JP2008514613A - 線条体または黒質緻密部における神経学的欠損の治療 - Google Patents

線条体または黒質緻密部における神経学的欠損の治療 Download PDF

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Abstract

【課題】骨形成タンパク質−7(BMP7)を利用して、ヒトの線条体または黒質緻密部に対する損傷または疾患から生じる神経学的欠損を治療すること。
【解決手段】本発明は、ヒトの線条体または黒質緻密部に、ドーパミン作動性表現型への分化能を有する細胞集団を実際にドーパミン作動性表現型へと分化させるのに有効な量で、BMP7を投与することにより、ヒトの線条体または黒質緻密部に対する損傷または疾患から生じる神経学的欠損を治療する方法、ならびにこのような治療に用いるのに好適な神経栄養組成物およびマトリックスを対象とする。
【選択図】なし

Description

開示の内容
〔発明の分野〕
本発明は、ヒトの線条体または黒質緻密部に対する損傷または疾患から生じる神経学的欠損を、その線条体または黒質緻密部に、骨形成タンパク質−7(BMP7)を投与することによって治療する方法、ならびにこのような治療方法に用いるためのヒト組換えBMP7を含有する組成物およびマトリックスを対象とする。
〔発明の背景〕
パーキンソン病(パーキンソン症候群)または脳卒中に起因すると考えられるものなどの、神経障害によって引き起こされる損傷を修復するのに満足のいく方法はない。パーキンソン病は、振戦、筋強剛、動作緩慢、および運動低下などの神経学的欠損、ならびに平衡および姿勢におけるその他の欠損からなる症候群である。パーキンソン病は神経系の老化に関連している場合が多い。同様に、脳卒中も運動系に作用し、患者に片側不全麻痺または麻痺の症状をもたらし得る。
黒質はパーキンソン病の病変の主要部位である。黒質の色素沈着ニューロンは尾状核被殻(線条体)に向かって広範囲かつ散漫に突出しており、ドーパミンの合成と放出に特化している。パーキンソン症候群の症状は、ドーパミン作動性神経支配の75〜80%が破壊された際に現れる。パーキンソン病患者はドーパミン置換療法(dopamine replacement therapy)に応答する。残念なことに、ドーパミン置換療法の有効性は、黒質線条体のドーパミン作動性経路の継続的な変性に伴って次第に低下する。
幹細胞が確認されたことで、再生医療のための特定の細胞種の選択的再生をねらいとした研究が促された。幹細胞から、パーキンソン病の治療用のドーパミン作動性(DA)ニューロン、ALSの治療用の運動ニューロン、およびMSの治療用の乏突起神経膠細胞などの治療上適切な細胞種への指示分化(directed differentiation)のためのプロトコルが開発されているが、幹細胞から相当な数のこれら細胞種が効率的に発生したという報告はまだない。中脳のDAニューロンマーカーの完全な相補物を発現するDAニューロンを無限数発生させる能力は、パーキンソン病に治癒をもたらすために重要な部分である。従って、幹細胞の、DA系統への分化を刺激するために利用可能な薬剤は、パーキンソン病、ならびに中大脳動脈(MCA)およびその分枝に作用する脳卒中にとって、外因性および内因性双方の幹細胞を利用し、分化させる可能性を与える。
その他の場合では、脳および/または脊髄の急性または神経変性性の病変の作用を打ち消す試みは、失われた、または欠陥のある神経機能を補償するために、基本的に胚ニューロンの移植を含むものであった。しかしながら、ヒト胎児細胞移植の研究は厳しく制限されている。神経成長因子およびインスリン様成長因子などの神経栄養因子の投与もまた、中枢神経系(CNS)のニューロン成長を刺激することが示唆された。例えば、ルンドボーグ(Lundborg),「アクタ・オーソピーディカ・スカンディナヴィカ(Acta Orthop. Scand.)」58: 145〜169 (1987);米国特許第5,093,317号を参照されたい。CNSに対する神経栄養因子の投与では、血液脳関門を迂回する必要がある。この関門は、直接注入により、あるいは化学修飾もしくは科学的結合によるなど、関門を越える分子の輸送を増強するよう分子を修飾することにより、または分子の先端切断によって、克服することができる。TGF−βスーパーファミリー[キングスレー(Kingsley), 「ジーンズ・アンド・ディベロプメント(Genes & Development)」 8 133〜146 (1994)]およびそこに引用されている文献からの多くの成長因子は、特に創傷治癒および組織再生に関する広範な医学的治療法および適用に関連している。これらの多機能性タンパク質のいくつかはまた、多くの細胞種において増殖および分化の調節などの機能に加え、ニューロンに対する生存増進作用も有する[ロバーツおよびスポーン(Roberts and Sporn),「ハンドブック・オブ・エクスペリメンタル・ファーマコロジー(Handbook of Experimental Pharmacology)」 95 419〜472, スポーンおよびロバーツ(Sporn and Roberts)編 (1990); サクライ他(Sakurai et al.),「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)」, 269 14118〜14122 (1994)]。