JP2008519261A - 重水素化グルコースを用いたグリカン分析 - Google Patents

重水素化グルコースを用いたグリカン分析 Download PDF

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Abstract

D7-グルコースを対象に投与することによるグルコース代謝産物の同定および代謝フラックスの測定に用いるための新規方法および装置を提供する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、すべての目的のために参照により全体が本明細書に組み入れられる、2004年10月29日に出願された米国特許仮出願第60/623,521号の恩典を主張する。
発明の背景
糖鎖形成パターン(シーケンスおよび分枝構造を含む)は多くの生物学的理由のため重要である。糖鎖形成した血漿タンパク質のシアル酸含有量はクリアランスに関する生物学的指標である。Chitlaru, et al., Biochem. J., 336:647-658 (1998)(非特許文献1); Millar, Atherosclerosis, 154:1-13 (2001)(非特許文献2)を参照されたい。赤血球表面タンパク質の糖鎖形成の差は異なる血液型に対する免疫応答の誘発にとって重要である。糖タンパク質は薬物製品としても探求されている(例えば、完全長の糖鎖形成組換え型トロンボポエチン)。Haznedaroglu, et al., Clin. Appl. Thromb. Hemost., 8:193-212 (2002)(非特許文献3)を参照されたい。細胞表面タンパク質の糖鎖形成は多細胞生物における細胞−細胞および細胞−基層の認識事象において最も重要な役割を持ち(Jain, Targets, 2:189-90 (2003)(非特許文献4))、これ故に、タンパク質の糖鎖形成パターンを理解することは癌のような疾患にとって非常に重要である。P糖タンパク質は、乳腺腫瘍(Zampieri, et al.,Anticancer Res.; 22:2253-9 (2002)(非特許文献5))および膀胱腫瘍(Nakagawa, et al., J. Urol., 157:1260-4 (1997)(非特許文献6))の化学療法に対する多剤耐性に関連する。組換え型薬剤の糖鎖形成パターンの品質管理は、作製される薬物製品の発火反応および不活性の可能性のために重要な問題である。
糖鎖形成パターンはタンパク質バイオマーカーの発見にも影響する。確定的なバイオマーカーバリデーションによって、一般的に非侵襲性で迅速かつ費用のかからないより優れた診断または予後アッセイを得ることができる。しかしながら、多くのバイオマーカーアッセイは、侵襲性の生検、高額の画像化(MRI)、またはより長時間を要する診断試験の総合評価などのさらなる確証的方法を使わなければ、所与の疾患またはその疾患の進行にとって非特異的である。任意の所与のアッセイにおけるこの特異性および精度欠除の原因となる問題点の一つは、機能的または臨床的には問題となるがバイオマーカーの状態を調べるために用いられる方法では識別されないバイオマーカーの糖化型が存在し得るという点である。例えば、近年、糖鎖形成パターンの違いによって正常および腫瘍由来の前立腺特異抗原(PSA)が区別できることが報告されている。Peracaula et al., Glycobiology, 13:457-470 (2003)(非特許文献7)を参照されたい。従って、抗原の非糖鎖形成部分に対する抗体を使用する患者からの陽性ELISAの結果は悪性度の誤った指標(即ち、擬陽性)である可能性がある。もう一つの例は乳癌の領域に由来する。CD44は、細胞−細胞および細胞−マトリックスの相互作用に関与する多機能性細胞接着タンパク質マーカーである。一つの試験において、試験対象となった乳癌の44.2%がCD44に対するモノクローナル抗体と強く反応した;しかし、乳癌の21.3%のみに認められた唯一の糖鎖形成変異型であるCD44v3はリンパ節への転移の存在と有意な相関を示した。Rys, et al., Pol. J. Pathol.; 54:243-247 (2003)(非特許文献8)を参照されたい。
配列および構造の双方の決定に適した現在のグリコミック法は非常に困難であり、時間および試料を要する。明確な配列および構造決定のための現在の方法は、特異的サッカラーゼを用いた連続的消化(Parekh, et al., 米国特許第5,667,984号(特許文献1))、これに続く誘導体形成および消化産物のHPLCまたはMS分析に注目している。構造解析は質量分析による断片化(fragmentation)解析により実施されているが、複合型分枝オリゴ糖のすべての結合および分枝パターンを調べることのできる方法は未だ報告されていない。Zaia, J., Mass Spectrom. Rev.; 23:161-227 (2004)(非特許文献9)を参照されたい。
本発明はこれらおよびその他の要求に取り組む。
米国特許第5,667,984号 Chitlaru, et al., Biochem. J., 336:647-658 (1998) Millar, Atherosclerosis, 154:1-13 (2001) Haznedaroglu, et al., Clin. Appl. Thromb. Hemost., 8:193-212 (2002) Jain, Targets, 2:189-90 (2003) Zampieri, et al.,Anticancer Res.; 22:2253-9 (2002) Nakagawa, et al., J. Urol., 157:1260-4 (1997) Peracaula et al., Glycobiology, 13:457-470 (2003) Rys, et al., Pol. J. Pathol.; 54:243-247 (2003) Zaia, J., Mass Spectrom. Rev.; 23:161-227 (2004)
発明の簡潔な概要
驚いたことに、本明細書に開示される方法および装置を用いて対象にD7-グルコースを投与すると、グルコースの代謝産物を同定することができ、代謝フラックスを決定することができることが発見されている。
一つの局面において、本発明はグルコース代謝産物を同定する方法を提供する。この方法は、対象へのD7-グルコースの投与を含む。D7-グルコースは、重水素化した標的代謝物を形成するために、対象によって少なくとも一部代謝される。重水素化標的代謝物は対象から分離される。対象からの重水素化標的代謝物の分離後、この重水素化標的代謝物を質量タグと接触させて重水素化標的代謝物に接続させ、それによって質量タグ付き重水素化標的代謝物が形成される。質量タグ付き重水素化標的代謝物の質量が検出され、それによって、グルコース代謝産物が同定される。
もう一つの局面において、本発明は、関心対象の代謝物を精製するための方法、一部の疾患に相関する代謝物を同定するためのスクリーニング、および疾患を持つまたは疾患に感受性である個体を識別するための診断的スクリーニングを含む代謝分析を実施するための方法および装置を提供する。
いくつかの態様において、この方法は、対象に基質(例えば、D7-グルコース、D7-グルコース/H7-グルコース混合物、またはD7-グルコース/H7-グルコース混合物を含む組成物)を投与する工程を伴い、ここでH7-グルコースに対するD7-グルコースの相対的比率は投与前に公知である。続いて、対象に対して、一つまたは複数の標的代謝物を形成するために基質を少なくとも一部代謝するための十分な時間を与える。続いて、各標的分析物のフラックス値を確かめることができるように、この対象から採取した試料中の複数の標的分析物の同位体存在量を調べる。目標標的分析物中の同位体存在量は、2Hに対する1Hの割合を求めることのできる分析装置を用いて調べられる。このような分析装置の例には、質量分析計、赤外分光光度計、および核磁気共鳴分光計が含まれる。
発明の詳細な説明
定義
「アルキル」という用語は、単独またはもう一つの置換基の一部として、特記する場合を除いて、直鎖状(即ち、分枝していない)もしくは分枝した鎖、もしくは環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味し、それらは完全に飽和、一不飽和または多価不飽和であってもよく、所定の炭素原子数を持つ(即ち、C1-C10は1個から10個の炭素を意味する)二価または多価のラジカルを含むことができる。飽和炭化水素ラジカルの例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロへキシル、(シクロへキシル)メチル、シクロプロピルメチルのような官能基、同族体、および例えばn-ペンチル、n-へキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの異性体が含まれるが、これらに限定されるものではない。不飽和アルキル基は一つまたは複数の二重結合または三重結合を持つ基である。不飽和アルキル基の例には、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびにより多価の同族体および異性体が含まれるが、これらに限定されるものではない。炭化水素基に限定されるアルキル基は「ホモアルキル」と呼ばれる。
「ヘテロアルキル」という用語は、単独またはもう一つの用語と組み合わせて、特記する場合を除いて、少なくとも一つの炭素原子、ならびにO、N、P、SiおよびSからなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子からなる、安定な直鎖もしくは分枝鎖または環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味して、窒素および硫黄原子は酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は四級化されていてもよい。ヘテロ原子であるO、N、PおよびS、ならびにSiは、そのヘテロアルキル基の任意の内部の位置またはそのアルキル基が分子の残部に接続する位置に位置し得る。例には、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2、-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、-CH=CH-N(CH3)-CH3、O-CH3、-O-CH2-CH3、および-CNが含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、-CH2-NH-OCH3および-CH2-O-Si(CH3)3のように、2個までのヘテロ原子が連続し得る。上記の通り、本明細書で用いられるヘテロアルキル基には、-C(O)R'、-C(O)NR'、-NR'R''、-OR'、-SR'、および/または-SO2R'などのヘテロ原子を介して分子の残部に接続する基が含まれる。「ヘテロアルキル」が記載されて、続いて-NR'R''などの具体的なヘテロアルキル基が記載される場合、ヘテロアルキル基および-NR'R''の用語は重複または相互に排他的ではないことが理解されるであろう。より正確に言えば、具体的なヘテロアルキル基は明確さを増すために記載される。従って、「ヘテロアルキル」という用語は本明細書では-NR'R''などのような具体的なヘテロアルキル基を除くものとして理解されるべきではない。
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語は、単独またはその他の用語と組み合わせて、特記する場合を除いて、それぞれ、「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状型を示す。さらに、ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロ原子はヘテロ環が分子の残部に接続する位置を占有することができる。シクロアルキルの例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。ヘテロシクロアルキルの例には、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルフォリニル、3-モルフォリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、単独またはもう一つの置換基の一部として、特記する場合を除いて、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語はモノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、「ハロ(C1-C4)アルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことを意味するが、これらに限定されるものではない。
「アリール」という用語は、特記する場合を除いて、融合して一つになるまたは共有結合する単一の環または多数の環(例えば、1個から3個の環)であり得る多価不飽和、芳香族、炭化水素置換基を意味する。「ヘテロアリール」という用語は、N、OおよびSから選択される1個から4個までのヘテロ原子を含むアリール基(または環)を指し、窒素および硫黄原子は酸化されていてもよく、窒素原子は四級化されていてもよい。ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残部に接続することができる。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例には、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが含まれる。上記のアリールおよびヘテロアリール環の各系における置換基は、下記の許容される置換基の群から選択される。
簡潔にするために、「アリール」という用語は、その他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)と組み合わせて用いられる場合、上記のアリールおよびヘテロアリール環の双方を含む。従って、「アリールアルキル」という用語は、内部の炭素原子(例えば、メチレン基)が例えば酸素原子によって置換されているアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなど)を含むアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)にアリール基が接続するラジカルを含むことを意味する。
アルキル基、ヘテロアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基の置換基は、限定されるものではないが、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CNおよび-NO2から選択される様々な基の一つまたは複数であってよく、数は0から(2m'+1)までの範囲であり、m'はこのようなラジカルにおける炭素原子の総数である。R'、R''、R'''およびR''''はそれぞれ、独立して、水素、置換型もしくは非置換型ヘテロアルキル、置換型もしくは非置換型シクロアルキル、置換型もしくは非置換型ヘテロシクロアルキル、置換型もしくは非置換型アリール(例えば、1-3ハロゲンで置換したアリール)、置換型もしくは非置換型アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指し得る。本発明の化合物が1つよりも多いR基を含む場合、例えば、1つよりも多いこれらの基が存在する場合は各々のR'、R''、R'''およびR''''基と同様に各R基は独立して選択される。R'およびR''が同一の窒素原子に接続する場合、それらは窒素原子と結合して4-、5-、6-または7-員環を形成することができる。例えば、-NR'R''は、限定されるものではないが、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことを意味する。置換基に関する上記の考察から、当業者は、「アルキル」という用語がハロアルキル(例えば-CF3および-CH2CF3)およびアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3など)のようなハロゲン基以外の基に結合する炭素原子を含む基を含むことを意味する。
上記のアルキルラジカルに関して記載した置換基と同様に、アリール基およびヘテロアリール基の例示的置換基は様々であり、例えば、ハロゲン、-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CNおよび-NO2、-R'、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキシ、ならびにフルオロ(C1-C4)アルキルから選択されて、数は0から芳香環構造のオープン原子価の総数までであり、R'、R''、R'''およびR''''はハロゲン、置換型または非置換型アルキル、置換型または非置換型ヘテロアルキル、置換型または非置換型シクロアルキル、置換型または非置換型ヘテロシクロアルキル、置換型または非置換型アリール、および置換型または非置換型ヘテロアリールから独立して選択され得る。本発明の化合物が1つよりも多いR基を含む場合、例えば、1つよりも多いこれらの基が存在する場合、各々のR'、R''、R'''およびR''''基と同様に各R基は独立して選択される。
アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子の2つの置換基は任意で-T-C(O)-(CRR')q-U-の式の環を形成していてもよく、ここで、TおよびUは独立して-NR-、-O-、-CRR'-、または単結合であり、qは0から3までの整数である。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子の2つの置換基は任意で-A-(CH2)r-B-の式の置換基で置換されてもよく、ここで、AおよびBは独立して-CRR'-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-または単結合であり、rは1から4までの整数である。このようにして形成される新しい環の単結合の一つは、二重結合で置換されてもよい。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子の2つの置換基は-(CRR')s-X'-(C''R''')d-の式で表される置換基で置換されてもよく、ここで、sおよびdは独立して0から3までの整数であり、X'は-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-または-S(O)2NR'-である。R、R'、R''およびR'''の置換基は、独立して、水素、置換型または非置換型アルキル、置換型または非置換型シクロアルキル、置換型または非置換型ヘテロシクロアルキル、置換型または非置換型アリール、および置換型または非置換型ヘテロアリールから選択され得る。
本明細書で用いられるように、「ヘテロ原子」または「環ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)、およびケイ素(Si)を含むことを意味する。
「グリカン」は、グリコシド結合によって結合した複数の単糖を持つ分子である(例えば、多糖またはオリゴ糖)。本明細書で用いられるように、「単糖」は代謝経路にリン糖酸を含む。
