JP2008514419A - 重金属除去用キレート剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、マクロ孔質樹脂に結合したトロイカ酸及びその製造方法を提供するもので、トロイカ酸が直接結合する場合とトロイカ酸前駆体を結合させてからトロイカ酸を現場で生成する場合が含まれる。結合を容易にするための樹脂の官能基化の方法も説明されている。連結した1対のトロイカ酸を含む複合トロイカ酸も記載されている。好適なトロイカタイプの酸を導入して変性したミクロ孔質樹脂及びマクロ孔質樹脂の両方の合成ルートを設計し実証した。好ましい態様では、マクロ孔質トロイカ樹脂が、Cu2+及びNi2+に対して高い親和性を示し水溶液から除去し、Mg2+又はCa2+への選択性はない。本発明の材料は発電所の廃水から金属を除去するのに有利である。

Description

発明の詳細な説明
(発明の分野)
本発明は、概括的には、水性媒体から重金属を除去するためのキレート剤に関する。とりわけ、本発明は、樹脂に結合可能なキレート剤に関するものである。
(背景技術)
飲料水は貴重な資源であるが、夥しい汚染源からの脅威にますます曝されている。水源にしみ込む人間が作り出した数え切れないほどの汚染物質の中には、重金属がある。通常、工業プロセスからの副産物としてこれらの重金属物質を摂取すると、たとえ微量であっても、健康上深刻な多くの危害を人間にもたらすものであり、内臓器官、中枢神経系及び生殖器系への損傷、並びに、吐き気や嘔吐等の副作用といった危害をもたらす。
この30年間、給水における汚染物質が引き起こす危険に対する意識が高まってきたことを反映して、米国政府は廃棄物の排出規制を法律化してきた。なかでも、水質汚染防止法等の主要な法令では重金属を積極的な規制を必要とする物質とした。その結果、金属鉱業からコンピュータや他の電子部品メーカー、肥料生産者、発電施設にいたるまで、産業界では、廃水が自然の水流へ到達する前に廃水の流れの中から金属イオンを除去するための様々な手段を模索してきた。
重金属の抽出方法としては、沈殿(電気化学電池の使用が主)、逆浸透、常磁性体ナノ粒子の利用、特別に人工的に作製したバクテリアを使った生分解及びイオン交換が現在用いられている。最後に記載した方法であるイオン交換は、大量の廃棄物を出す製造者、なかでも、重金属で汚染された水を毎日膨大に産出する発電業界の人々に特に魅力的である。
イオン交換は、近似する金属イオンの分離における応用が有利であることが見いだされた分離方法である。イオン交換技術の基礎となる原理及び代表的な樹脂の例については、この分野の当業者にはよく知られている(例えば、「Principles and Practice of Analytical Chemistry」F. W. Fifield及びD. Kealey、インターナショナルテキストブック社(1983)、130〜138頁参照)。簡単に言えば、イオン交換装置は、通常は多孔質樹脂である不溶な固定相を有するが、これに固定電荷輸送基を付着させる。反対の電荷を有する移動対イオンは、樹脂中を移動する移動相中の溶質イオンとの間で可逆的に交換される。可逆交換速度の違いにより、電気移動度の差(differential mobilities)が生まれる。
こうして、数々の工業工程から出る廃水にはイオン交換が応用されてきた。例えば、イオン交換は研磨作業に広く利用されているが、これは、(米)国家汚染物質排出防止システム(NPDES)の認可基準に適合するため、又は、廃棄物再利用に要求される厳しい品質閾値を満たすために、残留重金属やその他の汚染物質を極めて低いレベルに低減している。イオン交換樹脂による固相法は、使用が極めて簡便であり抽出溶媒を回収することができ、特に、原子力以外の発電所から出る廃水の重金属汚染物質を除去するのに適している。このような現場では、飽和状態になった樹脂の容易な再生が望ましく、かつ、毒性有機溶媒を環境へ流出させることを防がなければならないのである。重金属を封鎖するために導入されてきたキレート剤の例としては、ジチオカルバメート類が挙げられる。
イオン交換法には2つの主な利点がある。1つ目は、高品質な流出液が達成可能であることであり、2番目は、特定の種を除去の対象にできるということである。しかしながら、現行のイオン交換法の主要な欠点は、バッチ処理固有の欠点とは別に、比較的大量の酸性廃棄物と洗浄水を必要とすることである。濃酸類(及び濃塩基類)の取り扱いに付随する危険も認識されている。
現行システムに上記欠点はあるが、イオン交換法は依然として注目される技術である。理想的な廃水処理用樹脂の重要な特徴としては以下が挙げられる:1)廃水中に比較的低濃度(例えば100ppm未満)で存在することもある対象金属イオンに対しての親和性が高いこと;2)その他の金属カチオンとの親和性が比較的低く、再生サイクルが頻繁になるような樹脂の早発不活性化が回避できること;及び3)pH値のような容易に変化する系のパラメータに対応して金属親和性が変動可能であること。一般に、単純なカチオン交換樹脂は、これらの特徴領域中の1つ以上が欠落している。例えば、ベンゼンスルホネート樹脂の場合、重金属に対する親和性及び選択性が比較的低く、再生時には結合してしまった別の金属イオンを取り除くのに強酸が必要となる。言うまでもなく、再生工程に必要とされる濃無機酸は、作業者に安全、腐食、廃棄の問題をもたらす。
イオン交換法のなかには、特定の金属イオンに対して選択的な親和性を示すキレート形成官能基を有する錯化剤を樹脂に結合させている場合がある。キレート形成基を適切に選択すれば、対象となる金属イオンが樹脂の中を移動する際に充分減速させて、その金属イオンを効果的に封鎖することができる。このように、水性溶液から金属イオンを選択的に除去したり回収するために有機錯化剤を使用することは、実証済みの確実な技術であり、固相担体(solid support)と非混和液抽出(immiscible liquid extraction)の両方が利用されてきた(例えば、Rydberg, J.、Musikas, C.及びChippin, R. G.「Principles and Practices of Solvent Extraction」ニューヨーク(1992)参照)。
錯化剤は、樹脂との使用に適しているかどうかを検討する前に、該錯化剤の溶液中の特性を考慮することが一般的である。様々な液−液抽出法において、重金属イオンの抽出溶媒として現在使用されている化合物の一般的な分類は以下のとおりである:1)α−ヒドロキシオキシム類;2)リン結合型酸素供与化合物類;及び3)酸性の有機リン化合物類(例えば、Kakoi, T.、Ura, T.、Kasaini, H.、Goto, M.及びNakashio, F.「Separation of Cobalt and Nickel by Liquid Surfactant Membranes Containing a Synthesized Cationic Surfactant」Separation Science and Technology、33、1163〜1180頁(1998);Elkot, A. M.「Solvent Extraction of Neodymium, Europium and Thulium by Di-(2-ethylhexyl)phosphoric acid」J. Radioanalytical and Nuclear Chemistry-Articles、170、207〜214頁(1993);Mathur, J. N.、Murali, M. S.、Krishna, M. V. B.、Iyer, R. H.、Chinis, R. R.等「Solutions of Purex Origin using Tributyl-phosphate」Separation Science and Technology、31、2045〜2063頁(1996)参照)。
オキシム、又は、ヒドロキシ−イミノ官能基は、金属イオンのなかでも特に遷移金属イオンと強く結合する。金属の液−液抽出では前記官能基が主に用いられてきたが、ヒドロキシ基とオキシムの両方を有する抽出溶媒分子は二座のキレート形成が可能である。
中性有機リン酸エステル化合物は、その中性ホスホネート基の高い極性による配位結合力(ligating power)が実証された。例えば、トリ-n-ブチルホスフェート基は極性が高く、双極子モーメントが3.0デバイで、誘電率が比較的高く(8.0)、アクチニド及びランタニド用の抽出溶媒として広く使用されてきた(例えば、De, A. K.、Khopkar, S. M.及びChalmers, R. A.「Solvent Extraction of Metals」259頁、Van Nostrand Reinhold Company、New York(1970)参照)。中性有機リン酸エステルは、水溶液中でのイオン化を抑制することによって形成される中性金属とアニオンのペアーを電気的に溶媒和化する。そのため、中性有機リン酸エステルは、高濃度の塩析用電解質が存在するときのみ満足に機能する。これらの試薬の抽出力の高さは、多数の金属塩、典型的には硝酸塩や塩化物について明らかにされている(例えば、Marcus, Y.、Kertes, A. S.「Ion Exchange and Solvent Extraction of Metal Complexes」(1970年版の1037頁)Wiley Interscience、ニューヨーク(1969)参照)。しかしながら、中性有機リン酸エステル類は、ホスホネート基のキレート形成力が非常に小さいことが主原因となって、工業廃水の重金属の低減には直接関与してこなかった。
単純な酸性有機リン試薬は、根本的には、ホスホン酸OH基の交換可能なプロトンと配位結合する金属カチオン間でのカチオン交換反応により、水溶液中で金属を抽出する。この試薬を利用する抽出法のほとんどでは、交換反応に参加するホスホン酸RP(O)(OH)2基が一価に電離するにすぎない、即ち、1個のプロトンは交換されないままとなる。有機溶媒中、リン酸のモノ酸のジアルキルエステルは通常2量体であるので、結果として得られる金属キレート化合物は一般にM(HA2)で表される。典型的には、前記試薬は液−液抽出で使用され、親油性の長い「テール」を有し、例えば、モノドデシルホスホン酸はウラン(VI)又は鉄(III)の抽出に、モノ-n-ブチルホスホン酸、モノイソブチルホスホン酸及びモノイソアミルホスホン酸はプロトアクチニウムの抽出に用いられる(Bodsworth, C.「The Extraction and Refining of Metals」CRC Press、ロンドン(1994)参照)。
重金属イオンのキレート剤として単一の官能基を有する前記有機配位子で成功したことをふまえ、1個の配位子に2個以上の官能基を導入することが試みられた。周知のとおり、二座の配位子は一座の配位子よりも熱力学的に著しく優れており、「キレート効果」と呼ばれる特性を提供する(例えば、F. A. Cotton及びG. Wilkinson「Advanced Inorganic Chemistry」4版、Wiley(1980)71頁参照)。概して、二座配位子は、一座配位子の場合の半分の数で溶液から錯体に移動させるというエントロピー上の利点がある。さらに、当然のことではあるが、同じキレート効果を得るのに必要とされるモル当量は、二座配位子の方が一座配位子と比べて少ない。
β−ヒドロキシオキシムは非常に選択性のある金属錯化剤であり、ニッケル、モリブデン、銅及びその他の特定の遷移金属イオンを優先的にキレート化する。オキシム基は近傍のアルコール基の酸性度を上昇させるので、それによってニ座の連結が増強される。抽出平衡は下記式(1)で表すことができる。
M2+(aq) + 2RH(org) = R2M(org) + 2H+(aq) (1)
式(1)によると、配位子(RHで表記)のOHプロトンが金属イオンと入れ替わるが、その平衡点は全体の水素イオン濃度によって支配される。構造式1は酸溶液から金属イオンを抽出するのに使われている典型的なβ−ヒドロキシオキシム試薬である。Rで表されるアルキル置換基の例としては、C9H19及びC12H25が挙げられる。
Figure 2008514419
オキシムとホスホネート基は結合して1つの分子になり、金属用の遊離二座配位子を形成する(例えば、Breuer, E.「Acylphosphonates and Their Derivatives: The Chemistry of Organophosphorus Compounds」685頁、John Wiley & Sons、ニューヨーク(1996)参照)。一般に、単純なα-(ヒドロキシイミノ)ホスホン酸及びそのモノエステルは、E異性体としてのみ作製されてきた(Breuer, E.「Acylphosphonates and Their Derivatives: The Chemistry of Organophosphorus Compounds」685頁、John Wiley & Sons、ニューヨーク(1996)参照)。配位子が、オキシム窒素原子とホスホネート(P=O)酸素原子とを介する二座のキレート形成方式で金属に配位結合する例としては以下が挙げられる:ジエステル、即ち、ジエチル(E)-α-ヒドロキシイミノ-p-メトキシベンジルホスホネートであって、これは、Co、Ni及びCuのジカチオンと一緒になって分離可能な錯体を形成し;1個の利用可能なPOH基と1個のPORエステル基(式中、Rはエチル等のアルキル基を示す)とを含む錯体のモノエステルモノアシッドホスホネート(monoester monoacid phosphonate)のE異性体である。これら配位子の錯生成定数及び金属結合選択性についての報告はない。
ホスホノカルボキシレートは、優れた錯化特性を有することが報告されている。ホスホノ酢酸(PAA)はランタニド系列のいくつかの元素用の抽出剤として限定的に使用されてきたが、ある範囲の金属ジカチオンと結合することがわかった(例えば、Farmer, M. F.、Heubel, P.-H. C.、Popov, A. I.「Complexation Properties of Phosphonocarboxylic Acids in Aqueous Solutions」J. Solution Chemistry、10、523〜532頁(1981)並びにStunzi, H.、Perrin, D. D. J.「Inorg. Biochem.」10、309〜318頁(1979)参照)。このような配位子との錯化は、ホスホネート基とカルボキシレート基の両方による分子内配位結合を伴う。このような配位子は特にCu2+と強固に結合し、この場合、Kf(錯形成平衡定数)が108であるが、アルカリ土類ジカチオンとの結合はそれよりも弱く、Kf値はおよそ102〜103である。このように、前記の種は、様々なカチオンに対しての識別能力がすぐれている。pH>約6〜7で優勢なトリアニオン状態の配位子は、遷移金属と優先的に結合する。ホスホノカルボキシレートと同属のホスホノギ酸は、幾分アルカリ性のpH環境下ではピロホスフェートとほぼ同様に遷移金属とキレート化する。このような条件下ではピロホスフェートの方が負電荷が高いのであるが、このことから、ホスホノカルボキシレート配位子の錯化力がより優れていることがわかる(Song, B.、Chen, D.、Bastian, M.、Martin, B. R.、Sigel, H.「Metal-Ion-Coordinating Properties of a Viral Inhibitor, a Pyrophosphate Analogue, and a Herbicide Metabolite, a Glycinate Analogue」Helvet. Chim. Acta, 77、1738〜1756頁(1994)参照)。
