Gpr100 GPCR
本願発明者らは、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、とりわけオーファンGタンパク質共役型受容体(本願発明者らは、Gpr100 GPCRと示す)、その相同体、変異体または誘導体、ならびにそれらの、Gpr100関連疾患(例えば、糖尿病および肥満症)を含む疾患の治療、軽減または診断における使用を記載する。本発明のこの実施形態および他の実施形態を、以下にさらに詳細に記載する。
Gpr100はまた、Gpcr 102およびリラキシン−3受容体−2としても知られており、Gタンパク質共役型受容体ファミリーの他のタンパク質と構造的に関連する(ヒトGpr100をコードする増幅されたcDNA産物の配列決定の結果によって示される)。配列番号1のcDNA配列は、配列番号3に示される374個のアミノ酸からなるポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(配列番号2、ヌクレオチド番号112〜1039)を含む。ヒトGpr100は、ヒト染色体1q22上にあることがわかっている。
本発明の実施には、特に断りのない限り、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来技術を使用し、かかる技術は当業者の能力内である。このような技術は、文献中に説明されている(例えば、 J. Sambrook, E. F. FritschおよびT. Maniatis, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版 Books 1−3, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F. M.ら(1995および定期的補遺; Current Protocols in Molecular Biology, ch. 9, 13, and 16, John Wiley & Sons, New York, N.Y.); B. Roe, J. Crabtree,およびA. Kahn, 1996, DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; J. M. Polak and James O’D. McGee, 1990, In Situ Hybridization: Principles and Practice; Oxford University Press; M. J. Gait(編集者), 1984, Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, Irl Press; D. M. J. LilleyおよびJ. E. Dahlberg, 1992, Methods of Enzymology: DNA Structure Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology, Academic Press; Using Antibodies : A Laboratory Manual : Portable Protocol NO. I by Edward Harlow, David Lane, Ed Harlow(1999, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN 0-87969-544-7); Antibodies : A Laboratory Manual by Ed Harlow(編集者), David Lane(編集者)(1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN 0-87969-314-2), 1855, Lars-Inge Larsson 「Immunocytochemistry: Theory and Practice」, CRC Press inc., Baca Raton, Florida, 1988, ISBN 0-8493-6078-1, John D. Pound(編); 「Immunochemical Protocols, vol 80」, in the series: 「Methods in Molecular Biology」, Human a Press, Totowa, New Jersey, 1998, ISBN 0-89603-493-3, Handbook of Drug Screening, Ramakrishna Seethala, Prabhavathi B. Fernandes(編集)(2001, New York, NY, Marcel Dekker, ISBN 0-8247-0562-9); Lab Ref: A Handbook of Recipes, Reagents, ならびにOther Reference Tools for Use at the Bench, Jane RoskamsおよびLinda Rodgers(編集), 2002, Cold Spring Harbor Laboratory, ISBN 0-87969-630-3;ならびにThe Merck Manual of Diagnosis and Therapy(第17版、 Beers, M. H.およびBerkow, R(編) ISBN: 0911910107, John Wiley & Sons)。これらの一般的なテキストの各々は、参考文献として本明細書中に援用される。
Gpr100の発現プロファイル
Gpr100 cDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅は、小腸、肺、腎臓、白血球および脾臓において、Gpr100の発現量が異なることを検出する。Gpr100 GPCRの発現プロファイルを、図2に示す。配列番号1のGpr100 cDNAを用いて、BLASTNによってヒトESTデータ源を検索した場合、骨髄(BF90022)起源のライブラリーに由来するcDNAにおいて、同一性が見出される。このことは、Gpr100が、これらの正常なまたは異常な組織において発現されることを示す。したがって、Gpr100ポリペプチド、核酸、プローブ、抗体、発現ベクターおよびリガンドは、上記組織および他の組織におけるGpr100 GPCRの過剰発現、過小発現および異常な発現に関連する疾患についての、検出、診断、治療および他のアッセイに有用である。
本発明のこの実施形態および他の実施形態を、以下にさらに詳細に記載する。
Gpr100 GPCR関連疾患
本明細書中に記載される方法および組成物によると、Gpr100 GPCRは、疾患領域を治療および診断するのに有用である。これらの疾患を、便宜上「Gpr100関連疾患」という。
従って、Gpr100欠損動物は、Gpr100関連疾患のモデルとして用いることができる。Gpr100、その断片、その相同体、変異体および誘導体、ならびにモジュレーター(特にアゴニストおよびアンタゴニストを含む)を用いて、Gpr100関連疾患を診断または治療することができる。特に、Gpr100は、その機能に作用しうる分子のスクリーニングに用いることができ、かかる分子はGpr100関連疾患を治療するために用いることができる。
本願発明者らは本明細書中に、ヒトGpr100が、ヒト染色体1q22上に位置することを示す。従って、特定の実施形態において、Gpr100 GPCRを用いて、疾患を治療または診断することができ、かかる疾患は、この遺伝子座、染色体のバンド、領域、アームまたは同一染色体上に位置する。
Gpr100 GPCRの染色体位置(すなわち、ヒト染色体1q22)と同一の遺伝子座、染色体のバンド、領域、アームまたは染色体と関連しているものとして決定された既知の疾患としては、以下のものが挙げられる(カッコ内は位置):てんかん(1q21)、ゴーシェ病(1q21)、リンパ腫進行(1q22)、Charcot-Marie-Tooth病1B型(1q22)、先天性低有髄化神経障害(1q22)、および家族性混合型高脂血症に対する感受性(1q22−q23)。
従って、好ましい実施形態によると、Gpr100 GPCRを用いて、てんかん、ゴーシェ病、リンパ腫進行、Charcot-Marie-Tooth病1B型、先天性低有髄化神経障害、および家族性混合型高脂血症に対する感受性を、本明細書中に記載される手段によって、診断または治療することができる。
Gpr100を欠損したノックアウトマウスは、実施例に示されるような表現型の範囲を示す。
要約すると、実施例に記載される実験は、II型糖尿病および肥満症へのGpr100受容体の関与を示す。Gpr100欠損マウスは、GTT、インスリン抑制検査(IST)およびグルコース刺激インスリン分泌検査(GSIST)を含む処置を受けた。II型糖尿病に見られるようなグルコース不耐性は、インスリンに応答して、筋肉、脂肪もしくは肝臓細胞がグルコースを取り込むことができないインスリン非感受性、または一般的に膵臓β細胞の機能不全により生じるインスリン欠乏のいずれか、あるいはその両方より生じうる。これらの検査は、グルコースの代謝および/または貯蔵、外因性インスリンに対する血中グルコースの感受性およびグルコースに応答したインスリン分泌に関するマウスの能力を測定する。これらの検査はまた、糖尿病および肥満症に関連する他の観察事項(例えば、食物摂取、代謝率、呼吸交換率、活性レベル、体脂肪組成、血清化学パラメータ(例えば、レプチン)、および関連器官の組織学)を見るためのものである。
実施例は、Gpr100変異動物が、一晩の断食による代謝ストレスの後、重篤な低血糖を示すことを示す。これは、食物の欠乏から6時間後に明らかとなる。
従って、Gpr100は、グルコースの調節に関与し、そのためGpr100欠損動物は、グルコース調節、特にグルコース調節に欠陥のある疾患(例えば、糖尿病)についてのモデルとして用いることができる。
Gpr100を用いて、その機能のモジュレーターをスクリーニングしうる。このようなモジュレーターは、糖尿病などの疾患に罹患している動物に投与することができる。一般的に、本願発明者らは、個体の血中糖レベルを、低下させるための方法を開示し、これは好ましくは糖尿病を治療するためのものであって、個体におけるGpr100のレベルまたは活性を減少させることを含む。本明細書中で述べたように、これは、Gpr100の発現をダウンレギュレートすることによって、またはGpr100に対するアンタゴニストを用いることによって達成できる。
実施例はまた、変異体が、グルコースに対する正常な耐性を有し、グルカゴンレベルの有意な変化を示さないことを示す。低血糖の表現型と合わせて考えると、これらの結果は、変異動物が、燃料産生のための脂肪酸酸化に切り換える能力に欠損を有することを示唆する。
従って、特に、Gpr100欠損動物は、飢餓時に、燃料産生のために脂肪酸酸化に切り換えることにおける欠陥が、要素または原因である疾患のモデルとして用いることができる。Gpr100を、その機能に作用しうる分子をスクリーニングするために用いることができ、かかる分子は、そのような疾患を治療するために用いることができる。
さらに、実施例3は、断食状態の後、年齢および性別が一致している対照マウスと比べて、ホモ接合変異体マウスが、白色脂肪組織の増加および脂肪細胞サイズの増大を示したことを示す。
従って、Gpr100は、肥満の調節に関与し、そのためGpr100欠損動物は、肥満のモデルとして用いることができる。Gpr100、その断片、それらの相同体、変異体および誘導体、ならびにモジュレーター(特にアゴニストおよびアンタゴニストを含む)を用いて、肥満症を診断または治療することができる。特に、Gpr100は、その機能に作用しうる分子のスクリーニングに用いることができ、かかる分子は、肥満症を治療するのに用いることができる。一般に、本願発明者らは、個体の体脂肪を減少させるための方法を開示し、この方法は好ましくは肥満症を治療するためのものであり、個体のGpr100のレベルまたは活性を増加させることを含む。本明細書中で述べたように、この方法は、Gpr100の発現をアップレギュレーションするか、またはGpr100に対するアゴニストを用いることによって達成できる。
Gpr100関連疾患
Gpr100関連疾患は以下のいずれかを含む:肥満または体重増加の予防を含む肥満症、食欲抑制、代謝疾患、糖尿病(I型糖尿病、およびII型疾患)ならびに関連障害および体重関連障害、障害性グルコース耐性、インスリン抵抗性症候群、症候群X、末梢神経障害、糖尿病性神経障害、糖尿病関連タンパク尿、脂質代謝障害(高血糖、高脂血症、異脂肪血症、高トリグリセリド血症を含む)、急性膵炎、循環器疾患、末梢血管疾患、高血圧症、心肥大、虚血性心疾患、高コレステロール血症、肥満症および肥満または体重増加の予防。
上記のように、Gpr100 GPCRを用いて、これら特定疾患のいずれかを、本明細書中に記載される方法および組成物のいずれかを用いて、診断および/または治療することができる。さらに、Gpr100ノックアウトが、食欲および水の摂取を抑制し、そのためGpr100機能をモジュレートできる化合物を、栄養補助製品として、または食事制限および減量プログラムに用いることが可能であったことを示した。
本願発明者らは特に、上に挙げた特定の疾患を治療または診断するために、核酸、Gpr100 GPCR核酸を含むベクター、ポリペプチド(それらの相同体、変異体または誘導体を含む)、医薬組成物、宿主細胞、ならびにGpr100 GPCR核酸および/またはポリペプチドを含むトランスジェニック動物の使用を考察する。さらに、本願発明者らは、Gpr100 GPCRと相互作用するか、またはGpr100 GPCRに結合できる化合物(好ましくはGpr100 GPCRのアンタゴニスト)、好ましくは細胞内の環状AMPの内在性レベルを低下させることができる化合物、Gpr100 GPCRに対する抗体、ならびにこれらの製造方法または同定方法を、上に述べた特定の疾患、および障害もしくは状態を診断または治療するのに使用することを考察する。特に、本願発明者らは、これらの化合物、組成物、分子などのいずれかを、特定疾患の治療または予防用ワクチンの製造に用いることを含む。本願発明者らはまた、個体における特定疾患を検出するための診断キットを開示する。
Gpr100 GPCRを用いて治療可能または診断可能な、上記またはさらなる特定疾患を同定するための連鎖地図の作成方法は、当該分野で公知であり、また本明細書中のどこかに記載されている。
グルコース調節
グルコースは、全ての器官の適切な機能および生存を確実にするために必要なものである。低血糖が細胞死を生じるが、慢性的な高血糖もまた、組織または組織の損傷を生じうる。
血漿グルコースはわずかな範囲(通常4〜7mM)で残存し、小腸からのグルコース吸収、肝臓による産生、ならびに末梢組織による摂取および代謝との間のバランスによって制御されている。食後などの、グルコースの増加した血漿レベルに応答して、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞は、インスリンを分泌する。その後、インスリンは筋肉および脂肪組織に作用し、これらの細胞へのグルコースの取り込みを刺激し、そして肝臓細胞においてグルコースの産生を阻止する。
さらに、インスリンはまた、細胞の増殖および分化を刺激し、脂質生合成、グリコゲンおよびタンパク質の合成を刺激し、脂肪分解、グリコゲン分解およびタンパク質分解を阻害することによって、脂肪、肝臓および筋肉における基質の貯蔵を促す。グルコースの血漿レベルが減少すると、膵臓のα細胞はグルカゴンを分泌し、次にこれは肝臓において解糖を刺激し、血流へグルコースを放出する。
糖尿病および肥満症は、当該分野で周知である疾患である。それぞれの大まかな説明は以下のとおりである。
糖尿病
糖尿病は、炭水化物および脂質の代謝が、インスリンによって不適切に調節されている状態と定義される。主要な2つの型の糖尿病が 同定されており、それはI型およびII型である。I型糖尿病は、それほど蔓延している型ではなく、5〜10%の糖尿病患者が罹患している。膵臓ランゲルハンス島のインスリン産生β細胞の自己免疫性の破壊によって生じると考えられる。一般的にインスリンの外生投与によって、病態生理を緩和する。II型糖尿病は、最も一般的な疾患形態であり、おそらく、インスリンの分泌および作用機構における欠損の組合せによって生じる。I型およびII型の両方の型は、同様の合併症を伴うが、別々の病態生理である。
第1段階のII型糖尿病は、正常な循環濃度のインスリンに対する筋肉および/または他の器官の不全によって特徴付けられる。これは一般に、肥満症、坐位の生活習慣、および/または遺伝的素因と関連している。引き続いて、膵臓β細胞からのインスリン分泌が増加し、かかる状態は高インスリン血症と呼ばれる。最終的に、膵臓β細胞は分泌増加を抑えることができず、障害性グルコース耐性、慢性高血糖、および組織の損傷を生じうる。血中グルコースおよび代謝の調節に関与する複合的なシグナリング経路は、異常なグルコース代謝の症状(例えば、II型糖尿病または肥満症)を治療するための、いくつかの潜在的な標的を提供する。
肥満
肥満は、少なくとも3900万人のアメリカ人(全成人の4分の1以上および子供の約5人に1人)が罹患している疾患である。毎年、米国では肥満によって、少なくとも300,000人を超える死亡を生じ、1000億ドル以上の費用が国にかかる。過去10年間にわたって、肥満である米国人の割合は、25%から32%に増加した。肥満は、Body Mass Index(BMI)によって測定され、かかるBMI は、ある人が、肥満または過体重であるか決定するために用いられる数学的な計算である。BMIは、ある人の体重(kg)をその人の身長(m)の二乗で割ることによって算出される。BMIが30またはそれ以上であれば、肥満と考えられ、BMIが25〜29.9であれば、過体重と考えられる。しかし、この診断基準は、普通よりも筋肉量が多く、体脂肪が少ない人々(例えば、スポーツ選手)については当てはまらない。7000万人を超えるアメリカ人が、過体重であると考えられる。
健康問題(限定はしないが、循環器疾患、血圧、II型糖尿病、高コレステロール、痛風、特定の型の癌、および骨関節炎が挙げられる)は、過体重状態および肥満と関連する。
Gpr100に対する同一性および類似性
Gタンパク質共役型受容体 SALPRソマトスタチンおよびアンジオテンシン様ペプチド受容体。(同一性 = 141/322(43%)、ポジティブ= 194/322(59%))。
pfamのHMM構造予測ソフトウェア(http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/search.shtml)を用いたGpr100ポリペプチド(配列番号3)の分析によって、Gpr100ペプチドが、7TM−1構造種のGPCRであることを確認した(図1を参照のこと)。
ヒトGpr100 GPCRのマウス相同体をクローン化し、その核酸配列およびアミノ酸配列を、配列番号4 および配列番号5として、それぞれ示す。配列番号4のマウスGpr100 GPCR cDNAは、ヒトGpr100 GPCR配列(配列番号2)と高程度の同一性を示すが(同一性 = 571/693(82%))、一方マウスGpr100 GPCRのアミノ酸配列(配列番号5)は、ヒトGpr100 GPCR(配列番号3)と高程度の同一性および類似性を示す(同一性 = 235/379(62%)、ポジティブ = 264/379(69%))。
したがって、ヒトおよびマウスのGpr100 GPCRは、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の大きなファミリーのメンバーである。
Gpr100 GPCRポリペプチド
本明細書中で用いられる場合、「Gpr100 GPCRポリペプチド」という用語は、配列番号3もしくは配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはその相同体、変異体もしくは誘導体をいうものと意図される。好ましくは、このポリペプチドは、配列番号3に示される配列の相同体、変異体または誘導体であるか、またはそれらを含む。
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合または改変されたペプチド結合(すなわち、ペプチドアイソスター)によって互いに結合した2またはそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質をいう。「ポリペプチド」とは、短鎖(一般的に、ペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーとして示される)と長鎖(一般に、タンパク質として示される)の両方をいう。ポリペプチドは、20遺伝子でコードされるアミノ酸以外のアミノ酸を含みうる。
「ポリペプチド」は、天然の処理(例えば、翻訳後プロセッシング)、または当該分野で周知である化学修飾技術のいずれかによって修飾されたアミノ酸配列を含む。このような修飾は、基本的なテキスト、より詳細な研究書、および多くの研究文献に十分に記載されている。修飾は、ポリペプチドのいずれかの位置(ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシ末端を含む)に生じうる。同じ型の修飾が、所定のポリペプチドのいくつかの部位において、同程度または様々な程度で存在しうることがわかる。また、所定のポリペプチドは、多数の型の修飾を含みうる。
