JP2008512141A - 薬物放出に対する自己形成性の速度制御バリアを有する医療用デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】 生体内崩壊性剤と生体内安定性のある低ガラス転移温度ポリマーとを含んだ速度制御型放出領域を含む、治療剤放出医療用デバイスを提供すること。
【解決手段】 医療用デバイスが処置対象と接触すると(例えば、植え込まれると、若しくは挿入されると)、少なくとも放出領域表面が生体内崩壊性剤を使い果たした状態になり、低ガラス転移温度ポリマーが移動してきて、生体内崩壊性剤の離脱によって作り出された体積の少なくとも一部分をふさぎ、それによってデバイス内に残っている治療剤に対するバリア層を形成する。
【選択図】 なし

Description

(発明の分野)
本発明は、一般に、治療剤放出のためのポリマー領域を含む医療用デバイスに関する。
(発明の背景)
治療剤を身体に送達するための、多数のポリマー含有医療用デバイスが開発されている。一部の典型的な送達戦略によれば、治療剤は、医療用デバイスに結合されたポリマーキャリア層内及び/又はポリマーバリア層の下に与えられる。医療用デバイスが患者の体内の所望の場所に留置されたら、治療剤は、ポリマーキャリア層及び/又はポリマーバリア層の性質に応じた速度で該医療用デバイスから放出される。
使用される薬物とポリマーとの組合せによっては、医療用デバイスの薬物送達コーティングが、比較的短い時間間隔で、望ましくないほど高レベルの負荷薬物を放出する虞がある。
(発明の要旨)
前述及び他の課題は、本発明によって対処される。本発明は、一態様では、速度制御型放出領域と治療剤とを含む医療用デバイスを提供する。放出領域は、生体内崩壊性剤(biodisintegrable agent)(これは、例えば、治療剤にも非治療剤にも相当し得る)と、生体内安定性のある低Tgポリマーとを含む。医療用デバイスが処置対象と接触すると(例えば、該デバイスを植え込むと、若しくは挿入すると)、放出領域は、少なくともその表面で、生体内崩壊性剤を使い果たした状態になる。選択された低Tgポリマーは、体温で自然に移動して、生体内崩壊性剤が表面から離脱することによって作り出された体積の少なくとも一部分をふさぐ。この移動(migration)若しくは硬化(consolidation)が、デバイス内に残っている治療剤に対する速度制御膜/バリアを作り出す。
本発明の利点は、治療剤の制御放出を呈する、植込み可能若しくは挿入可能な医療用デバイスが提供されることである。
本発明の他の利点は、植え込まれて所望の初期量の治療剤を送達した後に速度制御バリア層を形成する、植込み可能若しくは挿入可能な医療用デバイスが提供されることである。その結果、このようなデバイスは、望むなら単一層だけを含むことができ、それによって別個の速度制御バリア層を設ける(例えば、コーティングする、若しくは適用する)必要がなくなる。対照的に、従来の速度制御バリア層は、通常、その下に存在する治療剤含有領域を覆ってコーティングされるが、それには多数のコーティングステップが必要となり、材料、労働者、機械加工などを含めた追加コストがかかることがある。
本発明の前述及び他の態様、実施態様、並びに利点は、以下の発明を実施するための詳細な説明及び特許請求の範囲を検討すれば、当業者にはすぐに明らかになる。
(発明の詳細な説明)
本発明は、本発明の様々な実施態様についての以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解することができる。以下の諸実施態様の詳細な説明は、本発明を例示するものであって制限するものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
一態様では、本発明は、1つ若しくは複数の速度制御型放出領域を含む、治療剤放出医療用デバイスを提供する。この1つ若しくは複数の放出領域は、生体内崩壊性剤と、生体内安定性のある低Tgポリマーとを含む。医療用デバイスが処置対象と接触すると(例えば、植え込まれると、若しくは挿入されると)、放出領域は、(少なくとも)その表面で、生体内崩壊性剤を使い果たした状態になる。生体内崩壊性剤が放出領域から出ていくにつれ、低Tgポリマーが移動して(例えば、流動(flowing)、崩壊(collapsing)、凝集(coalescence)などによる)、生体内崩壊性剤が放出領域の表面から離脱することによって作り出された体積の少なくとも一部分をふさぐ。低Tgポリマーのこの再編成/硬化は、放出領域の表面に速度制御膜を作り出し、それによって、その下に存在する治療剤の放出を妨げるバリアを提供する。
「生体内崩壊性剤」は、処置対象に植え込まれる、若しくは挿入されると、その剤が放出領域からそれによって除去される、溶解、生分解、再吸収、浸食、拡散、及び/又は他のいずれかのプロセスを経る剤である。(対照的に、生体内安定性剤は、医療用デバイスに結合したままとなる剤である。但し、デバイスが処置対象に植え込まれている若しくは挿入されている期間にかけて移動することもある)。
生体内崩壊性剤の例には、治療用及び非治療用の生体内崩壊性剤が含まれる。治療用の生体内崩壊性剤は、例えば、以下に列挙する多数の治療剤のうち生体崩壊性のものから選択することができる。
非治療用の生体内崩壊性剤には、ポリマー及び非ポリマーの生体内崩壊性剤が含まれる。非高分子生体内崩壊性剤の例には、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムなどの塩、ガラクトース、グルコース、スクロースなどの糖、カチオン性脂質、並びにイオン性及び非イオン性洗剤が含まれる。
