(本発明の要約)
発明者らは、例えばヒトなどの哺乳動物の改良薬物療法のための、グルタミン酸受容体に結合するpH依存性化合物の選択に対して優れたパラメーターを確立した。本発明以前に、インビボでのpHの破壊的低下に対して十分に保護効果を与えるインビボ使用のための化合物を合理的に選択する方法は分かっておらず、その結果、有害なインビボ効果が生じることとなった。本発明は、効果的な神経保護薬の、非常に必要とされている開発のため、及び使用を促進するために、長年の切実な要求に対する答えを与える。この目的を達成する薬剤がないことは、本発明が必要な証拠である。虚血の動物モデル全体において薬物の性能についてインビトロで候補薬物のpH効力促進における繰り返しデータを慎重に比較することにより、これを達成した。発明者らは、初めて、インビトロでの性能をインビボでの性能と関連付け、pH低下に関連する広範囲にわたる消耗性疾患の治療又は予防に対する選択基準の適合及び境界(meets and bounds)を確立した。発明者らはさらに、本明細書中でさらに述べる方法に従い使用できる活性化合物を提供する。インビボでpH依存性グルタミン酸受容体アンタゴニストの有効性を決定したのは発明者らが最初であると思われる。
本発明のある態様において、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように、少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞において生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価することと(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50);(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように、少なくとも12回実験を繰り返すことにより、一時的局所性虚血の動物モデルにおいて化合物を試験し、梗塞体積における化合物の影響を測定することと;(iii)段階(i)に従い少なくとも5の効力促進を有し、段階(ii)に従い梗塞体積を少なくとも30%低下させる化合物を選択することにより、哺乳動物、特にヒトにおいて虚血性損傷を治療又は予防するのに有用な化合物を同定する方法を提供する。本発明によると、候補薬物は、ヒトでの使用に効果的な薬物であるためのインビトロ及びインビボ基準の両方に合致するか又はそれを超えなければならない。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、NMDA、AMPA及び/又はカイニン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。ある実施形態において、細胞はNMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現することができる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
本発明の別のより一般的な態様において、NMDA受容体アンタゴニストを活性化させる様式においてpHを低下させる疾患を治療するために化合物を選択する方法を提供し、この化合物は、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞において試験して、生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価する(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50)実験において求めた場合に、少なくとも5の効力促進を示し、(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより調べた場合、局所性虚血の動物モデルにおいて測定して、梗塞体積の少なくとも30%の低下を示す。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、NMDA、AMPA及び/又はカイニン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。ある実施形態において、細胞は、NMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現することができる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
ある特定の実施形態において、95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、NR1/NR2、NMDA受容体及び/又はNR1/NR2B NMDA受容体を発現する細胞において試験して、生理的pH対「疾患誘導性低pH」(例えば、生理的pHにでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50)において化合物の効力促進を評価する実験において調べた場合、少なくとも5の効力促進を示す化合物を選択する方法又はこのような化合物を提供する。別の特定の実施形態において、95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように、少なくとも12回実験を繰り返すことにより調べた場合に、局所性虚血の動物モデルにおいて測定して、梗塞体積の少なくとも30%の減少を示す化合物を選択する方法又はこのような化合物を提供する。別の特定の実施形態において、「疾患誘導性低pH」は発作などの虚血性疾患に伴う。
図1は、ヒトなどの哺乳動物の改良薬物療法を達成することができる、NMDA−受容体アンタゴニストの選択のための新規パラメーターを説明する。
ある実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従って選択した化合物は、選択的NR1/NR2A NMDA受容体及び/又はNR1/NR2B NMDA受容体アンタゴニストである。ある実施形態において、化合物はNMDA受容体チャネルブロッカーではない。別の実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択した化合物はNMDA受容体グルタミン酸部位アンタゴニストではない。別の実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択した化合物はNMDA受容体グリシン部位アンタゴニストではない。
さらなる実施形態において、例えば、化合物は、運動不全又は認知機能障害などの実質的な毒性のある副作用を示さない。さらに、又はあるいは、化合物は、少なくとも2以上の治療指数を有する。さらなる追加的又は代替的実施形態において、化合物は、何らかの他のグルタミン酸受容体よりも、NMDA受容体への結合に対して少なくとも10倍選択性が高い。ある実施形態において、卵母細胞を使用して効力促進を調べる。別の実施形態において、例えばマウスなどのげっ歯類などにおいて、中大脳動脈梗塞モデルを一時的局所性虚血の動物モデルとして使用する。
さらなる実施形態において、化合物は、段階(i)に従い少なくとも6、7、8、9、10、15又は20の効力促進を示し、段階(ii)に従い梗塞体積を少なくとも35%、40%、45%、50%、55%又は60%減少させる。本発明のある一定の実施形態において、効力促進及び梗塞体積実験に対して、平均つまり、全観察値の合計を観察数で割ったもの、を計算することができ、図1で示すように、化合物の平均値は、生理的pH対虚血性pH(つまり、(生理的pHでのIC50/虚血pHでのIC50))で少なくとも5の効力促進を示し、梗塞体積の少なくとも30%の減少を示し得る。
本発明のさらなる態様において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択した化合物は、
ならびに、医薬的に許容される、それらの、塩、エステル、鏡像異性体、鏡像異性混合物及び混合物であり得る。
別の実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択した化合物は
ならびに、医薬的に許容される、それらの、塩、エステル、鏡像異性体、鏡像異性混合物及び混合物であり得る。
別の実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択した化合物は
ならびに、医薬的に許容される、それらの、塩、エステル、鏡像異性体、鏡像異性混合物及び混合物であり得る。
さらなる実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択した化合物は
ならびに、医薬的に許容される、それらの、塩、エステル、鏡像異性体、鏡像異性混合物及び混合物であり得る。
さらなる実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択した化合物は、
ならびに、医薬的に許容される、それらの、塩、エステル、鏡像異性体、鏡像異性混合物及び混合物であり得る。
ある特定の実施形態において、上述の化合物は、NMDA受容体のNR2Bサブユニットに結合することができる。別の特定の実施形態において、上記化合物は、NMDA受容体のNR2Bサブユニットに対して選択的であり得る。ある実施形態において、例えば図1で示されるように、本明細書中で開示される化合物(S)98−5、(S)93−4、(S)93−8、(S)93−31及び(S)93−41は、NMDA受容体のNR2Bサブユニットに結合することができる。別の実施形態において、本明細書中で開示される化合物(S)98−5、(S)93−4、(S)93−8、(S)93−31及び(S)93−41は、NMDA受容体のNR2Bサブユニットに対して選択的であり得る。
本明細書中に記載のプロセス又は方法に従い選択される化合物を投与することにより、pH低下に伴う虚血又は興奮毒性カスケードの進行を抑制するための方法をさらに提供する。さらに、本明細書中に記載のプロセス又は方法に従い選択される化合物を投与することにより、pH低下に伴う梗塞体積を減少させるための方法と提供する。さらに、本明細書中に記載のプロセス又は方法に従い選択される化合物を投与することにより、pH低下に伴う細胞死を減少させるための方法を提供する。またさらに、本明細書中に記載のプロセス又は方法に従い選択される化合物を投与することにより、pH低下に伴う虚血事象に伴う行動の欠陥を軽減する方法を提供する。
本発明のさらなる態様において、本明細書中に記載の方法又はプロセスに従い選択される化合物を投与することにより、患者を治療するための方法を提供する。本明細書中に記載の方法に従い、低pHを誘発するあらゆる疾病、状態及び疾患を治療することができる。
ある実施形態において、本明細書中に記載の方法又はプロセスに従い選択される化合物を投与することにより、虚血性損傷もしくは低酸素症の患者を治療するための、又は虚血性損傷もしくは低酸素症に伴う神経毒性を予防もしくは治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態において、虚血性損傷は脳卒中であり得る。別の特定の実施形態において、虚血性損傷はくも膜下出血後の血管けいれんであり得る。他の実施形態において、虚血性損傷は、以下に限定されないが、次の疾患のうちの1つから選択され得る:外傷性脳損傷、バイパス術後の認知障害、頸動脈血管形成術後の認知障害;及び/又は低体温循環停止後の新生児虚血。
別の実施形態において、本明細書中に記載の方法又はプロセスに従い選択される化合物を投与することにより、神経因性疼痛又は関連疾患の患者を治療するための方法を提供する。ある一定の実施形態において、神経因性疼痛又は関連疾患は、以下に限定されないが、末梢性糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛、複合性局所疼痛症候群、末梢神経障害、化学療法誘発性神経因性疼痛、癌性神経因性疼痛、神経因性腰痛、HIV神経因性疼痛、三叉神経痛及び/又は中枢脳卒中後疼痛を含む群から選択され得る。
別の実施形態において、本明細書中に記載の方法又はプロセスに従い選択される化合物を投与することにより、脳腫瘍の患者を治療するための方法を提供する。さらなる実施形態において、本明細書中に記載の方法又はプロセスに従い選択される化合物を投与することにより、神経変性疾患の患者を治療するための方法を提供する。ある実施形態において、神経変性疾患は、パーキンソン病であり得る。別の実施形態において、神経変性疾患は、アルツハイマー病、ハンチントン病及び/又は筋萎縮性側索硬化症であり得る。
さらに、本明細書中に記載の方法又はプロセスに従って選択された化合物を予防的に使用して、本明細書中に記載のものなどの、疾患又は神経症状に対する予防又は保護を行うことができる。ある実施形態において、本明細書中に記載の方法及び化合物を用いて、遺伝性素因など、虚血事象の傾向のある患者を予防的に処置することができる。別の実施形態において、本明細書中に記載の方法及び化合物を用いて、血管けいれんを示す患者を予防的に処置することができる。さらなる実施形態において、本明細書中に記載の方法及び化合物を用いて心臓バイパス術を行った患者を予防的に処置することができる。
図1は、NMDA受容体アンタゴニストの選択のための、組織梗塞体積減少に対する、pH6.9対7.6でのインビトロの効力促進の比較の例示である。
黒記号により示される化合物に対する、一時的又は永久的局所性虚血事象後にC57B1/6マウスにおいて梗塞体積を測定した。本明細書中に記載のように、脳室内投与(ICV;0.5mMを1μL;黒四角)により、又は腹腔内注入(IP、黒丸;NP93−4、30mg/kg;NP93−5、10−30mg/kg、両用量に対する結果は同様であり、したがって組み合わせた;NP93−40、10−30mg/kg;NP93−8、30mg/kg;NP93−31、3mg/kg)により薬物を与えた。エラーバーはSEMである。薬物処置動物における梗塞体積を直接測定し、通常同日に虚血にするビヒクル注入対照マウスにおける梗塞体積のパーセントとして表した。白記号は、様々なげっ歯類又はウサギ虚血モデルにおいて文献で述べられているように、CNS1102(CN、アプチガネル又はセレスタット、Dawsonら、2001)、デキストロメトルファン(DM、Steinbergら、1995)、デキストロファン(DX;Steinbergら、1995)、レボメトルファン(LM;Steinbergら、1995)、(S)ケタミン(KT;Proescholdtら、2001)、メマンチン(MM;Culmseeら、2004)、イフェンプロジル(IF、Dawsonら、2001)、CP101,606(CP;Yangら、2003)、AP7(Swan及びMeldrum、1990)、セルフォテル(CGS19755、Dawsonら、2001)、(R)HA966(HA;Dawsonら2001)、レマセミド(RE、Dawsonら、2001)、ハロペリドール(O’Neillら、1998)、7−Cl−キヌレニン酸(CK、Woodら、1992)及びMK801の立体異性体(+MK又は−MK;Dravidら、準備中)の投与による梗塞体積の減少を示す。薬物によるニューロン密度の%低下を測定したケタミン及び7−Cl−キヌレニン酸を除く全化合物に対して、対照における梗塞体積に対する薬物における梗塞体積の比から、梗塞の%減少を計算した。文献(Mottら、1998)から、イフェンプロジル及びCP101,606に対するpH上昇を調べた。全ての他の化合物に対して、2つの実験で評価した(下記表3参照。)競合的アンタゴニストを除き、pH6.9対7.6でのNR1/NR2B含有NMDA受容体の阻害に対する効力促進を本明細書中に記載のように計算した。化合物の効力が酸性pHにおいて低い場合、効力促進を負の逆数として示す。灰色の陰影部分は、効果的な薬物性能に対する基準の特定されている境界を定義する領域を示す。境界内にある薬物は、灰色のブロック領域内に平均値(エラーバーではない。)を有するものである。試験した24種類の化合物のうち、19種類の化合物が本発明の領域の外側となり(灰色の陰影領域)、このことから、試験した化合物の75%を超えるものが有効なインビボ療法に対する特定標準に合致しないことが示される。
図2は、試験薬物を脳室内投与により与えた場合(ICV;黒四角)の、組織梗塞体積保護に対する、pH6.9対7.6での選択化合物93−97、93−43、93−5、93−41及び93−31のインビトロ効力促進の比較を示す。灰色の陰影領域は、薬物性能向上のための基準の特定された境界を定義する領域を示す。境界内にある薬物は、灰色のブロック領域内に平均値(エラーバーではない。)を有するものである。
図3は、腹腔内注入(IP、黒丸)により与えた場合の組織梗塞体積保護に対する、pH6.9対7.6での、5種類の選択化合物93−4、93−5、93−8、93−31、93−40のインビトロ効力促進の比較を示す。灰色の陰影領域は、薬物性能向上のための基準の特定された境界を定義する領域を示す。境界内にある薬物は、灰色のブロック領域内に平均値(エラーバーではない。)を有するものである。
図4は、選択化合物の、組織梗塞体積に対するpH6.9対7.6でのインビトロ効力促進の例示である。灰色の陰影領域は、薬物性能向上のための基準の特定された境界を定義する領域を示す。右のパネルはNR1/NR2Aに対する比較を示し、左のパネルはNR1/NR2Bに対する比較を示す。
図5は、1時間の馴化後2時間にわたり、コンピューターにより数えた光線の中断として定量した、ラットの自発運動における化合物93−31及び(+)MK−801の効果を説明する。自発運動指数は、試験中の光線中断の総数を1000で割ったものである。化合物93−31は、300mg/kg以下の用量でIP投与した場合、自発運動指数に有意な影響を与えず、(+)MK−801は、低用量で自発運動を誘発し、高用量で運動失調を誘発した。
図6は、神経因性疼痛の動物モデルにおいて、損傷を受けた足が実質的な異痛症を示したことを説明する。ビヒクル群の動物は、試験の全期間にわたり、顕著な機械的異痛症を示した。ビヒクルで処理した動物の損傷足及び正常足における平均値±SEM(n=10)von Frey閾値を示す。足間の差異は、全時間点で有意であった(Mann−Whitney検定)。
図7は、化合物93−31(i.p.で投与)が正常な手足に影響を与えなかったことを示す。ビヒクル、ガバペンチン又は、化合物93−31の30及び100mg/kg用量でi.p.で投与により処理した動物の正常足における平均値±SEM(n=10−12)von Frey閾値を示す。
図8は、化合物93−97(i.p.)が正常な手足に影響を与えなかったことを示す。NeurOP93−97は、正常足でのvon Frey閾値を変化させなかった。i.p.で投与して、ビヒクル、ガバペンチン又は、化合物93−97の30及び100mg/kg用量で処理した動物の正常足における平均値±SEM(n=10−12)von Frey閾値を示す。
図9は、ラットでの脊髄神経結紮(SNL)モデルにおいて、i.p.投与した化合物93−31(100mg/kg)が機械的異痛症を軽減したことを示す。化合物93−31(100mg/kg i.p.)での処理によって、その投与後30及び60分で無痛覚が観察された。実験を行ったいずれの時間点でも化合物93−31の30mg/kg及び93−37の30及び100mg/kgの鎮痛効果はなかった。この実験におけるビヒクル群の統計解析から、ベースラインと60、120及び240分の時間点との間で、von Frey閾値の有意差がなかったことが示された(Friedman両側ANOVA)。