ポリペプチドは、ユビキチン化によって分岐されえ、また分岐を有しても、有していなくても良い環状でありうる。環状、分岐、および分岐環状ポリペプチドは、翻訳後の天然のプロセスによって生じても、合成法によって作製してもよい。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、蛋白分解的プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、トランスファーRNAによって仲介されるタンパク質へのアミノ酸付加(例えば、アルギニン化)およびユビキチン化が挙げられる。例えば、Proteins - Structure and Molecular Properties, 第2版, T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York, 1993 およびWold, F., Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, pgs. 1-12 in Posttranslational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson(編), Academic Press, New York, 1983; Seifterら、「Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors」, Meth Enzymol(1990) 182:626−646 およびRattanら「Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging」, Ann NY Acad Sci(1992) 663:48−62を参照のこと。
本願明細書との関連において、「変異体」、「相同体」、「誘導体」または「断片」という用語は、配列からの、または配列に対する1(または複数の)アミノ酸の置換(substitution)、変異、改変、置換(replacement)、欠失または付加のいずれかを含む。特に断りのない限り、「Gpr100」および「Gpr100 GPCR」とは、Gpr100の変異体、相同体、誘導体および断片などを示すものを含む。
好ましくは、Gpr100に用いる場合、得られたアミノ酸配列は、GPCR活性を有し、より好ましくは、配列番号3または配列番号5に示されるGpr100 GPCRと少なくとも同一の活性を有する。特に、「相同体」という用語は、GPCR活性を有する得られたアミノ酸配列を与える構造および/または機能に関する同一性も含む。配列同一性(つまり、類似性)については、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する。より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する。これらの用語はまた、Gpr100 GPCR核酸配列の対立遺伝子変異体であるアミノ酸由来のポリペプチドを含む。
Gpr100 GPCRなどの受容体の「受容体活性」または「生物学的活性」について参照される場合、これらの用語は、Gpr100受容体の代謝または生理学的機能(同様の活性もしくは改善された活性または望ましくない副作用が少ないそれらの活性を含む)をいうものと意図される。さらに、Gpr100受容体の抗原性活性および免疫原性活性が含まれる。GPCR活性の例、およびこれらの活性を分析および定量する方法は、当該分野で公知であり、本明細書中のどこかに詳細に記載される。
本明細書中で用いられる場合、「欠失」とは、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列のいずれかにおける変化として定義され、かかる変化において、1または複数のヌクレオチド残基またはアミノ酸残基をそれぞれ、欠いている。本明細書中で用いられる場合、「挿入」または「付加」とは、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列における変化であり、天然の物質と比べて、1または複数のヌクレオチド残基またはアミノ酸残基がそれぞれ付加されることによって生じる。本明細書中で用いられる場合、「置換」とは、1または複数のヌクレオチドまたはアミノ酸が、異なるヌクレオチドまたはアミノ酸によってそれぞれ交換されることによって生じる。
Gpr100ポリペプチドはまた、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換であって、サイレント変化を生じたり、機能的に等価であるアミノ酸配列を生じたりするものを有しうる。意図的なアミノ酸置換を、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質における類似性に基づいて行いうる。例えば、負電荷のアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ、正電荷のアミノ酸としては、リジンおよびアルギニンが挙げられ、そして同様の親水性の値を有する無電荷極性のヘッド基を有するアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンが挙げられる。
保存的置換を、例えば、以下の表に従って行うことができる。第2列の同一ブロック内、好ましくは第3列の同じ行のアミノ酸を、互いに置換することができる。
Gpr100ポリペプチドはさらに、一般的にN末端またはC末端、好ましくはN末端に、異種性アミノ酸配列を含むことができる。異種性配列は、細胞内または細胞外のタンパク質のターゲティングに作用する配列を含むことができる(例えば、リーダー配列)。異種性配列はまた、Gpr100ポリペプチドの免疫原性を高めるか、ならびに/またはポリペプチドの同定、抽出および/もしくは精製を容易にする配列を含むことができる。特に好ましい別の異種性配列は、ポリアミノ酸配列(例えば、ポリヒスチジン)であり、これは好ましくはN末端である。少なくとも10アミノ酸、好ましくは少なくとも17アミノ酸であるが50アミノ酸未満のポリヒスチジン配列が、特に好ましい。
Gpr100 GPCRポリペプチドは、「成熟型」タンパク質の形態であっても、融合タンパク質などの大きなタンパク質の一部であっても良い。しばしば、さらなるアミノ酸配列を含むことが有利であり、かかるさらなるアミノ酸配列は、分泌配列もしくはリーダー配列、プロ配列、精製を助ける配列(複数のヒスチジン残基など)、または組換え製造中の安定性に必要とされるさらなる配列を含む。
Gpr100ポリペプチドは、既知の技術を用いた組換え法によって、有利に作製する。しかし、これらは、当業者に周知である技術を用いた合成法によって作製できる(例えば、固相合成)。Gpr100ポリペプチドはまた、例えば、抽出および精製を助けるための融合タンパク質として製造できる。融合タンパク質のパートナーの例としては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、6×His、GAL4(DNA結合ドメインおよび/または転写活性化ドメイン)ならびにβ−ガラクトシダーゼが挙げられる。さらに、融合タンパク質パートナーと目的のタンパク質配列の間にタンパク質分解性切断部位(例えば、トロンビン切断部位)を含め、融合タンパク質配列の除去を可能とすると便利でありうる。好ましくは融合タンパク質は、目的配列のタンパク質の機能を妨げない。
Gpr100ポリペプチドは、実質的に単離された形態でありうる。この用語は、天然の状態から人の手により変えられていることをいうものと意図される。「単離された」組成物または物質が、天然に存在する場合、その元の環境から変えるか、もしくは取り出されるか、またはその両方が行われている。例えば、生きた動物に天然に存在するポリヌクレオチド、核酸またはポリペプチドは「単離された」ものではないが、しかし、その天然の状態において共存する物質から分離されたその同じポリヌクレオチド、核酸またはポリペプチドは、「単離された」ものである(「単離された」という用語が本明細書中で用いられる場合)。
しかし、Gpr100 GPCRタンパク質は、タンパク質の意図される目的を妨げない担体または希釈剤と混合されえ、それでも実質的に単離されたものとみなされることがわかるであろう。Gpr100ポリペプチドはまた、実質的に精製された形態でありえ、その場合、調製物中にタンパク質を一般に含み、その調製物中の90%以上(例えば、95%、98%または99%)のタンパク質がGpr100 GPCRポリペプチドである。
本明細書はまた、Gpr100ポリペプチドの一部を含むペプチドに関する。Gpr100 GPCRの断片およびその相同体、変異体または誘導体を含む。ペプチドは、2〜200アミノ酸、好ましくは4〜40アミノ酸の長さでありうる。ペプチドは、本明細書中に開示されるGpr100 GPCRポリペプチドを、例えば、好適な酵素(トリプシンなど)を用いて消化したものに由来しうる。あるいは、ペプチド、断片などを、組換え法または統合的に合成することによって作製しうる。
「ペプチド」という用語は、当該分野で公知である様々な合成ペプチド変異体(例えば、レトロインベルソ(retroinverso)Dペプチド)を含む。ペプチドは、抗原決定基および/またはT細胞エピトープでありうる。ペプチドは、in vivoで免疫原性でありうる。好ましくはペプチドは、in vivoにて中和抗体を誘導することができる。
異なる種に由来するGpr100 GPCR配列を整列させることによって、アミノ酸配列のどの領域が、異なる種間で保存されており(「相同領域」)そしてどの領域が、異なる種間で変化しているか(「非相同領域」)を決定することが可能である。
そのため、Gpr100ポリペプチドは、相同領域の少なくとも一部に相当する配列を含むことができる。相同領域は、少なくとも2種間で高程度の相同性を示す。例えば、相同領域は、上記検査を用いて、アミノ酸レベルで少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性を示す。相同領域に相当する配列を含むペプチドを、以下にさらに詳細に説明するように治療ストラテジーに用いることができる。あるいは、Gpr100 GPCRペプチドは、非相同領域の少なくとも一部に相当する配列を含むことができる。非相同領域は、少なくとも2種間で低度の相同性を示す。
Gpr100 GPCRポリヌクレオチドおよび核酸
本開示は、Gpr100ポリヌクレオチド、Gpr100ヌクレオチドおよびGpr100核酸、これらの製造方法、使用などを含む(本明細書中のどこかにさらに詳細に記載される)。
「Gpr100ポリヌクレオチド」、「Gpr100ヌクレオチド」および「Gpr100核酸」という用語は、互換的に用いることができ、配列番号1、配列番号2もしくは配列番号4に示されるような核酸配列を含むポリヌクレオチド/核酸、またはその相同体、変異体もしくは誘導体をいうものと意図される。好ましくは、ポリヌクレオチド/核酸は、核酸配列配列番号1もしくは配列番号2、最も好ましくは、配列番号2の相同体、変異体もしくは誘導体であるか、またはそれらを含む。
これらの用語はまた、Gpr100ポリペプチドおよび/またはペプチドをコードすることができる核酸配列を含むことが意図される。従って、Gpr100 GPCRポリヌクレオチドおよび核酸は、配列番号3もしくは配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードすることができるヌクレオチド配列、またはその相同体、変異体もしくは誘導体を含む。好ましくは、Gpr100 GPCRポリヌクレオチドおよび核酸は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードすることができるヌクレオチド配列、またはその相同体、変異体もしくは誘導体を含む。
「ポリヌクレオチド」は一般に、ポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドをいい、これらは、未改変のRNAもしくはDNAまたは改変したRNAもしくはDNAでありうる。「ポリヌクレオチド」としては、限定はしないが、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖領域と二本鎖領域の混合型であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、一本鎖領域と二本鎖領域の混合型であるRNA、一本鎖もしくはより一般的には二本鎖、または一本鎖領域と二本鎖領域の混合型でありうるDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が挙げられる。さらに、「ポリヌクレオチド」とは、RNAもしくはDNAまたはRNAとDNAの両方を含む、三本鎖領域をいう。ポリヌクレオチドという用語はまた、安定性または他の理由のために、1または複数の改変された塩基を含むDNAまたはRNAおよび改変された骨格を有するDNAまたはRNAを含む。「改変された」塩基としては、例えば、トリチル化塩基および一般的ではない塩基(例えば、イノシン)が挙げられる。様々な改変が、DNAおよびRNAに対してなされており、そのため「ポリヌクレオチド」は、一般的に天然で見出されるようなポリヌクレオチドの、化学的、酵素的、または代謝的に改変された形態、ならびにウイルスおよび細胞に特有のDNAおよびRNAの化学的形態を包含する 。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短いポリヌクレオチド(しばしばオリゴヌクレオチドと示される)を包含する 。
多数のヌクレオチド配列が、遺伝子コードの縮重によって、同一のポリペプチドをコードしうるということは、当業者には理解されるであろう。
本明細書中に用いられるように、「ヌクレオチド配列」という用語は、ヌクレオチド配列、オリゴヌクレオチド配列、ポリヌクレオチド配列ならびにそれらの変異体、相同体、断片および誘導体(例えば、それらの一部)をいう。ヌクレオチド配列は、ゲノムまたは合成もしくは組換えを起源とするDNAまたはRNAでありえ、これらはセンス鎖もしくはアンチセンス鎖またはそれらの組み合わせ体を表す二本鎖または一本鎖でありうる。ヌクレオチド配列という用語は、組換えDNA技術を用いて調製されうる(例えば、組換えDNA)。
好ましくは、「ヌクレオチド配列」という用語は、DNAを意味する。
本明細書との関連において、「変異体」、「相同体」、「誘導体」または「断片」という用語は、Gpr100ヌクレオチド配列の配列から、またはこの配列に対する1(または複数の)核酸の置換(substitution)、変異、改変、置換(replacement)、欠失または付加のうちのいずれかを含む。特に断りのない限り、「Gpr100」および「Gpr100 GPCR」への参照は、Gpr100のそのような変異体、相同体、誘導体および断片への参照を含む。
好ましくは、得られたヌクレオチド配列は、GPCR活性、好ましくは配列番号3または配列番号5として示されるGPCRと少なくとも同一の活性を有するポリペプチドをコードする。好ましくは、「相同体」という用語は、構造および/または機能に関して同一性であり、その結果、得られたヌクレオチド配列が、GPCR活性を有するポリペプチドをコードすることも含むことが意図される。配列同一性(すなわち、類似性)に関して、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する。より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する。これらの用語はまた、配列の対立遺伝子の変異体を含む。
配列相同性の算出
本明細書中に示されるいずれかの配列に関する配列同一性は、1または複数の配列と別の配列を単純に「視認」比較し(すなわち厳密な比較)、他方の配列が、例えば、その1または複数の配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有するかを調べることによって測定できる。
相対的な配列同一性はまた、商業的に入手可能なコンピュータープログラムによって測定でき、かかるプログラムは、2または複数の配列間の同一性%を、例えば、デフォルトパラメータを用いる同一性を決定するのに好適な任意のアルゴリズムを用いて算出できる。このようなコンピュータープログラムの典型的な例は、CLUSTALである。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための他のコンピュータープログラムとしては、限定はしないが、GCG プログラムパッケージ(Devereuxら1984 Nucleic Acids Research 12: 387)およびFASTA(Atschulら1990 J Molec Biol 403−410)が挙げられる。
相同性%は、連続した配列にわたって算出することができ、すなわち1の配列を、他方の配列と整列させ、そして1の配列中の各アミノ酸を、他方の対応するアミノ酸と、一度に1残基ずつ直接比較する。これを「ギャップなし」アライメントと呼ぶ。一般に、このようなギャップなしアライメントは、比較的短い残基についてのみ行う。
非常に単純で一貫した方法であるが、例えば、別の配列対において、1つの挿入または欠失によって、以降のアミノ酸残基がアライメントから排除され、その結果、全体的なアライメントが行われた場合、相同性%が非常に減少することは考慮されない。従って、大多数の配列比較法は、全体的な相同性スコアを過度に減少させることなく、生じうる挿入および欠失を考慮した最適なアライメントを生じるように設計されている。これは、配列アライメント中に「ギャップ」を挿入し、局所的な相同性を最大限に評価するようにして達成される。
しかし、これらのより複雑な方法は、「ギャップペナルティー」をアライメント中に生じる各ギャップに割り振り、その結果同数の同じアミノ酸について、できるだけ少ない数のギャップを有する配列アライメント(2つの比較配列間でより高い関連性を反映する)は、多数のギャップを有するものに比べて高いスコアを達成する。「アフィンギャップコスト」が一般的に用いられ、これはギャップの存在には相対的に高いコストを、ギャップ中のその後の各残基については小さなペナルティーを課す。これは最も一般的に用いられるギャップスコアシステムである。高いギャップペナルティーは当然に、より少ないギャップを有する最適化されたアライメントを生じる。大多数のアライメントプログラムは、ギャップペナルティーを変更できる。しかし、配列比較にソフトウェアなどを使用する場合、デフォルト値を用いるのが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを用いる場合、アミノ酸配列についてのデフォルトギャップペネルティーは、ギャップについて−12、各伸長について−4である。
従って、最大相同性%の算出にはまず、ギャップペナルティーを考慮して、最適なアライメントを作製することを必要とする。このようなアライメントを実施するのに好適なコンピュータープログラムは、GCG Wisconsin Bestfit パッケージである(University of Wisconsin, U.S.A.; Devereuxら、1984, Nucleic Acids Research 12:387)。配列比較を実施できる他のソフトウェアの例としては、限定はしないが、BLASTパッケージ(Ausubelら、1999同書、第18章)、FASTA(Atschulら、1990, J. Mol. Biol., 403−410)および比較ツールのGENEWORKSスイートが挙げられる。BLASTおよびFASTAの両方は、オフラインおよびオンラインの検索に利用できる(Ausubelら、1999同書、7-58頁〜7-60頁)。
最終的な相同性%は、同一性によって測定しうるが、アライメントプロセス自体は一般的に、全か無かの対比較に基づかない。代わりに、換算類似性スコアマトリックスを一般に用いて、これが化学的類似性または進化距離に基づいて、各対比較にスコアを割り振る。一般的に用いられるこのようなマトリックスの例は、BLOSUM62マトリックス(BLASTスイートプログラムのデフォルトマトリックス)である。GCG Wisconsinプログラムは一般に、一般のデフォルト値またはカスタムシンボル比較表(得られるのであれば)のいずれかを使用する。GCGパッケージの一般的なデフォルト値を使用するか、または他のソフトウェアの場合は、BLOSUM62などのデフォルトマトリックスを使用するのが好ましい。
有利には、BLASTアルゴリズムを、デフォルト値を示すパラメータを用いて使用する。BLASTアルゴリズムは、http://www.ncbi.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlに詳細に記載されており、これは本明細書中に参考として援用される。検索パラメータはまた、所定のデフォルトパラメータに有利に設定することができる。
有利には、「実質的に同一」とは、BLASTによって評価する場合、少なくとも約7、好ましくは少なくとも約9および最も好ましくは10またはそれ以上のEXPECT値を有して一致する配列とみなす。BLAST検索におけるEXPECTについてのデフォルト閾値は通常、10である。
