移は、腸腺癌由来である。そのような転移は、処置される(処置されるべき)被検体の身体のどこに位置してもよく、例えば、腸腺癌転移は、その被検体の肺または脳または腎臓または肝臓に位置する。
さらに、本発明の方法は、サイズに関係なく、腸腺腫および/もしくは腺癌ならびに/またはそれら由来の転移の処置において適している。現在用いられている腫瘍治療の一つの欠点は、その治療がしばしば、その治療に用いられる化合物をその腫瘍またはその転移へ送達するために新しく形成された血管の存在(血管形成)に頼る必要があることである。本発明は、形質転換細胞/悪性細胞の増殖の阻害および分裂終了細胞へのそれらの分化に頼る。このゆえに、小さい腫瘍または小さい転移(いかなる新しい血管も形成されていない)が、従来の治療の一部と比較して、極めてより早い時点において処置されうる。
好ましい態様において、本発明は、動物に存在する腸腺腫および/または腺癌を少なくとも一部減少させるための方法であって、該動物においてNotch経路活性化を少なくとも一部阻害する段階を含み、該Notch経路活性化が、該動物にγ-セクレターゼ阻害剤を供給することにより、少なくとも一部阻害される方法を提供する。そのようなγ-セクレターゼ阻害剤は、例えば、天然においてペプチド性または非ペプチド性もしくは半ペプチド性であり、好ましくは、小分子である。γ-セクレターゼ阻害剤は、最初は、アルツハイマー病について明確にされた。アルツハイマー病の病気の発生における重要段階は、結果として、その疾患の特徴的な脳プラークの主要なタンパク質成分であるアミロイド-βペプチド(Aβ)の形成を生じるAPPタンパク分解である。APP(Notchと同様に)は、最初、細胞外ドメインにおいて切断され(この場合、β-セクレターゼにより)、APPの残りの部分は、γ-セクレターゼにより膜内で切断され、Aβペプチドを生じる。γ-セクレターゼ活性をブロックすることによるAβペプチド生成の阻害は、現在、アルツハイマー病の病態の進行を遅らせるための最も有望な治療ストラテジーの一つである。いくつかの会社が現在のところ、DAPT(N-[N-(3,5-ジフルオロフェニルアセチル)-L-アラニル]-S-フェニルグリシンt-ブチルエステル)のようなγ-セクレターゼ阻害剤を開発している。化学的分類、AS(arylsulfonamids)、DBZ(dibenzazepine(DBZ))、BZ(benzodiazepine)、LY-411, 575およびその他多数由来の化合物もまた、それらのγ-セクレターゼ阻害活性について試験されている。γ-セクレターゼ阻害剤に関する概略は、例えば、γ-セクレターゼ阻害剤がスルホンアミド/スルホンおよびベンゾジアゼピン/ベンゾラクタムに分類されている、Harrison et al 2004に概説されている。これらのγ-セクレターゼ阻害剤のいくつかは、すでに、臨床第一相および第二相試験中である。動物に存在する腸腺腫および/または腺癌を少なくとも一部減少させるための方法であって、該動物においてNotch経路活性化を少なくとも一部阻害する段階を含み、該Notch経路活性化が該動物にγ-セクレターゼの阻害剤を供給することにより、少なくとも一部阻害される方法が、少なくとも1つ、または少なくとも2つもしくはそれ以上のγ-セクレターゼ阻害剤を供給することにより、すなわち、異なるγ-セクレターゼ阻害剤の組み合わせを供給することにより、実施されうることは、当業者にとって明らかである。γ-セクレターゼが典型的には、(少なくとも)2つの経路:APP経路およびNotch経路において作用する能力があることは明らかである。化学会社は現在のところ、一方または他方に特異的であるγ-セクレターゼ、例えば、APP経路に特異的でかつNotch経路に干渉しないγ-セクレターゼを開発している。Notch経路に干渉しないγ-セクレターゼが本発明の方法に有用ではないことは明らかである。このゆえに、Notch経路においておよびAPP経路において干渉する能力があるγ-セクレターゼ、またはNotch経路において特異的に干渉する能力があるγ-セクレターゼが好ましい。そのような阻害剤は、例えば、参照により本明細書に組み入れられている、Harrison et al 2004に見出されうる。
好ましい態様において、本発明は、動物に存在する腸腺腫および/または腺癌を少なくとも一部減少させるための方法であって、該動物においてNotch経路活性化を少なくとも一部阻害する段階を含み、該Notch経路活性化が、該動物にγ-セクレターゼ阻害剤を供給することにより、少なくとも一部阻害され、γ-セクレターゼの該阻害剤が、DAPTまたはジベンズアゼピン(DBZ)またはベンゾジアゼピン(BZ)である方法を提供する。
DAPT、DBZまたはBZは、ともに、腺腫および/または腺癌細胞からの分裂終了細胞の形成を誘導するにおいて効果的であり、これらの化合物は、従って、本発明による方法において同様の効果を生じる。しかしながら、DBZは、1.7nMのIC50をもち、BZは2.2nMのIC50をもつが、DAPTは10nMのIC50をもち、これゆえに、同様の結果を得ることについてDAPTと比較した場合には、DBZまたはBZのより少ない量が用いられうる。
