JP2008518586A - オールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ及びその使用方法 - Google Patents

オールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ及びその使用方法 Download PDF

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Abstract

【解決手段】 オールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチナールサチュラーゼの組成物、及びそれらの使用方法が提供される。
【選択図】 図23

Description

政府援助の記述
本発明は、国立衛生研究所により授与された助成金Nos.R03 EY015399−01、EY08061、及びEY08123による政府支援の下行われたものである。前記政府は、本発明において特定の権利を有している。
関連出願の相互参照
本出願は、2004年9月9日付で出願された米国特許出願第60/609,038号に対して優先権を主張するものであり、その全開示はこの参照により本明細書に組み込まれるものである。
技術分野
本発明は、オールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼの組成物、酵素産物、及びそれらの使用方法に関するものである。
レチノイドは、例えば脊椎動物の発達、免疫、細胞分化、及び視覚等の多くの重要な生物学的機能に必須である。オールトランスレチノールの天然誘導体及びそれらの合成類似体の両者を含むレチノイドは、幾つかの活性化合物を通じてそれらの機能を発揮する。レシチン−レチノールアシルトランスフェラーゼ(lecithin−retinol acyltransferase:LRAT)によるレチノールのエステル化により、レチニルエステルが誘導され、このエステルはビタミンAの主要な貯蔵形態であり、更に視サイクルの中間体に相当するものである。Ruiz,et al.J Biol Chem 274:3834〜3841,1999、Batten,et al.J Biol Chem 279:10422〜10432,2004、Imanishi,et al.J Cell Biol 164:373〜383,2004。網膜色素上皮(retinal pigment epithelium:RPE)において、オールトランスレチノールは、ある特定化されていない酵素により、直接又はエステル中間体を通じて異性化されて11−シス−レチノールが生成し、このシス体は、視覚発色団である11−シス−レチナールに酸化される。Kuksa,et al.Vision Res 43:2959〜2981,2003。レチナールへの可逆的酸化は、ミクロソームの短鎖アルコールデヒドロゲナーゼファミリー(short−chain alcohol dehydrogenase family:SCAD)であるいくつかのメンバーにより、及び場合によってはクラスI、II、及びIVの中鎖アルコールデヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenases:ADH)により行われる。Chou,et al.J Biol Chem 277:25209〜25216,2002、Duester,et al.Chem Biol Interact 143〜144,201〜210,2003。レチナールデヒドロゲナーゼ(retinal dehydrogenase:RALDH)タイプ1、2、3、及び4によるレチナールの酸化によりレチノイン酸(retinoic acid:RA)が生成し、このレチノイン酸は核内受容体を介して発達及び細胞分化を制御している。Bhat,et al.Gene 166:303〜306,1995、Penzes,et al.Gene 191:167〜172,1997、Wang,et al.J Biol Chem 271:16288〜16293,1996、Zhao,et al.Eur J Biochem 240:15〜22,1996、Mic,et al.Mech Dev 97:227〜230,2000、Lin,et al.J Biol Chem 278:9856〜9861,2003、Chambon,Faseb J 10:940〜954,1996。RA−誘導性シトクロムP450酵素CYP26A1及びB1により、RAが極性4−ヒドロキシ−RA、4−オキソ−RA、及び18−ヒドロキシ−RAに異化される。Abu−Abed,et al.J Biol Chem 273:2409〜2415,1998、Fujii,et al.Embo J 16:4163〜4173,1997、White,et al.J Biol Chem 271:29922〜29927,1996、White,et al.Proc Natl Acad Sci USA 97:6403〜6408,2000。RA同化酵素及び異化酵素が明確に局在化することが胚パターン形成に必須である。他の経路により、14−ヒドロキシ−4,14−レトロ−レチノール(14−hydroxy−4,14−retro−retinol:14−HRR)、及び無水レチノール(Anhydroretinol:AR)等のレトロ−レチノイドが生成し、それらの拮抗作用が細胞増殖を制御している。Buck,et al.Science 254:1654〜1656,1991、Buck,et al.J Exp Med 178:675〜680,1993。生物学的システムにおけるレチノイドの低い値や不安定な性質、及び解明されていないそれらの生体内変化の機構を考慮すると、本技術分野において、レチノイド代謝に関与する多く酵素を同定する必要がある。
本発明は、一般にオールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼの組成物及びそれらの使用方法に関する。ヒト、マウス、又はサルのオールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼの連続的配列、又は機能的に活性なそれらの断片含む単離ポリペプチドが提供される。更なる観点において、前記単離ポリペプチドは、前記ヒトオールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ(GenBank アクセッション番号 gi46329587)の連続的配列を含む。前記ヒト、マウス、又はサルのオールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ、又は機能的に活性なそれらの断片の連続的配列を含む単離ポリヌクレオチドが提供される。
哺乳類の対象において疾病状態を治療する方法は、前記哺乳類の対象において、オールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼの活性を活性化する化合物を前記哺乳類対象に投与する工程を有する。哺乳類の対象において疾病状態を治療する方法は、オールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼの活性を前記哺乳類の対象において阻害する化合物を前記哺乳類の対象に投与する工程を有する。更なる観点において、哺乳類の対象において疾病状態を治療する方法は、オールトランス13,14−ジヒドロレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸、及び/若しくはオールトランス13,14−ジヒドロレチノイド誘導体、及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物を投与する工程を含む。前記疾病状態は、これに限定されないが、網膜疾患、失明、自己免疫疾患、癌、腫瘍性疾患、若しくは皮膚疾患又は状態を含む。
オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノールを生成する方法は、65〜68℃の4〜6XのSSCを含む水溶液中、又は42℃で50%ホルムアルデヒド中のハイブリダイゼーションを含む厳密な条件の下において、ヒトRetSat(GenBank アクセッション番号 gi46329587)、マウスRetSat(GenBank アクセッション番号 AY704159)、又はサル(マカク)RetSat(GenBank アクセッション番号 AY707524)、若しくは機能的に活性なそれらの断片をコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズする異種の核酸を宿主細胞において発現させる工程を有し、この方法が提供される。一観点において、前記宿主細胞は、哺乳類の宿主細胞である。
前記ヒト、マウス、又はサルのオールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ、又は機能的に活性なそれらの断片の連続的配列を含む単離ポリペプチドが提供される。更なる観点において、前記単離ポリペプチドは、前記ヒトのオールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ(GenBank アクセッション番号 gi46329587)を含む。
前記ヒト、マウス、又はサルのオールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ、又は機能的に活性なそれらの断片の連続的配列を含む単離ポリヌクレオチドが提供される。
発現コンストラクトが提供される。詳細な観点において、前記転写プロモーターは、異種プロモーターである。培養された原核細胞又は真核細胞が提供され、この細胞は、前記発現コンストラクトにより形質転換又は形質移される。更なる観点において、前記原核細胞又は真核細胞は哺乳類細胞である。
操作可能であるように連結された以下の要素、すなわち転写プロモーター、RETSATポリヌクレオドであって、4〜6XSSCを含む65〜68℃の水溶液中、又は42℃の50%ホルムアルデヒド中におけるハイブリダイゼーションを含む厳密な条件下、ヒトRetSat(GenBank アクセッション番号 gi46329587)、マウスRetSat(GenBank アクセッション番号 AY704159)、及びサル(マカク)RetSat(GenBank アクセッション番号 AY707524)をコードするポリヌクレオチド、若しくは前記ポリヌクレオチドの全長の相補体とハイブリダイズするRETSATポリヌクレオチドであって、前記Retsatポリペプチドは前記ヒト、マウス、又はサルのポリペプチド、若しくは機能的に活性なそれらの断片の連続的アミノ酸配列を有するRETSATポリヌクレオチド、及び転写ターミネーターを含む前記発現コンストラクトを含むベクターが提供される。更なる観点において、単離宿主細胞は前記ベクターを含む。Retsatポリヌクレオチドを生成させる方法が提供され、この方法は、前記ベクターを形質転換又は形質移入した細胞を増殖させる工程と、前記細胞から前記Retsatポリペプチドを単離する工程とを有する。詳細な観点において、前記細胞は、細菌細胞又は哺乳類細胞である。
ヒトRetsatポリペプチドに結合する抗体が提供される。更なる観点において、前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、重鎖抗体、F(ab’)2、F(ab’)、又はFv断片である。
真核生物のRetsatポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法は、Retsatポリペプチドを発現する第一の細胞に候補化合物を投与する工程と、前記第一細胞により前記候補化合物が生理学的変化引き起こすか否かを測定する工程とを有するものである。
オールトランス13,14−ジヒドロレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸、及び/若しくはオールトランス13,14−ジヒドロレチノイド誘導体、及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物が提供される。前記薬学的組成物は、例えば、局所的投与、経口投与、静脈内投与、眼内注射、又は眼窩周囲注射のために調製されることが可能である。更なる観点において、前記薬学的組成物は、前記オールトランス13,14−ジヒドロレチノイド誘導体であっても良く、レチニルエステルであっても良い。
哺乳類対象における網膜疾患又は失明を治療する方法が提供され、この方法は、前記哺乳類対象に対して、オールトランス13,14−ジヒドロレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸、及び/若しくはオールトランス13,14−ジヒドロレチノイド誘導体、及び許容可能な担体を含む薬学的組成物を投与する工程を有する。
哺乳類対象における網膜疾患又は失明を治療する方法が提供され、この方法は、前記哺乳類対象に対して、オールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ活性を活性化する化合物を投与する工程を有する。
哺乳類対象における自己免疫疾患を治療する方法が提供され、この方法は、前記哺乳類対象に対して、オールトランス13,14−ジヒドロレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸、及び/若しくはオールトランス13,14−ジヒドロレチノイド誘導体、及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物を投与する工程を有する。
哺乳類対象における自己免疫疾患を治療する方法が提供され、この方法は、前記哺乳類対象に対して、オールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ活性を活性化する化合物を投与する工程を有する。
哺乳類対象における皮膚疾患又は状態を治療する方法が提供され、この方法は、前記哺乳類対象に対して、オールトランス13,14−ジヒドロレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸、及び/若しくはオールトランス13,14−ジヒドロレチノイド誘導体、及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物を投与する工程を有する。
哺乳類対象における皮膚疾患又は状態を治療する方法が提供され、この方法は、前記哺乳類対象に対して、オールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ活性を活性化する化合物を前記哺乳類対象に投与する工程を有する。
哺乳類対象における腫瘍性疾患状態を治療する方法が提供され、この方法は、オールトランスレチノール:オールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼの活性を腫瘍細胞において阻害する化合物を前記哺乳類対象に投与する工程を有する。
レチノイドは、脊椎動物の発達及び視力において重要な役割を担っている。多くのレチノイド処理酵素は、分子レベルでは依然として同定されていない。脊椎動物におけるレチノイド生化学の知識を広げるために、本発明者らは、化合物の関連群であるカロチノイドの植物代謝に関与する酵素について研究した。本発明者らは、プロリコピンをオールトランスリコピンに異性化する、最近記述された植物カロチノイドイソメラーゼ(異性化酵素)であるCRTISOと著しい類似性及び推定上のフィトエン脱水素酵素ドメインを共有する脊椎動物酵素のファミリーを同定した。異種発現したマウス及び植物の酵素を比較することによって、植物CRTISOとは異なり、CRTISO関連マウス酵素はプロリコピンに関しては不活性であることが示唆された。代わりに、前記CRTISO関連マウス酵素は、オールトランスレチノールの13位と14位の二重結合を飽和させることによりオールトランス13,14−ジヒドロレチノールを産生するレチノールサチュラーゼ(saturase)である。マウスレチノールサチュラーゼ(RetSat)の生成物は、親化合物であるオールトランスレチノール(λmax=325nm)と比較してUV吸収の最大値がシフトしており(λmax=290nm)、更にそのMS解析(m/z=288)は二重結合の飽和を示唆していた。この生成物はさらに、合成標準の特性と一致しておりオールトランス13,14−ジヒドロレチノールとして同定された。マウスRetSatは、多くの組織(肝臓、腎臓及び腸で最大レベル)に関連し発現している膜である。オールトランス13,14−ジヒドロレチノールはまた、正常餌で維持された動物のいくつかの組織で検出された。従って、RetSatによりオールトランスレチノールをオールトランス13,14−ジヒドロレチノールに飽和することによって、未知の生物学的機能を有する新しい代謝産物が生成する。
ビタミンAの代謝は高度に制御された工程であり、脊椎動物の発達、細胞分化、免疫、及び視覚に関与する重要な介在物質を生成する。レチノールサチュラーゼは、オールトランスレチノールをオールトランス13,14−ジヒドロレチノールに変換する。本発明により、レチノールからレチノイン酸への酸化、さらに酸化レチノイン酸代謝産物への酸化に関与する前記酵素がオールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸の合成及び酸化にも関与するということを実証するものである。オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸は、レポーター細胞アッセイにおいてレチノイン酸受容体/レチノイドX受容体へテロダイマーを活性化することができるが、レチノイドXホモダイマーは活性化できない。オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸は、in vivoにおいてレチニルパルミチン酸を補充されたLrat−/−マウスで検出された。従って、オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸は、天然由来レチノイドであり、核受容体の潜在的なリガンドである。この新規代謝産物はまた、レチノール分解経路における中間体であるか、若しくは生理活性13,14−ジヒドロレチノイド代謝産物の合成前駆体である可能性がある。
本発明は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、或いは生物システムに限定されるものではなく、当然の事ながら、変更可能であることが理解される。さらに、本明細書で用いられる専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではないこともまた理解される。本明細書及び添付された請求項において用いられる単数形の「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかに別の意味を示さない限り、複数形も含むものである。従って、例えば「細胞(a cell)」の言及は、2若しくはそれ以上の組み合わせ、及びそれと同等のものを含む。
量、時間的な期間、及びそれらと同等なものなどの測定可能な値を言及する際に本明細書で用いられる「約」という用語は、特定の値から±20%或いは±10%、より好ましくは±5%、さらに好ましくは±1%、さらに一層好ましくは±0.1%の変動を含むことを意味しており、そのような変動は開示された方法を実行するのには適したものである。
別の意味を定義しない限り、本明細書で用いられた全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同様の意味を有する。本明細書で記載されたものと類似或いは同等のあらゆる方法及び物質は本発明の試験を実施するときに使用されることが可能であるが、好ましい物質及び方法は本明細書に記載されている。本発明を記載及び主張する場合、以下の専門用語が使用される。
「RetSat遺伝子座」及び「RETSAT遺伝子」という用語は、配列と転写及び/若しくは翻訳を調節している調節性要素とを介在しているコード配列を意味している。「RETSAT遺伝子座」及び「RETSAT遺伝子」という用語は、全てのRETSATの対立遺伝子変異を含む。例示的な実施形態において、前記RETSAT遺伝子は、GenBank アクセッション番号 gi46329587(ヒトRetSat)、GenBank アクセッション番号 AY704159(マウスRetSat)、及びGenBank アクセッション番号 AY707524(サル(マカク)RetSat)であり、それらの開示はこの参照によって本明細書に組み込まれる。
「RETSAT核酸」という用語は、mRNAs、DNAs、cDNAs、ゲノムDNA、さらにはアンチセンス核酸、断片をコードするポリヌクレオチド、それらの誘導体や類似体を含むRetSatポリペプチドをコードしている遺伝子座である、前記RetSat遺伝子座からのポリヌクレオチドを意味している。有用な断片及び誘導体は、同じアミノ酸を選択する全ての可能なコドン、及び保存的アミノ酸置換基に基づいて選択するコドンに基づいた断片及び誘導体を含む。有用な誘導体はさらに、ヒトRetSat(GenBankアクセッション番号gi46329587)、マウスRetSat(GenBankアクセッション番号AY704159)、及びサル(マカク)RetSat(GenBankアクセッション番号AY707524)の前記RETSAT核酸と少なくとも50%或いは少なくとも70%のポリヌクレオチド配列同一性を有する、一般的には80%、より一般的には90%以上の配列同一性を有する誘導体を含む。
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、リン酸ジエステル結合を介して結合している多数のヌクレオチドユニット(リボヌクレオチド或いはデオキシリボヌクレオチド、若しくは関連する構造変異体)から成るポリマーに言及する。ポリヌクレオチド或いは核酸は、実質的なあらゆる長さであっても良く、一般的には約6ヌクレオチドから約109ヌクレオチド或いはそれ以上の長さである。ポリヌクレオチド及び核酸は、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成形態、及び混合ポリマー(センス及びアンチセンス鎖の両方)を含み、当業者には明らかなように、化学的或いは生化学的に修飾され得る若しくは非天然或いは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むことができる。そのような修飾は例えば、標識、メチル化、1若しくはそれ以上の天然由来ヌクレオチドの類似体での置換、無電荷結合(例えばメチルホスホン酸、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバミン酸及びそれらと同等のもの)などのインターヌクレオチド修飾、電荷結合(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート及びそれらと同等のもの)、懸垂(pendent)部位(例えばポリペプチド)、干渉物質(例えばアクリジン、ソラレン及びそれらと同等のもの)、キレート剤、アルキル化剤、及び修飾結合(例えばアルファアノマー核酸及びそれと同等なもの)を含む。さらに、水素結合及び他の化学的相互作用を介して指定された配列と結合する能力という点でポリヌクレオチドの擬態である合成分子も含まれる。そのような分子は、当業者には既知であり、例えばペプチド結合が前記分子のバックボーンにおけるリン酸結合と置換されている分子を含む。
「オリゴヌクレオチド」という用語は、約6〜約100ヌクレオチド或いはそれ以上の長さのポリヌクレオチドに言及する。従って、オリゴヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのサブセットである。オリゴヌクレオチドは、自動化オリゴヌクレオチド合成機(例えば、Applied BioSystems(カリフォルニア州Foster City)により製造されている合成機)において製造業者によって提供された仕様書に従って合成することが可能である。
本明細書で用いられる「プライマー」という用語はポリヌクレオチドに言及しており、一般的にはヌクレオチドであり、酵素消化によって見られるような天然由来であるか、或いは合成的に生成されるものであり、プライマー伸長生成物が合成される条件下で使用された際にポリヌクレオチド合成の開始点として作用する。プライマーは一本鎖或いは二本鎖である。
「Retsatポリペプチド」は、RETSAT遺伝子、及びそれらの断片、誘導体或いは類似体によってコードされたポリペプチドに言及する。「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸及びその同等物のポリマーに言及しており、特定の長さの前記生成物に言及している訳ではなく、つまりペプチド、オリゴヌクレオチド、及びタンパク質がポリペプチドの定義の範囲内に含まれる。「断片」とは、一般的にRetsatポリペプチドの少なくとも10近接アミノ酸、より一般的には少なくとも20、さらに一般的には少なくとも50近接アミノ酸を有するポリペプチドの一部を意味している。誘導体は、別の配列と比較した場合、保存的アミノ酸置換基を有するポリペプチドである。誘導体はさらに例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化及びそれらと同等のものを含む。「ポリペプチド」の類似体は、例えば1若しくはそれ以上のアミノ酸の類似体(例えば非天然アミノ酸及びそれと同等なもの)を含むポリペプチド、置換結合や当業者には既知の他の修飾を有するポリペプチド(天然及び非天然由来の両方)である。通常、そのようなポリペプチドは天然Retsatアミノ酸配列に対して少なくとも約50%同一であり、一般的には約90%以上、より一般的には少なくとも約95%同一である。
本明細書において用いられる「アミノ酸」或いは「アミノ酸残基」という用語は、以下にさらに記載したような天然由来のLアミノ酸或いはDアミノ酸に言及する。アミノ酸に対して一般的に使用される1及び3文字略記が本明細書において使用される(例えばAlberts et al.,Molecular Biology of the Cell,3d ed.,Garland Publishing,Inc.,New York,1994を参照)。
「異種性」という用語は、別の核酸或いはポリペプチドと比較して、異なる源(例えば組織、器官或いは種)からの核酸或いはポリペプチドに言及する。
「単離された」という用語は、その天然細胞環境から除去された核酸或いはポリペプチドに言及する。単離された核酸は一般的に、他の細胞性核酸、ポリペプチド及び他の構成物から少なくとも部分的に精製されている。
「機能的に活性な」Retsatポリペプチドという用語は、完全長(野生型)Retsatポリペプチド(例えばオールトランスレチノールをオールトランス(13,14)−ジヒドロレチノールへ変換する)、抗原性(抗Retsat抗体に結合する)、免疫原性、及びそれらと同等なものに関連した1若しくはそれ以上の既知の機能的活性を示すそれらの断片、誘導体及び類似体に言及する。機能的に活性な分子は、Retsatポリペプチド、それらの断片、誘導体及び類似体、Retsatポリペプチドをコードした核酸、それらの断片及び誘導体、及び抗Retsat抗体を含む。
「治療上有効な」という用語は、細胞増殖、レチノイド代謝、皮膚及び/若しくは免疫機能、及び対象(患者或いは哺乳類など)における制御を修飾するのに十分な量の分子(例えば、RetSatポリペプチド、抗RetSat抗体、RETSAT核酸、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸、及び13,14−ジヒドロレチノイド誘導体)に言及する。
2若しくはそれ以上の核酸或いはポリペプチド配列の構成において「同一」或いは「パーセント同一」という用語は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて或いは視覚的検査によって測定されたように、最大一致を比較しアライメントさせた場合、同一である、若しくはヌクレオチド或いはアミノ酸残基の特異的なパーセンテージを有する2若しくはそれ以上の配列或いはサブシーケンスに言及する。
2つの核酸或いはポリペプチドの構成において「実質的に同一」という用語は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて或いは視覚的検査によって測定されたように、比較し最大一致でアライメントさせた場合、少なくとも60%、一般的には80%、最も一般的には90〜95%のヌクレオチド或いはアミノ酸残基の同一を有する2若しくはそれ以上の配列或いは配列群を意味している。2つのポリペプチド配列が「実質的に同一」であるという指標は、第一のポリペプチドが第二のポリペプチドに対する抗体と免疫学的に反応性であるということである。
2つの核酸或いはポリペプチド配列の構成において「類似度」或いは「パーセント類似度」は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて或いは視覚的検査によって測定されたように、比較し最大一致でアライメントさせた場合、同一若しくはアミノ酸残基或いはその保存的置換基の特定のパーセンテージを有する2若しくはそれ以上の配列或いは配列群を意味している。実施例を介して、前記第一の配列に含まれている数と同数のアミノ酸を比較した、若しくは以下に説明されたように本分野では既知であるコンピュータ類似度プログラムによってアライメントされた配列のアラインメントを比較した時、第一のアミノ酸配列が第二のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、90%或いは95%同一、若しくは保存的置換されている場合、前記第一のアミノ酸配列は、前記第二のアミノ酸配列を類似であると考えられる。
ポリペプチド配列の構成において「実質的に類似」という用語は、前記ポリペプチドが参照配列に対して少なくとも70%の配列同一性、若しくは好ましくは80%、より好ましくは参照配列に対して85%の配列同一性、最も好ましくは約10〜20アミノ酸残基の比較ウィンドに対して90%の同一性を有する配列を有することを意味している。アミノ酸配列の構成において「実質的に類似」とはさらに、アミノ断の保存的置換を含む。従って、例えば2つのペプチドが1若しくはそれ以上の保護性置換が異なる場合、ポリペプチドは第二のポリペプチドと実質的に類似である。
ポリペプチドについて言及する場合「保存的置換」という用語は、前記ポリペプチドの活性を実質的に変換しない前記ポリペプチドのアミノ酸組成における変化を意味している。従って、特定のアミノ酸配列の「保存的置換」は、ポリペプチド活性に重要でないアミノ酸の置換、若しくは同様の特性(例えば、酸性、塩基性、正電荷或いは負電荷、極性或いは非極性等)を有する他のアミノ酸とのアミノ酸の置換を意味しており、重要なアミノ酸の置換でさえ実質的に活性を変換しない。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当業者にはよく知られている。例えば、以下の6グループはそれぞれ、互いの保存的置換であるアミノ酸を含む。1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)メチオニン(M)、バリン(V);及び6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)(Creighton,Proteins,W.H.Freeman and Company,1984も参照のこと)。さらに、1アミノ酸或いはコード配列における少数のアミノ酸を変換、付加或いは欠損する個々の置換、欠損或いは付加もまた「保存的置換」である。
配列比較のために、一般的に1配列は参照配列として働き、テスト配列とそれを比較する。配列比較アルゴリズムを使用した場合、テスト及び参照配列をコンピュータに入力し、もし必要であればその次のコーディネートを指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に前記配列比較アルゴリズムによって、指定されたプログラムパラメータに基づいて、前記参照配列に相対的なテスト配列(群)に対するパーセント配列同一性を計算した。
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith及びWaterman(Adv.Appl.Math.2:482,1981:これはこの参照により本明細書に組み込まれる)の局所的相同アルゴリズムによって、Needleman及びWunsch(J.Mol.Biol.48:443−53,1970:これはこの参照により本明細書に組み込まれる)の相同アライメントアルゴリズムによって、Pearson及びLipman(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444−48,1988:これはこの参照により本明細書に組み込まれる)の類似性方法の研究によって、これらアルゴリズムのコンピュータ化実行(例えば、GAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,ウィスコンシン州)、或いは視覚的検査(一般 Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,4thed.,John Wiley and Sons,New York,1999を参照)によって実行され得る。
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、進行性ペアワイズアライメントを用いて関連配列のグループからマルチプル配列アライメントを作成し、パーセント配列同一性を示す。これは、前記アライメントを作成するために使用されたクラスタ化関係を示す系図或いは樹状図もプロットする。PILEUPは、Feng及びDoolittle(J.Mol.Evol.25:351−60,1987:これはこの参照により本明細書に組み込まれる)の進行性アライメント方法の単純化型を使用する。使用された方法は、Higgins及びSharp(Comput.Appl.Biosci.5:151−53,1989:これはこの参照によって本明細書に組み込まれる)によって記載された方法と類似している。前記プログラムは、300配列までアライメントすることができ、それぞれの最長は5,000ヌクレオチド或いはアミノ酸である。前記マルチプルアライメント手順は、2つのアライメント配列のクラスタを生成する2つの最も類似した配列のペアワイズアライメントから始める。このクラスタは次に、次の最も関連した配列或いはアライメント配列のクラスタとアライメントされる。2つの配列のクラスタは、前記2つの個別配列のペアワイズアライメントの単純伸長によってアライメントされる。最終的なアライメントは、一連の進行性ペアワイズアライメントによって達成される。プログラムは、配列比較の領域に対する特異的な配列及びそのアミノ酸或いはヌクレオチドコーディネートを指定し、及び前記プログラムパラメータを指定することによって作動される。例えば、参照配列は他のテスト配列を比較され、以下のパラメータ:初期値gap重量(3.00)、初期値gap長重量(0.10)、及び加重エンドgapsを用いて、パーセント配列同一性関係を決定する。