高分子生体内崩壊性剤は、天然由来又は合成由来のものとすることができ、それらの例には:セルロース系ポリマー及びコポリマー、例えばメチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びその様々な塩(例えば、ナトリウム塩を含む)、ヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロース(HECMC)及びその様々な塩、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(CMHEC)及びその様々な塩などのセルロースエーテル、デンプン、デキストラン、デキストラン誘導体、キトサン、アルギン酸及びその様々な塩、ポリガラクチド(polygalactides)、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、カラヤガム、ガティガム、コンニャク、及びトラガカントガムを含めた様々なガム、ヘパリン、ヒアルロン酸やその塩などのグリコサミノグリカン及びプロテオグリカンなど、他の多糖類及び多糖類誘導体、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、フィブリンなどのタンパク質、他のポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、及びポリ(ε−カプロラクトン−co−グリコール酸)などのポリヒドロキシ酸、カルボキシビニルポリマー及びそれらの塩(例えば、カルボマー)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸及びその塩、ポリアクリルアミド、ポリアシリック酸/アクリルアミドコポリマー(polyacilic acid/acrylamide copolymer)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)(例えば、BASFのPluronic酸)、ポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール)、ポリ酸無水物(polyanhydrides)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンアミン、ポリピリジン、以上に具体的に記載した以外の他の塩及びコポリマー、並びに以上のブレンド(同一の構成単位、即ち諸モノマーを含むが、分子量分布が大きく異なるポリマーの混合物を含める)が含まれる。これらのポリマー及びコポリマーは、例えば、線状、環状、及び分岐(例えば、星型、櫛型、樹枝状(dendritic)など)の配置を含め、様々な配置のものでよい。
様々な実施態様では、放出領域の生体内崩壊性剤は、(1つ若しくは複数の)低Tgポリマーによって占められる1つ若しくは複数の相とは異なる、1つ若しくは複数の相を占める。一具体例として、生体内崩壊性剤は、(1つ若しくは複数の)低Tgポリマーによって形成されるマトリックス内で提供される粒子に相当することがある。これらの粒子は、1つ若しくは複数の生体内崩壊性剤、例えば、1つ若しくは複数の治療剤、1つ若しくは複数の非治療剤、又は治療剤と非治療剤との組合せを含むことができる(例えば、粒子が治療剤と生体崩壊性ポリマーとを含むことができる)。
本明細書で使用する「ポリマー」は、10以上の構成単位(即ち、組み込まれたモノマー)、通常は20以上、50以上、100以上、200以上、500以上、場合によっては1000以上もの構成単位の集団を指す。「低Tgポリマー」は、示差走査熱量測定法(DSC:differential scanning calorimetry)、動的機械分析(DMA:dynamic mechanical analysis)、又は誘電分析(DEA:dielectric analysis)を含めたいくつかの技術のいずれかによって測定される、周囲温度を下回る、より典型的には25℃を下回る、0℃を下回る、−25℃を下回る、場合によっては−50℃さえ下回るガラス転移温度(T)を示すポリマーである。「周囲温度」は、典型的には25℃〜45℃、より典型的には体温(例えば、35℃〜40℃)である。低Tポリマーは、ガラス転移温度が低いので、通常、周囲温度でエラストマー性である。
本発明と併せて使用される低Tポリマーは、線状及び分岐配置を含めた様々な配置で提供することができる。分岐配置には、星型配置(例えば、単一の分岐点から3本以上の鎖が出る配置)、櫛型配置(例えば、主鎖と複数の側鎖とを有する配置)、並びに樹枝状配置(例えば、樹枝状(arborescent)及び超分岐ポリマー)が含まれる。
低Tgポリマーは、単一の構成単位を含むことができる。例えば、低Tgポリマーは、低Tgホモポリマーに相当し得る。或いは、低Tgポリマーは、多数の構成単位を含むこともできる。例えば、低Tgポリマーは、低Tgの、ランダム、統計、グラジエント、又は繰返し(例えば、交互)コポリマーに相当し得る。
低Tgポリマーは、生体内崩壊性剤が少なくとも放出領域表面から脱出すると該ポリマーが移動を起こすように選択される。
低Tポリマーとして使用するためのポリマーは、アクリルモノマー、メタクリルモノマー、ビニルエーテルモノマー、環状エーテルモノマー、エステルモノマー、不飽和炭化水素モノマー、ハロゲン化不飽和炭化水素モノマー、及びシロキサンモノマーのうちの1つ若しくは複数から形成される(又は1つ若しくは複数から形成されるように見える)、適切な低Tgポリマーから選択することができる。これらのモノマー群それぞれから得られる多数の具体例を以下に列挙する。ここに掲載されたT値は、列挙されたモノマー単位のホモポリマーについて公表されている値である。