すでに上記で概略が述べられているように、γ-セクレターゼは、タンパク質の複合体である。Notch経路活性化を少なくとも一部阻害するもう一つの方法は、複合体のみが活性であると考えられるため、タンパク質の該複合体の形成を少なくとも一部阻害することにより達成される。これは、例えば、ドミナントネガティブ分子として成分の1つを供給することにより、または部分/分子が、さらなる複合体形成を阻止する、もしくは結果として不安定な(非活性な)タンパク質複合体を生じる突然変異を含む該複合体の部分/分子を供給することにより達成される。Notch経路活性化を少なくとも一部阻害するさらにもう一つの方法は、該複合体の触媒部分を特異的に阻害すること、すなわちプレセニリンの特異的阻害による。
もう一つの好ましい態様において、本発明は、動物に存在する腸腺腫および/または腺癌を少なくとも一部減少させるための方法であって、該動物においてNotch経路活性化を少なくとも一部阻害する段階を含み、該Notch経路活性化が、Notchのリガンド媒介性活性化を少なくとも一部減少させることにより少なくとも一部阻害される方法を提供する。上で概略が述べられているように、Notch経路活性化は、リガンド結合から始まり、その事象後、Notch受容体が、ADAMプロテアーゼの作用による外部ドメインの脱落を可能にする立体構造変化を受ける。リガンドのNotchへの結合が、多数のストラテジーにより少なくとも部分的にだが好ましくは完全に阻害されうることは、当業者にとって明らかである。好ましくは、Notchの前記リガンド媒介性活性化は、動物にNotchのドミナントネガティブなリガンドを供給することにより少なくとも一部減少する。天然のNotchリガンドの例は、タンパク質Delta、JaggedおよびSerrateである。ドミナントネガティブなリガンド、すなわち、本質的にNotch経路のさらなる活性化なしにNotchに結合する(Notch経路活性化のブロッキング)能力があるリガンドは、例えば、前記天然のリガンドの結合部分に基づいて結合小分子を作製することにより、その天然のリガンド由来でありうる。そのようなドミナントネガティブなリガンドがNotchと接触した場合、そのドミナントネガティブなリガンドのNotchへの結合は、Notch経路のさらなる活性化なしに起こる。好ましくは、そのドミナントネガティブなリガンドは、Notchへより長い時間、貼り付く/結合し、天然のリガンドの結合は、部分的に、および好ましくは完全に、ブロック/阻害され、結果として、Notch経路活性化が(少なくとも一部)阻害される。ドミナントネガティブなリガンドの例は、例えば、細胞内欠失を含むDeltaおよびSerrateの突然変異体である(Sun and Artavanis-Tsakonas, 1996)。
もう一つの好ましい態様において、Notchの前記リガンド媒介性活性化は、動物にドミナントネガティブなNotchを供給することにより少なくとも一部減少させられる。原理上は、Notch分子のそれぞれの型、すなわち、Notch1、2、3もしくは4、またはそれらの機能性断片および/もしくは機能性誘導体が、この目的のために用いられうる。機能性断片は、Notchリガンドに結合する能力があるこれらの分子(またはそれらの等価物)のいずれか由来の任意の断片(N末端断片、C末端断片、もしくは内部断片、またはそれらの任意の組み合わせ)である。そのような機能性断片は、例えば、膜結合型化合物として、または非膜結合型化合物として存在しうる。ドミナントネガティブなNotchの結合可能なリガンドへの結合により、該リガンドは、天然で/本来的に/機能的に有効なNotchに結合できず、このゆえに、Notch経路活性化は、少なくとも一部阻害される。機能性誘導体は、例えば、リガンドへの結合がまだ可能であるが、突然変異が、伝達されるべきリガンド結合のシグナルを阻止するように突然変異した(点突然変異、挿入)Notch分子である。機能性誘導体はまた、別の種由来でありうる。さらにもう一つの好ましい態様において、Notchの前記リガンド媒介性活性化は、NotchリガンドとNotchの間の相互作用を少なくとも一部ブロックする能力がある抗体を動物に供給することにより少なくとも一部減少させられる。そのような抗体は、例えば、Notchのリガンド結合部分に向けられるか、またはNotchと相互作用するリガンドの部分に向けられる。抗体の産生は、当技術分野の範囲内で日常的であり、このゆえに、このことに関するさらなる詳細は提供しない。Notchのリガンド媒介性活性化の用いられる阻害の型に依存せず、結果は同じである:NICD(の少なくとも部分)の形成が阻害され、結果として、最終的には、形質転換細胞/悪性細胞から分裂終了細胞(例えば、杯細胞)の形成を生じる。
すでに示されているように、Notch経路活性化の(少なくとも一部であるが、好ましくは完全な)阻害は、異なる方法で達成される。さらにもう一つの好ましい態様において、本発明は、動物に存在する腸腺腫および/または腺癌を少なくとも一部減少させるための方法であって、該動物においてNotch経路活性化を少なくとも一部阻害する段階を含み、該Notch経路活性化が、該動物にADAMプロテアーゼ阻害剤を供給することにより、少なくとも一部阻害される方法を提供する。NotchリガンドのNotchへの結合後、Notch受容体は、ADAMプロテアーゼの作用による外部ドメインの脱落を可能にする立体構造変化を受ける。ADAMは、ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ(a disintegrin and metalloprotease)を表す。外部ドメインの脱落を達成するプロテアーゼを阻害する能力がある物質を供給することにより、Notch経路活性化は、少なくとも部分的であるが、好ましくは完全に阻害される、すなわち、NICDの形成が生じない。これは、結果として、腸腺腫および/または腺癌の場合、増殖性腺腫および/または腺癌細胞から分裂終了細胞、例えば杯細胞への変化を生じる。この場合もやはり、起こりうる望ましくないいかなる副作用もできる限り避けるために、Notch経路活性化の局所的阻害が好ましい。