図10は、i.p.投与した化合物93−31(100mg/kg)がSNLラットにおいて機械的異痛症を軽減したことを示す。化合物93−31試験化合物(100mg/kg)のi.p.投与により機械的異痛症が軽減した。i.p.で投与して、ビヒクル、ガバペンチン(参照化合物)又は化合物93−31の30及び100mg/kg用量で処理した損傷足における平均値±SEM(n=10−12)von Frey閾値を示す。事後解析(Dunn検定)により、30及び60分において化合物93−31(100mg/kg)とビヒクル群との間に有意なペアワイズ差が示された(p<0.01)。60、120及び240分でのガバペンチンの効果もまた有意であった(それぞれ、p<0.001、p<0.01及びp<0.01)。
図11は、げっ歯類脊髄神経結紮モデルでの痛覚閾値の倍の増加に対する、pH6.9対7.6でのインビトロ効力促進の比較の説明である。本明細書中に記載の各化合物に対して効力促進を調べた。化合物93−31の投与後、痛覚閾値を測定した。IF(イフェンプロジル、De Vryら、Eur J Pharmacol 491:137−148、2004)、K(ケタミン、Chaplanら、JPET 280:829−838 1997)、CP(CP101,606、Boyceら、Neuropharmacol 38:611−623、1999)、MK(MK801、Chaplanら、JPET280:829−838 1997)、D(デキストロファン、Chaplanら、JPET280:829−838 1997)、DM(デキストロメトルファン、Chaplanら、JPET280:829−838 1997)及びM(メマンチン、Chaplanら、JPET280:829−838 1997)に対する痛覚閾値は既に報告されている。
灰色の陰影領域は、薬物性能向上のための基準の特定された境界を定義する領域を示す。境界内にある薬物は、灰色のブロック領域内に平均値(エラーバーではない。)を有するものである。
(詳細な説明)
発明者らは、例えばヒトなどの哺乳動物の改良臨床性能のための、NMDA−受容体アンタゴニストの選択のための優れたパラメーターを確立した。虚血の動物モデル全体において薬物の性能についてインビトロで候補薬物のpH効力促進における繰り返しデータを慎重に比較することにより、これを達成した。発明者らは、初めて、インビトロでの性能をインビボでの性能と関連付け、pH低下に関連する広範囲にわたる消耗性疾患の治療又は予防に対する選択基準の適合及び境界(meets and bounds)を確立した。発明者らはさらに、本明細書中でさらに述べるプロセスに従い使用できる活性化合物を提供する。インビボでpH依存性グルタミン酸受容体アンタゴニストの有効性を決定したのは発明者らが最初であると思われる。
本発明のある態様において、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞において生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価することと(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50);(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより、一時的局所性虚血の動物モデルにおいて化合物を試験し、梗塞体積における化合物の影響を測定することと;(iii)段階(i)に従い少なくとも5の効力促進を有し、段階(ii)に従い梗塞体積を少なくとも30%低下させる化合物を選択することにより、哺乳動物、特にヒトにおいて虚血性損傷を治療又は予防するのに有用な化合物を同定するプロセスを提供する。本発明によると、候補薬物は、ヒトでの使用に効果的な薬物であるためのインビトロ及びインビボ基準の両方に合致又はそれを超えなければならない。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、NMDA、AMPA及び/又はカイニン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。ある実施形態において、細胞はNMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現することができる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
本発明の別のより一般的な態様において、NMDA受容体アンタゴニストを活性化させる様式においてpHを低下させる疾患を治療するために化合物を選択するプロセスを提供するが、この化合物は、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞において試験して、生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価する(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50)実験において求めた場合に、少なくとも5の効力促進を示し、(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより調べた場合、局所性虚血の動物モデルにおいて測定して、梗塞体積を少なくとも30%低下させる。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、NMDA、AMPA及び/又はカイニン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。ある実施形態において、細胞はNMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現することができる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
本発明の別のより一般的な態様において、NMDA受容体アンタゴニストを活性化させる様式においてpHを低下させる疾患を治療するための化合物を選択するプロセスを提供するが、この化合物は、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞において生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価する(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50)実験において求めた場合に、少なくとも5の効力促進を示し、(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより、局所性虚血の動物モデルにおいて測定した場合に梗塞体積を少なくとも30%低下させる。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、NMDA、AMPA及び/又はカイニン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。ある実施形態において、細胞はNMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現することができる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
ある特定の実施形態において、95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、NR1/NR2A NMDA受容体及び/又はNR1/NR2B NMDA受容体を発現する細胞で試験して、生理的pH対「疾患誘導性低pH」(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50)において化合物の効力促進を評価する実験において調べた場合、少なくとも5の効力促進を示す化合物を選択するを選択する方法及びこのような化合物を提供する。別の特定の実施形態において、95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより調べた場合に、局所性虚血の動物モデルにおいて測定した梗塞体積を少なくとも30%減少させる化合物を選択する方法又はこのような化合物を提供する。別の特定の実施形態において、「疾患誘導性低pH」は、脳卒中などの虚血性疾患に伴う。
本明細書中に記載のプロセス又は方法に従い選択される化合物を投与することにより、pH低下に伴う虚血又は興奮毒性カスケードの進行を抑えるための方法をさらに提供する。さらに、本明細書中に記載のプロセス又は方法に従い選択される化合物を投与することにより、pH低下に伴う梗塞体積を減少させるための方法を提供する。さらに、本明細書中に記載のプロセス又は方法に従い選択される化合物を投与することにより、pH低下に伴う細胞死を減少させるための方法を提供する。またさらに、本明細書中に記載のプロセス又は方法に従い選択される化合物を投与することにより、pH低下に伴う虚血事象に伴う行動の欠陥を軽減する方法を提供する。他の実施形態において、バキュロゼーション(vaculozation)など、例えば非行動性副作用もまた軽減することができる。
I.効力促進の評価
「卵母細胞」という用語は、卵形成の最終産物である成熟した動物の卵子及び卵原細胞である前駆形態(それぞれ一次卵母細胞及び二次卵母細胞)も指す。
「トランスフェクション」とは、宿主細胞へのDNAの導入を指す。細胞は天然にはDNAを取り込まない。したがって、様々な技術的「トリック」を利用して、遺伝子導入を促す。トランスフェクションの多くの方法が当業者にとって公知であり、例えば、CaPO4、エレクトロポレーション及び/又は、細胞への直接的なDNA又はRNAの直接マイクロインジェクションがある(J.Sambrook,E.Fritsch,T.Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Laboratory Press,1989)。宿主細胞の形質転換は、トランスフェクションが成功したことを意味する。
細胞におけるグルタミン酸受容体の発現
本発明のある態様において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。ある実施形態において、細胞はグルタミン酸受容体を内在的に発現することができる。ある実施形態において、細胞はNMDA受容体を発現することができる。別の実施形態において、細胞はAMPA受容体を発現することができる。さらなる実施形態において、細胞はカイニン酸受容体を発現することができる。またさらなる実施形態のいて、細胞はオーファングルタミン酸受容体を発現することができる。別の実施形態において、細胞はNMDA受容体を内在的に発現することができる。NMDA受容体を内在的に発現することができる細胞としては、以下に限定されないが、幹細胞、P19細胞、神経上皮細胞、神経内皮細胞、ドーパミン作動性黒質ニューロン、星状細胞、巨細胞系神経内分泌細胞、視索上核ニューロン、小脳ニューロン、脳幹細胞、間脳ニューロン、中脳ニューロン、後脳ニューロン、脊髄運動ニューロン、脊髄間ニューロン、後角ニューロン、皮質ニューロン、小脳顆粒細胞、海馬ニューロン、隔膜ニューロン、尾状細胞、被殻細胞、線条体細胞、嗅球細胞、視床細胞、CA1錐体細胞、基底核細胞、ラット視覚野のIV層ニューロン、体性感覚皮質ニューロン及び膵臓細胞が挙げられる。
別の実施形態において、細胞は一般に、グルタミン酸受容体を発現させるために修飾され得る。ある特定の実施形態において、卵母細胞は一般に、グルタミン酸受容体を発現させるために修飾され得る。当業者により知られているように、以下に限定されないが、ゼノパス(以下に限定されないが、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)、ニシツメガエル(Xenopus tropicalis)、ゼノパス・ミューラー(Xenopus muelleri)、ゼノパス・ウィッティ(Xenopus wittei)、ゼノパス・ギリ(Xenopus gilli)及びゼノパス・ボレアリス(Xenopus borealis)が挙げられる。)卵母細胞などのカエル卵母細胞などの何らかの適切な卵母細胞を使用することができる。ある実施形態において、当業者にとって公知の何らかの技術に従い、動物の卵巣から卵母細胞を単離することができる。
他の実施形態において、初代細胞株を含む何らかの適切な細胞タイプの遺伝子改変を行い、グルタミン酸受容体を発現させることができ、細胞としては、以下に限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK腎臓細胞、細菌細胞、E.コリ細胞、酵母細胞、ニューロン細胞、心臓細胞、肺細胞、胃細胞、脾臓細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、腸細胞、皮膚細胞、有毛細胞、視床下部細胞、下垂体細胞、上皮細胞、繊維芽細胞、神経細胞、ケラチノサイト、造血細胞、メラノサイト、軟骨細胞、リンパ球(B及びT)、マクロファージ、単球、単核細胞、心筋細胞、その他の筋肉細胞、卵丘細胞、表皮細胞、内皮細胞、ランゲルハンス島細胞、血液細胞、血液前駆細胞、骨細胞、骨前駆細胞、ニューロン幹細胞、始原幹細胞、肝細胞、ケラチノサイト、臍静脈内皮細胞、大動脈内皮細胞、微小血管内皮細胞、繊維芽細胞、肝臓星細胞、大動脈平滑筋細胞、心筋細胞、ニューロン、クッパー細胞、平滑筋細胞、シュワン細胞及び上皮細胞、赤血球、血小板、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、脂肪細胞、軟骨細胞、膵島細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、耳下腺細胞、腫瘍細胞、グリア細胞、星状細胞、赤血球細胞、白血球細胞、マクロファージ、上皮細胞、体細胞、下垂体細胞、副腎細胞、有毛細胞、膀胱細胞、腎臓細胞、網膜細胞、桿体細胞、錐体細胞、心臓細胞、ペースメーカー細胞、脾臓細胞、抗原提示細胞、記憶細胞、T細胞、B細胞、形質細胞、筋肉細胞、卵巣細胞、子宮細胞、前立腺細胞、膣上皮細胞、精子細胞、精巣細胞、生殖細胞、卵細胞、ライディッヒ細胞、傍尿細管細胞、セルトリ細胞、ルテイン細胞、頸部細胞、子宮内膜細胞、乳腺細胞、濾胞細胞、粘液細胞、繊毛細胞、非角化上皮細胞、角化上皮細胞、肺細胞、杯細胞、円柱上皮細胞、扁平上皮細胞、胚性幹細胞、骨細胞、骨芽細胞及び破骨細胞が挙げられる。
ある実施形態において、細胞に対して遺伝子改変を行い、選択されたAMPA受容体サブユニットを発現させることができる。AMPA受容体サブユニットは、GluR1、GluR2、GluR3もしくはGluR4サブユニット又はこれらの何らかの組み合わせであり得る。AMPA受容体は、一般に当業者にとって公知である。別の実施形態において、細胞に対して遺伝子改変を行い、選択したカイニン酸受容体サブユニットを発現させることができる。カイニン酸受容体サブユニットは、GluR5、GluR6、GluR7、KA1もしくはKA2サブユニット又はこれらの何らかの組み合わせであり得る。カイニン酸受容体は一般に当業者にとって公知である。さらなる実施形態において、細胞に対して遺伝子改変を行い、選択したオーファングルタミン酸受容体サブユニットを発現させることができる。オーファングルタミン酸受容体サブユニットはデルタ−1もしくはデルタ−2サブユニット及びこれらの組み合わせであり得、このような受容体は当業者にとって公知である。
別の実施形態において、細胞に対して遺伝子改変を行い、選択したNMDA受容体サブユニットを発現させることができる。NMDA受容体は、NR1、NR2(A、B、C及びD)及びNR3(A及びB)サブユニットから構成され、これらはネイティブNMDA受容体の機能特性を決定する。NMDA受容体は、NR2及び/又はNR3サブユニットとNR1とから構成されるヘテロマータンパク質である。何らかの種由来のNMDA受容体サブユニットの何れかをコードするDNAを使用して、細胞の遺伝子改変を行うことができる。表AはNMDA受容体サブユニットに対するGenEMBL受入番号を与える。
例えば、cDNA鋳型からcRNAを合成し、次いで細胞に注入することができる。あるいは、細胞に挿入する前に、受容体サブユニットをコードするcDNAをコンストラクト又はベクターに挿入することができる。DNAコンストラクト又はベクターを宿主細胞に入れるために使用できる技術としては、リン酸カルシウム/DNA共沈殿、核へのDNAのマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、インタクトの細胞との細菌原形質融合、トランスフェクション又は当業者にとって公知の何らかのその他の技術が挙げられる。DNAは線状又は環状、緩んでいるか又はスーパーコイル状DNAであり得る。哺乳動物細胞に対してトランスフェクトするための様々な技術に関しては、例えば、Keownら、Methods in Enzymology Vol.185,pp.527−537(1990)を参照のこと。
当技術分野で公知の方法に従い、コンストラクト又はベクターを調製することができる。例えばE.コリにより認識可能な複製基点など、原核生物複製系を含む細菌ベクターを用いてコンストラクトを調製することができ、各段階でコンストラクトをクローニングし分析することができる。選択可能マーカーも利用できる。コンストラクトを含有するベクターが完成したら、細菌配列の欠失、線状化、相同配列における短い欠失の導入などにより、これをさらに操作することができる。最終操作後、コンストラクトを細胞に導入することができる。
本発明はさらに、上述のような1以上の配列を含有する組み換えコンストラクトを含む。コンストラクトは、順方向又は逆方向で本発明の配列を挿入することができる、プラスミド又はウイルスベクターなどのベクターの形であり得る。コンストラクトはまた、例えば配列に操作可能に連結されたプロモーターなどの、制御配列を含み得る。非常に多くの適切なベクター及びプロモーターが当業者にとって公知であり、市販されている。例として次のベクターを挙げる:pBs、pQE−9(Qiagen)、ファージスクリプト、PsiX174、pBlueScript SK、pBsKS、pBSSK、pGEM、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene);pTrc99A、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia)。真核:pCiNeo、pWLneo、pSv2cat、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPv、pMSG、pSVL(Pharmacia)。また、宿主中で複製可能であり生存可能である限り、何らかの他のプラスミド及びベクターを使用することもできる。本発明に従い、当技術分野で公知のベクター及び市販品(及びこれらの変異型及び誘導体)を使用して、本発明の方法で使用するために1以上の組み換え部位を含むように操作することができる。例えば、Vector Laboratories Inc.、Invitrogen、Promega、Novagen、NEB、Clontech、Boehringer Mannheim、Pharmacia、EpiCenter、OriGenes Technologies Inc.、Stratagene、PerkinElmer、Pharmingen及びResearch Geneticsからこのようなベクターを得ることができる。関心のあるその他のベクターとしては、真核発現ベクター、例えば、pFastBac、pFastBacHT、pFastBacDUAL、pSFV及びpTet−Splice(Invitrogen)、pEUK−C1、pPUR、pMAM、pMAMneo、pBI101、pBI121、pDR2、pCMVEBNA及びpYACneo(Clontech)、pSVK3、pSVL、pMSG、pCH110及びpKK232−8(Pharmacia,Inc.)、p3’SS、pXT1、pSG5、pPbac、pMbac、pMClneo及びpOG44(Stratagene,Inc.)及びpYES2、pAC360、pBlueBacHis A、B及びC、pVL1392、pBlueBacIII、pCDM8、pcDNA1、pZeoSV、pcDNA3 pREP4、pCEP4及びpEBVHis(Invitrogen,Corp.)及びこれらの変異型又は誘導体が挙げられる。