BLAST(Basic Local Aligment Search Tool)は、プログラム(blastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastx)に使用される機能的検索アルゴリズムであり、これらのプログラムは、有意性を少し充実させたKarlinおよびAltschulの統計方法(KarlinおよびAltschul 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264−68; KarlinおよびAltschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873−7; http://www.ncbi.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlを参照のこと)を使用した所見に帰する。BLASTプログラムは、配列類似性の検索に適合させ、例えば、クエリー配列に対する相同体を同定する。配列データベースの類似性検索における基本的な問題に関する考察については、Altschulら(1994) Nature Genetics 6:119−129を参照のこと。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov にて入手可能である5つのBLASTプログラムは、以下のタスクを実施する:blastp(タンパク質配列データベースに対するアミノ酸クエリー配列を比較する);blastn(ヌクレオチドデータベースに対するヌクレオチドクエリー配列を比較する);blastx(タンパク質配列データベースに対するヌクレオチドクエリー配列(両方の鎖)の6フレームの概念的翻訳産物を比較する);tblastn(6つ全てのリーディングフレーム(両方の鎖)で動的に翻訳されたヌクレオチド配列データベースに対するタンパク質クエリー配列を比較する);tblastx(ヌクレオチド配列データベースの6フレームの翻訳物に対するヌクレオチドクエリー配列の6フレームの翻訳物を比較する)。
BLASTは、以下の検索パラメータを使用する:
HISTOGRAM −各検索のスコアをヒストグラムで表示する。デフォルトはyesである(BLASTマニュアルのパラメータHを参照のこと)。
DESCRIPTIONS −報告された適合配列の短い記載の数を、特定の数に制限する。デフォルト限度は、100の記載である(マニュアルページのパラメータVを参照のこと)。
EXPECT −データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値。デフォルト値は10である(Karlin and Altschul(1990)の確率モデルによれば、10の適合は偶然ではほとんど見出されてないと予想される)。適合に帰する統計的有意性がEXPECT閾値よりも大きい場合、適合は報告されない。より低いEXPECT閾値はよりストリンジェントであり、適合が報告される機会はより少ない。分数値が許容される(BLASTマニュアルのパラメータEを参照のこと)。
CUTOFF −高スコアのセグメント対を報告するためのCutoffスコア。デフォルト値を、EXPECT値(上記を参照のこと)から計算する。HSPに帰する統計的有意性が、少なくともCUTOFF値と等しいスコアを有する1のHSPに帰するほど高い場合に限り、データベース配列についてのHSPが報告される。CUTOFF値が高いほどよりストリンジェントであり、適合が報告される機会がより少ない(BLASTマニュアルのパラメータSを参照のこと)。典型的には、EXPECTを使用して有意性の閾値をより直感的に管理することができる。
ALIGNMENTS −高スコアセグメント対(HSP:high-scoring segment pairs)を報告するための特定の数にデータベース配列を制限する。デフォルト限度は50である。これよりも多数のデータベース配列が報告のための統計的有意性の閾値を満たす場合(以下のEXPECTおよびCUTOFFを参照のこと)、最も高い統計的有意性に帰する適合のみが報告される(BLASTマニュアル中のパラメータBを参照のこと)。
MATRIX −BLASTP、BLASTX、TBLASTN、およびTBLASTXのスコア行列の変化を特定する。デフォルトマトリックスは、BLOSUM62である(Henikoff & Henikoff、1992)。有効な別の選択には、PAM40、PAM120、PAM250、およびIDENTITYが含まれる。BLASTNには代わりのスコアマトリックスは利用不可能である;BLASTNリクエストにおいてMATRIX命令を特定すると、エラーが返ってくる。
STRAND −データベース配列の先頭または末尾の鎖のみにTBLASTN検索を限定するか、クエリー配列の先頭または末尾の鎖上のリーディングフレームのみにBLASTN、BLASTX、またはTBLASTX検索を制限する。
FILTER −Wootton & Federhen(1993)Computers and Chemistry、17、149-163のSEGプログラムで決定したところの組成が複雑ではないクエリー配列のセグメント、またはClaverie & States(1993)Computers and Chemistry、17、191-201のXNUプログラムまたはBLASTN用のTatusov and LipmanのDUSTプログラム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)によって決定したところの短い周期の内部反復からなるセグメントを遮蔽する。フィルタリングにより、blast出力由来の統計学的に有意であるが生物学的に関心のないレポート(例えば、共通の酸性、塩基性、またはプロリンリッチな領域に対するヒット)が排除され、データベース配列に対する特定の適合に利用可能なクエリー配列のより生物学的に興味のある領域が残る。
フィルタープログラムによって見出された複雑でない配列を、ヌクレオチド配列中では文字「N」を使用し(例えば、「NNNNNNNNNNNNN」)、タンパク質配列中では文字「X」を使用して(例えば、XXXXXXXXX)置換する。
フィルタリングは、クエリー配列(またはその翻訳産物)のみに適用し、データベース配列には適用しない。デフォルトフィルタリングは、BLASTNではDUST、他のプログラムではSEGである。
SWISS-PROTの配列に適用した場合に、SEG、XNU、またはその両方によって全くマスクされないことは珍しいことではないので、フィルタリングによって常に結果が得られると予想すべきではない。さらに、いくつかの場合、配列全体がマスクされる場合があるが、これはフィルタリングされていないクエリー配列に対して報告された任意の適合の統計的有意性に疑いがあることを示す。
NCBI−gi −アクセッションおよび/または遺伝子座の名称に加えて、NCBI gi識別名を出力中に示す。
最も好ましくは、配列比較は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTにて提供される単純なBLAST検索アルゴリズムを用いて行う。いくつかの実施形態において、配列同一性を決定する場合に、ギャップペナルティーを用いない。
ハイブリダイゼーション
本明細書はまた、ヌクレオチド配列を含み、かかるヌクレオチド配列は、本明細書中に示される配列、またはその断片もしくは誘導体、あるいは上記いずれかの相補体にハイブリダイズすることができる。
ハイブリダイゼーションとは、「核酸の鎖が、塩基対によって相補鎖と結合することによるプロセス」(Coombs J(1994) Dictionary of Biotechnology, Stockton Press, New York NY)ならびに、Dieffenbach CWおよびGS Dveksler(1995, PCR Primer, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY)に記載されるようなポリメラーゼ連鎖反応技術において実施されるような増幅プロセスを意味する。
ハイブリダイゼーション条件は、Berger およびKimmelに教示されるように、核酸結合複合体の融解温度(Tm)に基づき(1987, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, Vol 152, Academic Press, San Diego CA)、以下に説明されるような所定の「ストリンジェンシー」を与える。
本明細書中に示されるヌクレオチド配列、またはその相補体に選択的にハイブリダイズできるヌクレオチド配列は一般に、本明細書中に示される対応するヌクレオチド配列に対して、少なくとも20、好ましくは少なくとも25または30、例えば、少なくとも40、60もしくは100またはそれ以上の連続したヌクレオチドからなる領域にわたって、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85または90%、さらにより好ましくは少なくとも95%または98%相同である。好ましいヌクレオチド配列は、配列番号1、2または4に相同である領域を含み、かかる領域は、これらの配列のうちの1に対して好ましくは少なくとも70%、80%または90%、より好ましくは少なくとも95%相同である。
「選択的にハイブリダイズ可能である」という用語は、プローブとして用いられたヌクレオチド配列が、標的ヌクレオチド配列がバックグラウンドを有意に上回るレベルでプローブにハイブリダイズすることが見出される条件下で用いられることを意味する。バックグラウンドのハイブリダイゼーションは、他のヌクレオチド配列が、例えば、スクリーニングされるcDNAまたはゲノムDNAライブラリー中に存在するために生じうる。この場合、バックグラウンドは、プローブとライブラリーの非特異的なDNA要素との間の相互作用により生じるシグナルレベルを示し、かかるレベルは、標的DNAを用いて観察される特異的な相互作用の10倍未満、好ましくは100倍未満の強度である。相互作用の強度は、プローブを例えば、32Pを用いて放射標識することによって測定できる。
中程度から最高のストリンジェンシー条件下で本明細書中に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列もまた、本発明の範囲内に含まれる。ハイブリダイゼーション条件は、BergerおよびKimmelに教示されるように(1987, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, Vol 152, Academic Press, San Diego CA)核酸結合複合体の融解温度(Tm)に基づき、以下に説明されるような所定の「ストリンジェンシー」を与える。
最高のストリンジェンシーは一般的に、約Tm−5℃(プローブのTmよりも5℃低い)にて生じ、高いストリンジェンシーは、Tmより約5℃〜10℃低い温度にて、中程度のストリンジェンシーは、Tmよりも約10℃〜20℃低い温度にて、そして低いストリンジェンシーはTmよりも約20℃〜25℃低い温度にて生じる。当業者には理解されるように、最高ストリンジェンシーにおけるハイブリダイゼーションは、同一ヌクレオチド配列を同定または検出するために用いることができ、一方中程度(または低い)ストリンジェンシーにおけるハイブリダイゼーションは、類似または関連ヌクレオチド配列を同定または検出するために用いることができる。
好ましい実施形態において、本願発明者らは、ストリンジェンシーな条件(例えば、65℃および0.1×SSC {1×SSC = 0.15 M NaCl, 0.015 M クエン酸ナトリウム pH 7.0)下で、1または複数のGpr100 GPCRヌクレオチド配列にハイブリダイズできるヌクレオチド配列を開示する。ヌクレオチド配列が二本鎖である場合、個々または組合せた二重鎖の両方の鎖も本開示に含まれる。ヌクレオチド配列が一本鎖である場合、このヌクレオチド配列の相補配列も含まれることがわかるだろう。
本開示はまた、本明細書中に示される配列、またはその断片もしくは誘導体に相補的な配列にハイブリダイズ可能であるヌクレオチド配列を含む。同様に、本開示は、関連配列にハイブリダイズ可能である配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。これらの種類のヌクレオチド配列は、変異ヌクレオチド配列の例である。この点において、「変異体」という用語は、本明細書中に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズ可能である配列に相補的な配列を含む。しかし、好ましくは、「変異体」という用語は、ストリンジェンシーな条件(例えば、65℃および0.1×SSC {1×SSC = 0.15 M NaCl, 0.015クエン酸ナトリウム pH 7.0})下で、本明細書中に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズ可能である配列に相補的な配列を含む。
Gpr100 GPCRおよび相同体のクローニング
本開示はまた、本明細書中に示される配列、またはその断片もしくは誘導体に相補的なヌクレオチド配列を含む。配列がそれらの断片に相補的である場合、その配列を、プローブとして用いて、他の生物などにおける類似したGPCR配列を同定およびクローニングすることができる。
従って、本明細書によって、ヒトおよび他の種(例えば、マウス、ブタ、ヒツジなど)に由来するGpr100 GPCR、その相同体および他の構造的または機能的に関連した遺伝子のクローニングを可能とする。配列番号1、配列番号2、配列番号4またはそれらの断片に含まれるヌクレオチド配列と同一であるか、または十分に同一であるポリヌクレオチドをcDNAおよびゲノムDNAのためのハイブリダイゼーションプローブとして用いて、適切なライブラリーからGpr100 GPCRをコードする、部分的または完全長のcDNAおよびゲノムクローンを単離しうる。このようなプローブをまた用いて、他の遺伝子(ヒト以外の種に由来する相同体およびオルソログをコードする遺伝子を含む)cDNAおよびゲノムクローンを単離することができ、かかる他の遺伝子は、Gpr100 GPCR遺伝子に対する配列類似性、好ましくは高い配列類似性を有する。ハイブリダイゼーションスクリーニング、クローニングおよび配列決定の技術は、当業者に公知であり、例えば、Sambrookら(前出)に記載されている。
一般的に、プローブとして用いるのに好適なヌクレオチド配列は、対象として示される配列と、70%同一、好ましくは80%同一、より好ましくは90%同一、さらにより好ましくは95%同一である。プローブは一般に、少なくとも15ヌクレオチドを含む。好ましくは、このようなプローブは、少なくとも30ヌクレオチドを有し、また少なくとも50ヌクレオチドを有することもできる。特に好ましいプローブは、150〜500ヌクレオチドの範囲、より具体的には約300ヌクレオチドである。
1実施形態では、Gpr100 GPCRポリペプチド(ヒト以外の種に由来する相同体およびオルソログを含む)をコードするポリヌクレオチドを得るために、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下にて、配列番号1、配列番号2、配列番号4またはそれらの断片を有する標識プローブを用いて、適切なライブラリーをスクリーニングするステップ、および部分または完全長のcDNAおよびポリヌクレオチド配列を含むゲノムクローンを単離するステップを含む。このようなハイブリダイゼーション技術は、当業者に周知である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、上記または他の条件(50%ホルムアミド、5×SSC(150 mM NaCl, 15mMクエン酸三ナトリウム)、50 mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート溶液、10% 硫酸デキストランおよび20μg/mlの変性剪断サケ精子DNA)を含む溶液中にて、一晩42℃でインキュベートする)であり、それに続いて約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する。
Gpr100 GPCRの機能アッセイ
クローン化した推定Gpr100 GPCRポリヌクレオチドは、配列分析または機能アッセイによって確認できる。例えば、推定Gpr100 GPCRまたは相同体は、以下のように受容体活性について分析できる。Gpr100受容体cDNAをコードする線状化したプラスミドテンプレートに由来するキャップRNA転写物は、標準的な方法に従って、in vitroにてRNAポリメラーゼを用いて合成する。In vitro転写物は、終濃度0.2mg/mlにて水に懸濁する。成体のメスヒキガエルより卵巣の葉を取り出し、濾胞を除去した第V段階の卵母細胞を得て、そしてRNA転写物(10ng/卵母細胞)を、マイクロインジェクション装置を使用して50 nlボーラスで注射する。2つの電極電圧クランプを用いて、アゴニストへの曝露に反応したアフリカツメガエル(Xenopus)の各卵母細胞からの電流を測定する。記録は、室温にて無Ca2+バース培地中で行う。またXenopus系を用いて、既知のリガンドおよびリガンドを活性化させる組織/細胞抽出物をスクリーニングすることができる(以下にさらに詳細に記載される)。
Gpr100 GPCR発現アッセイ
Gpr100 GPCR関連疾患を処置するのに有用な治療を設計するために、Gpr100(野生型または特定の変異体)の発現プロファイルを決定することが有用である。従って、当該分野で公知である方法を用いて、Gpr100を発現する器官、組織および細胞型(ならびに発生段階を)決定することができる。例えば、従来のまたは「電気的」ノーザンを行うことができる。また、逆転写酵素PCR(RT−PCR)を用いて、Gpr100遺伝子または変異体の発現をアッセイできる。Gpr100の発現プロファイルを決定するためのより感度の高い方法としては、当該分野で公知であるようなRNAaseプロテクションアッセイが挙げられる。
ノーザン分析は、遺伝子の転写物の存在を検出するために用いられる実験室用の技術であり、特定の細胞型または組織に由来するRNAがその表面に結合している膜への標識ヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを含む(Sambrook, 前出 第7章およびAusubel, F. M.ら、前出第4章および第16章)。BLASTを用いる類似したコンピューター技術(「電気的ノーザン」)を用いて、GenBankまたはLIFESEQデータベース(Incyte Pharmaceuticals)などのヌクレオチドデータベースの同一分子または関連分子について検索することができる。この種の分析は、複数の膜をベースとしたハイブリダイゼーションよりも迅速であるという利点を有する。さらに、コンピューター検索の感度を変更して、特定の適合が、完全な一致として、または相同として分類されるのかを決定できる。
上記プローブを含むポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、動物およびヒトの疾患に対する治療および診断を発見するための研究試薬および材料として用いることができる(本明細書中のどこかにさらに詳細に記載される)。
Gpr100 GPCRポリペプチドの発現
本開示は、Gpr100 GPCRポリペプチドを作製する方法を含む。本方法は一般に、Gpr100 GPCRポリペプチド、またはその相同体、変異体、もしくは誘導体をコードする核酸を含む宿主細胞を、好適な条件(すなわち、Gpr100 GPCRポリペプチドが発現される条件)下にて培養することを含む。
生物学的に活性なGpr100 GPCRを発現するために、Gpr100 GPCRまたはその相同体、変異体もしくは誘導体をコードするヌクレオチド配列を、適切な発現ベクター(すなわち、挿入したコード配列の転写および翻訳に必要とされるエレメントを含むベクター)に挿入する。
当業者に周知である方法を用いて、Gpr100 GPCRをコードする配列ならびに適切な転写および翻訳制御エレメントを含む発現ベクターを構築する。これらの方法は、in vitro組換えDNA技術、合成技術、およびin vivo遺伝子組換えを含む。このような技術は、Sambrook, J.ら(1989; Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第4、8、および16−17章, Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y.)ならびにAusubel, F. M.ら(1995および定期補遺; Current Protocols in Molecular Biology, 第9、13、および16章, John Wiley & Sons, New York, N.Y.)に記載されている。
様々な発現ベクター/宿主系を用いて、Gpr100 GPCRをコードする配列を含めたり、発現させたりできる。これらの発現ベクター/宿主系としては、限定はしないが、微生物(例えば、組換えバクテリオファージ、プラスミド、もしくはコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換させた細菌);酵母発現ベクターを用いて形質転換させた酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)もしくはタバコモザイクウイルス(TMV))または細菌発現ベクター(例えば、TiプラスミドもしくはpBR322プラスミド)を用いて形質転換させた植物細胞系あるいは動物細胞系が挙げられる。これは、用いた宿主細胞によって限定されない。
「制御エレメント」または「調節配列」とは、ベクターの非翻訳領域にあるものであり(すなわち、エンハンサー、プロモーター、ならびに5’および3’の非翻訳領域)、宿主細胞のタンパク質と相互作用し、転写および翻訳を実施する。このようなエレメントは、その効力および特異性において様々でありうる。用いたベクター系および宿主に応じて、構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む、多数の好適な転写および翻訳エレメントを用いることができる。例えば、細菌系にてクローニングする場合、誘導性プロモーター(例えば、BLUESCRIPT ファージミド(Stratagene, La Jolla, Calif.)またはPSPORT1プラスミド(GIBCO/BRL)のハイブリッドlacZプロモーター)などを用いることができる。バキュロウイルス多角体プロモーターを昆虫細胞に用いることができる。植物細胞のゲノム(例えば、ヒートショック、RUBISCO、および貯蔵タンパク質遺伝子)または植物ウイルス(例えば、ウイルスプロモーターまたはリーダー配列)に由来するプロモーターまたはエンハンサーを、ベクターにクローン化できる。哺乳動物細胞系において、哺乳動物の遺伝子または哺乳動物のウイルスに由来するプロモーターが好ましい。Gpr100 GPCRをコードする配列の多数のコピーを含む細胞系統を作製する必要がある場合、SV40またはEBVに基づくベクターを、適切な選択可能なマーカーと共に用いることができる。