パーセント配列同一性及び配列類似度を決定するのに適しているアルゴリズムの別の例はBLASRアルゴリズムであり、これはAltschulら(J.Mol.Biol.215:403−410,1990:これはこの参照により本明細書に組み込まれる)によって記載された。(Zhang et al.,Nucleic Acid Res.26:3986−90,1998;Altschul et al.,Nucleic Acid Res.25:3389−402,1997も参照のこと:これらはこの参照によって本明細書に組み込まれる)BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公然と利用可能である。このアルゴリズムは、クエリー配列における長さWの短ワードを同定することによる第一識別ハイスコアリング配列ペア(HSPs)に関連しており、これは、データベース配列において同じ長さのワードでアライメントした場合、いくつかのポジティブ値閾値スコアTとマッチする或いは満たすものである。Tは、近傍ワードスコア閾値として言及される(Altschul et al.1990,supra)。これら初期近傍ワードヒットは、それらを含むより長いHSPsを検索するための開始探索に対するシーズとして働く。前記ワードヒットは次に、累積アライメントスコアが増加できる範囲まで各配列に沿って両方向に延長される。各方向への前記ワードヒットの延長は、前記累積アライメントスコアが量Xでその最大達成値から低下した場合;1若しくはそれ以上のネガティブ−スコアリング残基アライメントの蓄積によって前記累積スコアがゼロ若しくはそれ以下に下がった場合;或いはどちらかの配列の末端に到達した場合、停止される。BLASTアルゴリズムパラメータであるW、T及びXは、アライメントの感度及び速度を決定する。BLASTプログラムは初期設定として、11のワード長(W)、50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−9,1992を参照のこと:これはこの参照によって本明細書に組み込まれる)アライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、及び両鎖の比較を用いる。
パーセント配列同一性を計算するのに加えて、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似度の統計学的解析も行う(例えば、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−77,1993を参照のこと:これはこの参照によって本明細書に組み込まれる)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似度の1基準は最小和確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド或いはアミノ酸配列間の適合が偶然起こる確率の指標を提供する。例えば、参照核酸とのテスト核酸の比較における前記最小和確率が約0.1以下、より一般的には約0.01以下、最も一般的には約0.001以下である場合、前記核酸は前記参照配列に類似すると考えられる。
2つの核酸配列或いはポリペプチドが実質的に同一であるという更なる指標は、以下に示したように、第一の核酸にコードされたポリペプチドが第二の核酸にコードされたポリペプチドと免疫学的に交差反応性であるということである。従って、ポリペプチドは一般的に、例えば2つのペプチドの保存的置換のみが異なる場合、第二のポリペプチドと実質的に同一である。
「免疫学的に交差反応性」という用語は、ポリペプチド、断片、誘導体或いは類似体が抗体のその抗原への結合を競合的に阻害することが出来ることを意味している。
「形質転換」或いは「形質移入」という用語は、ポリヌクレオチドの導入によってレシピエント細胞或いは微生物の遺伝子型を安定に変化させる過程を意味している。これは、前記レシピエント細胞或いは生物の表現型における変化によって検出される。「形質転換」という用語は一般的に微生物に適用され、一方「形質移入」は多細胞生物に由来する細胞におけるこの過程を言及するために使用される。
「試料」という用語は、組織、細胞、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚、呼吸器、腸及び泌尿生殖器の外部切片、涙、唾液、血球細胞、毛髪、腫瘍、器官、ポリヌクレオチドを含む生体起源の他の物質などの試料、若しくはこれらいずれかのin vitro細胞培養構成物を意味している。試料はさらに、ポリヌクレオチドの半精製或いは精製形態でもよい。試料は、ヒトなどの哺乳類、動物、或いはRETSAT遺伝子座を有する他のあらゆる生物、さらにはこれらいずれかのin vitro細胞培養構成物でもよい。
「疾患」という用語は、細胞増殖、レチノイド代謝、皮膚及び/若しくは免疫機能及び調節に関与する疾患、状態、或いは障害を意味する。そのような疾患は、例えば癌、失明、皮膚病及び状態、及び免疫障害を含む。
一般的に、本明細書で使用された他の命名法、及び以下に記載された細胞培養、分子遺伝学及び核酸科学及びハイブリダイゼーションの研究手順の多くは、本分野で既知であり一般的に使用されているものである(一般的にはAusubel et al.1999 supra;Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,2001を参照のこと:これらはこの参照により本明細書に組み込まれる)。標準的な技術は組換え核酸方法、ポリヌクレオチド合成、生体試料の調製、cDNA断片の調整、mRNAの単離、及びそれらと同等のものに対して使用される。一般的に酵素反応及び精製工程は、製造者仕様書に従って実行した。
RETSAT遺伝子
本発明は、RetSatをコードしたヌクレオチド配列に関するものである。ヒト、マウス、及びサル(マカク)RETSAT DNAsが同定された。特定の実施形態において、RETSAT核酸は、ヒトRetSat(GenBankアクセッション番号gi46329587)、マウスRetSat(GenBankアクセッション番号AY704159)、及びサル(マカク)RetSat(GenBankアクセッション番号AY707524)、若しくはRETSAT遺伝子座のコード領域、或いはRetsatポリペプチド(例えば、ヒトRetSat(GenBankアクセッション番号gi46329587)、マウスRetSat(GenBankアクセッション番号AY704159)、及びサル(マカク)RetSat(GenBankアクセッション番号AY707524))をコードする核酸配列(例えば、オープンリーディングフレーム)を有するものである。RETSAT核酸はさらに、mRNAs、ゲノムDNA、及びRETSAT遺伝子座に対応するアンチセンス核酸を含む。RETSAT核酸はさらに、誘導体(例えば、ヌクレオチド配列変異体)を含み、これらは同じアミノ酸、若しくは天然由来アリル変異体などのそれらの保存的アミノ酸置換に対する他の可能なコドン選択肢をコードしているものである。ヌクレオチドコード配列の縮重によって、実質的に同じアミノ断配列(例えばRETSAT遺伝子(ヒトRetSat(GenBankアクセッション番号gi46329587)、マウスRetSat(GenBankアクセッション番号AY704159)、及びサル(マカク)RetSat(GenBankアクセッション番号AY707524))などの)をコードする他のDNA配列もまた、本発明の実践において使用され得る。これらは、配列内で同じ或いは機能的に同等なアミノ酸残基(例えば保存的置換)をコードする異なるコドンの置換によって変換され、その結果サイレント変化を生じる、RETSAT遺伝子の全部或いは一部を有するヌクレオチド配列を含むがこれらに限定されるものではない。
本発明はまた、少なくとも6近接ヌクレオチド(例えはハイブリダイズ可能な部分)のRETSAT核酸断片を提供するものであって、他の実施形態において、前記核酸は少なくとも8近接ヌクレオチド、25ヌクレオチド、50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、150ヌクレオチド、200ヌクレオチド、或いは250ヌクレオチドまで、若しくはより多くのRETSAT配列を有するものである。別の実施形態において、前記核酸は200或いは250ヌクレオチド長より小さいものである。RETSAT核酸は、一本鎖或いは二本鎖である。容易に明らかなように、本明細書で用いられる「Retsatポリペプチドの断片をコードした核酸」は、近接配列としてのRetsatポリペプチドの他近接部分ではなく、Retsatポリペプチドの引用された断片或いは部分のみをコードした核酸を言及するものであるとして解釈される。1若しくはそれ以上のRetsatドメインをコードするRETSAT核酸の断片もまた提供される。
RETSAT核酸はさらに、前述の配列とハイブリダイズ可能な或いは相補的な核酸を含む。特定の観点において、RETSAT遺伝子の少なくとも10、25、50、100、200若しくは250、若しくはそれ以上のヌクレオチドに相補的な配列を有する核酸を提供する。特定の実施形態において、低度、中度、或いは高度に厳密な条件下で、RETSAT核酸(例えば配列ID番号:1の配列を有する)、若しくはRETSAT誘導体とハイブリダイズ可能な核酸が提供される。
実施例として、これに限定されるものではないが、低度に厳密な条件を用いた手順は以下のようなものである。すなわち、DNAを含むフィルターを、35%ホルムアルデヒド、5XSSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、5mM EDTA、0.1%ポリビリルピロリドン(PVP)、0.1%フィコール、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、及び500μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液において40℃で5時間前処理する。ハイブリダイゼーションは以下の変更点を加えた同じ溶液において実行する。すなわち、0.02% PVP、0.02%フィコール、0.2% BSA、100μg/ml変性サケ精子DNA、10%(wt/vol)硫酸デキストラン、及び5〜20x10cpm32P−標識プローブである。フィルターは40℃で18〜20時間、ハイブリダイゼーション混合液においてインキュベートした後、2XSSC、25mM Tris−HCl(pH7.4)、5mM EDTA及び0.1% SDSを含む溶液において55℃で1.5時間洗浄する。洗浄溶液を新鮮な溶液に変え、60℃でさらに1.5時間インキュベートする。フィルターは乾燥させ、オートラジオグラフィーに照射する。必要であれば、フィルターを65〜68℃で3回洗浄し、フィルムに再度照射する。使用され得る低度厳密性の他の条件は、当業者に既知である(例えば異種間ハイブリダイゼーションで使用された条件)(Shilo et al.Weinberg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:6789−92,1981を参照のこと)。
別の実施形態において、高度厳密条件下でRETSAT核酸とハイブリダイズ可能な核酸が提供される。実施例として、これに限定されるものではないが、高度に厳密な条件を用いた手順は以下のようなものである。すなわち、DNAを含むフィルターのプレハイブリダイゼーションを6XSSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、1mM EDTA、0.02% PVP、0.02%フィコール、0.02% BSA、及び500μg/ml変性サケ精子DNAから成る緩衝液において65℃で8時間〜一晩実行する。フィルターは100μg/ml変性サケ精子DNA及び5〜20×10cpmの32P−標識プローブを含むプレハイブリダイゼーション混合液において65℃で48時間ハイブリダイズする。フィルターの洗浄を2xSSC、0.01% PVP、0.01%フィコール、及び0.01% BSAを含む溶液において1時間65℃で行う。この次にオートラジオグラフィーの前に0.1xSSCにおいて50℃で45分間洗浄する。使用され得る高度に厳密な他の条件は、当業者に既知である(一般的にAusubel et al.,supra;Sambrook et al.,supraを参照のこと)。
別の特定の実施形態において、中度に厳密な条件下におけるRETSAT核酸とハイブリダイズ可能な核酸が提供される。実施例として、これに限定されるものではないが、そのような中度に厳密ば条件下において使用される手順としては、以下のようなものである。すなわち、DNAを含むフィルターのプレハイブリダイゼーションを、6xSSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、1mM EDTA、0.02% PVP、0.2%フィコール、0.02% BSA及び500μg/ml変性サケ精子DNAからなる緩衝液において55℃で8時間〜一晩実行する。フィルターは100μg/ml変性サケ精子DNA及び5〜20x10cpmの32P−標識プローブを含むプレハイブリダイゼーション混合液において55℃で24時間ハイブリダイズする。フィルターの洗浄を2xSSC、0.01% PVP、0.01%フィコール、及び0.01% BSAを含む溶液において1時間37℃で行う。
ハイブリダイゼーションを促進する様々な他の厳密な条件を使用することが可能である。例えば、6xSSCにおいて約45℃でハイブリダイゼーションし、次に2xSSCにおいて50℃で洗浄する工程及び条件もまた使用可能である。或いは、洗浄する工程における塩濃度は、50℃の約5xSSCという低度な厳密性から、50℃の約2xSSCという中程度な厳密性、さらには50℃の約0.2xSSCという高度な厳密性までの範囲が可能である。さらに、洗浄する工程の温度は、室温の低度の厳密な条件から、約42℃の中程度に厳密な条件、さらには約65℃の高度に厳密な条件まで増強することが可能である。他の条件は、これに限定されるものではないが、0.5M NaHPO(pH7.2)/1mM EDTA/7% SDSにおいて68℃でハイブリダイズ若しくは50%ホルムアミド/0.25M NaHPO(pH7.2)/0.25M NaCl/1mM EDTA/7% SDSにおいてハイブリダイズし、その後40mM NaHPO(pH7.2)/1mM EDTA/5% SDSbにおいて50℃で洗浄する工程、若しくは40mM NaHPO(pH7.2)/1mM EDTA/1% SDSにおいて50℃で洗浄する工程を含む。両温度及び塩は変更され得る、若しくは代わりに一方若しくはもう一方の変数を一定にし、もう一方を変更する。
低度、中度、及び高度に厳密な条件は、本分野の当業者にはよく知られており、特定の核酸配列の塩基組成に基づいて、及び前記核酸配列が由来する特異的な生物に基づいて予想通りに変更されるであろう。そのような条件に関するガイダンスとしては、例えばSambrook et al.(supra)、及びAusubel et al.(supra)を参照のこと。
RETSAT核酸はさらに、誘導体及び類似体う含む。そのような誘導体及び類似体は少なくとも1つの修飾塩基部位を有し、この修飾塩基部位は例えば、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシ−ヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノ−メチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルクエオシン(galactosylqueosine)、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N−6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシアセチル酸(v)、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシアセチル酸メチルエステラーゼ、ウラシル−5−オキシアセチル酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2カルボキシプロピル)ウラシル、2,6−ジアミノプリン、及びそれらと同等なものなどである。前記RETSAT核酸はさらに、例えばアラビノ−ス、2−フルオロアラビノ−ス、キシルロース、及びヘキソースなどの少なくとも1つの修飾糖部位を有していても良い。
前記RETSAT核酸はさらに、修飾リン酸バックボーンを有していても良く、この修飾リン酸バックボーンは例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、メチルホスホン酸、アルキルホスホロトリエステル、及びホルムアセタール或いはそれの類似体などである。
前記RETSAT核酸はまた、α−アノマーオリゴヌクレオチドでもあっても良い。α−アノマーオリゴヌクレオチドは相補的なRNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成し、通常のβ−ユニットに反して、前記鎖はお互いに対して平行に走っているものである(例えば、Gautier et al.,Nucl.Acids Res.15:6625−41,1987を参照のこと)。
RETSAT核酸誘導体或いは類似体は、当業者には既知である標準的な方法によって(例えば、商業的に利用可能な自動化DNA合成機の使用によって)合成することが可能である。実施例として、ホスホロチオエート核酸は、Steinら(Nucl.Acids Res.16:3209−21,1988)の方法によって合成することができ、メチルホスホン酸核酸オリゴヌクレオチドは、制御ポアガラスポリマー支持体(Sarin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7448−51,1988)及びそれらと同等のものを使用することによって調整することができる。
RETSAT核酸の単離に対する特定の実施形態を以下に示すが、これは例として示したものであり、限定するものではない。
発現クローニング(当業者において一般的に知られている技術)に対して、発現ライブラリは当業者に既知である方法によって構成される。例えば、mRNA(例えばヒト)を単離し、cDNAを調整した後、宿主細胞において発現されるように発現ベクター(例えば、バクテリオファージ誘導体)に連結させて、その結果前記宿主細胞に導入される。様々なスクリーニングアッセイは、発現されたRetsatポリペプチドを選択するために使用されても良い。1実施形態において、選択のために、抗−Retsat特異的抗体が使用可能である。
別の実施形態において、選択する前にゲノム或いはcDNAライブラリにおける目的の配列を増幅するために、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を使用することが可能である。例えば、ヒトRetSat(GenBank アクセッション番号 gi46329587)、マウスRetSat(GenBank アクセッション番号 AY704159)、及びサル(マカク)RetSat(GenBank アクセッション番号 AY707524)から選択されるように、既知RETSAT配列を提示しているオリゴヌクレオチドプライマーは、PCRにおいてプライマーとして使用され得る。典型的な実施形態において、前記オリゴヌクレオチドプライマーは、他の種のRETSAT間で著しく同一のRETSAT保存断片の少なくとも一部を提示している。合成オリゴヌクレオチドは、有望な目的源(RNA或いはDNA)、一般的にはcDNAライブラリの配列から、PCRによってPCRRETSAT遺伝子内の特定のオリゴヌクレオチドを増幅するためのプライマーとして使用され得る。PCRは例えば、Perkin−Elmer Cetus thermal cycler及びTaqポリメラーゼ(Gene Amp)の使用によって実行される。増幅されるDNAは、mRNA或いはcDNA、若しくはあらゆる真核生物種からのゲノムDNAが含まれる。本分野の当業者は、PCR反応において使用するためのいくつかの異なる変性プライマーを合成することを選択することができる。
PCR反応のプライミングにおいて使用されるハイブリダイゼーション条件の厳密性を変更することも可能であり、これにより既知RETSATヌクレオチド配列と単離される関連核酸との間のヌクレオチド配列類似度を上げる或いは下げることが可能になる。異種間ハイブリダイゼーションに対しては、低度厳密性条件が一般的に使用される。関連RETSAT核酸断片の増幅に成功した後、その断片は分子的にクローン化され、配列決定され、完全長cDNA或いはゲノムクローンを単離するためのプローブとして使用され得る。これは、言い換えると、以下に記載したように、遺伝子の完全長ヌクレオチド配列の決定、その発現の解析及び機能解析のためのそのポリペプチド産物の産生を可能にする。この方法において、Retsatポリペプチド及びRetsatポリペプチド誘導体をコードしている付加的な遺伝子が同定され得る。
上述の方法は、RETSAT核酸或いは断片のクローンを得ることができる方法の以下の一般的な説明に限定されるものではない。あらゆる真核細胞は潜在的に、RETSAT遺伝子の分子クローニングのための核酸源として働くことができる。RETSATをコードする核酸配列は脊椎動物源から単離することができ、前記脊椎動物源としては、例えばブタ、ウシ、ネコ、トリ、ウマ、イヌ、及びヒトなどの哺乳類源、さらには付加的な霊長類、トリ、爬虫類及び魚類及びそれらと同等物を含み、昆虫、虫、線虫、植物及びそれらと同等物をなどの無脊椎動物からの源も含む。DNAは、クローンDNA(例えばDNA「ライブラリ」など)から当業者に既知な標準的な手順によって、化学合成によって、cDNAクローニングによって、若しくは目的の細胞から精製されたゲノムDNA或いはその断片のクローニングによって得られる(例えば、Sambrook et al.,supra;Glover,(ed.),DNA Cloning:A Practical Approach,IRL Press,Washington,D.C.Vol.I,II,1985を参照のこと)。ゲノムDNAに由来するクローンは、コード領域に加えて調節領域及びイントロンDNA領域を含むことができ、cDNAに由来したクローンは一般的にエクソン配列のみを含んでもよい。源が何であれ、前記核酸はこれら核酸の増殖のために適切なベクターへ分子的にクローンされ得る。
ゲノムDNAからの遺伝子の分子クローニングにおいて、DNA断片が生成し、そのいくつかはRETSAT遺伝子をコードするものである。DNAは、様々な制限酵素を用いて特定部位で切断される。或いは、DNAを断片化するためにマンガン存在下でDNaseを用いることもできる、若しくはDNAは例えば超音波処理によって物理的にせん断され得る。直線DNA断片は次に、これに限定されるものではないが、アガロース及びポリアクリルアミドゲル電気泳動、及びカラムクロマトグラフィーを含む標準技術によってサイズに従って分離される。
一旦DNA断片が生成すると、前記目的の遺伝子を含む特定の核酸の同定は、様々な方法により達成可能である。例えば、(あらゆる種の)RETSAT遺伝子或いはその特異的RNAの一部、或いはそれらの断片を精製し、標識化することが可能である。生成したDNA断片は、標識プローブに対する核酸ハイブリダイゼーションによってスクリーニングすることが可能である(例えば、Benton and Davis,Science 196:180−02,1977;Grunstein and Hogness,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 72:3961−65,1975を参照のこと)。前記プローブと実質的に同一のこれらのDNA断片は、ハイブリダイズされる。制限酵素消化、及び利用可能であれば既知の制限地図に従って予想される断片サイズの比較によって、適切な断片を同定することも可能である。さらなる選択は前記遺伝子の特定に基づいて実行可能である。
或いは、RETSAT核酸の存在は、その発現生成物の物理的、化学的、或いは免疫学的特性に基づいたアッセイによって検出することができる。例えば類似或いは同一な電気泳動移動、等電点電気泳動挙動、タンパク質分解地図、RetSat活性、基質結合活性、或いはRetsatポリペプチド(群)として既知の抗原性特性を有しているポリペプチドを産生するような、cDNAクローン或いは適切なmRNAをハイブリッド選択するDNAクローンが選択され得る。Retsatポリペプチドに特異的に結合する免疫血清或いは抗体は、免疫アッセイ(例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)型手順)における結合にとってクローンを合成するRetsatポリペプチドを推定的に同定するために使用することが可能である。
RETSAT遺伝子は、核酸ハイブリダイゼーション及びその後のin vitro翻訳によるmRNA選択により同定することが可能である。この手順において、ハイブリダイゼーションによって相補的mRNAを単離するために断片が使用される。そのようなDNA断片は一般的に、別の種(例えば、ヒト、マウス及びそれらと同等物)の利用可能な精製RETSAT DNAを提示する。前記単離されたmRNAのin vitro翻訳産物の免疫沈降解析或いは機能的アッセイによって、前記mRNA、さらには目的の配列を含む前記相補的DNA断片が同定される。加えて、特異的mRNAは、細胞から単離されたポリソームの抗Retsatポリペプチド特異的固定化抗体に対する吸収によって選択され得る。放射線標識されたRETSAT cDNAは、鋳型として、選択されたmRNA(吸収されたポリソームから)を用いて合成され得る。前記放射線標識されたmRNA或いはcDNAは次に、他のゲノムDNA間からRETSAT DNAを同定するためのプローブとして使用することが可能である。
RETSATゲノムDNAを単離する工程の代替案としては、これに限定されるものではないが、前記遺伝子配列自体を既知の配列から化学的に合成する工程、若しくはRETSATポリペプチドをコードする前記mRNAに対するcDNAを作成する工程を含む。例えば、RETSAT遺伝子のcDNAクローニングに対するRNAは、Retsatポリペプチドを発現する細胞から単離され得る。他の方法も可能であり、本発明の観点内であると考えられる。
前記同定され単離されたRETSAT核酸は次に、適切なクローニングベクターに挿入される。当業者には既知である多数のベクター−宿主システムを使用することができる。可能なベクターは、これに限定されるものではないが、プラスミド或いは修飾ウイルスを含む。前記ベクターシステムは、宿主細胞に適合するように選択される。そのようなベクターは、これに限定されるものではないが、ラムダ誘導体などのバクテリオファージ、酵母組込み及び動原体性ベクター、2μプラスミド及びその誘導体、若しくはいくつか挙げるとpBR322、pUC、pcDNA3.1、或いはpRSET(Invitrogen)プラスミド誘導体やBlurscriptベクター(Strategene)などのプラスミドを含む。RETSAT核酸のクローニングベクターへの挿入は、例えばDNA断片を相補的な突出末端を有するクローニングベクターに連結する工程によって達成され得る。しかしながら、DNAを断片化するために使用された相補的な制限部位が前記クローニングベクターに存在しない場合は、DNA分子の末端は酵素的に修飾され得る。代わりに、あらゆる望ましい制限エンドヌクレアーゼ部位は、DNA末端上にヌクレオチド配列(例えばリンカー)を連結する工程によって製造され:これら連結された配列は制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコードしている特定の化学的に合成されたオリゴヌクレオチドを有することができる。代わりの方法において、切断されたベクター及びRETSAT核酸は、ホモポリマーテーリングによって修飾され得る。組換え分子は、形質転換、形質導入、感染、電気穿孔法、及びそれらと同等のものを介して宿主細胞へ導入され、前記核酸配列の多コピーが産生される。
代わりの方法において、RETSAT核酸は、「ショットガン」アプローチによって、適切なクローニングベクターへの挿入の後、同定され単離される。例えばサイズ画分によるRETSAT核酸の濃縮は、前記クローニングベクターへの挿入の前に実行される。特定の実施形態において、単離されたRETSAT遺伝子、cDNA、或いは合成DNA配列を取り込んだ組換えDNA分子での宿主細胞の形質転換は、前記遺伝子の複数コピーの産生を可能にする。従って、前期遺伝子は、形質転換体を増殖させ、前記形質転換体から前記組換えDNAを単離することによって、もし必要であれば単離された組換えDNAから挿入された遺伝子を回収することによって、大量に得ることができる。
RETSAT遺伝子の発現
Retsatポリペプチド、或いは機能的に活性な誘導体、類似体或いはそれらの断片をコードしているヌクレオチド配列は、適切な発現ベクター(すなわち、挿入されたポリペプチド−コード配列の転写及び翻訳に対して必要な要素を含むベクター)に挿入され得る。必要な転写及び翻訳シグナルも、天然RETSAT遺伝子及び/若しくはそのフランキング領域から供給され得る。多様な宿主−ベクターシステムは、ポリペプチド−コード領域を発現するために使用される。これらは、これに限定されるものではないが、ウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルス及びそれらと同等物)で感染された哺乳類細胞システム、ウイルス(例えばバキュロウイルス)で感染された昆虫細胞システム、酵母ベクターを含む酵母などの微生物、若しくはバクテリオファージDNA、プラスミド或いはコスミドDNAで形質転換された細菌を含む。ベクターの発現要素はそれらの強度及び特異性で変更される。使用された宿主−ベクターシステムに依存して、多数の適した転写及び翻訳要素のいずれかが使用される。特定の実施形態において、ヒトRETSAT遺伝子が発現される、若しくはヒトRetsatの機能的に活性な部分をコードする核酸配列が酵母或いは細菌において発現される。さらに別の実施形態において、Retsatポリペプチドのドメインを有するRETSATの断片が発現される。
以前に記載されたDNA断片をベクターに挿入するための方法はいずれも、適切な転写/翻訳調節シグナル及び前記ポリペプチドコード配列から成るキメラ遺伝子を有する発現ベクターを構成するために使用される。これらの方法は、in vitro組換えDNA及び合成技術、及びin vivo組換え体(遺伝的組換え体)を含む。Retsatポリペプチド或いは断片をコードする核酸配列の発現は、第二の核酸配列によって制御され、前記Retsatポリペプチド或いは断片は前記組換えDNA分子で形質転換された宿主において発現する。例えば、Retsatポリペプチドの発現は、当業者に既知であるあらゆるプロモーター/エンハンサー要素によって調節され得る。RETSAT遺伝子発現を調節するために使用され得るプロモーターは、これに限定されるものではないが、SV40初期プロモーター領域(Benoist and Chambon,Nature 290:304−10,1981)、ラウス肉腫ウイルスの3’末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamoto et al.,Cell 22:787−97,1980)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441−45,1981)、メタロチオネイン遺伝子の調節性配列(Brinster et al.,Nature 296:39−42,1982)、ベータ−ラクタマーゼプロモーターなどの原核細胞発現ベクター(Villa−Komaroff et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727−31,1978)、或いはtacプロモーター(deBoer et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 80:21−25,1983)、カリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーターを含む植物発現ベクター(Gardner et al.,Nucl.Acids Res.9:2871−88,1981)、及び光合成酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera−Estrella et al.,Nature 310:115−20,1984)、Gal7及びGal4プロモーターなどの酵母或いは他の菌類からのプロモーター要素、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PKG(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリンホスファターゼプロモーター、及びそれらと同等のものを含む。
組織特異性を示す以下の動物転写調節領域は、トランスジェニック発現動物に対して使用されており、前記調節領域は、膵腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子調節領域(Swift et al.,Cell 38:639−46,1984;Omitz et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399−409,1986;MacDonald,Hepatology 7(1 Suppl.):42S−51S,1987)、膵臓β細胞において活性なインスリン遺伝子調節領域(Hanahan,Nature 315:115−22,1985)、リンパ系細胞において活性名免疫グロブリン遺伝子調節(Grosschedl et al.,Cell 38:647−58,1984;Adams et al.,Nature 318:533−8,1985;Alexander et al.,Mol.Cell.Biol.7:1436−44,1987)、精巣、乳房、リンパ系及びマスト細胞において活性のマウス乳癌ウイルス調節領域(Leder et al.,Cell 45:485−95,1986)、肝臓において活性なアルブミン遺伝子調節領域(Pinkert et al.,Genes Dev.1:268−76,1987)、肝臓において活性なアルファ−フェトプロテイン遺伝子調節領域(Krumlauf et al.,Mol.Cell.Biol.5:1639−48,1985;Hammer et al.,Science 235:53−58,1987)、肝臓において活性なアルファ1−アンチトリプシン遺伝子調節領域(Kelsey et al.,Genes and Devel.1:161−71,1987)、骨髄細胞において活性なベータ−グロブリン遺伝子調節領域(Magram et al.,Nature 315:338−40,1985;Kollias et al.,Cell 46:89−94,1986)、脳のオリゴデンドロサイト細胞において活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子調節領域(Readhead et al.,Cell 48:703−12,1987)、骨格筋において活性なミオシン軽鎖−2遺伝子調節領域(Shani,Nature 314:283−86,1985)、及び視床下部において活性なゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子調節領域(Mason et al.,Science 234:1372−78,1986)である。
特定の実施形態において、Retsat−コード核酸に操作可能であるように連結されたプロモーター、1若しくはそれ以上の複製開始点、及び任意に1若しくはそれ以上の選択可能なマーカー(例えば抗生物質耐性遺伝子)を有するベクターが使用されている。例えば、発現コンストラクトは、pRSECT発現ベクターの制限部位へRETSATコード配列をサブクローニングすることによって作成され得る。そのようなコンストラクトは、発現したポリペプチドの親和性精製のためのヒスチジンアミノ末端フラッグ配列を有するT7プロモーターの制御下でRetsatポリペプチドの発現を可能にする。