また、隣接するオキシ−イミノ基とカルボキシル基との組合せが1つの配位子中にあると、キレート力を著しく高くすることができる。そこで、2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)酢酸、2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)アセトアミド及び2-(ヒドロキシイミノ)プロパノヒドロキサム酸が、Cu2+とNi2+の両方に対して強力な配位子であることが見出された(例えば、Sliva, T. Y.、Duda, A. M.、Glowiak, T.、Fritsky, I. O.、Amirhanov, V. M.等「Coordination Ability of Amino-Acid Oximes Potentiometric, Spectroscopic and Structural Studies of Complexes of 2-Cyano-2-(hydroxyimino)acetamide」J. Chem. Soc. Dalton Trans.、273〜276頁(1997)並びにSliva, T. Y.、Dobosz, A.、Jerzykiewicz, L.、Karaczyn, A.、Moreeuw, A. M.等「Copper(II) and Nickel(II) Complexes with Some Oxime Analogs of Amino Acids Potentiometric, Spectroscopic and X-ray Studies of Complexes with 2-Cyano-2-(hydroxyimino)acetic acid and its Ethane-1,2-diamine Derivative」J. Chem. Soc. Dalton Trans.、1863〜1867頁(1998)参照)。
近年、α-(ヒドロキシイミノ)ホスホノ酢酸(ホスホノグリオキシル酸オキシム、「α,α-二置換三官能性オキシム」又は「トロイカ酸(Troika acids)」とも呼ばれる)が、pHに敏感なキレート剤として有用であることが認識された。例えば、McKenna and Kashemirovに付与された米国特許第5,948,931号が参照できるが、この全体を引用により本願明細書の記載に含まれるものとする。トロイカ酸は、金属と配位結合可能な3種の基、即ち、ホスホネート、オキシム及びカルボキシレート部位のすべてが共通の(α)炭素原子に結合している分子である。このように、トロイカ酸は、重金属イオンと配位結合可能な3種の強力な官能基である、ホスホン酸基P(=O)(OH)2(イオン化によりホスホネート)、オキシム基=N-OH、カルボン酸基C(=O)(OH)(イオン化によりカルボキシレート)を有し、これら3つのすべてが中央の固定炭素原子に結合し、それぞれ周囲のpHに応じてイオン化する(Kashemirov, B. A.、Ju, J.-Y.、Bau, R.、McKenna, C. E.「Troika Acids': Synthesis, Structure and Fragmentation Pathways of Novel α-(Hydroxyimino)phosphonoacetic acids」J. Am. Chem. Soc.、117、7285〜7286頁(1995)参照)。ホスホン酸、オキシム及びカルボン酸の3種の基は、構造式2a及び2bそれぞれにおいて、左から右へ順番に示されている。
Figure 2008514419
これらの化合物は3倍の官能性を有しているところが重要な特徴の1つであり、この特徴から「トロイカ」と呼ばれる。
トロイカ酸は、この分野で使用されている他のキレート剤には見られない固有の特色を備えている。例えば、トロイカ酸のキレート化方法は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の通常のキレート剤とは異なる。具体的には、EDTAのような配位子はアミン窒素原子に金属イオンが直接配位結合するが、トロイカ酸はオキシム窒素原子を介して配位結合する。
さらに、トロイカ酸の構造はその中心部が特有であることから、オキシムのOH基は2つの隣り合う基のどちらかと水素結合することができるので、特定の条件に応じて構造式2a及び2bに示すように2種の異性体構造(E又はZ)ができる(例えば、Kashemirov等、J. Am. Chem. Soc.、117、7285〜7286頁(1995)参照)。この2種の異性体は、空間におけるN−OHの配向に基づき「E」と「Z」と呼ばれる。2種の異性体はそれぞれ異なる特性を有する。つまり、オキシムのヒドロキシル基は、その位置によって隣接する2つの基のどちらかの化学反応性を支配するとまではいかないが、多大な影響を与える。
さらには、トロイカ酸は特定の条件のもとで強力に金属錯体形成を行うことができるだけでなく、pH等の条件の変化によってキレート化したカチオンを放出するように設計することもできる。しかしながら、トロイカ酸をイオン交換の分野に応用しようとするならば、とりわけ発電所からの廃水などに見られる重金属イオンの封鎖に応用する場合は、イオン交換装置の固定相に重金属イオンを取り込む方法を見出す必要がある。
本願明細書記載の発明の背景についての考察は、本発明の内容を説明するためのものである。いずれの請求項の優先日時点において、引用の物質が公表されていたこと、公知であったこと、あるいは、一般的な知識の1つであったことを認めるものとして、背景技術の考察は解釈されるものではない。
さらに、明細書及び本願の請求項を通して、「含む(comprise)」や「comprising」及び「comprises」等「含む(comprise)」の変形を使用しているが、これは、他の添加剤、他の成分又は他の工程を排除することを意図して使用しているものではない。
(発明の概要)
本発明では、1種以上のα-ヒドロキシイミノホスホノアセテート(「トロイカ」)酸と化学的に結合した樹脂を含む新規なイオン交換材、及び、その製造方法を記載する。このようなイオン交換材は重金属カチオンの選択的キレート化に有用であり、とりわけ、産業廃水中に見られる重金属カチオン、例えばニッケル(II)、銅(II)、水銀(II)又は亜鉛(II)の選択的キレート化に有用である。態様の1つは、前記樹脂がミクロ孔質樹脂である。好ましい態様の1つとしては、該樹脂がマクロ孔質樹脂である。
さらに本発明は、イオン交換ビーズ又は樹脂(市販品を含む)あるいは他の基質に、トロイカ酸の3種の配位結合基のうちの1種(カルボキシレート、ホスホネート又はオキシム)を介してトロイカ酸を結合させる方法を含むものであるが、前記において、トロイカ酸のカルボキシレート基又はホスホネート基のいずれかを介してトロイカ酸を結合させることが好ましい。例えば、トロイカ酸の3種の官能基のそれぞれに存在する末端基(OH)と多様な部位が入れ換わることが可能である。さらに、トロイカ酸と樹脂との間には多数のスペーサー基を介在させることができ、それにより誘導体化した樹脂構造体に対して何か別の特性を与えることができる。
本発明は、マクロ孔質樹脂と該樹脂に結合した下記構造式を有する配位子とを含むイオン交換装置が包含される:
Figure 2008514419
(式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;N〜OはZ異性体型又はE異性体型を表す結合を示し;X1及びX2は独立してO、NR4及びSからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3、R1及びR4は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3のうちの1つは存在せずに、その1つが結合するそれぞれのX1、X2、X3基は樹脂に直接結合するか、あるいは、Y1、Y2、Y3のうちの1つが該樹脂に結合し、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、-(CH2)nC(=O)NH-、-(CH2)nC(=O)O-、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン及び置換ヘテロアリーレンからなる群から選択され;R1、Y1、Y2、R4、Y3のうちの少なくとも1つは水素を表し;R1とY1の少なくとも一方は水素ではない。)
また、本発明には、マクロ孔質樹脂と該樹脂に結合した下記構造式を有する配位子とを含むイオン交換装置も包括される:








Figure 2008514419
(式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;N〜OはZ異性体型又はE異性体型を表す結合を示し;X1、X2、X3及びX4は独立してO、NR4及びSからなる群から選択され;X1が樹脂に直接結合し;Y2及びY3は独立して、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン及び置換ヘテロアリーレンからなる群から選択され;R1、R2及びR3は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;nは1〜5であり;n=1のとき、メチレン基を変性してイミノ基を形成してもよい。)したがって、このような化合物はコアとなるトロイカ官能基を3種も有することができる。
また、本発明には下記式で表される化合物が含まれる:


















Figure 2008514419
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;R1とR2の少なくとも一方は水素ではなく;R5とR6の少なくとも一方は水素ではなく;X1及びX2はそれぞれ独立してO、NR7及びSからなる群から選択され、ここでR7は水素、アルキル、アリール、置換アルキル又は置換アリールを表し;Yはアルキレン、置換アルキレン、アルキリデン、置換アルキリデン、アリーレン又は置換アリーレンからなる群から選択される結合基である。)このような化合物は、本願明細書記載の方法でミクロ孔質樹脂又はマクロ孔質樹脂に結合させることもできる。
さらに、本発明には下記式で表される化合物が含まれる:
Figure 2008514419
(式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;X1、X2及びX3は独立してO、NR3及びSからなる群から選択され;R1、R2、Y1、Y2、Y3、Y4及びY5は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3のうちの1つは、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、-(CH2)nC(=O)NH-、-(CH2)nC(=O)O-、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン及び置換ヘテロアリーレンからなる群から選択され;R1とY1の少なくとも一方は水素ではなく;R1、R2、Y1、Y2、Y4、Y5のうちの少なくとも1つは水素を表し;R1とY1の少なくとも一方は水素ではない。)このような化合物は、本願明細書記載の方法でミクロ孔質樹脂又はマクロ孔質樹脂に結合させることができる。
本発明は、ガラス繊維、シリコン基質又はメソポーラス相に結合した配位子を含み、該配位子は下記構造を有する:
Figure 2008514419
(式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;N〜OはZ異性体型又はE異性体型を表す結合を示し;X1及びX2は独立してO、NR4及びSからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3、R1及びR4は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3のうちの1つは存在せずに、その1つが結合するそれぞれのX1、X2、X3基は樹脂に直接結合するか、あるいは、Y1、Y2、Y3のうちの1つが配位子を樹脂に結合させ、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、-(CH2)nC(=O)NH-、-(CH2)nC(=O)O-、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン及び置換ヘテロアリーレンからなる群から選択され;R1、Y1、Y2、R4、Y3のうちの少なくとも1つは水素を表し;R1とY1の少なくとも一方は水素ではない。)
さらに本発明は、水性媒体から金属カチオンを除去する方法を包含し、該方法は、マクロ孔質樹脂に前記水性媒体を通過させる工程を含み、該樹脂には下記構造式の配位子が結合されている:













Figure 2008514419
(式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;N〜OはZ異性体型又はE異性体型を表す結合を示し;X1及びX2は独立してO、NR4及びSからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3、R1及びR4は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3のうちの1つは存在せずに、その1つが結合するそれぞれのX1、X2、X3基は樹脂に直接結合するか、あるいは、Y1、Y2、Y3のうちの1つが配位子を樹脂に結合させ、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、-(CH2)nC(=O)NH-、-(CH2)nC(=O)O-、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン及び置換ヘテロアリーレンからなる群から選択され;R1、Y1、Y2、R4、Y3のうちの少なくとも1つは水素を表し;R1とY1の少なくとも一方は水素ではない。)
また、本発明には、水性媒体、とりわけ発電所の排水からでる重金属カチオンを封鎖するための前記イオン交換材のいずれかの使用も含まれる。
(詳細な説明)
本発明は、一般的には、イオン交換法で使用する樹脂を含む新規なイオン交換材を提供するもので、該樹脂がミクロ孔質樹脂又はマクロ孔質樹脂のいずれかを含み、かつ、該樹脂が、1種以上のα−ヒドロキシイミノホスホノアセテート(「トロイカ」)酸又はその誘導体であって、これらのトロイカ酸及びその誘導体の新規な形態も包括する化合物に化学的に結合したイオン交換材を提供する。また、本発明は前記イオン交換材の調製方法を提供する。
こうしたイオン交換材は、液体の流れから重金属カチオンを除去する際に有用である。例えば、本発明のイオン交換材は、産業廃水からでる重金属イオンのニッケル(II)、銅(II)、水銀(II)、亜鉛(II)の除去に使用することができる。これらの重金属は、本発明のイオン交換材でキレート化することによって液体の流れから取り除かれる。
トロイカ酸:
トロイカ酸自体は、有機化学者には公知の方法、なかでも、McKenna等に付与された米国特許第5,948,931号や、McKenna等によるJ. Am. Chem. Soc.、117、7285〜7286頁(1995)「Synthetic Procedures and Spectroscopic Data」という題の補足資料(米国化学会より入手可能)を含む文献に記載の方法にしたがって合成することができる。これらすべての文献はその全体をもって引用により本願明細書の記載に含まれるものとする。トロイカ酸は、金属と配位結合可能な3種の基、即ち、ホスホネート、オキシム及びカルボキシレート部位を有し、これらは共通の(α)炭素原子と結合している。このように、トロイカ酸は、重金属イオンとそれぞれ配位結合可能な3種の強力な官能基であるホスホン酸基P(=O)(OH)2(イオン化によりホスホネート)、オキシム基=NOH、カルボン酸基C(=O)(OH)(イオン化によりカルボキシレート)を有し、これら3つのすべては中央の固定炭素原子と結合している。本願明細書で後述のとおり、これらの3つの官能基は、重金属をキレート化することができるだけでなく、いずれか1つの基を用いてトロイカ酸をイオン交換樹脂に結合させることができる。