従って、例えば、胚の運動ニューロンおよび感覚ニューロンに対する栄養作用が、生体外でTGF−βに関して実証された[マーティノウ他(Martinou et al.),「ディベロプメンタル・ブレイン・リサーチ(Devl. Brain Res.)」, 52 175〜181 (1990); シャラゾニティス他(Chalazonitis et al.),「ディベロプメンタル・バイオロジー(Dev. Biol.)」, 152 121〜132 (1992)]。さらに、中脳のドーパミン作動性ニューロンに対する生存増進作用が、タンパク質TGF−β−1、−2、−3、アクチビンAおよびGDNF(グリア細胞系統由来神経栄養因子)、TGF−βスーパーファミリー構成要素と構造的類似性を有するタンパク質に関して示されたが、これらの作用は星状細胞によっては媒介されなかった[クリーグルスタイン他(Krieglstein et al.),「EMBOジャーナル(EMBO J.)」, 14, 736〜742 (1995)]。様々な組織および発達段階におけるTGF−βスーパーファミリーのタンパク質の発生は、これらのタンパク質の厳密な機能ならびに標的部位、寿命、補因子要求性、必要な細胞の生理学的環境、および/または分解耐性に関する違いと一致する。
骨形成因子(BMP)は、TGF−βスーパーファミリーに属する分泌性のシグナル分子である(キングスレー(Kingsley), 1994)。BMPは、胚発達、組織および器官の調節に重要な役割を果たすことが知られ、これまでに30以上のBMPが確認されている。BMP6とBMP7は、双方ともBMPの60Aファミリーの構成要素であり、生体内および生体外における研究で神経系の発達における重要な作用が実証されている。特異的作用としては、初期発達における神経系のパターン化の特定、およびニューロン独自性(neuronal identity)の付与が含まれる(グエン他(Nguyen, et al) 2000, シュナイダー他(Schneider et al), 1999)。他の作用としては、細胞の成長、ならびに神経伝達物質およびニューロペプチドの合成を含む。さらに、BMP4は嗅上皮培養において神経発生を刺激することができるが、BMP7は刺激することができない(ショウ他(Shou et al), 2000)というような例により、BMPの作用は、このスーパーファミリーの中でも異なったものであることが確認された。従って、発達において明らかに異なる役割を持つならば、ドーパミン作動性辺縁系のような特定の神経経路の発達に関してBMPが持ち得る特定の作用を仮定することは興味深い。
よって、ヒトの線条体または黒質緻密部に対する損傷または疾患から生じる神経学的欠損の治療の必要性がある。本発明は、このようにして生じる欠損の治療または予防を可能とする方法で骨形成タンパク質−7(BMP7)を利用しようとするものである。
〔発明の概要〕
本発明は、ヒトの線条体または黒質緻密部に対する損傷または疾患から生じる神経学的欠損を治療する方法であって、骨形成タンパク質−7(BMP7)を、前記ヒトの線条体または黒質緻密部に、ドーパミン作動性表現型への分化能を有する細胞集団を実際に前記ドーパミン作動性表現型へと分化させるのに有効な量で、投与することを含む方法、ならびにこのような欠損を治療するのに適する骨形成タンパク質−7(BMP7)を含む組成物およびマトリックスを対象とする。
〔発明の詳細な説明〕
神経発生は成体の海馬、脳室下領域、黒質、および嗅球において実証されている。よって、これらの細胞をDA特異的ニューロンへ動員および/または分化することができる薬剤は、パーキンソン病に起因すると考えられるヒトの線条体または黒質緻密部に対する損傷または疾患から生じる神経学的欠損の治療において、細胞置換をもたらすのに不可欠である。本発明の治療法および組成物において、BMP7は、内因性または外因性に関わらず、幹細胞集団または前駆細胞集団を分化させるための予備分化剤または分化剤として利用される。本発明は、少なくとも一つには、BMP7が、成熟神経海馬前駆細胞をドーパミン作動性表現型へと選択的に分化させる神経栄養因子であるという発見に基づく。本明細書に記載のデータは、BMP7が神経幹細胞分化の有力な誘導因子であることを証明する。よって、これらの結果は、神経再生機能を提供するためのBMP7の有用性を証明する。