アクリルモノマーの具体例には、(a)アクリル酸メチル(T10℃)、アクリル酸エチル(T−24℃)、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル(T−11℃、アイソタクチック)、アクリル酸ブチル(T−54℃)、アクリル酸sec−ブチル(T−26℃)、アクリル酸イソブチル(T−24℃)、アクリル酸シクロヘキシル(T19℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(T−50℃)、アクリル酸ドデシル(T−3℃)、アクリル酸ヘキサデシル(T35℃)などのアクリル酸アルキル、(b)アクリル酸ベンジル(T6℃)などのアクリル酸アリールアルキル、(c)アクリル酸2−エトキシエチル(T−50℃)やアクリル酸2−メトキシエチル(T−50℃)などのアクリル酸アルコキシアルキル、(d)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(T−10℃)などのアクリル酸ハロアルキル、及び(e)アクリル酸2−シアノエチル(T4℃)などのアクリル酸シアノアルキルが含まれる。
メタクリルモノマーの具体例には、(a)メタクリル酸ブチル(T20℃)、メタクリル酸ヘキシル(T−5℃)、メタクリル酸2−エチルヘキシル(T−10℃)、メタクリル酸オクチル(T−20℃)、メタクリル酸ドデシル(T−65℃)、メタクリル酸ヘキサデシル(T15℃)、メタクリル酸オクタデシル(T−100℃)などのメタクリル酸アルキル、及び(b)メタクリル酸ジエチルアミノエチル(T20℃)、メタクリル酸2−tert−ブチルアミノエチル(T33℃)などのメタクリル酸アミノアルキルが含まれる。
ビニルエーテルモノマーの具体例には、(a)メチルビニルエーテル(T−31℃)、エチルビニルエーテル(T−43℃)、プロピルビニルエーテル(T−49℃)、ブチルビニルエーテル(T−55℃)、イソブチルビニルエーテル(T−19℃)、2−エチルヘキシルビニルエーテル(T−66℃)、ドデシルビニルエーテル(T−62℃)などのアルキルビニルエーテルが含まれる。
環状エーテルモノマーの具体例には、テトラヒドロフラン(T−84℃)、トリメチレンオキシド(T−78℃)、エチレンオキシド(T−66℃)、プロピレンオキシド(T−75℃)、メチルグリシジルエーテル(T−62℃)、ブチルグリシジルエーテル(T−79℃)、アリルグリシジルエーテル(T−78℃)、エピブロモヒドリン(T−14℃)、エピクロロヒドリン(T−22℃)、1,2−エポキシブタン(T−70℃)、1,2−エポキシオクタン(T−67℃)、及び1,2−エポキシデカン(T−70℃)が含まれる。
エステルモノマー(アクリレート及びメタクリレート以外)の具体例には、マロン酸エチレン(T−29℃)、酢酸ビニル(T30℃)、及びプロピオン酸ビニル(T10℃)が含まれる。
不飽和モノマーの具体例には、エチレン、プロピレン(T−8〜−13℃)、イソブチレン(T−73℃)、1−ブテン(T−24℃)、トランス−ブタジエン(T−58℃)、4−メチルペンテン(T29℃)、1−オクテン(T−63℃)及び他のα−オレフィン、シス−イソプレン(T−63℃)、並びにトランス−イソプレン(T−66℃)が含まれる。
ハロゲン化不飽和モノマーの具体例には、塩化ビニリデン(T−18℃)、フッ化ビニリデン(T−40℃)、シス−クロロブタジエン(T−20℃)、及びトランス−クロロブタジエン(T−40℃)が含まれる。
シロキサンモノマーの具体例には、ジメチルシロキサン(T−127℃)、ジエチルシロキサン、メチルエチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン(T−86℃)、及びジフェニルシロキサンが含まれる。
一般経験則として、低TgポリマーのTgが低いほど、低Tgブロックは、移動を起こしやすい。
低Tgポリマーの具体例には、ポリイソブチレンなどの低Tgアルキレンホモポリマー及びコポリマー、低Tgポリウレタン、並びにアクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ラウリルのホモポリマー及びコポリマーなど、低Tgアクリレートポリマーが含まれる。
当業者には理解されるように、低Tgポリマーは、アニオン、カチオン及びラジカル重合方法、例えば、アゾビス(イソブチロニトリル)開始型若しくは過酸化物開始型重合、並びに、金属触媒による原子移動ラジカル重合(ATRP:atom transfer radical polymerization)、安定フリーラジカル重合(SFRP:stable free-radical polymerization)、窒素酸化物媒介プロセス(NMP:nitroxide-mediated processes)、変性移動(degenerative transfer)(例えば、可逆的付加−開裂連鎖移動(RAFT:reversible addition-fragmentation chain transfer))プロセスなどの制御/「リビング」ラジカル重合を含め、いくつかの公知の方法にしたがって合成することができる。これらの方法は、文献に非常に詳細に記載されており、例えば、Pyun及びMatyjaszewskiの論文「制御/「リビング」ラジカル重合を使用したナノコンポジット有機/無機ハイブリッド材料の合成(Synthesis of Nanocomposite Organic/Inorganic Hybrid Materials Using Controlled/"Living" Radical Polymerization)」(Chem. Mater., 13: 3436-3448 (2001))に記載されており、その論文の内容全体を参照により本願に援用する。