細菌系において、多数の発現ベクターを、Gpr100 GPCRの意図される用途に応じて選択できる。例えば、大量のGpr100 GPCRが、抗体の誘導に必要とされる場合、容易に精製される融合タンパク質の高レベルの発現に作用するベクターを用いることができる。このようなベクターとしては、限定はしないが、多機能性E. coli クローニングおよび発現ベクター(例えば、BLUESCRIPT(Stratagene))ならびにpINベクター(Van Heeke, G. and S. M. Schuster(1989) J. Biol. Chem. 264:5503−5509)などが挙げられ、かかる多機能性E. coli クローニングおよび発現ベクターにおいては、Gpr100 GPCRをコードする配列を、アミノ末端Metおよびそれに続くβ−ガラクトシダーゼの7残基の配列と共にインフレームでベクターにライゲーションし、その結果ハイブリッドタンパク質を作製できる。また、pGEXベクター(Promega, Madison, Wis.)を用いて、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として、外来性ポリペプチドを発現することができる。一般に、このような融合タンパク質は、可溶性であり、グルタチオンアガロースビーズに吸着させ、その後、遊離グルタチオンの存在下で溶出することによって、溶解した細胞から容易に精製できる。このような系で作製したタンパク質は、ヘパリン、トロンビンまたは因子XAプロテアーゼ切断部位を含むように設計し、そして目的のクローン化されたポリペプチドが、GST部分から自由に放出され得るようにできる。
酵母(Saccharomyces cerevisiae)の場合、構成的または誘導性プロモーターを含む多数のベクター(例えば、α因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGH)を用いることができる。総説については、Ausubel(前出)およびGrantら(1987; Methods Enzymol. 153:516−544)を参照のこと。
植物発現ベクターを用いる場合、Gpr100 GPCRをコードする配列の発現は、多数のプロモーターのうちのいずれかによって駆動できる。例えば、ウイルスプロモーター(例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモーター)を、単独でまたはTMVに由来するωリーダー配列と組み合わせて用いることができる(Takamatsu, N.(1987) EMBO J. 6:307−311.)。あるいは、植物プロモーター(例えば、RUBISCOの小サブユニットのプロモーターまたは熱ショックプロモーター)を用いることができる(Coruzzi, G.ら(1984) EMBO J. 3:1671−1680; Broglie, R.ら(1984) Science 224:838−843; およびWinter, J.ら(1991) Results Probl. Cell Differ. 17:85−105.)。これらの構築物は、直接的なDNA形質転換または病原体媒介性トランスフェクションによって植物細胞に導入できる。このような技術は、一般に利用可能である多数の総説に記載されている(例えば、 Hobbs, S. or Murry, L. E. in McGraw Hill Yearbook of Science and Technology(1992) McGraw Hill, New York, N.Y.; pp. 191−196.を参照のこと)。
また、昆虫系を用いて、Gpr100 GPCRを発現することができる。例えば、このような系に1つにおいて、Autographa californica 核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして用いて、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞またはウワバ(Trichoplusia)の幼生において外来遺伝子を発現させる。Gpr100 GPCRをコードする配列を、ウイルスの非必須領域(例えば、多角体遺伝子)にクローン化し、多角体プロモーターの制御下に配置できる。Gpr100 GPCRの首尾のよい挿入によって、多角体遺伝子を不活性化し、コートタンパク質を欠いている組換えウイルスを作製する。次に、組換えウイルスを用いて、例えば、S. frugiperda細胞またはTrichoplusiaの幼生を感染させることができ、これらはその中でGpr100 GPCRを発現することができる(Engelhard, E. K.ら(1994) Proc. Nat. Acad. Sci. 91:3224−3227.)。
哺乳動物宿主細胞において、多数のウイルスベースの発現系を用いることができる。アデノウイルスを、発現ベクターとして用いる場合、Gpr100 GPCRをコードする配列を、後期プロモーターと3連のリーダー配列からなる、アデノウイルス転写/翻訳複合体にライゲーションできる。ウイルスゲノムの非必須E1またはE3領域への挿入を用いて、生存可能なウイルスを得ることができ、かかるウイルスは、感染した宿主細胞においてGpr100 GPCRを発現することができる(Logan, J.およびT. Shenk(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. 81:3655−3659.)。さらに、転写エンハンサー(例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー)を用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増加させることができる。
従って、例えば、Gpr100受容体が、ヒト胎児腎293(HEK293)細胞または接着性dhfr CHO細胞のいずれかで発現する。受容体の発現を最大にするために、一般的に全ての5’および3’非翻訳領域(UTR)を、pCDNまたはpCDNA3ベクターへ挿入する前に、受容体cDNAから除去する。これらの細胞は、リポフェクチンによって、個々の受容体cDNAを用いてトランスフェクトし、そして400mg/mlのG418存在下にて選択する。選択から3週間後、個々のクローンを拾い、そしてさらなる分析にために増殖させる。ベクターのみを用いてトランスフェクトしたHEK293またはCHO細胞をネガティブコントロールとする。個々の受容体を安定して発現する細胞系統を単離するために、約24個のクローンを一般的に選択し、ノーザンブロット分析によって分析する。受容体mRNAは一般に、分析されたG418耐性クローンの約50%で検出可能である。
また、ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミド中に含まれ、発現されうる断片よりも大きなDNA断片を送達することができる。約6 kb〜10 MbのHACを構築し、治療目的で、従来の送達方法(リポソーム、ポリカチオン性アミノポリマー、またはベシクル)によって送達する。
また、特定の開始シグナルを用いて、Gpr100 GPCRをコードする配列のより効率的な翻訳を達成することができる。このようなシグナルは、ATG開始コドンと隣接配列を含む。Gpr100 GPCRをコードする配列ならびにその開始コドンおよび上流配列が、適切な発現ベクターに挿入される場合、さらなる転写または翻訳制御シグナルは必要でなくなりうる。しかし、コード配列またはその断片のみが挿入される場合、ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルを備えなければならない。さらに、開始コドンは、正確なリーディングフレーム内に入れ、全挿入物の翻訳を確実にしなければならない。外因性翻訳エレメントおよび開始コドンは、様々な起源のものでありえ、天然および合成の両方でありうる。発現効率は、用いた特定の細胞系に適切なエンハンサー(例えば、文献中に記載されるもの)を包含することによって、高めることができる(Scharf, D.ら(1994) Results Probl. Cell Differ. 20:125−162.)。
さらに、宿主細胞株を、挿入配列の発現をモジュレートする能力、または発現されたタンパク質を所望の形態にプロセシングする能力について選択しうる。このようなポリペプチドの改変としては、限定はしないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が挙げられる。また、タンパク質の「プレプロ」形態を切断する翻訳後プロセシングを用いて、正確な挿入、折りたたみ、および/または機能を容易にすることができる。翻訳後活性の特定の細胞機構および特徴的な機構を有する異なる宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、HEK293、およびWI38)は、American Type Culture Collection(ATCC, Bethesda, Md.)より入手可能であり、外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確実にするように選択しうる。
長期間、組換えタンパク質を高収率で産生すること、安定して発現することが好ましい。例えば、Gpr100 GPCRを安定して発現することが可能である細胞系統を、発現ベクターを用いて形質転換することができ、かかる発現ベクターは、ウイルス複製開始点および/または内在性発現エレメントならびに選択可能なマーカー遺伝子を、同一または別々のベクターに含むことができる。ベクター導入後、細胞を、選択培地に代えるまで冨栄養培地中で約1〜2日間増殖させることができる。選択可能なマーカーの目的は、セレクションに対する耐性を与えるためであり、その存在によって、導入配列を首尾よく発現する細胞の増殖および回収を可能とする。安定した形質転換細胞の耐性クローンは、細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖させることができる。
多くの選択系を用いて、形質転換細胞系統を回収することができる。これらの選択系としては、限定はしないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wigler, M.ら(1977) Cell 11:223−32)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy, I.ら(1980) Cell 22:817−23)が挙げられ、これらは、tk−細胞またはapr−細胞にそれぞれ用いることができる。さらに、代謝拮抗剤、抗生物質、または除草剤耐性を、選択の基盤として用いることができる。例えば、dhfrは、メトトレキセートに対する耐性を与え(Wigler, M.ら(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. 77:3567−70)、nptは、アミノグリコシドネオマイシンおよびG−418に対する耐性を与え(Colbere−Garapin, F.ら(1981) J. Mol. Biol. 150:1−14)、そしてalsまたはpatはそれぞれ、クロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を与える(Murry, 前出)。さらなる選択可能な遺伝子が記載されている(例えば、細胞がトリプトファンに代えてインドールを利用することを可能にするtrpB、または細胞がヒスチジンに代えてヒスチノール(histinol)を利用することを可能にするhisD(Hartman, S. C.およびR. C. Mulligan(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:8047−51))。最近、可視マーカーを使用することが、アントシアニン、β−グルクロニダーゼおよびその基質のGUS、ならびにルシフェラーゼおよびその基質のルシフェリンなどのマーカーによって人気を得ている。これらのマーカーは、形質転換体を同定するだけではなく、特定のベクター系に起因する一過性または安定したタンパク質発現の量を定量することにも用いることができる(Rhodes, C. A.ら(1995) Methods Mol. Biol. 55:121−131.)。
マーカー遺伝子発現の有無は、目的遺伝子の存在も示唆するが、遺伝子の存在および発現を確かめる必要がありうる。例えば、Gpr100 GPCRをコードする配列が、マーカー遺伝子配列内に挿入されている場合、Gpr100 GPCRをコードする配列を含む形質転換細胞を、マーカー遺伝子機能がないことによって同定できる。あるいは、マーカー遺伝子を、単一のプロモーターの制御下に、Gpr100 GPCRをコードする配列とタンデムに配置することができる。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子と同様の発現を示す。
あるいは、Gpr100 GPCRをコードする核酸配列を含み、Gpr100 GPCRを発現する宿主細胞は、当業者に公知である様々な方法によって同定することができる。これらの方法としては、限定はしないが、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションおよびタンパク質バイオアッセイまたは免疫アッセイ技術が挙げられ、核酸もしくはタンパク質配列の検出および/または定量を行うための、膜、溶液、またはチップベースの技術を含む。
Gpr100 GPCRをコードするポリヌクレオチド配列の存在を、Gpr100 GPCRをコードするポリヌクレオチドのプローブまたは断片を使用したDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーション、あるいは増幅によって検出できる。核酸増幅ベースのアッセイは、Gpr100 GPCRをコードするDNAまたはRNAを含む形質転換体を検出するために、Gpr100 GPCRをコードする配列に基づくオリゴヌクレオチドまたはオリゴマーを使用することを含む。
Gpr100 GPCRの発現を検出および測定するための様々なプロトコルであって、Gpr100 GPCRタンパク質に特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを用いるプロトコルは、当該分野で公知である。このような技術の例としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。Gpr100 GPCRの2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いる、2箇所のモノクローナルベースの免疫アッセイが好ましいが、競合的結合アッセイを用いることもできる。これらの、および他のアッセイは、当該分野において、例えば、Hampton, R.ら(1990; Serological Methods, a Laboratory Manual, Section IV, APS Press, St Paul, Minn.)およびMaddox, D. E.ら(1983; J. Exp. Med. 158:1211−1216)に十分に記載されている。
様々な標識およびコンジュゲート技術が当業者に公知であり、種々の核酸およびアミノ酸アッセイに用いることができる。Gpr100 GPCRをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための標識化ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプローブを作製する方法は、標識ヌクレオチドを用いたオリゴ標識、ニックトランスレーション、末端標識、またはPCR増幅を含む。あるいは、Gpr100 GPCRをコードする配列またはそれらの断片を、mRNAプローブを製造するために、ベクターにクローン化できる。このようなベクターは、当該分野で公知であり、商業的に利用可能であり、また適切なRNAポリメラーゼ(T7、T3、またはSP6)と標識したヌクレオチドを添加することによって、in vitro にてRNAプローブを合成するために用いることができる。これらの方法は、様々な商業的に入手可能なキットを使用することによって行うことができ、かかるキットは、Pharmacia & Upjohn(Kalamazoo, Mich.)、Promega(Madison, Wis.)、およびU.S. Biochemical Corp.(Cleveland, Ohio)より供給される。検出を容易にするために用いられうる好適なレポーター分子および標識としては、放射性核種、酵素、蛍光、化学ルミネセンス、または発色剤、および基質、補因子、阻害剤、磁性粒子などが挙げられる。
Gpr100 GPCRをコードするヌクレオチド配列を用いて形質転換した宿主細胞を、細胞培養からのタンパク質の発現および回収に好適な条件下で培養できる。形質転換細胞によって産生されたタンパク質は、用いた配列および/またはベクターに応じて、細胞膜に配置されるか、分泌されるか、または細胞内に含まれうる。当業者に理解されるように、Gpr100 GPCRをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、シグナル配列を含むように設計することができ、かかるシグナル配列は、原核細胞膜または真核細胞膜を介したGpr100 GPCRの分泌を指令する。他の構築物は、ポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列にGpr100 GPCRをコードする配列を結合するように用いることができ、かかるポリペプチドドメインは、可溶性タンパク質の精製を容易にする。このような精製を容易にするドメインとしては、限定はしないが、金属キレート化ペプチド(例えば、固体化した金属上で精製することを可能とするヒスチジン−トリプトファンモジュール)、プロテインAドメイン(固定化した免疫グロブリン上で精製することを可能にする)およびFLAGS伸長/親和性精製系(Immunex Corp., Seattle, Wash.)に用いられるドメインが挙げられる。切断可能なリンカー配列(因子XAまたはエンテロキナーゼ(Invitrogen, San Diego, Calif.)に特異的な配列)を精製ドメインとGpr100 GPCRコード配列との間に含めることによって、精製を容易にすることができる。このような発現ベクターの1つは、Gpr100 GPCRとチオレドキシンまたはエンテロキナーゼ切断部位の前にある6つのヒスチジン残基をコードする核酸を含む融合タンパク質の発現を提供する。ヒスチジン残基は、固定化した金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMIAC;Porath, J.ら(1992) Prot. Exp. Purif. 3: 263−281に記載されている)における精製を容易にするが、エンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質からGpr100 GPCRを精製するための方法を提供する。融合タンパク質を含むベクターの考察は、Kroll, D. J.ら(1993; DNA Cell Biol. 12:441−453)に与えられる。
Gpr100 GPCRの断片は、組換え製造だけでなく、固相技術を用いた直接ペプチド合成によっても製造することができる(Merrifield J.(1963) J. Am. Chem. Soc. 85:2149−2154.)。タンパク質合成は、手動による技術または自動化を使用することによって行うことができる。自動化合成は、例えば、Applied Biosystems 431Aペプチド合成機(Perkin Elmer)を用いて達成できる。Gpr100 GPCRの様々な断片を、別々に合成し、その後組み合わせて全長分子を作製することができる。
バイオセンサー
Gpr100ポリペプチド、核酸、プローブ、抗体、発現ベクターおよびリガンドは、バイオセンサーとして(およびバイオセンサーを製造するのに)有用である。
Aizawa(1988), Anal. Chem. Symp. 17: 683によると、バイオセンサーとは、分子を認識するための受容体(例えば、固定化抗体または受容体(例えば、Gpr100 Gタンパク質共役型受容体)を有する選択層)と、測定値を送信するためのトランスデューサーとの独特の組合せであると定義されている。このようなバイオセンサーの一群は、受容体と周囲の溶媒との相互作用に起因する表面層の光学的性質に生じる変化を検出する。このような技術の中でも、特に、エリプソメトリー法および表面プラズモン共鳴法が言及されうる。Gpr100を含むバイオセンサーを用いて、Gpr100リガンド(例えば、プリンもしくはプリン類似体などのヌクレオチド)、またはこれらリガンドの類似体の存在あるいはレベルを検出することができる。このようなバイオセンサーの構築は、当該分野で周知である。