BMP7は神経幹細胞分化の有力な誘導因子であることが発見されたことから、このBMP7は神経変性疾患、特にパーキンソン病に起因するヒトの線条体または黒質緻密部における神経学的欠損、または中大脳動脈(MCA)およびその分枝に作用する脳卒中によって引き起こされる損傷の治療に有用であることが決定付けられた。本発明者らは、BMP7が単独で、海馬から単離された成熟神経前駆細胞からドーパミン作動性表現型への分化を刺激することができることを見出したが、アゴニストと組み合わせても、神経幹細胞、またはドーパミン作動性表現型への分化能を有する他の細胞において高いドーパミン作動性分化を誘導することができる。例えば、BMP7はソニックヘッジホッグ(Sonic Hedgehog)(SHH)または繊維芽細胞増殖因子8(FGF8)と組み合わせて用いて、神経幹細胞および本明細書に記載の他の細胞の表現型をドーパミン作動性にするための有意に増強された方法を提供することができる。SHHは、Wntシグナル伝達経路(Wnt signaling pathway)の必須部分であり、この発達経路において重要な他の因子は、BMP7との組合せにおいてニューロンの形成にとっても重要であり得る。
また、BMP7は、海馬前駆細胞もしくは海馬幹細胞、またはドーパミン作動性表現型への分化能を有する他の細胞など、成熟神経前駆細胞以外の幹細胞形態を分化させるためにも使用することができる。これら他の細胞形態としては、限定されるものではないが、間葉幹細胞、造血幹細胞、胚幹細胞(ESC)、胚幹細胞由来前駆細胞、産後由来(postpartum-derived)幹細胞または前駆細胞、臍帯または胎盤組織由来細胞、筋肉由来幹細胞または前駆細胞、膵臓由来幹細胞または前駆細胞、辺縁由来幹細胞または前駆細胞、網膜由来幹細胞または前駆細胞、および肝臓由来幹細胞または前駆細胞を含む。
BMP7は、ヒトの線条体または黒質緻密部における神経学的欠損の治療において細胞集団を分化させるために、神経栄養因子として単独で使用することができる。本明細書において神経栄養(neurotrophic)とは、細胞を回復させる、再生する、および分化させる能力を含むものと定義される。また、このタンパク質は神経栄養組成物中に配合してもよいし、または送達系もしくは支持系として働く好適なマトリックスとともに用いてもよい。この神経栄養組成物は有効量のBMP7を含む。有効量とは、ドーパミン作動性表現型への分化能を有する細胞集団を実際に前記ドーパミン作動性表現型へと分化させるのに有効な量を意味する。本発明の神経栄養組成物は、約0.5〜約1,000ngのBMP7、または約0.5〜約200ngのBMP7を含み得る。
神経栄養組成物は、BMP7を医薬上許容される担体または水性溶媒中で固定、混合、溶解または懸濁することにより得ることができる。例えば、担体または水性溶媒の好適な例としては、限定されるものではないが、臨床級無菌水、無菌生理食塩水、無菌リン酸緩衝生理食塩水、無菌水中のデキストロース、無菌液体培地または他の生理学的に許容される等張液を含む。さらに、本発明の神経栄養組成物は、安定剤、保存剤、増粘剤、可溶化剤など、担体または水性溶媒と混和可能な様々な薬理学的に許容される添加剤を含むことができる。
また、BMP7は、送達系または支持系として働く好適なマトリックスとともに使用することができる。BMP7に対して好結果が得られるマトリックスは望ましくはいくつかの重要な機能を遂行する。このようなマトリックスは、BMP7と結合し、緩慢放出または徐放送達系として働き、分化中、各細胞応答段階に適合することが好ましい。このマトリックスは送達部位からのBMP7の拡散を防ぐので、送達された細胞に対するBMP7の作用を限局化すると考えられる。さらに、選択されるマトリックス材料は、生体内において生体適合性があり、かつ、多孔性でなければならず、生分解性であるのが好ましい。本明細書において生分解性とは、体内の生理条件下で(化学的または物理的に)分解または崩壊され、それらの分解産物が身体によって排泄可能であるか、または吸収可能であるような材料を含むものと定義される。生分解速度は、線条体または黒質緻密部中にいったん移植されると、所望の放出速度に応じて異なってよい。このマトリックスはまた、新たに増殖した神経組織に置き換わるまで、一時的な足場として働くのが望ましい。よって、一実施態様では、このマトリックスは、神経栄養因子を必要とする患者にその因子成分の持続的放出を提供し、また、その患者における組織増殖を進展させるための構造も提供し得る。マトリックスは粒子の形態であってもよく(直径10ミクロンより大きなマクロ粒子、または直径10ミクロンより小さな微粒子)、構造的に安定した三次元インプラント(例えば、足場)の形態であってもよい。このインプラントは例えば、立方体、円柱体、チューブ、ブロック、フィルム、シート、または適切な解剖学的形態であってよい。
生体内で生分解性のポリマーの機械的性能に影響を及ぼす因子は、ポリマー科学者にはよく知られており、モノマーの選択、初期加工条件、および添加剤の存在が含まれる。生分解は、主鎖における不安的な結合、または体内で安全に酸化もしくは加水分解され得る結合を有するポリマーを合成することにより達成された。この特徴を有する最も一般的な化学官能基は、エーテル、エステル、無水物、オルトエステル、およびアミドである。よって、本発明の一実施態様では、BMP7は、生分解性ポリマー中の化学結合の加水分解により、この生分解性ポリマーマトリックスから必要とされる部位へ制御可能に放出される。生分解性ポリマーマトリックスは好ましくは、粉末、微粒子、微小球、細片、原位置で重合可能なゲル(in situ polymerizable gel)などのゲル、網(web)、またはスポンジの形態である。