本発明の放出領域は、例えば、医療用デバイス全体(例えば、管状ステント)に相当し得る。他の実施態様では、放出領域は、医療用デバイスの1つ若しくは複数のコンポーネント(例えば、1つ若しくは複数のステントストラット)に相当する。他の実施態様では、放出領域は、その下に存在する医療用デバイス基材(例えば、金属、セラミック、又はポリマー基材)を覆って配置された1つ若しくは複数の層に相当する。例えば、本発明による放出層は、その下に存在する医療用デバイス基材のすべて又は一部を覆うことができる。多数の放出層を使用することができ、相互に積み重ねることができ、又は互いに横方向に離隔することができる。本明細書で使用する所与の材料の「層」は、その長さ及び幅に比べてその厚さが小さい材料の領域である。本明細書で使用する層は、平面的である、例えば、その下に存在する基材の輪郭を呈する必要はない。層は、不連続層(例えば、パターン層)とすることができる。本明細書では、「フィルム」、「層」、「コーティング」などの用語を交換可能に使用することがある。
一部の実施態様では、放出領域は、治療剤を含まず、その下に存在する治療剤含有領域を覆って配置される。場合によっては、この下に存在する領域を、本質的に治療剤から成るものとすることもできる。例えば、下に存在する領域は、その下の基材の上に配置された治療剤の層に相当し得る。また場合によっては、下に存在する領域が、治療剤に加えて様々な剤を含む。例えば、下に存在する領域は、1つ若しくは複数のポリマーを含むことができ、それらのポリマーは、その上を覆う放出領域内に見られる1つ若しくは複数のポリマーと同一のものとすることも、また異なるものとすることもできる。下に存在する治療剤含有領域は、例えば、治療剤含有ポリマー医療用デバイス基材、又は医療用デバイス基材を覆って配置された治療剤含有ポリマー層に相当し得る。
他の諸実施態様では、放出領域自体が1つ若しくは複数の治療剤を含む。これらの実施態様の一部では、1つ若しくは複数の治療剤は、放出領域の生体内崩壊性剤に相当する。他の特定の諸実施態様では、放出領域は、1つ若しくは複数の治療剤に加えて、1つ若しくは複数の非治療用の生体内崩壊性剤を含む。
放出領域が少なくとも1つの治療剤を含む場合、それでも該放出領域を、その下に存在する、少なくとも1つの前述の追加治療剤を含む領域を覆って配置することができる。下に存在する領域内の追加治療剤は、その上を覆う放出領域内の治療剤と同一のものとすることも、また異なるものとすることもできる。さらに、下に存在する領域内の追加治療剤は、その上を覆う放出領域内の治療剤に対して、同一濃度、より高濃度、又はより低濃度とすることができる。
本発明の放出領域を形成するには、多数の技術が利用可能である。例えば、選ばれた低Tgポリマーが熱可塑性の特徴を有しており、且つ生体内崩壊性剤が加工温度で安定である場合、放出領域を形成するために、圧縮成形、射出成形、ブロー成形、紡績、真空成形、及びカレンダ加工、並びに、様々な長さのシート、繊維、ロッド、チューブ、及び他の断面プロファイルへの押出しを含め、様々な標準的な熱可塑性加工技術を使用することができる。前述及び他の技術を使用して、デバイス全体又はデバイスの一部分を製造することができる。例えば、前述の技術を使用してステント全体を押し出すことができる。他の例として、既存のステントの上にコーティング層を押し出すことによって、コーティングを提供することもできる。他の例として、コーティングをその下に存在するステント本体とともに共押出しすることもできる。望むなら、治療剤が加工温度で安定である限り、治療剤と低Tgポリマー及び生体内崩壊性剤とを組み合わせてから熱可塑性加工して、治療剤を含有する放出領域を作り出すこともできる。
他の例として、本発明による放出領域を、生体内崩壊性剤及び低Tgポリマーが(望むなら、さらに、他の任意の剤、例えば治療剤も)、1つ若しくは複数の溶媒種を含む溶媒系に初めに溶解又は分散される、溶媒ベースの技術を使用して形成することができる。その後、得られる混合物を使用して放出領域を形成する。
好ましい溶媒ベースの技術には、これだけに限るものではないが、溶媒キャスティング法、スピンコーティング法、ウェブコーティング法、溶媒噴霧法、ディッピング法、気中懸濁を含めた機械的懸濁によるコーティングに関わる技術、インクジェット法、静電法、及びこれらのプロセスの組合せが含まれる。放出領域が溶媒ベースの技術を使用して形成される場合、該放出領域は、通常、適用後に溶媒を除去するために乾燥される。
選ばれた溶媒ベース技術のために選択される溶媒系は、1つ若しくは複数の溶媒種を含む。溶媒系は、必ずしもそうとは限らないが、通常、低Tgポリマーに適した溶媒である。溶媒系は、また、生体内崩壊性剤に適した溶媒とすることもできるが、一部の実施態様では、生体内崩壊性剤を微粒子形態のままで維持する溶媒系が選択される。治療剤が含まれる場合、選択される溶媒系は、その治療剤に適した溶媒であることも、適した溶媒でないこともある。溶媒系を構成する具体的な溶媒種は、また、乾燥速度及び表面張力を含めた他の特徴に基づいて選択することもできる。
様々な実施態様では、放出領域を形成するために、(a)溶媒系と、(b)生体内崩壊性剤及び低Tgポリマーと、(c)他の剤(あれば)とを含む混合物が、基材に適用される。例えば、基材は、放出領域がそれに適用される、ステントなどの植込み可能若しくは挿入可能な医療用デバイスを構成することができる。他方、基材を、また、溶媒除去後に放出領域がそこから取り外される、例えばモールドなどのテンプレートとすることもできる。そのようなテンプレートベースの技術は、テンプレート基材から容易に取り外すことのできる、シート、チューブ、シリンダなどの単純な物体を形成するのに特に適している。
他の技術、例えば、繊維形成技術では、放出領域は、基材又はテンプレートの補助なしに形成される。
適切な場合、以上に列挙したような技術を反復して、又は組み合わせて、放出領域を所望の厚さに積み重ねることができる。放出領域の厚さは、同様に他の方法でも多様なものにすることができる。例えば、好ましい一プロセスである溶媒噴霧では、スプレー流量を増加させること、コーティングされるべき基材とスプレーノズルとの間の運動を減速させること、反復して通過させることなどを含め、コーティングプロセスパラメータを修正することによってコーティング厚を増大させることができる。
