本発明は、シールユニットを備えるシリンダヘッドガスケットに関するものであり、前記シールユニットは、特に燃焼室開口のような少なくとも一つの貫通開口と、互いに相互作用する少なくとも二つのシール層とを有し、前記二つのシール層の一方のものは前記貫通開口を取り囲む少なくとも一つの弾性ビードを備えており、前記二つのシール層の他方のものはこの弾性を制限する制限デバイスを備えており、前記制限デバイスは対向する側面に凹部及び凸部を交互に有していて、前記凹部及び凸部は少なくとも部分的に一つの凹部が一つの凸部に対向するようになっている。
欧州特許出願公開第1298365号明細書は、少なくとも一つの燃焼室開口を有するシールプレートをシールユニットとして有する金属性のシリンダヘッドガスケットを開示しており、前記シールプレートは少なくとも二つの金属薄板層を有しており、前記金属薄板層の第1のものは、燃焼室開口を取り囲むビードにして垂直に弾性的に変形可能な少なくとも一つのビードを備えており、第2のものは、燃焼室開口を取り囲むと共にビードの変形を制限する少なくとも一つの変形制限手段を備えている。可能な最も硬い変形制限を得るために、公知の解決法ではオリジナルの第2の金属薄板層は鉄鋼薄板によって形成され、前記第2の金属薄板層は冷間の流動的プレス成形によって塑性変形されることが可能であり、及び第2の金属薄板層の制限手段は正面図において、型押しされた離散的な凹部の二次元のパターンを形成し、流動的プレス成形によって準備された凹部の合計体積は、第2の金属薄板の材料によって形成された凸部にして、凹部が準備されたとき押しのけられた凸部の合計体積に少なくとも概略的には等しい。この公知の解決法は非常に良好な密閉特性を有するが、個々の型押しされた凹部における二次元パターンを準備することは製造技術に関して非常に複雑であり従ってコストを高める。
国際公開第01/96768号パンフレットは、少なくとも一つの貫通開口(燃焼室開口)が形成された少なくとも一つの金属の層を有する平坦なシールとして作られたシリンダヘッドガスケットを開示している。この又は少なくとも一つの金属の層は、それぞれの燃焼室開口の周囲に波形又は鋸歯状の形で輪郭形成された少なくとも特定の領域に形成され、及び少なくとも前記輪郭形成されるところの層は、所要の非常に高い弾性限度に基づいて、ばね鋼から構成されなければならず、前記輪郭形成は追加的に形成された波形成形されていないビードのための変形制限手段を有する。
従来、例えばシール層に溶接されたリング又は折り畳みシートのような在来的デザインの剛性制限手段(ストッパ)が非常な低弾性部分を有し、前記低弾性部分は、このためにつまりエンジン領域において存在する圧縮力のために用いられる鋼の高い弾性係数に起因してミクロンの変動に制限される。実験は、この硬い挙動が燃焼室の領域における不均一な圧力分布という結果を招くことを示した。波形又は鋸歯状の及び台形状の輪郭形成による公知の解決法では、シール層(輪郭形成)における凸部と凹部の交互の連続のために薄く型押し成形されたウェブ断面に基づいて、特に同時に減少される表面の圧縮をともなう弾性的挙動が実現される。更にストッパの幅にかけて広がる一定圧力が個々の波形の弾性的応答によって獲得される。
特開平11−108191号公報は、シール層の一つのための制限手段(ストッパ)を実現するための一般的なシリンダヘッドガスケットを開示しており、前記シリンダヘッドガスケットは、波形又は鋸歯状輪郭をほぼ削除しているがストッパブロックを用いており、前記ストッパブロックは、横断面においてブロックとして形成され、また矩形横断面を有する凸部及び凹部を有しており、前記凸部及び凹部は交互に連続するものとして対向側面で互いに対して位置がずれている。結果として拡大したウェブ断面に基づいて、制限手段(ストッパ)は挙動において硬く作られ、これは同様にそれぞれのビードシールの負担を軽減する。しかしながら、凸部と引き続く凹部との間の鋭いエッジに基づいてシール要素が破損する可能性がある。従ってその公知の解決法は、柔軟材料の挙動を有するプラスチックとしてのフッ素ゴムを凹部に充填することによってこの欠点を取り除いている。ところがこの方法は実行する上で複雑で高価であり、また作動状態において充填された柔軟材料が非意図的に溶出することが想定される。