トロイカ酸をキレート剤として使用することにはさらに別の利点がある。例えば、使用する個々のトロイカ酸異性体の特性によるが、ホスホン酸基又はカルボン酸基のいずれかと一緒になって、中央のオキシム官能基が二座の金属イオン配位結合にかかわることができ、これによって錯体形成の多様な方式を提供することができ、様々な種類の金属イオンを閉じ込めることができる。固定化したトロイカ酸中にイオン化する基が3種まで存在することにより、中和状態近傍の比較的広いpH範囲で系を効果的に使用することが可能であり、また一方、比較的穏やかな酸性条件下での再生が可能である。このように、トロイカ酸はある特定の一連のpH条件のもとで使用して金属イオンをキレート化し、第2の一連のpH条件のもとで該金属イオンを放出させることができ、トロイカ酸を再生することができる。
トロイカ酸誘導体
記載のとおり、トロイカ酸は、誘導体化が可能なサイトを提供する3つの官能基を有する。例えばトロイカ酸と樹脂間にスペーサーを用いることにより、固相担体への結合を容易にしたり、金属錯体化が容易にできるように誘導体を合成することができる。トロイカ酸誘導体は、McKenna等に付与された米国特許第5,948,931号、McKenna等によるJ. Am. Chem. Soc.、117、7285〜7286頁(1995)「Synthetic Procedures and Spectroscopic Data」という題の補足資料(米国化学会より入手可能)を含む文献、さらには、Carrick, J., Ph.D.の論文「Novel Troika Acid derivatives: Photochemistry and Metal Chelation」(特に、第2章、第3章)、南カリフォルニア大学(2000)に記載の方法により合成することができる。これらすべての文献はその全体をもって引用により本願明細書の記載に含まれるものとする。
一般に、トロイカ酸と樹脂との直接的又は間接的な結合を介するトロイカ官能基のことを、本願明細書では結合基と呼ぶ。基が誘導体化している場合であっても(例えば、カルボン酸のアミド化)、この基のことを同様に呼ぶ。結合基と樹脂との間にさらに別の基が介在する場合は、この基をスペーサー基と呼ぶ。本願明細書では、スペーサーという用語は、その基が樹脂に結合している場合もしていない場合も使用される。即ち、基の一端がトロイカ官能基に結合し他端が樹脂に結合しているものも、また、片方の端が樹脂との結合の前段階で結合しているものも含む。
通常、本発明で使用する好適なトロイカ酸としては、ホスホノ基、オキシム基又はカルボキシレート基のうちの1つ以上におけるヒドロキシル基が置換されている化合物、あるいは、そのような位置にあるヒドロキシル基がプロトンを他の基と交換した状態にある化合物が含まれる。前者の例は、カルボン酸のOH基を−NH2基と置換して形成したトロイカ酸アミドであろう。後者の例は、例えば、カルボキシレート基のアルキル化(「C−エステル」)又はホスホネート基のヒドロキシ基のアルキル化(「P−エステル」)によって形成されたトロイカ酸エステルである。オキシムのOHプロトンが交換された化合物は「NO−エーテル」と呼ぶ。
本発明で使用されるトロイカ酸誘導体とは、その官能基の1つ以上が誘導体化されたトロイカ酸と考えられることができ、さらに任意に誘導体化した官能基にスペーサー基が結合していてもよい。また、該スペーサー基は最終的に固相担体に結合する。したがって、本発明で使用される好適なトロイカ酸誘導体としては、3種の官能基のうちの1つ以上が下記の置換基の1つで誘導体化されているトロイカ酸が挙げられる:RO-、ArO-、Ar(CH2)nO-(n=1〜10、好ましくはn=1〜5、さらに好ましくはn=1)、R'NH-、ArNH-、Ar(CH2)nNH-(n=1〜10、好ましくはn=1〜5、さらに好ましくはn=1)、RC(=O)O-であって、前記式中、Rはアルキル、アルケニル、アルキニルを表し、R’は水素、アルキル、アルケニル、アルキニルを表し、Arはアリールを表し、フェニル、ナフチル、アントラシル及びフェナントリルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、R及びR’(水素以外)は、ハロゲン化物(好ましくはF、Cl、Br及びI)、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、スルホキシ、アミノ、チオ、シアノ、カルボキシ及びホスホリルからなる群から選択される1種以上の官能基で置換されていてもよいと解釈される。
トロイカ酸C−エステルは、トロイカ酸がC−エステル[C(=O)O-]又はC−アミド[C(=O)N(H)-]結合を介して水に不溶の樹脂ビーズに共有結合により固定化される金属キレート化材料のモデルを提供する。ホスホネート基を介しての同様な結合も本発明に適合する。P−エステルは、トロイカ酸がP−モノエステル[P(=O)O-]又はP−アミド[P(=O)N(H)-]結合を介して水に不溶の樹脂ビーズに共有結合により固定化される新規な金属キレート化材料のモデルを提供する。トロイカ酸固定化の3番目のモデルは、オキシムの=N-OH基と担体樹脂(即ち、=N-OR)とのエーテル型結合の生成であるが、これは前記ほど好ましくない。
本発明の態様の1つでは、トロイカ酸α−カルボキシル基への変性により、ヒドロキシイミノホスホネート部位の反応性が調整可能となる。例えば、C−エステルのような中性トロイカ酸カルボキシル誘導体の脱マスキングを化学的又は酵素により行い、遊離カルボン酸(又はカルボキシレートアニオン)を生成することにより、カルボキシル部位とオキシムヒドロキシ基(並びにホスホネート基も可能)との相互作用は著しく変性される。こうした工程をC−基依存型P−活性化と呼ぶことができる。実際、この工程は、C−部位に極めて特異的な試薬又は触媒を媒介として行うこともできる。
カルボキシル官能基もトロイカ酸の化学的特性に深く影響する。前記記載のとおり(例えば、E. Breuer「Acylphosphonates and their Derivatives」John Wiley & Sons社(1996)参照)、単純な二官能性α−ヒドロキシイミノホスホン酸(二価酸)は水溶液において不安定であるため好適な金属錯化剤にならない(Breuer等、J. Chem. Soc. Chem. Commun.、671〜672頁(1987);Breuer等、J. Chem. Soc. Chem. Commun.、504〜506頁(1988);Breuer等、J. Org. Chem.、56:4791〜4793頁(1991)並びにMahajna等、J. Org. Chem., 58:7822〜7826頁(1993)参照)。しかしながら、トロイカ酸のC−エステル(又はC−アミド)は、室温で中性近傍のpHでかなり安定している。
誘導体の中には、トロイカ酸の独特な特性である「安定性スイッチ」を示すものがある。親化合物であるトロイカ酸のC−エステル及びP−エステルは中性pH近傍の水の中では安定しているが、このような条件下ではトロイカ酸自体が細分化を起こす。結果、適宜設計したC−エステル又はP−エステルが試薬に特異的なエステル分解性の開裂を起こし、その結果、トロイカ酸は分解する。2種類のE異性体又はZ異性体それぞれにとって分解は立体特異的であり、上記異性体それぞれをホスフェート又はホスホロシアニダート種に変える。この法則は、E異性体又はZ異性体のC−メチルエステルを強アルカリで鹸化した後、溶液を中和させるという、両方の異性体を分解する手順により実証された(例えば、Kashemirov等、J. Am. Chem. Soc.、117:7285〜7286頁(1995)参照)。
誘導体のなかには、安定性スイッチを「オフ」状態にすることができるもの、あるいは、pHを異なる範囲にシフトさせることができるものもある。1つの態様において、感光性o-ニトロベンジルエステル基をメチルエステル基のかわりに用いる場合、化合物を紫外線にあてることで極めて穏やかな条件のもとで分解を誘発させることができる(Carrick, J. M.、Kashemirov, B. A.、McKenna, C. E.「Indirect Photo-Induced Phosphorylation via a C-Ester Caged Troika Acid」Phosphorus, Sulfur and Silicon、147、65(1999);Carrick, J. M.、Kashemirov, B. A.、McKenna, C. E.「Indirect Photo-Induced Phosphorylation via a photolabile troika acid C-ester: o-nitrobenzyl (E)-(hydroxyimino)(dihydroxyphosphinyl)acetate」Tetrahedron、56:2391〜2396頁(2000)参照)。別の態様では、メチルエステル基よりもはるかに加水分解しやすいp-ニトロフェニル基のような基を使うことにより、中程度のアルカリ条件のもとで分解可能なトロイカ酸C−エステルを生成することができる。このような化合物がNi2+イオンと錯体を形成すると、pH値を5からおよそ8に上げたとき、その分解はほぼ千倍近く加速されるが、単純なアルキルエステル類の場合は、そのような条件範囲全体にわたって安定している(p-ニトロフェニル基の使用についての説明は、例えば、Kashemirov, B. A.、Fujimoto-Posner, M.、McKenna, C. E.「Effects of divalent Metal Ions on pH-Dependent Hydrolysis of p-Nitrophenyl (E)-(Hydroxyimino)phosphonoacetate」Phosphorus, Sulfur and Silicon、147、153(1999)参照)。
また、トロイカ酸官能基を変性して、特定の物質、例えば水銀やその化合物とトロイカ酸との親和性を増大させることもできる。トロイカ酸は、結合した原子を放出して容易に分解されることから、水銀の回収はトロイカ酸にとって有用な用途である(方法については、例えば、Kashemirov, B. A.等、J. Am. Chem. Soc.、117、7285〜7286頁(1995)参照)。そのため、捕集用のマトリックスからの水銀回収が可能であり、汚染を起こすことなく担体基質から水銀の回収又は処理を行うことができる。
トロイカ酸の固相担体への結合
トロイカ酸は、マクロ孔質樹脂にもミクロ孔質樹脂にも結合することができるため、それぞれ水性及び非水性環境で機能させることができる。金属カチオンをキレート化するトロイカ酸の活性部位は親水性にし、一方、結合側は疎水性を保持させることが可能である。このような「ハイブリッド」構造により、例えば、水溶液からイオンを捕集し、後から該イオンを非水溶媒中に放出することができる。このような特徴から、石炭又は他の燃料をガス化する分野から出る汚水のように、有機物が高濃度に含まれる水溶液の処理に応用される。また、前記特徴により、採鉱作業への利用、具体的には、有用な金属の溶媒抽出における工程として応用できる。
記載のとおり、トロイカ酸及びその誘導体はミクロ孔質又はマクロ孔質イオン交換樹脂のどちらかと一緒に使用することができる。マクロ孔質樹脂もミクロ孔質樹脂も不溶性ポリマー(PS−DVB等)で構成されているが、マクロ孔質樹脂の方が孔のサイズが大きく架橋度が高いという点がミクロ孔質樹脂との違いである。それゆえ、ミクロ孔質樹脂よりもマクロ孔質樹脂の方が溶媒分子をより多く収容することができ、より大きな溶質分子を収容することができる。ミクロ孔質樹脂は典型的には約1%の架橋度であるのに対し、マクロ孔質樹脂の架橋度は典型的には少なくとも約10%であることが見出されている。したがって、本発明で使用される好適なマクロ孔質樹脂の架橋度は約5%から約20%が好ましく、より好ましくは約5%から約15%であり、さらに好ましくは約5%から約8%でり、一層好ましくは約8%から約12%である。また、本発明で使用の好適なマクロ孔質樹脂の孔の大きさは100〜300μm、好ましくは150〜300μm、より好ましくは150〜250μmである。さらに、本発明で使用の好適なマクロ孔質樹脂のメッシュサイズは50〜200メッシュ、好ましくは100〜200メッシュ、さらに好ましくは50〜100メッシュである。
本発明での使用に適したマクロ孔質樹脂としては、水処理や産業処理の様々な用途で使用される樹脂、例えばポリアミン、アミン変性スチレンジビニルベンゼン、アミノ化フェノール−ホルムアルデヒド又はアミン変性アクリル樹脂タイプが挙げられる。前記アクリル樹脂は「ポリアクリルマクロ孔質」樹脂とも呼ばれる。このような樹脂はダウ・ケミカル社から入手することができ、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)及びテトラエチレンペンタミン(TEPA)が挙げられる。本発明で使用される好適なマクロ孔質樹脂は、ポリスチレン−ジビニルベンゼン(PS−DVB)で、市販品として入手できる。このPS−DVB樹脂には数多くの有利な特性がある。即ち、架橋度が高い(8%vs5%)こと、さらには、有機溶媒中でより膨潤することである。この他の市販のマクロ孔質樹脂も好適にトロイカ酸へ結合させることができる。
架橋度が5%を超えるPS−DVB樹脂は堅くなり、有機溶媒中でゲルを生成しないので、有機溶媒中での反応性は、ミクロ孔質樹脂の反応性と比べると、漸減していくことが多い。したがって、ミクロ孔質樹脂を誘導体化して使用するのに適していると考えられる反応条件が、マクロ孔質樹脂に適しているとは期待できない。そこで、本願明細書で後述のごとく、トロイカ酸をミクロ孔質樹脂に結合させるのに適していると考えられる反応条件は、対応のマクロ孔質トロイカ酸樹脂の調製に適用する前に修正が必要である。
記載のとおり、トロイカ酸の大きな利点はその化学的多様性にあり、即ち、トロイカ酸は固定化可能な3つの部位(図1参照)を提供するだけでなく、該固定化用の部位、例えばスペーサー部位の挿入を伴うか又は伴わない変性した官能基の誘導体を介しても固定化可能な部位を提供し、これによって設計に自由度を与える。前記固定化用の部位のなかの2つ、即ち、ホスホネート(図1のC)及びカルボキシレート(図1のA)での様々な結合が考えられる。いずれの場合も、好適なスペーサー(図1におけるY)を担体と官能基との間に介在させてもよい。オキシム部位での結合(図1のD)はそれほど好適ではない。
したがって、本発明には、樹脂と、該樹脂に結合した下記構造式を有する配位子とを備えるイオン交換装置が包含される:
Figure 2008514419
(式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;N〜OはZ異性体型又はE異性体型を表す結合を示し;X1及びX2は独立してO、NR4及びSからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3、R1及びR4は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール及び本願明細書記載の他の好適なスペーサー基からなる群から選択され;Y1、Y2、Y3のうちの1つは存在せずに、その1つが結合するそれぞれのX1、X2又はX3基が樹脂に直接結合するか、あるいは、Y1、Y2、Y3のうちの1つが該樹脂に結合し、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、-(CH2)nC(=O)NH-、-(CH2)nC(=O)O-、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン及び本願明細書記載の他の好適なスペーサー基からなる群から選択され;R1、Y1、Y2、R4及びY3のうちの少なくとも1つは水素を表し;R1とY1の少なくとも一方は水素ではない。)