RETSAT核酸挿入を含む発現ベクターは、当業者によく知られた一般的なアプローチによって同定され、このアプローチには、(a)核酸ハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在或いは非存在、及び(c)挿入された配列の発現、が含まれる。第一のアプローチにおいて、発現ベクターに挿入されたRETSAT核酸の存在は、挿入されたRETSAT核酸とホモログな配列を有するプローブを用いた核酸ハイブリダイゼーションによって検出され得る。第二のアプローチにおいて、前記組換えベクター/宿主システムは、RETSAT核酸を含むベクターの挿入によって引き起こされた特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質への耐性、形質転の表現型、バキュロウイルスにおける妨害体形成、及びそれらと同等のもの)の存在或いは非存在に基づいて同定され選択され得る。例えば、RETSAT核酸が前記ベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入された場合、RETSAT挿入を含む組換え体は、マーカー遺伝子機能の非存在によって同定され得る。
第三のアプローチにおいて、組換え発現ベクターは、組換え体によって発現されたRetsatポリペプチドをアッセイすることによって同定され得る。そのようなアッセイは、例えば、in vitroアッセイシステムにおけるRetsatポリペプチドの物理的或いは機能的な特性に基づいている。一度特定の組換えDNA分子が同定され単離されたら、当業者には既知であるいくつかの方法はそれを増幅するために使用された。適切な宿主システム及び増殖条件が確立されたら、組換え発現ベクターは増幅され、大量に調整された。以前に説明したように、使用され得る発現ベクターは、これに限定されるものではないが、以下のベクター或いはそれらの誘導体:ワクシニアウイルス或いはアデノウイルスなどのヒト或いは動物ウイルス;バキュロウイルスなどの昆虫ウイルス;酵母ベクター;バクテリオファージベクター(例えばラムダ)、及びいくつか挙げると、プラスミド及びコスミドDNAベクターを含む。
さらに、挿入された配列の発現を調節するか、若しくは遺伝子産物を望ましい特定の様式に修飾或いは処理する宿主細胞株が選択される。特定のプロモーターからの発現は、特定の誘導因子の存在下で増強されるため、遺伝的に操作されたRetsatポリペプチドの発現は調節される。さらには、ポリペプチドの翻訳及び翻訳後プロセシング及び修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化)に対する特徴的で特異的なメカニズムを有する、異なる宿主細胞が使用され得る。適切な細胞株或いは宿主システムは、発現された外来性タンパク質の望ましい修飾及びプロセシングを確実にするように選択される。例えば、細菌システムにおける発現は、非グリコシル化コアタンパク質産物を産生するために使用され得る。酵母における発現は、グリコシル化産物を産生する。哺乳類細胞における発現は、哺乳類タンパク質の「野生型」グリコシル化を確実にするために使用され得る。さらに異なるベクター/宿主発現システムは、異なる程度でプロセシング反応に影響を及ぼすことができる。
Retsatポリペプチド、断片、誘導体、及び類似体
本発明はさらに、Retsatポリペプチド、断片、誘導体、及びそれらの類似体にも関する。1観点において、本発明は、一般的にはRetsatポリペプチド(ヒトRetSat(GenBank アクセッション番号 gi46329587)、マウスRetSat(GenBank アクセッション番号 AY704159)、及びサル(マカク)RetSat(GenBank アクセッション番号 AY707524))であるRetsatポリペプチドアミノ酸配列を提供する。特定の観点において、前記ポリペプチド、断片、誘導体或いはRetsatポリペプチドの類似体は、動物(例えばヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、イヌ、サル及びそれらと同等のもの)に由来するものである。Retsatポリペプチド、断片、誘導体或いはそれらの類似体の産生及び使用も、本発明の範囲内である。特定の実施形態において、誘導体或いは類似体は機能的に活性である(すなわち、完全長、野生型Retsatポリペプチドに関連した1若しくはそれ以上の機能的活性を示すことができる)。1実施例として、望ましい免疫原性或いは抗原性を有するそのような断片、誘導体或いは類似体は、例えば免疫化、Retsat活性の阻害及びそれらと同様のものに対する免疫アッセイにおいて使用され得る。目的の望ましいRetsat特性(例えば、オールトランスレチノールのオールトランス(13,14)−ジヒドロレチノールへの変換)を保持する或いは代わりに欠損或いは阻害する、断片、誘導体或いは類似体は、そのような特性及びその生理学的相関の誘導因子或いは阻害剤として使用され得る。特定の実施形態は、抗Retsat抗体によって結合され得るRetsat断片に関するものである。Retsatの断片、誘導体或いは類似体は、これに限定されるものではないが、本明細書に記載された機能的アッセイを含む当業者には既知である手順によって望ましい活性が試験される。
Retsatポリペプチド誘導体は、天然由来アミノ酸配列変異体、さらには、機能的活性分子を提供する1若しくはそれ以上のアミノ酸残基の置換、付加或いは欠損によって変異された変異体も含む。Retsatポリペプチド誘導体は、これに限定されるものではないが、変異配列を含むRetsatポリペプチドのアミノ酸配列全て或いは一部の一次アミノ酸配列として含む誘導体を含み、前記変異配列においては1若しくはそれ以上の機能的に同等なアミノ酸残基(例えば保存的置換)で前記配列内の残基が置換され、その結果サイレント変化が生じるものである。
別の観点において、Retsatポリペプチドの少なくとも10近接アミノ酸を持つRetsatポリペプチドの断片を構成する或いは有するポリペプチドが提供される。他の実施形態において、前記断片は、Retsatポリペプチドの少なくとも20或いは50近接アミノ酸から成るものである。特定の実施形態において、前記断片は35、100或いは200アミノ酸以上の大きさではない。
Retsatポリペプチドの断片、誘導体或いは類似体は、これに限定されるものではないが、Retsatポリペプチド或いはそれらの断片と実質的に類似している(例えば様々な実施形態において、同じサイズのアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、90%、或いは95%の同一性或いは類似性)領域を有するそれら分子を含み、これはアライメント配列を比較した場合、前記アライメントが当業者には既知であるコンピュータ配列比較/アライメントプログラムによって実行される、若しくはそのコード核酸が高度厳密性、中度厳密性、或いは低度厳密性条件(上述)下でRETSAT核酸とハイブリダイズできるものである。Retsatポリペプチドはさらに、抗原決定基(例えば、ヒトRetsatポリペプチドに特異的な抗体によって認識され得る)を持つ断片及び誘導体を有する。
Retsatポリペプチド誘導体及び類似体は、当業者には既知である様々な方法によって産生される。それらの産生をもたらす操作は、遺伝子或いはタンパク質レベルで生じる。例えば、クローン化RETSAT核酸は、例えば保存的置換、欠損、挿入及びそれらと同等のものを作成する工程などの、当業者には既知である(例えば、Sambrook et al.,supraを参照のこと)多くの戦略のいずれかによって修飾され得る。前記配列は、適切な部位を制限酵素(群)で切断され、さらに、必要ならば酵素修飾、単離及びin vitroで連結されるものである。Retsatポリペプチドの断片、誘導体或いは類似体をコードしているRETSAT核酸の産生において、前記修飾された核酸は一般的に適切な翻訳リーディングフレームを残しており、前記リーディングフレームはRetsat断片、誘導体或いは類似体の合成を阻害する翻訳停止シグナル或いは他のシグナルによって妨害されないものである。RETSAT核酸はさらに、in vitro或いはin vivoで変異され、翻訳、開始及び/若しくは終結配列を作成及び/若しくは破壊する。前記Retsatコード核酸もまた変異され、コード領域の変異体を作成する及び/若しくは新しい制限エンドヌクレアーゼ部位を形成する、若しくは既存のものを破壊し更なるin vitro修飾を容易にする。当業者に既知である変異原性に対するあらゆる技術を使用し、この技術はこれに限定されるものではないが、化学変異原性、in vitro部位特異的変異原性(Hutchison et al.,J.Biol.Chem.253:6551−60,1978)、TABリンカー(Pharmacia)の使用、及びそれらと同等のものを含む。
Retsatポリペプチド配列の操作は、ポリペプチドレベルでも行われる。本発明の範囲内に含まれるものとしては、合成(例えばin vivo或いはin vitro翻訳)の最中或いは後で差次的に修飾されたRetsatポリペプチド断片、誘導体或いは類似体である。そのような修飾は、保存的置換、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解性切断、抗体分子或いは他の細胞性リガンドへの結合、及びそれらと同等のものを含む。あらゆる多数の化学修飾は既知の技術によって実行され、この技術としてはこれに限定されるものではないが、特異的化学切断(例えばブロモシアン)、酵素切断(例えばトリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、及びそれらと同様物による)、例えばNaBHアセチル化、ホルミル化、酸化及び還元による修飾、或いはツニカマイシンの存在下での代謝性合成、及びそれらと同等のものを含む。
加えて、Retsatポリペプチドの断片、誘導体及び類似体は、化学的に合成できる。例えば、望ましいドメインを有する若しくはin vitroで望ましい活性を仲介する、Retsatポリペプチドの一部に一致するペプチド或いは断片は、例えば自動化ペプチド合成機を用いる化学合成方法を使用することによって合成される。さらに、必要であれば、非古典的アミノ酸或いは化学アミノ酸類似体は、Retsatポリペプチド配列における置換或いは付加として導入され得る。非古典的アミノ酸は、これに限定されるものではないが、共通アミノ酸、アルファ−アミノイソブチル酸、4−アミノブチル酸、2−アミノブチル酸、ガンマ−アミノブチル酸、イプシロン−Ahx、6−アミノヘキサン酸、2−アミノイソブチル酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ベータ−アラニン、セレノシステイン、フルオロ−アミノ酸、ベータ−メチルアミノ酸などのデザイナーアミノ酸、Cアルファ−メチルアミノ酸、Nアルファ−メチルアミノ酸、及び一般的なアミノ酸類似体のD−異性体を含む。さらには、前記アミノ酸は、D(右旋性)或いはL(左旋性)である。
特定の実施形態において、Retsat断片或いは誘導体は、キメラ或いは融合タンパク質であり、これは異なるタンパク質のアミノ酸配列に結合したペプチドを介してそのアミノ末端或いはカルボキシル末端で連結しているRetsatポリペプチド或いはそれの断片(一般的にはRetsatポリペプチドの少なくともドメイン或いはモチーフ、若しくはRetsatポリペプチドの少なくとも10近接アミノ酸から成る)を有するものである。1実施形態において、そのようなキメラタンパク質は、前記タンパク質をコードしている核酸の組換え発現によって産生される。キメラ産物は、望ましいアミノ酸配列をコードしており、当業者に一般的に知られている方法によって産生されたキメラ産物を発現する適切な核酸配列を、適切なコーディングフレームにおいて互いに結合することによって作成される。代わりに、前記キメラ産物は、タンパク質合成技術によって(例えば自動化ペプチド合成機の使用によって)作成することができる。
Retsatポリペプチドは、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、サイジングカラム、クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解度を含む標準的な方法によって、若しくはタンパク質の精製に対する他の標準的な技術によって単離及び精製することができる。機能的特性は、本明細書に記載したようなあらゆる適したアッセイ、或いは当業者には既知である別のアッセイを用いて評価することができる。代わりに、一度組換えによって産生されたRetsatポリペプチドを同定したら、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、前記組換え体に含まれるキメラ遺伝子のヌクレオチド配列から推測され得る。結果として、前記タンパク質は、当業者には既知である標準的な化学的方法によって合成される(例えば、Hunkapiller et al.,Nature 310:105−11,1984;Stewart and Young,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd Ed.,Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.,1984を参照のこと)。
別の代替実施形態において、天然Retsatポリペプチドは、上述した方法などの標準的な方法(例えば免疫親和性精製)によって天然源から精製される。本発明の特定の実施形態において、Retsatポリペプチドは、組換えDNA技術によって産生される、化学的合成方法によって産生される、或いは天然ポリペプチドの精製によって産生されるには関わらず、これに限定されるものではないが、ヒトRetsatポリペプチド(配列ID番号:2)のアミノ酸配列の全部或いは一部を一次アミノ酸配列として含むペプチド、さらにはその断片、誘導体及び類似体を含む。
RETSAT遺伝子及びポリペプチド(群)の構造
RETSAT遺伝子及びRetsatポリペプチドの構造は、当業者には既知の様々な方法によって解析される。RETSAT遺伝子と一致しているクローンDNA或いはcDNAは、これに限定するものではないが、サザンハイブリダイゼーション(Hunkapiller et al.,Nature 310:105−11,1984;Stewart and Young,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd Ed.,Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.,1984)、ノーザンハイブリダイゼーション(例えばFreeman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:4094−98,1983を参照のこと)、制限エンドヌクレアーゼマッピング(一般的にはSambrook et al.,supraを参照のこと)、及びDNA配列解析(例えばSambrook et al.,supraを参照のこと)を含む方法によって解析される。ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR;例えば米国特許第4,683,202号、第4,683,195号及び第4,889,818号;Gyllensten et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7652−56,1988;Ochman et al.,Genetics 120:621−3,1988;Loh et al.,Science 243:217−20,1989を参照のこと)に続いてRETSAT特異的プローブでサザンハイブリダイゼーションを行うと、様々な細胞タイプからDNAにおけるRETSAT遺伝子を検出することができる。PCR以外の増幅方法も一般的に既知であり、使用できる。
1実施形態において、サザンブロットハイブリダイゼーションは、RETSAT遺伝子座の遺伝連鎖を決定するために使用され得る。ノーザンブロットハイブリダイゼーション解析は、RETSAT遺伝子の発現を決定するために使用され得る。発生或いは活性の様々な段階での様々な細胞タイプに対して、RETSAT発現をテストした。サザン及びノーザンハイブリダイゼーションに対するハイブリダイゼーション条件の厳密性を操作し、使用される特異的RETSATプローブに対して望ましい程度の配列同一性を有する核酸の検出を確実にした。これら及び当業者に一般的に知られている他の方法の改良法を使用することができる。制限エンドヌクレアーゼマッピングは、RETSAT遺伝子の遺伝構造を大まかに決定するために使用される。制限エンドヌクレアーゼ切断によって得られた制限マップは、DNA配列解析によって確認される。DNA配列解析は、当業者には既知であるあらゆる技術によって実行され、これは、限定されるものではないが、Maxam及びGilbertの方法(Meth.Enzymol.65:499−560,1980)、Sangerジデオキシ方法(Sanger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463−67,1977)、T7 DNAポリメラーゼの使用(Tabor and Richardson,米国特許第4,795,699号)、或いは自動DNA配列シーケンサーの使用(例えば、Applied Biosystems,Foster City、カリフォルニア州)を含む。
Retsatポリペプチドのアミノ酸配列は、DNA配列から推測することによって、或いは代わりに前記タンパク質を直接シーケンスする(例えば、自動化アミノ酸シーケンサーを用いて)ことによって得られる。Retsatポリペプチド配列はさらに、親水性解析(Hopp and Woods,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:3824−28,1981)によって特徴付けされる。親水性特性は、Retsatポリペプチドの疎水性領域及び親水性領域、及びそのような領域をコードする遺伝子配列の一致領域を同定するために使用される。
二次構造解析(例えばChou and Fasman,Biochemistry 13:222−45,1974)も、特異的二次構造を仮定するRetsatポリペプチドの領域を同定するために実行される。操作、翻訳及び二次構造予測、オープンリーディングフレーム予測及びプロッティング、さらには配列同一性及び類似性の決定もまた、上述したような、本分野で利用可能なコンピュータソフトウェアプログラムを用いて達成される。構造解析の1つの方法もまた使用される。これらは、限定されるものではないが、X−線結晶学的技法(Engstom,Biochem.Exp.Biol.11:7−13,1974)、及びコンピュータモデリング(Fletterick and Zoller,(eds.),"Computer Graphics and Molecular Modeling",In Current Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986;Bordo,Comput.Appl.Biosci.9:639−45,1993;Bruccoleri and Karpus,Biopolymers 26:137−68,1987;Hansen et al.Pac.Symp.Biocomput.106−17,1998);Li et al.,Protein Sci.6:956−70,1997;Stemberg and Zvelebil,Eur.J.Cancer 26:1163−66,1990;Ring and Cohen,FASEB J.7:783−90,1993;及びSutcliffe et al.,Protein Eng.1:377−84,1987)を含む。
Retsatポリペプチド、断片、誘導体及び類似体に対する抗体
Retsatポリペプチド、断片、誘導体及びそれらの類似体は、免疫原として使用でき、Retsatポリペプチド、断片、誘導体及びそれらの類似体などと免疫特異的に結合する抗体を産生する。そのような抗体は、これに限定されるものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、重鎖抗体断片(例えばF(ab’)、F(ab’)2、Fv或いは高頻度可変領域)、及びFab発現ライブラリを含む。特定の実施形態において、全体、無傷ヒトRetsatポリペプチドに対するポリクローナル及び/若しくはモノクローナル抗体が産生される。別の実施形態において、ヒトRetsatポリペプチドのドメインに対する抗体が産生される。別の実施形態において、親水性として同定されたヒトRetsatポリペプチドの断片が、抗体産生の免疫原として使用される。
抗体を作成し使用する方法は、Harlow及びLane(Using Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,1999;ここに開示されていることはこの参照によって本明細書に組み込まれる)によって一般的に開示されている。当業者には既知である様々な手順は、Retsatポリペプチド、断片、誘導体或いはそれらの誘導体に対するポリクローナル抗体を産生するために使用される。そのような抗体の産生に対して、様々な宿主動物(これに限定されるものではないが、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ラマ及びそれらと同等物)は、天然Retsatポリペプチド、断片、誘導体或いは誘導体を注射することによって免疫化される。様々なアジュバンドは宿主種に依存して、免疫原性反応を増加するために使用され、このアジュバンドは、これに限定されるものではないが、Freund’sアジュバンド(完全或いは不完全)、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの海面活性物質、プルロンポリオール(pluronic polyols)、ポリアニオン、ペプチド、オイル乳濁剤、キーホールカサガイヘモシアニン、ジニトロフェノール、及びBCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パルバムなどの潜在的に非常に有用なヒトアジュバンドを含む。
Retsatポリペプチド、断片、誘導体或いはそれらの誘導体に対するモノクローナル抗体の調整に対して、培養における連続した細胞株による抗体分子の産生を提供するあらゆる技術が使用できる。そのような技術は、例えば、Kohler及びMilsteinによって最初に開発されたハイブリドーマ技術(例えば、Nature 256:495−97,1975を参照のこと)、さらにはトリオーマ技術(例えば、Hagiwara and Yuasa,Hum.Antibodies Hybridomas 4:15−19,1993を参照のこと)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(例えば、Kozbor et al.,Immunology Today 4:72,1983を参照のこと)、及びヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV−ハイブリドーマ技術(例えば、Cole et al.,In Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96,1985を参照のこと)を含む。使用され得るヒト抗体は、ヒトハイブリドーマを用いて(例えば、Cote et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026−30,1983を参照のこと)、或いはin vitroにおいてEBVウイルスでヒトB細胞を形質転換することによって(例えば、Cole et al.,supraを参照のこと)得ることができる。
本発明に加えて、「キメラ」或いは「ヒト化」抗体(例えば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−5,1984;Neuberger et al.,Nature 312:604−08,1984;Takeda et al.,Nature 314:452−4,1985を参照のこと)が調整される。そのようなキメラ抗体は、適切な生物活性のヒト抗体分子からの遺伝子と共に、Retsatポリペプチドに特異的な抗体分子に対する非ヒト遺伝子をスプライシングすることによって一般的に調整される。実質的なヒト分子を産生するために、組換えDNA技術を用いて非ヒト抗体の抗原結合領域(例えば、F(ab’)2、F(ab’)、Fv或いは高頻度可変領域)をヒト抗体のフレームワークへ導入することは望ましい。そのような「キメラ」分子を産生するための方法は一般的に既知であり、例えば米国特許第4,816,567号;第4,816,397号;第5,693,762号;及び第5,712,120号;国際公開第WO87/02671号及び第WO90/00616号;及び欧州公開第EP239400号において記載されており、これらに開示されていることはこの参照によって本明細書に組み込まれる。代わりに、ヒトモノクローナル抗体或いはそれの一部は、Huseら(Science 246:1275−81,1989)によって説明された一般的な方法に従って、Retsatポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードしているDNA分子に対するヒトB細胞cDNAライブラリを第一スクリーニングすることによって同定される。前記DNA分子は次に、クローニング及び増幅させ、望ましい特異性の抗体(或いは結合ドメイン)をコードする配列を得ることができる。ファージディスプレイ技術は、Retsatポリペプチド、断片、誘導体或いはそれらの誘導体に結合する抗体を選択するための別の技術を提供する(例えば、国際公開第WO91/17271号及び第WO92/01047号;及びHuse et al.,supraを参照のこと)。
本発明の別の観点によると、一本鎖抗体の産生に対して記載された技術(例えば、米国特許第4,946,778号及び第5,969,108号)は、Retsat−特異的一本鎖抗体を産生するために適用される。本発明の付加的な観点は、Fab発現ライブラリ(例えば、Huse et al.1989 supraを参照のこと)の構成に対して記載された技術を利用し、Retsatポリペプチド、断片、誘導体或いはそれらの誘導体に対する望ましい特異性を有するモノクローナルFab断片の素早く且つ容易な同定を可能にするものである。
免疫グロブリンも重鎖抗体となり得る。ラクダ、ヒトコブラクダ及びラマ(Tylopoda)などからの免疫グロブリンは、軽鎖なしに重鎖を有する重鎖抗体を形成することができる(例えば、Desmyter et al.,J.Biol.Chem.276:26285−90,2001;Muyldermans et al,J.Mol.Recognit.12:131−40,1999;Arbabi Ghahroudi et al.,FEBS Lett.414:521−26,1997;Muyldermans et al.,Protein Eng.7:1129−35,1994;Hamers−Casterman et al.,Nature 363:446−48,1993を参照のこと、これらに開示されていることはこの参照によって本明細書に組み込まれる)。重鎖抗体の可変領域は、一般的に「VHH」領域として言及される(Muyldermans et al.,TIBS 26:230−35,2001を参照のこと)。重鎖抗体のVHHは一般的にCDR領域を拡張する或いは変換されており、それ自体はCDR1及び/若しくはCDR4領域を拡張していた。重鎖抗体を産生する方法は、当業者には既知である(例えば、Arbabi Ghahroudi et al.,supra;Muyldermans et al.,supraを参照のこと)。
前記分子のイディオタイプを含む抗体は、既知技術によって産生される。例えば、そのような断片は、これに限定されるものではないが、前記抗体分子のペプシン消化によって産生され得るF(ab’)2断片、F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって産生され得るFab’断片、前記抗体分子をペプシン及び還元剤で処理することによって産生され得るFab断片、及びFv断片を含む。組換えFv断片もまた、例えば米国特許第5,965,405号に記載された方法を用いて真核細胞において産生され得る。
抗体の産生において、望ましい抗体のスクリーニングは本分野で既知である技術(例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法))で達成される。1実施例において、Retsatポリペプチドの特異的なドメインを認識する抗体は、そのドメインを含むRetsat断片に結合する産物に対して産生されたハイブリドーマをアッセイするために使用される。第一のRetsatポリペプチド誘導体に特異的に結合するが、異なるRetsatポリペプチドには特異的に結合しない抗体を選択するために、前記第一のRetsatポリペプチドにポジティブに結合し、前記第二の異なるRetsatポリペプチドに結合する抗体を欠く抗体に基づいて選択できる。
Retsatポリペプチドのドメインに特異的な抗体も提供される。前述の抗体は、本発明のRetsatポリペプチド配列の局在及び活性に関連する、本分野で既知である方法(例えば、画像化タンパク質、適切な生理的試料におけるそれらの測定レベル、診断方法において、及びそれらと同等のもの)において使用され得る。本発明の別の実施形態において(下記参照)、抗Retsat抗体及び抗原結合ドメインを含むそれらの断片は、細胞増殖を遅らせる、寛解する、或いは変換する、レチノイド代謝、皮膚及び/免疫機能及び制御に影響を及ぼす(例えば増加する或いは減少させる、若しくは変換する)ための薬剤及び組成物として使用される。
Retsatポリペプチド、断片、誘導体及び類似体に対する機能的アッセイ
Retsatポリペプチド、断片、誘導体及び類似体の機能的活性は、様々な方法によってアッセイされる。例えば、抗Retsat抗体への結合に対して、野生型Retsatポリペプチドと結合或いは競合する能力をアッセイする場合、本分野で既知である様々な免疫アッセイが使用される。そのようなアッセイは、これに限定されるものではないが、競合性及び非競合性アッセイシステムを含み、これは、放射性免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)「サンドウィッチ」免疫アッセイ、免疫放射線アッセイ、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、in situ免疫アッセイ(金コロイド、酵素或いは放射線同位元素標識、及びそれらと同等物を使用する)、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えばゲル凝集アッセイ、赤血球凝集アッセイ)、補体固定化アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、免疫電気泳動アッセイ、及びそれらと同等のものなどの技術を用いるものである(一般的にHarlow and Lane,supraを参照のこと)。抗体結合は、一次抗体上の標識を測定することによって検出できる。代わりに、前記一次抗体は、二次抗体或いは試薬の前記一次抗体への結合を測定することによって検出できる。前記二次抗体も直接標識され得る。免疫アッセイにおいて結合を検出するための多くの方法は、本分野で既知であり、本発明の範囲内であると考えられる。
別の実施形態において、オールトランスレチノールをオールトランス(13,14)−ジヒドロレチノール(下記)へ変換するRetsatポリペプチドの能力に関する。
Retsatポリペプチド、断片、誘導体、誘導体、及び抗体のin vivoでの使用
本発明はさらに、細胞増殖、レチノイド代謝、皮膚及び/若しくは免疫機能及び制御を調節する、1若しくはそれ以上の薬剤或いはそのような薬剤を含む組成物を投与する方法を提供する。そのような薬剤は、これに限定されるものではないが、上述されたようなRetsatポリペプチド、断片、誘導体及び類似体;(上述されたような)Retsatポリペプチド、断片、誘導体及び類似体に特異的な抗体;オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノール、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノイン酸、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノイド誘導体、及びRetsatポリペプチドアゴニスト及びアンタゴニストを含む。Retsat薬剤は、Retsat機能を変更することによって、癌、失明、皮膚及び免疫障害に関連する疾患を治療するために使用され得る。
一般的に、種由来の薬剤或いはレシピエントと同程度の種反応性(抗体の場合)を有する種由来の薬剤を投与することは一般的である。従って、Retsatポリペプチド、断片、誘導体、或いはそれらの類似体、或いはRETSAT核酸或いは断片若しくはそれらの類似体、若しくはヒトRetsatポリペプチドに対する抗体は、治療上或いは予防的に有効な量でヒトに投与される。
癌、失明、皮膚障害或いは病状及び/若しくは免疫障害に関連する疾患。そのような薬剤の例としては、これに限定されるものではないが、強誘導性プロモーターの制御下での抗−センスRETSAT核酸を含み、これらは特に肝臓、腎臓及び腸において活性であるものである。Retsat活性を減少させるために使用する他の薬剤は、抗−Retsat抗体、或いは以下に記載された例であるin vitroアッセイ或いは動物モデルにおいて使用して同定された薬剤を含む。
特定の実施形態において、RETSAT機能を減少させる薬剤は、Retsatポリペプチドの上昇したレベル(正常或いは望ましいレベルに相対的に)或いは機能に関連した疾患に対して治療的(予防的を含む)に投与される。例えば、前記薬剤は、そのタイプの正常細胞と比較して、Retsatポリペプチドが過剰発現した、遺伝的に欠損、或いは生物学的に反応亢進している患者に投与され得る。さらに、本発明の薬剤は、疾患或いは障害で投与され、ここにおいてin vitro(或いはin vivo)アッセイはRetsatアンタゴニスト投与の有用性を指示するものである。
Retsatポリペプチドのレベル或いは機能は、例えば患者の組織試料(生検からなど)を得て、発現されたRETSAT RNA或いはRetsatポリペプチドのRNA或いはポリペプチドレベル、構造及び/若しくは活性に対してそれをin vitroええアッセイすることによって検出され得る。従って、本分野では標準的な多くの方法が使用され、これは、限定されるものではないが、Retsatポリペプチドを検出及び/若しくは視覚化するための免疫アッセイ(例えば、ウェスタンブロット、免疫沈降、その後にドデシル硫酸ナトリウムゲル電気泳動(「SDS PAGE」)、免疫細胞化学、及びそれらと同等のもの)、及び/若しくはRETSAT mRNAを検出及び/若しくは視覚化することによってRETSAT発現を検出するためのハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンブロットアッセイ、ドットブロット、in situハイブリダイゼーション、定量的逆転写酵素−PCR、及びそれらと同等のもの)、とりわけ当業者には知られたものを含む。