「ペプチド」とは、内部のモノマーがアミノ酸でありアミド結合を介して結合して一つになっている、つまり「ポリペプチド」と呼ばれるポリマーを指す。「ペプチド」および「ポリペプチド」という用語はタンパク質を含む。例えば、β-アラニン、フェニルグリシン、およびホモアルギニンといった非天然型アミノ酸もこの定義に含まれる。遺伝子にコードされていないアミノ酸も本発明において使用することができる。さらに、反応基を含むように修飾されているアミノ酸も本発明において使用され得る。本発明で用いられるアミノ酸はすべて、D-またはL-異性体のいずれであってもよい。一般的にはL-異性体が好ましい。さらに、その他のペプチド模倣物も本発明において有用である。一般的な総説には、Spatola, Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, p. 267 (1983)を参照されたい。
本明細書で用いられるように、「基質」は、D7-グルコース、またはD7-グルコースおよびH7-グルコースの混合物を含む組成物である。いくつかの態様において、基質はD7-グルコースであり、D7-グルコースおよびH7-グルコースの混合物を含む組成物(例えば、ボーラス)である。いくつかの態様において、D7-グルコースおよびH7-グルコースの割合は公知である。いくつかの態様において、基質はD7-グルコースである。D7-グルコースは次の式を持つグルコースである。
Figure 2008519261
「H7-グルコース」は重水素を持たないD7-グルコースである。本明細書で用いられるように、「標識された基質」はD7-グルコースを含む組成物を示す。本明細書で用いられるように、「未標識の基質」はH7-グルコースを含みD7-グルコースを含まない組成物を示す。
本明細書で用いられるように、「試料」は対象から派生した典型的な一部分または単一の要素を示す。試料は、典型的には重水素化標的代謝物を含む。様々な試料が本発明を用いて分析され得る。試料には、生体、細胞、ウイルスおよび/またはプリオンのソースから派生する材料が含まれる。試料の中には、唾液、血液および尿などの生物学的液体から派生するものもある。いくつかの態様において、生物学的液体は細胞全体、細胞小器官、またはタンパク質、タンパク質断片、ペプチド、炭水化物または核酸のような細胞性分子を含む。生物学的材料は、ソースにとって内因性でもまたは非内因性でもよい。例えば、一つの態様において、生物学的材料は細菌から採取されて分子クローニング技術を用いて遺伝子工学により作製された組換え型タンパク質である(一般的には、参照により本明細書に組み入れられるSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989)を参照されたい)。もう一つの態様において、試料は合成タンパク質、タンパク質断片、ペプチド、炭水化物または核酸などの化学的に合成された生物学的材料を含む。
「糖ペプチド」および「糖ポリペプチド」という用語は、本明細書では、接続する糖部分を持つペプチド鎖を指すために同義的に用いられる。本明細書では、小さな糖ポリペプチドまたは糖ペプチドと大きな糖ポリペプチドまたは糖ペプチドを区別するための識別は行わない。従って、接続する糖部分を持つ場合、ペプチド鎖内にごく少数のアミノ酸ならびにその他の格段に大きなペプチドおよびタンパク質を持つホルモン分子は「糖ポリペプチド」および「糖ペプチド」という一般的用語に含まれる。
オリゴ糖の「シーケンシング」は、(i)オリゴ糖内の各単糖ユニットの型、(ii)オリゴ糖内で単糖ユニットが並べられる順序、(iii)各単糖ユニット間の結合の位置(例えば、1-3、1-4など)、従って、いずれかの分枝パターン、および/または(iv)各単糖ユニット間の結合の配向性(即ち、結合がα結合であるか、またはβ結合であるか)などのオリゴ糖の構造に関する一定の情報を推論する工程を含む。
「グリカンをシーケンシングする」という語句は、グリカン内の少なくとも一つの糖ユニットの同定、順序、および/または位置を決定することを示す。
本明細書で用いられるように、「対象」とは一般に分析を実施するために試料が採取される生存している任意の生物体を示す。対象には、微生物(例えば、ウイルス−感染した宿主体内にある場合、細菌、酵母、カビ、および真菌)、動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、イヌ、およびネコ)、ヒト上科(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)および植物が含まれるが、これらに限定されるものではない。この用語はトランスジェニックおよびクローンの種を含む。この用語は、検討中の代謝過程を続行するために培養することができる細胞または組織培養物も含む。「患者」という用語は、ヒトまたは獣医学の双方の対象を指す。
対象が細胞の集団または細胞培養物である場合は、当技術分野において公知の任意の標準的細胞培養系が使用できる。適切な細胞タイプの例には、哺乳動物細胞(例えば、CHO、COS、MDCK、HeLa、HepG2およびBaF3細胞)、細菌細胞(例えば、大腸菌(E. coli))、および昆虫細胞(例えば、Sf9)が含まれるが、これらに限定されるものではない。細胞培養物に関するさらなる手引きはSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989)に記載されている。
「質量タグ」は、任意の六炭糖、六炭糖から産生される多糖、および任意のデオキシ六炭糖の質量とも一致しない化学的要素である。一つの態様において、質量タグは、一つまたは複数の「質量欠損原子」または「質量欠損エレメント」を組み入れたタグを含む「質量欠損タグ」である。「質量欠損原子」または「質量欠損エレメント」は17から77まで(両端の数字を含む)の原子番号を持つ原子として定義される。質量欠損原子/エレメントは、タグ付きの任意のグリカンにおいて、このようなグリカンとタグ付けされていないグリカンの識別を可能とする質量シフトを起こす。
「細胞状態」という用語には、疾患の影響に加えて、薬物、化合物または生化学的曝露の全身性の(毒性/有用性の)影響が含まれる。
緒言
驚いたことに、グルコース代謝産物は、安定同位体トレーシングおよび質量タグ標識の新しい組み合わせを用いて効率的かつ経済的に同定することができることが発見されている。これらの2つの方法の組み合わせは、糖化型の複合的な構造および配列の決定を可能とする。好都合なことに、これらの方法は公知の方法に比して多くの段階を排することによって試料の必要量を抑えて分析時間を短縮する。糖化型の配列および分枝構造の双方を同時に調べることができる。
I.グルコース代謝産物の同定の方法
一つの局面において、本発明はグルコース代謝産物を同定する方法を提供する。この方法は、対象へのD7-グルコースの投与を含む。D7-グルコースは対象によって少なくとも一部代謝されて、重水素化標的代謝物を形成する。重水素化した標的代謝物が対象から分離される。対象からの重水素化標的代謝物の分離後、この重水素化標的代謝物を質量タグと接触させて重水素化標的代謝物に接続させ、それによって質量タグ付き重水素化標的代謝物が形成される。質量タグ付き重水素化標的代謝物の質量が検出され、それによって、グルコース代謝産物の同定が提供される。
いくつかの態様において、質量タグ付き重水素化代謝物は、質量タグ付きの標識重水素化代謝物断片および未標識の重水素化代謝物断片の集団を産生するために酵素、化学分解または質量分析による断片化法を用いて断片化される。質量タグ付き標識重水素化代謝物断片の質量は、以下に記載するように、任意の適切な方法を用いて検出され得る。いくつかの態様において、質量タグ付きの標識重水素化代謝物断片および未標識の代謝産物断片は質量欠損タグの核結合エネルギーに基づいて識別される。
A.D7-グルコースの代謝
安定同位体法は、対象にD7-グルコースを投与する段階および対象にD7-グルコースを代謝させる(または一部代謝させる)段階を伴う。D7-グルコースは、例えば以下のスキーム1に示す通り、インビボ(またはインサイチュー)において酵素的に一つまたは複数の単糖に転換され得る。単糖の代謝経路に沿ったそれぞれの転換の結果、骨格の重水素([2H])が水素([1H])で置換される。重水素の水素での置換1個により、質量は1.006277amu減少する。
スキーム1
Figure 2008519261
以下の表1に示す通り、D7-グルコースの代謝から産生される重水素化単糖は一般に少なくとも中性子1個分の質量(1.006277amu)だけ異なる。1個の中性子の質量は質量分析法により容易に識別される。
D7-グルコースの代謝から産生される少なくとも1amu異ならない2個の重水素化単糖はマンノースおよびガラクトースである。フルクトースを介したマンノース転換のメカニズムは2つの異性化を伴い、その結果、C1における重水素消失の可能性は50:50となる。従って、D7-グルコースの代謝によって2つの重水素化マンノース代謝物が産生されて、軽い方の同位体の質量は185.1であり、重い方の同位体の質量は186.1amuである。重い方の同位体は186.1amuにおいてガラクトースのピークと重複する。しかし、質量185.1の軽い方の同位体は容易に検出される(例えば、質量分析法またはNMRにより)。
(表1)
Figure 2008519261
重水素化された単糖はグリカンへの取り込みによってさらに代謝され得る。グリカンは独立の分子であってよく、またはタンパク質もしくは脂質のようなもう一つの生体分子に接続してもよい。典型的には、重水素化した単糖は環状化して、グリコシルトランスフェラーゼのような一つまたは複数の酵素の作用を介してグリカンに取り込まれる。グリコシルトランスフェラーゼは、タンパク質、糖ペプチド、脂質もしくは糖脂質、または伸長中のオリゴ糖の非還元末端への段階的な活性糖(ドナーNDP-糖)の付加を触媒する。単糖またはグリカンを含むペプチドは糖ペプチドである。糖ペプチドはN結合またはO結合であり得る。
N結合糖ペプチドは、ペプチドであるアスパラギンに共有結合したグリカンを持つペプチドである。典型的には、このグリカンには本明細書においてトリマンノシルコアと呼ばれる共通の五糖構造を持ち、これはペプチド鎖のAsn-X-Ser/Thrの配列の位置においてアスパラギンにN結合する。N結合糖ペプチドは、アンブロックトランスファーにおいてトランスフェラーゼおよび脂質結合オリゴ糖ドナーであるDol-PP-NAG2Glc3Man9を介して形成され、その後、コアがトリミングされ得る。この場合、コアの糖の性状はそれ以降の付属物とは若干異なる。当技術分野では非常に多くのグリコシルトランスフェラーゼが公知である(例えば、ガラクトシルトランスフェラーゼのようなルロアール(Leioir)経路グリコシルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、キシロシルトランスフェラーゼ、グルクロノニル(glucurononyl)トランスフェラーゼなど)。
トリマンノシルコアは典型的にはペプチドに接続する2つのN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基および3つのマンノース(Man)残基を含む。従って、トリマンノシルコアは典型的にはこれらの5つの糖残基を含んでさらなる糖は含まないが、任意でフコース残基を含んでもよい。最初のGlcNAcはアスパラギンのアミド基に接続して、二番目のGlcNAcはβ1,4結合を介して最初のGlcNAcに接続する。マンノース残基はβ1,4結合を介して第二のGlcNAcに接続し、2つのマンノース残基は、それぞれ、α1,3およびα1,6結合を介してこのマンノースに接続する。トリマンノシルコア構造は哺乳動物のペプチドにおけるN結合グリカンの基本的特徴であり、大半のペプチドにおけるグリカン構造はトリマンノシルコアに加えてその他の糖を含む。本発明の方法は、糖ペプチドにおけるこれらおよびその他の糖の同定の決定において有用である。
O-グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸へのO-グリコシド結合における様々な単糖の接続を特徴とする。O-グリコシル化は動植物界において広く見られる翻訳後修飾である。タンパク質にO結合するグリカンの構造の複雑さはN結合したグリカンのそれを大きく上回る。新しく翻訳されるペプチドのセリンまたはスレオニン残基は、ゴルジのシス-トランスコンパートメントにおいてペプチジルGalNAcトランスフェラーゼによって修飾される。
O結合グリカンは典型的にはコア、骨格領域および末梢領域を含む。O結合グリカンの「コア」領域は、ペプチドの基部のグリカン鎖の内層の主として2個または3個の糖である。骨格領域は、主として、均一な伸長によって形成されるグリカン鎖の長さに寄与する。末梢領域は高度な構造複雑さを示す。O結合グリカンの構造の複雑さはコア構造から始まる。大半の場合、O結合グリカンの共通部位に付加する第一の糖残基はGalNAcである。この糖は、とりわけ、GlcNAc、グルコース、マンノース、ガラクトースまたはフコースであってもよい。
哺乳動物細胞では、少なくとも8つの異なるO結合コア構造が見出されており、すべて、コア-α-GalNAc残基に基づく。O結合グリカンについては、例えば、Montreuil, Structure and Synthesis of Glycopeptides, In Polysaccharides in Medicinal Applications, pp. 273-327, (1996), Eds., Severian Damitriu, Marcel Dekker, NY、およびSchachter and Brockhausen, The Biosynthesis of Branched 0-Linked Glycans, 1989, Society for Experimental Biology, pp. 1-26 (Great Britain)において総評されている。
このように、いくつかの態様において、重水素化標的代謝物は上記の通り重水素化標的単糖である(例えば、表1)。重酸素化標的単糖は、d5-キシロース、d6-NAc-ノイラミン酸、d5-NAc-ガラクトサミン酸、d6-NAc-グルコサミン、d7-グルコース、d6-ガラクトース、d3.5-フコースおよびd5.5-マンノースから選択され得る(上記の表1を参照されたい)。いくつかの態様において、重水素化標的代謝物は、重水素化標的単糖のヘキソース糖、ペントース糖、またはヘキソース糖のさらなる生化学的転換から生じる三炭糖化合物である。その他の例示的標的代謝物については、例えば、参照により全体がすべての目的のために本明細書に組み入れられるLee et al., 米国特許出願第20030180800号およびBoros et al., Drug Discovery Today, 7:364-372 (2002)において考察されている。
その他の態様において、重水素化標的代謝物は重水素化グリカンである。重水素化グリカンは上記の少なくとも1つの重水素化単糖を含み、これは環状型または非環状型であってよい。重水素化グリカンは独立した分子であってもよい。または、重水素化グリカンはタンパク質(重水素化糖ペプチドを形成)、脂質(例えば、脂肪、脂肪酸など、重水素化糖脂質を形成する)、核酸(例えば、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオシドなど)、または有機酸に接続してもよい。従って、いくつかの関連する態様において、重水素化標的代謝物は重水素化糖ペプチド、糖脂質、グリコシル化した核酸、またはグリコシル化した有機酸である。以下に示す通り、グリカン(例えば、質量タグ付き重水素化標的代謝物)の配列、構造および量は本明細書に記載される方法および糖代謝に関する技術分野において公知の方法を用いて調べることができる。
いくつかの態様において、グリカンパターンが同定され得る(本明細書では「糖化型」とも呼ばれる)。例示的な糖化型には、高マンノース型(Man 9)、混合型(Hy 2)、および複合多分岐型(Hex 2)が含まれる。
B.質量タグ
質量タグ(質量標識とも呼ばれる)には、質量欠損タグ(以下を参照)などの、質量分析法によって検出できる適切な化合物が含まれる。質量タグは、それらの分子量寄与および/またはそれらのイオン性状に基づいて重水素化標的代謝物の質量を修飾する能力に基づいて選択してよい。
重水素化標的代謝物が重水素化した単糖またはグリカンを含む場合、質量タグは典型的には還元末端に接続する。このように、質量タグは、重水素化標的代謝物を試料中に存在する可能性のあるその他の分子種と識別するためのさらなる方法を提供する。例えば、重水素化標的代謝物が重水素化標的グリカン断片である場合、質量タグは還元糖から始まる断片の識別を可能として、オリゴ糖の分枝構造が容易に再構築される。
次の特性は質量タグの選択に関連し得る:
i)質量をバックグラウンドの低いスペクトル領域にシフトさせることができる固有の質量;
ii)リモートチャージフラグメンテーション(remote charge fragmentation)を誘導するための一定の正または負の電荷;
iii)断片化条件下での頑強さ;
iv)タグ付けにおいて再現性および均一性を可能とする、一連の条件下、特に変性条件下での重水素化代謝物への接続の効率;および
v)重水素化代謝物のイオン化効率を高める、または少なくともそれを抑制しない能力。
例示的な質量タグには、置換型または非置換型アルキル、置換型または非置換型ヘテロアルキル、置換型または非置換型シクロアルキル、置換型または非置換型ヘテロシクロアルキル、置換型または非置換型アリール、置換型または非置換型ヘテロアリール、核酸、ポリヌクレオチド、アミノ酸、ペプチド、合成ポリマー、生体高分子、ヘム基、色素、有機金属化合物、ステロイド、フラーレン、レチノイド、カロテノイド、および多環芳香族炭化水素が含まれる。
有用な合成高分子質量タグには、ポリエチレングリコール、ポリビニルフェノール、ポリプロピレングリコール、ポリメチルメタクリル酸、ポリプロピレン、ポリスチレン、セルロース、セファデックス、デキストラン、シクロデキストリン、ポリアクリルアミド、およびそれらの誘導体が含まれる。合成高分子は、典型的には、エチレングリコール、ビニルフェノール、プロピレングリコール、メチルメタクリル酸、ならびにそれらの誘導体および組み合わせを含む。
生体高分子は、アミノ酸、非天然型アミノ酸、模倣ペプチド、核酸、模倣核酸および類似体、ならびに糖およびそれらの組み合わせなどのモノマー単位を含む生体高分子を含む。従って、重水素化標的代謝物は重水素化糖ペプチドであり、このペプチドは質量タグとして使用することができる。
いくつかの態様において、質量タグは安定な同位体を含む。安定な同位体は13C、2H、15N、18Oおよび34Sから選択することができる。タグは、各標識断片部位において固有の質量スペクトルパターンを生じるように、2つまたはそれよりも多い同位体的に異なる化学種の混合物を含んでもよい。
その他の例示的質量タグについては、例えば、参照により全体がすべての目的のために本明細書にそれぞれ組み入れられるNess et al., 米国特許第6,027,890号、Schmidt et al., 国際公開公報第99/32501号、EP 698218B1、米国特許第5,100,778号、米国特許第5,667,984号、およびAebersold et al., 国際公開公報第00/11208号に記載されている。