本発明での使用に適切なさらなるベクターとしては、pUC18、pUC19、pBlueScript、pSPORT、コスミド、ファージミド、YACs(酵母人工染色体)、BACs(細菌人工染色体)、P1(E.コリファージ)、pQE70、pQE60、pQE9(quagan)、pBsベクター、PhargeScriptベクター、BlueScriptベクター、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46A(Stratagene)、pcDNA3(Invitrogen)、pGEX、pTrsfus、pTrc99A、pET−5、pET−9、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia)、pSPORT1、pSPORT2、pCMVSPORT2.0及びpSV−SPORT1(Invitrogen)及びこれらの変異型又は誘導体が挙げられる。レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターも使用できる(例えば、WO03/059923;Tiscorniaら、PNAS 100:1844−1848(2003)を参照のこと。)。関心のあるさらなるベクターとしては、pTrxFus、pThioHis、pLEX、pTrcHis、pTrcffis2、pRSET、pBlueBacHis2、pcDNA3.1/His、pcDNA3.1(−)/Myc−His、pSecTag、pEBVHis、pPIC9K、pPIC3.5K、pAO815、pPICZ、pPICZA、pPICZB、pPICZC、pGAPZA、pGAPZB、pGAPZC、pBlueBac4.5、pBlueBacHis2、pMelBac、pSinRep5、pSinHis、pIND、pIND(SP1)、pVgRXR、pcDNA2.1、pYES2、pZErO1.1、pZErO−2.1、pCR−Blunt、pSE280、pSE380、pSE420、pVL1392、pVL1393、pCDM8、pcDNA1.1、pcDNA1.1/Amp、pcDNA3.1、pcDNA3.1/Zeo、pSe、SV2、pRc/CMV2、pRc/RSV、pREP4、pREP7、pREP8、pREP9、pREP10、pCEP4、pEBVHis、pCR3.1、pCR2.1、pCR3.1−Uni及びpCRBac(Invitrogenより);λExCell、λgt11、pTrc99A、pKK223−3、pGEX−1λT、pGEX−2T、pGEX−2TK、pGEX−4T−1、pGEX−4T−2、pGEX−4T−3、pGEX−3X、pGEX−5X−1、pGEX−5X−2、pGEX−5X−3、pEZZ18、pRIT2T、pMC1871、pSvK3、pSVL、pMSG、pCH110、pKK232−8、pSL1180、pNEO及びpUC4K(Pharmaciaより。);pSCREEN−1b(+)、pT7Blue(R)、pT7Blue−2、pCITE−4abc(+)、pOCUS−2、pTAg、pET−32LIC、pET−30LIC、pBAC−2Cp LIC、pBACgus−2cpLIC、pT7Blue−2 LIC、pT7Blue−2、λSCREEN−1、λBlueSTAR、pET−3abcd、pET−7abc、pET9abcd、pET11abcd、pET12abc、pET−14b、pET−15b、pET−16b、pET−17b−pET−17xb、pET−19b、pET−20b(+)、pET−21abcd(+)、pET−22b(+)、pET−23Abcd(+)、pET−24abcd(+)、pET−25b(+)、pET−26b(+)、pET−27b(+)、pET−28abc(+)、pET−29abc(+)、pET−30abc(+)、pET−31b(+)、pET−32abc(+)、pET−33B(+)、pBAC−1、pBACgus−1、pBAC4x−1、pBACgus4x−1、pBAC−3cp、pBACgus−2cp、pBACsulf−1、plg、Signal plg、pYX、Selecta Vecta−Neo、Selecta Vecta−Hyg及びSelecta Vecta−Gpt(Novagenより。);pLexA、pB42AD、pGBT9、pAS2−1、pGAD424、pACT2、pGAD GL、pGAD GH、pGAD10、pGilda、pEZM3、pEGFP、pEGFP−1、pEGFP−N、pEGFP−C、pEBFP、pGFPuv、pGFP、p6xHis−GFP、pSEAP2−Basic、pSEAP2−Contral、pSEAP2−Promoter、pSEAP2−Enhancer、pβgal−Basic、pβgal−Control、pβgal−Promoter、pβgal−Enhancer、pCMV、pTet−Off、pTet−On、pTK−Hyg、pRetro−Off、pRetro−On、pIRSE1neo、pIRSE1hyg、pLXSN、pLNCX、pLAPSN、pMAMneo、pMAMneo−CAT、pMAMneo−LUC、pPUR、pSv2neo、pYEX4T−1/2/3、pYEX−S1、pBacPAK−His、pBacPAK8/9、pAcUW31、BacPAK6、pTriplEx、λgt10、λgt11、pWE15及びλTriplEx(Clontechより。);λZAPII、pBK−CMV、pBK−RSV、pBlueScriptII KS+/−、pBlueScriptII SK+/−、pAD−GAL4、pBD−GAL4 Cam、pSurfscript、λFIX II、λDASH、λEMBL3、λEMBL4、SuperCos、pCR−Scrigt Amp、pCR−Script Cam、pCR−Script Direct、pBs+/−、pBC KS+/−、pBC SK+/−、PhargeScript、pCAL−n−EK、pCAL−n、pCAL−c、pCAL−kc、pET−3abcd、pET−IIabcd、pSPUTK、pESP−1、pCMVLacI、pOPRSVI/MCS、pOPI3 CAT、pXT1、pSG5、pPbac、pMbac、pMC1neo、pMC1neo PolyA、pOG44、pOG45、pFRTβGAL、pNEOβGAL、pRS403、pRS404、pRS405、pRS406、pRS413、pRS414、pRS415及びpRS416(Stratageneより。)が挙げられる。
さらなるベクターとしては、例えば、pPC86、pDBLeu、pDETrp、pPC97、p2.5、pGAD1−3、pGAD10、pACt、pACT2、pGADGL、pGADGH、pAS2−1、pGAD424、pGBT8、pGBT9、pGAD−GAL4、pLexA、pBD−GAL4、pHISi、pHISi−1、placZi、pB42AD、pDG202、pJK202、pJG4−5、pNLexA、pYESTrp及びこれらの変異型又は誘導体が挙げられる。
NMDA受容体サブユニットを含有する細胞の選択を可能にするために、選択可能マーカーもベクターに挿入することができる。適切な選択可能マーカーとしては、以下に限定されないが、ある一定の培地基質において増殖可能にさせる遺伝子、例えばtk遺伝子(チミジンキナーゼ)又は、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン)において増殖可能にさせるhprt遺伝子(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ);MAX培地(ミコフェノール酸、アデニン及びキサンチン)での増殖を可能にさせる細菌性gpt遺伝子(グアニン/キサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ)が挙げられる。例えば、Song K−Y.ら、Proc.Natl Acad.Sci USA 84:6820−6824(1987);Sambrook,J.ら、Molecular Cloning−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、Chapter16を参照のこと。選択可能マーカーのその他の例としては、抗生物質などの化合物に対して耐性を与える遺伝子、選択された基質での増殖能力を与える遺伝子、化学発光又は蛍光などの検出可能シグナルを生成するタンパク質(緑色蛍光タンパク質、強化された緑色蛍光タンパク質(eGFP)など)をコードする遺伝子が挙げられる。多岐にわたるこのようなマーカーが公知であり、利用可能であり、それには例えば、ネオマイシン耐性遺伝子(neo)(Southern,P.及びP.Berg、J.Mol.Appl.Genet.1:327−341(1982));及びハイグロマイシン耐性遺伝子(hyg)(Nucleic Acids Research 11:6895−6911(1983)及びTe Riele,H.ら、Nature 348:649−651(1990))などの抗生物質耐性遺伝子が含まれる。その他の選択可能マーカー遺伝子としては、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、βガラクトシダーゼ(LacZ)、βグルクロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(CFP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ、オクトピンシンターゼ(OCS)及びこれらの誘導体が挙げられる。アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メトトレキセート、ホスフィノトリシン、プロマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性を与える複数の選択可能マーカーが利用可能である。
抗生物質耐性遺伝子の組み込み及び陰性選択因子に対する方法は、当業者にとって周知である(例えば、WO99/15650;米国特許第6,080,576号;米国特許第6,136,566号;Niwaら、J.Biochem.113:343−349(1993);及びYoshidaら、Transgenic Research、4:277−287(1995)を参照のこと。)。
本発明において有用なさらなる選択可能マーカー遺伝子は、例えば、米国特許第6,319,669号;同第6,316,181号;同第6,303,373号;同第6,291,177号;同第6,284,519号;同第6,284,496号;同第6,280,934号;同第6,274,354号;同第6,270,958号;同第6,268,201号;同第6,265,548号;同第6,261,760号;同第6,255,558号;同第6,255,071号;同第6,251,677号;同第6,251,602号;同第6,251,582号;同第6,251,384号;同第6,248,558号;同第6,248,550号;同第6,248,543号;同第6,232,107号;同第6,228,639号;同第6,225,082号;同第6,221,612号;同第6,218,185号;同第6,214,567号;同第6,214,563号;同第6,210,922号;同第6,210,910号;同第6,203,986号;同第6,197,928号;同第6,180,343号;同第6,172,188号;同第6,153,409号;同第6,150,176号;同第6,146,826号;同第6,140,132号;同第6,136,539号;同第6,136,538号;同第6,133,429号;同第6,130,313号;同第6,124,128号;同第6,110,711号;同第6,096,865号;同第6,096,717号;同第6,093,808号;同第6,090,919号;同第6,083,690号;同第6,077,707号;同第6,066,476号;同第6,060,247号;同第6,054,321号;同第6,037,133号;同第6,027,881号;同第6,025,192号;同第6,020,192号;同第6,013,447号;同第6,001,557号;同第5,994,077号;同第5,994,071号;同第5,993,778号;同第5,989,808号;同第5,985,577号;同第5,968,773号;同第5,9同第68,738号;同第5,958,713号;同第5,952,236号;同第5,948,889号;同第5,948,681号;同第5,942,387号;同第5,932,435号;同第5,922,576号;同第5,919,445号;及び同第5,914,233号に記載されている。
機能分析又は分子分析により、グルタミン酸受容体を発現するようにうまく形質転換された細胞を確認することができる。ある実施形態において、機能的NMDA受容体の有無に対して、電気生理学的記録により、NMDA受容体サブユニットcRNAが挿入されている卵母細胞などの細胞を試験することができる。別の実施形態において、次に、NMDA受容体サブユニット遺伝子及び選択可能マーカー遺伝子をコードするDNAが挿入されている細胞を適切に選択した培地中で増殖させ、適切な組み込みを与える細胞を同定することができる。次に、制限分析、電気泳動、サザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応又は当技術分野で公知の別の技術により、所望の表現型を示すこれらの細胞をさらに分析することができる。標的遺伝子部位に適切な挿入を示す断片を同定することにより、標的遺伝子を不活性化するか、又は修飾するために相同組み換えが起こった細胞を同定することができる。
効力促進実験
本発明のさらなる態様において、本明細書中の方法及びプロセスに従い述べられている化合物などの化合物の効力促進を調べることができる。
本発明のある態様において、95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞で生理的pH対「疾患誘導性低pH」(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50)において化合物の効力促進を評価することによって、哺乳動物、特にヒトでの虚血性損傷を治療するのに有用な化合物を同定するためのプロセスを提供する。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。特定の実施形態において、NMDA受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、細胞は、NMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現できる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
本発明の別のより一般的な態様において、NMDA受容体アンタゴニストを活性化させる様式においてpHを低下させる疾患を治療するために化合物を選択するたプロセスを提供するが、この化合物は、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞において試験して、生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価する実験(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50)において求めた場合、少なくとも5の効力促進を示す。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。特定の実施形態において、NMDA受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、細胞は、NMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現することができる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
ある実施形態において、95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことによって、NMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現する細胞において生理的pH対「疾患誘導性低pH」(例えば、生理的pHでのIC50/「疾患誘導性低pH」でのIC50)での化合物の効果を試験することにより、化合物の効力促進を調べることができる。ある特定の実施形態において、化合物を選択する方法を提供するか、又は、95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、NMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現する細胞において試験して、生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価する実験において求めた場合に、少なくとも5の効力促進を示す化合物を選択する。ある実施形態において、効力促進実験は、95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回行う。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
本発明のさらなる実施形態において、NMDA受容体は、NR2A、NR2B、NR2C及び/又はNKZDなどの少なくとも1個のNR2サブユニットと組合されたNR1サブユニットの何らかの組み合わせを含有し得る。例えば、NMDA受容体は、以下に限定されないが、次のサブユニットの何れかを含有し得る:NR1/NR2A、NR1/NR2B、NR1/NR2C、NR1/NR2D、NR1/NR2A/NR2B、NR1/NR2A/NR2C、NR1/NR2A/NR2D、NR1/NR2B/NR2C、NR1/NR2B/NR2D、NR1/NR2C/NR2D、NR1/NR2A/NR3A、NR1/NR2B/NR3A、NR1/NR2C/NR3A、NR1/NR2D/NR3A、NR1/NR2A/NR3B、NR1/NR2B/NR3B、NR1/NR2C/NR3B、NR1/NR2D/NR3B。代替的な実施形態において、本発明のNMDA受容体は、NR1サブユニット及び少なくとも1個のNR3サブユニットを含有し得る。例えば、NMDA受容体は、以下に限定されないが、次のものの何れかを含有し得る:NR1/NR3A、NR1/NR3B及び/又はNR1/NR3A/NR3B。
「疾患誘導性低pH」は、本明細書中で言及する何らかの疾病又は疾患に伴うpHの低下として定義される。「疾患誘導性低pH」は、約6.4から約7.2の間、一般に約6.9、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0又は7.1であり得る。生理的脳−組織pHは、約7.2から約7.6の間、一般に約7.4、7.3又は7.5である。ある実施形態において、「疾患誘導性低pH」は、脳卒中などの虚血性疾病に伴い得る。