治療される或いは予防され得る、癌、失明、皮膚状態或いは障害、及び免疫障害に関連する疾患は、これに限定されるものではないが、急性前骨髄球白血病、皮膚科学障害、及びそれらと同等のものを含む。
薬学的に許容可能な担体においてオールトランス(13,14)−ジヒドロレチノールの有効な量を含む本発明の組成物は、患者に投与される。特定の疾患の治療に有効であろうオールトランス(13,14)−ジヒドロレチノールの量は、疾患の本質に依存しており、標準的な臨床技術によって決定されるであろう。
例示的な実施形態において、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノール、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノイン酸、及び13,14−ジヒドロレチノイド誘導体、及び薬学的に許容可能な担体を有する組成物は投与される。
薬剤は、ヒト或いは非ヒト脊椎動物に投与される。特定の実施形態において、前記薬剤は、高齢のヒトに投与される。特定の実施形態において、前記薬剤は、他のレチノイドを約5%以下或いは約1%以下、若しくは約0.1%以下含むという点で、実質的に純粋である。他の実施形態において、薬剤の組み合わせが投与される。
薬剤は、例えば経口或いは局所投与を含むあらゆる適切な手段によって目へ送達される。局所投与の機序は、例えば目薬、眼内注射、或いは眼窩周囲注射を含むことができる。眼窩周囲注射は一般的に、前記薬剤を結膜へ或いは腱(目を覆っている繊維質組織)へ注射することを含む。眼内注射は一般的にガラス体への前記薬剤の注射に関する。特定の実施形態において、前記投与は、目薬或いは経口投薬形態によってなどの非侵襲性である。
薬剤は、薬学的に許容可能な溶媒及び本分野で日常的に使用されている技術を用いて投与用に処方される。溶媒は前記薬剤の溶解度に従って選択される。適切な眼科組成物は、目薬、注射或いはそれらと同等のものによってなど、目へ局所的に投与可能なものを含む。目薬の場合、前記処方は、例えば塩化ナトリウム、濃縮グリセリン及びそれらと同様物などの等張化薬剤;リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及びそれらと同等物などの緩衝薬剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノ−オレイン酸(ポリソルベート80としても言及される)、ポリオキシルステアリン酸40、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油及びそれらと同等物などの界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、パラベン及びそれらと同等物などの保存剤、及び他の成分などの眼科的に適合性のある薬剤を任意に含むこともできる。保存剤は、例えば約0.001〜約1.0%重量/容積のレベルで使用される。前記処方のpHは通常、眼科処方が許容できる範囲内であり、例えば約pH4〜8の範囲内である。
目へ若しくは目の中への注射に対して、前記薬剤は注射グレード生理食塩水において、注射可能なリポソーム溶液の形態において、或いはそれらと同等のもので提供される。眼内及び眼窩周辺注射は、本分野の当業者には既知であり、例えばOphthalmic Surgery:Principles of Practice,Ed.,G.L.Spaeth,W.B.Sanders Co.,Philadelphia,ペンシルバニア州.,米国,pages 85−87,1990を含む多くの刊行物に記載されている。
適切な経口投薬形態は、例えば錠剤、ピル、小袋、若しくはハード或いはソフトゼラチンのカプセル、メチルセルロース、或いは消化管において容易に溶解する他の適切な物質を含む。適切な非毒性固体担体も使用でき、これは例えば薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、カルボン酸マグネシウム、及びそれらと同等物を含む(例えば、Remington"Pharmaceutical Sciences",17 Ed.,Gennaro(ed.),Mack Publishing Co.,Easton,ペンシルバニア州,1985を参照のこと)。
前記薬剤の用量は、対象、投薬形態及びそれらと同等のものの臨床状態、条件及び年齢に依存して適切に選択される。目薬の場合、薬剤は例えば、1用量に対して約0.01mg、約0.1mg、或いは約1mg〜約25mg、〜約50mg、〜約90mgで投与される。目薬は、必要であれば1日1回若しくはそれ以上の回数投与される。注射の場合、適切な用量は、例えば前記薬剤の約0.0001mg、約0.001mg、約0.01mg、或いは約0.1mg〜約10mg、〜25mg、〜約50mg、或いは〜約90mgであり、1週間に1〜4回で投与される。他の実施形態において、約1.0〜約30mgの薬剤は、1週間に1〜3回投与される。
経口投与は、一般的に約1.0〜約1000mgの範囲で1日1〜4回、或いはそれ以上の回数である。経口投与に対する例示的な用量範囲は、約10〜約250mgを1日1〜3回である。
本発明の様々な実施形態において、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノールの徐放性を達成するような組成物を使用することは有用である。
癌、失明、皮膚状態及び障害、及び免疫障害に関連する疾患は、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノール、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノイド酸及び/若しくは13,14−ジヒドロレチノイド誘導体の投与によって治療される若しくは予防される。
本発明は、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノール、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノイド酸及び/若しくは13,14−ジヒドロレチノイド誘導体の有効な量を対象に投与する方法を提供する。一般的に、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノール、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノイド酸及び/若しくは13,14−ジヒドロレチノイド誘導体は、処方の前に実質的に精製される。前記対象或いは患者は、これに限定されるものではないが、ウシ、ブタ、ウシ、トリ、ネコ、イヌ、及びそれらと同等物を含む動物、及び、一般的には哺乳類、及び特定の実施形態ではヒトである。別の特定の実施形態において、前記対象は非ヒト哺乳類である。
導入する方法は、これに限定されるものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、眼内、硬膜内及び経口経路を含む。前記薬剤は、例えば注入或いはボーラス注射によって、上皮或いは粘膜皮膚裏打ち(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜)を介した吸収、及びそれらと同等のものなどのあらゆる簡便な経路によって投与され、他の機能的に活性な薬剤と共に投与される。投与は、全身的或いは局所的である。加えて、静脈内及びくも膜下腔内注射を含むあらゆる適した経路によってオールトランス(13,14)−ジヒドロレチノールを標的組織へ導入することは望ましい。
特定の実施形態において、治療を必要としている領域へ前記薬剤を局所的に投与することは望ましく、この投与は例えば(これに限定されるものではないが)手術中の局所的注入、外用適用、注射(例えば眼内注射)、カテーテルの手段によって、坐薬の手段によって、或いはインプラントの手段によって達成され、このインプラントは、多孔性、非多孔性、或いはシラスティック膜などの膜、或いは線維を含むゼラチン物質である。
更なる別の実施形態において、前記薬剤は放出制御システムにおいて運搬される。1実施形態において、ポンプが使用される(例えばLanger,supra;Sefton,Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201−40,1987;Buchwald et al.,Surgery 88:507−16,1980;Saudek et al.,N.Engl.J.Med.321:574−79,1989を参照のこと)。別の実施形態において、ポリマー材料が使用される(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.,1974;Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,N.Y.,1984;Ranger and Peppas,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61,1983を参照のこと。さらに、Levy et al.,Science 228:190−92,1985;During et al.,Ann.Neurol.25:351−56,1989;Howard et al.,J.Neurosurg.71:105−12,1989も参照のこと)。更なる別の実施形態において、放出制御システムは、治療上の標的の近接に設置されるので、全身的用量の画分のみが必要とされる(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,supra,Vol.2,pp.115−38,1984を参照のこと)。他の放出制御システムは、例えばLanger(Science 249:1527−33,1990)による概説に議論されている。
本発明は、薬学的組成物も提供する。そのような組成物は、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノール、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノイド酸及び/若しくは13,14−ジヒドロレチノイド誘導体の治療上有効な量と、薬学的に許容可能な担体とを有する。「薬学的に許容可能」という用語は、連邦或いは州政府の監督官庁によって許可されている、若しくは動物、より一般的にはヒトにおける使用に対して米国薬局方或いは他の一般的に認められている薬局方においてリストアップされていることを意味している。「担体」とは、前記薬剤が投与用に共に処方される、希釈剤、アジュバンド、賦形剤、安定剤或いは溶媒を意味している。薬学的な担体は、水及び油などの無菌溶液であり、石油、動物、野菜、或いはピーナッツ油、大豆油、ミネラルオイル、ゴマ油及びそれらと同等物の合成起源のものを含む。水は、前記薬学的組成物が静脈内に投与される場合、一般的な担体である。生理食塩水及び水性ブドウ糖及びグリセロール溶液も、液体担体、特に注射可能な溶液として使用される。適切な薬学的な賦形剤は、スターチ、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、胡粉(チョーク)、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、及びそれらと同等のものを含む。必要であれば、前記組成物は微量の湿潤剤或いは乳化剤、若しくはpH緩衝剤も含む。薬学的組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、ピル、カプセル、粉末、徐放性処方、及びそれらと同等のものの形態をとることができる。前記組成物は、トリグリセリドなどの伝統的な結合剤及び担体と組み合わせた坐薬として処方され得る。
経口処方は、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロール、炭酸マグネシウム、及びそれらと同等のものを含む。例示的な実施形態において、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノールを有する経口処方は、ビタミンとして処方される。適切な薬学的な担体の例としては、例えばRemington’s PharmaceuticalSciences(Gennaro(ed.),Mack Publishin Co.,Easton,Pa 1990において記載されている。そのような組成物は、一般的には精製された形態でのオールトランス(13,14)−ジヒドロレチノールの治療上有効な量と担体の適切な量とを共に含んでおり、患者への投与に適切な処方を提供する。前記処方は、投与の形態に適合すべきである。
1実施形態において、前記薬剤は、薬学的組成物をヒトへの静脈内投与に適合させるような日常的な手順に従って処方される。一般的に、静脈内投与に対する組成物は、無菌等張性水溶緩衝液における溶液である、必要であれば、前記組成物は可溶化剤も含むことができる。一般的に、前記成分は、別々に或いはユニット投薬形態に一緒に混合されて供給される。例えば、活性薬剤の量を示すアンプル或いはサケッタ(sachette)などの気密的にシールされた容器において、乾燥凍結乾燥粉末或いは水分を含まない濃縮物として供給される。前記組成物が注入によって投与される場合、無菌で薬学的なグレードの水或いは生理食塩水を含む注入ボトルで調剤される。前記組成物が注射で投与される場合、注射用の無菌水或いは生理食塩水のアンプルが提供され、前記成分は投与される前に混合される。
本発明の薬剤は、中性或いは塩形態として処方される。薬学的に許容可能な塩類は、塩化水素、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸及びそれらと同様のものに由来する基、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノ、エタノール、ヒスチジン、プロカイン及びそれらと同等のものに由来する基などの遊離アミノ基で形成されたものを含む。
前記薬剤の量は、特定の疾患或いは症状の治療に有効である量である。加えて、in vitroアッセイは、最適な投薬範囲を同定することを助けるために任意に使用される。前記処方で使用される前記薬剤の正確な用量も、投与経路、及び疾患の重症度に依存するものであり、医師の判断及び各患者の状況によって決定されるべきである。静脈内投与に適切な投薬範囲は、一般的に1キログラム体重当たり約20〜500マイクログラムの活性薬剤である。鼻腔内投与に適切な投薬範囲は、約0.01pg/kg体重〜1mg/kg体重である。有効な用量は、in vitro或いは動物モデルテストシステムからの用量反応曲線から推定される。経口投与は一般的に10%〜95%の活性成分を含む。
本発明は、本発明の前記薬学的組成物の成分の1若しくはそれ以上で満たされた1若しくはそれ以上の容器を有する、薬学的なパック或いはキットも提供する。そのような容器と共に医薬品或いは生物学的産物の製造、使用或いは販売を制御している政府官庁によって処方された形態における通知も任意に含まれ、そのような通知はヒト投与に対する製造、使用或いは販売の政府機関による承認を示している。
アゴニスト及びアンタゴニストのスクリーニング
RETSAT核酸、Retsatポリペプチド、及び断片、誘導体及びそれらの類似体は、RETSAT核酸、Retsatポリペプチド、及び断片、誘導体及びそれらの類似体に特異的に結合する候補化合物を検出するためのスクリーニングアッセイにおいても使用され、これらはアゴニスト或いはアンタゴニストとして使用される。アゴニスト及びアンタゴニストは、in vitro及び/或いはin vivoアッセイによって同定される。そのようなアッセイは、治療上有効な薬剤、或いは薬剤開発のリード化合物としての薬剤を同定するために使用される。従って、本発明はRETSAT核酸、Retsatポリペプチド、及び断片、誘導体及びそれらの類似体の活性或いは発現に特異的に影響を与える候補化合物を検出するためのアッセイを提供する。
一般的なin vivoアッセイにおいて、RETSAT核酸を発現している組換え細胞は、RETSAT発現に影響を与える候補化合物をスクリーニングするために使用される。RETSAT発現に対する影響は、オールトランス(13,14)−ジヒドロレチノイン酸及び/若しくは13,14−ジヒドロレチノイド誘導体の合成或いはレベルを含む。
候補化合物は、in vitroスクリーンによっても同定される。例えば、RETSAT核酸を発現した組換え細胞は、in vitroアッセイに対してRetsatポリペプチドを組換え的に産生するために使用され、Retsatポリペプチドに結合する候補化合物を同定する。候補化合物(Retsatの推定上の結合パートナー或いは小分子など)は、結合を促す条件下でRetsatポリペプチド(或いは断片、誘導体或いはそれらの類似体)と接触させ、次にRetsatポリペプチドに特異的に結合する候補化合物を同定する。同様な方法はRETSATをコードする核酸、或いは断片、誘導体或いはそれらの類似体と結合する候補化合物をスクリーニングするために使用される。上述のことを実行するために使用される方法は、当業者には一般的に知られており、ランダム或いは組み合わせペプチド或いは非ペプチドライブラリなどの多様性ライブラリを含み、これらはRetsatポリペプチドに特異的に結合する候補化合物に対してスクリーニングされたものである。例えば化学的に合成されたライブラリ、組換えファージディスプレイライブラリ、及びin vitro翻訳ベースライブラリなどの多くのライブラリは当業者に既知である。
化学的に合成されたライブラリの例は、Fodor et al.,Science 251:767−73,1991、Houghten et al.Nature 354:84−86,1991、Lam et al.Nature 354:82−84,1991、Medynski,Bio/Technology 12:709−10,1994、Gallop et al.J.Med.Chem.37:1233−51,1994、Ohlmeyer et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10922−26,1993、Erb et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422−26,1994、Houghten et al.Biotechniques 13:412−21,1992,Jayawickreme et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:1614−18,1994、Salmon et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11708−12,1993、国際公開第WO93/20242号、及びBrenner and Lemer,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5381−83,1992に記載されている。
ファージディスプレイライブラリの例は、Scott and Smith,Science 249:386−90,1990、Devlin et al.Science 249:404−06,1990、Christian et al.J.Mol.Biol.227:711−18,1992、Lenstra,J.Immunol.Meth.152:149−57,1992、Kay et al.Gene 128:59−65,1993、国際公開第WO94/18318号に記載されている。
in vitro翻訳ベースライブラリは、これに限定されるものではないが、国際公開第WO91/05058、及びMattheakis et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9022−26,1994に記載されているものを含む。非ペプチドライブラリの例として、ベンゾジアゼピンライブラリ(例えばBunin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:4708−12,1994を参照のこと)は使用のために適合される。ペプチドライブラリ(例えばSimon et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9367−71,1992を参照のこと)も使用される。使用されるライブラリの別の例において、ペプチドにおける前記アミド官能基がパーメチル化(permethylate)され、化学的に形質転換されたコンビナトリアルライブラリを産生しており、これらはOstresh et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11138−42,1994によって記載されている。
ライブラリのスクリーニングは、様々な共通で知られている方法のいずれかによって達成される。例えば、ペプチドライブラリのスクリーニングを開示している以下の参考文献:Parmley and Smith,Adv.Exp.Med.Biol.251:215−18,1989;Scott and Smith(supra);Fowlkes et al.BioTechniques 13:422−28,1992;Oldenburg et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5393−97,1992;Yu et al.Cell 76:933−45,1994;Staudt et al.Science 241:577−80,1988;Bock et al.Nature 355:564−66,1992;Tuerk et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6988−92,1992;Ellington et al.Nature 355:850−52,1992;米国特許第5,096,815号、第5,223,409号、及び第5,198,346号(全てLadnerら);Rebar and Pabo,Science 263:671−73,1994;及び国際公開第WO94/18318号を参照のこと。
特定の実施形態において、スクリーニングは、ライブラリメンバーと、固体相上に固定化されたRetsatポリペプチド(若しくは核酸或いは誘導体)とを接触させ、前記ポリペプチド(若しくは核酸或いは誘導体)に結合したそれらのライブラリメンバーを回収することによって実行される。そのようなスクリーニングの例は、「パニング」技術と呼ばれ、Parmley and Smith,Gene 73:305−18,1988;Fowlkes et al.(supra);国際公開第WO94/18318号;及び本明細書において以前参照した参考文献における例の方法によって記載されている。
動物モデル
本発明は動物モデルも提供する。1実施形態において、眼、失明、皮膚状態及び障害、及び免疫障害に関連する疾患に対する動物モデルが提供される。そのような動物は最初、生物学的不活性にさせるような(一般的に抗生物質耐性遺伝子などの異種性配列の挿入によって)、その染色体におけるRETSAT遺伝子と外来性RETSAT核酸との間の相同組換えを促進するために作成される。1観点において、相同組換えは、挿入された不活性化RETSAT遺伝子を有するベクターによって胚性(ES)幹細胞を形質転換することによって実行され、相同組換えが起こり、前記ES細胞を胚盤胞へ注入し、育成母へ前記胚盤胞を移植し、キメラ動物(「ノックアウト動物」)が誕生し、そこではRETSAT遺伝子が不活性化されているものである(Capecchi,Science 244:1288−92(1989))。前記キメラ動物を繁殖させ、更なるノックアウトマウスを産生する。そのような動物は、マウス、ラット、ハムスター、ヒツジ、ブタ、ウシ、及びそれらと同等のものであり、一般的には非ヒト哺乳類である。特定の実施形態において、ノックアウトマウスが産生される、ノックアウト動物は、眼、失明、皮膚状態及び障害、及び免疫障害に関連した疾患は発生すると予測されている、若しくは発生しやすいものであり、テスト候補化合物をスクリーニングするのに有用である。
本発明の異なる実施形態において、機能的RETSAT遺伝子が取り込まれ発現しているトランスジェニック動物は、眼、失明、皮膚状態及び障害、及び免疫障害に関連した疾患の動物モデルとして使用された。トランスジェニック動物は、眼、失明、皮膚状態及び障害、及び免疫障害に関連した疾患は発生すると予測されている、若しくは発生しやすいものであり、従ってそのような疾患の動物モデルとして使用される(例えば、テスト候補化合物をスクリーニングするため)。
以下の実施例は、本発明の様々な観点を説明するためだけに提供されたものであり、本発明をいかなる方法によっても制限すると解釈されるものではない。
実施例1
重要な生物学的機能に必須のレチノイド
レチノイドは、発生、免疫、細胞分化、及び脊椎動物の視覚などの多くの重要な生物学的機能に必須である。オールトランスレチノールの天然誘導体及びそれらの合成類似体の両者を含むレチノイドは、いくつかの活性化合物を介してその機能を発揮する。レシチン−レチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT)によるレチノールのエステル化は、レチニルエステルをもたらし、それはビタミンAの主要な貯蔵形態と視覚サイクルの中間体との両者を示す(Ruiz,et al.J Biol Chem 274:3834−3841,1999;Batten,et al.J Biol Chem 279:10422−10432,2004;Imanishi,et al.J Cell Biol 164:373−383,2004)。網膜色素上皮(RPE)において、未確認の酵素は、直接的に若しくは酸化されて視覚の発色団である11−cis−レチナールになり得る11−cis−レチノールを生成するエステル中間体を介してのどちらかで、オールトランスレチノールの異性化を行う(Kuksa,et al.Vision Res 43:2959−2981,2003)。レチナールに対する可逆的酸化は、ミクロソームの一部である短鎖アルコールデヒドロゲナーゼファミリー(SCAD)によって、あるいはクラスI、II、及びIVの中鎖アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)によって行われる(Chou,et al.J Biol Chem 277:25209−25216,2002;Duester,et al.Chem Biol Interact 143−144,201−210,200)。レチナールデヒドロゲナーゼ(RALDH)タイプ1、2、3、及び4によるレチナールの酸化は、レチノイン酸(RA)を生成し、それは核内受容体を介した発生及び細胞分化を制御する(Bhat,et al.Gene 166:303−306,1995;Penzes,et al.Gene 191:167−172,1997;Wang,et al.J Biol Chem 271:16288−16293,1996;Zhao,et al.Eur J Biochem 240:15−22,1996;Mic,et al.Mech Dev 97:227−230,2000;Lin,et al.J Biol Chem 278:9856−9861,2003;Chambon,Faseb J 10:940−954,1996)。RA−誘導性のチトクロムP450酵素であるCYP26A1及びB1は、極性の4−ヒドロキシ−RA、4−オキソ−RA、及び18−ヒドロキシ−RAへのRAの異化を行う(Abu−Abed,et al.J Biol Chem 273:2409−2415,1998;Fujii,et al.Embo J 16:4163−4173,1997;White,et al.J Biol Chem 271:29922−29927,1996;White,et al.Proc Natl Acad Sci USA 97:6403−6408,2000)。RA同化酵素及び異化酵素の特異的局在は、胚のパターン形成に必須である。他の経路によって、拮抗作用が細胞増殖を制御する14−ヒドロキシ−4,14−レトロ−レチノール(14−HRR)及び無水レチノール(AR)などのレトロレチノイドが生成される(Buck,et al.Science 254:1654−1656,1991;Buck,et al.J Exp Med 178:675−680,1993)。生体システムにおけるレチノイドの低レベル及び不安定な性質、及びそれらの生体内変化の機構が完全に理解されていないことを考慮すると、レチノイド代謝に関与する酵素の多くは、まだ発見されていない。
食事による供与源に加えて、レチノイドは、α−及びβ−カロチン並びにクリプトキサンチンなどのC40プロビタミンAカロチノイドの切断から生じ、オールトランスレチノールに変換されるレチナールを産生する。プロビタミンAカロチノイドも、組織、血清及び脊椎動物の卵黄においてレチノイドの主要な貯蔵形態を表す。動物のβ−カロチン代謝に関与する以下の2つの酵素のみが同定されている:β−カロチンを対称に切断しレチナールを産生するβ,β−カロチン−15,15’−モノオキシゲナーゼ(BCO−I)、及び非対称に切断しβ−イオノン及びβ−アポ−10’−カロテナールを生成するβ,β−カロチン−9’,10’−オキシゲナーゼ(BCO−II)(von Lintig,et al.Proc Natl Acad Sci USA 98:1130−1135,2001;Kiefer,et al.J Biol Chem 276:14110−14116,2001)。BCO−I及びIIは、トウモロコシ(Zea mais)由来の9−cis−ネオキサンチン開裂酵素であるVP14、及び植物由来の他のカロチノイド開裂酵素と配列相同性を有する(Giuliano,et al.Trends Plant Sci 8:145−149,2003に概説されている)。BCO−Iは、VP14との相同性に基づいて、ハエにおいて最初に同定され、後にマウス及びヒトからクローンニングされた(von Lintig,et al.Proc Natl Acad Sci USA 98:1130−1135,2001;Redmond,et al.J Biol Chem 276:6560−6565,2001;Yan,et al.Genomics 72:193−202,2001)。その他に、レチノイドのより限られた食事による供与源は、オールトランスレチニルエステル及び遊離オールトランスレチノールである。β−カロチン、レチナール、及びレチノイン酸に加えて、動物組織はまた、霊長類斑におけるルテイン及びゼアキサンチン、並びに血清及び大部分の組織におけるリコピンなど、相当量の非プロビタミンAのカロチノイドを保有する。開裂されていないβ−カロチンと同様に、非プロビタミンAのカロチノイドは、癌、黄斑変性症、及び心疾患の予防に関連する(Snodderly,Am J Clin Nutr 62:1448S−1461S,1995、及びFraser,et al.Prog Lipid Res 43:228−265,2004に概説される)。このように関心を持たれているにも関わらず、前記代謝及び動物におけるカロチノイドの生理学に関与する酵素の分子同定が待たれている。
強力な遺伝的アプローチ及び容易に同定可能な表現型は、植物及び細菌におけるカロチノイド合成の生化学的経路の発見を助けた。これらの酵素は、脊椎動物のカロチノイド若しくはレチノイド酵素を見つけるためのモデルとして役立つ可能性がある。最近、植物及びシアノバクテリアシネコシスティス(図21)におけるオールトランスリコピンへの7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピン(プロリコピンとしても既知)の異性化に関与する酵素が同定された(Park,et al.Plant Cell 14:321−332,2002;Isaacson,et al.Plant Cell 14:333−342,2002;Breitenbach,et al.Z Naturforsch[C]56:915−917,2001;Masamoto,et al.Plant Cell Physiol 42:1398−1402,2001;Giuliano,et al.Trends Plant Sci 7:427−429,2002)。図21に、植物及びシアノバクテリアのCRTISOによる触媒反応を示す。トマトCRTISO突然変異体は、7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピンの蓄積に起因して、それらのタンジェリン表現型で有名である(Zechmeister,et al.Proc Natl Acad Sci USA 21:468−474,1941)。CRTISO酵素のタンパク質配列は、オールトランスリコピンへのフィトエンの直接変化を触媒する酵素である非光合成細菌由来のCrtIと相同性を有する(Giuliano,et al.J Biol Chem 261:12925−12929,1986)。それはまた、植物由来のフィトエンデサチュラーゼであるPdsと、ζ−カロチンデサチュラーゼ若しくはZdsとへの類似性を生み出し、それらは、フィトエンから7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピンへの4つの不飽和化の工程間に、各々2つの二重結合を導入する(Pdsによる11,11’でのtrans−Hの脱離、及びZdsによる7,7’でのcis−Hの脱離)(Sandmann,Physiologia Plantarum 11 6:431−440,2002に概説される)。
本発明者らは、植物のCRTISOのタンパク質配列を使用して相同性タンパク質を調べ、脊椎動物及び無脊椎動物からの発現配列タグ(expressed sequence tags:ESTs)及び転写産物の推定上の翻訳によって予測される、少数の仮説タンパク質に類似点を発見した。形質移入細胞におけるマウスCRTISO様タンパク質の発現によって、それが13−14の二重結合でオールトランスレチノールの飽和を触媒することが明らかになり、従って、マウスCRTISO様タンパク質は、RetSatとされた。これは、トマトCRTISOとは対照的であり、トマトCRTISOは、リコピンのcis−trans異性化を触媒し、オールトランスレチノールに対してサチュラーゼ活性を有さない。さらに、飽和産物であるオールトランス13,14−ジヒドロレチノールは、正常レベルのビタミンAを含む食餌で維持される動物のいくつかの組織において検出される。
実施例2
材料及び方法
マウス及びサルRetSat及びトマトCRTISOのクローニング、及び誘導性発現を伴う安定した細胞株の生成。RPEをC57/BL6マウス若しくはマカクカニクイザル(カニクイザル)から顕微切断した。製造業者の手順に従って、マウス若しくはサルのRPEからのRNA及び成熟した赤トマトからのRNAを、MicroAqueous RNA Isolation Kit(Ambion、Austin、テキサス州)を使用して単離し、SuperScript II Reverse Transcriptase(Invitrogen、Carlsbad、カリフォルニア州)とオリゴ(dT)プライマーとを使用して逆転写した。マウスRetSatのcDNAを、Hotstart Turbo Pfu Polymerase(Stratagene,La Jolla、カリフォルニア州)と、5’−ATGTGGATCACTGCTCTGCTGCTGG−3’(フォワード)(配列ID番号:1)及び5’−TCTGGCTCTTCTCTGAACGGACTACATC−3’(リバース)(配列ID番号:2)のプライマーとを使用して増幅し、サルRetSatを5’−CAGTCGGAGCTGTCCCATTTACC−3’(フォワード)(配列ID番号:3)及び5’−AAATTCCTCTGACTCCTCCCTGATG−3’(リバース)(配列ID番号:4)のプライマーで増幅し、トマトCRTISOを5’−CTTTCCAGGGAGCCCAAAAT−3’(フォワード)(配列ID番号:5)及び5’−ACATCTAGATATCATGCTAGTGTCCTT−3’(リバース)(配列ID番号:6)のプライマーを使用して増幅した。マウスRetSatの発現のために、cDNAを