一つの例示的態様において、質量タグは検出促進成分を含む。検出促進成分は、質量タグの重水素化標的代謝物の検出を促進する部分を示す。従って、検出促進成分は質量分析計イオン化チャンバー内での断片化条件下において正に帯電したイオン性化学種を提供することができ、またはその成分は質量分析計イオン化チャンバー内での断片化条件下において負に帯電したイオン性化学種を提供することができる。検出促進成分の多くにおいて、存在するイオン化化学種の量は重水素化代謝物を可溶化するために用いられる媒質に依存する。好ましい検出促進成分(例えば、正または負の電荷を発生することができる化学種)は3つのカテゴリーに分類することができる:1)「硬い」電荷を持つ成分、2)「軟らかい」電荷を持つ成分、および3)電荷は持たないが「軟らかい」電荷を持つ化学部分に極めて近い成分。
「硬い」電荷を持つ成分は、媒質のpHに関わらず、すべての条件下において実質的にイオン化される原子の配置である。「硬い」正に荷電した検出促進成分には、テトラアルキルまたはテトラアリールアンモニウム基、テトラアルキルまたはテトラアリールホスホニウム基、ならびにN-アルキル化またはN-アシル化ヘテロサイクリルおよびヘテロアリール(例えば、ピリジニウム)基が含まれるが、これらに限定されるものではない。「硬い」負に荷電した検出成分には、ホウ酸テトラアルキルまたはテトラアシル基が含まれるが、これらに限定されるものではない。
「軟らかい」電荷を持つ成分は、それぞれ、それらのpKaを上回るまたは下回るpHにおいてイオン化される原子の配置である(例えば、塩および酸)。本発明の状況の範囲内において、「軟らかい」正の電荷は8よりも高い、10よりも高い、または12よりも高いpKaを持つそれらの塩を含む。本発明の状況の範囲内において、「軟らかい」正の電荷は4.5よりも低い、2よりも低い、または1よりも低いpKaを持つそれらの酸を含む。pKaの両端において、「軟らかい」電荷は「硬い」電荷としての分類に接近する。「軟らかい」負に荷電した検出促進成分には、1゜、2゜および3゜アルキルまたはアリールアンモニウム基、置換型および非置換型ヘテロシクリルおよびヘテロアリール(例えば、ピリジニウム)基、アルキルまたはアリールシッフ塩基またはイミン基、およびグアニジノ基が含まれるが、これらに限定されるものではない。「軟らかい」負に荷電した検出促進成分には、アルキルまたはアリールカルボキシレート基、アルキルまたはアリールスルホネート基、およびアルキルまたはアリールホスホネートまたはホスフェート基が含まれるが、これらに限定されるものではない。
「硬く」および「軟らかく」荷電した双方の基において、当業者によって理解されるであろう通り、これらの基には逆の電荷の対イオンが付随するであろう。例えば、様々な態様の範囲内において、正に荷電した基の対イオンは、低級アルキル有機酸(例えば、アセテート)、ハロゲン化有機酸(例えば、トリフルオロアセテート)および有機スルホネート(例えば、N-モルホリノエタンスルホネート)のオキシアニオンを含む。負に荷電した基の対イオンは、例えば、アンモニウム陽イオン、アルキルまたはアリールアンモニウム陽イオン、およびアルキルまたはアリールスルホニウム陽イオンを含む。
中性であるが「軟らかい」電荷を持つ化学的分子に極めて近い成分(例えば、リジン、ヒスチジン、アルギニン、グルタミン酸またはアスパラギン酸)も検出促進成分として使用することができる。
質量タグの検出促進成分は、複合的に荷電することもできる、または複合的な荷電状態となることができる。例えば、多数の負の電荷を持つタグは一つまたは単独で荷電した化学種(例えば、カルボキシレート)を取り込むことができて、または一つもしくは複数の複合的に荷電した化学種(例えば、ホスフェート)を取り込むことができる。
同様の方法で、多数の正の電荷を持つタグを購入することができ、または当業者に利用可能な方法を用いて調製することができる。例えば、2つの正の電荷を帯びた質量タグはジアミン(例えば、エチレンジアミン)から手早く容易に調製することができる。代表的な合成経路において、ジアミンは当業者に公知の方法を用いてモノプロテクトされ、プロテクトされないアミン部分は続いて一つまたは複数の正の電荷を帯びた化学種(例えば、(2-ブロモエチル)トリメチルアンモニウムブロミド(Aldrich))を用いてジアルキル化される。当技術分野で認識された方法を用いた脱プロテクトにより、少なくとも2つの正の電荷を帯びた反応性標識化学種が与えられる。当業者には荷電した標識化学種を増加させるためのこのような多くの合成系路が明らかであろう。
いくつかの態様において、質量タグは質量欠損タグを含む。質量欠損タグに関する簡潔な説明を以下に示す。質量欠損タグについては、本発明と同一の譲受人に譲渡されて、参照によりすべての目的のために全体が組み入れられる同時係属中の米国特許出願第20020172961号で詳細に考察されている。
C.質量欠損タグ
本明細書で用いられるように、「質量欠損タグ」はタグの核結合エネルギーに基づいて識別可能な質量タグを指す。「核結合エネルギー」という用語は、エレメントの計算上の核質量と実際の核質量の質量差を指す。当技術分野において、核結合エネルギーとは核を孤立した構成要素の核子に分解するために必要なエネルギーの質量当量(相対性理論に基づく)として定義される。Bueche, F., 「Principles of Physics」(McGraw-Hill, NY, 1977)を参照されたい。
質量欠損タグは、質量欠損タグ付き重水素化標的代謝物の質量、および質量欠損タグ付き重水素化代謝物と同一の核子数を持つ異なる分子の識別において特に有用である。「核子」は原子の核内の陽子または中性子である。質量欠損タグ付き重水素化標的代謝物と同一核子数を持つ分子は、未標識の断片化された重水素化標的代謝物または対象の試料から派生するその他の任意の化学的分子から派生する可能性もあり、または単に混入物質である可能性もある。従って、質量欠損タグは質量スペクトルにおける化学的ノイズおよび質量欠損タグ付き重水素化標的代謝物の識別に有用であり得る。重水素化標的代謝物が断片である場合、この方法には質量タグ付き標識重水素化グリカン断片、および質量タグ付き標識重水素化グリカン断片と同一の核子数を持つ異なる分子を識別する段階が含まれ得る。
標的代謝物の主要構成要素はC、H、O、NおよびSである。質量欠損タグは、典型的には、標的代謝物と関連するエレメントのそれとは実質的に異なる核結合エネルギーを含んでタグに組み入れられる一つまたは複数のエレメントを含む(例えば、C、H、O、N、PおよびS)。これらのエレメントは、本明細書では、質量欠損エレメントとも呼ばれることがある。いくつかの状況においてFが質量欠損エレメントとして用いられ得るが(Schmidt et al., 国際公開公報第99/32501号 (1999))、原子番号17から77までのエレメントは核結合エネルギーの差が大きく、従って、幅広い有用性を示す。例えば、アリール基での1個のヨウ素置換によって、アリール基の5個のF置換のそれを5倍を超えて上回る0.1033amuの質量欠損が生じる。アリール環(C6H4I)の1個のIは202.935777amuのモノアイソトピック質量を示す。これは、安定同位体および202.974687amuのヘテロ原子含有有機分子([12C]9[15N][16O]5)の最も近い組み合わせから192ppm異なる。従って、Iと同様の質量欠損を示す任意のエレメントの1個の置換(例えば、35から63の間の原子番号)は、有機性ヘテロ原子の任意の組み合わせにおいて3,891amuの総質量に対して(10ppmレベルにおいて)認識可能な質量欠損をもたらすであろう。このような2つのエレメントは7,782amuの総質量に対して識別可能な質量欠損を示すであろう。このような3つのエレメントは11,673amuの総質量に対して識別可能な質量欠損を示すであろう。または、1個、2個および3個のI(または相当する質量欠損エレメント)の付加は10ppmの質量分解能の質量スペクトルにおいて4,970amuの総質量まで互いに識別することができる。
従って、例示的態様において、質量欠損タグは、17から77までの原子番号を持つエレメントから選択される質量欠損タグを含む。関連する態様において、質量欠損エレメントは35から63の原子番号を持つエレメントから選択される。質量欠損タグは臭素およびヨウ素からも選択され得る。
表2は、本発明のタグとして有用な分子の非限定的な説明を示す。
(表2)
一般的な質量欠損標識
・A部分はMSイオン化のための電荷(正または負)を帯電する。
・B部分は質量欠損エレメントである。
・C部分は生体分子への結合のための反応基である。
・A、B、およびC部分は様々な芳香族/脂肪族の骨格に位置する。
Figure 2008519261
Figure 2008519261
D.対象からの重水素化標的代謝物の分離
重水素化標的代謝物は、当技術分野において公知の様々な精製方法を用いて対象から分離することができる。典型的には、重水素化標的代謝物を含む試料が対象から得られる。続いて、重水素化標的代謝物を試料中のその他の成分から分離するために、この試料を液体クロマトグラフィーおよびゲル電気泳動法などの、当技術分野において公知の様々な精製方法に供してよい。
例示的な精製方法には、塩析および溶媒沈殿;透析、限外濾過、ゲル濾過およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動などの分子量の差を利用する方法;イオン交換カラムクロマトグラフィーのように電荷の違いを利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーのように特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーのように疎水性の差を利用する方法;および等電点電気泳動のように等電点の違いを利用する方法が含まれる。単離型または非単離型タンパク分解性抗体-ホスホネート抱合体のさらなる可視化および/または定量は、ホスホネートに共有結合しない色素(例えば、クーマシーブルーなどのタンパク質色素)の使用を含む任意の適切な技術を用いて実施してよい。ゲル精製が用いられる場合、重水素化標的代謝物を含むバンドは分子生物学または生化学の技術分野において周知の方法を用いてゲルから切り取ることによって単離することができる。
その他の有用な方法には、限外濾過装置(例えば、AmiconまたはMillipore Pelliconの装置)、アフィニティー固定化またはクロマトグラフィーのための固相支持(例えば、レクチンまたは適切な支持体に結合した抗体分子)、陰イオン交換樹脂(例えば、DEAE樹脂)、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、陽イオン交換樹脂(例えば、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基)、HPLC(例えば、ペンダントメチル基またはその他の脂肪族基を持つRP-HPLCシリカゲル、例えば、Hardy et al., Proc. Natl, Acad. Sci. USA 85:3289-3293 (1988); Townsend et al., Nature 335:379-380 (1988)を参照されたい)、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、Bio-Gel.RTM.P-4ゲル濾過クロマトグラフィー、例えば、Yamashita et al., Meth. Enzymol. 83:105-126 (1982)を参照されたい)、キャピラリーゲル電気泳動法(例えば、Gordon et al., Science 242:224-228 (1988)を参照されたい)の利用が含まれ得る。
E.標的代謝物からの重水素化グリカンの分離
上記の通り、重水素化標的代謝物が糖脂質または糖タンパク質である場合は、それぞれ、脂質またはタンパク質が質量タグとして使用することができる。または、糖脂質または糖タンパク質標的代謝物の重水素化グリカン部分の一部またはすべてが分離された重水素化標的グリカンの糖脂質または糖タンパク質の残部から分離され得る。続いて、分離された重水素化グリカンは、下記の通り、還元末端の質量タグに接続され得る。
標的代謝物から重水素化グリカン部分を遊離させるために、酵素的方法(例えば、グリコシダーゼ)、化学的方法、および物理的方法(例えば、電子捕獲解離(ECD)および赤外多光子解離(IRMPD))を含む様々な方法を用いることができる。これらの方法については重水素化標的代謝物の断片化に関連して以下においてより詳細に考察し、同じく標的代謝物から重水素化グリカン(またはその一部)を分離するために適用することができる。
F.質量タグの重水素化標的代謝物への接続
質量タグ(質量欠損タグを含む)は任意の適切な方法を用いて重水素化標的代謝物に接続してよい。重水素化標的代謝物が重水素化標的単糖、重水素化標的グリカンまたは分離された重水素化標的グリカンである場合、質量タグは典型的にはその単糖の還元末端、つまりグリカンに共有結合的に接続する。
質量タグは、質量タグおよびまたは重水素化標的代謝物の任意の適切な位置に位置することができる反応性官能基を用いて、重水素化標的代謝物に共有結合的に接続され得る。この反応基がアリール、またはアリール核につなぎ止められた置換型アルキル鎖に接続する場合、反応基はアルキル鎖の末端に位置してもよい。本発明の実践において有用な反応基および反応のクラスは、一般に、生体共役化学に関する技術分野において周知である。反応性の公知の反応基と共に利用可能な現在有利とされている反応のクラスは、比較的穏やかな条件下において進行する反応である。これらには、求核性置換(例えば、アミンおよびアルコールとハロゲン化アシル、活性エステルとの反応)、求電子性置換(例えば、エナミン反応)、ならびに炭素-炭素および炭素-ヘテロ原子の多重結合の付加(例えば、マイケル反応、ディールス-アルダー付加)が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらおよびその他の有用な反応については、例えば、March, ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY, 3rd Ed,. John Wiley & Sons, New York, 1985;Hermanson, BIOCONJUGATE TECHNIQUES, Academic Press, San Diego, 1996;およびFeeney et al., MODIFICATION OF PROTEINS; Advances in Chemistry Series, Vol. 198, American Chemical Society, Washington, D.C., 1982に記載されている。
有用な反応性官能基には、例えば、以下が含まれる:
(a)カルボキシル基、ならびにN-ヒドロキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、チオエステル、p-ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび芳香族エステルを含むがこれらに限定されないそれらの様々な誘導体;
(b)エステル、エーテル、アルデヒドなどに転換することができるヒドロキシル基;
(c)ハロゲン化物が後に、例えばアミン、カルボン酸陰イオン、チオール陰イオン、カルボアニオン、またはアルコキシドイオンのような求核性の基で置換されて、そのハロゲン原子の位置に新しい基が共有結合性に接続することができるハロアルキル基;
(d)例えば、マレイミド基のようにディールス-アルダー反応に関与することができるジエノフィル基;
(e)例えば、イミン、ヒドラゾン、セミカルバゾンもしくはオキシムのようなカルボニル誘導体の形成を介して、またはグリニャール付加もしくはアルキルリチウム付加のようなメカニズムを介してその後の誘導体形成が可能であるようなアルデヒド基またはケトン基;
(f)例えば、スルホンアミドを形成するために後続のアミンとの反応のためのハロゲン化スルホニル基;
(g)ジスルフィドに転換またはハロゲン化アシルと反応することができるチオール基;
(h)例えば、アシル化、アルキル化または酸化することができるアミンまたはスルフヒドリル基;
(i)例えば、環化付加、アシル化、マイケル付加などを受けることができるアルケン;
(j)例えば、アミンおよびヒドロキシ化合物と反応できるエポキシド;
および
(k)核酸合成において有用なホスホラミダイトおよびその他の標準的官能基。
反応性官能基は、本明細書で開示される接続反応に関与しない、または干渉しないように選択することができる。または、反応性官能基は、保護基の存在によって架橋反応への関与から保護することができる。当業者は、特定の反応基を選択された反応条件のセットの干渉から保護する方法を理解するであろう。有用な保護基の例については、Greene et al., PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS, John Wiley & Sons, New York, 1991を参照されたい。
リンカーも、重水素化標的代謝物に質量タグを接続するために使用することができる。リンカーは、質量タグおよび/または重水素化標的代謝物への接続部分に反応基を含んでもよい。本発明において、置換型または非置換型アルキレン、置換型または非置換型ヘテロアルキレン、置換型または非置換型シクロアルキレン、置換型または非置換型ヘテロシクロアルキレン、置換型または非置換型アリレン、および置換型または非置換型ヘテロアリレンを含む任意の適切なリンカーが用いられ得る。その他の有用なリンカーには、ポリエステル骨格(例えば、ポリエチレングリコール)、核酸骨格、アミノ酸骨格およびそれらの誘導体を持つリンカーが含まれる。様々な有用なリンカーが市販されている(例えば、Huntsville, AlabamaのNektar, Inc.から入手できるポリエチレングリコールをベースとするリンカー)。このように、いくつかの態様において、二機能性のリンカーを使用することもできる。
例示的態様において、重水素化単糖、グリカン、および/または分離されたグリカン標的代謝物は還元的アミノ化の化学的作用を用いて還元糖にタグ付けされる。Hermanson, G., Bioconjugate Technique (Academic Press: San Diego, CA), 1996, pp. 185-186を参照されたい。還元的アミノ化は、タンパク質および多糖の双方のN末端に効率的にタグ付けするために用いられている。Hall, M., J. Mass Spectrom.; 38:809-16 (2003); Schneider, Gen. Eng. News 24:28-30 (2004);米国特許出願第20020172961号を参照されたい。
タグ付けは、オリゴ糖の選択的酵素加水分解の前または酵素加水分解後に実施してよい(以下の断片化法を参照されたい)。例示的態様において、重水素化単糖、グリカン、または分離されたグリカン標的代謝物は、元々の末端の還元糖を識別するために、酵素的加水分解前には質量タグを、また酵素的加水分解後には異なる質量タグを用いてタグ付けする。
G.断片化法
いくつかの態様において、質量タグ付き重水素化代謝物は、質量タグ付きの標識重水素化代謝物断片および未標識の重水素化代謝物断片の集団を産生するために酵素、化学分解または質量分析による断片化法を用いて断片化される。関連する態様において、質量タグ付き重水素化代謝物は質量タグ付き重水素化グリカン(質量タグ付き重水素化分離グリカンを含む)である。質量タグ付き標識重水素化グリカン断片の質量は、以下に記載するように、任意の適切な方法を用いて検出され得る。いくつかの態様において、質量タグ付きの標識重水素化グリカン断片および未標識の重水素化グリカン断片は質量欠損タグの核結合エネルギーに基づいて識別される。