固相担体への結合に適した結合としてエステル結合とアミド結合であって、任意に配位子と樹脂の間に介在する適切なスペーサーに結合しているものが挙げられるが、これらに限られるものではない。とりわけ、アミド結合(-C(O)NH-)は、エステル結合(-C(O)O-)に替わる安定性のより高い選択肢であり、該エステル結合は、カチオン交換樹脂を再生するのに当該分野で通常使用される非常に強い酸に対しての耐性が弱い。トロイカ酸の場合、かなり穏やかな条件で再生が可能であるということは事実であるが、いずれの結合にとっても耐酸性は望ましい特性である。
そこで、マクロ孔質樹脂又はミクロ孔質樹脂への好ましい結合方法としては、カルボキサミド(アミド)結合による方法である。とりわけ、カルボキサミド結合が、アミノ変性ポリマー、例えば粒子又はビーズ状のポリスチレン−ジビニルベンゼンポリマーから誘導され得る。キレート化樹脂担体材料の例としては、アミノメチルポリスチレン(AMPS)が挙げられる。このような結合に様々なスペーサーを設けた変性樹脂の例が、図2に示される。
スペーサー基として以下が挙げられるがこれに限定されない:アルキレン-(CH2)n-、好ましくはメチレン(-CH2-)、より好ましくはn=1〜10、さらに好ましくはn=1〜5;オキシ−アルキレン、例えば-(CH2)nO-でn=1〜10、好ましくはn=1〜5;アミノ−アルキレン、例えば-(CH2)nNH-でn=1〜10、好ましくはn=1〜5;チオ−アルキレン、例えば-(CH2)nS-でn=1〜10、好ましくはn=1〜5;アミド、例えば-(CH2)nC(=O)NH-;エステル、例えば-(CH2)nC(=O)O-;アリーレンで、例えばフェニレン(-C6H4-)、ナフチレン、アントラセニレン、フェナントリレン及びこれらの置換体;並びにヘテロアリーレンで、例えばフリレン、ピロリデン、ピリジニル、インジル及び前記ヘテロアリーレンの置換体が挙げられる。前記スペーサーの列挙において、本願明細書の他の箇所でも同様であるが、-(CH2)n-といった呼称は、分岐した異性体も含むものと解釈される。例えば、n=3の場合、-CH(CH3)CH2-と分岐していない-CH2CH2CH2-が同様に含まれる。さらに、本願明細書の他の箇所でも同様であるが、前記スペーサーの列挙において、スペーサー基の置換体に言及する際は、該当する置換基は限定されないが以下の群から選択される部位を含有することができると解釈される。分岐アルキルを含むアルキル基、好ましくは炭素数1〜5個を有するアルキル基、アルケニル、アルキニル、アリールで、好ましくはフェニル、ヘテロアリール、ヒドロキシル、アルコキシでメトキシ等、アミノ、アルキルアミノ、ニトロ、シアニル、スルホキシ、ハロゲン化物、ホスホリル。さらに、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びヘテロアリールなどの置換基はそれ自身がさらに同じ一覧の置換基で置換されていてもよいと解釈される。例えば、フェニレンのようなスペーサー基の置換基はトリフルオロメチルのようなハロアルキル基がよい。このような置換基の導入はこの分野の当業者には公知の方法で行うことができる。一般に、トロイカ酸が水性媒体中で効果的に可溶化することができるように、前記のようなスペーサーは疎水性が強すぎない方が好ましい。
スペーサー基を、例えば樹脂の誘導体化中に最初に樹脂に結合させておき、その後でトロイカ酸の結合基に結合させるということも本発明に適合していることに留意すべきである。また、最初にスペーサー基を結合基に結合させてトロイカ酸の誘導体化を行い、その後、スペーサー基の遊離した末端を介して該結合体を樹脂に結合させることも可能である。
樹脂に結合したマルチトロイカ酸(multi-Troika acids)を含む、本願明細書記載のトロイカ酸樹脂材料では、スペーサーの長さ及び極性を都合に合わせて変えることにより金属キレート樹脂の最適な特性が得られることが当業者であればわかるであろう。スペーサーの長さや化学構造をそのように調整することにより、金属錯化特性の微調整が可能となる。
一般に、好適な2通りの方法のうちの一方でトロイカ酸を樹脂に結合することができる。それ以外の結合方法も適用できると理解される。1つ目のアプローチとしては、トロイカ酸前駆体、例えばα−ホスホノ−酢酸をポリマー担体に結合させる。その後、前駆体を変性して、結合済みのトロイカ酸をその場で形成する。図3は、ジエチルホスホノ酢酸前駆体の結合後に、配位子がメチレン−アミノ化樹脂で形成される態様の例を示す。この方法は、本願明細書記載の他のトロイカ酸の様々な前駆体にも一般化することができる。したがって、本発明の好適な態様は、アルキレン−アミノ化樹脂にジアルキルホスホノ酢酸を結合させる方法、及び、固定化終了後オキシム基をニトロソ化で導入するための条件を包むもので、これにより、マクロ孔質樹脂に結合したトロイカ酸となる。図3及び後に続く図において、記載したフェニル基は、樹脂ポリマー分子におけるスチレン単位の側鎖となっている。ポリマー分子の主鎖は明示されていない。
第2のアプローチ方法は、適宜調整した条件のもと、好ましくはDMFとカップリング剤のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)との混合物を温度40℃で用い、まえもって形成したトロイカ酸又はトロイカ酸エステルを担体と直接反応させる。このアプローチの態様の一例を図4に示す。図4に示す種の好ましい態様では、R及びR’が独立してアルキル基(例えば、Me、Et、Pr、i-Pr、Bu、t-Bu)を表し、Wがカルボニル又は置換アミド基(例えば、C(=O)NH(CH2)nC(=O)で、好ましくはn=1〜10)、Lは保護基、例えばオキシムの酸素に適用されるトリチル(「Tr」=CPh3)を表す。
この分野の当業者であれば理解できるように、トロイカ配位子を担体に結合させるための条件は、トロイカ配位子がすでにオキシム官能基を有しているか、あるいは、この分子を担体に結合させてからオキシム基を加えるかによって変わりうる。
本願明細書前記記載の2通りのアプローチのどちらを用いても、樹脂は、トロイカ酸前駆体又はトロイカ酸それぞれの結合に即座に適した状態となることができる。あるいは、トロイカ酸前駆体又はトロイカ酸それぞれを樹脂に結合できるようにする前に、まずは樹脂を誘導体化する必要がある場合もある。
適宜誘導体化させた樹脂は市販品として入手できる。本発明で使用する樹脂は、前もって誘導体化した状態のものを購入することが好ましい。好ましくは、樹脂はアミノ官能基へ誘導体化される。また、クロロメチル官能基を有する市販の樹脂は、ガブリエル合成反応又は当業者に公知の他の反応を利用して、所望のアミノ官能基を有する状態に変換することもできる。
本発明で使用する好適なマクロ孔質樹脂のPS−DVBは、クロロメチルの状態ではなく、アミノメチルの状態で入手できるので有利であり、トロイカ酸結合樹脂を形成する際の合成工程を1つ省くことができる。
市販のイオン交換樹脂はトロイカ酸で官能化することができ、ビーズの形態で、官能化した形態が重金属カチオンのキレート化に使用できるので、本発明のイオン交換材は一般的なイオン交換樹脂ビーズと一緒に多様な水処理及び排水処理装置で使うことができる。こうした用途は、現存する排水処理場において、再設計を最小限にしながら作業員の広範にわたる再教育をせずに配備することができるので有利である。
本発明のさらなる利点は、イオン交換樹脂から簡単にトロイカ酸を分離でき、これにより酸の金属結合物を放出できることである。こうした特性は有害廃棄物処理でも重要であり、なぜならば、樹脂ビーズを有害な原因となる物質から物理的に分離することができるので、質量や容量を著しく減らすことができ、そのため処理コストを削減できるからである。
また、トロイカ酸に官能性をもたせ、様々な従来とは異なる基体、例えばガラス繊維、シリコン基板、メソポーラス粉末に結合させることもできる。例えば、「Polyamide-containing ligands covalently bonded to supports, polyamide-containing resins, and methods for removing metals from solutions」Bruening, R. L.及びKrakowiak, K. E.、PCT公開公報WO01/23067 A1(2001)を参照できる。
本発明のトロイカ酸とともに用いられる基体の例として、他には、低価格のガラス繊維基体に適切なオリゴマー(例えば、スチレンジビニルベンゼン)のコーティングを施し、架橋を行い、コーティングに官能性を付与してアニオン特性又はカチオン特性のいずれかを有するように作製したイオン交換繊維が挙げられる。例えば、L. Dominguez、Z. Yue、J. Economy、C. Mangun「Design of polyvinyl alcohol mercaptyl fibers for arsenite chelation」Reactive and Functional Polymers、53(2-3)、205〜215頁(2002);J. Economy、L. Dominguez、C. Mangun「Polymeric ion exchange fibers」Industrial and Eng. Chemistry Research、41(25)、6436〜6442頁(2002);並びにJ. Economy、C. Mangun「Novel fibrous systems for contaminant removal」in Sampling and Sample Preparation for Field and Laboratory, Ed. J. Pawliszyn, Elsevier Science(2002)を参照することができ、これらすべての文献は、その全体をもって引用により本願明細書の記載に含まれるものとする。このような材料は、ほとんどのイオン性汚染物質を米国環境保護局(EPA)基準よりも充分に低くまで除去し、他の樹脂と比べて容易な合成を提供し、浸透圧衝撃に対して耐性があり、重金属カチオン、例えばHg2+、Pb2+に対する選択性が極めて高く、反応/再生速度を最大10倍まで増加させる。イオン交換繊維は、その分子構造を変えること、例えば、官能基をもった側鎖分子や無機の基の大きさ及び官能性を変えることによって、イオン交換反応における選択性を得られるように調整することができる。この選択性の例には、2価の種に対して1価の種を区別することが含まれる。例えば、インターネットのウェブサイトeconomy.mse.uiuc.edu/contact.htm.を参照されたい。
さらに、シリコン基板及び他の半導体基板を極薄いウェーハ状に作製し、ウェーハを小さな多数の管を貫通させて作製すると、無数の短いマイクロフィルターチューブを作り出す。チューブの内側はトロイカ酸の結合に充分準備ができた状態であるため、多様な膜、即ち、複合的なイオン交換の用途へとつながる。こうしたシステムには、液体及び気体の流れのいずれからも金属を抽出するという用途がある。
これらの材料はすべて樹脂ビーズよりも安価で、材料の単位質量あたりの結合表面積をはるかに大きくすることが可能である。
そこで、本発明には、ガラス繊維、シリコン基板又はメソポーラス相に結合した配位子であって、該配位子が以下の構造を有するものを包含する:
Figure 2008514419
(式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;N〜OはZ異性体型又はE異性体型を表す結合を示し;X1及びX2は独立してO、NR4及びSからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3、R1及びR4は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール及び本願明細書記載の他の好適なスペーサー基からなる群から選択され;Y1、Y2、Y3のうちの1つは存在せずに、その1つが結合するそれぞれのX1、X2又はX3基は樹脂に直接結合するか、あるいは、Y1、Y2、Y3のうちの1つが配位子を樹脂に結合させ、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、-(CH2)nC(=O)NH-、-(CH2)nC(=O)O-、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン及び本願明細書記載の他の好適なスペーサー基からなる群から選択され;R1、Y1、Y2、R4、Y3のうちの少なくとも1つは水素を表し;R1とY1の少なくとも一方は水素ではない。)
このような組成物は、産業プロセスから出る廃液をはじめとする液体から、金属イオン、とりわけ重金属イオンを取り除く用途に供される。
金属錯体化
本発明のトロイカ酸及びトロイカ酸誘導体は、重金属カチオンを優先的にキレート化する。本発明の目的では、重金属とは原子番号19以上の重金属であり、好ましくは周期表のdブロックに所属する原子(遷移金属及びd電子殻がうまっている金属原子(those containing filled d-electron valence shells)の両方を含む)であるが、周期表のpブロックの金属でもよい。周期表のsブロックの重金属はそれほど適していない。さらに、本発明は、ランタニド(セリウム、サマリウム等)やアクチニド(トリウム、ウラン、プルトニウム等)のfブロック金属原子のカチオンに対してキレート剤となるトロイカ酸又はトロイカ酸誘導体を提供する。また、トロイカ酸化合物は適切に変性させることにより、原子が金属であろうと、又は、半金属、例えば砒素、鉛、セレン若しくはビスマスであろうと、主たる族の原子から派生するイオンの除去にも適用することができる。
したがって、好ましくは、本発明のトロイカ酸は、dブロックの元素、fブロックの元素及びpブロックの原子番号31以上の金属からなる群から選択される金属カチオンをキレート化する。より好ましくは、本発明のトロイカ酸はdブロックとfブロック元素のカチオンを選択的にキレート化する。さらに好ましくは、本発明のトロイカ酸はdブロック第一列の元素のカチオンを選択的にキレート化する。また、さらに好ましくは、本発明のトロイカ酸はdブロック第二及び第三列の元素のカチオンを選択的にキレート化する。さらには、本発明のトロイカ酸はランタニド、アクチニド及び超ウラン元素のカチオンを選択的にキレート化することが一層好ましい。最も好ましくは、本発明のトロイカ酸は、ニッケル、コバルト、銅、水銀、カドミウム及び亜鉛からなる群から選択される元素のカチオンを選択的にキレート化する。本発明のトロイカ酸により選択的にキレート化される金属カチオンの酸化状態は、水溶液中で最も安定した状態であることが好ましい。とりわけ、本発明のトロイカ酸は、好ましくは、酸化状態が+1、+2、+3、+4、+5及び+6である金属カチオンを選択的にキレート化する。一層好ましくは、トロイカ酸は、酸化状態が+1、+2又は+3である金属カチオンを選択的にキレート化する。最も好ましくは、本発明のトロイカ酸が、酸化状態が+2である金属カチオンを選択的にキレート化する。
本発明において、トロイカ酸及びその誘導体は、トロイカ酸の一対のヘテロ原子と金属カチオンとの間に配位結合を形成することによってキレート剤の役目を果たす。これは、実際に、E異性体トロイカ酸は、ホスホネート(酸又はエステル)基の酸素とオキシムの窒素原子を介して金属カチオンをキレート化することを意味する。同様に、Z異性体トロイカ酸は、カルボン酸の酸素原子とオキシムの窒素原子を介して金属カチオンをキレート化する。これら両方の様式において、金属カチオン、2個のキレート原子、それらを結ぶトロイカ酸主鎖とを含む構造は5員環で、これは特に安定した構造である。前記2通りのキレート化のうちどちらが好ましいかは、トロイカ酸の適切な誘導体化によって変わることがある。しかしながら、一般に、トロイカ酸がリン酸基を介して樹脂と結合していようと、カルボキシレート基を介して結合していようとも、トロイカ酸は、ホスホネート基とオキシム基とによって金属イオンを優先的にキレート化する。したがって、トロイカ酸P−モノエステル及びトロイカ酸C−エステルが示す好適な金属キレート化は、下記構造式3によって示される。