放出領域が治療剤含有領域を覆って形成される場合、やはり、その下に存在する領域を、例えば前述したような熱可塑性技術及び溶媒ベースの技術を使用して形成することができる。例えば、前述のように、放出領域の下の治療剤含有領域は、一部の実施態様では1つ若しくは複数のポリマーを含む。したがって、該治療剤含有領域を、やはり、前述のような熱可塑性技術及び溶媒ベースの技術(例えば、ディッピングや噴霧など)を使用して構築することができる。他の諸実施態様では、放出領域の下の治療剤含有領域は、関連ポリマーマトリックスなしに構築される。これらの場合、例えば、治療剤を単純に溶媒若しくは液体に溶解又は分散させることができ、得られる溶液/分散液を、例えば前述の適用技術の1つ若しくは複数を使用して、やはり基材と接触させることができる。
本発明と併せて使用するための医療用デバイスには、治療剤の制御放出が望まれる、基本的にいずれの医療用デバイスも含まれる。医療用デバイスの例には、植込み可能若しくは挿入可能な医療用デバイス、例えば、カテーテル(例えば、バルーンカテーテルなどの腎カテーテル若しくは血管カテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ(例えば、大静脈フィルタ)、ステント(冠血管ステント、大脳、尿道、尿管、胆管、気管、胃腸、及び食道ステントを含める)、ステントグラフト、脳動脈瘤フィラーコイル(filler coils)(Guglilmi着脱式コイル及び金属コイルを含める)、血管グラフト、心筋プラグ、パッチ、ペースメーカ及びペースメーカリード、心臓弁、生検デバイス、並びに、体内に植え込まれ、若しくは挿入され、且つそれらから治療剤が放出される、コーティングされたいずれかの基材(例えば、ガラス、金属、ポリマー、セラミック、及びそれらの組合せを含めることができる)が含まれる。医療用デバイスの例には、さらに、治療剤を無傷の皮膚及び傷付いた皮膚(創傷を含む)に送達するためのパッチ;縫合糸、縫合糸留め具、吻合クリップ及びリング、手術部位における組織ステープル及び結紮クリップ;足首、膝、及び手部の干渉スクリュー、靭帯結合及び半月板修復用のタック、骨折固定用のロッド及びピン、頭蓋顎顔面(craniomaxillofacial)修復用のスクリュー及びプレートなどの整形外科固定デバイス;抜歯後の間隙充填剤、歯根膜手術後の組織再生誘導膜フィルムなどの歯科デバイス;並びに、軟骨、骨、皮膚、及び他のインビボ組織再生のための組織工学的足場も含まれる。
本発明の医療用デバイスには、任意の哺乳類組織若しくは臓器の全身的処置又は局所的処置に使用される医療用デバイスが含まれる。本明細書で使用する「処置」は、疾病若しくは状態の予防、疾病若しくは状態に付随した症状の軽減若しくは除去、又は疾病若しくは状態の実質的若しくは完全な除去を指す。好ましい処置対象は、哺乳類の処置対象であり、ヒトの処置対象がより好ましい。非限定的な例は、腫瘍;心臓、冠血管系と末梢血管系(総合的に「血管系」と呼ぶ)、肺、気管、食道、脳、肝臓、腎臓、膀胱、尿道と尿管、目、腸、胃、膵臓、膣、子宮、卵巣、及び前立腺を含めた臓器;骨格筋;平滑筋;乳房;皮膚組織;軟骨;並びに骨である。
本発明と併せて使用するための医療用デバイスの具体例には、再狭窄の処置のために治療剤を血管系内に送達する血管ステントが含まれる。これらの実施態様では、放出領域は、通常、ステント基材のすべて又は一部分を覆って設けられる。
前述のように、本発明の医療用デバイスでは、治療剤を、単独で、又は組み合わせて使用することができる。「薬物」、「治療剤」、「薬学的に活性な剤」、「薬学的に活性な物質」、及び他の関連用語は、本明細書では交換可能に使用されることがある。これらの用語には、遺伝子治療剤、非遺伝子治療剤、及び細胞が含まれる。
本発明と併せて使用するための例示的な非遺伝子治療剤には、(a)ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)などの抗血栓剤、(b)デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミンなどの抗炎症剤、(c)パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を阻止できるモノクローナル抗体、チミジンキナーゼ阻害剤などの抗悪性腫瘍剤/抗増殖剤/アンチマイオチック剤(anti-miotic agents)、(d)リドカイン、ブピバカイン、ロピバカインなどの麻酔剤、(e)D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗剤、抗トロンビン抗体、抗血小板薬受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、マダニ抗血小板ペプチド(tick antiplatelet peptides)などの抗凝固剤、(f)成長因子、転写活性化因子、翻訳促進因子などの血管細胞成長促進因子、(g)成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗剤、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒素とから成る2機能性分子、抗体と細胞毒素とから成る2機能性分子などの血管細胞成長阻害剤、(h)プロテインキナーゼ及びチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、チルホスチン(tyrphostins)、ゲニステイン、キノキサリン)、(i)プロスタサイクリン類似体、(j)コレステロール降下剤、(k)アンジオポエチン、(l)トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ニトロフラントインなどの抗菌剤、(m)細胞毒性剤、細胞増殖抑制剤、及び細胞増殖作用因子、(n)血管拡張剤、(o)内在性血管作動性機構に干渉する剤、(p)モノクローナル抗体など、白血球動員の阻害剤、(q)サイトカイン、(r)ホルモン、並びに(s)ゲルダナマイシンを含めた、HSP90タンパク質(即ち、熱ショックタンパク質(Heat Shock Protein):分子シャペロン若しくはハウスキーピングタンパク質であり、細胞の成長及び生存をつかさどる他のクライアントタンパク質/シグナル伝達タンパク質の安定性及び機能のために必要である)の阻害剤が含まれる。