質量分析断片化は、質量分析計内、典型的には質量分析計の分光計イオン化チャンバー内での一つまたは複数の共有結合の切断を示す。質量分析断片化の条件は当技術分野において周知であり、衝突誘起断片化法(CID)、電子捕獲解離法(ECD)、および赤外多光子解離法(IRMPD)を含む。Hakansson K, J Proteome Res. 2(6):581-8 (2003)を参照されたい。例示的態様において、断片化法は低エネルギーCIDまたはIRMPDである。
重水素化標的代謝物がグリカン(分離グリカンを含む)、糖脂質、または糖ペプチドである場合、低エネルギー断片化は一般に、IRMPD法では特に、グリコシドエーテル結合の位置で生じる。遊離のヒドロキシル基をアシル化またはアルキル化することによって、構造内の分枝点の数および/または位置を特定することができる。単糖ユニット内の安定重水素同位体はグリカンサブユニットの同定を可能とする。表1を参照されたい。さらに、質量タグは、内的に派生する切断断片に由来する還元末端断片および複合型オリゴ糖分岐の非還元末端に由来する断片を同定するために使用され得る。Zaia, J., Mass Spectrom. Rev. 23:161-227(2004)を参照されたい。
得られる質量スペクトルは、未標識重水素化グリカン断片を含む化学的ノイズに起因する多数のピークを含むことがある。質量欠損タグは、オリゴ糖のシーケンシングおよび/または同定方法をさらに促進するために連続的な糖分解法に適用することができる。米国特許出願第20020172961号を参照されたい。
質量スペクトルは、質量分析計内の検出器プレートに衝突するイオンの数(カウント)から得られる。イオンが検出器プレートに衝突する時期は、プレートに衝突するイオンの質量対電荷(m/z)比を決定する。検出器プレートは公知のm/z分子を用いて検量される。続いて、検出器プレートでの各スキャン時間枠に平均m/z値を割り付けて、装置の特定の設計配置に基づいて所定の範囲のm/z比を持つイオンを収集する。一般に、各検出器の枠によってカバーされるサイズ範囲はその枠のm/z値の平方根として変化する。このことは、絶対的な質量の精度が質量分析計のm/zの増大に伴って減少することを意味する。質量分析計のノイズは一般に正である。従って、シグナルは、一般に、各時間枠においてゼロよりも大きいか、またはゼロに等しい。
いくつかの態様において、断片化した重水素化代謝物の質量スペクトルにおける大きなカウント値は、その質量スペクトルのアルゴリズムによる逆重畳積分を必要とすることがある。例えば、高度に断片化する条件下では、質量スペクトルにおける実質的にすべてのピークがほぼ1amuずつ重複する。質量スペクトルの逆重畳積分に有用なアルゴリズムは米国特許出願第20020172961号に詳細に示される。
本発明の重水素化標的代謝物の断片化には、ペプチダーゼ(重水素化標的代謝物が糖ペプチドである場合)、リパーゼ(重水素化標的代謝物が糖脂質である場合)、およびグリコシダーゼ(重水素化標的代謝物がグリカンまたは分離されたグリカンである場合)を含む様々な酵素が有用である。例示的断片化酵素には、カルボキシペプチダーゼ(例えば、カルボキシペプチダーゼY)、グリカナーゼ(例えば、PNGアーゼF)、プロテアーゼ(例えば、セリンプロテアーゼ)、エステラーゼ 、ホスホエステラーゼ、フカシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ヘキソサミニダーゼ、マンノシダーゼ、シアリダーゼ、キシロシダーゼなどが含まれる。いくつかの態様において、酵素的断片化は複数の断片化酵素の使用を含む。
化学分解性断片化は、重水素化標的代謝物の共有結合が酸または塩基処理などの化学的方法を用いて破壊される方法を指す。化学分解性断片化法は当技術分野において周知であり、例えば、ペプチドのアミド結合の破壊に有用な技術(例えば、1%TFAのような軽度の酸分解)およびグリカンのエーテル結合の破壊に有用な技術(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの塩基を用いた処理)が含まれる。
H.グルコース代謝産物の同定
グルコース代謝経路の同定は、例えば、重水素化代謝産物の存在の検出、および/または重水素化代謝産物の定量によって行うことができる。重水素化代謝産物が重水素化グリカンまたは分離されたグリカン標的代謝物である場合、グルコース代謝産物の同定には、グリカンの配列および/または糖化型(例えば、分枝構造)を少なくとも一部調べる段階が含まれる。いくつかの態様において、配列および糖化型(または部分的な配列および糖化型)は本発明の一つの方法を用いて調べられる。
同定は、上記の重水素化単糖である重水素化グリカン、重水素化グリカン、および/または質量タグ付きのそれらの誘導体を識別することのできる任意の適用可能な技術を用いて実施することができる。典型的には、質量分析法および/またはNMR(例えば、プロトンNMR)が用いられる。
例えば、グリカンはParekh et al., 米国特許第5,667,984号およびRademacher et al., 米国特許第5,100,778号に開示される方法の変法を介して本発明によってシーケンシングすることができる。これらの方法において、質量タグは精製された多糖の試料に接続されて、その後、この試料をアリコートに小分けして、これを未変化体である多糖から派生する一連の標識オリゴ糖断片を生成するために酵素的および/または化学分解性開裂の異なる処理法に供する。これらの断片を質量分析計に投入し、未変化体の多糖に含まれる糖の配列は任意の標識オリゴ糖断片の質量スペクトルにおいて生じる結果的なマスラダー(mass ladder)から求められる。処理量の増加は精製したそれぞれの固有の未変化体多糖試料に接続した異なる質量タグの使用を介して複数の異なる試料を同時に加工することによって得られ得ることが認識される。いくつかの態様において、質量欠損タグが用いられ、これによりタグ付きグリカンと化学的ノイズの識別がさらに有利となり得る。
例示的態様において、グリカンまたは分離されたグリカンの還元末端における少なくとも一つの単糖の同定が調べられる。もう一つの例示的態様において、グリカンの還元末端における少なくとも2つの単糖の同定が調べられる。
定量は当技術分野において公知の任意の適用可能な技術を用いて実施してよい。いくつかの態様において、質量分析計は質量分析計において2つまたはそれ以上のソースから得られる同一分子の相対存在量の定量に用いられる(例えば、参照により全体がすべての目的のために本明細書に組み入れられる国際公開公報第00/11208号、EP1042345A1およびEP979305A1を参照されたい)。この特定の方法論を用いて、質量タグは、一つのエレメントをそのエレメントの安定同位体と置換することによって各ソースに由来する分子に付加されるその他のタグとは異なる重水素化代謝物に接続することができる。タグ付け後にソースを混合して、各ソースに由来する分子またはタグの相対存在量を質量スペクトルにおいて定量する。各ソースに由来する同一分子に関して生じるピークの個々の識別には異なる同位体が用いられる。この方法を修正して標識に一つまたは複数の質量欠損エレメントを組み入れると、タグ付き重水素化オリゴ糖と得られる質量スペクトルにおける任意の化学的ノイズの識別が可能となり、この定量が向上し得る。
本発明は、インバーテッドマスラダーシーケンシング(PCT公報 国際公開公報第00/11208号を参照)のようなタンパク質シーケンシング法、ならびに米国特許第6,027,890号ならびにPCT公報 国際公開公報第99/32501号および国際公開公報第00/11208号に開示されるようなその他のMSタンパク質シーケンシング、定量および同定方法と組み合わせて使用することができる。
当業者は、本発明の方法が複数の質量タグ付き重水素化代謝物を検出するために用いることができることを認識するであろう。いくつかの態様において、少なくとも2つの質量タグ付き標識重水素化グリカン断片が検出される。
I.投与方法
D7-グルコースを対象に投与する方法は様々であることができるが、基質が合理的な時間枠の範囲内で代謝されることが可能であるように投与されなければならない。D7-グルコースは実質的に純品の形で、または組成物の一部として投与され得る。組成物は、希釈剤、乳化剤、結合剤、潤滑剤、着色剤、香料および甘味料を含むがこれらに限定されない薬学的に許容される成分を、これらの成分が投与しようとする基質の代謝に干渉しない限り、含むことができる。このような取捨選択できる成分の組み入れに関する手引きは、例えば、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy (L. Lachman, et al., Ed.) 1976;およびRemington's Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed., (1985);およびLanger, Science 249:1527-1533 (1990)において考察されており、それぞれは参照により全体が組み入れられる。
いくつかの場合において、D7-グルコースは固体の状態(例えば、固体のタブレット、カプセル、粉末、丸剤顆粒)として、または液体(例えば、乳剤、懸濁剤)の一部として経口的に投与される。タブレットの形に成形される場合、基質の担体として、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶性セルロースおよびリン酸カリウムなどの賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、およびポリビニルピロリドンなどの結合剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、寒天粉末、ラミナラン粉末、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸カルシウムなどの崩壊剤;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸モノグリセリドなどの界面活性剤;ショ糖、ステアリン、カカオバターおよび硬化油などの崩壊阻害剤;四級アンモニウム塩基およびラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;グリセリンおよびデンプンなどの潤滑剤;デンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイトおよび膠質ケイ酸などの吸着剤;ならびに精製タルク、ステアレート、ホウ砂およびポリエチレングリコールなどの潤沢剤を使用することができる。さらに、タブレットには、砂糖などのコーティング剤、ゼラチンコーティングされたタブレット、腸溶性またはフィルムコーティング剤、ならびに二重タブレットおよび多層性タブレットが含まれ得る。
丸剤の形に成形される場合、基質の単体として、グルコース、ラクトース、デンプン、カカオバター、硬化植物油、カオリンおよびタルクなどの賦形剤;アラビアゴム、トラガカント粉末、ゼラチンおよびエタノールなどの結合剤;ならびにラミナランおよび寒天などの崩壊剤を使用することができる。
D7-グルコースは、単独またはその他の適切な成分と組み合わせて、吸入により投与されるエアロゾル製剤(例えば、それらは「ネブライズ」されてもよい)とすることもできる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容可能な噴霧剤に混合することができる。
直腸投与に適した製剤には、例えば、充填される活性成分および坐剤ベースからなる坐剤が含まれる。適切な坐剤ベースには、天然または合成のトリグリセリド、パラフィン炭化水素、ポリエチレングリコール、カカオバター、高級アルコール、高級アルコールのエステル、ゼラチン、および半合成グリセリドが含まれる。さらに、基質と、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、およびパラフィン炭化水素を含むベースの組み合わせからなるゼラチン直腸カプセルを使用することも可能である。
例えば関節内(関節内)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、および皮下経路などの非経口投与に適したD7-グルコースの製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤に対して意図するレシピエントの血液との等張性を付与する溶質を含む水性および非水性の等張無菌注射液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および防腐剤を含むことができる水性および非水性の無菌懸濁液が含まれる。本発明の実践において、組成物は、例えば、静脈内注入により、経口、局所適用、腹腔内、膀胱内またはくも膜下腔内に投与することができる。組成物は、無菌かつ、実質的に等張であり、米国食品医薬品局のGood Manufacturing Practice(GMP)基準に完全準拠して製剤化される。
D7-グルコースが細胞集団に投与される場合、その細胞は典型的にはD7-グルコースを含むマトリックスに懸濁される。マトリックスは典型的には水性溶液であり、その他の栄養素を含むこともできる。細胞数に応じて、細胞は標準的な培養フラスコで、または例えば、マイクロタイタープレートのウェル内で懸濁することができる。
J.試料の収集方法
上記の通り、試料は任意の適切な生物体から収集され得る。例えば、試料は組織もしくは組織ホモジネート、生物体の液体、または細胞もしくは細胞培養物から収集され得る。一般に、試料は生体の体液から入手される。このような液体には、全血、血漿、血清、精液、唾液、尿、汗、髄液、唾液、胃腸液、汗、脳脊髄液、および涙液が含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの場合には、試料は糞便、頬、皮膚、組織生検または剖検、および毛から入手される。試料は、生育培地を含むエクスビボの細胞培養物、組換え型細胞および細胞成分からも得ることができる。薬剤候補または薬剤標的を特定するための比較試験において(後記参照)、一つの試料は、例えば、疾患の対象または細胞から入手することができて、もう一つの試料は疾患でない対象または疾患でない細胞から入手することができる。
1.収集の選択肢
一部の方法は、対象から血液の試料を採取する段階を伴う。全血が使用される場合、試料は典型的には、例えば試料の凍結/融解を含む当業者に公知の任意の方法によって溶解される。尿は対象の尿を清浄な容器に収集することによって収集することができる。いくつかの場合において、試料は個体の呼気から入手される(例えば、標的代謝物が二酸化炭素である場合)。呼気の試料を収集するために、様々な異なる装置および方法が開発されている。例えば、対象の呼気は対象が膨張可能な収集バッグ(例えば、バルーン)を膨張させることによって捕集することができる。続いて、試料はその後の保存および/または輸送のために市販の保存容器に移すことができる(例えば、Becton-Dickenson Company製造のVACUTAINER)。その他の呼気収集装置については、参照により全体が組み入れられる米国特許第5,924,995号および第5,140,993号に記載されている。これらの試料は生検により入手され得る。
細胞または組織培養物の場合は、細胞は遠心分離または濾過によって収集されて、続いて標準的プロトコール(例えば、超音波処理、混合、加圧、凍結融解および変性)に従って溶解される。または、細胞はトリクロロ酢酸(5〜10%重量/体積の最終濃度まで)の添加またはその他の膜溶解性溶媒(例えば、クロロホルム、ジエチルエーテル、トルエン、アセトンおよびエタノール)の同様の使用によって収集および溶解することができる。このような膜溶解性溶媒は、後続の電気泳動による分離技術に対する前段階として、高分子成分を沈降させて小分子代謝物を選択的に可溶化するために使用することができる。
重水素の段階的消失によってその他の糖を個別に同定するためのインビボにおけるD7-グルコースの転換は、細胞内でのこれらの糖の代謝を追跡するために利用することもできる。「過剰」な重水素の存在によって同定される固有の重水素化代謝産物は、H-NMRまたは質量分析法によって特徴付けることができる。この態様において、D7-グルコースは、疾患状態の診断、疾患もしくは症候性疾患に関与する代謝経路の同定のために用いられる、または薬物製品の有効性もしくは毒性作用をモニターするために用いられる測定法を用いて生細胞または生組織における代謝フラックスを測定するために使用することができる。これは、参照により全体が組み入れられる米国特許第6,764,817号に開示されるD7-グルコースおよびH7-グルコースを添加した混合同位体を用いて実施することができる。同じく参照によりすべての目的のために全体が組み入れられるBoros et al., Drug Discovery Today, 7:364-372 (2002)およびCascante et al., Nature Biotechnology 20:243-249 (2002)によって記載された[13C]標識グルコースの代わりにそれを使用することもできる。
II.代謝経路の分析方法
もう一つの局面において、本発明は、関心対象の代謝物を精製するための方法、一部の疾患に相関する代謝物を同定するためのスクリーニング、および疾患を持つまたは疾患に感受性である個体を識別するための診断的スクリーニングのための方法を含む代謝分析(例えば、代謝フラックス)を実施するための方法および装置を提供する。
例示的態様において、この方法は基質(即ち、D7-グルコース、またはD7-グルコース/H7-グルコース混合物)を対象に投与する段階を伴う。例示的態様において、D7グルコースの量は投与前に公知である。もう一つの例示的態様において、H7-グルコースに対するD7-グルコースの相対的割合は投与前に公知である。続いて、対象に対して、一つまたは複数の標的代謝物を形成するために基質を少なくとも一部代謝するための十分な時間を与える。続いて、この対象から採取した試料における複数の標的分析物の同位体の存在量が調べられ、各標的分析物のフラックス値を確かめることができる。標的分析物中の同位体の存在量は、2Hに対する1Hの割合を求めることのできる分析装置を用いて調べられる。このような分析装置の例には、質量分析計、赤外分光光度計、および核磁気共鳴分光計が含まれる。
本明細書で用いられるように、「標的分析物」は基質または標的代謝物である。従って、複数の標的分析物には、複数の基質、複数の標的代謝物、または少なくとも一つの基質および少なくとも1つの標的代謝物が含まれる。いくつかの態様において、標的分析物は標的代謝物である。標的代謝物は、タンパク質、炭水化物、核酸、アミノ酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、脂肪酸、有機酸または脂肪であり得る。いくつかの態様において、標的分析物は糖タンパク質である。いくつかの態様において、複数の標的分析物は少なくとも3つの標的代謝物を含む。その他の態様において、複数の標的分析物は少なくとも5つの標的代謝物を含む。