Figure 2008514419
本願明細書において前記で論じたように、カルボン酸基の主たる機能は、pHを変えて、オキシム基にプロトンを付加するか否かを決定することである。当該分野の当業者であれば理解できるであろうが、オキシム基はpHに応じてプロトンが付加されたり(構造式3に図示)、されなかったりする。
オキシムのヒドロキシルプロトンのpKaは、P-OH又はC(O)-OHプロトンのpKaよりも高い。そのため、当業者であれば理解できることであるが、オキシム基はほぼ中性から若干酸性のpHでイオン化可能であり、これによりトロイカ酸によるカチオンの錯化が強化される。オキシム基は、-O-部位よりも強力な配位結合力(オキシム窒素原子を介して)を示すので、オキシム基は結合しているアルカリ土類又はアルカリカチオンよりも重金属カチオンへの選択性を示すことが理解できるであろう。したがって、トロイカ酸のホスホネート基は中性又はエステル化状態のままにしておくことが好ましい。
キレート化の様式の違いは、完全に負荷された樹脂の色を視覚的に比較することによって、容易に理解することができる。キレート化した銅を負荷した従来の樹脂は、第二銅(Cu2+)化合物に特有の明るい青色であるのに対し、同じ銅の溶液を負荷したトロイカ酸誘導体化樹脂はアボカドグリーンであり、これは銅−オキシム配位錯体特有の色である。
もう一つの利点は、pHを比較的穏やかに変化させるか、あるいは、他の特定の反応条件によって、キレート化したカチオンをトロイカ酸が放出できることである。例えば、特定の構造において露光することにより、担体からのトロイカ酸の開裂、その後のカチオンの放出を誘発することができる。
トロイカ酸誘導体には、金属キレート化特性に加えて金属放出の固有のメカニズムがある。トロイカ酸は、2つの官能基が錯体において金属イオンの配位結合にかかわり、1つの官能基が担体樹脂との共有結合を創出するのに使用されている場合、配位結合にかかわっていない少なくとも1つの基(OH又はNH)が存在する。さらに、トロイカ酸のオキシム基のpKaは他のオキシムのpKaよりも低い。それは、1つには、ホスホリル基とカルボニル基が隣接して存在すること、またもう1つは、トロイカ酸アミドのようないくつかの誘導体で可能であるが、オキシムアニオンが分子内で水素結合により安定化することに起因する。トロイカアミドにおいてはアミド-NHとオキシム-Oとの間で分子内水素結合があり、それは、後述のごとく、ニッケル錯体のX線構造で確認されている。このように、X線構造で確認されているように、トロイカ酸の場合、オキシム窒素だけでなくオキシム酸素が錯体にかかわるため、より優れた錯体形成ができる。しかしながら、例えば、Chelex(キレックス)に見られるように、オキシムのヒドロキシルプロトンのpKa(トロイカ誘導体において約6〜8)はCOOHプロトンのpKa(約5)よりも高い。このpKaの効果は、キレート化したイオンが酸性度のより低い条件下で放出されるということである。そのため、当該分野で公知の他のキレート剤の場合と比較すると、キレート化されたイオンの放出をより狭い酸性pH範囲で行える可能性がある。これはトロイカ樹脂の再生用の試薬(例えば、強酸又は濃酸というよりはむしろ弱酸)として、より広範な種類の試薬が許容できることを意味する。したがって、トロイカ酸の場合、pHの関数としての金属親和性に対する制御が向上する。
本発明の利点の1つは、アルカリ金属イオン、例えばナトリウム及びカリウムイオン及びアルカリ土類金属イオン、例えばカルシウム及びマグネシウムイオンの存在は、トロイカ酸による重金属キレート化の可能性又はその能力にほとんど影響しないということである。これは、たとえ他のカチオンが高濃度に存在するとしても、トロイカ酸が重金属除去剤として働くことが可能であることを意味する。この利点が重要となる用途の例として、石灰岩を含む排煙脱硫プロセス(FGD)水からの重金属除去、冷却塔及びエバポレータブローダウン等の高濃度塩水からの重金属除去、堆積石炭流出水(coal pile runoff)、洗灰水(ash sluicing water)、灰溜め池の水のような濃度の低い溶液からの重金属の捕集、従来からの中和後のイオン交換廃棄物からの重金属除去が挙げられる。こうした用途は、処理前の廃水の重金属含有量が高いために廃水を有害廃棄物として処理する場合に、極めて有用である。即ち、有害原因となる金属を除去することによって、これまで使用してきたイオン交換材にかかわる多量の塩水の処理コストを大幅に削減することができる。さらに、トロイカ酸はランタニド及びアクチニド元素のイオンを強力にキレート化することができるので、原子力発電所のボイラー再循環水システムからでる凝縮液や廃液から前記のようなイオンを分離する用途が生まれる。
本発明の樹脂材料の金属結合特性は、樹脂材料をCu2+のような重金属イオンを含む水溶液と反応させ、酸を使って結合した金属を樹脂から取り除き、回収した金属をフレーム原子吸光分析(例えば、パーキンエルマー社製23 80 AAS分光計、P-E Cu2+ランプ、C2H2-空気フレームを使用)で分析することによって調べることができる。
複合トロイカ酸(Multiple Troika acids)
本発明はさらに複合トロイカ酸を含む。特に、本発明は、マクロ孔質樹脂への結合に適した下記構造式で表される配位子を包含する:
Figure 2008514419
(式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;N〜OはZ異性体型又はE異性体型を表す結合を示し;X1、X2、X3及びX4は独立してO、NR4及びSからなる群から選択され;X1が樹脂に直接結合し;Y2及びY3は独立して、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン及び置換ヘテロアリーレンからなる群から選択され;R1、R2及びR3は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;nは1〜5であり;n=1のとき、メチレン基を誘導体化してヒドロキシ−イミノ基を形成することができる。)
前記化合物の好ましい態様は、X1及びX4がいずれもN(H)基を表し、X2及びX3がいずれも酸素を表し、Y2及びY3がともに独立してアルキレン基-(CH2)n-で、n=1〜5であり、R1、R2及びR3がすべて低級アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル又はブチルを示す。
このような化合物はコアとなるトロイカ官能基を3個も有することができるので、「複合トロイカ酸」として特徴付けられる。A及びA’基はともにトロイカ酸を分子の残部に結合させて得ることができ、1つの分子に2個のトロイカ官能基が付与される。さらに、n=1の場合、樹脂に最も近いメチレン基を本願明細書記載の方法で誘導体化してヒドロキシ−イミノ基(-C=N-OH)を形成することができる。この場合、A及びA’基のいずれがトロイカ誘導体であるとしても、さらにトロイカ誘導体が樹脂に結合する。
これらの化合物は、当業者に理解されるように、有機化学の周知技術に加えて本願明細書記載の方法を組み合わせて合成することができ、さらに同様に、本願明細書記載の方法のいずれかを用いてマクロ孔質樹脂に結合させることができる。
さらに本発明は、下記式を含む構造の化合物を包含する:
Figure 2008514419
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;R1とR2の少なくとも一方は水素ではなく;R5とR6の少なくとも一方は水素ではなく;X1及びX2はそれぞれ独立してO、NR7及びSからなる群から選択され、ここでR7は水素、アルキル、アリール、置換アルキル又は置換アリールを表し;Yはアルキレン、置換アルキレン、アルキリデン、置換アルキリデン、アリーレン又は置換アリーレンからなる群から選択される結合基を示す。)
さらに、本発明は下記式で含む構造の化合物を包含する:

Figure 2008514419
(式中、X1、X2及びX3は独立してO、NR3及びSからなる群から選択され;R1、R2、Y1、Y2、Y3、Y4及びY5は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3のうちの1つは、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、-(CH2)nC(=O)NH-、-(CH2)nC(=O)O-、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン及び置換ヘテロアリーレンからなる群から選択され;R1とY1の少なくとも一方は水素ではなく;R1、R2、Y1、Y2、Y4、Y5のうちの少なくとも1つは水素を表し;R1とY1の少なくとも一方は水素ではない。)
本発明の別の態様によると、複合トロイカ酸分子は、ポリマー担体に対する共通の結合点を共有することができる。金属配位子錯体モデルの構造をX線結晶学により研究したところ、1個より多いトロイカ酸が共通の結合部位を介して樹脂に結合され、かつ金属イオンが2個のトロイカ酸分子間に挟まれる多座配位キレート化を提供することによって、トロイカ酸の配位結合は強化され得る(例えば、図6の構造式III及びIV参照)。図6において、X及びX’は独立してヘテロ原子基、例えばO、S及びN(H)を表す。Y及びY’は独立して、スペーサー基、例えばアルキレン、アルキリデン、あるいは本願明細書の別のところに記載のスペーサー基から選択されるものを表す。Zもヘテロ原子基、例えばO、S及びN(H)を表す。
図7には、1つより多いトロイカ酸部位を単一アームに有するマルチトロイカ酸、さもなくば、分岐構造又はデンドリマー構造のマルチトロイカ酸の合成スキームの例が開示されている。好適な態様においては、長さの異なるスペーサーで隔てられた2個の結合トロイカ酸部位を含む二重配位子(double ligand)で各ポリマー官能化サイトを変性し(図6の最終生成物IV参照)、共同で結合することにより重金属キレート化を容易にする。(図7の化合物はオキシム基が省略されているが、オキシム基は、合成の後段で、例えば、図3の方法を用いて導入することができる。)
複合トロイカ配位子の樹脂への結合は、ミクロ孔質樹脂及びマクロ孔質樹脂について単一トロイカ配位子の際にそれぞれ採用する条件と同様な条件が用いられる。
用途
本発明の樹脂は、種々の出所、例えば化石燃料発電所、原子力発電所、地表水、工業排水、鉱業排水からの水の重金属イオンを取り除くのに応用することができる。また、本発明は地下水の浄化にも応用できる。一般に、当業者であれば、本発明を応用する分野及び業界で公知の技術を用いて、本発明の樹脂を配備することができるであろう。
好ましくは、本発明には、非原子力発電所の廃水などの産業排出物用の新規な処理床材(treatment bed material)の金属除去成分として、再生サイクルを繰り返し行うことができる安定したトロイカ酸誘導体が含まれる。さらに、本発明には、原子力発電所の廃水から出る放射性金属等の廃棄物を封鎖するための、新規な使いきり型重金属除去用樹脂が含まれる。後者の態様は、条件固有のやり方でキレート成分を分解し(ホスフェート及び他の小さな分子を放出)、それによって全キレート化機能を消去することによって、回収した金属が樹脂マトリックス塊から簡便に分離される方法で行われる。これは、放射性成分や他の重金属で汚染された物質の長期間の処理に特に重要であり、なぜなら、これらの汚染物質が処理前に分解し、継続的なキレート作用の可能性がないものの、最小限ではあるが廃棄物をさらに生成することは危険だからである。
そのため、本発明には水性媒体から金属カチオンを除去する方法が含まれ、この方法は、下記構造式を有する配位子が結合したマクロ孔質樹脂に水性媒体を通過させる工程を含む:
Figure 2008514419
(式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;N〜OはZ異性体型又はE異性体型を表す結合を示し;X1及びX2は独立してO、NR4及びSからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3、R1及びR4は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル、置換アリール及び本願明細書記載の好適な他のスペーサー基からなる群から選択され;Y1、Y2、Y3のうちの1つは存在せずに、その1つが結合するそれぞれのX1、X2、X3基が樹脂に直接結合するか、あるいは、Y1、Y2、Y3のうちの1つが配位子を樹脂に結合させ、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、-(CH2)nC(=O)NH-、-(CH2)nC(=O)O-、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン及び本願明細書記載の好適な他のスペーサー基からなる群から選択され;R1、Y1、Y2、R4、Y3のうちの少なくとも1つは水素を表し;R1とY1の少なくとも一方は水素ではない。)
実施例
実施例1:方法及び装置
本願明細書で示される実施例と組み合わせて使用される試薬は典型的にはARグレードのもので、市販品取扱い業者から普通に入手することができるようなものである。NMRスペクトルはブルーカー社製装置360又は500MHzで典型的には測定を行い、テトラメチルシラン(1H、13C)又は外部のリン酸(31P)を参照とした。融点は、Thomas Hooverの装置で測定した。配位子の分子量は高分解能FAB(高速原子衝突法)質量分析法で求めた。元素分析はGalbraith Laboratories社が行った。金属イオンは、塩化物又は硝酸塩としてテストした。X線結晶分析は南カリフォルニア大学化学学部の装置を用いて行った。
(ヒドロキシイミノ)ホスホノ酢酸のC−アルキルエステル及びアミドの合成は、対応するP,P-ジエチル又はP,P-ジメチルホスホノアセテート誘導体を塩化ニトロシル又はアルキルニトライトで直接ニトロソ化させ(例えば、Kashemirov, B. A.、Ju, J.-Y.、Bau, R.、McKenna, C. E.、J. Am. Chem. Soc.、117、7285〜7286頁(1995);Kashemirov, B. A.、Fujimoto, M.、McKenna, C. E.「(E)-(Hydroxyimino)(hydroxymethoxyphosphinyl) acetic acid: Synthesis and pH-Dependent Fragmentation」Tetrahedron Letters、52、9437〜9440頁(1995)並びにKhokhlov, P. S.、Kashemirov, B. A.、Strepikheev, Y. A.「Nitrosation of Phosphono- and Phosphinoacetic Acid Esters」J. Gen. Chem. USSR (Engl.)、52、2468〜2469頁(1982)参照)、その後、ブロモトリメチルシランを用いてリンにおけるレジオ選択的脱アルキルを行った(例えば、McKenna, C. E.、Higa, M. T.、Cheung, N. H.、McKenna, M.-C.「Facile Dealkylation of Diakylphosphonates by Bromotrimethylsilane」Tetrahedron Letters、155〜158頁(1977)並びにMcKenna, C. E.、Schmidhauser, J.「Functional Selectivity in Phosphonate Ester Dealkylation with Bromotrimethylsilane」J. Chem. Soc., Chem. Comm.、739(1979)参照)。