好ましい非遺伝子治療剤には、パクリタキセル、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、Epo D、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT−578(Abbott Laboratories)、トラピジル、リプロスチン(liprostin)、Actinomcin D、Resten−NG、Ap−17、アブシキシマブ、クロピドグレル、及びRidogrelが含まれる。
本発明と併せて使用するための例示的な遺伝子治療剤には:(a)アンチセンスRNA、(b)欠損若しくは不足内在性分子を置き換えるためのtRNA又はrRNA、(c)酸性及び塩基性線維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子、内皮分裂促進成長因子、上皮成長因子、トランスフォーミング成長因子α及びβ、血小板由来内皮成長因子、血小板由来成長因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子、インスリン様成長因子などの成長因子を含めた、血管新生因子及び他の因子、(d)CD阻害剤を含めた細胞周期阻害剤、並びに(e)チミジンキナーゼ(「TK」)及び細胞増殖に干渉するのに有用な他の剤など、様々なタンパク質をコードする、アンチセンスDNA及びRNA並びにDNA(並びにそれらタンパク質自体)が含まれる。やはり関心があるのは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、及びBMP−16を含めた骨形成タンパク質(「BMP」:bone morphogenic proteins)ファミリーをコードするDNAである。現時点で好ましいBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、及びBMP−7のいずれかである。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体、若しくはそれらの組合せとして、単独で、又は他の分子とともに提供することができる。代替的に、又は追加的に、BMPの上流若しくは下流効果を誘発可能な分子を提供することもできる。そのような分子には、任意の「ヘッジホッグ(hedgehog)」タンパク質、又はそれらをコードするDNAが含まれる。
遺伝子治療剤の送達のためのベクターには、アデノウイルス、guttedアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、αウイルス(セムリキ森林(Semliki Forest)、シンドビス(Sindbis)など)、レンチウイルス、単純疱疹ウイルス、増殖能のあるウイルス(replication competent viruses)(例えば、ONYX−015)、ハイブリッドベクターなどのウイルスベクター;並びに、人工染色体及びミニ染色体、プラスミドDNAベクター(例えば、pCOR)、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(PEI))、グラフトコポリマー(例えば、ポリエーテル−PEI及びポリエチレンオキシド−PEI)、ポリビニルピロリドン(PVP)やSP1017(SUPRATEK)などの中性ポリマー、カチオン性脂質などの脂質、リポソーム、リポプレックス、ナノ粒子、ミクロ粒子などの非ウイルスベクターが含まれ、タンパク質形質導入ドメイン(PTD:protein transduction domain)などの標的配列の有無を問わない。
本発明と併せて使用するための細胞には、全骨髄、骨髄由来の単核細胞、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間葉、造血、神経)、多能性幹細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、若しくはマクロファージを含めたヒト由来(自己若しくは同種間)の細胞、又は動物、細菌、若しくは菌源由来(異種間)の細胞が含まれ、望むなら、関心のあるタンパク質を送達するようにこれらを遺伝子操作することもできる。
以上に列挙したものを必ずしも除くわけではないが、血管治療計画のための候補として、例えば、再狭窄を標的とする剤として、多数の治療剤が確認されている。そのような剤は、本発明を実施するのに有用であり、それらには、次の1つ若しくは複数が含まれる:(a)ジルチアゼムやクレンチアゼムなどのベンゾチアザピン(benzothiazapines)、ニフェジピン、アムロジピン、ニカルダピン(nicardapine)などのジヒドロピリジン、及びベラパミルなどのフェニルアルキルアミンを含めた、Caチャネル遮断剤、(b)ケタンセリンやナフチドロフリルなどの5−HT拮抗剤、及びフルオキセチンなどの5−HT取込み阻害剤を含めた、セロトニン経路調節因子、(c)シロスタゾールやジピリダモールなどのホスホジエステラーゼ阻害剤、フォルスコリンなどのアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ刺激剤、及びアデノシン類似体を含めた、環状ヌクレオチド経路剤、(d)プラゾシンやブナゾシンなどのα拮抗剤、プロプラノロールなどのβ拮抗剤、及びラベタロールやカルベジロールなどのα/β拮抗剤を含めた、カテコールアミン調節因子、(e)エンドセリン受容体拮抗剤、(f)ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、亜硝酸アミルなどの有機硝酸エステル/亜硝酸エステル、ニトロプルシドナトリウムなどの無機ニトロソ化合物、モルシドミンやリンシドミンなどのシドノンイミン、ジアゼニウムジオラート(diazenium