この最新の従来技術に基づいて、本発明の目的は、制限手段(ストッパ)を有するシール層のための波形及び鋸歯状輪郭形成を回避する一方で、有害な圧力ピークが回避されるがそれでもなお非常にかたい構造形であって製造に好適で且つ適用の信頼度が高い非常にかたい構造形が実現されるシール解決法が発明されるように、公知のシリンダヘッドガスケットをそれらの利点を維持する一方で更に改良することである。この目的は請求項1の特徴全体を有するシリンダヘッドガスケットによって達成される。
請求項1の特徴部分で特徴付けられたように、凹部及び凸部の少なくとも一部の横断面が台形であり、前記台形は他方のシール層の一方の側面で隣接して形成された凹部と凸部との間を斜めに走る境界壁を有している。また二つの側面の隣接して互いに対向する境界壁が、他方のシール層のウェブ断面の境界を形成し、前記ウェブ断面が、この二つの側面の対向する凹部の間で境界を定められたウェブ断面より大きいか又はそれに等しいので、斜めに走る境界壁に基づいて、またそうでなければウェブ断面は最も類似した一般的な解決法に比較してそれらの寸法は拡大されるが、このシール層の自由なウェブ断面へ作用する力は好適である。その結果シール要素がストッパ領域で非意図的に破損されることが防止されるだけでなく、その凸部及び凹部を有する制限手段が非常にかたい挙動を示し、このことは少なくとも主要なシール機能を果たすビードがエンジン作動中の過大な変形に対して保護されることを保証する。
このように著しい弾性的及び塑性的挙動を同時に低減した表面圧力とともに得てシリンダヘッドガスケット全体のシール機能を確実にするために、波形又は鋸歯状及び台形状の輪郭形成を回避しつつ、かたくデザインされたブロック部分として制限手段(ストッパ)を形成することにより、燃焼室開口における有害な圧力ピークが回避される一方でバランスした圧力分布が得られることは、シリンダヘッドガスケットの技術分野で通常の知識を有する者には意外なことである。
制限手段の実現に対する本発明による解決法が波形又は鋸歯状の輪郭形成を用いないので、加工が難しく且つその弾性的挙動のために制限手段の小さな程度の補剛にしか貢献できないばね鋼の使用を中止することができる。本発明による解決法は、調和のとれた硬さ及び破壊強度及び降伏点の上昇を含む材料の強度特性の顕著な変化を得るために交互に続く形で凹部及び凸部ブロック構造体に型押し成形する例えば冷間の流動的プレス成形のような特に流動的プレス成形法の形の塑性成形法によるブロック状の制限手段構造に基づく原理に由来する。この場合には、強度特性は合金鋼の強度と同等の強度が得られる。非常に大きな負荷の場合、冷間で流動的プレス成形された被加工部材の破壊強度及び従って耐久性もまた比較し得るばね鋼の被加工部材より相当に高いことが見出された。このように改良された強度特性に基づいて、凹部の形成にもかかわらず非常にかたい全体構造体が制限手段のために獲得され、前記非常にかたい全体構造体は従って荷重を受けたシール組合せ体のカバー層における所定の場所のビードを有する実際のシール手段の負担を有効に軽減することができる。
特に制限手段が、制限手段の異なる側面の隣接して対向する二つの凹部からの中間移行領域に薄い壁を有するように作られることから、強度及び剛性の増大の望ましい利点とともに材料の大幅な可塑化が成し遂げられ、逆に小さな成形程度を有する縁側領域は、波形又は鋸歯状形体の制限手段で用いられるばね鋼に比較し得る弾性的特性をなお有することができる。従って本発明による解決法は、冷間の流動的プレス成形工程の範囲内で、取付手段の基礎における塑性成形の利点を制限手段(ストッパ)のそれぞれの表面の方向における弾性的材料特性の利点に互いに有効に組合せること、及びこのようにそれらを設定することが可能である。
本発明によるシリンダヘッドガスケットの他の有利な実施例は、従属請求項の主題である。
本発明によるシリンダヘッドガスケットは、図面に示されたような一つの実施例を用いて以下に詳述される。図は概略的であって縮尺は適用されない。