モデル配位子化合物をクロマトグラフィー(分取薄層クロマトグラフィー)で精製した。結晶化(例えば、Kashemirov, B. A.、Ju, J.-Y.、Bau, R.、McKenna, C. E.、J. Am. Chem. Soc.、117、7285〜7286頁(1995)参照)。金属析出(Metal precipitation)(例えば、Gibson, D.、Karaman, R.、Inorg. Chem.、28、1928〜1932頁(1989)参照)を利用してオキシムE異性体及びZ異性体を分離した。異性体の指定は、NMRデータを基に、α−オキシムホスホネート異性体構造と13C NMR 1JPC 結合定数との間の公知の相関関係を用いて行った(例えば、McKenna, C. E.、Kashemirov, B. A.、Ju, J.-Y.「E/Z Stereoisomer Assignment by 13C NMR in Trifunctional Phosphonate α-Oximes and α-Arylhydrazones」J. Chem. Soc. Chem. Comm.、1212頁(1994))参照)。樹脂ビーズポリマー担体としては、求核性CH2Cl又はCH2NH2基で官能基を付与された標準的な市販のPS−DVB共重合体樹脂を使った。
遊離金属の濃度は、フレーム原子吸光分析により金属固有のランプを使って測定した。
実施例2:トロイカ酸E異性体とZ異性体との比較
トロイカ酸の2種類の異性体基本型(E/Z)の構造は、X線結晶学で明確に定義されている。しかしながら、適切な単結晶試料が必要であるということは、合成可能な多くのトロイカ酸誘導体の溶液又はバッチ分析にはX線方法が有用でないことを意味している。測定が容易なトロイカ酸誘導体の13C α-C-Pスピン-スピン結合定数の大きさを基にしたNMR法を応用して、異性体をすばやく確実に識別する(例えば、McKenna, C. E.、Kashemirov, B. A.、Ju, J.-Y.「E/Z Stereoisomer Assignment by 13C NMR in Trifunctional Phosphonate α-Oximes and α-Arylhydrazones」J. Chem. Soc. Chem. Comm.、1212頁(1994)参照)。また、単純なトロイカ酸エステル誘導体のE異性体及びZ異性体は、それぞれの紫外線スペクトルによっても容易に識別される(例えば、Kashemirov等、J. Am. Chem. Soc.、117、7285〜7286頁(1995)参照)。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるC−ニトロベンジルE/Zトロイカ酸エステル混合物の分離を、紫外線検出を用いて示した(図9参照)。図9では、溶離時間を分で示し、紫外線検出は205nmで行う。図9のラベルのついたパターンは以下のとおりである。1)E異性体、100μM、2)Z異性体、100μM、3)E異性体(98μM)に308nmの紫外線照射を8時間行って作製したE/Z混合物、4)Z異性体(73μM)に308nmの紫外線照射を8時間行って作製したE/Z混合物。
実施例3:トロイカ酸誘導体の物理的特性
本願明細書で記載したトロイカ酸は安定した化合物であり、毒性は知られていない。ジシクロヘキシルアンモニウム(DCHA+)のような有機カチオンを用いたトロイカ酸塩(P(=O)(-O)O-又はC(=O)O-に対する誘導体)は明確な融点を有する結晶物質である。
C−エステルの分子構造の量子力学的計算(半経験的理論レベルと、3−21G*基底セットと構造最適化によるハートリー-フォック法(自己無撞着場理論)との両方を用い、例えば、コネチカット州ウォーリングフォード所在のガウシアン社(Gaussian, Inc.)製のGAUSSIAN、又は、カリフォルニア州アーバイン所在のウェーブファンクション社(Wavefunction, Inc.)製のSPARTAN等のコンピュータプログラムを使用)を行うことにより、トロイカ酸のX線構造から得られた中心炭素原子における結合角と整合性のとれる構造パラメータが得られる。
実施例4:トロイカ酸モデルの合成
本発明は、固相担体に結合したトロイカ酸及びその応用に関するものであるが、トロイカ酸の金属結合親和力及び関連するその他の化学特性について、液相(水相)中で考察したフリーな配位子分子(モデル)で評価することができる。この配位子モデルは、トロイカ酸C−エステル、トロイカオキシムNO−エーテル及びトロイカP−エステルである。構造式4、5及び6はこのようなトロイカ酸誘導体モデルの例をそれぞれ示す。
Figure 2008514419
構造式4のような、トロイカ酸E及びZ異性体両方の単純なC−メチルエステルの調製については、それらの主要な物理的特性及び化学的特性とともにすでに報告がある(Kashemirov, B. A.、Ju, J.-Y.、Bau, R.、McKenna, C. E.、J. Am. Chem. Soc.、117、7285〜7286頁(1995))。
また、構造式5のような単純なトロイカ酸P−メチルモノエステルのE及びZ異性体の合成及び特徴付けもすでに報告がある(Kashemirov, B. A.、Fujimoto, M.、McKenna, C. E.「(E)-(Hydroxyimino)(hydroxymethoxyphosphinyl) acetic acid: Synthesis and pH-Dependent Fragmentation」Tetrahedron Letters、36(52)、9437〜9440頁(1995)参照)。化合物(ジシクロヘキシルアミンによる塩)の構造は、1H、31P及び13C核磁気共鳴(NMR)分光測定及び元素分析により確認された。対応のC−エステル同様、このP−モノエステル化合物(P−OHを1個保持しているため、ホスホネート部位とカルボキシレート部位の両方に負電荷を担持する)も、周囲温度において中性の水溶液中で安定していることがわかった。
非常に類似したα-ホスホノオキシムエーテルである、構造式6のようなテトラアルキルα-(ヒドロキシイミノ)メチレンビスホスホネートのN−メチルエーテルを得るための簡便なルートについては既に記載がある(McKenna, C. E.、Kashemirov, B. A.に付与された米国特許第5,948,931号「Preparation and Use of α-(Hydroxyimino)phosphonoacetic Acids」参照)。
トロイカ酸骨格を基礎とした数多くの他のモデル化合物が合成されている(構造式7〜14参照)。モデル配位子は、1H、13C及び31P-NMR分光測定により特徴付けがなされた。このような構造物及び類似の構造物の合成方法は、Carrick, J., Ph.D.の論文「Novel Troika Acid derivatives: Photochemistry and Metal Chelation」南カリフォルニア大学(2000)からわかるが、この文献はその全体をもって引用により本願明細書の記載に含まれるものとする。

Figure 2008514419
これらのモデル配位子は、有機/水性液体/液体Cu2+及びNi2+抽出系でテストし、それぞれの有効性を証明した。
14を除くすべての分子は電気的に中性な(電荷が存在しない)ホスホネート部位を有する。構造式14は、構造式7のモノP−アニオン系の類似物である(両方の分子には同じ数の炭素原子が含まれていることに留意)。構造式14は、P基と樹脂との間に長いアルキルスペーサーを用いた代替結合方法をモデル化するために設計された。
構造式7〜14により、金属結合に及ぼす以下の構造上の影響を比較することができる。非アミド(構造式7)対ジアルキルアミド基(構造式8)、ジアルキルアミド−NR2(構造式8)対モノアルキルアミド基−NHR(構造式9)(構造式8と9では、アミド窒素原子に結合する基における炭素原子の総数が同じ)、−OH基(構造式9)対OR(構造式10)オキシム=N−OX基、樹脂様アミノメチルスチレン(構造式11)対バルキーなアルキルアミドN−置換体及びバルキーでないアルキルアミドN−置換体(それぞれ構造式9及び12に対応)並びにそれほどバルキーでないアミド変形体(構造式13)で、構造式7の類似物であるが構造式7よりバルキーでないP,P-ジエチル非アミド。
トロイカ酸のC側にアミド系の基(-C(O)NR2)を有する化合物が好ましい(構造式8〜12)。このような化合物は、AMPSのような樹脂へのトロイカ酸の結合がアミド結合を介していることを示す。本発明の他の態様では、トロイカ酸のP側を用いたPOエステル結合が使われている。
実施例5:トロイカ酸構造の最適化
トロイカ酸の金属錯化パラメータは、ホスホノカルボン酸のための既に確立した方法を使って求めた(例えば、Farmer, M. F.、Heubel, P.-H. C.、Popov, A. I.「Complexation Properties of Phosphonocarboxylic Acids in Aqueous Solutions」J. Sol. Chem.、10、523〜532頁(1981)及びStunzi, H.、Perrin, D. D.、J. Inorg. Biochem.、10、309〜318頁(1979)参照)。
トロイカ酸ジエステル自体は無色だが紫外線を吸収する。重金属キレート化合物は、色の濃い粉末又は結晶化合物として単離することができる。そのため、重金属の錯体形成は、特定の配位子及び錯体を形成した金属特有の色の出現により検出することができる。
UV−可視分光光度データ又は電位差測定データに手を加えて、BESTプログラム(Motekaitis, R. J.、Martell, A. E.「BEST A new Program for Rigorous Calculation of Equilibrium Parameters of Complex Multicomponent Systems」Can. J. Chem.、60、2403〜2409頁(1982))を用いて、結合定数パラメータに当てはめた。
表2は、いくつかのトロイカ酸重金属キレート化合物のUV−可視スペクトルデータを示す。化合物7及び11を含む錯体に対応する初期スペクトルは、紫外領域250nm近傍で同じような強い吸収ピークを示す。Cu2+又はNi2+を加えるとキレート化合物が形成され、スペクトルの可視領域の400nmをこえたところでテール部(tails)又は実際の肩部(actual shoulders)を示す。
Figure 2008514419
モデル化合物が中性エステルであれば、クロロホルムのような有機溶媒に溶解する。これらの化合物の水から金属イオンを除去する性能は、当業者にはよく知られた簡単な抽出方法により調べることができる。表3aは、分配係数の測定値を示す。概して、表3aのデータから、非アミドモデル配位子7は、モノアルキルアミドモデル配位子9と同様に、水溶液からCu2+を効果的に取り除くことがわかる。しかしながら、ジアルキルアミド類似化合物8は同じ条件下ではキレート能力が弱く、キレート化にはNH基が重要であることがわかる。さらに、構造式10のように、オキシム=N−OH基がアルキル基でキャップされている場合、ほとんどキレート化が見られない。このことから遊離したOH基もキレート化に重要であることがわかる。キレート化の結果pH値が下がるが、これはOH基が−O-へとイオン化したことを示唆している。実際のところ、入ってくるCu2+イオンがトロイカ酸中のOH基からのH+イオン1個以上と入れ替わらなければならない。最終的には、Cu2+イオンを含む水溶液の初期pH値の上昇により、キレート化合物の量が増加していることがデータからわかる。これは、pHが低下すれば、キレート化した金属イオンを放出し配位子を再生する手段が提供される可能性があることを示唆する。
Figure 2008514419
Dは分配係数として、D=[CHCl3中のCu2+]/[水中のCu2+]で定義される。
トロイカ酸モデルの構造がキレート力に与える甚大な影響は、様々な溶液の色を比較することで示すことができる。コントロールチューブの中は、Cu(薄い青色によって証明される)が上層の水性相に残っており、一方、下のクロロホルム層は無色である。キャップをしたオキシム(=N−OR)化合物10、又は、=N−OH基を有しているが−C(O)NH−基を有していない化合物8が下層へ添加されたとき、顕著に水相からCu2+を除去することはできていない。トロイカ酸ニトリル化合物7は水からCu2+を効果的かつ劇的に取り除き、下層の有機相に緑色のキレート化合物ができる。配位子モデル9は、=N−OH基と−C(O)NH−基の両方を有するが、これもCu2+を効果的に取り除き、この場合は有機相中に濃い茶色の錯体が作成される。
表3bは、モデル化合物7及び11がNi2+よりもCo2+に対してはるかに優れたキレート剤であることを示す。









Figure 2008514419
Co=[CHCl3中のCo2+]/[水中のCo2+]
Ni=[CHCl3中のNi2+]/[水中のNi2+]
検出が容易なp-ニトロフェノラートイオンの離脱率をUV可視分光光度マーカーとして使用したところ(例えば、Kashemirov, B. A.等、Phosphorous, Sulfur, Silicon and Related Elements、981、(1999)参照)、濃度(pH>6)が同等であれば、p-ニトロフェニル-E-ヒドロキシイミノホスホノアセテートの加水分解は、Mg2+の添加時よりもNi2+の添加時の方がほぼ3桁速く加速されたことがわかった。C=N−OHオキシム官能基が単純なメチレン(CH2)に置換された類似化合物の場合は、添加されたNi2+に対してほんのわずかな反応しか示さなかった。このことから、Ni2+に対する高い親和性とジカチオン選択性を上げるにはオキシム基が重要な役割を果たしていることがわかる。
実施例6:トロイカ酸−Ni錯体のX線構造
化合物11と錯化したNi2+の単結晶を本願明細書記載の方法で作成し、X線結晶学により分析した。3個のニッケルイオンが6個のトロイカ酸分子と配位結合して存在する錯体の構造を図10に示す。図10は、キレート化に直接的に関った原子のみが示されている。Ni−Ni−Ni軸方向の図面である。星印の付いた原子(*)は、対称の位置に等価な星印の付いていない原子を有する。単結晶データの収集と分析は南カリフォルニア大学で行った。この構造が「Troitsa(trinityを意味する)錯体」と呼ばれるのは、ニッケル原子が3個あるからである。安定化させるための外部の溶媒配位子(例えばH2O又はOH-)は必要としない。即ち、トリポッド型(三脚状)のトロイカ酸分子は、それ自体でニッケルイオンを完全に配位結合することができるのである。
3個のニッケルカチオンは底辺の広い二等辺三角形の頂点を形成するが、対称性の上で独立なニッケル原子を「インナー(inner)」と呼び、他の2つを「アウター(outer)」と呼ぶ。配位子分子の3つのペアー由来のオキシムの窒素原子、酸素原子及びホスホネートの酸素原子が、異なる2通りの方法で八面体を作って3個のニッケル原子と配位結合する。インナーニッケルイオンは6個のオキシム酸素原子によって配位結合される。オキシム基からはずれた6個のプロトンの正電荷は、3個のNi2+イオンからの合計6の正電荷と等しくなる。各アウターニッケルイオンは、3個のオキシム窒素原子と3個のホスホネート酸素原子により配位結合する。錯体の赤道のまわりにぶら下がるカルボキシアミドベンジル(「Bz」)基は、樹脂のスチレン−ベンゼンポリマー主鎖にC−アミドが結合するのと同じように結合する。こうして3個のNi2+イオンは金属核を形成し、その周囲を疎水基が取り囲み、あたかもプラスチック絶縁体に巻かれたニッケル線のようになる(Troitsa錯体では金属−金属間電子の非局在化が明らかではないことを除く)。