従って、Gpr100受容体を発現する細胞株を、[3H] イノシトールリン酸または他の二次メッセンジャーの受容体が促進する形成を介して、リガンド(例えば、ATP)を検出するためのレポーター系として用いることができる(Wattら、1998, J Biol Chem May 29;273(22):14053−8)。受容体−リガンドバイオセンサーはまた、Hoffmanら、2000, Proc Natl Acad Sci U S A Oct 10;97(21):11215−20に記載されている。また、Gpr100を含む光学的バイオセンサーおよび他のバイオセンサーを用いて、Gタンパク質と他のタンパク質との相互作用のレベルまたはその存在を検出することができる(例えば、Figlerら、1997, Bio化学 Dec 23;36(51):16288−99およびSarrioら、2000, Mol Cell Biol 2000 Jul;20(14):5164−74)に記載されるように)。バイオセンサーのセンサーユニットは、例えば、US 5,492,840に記載されている。
スクリーニングアッセイ
相同体、変異体、および誘導体を含むGpr100 GPCRポリペプチドを(天然であろうと、組換え体であろうと)、化合物のスクリーニング方法に用いることができ、かかる化合物は受容体に結合し、Gpr100を活性化するか(アゴニスト)、またはGpr100の活性化を抑制する(アンタゴニスト)。従って、またGpr100ポリペプチドを用いて、例えば、細胞、無細胞調製物、化学物質ライブラリー、および天然産物の混合物中の小分子基質およびリガンドの結合を評価することができる。これらの基質およびリガンドは、天然の基質およびリガンドであっても、構造的または機能的模倣体であってもよい。Coliganら、Current Protocols in Immunology 1(2):Chapter 5(1991)を参照のこと。
Gpr100 GPCRポリペプチドは、多くの病理を含む多数の生物学的機能を担う。従って、一方で、Gpr100 GPCRを刺激し、他方で、Gpr100 GPCRの機能を阻害できる化合物および薬物を見出すことが望ましい。一般に、アゴニストおよびアンタゴニストを、Gpr100関連疾患のような状態に対する治療および予防の目的で用いる。
Gpr100 GPCRタンパク質と相互作用できそうな候補化合物の合理的な設計は、ポリペプチドの分子形態の構造的な研究に基づくことができる。どの位置が特定の他のタンパク質と相互作用するのかを決定するための1つの方法は、物理学的な構造決定(例えば、X線結晶学または二次元NMR技術)である。これらは、どのアミノ酸残基が、分子接触領域を形成するのかについて、ガイダンスを与える。タンパク質構造決定の詳細な説明については、BlundellおよびJohnson(1976) Protein Crystallography, Academic Press, New Yorkを参照のこと。
合理的設計の代替法は、スクリーニング方法を用い、かかる方法は、その表面にGpr100受容体ポリペプチドを発現する適切な細胞を作製することを、一般に含む。このような細胞は、動物、酵母、ショウジョウバエ(Drosophila)または大腸菌(E. coli)に由来する細胞を含む。受容体を発現する細胞(または発現された受容体を含む細胞膜)を次に、試験化合物と接触させ、結合または機能応答に関する刺激もしくは阻害を観察する。例えば、Xenopusの卵母細胞に、Gpr100 mRNAまたはポリペプチドを注射し、試験化合物への曝露によって誘導された電流を、測定された電圧クランプを用いて測定することができる(本明細書中のどこかにさらに詳細に記載されるように)。
さらに、マイクロ生理計測(microphysiometric)アッセイを用いて、Gpr100受容体活性をアッセイすることができる。様々な二次メッセンジャー系の活性化により、細胞から少量の酸が放出される。形成された酸は、主に、細胞内のシグナル伝達工程を動かすのに必要とされる増加した代謝活性によるものである。細胞を取り巻く培地のpH変化は、非常にわずかであるが例えば、CYTOSENSORマイクロ生理計測計(microphysiometer:Molecular Devices Ltd., Menlo Park, Calif.)によって検出可能である。CYTOSENSORは、受容体の活性化を検出することができ、かかる受容体は、Gpr100 Gタンパク質共役型受容体などの細胞内シグナル伝達経路を利用するエネルギーと共役する。
Gpr100受容体を用いて個々に各候補化合物を試験する代わりに、候補リガンドのライブラリーまたはバンクを、有利に、作製およびスクリーニングできる。従って、例えば、200を超える推定受容体リガンドのバンクを、スクリーニングのために構築した。バンクは以下のものを含む:伝達物質、ヒト7回膜貫通(7TM)型受容体により作用することが知られているホルモンおよびケモカイン;ヒト7回膜貫通型受容体の推定アゴニストでありうる天然の化合物、哺乳動物の対応物が未だに同定されていない非哺乳動物の生物学的に活性なペプチド;および、天然で見出されていないが、未知の天然のリガンドと共に7回膜貫通型受容体を活性化する化合物。このバンクを用いて、本明細書のどこかにさらなる詳細が記載されているような、機能的アッセイ(すなわち、カルシウム、cAMP、マイクロ生理計測計、卵母細胞電気生理学など、本明細書中のいずれかを参照のこと)および結合アッセイの両方を使用して、既知リガンドの受容体をスクリーニングする。しかし、多数の哺乳動物受容体が存在し、これらに対する同種の活性化するリガンド(アゴニスト)または不活性化するリガンド(アンタゴニスト)は未だに存在しない。従って、これら受容体の活性リガンドは、今までに同定されているようなリガンドバンク内に含まれていないかもしれない。従って、Gpr100受容体をまた、組織抽出物に対して機能的にスクリーニングして(カルシウム、cAMP、マイクロ生理計測計、卵母細胞電気生理学などを使用する、機能的スクリーニング)、天然のリガンドを同定する。ポジティブな機能的反応を生じる抽出物を連続的にさらに分画し、活性化リガンドが単離および同定されるまで画分を本明細書中に記載のようにアッセイすることができる。
HEK 293細胞に発現される7TM受容体は、PLCおよびカルシウム可動化の活性化ならび/またはcAMP刺激もしくは阻害と機能的に連結していることが示されている。従って、1つのスクリーニング技術は、Gpr100 GPCR受容体を発現する細胞(例えば、トランスフェクトしたXenopus卵母細胞、CHOまたはHEK293細胞)を、細胞外pHまたは細胞内カルシウムの、受容体の活性化によって生じる変化を測定する系において使用することを含む。この技術において、化合物を、Gpr100受容体ポリペプチドを発現している細胞と接触させることができる。二次メッセンジャーの反応(例えば、シグナル伝達、pH変化またはカルシウムレベルの変化)を次に測定し、可能性のある化合物が、受容体を活性化または阻害するか否かを決定する。
このような実験において、受容体トランスフェクト細胞またはベクター対照細胞におけるHEK 293細胞の基本的なカルシウムレベルは、正常な範囲内(100 nM〜200 nM)にみられる。Gpr100 GPCRまたは組換えGpr100 GPCRを発現するHEK 293細胞を、fura 2と共にロードし、その日の内に、150以上の選択したリガンドまたは組織/細胞抽出物を、アゴニスト誘導カルシウム可動化について評価する。同様に、Gpr100 GPCRまたは組換えGpr100 GPCRを発現するHEK 293細胞は、標準的なcAMP定量アッセイを用いて、cAMP産生の刺激または阻害について評価する。カルシウムの一過性変動またはcAMPの変動を示すアゴニストを、ベクター対照細胞にて試験し、反応が、受容体を発現するトランスフェクト細胞に特有なものであるかを決定する。
別の方法は、Gpr100受容体媒介性のcAMPの阻害または刺激および/またはアデニル酸シクラーゼの蓄積を決定することによって、受容体阻害剤をスクリーニングすることを含む。このような方法は、真核細胞をGpr100受容体を用いてトランスフェクトし、細胞表面上に受容体を発現させることを含む。次に細胞を、当該受容体の存在下にて可能性のあるアンタゴニストに曝す。次に、cAMPの蓄積量を測定する。可能性のあるアンタゴニストが、受容体に結合して、それによって受容体結合を阻害した場合、受容体媒介性cAMPのレベルまたはアデニル酸シクラーゼ活性は減少するか、または増加する。
好ましい実施形態において、スクリーニングは、細胞内カルシウム濃度の変化を検出することを用いて、Gpr100のアゴニストおよびアンタゴニストについてスクリーニングする。特に、本願発明者らは、Gpr100のアンタゴニストが、好ましくは適切にトランスフェクトした細胞のリガンド誘導性細胞内カルシウムの放出を減少、低下またはブロックする方法を開示する。好ましくは、細胞内カルシウムの増加レベルは、Gpr100のアンタゴニストの存在下で、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上、だけ減少する。好ましくは、細胞内カルシウムの放出は、Gpr100のアンタゴニストの存在下において、1 mM、2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、10 mM、15 mM、25 mM、35 mM、45 mM、60 mM、70 mMまたはそれ以上だけ低下させる。
本願発明者らはさらに、Gpr100のアゴニストが、適切にトランスフェクトされた細胞の細胞内カルシウム濃度を増加させる方法を開示する。好ましくは、コンダクタンスを、Gpr100のアゴニストの存在下において、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上だけ増加させる。好ましくは、コンダクタンスを、Gpr100のアゴニストの存在下において、1 mM、2 mM、3 mM、4 mM、5 mM、10 mM、15 mM、25 mM、35 mM、45 mM、60 mM、70 mMまたはそれ以上だけ増加させる。
Gpr100受容体のアゴニストまたはアンタゴニストを検出するための別の方法は、酵母ベースのテクノロジーである(本明細書中に参考として援用される米国特許第5,482,835号に記載される)。
候補化合物がタンパク質(特に、抗体またはペプチド)である場合、候補化合物のライブラリーを、ファージディスプレイ技術を用いてスクリーニングできる。ファージディスプレイは、分子スクリーニングのプロトコルであり、かかるプロトコルは、組換えバクテリオファージを利用する。このテクノロジーは、候補化合物ライブラリー由来の1つの化合物をコードする遺伝子を用いてバクテリオファージを形質転換し、その結果、各ファージまたはファージミドが、特定の候補化合物を発現することを含む。形質転換したバクテリオファージ(好ましくは、固体支持体に固定されている)は、適切な候補化合物を発現し、それをファージコート上に示す。Gpr100ポリペプチドまたはペプチドに結合可能である特定の候補化合物を、親和性相互作用に基づく選択ストラテジーによって濃縮する。次に、好結果の候補因子の特徴付けを行う。ファージディスプレイは、標準的な親和性リガンドスクリーニングテクノロジーを超える利点を有する。ファージ表面は、その天然の構造により近似している三次元構造で候補因子を提示する。これによって、スクリーニング目的で、より特異的であり、かつ親和性の高い結合を可能とする。
化合物のライブラリーをスクリーニングするための別の方法は、真核宿主細胞または原核宿主細胞を利用し、かかる宿主細胞は、組換えDNA分子を用いて安定して形質転換されており、化合物ライブラリーを発現する。このような細胞(生存可能な形態または固体された形態のいずれか)を、標準的な結合−パートナーアッセイに用いることができる。細胞反応を検出するための高感度の方法を記載する、Parceら(1989) Science 246:243−247;およびOwickiら(1990) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 87;4007−4011を参照のこと。競合アッセイが特に有用であり、化合物のライブラリーを発現する細胞を、Gpr100ポリペプチドに結合することが知られている標識抗体(例えば、125I−抗体)および結合組成物に対する結合親和性が測定される試験試料(例えば、候補化合物)と接触させるか、またはこれらと一緒にインキュベートする。次に、ポリペプチドに対して結合したものと遊離の標識結合パートナーとを分離して、結合の程度を評価する。結合している試験試料の量は、ポリペプチドに結合している標識された抗体の量に反比例する。
多数の技術のいずれか1つを用いて、結合した結合パートナーと遊離の結合パートナーを分離し、結合の程度を評価する。この分離ステップは一般的に、フィルターへの接着そしてその後の洗浄、プラスチックへの接着そしてその後の洗浄、または細胞膜の遠心分離などの方法を含む。
さらに別のアプローチは、例えば、形質転換された真核宿主細胞または原核宿主細胞より抽出された、可溶化未精製または可溶化精製ポリペプチドまたはペプチドを使用するものである。これによって、増大した特異性、自動化する能力、および薬物試験の高い処理量といった利点を有する「分子」結合アッセイを可能とする。
候補化合物スクリーニングの別の技術は、例えば、Gpr100ポリペプチドに対して好適な結合親和性を有する新規化合物についてのハイスループットスクリーニングを提供するアプローチを含み、かかるアプローチは、1984年9月13日に公表された国際特許出願WO 84/03564(Commonwealth Serum Labs.)に詳細に記載されている。まず、多数の異なる小ペプチド試験化合物を、固体基盤(例えば、プラスチックピンまたは他の好適な表面)に合成する(Fodorら(1991)を参照のこと)。次に、全てのピンを、可溶化したGpr100ポリペプチドと反応させ、そして洗浄する。その次のステップは、結合したポリペプチドを検出することを含む。このように、ポリペプチドと特異的に相互作用する化合物を同定する。
リガンド結合アッセイは、受容体の薬理を確認するための直接的な方法を提供し、またかかるアッセイは、ハイスループット形式に適用可能である。受容体に対する精製したリガンドを、結合研究のために、高比活性について放射標識することができる(50〜2000 Ci/mmol)。次に、放射標識の方法は、その受容体に対するリガンドの活性を減少させないということを決定する。緩衝液、イオン、pHおよび他のモジュレーター(例えば、ヌクレオチド)についてのアッセイ条件を最適化し、膜および全細胞受容体の両供給源についての、シグナル対ノイズの利用可能な比率を確立する。これらのアッセイについて、特異的受容体結合を、関連する全放射能から、過剰量の非標識競合リガンドの存在下で測定された放射能を引いたものとして定義する。可能であれば、1以上の競合リガンドを用いて、残存する非特異的結合を明らかにする。
このアッセイは、候補化合物の結合を簡単に試験することができ、このアッセイにおいて、受容体を保有する細胞に対する接着は、候補化合物に直接的にもしくは間接的に結合した標識によって、または標識した競合相手との競合作用を含むアッセイにおいて検出する。さらに、これらのアッセイは、候補化合物が、受容体の活性化によって生じるシグナルを生じるか否かを、その表面に受容体を保有する細胞に適した検出系を用いて、試験できる。活性化阻害剤は一般、既知アゴニストの存在下にてアッセイし、そして候補化合物の存在による、アゴニストによる活性化への効果を観察する。
さらに、アッセイは単に、候補化合物とGpr100 GPCRポリペプチドを含有する溶液とを混合し、混合物を形成するステップ、該混合物中のGpr100 GPCR活性を測定するステップおよび混合物のGpr100 GPCR活性を基準と比較するステップを含むことができる。
Gpr100 GPCR cDNA、タンパク質およびそのタンパク質に対する抗体をまた用いて、細胞におけるGpr100 GPCR mRNAおよびタンパク質の産生に対する、付加した化合物の影響を検出するためのアッセイを設計することができる。例えば、ELISAは、分泌されたまたは細胞結合レベルのGpr100 GPCRタンパク質を、当該分野で公知である標準的な方法によって、モノクローナルおよびポリクローナル抗体を使用して、測定するために構成することができ、そしてかかるELISAを用いて、薬剤を見つけることができ、かかる薬剤は、好適に操作された細胞または組織からのGpr100 GPCRの産生を阻害または増強する(それぞれ、アンタゴニストまたはアゴニストと称される)。スクリーニングアッセイを行うための標準的な方法は当該分野で十分に理解されている。
可能性のあるGpr100 GPCRアンタゴニストの例としては、抗体または場合によっては、Gpr100 GPCRのリガンドに密接に関連するヌクレオチドおよびそのアナログ(プリンおよびプリンアナログを含む)、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質(例えば、リガンドのフラグメント)、または受容体の活性が阻害されるように応答を惹起しない受容体に結合する小分子が含まれる。
従って、本明細書はまた、Gpr100ポリペプチドおよび/またはペプチドに特異的に結合できる化合物を提供する。
「化合物」という用語は、(天然または合成の)化学化合物(例えば、生物学的高分子(例えば、核酸、タンパク質、非ペプチド、もしくは有機分子)、または生物学的材料(例えば、細菌、植物、菌類、または動物(特に、哺乳動物)の細胞または組織)より作製された抽出物、あるいはさらに無機エレメントまたは分子をいう。好ましくは、化合物は、抗体である。
実施されるスクリーニングに必要とされる材料は、スクリーニングキットに詰めることができる。このようなスクリーニングキットは、Gpr100 GPCRポリペプチドの産生を減少もしくは増強するGpr100 GPCRポリペプチドまたは化合物のアゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、受容体、基質、酵素など、を同定するのに有用である。スクリーニングキットは、(a)Gpr100 GPCRポリペプチド、(b)Gpr100 GPCRポリペプチドを発現する組換え細胞、(c)Gpr100 GPCRポリペプチドを発現する細胞膜、または(d)Gpr100 GPCRポリペプチドに対する抗体を含む。スクリーニングキットは場合によって、使用説明書を含む。
トランスジェニック動物
本明細書はさらに、天然または組換えのGpr100 GPCR、または相同体、変異体もしくは誘導体を、正常な発現レベルと比べて増加または減少したレベルで発現することができるトランスジェニック動物を含む。Gpr100遺伝子の欠失を含む、1または複数の機能喪失変異によって、機能的Gpr100受容体を発現しないトランスジェニック動物(「Gpr100ノックアウト」)を含む。好ましくは、このようなトランスジェニック動物は、非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、ヒツジまたはげっ歯類)である。最も好ましくは、トランスジェニック動物はマウスまたはラットである。このようなトランスジェニック動物を、スクリーニング方法に用いて、Gpr100 GPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニストを同定したり、in vivo疾患の治療としてのその効果を試験するために用いたりすることができる。
例えば、Gpr100 GPCR産生を欠損するように操作されているトランスジェニック動物をアッセイに用いて、Gpr100 GPCRのアゴニストおよび/またはアンタゴニストを同定することができる。1つのアッセイを設計して、可能性のある薬物(候補リガンドまたは化合物)を評価し、かかる薬物が、Gpr100 GPCR受容体の非存在下にて生理学的反応を生じるか否かを決定する。かかるアッセイは、薬物を上記のようなトランスジェニック動物に投与し、そして特定の反応について動物をアッセイすることによって達成することができる。いずれの生理学的パラメータもこのアッセイにて測定することができるが、好ましい反応は、以下のうちの1または複数を含む:耐病性の変化;炎症反応の変化;腫瘍の感受性(susceptability)の変化:血圧の変化;新血管新生;食行動の変化;体重の変化;骨密度の変化;体温の変化;インスリン分泌;ゴナドトロピン分泌;鼻腔および気管支の分泌;血管狭窄;記憶喪失;不安;反射低下または反射亢進;疼痛またはストレス反応。
Gpr100ノックアウト動物由来の組織を、受容体結合アッセイに用いて、可能性の有る薬物(候補リガンドまたは化合物)が、Gpr100受容体に結合するか否かを決定することができる。このようなアッセイは、Gpr100受容体産生を欠損するように操作したトランスジェニック動物由来の第1受容体調製物、および同定されたGpr100リガンドまたは化合物のいずれかに結合することが知られている供給源由来の第2受容体調製物を得ることによって行うことができる。一般に、第1および第2受容体調製物は、それらが得られる供給源を除いて、あらゆる点において類似している。例えば、トランスジェニック動物(例えば、上記および下記のような)由来の脳組織を、アッセイに用いる場合、正常な(野生型)動物由来の対応する脳組織を、第2受容体調製物の供給源として用いる。各受容体調製物を、Gpr100受容体に結合することが知られているリガンドのみ、および候補リガンドまたは化合物の存在下の両方でインキュベートする。好ましくは、候補リガンドまたは化合物を、いくつかの異なる濃度で調べる。