標的分解物中の同位体の存在量および対応するフラックス値の測定に先立って、典型的に標的分解物は試料中のその他の成分から少なくとも一部分離される。これは、一つの方法によって得られた画分由来の試料が次の電気泳動法において使用されるように、複数の電気泳動分離法を連続して実施することによって達成してもよい。用いられる実際の電気泳動法は変化することができるが、典型的にはキャピラリー等電点電気泳動、キャピラリーゾーン電気泳動およびキャピラリーゲル電気泳動を含む。いくつかの場合において、電気泳動法の分離および溶出条件は一つまたは複数のクラスの代謝物(例えば、タンパク質、多糖、炭水化物、核酸、アミノ酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、脂肪、脂肪酸および有機酸)について別々の画分が得られるように制御される。これにより、標的分析物が属するクラスの成分を含む画分が単純に分析されて、分析が単純化される。
本発明は、対象に由来する試料が予め得られた代謝経路を分析するための分析方法も提供する。このような例において、一部の方法は、複数の標的分解物を対象から得られた試料中に含まれるその他の成分から少なくとも一部分離する段階を含む。標的分析物は、対象によって基質の代謝から生じる一つまたは複数の標的代謝物を含む。各標的分析物のフラックス値は、対象に投与される前に標的分析物中の同位体の存在量を測定することによって、基質中の同位体存在量に関する知識から求められる。
様々な細胞状態(例えば、一部の疾患)と相関する代謝物を同定するための代謝物のスクリーニングのための方法も本発明に含まれる。一部のスクリーニング方法は基質を試験対象および対照対象に投与する段階を含み、基質中のD7-グルコースおよびH7-グルコースの相対的同位体存在量は公知であり、試験対象は検討中の疾患を持つ。基質は、一つまたは複数の標的代謝物を形成するために、試験対象および対照対象によって少なくとも一部代謝させる。投与および代謝の段階を実施する条件は、それらが試験対象および対照対象について同一であるように制御する。試料は試験および対照の対象から得られて、各標的分析物のフラックス値を求めるために標的分析物中の同位体の相対存在量が測定される。試験対象と対照対象のフラックス値を比較して、試験対象における標的分析物のフラックス値および対照対象における対応するフラックス値の差はこれらの分析物が検討しようとする疾患と潜在的に関連することを示す。
試料が予め確保されている場合、一部のスクリーニング方法は疾患を持つ試験対象由来の試料を分析する段階を伴い、試料は試験対象に投与される安定同位体で標識された基質および/またはその試験対象によって基質の代謝から生じる一つもしくは複数の標的代謝物を含む。基質中のD7-グルコースおよびH7-グルコースの相対的同位体存在量は投与時点で公知であり、分析工程は、各標的分析物のフラックス値を測定するために試料中の複数の標的分析物の同位体の同位体存在量の測定を含む。試験対象における標的分析物のフラックス値を対照対象のフラックス値と比較し、フラックス値の差はこれらの分解物が疾患と相関することを示す。
もう一つの態様において、この方法は疾患の存在のスクリーニングのために用いられる。これらの方法の一部は試験対象に基質を投与する段階を伴い、基質中のD7-グルコースおよびH7-グルコースの相対存在量は公知である。疾患と相関することが公知である一つまたは複数の標的代謝物を形成するために、試験対象によって基質が少なくとも一部分解されるための十分な時間が与えられる。複数の標的分解物を試験対象から得られた試料中のその他の生物学的成分と少なくとも一部分離するために複数の電気泳動法を連続して実施し、標的分析物は基質および/または一つもしくは複数の標的代謝物を含む。標的分析物のフラックス値はその分析物中の同位体の存在量から求められる。
この方法は、試料が提供される場合、単純化される。このような場合、一部の方法は試験対象由来の試料を分析する段階を含み、試料は基質、および/または試験対象による基質の代謝に由来する一つもしくは複数の標的代謝物を含み、基質中のD7-グルコースおよびH7-グルコースの相対量は投与の時点で公知である。分析段階自体は、各分析物のフラックス値を求めるために試料中の複数の分析物における同位体の存在量を求める段階を含み、複数の分析物は基質および/または一つもしくは複数の標的代謝物を含む。各標的分析物において、試験対象の疾患のリスクを評価するために、求めたフラックス値を同一標的分析物に関する対応する参照フラックス値と比較する。参照フラックス値は健康状態または疾患状態の典型であることができる。
本発明の一部の方法は、連続して実施される複数の電気泳動法を用いて様々な代謝物を分離するための電気泳動法を提供する。このような分離方法は、様々な代謝分析の実施に利用することができる。例えば、本発明の一部の分析方法は基質を対象に投与する段階を伴う。基質中のD7-グルコースおよびH7-グルコースの相対量は投与前に公知である。基質が利用される時間の経過後、試料を対象から採取して、基質および/または基質から形成される一つもしくは複数の標的代謝物を含む多数の標的分析物の同位体組成を調べるために使用する。典型的には、試料は対象から異なる時期に得られ、各試料中の標的分析物における同位体の存在量を測定する。この方法では、基質の同位体組成は、各標的分析物のフラックス値が測定可能となる時間の関数として求めることができる。標的分析物中の同位体の相対的同位体存在量の測定には、核磁気共鳴分析法、赤外分光光度法、および質量分析法を含む様々な方法が利用可能である。
特定の代謝物の濃度に的を絞った一部のその他の方法とは異なり、本発明の一部の方法は単一の濃度値ではなくフラックスを求めるようにデザインされる。これは、フラックス値が絶対的濃度値を求めなければならないのではなく標的分析物中の同位体標識の相対存在量から求められることから、方法を単純化する。さらに、フラックスの測定は単純な濃度測定からは観察不可能な一部の生物学的過程への洞察を提供する。例えば、濃度値は一定を示し得るが、実際にはフラックスは変動していることがある。任意の代謝物の濃度は、その代謝物の形成、転換および輸送を伴うすべての反応の速度によって求められる。従って、その代謝物の形成および除去(転換または輸送)の双方を含む任意の2つの具体的反応(フラックス)の増大は代謝物の同一の見かけの濃度を生じ得る。フラックスは多くの異なる刺激に反応して変動することがあり、従って、一部の細胞状態に関する感度の高い指標として用いることができる。例えば、フラックスは生理学的状態、毒素および環境からの攻撃への曝露、ならびに感染、癌、炎症および遺伝に基づく代謝障害などの要因に反応して変動することがある。従って、フラックスは多様な細胞状態またはその他の方法では必ずしも検出可能でない状態の検出に使用することができる。
本発明のいくつかの方法において、対象から得られる試料は分析物中の同位体の同位体存在量の測定前に精製される。精製手技は、関心対象の標的分析物から細胞中のその他の成分を少なくとも一部除去するために用いられる。典型的には、これは連続して実施される多数の電気泳動法(即ち、多次元)によって試料内の成分を分離することによって行われる。
一部の方法は、本発明の電気泳動分離の局面を本発明の一部の質量分析技術と併用する。このような組み合わせは、関心対象の様々な標的分析物中の同位体存在量を調べるために、相対的に限定された数の標的分析物を含む試料を質量分析計に直接注入できるように、比較的複雑な試料の複雑さを十分に低下させることを可能とする。このような系は、代謝性試料の高い処理分析を可能とするように自動化することができる。
様々な標的分析物について求められるフラックス値は様々な異なる用途において使用することができる。例えば、様々な対象または様々な生理学的条件(例えば、疾患または正常)におけるフラックス値はデータベースへのインプットとして直接使用することができる。フラックス値は様々なスクリーニングの用途にも使用できる。例えば、疾患の潜在的マーカーを識別するために、試験対象からのフラックス値を疾患対象(例えば、その疾患と相関すると思われる代謝物)の対応するフラックス値と比較することができる。フラックス値は、対象が曝露された薬物(毒性および有効性の双方)、化合物または生体化合物の「全身性」作用の指標として用いることもできる。フラックス値のグループは異なる細胞状態の「フィンガープリント」を開発するために使用することができる。疾患状態と一つまたは複数の代謝物が相関付けられると、試験対象のフラックス値は異なる疾患を持つ個体のフラックス値と比較することができる。試験対象および疾患対象の間に統計学的有意差がないことは、試験対象がその疾患を持つまたはその疾患に感受性であることを示す。代謝フラックスの変化は、代謝分岐点において単一の基質から産生される代替分析物の相対量の変動として、また単一の基質の連続的転換に起因する分析物が産生される速度として発現することがある。
A.一般
組織、細胞集団または生体に基質を加えて細胞内の非同位体性代謝物に対する同位体性代謝物の割合を経時的に追跡することによって、細胞代謝の定量的イメージを作製することができる。相対的代謝フラックスは、異なる同位体の相対存在量を検出することができる様々な異なる検出器(例えば、質量分析計)を用いて任意の所与の時点での正常な分析物に対する同位体的に濃化された分析物の量の割合を求めることによって確認することができる。各代謝分岐点において、分岐点の各ルートでの非同位体性産物に対する同位体性産物の相対的割合は代謝経路の各ルートに流入する代謝物のフラックスに関する指標を提供する。パルス標識した培養物において線形代謝経路と共に同定可能な代謝物中の同位体割合の変化の速度を追跡すると、経路の各段階を通じての代謝フラックスの推定値が得られる。代謝物は緩慢なキネティクス段階の直前では同位体的に濃化されて、これらの段階の直後では同位体的に少なくなる。毒性刺激または感染によって誘発されるような細胞代謝における具体的な変化は本明細書で記載される技術を用いて同定されて、基質が特定の疾患状態に反応した場合にのみ代謝されるまたは代謝されないこれらの代謝変化の特異的診断マーカーとして用いることができる同位体的に濃化された化合物を合成することができる(例えば、参照によりすべての目的に対して全体が本明細書に組み入れられる米国特許第4,830,010号;第5,542,419号;第6,010,846号および第5,924,995号を参照されたい)。
対象、方法および投与モードは上記に詳細に考察されており、代謝経路の分析方法に同様に適用可能である。混合物は、D7-グルコースを5〜95%の相対存在量で含んでよい。一つの例示的態様において、混合物は25〜75%のD7-グルコースを含む。もう一つの例示的態様において、混合物はD7-グルコースおよびH7-グルコースをほぼ等しい割合で含む。一部の方法において、基質は対象に対してパルスとして投与される。パルス付加またはパルス標識は、同位体の相対的同位体存在量が公知である同位体標識された基質の適時の付加を指す。パルス時から開始される特定の生体分子の真の合成速度を求めるために長パルスを使用することができる。この場合、事前のバイオマスは標識を含まないが、新しいバイオマスは基質中のH7-グルコースの存在量に比例して同位体を蓄積し始める。パルス期間が基質および関心対象の標的分析物のターンオーバーに比して長い場合は、真の合成速度が測定される。短パルス(ターンオーバー速度よりも著しく短い)は分解および再利用を考慮しない可能性があり、そのため、一方向性の合成速度の推定値が得られる。
試料を収集する方法についても上記で考察されており、同様に代謝経路の分析方法において標的分析物の収集に適用可能である。
B.標的分析物の分離
以下の分離方法は代謝経路の分析方法における標的分析物の分離に関連して記載されるが、それらは上記に示されるグルコース代謝産物の同定方法において実施される分離に対して同様に適用可能である。
本発明の方法は様々な異なる電気泳動法に適している。所定の画分が空間的、物理的または時間によって分離される制御された溶出技術、ならびに標識および検出方法は、多くの異なる電気泳動技術において利用することができる。以下に記載する通り、連続して連結される電気泳動法の数は典型的には少なくとも2つであるが、多数のさらなる電気泳動法を含むこともできる。いくつかの場合において、連続した各電気泳動法は異なる;一方、その他の場合は一部の電気泳動法が異なるpHまたは分離マトリックスの条件において反復される。
これらの方法の一般的な適用性に関わらず、以下に記載する通り、CIEF、CZEおよびCGE法は本発明の方法に従って利用することができる電気泳動法のタイプの具体的な例である。一部の方法において、2つの方法のみが実施される。このような方法の例には、先ずCIEFが実施されて次にCGEが実施される方法が含まれる。標識が行われる場合は典型的にはCIEFの後に実施されて、検出はCGEキャピラリーからの成分の溶出後に行われる。もう一つの系では、最初の方法がCGEであり、最後の方法がCZEである。同位体検出は、一般に、最終の電気泳動分離が完了するまで実施されない。しかし、上記に記載する通り、UV/VISまたはLIFの検出は分離の進行をモニターするため、特に画分を収集すべき時期を調べるために、任意のまたはすべての分離次元中に使用してもよい。第三の有用なアプローチは多数のCZE次元の実施を伴う。これらは利用可能な系の具体例である;本発明はこれらの特定の系に限定されるものではないことが理解されるべきである。その他の配置および系は、本明細書に記載される技術およびアプローチを用いて開発することができる。
以下に記載する電気泳動の系のバリエーションにおいて、キャピラリーは、本発明の分析を極めて小規模かつ最小量の試料のみを必要として実施するために使用できる顕微溶液装置の一部であるかまたは一部を形成するために基質内で形成される。これらの方法では、典型的に試料の物理的画分は収集されない。その代わり、分離した成分が空間的または時間別に分離される。キャピラリーの顕微溶液チャネル内で試料を作製および移動するための方法、ならびに様々な異なるデザインについては、例えば、いずれも参照により全体が組み入れられる米国特許第5,858,188号;第5,935,401号;第6,007,690号;第5,876,675号;第6,001,231号;および第5,976,336号を含めて、考察されている。
1.予備精製
試料の複雑さ(例えば、試料内の成分の数および異なるタイプ)に応じて、標的分析物(例えば、基質および/または標的代謝物)は先ず試料内のその他の成分から少なくとも一部精製される。試料が細胞細片または分離に干渉し得るその他の物質を含む場合、このような物質は、例えば、篩物質を介した試料の強制的押し出し、濾過、遠心分離(例えば、密度勾配遠心法)、および様々なクロマトグラフ法(例えば、ゲル濾過、イオン交換またはアフィニティークロマトグラフィー)を含む任意の様々な公知の分離技術を用いて除去することができる。
多くの高分子(例えば、タンパク質および核酸)は、細胞を融解して、融解した細胞を冷却トリクロロ酢酸で処理する(例えば、5〜10%TCA 重量/体積、30分、氷冷)することによって、細胞内の小分子の大半は可溶性を維持したまま高分子を定量的に沈降させて小分子(例えば、ヌクレオチド、アシルCoA、単糖および二糖、アミノ酸)から分離することができる。さらなる分離方法については、例えば、HansonおよびPhillips (Hanson, R. S. and Pliillips, J. A., Manual of methods for general bacteriology, Gerhardt et al. (eds.)., Am. Soc. Microbiol., Washington, D.C., p. 328 (1981))により考察される。
2.多次元電気泳動法
このような初期精製工程が完了したら(必要な場合)、典型的には標的分析物は連続して実施される多くの電気泳動法を実施することによってさらに精製される。至適実施のために、イオン強度が特に高い試料は電気泳動法の実施前に透析および希釈ならびに再濃縮などの確立された技術を用いて脱塩することができる。最初の電気泳動法において電気泳動される試料を除いて、各方法で電気泳動される試料は先行の方法で電気泳動される成分を含む溶液または画分から得られるので、方法は連続して実施すべきであると言われる。それぞれの異なる電気泳動法は「次元」と考えられ、従って、系は「多次元」分離を構成する。
一連の電気泳動法は、典型的に、連続する各電気泳動法において注入される試料中の成分が物理的、時間的または空間的に単離または分解されて複数の画分を形成し、各々の画分には試料中に含まれる成分のサブセットのみが含まれるような方法で実施される。従って、画分とは、電気泳動に供された試料中のその他の成分から物理的、時間的または空間的に分解される成分または成分の混合物を含む溶液を指す。従って、分離された成分は、電気泳動法の間にその他の成分から分離された単一の成分または成分の混合物を指すことができる。記載した通り、様々な電気泳動法における試料は、試料が分離されるべきすべての成分を含む元々の試料である最初の電気泳動法を除いて、このような画分から得られる。
典型的には、連続したこれらの多数の電気泳動法は異なる特徴に従って成分を分離する。例えば、一つの方法は等電点に基づいて成分を分離することができ(例えば、キャピラリー等電点電気泳動法)、その他の方法は任意の所与のpHにおけるそれらの内因性または(一部のイオン化可能な基に対する標識の適用を介して)誘発される電荷対質量比に基づいて成分を分離することができるが(例えば、キャピラリーゾーン電気泳動法)、その他の方法は成分の大きさに従って分離する(例えば、キャピラリーゲル電気泳動法)。
様々な電気泳動法を実施するために用いられる装置は当技術分野において公知であり、参照によりその全体がすべての目的のために本明細書に組み入れられる米国特許第6,764,817号において詳細に総評される。本発明の方法において電気泳動が実施される電気泳動装置に関連して用いられる「キャピラリー」という用語は便宜上用いられる。この用語は電気泳動が実施される腔または装置の特定の形状を限定すると理解されるべきではない。特に、腔は円柱状の形状である必要はない。任意の電気泳動法に関して本明細書で用いられるように「キャピラリー」という用語は、少なくとも一組の対立する面の間の内部の大きさが約2〜1000ミクロンであり、より典型的には25〜250ミクロンであるその他の形状を含む。本発明の一部の方法で用いることができる非管状の配置の一例はヘレ-ショウ(Hele-Shaw)のフローセルである(例えば、米国特許第5,133,844号;およびGupta, N. R. et al., J. Colloid Interface Sci. 222:107-116 (2000)を参照されたい)。さらに、キャピラリーは直線的である必要はない;いくつかの例において、キャピラリーは例えばらせん状の配置に巻き付けられる。
本発明の方法を用いて、分離された成分は物理的、空間的(例えば、分離腔に含まれる電気泳動媒質全体に拡散)、および/または時間的(例えば、試料中の異なる成分が異なる時期にキャピラリーから溶出するように溶出を制御する)に単離することができる。従って、本発明の方法は溶出緩衝液の組成および/または時間との関係で成分の混合物を分離することができる。これらの方法は、一部のこれまでのゲル電気泳動系(例えば、タンパク質分離のための2-Dゲル電気泳動系、または核酸分離のためのパルスフィールドおよびシーケンシングゲルの系)または(小分子代謝物の分離のための)二次元薄層クロマトグラフィー(2-D TLC)法のように、成分の空間的分離に限定されるものではない。その代わり、溶出を制御することによって、例えば、画分内の成分が等電点および電気泳動移動度の範囲内に収まる画分を収集することができる。成分の制御された溶出は、方法が再現性のある方法で実施できることを意味する。このような再現性は、例えば、比較試験の実施および診断上の応用において重要である。