ニッケルイオンが溶液中で複合トロイカ配位子により配位結合され、かつ、オキシム基が溶液中でイオン化されているであろうことが、この構造からわかる。
実施例7:ミクロ孔質樹脂の場合の配位子官能基化についての考察
ミクロ孔質樹脂又はマクロ孔質樹脂上での配位子の官能基化は、液相中の均一系反応あるいは固体表面の界面で起こる不均一系反応のいずれかにより異なる特性を有する固相担体化学の例である。そこで、ミクロ孔質樹脂との反応は、樹脂が効果的に膨潤し、様々な有機溶媒中でゲルを形成することから、均一系反応と不均一系反応との中間に位置する。水からイオンを除去するのに適したマクロ孔質樹脂を設計し、トロイカ酸‐官能基付与樹脂の固相合成ルートを考案する際は、ミクロ孔質樹脂の検討が有益である。したがって、研究目的にあわせ、固体のミクロ孔質ポリスチレン樹脂への導入を行うために、好適な液−液抽出特性を有するトロイカ酸モデル化合物を選択した。
選択したミクロ孔質樹脂基材(R0で示されるが、本願明細書中PS−DVBと称される)は、ポリスチレン(PS)にジビニルベンゼン(DVB)を架橋(1%)したもので、200〜400メッシュ、アミノ−メチル官能基化され、樹脂1グラムあたり0.6モル当量のアミンを含む。このミクロ孔質樹脂は水溶液には適していないが、有機溶媒中では容易に膨潤しゲルを形成する。この誘導体化反応は、標準的液相核磁気共鳴(31P NMR)分光測定法を用いて段階的に追うことができる。一方、マクロ孔質樹脂の分析には特別なNMR技術(例えば固体NMR等)がたいてい必要であり、スペクトル線幅が広く、分析がさらに難しくなり信頼性に劣る。
PS−DVB樹脂のアミノメチル官能基へのジエチルホスホノ酢酸の結合は、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)のようなカップリング剤を用いて行うことができる(図3参照)。さらに、トロイカ酸オキシム官能基をホスホネート中に導入することができる(即ち、樹脂固定化後である)。例えば、ミクロ孔質アミノ樹脂(PS−DVB)にホスホノ酢酸のジエチルエステルを結合させるために用いる条件は以下のとおりである。クロロホルムとDCCをあわせたものと樹脂とを1:1の等量モル比で室温にし反応を誘発させ、約1時間で実質的に終了させる。
この方法は実用上の2つの難題を生む。1つは、必ず樹脂のアミノ基すべてを反応させることが好ましい点であり、2番目は、樹脂結合後、ホスホネート基の観察が可能であると好ましい点で、それによって、次の工程であるオキシム官能基を導入してトロイカ酸を生成する工程を監視することができる。
樹脂アミノ基の反応の終了については、当業者には公知の蛍光検出法を用いて監視することができる(例えば、Felix, A.、Jimenez, M.「Rapid Fluorometric Detection for Completeness in Solid Phase Coupling Reactions」Anal. Chem.、52、377〜381頁(1973)参照)。試薬フルオレサミンはアミノ基と反応し、蛍光性の基(蛍光体)を形成する。そこで、未反応のアミノ基は原料の紫外線照射により検出することができる。少量の異なる試料をガラス製ペトリ皿に置き、紫外線照射で観察した。フルオレサミン試薬で処理した出発原料アミノメチル樹脂は明るい緑色の蛍光を呈し、未反応アミノ基が存在することを示した。これに対して、対照用の未処理樹脂は、単に紫青の紫外線を反射するにすぎなかった。カップリング条件下でホスホノアセテートと反応させておいた樹脂は、対照群と比較すると、蛍光が依然としてはっきりと見える。しかしながら、ホスホネート−カップリング試薬混合物に樹脂を2回接触させた場合、樹脂の蛍光は完全に消える。この検出方法の特筆すべき特徴は優れた感度であり、実際、蛍光が検出されない状態はカップリングの成功率が99.5%を超えている状態に相当する。
2番目の問題点は、誘導体化した樹脂が固体で不溶性であるため、通常の材料NMR分析が複雑になるということである。NMRによりホスホネート化合物中の水素、炭素及びリン原子についての有用な情報が得られるが、通常は液体試料が必要である。固体NMRを用いることもできるが、より好ましい方法はゲル相NMRである(例えば、Johnson, C. R.、Zhang, B.「Solid-phase synthesis of alkenes using the Horner-Wadsworth-Emmons reaction and monitoring by gel-phase 31P NMR」Tetrahedron Letters、36、9253〜9256頁(1995)参照)。この技術は、樹脂によっては特定の有機溶媒中で膨潤し透明なゲルを形成するという事実を利用するものである。本発明で使用するミクロ孔質樹脂は、重水素化クロロホルム中で容易にゲル化する。
ゲル状誘導体化樹脂の31P NMRスペクトルからは、主要なホスホネート基が唯一存在していることが明確にわかる。さらに、この基がジエチルホスホノアミドであることが、ピーク(液体NMRスペクトルの典型的なピークに比べるとほんのわずかに広い)の化学シフトの値がδ=24ppmであることから同定された。そのため、次の工程への進行、即ち、ホスホノアセテート部位のトロイカ酸への変換を簡単に監視することができた。また、オキシム配位子のE異性体とZ異性体は両方存在したが、簡単に識別することが可能であった(図11の小さな高磁場ピークがZ異性体を指す)。こうして、R0の簡便なアミノメチル官能基化により、R0から最終的な樹脂モデルを合成工程2段階のみで作製した。
このほかにもテスト用ミクロ孔質樹脂を、構造式15〜18に示すように、PS−DVBと様々な種類のトロイカ酸誘導配位子を結合させて同様な方法で作製した。







































Figure 2008514419
これらのトロイカ酸誘導体化樹脂のCu2+結合特性を、誘導体化していない「Chelex(商標)」と比較した(表4参照)。Chelex(容量:2.0meq、100〜200メッシュ、ナトリウム体)は、本発明で使用する樹脂の特性を評価する際の市販の基準点として用いることができる。Chelexはマクロ孔質樹脂であり、N,N-ジアセテート配位子を基礎とした弱酸性カチオン交換樹脂である。
有機溶媒により促進されて膨潤することがミクロ孔質樹脂における金属キレート化に及ぼす効果は表4のデータから明らかである。トロイカ酸誘導体化ミクロ孔質樹脂はいずれも水性緩衝液からではなく極性有機溶媒から重金属を抽出した。一方、Chelexは、極性有機溶媒からよりも水溶液からより効果的に重金属イオンを除去するという反対の挙動を示した。わずか0.6mmol/gのアミン官能基を用いて開始したが(トロイカ酸官能基化に先立って合成に使用した出発原料樹脂)、4種の樹脂のうち3種が樹脂1グラムに対して容量0.43〜0.47mmolを示した。対照のChelex 100(ナトリウム体)を同じ条件下でテストしたところ、有機溶媒からはキレート化を示さなかったが、水溶液中で良好なキレート化を示した。Chelex 100試料の工業用バッチ分析によると容量は0.6mmol/gと示されたが、ここに記載の実験結果0.59mmol/gとよく一致していた。
Figure 2008514419
実施例8:トロイカ酸のマクロ孔質樹脂への結合
本発明で使用する大半の樹脂に関しては、前もって形成したトロイカ酸を樹脂に結合させ、それにより合成の1工程を省くことが好ましいアプローチの1つである。別のアプローチとしては、トロイカ前駆体を樹脂に結合させた後、誘導体化によりトロイカの形成を行う方法である。いずれの場合においても、トロイカ酸が樹脂に結合できるように最初に樹脂を誘導体化することが必要であろう。
反応条件(反応時間、様々な試薬の濃度、溶媒の選択及び反応温度等)を最適化するため、固体材料の測定が可能な、類似の樹脂組成物用の改良したフーリエ変換赤外分光(FTIR)法を用いた(例えば、Liao, J. C.、Beaird, J.、McCartney, N.、DuPriest, M. T.「An improved FTIR method for polymer resin beads analysis to support combinatorial solid-phase synthesis」American Laboratory、32 (14): 16〜20頁(2000)参照)。スペクトラム2000 FTIR(パーキンエルマー社製)を使って、DiasqueezePlusダイアモンド圧縮セルとマイクロフォーカスビームコンデンサー(Specac社製)で、試料の赤外スペクトルを測定した。ZnSeビームコンデンサーの動作範囲は550cm-1〜4000cm-1である。P=Oバンド(1200〜1300cm-1)、C=Oバンド(1500〜1700cm-1)、NH及びOHバンド(3000〜3700cm-1)を監視することによって反応の進行を観察した。ある誘導体化樹脂のスペクトルの例を図12に示す。
トロイカ酸の直接結合
図4のカップリングスキームでは、ヒドロキシイミノ(ジエチルホスホノ)アセテートをPS−DVBアミノ樹脂に直接固定化するために、トリチル保護基の付いたヒドロキシイミノホスホノ酢酸を使用した。反応は、乾燥DMF中でDCCを6倍過剰の存在下、45℃で24時間行った。これは、40〜50℃の温度範囲を使用し、反応時間12〜30時間を有効とする当該方法にあてはまる。脱保護(樹脂をメタノールで複数回洗浄して乾燥した後)は、クロロホルム中、室温で3時間、5%TFAを用いて行った。この目的に合う別の条件は、クロロホルム又はジクロロメタン中、温度は10〜35℃で2〜5時間、5〜15%TFA溶液を使用することである。
トロイカ前駆体の結合とそれに続く誘導体化
このスキームでは、第1工程はトロイカ前駆体を樹脂に結合させることである。例えば、ホスホノ酢酸のジエチルエステルをマクロ孔質アミノ樹脂(PS−DVB)に固定させるための好適な条件は以下のとおりである。DMF中、DCC:樹脂のモル比を6:1とし、45℃で16時間。ジエチルホスホノアセテートのマクロ孔質樹脂への固定化に必要な溶媒は、対応するミクロ孔質樹脂の際の溶媒よりも極性が高い(膨潤促進のため)。ジメチルホルムアミド(DMF)が好適である。また、6倍過剰のカップリング剤を、ミクロ孔質樹脂の場合と比べて高い反応混合温度と長い反応時間という条件とともに採用する。
樹脂にさらに多くのホスホネートを付加するためには、各工程後の樹脂の洗浄に注意を払って、前記反応をさらに2回まで繰り返すことができる。この結論はFTIR分析を基に達した。16時間後(最初の反応)、32時間後(1回目の繰り返し)及び48時間後(2回目の繰り返し)における樹脂のIRスペクトルのP=O基とC=O基の強さを追跡した。16時間後と32時間後では、樹脂のP=O基とC=O基に対応するIRバンドの強さには大きな差が見られたが、32時間と48時間後における強さには実質的な差が見られなかった。そこで、全反応時間を32〜48時間として反応を2〜3回繰り返すことが好ましいという結論に達した。
DCCの消費が多大であることと、樹脂表面からジシクロヘキシル尿素(水とDCCとの反応による副生成物)を洗浄することが困難であることから、ホスホネートをマクロ孔質樹脂に固定化するための別のアプローチが考案された。そのアプローチは、トルエン中、室温で9時間のホスホノ酢酸フェニルとの反応を伴う。この工程を行うのに最適な上記以外の反応条件としては、ホスホノ酢酸パラ−ニトロフェニルを使用することと、使用する試薬に応じて反応時間を2〜9時間の範囲にすることが挙げられる。
第2工程では、NOCl又はPrONOのようなオキシム化剤とマクロ孔質樹脂とを反応させてオキシイミノ官能基の固定化を行うことができる。この反応はジオキサン中で行うことが好ましい。マクロ孔質樹脂の場合、この工程の反応時間は9時間が好ましく、これに対して、ミクロ孔質樹脂の場合は3時間である。通常、上記以外の許容条件として、温度範囲10〜25℃、溶媒としてのトルエンの使用が挙げられる。マクロ孔質樹脂の場合のオキシム化剤はNOCl(塩化ニトロシル)が好ましい。これに対して、ミクロ孔質樹脂の場合はプロピオニトライト(propionitrite:PrONO)である。マクロ孔質樹脂の場合、NOClを使用することは、プロピルアルコール(プロピオニトライトがHClと反応して形成される)が存在しないため、マクロ孔質樹脂とのニトロソ化(オキシム化)反応に、より良い条件を提供することになる。プロピルアルコールが存在すると、アミノ基のプロトン化(C−ニトロソ化に必要)が低下し、活性種のNOClの濃度が減少する。(さらに、PrONOの使用時、反応混合物中にプロピルアルコールが存在するため、プロピオニトライトとHClとからの塩化ニトロシルの形成が可逆的になる。)
実施例9:マクロ孔質樹脂の場合の配位子官能基化についての考察
好適な誘導体化ポリスチレン樹脂基体(本願明細書ではR2で示す)は、クロロメチル官能基(−CH2Cl)を有し、粒子径が250μmで架橋が6%である。R2の欠点は、後段のカップリングでクロロメチル基をアミノメチル基に変換しなければならないという事実である。そこで、先のアプローチの好適な態様では、ガブリエルの反応を用いてR2のクロロ基を所望のアミノ官能基に変換できる(例えば、D. J. Cram及びG. S. Hammond、Organic Chemistry、214頁、ニューヨーク、1959参照)。この反応が成功したかどうかは、アミノ基の塩酸滴定で確認することができる。
R2については、ガブリエル反応が成功したかどうかをアミノ基の塩酸滴定で確認した。その結果、アミノ化反応の進行は実質的に100%終了したことがわかり、アミノ滴定濃度は5.2meq/gであった。それに対して、市販のミクロ孔質樹脂(R0で示す)のアミノ滴定濃度は0.6meq/gにすぎなかった。R0は、シグマケミカル社製の(アミノメチル)ポリスチレン(商品番号08566)で、アミン容量が樹脂1グラムにつき約0.6mmolである。これは1%のDVBで架橋した樹脂母体で構成され、粒子径が200〜400メッシュである。
トロイカ酸をR2に2工程にわけて加えた。ジエチルホスホノ酢酸をアミノ化したR2にカップリング(工程1)させる条件は、DMF、6eqのDCC、45〜70℃である。固定化後のオキシム基を導入(工程2)するための条件、即ち、マクロ孔質トロイカ酸樹脂(MP−1で示す)を生成する条件は以下のとおりである。PrONO、HClガス、ジオキサン、あるいは、ジオキサン中でNOClを使用。
この樹脂(MP−1)の金属結合特性について、樹脂を重金属イオン含有水溶液と反応させて、酸を使って結合した金属を樹脂から取り除き、回収した金属をフレーム原子吸光分析(例えば、パーキンエルマー社製2380 AAS分光計、P-E Cu2+ランプ、C2H2-空気フレームを使用)で分析して調べた。この樹脂の重金属結合特性によって、また、Chelex(商標)のCu2+錯体又は出発樹脂のアミノ樹脂の青色とは全く異なる、銅オキシム錯体と一致するCu2+結合錯体の緑がかった色によって、固定化した有効配位子の存在が実証される。
この変性樹脂は、Mg2+又はCa2+に比べてCu2+の選択性が高い。この樹脂のCu2+キレート化容量は、Mg2+イオン含有(104過剰)溶液からの場合、わずか1.3倍減少したが、Chelex(商標)の場合はわずか1.5倍の減少であった。他のイオンが存在する場合にはキレート能はそれほど大きく変化しない。他のイオンとしてCa2+塩を含有する溶液(104過剰)では、前記に対応する値がそれぞれ2倍及び1.6倍であった。