図1は、全体として参照符号10で指し示されるシールユニットを有するシリンダヘッドガスケットを示しており、前記シールユニットは三つの金属層から構成され(図2参照)、前記シールユニットでは貫通開口として少なくとも基本的に丸い燃焼室開口12と更に対応する固定ねじ(不図示)の通路のためのねじ通し穴14とが開口されている。分かり易くするために、図1は内燃機関の可能な燃焼室開口の中のただ一つのものだけを示しており、前記燃焼室開口は参照符号16で指し示される縦軸線を有する。
シールユニット10は、第1上シール層18と、第3シール層として同様に形成された下シール層20と、第2中間シール層22とから基本的に構成され、前記第2中間シール層22はそれの燃焼室開口12に面する側に制限手段(ストッパ)24を備えている。上シール層18及び下シール層20は、制限手段24から離れたそれらの側に所謂丸みのあるビードとして作られたビード26、28を備えている。関係する燃焼室に加えて燃焼室開口12の燃焼ガスの漏出に対するシーリングは、二つの金属層18及び20の円形リング状に作られたビード26、28によって行われる。図示されたビードは、燃焼室開口12に同軸に延在し、また組み付けられたシリンダヘッドガスケットにおいて内燃機関の運転中に中間シール層22に対して垂直に低下して平坦化する目的でばね弾性的に変形可能でなければならず、その結果、適切な可撓性を得るために二つのシール層18、20は金属薄板材から、特にばね鋼の金属薄板から作られることが好適である。
詳述されない実施例では、それぞれのビード26、28は、それ自身において閉じていない経路をたどることも提供され得るが、シーリングは例えば設定可能な道のりの上でセグメントの形でだけ達せられる。示された円形リング形状に加えて、他の湾曲形状も可能であり、例えば蛇行構造の形及び長円形等が可能である。更に、それぞれのビード26、28は、燃焼室開口12の縦軸線16に対して同軸に形成される必要はなく、偏心して延在することも可能である。
二つのビード26及び28が運転中に過度に変形されないように、例えば二つのビードがそれらのシール機能を少なくとも完全に果たすことができないように変形されないように、制限手段(ストッパ)24が中間シール層22に備えられている。この制限手段24は、燃焼室開口12の縦軸線16に対するビード26、28の半径方向内側に配置されているが、これらのビードの半径方向外側に配置されてもよく、あるいはこのストッパ24をこれらのビードの半径方向内側及び外側の両方に設けることも可能である。更に二つのビード26、28は、中間シール層22に接触したとき一つの平面において正確に対向している必要はなく、適当な横へのオフセットもここで考えられる。しかしながら、ビード26又は28とストッパ24との相互作用を成し遂げるために、シリンダヘッドガスケットのこれら構成要素が互いに隣接して搭載されることが必要である。
図1に見られるように、縦軸線16に同軸の円形リングの形をした制限手段24は燃焼室開口12を取り囲み、制限手段24の幅は一定である。詳述されない実施例について、幅で輪郭形成されたようなストッパを得るために、燃焼室開口の周りで制限手段24の幅を変えることも可能である。示されない実施例では、ストッパの幅での輪郭形成のために、それは少なくとも一方の側に凸状アーチを備えることが可能であり、前記凸状アーチは凸状接触表面を好適に形成し、前記凸状接触表面は任意選択的にシール作用を高めるように貢献することも可能である。
外側の層は、好適には熱処理により硬化する冷間で変形可能な鋼から構成され、中間シール層22は、好適には冷間で成形加工可能な鋼から構成される。好適には、本発明に係るシリンダヘッドガスケット解決法において、制限手段24の領域内の凹部30及び凸部32は深絞りではなく流動的プレス成形、特に冷間の流動的プレス成形によって得られる。成形工具(不図示)は、凹部30及び凸部32を有する制限手段24の外側輪郭に対応する成形壁を有しており、また凹部30を成形する成形工具の成形ジョーは、凸部32を形成する間に凸部32の方向に中間シール層22の金属を押しのける。ここでは詳述されない成形工具の成形ジョーの台形の構造形の結果として、凹部30及び凸部32の横断面形状は、少なくとも制限手段24の中間の領域における形状に関して等脚台形状の台形である。例えば在来型の歯車(不図示)のフランクに似た少なくとも部分的に凸状及び/又は凹状に延びる境界壁36が台形の横断面形状を作ることは本発明の範囲にある。更に、好適には凹部30は全て等しい深さで作られてこのように溝状の通路の境界を作る。更に、好適には凹部30のそれぞれの溝の基部は、直接に隣接する領域における少なくとも一つの凹部30に幅が等しく作られる。