「効力促進」実験により、pH7.6などの生理的pH及びpH6.9などの虚血性pHでの、最大半量活性、増強作用又はその受容体もしくは標的の阻害(EC50又はIC50値)を引き起こす化合物濃度の比を求める。当技術分野で公知の、化合物に対するEC50又はIC50値を求めるための何らかの方法を使用することができる。比としてIC50値を表し、IC50での平均シフトを求めるために一緒に平均を出すことができる。
ある実施形態において、2電極電圧クランプ記録を用いて、化合物に対するIC50値を求めることができる。電圧電極が含有する塩化カリウム濃度が電流電極よりも低くなるようにガラス微小電極に塩化カリウムを満たすことができる。細胞をチャンバーに置き、生理溶液を用いてかん流することができる。pH6.9などの虚血性pH又はpH7.6などの生理的pHの何れかに外部pHを調整することができる。次に、グルタミン酸及びグリシンの最大効果濃度を適用し、次いでグルタミン酸/グリシン+試験化合物の様々な濃度を連続的に適用することにより、用量反応曲線を得ることができる。最初のグルタミン酸応答のパーセンテージとして、適用したアンタゴニストによる阻害のレベルを表すことができる。細胞にわたり、例えば1匹のカエルからの卵母細胞にわたって、これらの値の平均を出すことができる。アンタゴニストの各濃度での平均パーセンテージ反応をロジスティック方程式:(100−min)/(1+([conc]/IC50)nH)+min(式中、minは、飽和アンタゴニストにおける残留パーセント反応であり、IC50は、達成可能な阻害の半分を引き起こすアンタゴニストの濃度であり、nHは、阻害曲線の勾配の大きさを表す傾斜因子である。)によりフィットさせることができる。Minは、0以上であるとみなすことができる。例えば、既知のチャネルブロッカーを用いた実験の場合、minを0に設定することができる。次に、生理的pH及び虚血性pHでのIC50値を比として表すことができ、IC50での平均シフトを求めるために一緒に平均を出すことができる。さらなる実施形態において、生理的pH対「疾患誘導性低pH」(すなわち、(生理的pHでのIC50)/(「疾患誘導性低pH」でのIC50))において、化合物は、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22又は23を超える効力促進を示すことができる。
新しい実験の追加により95%信頼区間が15%を超えて変化しなくなるまで効力促進実験を繰り返すことができる。別の実施形態において、新しい実験の追加により95%信頼区間が約25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%又は2%を超えて変化しなくなるまで効力促進実験を繰り返すことができる。さらなる実施形態において、新しい実験の追加により96%、97%、98%又は99%信頼区間が約25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%又は2%を超えて変化しなくなるまで効力促進実験を繰り返すことができる。
II.インビボアッセイ
一時的局所性虚血のインビボモデル
本発明のある態様において、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞において生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価することと(例えば、生理的pHでのIC50/「疾患誘導性低pH」でのIC50);(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより、一時的局所性虚血の動物モデルにおいて化合物を試験し、梗塞体積における化合物の影響を測定することと;(iii)段階(i)に従い少なくとも5の効力促進を有し、段階(ii)に従い梗塞体積を少なくとも30%低下させる化合物を選択することにより、哺乳動物、特にヒトでの虚血性損傷を治療するのに有用な化合物を同定するプロセスを提供する。本発明によると、候補薬物は、ヒトでの使用に効果的な薬物であるためのインビトロ及びインビボ基準の両方に合致又はそれを超えなければならない。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、NMDA、AMPA及び/又はカイニン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。ある実施形態において、細胞はNMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現することができる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
本発明の別のより一般的な態様において、NMDA受容体アンタゴニストを活性化させる様式においてpHを低下させる疾患を治療するために化合物を選択するプロセスを提供するが、この化合物は、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞において試験して、生理的pH対疾患誘導性低pHで化合物の効力促進を評価する実験(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50)において求めた場合に、少なくとも5の効力促進を示し、(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより調べた場合、局所性虚血の動物モデルにおいて化合物を試験し、梗塞体積における化合物の影響を測定して、梗塞体積を少なくとも30%低下させる。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、NMDA、AMPA及び/又はカイニン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。ある実施形態において、細胞はNMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現することができる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
特定の実施形態において、95%信頼区間が新しい実験の追加により10%を超えて変化しないように、少なくとも15回実験を繰り返すことにより調べた場合に、局所性虚血の動物モデルにおいて測定して、梗塞体積を少なくとも30%減少させる化合物を選択する方法を提供するか、又はこのような化合物を選択する。別の特定の実施形態において、「疾患誘導性低pH」は、脳卒中などの虚血性疾患に伴い得る。別の実施形態において、例えばマウスなどのげっ歯類などの中大脳動脈梗塞モデルを一時的局所性虚血の動物モデルとして使用し得る。
局所性虚血脳卒中は、その領域への血液供給の遮断により引き起こされる脳への損傷であり得る。局所性虚血脳卒中は通常、補助的動脈又は細動脈とは対照的に、何らかの1以上の「主要な大脳動脈」(例えば、中大脳動脈、前大脳動脈、後大脳動脈、内頸動脈、椎骨動脈又は脳底動脈)の閉塞により起こる。動脈閉塞は、1個の塞栓又は血栓であり得る。したがって、本明細書中で定義するような局所性虚血脳卒中は、複数の凝血塊の粒が補助的な動脈又は細動脈を塞ぐ脳塞栓の脳卒中モデルとは区別される(Bowesら、Neurology45:815−819(1995)により記載されているように。)。
以下に限定されないが、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ及びスナネズミを含む何らかの哺乳動物において局所性虚血を誘発することができる(Renolleau S,Stroke,1998年7月;29(7):1454−60;Gotti,B.らBrain Res、1990、522、290−307も参照のこと。)。例えば、脳血液供給がわずか2本の総頸動脈により調節されているので、虚血脳卒中に対する研究に対する実験モデルとしてスナネズミが広く使用されてきた。スナネズミは不完全な大脳動脈輪を有するため、この珍しい特性が生じる(Chandlerら、J.Pharmacol.Methods 14:137−146、1985;Finkelsteinら、Restor.Neurol.Neurosci.1:387−394、1990;Levine及びSohn、Arch.Pathol.87:315−317、1969;Kahn、Neurology22:510−515、1972)。
動脈閉塞の前又は後に、動物に試験化合物を投与することができる。ある実施形態において、試験化合物を腹腔内投与することができる。ある実施形態において、試験化合物を脳室内投与することができる。動脈閉塞の前に、例えば、虚血事象の約10、20、30、40、50又は60分前に、試験化合物を投与することができる。あるいは、動脈閉塞後、例えば虚血事象後約10、20、30、40、50、60、90もしくは120分、4、6、8もしくは10時間又は約1、2、3、4、5、6、7もしくは8日後、つまり再かん流後に、試験化合物を投与することができる。
中大脳動脈(MCA)が実験的に閉塞されている動物モデル(中大脳動脈閉塞(MCAO)モデル)において、虚血領域で化合物が細胞を保護できるということを実証するために試験を行うことができる。この動物モデルは、ヒト対象で起こり得るように、インビボ虚血事象を刺激することが当技術分野で広く知られている。MCAの実験的閉塞により、大脳基底核及び前頭葉、頭頂葉及び側頭葉皮質領域を通常含む、広い片側性虚血領域が生じる(Menziesら、Neurosurgery 31、100−106(1992))。虚血性損傷は、MCAによりかん流される部位においてより小さなコアを有して始まり、時間とともに大きくなる。コア梗塞周囲のこの周縁部領域は、閉塞中に側副循環によりかん流され続けている組織へと外側に広がる、コアから損傷が広がる結果により生じると思われる。脳スライスを動物から得た場合、虚血事象のコアを取り巻く周縁部に対する治療薬の効果を調べることができる。MCAは、前頭葉、頭頂葉及び側頭葉ならびに大脳基底核及び内包の皮質表面に血液を供給する。虚血の影響が最大である領域周囲から、脳のスライスを採取することができる。以下に限定されないが、マウス、ラット、ウサギ及びスナネズミを含む何らかの哺乳動物において、MCAOを誘発することができる(Renolleua,S.、Stroke,1998年7月;29(7):1454−60;Gotti,B.ら、Brain Res、1990、522、290−307も参照のこと。)。MCAモデルにより、虚血事象(つまり左中大脳動脈の閉塞)後のニューロン細胞死の間接的測定が可能となる。ある実施形態において、中大脳動脈の一時的局所性脳虚血を用いて化合物を試験することができる。
腔内中大脳動脈(MCA)閉塞により、一時的局所性脳虚血を誘発することができる。例えば、モノフィラメント縫合糸などの縫合糸を用いて、動脈をブロックする何らかの手段を介して閉塞を達成することができる。動物を麻酔した後、局所的な脳血流の相対的変化を監視するために、プローブをその頭蓋に固定することができる。レーザーDopplerフローメーター(Perimed)を用いてこのような変化を監視することができる。例えば、マウスにおいて、ブレグマ2mm後部及び4−6mm側部にプローブを固定することができる。次に、MCAに近付くために切開することができ、MCAを閉塞させるために材料を挿入することができる。例えば、監視している血流が停止するまで、外頸動脈基部を介して内頸動脈基部に縫合糸を導入することができる。約30分、45分又は60分などのMCA閉塞の時間後、ブロックする材料をはずすことにより、血流を再開することができる。
別の実施形態において、両側頸動脈閉塞モデルを使用して、化合物が虚血領域で細胞を保護することができることを示すことができる。動物に麻酔をかけて、腹側頸部において切開を行い、総頸動脈を分離し、例えば5、10、15、20、30、45又は60分の間、完全に閉塞させることができる。例えば、微細動脈瘤クリップなどのクリップを用いるなど、何らかの手段で動脈を閉塞させることができる。次に、閉塞をやめて、切開を縫合し得る。ある特定の実施形態において、スナネズミにおいて両側頸動脈閉塞を行うことができる。
次いで、術後に動物を回復させることができる。例えば、約12、24、36、48又は72時間などの時間、動物を生存させた後、動物を屠殺し、脳を取り出して、例えばおよそ1、2、3、4、5又は10mmの切片にすることができる。次いで、例えば、37℃でおよそ20分間、PBS中の2%塩化2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム(TTC)などの適切な色素で脳切片を染色することにより、梗塞の体積を確認することができる。次に、各切片の梗塞領域を測定し、切片厚を乗じて、その切片の梗塞体積を求めることができる。同側半球切片体積に対する反対側の比にも、対応する梗塞切片体積を乗じ、浮腫に対する補正を行うこともできる。全切片に対して梗塞領域の時間切片厚を合計することにより、梗塞体積を求めることができる。
一時的局所性虚血の動物モデルにおいて化合物を試験し、梗塞体積における化合物の影響を測定した後、梗塞体積を少なくとも30%減少させる化合物を選択することができる。さらなる実施形態において、梗塞体積を少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65、70、75、80、85、90、95、97、99又は100%減少させる化合物を選択することができる。さらなる実施形態において、化合物は、図1で示されるように、生理的pH対虚血性pH(つまり、生理的pH/虚血pH)において、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40又は50の効力促進を示すことができ、梗塞体積を少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65、70、75、80、85、90、95、97、99又は100%減少させることができる(独立に、これらの数の何らかの組み合わせを含めて、その各組み合わせが具体的に開示されるものとする。)。本発明のある一定の実施形態において、効力促進及び梗塞体積実験に対して、平均、つまり、全ての観察値の合計を観察数で割ったもの、を計算することができ、図1で示されるように、化合物の平均値は、生理的pH対虚血性pH(つまり、生理的pH/虚血pH)で少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22又は23の効力促進を示し得、梗塞体積の少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65、70、75、80又は80%減少を示し得る。
新しい実験の追加により95%信頼区間が10%を超えて変化しなくなるまで梗塞体積実験を繰り返すことができる。別の実施形態において、新しい実験の追加により95%信頼区間が約25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%又は2%を超えて変化しなくなるまで梗塞体積実験を繰り返すことができる。さらなる実施形態において、新しい実験の追加により96%、97%、98%又は99%信頼区間が約25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%又は2%を超えて変化しなくなるまで梗塞体積実験を繰り返すことができる。
一時的局所性虚血のその他の動物モデルとしては、以下に限定されないが、微小球もしくは凝固血液の動脈内注入、ラットにおける4本の血管閉塞、スナネズミにおける2本の血管閉塞又は溶解を伴う光化学的誘発性血栓形成が挙げられる。このようなモデルは当業者にとって公知である。
神経因性疼痛の動物モデル
本発明のある態様において、本明細書中で開示する化合物を神経因性疼痛及び関連疾患の治療に使用することができる。
本発明のある態様において、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞において生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価することと(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50);(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより、神経因性疼痛の動物モデルにおいて化合物を試験し、疼痛閾値の上昇における化合物の影響を測定することと;(iii)段階(i)に従い少なくとも5の効力促進を有し、段階(ii)に従い疼痛閾値を少なくとも2倍上昇させる化合物を選択することによる、哺乳動物、特にヒトにおいて神経因性疼痛を治療するのに有用な化学化合物を同定するためのプロセスを提供する。本発明によると、候補薬物は、ヒトでの使用に効果的な薬物であるためのインビトロ及びインビボ基準の両方に合致又はそれを超えなければならない。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、NMDA、AMPA及び/又はカイニン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。ある実施形態において、細胞はNMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現することができる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
本発明の別のより一般的な態様において、NMDA受容体アンタゴニストを活性化させる様式においてpHを低下させる疾患を治療するために化合物を選択するプロセスを提供するが、この化合物は、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞において試験して、生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価する実験(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50)において求めた場合に、少なくとも5の効力促進を示し、(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより、神経因性疼痛の動物モデルにおいて化合物を試験し、疼痛閾値上昇における化合物の影響を測定し、(iii)段階(i)に従い少なくとも5の効力促進を有し、段階(ii)に従い痛覚閾値が少なくとも2倍向上する化合物を選択する。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、NMDA、AMPA及び/又はカイニン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。ある実施形態において、細胞はNMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現することができる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
ある実施形態において、以下に限定されないが、慢性狭窄損傷モデル、部分的坐骨神経結紮モデル、脊髄神経結紮モデル又は当業者にとって公知の何らかの他のモデルを含む群から、神経因性疼痛の動物モデルを選択することができる。特定の実施形態において、インビボ動物モデルとして脊髄神経結紮モデルを使用することができる。
痛覚が起こる前に必要な刺激の量を痛覚閾値と定義することができる。神経因性疼痛モデルにおいて、動物に対して、慢性疼痛状態を誘発するような損傷を与える。次に、侵害刺激を与え、侵害刺激に反応せずに動物がそれに耐えられる時間量を計算することができる。例えば、非損傷動物が足を表面から引っ込める前に20分間冷たい面に曝露し得たが、損傷後、神経因性疼痛のモデルである下記の動物などの損傷動物は、わずか1分後にその手足を引っ込め得る。侵害刺激の例としては、以下に限定されないが、熱、冷たいもの、機械的刺激、例えばvon Frey’s刺激、化学的刺激などが挙げられる。