Notch活性化を少なくとも一部阻害する異なる方法はまた、例えば、効力を増加させるために組み合わせられうることは、当業者にとって明らかである。
腸腺腫は、最も一般的には、腸腫瘍抑制遺伝子APCの損失に起因する、Wnt経路の突然変異的活性化によりもたらされる(Kinzler and Vogelstein, 1996)。本発明者らは、最近、結腸直腸癌細胞におけるWnt標的遺伝子プログラムを決定し、それに従って、腺腫細胞と増殖性陰窩前駆体の間の顕著な対称性を明らかにした(van de Wetering et al 2002)。この対称性がNotch経路へ及ぶかどうかを調べるために、APC突然変異体minマウスで自発的に生じる腺腫において、様々なNotch経路構成要素および標的遺伝子の発現を研究した。一般的に、腺腫における受容体およびリガンドの発現は、以前に報告されているように、陰窩発現に密接に従った(Schroder and Gossler, 2002)。例として、図1は、APC突然変異体minマウスの腺腫におけるNotch2およびDelta様1の腺腫における発現を示す。より重要なことには、活性Notchシグナル伝達を示すHES1発現は、陰窩において生じただけでなく、APCminマウスの腸のすべてのサイズの腺腫においても一様に観察された(図1)。この観察は、陰窩においてのように、NotchおよびWnt経路の両方が増殖性腺腫細胞において活性であることを意味する。本明細書に開示された例は、腸上皮の幹細胞/前駆細胞が、未分化のままでありうるためにWntおよびNotchシグナル伝達の両方を必要とすることを予想外にも示している。同じことが、Wntカスケードが恒常的に活性である形質転換細胞/悪性細胞について真実である:Notch活性は細胞の形質転換された状態/悪性状態を維持するために必要とされることが本明細書に開示されている。
好ましい態様において、本発明は、動物に存在する腸腺腫および/または腺癌を少なくとも一部減少させるための方法であって、該動物においてNotch経路活性化を少なくとも一部阻害する段階を含み、該動物においてWnt経路活性化を少なくとも一部阻害する段階をさらに含む方法を提供する。
腸腺腫および/または腺癌に冒されている細胞へWnt経路活性化の阻害剤を供給することにより、悪性細胞/非形質転換細胞は、分化して、その形成後短時間で死に、このゆえに、腸腺腫および/または腺癌のサイズ/容積を減少させる。Notch経路活性化の阻害剤およびWnt経路活性化の阻害剤の組み合わされた作用により、腸腺腫および/または腺癌の細胞は分化し、結果として、腸悪性腫瘍の少なくとも部分的減少を生じる。腸腺腫および/または腺癌もまた、Wnt経路阻害剤の単独作用により処置されうることは、当業者にとって明らかである。
もう一つの態様において、本発明は、腸腺腫および/または腺癌の処置のための薬物の調製におけるNotch経路阻害剤の使用を提供する。本発明による方法について上記ですでに概略が述べられているように、多数の阻害剤が、NICDの形成を少なくとも一部減少させ、このゆえに、Notch経路活性化を少なくとも一部阻止するために用いられうる。好ましいNotch阻害剤の例は以下である:DAPTもしくはジベンズアゼピン(DBZ)もしくはベンゾジアゼピン(BZ)のようなγ-セクレターゼ阻害剤、Notchのリガンド媒介性活性化を減少させる能力がある阻害剤(例えば、Notchのドミナントネガティブなリガンドを介して、またはドミナントネガティブなNotchを介して、またはNotchリガンドとNotchの間の相互作用を少なくとも一部ブロックする能力がある抗体を介して)、またはADAMプロテアーゼの阻害剤。さらに、そのような阻害剤は、Wnt経路阻害剤を補充されうるか、または化学療法、手術もしくは放射線照射のようなすでに利用可能な治療と組み合わせられうる。
好ましい態様において、本発明は、腸腺腫および/または腺癌の処置のための薬物の調製におけるNotch経路阻害剤の使用であって、該腸腺腫および/または腺癌が遺伝性症候群である家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)をもつ患者に生じている、Notch経路阻害剤の使用を提供する。FAPは、大腸腺腫様ポリポーシス(APC)遺伝子における遺伝性突然変異により引き起こされる。ポリポーシスは、本質的に、「多数のポリープ」を意味する。ポリープは、腸壁上の組織の小さな増殖である。最も一般的なポリープでかつ腺癌になりうる唯一のものは、腺腫様ポリープである。FAPにおいて、数百〜数千個というポリープが、結腸中に発生する。これらのポリープは、通常、16歳前後に形成し始める。除去されない限り、これらのポリープは、ほとんどの場合、癌に発展する。APC突然変異と診断された個体は、結腸直腸癌のリスクがあるだけでなく、他の型の癌についても一般集団より高いリスクをもちうる。減弱されたFAP(AFAP)は、ポリープの発生がより少なく、重症度のより低い、FAPの変異である。AFAPは、通常、FAPほど早く発症しないが、癌の同程度に高いリスクを有する。いったんFAPが診断されたならば、患者は最終的に、典型的には予防的結腸(亜)全摘術を受ける。そのような結腸切除は、現在、FAPを患っている患者が本発明による方法または使用を受けた場合には、部分的に省略される可能性がある。本明細書に用いられるAPCminマウスは、原理上、ヒトFAPに相当するものである。