分解された成分の溶出および回収では、一般に分解された成分を含む電気泳動媒質部分のみが典型的に任意の所与の画分に収集される。これは、分解された成分(例えば、タンパク質)のすべてを含むゲルが分離腔から押し出されて、このすべての成分を含む押し出されたゲルがもう一つの電気泳動による分離を実施するために用いられる一部の2-D法とは対照的である。これは、すべての代謝物が一つの溶媒系を用いてマトリックスに対するそれらの相対的親和性により直線状に分離され、最初の溶媒系の流れの方向に対して直角に適用される二番目の溶媒系によって変化した親和性に基づいて再分離される2-D薄層クロマトグラフィーとも対照的である。
続いて、一つの電気泳動法の終了時に得られる空間的、物理的または時間的に分解された成分は、後続の電気泳動法において、画分内に含まれる成分のさらなる分離のための試料ソースとして用いられる。図1に図示する通り、典型的には分解された異なる画分に由来する試料は同一のキャピラリーで連続的に電気泳動される。通常、もう一つの試料は、異なる画分に含まれる成分と重複しないよう直前の試料中の成分が分離腔から十分に回収されるまで適用されない。同一カラムでの画分の連続的溶出は、一部のスラブゲル電気泳動法において問題となる可能性のある架橋結合または電界強度の相違に起因する変動を著しく抑制または排除することができる。従って、連続的分離は本発明の方法の再現性をさらに高めることができる。しかし、その他の方法が類似の様式で実施されることもあり、異なる画分に由来する試料が別々のキャピラリーで電気泳動される。このアプローチは、分離がより速やかに完了すべきことを考慮するものである。しかしながら、多数のキャピラリーを使用すると分離条件のばらつきが高まり、その結果、異なる試料間の再現性がある程度抑制される可能性がある。
一部の方法において、電気泳動法は同様の成分を含むプールが得られるように実施される。例えば、電気泳動条件は初回または最初の数回の電気泳動法の後に主として関連する成分を含む少なくとも一つのプールが得られるように制御することができる(例えば、主にタンパク質、多糖、核酸、アミノ酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴ糖、リン酸化単糖またはオリゴ糖、脂肪、脂肪酸、または有機酸を含むプール)。関連する成分のプールは、細胞内の成分の異なるクラスの特徴的な性状を利用することによって得ることができる。例えば、成分の一部のクラスは主に単独で荷電するが(例えば、リン酸化モノまたはオリゴ糖)、その他は主に両性イオン性である(例えば、アミノ酸、タンパク質、ヌクレオチド、およびいくつかの脂肪)。CIEFは異なる両性イオン性成分を分解するために用いることができて、非両性イオン性化学種から両性イオン性化学種を分離するために使用することもできる。大型の成分(例えば、タンパク質)はCGEを用いてより小さな成分(例えば、アミノ酸、単糖およびオリゴ糖、ヌクレオチド、ならびにヌクレオシド)から分離することができる。pHおよび緩衝液の条件が適切に選択されることによって、様々な成分の電荷を制御して、CZEにより異なる電荷対質量比を持つ成分の分離を達成することができる。例えば、特定の成分に対して所望の荷電をもたらすために一部の成分と選択的に複合体を形成する一部の緩衝液を利用することができる。このような緩衝液の一例は、炭水化物と複合体を形成して、これにより試料中に含まれる炭水化物に対して負の電荷を付与するために用いることができるホウ酸緩衝液である。電気泳動法に関するさらなる詳細は後記に示す。
電気泳動条件を制御して複雑な混合物を先ず異なるクラスの成分のプールに分離することによって、分析を大幅に単純化することができる。例えば、関心対象の代謝物が炭水化物である場合は(例えば、ホウ酸緩衝液を用いて)炭水化物のプールが得られるように適切に条件を制御することによって、その他のクラスの成分を含む画分を無視することができる。このように、後続の電気泳動分離は関心対象のプールに由来する試料を用いて単純に実施することができる。または、同様の化合物のプールが十分に小さい場合、プールの個々の成分は電気泳動分離後に質量分析法によって完全に分解することができる。同様に、特定の代謝物に関して一旦条件が定められると、様々な電気泳動法から得られる必ずしもすべての画分を分析する必要はない。方法の再現性は、試料が関心対象の標的分析物を含むことが予め証明されている画分の前後から得られるごく小数の画分のみから採取されることを可能とする。それにも関わらず、一部の方法は例えば初期のスクリーニング試験中であっても自動化できることから、すべての最終画分を素早く分析することができる。関心対象の質量断片のシグナルを同定するための質量スペクトルのスキャニングであっても、分析を促進するためにコンピュータプログラムの使用を通して自動化することができる。
3.キャピラリー等電点電気泳動法(CIEF)
等電点収束法も標的分析物を分離するために使用することができる。等電点収束法は、タンパク質、ヌクレオチド、アミノ酸および一部の脂肪などの両イオン性物質がそれらの等電点(pI)に基づいて分離される電気泳動法である。pIは、タンパク質などの両イオン性化学種が真の電荷を持たず、従って電界に供された際に移動しないpHである。本発明において、両イオン性化学種は電界内において両性電解質またはその他の両性物質を用いて発生するpHグラジエント内で分離することができる。陰極はグラジエントの高いpH側に位置づけられて、陽極はグラジエントの低pH側に位置づけられる。
両イオン性化学種はそれらの等電点に従ってpHグラジエント内のグラジエントフォーカスに投入されて、その後、そこに留まる。続いて、収束した成分は以下に記載される通り選択的に溶出することができる。CIEFの実施に関する一般的方法は、例えば、参照により全体が本明細書に組み入れられるKilar, F.,「Isoelectric Focusing in Capillaries」in CRC Handbook on Capillary Electrophoresis: A Practical Approach, CRC Press, Inc., chapter 4, pp. 95-109 (1994);およびSchwartz, H., and T. Pritchett,「Separation of Proteins and Peptides by Capillary Electrophoresis: Application to Analytical Biotechnology」Part No. 266923 (Beckman-Coulter, Fullerton, Calif., 1994);Wehr, T., Rodriquez-Diaz, R., and Zhu, M.,「Capillary Electrophoresis of Proteins」 (Marcel Dekker, N.Y., 1999)に記載される。
多次元電気泳動法に関するより詳細な説明は米国特許第6,764,817号に示されている。
4.キャピラリーゾーン電気泳動法(CZE)
キャピラリーゾーン電気泳動法はゲルマトリックスを用いずにフリーの溶液内で実施される電気泳動法であり、固有の電荷対質量比に基づいて荷電した成分(例えば、タンパク質、アミノ酸、脂肪酸、脂肪、糖リン酸、核酸、ヌクレオチドおよびヌクレオシド)が分離される。CZE法の一つの利点は、通常は典型的な水溶性ゲルマトリックスと適合しない溶媒系を用いて実施できる点である。通常、水性電気泳動法によって分解されない疎水性および膜結合成分の溶解度を高めるために、非水性または水混和性溶媒系を使用することができる。この方法を実施するための一般的な方法は、例えば、参照によりそれぞれ全体が組み入れられるMcCormick, R. M.「Capillary Zone Electrophoresis of Peptides」in CRC Handbook of Capillary Electrophoresis: A Practical Approach, CRC Press Inc., chapter 12, pp. 287-323 (1994);Jorgenson, J. W. and Lukacs, K. D., J. High Resolut. Chromatogr. Commun. 4:230 (1981);およびJorgenson, J. W. and Lukacs, K. D., Anal. Chem. 53:1298(1981)に記載されている。
CIEFに関するより詳細な説明は米国特許第6,764,817号に示されている。
5.キャピラリーゲル電気泳動法
キャピラリーゲル電気泳動法は、ゲルマトリックスを通して篩に掛けて、その結果、大きさに従って分離されるタンパク質、核酸またはその他の高分子の分離を指す。一つの様式において、タンパク質は、タンパク質の固有の質量対電荷比ではなくこの陰イオン性界面活性剤によって質量対電荷比が求められるようにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で変性処理される(Cantor, C. R. and Schimmel, P. R., Biophysical Chemistry, W. H. Freeman & Co., NY, (1980))。これは、タンパク質が電荷を分離度の考慮に入れずに大きさに基づいてのみ分離できることを意味する。キャピラリーゾーン電気泳動法(CGE)に対する一般的SDS PAGE電気泳動法の応用については、例えば、Hjerten, S., Chromatogr. Rev., 9:122 (1967)に記載されている。
キャピラリーゲル電気泳動法のより詳細な説明は米国特許第6,764,817号に示されている。
C.検出
標的分析物が試料中のその他の分子から少なくとも一部精製されると、未代謝の基質および/または標的分析物中の同位体の相対存在量が測定される。典型的には、これは2Hに対する1Hの比を求める工程を伴うが、その他の存在量の測定値も求めることができる。
濃化した安定同位体の濃度の測定は様々な選択肢に従って実施することができる。一つのアプローチは、質量分析法により同位体標識の相対存在量を測定することである。標的分析物は、基質の質量対電荷比に応じて質量スペクトルに特徴的なシグナルを発する。存在する異なる同位体型の相対的シグナル強度は、試料中の分析物の絶対濃度に関わらず、各標的分析物の異なる同位体型の相対存在量の算出を可能とする。
質量分析法により様々な生物学的分子を分析するための方法が確立されている。質量分析法は、比較的大型の分子に加えて比較的小型の分子(例えば、ヌクレオシド、ヌクレオチド、単糖および二糖)の質量を求めるための公知の方法に従って用いることができる。荷電したまたはイオン化した分析物は様々な質量分析法によって検出することができる。一部の方法は、エレクトロスプレー(ESI)、および飛行時間(TOF)イオン検出を連結したマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法を含む。ESIおよびMALDIは低エネルギーイオン化法であり、一般に大部分の分析物が低断片化されて、想定される最も広い標的分析物の配列のイオン化に適している。TOF検出は、質量測定におけるこの技術の精度が一般に、多数の荷電化学種においても、単一の原子質量単位のレベルまでの同位体分解能を可能とするために有用である。しかし、その他の質量分析イオン化および検出技術は、分析物が断片化に対して特に頑強である場合、標識および未標識分析物の同位体の差が十分に大きい場合、および/または荷電数が十分に低い場合、標識および未標識分析物の分解を達成するするために有用に用いることができる。炭水化物検出に関する質量分析法の詳細な説明については、例えば、Fox, A. and Black, G. E.,「Identification and Detection of Carbohydrate Markers for Bacteria」ACS Symp. Ser. 541:107-131(1994)を参照されたい。
質量分析法による検出の一つの代替選択肢は赤外(IR)分光光度法または核磁気共鳴分析法(NMR)を用いて同位体標識を検出することである。このアプローチを用いて、例えば、二酸化炭素を含む様々な標的分析物が検出できる。同位体分析を実施するためのIRおよびNMR法については、例えば、いずれも参照により全体が組み入れられる米国特許第5,317,156号;Klein, P. et al., J. Pediatric Gastroenterology and Nutrition 4:9-19 (1985);Klein, P., et al., Analytical Chemistry Symposium Series 11:347-352 (1982);ならびに日本特許公報第61-42219号および第5-142146号において考察される。
一部の方法において、電気泳動法によって一部または完全に精製される標的分析物は、続いて、標的分析物の同位体組成を分析するための適切な検出器に直接輸送される。いくつかの方法において、試料は最終の電気泳動分離中に収集された個々の画分から回収されて、相対存在量を求めるために質量分析計に直接注入される。
検出のために本明細書において開示される方法は、同様に、上記のグルコース代謝産物の同定方法に適用可能である。
D.フラックスの測定
一般に、任意の所与の経路における各反応段階を通る代謝物のフラックスは漸進性の反応および逆行性の反応の相対的割合に依存する。本明細書で用いられる通り、フラックスは時間および試料サイズの関数としての標的分析物の濃度における変化の割合を指す。任意の単一の代謝転換を通る代謝フラックスは、次式に従って、時間(t)を通しての同位体標識された分析物の相対存在量(RAt)の変化から求めることができる。
Figure 2008519261
式中、RAssは長時間の時点での標識代謝物の相対存在量である。相対存在量(RA)は、標的分析物における同位体標識の存在量の割合から求められる同位体標識された基質および/または標的代謝物(標的分析物)の相対的濃度である。いくつかの態様において、安定状態での同位体の相対存在量は対象に投与される最初の基質中の公知の割合に等しいと考えることができるので、代謝フラックスの測定には一検体の試料のみが必要である。もう一つの態様において、安定状態での同位体の相対存在量は異なる時点で採取された試料から得られる2つまたはそれよりも多い相対存在量測定値についての上記の等式の同時溶液から予測することができる。もう一つの態様において、安定状態での同位体の相対存在量は長期時点で採取された試料から直接測定することができる。
当業者には、同位体標識された基質の相対存在量の減少に続いて、同位体標識された分析物または基質の枯渇から分析物のフラックスを求めるには上記の等式の別の形が使用できることが明らかである。この別の形は次の通りである。
Figure 2008519261
式中、RA0は、相対存在量を変化させるための基質投与前の同位体標識された分析物の初期相対存在量である。一つの態様において、RA0は新しい基質の投与前に直接測定される。もう一つの態様において、RA0は変化前に投与される基質中の相対的同位体存在量と等しいと考えられる。
n分枝した代謝経路のネットワークにおける任意の代謝分枝(i)への基質の相対的代謝フラックスは、次式に従って、任意の時点(t)、おそらく長期の時点(例えば、安定状態の条件)における代謝経路の各分枝(j)の下流において分析物中に出現する同位体標識された分析物の相対存在量の割合から求められる。
Figure 2008519261
フラックスを求めるために、典型的には予め定められた異なる時期に対象から1つまたは複数の試料を採取する。続いて、試料を処理して、任意で精製し、その後、試料採取時点(t)での標的分析物中の同位体標識の相対濃度に関して一つまたは複数の値を求めるために、上記の通り分析する。次いで、複数の各標的分析物についてフラックス速度を求めるために、これらの値を上記の等式で使用することができる。いくつかの場合において、フラックスを求めるために用いられる標的分析物はすべて有機化合物である(分析物は、例えば二酸化炭素を含まない)。
当業者には、当技術分野において一般的に公知の統計曲線のあてはめまたはパラメータあてはめ法(例えば、Zar, J.H. Biostatistical Analysis, (Prentice-Hall, Englewood Cliffs, NJ, 1974))および異なる時期に採取された複数の試料から得られた同位体割合を用いるとより正確なフラックス測定値および推定フラックスの標準誤差を求められることも明らかである。
経路を通過する代謝フラックスは、経路内の速度測定段階に依存する。これらの段階は経路内の後続の段階よりも遅く、速度測定段階の産物はそれが反応物と平衡する前に除去される。フラックスおよびその測定方法に関するさらなる手引きは、例えば、Newsholme, E.A., et al., Biochem. Soc. Symp. 43:183-205 (1978);Newsholme, E.A., et al, Biochem. Soc. Symp. 41:61-110 (1976);およびNewsholme, E.A., and Sart., C., Regulation in Metabolism, Chaps. 1 and 3, Wiley-Interscience Press (1973)に示されている。
E.用途
代謝経路の分析のための方法および装置は様々な異なるタイプの代謝化合物を分離および検出するために使用することができる。従って、その方法および装置は様々な代謝目的に使用することができる。例えば、その方法は異なる代謝物のフラックスを求めるために用いることができる。この可能性は、代謝物のフラックスが異なる細胞状態の関数として、または異なる外的刺激に反応してどのように変化するかを調べる際の生化学的、特に代謝的な研究において使用することができる。この方法は、異なる代謝物のフラックス速度が健常状態および疾患状態でどのように変動し得るかを調べることによって、臨床研究において価値がある。
より具体的には、本発明はメトミック(metomic)なデータベースを作製するために用いることができる。このようなデータベースには、例えば、対象の特定の状態または生理学的条件に関して検出された様々な代謝物の登録が含まれ得る。このデータベースは、対象および/または代謝物の登録に関するさらなる情報と相互参照することができる。例えば、対象に関して、データベースは属、種、年齢、人種、性別、環境的曝露条件、健康状態、試料収集方法および試料の種類に関する情報を含むことができる。データベースに保存された各代謝物に関するフラックス値を含むことができ、代謝物濃度値、代謝フラックスを司る酵素もしくは輸送タンパク質濃度値、または代謝フラックスを司るタンパク質に関連する遺伝子発現値と相互参照することができる。
細胞代謝全体の分離可能な成分を示す複数の分析物のフラックスが求められる場合、対象の代謝フィンガープリントが得られる。代謝全体の分離可能な成分に由来する分析物は、機能上、一連の酵素的転換段階によって十分に分離される化合物として定義されて、任意の単一の基質によって得られる分析物中の同位体の自然存在量を上回る同位体濃化は検出できないので、フラックスを測定するためには二番目の基質が投入されなければならない。一般に、この機能上の基準は、標的分析物が付加した基質から除去される5段階よりも多い転換段階であるかどうかを満たす。一部の方法において、代謝的に分離可能な複数の基質が対象に同時に投与され、代謝的に分離可能な複数の標的分析物が所定の時間後に対象から得られた単一の試料から検出されることが可能である。このような様々な方法において、代謝的に分離可能な各基質は異なる安定同位体で標識することができる。例えば、D7-グルコース/H7-グルコース、[15N]-フェニルアラニン、および[13C]-アセテートは、解糖系、アミノ酸および脂肪酸代謝経路における標的分析物のフラックスを求めるために対象に対して同時に投与することができる。