ある実施形態において、慢性狭窄損傷モデル(CCI又はBennettモデル)を神経因性疼痛の動物モデルとして使用することができる(例えば、Bennett、Gary J.ら、Pain、1988、33、87−107)。このモデルにおいて、神経因性疼痛のヒト患者により報告された症状を誘発するために発見された様式で、例えばラットなどの動物の坐骨神経に意図的に損傷を与えることができる。特に、膝窩における神経の三叉の近位の中腿部で坐骨神経を曝露することができる。その位置で、神経の軌道約7mmを接着組織から離し、その周囲で約1mm間隔で4本の結紮糸をゆるく絞める。各動物をそれ自身の対照として使用できるように、各動物において、結紮せずに反対側に同一の切開を行うことができる。結紮側において、結紮を受けた後足の皮膚が明白に過剰に疼痛性及び異痛性になり(つまり、通常は疼痛反応を誘発しない刺激により疼痛が起こる。)、おそらく、同様に自発痛の源となる。痛覚過敏を試験するために、熱などの侵害刺激をガラスフロアの下から後足の足底に向け、足引っ込めの反応時間(痛覚閾値のマーカー)を測定することができる。神経損傷側での反応は、異常な大きさ及び持続時間となる傾向があり、例えば足上げは30秒を超え、長時間の舐めを伴い得る。正常な反応とは、動物があまり頻繁に足を上げず、上げる時間は1秒又は2秒未満である。冷異痛症を試験するために、例えば4℃の温度の冷却した金属床に動物を置くことができる。結紮していない足の場合、接触後20分でもこの床による疼痛は生じない。結紮したラットに対して、神経損傷を与えた足の引っ込めを測定することができ、例えば、5倍超に延長し得、持続時間を測定すると例えば2倍超に延長し得る。このようなモデルを用いて、薬物を用いずに、及び本明細書中に記載の化合物の投与後にも、疼痛閾値を計算できる。
別の実施形態において、部分的坐骨神経結紮モデル(Seltzerモデル)を使用して、神経因性疼痛閾値を計算することができる(Seltzer,Aら、Pain、1990、43、205−218)。このモデルにおいて、ラットなどの動物の腿上部の坐骨神経の半分を一方的に結紮することができる。術後数時間内、及び術後数ヶ月の間、動物は、同側の後足の防御行動を起こすようになり、しばしばそれを舐めるようになり得、このことから、自発痛の可能性が示唆される。足底面は、非侵害及び侵害刺激に対して均等に知覚過敏になり得る。本発明の化合物に曝露した動物及び曝露していない動物において、侵害刺激に対する一般的な刺激を測定することができる。侵害刺激には、von Frey hair刺激、CO2レーザー熱パルス及びピンプロックが含まれ得る。足底側での反復的Von Frey hair刺激に対する反応において、引っ込め閾値が急激に低下し得る。手術した側での一連のこのような刺激の後、軽く触れることで回避行動が誘発され、このことから、接触に対する異痛症が示唆される。CO2レーザー熱パルスに対する引っ込め閾値も顕著に低下する。閾値上侵害熱パルスは一方的に過剰な反応を誘発し、このことから、熱痛覚過敏が示唆される。ピンプロックもまたこのような過剰な反応を起こす(機械的痛覚過敏)。このようなモデルを用いて、薬物を用いずに、及び本明細書中に記載の化合物の投与後にも、痛覚閾値を計算することができる。
別の実施形態において、脊髄神経結紮モデル(Chungモデル)を使用して神経因性疼痛を測定することができる(Kim,S.H.及びChung,J.M. Neurosci.Lett.1991、134、131−134;Kim,S.H.及びChung,J.M.Pain、1992、50、355−363を参照のこと。)。このモデルにおいて、L5(又はL5+L6)脊髄神経を固く結び、次に切断する。外科的手技により、手術を行った足の侵害熱及び機械的異痛症に対する痛覚過敏が長時間持続する。手術を行った足の機械的感受性を測定することができる。von Freyフィラメントを用いて後足に与えた無害の機械的刺激に対して足引っ込めが起こる回数が増えたことにより分かるように、術後第1日目から顕著に機械的感受性が向上し得る。さらに、手術を行った足に自発痛があることに対する行動徴候も見られる。本発明の化合物の投与あり、又は投与なしで、このような測定を行い得、痛覚閾値を計算することができる。
神経因性疼痛の動物モデルにおける化合物の試験及び痛覚閾値における化合物の影響測定後、痛覚閾値を少なくとも2倍増加させる化合物を選択することができる。他の実施形態において、化合物は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20又は30倍痛覚閾値が向上し得る。さらなる実施形態において、新しい実験の追加により95%信頼区間が10%を超えて変化しなくなるまで少なくとも15回実験を繰り返すことができる。新しい実験の追加により95%信頼区間が10%を超えて変化しなくなるまで神経因性疼痛実験を繰り返すことができる。別の実施形態において、新しい実験の追加により95%信頼区間が約9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%又は2%を超えて変化しなくなるまで神経因性疼痛実験を繰り返すことができる。さらなる実施形態において、新しい実験の追加により96%、97%、98%又は99%信頼区間が約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%又は2%を超えて変化しなくなるまで神経因性疼痛実験を繰り返すことができる。
神経因性疼痛のその他の動物モデルとしては、以下に限定されないが、神経枝結紮損傷モデル(Decosterd & Woolf、Pain.2000年8月;87(2):149−58を参照。)、直接的な損傷のない坐骨神経の局所的炎症により誘発される坐骨神経炎症神経障害(SIN)及び/又は化学療法剤ビンクリスチン注入後の疼痛の末梢神経モデル(Aleyら、Neurosci 1996;73:259−65)が挙げられる。さらなるモデルが当業者にとって公知である。Zimmerman M.Eur J Pharmacol 2001;429:23−37;Shirら、Neurosci Lett 1990;115:62−7;Wallら、Pain 1979;7:103−11;DeLeoら、Pain 1994;56:9−16;Courteixら、Pain 1994;57:153−60;Aleyら;Slartら、Pain 1997;69:119−25;Hargreavesら、Pain 1988;32:77−88も参照のこと。
III.化合物
本発明のある態様において、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞において生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価することと(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50);(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより、一時的局所性虚血の動物モデルにおいて化合物を試験し、梗塞体積における化合物の影響を測定することと;(iii)段階(i)に従い少なくとも5の効力促進を有し、段階(ii)に従い梗塞体積を少なくとも30%低下させる化合物を選択することによる、哺乳動物、特にヒトにおいて虚血性損傷を治療するのに有用な化学化合物を同定するためのプロセスを提供する。本発明によると、候補薬物は、ヒトでの使用に効果的な薬物であるためのインビトロ及びインビボ基準の両方に合致又はそれを超えなければならない。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、NMDA、AMPA及び/又はカイニン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。ある実施形態において、細胞はNMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現することができる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
本発明の別のより一般的な態様において、NMDA受容体アンタゴニストを活性化させる様式においてpHを低下させる疾患を治療するために化合物を選択するプロセスを提供するが、この化合物は、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、細胞において試験して、生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価する実験(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50)において求めた場合に、少なくとも5の効力促進を示し、(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより調べ、局所性虚血の動物モデルにおいて測定した場合に、梗塞体積を少なくとも30%減少させる。ある実施形態において、グルタミン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。別の実施形態において、NMDA、AMPA及び/又はカイニン酸受容体を発現する細胞において効力促進を調べることができる。ある実施形態において、細胞はNMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現することができる。さらなる実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
ある特定の実施形態において、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、NMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニット細胞において生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価することと(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50);(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより、一時的局所性虚血の動物モデルにおいて化合物を試験し、梗塞体積における化合物の影響を測定することと;(iii)段階(i)に従い少なくとも5の効力促進を有し、段階(ii)に従い梗塞体積を少なくとも30%減少させる化合物を選択することによる、哺乳動物、特にヒトにおいて虚血性損傷を治療するのに有用な化学化合物を同定するためのプロセスを提供する。本発明によると、候補薬物は、ヒトでの使用に効果的な薬物であるためのインビトロ及びインビボ基準の両方に合致又はそれを超えなければならない。ある実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
別の特定の実施形態において、NMDA受容体アンタゴニストを活性化する様式でpHを低下させる疾患を治療するための化合物が選択されるプロセスを提供するが、この化合物は、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により15%を超えて変化しないように少なくとも5回効力促進実験を繰り返すことにより、NMDA受容体のNR1サブユニット及び少なくとも1個のNR2サブユニットを発現する細胞において試験して、生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価する実験(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50)において求めた場合に、少なくとも5の効力促進を示し、(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により5%を超えて変化しないように少なくとも12回実験を繰り返すことにより、局所性虚血の動物モデルにおいて測定した場合に、梗塞体積を少なくとも30%減少させる。ある実施形態において、NR2サブユニットはNR2Bサブユニットであり得る。別の実施形態において、NR2サブユニットはNR2Aサブユニットであり得る。
さらに、さらなる実施形態において、例えば、運動不全、認知機能障害及び心臓毒性又は本明細書中に記載の毒性などの毒性を化合物は示さない。さらに、又はあるいは、化合物は、何らかの他のグルタミン酸受容体、本明細書中に記載のその他の受容体よりも、NMDA受容体への結合に対して少なくとも10倍の選択性を有し得る。さらなる追加的又は代替的実施形態において、化合物は、少なくとも2:1以上の治療指数を有し得る。
本発明の別の実施形態において、(i)95%信頼区間が新しい実験の追加により10%を超えて変化しなくなるまで効力促進実験を繰り返すことにより、NR1/NR2A NMDA受容体及び/又はNR1/NR2B NMDA受容体を発現する細胞において生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を評価することと(例えば、生理的pHでのIC50/疾患誘導性低pHでのIC50);(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により10%を超えて変化しなくなるまで実験を繰り返すことにより、一時的局所性虚血の動物モデルにおいて化合物を試験し、梗塞体積における化合物の影響を測定することと;(iii)段階(i)に従い少なくとも5の効力促進を有し、段階(ii)に従い梗塞体積を少なくとも30%減少させる化合物を選択することにより、ヒトにおける虚血性損傷を治療するのに有用な化学化合物を同定するプロセスを提供する。
本発明のさらなる実施形態において、虚血性損傷に伴う疾患を治療するための化合物を選択するプロセスを提供するが、この化合物は、(i)少なくとも5回、又は95%信頼区間が新しい実験の追加により10%を超えて変化しなくなるまで効力促進実験を繰り返すことにより、NR1/NR2A NMDA受容体及び/又はNR1/NR2B NMDA受容体を発現する細胞において生理的pH対疾患誘導性低pHでの化合物の効力促進を試験する実験において求めた場合に、少なくとも5の効力促進を示し、(ii)95%信頼区間が新しい実験の追加により10%を超えて変化しなくなるまで実験を繰り返すことにより調べて、局所性虚血の動物モデルにおいて測定した場合に、梗塞体積を少なくとも30%減少させる。
さらに、又はあるいは、化合物は、何らかの他のグルタミン酸受容体よりも、NMDA受容体への結合に対して少なくとも10倍の選択性を有し得る。他の実施形態において、化合物は、何らかの他のグルタミン酸受容体(例えば、以下に限定されないが、次のグルタミン酸受容体、AMPA GluR1(GenEMBL受入番号X57497、X17184、I57354)、AMPA GluR2(GenEMBL受入番号X57498、M85035、A46056)、AMPA GluR3(GenEMBL受入番号M85036、X82068)、AMPA GluR4(GenEMBL受入番号M36421、U16129)、カイニン酸GluR5(GenEMBL受入番号X66118、M83560、U16125)、カイニン酸GluR6(GenEMBL受入番号D10054、Z11715、U16126)、カイニン酸GluR7(GenEMBL受入番号M83552、U16127)、カイニン酸KA−I(GenEMBL受入番号X59996、S67803q)、カイニン酸KA−2(GenEMBL受入番号D10011、Z11581、S40369)、オーファンd1 GRIDI(GenEMBL受入番号D10171、Z17238)、オーファンds GRID2(GenEMBL受入番号D13266、Z17239)及び/又は代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR)、例えばGroup1 mGluR(mGluR1及びmGluR5を含む。)、Group2 mGluR(mGluR2及びmGluR3を含む。)及びGroup3mGluR(mGluR4、mGluR6、mGluR7及びmGluR8を含む。)など。)よりも、NMDA受容体への結合に対して少なくとも11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、78、85、90、95、100、125、150、175、200、300、400、500又は1000倍選択的であり得る。NMDA受容体は、以下に限定されないが、NMDA NR1(染色体(ヒト)9q34.3、マウスに対するGenEMBL受入番号:D10028、ラットに対するGenEMBL受入番号:X63255、ヒトに対するGenEMBL受入番号:X58633)、NMDA NR2A(染色体(ヒト):16p13.2、マウスに対するGenEMBL受入番号:D10217、ラット対するGenEMBL受入番号:D13211、ヒト対するGenEMBL受入番号:U09002);NMDA NR2B(染色体(ヒト):12p12 マウスに対するGenEMBL受入番号:D10651、ラット対するGenEMBL受入番号:M91562、ヒト対するGenEMBL受入番号:U28861a);NMDA NR2C(染色体(ヒト)17q24−q25、マウスに対するGenEMBL受入番号:D10694、ラット対するGenEMBL受入番号:D13212);NMDA NR2D(染色体(ヒト)19q13.1qter、マウスに対するGenEMBL受入番号:D12822、ラット対するGenEMBL受入番号:D13214、ヒト対するGenEMBL受入番号:U77783);NMDA NR3A(ラット対するGenEMBL受入番号:L34938及び/又はNMDA NR3Bを含む、そのサブユニットの何れかから構成され得る。NMDA受容体に対して、あるいは、化合物は、上記で挙げた別のグルタミン酸受容体よりも選択的ではないか、又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8もしくは9倍選択的ではない。
さらに、又はあるいは、化合物は、別の受容体タイプよりも、NMDA受容体への結合に対して少なくとも10倍の選択性を有し得る。他の実施形態において、化合物は、例えば、以下に限定されないが次の受容体を含む別の受容体タイプよりも、NMDA受容体への結合に対して少なくとも11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、78、85、90、95、100、125、150、175、200、300、400、500又は1000倍選択的であり得る:ドーパミン受容体、例えばD1、D2、D3、D4及びD5ドーパミン受容体;オピオイド受容体、例えば、muオピオイド受容体(mu1及びmu2を含む。);デルタオピオイド受容体(デルタ1及びデルタ2を含む。)及びカッパオピオイド受容体(κ1及びκ2を含む。);コリン作用性受容体(ムスカリン性及びニコチン性受容体を含む。);アドレナリン作用性受容体(エピネフリン受容体及びエピネフリン受容体を含む。)、GABA受容体(GABA−A及びGABA−B受容体を含む。)又はペプチド受容体、例えば、以下に限定されないが、下記表Bで挙げるペプチドに対する受容体。あるいは、化合物は、NMDA受容体に対して、上記で挙げた受容体よりも選択的ではないか、又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8又は9倍選択的ではない。