横断面において凹部30と凸部32の少なくとも中間に配置された部分が、前記他方の中間シール層22の一つの側面34又は38の隣接する凹部30及び凸部32の間を斜めに延びる境界壁36を有する台形であるという点で、並びに二つの側面34、38の隣接して対向する境界壁36は、これら二つの側面34、38の対向する凹部30の間で境界を定められたウェブ断面SQ2に等しいが好ましくはそれより大きい一つのウェブ断面SQ1の境界を定めるという点で、非常にかたく構築された制限手段24が形成され、(好適には25°未満の傾斜角度で作られた)傾斜した境界壁36又はその領域に沿う最適な力の流れに基づいて故障が排除される。これは、縦軸線16に平行に見たとき、隣接する凹部30は更なるウェブ断面SQ3が残るように半径方向に互いの間隔を有するという事実によって促進もされ、またウェブ断面は、SQ1がSQ2より大であってSQ2がSQ3より大であるように大きさを定められている。これらウェブ断面は、例示を目的として及び仮想のものとして図2に破線で示されている。凸部32の自由端がしかるべく調節されたなら、初期状態の台形形状に代えて樽形状という結果が生じることも可能である。
特に、本発明による冷間の流動的プレス成形工程により、SQ2の領域における横断面の材料が、異なる側面34、38において隣接して対向する二つの凹部30の間に大幅に又は完全に塑性的に形成されることが可能である。
二つの隣接する凹部30の傾斜した境界壁36は、ストッパ24の対向している側面34、38において半径方向の両方向で互いの方に傾けられているので、これは制限手段24のための追加の支持効果をもたらす。凹部30及び凸部32は、燃焼室開口12の中心に同軸の円に沿って延在するように同様に形成される。他方の中間シール層22の一つの側面34又は38の凸部32は、このシール層22の他の部分40が沿って延在するところの対向して配置可能な平面から突出する共通平面に沿って延在する。好適には、他の部分40を備える中間シール層22は制限手段24に一体に接続される。詳述されない実施例では、制限手段を鉛直に輪郭形成することも可能であり、つまりこの場合には全ての凸部が同じ高さであるとは限らない。このように、燃焼室開口の周囲の圧縮力を規定されたやり方で設定することが可能であり、また特に鉛直の輪郭形成により一様にすることもでき、その結果例えば燃焼室開口に結びついたシリンダの歪を防ぐことができる。
制限手段24は、燃焼室開口12に面したその側面42に、及び中間シール層22の他の部分40に面したその側面44に、少なくとも部分的に台形状に形成された凹部48への肩状の移行部46を設置しており、また状況への正確な適応が、ブロックとして形成されたストッパ24の基本的なかたさを有する中間シール層22の高さの付随する低減の結果として達成されることができる。制限手段24を更に硬くして安定にするために、詳述されない実施例では、中間シール層22の少なくとも一部の凹部30が、好適にはフッ素ゴム材料で充填され得る。
さらに、詳述されない実施例では、上シール層18又は下シール層20を省くことが可能であり、そのとき対向する各側面38及び34をエンジンまたはシリンダヘッドのハウジング部品上で支持することが可能である。このような二層シールでは、ストッパを与えられた金属薄板は、環状領域におけるビードによって引き起こされる圧縮の増大がビードに対向するシールの側面にも作用することが可能であるように、少なくとも保護されるべきビードの領域では非常に薄くなければならない。
ただ一つの燃焼室開口を有する、本発明によるシリンダヘッドガスケットの部分の正面図である。
図1の切断線I−Iに沿う断面図である。