さらにもう一つの態様において、本発明は、少なくとも2つのNotch経路活性化阻害剤を含む、または少なくとも1つのNotch経路活性化阻害剤および少なくとも1つのWnt経路阻害剤を含む、薬学的組成物を提供する。
本発明による薬学的組成物は、粉末、(非)水性液体の溶液もしくは懸濁液の形をとって、または乳液として提供されうる。その医用薬剤はさらに、薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含みうる。薬学的組成物は、経口で、非経口で、筋肉内に、静脈内に、非経口で、腹腔内に、または結腸直腸に(例えば、坐剤と用いて)、投与されうる。経口および結腸直腸送達は、処置されるべき領域がこれらの送達経路を介して容易に達せられるため、好ましい。さらに、送達は、好ましくは、いかなる望ましくない副作用も避けるために局所的である。
用量に関して、当業者は、例えば、既知の薬物動態に基づいて、例えば、DAPTおよび/またはDBZおよび/またはBZの有効量を決定することができることは知られている。さらに、1つまたは複数の周知の用量調査実験を用いることにより、当業者は有効量を決定することもできる。
概略を述べられた方法のいずれかにおける医用薬剤の使用の他に、本発明による医用薬剤はまた、追加(それ以外)の治療として非常に有用である。例えば、手術で腺腫または腺癌を除去することが決定された場合には、本発明による医用薬剤が、腺腫および/もしくは腺癌から分裂終了細胞の形成を誘導するために、または腺腫および/もしくは腺癌を少なくとも一部さらに減少させるために、または残存する(目に見えない可能性もある)残留腺腫および/もしくは腺癌細胞を処置するために、手術前および/または手術中および/または手術後に与えられる。これは、例えば、腹腔を本発明による流動医用薬剤でリすすぐことにより、または疑われる領域に本発明による医用薬剤を直接注射することにより、行われる。
本発明は、本発明を限定するものではないが、以下の記載においてより詳細に説明される。
実験の部
実験I
材料および方法
免疫組織化学のための抗体
以下の抗体が用いられた。マウス抗Ki67(1:100;Novocastra)、マウス抗β-カテニン(1:50;Transduction Labs)。
組織試料調製、免疫組織化学およびインサイチューハイブリダイゼーション
腸管を全体として解剖し、いかなる糞便内容物も除去するために冷PBSで優しく洗い流し、続いて、ホルマリンで洗い流した。小腸をコンパクトな環へと巻き上げて、ホルマリンにRTで16時間固定した。組織を切片に切った(2〜6μm)。脱ろうおよび水和後、切片を、ペルオキシダーゼブロッキング緩衝液(120mM Na2HPO4、43mMクエン酸、30mM NaN3、0.2% H2O2;pH5.8)でRTで15分間、前処理した。抗原性の回復を、試料をNa-クエン酸緩衝液(10mM、pH6.0)において煮沸することにより行った。20分後、煮沸パンをゆっくりRTまで冷却するようにさせておいた。抗体のインキュベーションは、PBS中のBSAにおいて、リゾチーム、Ki67について4℃で一晩、およびERで1時間行った。すべての場合において、Envision+キット(DAKO)を二次試薬として用いた。インキュベーション時間は30分間であった。染色は、DABを用いて発色させた。スライドを、その後、ヘマトキシリンで対比染色し、マウントした。インサイチューハイブリダイゼーションに用いるプローブは記載されているとおりである(Schroder et al 2002)。
同様のインサイチューハイブリダイゼーションが、十分特徴付けられたヒト病理学的パラフィン包埋試料において行われるが、ただし、明らかであるが、プローブとしてヒトRNA配列を用いる。
アルシアンブルー染色
脱ろうおよび水和後、組織をアルシアンブルー(0.5%酢酸中に1%)において5分間インキュベートした。その後、水中で洗浄し、ニュートラルレッドにおいて1分間インキュベートした。直ちに脱水し、キシレン中で洗浄し、Pertexでマウントした。
APCminマウスにおけるNotchシグナル伝達の薬理学的阻害
8週齢のAPCminマウスを、2つの異なる経口送達可能なγ-セクレターゼ阻害剤(DAPT:コーンオイル中に100mg/kg)で2.5日間、6.5日間、または15日間処理し、その後、それらの腸を単離し、組織学的に調べた。
結果
腸腺腫は、最も一般的には腸腫瘍抑制遺伝子APCの損失に起因する、Wnt経路の突然変異的活性化より生じる(Kinzler and Vogelstein, 1996; Bienz and Clevers, 2000に概説されている)。本発明者らは、最近、Wnt標的遺伝子プログラムの発現に関して、結腸直腸癌細胞と増殖性陰窩前駆体の間に顕著な対称性を報告している(van de Wetering et al 2002)。陰窩と腸腫瘍形成の間の対称性がNotch経路に及ぶかどうかを調べるために、本発明者らは、APC突然変異体minマウスで自発的に生じる腺腫において、様々なNotch経路構成要素および標的遺伝子の発現を研究した。一般的に、腺腫における受容体およびリガンドの発現は、以前に報告されているように、陰窩発現に密接に従った(Schroder and Gossler, 2002)(表I)。例として、図1は、腺腫におけるNotch2およびDelta様1の発現を示す。より重要なことには、活性Notchシグナル伝達を示すHes1発現は、陰窩において生じただけでなく(Schroder and Gossler, 2002)、APCminマウスの腸のすべてのサイズの腺腫においても一様に観察された(図1、右パネル)。この観察は、陰窩においてのように、NotchおよびWnt経路が増殖性腺腫細胞において同時に活性であることを意味した。