別の実施形態において、化合物は、セロトニン受容体よりも、NMDA受容体への結合に対して少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、78、85、90、95、100、125、150、175、200、300、400、500又は1000倍選択的であり得る。あるいは、化合物は、NMDA受容体に対して、セロトニン受容体よりも選択的でないか、又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8又は9倍選択的ではない。セロトニン受容体としては、以下に限定されないが、5HT1(5HT1A、5HT1B、5HT1D、5HT1E及び5HT1Fを含む。);5HT2(5HT2A、5HT2B及び5HT2Cを含む。);5HT3;5HT4;5HT5(5HT5a及び5HT5Bを含む。);5HT6及び5HT7が挙げられる。別の実施形態において、化合物は、ヒスタミン受容体(H1、H2、H3及びH4ヒスタミン受容体を含む。)よりも、NMDA受容体への結合に対して、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、78、85、90、95、100、125、150、175、200、300、400、500又は1000倍選択的であり得る。あるいは、化合物は、NMDA受容体に対して、ヒスタミン受容体(H1、H2、H3及びH4ヒスタミン受容体を含む。)よりも選択的ではないか、又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8又は9倍選択的ではない。別の実施形態において、化合物は、カルシウムチャネルよりも、NMDA受容体への結合に対して、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、78、85、90、95、100、125、150、175、200、300、400、500又は1000倍選択的であり得る。
特定の受容体への薬物の親和性を調べるために化合物をスクリーニングすることは、薬物探索プロセスにおける重要事項の1つである。当業者にとって公知の何らかの方法により、受容体選択性を調べるためのプロセスを行い得る。大規模な化合物ライブラリに対する一次スクリーニング法として、又は様々な受容体型もしくはサブタイプに対する結合親和性に関して化合物を順位付けするための二次スクリーニングとして、スクリーニングを使用することができる。ある実施形態において、例えば、Millipore MultiscreenTMHTSプレートなどのフィルター−プレートスクリーニング系といった高スループット系においてこの分析を行い得る。
ある実施形態において、放射性リガンド結合アッセイを使用して、特定の受容体に対する受容体選択性を決定することができる。ある特定の実施形態において、飽和結合アッセイを使用して、特定の受容体に対する試験化合物の結合定数(Kd)を求めることができる。当技術分野で公知の何らかの方法に従い飽和結合アッセイを行うことができる。一般に、特定の受容体を発現する細胞膜を得ることにより、飽和結合アッセイを行うことができる。例えば、CHO細胞などの細胞に対してトランスフェクションを行い、NMDA受容体、例えば、NR1/NR2A又はNR1/NR2BNMDA受容体又はAMPA受容体などのグルタミン酸受容体を発現させるようにすることができる。あるいは、NR1/NR2B又はNR1/NR2A NMDA受容体といったNMDA受容体などの特定の受容体を内在的に発現する細胞を使用することができる。ある実施形態において、細胞全体の結合アッセイを行うことができる。あるいは、例えば、細胞を溶解し、次いで遠心を用いて細胞溶解液の膜分画を得ることにより、膜を細胞から単離することができるが、例えば、Laboratory method for isolation of cell membranes,A.Hubbard及びZ.Cohn The Journal of Cell Biology(1975)及びRogerら、1991、J.Neuroscience:2713−2724を参照のこと。次に細胞全体又は細胞膜を、放射性標識リガンド、すなわち、例えば3H−標識リガンドなどの試験化合物の連続希釈物とインキュベートすることができる。例えば、少なくとも1、2又は3時間のインキュベート後、例えば、5、10、15又は20回、膜を洗浄することができる。次に、シンチレーション液を添加し、細胞又は細胞もしくは膜の放射活性を行うことができる。過剰の非標識競合リガンドを用いた別の実験において非特異的結合もまた求めることができる。総活性から非特異的活性を差し引いたものとして、特異的結合を計算することができる。次に、例えば、Prizmデータソフトウェア(www.Graphpad.com)を用いることにより、非線形回帰及びScatchard解析によって遊離リガンド濃度により特異的結合をフィットさせて、結合定数(Kd)を求めることができる。さらに、結合部位数[最大結合能(Bmax)]もまた、例えばPrizmデータソフトウェアを用いることによって、非線形回帰及びScatchard解析により、計算することができる。
別の実施形態において、置換放射性リガンド結合アッセイを行って、相対親和性値(IC50)を求めることができる。上述のように、特定の受容体を発現する細胞全体又は単離細胞膜を使用することができる。一定の放射性リガンド濃度及び、非標識リガンドなしの対照結合実験と比較する場合に非標識競合リガンドの連続希釈物を使用することにより、阻害を求めることができる(%対照)。例えば、Prizmデータソフトウェアを用いることにより、非線形回帰によって結合阻害値をフィットさせることにより、相対的親和性値(IC50)を求めることができる。
本発明に従い選択した化合物
NMDA−受容体アンタゴニストが介在し得る疾患の治療における哺乳動物(例えばヒト)の臨床性能改良のために、次の化合物を選択した。本明細書中で広く述べる指針に従うことにより、新しいパラメーターを満たす他の化合物を選択することができる。
ある実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択した化合物は、
ならびに医薬的に許容される、塩、鏡像異性体、鏡像異性体混合物及び混合物であり得る。
別の実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択した化合物は、
ならびに医薬的に許容される、塩、鏡像異性体、鏡像異性体混合物及び混合物であり得る。
別の実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択した化合物は、
ならびに医薬的に許容される、塩、鏡像異性体、鏡像異性体混合物及び混合物であり得る。
さらなる実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択した化合物は、
ならびに医薬的に許容される、塩、鏡像異性体、鏡像異性体混合物及び混合物であり得る。
またさらなる実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択した化合物は、
ならびに医薬的に許容される塩であり得る。ある実施形態において、(−)MK801を使用して、本明細書中に記載のように、神経因性疼痛、脳腫瘍及び/又は神経変性疾患を治療することができる。
別の実施形態において、化合物(S)ケタミンは、虚血性損傷又は低酸素症の治療に対して選択されない。別の実施形態において、(S)ケタミンを使用して、本明細書中に記載のように、神経因性疼痛、脳腫瘍及び/又は神経変性疾患を治療することができる。
ラセミ合成を行い、次いで鏡像異性の面で純粋な(−)異性体を得るために分解するか(例えば、Molander,G.A.ら、J,Org.Chem.、64:pp.6515−6517(1999);Christy,M.E.ら、J,Org.Chem.、44:pp.3117(1979)を参照。)又は、位置選択的ラジカル環化を用いたReissert生成物からの6段階での鏡像異性選択適合性により(例えば、Funabashi,K,ら、J.Am.Chem.Soc.123:pp.10784−10785(2001)を参照のこと。)、MK801(5S,10R)−(−)異性体の合成を行うことができる。
本明細書中で開示されるその他の化合物の合成は、WO02/072542で見出すことができる。
立体化学
当然のことながら、化合物の三次元配置は治療用途のための化合物の活性及び/又は適切性に関与しうる。本明細書中に記載の基準を用いて、化合物の鏡像異性体が両方選択され得るか、又は一方が選択され得、一方が選択され得ないことが、本明細書中で実験的に観察されている。おそらく、ある一定の状況において、与えられた基準を用いて、両方の鏡像異性体が選択され得る。
非限定例は次のとおりである。
ある実施形態において、図1で示すように、鏡像異性体(S)93−4は、治療用途に有効な化合物として選択基準に当てはまる。
別の実施形態において、図1で示すように、鏡像異性体(S)93−31は、治療用途に有効な化合物として選択基準に当てはまる。
別の実施形態において、図1で示すように、鏡像異性体(S)93−8は、治療用途に有効な化合物として選択基準に当てはまる。
別の実施形態において、図1で示すように、鏡像異性体(S)93−41は、治療用途に有効な化合物として選択基準に当てはまる。
さらに別の実施形態において、図1で示すように、鏡像異性体(S)93−5は、治療用途に有効な化合物として選択基準に当てはまる。
ある実施形態において、化合物(S)98-5、(S)93−4、(S)93−8、(S)93−31及び(S)93−41は、例えば、図1で示されるように、NMDA受容体のNR2Bサブユニットに結合することができる。別の実施形態において、化合物(S)98−5、(S)93−4、(S)93−8、(S)93−31及び(S)93−41は、NMDA受容体のNR2Bサブユニットに対して選択的であり得る。
さらに別の実施形態において、図1で示されるように、(−)MK801は、治療用途に効果的な化合物として選択基準に当てはまるが、(+)−MK801は、本明細書中に記載のように、選択基準に当てはまらない。
鏡像異性体93−40及び93−43のいずれも、図1で示されるように、治療用途に効果的な化合物として選択基準に当てはまらない。
さらに、鏡像異性体(S)93−97は、図1で示されるように、治療用途に効果的な化合物として選択のための基準に当てはまらない。
さらなる実施形態
ある実施形態において、(S)ケタミンは、本発明の方法から特別に除外され得る。別の実施形態において、(−)MK801は、本発明の方法から特別に除外され得る。別の実施形態において、(S)ケタミンは、虚血性損傷を治療することに関して本発明から除外され得る。さらなる実施形態において、(−)MK801は、虚血性損傷を治療することに関して本発明から除外され得る。
別の実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択される化合物は、以下に限定されないが、FR115427、NPS1506、フェンシクリジン(PCP)、レマセミド、TCP又はEAA−090など、NMDA受容体チャネルブロッカーではない。別の実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択される化合物は、以下に限定されないが、CGP40116、D−CPPene、GPI3000(NPC17742)、MDL100,453又はセルフォテル(CGS19755)など、NMDA受容体グルタミン酸部位アンタゴニストではない。別の実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択される化合物は、以下に限定されないが、7−Cl−キヌレン酸、HA966、MRZ2/576、ZD9379、ガベスチネル(GV150526)、アンドリコスチネル(ACEA1021,5−ニトロ−6,7−ジクロロ−1,4−ジヒドロ−2,3−キノキサリンジオン)など、NMDA受容体グリシン部位アンタゴニストではない。
別の実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択される化合物は、
(式中、R
9、R
10、R
11、R
12及びR
18の1つは、
(式中、R
13はアルキル、アラルキル又はアリールであり、R
17はH又は低級アルキルであり、R
9、R
10、R
11、R
12及びR
18のその他のものは、H、F、Cl、I又はRであり、Rは低級アルキルである。)である。)又は、
(式中、R
9、R
10、R
11及びR
12は、H、F、Cl、Br、I及びR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択され、R
13は、アルキルアラルキル又はアリールである。);
(式中Aは、
(式中、R
1及びR
5は、独立にH又はFであり;R
2、R
3及びR
4は、H、F、Cl、Br、I及びOR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択されるか、又は、R
2及びR
3は一緒になってO−CH
2−Oである。)、
(式中、R
1、R
4及びR
5は、H、F、Cl、Br、I及びOR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択され、R
3は独立にO、S、NH又はNRであり、R
2はNであり、R
16はC−アルキル、C−アラルキル又はC−アリールである。)、
(式中、R
1、R
4及びR
5は、H、F、Cl、Br、I及びOR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択され、R
2は独立にO、S、NH又はNRであり、R
3はNであり、R
16はC−アルキル、C−アラルキル又はC−アリールである。)、
(式中、R
1からR
4は、H、F、Cl、Br、I及びOR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択されるか、又はR
2及びR
3は一緒にO−CH
2−Oである。)、
(式中、R
1、R
2及びR
3は、O、S、NH又はNR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択されるか、又はR
2及びR
3は一緒にO−CH
2−Oであり、R
4はNである。)、
(式中、R
2及びR
3は、H、F、Cl、Br、I及びOR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択され、R
4はNである。)、
(式中、R
1は、O、S、NH及びNR(Rは低級アルキルである。)からなる群から選択され、R
2はNであり、R
3及びR
4は、H、F、Cl、Br、I及びOR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択される。)、
(式中、R
1は、O、S、NH及びNR(Rは低級アルキルである。)からなる群から選択され、R
2及びR
4はNであり、R
3は、H、F、Cl、Br、I及びOR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択される。)、
(式中、R
1は、O、S、NH及びNR(Rは低級アルキルである。)からなる群から選択され、R
2は、H、F、Cl、Br、I及びOR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択され、R
3及びR
4はNである。)、
(式中、R
1は、O、S、NH及びNR(Rは低級アルキルである。)からなる群から選択され、R
2、R
3及びR
4はNである。)、
(式中、R
1及びR
3は、O、S、NH及びNR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択され、R
2、R
2’及びR
4は、H、F、Cl、Br、I及びOR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択される。)、
(式中、R
1及びR
2は、O、S、NH及びNR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択され、R
2’及びR
3及びR
4は、H、F、Cl、Br、I及びOR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択される。)、
(式中、X
1はC−R
3又はNであり、X
2はC−R
4又はNであり、X
3はC−R
4’又はN(R
1−R
4’はO、S、NH及びNR(Rは低級アルキルである。)からなる群から独立に選択される。)であるか、R
1及びR
2は一緒にO−CH
2−Oである。)からなる群から選択され;
式中、Bは、
(式中、R
6及びR
6’は独立にH又はFであり、R
7はH、低級n−アルキル、CH
2Ar、CH
2CH
2Ar、CH
2CHFAr又はCH
2CHF
2Arであり、R
8はOH、OR(Rは低級アルキルである。)又はFである。)、
(式中、R
6及びR
6’は独立にH又はFであり、R
7はCH
2であり、R
8はOである。)、
(式中、R
5、R
6及びR
7は独立にCH
2、CHR又はCR
2(Rは低級アルキルである。)であり、R
8はOH、OR(Rは低級アルキルである。)又はFである。)、
(式中、R
6及びR
7は独立にCH
2、CHR又はCR
2(Rは低級アルキルである。)であり、R
8はOH、OR(Rは低級アルキルである。)又はFである。)又は
(式中、R
6及びR
7は独立にCH
2、CHR又はCR2(Rは低級アルキルである。)であり、R
8はOH又はFであり、n=1−3である。)からなる群から選択される。)及び医薬的に許容される、これらの塩、鏡像異性体、鏡像異性体混合物及び混合物を含み、PCT公開WO02/072542に記載されていない。
「アルキル」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味をとり、直鎖、分枝鎖及びシクロアルキル基を含むものとする。この用語は、以下に限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、2−メチルブチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、n−へキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2−エチルブチル、1−エチルブチル、1,3−ジメチルブチル、n−ヘプチル、5−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、1−メチルヘキシル、3−エチルペンチル、2−エチルペンチル、1−エチルペンチル、4,4−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルペンチル、2,2−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルペンチル、n−オクチル、6-メチルヘプチル、5−メチルヘプチル、4−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、2−メチルヘプチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、3−エチルヘキシル、5,5−ジメチルヘキシル、4,4−ジメチルヘキシル、2,2−ジエチルブチル、3,3−ジエチルブチル及び1−ジメチル−1−プロピルブチルを含む。アルキル基は場合によっては置換されている。低級アルキル基は、特に、メチル、エチル、n−プロピル及びイソプロピル基を含む。本明細書中で言及する低級アルキル基は、1から6個の炭素原子を有する。