5’−CCTCTAGAGCCACCATGTGGATCACTGCTCTGCTGCTGG−3’(フォワード)(配列ID番号:7)及び
5’−ACTAGTCTACATCTTCTTCTTTTGTGCCTTGACCTTTGA−3’(リバース)(配列ID番号:8)のプライマーによって増幅し、テトラサイクリン誘導性の真核細胞発現ベクターであるpCDNA4/TO(Invitrogen)にXbaI/SpeIを使用してクローニングすると共に、トマトCRTISOを
5’−TCTAGAAGGAGGACAGCAATGGTAGATGTAGACAAAAGAGTGGA−3’(フォワード)(配列ID番号:9)及び5’−ACATCTAGATATCATGCTAGTGTCCTT−3’(リバース)(配列ID番号:10)のプライマーを使用して増幅し、pCDNA4/TOのXbaI部位にクローニングした。G.Khorana博士(MIT、Boston、マサチューセッツ州)から寄贈されたN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI−陰性HEK293S細胞に、tetR−発現プラスミドであるpCDNA6−TR(blaR)を形質移入し、ブラストサイジン耐性のあるコロニーを選択し、クローニングした。HEK−Khorana(HEKK)と称されるHEK−293Sの安定したtetR−発現クローンに、その後、マウスRetSat若しくはトマトCRTISOのどちらかのcDNAを含むpCDNA4/TO(zeoR)を形質移入し、zeocinで選択した。zeocin耐性クローンの全てを貯蔵し、活性アッセイに使用した。細胞をDMEM、10%ウシ胎仔血清にzeocin及びブラストサイジン抗生物質を加えたもので培養し、37℃、5%CO、及び100%湿度で維持した。
HEKK細胞におけるLRATタンパク質の誘導発現。他に記載されているように、マウスLratのcDNAをクローニングした。Lratを発現させるために、コード領域を5’−GCCACCATGAAGAACCCAATGCTGGAAGCT−3’(配列ID番号:11)及びACATACACGTTGACCTGTGGACTG(配列ID番号:12)のプライマーを使用して増幅した。そのPCR産物をpCR−Blunt II−TOPO vector(Invitrogen)に連結し、その後、pCDNA4/TOのEcoRI部位にサブクローニングした。TetR−発現HEKK細胞にpCDNA4/TO−Lratコンストラクトを形質移入し、zeocinで選択した。他に記載される抗LRATモノクローナル抗体を使用して、安定したクローンをLratタンパク質の発現のために確認した(2)。
細菌で発現した、Hisタグ化したマウスRetSat断片、ポリクローナル抗体、及びモノクローナル抗体産物の精製。マウスRetSatのcDNA(148MASPF…MTALVPM465ポリペチド断片をコードする)のヌクレオチド440〜1391に対応するRetSatのcDNAのNcoI断片を、誘導性の細菌発現ベクターであるpET30B(Invitrogen)のNcoI部位にクローニングした。これは、アミノ及びカルボキシルの両末端にヘキサ−ヒスチジンタグでタグ付けされた組換えタンパク質をもたらした。そのプラスミドを、BL−21RP細胞(Stratagene)に形質転換し、発現をIPTGで誘導した。マウスRetSatタンパク質(40kDa)の二重(His)−タグ化断片を、製造業者の手順(Qiagen、Valencia、カリフォルニア州)を使用してNi−NTA親和性によって精製した。その精製したタンパク質をゲル電気泳動によって分析した。in−gel(ゲル内)トリプシン消化に続いて、組換えRetSat断片の同一性を確認するために、溶出したトリプシンペプチドをLC/MSでミクロシークエンスすることによって分析した。前記精製したタンパク質を、前述のようにマウスに免疫性を与えるために使用し、従来方法によってモノクローナル抗体を産生した(Haeseleer,et al.J Biol Chem 277:45537−45546,2002;Adamus,et al.In Vitro Cell Dev Biol 25:1141−1146,1989)。ウサギポリクローナル抗血清をCocalico Biologicals Inc.(Reamstown、ペンシルベニア州)と共同で産生した。その血清及びモノクローナル抗体は、RetSatの非形質移入細胞と比較し、RetSat形質移入細胞の免疫細胞化学及び免疫ブロッティングによってそれらの特異性を試験した。製造業者の手順でHiTRAP protein G HP(Amersham、Piscataway、ニュージャージー州)を用いて、抗RetSat IgGをRetSat産生ハイブリドーマ細胞の腹水の上清から精製した。製造業者の手順に従って、Alexa Fluor 488 monoclonal antibody coupling kit(Invitrogen)を使用して、精製した抗体を蛍光プローブに連結した。
マウスRetSat転写産物のノーザンブロット分析。ノーザンブロット分析を、製造業者の手順に従って、レーン(FirstChoice Northern Blot Mouse Blot I、Ambion)につき、様々なマウスの組織からの2μgのpoly(A)RNAを含む、予め作られた市販のブロットを使用して行った。製造業者の手順に従って、[α32P]−放射性同位元素で標識されたプローブを、5’−TCTGGCTCTTCTCTGAACGGACTACATC−3’リバースプライマー及びAmbionのStrip−EZ probe synthesis kitを使用して、マウスRetSatのcDNAのrun−off PCRによって作製した。或いは、放射性同位元素でラベルされたアンチセンスのマウスβ−アクチンプローブを、T7プライマー及びpTRIamp18 β−actin template(Ambion)を使用して作製した。
マウスRetSatの免疫ブロッティング及び免疫組織化学分析。RetSatの膜結合性を定めるために、マウスの肝臓を、250mMのスクロース、5mMのジチオトレイトール、及び1×プロテアーゼ阻害反応混液(Sigma−Aldrich、St.Louis、ミズーリ州)を含む50mMのTris−HCl、pH8.0にdouncerを使用してホモジナイズした。核及び細胞外マトリクスを、30分間、20,000gの遠心分離によって沈殿させ、不要物を捨てた。高速細胞質上清及び核膜の後に生じる沈殿は、90分間、145,000gの遠心分離によって分離させた。核膜の後に生じる沈殿は、200mMのNaCl、1mMのEDTA、1%のTriton X−100、及び10μMのPMSFを含む10mMのTris、pH8.0にホモジナイズさせた。タンパク質濃度を、細胞溶解物の全体、高速細胞質上清、及び核膜の後の画分で、ブラッドフォードアッセイを用いて測定した(Bradford,Anal Biochem 72:248−254,1976)。等量のタンパク質をSDS−PAGEで分離し、抗RetSatモノクローナル抗体及び1/10ヤギ抗マウスIgG(Fc)(Promega、Madison、ウィスコンシン州)の1/1000希釈液で染色した。RetSatの組織特異的発現を調べるために、様々なマウスの組織を解剖し、douncerを用いて、10mMの2−メルカプトエタノール及び10μMのPMSFを含む10mMのTris、pH8.0でホモジナイズさせた。前記膜は、30分間、12,000gで遠心分離によって沈殿させた。タンパク質濃度はブラッドフォードアッセイを用いて測定した(Bradford,Anal Biochem 72:248−254,1976)。各々の組織の前記膜画分からの等量のタンパク質(10μg)は、SDS−PAGEによって分離させ、ウサギ抗RetSatポリクローナル抗血清及びアルカリホスファターゼ−結合1/10ヤギ抗ウサギIgG(Fc)(Promega)二次抗体の1/1000希釈液の免疫ブロッティングによって染色した。マウスモノクローナル抗RetSatは、ポリクローナル抗血清として分析された組織において同じ反応性を示した。形質移入していないHEKK若しくはHEKK−RetSat細胞は、glass bottom microwell dish(MatTek Corp.、Ashland、マサチューセッツ州)上のダルベッコ変法イーグル培地(Invitrogen)で培養した。RetSatの発現を1μg/mlテトラサイクリンを添加することによって誘導した。48時間後に細胞を回収し、PBS(136mMのNaCl、11.4mMのリン酸ナトリウム、pH7.4)中の4%パラホルムアルデヒド(Fisher、Hampton、ニューハンプシャー州)で10分間固定し、PBSで洗浄した。非特異的なラベルを防ぐために、前記細胞を室温で15分間、PBST(136mMのNaCl、11.4mMのリン酸ナトリウム、0.1%のTriton X−100、pH7.4)中の1.5%正常ヤギ血清(Vector Lab.,Inc.、Burlingame、カリフォルニア州)で培養した。前記細胞は、PBSTで希釈したAlexa 488−結合抗RetSatモノクローナルIgG中において4℃で一晩培養した。その切片をPBSTですすぎ、光退色を遅らせるために、90%グリセリン中の50μlの2%1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]オクタン(Sigma−Aldrich)にマウントした。共焦点画像のために、前記細胞を、Zeiss LSM510レーザー走査型顕微鏡(Carl Zeiss, Inc.、Thornwood、ニューヨーク州)で分析した。
レチノール異性体の精製及びレチノイドのHPLC分析。レチノイドに関連する全ての手順を、特に明記しない限り暗赤色灯の下で行った。レチノイドを、−80℃、アルゴン下でN,N−ジメチルホルムアミドに貯蔵した。全てのレチノール及びレチナール基質を、ダイオードアレイ検出器及びHP Chemstation A.08.03 softwareを有するHP1100 HPLCを使用して、1.4ml/minの流速で、10%酢酸エチル/90%ヘキサンで順相HPLC(Beckman Ultrasphere−Si、5μm、4.6mm×250mm、Fullerton、カリフォルニア州)で精製した。オールトランス13,14−ジヒドロレチノールのために、本発明者らは、290nmで吸光係数ε=16,500を用いた。以下の吸光係数を、レチノイド(M−1・cm−1中)に使用した:オールトランスretinol、325nmでε=51,770;9−cis−レチノール、323nmでε=42,300;11−cis−レチノール、318nmでε=34,320;13−cis−レチノール、328nmでε=48,305;オールトランスレチナール、ヘキサン中に368nmでε=48,000;及びオールトランスレチノイン酸、エタノール中に350nmでε=45,300。Garwin,et al.Methods Enzymol 316:313−324,2000。レチノイン酸をエタノールに溶かし、70%アセトニトリル、29%水、1%氷酢酸、流速1.4ml/minの均一濃度の移動層を有する逆相HPLC System II(Zorbax ODS、5μm、4.6mm×250mm、Agilent、Foster City、カリフォルニア州)によって分析した。
7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピンの精製及びカロチノイドの逆相HPLC分析。カロチノイドの抽出及び分析は、暗赤色灯の下で行った。1gのタンジェリントマトの果実を3回凍結融解し、2mlのPBS、2mlのエタノール、及び6mlのヘキサンでdouncerを用いて抽出した。有機相を乾燥させ、エタノール/テトラヒドロフラン(9:1)に再懸濁し、75%tert―ブチルメチルエーテル/25%メタノールの移動層及び流速1ml/minを有する逆相HPLC System I(Prontosil、200−3−C30、3μm、4.6mm×250mm、Bischoff Chromatography、Leonberg、ドイツ)で分析した。7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピンから成る抽出物の90%以上を、以下の特性を有するヘキサンの発表されたUV/VIS吸収スペクトルに基づいて同定した:shoulder at λ=417nm,ε=90,000M−1cm−1,λmax=437nm,ε=105,000M−1cm−1,shoulder at λ=461nm,ε=70,000M−1cm−1。Bradford,Anal Biochem 72:248−254,1976。
RetSatの酵素アッセイ及びCRTISO触媒反応。酵素アッセイのために、細胞を6ウェルプレートに播種し、RetSatの若しくはCRTISOの発現を分析の48時間前に1μg/mlテトラサイクリンで誘導した。基質の調製及び添加を暗赤色灯の下で行った。レチノイド基質を上記のようにHPLCによって精製し、最終濃度が4mMになるようにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶かした。タンジェリントマトの有機抽出物をアルゴン流下で乾燥させ、DMFに再懸濁した。前記基質を最終濃度が40μMになるように300μlの完全培地(テトラサイクリン1μg/ml)に希釈し、細胞に添加し、5%CO、湿度100%、37℃、暗下で一晩培養した。培地及び細胞を剥離させ、等量のメタノールに混合した。レチノール及びジヒドロレチノールの分析のために、前記メタノール:水の混合液を2容量分のヘキサンで抽出し、その後、有機相を乾燥させ、ヘキサンに再懸濁し、順相HPLCで分析した。レチナール及びジヒドロレチナールの分析を、12.5mMヒドロキシルアミンを有する前記メタノール:水の混合液の処理によって行い、続けて、有機抽出及び順相HPLCを行った。カロチノイド分析のために、前記有機相を乾燥させ、エタノール/テトラヒドロフラン(9:1)に再懸濁し、逆相HPLC System Iで分析した。レチノイン酸分析のために、1:1のメタノール:水の混合液を0.1体積分の12NのHClで酸性化させ、等体積のクロロホルムで抽出し、乾燥させ、エタノールで再懸濁し、逆相HPLC System IIで分析した。
オールトランス13,14−ジヒドロレチノールの化学合成。全ての試薬をSigma−Aldrich若しくはFlukaから購入し、さらに精製することなく使用した。溶媒を使用前に標準の手順で乾燥させた。レチノイドに関する全ての操作を、特に明記しない限り暗赤色灯の下で行った。エチルtrans−β−イオニリデンアセテートを生じさせるために、β−イオノンは、NaHの存在下で無水THFの中でトリエチルホスホノアセテートを用いて濃縮した。このエステルを、その後、LiAlH4で還元してアルコールにし、トリフェニルホスフィン臭化水素酸塩で一晩反応させ、Wittig塩を生じさせた。エチル4−オキソ−3−クロトン酸メチルは、触媒としてC上の10%Pdを使用して、H2でメタノールにおいて水素化し、エチル4−オキソ−3−酪酸メチルを生じ、その後そのエチル4−オキソ−3−酪酸メチルを、18−crown−6の存在下で、無水CHClの塩基としてt−BuOKを使用しWittig塩と反応させた。得られたエチル11−cis−及びオールトランス13,14−ジヒドロレチノエートの混合液を、LiAlH4で還元して13,14−ジヒドロレチノールにし、オールトランス異性体を、ヘキサンの5%酢酸エチルを使用したシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィによって、11−cis−から分離した。内部標準としてCDClを用いて、NMRデータをBruker500MHzスペクトロメータで記録した。合成オールトランス13,14−ジヒドロレチノールの1H−NMR分析:NMR(CDCl,δ,ppm)6.41(dd,1H,H−12,J11.3,14.75Hz),6.10−6.12(m,3H,H−7,H−8,H−10,J15.7Hz),5.6(dd,1H,H−11,J8.34,14.95Hz),3.67(m,2H,CH−15),2.41(m,1H,H−13,J6.7Hz),1.96(m,2H,CH−14),1.90(s,3H,CH−9),1.69(s,3H,CH−5),1.46(m,2H,CH−2),1.6(m,4H,CH−3,CH−4),1.06(d,3H,CH−13,J6.7Hz),1.00(s,6H,2×CH−1)。
オールトランス13,14−ジヒドロレチノールの異性化及びEI−MS分析。等量(UV吸収による)の合成化合物及び生合成化合物をエタノールに再懸濁し、30分間日光に晒し、続いて、等体積の水と2体積分のヘキサンとを添加した。その化合物を抽出し、有機相を乾燥させ、ヘキサンに再懸濁し、異性体の混合液を順相HPLCで分析した。MS分析のために、未知の生合成代謝産物と化学的に合成されたオールトランス13,14−ジヒドロレチノールとを、順相HPLCによって精製し、JEOL HX−110 direct probe mass spectrometerを用いてEI−MS分析によって分析した。両試料のフラグメンテーションパターンにおける一部のイオンは、288[M]+,273[M−CH]+,243[M−CHCHOH]+,215[M−CH(Me)(CHOH]+,202,187,159であった。スペクトルは、操作することなく示した。
ホモジナイズした細胞のサチュラーゼ活性の酵素アッセイ。細胞を10mMのジチオトレイトール及び0.32Mのスクロースを含む15mMのTris−HCl、pH8.0でホモジナイズした。細胞の1つのアリコートを、ネガティブコントロールとして95℃で10分間煮沸した。200μlの細胞アリコートに最終濃度1mMのATP及び40μMのオールトランスレチノールを添加した。一部のアリコートにまた、反応のレドックス状態を再生させるために、0.4mMのNADH若しくは0.4mMのNADPHを添加した。細胞ホモジネートを、暗下で1時間、37℃で振盪しながらレチノール基質で培養した。これに続いて、等体積のメタノールと2体積分のヘキサンでレチノイドの抽出を行った。有機相を乾燥させ、ヘキサンに再懸濁し、その後、順相HPLCで分析した。
オールトランスレチノール及びオールトランス13,14−ジヒドロレチノールのエステル化アッセイ。HEKK−LRAT細胞を、douncerを用いて250mMスクロース、10mMのTris−HClでホモジナイズした。RPEミクロソームを前述のように調製した。Stecher,et al.J Biol Chem 274:8577−8585,1999。DMF中の1mMストックの2μLの基質溶液を、20μLの10%BSA及び20μLのUV処理したRPEミクロソーム若しくはHEKK−LRAT細胞の100μLの膜ホモジネートを含む1.5mlエッペンドルフチューブに加え、10mMのBTP(pH7.5)緩衝液を総体積が200μLになるように加えた。その反応を37℃で10分間培養させた。レチノイドを300μLのメタノール及び300μLのヘキサンによって抽出した。その後、レチニルエステルを分離するために、最初にヘキサンの0.5%酢酸エチルを10分間使用し、その後、レチノールを分離するために、さらに10分間、ヘキサンの20%酢酸エチルを使用して、100μLのヘキサン抽出物を順相HPLCによって分析した。溶出を290nm及び325nmで測定した。
実施例4
マウス及びサルにおけるCRTISO様タンパク質のcDNAのクローニング
トマト及びシロイヌナズナのCRTISOのタンパク質配列は、他の生物種における同様のタンパク質を捜すために使用した。本発明者らは、細菌、古細菌、及び菌類のフィトエンデヒドロゲナーゼから、他の植物及び高等真核生物の他のフィトエンデヒドロゲナーゼ及びCRTISO様タンパク質まで、いくつかの門のタンパク質の全長に亘って、広範囲に及ぶ相同性を共有するタンパク質を発見した。高度に保存されたタンパク質のファミリーは、多くの脊索動物種で見られたが非脊索動物では見られなかった。尾索動物であるユウレイボヤ及びCiona savignyi等の無脊椎動物と同様に、この脊索動物のCRTISO様タンパク質ファミリーは、ヒト、マウス、ラット、ニワトリ、及びゼブラフィッシュ並びにフグ(Fugu rubipres及びTetraodon nigroviridis)等の脊椎動物にメンバーを有する。CRTISO様ホヤタンパク質は、多くの保存された残基を、関連する脊椎動物のタンパク質と共有するということが、利用できるホヤのゲノム配列(ヒトとの比較で41%の同一残基を含む、63%の保存された置換)の翻訳で判断された。トマト、シロイヌナズナ、及びシアノバクテリアシネコシスティスsp.(株PCC 6803)のCRTISOに対する、ヒト、サル、マウス、及びラットのタンパク質配列のアライメントを図1Aに表す。脊椎動物のCRTISO様タンパク質を、この酵素に観察される触媒活性の後にRetSatと名付けた(以下の欄を参照)。近隣結合アルゴリズムに基づく系統発生的デンドグラムは、単系統のように見え(図1B)、脊椎動物に見られる前記タンパク質は、植物のCRTISO(25〜27%の同一残基を含む41〜43%の保存された置換)と関連することを指し示す。このように、植物のCRTISO及び脊椎動物のRetSatの先祖の一員は、植物及び動物界が分岐する前に現れた。マウス、ヒト、及びラットのRetSatタンパク質が、それらの配列を通して広範囲に及ぶ相同性を共有するだけではく、それらのタンパク質をコードする遺伝子は、整列したタンパク質配列の同一の場所でイントロンが途切れるように、同一のエキソン−イントロン配列を有する。ヒト遺伝子は、第2染色体のマイナス鎖上に、12kbpのゲノムDNA及び11のエキソンを含む(図1C)。翻訳された配列の理論上のマス計算に基づくと、ヒトRetSatタンパク質(受入番号gi31377747)の3kbpのcDNAは、65kDaのタンパク質をコードする。スプライス受容部位に介在することなく、翻訳開始部位であろう部位の54bp上流にインフレームの終止コドンがあり、それはcDNAの5’−末端がタンパク質のアミノ末端に一致することを指し示す。
フィトエンデサチュラーゼと同様に、FAD−結合哺乳類物モノアミンオキシダーゼ及びプロトポルフィリノーゲンオキシダーゼを含むタンパク質スーパーファミリーにおいても観察される推定ジヌクレオチド−結合ドメインは、RetSatのN末端部分に位置する。Wierenga,et al.J Mol Biol 187:101−107,1986;Dailey,et al.J Biol Chem 273:13658−13662,1998。他の推定上の特徴は、小胞体(endoplasmic reticulum:ER)の膜への新生タンパク質を標的とする標準的なシグナル配列である。Blobel,et al.Symp Soc Exp Biol 33:9−36,1979。残基568〜588の疎水性の範囲は、膜貫通領域である可能性が最も高い。
マウスのcDNA及びマカクザルRetSatのオーソロガスタンパク質を、網膜及びRPEのRNAを逆転写してクローニングした。いくつかの独立したクローンの配列決定によって、配列が確認されることを保証した。提出したマウスRetSatのcDNAの配列(AY704159)は、データベースで利用できる配列(gi18483252)と異なる5塩基を有し、そのうちの2塩基は、アミノ酸変化をもたらす。過去の研究において、ラットRetSatの発現及び他の遺伝子産物は、ラット乳腺腺癌において下方制御されると確認され、ラットcDNAは、ラット乳腺腫瘍−7(rat mammary tumor−7:RMT−7)と仮に指定された(Wang,et al.Oncogene 20:7710−7721,2001)。酵素の更なる生化学的性質は、実行されなかった。我々がGenBankに寄託したマウスRetSat(AY704159)の配列は、複数のEST配列と完全に一致し、それは前記データベースで現在利用できる配列よりヒトRetSatと似ている。サルRetSatタンパク質(GenBank寄託AY707524)は、97%の保存された置換を有し、前記データベースで利用できるヒトタンパク質配列と94%の同一残基を含む(gi46329587)。
実施例5
マウスRetSatタンパク質の組織分布及び細胞内局在の性質決定
マウスRetSatの発現は、放射性同位元素でラベルされたアンチセンスRetSatプローブと、様々な組織からの等量のRNAを含む市販の予め作られたブロットとを用いて、ノーザンブロット分析によって分析した。RetSatのmRNAは、試験した組織の中では、肝臓及び腎臓で主に発現した2200bpの転写産物として現れる(図1Da、最上部のパネル)。本発明者らはまた、前記ブロット上のRNAの質を検査するために、同じ組織の2100bpの筋肉ではないβ−アクチンmRNAの発現を分析した(図1Da、下のパネル)。Alonso,et al.J Mol Evol 23:11−22,1986。検出されたアクチンのレベルに基づくと、脾臓及び肺組織からのRNAの量は多く存在する。これにもかかわらず、RetSatのmRNAは、図1D(a)の上のパネルにおいて、脾臓及び肺に対応するレーンで検出することができなく、一方で、前記ブロットの同じ暴露(30分)で、腎臓及び肝臓では明らかに存在する。Retsatの非常に低いレベルは、腎臓及び肝臓の近傍における他の組織において、前記ブロットのより長い暴露(5時間)後にのみ検出可能であった。これは、RetSatが腎臓及び肝臓において主に発現し、分析した他の多くの組織においては非常に低いレベルであることを指し示すRT−PCRによって確かめられた。ウサギのポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体を、組換えマウスRetSatに対して調製した。マウス及びウサギの両方の免疫原のために、細菌で発現された、マウスRetSatタンパク質の断片を抗原として使用した。結果として関連するタンパク質と交差反応する可能性のある推定ジヌクレオチド−結合ドメインを除去するように、組換えタンパク質断片を選択した。Khorana博士から入手したグリコシル化不完全HEK細胞であるHEKKに、テトラサイクリン(tetracycline:Tet)誘導性プロモーターの制御下で、tetR遺伝子及びマウスRetSatのcDNAを形質移入した。Reeves,et al.Proc Natl Acad Sci USA 99:13419−13424,2002。形質移入細胞の安定したクローンを選択し、貯蔵し、更なる分析に使用した。これらの細胞をHEKK−RetSatと指定した。ポリクローナル抗体(図1Db)及びモノクローナル抗体(図2D)の両方は、マウスRetSatタンパク質の予測された質量と同様で、且つTet誘導性HEKK−RetSat細胞で検出されたタンパク質の質量と同一の、70kDaの特異的タンパク質と反応した。いくつかの組織からの等量のタンパク質を、SDS−PAGE及び抗RetSatポリクローナル抗体でのイムノブロッティングによって分析した。RetSatタンパク質は、多くの組織において検出され、肝臓、腎臓、及び小腸(図1Db)において最も高い発現が見られた。この発現パターンはまた、モノクローナル抗RetSat抗体でのイムノブロッティングによって確かめられた。
図1は、植物及びシアノバクテリアのCRTISOに類似する脊椎動物のタンパク質の検証を示すものである。(A)ヒトRetSat(RetSat Hom−gi46329587)の配列比較、マカクザルRetSat(RetSat Maq−AY707524提出配列)マウスRetSat(RetSat Mus−AY704159提出配列)、及びトマトCRTISO(CRTISO Lyc−gi19550437)、シロイヌナズナCRTISO(CRTISO Ara−gi42561764)、及びシアノバクテリアCRTISO(CRTISO Syn−gi16331999)を有するラットRetSat(RetSat Rat−gi34855900)。黒地に白文字は、同一の残基を表す。灰色地に白文字は、分析した生物種の1種を除いてすべてにおいて保存された置換を表すと共に、薄い灰色地に黒文字は、分析した7種のうち4種において保存された置換を指し示す。点線は、アランメントを引き延ばすために導入したギャップを表す。前記アランメントは、ギャップペナルティーを有するprogram T−Coffee及びmatrix BLOSUM62 with gap penalties:existence−11,extension−1を使用して形成した。前記シグナルペプチド及び推定ジヌクレオチド結合モチーフ等の配列に基づく予測が指し示される。Henikoff,et al.Proc Natl Acad Sci USA 89:10915−10919,1992。CRTISO様酵素の系統樹を、進化距離を指し示す数と共にClustalW−neighbor−joining distance algorithmを使用して形成した(B)。Saitou,et al.Mol Biol Evol 4:406−425,1987。ヒトRetSatとの類似パーセントを遺伝子名の傍に括弧で示した。(C)第2染色体85,556,195から85,543,754までのマイナス鎖上に見られるヒトRetsat遺伝子構造。番号付けしたブラックボックスはエキソンを指し示し、ホワイトボックスは非翻訳領域を指し示し、ラインはイントロンを表す。各々のイントロンの長さは、kbpで示す。翻訳の開始(ATG)及び停止も指し示す。(D)マウスRetSatの組織分布。(a)様々なマウス組織(上部パネル)におけるマウスRetSat発現のノーザンブロット分析は、マウスRetSatが分析した組織の中では肝臓及び腎臓において主に発現することを指し示す。対照のハイブリダイゼーションは、筋肉ではないβ−アクチン(下部パネル)に対するアンチセンスプローブを用いて、同じブロットを取り除き、再プローブすることによって行われた。検出された転写産物の大きさをパネルの右側に示す。レーンにつき10μgのタンパク質を含む様々なマウス組織の溶解物を、ウサギポリクローナル抗マウスRetSat血清を使用して免疫ブロッティングにさらした(b)。HEKK−RetSatでラベルされたレーンは、1μgの総装填タンパク質に対応する、Tet−誘導性のHEKK−RetSat細胞の溶解物からのマウスRetSatタンパク質の免疫反応性を示す。ウサギポリクローナル抗体若しくはマウスモノクローナル抗体のどちらかによって免疫ブロッティングされた形質移入していない細胞の溶解物では、免疫反応性のバンドはない。マウスRetSatの見かけの分子量は70kDaであり、パネルの右側に示す。
マウスRetSatタンパク質の細胞内局在を、抗RetSatモノクローナル抗体を用いた免疫細胞化学によって研究した。最初に、Tet−誘導性HEKK−RetSat細胞及び形質移入していない細胞を染色することによって、前記抗体の特異性を試験し、それは前記抗体では反応を示さなかった(図2A及びB)。HEKK−RetSat細胞の染色は、核周辺膜及び小胞体膜の染色に一致し、マウスRetSatは形質移入細胞の小胞体区画に標的とされることを指し示す(図2C)。細胞膜若しくは原形質膜は染色されない。細胞下画分は、RetSatがモノクローナル抗体でのマウス肝細胞の細胞質性上清の免疫ブロッティングによって検出できない膜結合タンパク質であることを立証した(図2D)。70kDaの見かけの分子量を伴って移動するタンパク質は、肝臓のミクロゾーム膜及びHEKK−RetSat溶解物の両方において見られる(図2D)。このタンパク質は、RetSatモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗RetSat抗血清のどちらかを用いた、形質移入していない細胞の溶解物にはなかった。
図2に形質移入細胞におけるマウスRetSatの細胞内局在を示す。抗マウス−RetSatモノクローナル抗体を、Tet−誘導性HEKK−RetSatの形質移入細胞(A)及び形質移入していない細胞(B)を染色するために使用した。より高倍率で分析した、抗RetSatモノクローナル抗体で染色したHEKK−RetSat細胞は、形質移入細胞におけるRetSatの核周辺膜及び網状膜局在を示す(C)。スケールバーは、20μmを表す。(D)マウス肝細胞におけるRetSatタンパク質の細胞内分析。マウス肝細胞の細胞質上清、核の後の膜画分、及び全細胞溶解物からの等量のタンパク質の免疫ブロッティングは、RetSatタンパク質が膜結合性であることを指し示す。70kDaの見かけの分子量を有するタンパク質の免疫反応性のバンドは、マウスRetSatタンパク質と同定され、Tet−誘導性HEKK−RetSat細胞の溶解物におけるその存在によって確かめられた。前記ブロットを抗マウスRetSatモノクローナル抗体でプローブした。
実施例6
トマトCRTISO及びマウスRetSatは、異なる酵素活性を示す
トマトCRTISOを、新しい赤いトマト果実の皮及び果肉から単離されたRNAからクローニングした。トマトCRTISOを、誘導性プロモーターの制御下でHEKK細胞において発現させた。トマトCRTISOの天然の基質である7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピンを、7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピンを蓄積するタンジェリントマトの有機抽出によって単離した。Zechmeister,et al.Proc Natl Acad Sci USA 21:468−474,1941。タンジェリントマト抽出物は、大部分が7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピンから成る(90%超)ということが、発表されたスペクトルと一致する主なピークの逆相HPLC分析及びUV吸収スペクトルによって決定された。(ピークS、図3Aa)。7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピンは、オールトランスリコピンの475nmのλmaxと比較すると、シフトした440nmの吸収最大値λmaxを示し、明確なUV吸収スペクトルを有する。Hengartner,et al.Helvetica Chimica Acta 75:1848−1865,1992。形質移入していないHEKK、RetSat−、及びCRTISO−発現細胞を、7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピンの存在下で暗下で培養した(図3A)。その反応の産物を、逆相HPLC System Iで分析した。形質移入していない細胞若しくはRetSat−発現細胞のどちらかから溶出したカロチノイドの分析結果には違いが見られなかった(図3Aのa及びb)。予想通り、CRTISO発現細胞は、475nmのλmaxで(図3AcのP)、基質である7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピン(図3AcのS)をオールトランスリコピンに変えた。オールトランスリコピンを、Kurt Bernhard博士(CaroteNature GmbH、スイスLupsingen)及びRegina Goralczyk博士(Roche Vitamins Ltd.、スイスBasel)から寄贈された利用可能な標準を有する、その吸収スペクトル及び共溶出に基づいて特定した。CRTISOはまた、図3Aの化合物ラベル1への、7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピンの変化を触媒し、本発明者らは、その吸収スペクトルに基づいて、7,9di−cis−リコピン異性体と仮に特定した。Hengartner,et al.Helvetica Chimica Acta 75:1848−1865,1992。この観測は、CRTISOの二段階の反応機構を示唆し、それは、第一のカロチノイドの末端における両方のcis結合が異性化され、その後、もう一方のカロチノイドにおける両方のcis結合が異性化されるものである。この化合物はまた、元のトマト抽出物に存在し、(ピーク1、図3Aのa及びb)他の調査者によって報告されるように、熱若しくは光誘発異性化は、7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピンを、より遅い速度で7Z,9Z−di−cis異性体に変換させ得る。(artley,et al.Eur J Biochem 259:396−403,1999)。