本発明者らは、その後、Notch経路活性が、腺腫細胞の未分化の増殖性表現型の維持のために必須であるかどうかを求めた。本発明者らは、γ-セクレターゼ阻害剤DAPTの使用によりNotch経路を薬理学的に阻害させることを選択した。本発明者らはその後、この年齢において小腸に30〜60個の肉眼的に検出できる腺腫またはポリープ、および結腸に1〜3個の腺腫を有する15週齢のApcminマウスの処置を開始した。マウスを15日間まで処置し、その後、それらの腸を組織学的に調べた。パイロット実験および公開された処置計画に基づいて、Apcminマウスに、経口で1日1回、コーンオイル中100mg/kgのDAPTを投与した。処置の2.5日目または6.5日目において一貫した効果は見られなかった。しかしながら、化合物での処置の15日目において腺腫内で広範な変化が生じた。図2および図3に実証されているように、増殖中のKi67陽性細胞の数が劇的に減少した。図2において、結腸腺腫は、β-カテニン染色により可視化されている(左パネル)。注目すべきことに、隣接する正常な陰窩における増殖は影響を受けなかった。アルシアンブルー陽性杯細胞の大きな病巣は、腺腫中に渡って現れた。停止細胞および分化した細胞の核β-カテニン陽性は、これらがApc陰性腺腫に由来することを示した。図3において、小腸における腺腫の例が示されている。腺腫組織は、再び、左パネルにおいて暗褐色に染色されている。Ki67染色により証明されているように(右パネル)、細胞増殖は化合物DAPTでの処置により停止している。
Wntカスケードが、マウスおよびヒトにおける一過性増殖(transit amplifying)陰窩前駆細胞の、加えて腸の腺腫および腺癌の増殖性潜在能力の主要な駆動力であることを、多くの証拠が暗示している。最新のデータは、活性Notchシグナル伝達が、陰窩前駆体の、およびApc突然変異体腫瘍性細胞の未分化状態の維持において等しく重要な役割を果たすことを示している。Wntカスケードは形質転換過程の開始において突然変異的に活性化されているが、Notch経路は、たいてい、腫瘍進行中、突然変異しないままである。とはいっても、活性化Notch経路突然変異の存在への強い選択圧が進行腫瘍に存在することが想像されうる。そのような活性化突然変異は結腸直腸癌において報告されていない。
結腸直腸癌において活性化されているようなWntカスケードは、Apc腫瘍抑制タンパク質下流のカスケードのセグメントがタンパク質-タンパク質相互作用により完全に駆動されるように、一般的に薬物開発について、むしろ好ましくない標的を示すと考えられる。本明細書に直接的に実証されているように、Notch経路は、家族性腺腫性ポリポーシスまたは散発性結腸直腸癌のような腸腫瘍形成の処置のための代替の標的薬物ストラテジーの代表例である。多様な化学的起源の多数のγ-セクレターゼ阻害剤が、アルツハイマー病の処置のために開発されている。動物毒性研究における腸杯細胞数の増加は、これらの化合物の主な望ましくない副作用として述べられてきた。しかし、本発明者らは、このNotch関連効果が、これらのγ-セクレターゼ阻害剤を結腸直腸癌に対する魅力的な治療様式にすると述べる。
実験II
材料および方法
免疫組織化学のための抗体
以下の抗体が用いられた。マウス抗Ki67(1:100;Novocastra)、マウス抗β-カテニン(1:50;Transduction Labs)、ウサギ抗Math1(1:50;Jane Johnson博士寄贈)。
組織試料調製、免疫組織化学、およびインサイチューハイブリダイゼーション
腸管を全体として解剖し、いかなる糞便内容物も除去するために冷PBSで優しく洗い流し、続いて、ホルマリンで洗い流した。小腸をコンパクトな環へと巻き上げてホルマリン中でRTで16時間固定した。組織を切片に切った(2〜6mm)。脱ろうおよび水和後、切片をペルオキシダーゼブロッキング緩衝液(120mM Na2HPO4、43mMクエン酸、30mM NaN3、0.2% H2O2;pH5.8)でRTで15分間、前処理した。抗原性の回復を、試料をNa-クエン酸緩衝液(10mM、pH6.0)において煮沸することにより行った。20分後、煮沸パンをゆっくりRTまで冷ました。抗体のインキュベーションは、PBS中のBSAにおいて、Math1に対して方向づけられた抗体について4℃で一晩、ならびにKi67およびβ-カテニンに対して方向づけられた抗体についてRTで1時間行った。すべての場合において、Envision+キット(DAKO)を二次試薬として用いた。染色は、DABを用いて発色させた。スライドを、ヘマトキシリンで対比染色し、マウントした。
γ-セクレターゼ阻害剤DBZ
3グラムのDBZ(Milano et al 2004)は、Syncom, Groningen, the Netherlandsにより>99.9%純度までカスタム合成された。DBZを、水中0.5%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel E4M)および0.1%(w/v)Tween 80に十分に懸濁した。
γ-セクレターゼ阻害剤DBZを用いた動物の処置