本発明は様々なスクリーニングの応用に使用することができる。例えば、本発明の装置および方法は一部の細胞状態(例えば、一部の疾患)と相関する代謝物を同定するために用いることができる。例えば、この方法は濃度またはフラックスが健常および疾患状態の個体または細胞の間で変動する代謝物を同定するために使用することができる。従って、このような代謝物の濃度およびフラックスの制御を司る酵素は、例えば、薬剤療法における潜在的標的として同定される。同様に、一部の方法は、どの代謝物、従って、それらの形成を制御するどの酵素が毒性刺激の影響を受けるかを特定するための毒性試験を実施するために使用することができる。
代謝物および一部の細胞状態を関連付けるためのスクリーニング方法は前記の一般的分析方法とほぼ等しい。例えば、基質は疾患を持つ試験対象に投与されて、その試験対象によって少なくとも一部代謝される。続いて、一般に、上記の様々な分離技術を用いて、評価中の試料のその他の成分から関心対象の標的分析物が一部または完全に分離される。標的分析物中の同位体の相対存在量は、試験対象における各標的分析物のフラックス値を求めるために異なる同位体を検出することができる方法を用いて測定される。次いで、これらの測定値を、非疾患状態におけるフラックス値の参照として用いられる対照の対応するフラックス値と比較する。
対照は、同様の条件下で求められる対照の対象(例えば、疾患を持たない対象)の値(例えば、平均または平均値)とすることができる。または、対照は非疾患状態の典型であることが予め立証された値の範囲としてもよい。試験のフラックス値と対照のフラックス値の差(例えば、統計学的有意差)は、特定の代謝物が疾患と相関することを示す。このような代謝物は当該疾患の「マーカー」または潜在的マーカーである。対照対象のフラックス値は試験と同様の条件下において予め得られたデータであってもよく、または、フラックス値は対照対象について同一条件下において試験対象と同時に投与して求めてもよい。
勿論、一部の代謝物と疾患状態以外の細胞状態を相関付けるために、同様のスクリーニング方法を実施することができる。例えば、特定の発育段階、一部の環境刺激への曝露に起因する状態、および特定の治療的投与に関連する状態と相関する代謝物を特定するためにこれらの方法が実施され得る。
疾患および対照の対象の間でフラックス値に統計学的有意差があることが見出された多数の代謝物(例えば、マーカー)は、「代謝フラックスフィンガープリント」または単に疾患の「フィンガープリント」を作製するために用いることができる。続いて、このようなフィンガープリントは疾患の診断に用いられ得る(後記参照)。典型的には、このようなフィンガープリントは疾患と相関することが明らかとされた少なくとも2、3、4または5つの代謝物を含む。その他の例において、フィンガープリントは少なくとも6、7、8、9または10個のこのような代謝物を含み、さらにその他の例では10、15もしくは20またはそれよりも多いこのような代謝物を含む。
比較試験の結果は様々な診断目的に転用可能である。例えば、「マーカー」または「フィンガープリント」は、対象が特定の疾患を持つまたは感受性であるかどうかを調べるために、対象をスクリーニングまたは診断するために使用することができる。方法は前記の通りであるが、但し、同位体で標識した基質は疾患を持つと疑われる、またはそれに感受性である対象(または、単に、その疾患を持つまたは感受性であるかどうかを調べようとしている関心対象の個体)に投与される。続いて、試験分析物のフラックス値(例えば、試験対象の「代謝特性」)を、個々の試験分析物の参照フラックス値(マーカー)またはマーカー(フィンガープリント)の収集結果と比較する。
測定した値が比較される参照値は、健康または疾患状態のいずれかの典型とすることができる。さらに、参照値は、健康または疾患状態のいずれかと相関する特定の値または値の範囲であり得る。例えば、参照は対照の対象または疾患を持つもしくは持たない対象の値(例えば、平均または平均値)であってもよく、参照値は試験対照が試験された条件と同等の条件下で求められる。または、参照は、疾患を持つまたは持たない対照の対象集団から導かれた値の範囲であってもよい。
参照が正常または健常状態に関する場合、試験対象および参照のフラックス値の差(例えば、統計学的有意差)は、試験対象が疾患を持つ、または疾患に罹患するリスクがあることを示す。または、差がないことは試験対象が疾患を持たない、および/または疾患に罹患するリスクがないことを示す。但し、参照が疾患状態の典型である場合は、試験値および参照値の差(例えば、統計学的有意差)は試験対象が疾患を持たない、および/または罹患するリスクがないことを示す。逆に、差がないことは、試験対象が疾患を持つまたは疾患の罹患に対して感受性であることを示す。
診断的スクリーニングは単に疾患状態の検出に限定されない。スクリーニングは、例えば、一部の発達段階または毒性状態などのその他のタイプの細胞状態を検出するためにも使用できる。
このようなスクリーニング試験を実施する場合、典型的には分析は単純化され得る。例えば、ある疾患のマーカーが特定されると、関心対象のマーカーを含む画分が公知であるような分離条件を確立することができる。従って、スクリーニング試験期間中は、特定の画分の成分のみについて評価が必要となる。本発明の分離および検出の局面の再現性は、このような分析を促進する。
このようなスクリーニング方法は、異なる様々な疾患について実施することができる。本発明の方法を用いて評価することができる疾患には、異なるタイプの癌、自閉、微生物およびウイルス感染、ならびに様々な消化障害(digestive disorder)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
本発明の方法は、構造活性試験を実施する際にさらなる用途を持つ。例えば、これらの方法は、一部の化学的物質または物質の組み合わせが一般に代謝に対して、より具体的には、関心対象の一部の代謝物のフラックスに対して持つ影響を調べるために使用することができる。このような試験は、代謝に対して破壊的であり、影響を受ける特定の代謝物にピンポイントに作用する物質を特定することができる。その他の適用において、先ず一つの物質の試験が行われると、その物質または物質の組み合わせが修飾され得るが、もしあるとすれば、修飾が代謝に対してどのような影響を及ぼしたかを調べるために繰り返し分析を実施することができる。このような試験は、例えば、初期の薬剤スクリーニング試験において同定されるリード化合物を誘導する際に有用であり得る。
代謝工学試験も本発明の方法を用いて実施することができる。このような試験において、代謝に関与する遺伝子は一部の所望の変異を含むように遺伝的に組み換えられてもよく、または一つの遺伝子のプロモーターはその遺伝子の相対的発現レベルを増大または減少させるように遺伝的に組み換えられてもよい。本明細書に記載される方法を用いて、もしあるとすれば、遺伝的に組み換えられた変化が試験対象の代謝に対してどのような影響を持つか調べることができる。
次の実施例は特許請求される発明を例証するために示すものであり、限定されるものではない。
III.実施例
実施例1
酵母(ATCC出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae野生株)は、D7-D-グルコース(Isotec)または通常のD-グルコースのいずれかを0.1g/mLの最終濃度まで加えた酵母窒素ベース(Yeast Nitrogen Base)(Sigma-Aldrich)で生育させた。培養物は30℃で稠密までインキュベートして、遠心分離により回収した。エキソグルカナーゼが生育培地中に分泌され、トリクロロ酢酸沈殿後に上清から回収して、再懸濁し、確立されたHPLC法によりその他のエキソグルカナーゼのイソ型から精製した。Larriba et al., Biomol. Eng. 18:132-42 (2001)を参照されたい。
カルボキシペプチダーゼYは、Y-PER(商標)Yeast Protein Extraction Reagent(Pierce)を用いて溶解した細胞沈渣中に回収した。カルボキシペプチダーゼYは、製造業者のプロトコールに従って、AminoLinkカラム(Pierce)に接続した市販のmAbを用いて、Y-PER可溶化液からアフィニティー精製した。
これらの各糖ペプチド由来のグリカンは、PNGアーゼFを用いて開裂することによって精製したモデルタンパク質から回収した。これらのグリカンは、精製グリカンを得るためにHPLCによりさらに精製した。グリカンへの代謝された重水素化ヘキソースの取り込みを実証するために、ESI-MSにより、D-グルコース添加培養およびD7-D-グルコース添加培養の精製グリカンの質量を比較した。このように、酵母細胞は代謝的要求のために過重水素化されたグルコースを効率的に利用することが示された。
実施例2
ESI-TOF質量分析計においてインソースフラグメンテーション(in-source fragmentation)を用いて、複合型オリゴ糖のシーケンシングおよび性状決定のために最適なマス検出タグが作製される。オリゴ糖の還元末端への有効な接続のために連鎖化学がデザインされる(即ち、遊離アルデヒド)。オリゴ糖の還元末端への抱合のための質量欠損標識は4つの一般的な特性を考慮してデザインされる:顕著な質量欠損を伴う周期表からのエレメント、陽イオンモード質量スペクトルイオン化におけるプロトン化のための基本部位、MS断片化に対する安定性(即ち、標識がグリコシド結合を断片化するために必要なエネルギーに耐える)、および還元末端アルデヒドへの適切な連結分子。
実施例2.1
芳香族臭化物を持つ質量欠損タグは、天然の50:50同位体ペア(79Brおよび81Br)のために有利であり、これにより、質量スペクトルにおける重複性が得られて、ピークがペアリングするために質量欠損スペクトルの解像性能が高まる。
(表3)芳香族臭化物を用いた質量欠損タグ
Figure 2008519261
一級アミノ基は、還元的アミノ化による還元末端アルデヒドへの抱合のためにタグに加えられる。組み入れは、還元型アミノ化による単糖およびオリゴ糖への2-アミノベンズアミドおよび4-アミノ安息香酸メチルエステルのような多くのUV吸収タグに関して実証されている。Harvey, J. Am. Soc. Mass Spectrom., 11:900-915 (2000)を参照されたい。形成される連鎖(二級アミン)は質量分析による断片化条件に対して極めて安定であり、陽イオンモードESI質量分析においてプロトン化のための基本部位を提供する。
表4は質量タグに関するいくつかの初期標的を示す。化合物Vは市販されている(Sigma-Aldrich)。化合物VIは、対応する一級アミドの水素化アルミニウムリチウム還元によって市販の5-ブロモニコチン酸から容易に合成される(図4)。同様に、その他の位置異性体は、この異性体の抱合体が所望の断片化パターンを持たない場合、容易に合成することができる。
化合物VI中のピリジン窒素は、良好なイオン化効率を示すメチルブロモピリジン化学種を形成するためにメチルトリフレートでメチル化される。化合物IXは、ヨウ化メチルまたはメチルトリフレートを用いてトリメチルアンモニウム化合物を形成するためにメチル化される。化合物VIIはオリゴ糖への抱合後にメチル化される。ピリドン酸素は、硬く荷電したN-メチルピリジニウム塩を含む誘導体を得るために、メチルトリフレートで容易にメチル化されている。
(表4)質量欠損タグ
Figure 2008519261
Figure 2008519261
図4. 2-ブロモピリジル-2-メチルアミン(化合物VI)の合成スキーム
実施例2.2
質量タグは市販のオリゴ糖と抱合させる。精製した2つのモデル分枝グリカンは、Sigma-AldrichおよびLudgerから市販されている:NA2 {マンノトリオース-ジ-[N-アセチル-D-グルコサミン]、ビス[ガラクトシル-(N-アセチル-D-グルコサミニル)]}およびA1F {マンノトリオース-(フルコシル-ジ-[N-アセチル-D-グルコサミン])、モノ-シアリル-ビス-(ガラクトシル-N-アセチルグルコサミニル)}。構造を以下に示す。
Figure 2008519261
オリゴ糖は、手元にあるまたは表3から合成した試薬を用いて、水溶液中での還元的アミノ化により標識する。還元糖の質量欠損標識後、オリゴ糖は標準的方法によって過メチル化する。Dell, Methods Enzymol., 193:647-660 (1990)を参照されたい。過メチル化によって、質量分析法でのオリゴ糖のイオン化が亢進する。修飾されたオリゴ糖は、先ず、適切なESI溶媒(例えば、1%酢酸を含む50%(v/v)水性アセトニトリル)に溶解して、ABI MarinerのESI-TOFのイオン化ゾーンにおいてインソースフラグメンテーションに供する。
標識は、1)最高レベルのオリゴ糖イオン化を得る(即ち、最も低い検出限界)、2)最大パーセントの標識が断片に接続して残り、開裂して異なる標識ピークを形成することがないように徹底するよう、必要に応じて至適化する。
実施例3
この実施例の目的は、具体的なグリカンに対する全体的有効性および具体的有効性の双方に関するインビボにおけるd7-D-グルコース安定同位体標識法のバリデーションである。
実施例3.1
d7-D-グルコース中で培養した酵母由来の細胞膜結合グリカンを回収して消化する。酵母膜タンパク質は、Mem-Per(登録商標)Eukaryotic Membrane Protein Extraction Reagent Kit (Pierce)を用いて回収する。グリカンは、2M TFA中で100℃にて一晩加熱することによって完全に消化する。Gey, et al., Anal, Bioanal, Chem., 356:488-94 (1996)を参照されたい。キットの相分離において用いられるポリマーは、TFA消化後に脂溶性画分と共に分離相を形成する。続いて、得られた単糖を、環境条件下において75%(v/v)の水性アセトニトリルの移動相を用いて流量1mL/分、200nmでの検出にてカーボハイドレートESカラム(Alltech)で順相HPLCにより水相から精製する。各単糖の溶出時間は標準物質を用いて測定する。各単糖の溶出時間にわたって、画分を収集する。単糖は、これらの画分を50:50アセトニトリル:水(1%酢酸加)に溶解して、ESI-TOFにより直接分析する。感度に問題がある場合は、単糖の画分を2-アミノベンズアミドまたは同様の化学種で誘導体形成して(イオン化亢進のための基本的部位を作製するため)、オリゴ糖の揮発性を高めるためにヒドロキシルをメチル化する。表1では、各単糖について通常のD-単糖に対する予想されるDx-D-単糖の比を比較する。質量スペクトルにおけるピーク同一性を確認するために、通常のD-グルコース培養物(同様に加工)由来の対照試料を分析する。
実施例3.2
カルボキシペプチダーゼY(61kDa)は、酵母内での芽胞形成期に完全タンパク質分解に必要とされる豊富な液胞糖タンパク質である。酵母可溶化液からのこの糖タンパク質のアフィニティー精製には、カルボキシペプチダーゼYに特異的なモノクローナル抗体(Molecular Probes (Eugene, OR))が用いられる。カルボキシペプチダーゼYは4カ所のN-グリコシル化部位を持ち(残基13、87、168および368)(Shimizu, et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 63:1045-50 (1999))、これらについては十分に性状解明されている。Shimizu, et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 63:1045-50 (1999);Kato, et al., Eur. J. Biochem., 270:4587-93 (2003)を参照されたい。固有のアスパラギンのアラニン置換を持つ部位特異的変異型も作出されていて(Shimizu, et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 63:1045-50 (1999))、これにより純粋なグリカンの生成が単純化される。
主な酵母エキソグルカナーゼ(ExgI)は、165および325位の残基に2つの短いN結合型グリカンを持つ。Larriba, et al., FEMS Microbiol. Lett., 15:121-6 (1995)を参照されたい。ExgIbの糖化型は、Asn325のグリカンの伸長による前駆タンパク質の不十分なグリコシル化に起因するこのエキソグルカナーゼの微量の糖化型を持つ主要な種類である。Larriba, et al., Biomol. Eng., 18:132-42 (2001)を参照されたい。LarribaおよびCuevaは過去にこの系をグリコシル化の優れたモデルとして提唱しているが、これは糖化型がHPLCによって容易に分離されるためである。
上記の系はいずれも、N-グリカンを含む。N-グリカンは、後続の分析のためにPNGアーゼF酵素によって精製タンパク質から容易に回収される。PNGアーゼFは、N結合型糖タンパク質から最内側のGlcNAcと高マンノース型、混合型および複合型オリゴ糖のアスパラギン残基の間を開裂するアミダーゼである。Maley, et al., Anal. Biochem.. 180:195-204 (1989)を参照されたい。
酵母(ATCC出芽酵母(野生株または京都大学の特異的カルボキシペプチダーゼY変異株)は、D7-D-グルコース(Isotec)または通常のD-グルコースのいずれかを0.1g/mLの最終濃度まで加えた酵母窒素ベース(Sigma-Aldrich)で生育させる。培養物は30℃で稠密までインキュベートして、遠心分離により回収する。エキソグルカナーゼは生育培地中に分泌されるので、トリクロロ酢酸またはアセトン沈殿後に上清から回収して、再懸濁し、確立されたHPLC法によりその他のエキソグルカナーゼのイソ型から精製する。Larriba et al., Biomol. Eng., 18:132-42 (2001)を参照されたい。カルボキシペプチダーゼYは、Y-PER(商標)Yeast Protein Extraction Reagent(Pierce)を用いて溶解する細胞沈渣中に回収される。カルボキシペプチダーゼYは、製造業者のプロトコールに従って、AminoLinkカラム(Pierce)に接続した市販のmAbを用いて、Y-PER可溶化液からアフィニティー精製する。
グリカンは、PNGアーゼFを用いた開裂によって精製したモデルタンパク質から回収される。精製グリカンを得るために、必要に応じて、HPLCによるさらなる精製が行われる。このグリカンの構造および配列は、従来の連続的酵素消化によって調べられる。産生および精製過程は、本発明者らがD7-D-グルコースで培養した試料同一の方法に適用する前に、通常のD-グルコースで培養した酵母を用いてバリデートされるであろう。
実施例4