既知のリガンドによる結合が、試験化合物に置換した程度を、第1および第2受容体調製物について決定する。トランスジェニック動物に由来する組織を直接アッセイに用いることができ、またはその組織を処理して、膜または膜タンパク質を単離することができ、かかる膜または膜タンパク質はそれ自体アッセイに用いる。好ましいトランスジェニック動物はマウスである。リガンドは、結合アッセイと適合性のある任意の方法によって標識できる。これには、限定はしないが、放射性標識、酵素標識、蛍光標識または化学発光標識(および、さらなる詳細が上記されるような他の標識技術)を含む。
さらに、Gpr100 GPCR受容体のアンタゴニストを、機能的Gpr100を発現する野生型動物および、Gpr100受容体機能の減少したまたは消滅した発現と関連する任意の表現形質を示すことが同定された動物に、候補化合物などを投与することによって同定できる。
非ヒトトランスジェニック動物を作製するための詳細な方法が、以下にさらに詳細に記載される。トランスジェニック遺伝子構築物を動物の生殖系列に導入し、トランスジェニック哺乳動物を作製することができる。例えば、構築物の1またはいくつかのコピーを、標準的なトランスジェニック技術によって、哺乳動物胚のゲノムに組み込むことができる。
1つの例示的な実施形態において、トランスジェニック非ヒト動物を、非ヒト動物の生殖系列に導入遺伝子を導入することによって作製する。様々な発生段階における胚性標的細胞を用いて、導入遺伝子を導入することができる。胚性標的細胞の発生段階に応じて、別の方法を、用いる。用いた任意動物の特定の系統を、一般的な良好な健康状態、良好な胚を生むこと、胚における良好な前核可視性、および良好な生殖の適応度について選択する。さらに、ハプロタイプは有意な因子である。
胚への導入遺伝子の導入は、当該分野で公知であるいずれかの方法(例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、またはリポフェクション)によって達成できる。例えば、Gpr100受容体導入遺伝子を、哺乳動物の受精卵の前核への構築物のマイクロインジェクションによって哺乳動物に導入し、発生している哺乳動物の細胞内に保持されるべき構築物の1または複数のコピーを生じることができる。受精卵への導入遺伝子構築物の導入の後、この卵を、in vitroにて様々な時間インキュベートするか、もしくは代理宿主に再移植するか、またはその両方を行うことができる。成熟期までのin vitroにおけるインキュベーションを含む。1つの一般的方法は、種に応じて、約1〜7日間 in vitro にて胚をインキュベートし、そしてそれらを代理宿主に再移植するものである。
遺伝子導入操作した胚の子孫を、組織セグメントのサザンブロット分析によって、構築物の存在について試験することができる。外因性クローン化構築物の1または複数のコピーが、このようなトランスジェニック胚のゲノムに安定して組み込まれたままである場合、遺伝子導入で付加した構築物を有する永続するトランスジェニック哺乳動物系統を確立することが可能である。
遺伝子導入で変化した哺乳動物の一腹の子を、子孫のゲノムへの構築物の組み込みについて、出産後にアッセイできる。好ましくは、このアッセイは、所望の組換えタンパク質産物またはそのセグメントをコードするDNA配列に対応するプローブの、子孫由来の染色体物質へのハイブリダイゼーションによって達成される。そのゲノムに構築物の少なくとも1つのコピーを含むことが見出されたこれら哺乳動物の子孫を、成熟期まで成長させる。
本明細書のために、接合体は本質的に二倍体細胞の形成体であり、かかる二倍体細胞は完全な生物体に発生することが可能である。一般に、接合体は、配偶子または複数の配偶子に由来する2つのハプロイド核を融合することによって、天然または人工的に形成された核を含む卵からなる。従って、配偶子核は、生来適合性を有しているものでなければならず、すなわち、これは、機能する生物体へ分化および発生することが可能である生存可能な接合体を生じる。一般に、正倍数体の接合体が好ましい。異数体の接合子が得られた場合、いずれかの配偶子を起源とする1つを超える正倍数の生物によって染色体数は変化しないはずである。
同様の生物学的考察に加えて、物理学的考察もまた外因性遺伝子物質の量(例えば、容量)を制御し、かかる外因性遺伝子物質は、接合体の核または接合体の核の一部を形成する遺伝子物質に加えられうる。遺伝子物質が除去されない場合、付加されうる外因性遺伝子物質の量を、物理的に分裂するこなく吸収される量によって限定される。一般に、挿入される外因性遺伝子物質の容量は、約10ピコリットルを超えない。添加による物理的効果は、接合体の生存能を物理的に破壊するほど大きくはない。DNA配列の数および多様性の生物学的制限は、特定の接合体および外因性遺伝子物質の機能に応じて変化し、またかかる制限は、当業者に容易に明らかとなり、それは得られた接合体の遺伝子物質(外因性遺伝子物質を含む)が、接合体の機能的生物体への分化および発生を生物学的に開始および維持することができるためである。
接合体に添加される導入遺伝子構築物のコピー数は、加えられた外因性遺伝子物質の総数に依存し、かかるコピー数は、遺伝子形質転換が生じることができる量である。理論的には、1コピーのみを必要とするが、しかし一般に、多数のコピー(例えば、1,000〜20,000コピーの導入遺伝子構築物)を、1コピーが機能を果たすことを確実にするために用いる。挿入した外因性DNA配列各々の1以上の機能性コピーを有することによって、外因性DNA配列の表現型発現を増強できるという利点がある。
外因性遺伝子物質の核遺伝子物質への付加を可能とするいずれの技術も、細胞、核膜または他の既存する細胞性もしくは遺伝子構造に有害でない限り、用いることができる。外因性遺伝子物質を、マイクロインジェクションによって核遺伝子物質に優先的に挿入する。細胞のマイクロインジェクションおよび細胞構造は、公知であり、当該分野で用いられている。
再移植は、標準的な方法を使用して達成される。通常、代理宿主を麻酔し、そして胚を、卵管に挿入する。特定の宿主に移植された胚の数は、種ごとに異なるが、通常、その種が天然に産む子の数に相当する。
代理宿主の遺伝子導入した子は、好適な方法によって、導入遺伝子の存在および/または発現についてスクリーニングできる。スクリーニングはしばしば、導入遺伝子の少なくとも一部に相補的なプローブを用いて、サザンブロット分析またはノーザンブロット分析によって達成できる。導入遺伝子にコードされるタンパク質に対する抗体を使用するウエスタンブロット分析を、導入遺伝子産物の存在についてスクリーニングするための方法に代えて、またはその方法に加えて用いることができる。一般的に、DNAは、尾の組織から調製し、導入遺伝子について、サザン分析またはPCRによって分析する。あるいは、最高レベルで導入遺伝子を発現すると考えられる組織または細胞を、サザン分析またはPCRを用いて、導入遺伝子の存在および発現について試験するが、いずれの組織または細胞型も、この分析に用いることができる。
導入遺伝子の存在を評価するための代替的な方法または付加的な方法としては、限定はしないが、酵素などの好適な生化学アッセイおよび/または免疫学的アッセイ、特定のマーカーまたは酵素活性についての組織学的染色、フローサイトメトリー分析などが挙げられる。血液分析はまた、血中の導入遺伝子産物の存在を検出すること、ならびに導入遺伝子による、様々な型の血液細胞および他の血液成分のレベルへの影響を評価するのに有用でありうる。
トランスジェニック動物の子孫を、トランスジェニック動物と好適なパートナーを交配することによって、またはトランスジェニック動物由来の卵および/もしくは精子をin vitroにて受精させることによって、得ることができる。パートナーとの交配を行う場合、パートナーは、トランスジェニックおよび/またはノックアウトであってもよく、トランスジェニックの場合、それは同一もしくは異なる導入遺伝子、またはその両方を含むことができる。あるいは、パートナーは、親の系統であってもよい。in vitro受精が用いられる場合、受精胚を、代理宿主に移植するか、もしくはin vitroにてインキュベートするか、またはその両方でありうる。いずれかの方法を使用した場合、子孫は、上記方法、または他の適切な方法を用いて、導入遺伝子の存在について評価することができる。
本明細書に従って作製されたトランスジェニック動物は、外因性遺伝子物質を含む。上記のように、特定の実施形態において、外因性遺伝子物質は、Gpr100 GPCR受容体の産生を生じるDNA配列である。さらに、そのような実施形態において、そのDNA配列は、転写制御エレメント(例えば、プロモーター)に結合しており、かかる転写制御エレメントは好ましくは、特定の型の細胞において導入遺伝子産物の発現を可能とする。
また、レトロウイルス感染を用いて、非ヒト動物に導入遺伝子を導入することができる。非ヒトの発育胚を、in vitroにて胚盤胞の段階まで培養できる。この間、卵割球は、レトロウイルス感染の標的でありうる(Jaenich, R.(1976) PNAS 73:1260−1264)。卵割球の効率的な感染は、酵素処理によって、透明帯を除去することによって得ることができる(Manipulating the Mouse Embryo, Hogan eds.(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, 1986))。導入遺伝子を導入するために用いられるウイルスベクター系は一般的に、導入遺伝子を保有する複製欠損型レトロウイルスである(Jahnerら(1985) PNAS 82:6927−6931; Van der Puttenら(1985) PNAS 82:6148−6152)。トランスフェクションは、卵割球を単層のウイルス産生細胞上にて培養することによって、容易にかつ効率的に得られる(Van der Putten, 上記; Stewartら(1987) EMBO J. 6:383−388)。あるいは、感染を、より後期に行うこともできる。ウイルス、またはウイルス産生細胞を、卵割腔に注射できる(Jahnerら(1982) Nature 298:623−628)。大多数の創始動物(founder)は、導入遺伝子についてモザイクであり、それは組み込みが、トランスジェニック非ヒト動物を形成する細胞のサブセットにおいてのみ生じるためである。さらに、創始動物は、ゲノムの異なる位置に導入遺伝子の様々なレトロウイルス挿入を含むことができ、かかるゲノム一般に、子孫で隔離されている。さらに、中期胚(Jahnerら(1982)前出)の子宮内レトロウイルス感染によって、導入遺伝子を生殖系列に導入することも可能である。
導入遺伝子導入のための、標的細胞の第3の型が、胚性幹細胞(ES)である。ES細胞は、in vitroにて培養し、胚と融合させた移植前の胚から得られる(Evansら(1981) Nature 292:154−156; Bradleyら(1984) Nature 309:255−258; Gosslerら(1986) PNAS 83: 9065−9069; およびRobertsonら(1986) Nature 322:445−448)。導入遺伝子は、DNAトランスフェクションまたはレトロウイルス媒介性形質導入によって、ES細胞に効率的に導入することができる。このような形質転換されたES細胞はその後、非ヒト動物由来の胚盤胞と組合すことができる。その後、ES細胞は、胚を形成し、得られたキメラ動物の生殖系列に関与する。総説については、Jaenisch, R.(1988) Science 240:1468−1474を参照のこと。
本願発明者らはまた、非ヒトトランスジェニック動物を提供し、かかるトランスジェニック動物は、Gpr100受容体機能のモデルとして、好ましくは上記のように変化したGpr100遺伝子を有することによって特徴付けられる。当該Gpr100遺伝子に対する変更としては、欠失もしくは機能喪失変異、標的変異もしくはランダム変異を伴うヌクレオチド配列を有する外因性遺伝子の導入、別種由来の外因性遺伝子の導入、またはそれらの組合せが挙げられる。トランスジェニック動物は、変更について同種接合または異種接合でありうる。動物およびそれに由来する細胞は、Gpr100受容体機能をモジュレートできる生物学的に活性な因子をスクリーニングするのに有用である。スクリーニング方法は、肥満症、特に、食欲抑制、脂質代謝に有効な治療の特異性および作用を決定するための特定の用途に関する。この動物は、正常な脳、心臓、脾臓および肝臓の機能におけるGpr100受容体の機能を調べるためのモデルとして有用である。
別の態様は、機能的に破壊されている内在性Gpr100遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト動物に関し、かかるトランスジェニック動物はまた、そのゲノム内に、異種Gpr100タンパク質(すなわち、別種由来のGpr100)をコードする導入遺伝子を有し、それを発現する。好ましくは、この動物はマウスであり、異種Gpr100は、ヒトGpr100である。ヒトGpr100を用いて再構成されている動物、またはその動物由来の細胞系統を用いて、in vivoおよびin vitroにおいてヒトGpr100を阻害する薬剤を同定することができる。例えば、ヒトGpr100を介してシグナル伝達を誘発する刺激物を、試験されるべき薬剤の存在下および非存在下において、動物または細胞系統に投与することができ、そして動物または細胞系統の反応を測定することができる。in vivoまたはin vitroにおいてヒトGpr100を阻害する薬剤を、この薬剤の非存在下における反応と比べて、この因子の存在下において減少した反応に基づいて同定できる。
本開示はまた、Gpr100 GPCR欠損型トランスジェニック非ヒト動物(「Gpr100 GPCRノックアウト」)を提供する。このような動物は、好ましくは、破壊または欠失されている内在性Gpr100 GPCRゲノム配列により、低下したGpr100 GPCR活性を発現するか、またはGpr100 GPCR活性を発現しないものである。好ましくは、このような動物は、GPCR活性を発現しない。より好ましくは、この動物は、配列番号3または配列番号5に示されるGpr100 GPCR活性を発現しない。Gpr100 GPCRノックアウトは、以下にさらに詳細に記載されるように、当該分野で公知である様々な方法によって作製できる。
本開示はまた、宿主細胞のGpr100遺伝子を機能的に破壊するための核酸構築物に関する。この核酸構築物は、a)非相同置換部分、b)非相同置換部分の上流に配置されており、かつ第1Gpr100遺伝子配列に対して実質的同一性を有するヌクレオチド配列を有する、第1相同領域、およびc)非相同置換部分の下流に配置されており、第2Gpr100遺伝子配列に対して実質的同一性を有するヌクレオチド配列を有する第2相同領域(第2Gpr100遺伝子配列は、天然の内在性Gpr100遺伝子の第1Gpr100遺伝子配列の下流の位置を有する)を含む。さらに、第1および第2相同領域は、核酸分子が、宿主細胞に導入された場合に、核酸構築物と宿主細胞の内在性Gpr100遺伝子間の相同組換えに十分な長さのものである。好ましい実施形態において、非相同置換部分は、好ましくは、lacZおよび、ポジティブ選択発現カセットを含み、好ましくは、調節エレメントに機能的に結合されているネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含む発現レポーターを含む。
好ましくは、第1および第2のGpr100遺伝子配列は、配列番号1、配列番号2もしくは配列番号4、またはそれらの相同体、変異体もしくは誘導体に由来する。
本開示の別の態様は、核酸構築物が組み込まれている組換えベクターに関する。さらに別の態様は、宿主細胞に関し、この宿主細胞に対して核酸構築物が導入され、それによって核酸構築物と宿主細胞の内在性Gpr100遺伝子との間の相同組換えが可能となり、内在性Gpr100遺伝子の機能的破壊を生じる。宿主細胞は、肝臓、脳、脾臓もしくは心臓、または多能性細胞(例えば、マウス胚性幹細胞)に由来する、通常Gpr100を発現する哺乳動物細胞でありうる。核酸構築物が導入され、内在性Gpr100遺伝子と相同組み換えがなされている、胚性幹細胞のさらなる発生によって、胚性幹細胞の子孫であり、故にそのゲノム内に破壊されたGpr100遺伝子を有する細胞を有するトランスジェニック非ヒト動物を作製する。次に、その生殖系列に破壊されたGpr100遺伝子を有する動物を選択し、子を産ませ全ての体細胞および生殖細胞に破壊されたGpr100遺伝子を有する動物を作製することができる。次に、このようなマウスは、Gpr100遺伝子破壊についてのホモ接合体と交配しうる。
In vitro系を設計して、Gpr100受容体遺伝子産物に結合することができる化合物を同定しうる。このような化合物としては、限定はしないが、D−および/またはL− BR BR立体配置アミノ酸からなるペプチド(例えば、ランダムペプチドライブラリーの形態)、ホスホペプチド(例えば、ランダムまたは部分変性、定方向性(directed)ホスホペプチドライブラリーの形態)、抗体ならびに低有機分子または低無機分子が挙げられうる。同定された化合物は、例えば、Gpr100受容体遺伝子タンパク質(好ましくは、変異Gpr100受容体遺伝子タンパク質)の活性をモジュレートすること、Gpr100受容体遺伝子タンパク質の生物学的機能を生じること、または正常なGpr100受容体遺伝子の相互作用を、もしくはそのような相互作用を遮るその化合物自体を遮る化合物をスクリーニングすること、に有用でありうる。
特定のGpr100受容体遺伝子産物に結合することが示されている化合物をさらに、Gpr100受容体遺伝子タンパク質から生化学的反応を誘発する能力について試験できる。アゴニスト、アンタゴニストおよび/または発現産物の阻害剤を、当該分野で周知であるアッセイを用いて同定できる。
抗体
本明細書のために、「抗体」という用語は、特に断りのない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、1本鎖抗体、Fab断片およびFab発現ライブラリーによって作製される断片を含むが、これらに限定されない。このような断片としては、標的物質に対して結合活性を保持する完全抗体の断片、Fv、F(ab’)およびF(ab’)2断片、ならびに1本鎖抗体(scFv)、融合タンパク質および抗体の抗原結合部位を含む他の合成タンパク質が挙げられる。抗体およびそれらの断片は、ヒト化抗体でありうる(例えば、EP−A−239400に記載されるようなもの)。さらに、全長ヒト可変領域(またはその断片)を有する抗体(例えば、米国特許第5,545,807号および同第6,075,181号に記載される)もまた用いることができる。中和抗体(すなわち、アミノ酸配列の生物学的活性を阻害する抗体)は特に、診断および治療に好ましい。
抗体は、標準的な技術によって(例えば、免疫化またはファージディスプレイライブラリーを用いて)作製することができる。
Gpr100ポリペプチドまたはペプチドを用いて、既知の技術によって、抗体を開発することができる。このような抗体は、Gpr100 GPCRタンパク質または相同体、断片などに特異的に結合することができる。
ポリクローナル抗体が所望される場合、選択した哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)を、Gpr100ポリペプチドまたはペプチドを含む免疫原性組成物を用いて免疫化できる。宿主の種に応じて、種々の免疫賦活剤を用いて、免疫学的反応を高めることができる。このような免疫賦活剤としては、限定はしないが、フロイント免疫賦活剤、鉱物ゲル(水酸化アルミニウムなど)、ならびに界面活性剤、例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルジョン、スカシ貝(keyhole limpet)ヘモシアニンおよびジニトロフェノールが挙げられる。BCG(Bacilli Calmette-Guerin)およびCorynebacterium parvumは、精製されている場合、潜在的に有用なヒト免疫賦活剤であり、アミノ酸配列を、全身性防御を刺激するために、免疫学的に易感染性の個体に投与することに用いることができる。
免疫化動物由来の血清を採取し、既知の方法に従って処理する。Gpr100ポリペプチドより得ることができるエピトープに対するポリクローナル抗体を含む血清が、他の抗原に対する抗体を含む場合、ポリクローナル抗体を免疫親和性クロマトグラフィーによって精製できる。ポリクローナル抗血清を作製および処理するための技術は、当該分野で公知である。このような抗体を作製しうるために、本開示はまた、動物またはヒトにおいて免疫原として使用するために、別のアミノ酸配列にハプテン化したGpr100 アミノ酸配列またはその断片を提供する。
Gpr100ポリペプチドまたはペプチドより得ることができるエピトープに対して特異化されたモノクローナル抗体はまた、当業者によって容易に作製することができる。ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を作製するための一般的方法論は、周知である。不死化抗体産生細胞株は、細胞融合、さらに他の技術(例えば、癌性DNAによるBリンパ球の直接形質転換、またはエプスタイン・バールウイルスを用いたトランスフェクション)によって作製することができる。オービット(orbit)エピトープに対して作製されたモノクローナル抗体のパネルは、様々な特性について(すなわち、アイソタイプおよびエピトープ親和性について)スクリーニングすることができる。