C57B16マウスに、γ-セクレターゼ阻害剤DBZを腹腔内注射し、0μmol/Kg、3μmol/Kg、10μmol/Kg、および30μmol/Kgを、毎日5日間注入した。
本発明者らは8週齢のApcminマウスの処置を開始し、それぞれ2匹のマウスを、0μmol/Kg、3μmol/Kg、10μmol/Kg、または30μmol/KgのDBZ注射で処置した。DBZを48時間ごとに腹腔内に10日間注射し、その後、腸を連続切片により組織学的に調べた。
結果
インビボでNotchシグナル伝達をブロックするための代替ツールとして、本発明者らは>99.9%純度までγ-セクレターゼ阻害剤DBZ 18を合成した。DBZは、細胞に基づいたアッセイにおいて、2nM未満のIC50でNotch切断をブロックした(非呈示)。用量調査実験において、化合物を、C57B16マウスに、0μmol/Kg、3μmol/Kg、10μmol/Kg、および30μmol/Kgで毎日5日間腹腔内に注射した。比較的高い用量(10μmol/Kgおよび30μmol/Kg)において、杯細胞変換は、PAS染色により示されているように(それぞれ、図4Cおよび図4D)、腹腔内注射の5日間後に完了した。さらに、細胞増殖は完全に停止しており、組織学的マーカー(Ki67およびMath1)により、組織変化は、CSL欠失において観察されたものと区別できないことが明らかにされた(結果非呈示)。3μmol/Kgにおいて、杯細胞数は、PAS染色により示されているように、わずかに増加した(図4B)。組み合わされた遺伝学的および薬理学的所見は、Notchシグナル伝達が、陰窩前駆体の未分化状態を維持するために適切に陰窩コンパートメント内に存在することが必須であることを示している。
Notch経路活性が、腺腫細胞の未分化の増殖性表現型の維持に必須であるかどうかという問題において、本発明者らはNotch経路を薬理学的に阻害することを選択した。実験Iにおいて、これは、γ-セクレターゼ阻害剤DAPTの使用により実施された。実験IIにおいて、本発明者らはγ-セクレターゼ阻害剤DBZ(Wong et al 2004)の使用によりNotch経路を薬理学的に阻害することを選択した。本発明者らは、この年齢において小腸に30〜60個の肉眼的に検出できる腺腫(ポリープ)、および結腸に0〜3個の腺腫を有する8週齢のApcminマウスの処置を開始した。それぞれ、2匹のマウスを、0μmol/Kg、3μmol/Kg、10μmol/Kg、または30μmol/KgのDBZで10日間処置し、その後、腸を連続切片により組織学的に調べた。β-カテニンについての染色は、しばしば過形成性のまだ形質転換されていない正常な陰窩の蓄積に埋没している腺腫を描写した(図5A、5C)。10μmol/Kgまたは30μmol/KgにおけるDBZは、容易に、腺腫内でMath1+/PAS+/Ki67-杯細胞を誘導したが(図5D、M〜O)、3μmol/Kgにおける効果は、正常陰窩への効果と同様に、最小であった(非呈示)。異なる変換率が、同じ動物内でさえも、個々の腺腫において観察された。変換率を定量化するために、10μmol/Kg DBZで処置されたマウス由来の100個の腺腫を、Math1+核のパーセンテージを測定することにより分析した。腺腫の8%において、すべての上皮細胞の50%超がMath1+細胞へ変換した。腺腫の20%において、10〜50%変換が起きた;28%は1〜10%変換を示したが、46%は杯細胞変換を示さなかった。杯細胞変換は、未処理のApcminマウスにおいて全く観察されなかった:分析した100個の腺腫のそれぞれにおいて、1%未満のMath1+杯細胞が観察された。観察は、腺腫細胞が、Notch経路阻害により分化するように強制されうることを示している。
実験III
材料および方法
免疫組織化学のための抗体
以下の抗体が用いられた。マウス抗Ki67(1:100;Novocastra)、マウス抗β-カテニン(1:50;Transduction Labs)。
組織試料調製および免疫組織化学
腸管を全体として解剖し、いかなる糞便内容物も除去するために冷PBSで優しく洗い流し、続いて、ホルマリンで洗い流した。小腸をコンパクトな環へと巻き上げてホルマリン中でRTで16時間固定した。組織を切片に切った(2〜6mm)。脱ろうおよび水和後、切片をペルオキシダーゼブロッキング緩衝液(120mM Na2HPO4、43mMクエン酸、30mM NaN3、0.2%H2O2;pH5.8)でRTで15分間、前処理した。抗原性の回復を、試料をNa-クエン酸緩衝液(10mM、pH6.0)において煮沸することにより行った。20分後、煮沸パンをゆっくりRTまで冷却するようにさせておいた。抗体のインキュベーションは、PBS中のBSAにおいて、Ki67およびβ-カテニンに対して方向づけられた抗体について、一晩RTで1時間行った。すべての場合において、Envision+キット(DAKO)を二次試薬として用いた。染色は、DABを用いて発色させた。スライドを、ヘマトキシリンで対比染色し、マウントした。
γ-セクレターゼ阻害剤DBZおよびBZ
3グラムのDBZおよびBZ(Milano et al 2004)は、Syncom, Groningen, the Netherlandsにより>99.9%純度までカスタム合成された。DBZを、水中0.5%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel E4M)および0.1%(w/v)Tween 80に十分に懸濁し、BZを6%(v/v)エタノール/94%(v/v)Labrafil M 1944 CSに十分に懸濁した。