様々なカロチノイド及びレチノイドの基質における本発明者らの分析は、本発明者らがオールトランスレチノールの存在下でRetSatの活性を調査することをもたらした。前記反応の産物が順相HPLCによって分析されるとき、オールトランスレチノール(ピークS、図3B)と共に暗下で培養されたRetSat発現細胞が、それをλmaxが290nm(ピークP、図3Bb)である極性の小さい化合物に変換することに、本発明者らは注目した。そのピークは、形質移入していないCRTISO発現細胞にはなかった。一晩培養する間に発生したレチノール(ピーク2、3、及び4、図3B)のシス異性体は、バックグラウンドに関係なく全ての細胞にあった。浅色移動されたUV吸収の最大値290nmに基づいて、本発明者らは、新しい化合物は、325nmのλmaxを示す親化合物であるレチノールと比較して、1つ少ない二重結合を有すると推論した。文献調査によると、オールトランス13,14−ジヒドロレチナールが289nmで最大吸収を示すことを指し示す(Yan,et al. J Biol Chem 270:29668−29670,1995)。未知化合物がオールトランス13、14−ジヒドロレチノールであるという仮説を証明するために、それを図22に図示するように化学的に合成し、HPLCによって精製し、1H−NMRスペクトルによって特徴付けた。図22にオールトランス13、14−ジヒドロレチノールの合成を示す。a)(EtO)P(O)CHCOOEt.NaH,THF,rt,24時間;b)LiAlH,EtO,0℃,30分;c)PhHBr,MeOH,rt,24時間;d)H(バー),MeOH,Pd/C,rt,24時間;e)tert−BuOK,18−crown−6,CHCl,室温〜−78℃〜室温,12時間。RetSat発現細胞によって産生される未知化合物を、順相HPLCからの適切な画分を集めることによって精製した。未知の生合成化合物及び合成オールトランス13、14−ジヒドロレチノールの純度を、順相HPLCによって分析した(図4Aのa及びb)。精製した未知化合物の量では、本発明者らは、その1H−NMR分析を行うことができなかった。しかし、結合した場合に1つのピークとして共に溶出されるように、オールトランス13、14−ジヒドロレチノール及び未知化合物は、順相HPLCにおいて、クロマトグラフィーの同じ特性を示す(図4Ac)。その2つの化合物は、同一のUV吸収スペクトル(図4B)を有し、等量の2つの化合物における光誘発性異性化は、溶出特性及び溶出の強度(図4C)の両方が同一の一連のシス異性体を生成する。合成オールトランス13、14−ジヒドロレチノール及び抽出された化合物のアセチル化は、順相HPLCにおいて共に溶出するエステル化合物を産生した(図示せず)。さらに重要なことに、MS分析は、生合成化合物が、親化合物の質量から2ダルトンの増加である288のm/z質量のオールトランスレチノール(m/z=286)を有することを明らかにした(図4Da、挿入図)。この観察された質量は、合成オールトランス13、14−ジヒドロレチノールの質量と同じものである(図4Db、挿入図)。合成化合物及び生合成化合物の両方のMSフラグメンテーションパターンは、同一である(図4Dのa及びb)。C13が13,14−ジヒドロレチノールのキラル中心になるため、更なるNMR分析が、生合成化合物の絶対配置を決めるのに必要である。これらの所見は、本発明者らに、図23に図示するように、RetSatがオールトランスレチノールの13−14の二重結合の飽和反応を触媒することを提示した。図23に、オールトランスレチノールをオールトランス13、14−ジヒドロレチノールに変換するRetSatによって触媒される反応を示す。
図3に、形質移入細胞のトマトCRTISO及びマウスRetSatの酵素活性を示す。(A)オールトランスリコピンへの7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピンの変換におけるトマトCRTISO及びマウスRetSatの効果の分析。抽出され、オールトランスリコピン産物(P)への7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピン基質(S)の変換のための、逆相HPLC System Iによって分析された7Z,9Z,9’Z,7’Z−tetra−cis−リコピン基質(S)と共に細胞を培養した。その分析は、前記変換は、トマトCRTISO (c)を発現している細胞では起こるが、形質移入していない細胞(a)若しくはRetSat発現細胞(b)では起こらないことを指し示す。吸収スペクトルが7,9di−cis−リコピンと一致する化合物は、全ての細胞において及びCRTISO発現細胞においてはより強く観察された(Ruiz,et al.J Biol Chem 274:3834−3841,1999によって指し示される)。(B)新しい産物へのオールトランスレチノールの変換におけるトマトCRTISO及びマウスRetSatの効果の分析。抽出され、最大吸収ピークが290nmである新規な産物(P)へのSの変換のための順相HPLCによって分析されるオールトランスレチノール基質(S)と共に細胞を培養した。その分析は、前記変換は、マウスRetSat(b)を発現している細胞では起こるが、形質移入していない細胞(a)若しくはCRTISO発現細胞(c)では起こらないことを指し示す。13−cis−レチノール、9,13−di−cis−レチノール、及び9−cis−レチノールと一致する吸収スペクトルを有する更なるピークは、バックグラウンドに関係なく全ての細胞において観察され、おそらくは熱の異性化の結果である(Batten,et al.J Biol Chem 279:10422−10432,2004;Imanishi,et al.J Cell Biol 164:373−383,2004;Kuksa,et al.Vision Res 43:2959−2981,2003)。その実験を二つ組の試料で繰り返し行った。
図4は、マウスRetSatによるオールトランスレチノールの変換の生合成産物の同定を示すものである。HPLCで精製された、RetSat反応の生合成産物を、順相HPLCでのその溶出特性について13,14−ジヒドロレチノールと比較した(A)。オールトランス13、14−ジヒドロレチノール(a)及び生合成産物(b)の保持時間は同じであり、2つの化合物を混合したときは、1つのピークとして共に溶出する。2つの化合物の吸収スペクトルは、290nmで最大吸収となり、同じである(B)。オールトランス13、14−ジヒドロレチノール及び生合成化合物は、光誘発性異性化に続いて、同じパターンの異性体を生成する(C)。生合成産物(a)及びオールトランス13、14−ジヒドロレチノール(b)の電子衝突MS分析は、それらが、レチノールに2Hを加えたもの(D)と一致する288m/zの同じ質量を有することを示す。基準ピークを、挿入図に示す。生合成化合物(a)及びオールトランス13、14−ジヒドロレチノール化合物(b)のMSフラグメンテーションパターンは、それらが同じ質量及び相対強度のイオンを生成することを示す。
実施例7
マウスRetSatの基質選択性
前記RetSatの基質特異性を精製したレチノール異性体を用いて調べた。RetSat発現性細胞を前記異種のレチノール異性体と共に一晩培養した。前記異性体は、順相HPLC分析により確認した場合、添加時点においては95%以上純粋であった。しかしながら、一晩のインキュベーションの期間において、レチノールのシス−異性体はトランス異性体に変換され、その後、他のシス−レチノール異性体に戻り、これにより結果の解釈が複雑になった。オールトランスレチノールは、生成したオールトランス13,14−ジヒドロレチノールの量(ピーク2、上部左)及び使用したオールトランスレチノール(ピーク4、図5、実線−灰色及び破線−黒トレースは形質移入されていないRetSat発現性細胞をそれぞれ表す)の量に基づくと、RetSatに対してかなり良い基質であった。全反応においてオールトランス13,14−ジヒドロレチノール生成物のみが形成され、シス異性体は全く検出されなかった。シス−レチノール異性体を用いた全アッセイにおいて、生成したオールトランス13,14−ジヒドロレチノールの量は、前記反応において存在し且つ利用したオールトランスレチノールの量に相関する。その一方で、シス−レチノール基質の量は、RerSat発現性(破線−黒トレース)又は形質移入していない細胞の一方において同一のままであった。この事実に基づくと、オールトランスレチノールは、RetSatに対して好ましい基質のようであった。シス−レチノール異性体と共に培養した細胞において見出された前記オールトランス13,14−ジヒドロレチノールは、前記シス−レチノール基質の自発的異性化に起因するオールトランスレチノールから生成されたものであった。
図5は、マウスRetSatの基質の異性体について示したものである。Tet−誘導性HEKK−RetSat細胞をレチノールの純粋な異性体と共に(HPLCによる95%を超える純度、培養前にアッセイした)一晩培養した。培養後、レチノイドを溶出し、順相HPLCにより分析した。13,14−ジヒドロレチノールのほとんどの異性体の最大吸収が、オールトランス13,14−ジヒドロレチノールの最大波長である290nmから5nm未満の相違があったため、13,14−ジヒドロレチノール異性体の生成を290nmでモニターした(図示せず)。各パネルにおいて、矢印は、組織培養における一晩の培養の間に熱異性化により生成する前記基質を更なるレチノール異性体と区別するために調べた前記基質を指し示す。数は、吸収スペクトル、及び高純度の標準、具体的には、13−シス−レチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノール、9−シス−レチノール、オールトランスマインスレチノール、9,13−ジ−シス−レチノール、及び11−シス−レチノールの高純度の標準との比較に基づいて溶出したピークの同一性を指し示す。Ruiz,et al.J Biol Chem 274:3834〜3841,1999;Batten,et al.J Biol Chem 279:10422〜10432, 2004; Imanishi, et al. J Cell Biol 164:373〜383,2004;Kuksa,et al.Vision Res 43:2959〜2981,2003;Chou,et al.J Biol Chem 277:25209〜25216,2002;Duester,et al.Chem Biol Interact 143〜144,201〜210,2003。13,14−ジヒドロレチノールの異性体は、前記オールトランス異性体以外は全く検出されなかった。右下のパネルにおける保持時間は溶媒システムの変動のために、徐々に長くなっている。この実験は3回繰り返し行った。
我々はまた、レチナール又はレチノイン酸がRetSatにより飽和され、相当する13,14−ジヒドロレチナール又は13,14−ジヒドロレチノイン酸になるか否かを調べた。レチナール−オキシムの殆ど検出できない値及びレチノールの出現(ピーク3 図6A)から明らかなように、レチナールは細胞との培養によりレチノールにほぼ完全に還元された。Retsat発現性細胞において、オールトランスレチノールをその後容易にオールトランス13,14−ジヒドロレチノール(図2、図6A)に変換した。合成した13,14−ジヒドロレチナール−オキシム誘導体(波長最大値=290nm)を同一のHPLCシステムで調べ、生成物溶出条件を確立した(図6B及び挿入図のスペクトル)。しかしながら、ジヒドロレチナール−オキシムは、レチナールで培養したRetSat発現性細胞中に全く検出されなかった(6〜8分の溶出時間 図6A)。培養した細胞中でレチナールをレチノールに急激に変換した場合、RetSatの基質であることを決定的に確立することは可能ではなかった。
図6は、オールトランスレチナールに対するRetSat活性について示す。(A)RetSat発現性細胞におけるレチナール変換の分析。Tet−誘導性HEKK−RetSat又は形質移入していない細胞を純度の高いオールトランスレチナール(HPLCによると>99%の純度、培養前にアッセイした)を一晩培養した。培養後、ヒドロキシルアミンでレチナールを誘導体化し、溶出し、順相HPLCにより分析した。13,14−ジヒドロレチナールのシン及びアンチ−オキシムの存在を290nmでモニターした(注入後6〜8分後と予想)。ピーク数は、13−シス−レチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノール及びオールトランスレチノールを表す。Ruiz,et al.J Biol Chem 274:3834〜3841,1999;Batten,et al.J Biol Chem 279:10422〜10432,2004;Kuksa,et al.Vision Res 43:2959〜2981,2003。(B)ヒドロキシアミンを用いて誘導化した13,14−ジヒドロレチナールの合成の基準を生成物溶出プロファイルを確立するため順相のHPLCにより調べた。挿入図は、13,14−ジヒドロレチナール−オキシムの異種の異性体の図を示す。
レチノイン酸での細胞培養によれば、RetSatによる飽和のための基質ではないことが示唆される(図7A)。合成した13−14−ジヒドロレチノイン酸基準をそれらの溶出条件を確立するために調べた(図7B)。13−シスレチノイン酸(ピーク1、図7A)は、オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸(ピーク7、図7B)と共溶出するが、前記2つの化合物の吸収スペクトル(図7A及びB挿入図)は、異なり、それにより我々は13,14−ジヒドロレチノイン酸はレチノイン酸で培養されたRetSat発現性細胞中で検出され得ないと結論できる。
図7は、オールトランスレチノイン酸に対するRetSat活性を示す。(A)RetSat発現性細胞中のレチノイン酸変換の分析。Tet−誘導性HEKK−RetSat又は形質移入していない細胞を純度の高いオールトランスレチノイン酸(HPLCによる>90%の純度、培養の前にアッセイした)を一晩培養した。培養後、レチノイン酸を溶出し、逆相HPLCシステムIIにより分析した。13,14−ジヒドロレチノイン酸異性体の存在を290nmでモニターした(注入後25〜30分と予想)。ピーク数は、13−シス−レチノイン酸、9,13−ジ−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸及びオールトランスレチノイン酸を表す。Ruiz,et al.J Biol Chem 274:3834〜3841,1999;Batten,et al.J Biol Chem 279:10422〜10432,2004;Kuksa,et al.Vision Res 43:2959〜2981,2003;Imanishi,et al.J Cell Biol 164:373〜383,2004。(B)13,14−ジヒドロレチノイン酸の合成の基準の異性の混合物を生成物溶出プロファイルを確立するために逆相HPLCシステムIIにより調べた。挿入図は、13,14−ジヒドロレチノイン酸の異種の異性体のスペクトルを示す。星印(*)は、無関係な化合物を示す。この実験を三つ組で行い、繰り返し行った。
熱異性化を回避するために、前記基質を、更なる共同因子を伴う或いは伴わないホモジナイズしたミクロソームRetSat膜中で調べた。RetSat発現性細胞由来の膜ホモジネートをオールトランスレチノールで培養し、その反応の生成物を順相HPLCにより調べた。図8の実線−黒トレースのラベル2と付したその溶出ピークにより示唆されるように、生成したオールトランス13,14−ジヒドロレチノールは、ほとんどなかった。還元したジヌクレオチド共同因子であるNADH又はNADPHの添加は、前記反応の収量に何ら影響がなかった。対照に関しては、形質移入していない細胞(灰色トレース)由来の膜、及びRetSat発現性細胞(破線−黒トレース)由来の膜は、何ら活性を示さなかった。細胞をホモジナイズすると、酸化還元状態に影響が及ぶこと或いは重要な共同因子の喪失によりRetSatの活性が破壊された。インビトロRetSatの低活性は、CRTISO及びフィトエンデサチュラーゼの十分な不安定性を考慮すると、驚きではない。Park,et al.Plant Cell 14:321〜332,2002;Cunningham,et al.Annual Review of Plant Physiology and Plant Molecular Biology 49:557〜583,1998。
図8は、ホモジナイズした細胞中のRetSat活性を示す。形質移入していない細胞(実線−灰色トレース)又はTet−誘導性HEKK−RetSat細胞(実線−黒トレース)をホモジナイズし、オールトランスレチノール基質で培養し、引き続きレチノイド溶出、順相HPLC分析を行った。その溶出プロファイルを290nmでオールトランス13,14−ジヒドロレチノールに関してモニターした。対照サンプル(破線−黒トレース)において、HEKK−RetSat細胞由来の細胞ホモジネートを基質での培養の前に、10分間95℃で煮沸した。0.4mMのNADH又はNADPHの添加は、オールトランス13,14−ジヒドロレチノールの収率に何ら影響を与えなかった。この実験を2つ組で行った。
実施例8
オールトランス13,14−ジヒドロレチノールは正常食事で維持された動物のいくつかの組織において検出される
肝臓及び腎臓などの主要な器官におけるRetsatが存在によって、本発明者らはオールトランス13,14−ジヒドロレチノールが組織内に検出されるかどうかを検討した。オールトランス13,14−ジヒドロレチノイドは、マウス肝臓及び腎臓、及びウシ網膜及びRPEの順相HPLC解析によって容易に検出された(図9)。オールトランス13,14−ジヒドロレチノイドは、そのUV吸収スペクトル及びクロマトグラフィー保持時間(その用量はそれらの合成化合物にマッチした)に基づいて認識した。13−cis−レチノール(ピーク1)、9,13−ジ−cis−レチノール(ピーク2)、オールトランスレチノール(ピーク3)、及び11−cis−レチノール(ピーク4)(図9)などのレチノール異性体は、利用可能な標準及びUV吸収極大に基づいて検出し認識した。本発明者らは、オールトランス13,14−ジヒドロレチノールは微量ではあるが、正常の食事(ビタミンAを添加されていない)で維持された動物からのテストされた多くの組織において容易に検出可能なレチノイドであるという結論を得た。
図9は、様々な組織におけるオールトランス13,14−ジヒドロレチノールの同定を示している。レチノイドは、マウス肝臓(0.3g、上部左パネル)、腎臓(0.2g、上部右パネル)、ウシ網膜(0.2g、下部左パネル)及びRPE(0.2g。下部右パネル)から抽出し、順相HPLCによってテストした。13,14−ジヒドロレチノールの溶出は290nmでモニタリングした。この保持時間及び吸収スペクトルに基づいて、オールトランス13,14−ジヒドロレチノールに一致するピークは、テストした全ての組織において同定され、順相HPLC上で13−cis−レチノール(1)と9,13−ジ−cis−レチノール(2)の間のそれを溶出した。オールトランスレチノール(3)及び11−cis−レチノール(4、ウシ網膜及びRPE)に一致する他のピークも同定した。この実験は異なる動物の組織から二つ組で実行した。オールトランス13,14−ジヒドロレチノールの収率は、HPLC解析の前の抽出物のけん化よりもわずかに高かった(<10%)。
実施例9
RPEミクロソーム及びHEKK−LRAT細胞におけるオールトランス13,14−ジヒドロレチノールのエステル化
LRATは、オールトランスレチノールをオールトランスレチニルエステルへ変換し、それによりその利用可能性及び吸収をコントロールしている(Ruiz,et al.J Biol Chem 274:3834−3841,1999;Batten,et al.J Biol Chem 279:10422−10432,2004)。オールトランス13,14−ジヒドロレチノールの代謝をより理解するために、本発明者らは、RPEに存在する、若しくは以前に公開された手順(Kuksa,et al.Vision Res 43:2959−2981,2003)に従って形質移入された細胞において発現されるLRATによってエステル化するかどうかアッセイした。本発明者らは、オールトランス13,14−ジヒドロレチノールは、オールトランス13,14−ジヒドロレチニルエステルに変換されることによって、オールトランスレチノールと同程度にLRATのよい基質であることを発見した(図10)。これは、両生類RPEによるオールトランス13,14−ジヒドロレチノールのエステル化と一致していた(Law,et al.Journal of the American Chemical Society 110:5915−5917,1988)。これにより、本発明者らは、エステル化はオールトランス13,14−ジヒドロレチノールに対する代謝/貯蔵経路であると結論付け、これはin vivoで確証されるべきである。
図10はLRAT活性を示したものである。2ナノモルのレチノールをRPEミクロソーム及びホモジナイズしたHEKK−LRAT細胞と10分間インキュベートした。エステルの産生は、325nm(オールトランスレチノール(黒色棒))及び290nm(オールトランス13,14−ジヒドロレチノール(灰色棒))で吸収を測定するHPLCによって測定した。タンパク質濃度は同等化しなかった。10分間95℃で煮沸したタンパク質での対照では活性は観察されなかった。実験は三つ組で実行した。
実施例10
Retsatはオールトランスレチノールの13−14二重結合の飽和を触媒する
この報告で示された発見は、本発明者らがビタミンAの代謝における新規で潜在的に重要な経路を発見したことを意味していた。新規酵素であるRetsatは、新しい活性、すなわちオールトランスレチノールの13−14二重結合の飽和を触媒する。Retsat反応の産生物であるオールトランス13,14−ジヒドロレチノールは、最初in vivoで検出された。前記オールトランス13,14−ジヒドロレチノール代謝産物は生理活性物質である、若しくは他の生理活性化合物を導く可能性があり、或いは、代謝経路の一部である可能性があった。Retsatの活性を変えるその酵素及び反応は現在同定されているため、本発明者らはその役割及びin vivoでのオールトランス13,14−ジヒドロレチノールの役割を研究した。
脊椎動物(13,14)−オールトランスレチノールサチュラーゼ(saturase):古代酵素。Retsatに加えて、レチノイドプロセシングに関与する酵素、例えばRALDHやCYP26、及び他のレチノイン酸受容体(RAR)は、原始的脊索動物、ホヤ類Cionain testinalis及びCiona savignyiのドラフトゲノム配列の翻訳において見出すことができる(Dehal,et al.Science 298:2157−2167,2002)。ホヤ類オタマジャクシ−幼生は、脊索及び背部管神経索(脊椎動物オタマジャクシと類似)を含み、脊索動物祖先の優れた近似であると考えられている。脊索動物におけるボディープランを構築する体軸の獲得はRA及び発生を制御するその核内受容体の革新と一致している。RARsは非脊索動物においては発見されなかった(Fujiwara,et al.Zoolog Sci 20:809―818,2003)。推定上のホヤ類Retsatの同定によって、レチノールの13−14二重結合の飽和で始まる経路の潜在的な重要性が強調された。レチノイド代謝が進化したように、脊椎動物代謝では、新規機能を有する新しい代謝産物を創造するために、存在する酵素、可能性としては古代フィトエンデヒドロゲナーゼを改変した。
カロチノイド及びレチノイド修飾酵素は、それらの基質の高度に関連した特性によって決定された多くの特徴を共有している。植物からの9−cis−ネオキサチン切断酵素であるVP14は、ハエからのβ,β−カロチン−オキシゲナーゼBCO−I及び−IIであるninaB(及び脊椎動物から)と類似している(Giuliano,et al.Trends Plant Sci 8:145−149,2003)。カロチノイド切断酵素に関連する別の脊椎動物タンパク質はRPE65であり、これは視覚サイクルの重要な工程である11−cis−レチノールの産生に対して重要なものである(Redmond,et al.Nat Genet 20:344−351,1998)。レチニルエステルと結合することが示されたが、触媒的役割もその原因ではなかったので、RPE65の機能は明らかではない(Mata,et al.J Biol Chem 279:635−643,2004)。脊椎動物において、P450酵素であるCYP26A1及びB1はレチノイン酸(ジテルペノイド)をヒドロキシル化された代謝産物へ変換する(Fujii,et al.Embo J 16:4163−4173,1997;White,et al.Proc Natl Acad Sci USA 97:6403−6408,2000)。植物からの非常に関連したP450酵素は、アブシジン酸、植物生活環を制御するセスキテルペンホルモン、及びタキソール(植物ジテルペノイド)をヒドロキシル化する(Saito,et al.Plant Physiol 134:1439−1449,2004;Kushiro,et al.Embo J 23:1647−1656,2004)。この活性に基づいて、Retsatは、カロチノイドデサチュラーゼ(フィトエンデサチュラーゼPds、Zds及びCrtI)に関連するレチノイド−サチュラーゼであり、一次アミノ酸配列はカロチノイド異性化酵素であるCRTISOに関連するものである。
実施例11
Retsat酵素の構造解析
脊椎Retsatファミリータンパク質の配列解析によって、以下のジヌクレオチド結合モチーフ:U4G(G/A)GUXGL(X)(A/S)(X2)L(X6−12)UX(L/V)UE(X4)UGG(X9−13)(G/V)(X3)(D/E)XGが明らかになり、ここではUは疎水性残基でありXはあらゆる残基である(Wierenga,et al.J Mol Biol 187:101−107,1986;Buehner,et al.J Mol Biol 82:563−585,1974)。このモチーフを有する多くのタンパク質は、モノアミン酸化酵素、プロトポルフィリノーゲン酸化酵素、及び多くのフィトエンデヒドロゲナーゼを含み、FAD及び他のものによって、若しくはNAD或いはNADPによって刺激されることが示された(Raisig,et al.J Biochem(Tokyo)119:559−564,1996;Al−Babili,et al.Plant J 9:601−612,1996;Schneider,et al.Protein Expr Purif 10:175−179,1997)。Retsatの配列における推定上のジヌクレオチド結合モチーフの存在は、二重結合の飽和は還元補助因子(NAD(P)H或いはFADH)からの水素化物(H−)イオン及び溶液からのプロトンの転移を介して行われるということ主張するものとなる。これは、ホモジナイズされた細胞、すなわち酸化還元状態が変わっている細胞におけるRetsatの不安定な性質を説明するものである。
本発明者らは、マウスRetsatが膜関連性であり形質転換細胞のER区画に局在しているように見えることを示した。切断可能なシグナル配列はタンパク質アミノ末端で容易に同定され、これはこのタンパク質がER膜を標的としていることを示唆している。加えて、568から588残基までの疎水性アミノ酸の伸長は、膜貫通ドメインの強力な候補である。
実施例12
生物学的システムにおける13,14−ジヒドロレチノール
例えば9−cis−13,14−ジヒドロレチノイン酸及びそのタウリン共役型である9−cis−oxo−13,14−ジヒドロレチノイン酸などの飽和13−14二重結合を有するレチノイドは、それぞれ9−cis−レチノイン酸或いはレチニルパルミチン酸を補充された動物において以前に同定されている(Shirley,et al.Drug Metab Dispos 24:293−302,1996;Schmidt,et al.Biochim Biophys Acta 1583:237−251,2002)。別の飽和オールトランス13,14−ジヒドロキシ−レチノールは、レチノール処理されたリンパ芽球腫5/2細胞において検出され、リンパ球の増殖を支持することが示された(Derguini,et al.J Biol Chem 270:18875−18880,1995)。Retsat触媒性飽和反応は、基質としてはオールトランスレチノールが好ましく、これはオールトランス13,14−ジヒドロレチノールの特異的合成を導くものである。本明細書において本発明者らは、オールトランス13,14−ジヒドロレチノールが非補充動物において検出可能であることを示した(図9)。正常食餌で維持された或いは生理学的レベルの標識前駆体を受けている動物においてin vivoで代謝産物の存在を示すことが好ましい。これは、in vivoでのこのレチノイドの最初の報告である。将来の研究では、オールトランス13,14−ジヒドロレチノールが生物活性を有するかどうか、或いは他の活性化合物へ代謝されたものなのかどうかを調べる予定である。オールトランス13,14−ジヒドロレチノールがオールトランスレチノールの分解産物であることは可能であるが、レチノール及びレチノイン酸は酸化を介して極性代謝産物へ分解するので、本発明者らは、これは起こりそうもないと見出した。レチノールの代謝に関与しているが、in vivoでのオールトランス13,14−ジヒドロレチノールの正確な役割は未だ確立されていない。
実施例13
植物及び脊椎動物酵素の間の関係:生産的経路の発見
カロチノイド及びレチノイドは、生物学において重要な役割を果たしている。それらのユニークな光吸収性特性によって、カロチノイドは光合成及び光保護を仲介することができ、レチノイドは視覚発色団を形成することができる。アブシシン酸及びレチノイン酸で見られるように、代謝産物を介してそれらは遺伝子発現も制御することができる。カロチノイドの唯一の天然源(それ故レチノイドも)は、植物及び光合成細菌である。脊椎動物はカロチノイド或いはレチノイドを合成しないにも関わらず、脊椎動物はそれらを形質転換することができ、ユニークな一連の代謝産物を産生する。カロチノイド及びレチノイドプロセシングに関連する脊椎動物酵素は、恐らく既存のテルペノイド修飾酵素の基質スイッチングによって、若しくは動物、植物及び光合成細菌の共通の祖先から受け継がれた祖先遺伝子を再活性化することによって、展したのであろう。植物及び脊椎動物酵素の間の関係を研究することは、生産的経路の発見になるであろう。カロチノイド及びレチノイド生化学の両方において、2つのフィールドのクロス受精を介して新しいレベルの理解を得ることができる。
実施例14
材料及び方法
in vivoでのレチノイドの代謝
全ての動物実験は、ワシントン大学によって許可された手順を使用しており、American Veterinary Medical Association Panel on Enthanasiaの推奨及びAssociation of Research for Vision and Ophthalmologyの推奨と一致している。動物は12時間明−12時間暗サイクルで維持した。全ての操作は薄暗い赤色光或いは赤外光(>560nm)下で行った。ほとんどの実験は、6〜12週齢マウスを使用した。Lrat−/−マウスは以前に記載されたように遺伝子型を同定した(Batten,et al.J.Biol.Chem.279:10422−10432,2004)。動物は、経口的な経管栄養の1時間前まで調節固形飼料食餌で維持した。適切な量のオールトランスROLパルミチン酸、オールトランスDROL、或いはオールトランスRAを野菜油に溶解し、解析の3時間前に経口的な経管栄養によって投与した。
レチノイドの解析
レチノイド経管栄養したマウス或いは未処理マウスからの肝臓(1g)を2mlの137mM NaCl、2.7mM KCl及び10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)において30秒、Polytronホモジナイザーを用いてホモジナイズした。10μlの5M NaOHを3mlのエタノール抽出液に添加し、非極性レチノイドを5mlのヘキサンを用いて抽出した。その抽出を繰り返し、有機相を混合し、順相カラムを用いた順相HPLC(Beckman Ultrasphere Si 5μl、4.6x250mm)によってテストした。その溶出条件は、流速1.4ml/分で25分、20℃でのヘキサン(v/v)における10%酢酸エチルの均一濃度溶媒システムであり、これはそれぞれ非極性レチノイド及び13,14−ジヒドロレチノイドに対して325nm及び290nmで検出した。水相は40μlの12N HClで酸性化し、極性レチノイドを5mlのヘキサンで抽出した。その抽出を繰り返し、前記極性レチノイド抽出物の有機相を混合し、乾燥させ、80%のCHCN、10mM酢酸アンモニウム、1%アセチル酸で構成された溶媒に再懸濁し、逆相HPLCによってテストした。組織からの極性レチノイドの解析は、狭穿孔(narrowbore)、120Å、5μm、2.1x250mm、Denali C18カラム(Grace−Vydac,Hesperia,CA)を用いた逆相HPLCによって実行した。溶媒システムは、バッファーA(80%メタノール、20% 36mM酢酸アンモニウム(pH4.7アセチル酸で調整))、及びバッファーB(100%メタノール)から成る。HPLC溶出条件は0.3ml/分、100%バッファーAで40分、100%バッファーBで10分、及びバッファーAにおける平衡で10分であった。RA及びDRAの溶出プロファイルは、それぞれ350nm及び290nmにセットしたオンラインダイオードアレイ検出器を用いてモニターした。そのピークはそれらのUV可視スペクトル及び/若しくは合成或いは商業的に利用可能な基準での共溶出に基づいて同定した。吸光度の測定領域は、既知量のオールトランスRA或いはall−transRPL(Sigma)及びオールトランスDROL或いはオールトランスDRA(合成標準)を用いたHPLCカラムの較正に基づいて、ピコモルへ変換した。抽出効率は、[H]RA(PerkinElmer Life Sciences)で組織試料をスパイクし、HPLCカラムから回収した放射能をモニタリングすることによってモニターした。肝臓試料の場合において、抽出効率は95%或いはそれ以上であった。合成レチノイド及びHPLCで精製された天然レチノイドの質量分析解析は、KratosプロファイルHV−3ダイレクトプローブ質量分析器を用いて実行した。
13,14−ジヒドロレチノイドの合成及び解析