生体適合性マトリックスは、ホモポリマー、コポリマー、およびブロックポリマーを含む、天然、修飾天然、または合成生分解性ポリマー、ならびにそれらの組合せから構成することができる。ポリマーは一般にそれが合成されるモノマーに基づいて呼称されることを注記しておく。
好適な生分解性ポリマーまたはポリマー種の例としては、フィブリン、コラーゲン、エラスチン、ゼラチン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、再構成基底膜マトリックス、デンプン、デキストラン、アルギン酸塩、ヒアルロン、キチン、キトサン、アガロース、多糖類、ヒアルロン酸、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリエチレングリコール、脱細胞化組織(decellularized tissue)、自己集合ペプチド(self-assembling peptides)、ポリペプチド、グリコサミノグリカン、それらの誘導体、およびそれらの混合物を含む。グリコール酸および乳酸の双方については、一般に、中間環状二量体が調製され、重合前に精製される。これらの中間二量体は、それぞれグリコリドおよびラクチドと呼ばれる。他の有用な生分解性ポリマーまたはポリマー種としては、限定されるものではないが、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、ポリオキサレート、ポリ(α−エステル)、ポリ無水物、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリアミノ酸、ポリアミド、ならびにそれらの混合物およびコポリマーを含む。さらなる有用な生分解性ポリマーとしては、限定されるものではないが、L−乳酸とD−乳酸のステレオポリマー、ビス(パラ−カルボキシフェノキシ)プロパン酸とセバシン酸のコポリマー、セバシン酸コポリマー、カプロラクトンのコポリマー、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)/ポリエチレングリコールコポリマー、ポリウレタンとポリ(乳酸)のコポリマー、ポリウレタンとポリ(乳酸)のコポリマー、α−アミノ酸のコポリマー、α−アミノ酸とカプロン酸のコポリマー、グルタミン酸α−ベンジル(alpha-benzyl glutamate)とポリエチレングリコールのコポリマー、コハク酸塩とポリ(グリコール)のコポリマー、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシ−アルカノエート、およびそれらの混合物を含む。また、二元系および三元系も考えられる。
一般に、マトリックスとして用いるのに好適な生分解性ポリマーは、意図される適用に好適な機械特性を有し、組織が内部へ成長して治癒するまで十分完全な状態を維持し、炎症または有害な応答を誘発することもなく、その目的を果たした後は体内で代謝され、形成される所望の最終生成物へと容易に加工され、許容される保存寿命を示し、かつ、容易に滅菌されるように構成されるのが望ましい。
本発明の一態様では、マトリックスを形成するために使用される生体適合性ポリマーは、ヒドロゲルの形態である。一般に、ヒドロゲルは、独特な三次元構造を維持しつつ、水中で、それらの重量の20%を超えて吸収可能な架橋ポリマー材料である。この定義には、水性環境中で膨潤する乾燥架橋ポリマー、ならびに水で膨潤した材料が含まれる。親水性ポリマーのホストは、そのポリマーが生物起源のものであれ、半合性のものであれ、完全に合成のものであれ、架橋されてヒドロゲルを生じ得る。ヒドロゲルは合成ポリマー材料から製造してもよい。このような合成ポリマーは、特性が所与の範囲となるように作ることができ、ロット間の均一性が予測でき、免疫原性の問題がない信頼できる材料源となる。これらのマトリックスは、米国特許第5,670,483号および同第5,955,343号、米国特許出願第2002/0160471号、PCT出願第WO02/062969号で論じられているもののような自己集合ペプチドから形成されるヒドロゲルも含み得る。
薬剤送達適用においてヒドロゲルを有用にする特性としては、平衡膨潤度、収着動態、溶質の浸透性、およびそれらの生体内での性能の特徴を含む。BMP7を含む化合物に対する浸透性は、一つには、膨潤度または含水率、および生分解速度によって異なる。ゲルの機械強度は膨潤度に正比例して低下することから、ヒドロゲルが、その混成系(composite system)が機械強度を高めるために基質と結合させることができるということも、十分、本発明の予測の範囲内である。代替の実施態様では、ヒドロゲルは、多孔性基質内に含浸させて、BMP7 Rにとって有用なヒドロゲルの送達特性とともに基質の機械強度を得ることができる。一実施態様では、BMDP7、またはBMP7を含む神経栄養組成物、またはの、BMP7を含むマトリックスの、黒質緻密部または線条体への直接的な実質組織内注射が、前駆細胞または幹細胞の残りのプールの分化を促進し、神経前駆細胞または幹細胞の局在ニッチをドーパミン作動性系統へと分化させるのに有効であり得る可能性がある。