γ-セクレターゼ阻害剤DBZおよびBZを用いた動物の処置
C57B16マウスに、γ-セクレターゼ阻害剤BZを腹腔内注射し、0μmol/Kg、3μmol/Kg、10μmol/Kg、および30μmol/Kgを毎日5日間注入した。
経口研究について、薬物(DBZおよびBZ)を8週齢のApcminマウスに投与し(10μmol/Kg、20μmol/Kg、または30μmol/Kg)、その後、腸を連続切片により組織学的に調べた。
結果
インビボでNotchシグナル伝達をブロックするための代替ツールとして、本発明者らは>99.9%純度までγ-セクレターゼ阻害剤BZを合成した。BZおよびDBZの両方は、細胞に基づいたアッセイにおいて、それぞれ、2.2nMおよび1.7nMのIC50でNotch切断をブロックした(非呈示)。用量調査実験において、BZ化合物を、C57B16マウスにおいて、0μmol/Kg、3μmol/Kg、10μmol/Kg、および30μmol/Kgで毎日5日間腹腔内に注射した。比較的高い用量(10μmol/Kgおよび30μmol/Kg)において、杯細胞変換は、PAS染色により示されているように、腹腔内注射の5日間後に完了した。組織変化は、CSL欠失(結果非呈示)およびDBZでの処置後(実験II参照)において観察されたものと区別できなかった。これらのデータは、再び、Notchシグナル伝達が、陰窩前駆体の未分化状態を維持するために適切に陰窩コンパートメント内に存在することが必須であることを確認した。
Notch経路活性が、腺腫細胞の未分化の増殖性表現型の維持に必須であるかどうかという問題において、本発明者らはNotch経路を薬理学的に阻害することを選択した。実験Iにおいて、これは、γ-セクレターゼ阻害剤DAPTの使用により実施した。実験IIにおいては、腹腔内投与後のγ-セクレターゼ阻害剤DBZの使用によりNotch経路を薬理学的に阻害することを選択した。実験IIIにおいて、本発明者らは、経口投与後のγ-セクレターゼ阻害剤DBZおよびBZの異なる濃度の使用によりNotch経路を薬理学的に阻害することを選択した。異なる濃度の使用の背後にある論理的根拠は、これらの化合物の高い濃度が、腸腫瘍だけでなく、正常組織にも影響を及ぼす可能性があることである。
この年齢において、小腸に30〜60個の肉眼的に検出できる腺腫(ポリープ)、および結腸に0〜3個の腺腫を有する8週齢のApcminマウスの経口処置を開始した。それぞれ3匹のマウスを、10μmol/Kg、15μmol/Kg、もしくは30μmol/KgのBZまたはDBZで最高12日間経口で処置し、その後、腸を連続切片により組織学的に調べた。β-カテニンについての染色は、しばしば過形成性のまだ形質転換されていない正常な陰窩の蓄積に埋没している腺腫を描写した。変化は、化合物BZおよびDBZでの経口処置の12日目に、腺腫内に生じた。15μmol/Kgの濃度において、腺腫における増殖中のKi67-陽性細胞の数は劇的に減少したが、正常腸組織の大部分は影響を受けていないように思われる。
結論として、化合物BZおよびDBZのAPCminマウスの経口処置後の腺腫における細胞増殖は、Ki67/β-カテニン染色により証明されているように、停止しているが、正常組織は影響を受けていないように思われる。
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参考文献
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インサイチューハイブリダイゼーションにより示される場合の、APCminマウスの腺腫における、Notch経路構成要素(Delta様1(左パネル))、Notch2(中央パネル)、および活性化Notch経路の標的遺伝子(Hes1(右パネル))の例の発現。 本文中に示されているようにDAPTで処置された(上部パネル)または処置されていない(下部パネル)APCminマウスの結腸腺腫の分析。左の上部/下部パネルにおける暗い染色により、腺腫組織を表す、高レベルのβ-カテニンをもつ上皮における領域が明らかにされている。中央の上部/下部パネルは、細胞周期/増殖マーカーKi67についての染色を示す。DAPTでの処置が、腺腫における増殖活性の著しい減少につながることに注目されたい。右の上部/下部パネルは、アルシアンブルー染色で暗く染色された細胞により示されているように、DAPT処置による杯細胞における増加を示している。 本文中に示されているようにDAPTで処置された(上部パネル)または処置されていない(下部パネル)APCminマウスの小腸腺腫の分析。左の上部/下部パネルにおける暗い染色により、腺腫組織を表す、高レベルのβ-カテニンをもつ上皮における領域が明らかにされている。右の上部/下部パネルは、細胞周期/増殖マーカーKi67についての染色を示す。DAPTでの処置が、腺腫における増殖活性の著しい減少へつながることに注目されたい。 γ-セクレターゼ阻害剤DBZによる、増殖性陰窩細胞の有糸分裂後の杯細胞への変換。C57B16マウスに、γ-セクレターゼ阻害剤DBZを腹腔内注射し、0μmol/Kg、3μmol/Kg、10μmol/Kg、および30μmol/Kgを毎日5日間注入した。3μmol/Kgにおいて、杯細胞数は、PAS染色により示されているように、わずかに増加したが(B)、10μmol/Kgおよび30μmol/Kgでは、増殖性陰窩細胞の有糸分裂後の杯細胞への変換は完了した(それぞれ、CおよびD)。 