合成スキームは図17に示した。β−イオノン(I)はまず、CClにおけるN−ブロモサクシニミドでブロモ化し、ヘキサメチルホスホラミドにおけるアセトキシル基での臭素の置換を行った。イオノンのエステル酢酸は、メタノール:水におけるKCOで加水分解し、次にヒドロキシル基をテトラ−ブチルジメチルシリル基で保護した。シリル化された4−ヒドロキシ−イオノン(II)は、トリエチルホスホノアセテートによってHorner−Emmons条件下で凝縮させ、シリル−保護性エチル4−ヒドロキシ−β−イオニリデンアセテートのエステルは、LiAlHでアルコールへ還元した。アルコールはN,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下において無水酢酸でアセチル化し、シリル基をテトラブチルアンモニウムフルオライドによって除去し、アルコールをMnO2によってケトン基へ酸化し、15−アセトキシ−4−オキソ−β−イオニリデンエタノール(III)が生じた。次にエステル(III)を加水分解し、ヒドロキシル基をエーテルにおいてPBrでブロモ化した。その臭化物をPPhと反応させ、Wittig塩(IV)を生じさせ、さらに以前に記載した条件下においてエチル4−オキソ−3−メチルブチレートで濃縮し、主要化合物としてオールトランスを有するエチル13,14−ジヒドロ−4−オキソレチノエートアイソマー(V)の混合物を得た(Moise,et al.J.Biol.Chem.279:50230−50242,2004)。前記アイソマーは、順相HPLCによって分離し(HP1100,Beckman Ultrasphere Si 5μ,10x250mm,5%エチル酢酸:ヘキサン、及び325nmで検出)、それらのUV、質量、及びNMRスペクトルによって特徴付けを行った。NMRデータは、内部標準としてCDClを用いたBruker 500−MHz分光計上に記録し、それらの化学的シフト値は表1に記載した。溶出の順番は以下の通りである:9,11−ジ−cis−、オールトランス、9−cis、11−cis−13,14−ジヒドロ−4−オキソレチノエート。遊離レチノイン酸(IV)を得るために、エチルエステルをエタノール:HOにおいてNaOHで加水分解した。13,14−ジヒドロ−RAL(DRAL)を得るために、以前調製したエチル13,14−ジヒドロレチノエートを−78℃にてジイソブチルアルミニウム水素化物で還元した。オールトランス4−オキソ−DRAは、以下のUV−可視吸収スペクトル;エタノールにおいてλmax=328nmでλ=256nmでショルダー、ヘキサンにおいてλmax=314nmでλ=252nmでショルダー、を有する。
クローニング及び発現コンストラクト
総胚及び肝臓RNAをAmbion(Austin、テキサス州)から入手し、SuperScriptII逆転写酵素(Invitrogen)及びオリゴ(dT)プライマーを用いて取扱説明書の手順に従って逆転写を行った。胚cDNAを特異的遺伝子のcDNAを増幅するために使用し、その際、Hotstart Turbo Pfuポリメラーゼ(Stratagene,La Jolla、カリフォルニア州)及び以下のプライマー:
RALDH1;フォワード5’−CACCGCAATGTCTTCGCCTGCACAAC、及びリバース5’−GCTGGCTTCTTTAGGAGTTCTTC;
RALDH3;フォワード5’−CACCTGCGAACCAGTTATGGCTACC、及びリバース5’−GCCTGTTCCTCAGGGGTTCTT;
CYP26B1;フォワード5’−CACCAAGCGGCTGCCAACATGC、及びリバース5’−GCTGAGACCAGAGTGAGGCTA;及び
CYP26C1;フォワード5’−CACCCATTCTCGCCATGATTTCCT、及びリバース5’−CCAAGGCTAGAGAAGCAACG、を使用した。RALDH2(MGC:76772,IMAGE:30471325)、RALDH4(MGC:46977,IMAGE:4223059)、及びCYP26A1(MGC:13860,IMAGE:4210893)mRNAの完全長cDNAは、Mammalian Gene Collection(MGC:哺乳類遺伝子コレクション)から入手した。これらのクローンを鋳型として使用しそれぞれのcDNAsを増幅した。その際、Hotstart Turbo Pfuポリメラーゼ(Stratagene,La Jolla、カリフォルニア州)及び以下のプライマー:
RALDH2,フォワード5’−CACCATGGCCTCGCTGCAGCTCCTGC、及びリバース5’−GGAGTTCTTCTGGGGGATCTTCA;
RALDH4,フォワード5’−CACCTGTACACAGAGGGCACTTTCC、及びリバース5’−GTATTTAATGGTAATGGTTTTTATTTCAGTAAAG;及び
CYP26A1,フォワード5’−CACCATGGGGCTCCCGGCGCTGCT、及びリバース5’−GATATCTCCCTGGAAGTGGGTAAAT、を使用した。RALDH1、−2、−3及び−4、及びCYP26A1、−B1及び−C1に対するcDNAは、CMVプロモーターの制御下でpcDNA3.1 Directional TOPOベクターにクローン化し、C−末端V5エピトープペプチド(GKPIPNPLLGLDST)及びHisタグ(Invitrogen)を融合させた組換えタンパク質を発現した。前記発現コンストラクトの両鎖は配列決定し、変異が存在しないことを確かめた。
マウスRXR−αは、逆転写したマウス肝臓cDNAからプライマー;5’−GGGCATGAGTTAGTCGCAGA及び5’−AGCTGAGCAGCTGTGTCCAを用いてクローニングした。RXR−αオープンリーディングフレームは次に、CMVプロモーターの制御下でプライマー;5’−CACCATGGACACCAAACATTTCCT及び5’−AGCTGAGCAGCTGTGTCCを用いて、ApcDNA3.1 Directional TOPOベクターにサブクローニングした。RXR(2)半透明レポーターベクター(Panomics,Redwood City,カリフォルニア州)からのRXREは、5’−CTCAACCCTATCTCGGTCTATTCT及び5’−ATGCCAGCTTCATTATATACCCAを用いて増幅し、最小プロモーター及びpBLUE−TOPO(Invitrogen)のβ−ガラクトシダーゼオープンリーディングフレームの上流にクローン化し、pRXRE−BLUE発現コンストラクトを作成した。このコンストラクトは、β−ガラクトシダーゼの上流に5連続DR1成分を配置し、その発現はRXRの活性化及びRXRホモダイマーの形成に依存するものである。全コンストラクトの両鎖を配列決定し、変異が存在しないことを確認した。
肝臓アルコールデヒドロゲナーゼを用いたオールトランスROL及びオールトランスDROLの酸化
ウマ肝臓ADH(EC1.1.1.1[EC])は、Sigmaから入手し、50mM Tris(pH8.8)において5ユニット/ml(8.6mg/ml)の濃度に溶解した。NAD及びNADPを各10mMの濃度で共に混合した(1:1)。基質溶液である2μlの2mMストックのオールトランスROL或いはオールトランスDROL(N,N−ジメチルホルムアミドにおける)を、20μlの10%ウシ血清アルブミン、20μlのADH、2μlの補助因子混合物、及び50mM Tris(pH8.8)を含有する1.5mlのエッペンドルフチューブへ総容積200μlまで添加した。前記溶液を37℃で60分インキュベートし、その後50μlの0.8M NHOH溶液(pH7.0)を添加し、300μlのメタノールを添加し、室温で15分置き、300μlのヘキサンで抽出した。有機相を乾燥させ、組織試料から抽出された非極性レチノイドの解析において記載したように順相HPLCによって解析した。非酵素的反応に対する対照として、補助因子を含む或いは含まない煮沸タンパク質(90℃で5分)を使用した。
RALDH酸化アッセイ
N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI−陰性HEK−293S細胞は、G.Khorana博士(Massachusetts Institute of Technology,Boston)より寄贈され、ダルベッコ変法イーグル培地、10%ウシ胎仔血清において培養し、37℃、5%CO、100%湿度で維持した(Reeves,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:13419−13424,2002)。RALDH酵素アッセイに対して、細胞は、取扱説明書の手順に従って、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いてRALDH1、−2、−3、或いは−4発現コンストラクトで一過性に形質移入させた。形質移入48時間後、前記細胞を剥離させ回収し、遠心分離を行った。細胞ペレットは、137mM NaCl、2.7mM KCl及び10mMリン酸(pH7.4)で洗浄し、250mMスクロースを含有する50mM Tris(pH8.0)に再懸濁し、Dounceホモジナイザーを活用してホモジナイズした。補助因子を5mM NAD、5mM NADP及び1mM ATPの最終濃度へ添加した。一定量の細胞溶解液を95℃で10分間煮沸し、非酵素的反応に対する対照を提供した。オールトランスRALの形態或いはDRALの異性体の混合物における基質は、前記細胞溶解液へ60μMの最終濃度で添加した。前記反応は37℃で2時間振盪しながら進め、2容量のCHCNの添加によって停止させた。試料は室温で30分、100mMのNH2OH(1M(pH7.0)の新鮮に作成したストックからの最終濃度)で処理し、12,000xgで10分遠心分離した。透明な上清を0.1容量の0.5M酢酸アンモニウム(pH4.0)で酸性化し、80%CHCN、10mM酢酸アンモニウム、1%アセチル酸の均一濃度移動相Aを有し,流速1.6ml/分で15分保った逆相HPLCシステム(Zorbax ODS,5μm、4.6x250mm;Agilent,Foster City,カリフォルニア州)でテストした。各ランの後、カラムは混合液B(60% tert−ブチルメチルエーテル、40% メタノール)で10分間、1.6ml/分で洗浄し、相Aにおける再平衡を行った。RA及びDRA異性体の溶出は、それぞれ340及び290nmでモニターした。ピークはそれらのスペクトル及び標準との共溶出に基づいて同定した。細胞溶解液は、SDS−PAGE、及び抗V5エピトープモノクローナル抗体(Invitrogen)を用いたV5エピトープ標識組換えタンパク質の免疫ブロットによって、RALDH1〜4の発現をテストした。
CYP26A1酸化アッセイ
N−アセチルグルコ明ミニルトランスフェラーゼI−陰性HEK−293S細胞は、取扱い説明書の手順に従ってリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて、CMVプロモーターの制御下においてCYP26A1、−B1及び−C1のcDNAsで一過性に形質移入させた。24時間後、形質移入細胞は12ウェルプレートへ分配し、各アッセイウェルにおいて同じ数の形質移入細胞が入っているか確かめた。オールトランスRA或いはオールトランスDRAは、完全培地において0.1mM最終濃度で細胞単層へ添加し、4時間インキュベートした。培地及び細胞は剥離によって回収し、タンパク質は勢いよくボルテックスすることによって等量のCH3CNで沈殿させ、12,000xgで10分遠心分離した。RA解析に対して、透明な上清は0.1容量の0.5M酢酸アンモニウム(pH4.0)で酸性化し、RALDHアッセイで記載されたような逆相HPLCによってテストした。オールトランスRA、オールトランスDRA、及びそれらの酸化代謝産物の溶出液は、340及び290nmでモニターした。ピークはそれらのスペクトル及び標準との共溶出に基づいて同定した。細胞溶解液は、SDS−PAGE、及び抗V5エピトープモノクローナル抗体(Invitrogen)を用いたV5エピトープ標識組換えタンパク質の免疫ブロットによって、CYP26A1、−B1、及び−C1の発現に対してテストした。
RPEにおけるDRAへのDROLの変換
UV処理RPEミクロソームは以前記載されたように調製した(Stecher,et al.J.Biol.Chem.274:8577−8585,1999)。20μlのUV処理RPEミクロソーム(3mg/ml)は、20μM DROL或いはROL基質、1%ウシ血清アルブミン、及び50mM Tris(pH8.8)と混合させ、各50μMのNAD及びNADP補助因子を含む或いは含まないで、37℃で60分インキュベートした。反応を停止するために、タンパク質は等量のCH3CNと混合することによって沈殿させ、高速遠心分離を行った。透明な上清は、0.1容量の0.5M酢酸アンモニウム(pH4.0)で酸性化し、RALDHアッセイで記載したような逆相HPLCによってテストした。煮沸RPE膜対照は、DROLの非酵素的変換をアッセイするために使用した。オールトランスDROL代謝産物の溶出液は290nmでモニターした。
RARE及びRXRE活性化アッセイ
RAREレポーター細胞株F9−RARE−lacZ(SIL15−RA)は、Michael Wagner博士(State University of New York Downstate Medical Center)及びPeter McCaffery博士(University of Massachusetts Medical School,E.K.Shriver Center)から寄贈された。RA反応性F9細胞株は、大腸菌lacZ遺伝子の上流に配置された、ヒトレチノイン酸受容体−β遺伝子(RAR−β)に由来したRAREのレポーターコンストラクトで形質移入した(Wagner,et al.Development(Camb.)116:55−66,1992)。細胞は、N−3添加物及び抗菌剤を含有したL15−CO培地で増殖させた。細胞は、37℃で100%湿度の暗所で24時間、指示された濃度でエタノールに溶解されたオールトランスRA或いはオールトランスDRAで刺激し、溶解し、−ガラクトシダーゼ酵素アッセイシステム(Promega,Madison、ウィスコンシン州)を用いて−ガラクトシダーゼの発現をアッセイした。RXRE活性化アッセイに対しては、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI−陰性HEK−293S細胞は、取扱い説明書の手順に従ってリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて、RXR−発現コンストラクトを含む或いは含まないpRXRE−BLUEレポーターコンストラクトで形質移入させた。24時間後、細胞は24ウェルプレートへ分配し、各アッセイウェルにおいて同じ数の形質移入細胞が入っているか確かめた。細胞は適切な濃度のオールトランスRA、9−cis−RA、或いはオールトランスDRAで刺激した。48時間後、β−ガラクトシダーゼの発現を上述したようにアッセイした。
実施例15
オールトランスROLパルミチン酸で経管栄養されたLrat−/−マウスの肝臓におけるオールトランスDROL及びその代謝産物の同定
哺乳類におけるROL吸収は、エステル化及び加水分解サイクルによって動かされている活性な工程である。ROLのエステル化は、LRAT酵素によって主に実行されている(Ruiz,et al.J.Biol.Chem.274:3834−3841,1999)。LRATの非存在下で、ROL及びROLエステルとの間の平衡は、遊離ROLに都合よくシフトする。LRAT発現のマウス欠損(Lrat−/−)マウスは、それらのROL取り込み及び貯蔵能力が著しく損なわれている(Batten,et al.J.Biol.Chem.279:10422−10432,2004)。一方、野生型マウスはほとんどの消化ROLをエステルに変換し、循環及び代謝からROLを捕獲する。従って、本発明者らは、Lrat−/−マウスにおける13,14−ジヒドロレチノイド代謝産物へのオールトランスROLの飽和及び酸化を研究することにした。
それらの類似した化学的特性を考えると、オールトランスDROL及びオールトランスROLが代謝経路と平行していることは驚くことではない。Lrat−/−マウスの2つの異なる群は、106ユニットのオールトランスROLパルミチン酸/kg体重、若しくは105ユニットのオールトランスROLパルミチン酸/kg体重を投与し、それらの肝臓は、経管栄養3時間後で極性及び非極性レチノイド代謝産物をテストした。極性肝臓レチノイドの逆相HPLC解析によって、オールトランスRA(図11、A及びB、ピーク5)及びオールトランスDRA(図11、A及びB、ピーク4)、さらにはcis−DRA異性体(図11、A及びB、ピーク2)の存在が示された。本発明者らはさらに、別の極性DROL代謝産物も観察し、それは逆相HPLCにおいてオールトランスDRAよりも早く溶出され(図11、A及びB、ピーク1)、オールトランスDRA標準と同じ吸収スペクトルを有した(図11E)。この代謝産物は化学的に特徴付けされていないが、その極性特性に基づいて、タウリン或いはグルクロニドDRA共役体を示す可能性があった。合成オールトランスDRA及び肝臓から単離されたオールトランスDRAのスペクトル及び溶出特性は一致した(図11E)。オールトランスDRAは以前公開された手順に従って合成し、1H NMRによって特徴付けした(表I)(Moise,et al.J.Biol.Chem.279:50230−50242,2004)。
Figure 2008518586
本発明者らは、非極性肝臓レチノイド代謝産物を順相HPLCによってテストした。ROLパルミチン酸での経管栄養3時間後、テストするマウスの肝臓は高レベルのオールトランスROLを含む(図11、C及びD、ピーク11)一方、オールトランスDROL(図11、C及びD、ピーク8)は280〜330倍低いレベルで見出された(表II)。オールトランスDROLの吸収スペクトル及び溶出特性は、公開された手順に従って調製された合成標準と一致しており、1H NMRによって特徴付けした(図11、C、D及びG、表I)(Moise,et al.J.Biol.Chem.279:50230−50242,2004)。
Figure 2008518586
DROLより高レベルで存在した別の非極性13,14−ジヒドロレチノイド代謝産物(図11、C及びD、ピーク6)は、オールトランスROLパルミチン酸で経管栄養されたマウスの肝臓において同定された。この化合物のスペクトルもオールトランスDROLのスペクトルの一致した(図11G)。前記化合物はcis−DROL異性体と共に共溶出せず、cis−DROL異性体とは異なるUV−可視吸収最大値を有している。本発明者らは前記化合物をエステル化することができ、ここではNH2OH処理はその溶出特性に対して何の影響も及ぼさなかった。従って、本発明者らは、ピーク6として溶出される前記化合物の機能基はアルコールであると結論付けた(図11、C及びD)。ピーク6に一致する回収した画分の電子衝突質量分析解析によって、274のm/zを有する化合物の存在が示された(図11F)。これは、ピーク6は鎖短縮型C19−ROL誘導体が含まれる可能性を示唆するものである(C1930O、m/z=274、図24に記載されている)。
図11は、Lrat−/−マウスの肝臓におけるオールトランスROLパルミチン酸の代謝の解析を示しているものである。A〜D、オールトランスROLパルミチン酸で経管栄養したLrat−/−マウスの肝臓からの極性及び非極性レチノイドのHPLC解析。マウスは、A及びCでは、10ユニット/kg体重の高用量でのオールトランスROLパルミチン酸で経管栄養したものであり(10XRPとして示されている、n=3)、B及びDでは、10ユニット/kg体重の低用量でのオールトランスROLパルミチン酸で経管栄養したものである(1XRPとして示されている、n=3)。経管栄養3時間後、肝臓からの極性及び非極性レチノイドを抽出した、前記レチノイドは、狭穿孔(narrowbore)カラムシステム(A及びB)に対する逆相HPLCによって解析し、前記非極性レチノイドは順相HPLCによって解析した(C及びD)。化合物は確証標準の溶出特性及び吸収スペクトルとの比較に基づいて同定した。E、ピーク4のスペクトルは、オールトランスDRA標準のスペクトルと一致し、共溶出もする。逆相HPLCによってオールトランスDRAより早く溶出する別の化合物(ピーク1)の吸収スペクトルも、オールトランスDRAのスペクトルと対応する。F、C及びDにおいてピーク6として溶出される化合物の電子衝突質量分析解析によって、それは274及び260のm/zを有する化合物の可能な混合物であることが示された。G、ピーク6として溶出された化合物は、生物学的オールトランスDROL(ピーク8)の1つ及び合成オールトランスDROLの1つと同一のUV−可視吸収特性を示す。オールトランスRAの溶出液は360nmでモニターし、オールトランスROLは325nmであり、オールトランスDROL及びオールトランスDRAは290nmでモニターした。290nmでの吸収のみが、単純化のために本明細書に示されている。抽出効率は95%以上であり、[H]RAでサンプルをスパイクし、RAピークに関与する放射能を測定することに基づいて計算した。溶出時間、吸収スペクトル、及び確証標準との比較に基づいて、ピークは、以下の化合物として同定された:ピーク2はcis−DRA;ピーク3は13−cis−RA;ピーク4はオールトランスDRA;ピーク5はオールトランスRA;ピーク6はC19−ROL誘導体;ピーク7は13−cis−ROL;ピーク8はオールトランスDROL;ピーク9は9,13−ジ−cis−ROL;ピーク10は9−cis−ROL;及びピーク11はオールトランスROLである。
図24は、オールトランスROL及びオールトランスDROLの代謝を示したものである。RetsatはオールトランスROL及びオールトランスDROLを飽和し、それはLRATによってエステル化されることが以前に示されていた。本明細書において本発明者らは、DROLの酸化的代謝がROLの代謝に著しく従うことを示す証拠を示す。例えばSDR及びADHなどの広域スペクトル酵素は、オールトランスDROLのオールトランスDRALへの可逆的酸化を実行する。RALDH1、−2、−3及び−4は、オールトランスDRALをオールトランスDRAへ酸化する。チトクロムP450控訴のいくつかのメンバーであるCYP26A1、−B1及び−C1は、オールトランスDRAをオールトランス4−オキソ−DRAへ酸化し、これはin vivo及びinvitroで同定されるものである。別の酸化オールトランスDRA代謝産物(記載されていないが)は、オールトランス4−ヒドロキシ−DRA、オールトランス5,6−エポキシ−DRA、オールトランス5,8−エポキシ−DRA、オールトランス18−ヒドロキシ−DRAとなる可能性がある。短鎖代謝産物C19−ROLの可能な化学的構造は本明細書に示された。その合成経路は、オールトランスRAから脱炭酸化によって及び/若しくはオールトランスDRAからα−酸化を介して進行する可能性がある。
Lrat−/−マウスの合成オールトランスDROLでの経管栄養の後、本発明者らは著しいレベルのオールトランスDRA及びオールトランス4−オキソ−DRAを観察した。これらは、それらのクロマトグラフィー特性、m/z、及び吸収スペクトルに基づいて同定し、これは合成標準のそれらと一致した(図18A及び挿入図スペクトル)。オールトランス4−オキソ−DRAは、図17に記載されたスキームに従って合成し、H NMRによって特徴付けした(表I)。DROLで経管栄養したマウスの肝臓も、低レベルのC19−ROLが含まれていることを見出した(図18B、ピーク4、及び挿入図スペクトル)。これは、オールトランスROLパルミチン酸を経管栄養されたマウスにおいて観察された高レベルのC19−ROLとは対照的である。
図17は、化合物オールトランス4−オキソ−DRA(VI)が[1H]−NMRによって特徴付けされたことを示したものである。4−オキソ−DRA及び4−ヒドロキシ−DRAの調製に対する合成スキーム:a、NBS、()
(PhCOO)2、CCl4、還流、20分;b、KOAc、HMPA、室温、24時間;c、K2CO3、MeOH:H2O、室温、6時間;d、TBDMS−Cl、CH2Cl2、DMAP、室温、18時間;e、(EtO)2P(O)CH2COOEt、NaH、THF、還流、24時間;f、LiAlH4、Et2O、0℃、30分;g、Ac2O、DMAP、CH2Cl2、室温、2時間;h、TBAF、THF、室温、16時間;i、MnO2、CH2Cl2、室温、24時間;j、PBr3、Py、Et2O、−20℃、1時間;k、PPh3、トルエン、室温、24時間;l、t−BuO−K+、18−crown−6、CH2Cl2、−78℃〜室温、6時間;m、5M NaOH、EtOH/H2O、37℃、1時間;n、NaBH4、EtOH、0℃、30分。
図18は、Lrat−/−マウスの肝臓におけるオールトランスDROLの代謝産物の解析を示したものである。オールトランスDROLで経管栄養されたLrat−/−マウスの肝臓からの極性及び非極性レチノイドのHPLC解析(n=3)。Lrat−/−マウスをオールトランスDROLで経管栄養した3時間後、極性及び非極性レチノイドを抽出し、逆相HPLC(A、黒破線クロマトグラム)或いは順相HPLC(B、黒破線クロマトグラム)で解析した。合成標準オールトランス4−オキソ−DRA、オールトランスDRA、及びオールトランスRAは、逆相HPLC(A、上部クロマトグラム、灰色破線)でテストした。非経管栄養のLrat−/−マウス対照から単離された肝臓レチノイドもテストした(A及びB灰色実線クロマトグラム)。(B)クロマトグラムの7〜12分領域は、ピーク4を表すように展開し、C19−ROLに帰した。ピーク3は、電子衝突質量分析によって決定されたように、オールトランスDROL−デカン酸(m/z=442)及びオールトランスDROL−パルミチン酸(m/z=526)を含むエステル化合物の混合物から構成されていた。以下の化合物は、それらの溶出特性、吸収スペクトル、及び合成標準との比較に基づいて同定された:(1)、オールトランス4−オキソ−DRA、及び(A)挿入図スペクトル;(2)、オールトランスDRA;(3)、オールトランスDROLエステル;(4)、C19−ROL、及び(B)挿入図スペクトル;(5)オールトランスDROL。同定されなかった化合物は、星印(*)で示した。
ラットは外因的に投与された9−cis−RAを9−cis−DRA及びそのタウリン共役体へ変換できることが以前報告されていた(Shirley,et al.Drug Metab.Dispos.24:293−302,1996)。これは、別の経路がCRAの13−14結合の飽和に関与し、DRAを産生することを示唆するものである。現在の研究において、本発明者らは、経管栄養3時間後でのオールトランスRAで経管栄養したLrat−/−の肝臓におけるオールトランスDRA或いはオールトランス4−オキソ−DRA形成の証拠は見出せなかった(図19)。257nmの最大吸収を有するオールトランスDRA(図19、*でマークされている)とは異なる化合物が、オールトランスDRAの予想溶出時間より前に溶出された。これは、13,14−ジヒドロレチノイド代謝産物は、RetsatによるオールトランスROLの飽和後のオールトランスDROLにのみ由来することを示唆しており、ビタミンA代謝産物のこの分岐でのRetsatが担う重要な役割を強調するものである。本発明者らは、経管栄養3時間後でのオールトランスRAで経管栄養したLrat−/−マウスの肝臓におけるC19−ROLの証拠も見出せなかった。
図19は、Lrat−/−マウスの肝臓におけるオールトランスRAの代謝産物の解析を示している。オールトランスRAでの経管栄養3時間後のLrat−/−マウスの肝臓からの極性レチノイドの逆相HPLC解析(黒破線クロマトグラム)。合成標準オールトランス4−オキソ−DRA、オールトランスDRA、及びオールトランスRAを逆相HPLCでテストした(上部クロマトグラム、灰色破線)。非経管栄養Lrat−/−マウス対照から単離した肝臓レチノイドもテストした(灰色実線)。同定されなかった化合物は、星印(*)で示した。
オールトランスRA、オールトランスDRA、及び図11、A及びBにおけるピーク1、及びC及びDにおけるピーク6として溶出された化合物のレベルは、表IIに示し、これは消化されたROLパルミチン酸の異なる開始レベルを反映したものである。オールトランスDRAのレベルはオールトランスRAと比べてより低く(30〜50倍)であり、Retsatによる飽和が制限肯定であることを示しているものである。オールトランスROLと比較して低レベルのオールトランスDROLもまた、この説明を支持するものである。より短い鎖への若しくは他のより酸化された代謝産物への更なる加工のため、オールトランスDROL及びオールトランスDRAのレベルもまた低くなる可能性がある。
実施例16
オールトランスDROLのオールトランスDRAへの代謝経路の特徴付け
オールトランスDRAがオールトランスDROLの代謝産物としてin vivoで検出されたことより、本発明者らは再構成された酵素システムを用いて合成の可能な様式をテストすることにした。オールトランスDROLを一致するアルデヒドオールトランスDRALへ酸化するために、本発明者らはウマ肝臓(EC1.1.1.1[EC])から精製されたADHを使用し、これは一級及び二級アルコールの両方に対して活性である。オールトランスDROL及びオールトランスROLを、精製された酵素及び適切な補助因子と共にインキュベートした。反応後、試料をNH2OHで処理し、有機相へ抽出し、順相HPLでテストした。オールトランスRAL或いはオールトランスDRALオキシムは、合成標準と比較することによって同定した(Moise,et al.J.Biol.Chem.279:50230−50242,2004)。ADHは、NAD及びNADP補助因子の存在下でオールトランスROLからオールトランスRALへの変換、及びオールトランスDROLからオールトランスDRALへの変換を効果的に実行したが(図12、A及びB)、非存在下では実行しなかった。煮沸酵素は基質に対するあらゆる活性を示さなかった。次に、光受容体特異性RDH(prRDH)及びRDH12の、オールトランスDROLからオールトランスDRALへの酸化を触媒する能力をテストした。prRDH及びRDH12の両方は、オールトランスROLからRRALへの変換においては活性であったが、オールトランスDROLからオールトランスDRALへの変換における活性は低かった(データは示さず)。
図13は、オールトランスROL及びオールトランスDROLのそれぞれのアルデヒドへの酸化を示したものである。精製ADH(Sigma)は、NAD及びNADPの存在下でオールトランスDROLのオールトランスDRAL(A)への及びオールトランスROLのオールトランスRAL(B)への酸化を触媒した。煮沸酵素を用いた対照反応はネガティブであり、この変換は酵素的であることを示した。レチノイドを抽出し、順相HPLCで解析した。前記反応の産物は、シン−及び抗−オールトランスDRALオキシム(A)及びシン−及び抗−オールトランスRALオキシム(B)であった。この実験は三つ組で実行し、繰り返し行った。
オールトランスDRALのDRAへの変換はRALDH酵素によって仲介される。マウスRALDH1〜4 cDNAをクローン化し、それらのC末端でV5エピトープ及びHis伸長を含むタグと融合した。グリコシル化欠損HEK−293S細胞は、CMVプロモーターの制御下でRALDH1、−2、−3及び−4のタグ化コンストラクトで一過性に形質移入した。これらの細胞は再現性があり、組換えタンパク質の高レベルの発現が可能である(Reeves,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:13419−13424,2002)。形質移入細胞の細胞ホモジネートにNAD、NADP及びATP補助因子、及びオールトランスRAL或いはオールトランスDRAL基質を添加した。RALDH2及び−3の両方は、オールトランスRAL及びオールトランスDRAをそれぞれオールトランスRA及びオールトランスDRAへ効率よく変換した(図13、A及びB)。産物であるオールトランスRA及びオールトランスDRAは、その溶出時間、吸収スペクトル、及び確証標準との比較に基づいて同定した(図13A、ピーク1、及び13B、ピーク6、及び挿入図スペクトル)。他のcis−DRA異性体も、合成混合物の存在下でcis−DRAL異性体の酸化の結果として産生された。形質移入細胞ホモジネートにおける組換えタンパク質の発現レベルは、V5−タグ化RALDHタンパク質の存在に対する抗−V5モノクローナル抗体を用いて免疫ブロットによって評価した。これは、図13においてRALDH2−V5−Hisを示していた(上部右パネル)。免疫反応性晩後の強度に基づいて、RALDH1、−2、−3或いは−4の同様な発現レベルが形質移入細胞において達成された。RALDH−1及びRALDH−4形質移入細胞のホモジネートは、オールトランスRAL或いはオールトランスDRALの酸化における有効性は低く、これは、C末端タグの結果、他のものと比べいくつかのアイソザイムに影響を及ぼした可能性がある。代わりに、いくつかのアイソザイムは、マウスRALDH2(オールトランスRALに対するKm=11.6μM)(31,32)で見られるように他のものより活性である可能性がある。非形質移入細胞もまた、オールトランスRAL及びオールトランスDRALの両方に対して著しい活性を示し(図13、灰色線クロマトグラム)、これはHEK293S細胞における内因性RALDH活性を示唆するものである。
図13は、オールトランスRAL及びオールトランスDRALのそれぞれオールトランスRA及びオールトランスDRAへの酸化を示したものである。細胞は、そのC末端でV5−Hisタグが融合されたRALDH2のcDNAを有するベクターで一過性に形質移入した。RALDH2−V5−Hisタグ化タンパク質の発現は、抗−V5モノクローナル抗体での免疫ブロットによって確認し、右側の上部パネルにおけるRaldh2標識のラインに示されている。HEK−RALDH2細胞(黒実線グラフ)或いは非形質移入対照細胞(灰色実線グラフ)の細胞ホモジネートは、オールトランスRAL(A)或いはオールトランスDRAL(B)とインキュベートした。煮沸対照細胞(黒破線グラフ)は、同条件下で基質とインキュベートした。レチノイドを抽出し、「方法及び材料」において記載したように逆相HPLCで解析した。反応の産物は、その吸収スペクトル及び可能な標準との共溶出に基づいて同定した。これらは、以下の通りである:ピーク1、オールトランスRA;ピーク2及び3、それぞれシン−及び抗−RALオキシム;ピーク4及び5、DRAのcis−異性体;ピーク6、オールトランスDRA;ピーク7〜10,DRALのいくつかの異性体のシン−及び抗−オキシム;ピーク11、オールトランスDROL。ピーク1(RAとして同定)及びピーク6(DRAとして同定)のUV−可視吸収スペクトルはそれぞれ、右の真中及び下のパネルに示してある。実験は二つ組で実行し、3回繰り返した。C末端でV5−Hisタグでタグ化されたALDh3で形質移入された細胞でも同様な結果が得られた。
実施例17
オールトランスDRAの酸化