モノクローナル抗体は、培養中に連続細胞株によって抗体分子が産生される任意の技術を用いて調製できる。これらの技術としては、限定はしないが、ハイブリドーマ技術(KoehlerおよびMilstein(1975 Nature 256:495−497)に最初に記載された)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら(1983) Immunol Today 4:72;Coteら(1983) Proc Natl Acad Sci 80:2026−2030)およびEBVハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pp. 77−96, Alan R. Liss, Inc., 1985)が挙げられる。
さらに、「キメラ抗体」を作製するために開発された技術、すなわち、適切な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得るために、マウス抗体遺伝子のヒト抗体遺伝子へのスプライシングを用いることができる(Morrisonら(1984) Proc Natl Acad Sci 81:6851−6855;Neubergerら(1984) Nature 312:604−608;Takedaら(1985) Nature 314:452−454)。あるいは、一本鎖抗体作製にのために記載された技術(米国特許第4,946,779号)を適用して、物質特異的一本鎖抗体を作製することができる。
Gpr100ポリペプチドまたはペプチドより得ることができるエピトープに対して指向された抗体(モノクローナルおよびポリクローナルの両方)は、診断に特に有用であり、中和抗体は、受動的免疫療法に有用である。特に、モノクローナル抗体を用いて、抗イディオタイプ抗体を生じることができる。抗イディオタイプ抗体は免疫グロブリンであり、防御が所望される物質および/または因子の「内部イメージ」を有する。抗イディオタイプ抗体を生じるための技術は、当該分野で公知である。これらの抗イディオタイプ抗体もまた、治療に有用でありうる。
抗体はまた、リンパ球集団におけるin vivo産生を誘導することによって、または高特異的結合試薬の組換え免疫グロブリンライブラリーまたはパネルをスクリーニングすることによって作製できる(Orlandiら(1989, Proc Natl Acad Sci 86: 3833−3837)ならびにWinter GおよびMilstein C(1991; Nature 349:293−299)に記載される)。
ポリペプチドまたはペプチドに対する特異的結合部位を含む抗体断片もまた、作製することができる。例えば、このような断片としては、限定はしないが、抗体分子のペプシン消化によって作製できるF(ab’)2断片、およびF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製できるFab断片が挙げられる。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築し、所望される特異性を有するモノクローナル Fab断片の迅速かつ容易な同定を可能とすることができる(Huse WDら(1989) Science 256:1275−128 1)。
また、一本鎖抗体を作製するための技術(米国特許第4,946,778号)を適用して、Gpr100ポリペプチドに対する一本鎖抗体を作製することができる。さらに、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物を含む別の生物を用いて、ヒト化抗体を発現させることができる。
上記抗体を用いて、ポリペプチドを発現するクローンを単離もしくは同定するか、または親和性クロマトグラフィーによってポリペプチドを精製することができる。
また、Gpr100 GPCRポリペプチドに対する抗体を用いて、Gpr100関連疾患を治療することができる。
診断アッセイ
本開示はまた、診断(診断試薬として)または遺伝子分析に用いるための、Gpr100 GPCRポリヌクレオチドおよびポリペプチド(ならびにそれらの相同体、変異体および誘導体)の使用に関する。Gpr100 GPCR核酸(相同体、変異体および誘導体を含む)に相補的な核酸またはかかるGpr100 GPCR核酸にハイブリダイズすることができる核酸、ならびにGpr100ポリペプチドに対する抗体も、このようなアッセイに有用である。
機能不全に関連するGpr100 GPCR遺伝子の変異体を検出するために、診断用ツールを提供する。かかるツールは、疾患または疾患に対する感受性の診断に加えるか、かかる診断を明確にすることができ、かかる疾患は、Gpr100 GPCRの過少発現、過剰発現または変化した発現に起因する。Gpr100 GPCR遺伝子(制御配列を含む)に変異を有する個体は、様々な技術によって、DNAレベルで検出することができる。
例えば、DNAを、患者から単離し、Gpr100のDNA多型パターンを決定することができる。同定したパターンを、Gpr100の過剰発現、過少発現または異常な発現に関連する疾患に罹患していることが知られている患者の対照と比較する。次に、Gpr100関連疾患に関連する遺伝子多型パターンを発現している患者を同定できる。Gpr100 GPCR遺伝子の遺伝子分析は、当該分野で公知である任意の技術によって行うことができる。例えば、個体は、Gpr100 対立遺伝子のDNA配列を、RFLP分析またはSNP分析などによって決定することにより、選別することができる。Gpr100の遺伝子配列またはその発現を制御している任意の配列におけるDNA多型の存在を検出することによって、Gpr100の過剰発現、過少発現または異常な発現に関連する疾患についての遺伝的素因を有するとして、患者を同定することができる。
次に、そのように同定した患者を治療して、Gpr100関連疾患の発症を予防したり、またはより積極的にGpr100関連疾患の初期において治療して、疾患のさらなる発症または進行を防ぐことができる。
本開示はさらに、Gpr100関連疾患に関連する患者の遺伝子多型パターンを同定するためのキットを開示する。このキットは、DNA試料を採取する手段および遺伝子多型パターンを決定し、次に対照試料と比較して、Gpr100関連疾患に対する患者の感受性を決定する手段を含む。また、Gpr100ポリペプチドおよび/またはこのポリペプチド(もしくはその断片)に対する抗体を含む、Gpr100関連疾患診断用キットを提供する。
診断用の核酸は、被験体の細胞(例えば、血液、尿、唾液、組織生検または剖検材料由来の細胞)から得ることができる。好ましい実施形態において、DNAは、吸収紙上で採取した血液を用いた患者のフィンガープリック試験から得た血液細胞より得る。さらに好ましい実施形態において、血液をAmpliCardTMに採取する(University of Sheffield, Department of Medicine and Pharmacology, Royal Hallamshire Hospital, Sheffield, England S10 2JF)。
DNAは、検出に直接用いても、分析前に、PCRまたは他の増幅技術を使用して、酵素学的に増幅してもよい。目的遺伝子内の特定の多型DNA領域を標的とするオリゴヌクレオチドDNAプライマーを調製し、それによって標的配列のPCR反応による増幅を達成することができる。また、RNAまたはcDNAを、同様の様式で鋳型として用いることができる。次に、鋳型DNAより増幅したDNA配列を、制限酵素を用いて分析し、増幅した配列中の遺伝子多型の存在を決定し、それによって患者の遺伝子多型プロファイルを提供することができる。制限断片の長さは、ゲル分析によって同定できる。代替的に、または合わせて、SNP(単一ヌクレオチド多型)分析などの技術を用いることができる。
欠失および挿入は、正常な遺伝子型との比較において、増幅産物のサイズの変化によって検出できる。点突然変異は、標識したGpr100 GPCRヌクレオチド配列に対して増幅したDNAがハイブリダイズすることによって同定できる。完全一致配列は、RNase消化または融解温度の差異によって、不一致の二本鎖と区別することができる。DNA配列の差異はまた、変性剤有りもしくは無しのゲルにおける、DNA断片の電気泳動による移動度における変化によって、または直接DNA配列決定によって検出できる。例えば、Myersら、Science(1985)230:1242を参照のこと。また、特定の位置における配列変化は、ヌクレアーゼ保護アッセイ(例えば、Rnase保護およびS1保護)または化学的切断方法によって示すことができる。Cottonら、Proc Natl Acad Sci USA(1985) 85: 4397−4401を参照のこと。別の実施形態において、Gpr100 GPCRヌクレオチド配列またはその断片を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築して、例えば、遺伝子変異の効率的なスクリーニングを行うことができる。アレイ技術方法は、周知であり、また普遍的な適応性を有しており、さらに、かかるアレイ技術方法を用いて、遺伝子発現、遺伝子連鎖、および遺伝子変異性を含む分子遺伝学の様々な問題を扱うことが可能である(例えば、M.Cheeら、Science, Vol 274, pp 610−613(1996)を参照のこと)。
一本鎖高次構造多型(SSCP)を用いて、変異核酸と野生型核酸との電気泳動による移動度の差異を検出することができる(Oritaら(1989) Proc Natl. Acad. Sci USA: 86:2766,また、Cotton(1993) Mutat Res 285:125−144およびHayashi(1992) Genet Anal Tech Appl 9:73−79を参照のこと)。試料および対照Gpr100核酸の一本鎖DNA断片を、変性させ、そして再生させうる。一本鎖核酸の二次構造は、配列に従って変化し、電気泳動による移動度において生じた変化により、単一塩基の変化でさえ検出することができる。DNA断片を標識したプローブを用いて、標識するか、または検出することができる。アッセイの感度は、(DNAよりも)RNAを使用することによって増強することができ、RNAを用いた場合に、二次構造は、配列の変化に対してより敏感となる。好ましい実施形態において、主題の方法は、ヘテロ二重鎖分析を用いて、電気泳動による移動度の変化に基づいて、ヘテロ二本鎖分子を分離する(Keenら(1991) Trends Genet 7:5)。
診断アッセイは、Gpr100関連疾患などの障害に対する感受性を、記載した方法によってGpr100 GPCR遺伝子の変異を検出することにより、診断または決定するための方法を提供する。
試料中のGpr100 GPCRポリペプチドおよび核酸の存在を、検出することができる。従って、上に挙げた感染および疾患は、被験体に由来する試料由来のGpr100 GPCRポリペプチドまたはGpr100 GPCR mRNAの異常に減少したまたは増加したレベルを測定することを含む方法によって診断することができる。この試料は、疾患に罹患しているか、罹患していると思われる生物体に由来する細胞または組織試料を含むことができ、かかる疾患は、増加した、減少した、そうでなければ異常なGpr100 GPCRの変化(発現レベルまたは発現パターンの空間的または時間的変化を含む)と関連している。そのような疾患に罹患している、または罹患していると思われる生物体のGpr100の発現レベルまたは発現パターンは、疾患の診断方法として、正常な生物体の発現レベルまたは発現パターンと、有効に比較することができる。
従って、一般に、本願発明者らは、試料中のGpr100 GPCR核酸を含む核酸の存在を検出する方法を記載し、かかる方法は、この試料と少なくとも1つの核酸プローブを接触させ、核酸の存在について、この試料をチェックすることによるものであり、またかかる核酸プローブは、Gpr100 GPCR核酸を含む核酸に特異的なものである。例えば、核酸プローブは、Gpr100 GPCR核酸、またはその一部に特異的に結合でき、二者間の結合を検出し、複合体自体の存在もまた、検出することができる。さらに、本願発明者らは、Gpr100 GPCRポリペプチドの存在を検出する方法を記載し、かかる方法は、細胞試料とポリペプチドに結合可能な抗体とを接触させ、ポリペプチドの存在についてこの試料をチェックすることによる方法である。この方法は、抗体とポリペプチドとで形成される複合体の存在をチェックすること、またはポリペプチドと抗体との間の結合をチェックすることによって、都合よく達成することができる。2つの事象の間の結合を検出するための方法は、当該分野で公知であり、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)、表面プラズモン共鳴法などを含む。
発現の減少、または増加を、当該分野で周知であるポリヌクレオチドの定量方法のいずれか(例えば、PCR、RT−PCR、Rnaseプロテクション、ノーザンブロッティングおよび他のハイブリダイゼーション方法)を用いて、RNAレベルで測定できる。宿主由来の試料中のタンパク質(例えば、Gpr100 GPCR)のレベルを測定するために用いることができるアッセイ技術は、当業者によく知られている。このようなアッセイ方法としては、放射免疫アッセイ、競合結合アッセイ、ウエスタンブロット分析およびELISAアッセイが挙げられる。
本明細書は、疾患(例えば、肥満、食欲抑制、代謝疾患、食欲抑制)または疾患(感染を含む)に対する感受性についての診断キットに関する。診断キットは、Gpr100 GPCRポリヌクレオチドもしくはその断片、相補的ヌクレオチド配列、Gpr100 GPCRポリペプチドもしくはその断片、またはGpr100 GPCRポリペプチドに対する抗体を含む。
染色体アッセイ
本明細書中に記載されるヌクレオチド配列はまた、染色体の同定に有用である。この配列は、個々のヒト染色体上の特定の位置を特に標的とし、その位置とハイブリダイズすることができる。上記のように、ヒトGpr100 GPCRは、ヒト染色体1q22上にあることが見出されている。
染色体に対する関連配列のマッピングは、これらの配列と疾患関連遺伝子との相関関係を示すのに重要な第1ステップである。一旦、ある配列が、正確な染色体位置に位置決めされると、染色体上の配列の物理的位置は、遺伝子地図のデータと関連付けることができる。このようなデータは、例えば、V. McKusick, Mendelian heritance in Man(Johns Hopkins University Welch Medical Libraryよりオンラインで入手可能)に見出される。次に、遺伝子と、同一染色体領域に位置づけられている疾患との関係を、連鎖分析によって同定する(物理的に隣接する遺伝子の同時遺伝(coinheritance))。
疾患に罹患している個体と罹患していない個体のcDNAまたはゲノム配列の差異もまた、決定できる。変異が、疾患に罹患している一部または全ての個体において見られるが、正常な個体のいずれにも見られない場合、その変異はおそらく疾患の原因因子である。
予防および治療方法
本明細書は、過剰な量および不十分な量のGpr100 GPCR活性の両方に関連する異常な状態を治療するための方法を提供する。
Gpr100 GPCRの活性が過剰である場合、いくつかのアプローチが、利用可能である。1つのアプローチは、本明細書中上記されるような阻害剤化合物(アンタゴニスト)を製薬上許容される担体と共に、Gpr100 GPCRへのリガンドの結合をブロックするか、または二次シグナルを阻害することによって活性化を阻害するのに十分な量で、被験体に投与すること、およびそれによって異常な状態を緩和することを含む。
別のアプローチでは、内在性Gpr100 GPCRと競合してリガンドに結合することが可能である、可溶性型のGpr100 GPCRポリペプチドを投与できる。このような競合物質の典型的な実施形態は、Gpr100 GPCRポリペプチドの断片を含む。
さらに別のアプローチでは、内在性Gpr100 GPCRをコードする遺伝子の発現は、発現をブロッキングする技術を用いて阻害することができる。そのような技術として、内部で産生されるか、別々に投与されるアンチセンス配列の使用を含む技術が知られている。例えば、O’Connor, J Neurochem(1991) 56:560 in Oligodeoxvnucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression, CRC Press, Boca Raton, Fla.(1988)を参照のこと。あるいは三重らせんを形成するオリゴヌクレオチドを遺伝子とともに供給できる。例えば、 Leeら、Nucleic Acids Res(1979) 6:3073; Cooneyら、Science(1988) 241:456; Dervanら、Science(1991) 251:1360を参照のこと。これらのオリゴマーは、それ自体で投与でき、または関連オリゴマーを、in vivoにて発現させることができる。
Gpr100 GPCRの過少発現およびその活性に関連する異常な状態を治療するために、いくつかのアプローチをまた利用することができる。1つのアプローチは、治療有効量の化合物を、製薬上許容可能な担体と組み合わせて、被験体に投与し、それによって異常な状態を緩和することを含み、かかる化合物は、Gpr100 GPCRを活性化する(すなわち、上記のようなアゴニスト)。あるいは、遺伝子治療を用いて、被験体の関連細胞によるGpr100 GPCRの内在性の産生を生じうる。例えば、Gpr100ポリヌクレオチドは、上記のような複製欠損型レトロウイルスベクターにおける発現のために操作することができる。次に、レトロウイルス発現構築物を単離し、Gpr100ポリペプチドをコードするRNAを含むレトロウイルスプラスミドベクターを用いて形質導入したパッケージング細胞に導入し、それによって、今度はパッケージング細胞が、目的の遺伝子を含む感染性ウイルス粒子を産生することができる。これらの産生細胞は、in vivoにおいて細胞を操作するため、およびin vivoにおけるポリペプチドの発現のために、被験体に投与することができる。遺伝子治療の概要については、Human Molecular Genetics, T Strachan and A P Read, BIOS Scientific Publishers Ltd(1996)の第20章Gene Therapy and other Molecular Genetic−based Therapeutic Approaches(およびそこで引用されている参考文献)を参照のこと。
処方および投与
ペプチド(例えば、可溶性型のGpr100 GPCRポリペプチド)ならびにアゴニストおよびアンタゴニストペプチドまたは小分子は、好適な医薬担体と組み合わせて処方できる。このような製剤は、治療上有効量のポリペプチドまたは化合物、および製薬上許容可能な担体または賦形剤を含む。このような担体としては、限定はしないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組合せが挙げられる。製剤は、投与態様に適したものにすべきであり、かかる製剤は当業者によく知られている。本願発明者らはさらに、医薬パックおよび医薬キットを記載し、これらは前記組成物の1または複数の構成要素を入れた1または複数の容器を含む。
ポリペプチドおよび他の化合物を、単独で、または他の化合物(例えば、治療化合物)と共に用いることができる。
医薬組成物の全身投与のための好ましい形態は、注射、一般的に静脈内注射によるものを含む。他の注射経路(例えば、皮下、筋肉内、または腹腔内)を用いることができる。全身投与の代替的手段としては、浸透剤(例えば、胆汁酸塩もしくはフシジン酸)または他の界面活性剤を用いた経粘膜および経皮的投与が挙げられる。さらに、腸溶性製剤またはカプセル製剤に適切に処方される場合、経口投与もまた可能でありうる。これら化合物を、軟膏、ペースト、ゲルなどの形態により、局所的および/または局部投与することができる。
必要とされる用量範囲は、ペプチドの選択、投与経路、製剤の特性、被験体の状態の特性、および主治医の判断によって決まる。しかし、好適な用量は、被験体の体重1kgあたり0.1〜100μgの範囲である。しかし、必要とされる用量の広範な変動が、種々の利用可能な化合物および様々な投与経路の異なる効率により、予想される。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与よりも高用量を必要とすると考えられる。これらの用量レベルの変動は、標準的な経験的慣用的手段を用いて最適に調節することができ、このことは、当該分野では十分にわかっている。
治療に用いるポリペプチドはまた、上記のように「遺伝子治療」としばしば言われる治療様式において、被験体において内生的に産生することができる。従って、例えば、被験体由来の細胞は、ex vivoにてポリヌクレオチド(例えば、DNAまたはRNA)を用いて操作して、ポリペプチドをコードするようにでき、例えば、レトロウイルスプラスミドベクターを用いることにより操作することができる。次に、この細胞を、被験体に導入する。
医薬組成物
本明細書はまた、治療上有効量のGpr100ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、ベクターまたは抗体および、場合によって製薬上許容可能な担体、希釈剤または賦形剤(それらの組合せを含む)を投与することを含む医薬組成物を提供する。
この医薬組成物は、医学および獣医学においてヒトまたは動物に使用するためのものでありえ、一般的に、製薬上許容可能な希釈剤、担体または賦形剤のいずれか1つまたは複数を含む。治療に用いるための許容可能な担体または希釈剤は、薬学分野において周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co.(A. R. Gennaro 編 1985)に記載されている。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図される投薬経路および標準的な薬学的実務を考慮して選択できる。医薬組成物は、担体、賦形剤もしくは希釈剤として、またはこれらに加えて、好適な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、被膜剤、可溶化剤を含むことができる。