diolates)やアルカンジアミンのNO付加体などのノノエート(nonoates)、低分子量のS−ニトロソ化合物(例えば、カプトプリル、グルタチオン、及びN−アセチルペニシラミンのS−ニトロソ誘導体)並びに高分子量のS−ニトロソ化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖類、合成ポリマー/オリゴマー、及び天然ポリマー/オリゴマーのS−ニトロソ誘導体)を含めたS−ニトロソ化合物、並びにC−ニトロソ化合物、O−ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物、及びL−アルギニンを含めた、酸化窒素供与体/放出分子、(g)シラザプリル、フォシノプリル、エナラプリルなどのACE阻害剤、(h)サララシンやロサルチン(losartin)などのATII−受容体拮抗剤、(i)アルブミンやポリエチレンオキシドなどの血小板粘着阻害剤、(j)シロスタゾール、アスピリン、及びチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)、並びに、アブシキシマブ、エピチフィバチド(epitifibatide)、チロフィバンなどのGP IIb/IIIa阻害剤を含めた、血小板凝集阻害剤、(k)ヘパリン、低分子量ヘパリン、硫酸デキストラン、β−シクロデキストリンテトラデカ硫酸エステル(β−cyclodextrin tetradecasulfate)などのヘパリノイド、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D−phe−L−プロピル−L−arg−クロロメチルケトン)、アルガトロバンなどのトロンビン阻害剤、アンチスタチン(antistatin)やTAP(マダニ抗凝固ペプチド:tick anticoagulant peptide)などのFXa阻害剤、ワルファリンなどのビタミンK阻害剤、並びに活性化プロテインCを含めた、凝固経路調節因子、(l)アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、スルフィンピラゾンなどのシクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、(m)デキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロン(methprednisolone)、ヒドロコルチゾンなどの天然及び合成コルチコステロイド、(n)ノルジヒドログアイレチン酸(nordihydroguairetic acid)やコーヒー酸などのリポキシゲナーゼ経路阻害剤、(o)ロイコトリエン受容体拮抗剤、(p)E−セレクチン及びP−セレクチンの拮抗剤、(q)VCAM−1及びICAM−1相互作用の阻害剤、(r)PGE1やPGI2などのプロスタグランジン、及びシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロスト、ベラプロストなどのプロスタサイクリン類似体を含めた、プロスタグランジン及びそれらの類似体、(s)ビスホスホネートを含めたマクロファージ活性化抑制剤、(t)ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチンなどのHMG−CoA還元酵素阻害剤、(u)魚油及びω−3脂肪酸、(v)プロブコール、ビタミンC及びE、エブセレン、トランス−レチノイン酸、SOD模倣体などのフリーラジカル捕捉剤/酸化防止剤、(w)bFGF抗体やキメラ融合タンパク質などのFGF経路剤、トラピジルなどのPDGF受容体拮抗剤、アンギオペプチンやオクレオチド(ocreotide)などのソマトスタチン類似体を含めたIGF経路剤、ポリアニオン性剤(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、TGF−β抗体などのTGF−β経路剤、EGF抗体、受容体拮抗剤、及びキメラ融合タンパク質などのEGF経路剤、サリドマイドやそれらの類似体などのTNF−α経路剤、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベン、リドグレルなどのトロンボキサンA2(TXA2)経路調節因子、並びにチロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン誘導体などのタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を含めた、様々な成長因子に影響を及ぼす剤、(x)マリマスタット、イロマスタット、メタスタットなどのMMP経路阻害剤、(y)サイトカラシンBなどの細胞運動阻害剤、(z)プリン類似体(例えば、塩素化プリンヌクレオシド類似体である、6−メルカプトプリン若しくはクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、シタラビン及び5−フルオロウラシル)、メトトレキセートなどの抗代謝剤、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソ尿素、シスプラチン、微小管動態に影響を及ぼす剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、Epo D、パクリタキセル、及びエポチロン)、カスパーゼ活性化剤、プロテアソーム阻害剤、血管形成阻害剤(例えば、エンドスタチン、アンギオスタチン、及びスクアラミン)、ラパマイシン、セリバスタチン、フラボピリドール、並びにスラミンを含めた、抗増殖/抗悪性腫瘍剤、(aa)ハロフジノン若しくは他のキナゾリノン誘導体やトラニラストなどのマトリックス付着/形成経路阻害剤、(bb)VEGF及びRGDペプチドなどの内皮化促進因子、並びに(cc)ペントキシフィリンなどの血液レオロジー調節因子。