あるいは、BMP7神経栄養組成物および/またはBMP7含有マトリックスは、直接的移植、マイクロカテーテル、体内留置カテーテル法(intracatheterization)、またはミニポンプによって部位に送達してもよい。また、BMP7組成物および/またはマトリックスは、髄膜下送達、または脳室内投与、または鼻腔内投与によって黒質緻密部または線条体へ間接的に送達することもできる。ビヒクル賦形剤または担体は患者への投与、特に、細胞分化が誘導される部位での局所投与のために医薬上許容されることが知られているいずれのものであってもよい。例としては、液体培地、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、無菌生理食塩水、無菌リン酸緩衝生理食塩水、レイボビッツの培地(L15,インビトロジェン社(Invitrogen),カリフォルニア州カールズバッド)、無菌水中のデキストロース、および生理学的に許容される他の液体を含む。黒質緻密部への好ましい送達法は、例えば、F.バリスおよびD.ポプラック(F. Balis & D. Poplack), 「アメリカン・ジャーナル・オブ・ぺディアトリック・ヘマトロジカル・オンコロジー(Am. J. Pediatric. Hematol. Oncol.)」 11(1):74〜86 (1989)に教示されているものなどの既知の技術に従ってオマヤレザバー(Ommaya reservoir)を用いた髄膜下または脳室内送達である。黒質緻密部へのいっそうより好ましい送達法は、マイクロカテーテルによる直接的な実質組織内注射によるものである。
代替の実施態様では、BMP7は、移植前に成熟幹細胞または前駆細胞を前処理するために用いることができ、または脳の細胞集団においてこれらの転写物の生体内でのアップレギュレーションを誘導するために、あるいはまた、脳において神経幹細胞もしくは前駆細胞プールを分化させるために、移植前に装置内にこのような細胞とともに加えることができる。よって、これらの条件を用いて、線条体または黒質に移植する前に、神経幹細胞もしくは前駆細胞、他の幹細胞もしくは前駆細胞、または本明細書に記載の他の細胞を含む細胞プールを前処理することができる。例えば、海馬神経幹細胞は、BMP7を含む好適なマトリックス/足場上で分化させ、それらの分化させた形態で線条体または黒質緻密部に直接移植することができる。
以下、実施例を示して本発明の特定の態様をさらに説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1: 成体齧歯類海馬神経前駆細胞の、ドーパミン作動性表現型へのBMP7誘導による分化
成体齧歯類海馬神経前駆細胞を、従前に公開されている方法[スヴェンソン他(Svendson et al.),「ネイチャー・リビューズ・ジェネティクス(Nat Rev Genet.)」, 5(2) 136〜44 (2004)]に従い、成体ラット脳から単離した。単離細胞を1000細胞/cm2でラミニンコーティングされた24ウェル組織培養プレート(ベクトン・ディクソン社(Becton Dickson),マサチューセッツ州ベッドフォード)に播種した。
播種した細胞をまず、補足した神経基本培地(neuralbasal medium)、すなわちNBMで増殖させた。このNBMは、B27サプリメント(インビトロジェン社(Invitrogen),カリフォルニア州カールズバッド)、およびL−グルタミン(4ミリモル)(シグマ社(Sigma),ミズーリ州セントルイス)を含む、ニューロベーサル‐A(Neurobasal-A)培地(インビトロジェン社(Invitrogen),カリフォルニア州カールズバッド)であった。補足NBMはまた、上皮増殖因子、すなわちEGF(シグマ社(Sigma),ミズーリ州セントルイス)20ng/mLと、塩基性繊維芽細胞増殖因子bFGF(ペプロテック社(Peprotech),ニュージャージー州ロッキーヒル)20ng/mLを含む。
一組目の細胞は補足NBMで17日間培養した。
二組目の細胞はまず、補足NBMで4日間培養した。その後、補足NBMを培養プレートから除去し、細胞を、BMP7(キュリス社(Curis),マサチューセッツ州ケンブリッジ)20ng/mLを含有するNMBで13日間培養した。
三組目の細胞はまず、補足NBMで10日間培養した。その後、補足NBMを培養プレートから除去し、細胞を、ソニックヘッジホッグ、すなわちSHH(シグマ社(Sigma),ミズーリ州セントルイス)200ng/mL、および繊維芽細胞増殖因子8、すなわちFGF8(ペプロテック社(Peprotech),ニュージャージー州ロッキーヒル)100ng/mLを含有するNMBで培養した。
四組目の細胞はまず、補足NBMで10日間培養した。その後、補足NBMを培養プレートから除去し、細胞を、BMP7を20ng/mL、ソニックヘッジホッグを200ng/mL、およびFGF8を100ng/mL含有するNMBで培養した。