γ-セクレターゼ阻害剤DBZによる、APCmin腫瘍における増殖性細胞の有糸分裂後の杯細胞への変換。APCminマウスを、0μmol/Kg DBZ(A、B、E、F、G、K)または10μmol/Kg DBZ(C、D、L、M、N、O)で10日間処置し、その後、腸を連続切片により組織学的に調べた。β-カテニンについての染色は、腺腫を描写した(図A、C、E、L)。DBZ処置は、Math1(D対B、およびより高い倍率で、M対F)およびPas発現(O対K)を誘導し、Ki67発現を減少させた(N対G)。 本文中に示されているようにBZで処置されたまたは処置されていないAPCminマウスの腸および腸腺腫の分析。C57B16マウスに、γ-セクレターゼ阻害剤BZを腹腔内注射し、0μmol/Kg、3μmol/Kg、10μmol/Kg、および30μmol/Kgを毎日5日間注入した。3μmol/Kgにおいて、杯細胞数は、PAS染色により示されているように、わずかに増加したが(非呈示)、10μmol/Kgおよび30μmol/Kgでは、増殖性陰窩細胞の有糸分裂後の杯細胞への変換は完了した(A)。本文中に示されているようにBZまたはDBZでの経口投与により処置された(上部パネル)または処置されていない(下部パネル)APCminマウスの腺腫の分析。パネル(B、C)における暗い染色により、腺腫組織を表す、高レベルのβ-カテニンをもつ上皮における領域が明らかにされている。パネル(D、E)は、細胞周期/増殖マーカーKi67についての染色を示す。DBZ(非呈示)またはBZ(パネルE対D)での処置が腺腫における増殖活性の著しい減少につながり、一方周囲の組織は影響を受けていないように思われることに注目されたい。

Claims (22)

  1. Notch経路活性化に影響を及ぼす段階を含む、腺腫および/または腺癌細胞の運命を変更するための方法。
  2. 腺腫および/または腺癌細胞においてNotch経路活性化を少なくとも一部阻害する段階を含む、腺腫および/または腺癌細胞からの分裂終了細胞の形成を誘導するための方法。
  3. 動物に存在する腸腺腫および/または腺癌を少なくとも一部減少させるための方法であって、該動物においてNotch経路活性化を少なくとも一部阻害する段階を含む方法。
  4. Notch経路活性化が、Notchのリガンド媒介性活性化を少なくとも一部減少させることにより、少なくとも一部阻害される、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
  5. Notch経路活性化が、γ-セクレターゼの阻害剤を供給することにより少なくとも一部阻害される、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
  6. γ-セクレターゼの阻害剤が、DAPTまたはジベンズアゼピン(DBZ)またはベンゾジアゼピン(DB)である、請求項5記載の方法。
  7. Notchのリガンド媒介性活性化が、Notchのドミナントネガティブなリガンドを供給することにより少なくとも一部減少させられる、請求項4記載の方法。
  8. Notchのリガンド媒介性活性化が、ドミナントネガティブなNotchを供給することにより少なくとも一部減少させられる、請求項4記載の方法。
  9. Notchのリガンド媒介性活性化が、NotchリガンドとNotchの間の相互作用を少なくとも一部ブロックする能力がある抗体を供給することにより、少なくとも一部減少させられる、請求項4記載の方法。
  10. Notch経路活性化が、ADAMプロテアーゼ阻害剤を供給することにより少なくとも一部阻害される、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
  11. Wnt経路活性化を少なくとも一部阻害する段階をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
  12. 腸腺腫および/または腺癌の処置のための薬物の調製におけるNotch経路阻害剤の使用。
  13. Notch経路阻害剤がγ-セクレターゼ阻害剤である、請求項12記載の使用。
  14. γ-セクレターゼ阻害剤がDAPTまたはジベンズアゼピン(DBZ)またはベンゾジアゼピン(DB)である、請求項14記載の使用。
  15. Notch経路阻害剤が、Notchのリガンド媒介性活性化を減少させる能力がある阻害剤である、請求項13記載の使用。
  16. 阻害剤がNotchのドミナントネガティブなリガンドである、請求項15記載の使用。
  17. 阻害剤がドミナントネガティブなNotchである、請求項15記載の使用。
  18. 阻害剤が、NotchリガンドとNotchの間の相互作用を少なくとも一部ブロックする能力がある抗体である、請求項13記載の使用。
  19. 阻害剤がADAMプロテアーゼ阻害剤である、請求項13記載の使用。
  20. Wnt経路阻害剤をさらに含む、請求項13〜19のいずれか一項記載の使用。
  21. 腸腺腫および/または腺癌が、遺伝性症候群の家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)をもつ患者に生じている、請求項13〜20のいずれか一項記載の使用。
  22. 少なくとも2つのNotch経路活性化阻害剤を含む、または少なくとも1つのNotch経路活性化阻害剤および少なくとも1つのWnt経路阻害剤を含む、薬学的組成物。
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