RAのレベルは、空間的及び時間的な制御合成及び分解の両方によって厳しく制御されている。RA異化は、チトクロムP450酵素であるCYP26A1、−B1、及び−C1によって実行される。DRAも同様な方法で異化されるのかどうか検討することは重要である。HEK−293S細胞は、そのC末端にV5エピトープ及びHis伸長が融合されたCYP26A1、−B1、及び−C1の発現コンストラクトで形質移入した。形質移入細胞及び非形質移入細胞は、オールトランスRA或いはオールトランスDRA基質と培養でインキュベートした。なぜなら、CYP26A1、−B1、及び−C1活性は細胞のホモジナイゼーションによって不利に影響を受けるからである。オールトランスRA及びオールトランスDRAの酸化代謝産物は、CYP26A1−形質移入細胞に存在したが、非形質移入細胞には存在しなかった(図14、A及びB)これらの代謝産物はオールトランス4−オキソ−(D)RA、オールトランス4−ヒドロキシ−(D)RA、オールトランス5,8−エポキシ−(D)RA、及びオールトランス18−ヒドロキシ−(D)RAを含むことができ、注入スパイクのすぐ後に溶出される極性化合物として同定された(図14、A及びB、ピーク1及び2、及びピーク7〜9、及び挿入図スペクトル)。酸化オールトランスDRA化合物の1つは、合成標準の溶出特性及び吸収スペクトルと一致したため、オールトランス4−オキソ−DRAとして同定された(図14、下部右、挿入パネル)。形質移入細胞において発現したタグ化酵素のレベルは、形質移入細胞溶解液のSDS−PAGE解析、その後、抗−V5−モノクローナル抗体を用いた免疫ブロットを行うことによってアッセイした(図14、上部右パネル)。形質移入細胞におけるCYP26A1、−B1、及び−C1の発現レベルは類似しており、全ての3控訴はオールトランスRA及びオールトランスDRAの極性代謝産物への酸化を効率的に実行した。
図14は、オールトランスRA及びオールトランスDRAの酸化を示したものである。RA及びDRAの代謝は、非形質移入細胞、或いはCYP26A1で形質移入された細胞で実験した。形質移入細胞におけるCYP26A1−V5−Hisタグ化タンパク質の発現は、SDS−PAGE及び抗−V5−モノクローナル抗体での免疫ブロットによって実験し、上部パネルの右のCYP26A1標識ラインにおいて示されている。形質移入HEK−CYP26A1細胞(黒破線グラフ)或いは非形質移入対照細胞(灰色実線グラフ)は、RA(A)或いはDRA(B)とインキュベートした。レチノイドを抽出し、「方法及び材料」において記載したように逆相HPLCで解析した。酸化RA代謝産物のスペクトルであるピーク1及び2(右上部挿入パネル)は、それぞれオールトランス4−ヒドロキシ−RA及びオールトランス4−オキソ−RAのものと類似していた。ピーク3〜5はRAのcis−異性体であり;ピーク6はオールトランスRAである。ピーク7及び9は酸化DRA代謝産物を示し、最大λ=290nmを有し、これは右の真中挿入パネルに示されている。ピーク8はオールトランス4−オキソDRAと一致しており、これはその吸収スペクトル及び溶出時間に基づいている(吸収スペクトルは右の下部挿入パネルに示されている)。ピーク10及び11はそれぞれ、cis−及びオールトランスDRAを示している。この実験は二つ組で実行し、3回繰り返した。CYP26B1及び−C1で形質移入した細胞でも同様な結果が得られた。
実施例18
RPEにおけるオールトランスDROLのオールトランスDRAへの変換
レチノイド代謝は、多くの胚及び生体組織において起こる。従って、オールトランスDRA合成の全体経路が組織抽出物で再構成されるかどうかを決定することは重要である。オールトランスDROL(図20、ピーク2)は、ジヌクレオチド補助因子であるNAD及びNADPの存在下で、RPE細胞から調製されたミクロソームによってオールトランスDRA(図20.ピーク1)を効果的に変換した。オールトランスDRAは、合成オールトランスDRAとの比較におけるその溶出特性及び吸収スペクトルに基づいて同定された(図20、及び挿入図スペクトル)。RPEミクロソームもさらに、オールトランスROLのオールトランスRAへの変換を触媒し(結果は示さず)、これは生体RPEがオールトランスRA、オールトランスDRA合成部位を活性化することを示唆している。RPEにおける主なROL酸化活性は、SDRファミリー酵素によって触媒される。RPEにおけるオールトランスDROLのオールトランスDRAへの効果的な変換は、オールトランスDROLをオールトランスDRALへ変換できるSDR酵素の存在を支持するものである。RPEからの既知SDR酵素のオールトランスDROLに関する基質特異性を検討するための更なる研究が必要とされている。
図20は、RPEミクロソームによるオールトランスDROLのオールトランスDRAへの変換を示している。RPEミクロソームは、ジヌクレオチド補助因子NED及びNADPの存在下或いは非存在下で、オールトランスDROLとインキュベートした。対照として、本発明者らは煮沸RPEミクロソームを、ジヌクレオチド補助因子NED及びNADPの存在下でオールトランスDROLとインキュベートした(灰色実線)。タンパク質は等量のCH3CNと高速遠心分離を用いて沈殿させた。上清を逆相HPLCシステムに注入し、オールトランスDROL代謝産物の溶出を290nmでモニターした。ピーク2(DROL)はピーク1へ変換され、これは確証標準との共溶出に基づいてオールトランスDRAとして同定された(黒破線クロマトグラム)。(B)ピーク1及びオールトランスDRA標準のスペクトルは、挿入パネルに示した。実験は三つ組で実行し、繰り返した。
既知オールトランスROL酸化経路及び本明細書にある結果に基づいて、本発明者らは、オールトランスROLのオールトランスDROLへの飽和に続いて、オールトランスDROLはオールトランスDRAへ酸化され、後にオールトランスDRA及びオールトランスDRAの可能な他の酸化代謝産物へ酸化されると提唱した。本発明者らは、ROLのRAへの酸化に関与する同じ酵素もまた、図24に示したように、DROLのDRAへの酸化に関与することを示した。オールトランスDROL及び他のより酸化された代謝産物は天然に生じ、ビタミンAの代謝における新規及び潜在的に重要な経路を示した。この仮説は、オールトランスROLパルミチン酸を経管栄養されたLrat−/−マウスオールトランスDROL及びオールトランスDRAの明白な同定によって支持される。
実施例19
オールトランスDRAのトランス活性化化活性の特徴化
RAR結合性オールトランスRA、及びRAR又はRXR結合性9−シス−RAは、RA応答性要素(RA−response element:RARE)配列を含む遺伝子発現をそれらのプロモーター領域内で制御し得る。RARE要素は、1〜5個のヌクレオチドにより分離されたカノニカル配列PuG(G/T)TCAのダイレクトリピート(direct repeats:DR)から成る。活性化されたRAR/RXRへテロダイマーは、RAR遺伝子を含む多くの遺伝子のプロモーター領域中で発見された、5個のヌクレオチド(DR separated by five nucleotides:DR5)により分離されたDRから成るRAREと関連し得る。Sucov,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:5392〜5396,1990。
我々はまた、DR5RARE−レポーター細胞株を使用したRAR活性化を通じたDRAが制御し得るかどうかを研究した。F9テラトカルシノーマ細胞株は、内因性RAR及びRXRを発現させ、RAの影響に非常に敏感である。この細胞株は、最小プロモーター及び上流のDR5要素の制御下でlacZを用いて形質移入された。Wagner,et al.Development(Camb.)116:55〜66,1992。F9−RARE−lacZ細胞を24時間異なる量のオールトランスRA又はオールトランスDRAで処理し、その後、前記細胞を回収し、β−ガラクトシダーゼ活性をX−gal染色(図15、上部パネル)により評価した。DR5−誘導性β−ガラクトシダーゼ発現のオールトランスDRAトランス活性化をRAにより生成される等価な影響よりも高濃度で観察した。オールトランスRA及びオールトランスDRA誘導活性を可溶な基質である、オルト−ニトロフェニル−D−ガラクトピラノシドを使用して定量化した。無色の基質をβ−ガラクトシダーゼで切断し、分光光度計を用いて420nmでその吸光度を測定した(図15)黄色のオルト−ニトロフェノールにした。DR5要素のオールトランスDRA誘導は、オールトランスRAの誘導よりもかなり非効率である。10−9MのオールトランスRAを有するDR5レポーター細胞の誘導は、10−7MのオールトランスDRAで得られた誘導と同規模の大きさを有していた。投与量−応答曲線の線形部分を測定したその応答は、DR5−応答要素を活性化することにおいて、オールトランスDRAが約100倍非効果的であると示した。
図15は、F9−RARE−lacZレポーターの細胞株のRA及びDRAへの応答について示す。F9−RARE−lacZ細胞は、内因性RAR及びRXRを発現させ、最小プロモーター及びDR5要素の制御下でlacZのコンストラクトで形質移入した。Wagner,et al.Development(Camb.)116:55−66,1992。F9−RARE−lacZ細胞を異なる投与量のオールトランスRA又はオールトランスDRAで24時間処理した。RARE−駆動性lacZ遺伝子は、X−galを、光学顕微鏡法(上部パネル)で応答細胞において可視化した不溶性青色生成物に加水分解するβ−ガラクトシダーゼを生成する。選択的に、その細胞集団の応答を、前記オルト−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド基質を使用して前記β−ガラクトシダーゼ活性を測定することにより定量化した。前記無色の基質をβ−ガラクトシダーゼにより加水分解し、分光光度計(下部、棒グラフ)吸光度を420nmで測定した可溶の黄色のオルト−ニトロフェノールにした。バックグランドの刺激していない細胞におけるβ−ガラクトシダーゼ活性バックグランドを破線で示している。
RXRホモダイマーを9−シス−RA、フィタン酸、ドコサへキサン酸、及び他の不飽和脂肪酸によって活性化し得る。Heyman,et al.Cell 68:397〜406,1992;Lemotte,et al.Eur.J.Biochem.236:328〜333,1996;de Urquiza,et al.Science 290:2140〜2144,2000;Goldstein,et al.Arch.Biochem.Biophys.420:185〜193,2003。RXRホモダイマーは、単一の塩基対により分離した、CRBP IIプロモーター中で見出される六量体モチーフのDR1成分に結合し得る。Mangelsdorf,et al.Cell 66:555〜561,1991。我々は、pRXRE−BLUEと名づけた、最小プロモーター及び5つの連続する上流DR1成分の対照の下で、lacZのコンストラクトを有するHEK−293S細胞を使用して、DR1−レポーター細胞アッセイに基づきRXRの活性化を研究した。HEK−293S細胞は、内因性RXRをほとんど発現しないために、内因性RXRの欠失中で9−cis−RAによるDR1成分の誘導は全くない(図16、下部グラフ)。従って、我々は、マウスRXR−αをクローンし、我々がpRXRE−BLUEHで共形質移入した、EK−293S細胞中のCMVプロモーターの対照下でそれを発現させた。我々のアッセイにおいて、オールトランスDRAが、非常に弱い活性剤である一方で、RXR9−cis−RAは、RXR−媒体された転写を活性化した(図16、上部グラフ)。オールトランスRAは、RXRに結合しないが、我々は、オールトランスRAの添加がまた、オールトランスDRAと比較して、RXRホモダイマーのロバスト誘導をもたらすことを見出した。この結果は、一晩インキュベーション中の9−シス−RAへのオールトランスRA異性化の結末であり得るであろう。
図16は、オールトランスDRA、オールトランスRA、及び9−シス−RAによるDR1成分の活性化について示す。HEK−293S細胞をlacZのコンストラクトで最小プロモーター及び5つの連続する上流のDR1成分の対照下で形質移入した。上部に関しては、HEK−293S細胞をDR1−レポーターコンストラクトとマウスRXR−αの両方でCMVプロモーターの対照の下で共形質移入した。前記細胞をその後48時間、オールトランスRA、9−シス−RA、又はオールトランスDRAの示唆されたレベルで処理した。前記細胞を回収し、"Materials and Methods"の下、β−ガラクトシダーゼ活性をアッセイした。下部に関しては、DR1−レポーター形質移入した細胞を、48時間RXRの欠失下で異なる投与量のオールトランスRA、9−シス−RA、又はオールトランスDRAで処理した。刺激していない細胞中のβ−ガラクトシダーゼ活性バックグランドを、上部と下部との両者のグラフで破線により示す。前記細胞を回収し、"Materials and Methods"で記載したようにβ−ガラクトシダーゼ活性をアッセイした。本実験を2度繰り返し、同様の結果を得た。
実施例20
オールトランスDRA及び他の13,14−ジヒドロレチノイド代謝産物の同定
本発明において、本発明者らはROLパルミチン酸で経管栄養したLrat−/−マウスの組織において、オールトランスDRA及び他の13,14−ジヒドロレチノイド代謝産物を同定し、さらにオールトランスDRAはレポーター細胞アッセイにおいて遺伝子発現を制御することができることを示した。オールトランスDRAは、F9RARE−lacZ細胞においてRAR/RXRヘテロダイマーを活性化することによって、DR5−RAREレポーター遺伝子の発現を刺激した。オールトランスDRAは、DR1−lacZレポーターコンストラクト及びマウスRXR−αを同時導入したHEK−293S細胞においてRXRホモダイマーは活性化しなかった。Retsatの産物としてのオールトランスDROLの同定に関する以前の報告と組み合わせると、本発明は、オールトランスROlからのオールトランスDRAの形成に関与する酵素的経路を特徴付けした(Moise,et al.J.Biol.Chem.279:50230−50242,2004)。RetSatによるオールトランスROLのC13−14結合の飽和によって、オールトランスDROLが産生され、これはADH−1によって、及び場合によってはRPEに含まれるSDRファミリーRDHによって、一致するレチナルデヒド(retinaldehyde)であるオールトランスDRALへ酸化される。オールトランスDRALは、RALDH1−4によってオールトランスDRAへ酸化される。オールトランスDRAは、オールトランスDROLで経管栄養されたマウスにおいて、チトクロムP450酵素CYP26A1、−B1及び−C1によってin vitroで、オールトランス4−オキソ−DRAへ酸化され、これはその分解の有力な経路を示唆するものである(図24)。マウス組織から単離された基質及び反応産物や代謝産物の全ては、それらのUV−可視吸収スペクトル及びクロマトグラフィー特性をNMR及び質量分析によって特徴付けされた確証合成標準と比較することによって同定した。以前に9−cis−RAから9−cis−DRAへの変換を報告したレポートとは正反対に、本発明者らは、in vivoでのオールトランスRAのオールトランスDRAへの変換に関する証拠は見出せなかった(Shirley,et al.Drug Metab.Dispos.24:293−302,1996)。従って、オールトランスDRAは、オールトランスDROLの酸化のみに由来し、RetSatは、オールトランスDRA形成の重要な工程を触媒することに関与する唯一の既知酵素である、これらの発見は、RetSatによるオールトランスROLの飽和は活性であり、in vivoでのレチノイドの代謝において多分重要な工程であると示唆するものである。
オールトランスDRAの合成及び分解
ADH及びSDRファミリーの多く及びRALDHsのいくつかは、網膜及びRPEにおいて発現されている(Mic,et al.Mech.Dev.97:227−230,2000;Haeseleer,et al.Methods Enzymol.316:372−383,2000;Wagner,et al.Dev.Biol.222:460−470,2000;Mic,et al.Dev.Dyn.231:270−277,2004;Fischer,et al.J.Neurocytol.28:597−609,1999;Mey,et al.Res.Dev.Brain Res.127:135−148,2001)。本発明者らは最近の研究において、オールトランスDROLのオールトランスDRAへの変換の経路の存在、及びそれはRPEミクロソームにおいて効率的であることを示した(図20)。これは、オールトランスDRA合成はオールトランスRA合成が生じるのと同じ組織において生じ、オールトランスDRAは異なる組織において濃度勾配を有していることを意味している。この勾配は、合成及び触媒酵素の有効性、さらには一次基質(すなわちオールトランスDROL)の有用性によって決定されるであろう。
RA生物学的利用能は、その生合成と触媒との間のバランスによって厳密に制御されている(Niederreither,et al.Nat.Genet.31:84−88,2002)。チトクロムP450−型酵素は、偏在的に発現されているCYP26A1、−B1及び−C1を含み、これはRAを4−OH−RA、4−オキソ−RA,18−OH−RA及び5,8−エポキシ−RAへ酸化している(Fujii,et al.EMBO J.16:4163−4173,1997;White,et al.J.Biol.Chem.272:18538−18541,1997;Taimi,et al.J.Biol.Chem.279:77−85,2004;MacLean,et al.Mech.Dev.107:195−201,2001)。従って、CYP26酵素は、RNAの空間的及び時間的レベルを制限することに関与しており、ADH、SDR、及びRALDHと連携して、ROLの栄養上レベルにおける周期的変動から保護するためのRAの望ましいレベルを監視するものである。本明細書に示したようにCYP26CYP26A1、−B1及び−C1酵素は、オールトランスDRAも代謝する。これは、in vivoでのDRAの時間的及び空間的勾配にも寄与する。
鎖短縮(chain−shortened)ROL代謝産物の同定
本発明において、本発明者らは、アルコール保護基を含み、C13−14結合で飽和されC15で鎖短縮を受けたROL代謝産物の同定を提供する。鎖短縮RO代謝産物は、放射性14C−標識RA或いはオールトランスROLの運命を追跡した初期研究において記載されていた(Wolf,et al.J.Am.Chem.Soc.79:1208−1212,1957;Roberts,et al.J.Lipid Res.9:501−508,1968.Yagishita,et al.Nature 203:411−412,1964)。それらの合成に対する1つの可能な経路は、以前に他者によって示唆されてように、オールトランスDRAのα−酸化を介するものであった(Shirley,et al.Drug Metab.Dispos.24:293−302,1996)。C19−ROL代謝産物は、オールトランスDRAのα−酸化の間に産生された還元C19−アルデヒド中間体の産物である可能性があった(フィタン酸分解経路のpristanal中間体と同等)。オールトランスROLパルミチン酸で経管栄養したマウスにおいて観察されたレベルと比較して、低量のC19−ROLのみがオールトランスDROLが添加されたLrat−/−マウスにおいて観察された。この矛盾は、内在性オールトランスROLは、経管栄養によって投与されたオールトランスDROLとは異なるレパートリーの酵素へのアクセスを有するという事実によって説明される。C19−ROLの合成の限局的な経路は、この経路の特異的酵素を欠損したノックアウト動物モデルを用いることによって確立された。
脊椎動物生理学における13,14−ジヒドロレチノイドの潜在的役割
レチノイド代謝に関与する特異的酵素を欠損したマウスを用いる実験に基づいて、ADH1及びRALDH1は、ROLの薬理学的用量に対応する保護メカニズムに関与することを示した。Adh−/−及びRaldh1−/−マウスは、それらの野生型対応物と比較して、ROL−誘導毒性に対してより感受性を有していた(Molotkov,et al.J.Biol.Chem.278:36085−36090,2003;Molotkov,et al.Biochem.J.383:295−302,2004)。ROLのRAへの変換は食餌性ROLの過剰レベルから保護することが提示された。このアイディアは、よく知られたRAの毒性効果を考慮すれば直感に反するものである。本明細書において本発明者らは、ADH1及びRALDH1はDRAへのDROL酸化にも関与しており、オールトランスDRAは、all−trans或いは9−cis−RAと比較して、RAR−或いはRXR−仲介性転写の弱いアクチベーターであることを示した。従って、オールトランスROLのC13−14結合の飽和は、分解経路の第一工程であり、これはオールトランスROLの薬理学的用量からの保護を提供し、RAの形成を回避するものである。本発明者らの発見は、肝臓DROL及びDROL代謝産物の混合量は、10 IU ROLパルミチン酸/kg体重での経管栄養3時間後での肝臓オールトランスRAの量の1/3以下であることを示した。これは、RetSatによる飽和はこの代謝経路において律速反応であることが示唆された。
別の可能性としては、RetSat活性は、新規生理活性13,14−ジヒドロレチノイドの産生を導くというものである。本発明者らは、RAR/RXRヘテロダイマー−仲介性転写のアクチベータ−としてオールトランスDRAを同定した。オールトランスDRAの組織濃度及びトランス活性化特性は、オールトランスRAと比べて両方とも低かった。オールトランスDRA及び他のDROL代謝産物は特定の生理学環境において重要なトランス活性化活性を有することも可能である。13,14−ジヒドロレチノイドリガンドの局所的濃度は、受容体或いは結合タンパク質によって捕獲された結果としてより高いレベルに達する可能性がある。局所的濃度及び結合親和性が十分であると考えると、オールトランスDRAはRAR或いは場合によっては他の核酸レセプターに対する重要な内在性リガンドである可能性があった。RAの形成において特異的に作用すると考えられていた同じ酵素もDRAの形成にも関与しているという発見は、これらの酵素を欠損したノックアウト動物モデルの表現型をRAで回復する試みにおいて考慮されたものである。そのような実施例の1つにおいて、Raldh2−/−マウス胚は、母性RA添加によっては完全に回復せず、出生前に致死であった(Niederreither,et al.Development(Camb.)130:2525−2534,2003)。RAに加えて、13,14−ジヒドロレチノイドを含む他のレチノイド代謝産物が、Raldh2−/−胚の完全な回復に対して必要かどうかを推測することは興味深いことである。オールトランスDRA代謝産物の同定は、この過程の最初の工程であり、遺伝子発現を調節する際のDRA及び他のDROL代謝産物の生理学的役割を確立するために更なる研究が必要であった。
要約において、本発明者らは内在性生理活性レチノイドの新しいクラスを導く、ビタミンAに対する新しい代謝経路を記載した。本発明者らは、オールトランスDROLへのオールトランスROL飽和、それに続くオールトランスDRAへの酸化はin vivoで生じることを示した。オールトランスDRAは、RARの結合によってレポーター遺伝子の転写を活性化することができるが、RXRの結合ではできなかった。オールトランスDROLの酸化経路は、オールトランスROLの酸化経路と同じ酵素を使用する。本発明者らは、これらの以前には未知であった代謝産物は脊椎動物生理学におけるレチノイドの重要な機能をより理解することを助けると予想した。
使用した略語としては:ROL、レチノール;ROLパルミチン酸、レチニルパルミチン酸;ADH、中鎖アルコールデヒドロゲナーゼ;9−cis−DRA、9−cis−13,14−ジヒドロレチノイン酸;C19−ROL、(3E,5E,7E)−2,6−ジメチル−8−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサン−1−エニル)オクタ−3,5,7−トリエン−1−オール;DRAL、13,14−ジヒドロレチナルデヒド;DROL、13,14−ジヒドロレチノール;LRAT、レシチン:レチノールアシルトランスフェラーゼ;RA、レチノイン酸;RAL、レチナルデヒド(retinaldehyde);RALDH、RALデヒドロゲナーゼ;RAR、レチノイン酸受容体;RetSat、オールトランスROL:オールトランスDROLサチュラーゼ;RXR、レチノイドX受容体;SDR、短鎖デヒドロゲナーゼ/レダクターゼ;RARE、RAR成分;RXRE、RXR成分;CMV、サイトメガロウイルス;HPLC、高速液体クロマトグラフィー;MGC、哺乳類遺伝子コレクション;DR、直接反復配列;X−gal、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル(indolyl)−−D−ガラクトピラノシド、である。
本明細書において引用した全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物或いは特許出願のそれぞれが本明細書における参照によって取り込まれると特定に個別に示されたように、この参照によってその全体が本明細書に組み込まれるものである。
前述の発明は、明快な理解を目的とするための記載及び実施例によって詳しく記載されたが、本分野の当業者は、添付の請求項の観点或いは範囲から逸脱することなく特定の変更及び修飾をそれらに行うことは、本発明の教示の観点内であることを容易に理解するであろう。
図1は、植物及びシアノバクテリアCRTISOに対する類似性を有する脊椎動物タンパク質の同定について示したものである。 図2は、形質移入細胞におけるマウスRetSatの細胞内局在性について示したものである。 図3は、形質移入細胞におけるトマトCRTISO及びマウスRetSatの酵素活性について示したものである。 図4は、マウスRetSatによるオールトランスレチノールの変換の生合成産物の同定について示したものである。 図5は、マウスRetSatの基質の異性体について示したものである。 図6は、オールトランスレチナールに対するRetSat活性について示したものである。 図7は、オールトランスレチノイン酸に対するRetSat活性について示したものである。 図8は、ホモジナイズされた細胞におけるRetSat活性について示したものである。 図9は、種々の組織におけるオールトランス13,14−ジヒドロレチノールの同定について示したものである。 図10は、LRAT活性について示したものである。 図11は、Lrat−/−マウス肝臓におけるオールトランスROLパルミチン酸塩の代謝の分析について示したものである。 図12は、オールトランスROL及びオールトランスDROLのアルデヒドへの酸化について示したものである。 図13は、オールトランスRAL及びオールトランスDRALのオールトランスRA及びオールトランスDRAへの酸化について示したものである。 図14は、オールトランスRA及びオールトランスDRAの酸化について示したものである。 図15は、F9−RARE−lacZレポーター細胞のRA及びDRAに対する応答について示したものである。 図16は、オールトランスDRA、オールトランスRA、及び9−シス−RAによるDR1成分の活性化について示したものである。 図17は、[1H]−NMRにより特徴付けされたオールトランス4−オキソ−DRA(VI)の化合物について示したものである。 図18は、Lrat−/−マウス肝臓におけるオールトランスDROLの代謝分析について示したものである。 図19は、Lrat−/−マウス肝臓におけるオールトランスRAの代謝分析について示したものである。 図20は、RPEによるオールトランスDROLのオールトランスDRAへの変換について示したものである。 図21は、植物及びシアノバクテリアCRTISOによる触媒反応について示したものである。 図22は、オールトランス13,14−ジヒドロレチノールの合成について示したものである。 図23は、RetSatによる触媒化された、オールトランスレチノールのオールトランス13,14−ジヒドロレチノールへの変換反応について示したものである。 図24は、オールトランスROL及びオールトランスDROLの代謝について示したものである。

Claims (27)

  1. オールトランス−(13,14)−ジヒドロレチノールを生成する方法であって、
    65〜68℃の4〜6XのSSCを含む水溶液中、又は42℃の50%ホルムアルデヒド中、ヒトRetSat(GenBank アクセッション番号 gi46329587)、マウスRetSat(GenBank アクセッション番号 AY704159)、又はサル(マカク)RetSat(GenBank アクセッション番号 AY707524)、若しくは機能的に活性なそれらの断片をコードするポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを含む厳密な条件下で宿主細胞において異種核酸を発現させる工程を有する方法。
  2. 請求項1記載の方法において、前記宿主細胞は哺乳類の宿主細胞である。
  3. ヒト、マウス、又はサルのオールトランスレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ、若しくは機能的に活性なそれらの断片の連続的配列を有する単離ポリペプチド。
  4. 請求項3記載の単離ポリペプチドにおいて、このポリペプチドは、さらに、
    ヒトオールトランスレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ(GenBank アクセッション番号 gi46329587)を有するものである。
  5. 単離ポリヌクレオチドであって、ヒト、マウス、又はサルのオールトランスレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ、若しくは機能的に活性なそれらの断片の連続的配列を有する単離ポリヌクレオチド。
  6. 操作可能であるように連結された以下の成分を含む発現コンストラクトであって、前記成分は、転写プロモーターと、65〜68℃の4〜6XのSSCを含む水溶液中、又は42℃の50%ホルムアルデヒド中におけるハイブリダイゼーションを含む厳密な条件下で、ヒトRetSat(GenBank アクセッション番号 gi46329587)、マウスRetSat(GenBank アクセッション番号 AY704159)、及びサル(マカク)RetSat(GenBank アクセッション番号 AY707524)をコードするポリヌクレオチド、若しくは前記ポリヌクレオチドの全長の相補体とハイブリダイズするRETSATポリヌクレオチドであって、ここで、前記Retsatポリペプチドは、前記ヒト、マウス、又はサルのポリペプチド、若しくは機能的に活性なそれらの断片の連続的アミノ酸配列を有するものであるRETSATポリヌクレオチドと、転写ターミネーターと
    を有する発現コンストラクト。
  7. 請求項6記載の発現コンストラクトにおいて、前記転写プロモーターは異種プロモーターである。
  8. 請求項6記載の発現コンスラクトを形質転換若しくは形質移入した培養原核細胞又は真核細胞。
  9. 請求項8記載の真核細胞において、前記真核細胞は哺乳類細胞である。
  10. 請求項6記載の発現コンストラクトを有するベクター。
  11. 請求項10記載のベクターを有する単離宿主細胞。
  12. Retsatポリペプチドを生成する方法であって、
    請求項10のベクターを形質転換又は形質移入した細胞を増殖させる工程と、
    前記細胞から前記Retsatポリペプチドを単離する工程と
    を有する方法。
  13. 請求項12記載の方法において、
    前記細胞は細菌細胞又は哺乳類細胞である。
  14. ヒトRetsatポリペプチドに結合する抗体。
  15. 請求項14記載の抗体であって、この抗体は、
    モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、短鎖抗体、重鎖抗体、F(ab’)、F(ab’)、又はFv断片である。
  16. 真核生物のRetsatポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法であって、
    Retsatポリペプチドを発現する第一の細胞に候補化合物を投与する工程と、
    前記候補化合物が前記第一の細胞により生理学的変化を生じさせるか否かを測定する工程と
    を有する方法。
  17. 薬学的組成物であって、
    オールトランス13,14−ジヒドロレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸、及び/若しくはオールトランス13,14−ジヒドロレチノイド誘導体、及び薬学的に許容可能な担体
    を有する薬学的組成物。
  18. 請求項17記載の薬学的組成物において、この薬学的組成物は、局所的投与、経口投与、静脈内投与、眼内注射、又は眼窩周囲注射のために調製されるものである。
  19. 請求項17記載の薬学的組成物において、
    前記オールトランス13,14−ジヒドロレチノイド誘導体はレチニルエステルである。
  20. 哺乳類の対象における腫瘍性疾患を治療する方法であって、
    請求項3記載のポリヌクレオチドを発現する核酸コンストラクトを有する薬学的組成物を前記哺乳類の対象に投与する工程
    を有する方法。
  21. 哺乳類の対象における網膜疾患又は失明を治療する方法であって、
    オールトランス13,14−ジヒドロレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸、及び/若しくはオールトランス13,14ジヒドロレチノイド誘導体、及び薬学的に許容可能な担体を有する薬学的組成物を前記哺乳類の対象に投与する工程
    を有する方法。
  22. 哺乳類の対象における網膜疾患状態又は失明を治療する方法であって、
    オールトランスレチノール、すなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ活性を前記哺乳類の対象において活性化させる化合物を前記哺乳類の対象に投与する工程
    を有する方法。
  23. 哺乳類の対象における自己免疫疾患を治療する方法であって、
    オールトランス13,14−ジヒドロレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸、及び/若しくはオールトランス13,14−ジヒドロレチオイド誘導体、及び薬学的に許容可能な担体を有する薬学的組成物を前記哺乳類の対象に投与する工程
    を有する方法。
  24. 哺乳類の対象における自己免疫疾患を治療する方法であって、
    オールトランスレチノール、すなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ活性を前記哺乳類の対象において活性化させる化合物を前記哺乳類の対象に投与する工程
    を有する方法。
  25. 哺乳類の対象における皮膚の疾患又は症状を治療する方法であって、
    オールトランス13,14−ジヒドロレチノール、オールトランス13,14−ジヒドロレチノイン酸、及び/若しくはオールトランス13,14−ジヒドロレチノイド誘導体、及び薬学的に許容可能な担体を有する薬学的組成物を前記哺乳類の対象に投与する工程
    を有する方法。
  26. 哺乳類の対象における皮膚の疾患又は症状を治療する方法であって、
    オールトランスレチノールを活性化させる化合物すなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ活性を前記哺乳類対象においてを前記哺乳類の対象に投与する工程
    を有する方法。
  27. 哺乳類の対象における腫瘍性疾患を治療する方法であって、
    オールトランスレチノールすなわちオールトランス13,14−ジヒドロレチノールサチュラーゼ活性を腫瘍性細胞において阻害する化合物を前記哺乳類の対象に投与する工程
    を有する方法。
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