17日間の試験期間が終了したところで、全ての培養物を4%パラホルムアルデヒド(シグマ社(Sigma),ミズーリ州セントルイス)で固定し、免疫細胞化学染色を行って、βチューブリンIII(TuJl)、グリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)、およびチロシン水酸化酵素(TH)の発現を評価した。
要するに、固定した培養物をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(インビトロジェン社(Invitrogen),カリフォルニア州カールズバッド)で洗浄し、タンパク質ブロッキング溶液に30分間曝した。このタンパク質ブロッキング溶液は、4%ヤギ血清(ケミコン社(Chemicon),カリフォルニア州テメキュラ)と0.3%トリトン(トリトンX−100(Triton X-100),シグマ社(Sigma))を含むPBSであった。次に、一次抗体溶液を、ブロッキング溶液、ならびにTuJ1抗体(シグマ社(Sigma),ミズーリ州セントルイス)1:500希釈液、GFAP抗体(ケミコン社(Chemicon),カリフォルニア州テメキュラ)1:1000希釈液、およびTH(ケミコン社(Chemicon),カリフォルニア州テメキュラ)1:2000希釈液を含有するサンプルに、室温で1時間適用した。
一次抗体溶液を除去し、サンプルをPBSで洗浄した。次に、二次抗体溶液を、室温で1時間適用した。この二次抗体溶液は、ヤギ抗マウスIgG−テキサスレッド(ケミコン社(Chemicon),カリフォルニア州テメキュラ)1:250希釈液、およびヤギ抗ウサギIgG−アレクサ488(IgG - Alexa 488)(ケミコン社(Chemicon),カリフォルニア州テメキュラ)1:250希釈液を含むタンパク質ブロッキング溶液であった。その後、サンプルを洗浄し、10マイクロモルの4’−6−ジアミジノ−2−フェニルインドール−2HCl(DAPI)(モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes),オレゴン州ユージーン)とともに10分間インキュベートして細胞核を可視化した。
免疫細胞化学染色の後、蛍光を、オリンパス倒立落射蛍光顕微鏡(Olympus inverted epifluorescent microscope)を用いて可視化し、画像を、デジタルカメラおよびイメージプロ(ImagePro)ソフトウエア(メディア・サイバネティクス社(Media Cybernetics),メリーランド州シルバースプリング)を用いて撮影した。応答をさらに定量化するために、倍率200×で細胞の数視野を計数し、各マーカーに対する陽性細胞のパーセンテージを調べ、NBM単独中で増殖させた対照サンプルと比較した。各条件につき最少1000細胞を計数し、または、1000より少ない場合には、その条件で観察された細胞総数を計数した。
所与のマーカーに陽性の細胞のパーセンテージは、特定のマーカーの陽性細胞数を、DAPI染色によって判定される有核細胞の総数で割ることにより求めた。表1は、TuJ1、TH、およびGFAPに対して陽性染色された細胞のパーセンテージを示す。
Figure 2008514613
この表は、補足NBM単独で、これら神経前駆細胞の20.1%がTuJ1陽性ニューロン(TuJl+ neurons)へ分化したことを示す。TuJ1陽性細胞(TuJl+ cells)のうち43.8%が、(TH陽性染色により示されるように)ドーパミン作動性表現型へ分化した(全DAPI陽性、有核細胞の8.8%)。ドーパミン作動性分化は、NBMにBMP7を加えた場合に有意に高まった(TuJ1陽性細胞の74.7%がTH陽性であった;全有核細胞の7.4%)。
同様に、ニューロン(TuJ1陽性細胞)総数は、BMP7をSHHおよびFGF8と組み合わせて加えた場合に有意に低下したが(それぞれ、35.9%に対して19.4%)、ドーパミン作動性TH陽性表現型へと成熟したこれらの細胞のパーセンテージは、BMP7の存在下において有意に増加した(それぞれ、SHHおよびFGF8単独で25.1%に対してBMP7を伴う場合の45.9%)。
さらに、BMP7はまた、免疫細胞化学を用いて示された中間線維性タンパク質(intermediate filament protein)GFAPの発現の上昇によって証明されるように、これらの神経前駆細胞の、星状細胞運命(astrocytic fate)への分化を誘導した(BMP7単独>80%に対して補足NBMのみの5.5%)。
実施例2: 産後の細胞におけるBMP7誘導によるNurr1発現