精製した同位体標識グリカンを質量欠損タグに接続させる。得られるタグ付きグリカンをABI Mariner ESI-TOFでのインソースフラグメンテーションに供する。断片化を達成するためにノズル電位を上げる前に、未変化体標識グリカンの質量を確認する。オリゴ糖の断片化は約75Vのノズル電位で開始する。質量欠損スペクトルは市販の逆重畳積分ソフトウェアを用いて得られる。得られる質量欠損断片イオンは、統合して公知の配列を完成させるために用いられる。質量欠損断片化スペクトルにおける完全なグリカンの構造および配列カバー度が得られる。アルゴリズムおよびソフトウェアによって、スペクトルから未知のグリカンの配列および構造が予測される。
実施例5
この実施例では、高マンノース型オリゴ糖を標識してシーケンシングする。オリゴ糖は、Parekh, et al., 米国特許第5,667,984号に開示される方法と同様の方法を用いて標識する。つまり、質量欠損標識(2-アミノ-6-ヨード-ピリジン)は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)の存在下でオリゴ糖の還元末端に共有結合性に接続させる。これは、未変化体のオリゴ糖に単一の質量欠損エレメント(ヨウ素)を組み入れる。質量欠損エレメントの付加により、標識されたオリゴ糖断片は質量スペクトルにおいて未標識断片およびマトリックスイオンと区別される。
続いて、適切な反応緩衝液中の異なるサッカラーゼを分注した反応試験管に抱合したオリゴ糖を分取する(表5および6を参照)。反応は最後まで進行させて、同じくシアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下において各酵素について示された質量欠損標識(表6を参照)と反応させることによって新たに形成される断片の還元末端の位置において、得られる反応産物を抱合させる。標識2および3はそれぞれ、異なる数の質量欠損エレメントを含み、消化断片は元々のオリゴ糖の末端断片と区別される。
(表5)オリゴサッカラーゼ酵素
Figure 2008519261
(表6)反応および標識の組み合わせ
Figure 2008519261
* 酵素の番号は表5の説明と対応する
標識3抱合型反応混合物(即ち、番号3の酵素で消化)の画分を酵素1でさらに消化する。この反応によって生成する還元糖末端を、続いて、前記の通り、標識2に抱合する。
続いて、これらのすべての反応から得られる画分を混合して、2%酢酸の50% v/vメタノール混合液の添加によって酸性化して質量スペクトルの分析に供する。酸溶液中のアセタール抱合体の安定性が低いことから、質量スペクトル分析は酸性化後直ちに実施する。または、硬い電荷を組み入れる異なる標識シリーズ(例えば、N-アルキル-ヨード-ピリジンのシリーズ)は、酸性化せずに質量スペクトル分析に供する。得られる質量スペクトルを逆重畳積分して、本発明の方法によって質量欠損標識化されたピークを含まないすべての化学ノイズを除去する。続いて、得られる逆重畳積分した質量欠損スペクトルを本発明の方法により、用いられる各質量欠損標識に接続し得る考えられるすべてのオリゴ糖配列を予測してアルゴリズムで探索する。
探索アルゴリズムは、ヘキソース(Hex)およびN-アセチルアミノヘキソース(HexNAC)の各分枝の組み合わせ毎に質量を算出する。各Hexモノマー単位は、予想される断片質量の重量に179.055565amuの単一同位体質量単位を付加する。各HexNACモノマー単位は、予想断片質量に220.082114amuの単一同位体質量単位を付加する。断片に含まれる各糖(n)について、17.00274amuの(n-1)倍の真の消失がある。これらのピークに対応するヘキソースおよびN-アセチルアミノヘキソースの数を表7に示す。
(表7)図1(A、B、およびC)のピークに対応するヘキソースの数およびタイプ
Figure 2008519261
標識1に抱合される断片から形成されるマスラダーは、最外層の糖がヘキソースであることを示す。標識1に抱合する最も高い質量断片は未変化体のオリゴ糖に相当する。その結果、最初の標識1に抱合する断片と未変化体の間のヘキソース4個分の質量差は、酵素1および酵素3の双方がα-マンノースのみを開裂することから、4つのα-マンノースが存在することを示す。ピークDは図8Bにおいて標識2の抱合体にのみ一致することから、還元末端の最外層の糖の4つは1α2結合マンノースであるはずであり、内層の1α2マンノースではあり得ない。
標識1マスラダーの次の断片(ピークA)は、直前の断片とはさらにヘキソース4個分だけ異なる。これは酵素3で消化された試料に対応するはずである。唯一相当する標識3抱合型断片はE(1個のヘキソース断片)、F(2個のヘキソース断片)およびG(3個のヘキソース断片)である。ピークFおよびGは合計5個のヘキソースを含むことから、これらの断片の少なくとも1つは1α2結合マンノースを含まなければならない。従って、酵素3は1α3および1α6結合のみを開裂することから、構造内には少なくとも2つの異なる1α3および/または1α6結合マンノースが存在しなければならず、これらのマンノースは4つの1α2結合マンノースの内側でなければならない。この情報から、以下の部分的配列が導かれる。
{Man4-lα2}-{Hex2, Man2-lα3, 6}-{HexNAC2, Hex1}-r
式中、rはオリゴ糖の還元末端を示す。
この過程は、完全な配列が求められるまで、表2の異なる酵素を用いて反復される。例えば、酵素3に続いて酵素8による消化によって、最初の配列が以下の通り求められる。
-Man-1β4-{HNAC2}-r
オリゴ糖還元末端の全配列は、酵素3および酵素7を順次用いた反応によって決定される。

Claims (52)

  1. グルコース代謝産物を同定する方法であって、以下の段階を含む方法:
    (a)対象にD7-グルコースを投与する段階;
    (b)重水素化標的代謝物を形成するために、D7-グルコースを対象によって少なくとも一部代謝させる段階;
    (c)該対象から該重水素化標的代謝物を分離する段階;
    (d)段階(c)に続いて、該重水素化標的代謝物を質量タグと接触させて該質量タグを重水素化標的代謝物に接続させ、それによって質量タグ付き重水素化標的代謝物を形成させる段階;および
    (e)該質量タグ付き重水素化標的代謝物の質量を検出して、それによって該グルコース代謝産物を同定する段階。
  2. 重水素化標的代謝物が重水素化単糖である、請求項1記載の方法。
  3. 重水素化標的代謝物が重水素化グリカンである、請求項1記載の方法。
  4. 質量タグ付き重水素化グリカンを形成するために質量タグを重水素化グリカンの還元末端に接続させる、請求項3記載の方法。
  5. 段階(d)の後および段階(e)の前に、質量タグ付きの標識重水素化グリカン断片および未標識の重水素化グリカン断片の集団を産生するために、酵素、化学分解または質量分析による断片化(fragmentation)法を用いて質量タグ付き重水素化グリカンを断片化する段階をさらに含む、請求項4記載の方法。
  6. 質量タグが、17〜77の原子番号を持つ質量欠損エレメントを含む質量欠損タグである、請求項5記載の方法。
  7. 質量欠損エレメントが臭素およびヨウ素から選択される、請求項6記載の方法。
  8. 質量欠損タグが、17〜77の原子番号を持つ少なくとも2つの質量欠損エレメントを含む、請求項6記載の方法。
  9. 段階(e)の後に、質量タグ付き標識重水素化グリカン断片の質量と、質量タグ付き標識重水素化グリカン断片と同一の核子数を持つ別の分子の質量とを識別する段階をさらに含む、請求項6記載の方法。
  10. グリカンの還元末端における少なくとも1つの単糖を同定する、請求項9記載の方法。
  11. グリカンの還元末端における少なくとも2つの単糖を同定する、請求項9記載の方法。
  12. 質量タグ付き重水素化標的代謝物の量が調べられる、請求項1記載の方法。
  13. 少なくとも2つの質量タグ付き標識重水素化グリカン断片が検出される、請求項5記載の方法。
  14. 対象が哺乳動物である、請求項1記載の方法。
  15. 対象が細胞である、請求項14記載の方法。
  16. 重水素化グリカンが糖タンパク質の一部を形成する、請求項3記載の方法。
  17. 段階(e)の前に、糖タンパク質から重水素化グリカンまたは重水素化グリカンの一部を分離する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。
  18. 分離する段階が対象から重水素化標的代謝物を含む試料を収集する段階、および試料成分から重水素化標的代謝物を分離するために該試料を液体クロマトグラフ手順に供する段階を含む、請求項1記載の方法。
  19. 代謝経路を分析するための方法であって、以下の段階を含む方法:
    (a)対象に、基質中の同位体の相対的同位体存在量が公知である基質を投与する段階;
    (b)一つまたは複数の標的代謝物を形成するために、標識された基質を対象によって少なくとも一部代謝させる段階;および
    (c)各標的分析物のフラックス値を求めるために、対象に由来する試料中の、基質および/または一つもしくは複数の標的代謝物を含む複数の標的分析物における同位体の存在量を測定する段階。
  20. 測定する段階が、フラックス値の測定前に試料中のその他の生物学的成分から標的分析物を少なくとも一部分離する段階を含む、請求項19記載の方法。
  21. 分離する段階が一連の複数のキャピラリー電気泳動法を実施する段階を含む、請求項20記載の方法。
  22. 複数のキャピラリー電気泳動法がキャピラリーゾーン電気泳動法、キャピラリー等電点電気泳動法、およびキャピラリーゲル電気泳動法からなる群より選択される、請求項21記載の方法。
  23. 複数のキャピラリー電気泳動法がキャピラリーゾーン電気泳動法およびキャピラリー等電点電気泳動法からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
  24. キャピラリー電気泳動法を実施する段階が複数のキャピラリーゾーン電気泳動法を実施する段階を含む、請求項23記載の方法。
  25. キャピラリー電気泳動法を実施する段階が、代謝物の少なくとも1つのクラスにおいて別々の画分を産生し、代謝物のクラスがタンパク質、多糖、炭水化物、核酸、アミノ酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、脂肪、脂肪酸、および有機酸からなる群より選択される、請求項24記載の方法。
  26. 分離する段階が、複数の電気泳動法の実施前に生物学的成分の少なくともいくつかを沈殿させるために電気泳動以外の分離技術を実施する段階を含む、請求項21記載の方法。
  27. 試料が血液、尿、脳脊髄液、髄液、汗、および胃腸液からなる群より選択される体液から得られる、請求項19記載の方法。
  28. 試料が細胞、組織試料、または糞便材料である、請求項19記載の方法。
  29. 測定する段階が、所定の異なる時点に対象から多数の試料を得る段階、標的分析物を各試料中のその他の生物学的成分から分離する段階、および各試料に含まれる標的分析物中の同位体の存在量を測定する段階を含み、それによって各標的分析物中の同位体の存在量に関して複数の数値が得られ、各標的分析物のフラックス値がそれについて測定した複数の存在量の値から求められる、請求項19記載の方法。
  30. 標的分析物がタンパク質、炭水化物、核酸、アミノ酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、脂肪酸、有機酸、および脂肪からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
  31. 標的分析物が糖タンパク質である、請求項30記載の方法。
  32. 複数の標的分析物が基質および少なくとも1つの標的代謝物を含む、請求項19記載の方法。
  33. 複数の標的分析物が少なくとも3つの標的代謝物である、請求項19記載の方法。
  34. 複数の標的分析物が少なくとも5つの標的代謝物である、請求項33記載の方法。
  35. 同位体の存在量の測定が質量分析法、赤外分光光度法、または核磁気共鳴分析法により実施される、請求項19記載の方法。
  36. 同位体の存在量の測定が質量分析法により実施される、請求項35記載の方法。
  37. 測定する段階が、多数のキャピラリー電気泳動法を実施する段階を含み、複数の電気泳動法はキャピラリーゾーン電気泳動法、キャピラリー等電点電気泳動法およびキャピラリーゲル電気泳動法からなる群より選択され、その後に質量分析法が続く、請求項19記載の方法。
  38. 代謝経路を分析するための方法であって、以下の段階を含む方法:
    (a)対象から得られた試料に含まれる生物学的成分から複数の標的分析物を少なくとも一部分離する段階であって、標的分析物が、基質および/または対象による基質の代謝から生じる一つもしくは複数の標的代謝物を含み、かつ基質中の同位体の相対的同位体存在量が公知である、段階;および
    (b)各標的分析物のフラックス値を求めるために、試料中の複数の標的分析物の同位体の存在量を測定する段階。
  39. 分離する段階が、キャピラリーゾーン電気泳動法、キャピラリー等電点電気泳動法、およびキャピラリーゲル電気泳動法からなる群より選択される複数のキャピラリー電気泳動法を連続して実施する段階を含む、請求項38記載の方法。
  40. 同位体の存在量の測定が質量分析法により実施される、請求項39記載の方法。
  41. 疾患または細胞の状態に相関する代謝物をスクリーニングするための方法であって、以下の段階を含む方法:
    (a)疾患を持つ試験対象および対照対象に、基質中の同位体の相対的同位体存在量が公知である基質を投与する段階;
    (b)一つまたは複数の標的代謝物を形成するために、標識した基質を試験対象および対照対象によって少なくとも一部代謝させる段階であって、投与および代謝段階を実施する条件が、試験および対照の対象において同一である、段階;および
    (c)試験および対照の対象から試料を得る段階;
    (d)各標的分析物のフラックス値を求めるために、基質および/または一つもしくは複数の標的代謝物を含む複数の標的分析物中の同位体の相対存在量を各試料について測定する段階;および
    (e)試験対象と対照対象のフラックス値を比較する段階であって、試験対象における標的分析物のフラックス値と対照対象における対応するフラックス値の差が、このような分析物が疾患と潜在的に相関することを示す、段階。
  42. 測定する段階が、フラックス値の測定前に試料中のその他の生物学的成分から標的分析物を少なくとも一部分離する段階を含み、分離する段階は、試験および対照の対象由来の試料を用いて複数のキャピラリー電気泳動法を連続して別々に実施する段階を含む、請求項41記載の方法。
  43. 同位体の存在量の測定が質量分析法によって実施される、請求項42記載の方法。
  44. 疾患が癌、自閉、微生物感染、および消化障害(digestive disorder)からなる群より選択される、請求項41記載の方法。
  45. 疾患に相関する代謝物をスクリーニングするための方法であって、以下の段階を含む方法:
    (a)疾患を持つ試験対象由来の試料を分析する段階であって、試料が、試験対象に投与される基質および/または試験対象による基質の代謝から生じる一つもしくは複数の標的代謝物を含み、基質中の同位体の相対的同位体存在量は投与の時点で公知であり、かつ分析する段階が、各分析物のフラックス値を求めるために試料中の複数の分析物の同位体の同位体存在量を測定する段階を含み、複数の分析物は基質および/または一つもしくは複数の標的代謝物を含む、段階;および
    (b)分析物のフラックス値を対照対象について得られた同一分析物のフラックス値と比較する段階であって、分析物におけるフラックス値の差がこのような分析物が疾患と相関することを示す、段階。
  46. 疾患の存在をスクリーニングするための方法であって、以下の段階を含む方法:
    (a)試験対象に、基質中の同位体の相対存在量が公知である基質を投与する段階;
    (b)疾患と相関することが公知である一つまたは複数の標的代謝物を形成するために、標識された基質が試験対象によって少なくとも一部代謝されるための十分な時間を与える段階;
    (c)試験対象から得られる試料中のその他の生物学的成分から、基質および/または一つもしくは複数の標的代謝物を含む複数の標的分析物を少なくとも一部分離するために複数の電気泳動法を連続して実施する段階;
    (d)各標的分析物のフラックス値がその分析物中の同位体の存在量から求められる、標的分析物のフラックス値を求める段階;および
    (e)試験対象の疾患のリスクを評価するために、求めたフラックス値を同一標的分析物に関する対応する参照フラックス値と比較する段階。
  47. 以下である、請求項46記載の方法:
    (i)参照フラックス値が疾患の存在および/または疾患に対する感受性を示す場合は、参照値と試験値の統計学的有意差が、試験対象が疾患を持たないおよび/または疾患の罹患に対して感受性でないことを示す;および
    (ii)参照フラックス値が疾患の不在および/または疾患に対する感受性がないことを示す場合は、参照値と試験値の統計学的有意差が、試験対象が疾患を持つまたは疾患の罹患に対して感受性であることを示す。
  48. 複数の電気泳動法がキャピラリーゲル電気泳動法、キャピラリーゾーン電気泳動法、およびキャピラリーゲル電気泳動法からなる群より選択される、請求項47記載の方法。
  49. 疾患の存在をスクリーニングするための方法であって、以下の段階を含む方法:
    (a)試験対象由来の試料を分析する段階であって、試料が、基質および/または試験対象による基質の代謝から生じる一つもしくは複数の標的代謝物を含み、基質中の同位体の相対的同位体存在量は投与の時点で公知であり、かつ分析する段階が、各分析物のフラックス値を求めるために試料中の複数の分析物の同位体存在量を測定する段階を含み、複数の分析物は基質および/または一つもしくは複数の標的代謝物を含む、段階;および
    (b)各標的分析物について、求めたフラックス値を分析物におけるフラックス値の範囲と比較する段階であって、範囲は疾患と相関することが公知であり、ある1つの標的分析物における求めたフラックス値が標的分析物における範囲内に収まる場合は、それが試験対象が疾患を持つまたは疾患に対して感受性であることを示す、段階。
  50. 初期試料中の代謝物を分析するための方法であって、以下の段階を含む方法:
    (a)複数のキャピラリー電気泳動法を連続して実施する段階であって、各方法は多数の代謝物を含む試料を電気分解する段階を含み、それによって分解された複数の代謝物が得られ、以下である、段階
    (i)電気泳動される試料は、試料が初期試料である一連の最初の方法を除いて、連続する直前の方法から得られる複数の分解された代謝物のサブセットのみを含み、初期試料中の代謝物は潜在的に一つまたは複数の標的分析物を含む;
    (ii)キャピラリー電気泳動法はキャピラリー等電点電気泳動法、キャピラリーゾーン電気泳動法およびキャピラリーゲル電気泳動法からなる群より選択される;および
    (b)標的分析物の存在を検出するために、最終の電気泳動法から得られる分解された代謝物を含む画分を分析する段階。
  51. 一つまたは複数の標的分析物を2H同位体標識で標識し、分析する段階が、存在する各標的分析物の標識の存在量を検出する段階を含む、請求項50記載の方法。
  52. 分析する段階が質量分析、赤外分光光度法、または核磁気共鳴分析法によって実施される、請求項51記載の方法。
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