本発明を実施するのに有用な他の多数の治療剤は、また、NeoRx Corporationに譲渡された米国特許第5733925号にも開示されており、その開示全体を参照により本願に援用する。
本発明の医療用デバイスと併せて広範な治療剤負荷量を使用することができ、治療的に有効な量は、当業者には容易に決定されるが、最終的には、例えば、処置されるべき状態、患者の年齢、性別、及び状態、治療剤の性質、(1つ若しくは複数の)放出領域の性質、医療用デバイスの性質などに応じて決まる。
本明細書では様々な実施態様を具体的に示し、記載したが、本発明の修正形態及び変形形態が、以上の教示の扱う対象であり、本発明の趣旨及び意図される範囲から逸脱することなく添付の特許請求の範囲内にあることが理解されよう。

Claims (25)

  1. 生体内崩壊性剤と生体内安定性のある低ガラス転移温度ポリマーとを含んだ速度制御型放出領域を含む、治療剤放出医療用デバイスであって、前記医療用デバイスが処置対象と接触すると、前記放出領域が前記生体内崩壊性剤を使い果たした状態になり、前記低ガラス転移温度ポリマーが移動してきて、前記生体内崩壊性剤の離脱によって作り出された体積の少なくとも一部分をふさぎ、それによって前記デバイス内に残っている治療剤に対するバリア層を形成する、前記医療用デバイス。
  2. 前記放出領域が高分子生体内崩壊性剤を含む、請求項1記載の医療用デバイス。
  3. 前記放出領域が水溶性高分子生体内崩壊性剤を含む、請求項1記載の医療用デバイス。
  4. 前記放出領域が、可溶性多糖類含有ポリマー、可溶性タンパク質含有ポリマー、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリアクリルアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリ酸無水物、ポリビニルピロリドン、アルギン酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー及びそれらの塩、並びにポリアクリル酸及びその塩から選択される高分子生体内崩壊性剤を含む、請求項1記載の医療用デバイス。
  5. 前記放出領域が非高分子生体内崩壊性剤を含む、請求項1記載の医療用デバイス。
  6. 前記放出領域が、糖又は塩から選択される非高分子生体内崩壊性剤を含む、請求項1記載の医療用デバイス。
  7. 前記生体内崩壊性剤が、前記放出領域内に分散された生体崩壊性粒子の形態で提供される、請求項1記載の医療用デバイス。
  8. 前記放出領域が複数の生体内崩壊性剤を含む、請求項1記載の医療用デバイス。
  9. 前記低ガラス転移温度ポリマーが、低ガラス転移温度ポリウレタン、低ガラス転移温度シリコーン、低ガラス転移温度アクリレート、及び低ガラス転移温度ポリオレフィンから選択される、請求項1記載の医療用デバイス。
  10. 前記放出領域が複数の低ガラス転移温度ポリマーを含む、請求項1記載の医療用デバイス。
  11. 前記放出領域が、その下に存在する、前記治療剤を含む領域を覆って配置される、請求項1記載の医療用デバイス。
  12. 前記下に存在する領域が層の形態である、請求項11記載の医療用デバイス。
  13. 前記下に存在する領域がポリマーをさらに含む、請求項11記載の医療用デバイス。
  14. 前記放出領域が前記治療剤を含む、請求項1記載の医療用デバイス。
  15. 前記放出領域が複数の治療剤を含む、請求項14記載の医療用デバイス。
  16. 前記生体内崩壊性剤が前記治療剤に相当する、請求項14記載の医療用デバイス。
  17. 前記放出領域が、非治療用の生体内崩壊性剤と前記治療剤とを含む、請求項14記載の医療用デバイス。
  18. 前記放出領域が、その下に存在する、追加治療剤を含む層を覆って配置されており、前記下に存在する層内の前記追加治療剤が、前記放出領域内の前記治療剤とは異なる、請求項14記載の医療用デバイス。
  19. 前記放出領域が、その下に存在する、追加治療剤を含む層を覆って配置されており、前記下に存在する層内の前記追加治療剤が、前記放出領域内の前記治療剤と同一である、請求項14記載の医療用デバイス。
  20. 複数の放出領域を含む、請求項1記載の医療用デバイス。
  21. 前記放出領域が、下に存在する基材のすべて又は一部を覆う層の形態である、請求項1記載の医療用デバイス。
  22. 植込み可能若しくは挿入可能な医療用デバイスである、請求項1記載の医療用デバイス。
  23. 前記植込み可能若しくは挿入可能な医療用デバイスが、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ、ステント、ステントグラフト、血管グラフト、血管パッチ、及びシャントから選択される、請求項22記載の医療用デバイス。
  24. 前記植込み可能若しくは挿入可能な医療用デバイスが、冠血管系、末梢血管系、食道、気管、結腸、胆管、尿路、前立腺、又は脳に植え込まれる若しくは挿入されるように適合される、請求項22記載の医療用デバイス。
  25. 前記治療剤が、抗血栓剤、抗増殖剤、抗炎症剤、抗遊走剤、細胞外マトリックス産生及び形成に影響を及ぼす剤、抗悪性腫瘍剤、抗有糸分裂剤、麻酔剤、抗凝固剤、血管細胞成長促進因子、血管細胞成長阻害剤、コレステロール降下剤、血管拡張剤、並びに内在性血管作動性機構に干渉する剤から成る群の1つ若しくは複数から選択される、請求項1記載の医療用デバイス。
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