産後の細胞は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第10/887,012号および同第10/887,446号に記載されているように、臍帯および胎盤組織の消化物から単離された。要するに、ヒト臍帯および胎盤幹細胞を産後の組織の外植体から単離した。組織は分娩または正常な手術分娩の際に妊婦から得た。以下の細胞単離プロトコルを、層流フード内の無菌条件下で行った。産後の組織をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、抗真菌剤および抗生物質(AA)(1mL/100mL(10,000単位/mL))(PBS−AA)の存在下で洗浄した。洗浄工程は、穏やかに振盪しながらPBS−AAで組織をすすぐことから成った。この工程を数回行い、血液および残渣を除去した。次に、洗浄組織を、150cm組織培養プレート中、50mLのDMEM−低グルコース培地(DMEM:Lg)またはDMEM−高グルコース培地(DMEM:Hg)の存在下で機械的に解離させた。組織が小片に切り刻まれると、50mL容の円錐管に1本当たり組織およそ5gとなるように移した。次に、組織を、DMEMに溶解したコラゲナーゼ:ディスパーゼ(C:D)、またはDMEMに溶解したコラゲナーゼ:ディスパーゼ:ヒアルロニダーゼ(C:D:H)10mLとともにAAを含有する、DMEM:LgまたはDMEM:Hg 40mL中で消化した。C:Dは、50mLのDMEM中に希釈された500mgのディスパーゼ(0.4単位/mg)を含む、750mgのII型コラゲナーゼ(>125単位/mg(0.5〜3FALGA単位/mg))であった。よって、C:D:Hは、50mLのDMEM中に希釈された500mgのディスパーゼ(0.4単位/mg)と200mgのヒアルロニダーゼ(300単位/mg)を含む、750mgのII型コラゲナーゼ(>125単位/mg(0.5〜3FALGA単位/mg))であった。あるいは、このプロトコルでは、IV型コラゲナーゼ(750mg、>125単位/mg(0.5〜3FALGA単位/mg))も用いた。組織、培地、および消化酵素が入った円錐管をオービタルシェーカーにて(中速度の振動)、37℃で24時間未満インキュベートした。消化後、組織を40μmのナイロン細胞濾過器で濾過した。濾過した細胞懸濁液を次に1000×gで10分間遠心分離した。上清を吸引し、細胞ペレットを50mLの新鮮培地に再懸濁させた。このプロセスを2回行い、細胞集団から残留する酵素活性を除去した。その後、上清を除去し、細胞ペレットを2mLの増殖培地(expansion medium)(DMEM:LgまたはDMEM:Hg;15%FBS(ハイクローン社定義の(Hyclone Defined)ウシ血清ロット番号AND18475);2−メルカプトエタノール(1μL/100mL);抗生物質/抗真菌剤(1mL/100mL(10,000単位/mL))に再懸濁させた。単離細胞数当たりの細胞生存能力を、トリパンブルー排除の手作業による計数によって求めた。
単離した臍帯および胎盤細胞を、1000細胞/cm2で、ラミニンコーティングされた24ウェル組織培養プレート(ニューヨーク州コーニング)に播種した。まず、細胞を、60/483264号に記載のように維持培地(対照)に播種した。維持培地で4日後、細胞を4群に分割した。一組目の細胞は、EGF(20ng/mL)およびbFGF(20ng/mL)を補足したNBMに切り替え、13日間増殖させた。二組目〜四組目の細胞は、EGF(20ng/mL)およびbFGF(20ng/mL)を補足したNBMに切り替え、6日間増殖させた。その後、EGFおよびFGF8を補足したNBMを除去し、BMP7+SHH+FGF8(二組目);BMP7+SHH+FGF8+レチノイン酸(RA)(三組目);またはBMP7+RA(四組目)を含有するNBMでさらに7日間細胞を培養した。
17日間の試験期間が終了したところで、誘導された細胞集団からRnイージー(Rneasy)キット(RNイージー・ミニ・キット(RNeasy Mini kit), キアゲン社(Qiagen),カリフォルニア州バレンシア)を用いてRNAを単離した。製造業者の使用説明書(RNイージー・ミニ・キット(RNeasy Mini kit),キアゲン社(Qiagen),カリフォルニア州バレンシア)に従って、β−メルカプトエタノール(シグマ社(Sigma)ミズーリ州セントルイス)を含有する350μLの緩衝液RLTで、細胞を溶解させ、−80℃で保存した。細胞溶解物を解凍し、製造業者の使用説明書に従い、2.7U/サンプルDNアーゼ処理剤(シグマ社(Sigma)ミズーリ州セントルイス)でRNAを抽出した。RNAを50μLのDEPC処理水(0.1%ピロ炭酸ジエチル,シグマ社(Sigma),ミズーリ州セントルイス)で溶出させ、−80℃で保存した。タックマン(TaqMan)逆転写試薬(アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems),カリフォルニア州フォスターシティ)とともにランダムヘキサマーを用い、25℃で10分、37℃で60分、および95℃で10分、RNAを転写させた。サンプルを−20℃で保存した。