別の好適な市販のポリスチレン樹脂(R1で示す)はアミノメチル官能基を有し(アルドリッチ社より入手可能、製品ID564109)、ビーズ径70〜90メッシュ、架橋度8%である。R1は、ラベルの範囲が約1.5〜3.0mmol/gである(即ち、該樹脂は、乾燥樹脂1グラムあたり1.5〜3.0mmolの割合でアミノ基を含有するというラベルがついている)。
第2のより好ましいトロイカ酸樹脂MP−2は樹脂R1を基礎としている。MP−2はMP−1に比べて顕著なメリットがある。それは、潜在的結合サイトの密度が高いこと。有機溶媒中でより一層膨潤するため、内部で試薬へ到達しやすく、配位子密度の上昇(樹脂1グラムあたりの金属結合容量の増大)や、誘導体化化学の信頼性の向上が可能であること。クロロメチル型ではなくアミノメチル型の樹脂として市販品を入手できるので合成の1工程を省くことができ、潜在的に収量の向上につながること。架橋度がより高いこと(8%vs.5%)。さらに、大量入手により安価になることである。
実施例10:サンドイッチ型キレートの相対的な結合安定性
「サンドイッチ型」キレートでは、2個のトロイカ酸部位が、「シス(cis)(III)」及び「トランス(trans)(IV)」(図6の「平行(parallel)」及び「反平行(antiparallel)」にそれぞれ相当する)の2通りのうちのいずれかで1個の金属イオンをキレート化することができる。配位子を設計する際は、この2つの結合方法にはエネルギーの著しい差があるかどうかを理解することが重要である。Cu2+をキレート化する各配位子(図5、構造式I、II)について量子力学的電子構造をアブイニシオ計算で求めると、エネルギー差は小さい(0.2kcal/モル)ことがわかる。これは、いずれの配向であっても同様であることを意味している。このような評価結果は、樹脂に結合させたトロイカ酸にも該当する。なぜならば、特定の環境下では1対のトロイカ酸官能基で1個の金属イオンを配位結合させればよいということを実証しているからである。
実施例11:樹脂に結合したマルチトロイカ酸の合成
好ましい合成スキームにしたがってターゲットIVを合成するには(図6、図7、図8参照)、ホスホノ酢酸トリエチルをモノリチウム塩に変換した後、5-アミノペンタノールと一緒に光延縮合反応を行うと、ジカルボン酸ジ-t-ブチルによる処理で得られるように、アミノ基がBoc官能基で保護される。その後、ポリスチレン樹脂のような樹脂を、THF中、N,N'-ジ-t-Boc-2-ヒドロキシ-1,3-ジアミノプロパンで処理し、水酸化カリウム及びテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩を加える。メタノール塩酸を使って、ブロックした結合アミノ基の脱保護を行い、得られた塩酸塩をメタノールアンモニアで中和する。75%水酸化カリウムエタノール溶液を使ってカルボン酸エチル基の脱エステル化を行った後、デイジーチェーン状につながった配位子前駆体をカルボキサミド結合(DCC、DMF;図8)を介してアミノ樹脂に結合させ、前記記載のとおり、ニトロソ化を行い配位子オキシム官能基を完成させる。
実施例12:複合トロイカ配位子とミクロ孔質樹脂及びマクロ孔質樹脂とのカップリング
二リン配位子とオキシム官能基をミクロ孔質樹脂とマクロ孔質樹脂へ固定化する際の違いは、図2に関連して説明した違いとほぼ同じである。即ち、一般的に、より極性の高い溶媒(DMFvs.クロロホルム)がマクロ孔質樹脂には必要であり、反応温度もより高くしなければならない(例えば、40〜70℃vs.室温)。複合トロイカ酸をマクロ孔質樹脂に結合させる際は、反応時間を長くすること、試薬を過剰にすること、より強力なニトロソ化剤(NOClvs.プロピオニトライト)を使用することも好ましい。
本願明細書に引用した文献はすべて、あらゆる目的のためその全体をもって本願明細書に援用する。
前述の説明は本発明の様々な態様を例示することを目的とするものである。本願明細書に示す実施例により本発明の範囲を限定するものではない。本発明の説明を充分に行っているので、添付のクレームの精神又は範囲から逸脱することなく多くの変形や変更が可能であることは、当業者にとっては明白であろう。
トロイカ酸と樹脂(図1以下同様に丸で囲まれた「PS」)との結合のA、B、C及びDで示される4通りの形態を示す(式中、R、R’、R”は本願明細書で説明の基であり、Yはスペーサーの一種で本願明細書で説明されている)。 PS−DVBのような樹脂に結合した極性スペーサー基の例で、トロイカ酸をポリマービーズに連結させるのに適している。 ベンジル−カルボキサミド結合を有する、モノトロイカ酸変性樹脂の一例を合成するためのスキームを示す。図示されているベンゼン環は樹脂のスチレン単位の一部になるので、丸で囲まれた「PS」部位はポリマー主鎖と他の側鎖フェニル基とを表すものであり、また、トロイカ酸前駆体を誘導体化樹脂と反応させて、その場でトロイカ酸が生成されたものである。 ベンジル−カルボキサミド結合を有するモノトロイカ酸変性樹脂の別の製造方法を示すもので、好適な保護基Lを有する前もって形成したトロイカ酸を、官能基化させた樹脂に直接結合させたものである。 典型的なCu2+錯体の構造(I)(II)を表し、2個のトロイカ酸で同時にキレート化した銅錯体のパラレル構造(II)とアンチパラレル構造(I)におけるエネルギーの差を測定する際に使用される。 樹脂に結合した「分岐型」マルチトロイカ酸(III)と「デイジーチェーン型」マルチトロイカ酸(IV)(それぞれ金属イオンをパラレル(III)、アンチパラレル(IV)状態で結合させる)の態様を示す。 マルチトロイカ酸前駆体の一例を合成するための好ましい反応スキームを示す。 マルチトロイカ酸前駆体の一例を、ミクロ孔質樹脂のメチレンアミノ−官能基化樹脂又はマクロ孔質ポリスチレン樹脂にカップリングさせる方法を示す。 トロイカ酸C−メチルエステルE異性体及びZ異性体を含む様々な試料の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のパターンを示す。 配位子P,P-ジエトキシN-ベンジルトロイカ酸カルボキサミドによる、Ni2+の『Troitsa』キレート化合物コア部分のX線による構造を示す。 ゲル相試料のミクロ孔質樹脂に固定化されたトロイカ酸の31P NMRである。 ホスホノ酢酸のジエチルエステルをマクロ孔質アミノ(PS−DVB)樹脂に固定化した後の樹脂のIRスペクトルである。

Claims (29)

  1. マクロ孔質樹脂と、前記樹脂に結合した下記構造式を有する配位子とを含むイオン交換装置:
    Figure 2008514419
    (式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;N〜OはZ異性体型又はE異性体型を表す結合を示し;X1及びX2は独立してO、NR4及びSからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3、R1及びR4は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3のうちの1つは存在せずに、その1つが結合するそれぞれのX1、X2又はX3基が前記樹脂に直接結合するか、あるいは、Y1、Y2、Y3のうちの1つが前記樹脂に結合し、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、-(CH2)nC(=O)NH-、-(CH2)nC(=O)O-、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン及び置換ヘテロアリーレンからなる群から選択され;R1、Y1、Y2、R4及びY3のうちの少なくとも1つは水素を表し;R1とY1の少なくとも一方は水素ではない。)
  2. 前記アルキルがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、アミル又はイソペンチルである、請求項1記載の装置。
  3. 前記置換アリール基がp−ニトロフェニル又はo−ニトロベンジルである、請求項1記載の装置。
  4. 前記配位子がE異性体型である、請求項1記載の装置。
  5. 前記配位子がZ異性体型である、請求項1記載の装置。
  6. 前記配位子がY1を介して前記樹脂に結合し、R1が水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択される、請求項1記載の装置。
  7. 前記配位子がY3を介して前記樹脂に結合する、請求項1記載の装置。
  8. 前記配位子がY2を介して前記樹脂に結合する、請求項1記載の装置。
  9. 前記X1及びX2のうち、少なくとも一方が酸素である、請求項1記載の装置。
  10. 前記X1及びX2のうち、少なくとも一方がNHである、請求項1記載の装置。
  11. 下記を含む化合物:
    Figure 2008514419
    (式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;R1とR2の少なくとも一方は水素ではなく;R5とR6の少なくとも一方は水素ではなく;X1及びX2はそれぞれ独立してO、NR7及びSからなる群から選択され、R7は水素、アルキル、アリール、置換アルキル又は置換アリールを表し;Yはアルキレン、置換アルキレン、アルキリデン、置換アルキリデン、アリーレン又は置換アリーレンからなる群から選択される結合基を示す。)
  12. 請求項11記載の化合物に結合した樹脂を含む装置であって、前記Yが前記樹脂に結合する置換基をさらに含むことを特徴とする装置。
  13. 前記樹脂がマクロ孔質樹脂である請求項12記載の装置。
  14. 前記樹脂がミクロ孔質樹脂である請求項12記載の装置。
  15. 下記を含む化合物:
    Figure 2008514419
    (式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;X1、X2及びX3は独立してO、NR3及びSからなる群から選択され;R1、R2、Y1、Y2、Y3、Y4及びY5は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3のうちの1つは、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、-(CH2)nC(=O)NH-、-(CH2)nC(=O)O-、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン及び置換ヘテロアリーレンからなる群から選択され;R1とY1の少なくとも一方は水素ではなく;R1、R2、Y1、Y2、Y4、Y5のうちの少なくとも1つは水素を表し;R1とY1の少なくとも一方は水素ではない。)
  16. 請求項15記載の化合物に、前記Y1、Y2、Y4又はY5の1箇所を介して結合した樹脂を含む装置。
  17. 前記樹脂がマクロ孔質樹脂である請求項15記載の装置。
  18. 前記樹脂がミクロ孔質樹脂である請求項15記載の装置。
  19. 前記配位子が金属カチオンをシス構造でキレート化する請求項11又は15記載の化合物。
  20. 前記配位子が金属カチオンをトランス構造でキレート化する請求項11又は15記載の化合物。
  21. 前記樹脂が、PS-DVB、Chelex、ポリアミン、アミン変性スチレンジビニルベンゼン、アミノ化フェノール−ホルムアルデヒド樹脂又はアミン変性アクリル樹脂からなる群から選択される、請求項1、13又は17のいずれか1項記載の装置。
  22. 前記樹脂がPS-DVBである請求項21記載の装置。
  23. 前記配位子が、Cu2+、Ni2+、Hg2+、Cd2+、Zn2+及びCo2+からなる群から選択される金属カチオンをキレート化する請求項1、13又は17のいずれか1項記載の装置。
  24. ガラス繊維に結合した配位子であって、下記構造を有する配位子:
    Figure 2008514419
    (式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;N〜OはZ異性体型又はE異性体型を表す結合を示し;X1及びX2は独立してO、NR4及びSからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3、R1及びR4は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3のうちの1つは存在せずに、その1つが結合するそれぞれのX1、X2又はX3基が樹脂に直接結合するか、あるいは、Y1、Y2、Y3のうちの1つが前記配位子を樹脂に結合させ、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、-(CH2)nC(=O)NH-、-(CH2)nC(=O)O-、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン及び置換ヘテロアリーレンからなる群から選択され;R1、Y1、Y2、R4、Y3のうちの少なくとも1つは水素を表し;R1とY1の少なくとも一方は水素ではない。)
  25. 水性媒体から金属カチオンを取り除く方法であって、下記構造式を有する配位子が結合するマクロ孔質樹脂に、前記水性媒体を通過させることを含む方法:
    Figure 2008514419
    (式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;N〜OはZ異性体型又はE異性体型を表す結合を示し;X1及びX2は独立してO、NR4及びSからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3、R1及びR4は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;Y1、Y2、Y3のうちの1つは存在せずに、その1つが結合するそれぞれのX1、X2又はX3基が前記樹脂に直接結合するか、あるいは、Y1、Y2、Y3のうちの1つが前記配位子を前記樹脂に結合させ、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、-(CH2)nC(=O)NH-、-(CH2)nC(=O)O-、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン及び置換ヘテロアリーレンからなる群から選択され;R1、Y1、Y2、R4、Y3のうちの少なくとも1つは水素を表し;R1とY1の少なくとも一方は水素ではない。)
  26. 前記金属カチオンがCu2+、Ni2+、Hg2+、Cd2+、Zn2+及びCo2+からなる群から選択される請求項25記載の方法。
  27. 前記水性媒体が発電所からの廃水である、請求項25記載の方法。
  28. マクロ孔質樹脂と、前記樹脂に結合した下記構造式を有する配位子とを含むイオン交換装置:
    Figure 2008514419
    (式中、星印の付いた原子は結合位置を示し;N〜OはZ異性体型又はE異性体型を表す結合を示し;X1、X2、X3及びX4は独立してO、NR4及びSからなる群から選択され;X1が前記樹脂に直接結合し;Y2及びY3は独立して、アルキレン、オキシ−アルキレン、アミノ−アルキレン、チオ−アルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン及び置換ヘテロアリーレンからなる群から選択され;R1、R2及びR3は独立して、水素、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリールからなる群から選択され;nは1〜5である。)
  29. n=1で、かつ、メチレン基が誘導体化されてヒドロキシ−イミノ基を形成している、請求項28記載の装置。
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