「大型環含有基」という用語は、アリール環又はシクロアルキル環であり得る1以上の環構造を含有する基を指す。
「シクロアルキル」という用語は、炭化水素環を有するアルキル基、特に、3から7個の炭素原子を有するものを指す。シクロアルキル基には、環上にアルキル基置換を有するものが含まれる。シクロアルキル基には、直鎖及び分枝鎖部分が含まれ得る。シクロアルキル基には、以下に限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル及びシクロノニルが含まれる。シクロアルキル基は、場合によっては置換され得る。
「アリール」という用語は、通常、共役したpi電子系を有する少なくとも1個の環を有する芳香族基を指すために本明細書中で使用され、以下に限定されないが、炭素環アリール、アラルキル、複素環アリール、ビアリール基及び複素環ビアリール基を含み、これらは全て、場合によっては置換され得る。特定のアリール基は、1又は2個の芳香環を有する。
アルキル基の置換には、ヘテロ原子を含有する部分によるその基の1以上の炭素における置換が含まれる。これらの基に対する適切な置換基としては、以下に限定されないが、OH、SH、NH2、COH、CO2H、ORc、SRc、NRcRd、CORcRd及びハロゲン、特にフッ素が挙げられ、ここでRc及びRdは独立に、アルキル、不飽和アルキル又はアリール基である。特定のアルキル及び不飽和アルキル基は、1から約3個の炭素原子を有する、低級アルキル、アルケニル又はアルキニル基である。
「アラルキル」は、アリール基で置換されているアルキル基を指す。適切なアラルキル基としては、とりわけ、ベンジル、フェネチル及びピコリルが挙げられ、場合によっては置換され得る。アラルキル基には、複素環及び炭素環芳香族部分を有するものが含まれる。
「複素環アリール基」は、環中に1から3個のヘテロ原子を有し、他が炭素原子である、少なくとも1個の複素環芳香族環を有する基を指す。適切なヘテロ原子としては、以下に限定されないが、酸素、イオウ及び窒素が挙げられる。複素環アリール基としては、とりわけ、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N−アルキルピロロ、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、ベンゾフラニル、キノリニル及びインドリルが挙げられ、全て場合によっては置換されている。
「複素環ビアリール」は、デカリン又はシクロヘキサンへのフェニル環の付加点に対して、オルト、メタ又はパラで、フェニル基が複素環アリール基で置換されている複素環アリールを指す。パラ又はメタ置換が有用である。複素環ビアリールとしては、とりわけ、複素環芳香族環により置換されているフェニル基を有する基が挙げられる。複素環ビアリールの芳香族環は、場合によっては置換され得る。
「ビアリール」は、デカリン又はシクロヘキサンへのフェニル環の付加点に対して、オルト、メタ又はパラで、フェニル基が炭素環アリール基で置換されている炭素環式アリール基を指す。ビアリール基としては、とりわけ、デカリン又はシクロヘキサン構造への第一のフェニル環の付加点に対してオルト、メタ又はパラで、第二のフェニル基により置換されている第一のフェニル基が挙げられる。パラ置換が有用である。ビアリール基の芳香族環は場合によっては置換され得る。
アリール基置換には、1以上の炭素における、又は可能であれば、アリール基の芳香環の1以上のヘテロ原子における、非アリール基(Hを除く)による置換が含まれる。一方、非置換アリールは、芳香族環炭素が全てHで置換されているアリール基を指し、例えば非置換フェニル(−C6H5)又はナフチル(−C10H7)である。アリール基に対する適切な置換基としては、とりわけ、アルキル基、不飽和換アルキル基、ハロゲン、OH、SH、NH2、COH、CO2H、ORe、SRe、NReRf、COReRfが挙げられ、ここでRe及びRfは独立に、アルキル、不飽和アルキル又はアリール基である。具体的な置換基は、OH、SH、Ore及びSreである(Reは低級アルキル、すなわち、1から約3個の炭素原子を有するアルキル基である。)。その他の具体的な置換基はハロゲン、より好ましくはフッ素、及び低級アルキル及び不飽和低級アルキル基(1から約3個の炭素原子を有する。)である。置換基としては、−CO2−、−CO−、−O−、−S−、−NH−、−CHCH−及び−(CH2)l−(ここで、lは、1から約5の整数であり、特に−(CH2)−である。)などの、アリール基での芳香族環間の架橋基があげられる。架橋置換基を有するアリール基の例としては、安息香酸フェニルが挙げられ、置換基としてはまた、−(CH2)l−、−O−(CH2)l−又は−OCO−(CH2)l−(ここで、lは、その部分に対して適切なように、約2から約7の整数であり、例えば1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン基においてのように、1個の芳香族環において2個の環原子を架橋する。)などの部分が挙げられる。次に、置換アルキル及び不飽和アルキル基に対しては、上述のように、アリール基のアルキル及び不飽和アルキル置換基が場合によっては置換され得る。
代替的な実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択される化合物は、
又は、別の実施形態において、医薬的に許容される、それらの、塩、エステル、鏡像異性体、鏡像異性体混合物及び混合物ではない。
別の代替的な実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択される化合物は、
又は別の実施形態において、医薬的に許容される、それらの、塩、エステル及び混合物ではない。
副作用
本明細書中に記載の方法及びプロセスのさらなる態様において、化合物は実質的な毒性及び/又は精神病的副作用を示さない。毒性副作用としては、以下に限定されないが、興奮、幻覚、混乱、昏迷、パラノイア、せん妄、精神異常様症状、ロータロッド機能障害、アンフェタミン様常同的行為、常同症、精神病記憶機能障害、運動不全、抗不安薬様影響、血圧上昇、血圧低下、脈拍上昇、脈拍低下、血液学的異常、心電図(ECG)異常、心毒性、心悸亢進、運動刺激、精神運動機能、情緒の変化、短期記憶欠損、長期記憶欠損、覚醒(興奮)、鎮静、錐体外路副作用、心室頻拍が挙げられる。心臓再分極の長期化、運動失調、認知障害及び/又は統合失調症様症状。
さらに、別の実施形態において、本明細書中に記載のプロセス及び方法に従い選択又は同定される化合物は、NMDA受容体アンタゴニストの他のクラスに伴う実質的な副作用がない。ある実施形態において、このような化合物は、実質的に、興奮、幻覚、混乱及び昏迷(Davisら(2000)Stroke、31(2):347−354;Dienerら(2002)、J Neurol 249(5):561−568);パラノイア及びせん妄(Grottaら(1995)、J Intern Med 237:89-94);精神異常様症状(Loscherら、(1998)、Neurosci Lett 240(1):33−36);低い治療効果比(Dawsonら(2001)、Brain Res 892(2):344−350);アンフェタミン様常同的行為(Potschkaら(1999)、Eur J Pharmacol 374(2):175−187)を含む、セルフォテル、D−CPPene(SDZ EAA 494)及びAR−R15896AR(ARL15896AR)などの、グルタミン酸部位のNMDAアンタゴニストに伴う副作用を示さない。別の実施形態において、このような化合物は、顕著な記憶機能障害及び運動不全(Wlaz,P.(1998)、Brain Res Bull 46(6):535-540)を含む、HA−966、L−701,324、d−シクロセリン、CGP−40116及びACEA1021などのグリシン部位のNMDAアンタゴニストに伴う副作用を示さない。またさらなる実施形態において、このような化合物は、精神病様影響(Hoffman,DC.(1992)、J Neural Transm Gen Sect 89:1−10);認知障害(自由再生、認識記憶及び注意の低下;Malhotraら(1996)、Neuropsychopharmacology14:301−307);統合失調症様症状(Krystalら(1994)、Arch Gen Psychiatry51:199−214;Lahtiら(2001)、Neuropsychopharmacology25:455−467)及び多動及び常動(stereotpy)の増加(Fordら(1989)Physiology and behavior 46:755−758を含む、MK−801及びケタミンなどのNMDA高親和性受容体チャネルブロッカーの副作用を示さない。
さらなる追加的又は代替的実施形態において、化合物は、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、少なくとも30:1、少なくとも40:1、少なくとも50:1、少なくとも75:1、少なくとも100:1又は少なくとも1000:1以上の治療指数を有する。治療反応を生じるのに要する用量に対する、毒性又は致死性の影響を生じるのに要する用量の比として、治療指数を定義することができる。これは、中央値毒性用量(群の50%が薬物の副作用を示す投与量)と中央値有効用量(特定の様式において集団の50%が薬物に反応する投与量)との間の比であり得る。治療指数が高いほど、薬物はより安全であるとみなされる。これは、有用な効果を生じるためにそれが行う毒性反応を引き起こすのにより高い用量を用いることを単純に示す。
当業者にとって公知の何らかの方法により、化合物の副作用プロファイルを調べることができる。ある実施形態において、例えば自発運動及び/又はローターロッド性能を測定することにより、運動不全を測定し得る。ローターロッド実験は、加速的なロッド上に動物が居続けられる持続時間を測定することを含む。別の実施形態において、例えば、短期記憶に対して受動回避パラダイム;Sternberg記憶スキャン及びペアドワード(paird words)、又は長期記憶に対して絵の自由再生遅延を用いることにより、記憶機能障害を評価することができる。さらなる実施形態において、例えば、高架式十字迷路において抗不安薬様の影響を測定することができる。他の実施形態において、血圧及び/又は体温測定及び/又は副作用に対して試験するために行われる心電図により、心臓機能を監視することができる。他の実施形態において、例えば、重要なフリッカー融合頻度閾値、選択反応時間及び/又は身体の揺れを分析することにより、精神運動機能及び覚醒(興奮)を測定することができる。他の実施形態において、例えば自己評価を使用して、気分を評価することができる。さらなる実施形態において、例えばPANSS、BPRS及びCGIを用いて統合失調症の症状を評価することができ、HAS及びS/Aスケールを用いて副作用を評価することができる。
IV.疾患
本発明のさらなる態様において、本明細書中に記載のプロセス又は方法に従い選択される化合物を投与することにより、患者を治療するための方法を提供する。低pHを誘発する何らかの疾病、状態又は疾患を本明細書中に記載の方法に従い治療し得る。
さらに、本明細書中に記載の特性を示す化合物の有効量を投与することにより、pH低下に伴う虚血、低酸素又は興奮毒性カスケードの進行を緩和するための方法を提供する。さらに、本明細書中に記載の特性を示す化合物を投与することにより、pH低下に伴う梗塞体積を減少させるための方法を提供する。さらに、本明細書中に記載の特性を示す化合物を投与することにより、pH低下に伴う細胞死を減少させるための方法を提供する。またさらに、本明細書中に記載の特性を示す化合物を投与することにより、pH低下を伴う虚血事象に伴う行動の欠陥を軽減するための方法を提供する。
ある実施形態において、本明細書中に記載の方法又はプロセスに従い選択される化合物を投与することにより、虚血性損傷又は低酸素症の患者を治療する又は虚血性損傷もしくは低酸素症に伴う神経毒性を予防もしくは治療するための方法を提供する。ある特定の実施形態において、虚血性損傷は脳卒中であり得る。他の実施形態において、虚血性損傷は、以下に限定されないが次の1つから選択され得る:外傷性脳損傷、バイパス術後の認知障害、頸動脈血管形成術後の認知障害;及び/又は低体温循環停止後の新生児虚血。
別の特定の実施形態において、虚血性損傷は、くも膜下出血後の血管けいれんであり得る。くも膜下出血とは、血液がくも膜(脳を包む膜)下に集まる異常な状態を指す。この領域は、くも膜下腔と呼ばれ、通常は脳脊髄液を含有する。くも膜下腔における血液の蓄積及び、結果として起こる血管の血管けいれんにより、脳卒中、発作及びその他の合併症が引き起こされ得る。本明細書中に記載の方法及び化合物を使用して、くも膜下出血の患者を治療することができる。ある実施形態において、本明細書中に記載の方法及び化合物を使用して、例えば、くも膜下出血の結果として起こり得る、脳卒中及び/又は虚血を含む、くも膜下出血の毒性影響を限定することができる。特定の実施形態において、本明細書中に記載の方法及び化合物を使用して、外傷性くも膜下出血の患者を治療することができる。ある実施形態において、外傷性くも膜下出血は、頭部損傷によるものであり得る。別の実施形態において、患者は、自然発生的なくも膜下出血であり得る。
別の実施形態において、本明細書中に記載の方法又はプロセスに従い選択される化合物を投与することにより、神経因性疼痛又は関連疾患の患者を治療する方法を提供する。ある一定の実施形態において、神経因性疼痛又は関連疾患は、以下に限定されないが、末梢性糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛、複合性局所疼痛症候群、末梢神経障害、化学療法誘発性神経因性疼痛、癌性神経因性疼痛、神経因性腰痛、HIV神経因性疼痛、三叉神経痛及び/又は中枢脳卒中後疼痛を含む群から選択され得る。
神経因性疼痛は、異所的に、及びしばしば、末梢又は中枢神経系で病的プロセスによる進行性の有害事象なく生じるシグナルを伴い得る。この機能不全は、異痛症、痛覚過敏、断続的知覚異常及び自然発生的な、灼熱感、疼くような感覚、突き刺すような感覚、発作性の感覚又は電気的感覚、知覚異常、痛覚過敏及び/又は感覚異常などの共通の症候を伴い得、これらもまた、本明細書中に記載の化合物及び方法により治療することができる。
さらに、本明細書中に記載の化合物及び方法を用いて、以下に限定されないが、外傷、虚血;以下に限定されないが、糖尿病、糖尿病性神経障害、アミロイドーシス、アミロイドポリニューロパチー(一次及び家族性)、モノクローナルタンパク質を伴うニューロパチー、脈管ニューロパチー、HIV感染、ヘルペスゾスター−−帯状疱疹及び/又はヘルペス後神経痛を含む、感染又は進行性の代謝又は毒性疾患から、感染又は内分泌疾患から;ギラン−バレー症候群に伴うニューロパチー;ファブリー病に伴うニューロパチー;解剖学的異常による絞扼;三叉神経及びその他のCNS神経痛;悪性腫瘍;以下に限定されないが、脱髄性の炎症性疾患、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群を含む、炎症状態又は自己免疫疾患;及び以下に限定されないが、特発性末梢細径線維ニューロパチーを含む潜源性の原因を含む、末梢又は中枢神経系病的事象から起こる神経因性疼痛を治療することができる。本明細書中に記載の方法及び組成物に従い治療することができる神経因性疼痛のその他の原因としては、以下に限定されないが、毒物又は薬物(ヒ素、タリウム、アルコール、ビンクリスチン、シスプラチン及びジデオキシヌクレオシドなど)への曝露、食生活又は吸収異常、免疫グロブリン血症、遺伝的な異常及び切断(乳腺切除を含む)が挙げられる。神経因性疼痛はまた、神経根障害及び手根管症候群などの神経線維の圧迫によるものであり得る。
別の実施形態において、本明細書中に記載の方法又はプロセスに従い選択される化合物を投与することにより、脳腫瘍の患者を治療するための方法を提供する。さらなる実施形態において、本明細書中に記載の方法又はプロセスに従い選択される化合物を投与することにより、神経変性疾患の患者を治療するための方法を提供する。ある実施形態において、神経変性疾患はパーキンソン病であり得る。別の実施形態において、神経変性疾患は、アルツハイマー病、ハンチントン病及び/又は筋萎縮性側索硬化症であり得る。
さらに、本明細書中に記載の方法又はプロセスに従って選択された化合物を予防的に使用して、本明細書中に記載のようなものなど、このような疾患又は神経学的状態を予防又は防御することができる。ある実施形態において、本明細書中に記載の方法及び化合物を用いて、遺伝的傾向など虚血事象の傾向がある患者を予防的に治療することができる。別の実施形態において、本明細書中に記載の方法及び化合物を用いて、血管けいれんを示す患者を予防的に治療することができる。さらなる実施形態において、本明細書中に記載の方法及び化合物を用いて、心臓バイパス術を受けた患者を予防的に治療できる。
さらに、本明細書中に記載の方法又はプロセスに従い選択される化合物を投与することにより、次の疾患又は神経学的状態を治療するための方法を提供する:以下に限定されないが、慢性神経損傷、慢性疼痛症候群(以下に限定されないが、糖尿病性ニューロパシー、一時的又は持続性血管閉塞後の虚血、発作、拡延性抑圧、脚不穏症、低炭酸症、高炭酸症、糖尿病性ケトアシドーシス、胎児仮死、脊髄損傷、外傷性脳損傷、てんかん重積、てんかん、低酸素症、周産期低酸素症、脳震盪、片頭痛、低炭酸症、過呼吸、乳酸アシドーシス、出産時の胎児仮死、脳グリオーマ及び/又は網膜症。
V.投与/処方
医薬的に許容される担体又は希釈剤と場合によっては組み合わせて、本明細書中に記載の化合物又は医薬的に許容されるそれらのプロドラッグ、エステル及び/又は塩の有効量をホストに投与することにより、本明細書中に記載の疾患の何れかに罹患している哺乳動物及び特にヒトを含むホストを治療することができる。例えば、経口、非経口、静脈内、皮内、筋肉内、皮下、舌下、経皮、気管支投与、咽頭喉頭投与、鼻腔内、クリームもしくは軟膏などの局所投与、直腸投与、関節内投与、嚢内投与、くも膜下投与、膣内投与、腹腔内投与、眼内投与、吸入によるもの、口内投与又は経口もしくは鼻内噴霧など、何らかの適切な経路により、活性化合物を投与することができる。
無機又は有機酸由来の医薬的に許容される塩の形態で、本発明の化合物を使用することができる。「医薬的に許容される塩」は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などなく、ヒト及び下等動物の組織との接触での使用に適切な、健全な医学的判断の範囲内にある塩を意味し、妥当な損益比と釣り合っている。医薬的に許容される塩は当技術分野で周知である。例えば、P.H.Stahlらが、「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use」(Wiley VCH,Zurich,Switzerland:2002)において医薬的に許容される塩を詳細に記載している。本発明の化合物の最終単離及び精製の際に、又は別個に適切な有機酸と遊離塩基官能基を反応させることにより、インシトゥで塩を調製することができる。代表的な酸付加塩としては、以下に限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファスルホン酸塩、二グルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸、重炭酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びウンデカン酸塩が挙げられる。また、塩化、臭化及びヨウ化、メチル、エチル、プロピル及びブチルなどのハロゲン化低級アルキル;ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミル硫酸塩などのジアルキル硫酸塩;塩化、臭化及びヨウ化、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルなどの長鎖ハロゲン化物;臭化ベンジル及び臭化フェンエチル及びその他のようなハロゲン化アリールアルキルのような試薬を用いて、塩基性窒素含有基を四級化することができる。水溶性もしくは油溶性又は分散性生成物をこれにより得ることができる。医薬的に許容される酸付加塩を形成するために使用できる酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸などの無機酸及びシュウ酸、マレイン酸、コハク酸及びクエン酸などの有機酸が挙げられる。