cDNAサンプルに対する定量的PCR(Q−PCR)は、アッセイズ‐オン‐デマンド(Assays-on‐Demand)(商標)遺伝子発現産物Nurr I(Hs00428691)およびGAPDH(アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems),カリフォルニア州フォスターシティ)、およびタックマンユニバーサルPCRマスターミックスを製造業者の使用説明書に従って用い、ABIプリズム7000SDSソフトウエアとともに7000配列検出システムを用いて行った。熱サイクル条件は、最初に50℃で2分、および95℃で10分、その後、40サイクルが95℃で15秒および60℃で1分とした。
産後の細胞の分化後のNurr1 mRNAの発現を表2に示す。この表は、BMP7が産後の細胞においてNurr1の発現を誘導したことを示す。Nurr1の発現は、産後の細胞の培養物において、対照(NBM+EGF+FGF8)に比べ、ソニックヘッジホッグ(SHH)+繊維芽細胞増殖因子8(FGF8)+BMP7、またはSHH+FGF8+BMP7+レチノイン酸とともにインキュベートした後に誘導された。Nurr1の発現は、対照(神経基本培地+B27サプリメント+EGF/FGF)、または同じ条件の胎盤細胞に比べ、RA+SHH+FGF8+BMP7の存在下で細胞がインキュベートされた場合に臍帯細胞において強く誘導された。
Figure 2008514613
〔実施の態様〕
本発明の実施態様は以下の通りである。
(1)ヒトの線条体または黒質緻密部に対する損傷または疾患から生じる神経学的欠損を治療する方法において、
前記ヒトの前記線条体または前記黒質緻密部に、ドーパミン作動性表現型への分化能を備える細胞集団を実際に前記ドーパミン作動性表現型へと分化させるのに有効な量で、BMP7を投与する段階、
を含む、方法。
(2)実施態様1に記載の方法において、
前記BMP7が、単回量で投与される、方法。
(3)実施態様1に記載の方法において、
前記BMP7が、徐放性投与量で投与される、方法。
(4)実施態様1に記載の方法において、
前記BMP7が、生理学的に許容される担体を含む神経栄養組成物として投与される、方法。
(5)実施態様4に記載の方法において、
前記担体が、臨床級無菌水、無菌生理食塩水、無菌リン酸緩衝生理食塩水、無菌水中デキストロース、無菌液体培地、および生理学的に許容される等張液からなる群から選択される、方法。
(6)実施態様1に記載の方法において、
前記BMP7が、マトリックスにおいて投与される、方法。
(7)実施態様6に記載の方法において、
前記マトリックスが、粒子、足場、立方体、円柱体、チューブ、ブロック、フィルム、ヒドロゲル、またはシートからなる群から選択される形状である、方法。
(8)実施態様1に記載の方法において、
前記BMP7が、マイクロカテーテル、体内留置カテーテル法、髄膜下送達を介した注入により頭蓋内投与されるか、またはミニポンプを介して脳室内投与されるか、または髄膜下投与、または鼻腔内投与される、方法。
(9)実施態様1に記載の方法において、
前記細胞集団が、成熟神経前駆細胞、海馬前駆細胞、海馬幹細胞、間葉幹細胞、造血幹細胞、胚幹細胞、胚幹細胞由来前駆細胞、産後由来細胞、臍帯幹細胞、臍帯前駆細胞、胎盤幹細胞、胎盤前駆細胞、筋肉幹細胞、肝臓幹細胞、膵臓幹細胞、辺縁幹細胞、網膜幹細胞、筋肉前駆細胞、膵臓前駆細胞、辺縁前駆細胞、網膜前駆細胞、および肝臓前駆細胞である、幹細胞、または前駆細胞からなる群から選択される細胞を含む、方法。
(10)実施態様4に記載の方法において、
前記神経栄養組成物が、約0.5〜約1,000ngの前記BMP7を含む、方法。
(11)実施態様10に記載の方法において、
前記神経栄養組成物が、ソニックヘッジホッグ、およびFGF8をさらに含む、方法。
(12)ヒトの線条体または黒質緻密部に対する損傷または疾患から生じる神経学的欠損を治療するのに好適な神経栄養組成物において、
ドーパミン作動性表現型への分化能を備える細胞集団を実際に前記ドーパミン作動性表現型へと分化させるのに有効な量の、BMP7と、
ソニックヘッジホッグと、
FGF8と、
生理学的に許容される担体と、
を含む、組成物。
(13)実施態様12に記載の組成物において、
前記神経栄養組成物が、約0.5〜約1,000ngの前記BMP7を含む、組成物。

Claims (3)

  1. ヒトの線条体または黒質緻密部に対する損傷または疾患から生じる神経学的欠損を治療する方法において、
    前記ヒトの前記線条体または前記黒質緻密部に、ドーパミン作動性表現型への分化能を備える細胞集団を実際に前記ドーパミン作動性表現型へと分化させるのに有効な量で、BMP7を投与する段階、
    を含む、方法。
  2. ヒトの線条体または黒質緻密部に対する損傷または疾患から生じる神経学的欠損を治療するのに好適な神経栄養組成物において、
    ドーパミン作動性表現型への分化能を備える細胞集団を実際に前記ドーパミン作動性表現型へと分化させるのに有効な量の、BMP7と、
    ソニックヘッジホッグと、
    FGF8と、
    生理学的に許容される担体と、
    を含む、組成物。
  3. 請求項2に記載の組成物において、
    前記神経栄養組成物が、約0.5〜約1,000ngの前記BMP7を含む、組成物。
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