本発明の化合物の最終単離及び精製の際に、医薬的に許容される金属陽イオンの水酸化物の炭酸塩もしくは重炭酸塩などの適切な塩基又はアンモニアもしくは有機一級、二級もしくは三級アミンと、カルボン酸含有部分を反応させることにより、塩基付加塩をインシトゥで調製することができる。医薬的に許容される塩としては、以下に限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアルミニウム塩などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属に基づく陽イオン及び、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミンなどを含む無毒性四級アンモニウム及びアミン陽イオンが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンとしては、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどが挙げられる。
医薬的に許容される塩はまた、例えば、生理学的に許容される陰イオンを与える適切な酸、アミンなどの十分に塩基性の化合物を反応させることにより、当技術分野で周知の標準的手段を用いて得ることができる。カルボン酸の、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムもしくはリチウム)又はアルカリ土類金属(例えばカルシウム又はマグネシウム)塩も使用することができる。
処方物は、都合よく、単位投与剤形で与えることができ、製薬分野で周知の何らかの方法により調製することができる。本発明の化合物又は医薬的に許容される塩もしくはその溶媒和物(「活性化合物」)に、1以上の補助的化合物からなる担体を混合する段階が全ての方法に含まれる。一般に、均一かつ緊密に活性化合物を液体担体もしくは微粉化固体担体もしくは両方と混合し、次いで、必要に応じて、生成物を所望の製剤へと成形することにより、処方物を与える。
化合物又は医薬的に許容される、エステル、塩、溶媒和物又はプロドラッグを、所望の作用に害を与えない他の活性物質と、又は所望の作用を与える物質と混合することができる。非経口、皮内、皮下又は局所適用に使用される溶液又は懸濁液としては、例えば次の成分が挙げられる:注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又はその他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの等張性を調整する物質が挙げられる。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製の、アンプル、使い捨てシリンジ又は複数回投与バイアルに封入することができる。静脈内投与の場合、具体的な担体は、生理食塩水又はリン酸緩衝食塩水(PBS)である。
非経口注入のための本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される、滅菌水性もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョン及び、滅菌の注射可能な溶液又は懸濁液に再構成するための滅菌粉末を含む。適切な水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、それらの適切な混合物、植物油(オリーブ油など)及び、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合は必要な粒子サイズの維持により、及び界面活性剤の使用により、適切な流動性が維持され得る。
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含むアジュバントを含有し得る。様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などにより、微生物の作用を確実に防ぎ得る。例えば糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが望ましい場合もある。例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの、吸収を遅延させる物質の使用により、注射可能な医薬形態の吸収を延長させ得る。
場合によって、薬物の効果を延長させるために、皮下又は筋肉内注入からの薬物の吸収速度を遅くすることが望ましい場合が多い。水溶性が低い、結晶性又は非晶質の液体懸濁液の使用により、これを達成し得る。次に、薬物の吸収速度は、結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る、溶解速度に依存する。あるいは、油性ビヒクル中で薬物を溶解又は懸濁することにより、非経口投与薬物形態の吸収を遅延させる。
活性化合物に加えて、懸濁液は、例えば、懸濁剤、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガカント及びそれらの混合物のような懸濁剤を含有し得る。
不活性希釈剤に加えて、処方組成物はまた、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味料、香味料及び香料などのアジュバントも含み得る。
活性化合物はまた、適切であれば1以上の賦形剤を伴う、マイクロカプセル又はナノカプセル封入形態であり得る。
ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生体分解性ポリマーにおいて薬物のマイクロカプセル封入マトリクスを形成することにより、注射用デポー形態を調製する。ポリマーに対する薬物の比及び使用する具体的なポリマーの性質に依存して、薬物放出速度を制御することができる。その他の生体分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射製剤はまた、生体組織に適合する、リポソーム又はマイクロエマルジョンに薬物を封入することにより調製する。
例えば、細菌保持フィルターに通してろ過することにより、又は滅菌水に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤、又は使用直前にその他の滅菌注射用メディウムを組み込むことにより、注射用製剤を滅菌することができる。適切な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて公知の技術に従い、注射用製剤、例えば滅菌注射用液又は油性懸濁液を処方し得る。滅菌注射用製剤はまた、1,3−ブタンジオール中の溶液など、無毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の、滅菌注射用溶液、懸濁液又はエマルジョンでもあり得る。使用し得る許容可能なビヒクル及び溶媒の中でも、水、リンゲル液、U.S.P.及び当張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、滅菌不揮発性油を溶媒又は懸濁メディウムとして都合よく使用する。この目的のために、合成モノ又はジグリセリドを含む何らかの無刺激性の不揮発性油を使用することができる。さらに、注射用液の調製においてオレイン酸などの脂肪酸を使用する。
非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内及び関節内投与を含む。)投与のための処方物としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び、処方物を意図する受容者の血液と等張にする溶質を含有し得る、水性及び非水性滅菌注射溶液;及び、懸濁剤及び増粘剤を含み得る、水性及び非水性滅菌懸濁液が挙げられる。単位用量又は複数用量の容器(例えば、密封アンプル及びバイアル)で処方物を与えることができ、使用直前に例えば生理食塩水、注射用の水などの滅菌液体担体の添加のみが必要なフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管し得る。既に述べられている種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から、即席注射溶液及び懸濁液を調製し得る。
本発明の処方の別の方法は、水溶性を高めるポリマーに本明細書中に記載の化合物を混合することを含む。適切なポリマーの例としては、以下に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリ(d−グルタミン酸)、ポリ(1−グルタミン酸)、ポリ(1−グルタミン酸)、ポリ(d−アスパラギン酸)、ポリ(1−アスパラギン酸)、ポリ(1−アスパラギン酸)及びそれらのコポリマーが挙げられる。分子量が約5,000から約100,000のポリグルタミン酸を使用することができ、分子量が約20,000から約80,000のポリグルタミン酸を使用することができ、分子量が30,000から60,000のポリグルタミン酸も使用することができる。基本的に米国特許第5,977,163号(参照により本明細書中に組み込む。)に記載のプロトコールを使用して、エステル連結を介して、本発明のエポチロンの1以上のヒドロキシルにポリマーを結合させる。具体的な結合部位としては、本発明の21−ヒドロキシ−誘導体の場合、炭素−21から外れたヒドロキシル部位が挙げられる。その他の結合部位としては、以下に限定されないが、炭素3から外れたヒドロキシル及び/又は炭素7から外れたヒドロキシルが挙げられる。
さらに別の処方方法において、本発明の化合物をモノクローナル抗体に共役させることができる。このストラテジーにより、本発明化合物の標的を具体的な標的に向けることができるようになる。共役抗体の設計及び使用のための一般的なプロトコールは、「Monoclonal Antibody−Based Therapy of Cancer」[Michael L.Grossbard、編(1998)]に記載されている。
単回投与形態を調製するために担体材料と合わせ得る活性化合物の量は、治療対象及び投与の具体的な投与様式により変化する。例えば、静脈内使用のための処方物は、約1mg/mLから約25mg/mL、好ましくは約5mg/mLから15mg/mL、より好ましくは約10mg/mLの範囲の本発明化合物の量を含有し得る。本発明の組成物に従い、1日当たり約0.001mg/kgから1日当たり約2500mg/kgの用量範囲が普通である。好ましくは、用量範囲は、1日当たり約0.1mg/kgから1日当たり約1000mg/kg、より好ましくは用量範囲は、1日当たり約0.1mg/kgから1日当たり約500mg/kg(1日当たり1mg/kg、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20g/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、200mg/kg、300mg/kg、400mg/kg、500mg/kg及びこの範囲において与えられた値のいずれか2個の間の値を含む。)である。ヒトに対する用量範囲は通常1日当たり約0.005mgから100gである。あるいは、本発明による用量範囲は、本発明化合物の血液血清レベルが約0.01μMから約100μM、好ましくは約0.1μMから約100μMとなるようなものである。本発明による血清レベルの適切な値としては、以下に限定されないが、約0.01μM、約0.1μM、約0.5μM、約1μM、約5μM、約10μM、約15μM、約20μM、約25μM、約30μM、約35μM、約40μM、約45μM、約50μM、約55μM、約60μM、約65μM、約70μM、約75μM、約80μM、約85μM、約90μM、約95μM及び約100μM、ならびに、これらの値のいずれか2個の内の範囲にある何らかの血清レベル(例えば約10μMと約60μMとの間)が挙げられる。錠剤又は不連続単位で与えられる投与製剤のその他の形態は、このような投与量範囲又はこれらの範囲の間の範囲で有効である本発明の化合物の1以上の量を都合よく含有する。
投与形態
当技術分野で標準的な公知の投与形態(固体投与形態、半固体投与形態又は液体投与形態、ならびにこれらの形態のそれぞれのさらに細かいカテゴリー)の何れかで本発明の化合物及び処方物を投与することができる。
経口投与のための固体投与形態としては、カプセル、カプレット、錠剤、丸剤、粉末、トローチ剤及び顆粒が挙げられる。このような固体投与形態において、クエン酸ナトリウム又はリン酸2カルシウムなどの少なくとも1個の不活性な医薬的に許容される賦形剤又は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなどの担体及び/又はa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びサリチル酸などの充てん剤もしくは増量剤;b)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアラビアゴムなどの結合剤;c)グリセロールなどの保湿剤;d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;e)パラフィンなどの溶液遅延剤;f)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;g)セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;h)カオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤;及びi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物などの潤滑剤と、活性化合物を混合する。カプセル、錠剤及び丸剤の場合、投与形態はまた、緩衝剤も含有し得る。
ラクトースもしくは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いた軟及び硬充てんゼラチンカプセルにおいて、同様のタイプの固体組成物もまた充てん剤として使用し得る。
腸溶性コーティング及び製薬処方技術において周知のその他のコーティングなどのコーティング及びシェルとともに、錠剤、カプセル、丸剤及び顆粒の固体投与形態を調製することができる。これらは、場合によっては、乳白剤を含有し得、それらの活性化合物のみを放出する、又は好ましくは、遅延様式で腸管のある部分において放出する、組成物でもあり得る。使用できる埋め込み組成物の例としては、ポリマー性物質及びワックスが挙げられる。
場合によっては1以上の補助化合物とともに圧縮又は成形することにより錠剤を調製し得る。適切な機械において、場合によっては結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、平滑剤、界面活性剤又は分散剤と混合して、粉末又は顆粒などの自由流動性形態の活性化合物を圧縮することにより、圧縮錠剤を調製し得る。適切な機械において、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を成形することにより、成形錠剤を調製し得る。場合によっては錠剤をコーティングするか又は切れ目を入れ、そこで活性化合物が徐放又は制御放出されるように処方することができる。
直腸又は膣投与のための組成物は、好ましくは、周囲温度で固体であるが体温で液体となり、その結果直腸又は膣腔において融解し、活性化合物を放出する、カカオバター、ポリエチレングリコール又は坐薬ワックスなどの適切な非刺激性賦形剤又は担体と本発明の化合物を混合することにより調製できる坐薬である。
半液体投与形態としては、柔らかい構造のために固体として認められないが、液体としては濃厚すぎる投与形態が挙げられる。これらとしては、本発明の活性化合物を含有する、クリーム、ペースト、軟膏、ジェル、ローション及びその他の半固体エマルジョンが挙げられる。
経口投与のための液体投与形態としては、医薬的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられる。活性化合物に加えて、液体投与形態は、例えば、水又はその他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油など。)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル及びそれらの混合物など。)などの当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含有し得る。
経皮パッチなどの適用により、皮膚を介して本発明の化合物を含有する処方物を投与し得る。ポリアクリルアミド、ポリシロキサン又はこの両方などのマトリクス及び、物質が皮膚に送達される速度を制御するための適切なポリマー製の半透過性膜から、パッチを調製し得る。その他の適切な経皮パッチ処方及び形態は、米国特許第5,296,222号及び同第5,271,940号、ならびにSatas,D.ら、「Handbook of Pressure Sensitive Adhensive Technology、第2版、Van Nostrand Reinhold,1989:25章、pp.627−642に記載されている。
粉末及びスプレーは、さらに、本発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末及びこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有し得る。スプレーはさらに、クロロフッ化炭化水素などの通常の推進剤を含有し得る。このような賦形剤は、例えば、「Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3版」、A.H.Kibbe編(American Pharmaceutical Association and Pharmaceutical Press,Washington,DC,2000)(その全体の内容を参照により本明細書中に組み込む。)に記載されている。
制御放出処方物
ある実施形態において、身体からの急速な排出又は急速な放出が起こらないように化合物を保護する担体とともに、本発明の活性化合物を調製する(インプラント及びマイクロカプセル封入送達系を含む制御放出処方物など)。酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ酢酸などの、生体分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような処方物の調製のための方法は、当業者にとって明らかである。
説明のためであって、限定するためではなく、次の実施例を与える。
実施例