保存剤、安定剤、色素、およびさらに香料を、医薬組成物に供給することができる。保存剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。抗酸化剤および懸濁剤もまた用いることができる。
異なる送達系に応じて、異なる組成/処方要件が存在しうる。例として、医薬組成物は、ミニポンプを使用するか、粘膜経路(例えば、鼻孔スプレーもしくは吸引用エアロゾルまたは口や消化器官を通して摂取可能な(ingestable)溶液)によって、あるいは非経口的に送達されるように処方することができ、非経口的に送達する場合に、組成物は、例えば、静脈内、筋肉内または皮下経路によって、送達するために、注射可能な形態で処方する。あるいは、製剤は、両経路によって送達されるように設計することができる。
薬剤が、消化管粘膜を介して、粘膜送達されるべきものである場合、薬剤は、消化管を通過している間、安定に維持することができなければならない。例えば薬剤は、タンパク質分解耐性であるか、酸pHにおいて安定であるか、および胆汁の界面活性効果耐性でなければならない。
適切である場合、医薬組成物は、吸入、坐薬またはペッサリーの形態、ローション、溶液、クリーム、軟膏または撒布剤の形態で局所的に、皮膚パッチの使用、賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース)を含む錠剤の形態、単独でもしくは賦形剤との混合を含むカプセルもしくは小卵(ovule)、または香料剤もしくは着色剤を含むエリキシル剤、溶液もしくは懸濁液の形態で投与するか、あるいは、医薬組成物は、非経口的に(例えば、静脈内、筋肉内または皮下に)注射できる。非経口的投与のために、組成物は、無菌水溶液の形態で用いられるのが最も良く、かかる無菌水溶液は、他の物質(例えば、十分な塩または単糖類)を含み、血液と等張である溶液とすることができる。頬側投与または舌下投与のために、組成物は、錠剤またはドロップの形態で投与でき、これらは、従来の方法で処方することができる。
ワクチン
別の実施形態は、哺乳動物において免疫学的反応を誘導するための方法に関連し、この方法は、哺乳動物に、Gpr100 GPCRポリペプチドまたはその断片を接種することを含み、かかるポリペプチドまたはその断片は、抗体および/またはT細胞免疫応答を生じ、肥満、食欲抑制、代謝疾患などから当該動物を防御するのに十分な量である。
さらに別の実施形態は、哺乳動物に免疫学的反応を誘導するための方法に関連し、この方法は、in vivoにおいてGpr100 GPCRポリヌクレオチドを発現するようにされているベクターを介して、Gpr100 GPCRポリペプチドを送達することを含み、それによって免疫学的反応を誘導し、抗体を産生して、疾患から当該動物を保護する。
さらなる実施形態は、免疫学的/ワクチン製剤(組成物)に関連し、これは哺乳動物宿主に導入された場合、当該哺乳動物において、Gpr100 GPCRポリペプチドに対する免疫学的反応を誘導し、この方法において、かかる組成物は、Gpr100 GPCRポリペプチドまたはGpr100 GPCR遺伝子を含む。ワクチン製剤はさらに、好適な担体を含むことができる。
Gpr100 GPCRポリペプチドは、胃において分解されうるために、好ましくは非経口的に投与される(皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、皮内注射などを含む)。非経口的投与に好適な製剤は、水溶性および非水溶性の無菌注射溶液を含み、これらの溶液は、抗酸化剤、緩衝液、制菌剤(bacteriostats)および製剤をレシピエントの血液と等張にする溶質を含むことができ、ならびに、水溶性および非水溶性の無菌懸濁液を含むことができ、これらの懸濁液は、懸濁剤または濃縮剤を含むことができる。製剤は、単位用量または複数用量の容器(例えば、密封したアンプルおよびバイアル)に入れて提示することができ、無菌の液体担体を使用の直前に添加することだけを要する凍結乾燥条件にて保存することができる。ワクチン製剤はまた、製剤の免疫原性を増強するために免疫賦活剤系(例えば、水中油系および当該分野で公知である他の系)を含むことができる。この用量は、ワクチンの比活性によって決まり、慣用的な実験によって容易に決定することができる。
ワクチンは、1または複数のGpr100ポリペプチドまたはペプチドから調製できる。
活性成分として免疫原性ポリペプチドまたはペプチドを含むワクチンの調製法は、当業者に公知である。一般的に、このようなワクチンを、注射用(液体溶液または懸濁液のいずれか);注射前に液体に調製することができる溶液または懸濁液に適切な固体形態に調製する。調製物を、乳化するか、リポソーム中にタンパク質をカプセル化することもできる。免疫原性有効成分をしばしば、賦形剤と混合し、かかる賦形剤は、製薬上許容可能であり、活性成分と適合性を有する。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなどおよびその組合せである。
さらに、所望される場合、ワクチンは、少量の補助物質(例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤)および/または免疫賦活剤を含むことができ、これらは、ワクチンの有効性を増強する。有効でありうる免疫賦活剤の例としては、限定はしないが、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP 11637、ノル−MDPとして示される)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A、MTP−PEとして示される)およびRIBIが挙げられ、RIBIは、細菌より抽出された3つの成分(モノホスホリル脂質A、トレハロースジミコレート、および細胞壁骨格)(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/Tween 80エマルジョン中に含む。
免疫賦活剤および他の薬剤のさらなる例としては、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(alum)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、炭素、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ムラミルジペプチド、細菌性内毒素、脂質X、Corynebacterium parvum(Propionobacterium acnes)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、サポニン、リポソーム、レバミゾール、DEAE−デキストラン、ブロックコポリマーまたは他の合成免疫賦活剤が挙げられる。このような免疫賦活剤は、様々な供給元(例えば、Merck免疫賦活剤65(Merck and Company, Inc., Rahway, N.J.)、またはFreund不完全免疫賦活剤および完全免疫賦活剤(Difco Laboratories, Detroit, Michigan))から商業的に入手可能である。
一般的に、例えば、Amphigen(水中油型)、Alhydrogel(水酸化アルミニウム)、またはAmphigenとAlhydrogelの混合物などの免疫賦活剤を用いる。水酸化アルミニウムのみが、ヒトに用いることが認可されている。
免疫原と免疫賦活剤との割合は、共に有効量である限り、幅広い範囲にわたって変化しうる。例えば、水酸化アルミニウムは、ワクチン混合物(Al2O3に基づく)中、約0.5%の量で存在しうる。適宜、ワクチンを、免疫原の終濃度が0.2〜200μg/ml、好ましくは5〜50μg/ml、最も好ましくは15μg/mlの範囲にあるように処方する。
処方後、ワクチンは、無菌の容器に入れ、次にこの容器を密封し、低温(例えば、4℃)にて保存しても良いし、凍結乾燥しても良い。凍結乾燥によって安定な形態で長期保存可能である。
ワクチンは、非経口的に注射によって、例えば、皮下にまたは筋肉内に、適宜投与する。他の投与態様に好適なさらなる製剤としては、坐薬、場合によっては、経口製剤が挙げられる。坐薬に関して、従来的な結合剤および担体は、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含むことができ、このような坐薬は、0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で活性成分を含む混合物より形成されうる。経口製剤は、例えば、一般に用いられる賦形剤(例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放性製剤または散剤の形態をとり、10%〜95%、好ましくは25%〜70%の活性成分を含む。ワクチン組成物を凍結乾燥した場合、凍結乾燥した材料は、投与前に、例えば、懸濁液として再構成することができる。再構成は好ましくは、緩衝液中で達成される。
患者に経口投与するためのカプセル剤、錠剤およびピルは、腸溶性コーティングを伴って提供されえ、かかるコーティングは、例えば、Eudragit「S」、Eudragit「L」、酢酸セルロース、酢酸フタルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
Gpr100ポリペプチドは、中性または塩形態のワクチンに処方できる。医薬的に許容可能な塩は、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基を用いて形成された)を含み、無機酸(例えば、塩酸もしくはリン酸)または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸およびマレイン酸)を用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成された塩はまた、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄)および有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカイン)に由来しうる。
投与
一般的に、医師は実用量を決定し、かかる実用量は、個々の被験体に最適であり、特定の患者の年齢、体重、および反応に応じて変化する。以下の用量は、平均的な症例の例示である。もちろん、より高いまたは低い用量範囲が有利であるような、個々の例は存在しうる。
医薬組成物およびワクチン組成物は、直接注射によって投与できる。組成物は、非経口的、粘膜、筋肉内、静脈内、皮下、眼内または経皮的投与のために処方しうる。一般的に、各タンパク質は、体重1kgあたり、0.01〜30 mg、好ましくは0.1〜10 mg、より好ましくは0.1〜1 mgの用量で投与しうる。
「投与される」という用語は、ウイルスまたは非ウイルス技術による送達を含む。ウイルス送達機構としては、限定はしないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、およびバキュロウイルスベクターが挙げられる。非ウイルス送達機構としては、脂質仲介性トランスフェクション、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、カチオン面の両親媒性物質(cationic facial amphiphile:CFA)およびそれらの組合せが挙げられる。これらの送達機構の経路としては、限定はしないが、粘膜、経鼻、経口、非経口的、消化管、局所的または舌下経路が挙げられる。
「投与される」という用語は、限定はしないが、粘膜経路による送達(例えば、吸入用の鼻孔スプレーもしくはエアロゾルまたは口や消化器官を通じて摂取可能な(ingestable)溶液による)、非経口的経路(注射可能な形態によって、例えば、静脈内、筋肉内または皮下経路より送達される)が挙げられる。
「同時に投与される」という用語は、例えば、Gpr100ポリペプチドおよび付加的な物質(例えば、免疫賦活剤)の各々の投与部位および投与時間が、免疫系の必要なモジュレーションが成し遂げられるようなものであることを意味する。従って、ポリペプチドおよび免疫賦活剤は、同時に同じ場所に投与できる一方、ポリペプチドを、免疫賦活剤とは別の時間に、別の場所に投与することに利点もある。ポリペプチドと免疫賦活剤を、同一の送達ビヒクルで送達することすらできる(ポリペプチドと抗原は、結合および/もしくは非結合であるか、ならびに/または遺伝的につながっているか、および/もしくはつながっていないものでありうる)。
記載したようなポリペプチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、ヌクレオチド、抗体および場合によって、免疫賦活剤を、宿主被験体に、単一用量または複数用量で、別々にまたは同時に投与することができる。
ワクチン組成物および医薬組成物は、複数の異なる経路(例えば、注射(非経口的、皮下および筋肉内注射を含む)、鼻腔内、粘膜、経口、膣内、尿道または眼球投与)によって投与できる。
ワクチンおよび医薬組成物は、注射(例えば、皮下または筋肉内)によって、非経口的に適宜投与できる。他の投与態様に好適なさらなる製剤としては、坐薬および、場合によっては、経口製剤が挙げられる。坐薬に関して、従来的な結合剤および担体は、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含むことができ、このような坐薬は、活性成分を0.5%〜10%(1%〜2%でありうる)の範囲で含む混合物から形成されうる。経口製剤は、一般に用いられている賦形剤(例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放性製剤または散剤の形態をとり、10%〜95%、好ましくは25%〜70%の活性成分を含む。ワクチン組成物を凍結乾燥した場合、凍結乾燥した材料は、投与前に、例えば、懸濁液に再構成することができる。再構成は好ましくは、緩衝液中で達成される。
あるいは、本明細書中に記載された方法によって同定された治療化合物または治療薬剤は、糖尿病関連障害または体重関連障害の治療および予防に用いることができる。1態様において、この化合物または薬剤は、天然、合成、半合成、または組換えのGpr100受容体遺伝子、Gpr100受容体遺伝子産物、またはそれらの断片、ならびに当該遺伝子の類似体、遺伝子産物または断片でありうる。別の態様において、化合物は、当該遺伝子もしくは遺伝子産物に特異的な抗体、アンチセンスDNAもしくはRNA、または有機小分子もしくは無機小分子でありうる。好ましい実施形態において、化合物または薬剤は、Gpr100受容体遺伝子またはGpr100受容体遺伝子産物の活性、発現または機能に対する作用を有する。
糖尿病関連障害または体重関連障害を治療するための方法を提供する。1態様において、Gpr100受容体をモジュレートできる治療上有効量の薬剤を、それを必要としている被験体に投与する。Gpr100受容体をモジュレートすることができる薬剤としては、限定はしないが、当該遺伝子もしくは遺伝子産物に特異的な抗体、アンチセンスDNAもしくはRNA、または有機もしくは無機小分子が挙げられる。Gpr100受容体モジュレーターは、単独でも、医薬的に許容可能な組成物の一部としても投与できる。例えば、Gpr100受容体モジュレーターは、他のGpr100受容体のアゴニストもしくはアンタゴニスト、または他の医薬的に活性な化合物と組み合わせて投与できる。例えば、付加的な医薬的に活性な化合物は、当該分野で公知である抗糖尿病薬剤もしくは抗肥満症薬剤、または他の症状または疾患を治療するために与えられる薬剤を含むことができる。
糖尿病関連障害または体重関連障害を治療するための方法は、治療上有効量のGpr100受容体遺伝子またはGpr100受容体をそれを必要としている被験体に投与することを含む。
さらなる態様
本発明のさらなる態様および実施形態を今回、以下の番号を付けたパラグラフに示す。本発明はこれらの態様を含むことが理解される:
パラグラフ1. 配列番号3もしくは配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むGpr100 GPCRポリペプチド、またはその相同体、変異体もしくは誘導体。
パラグラフ2. パラグラフ1に記載のポリペプチドをコードする核酸。
パラグラフ3. 配列番号1、配列番号2もしくは配列番号4に示される核酸配列を含むパラグラフ2に記載の核酸、またはその相同体、変異体もしくは誘導体。
パラグラフ4. パラグラフ1に記載のポリペプチドの断片を含むポリペプチド。
パラグラフ5. 配列番号3と配列番号5との間で相同な1または複数の領域を含むか、配列番号3と配列番号5との間で非相同な1または複数の領域を含む、パラグラフ3に記載のポリペプチド。
パラグラフ6. パラグラフ4または5に記載のポリペプチドをコードする核酸。
パラグラフ7. パラグラフ2、3、または6に記載の核酸を含むベクター。
パラグラフ8. パラグラフ2、3、もしくは6に記載の核酸、またはパラグラフ7に記載のベクターを含む宿主細胞。
パラグラフ9. パラグラフ2、3もしくは6に記載の核酸、またはパラグラフ7に記載のベクターを含むトランスジェニック非ヒト動物。
パラグラフ10. マウスである、パラグラフ9に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
パラグラフ11. Gタンパク質共役型受容体と特異的に相互作用できる化合物を同定する方法における、パラグラフ1、4または5に記載のポリペプチドの使用。
パラグラフ12. Gタンパク質共役型受容体と特異的に相互作用できる化合物を同定する方法における、パラグラフ9または10に記載のトランスジェニック非ヒト動物の使用。
パラグラフ13. Gpr100 GPCRのアンタゴニストを同定するための方法であって、Gpr100受容体を発現する細胞と候補化合物を接触させること、および細胞内の環状AMP(cAMP)レベルが、該接触により低下するか否かを決定することを含む、上記方法。
パラグラフ14. 細胞内の環状AMPの内在性レベルを低下させることができる化合物を同定するための方法であって、Gpr100 GPCRを発現する細胞と候補化合物を接触させること、および細胞内の環状AMP(cAMP)のレベルが、該接触によって低下するか否かを決定することを含む、上記方法。
パラグラフ15. Gpr100 GPCRポリペプチドに結合することができる化合物を同定する方法であって、Gpr100 GPCRポリペプチドと候補化合物を接触させること、および候補化合物がGpr100 GPCRポリペプチドに結合するか否かを決定することを含む、上記方法。
パラグラフ16. パラグラフ11〜15のいずれかに記載の方法によって同定される化合物。
パラグラフ17. パラグラフ1、4または5に記載のポリペプチドに特異的に結合することができる化合物。
パラグラフ18. パラグラフ1、4もしくは5に記載のポリペプチドまたはその一部、あるいはパラグラフ2、3もしくは6に記載の核酸の抗体作製方法における使用。
パラグラフ19. パラグラフ1、4もしくは5に記載のポリペプチド、またはその一部、あるいはパラグラフ2、3もしくは6に記載のヌクレオチドにコードされるポリペプチド、またはその一部に特異的に結合できる抗体。
パラグラフ20. 以下の1または複数を含む医薬組成物:パラグラフ1、4もしくは5に記載のポリペプチドまたはその一部;パラグラフ2、3もしくは6に記載の核酸、またはその一部;パラグラフ7に記載のベクター;パラグラフ8に記載の細胞;パラグラフ16もしくは17に記載の化合物;およびパラグラフ19に記載の抗体、と薬学的に許容可能な担体または希釈剤。
パラグラフ21. 以下の1または複数を含むワクチン組成物:パラグラフ1、4もしくは5に記載のポリペプチド、またはその一部;パラグラフ2、3もしくは6に記載の核酸、またはその一部;パラグラフ7に記載のベクター;パラグラフ8に記載の細胞;パラグラフ16もしくは17に記載の化合物;およびパラグラフ19に記載の抗体。
パラグラフ22. 以下の1または複数を含む疾患または疾患に対する感受性についての診断キット:パラグラフ1、4もしくは5に記載のポリペプチド、またはその一部;パラグラフ2、3もしくは6に記載の核酸、またはその一部;パラグラフ7に記載のベクター;パラグラフ8に記載の細胞;パラグラフ16もしくは17に記載の化合物;およびパラグラフ19に記載の抗体。
パラグラフ23. Gpr100 GPCRの増強した活性に関連する疾患に罹患している患者を治療する方法であって、Gpr100 GPCRのアンタゴニストを該患者に投与することを含む、上記方法。
パラグラフ24. Gpr100 GPCRの減少した活性に関連する疾患に罹患している患者を治療する方法であって、Gpr100 GPCRのアゴニストを該患者に投与することを含む、上記方法。
パラグラフ25. パラグラフ23または24に記載の方法であって、該方法においてGpr100 GPCRは、配列番号3または配列番号5に示される配列を有するポリペプチドを含む、上記方法。
パラグラフ26. 患者の疾患を治療および/または予防するための方法であって、以下の1または複数を該患者に投与するステップを含む上記方法:パラグラフ1、4もしくは5に記載のポリペプチド、またはその一部;パラグラフ2、3もしくは6に記載の核酸、またはその一部;パラグラフ7に記載のベクター;パラグラフ8に記載の細胞;パラグラフ16もしくは17に記載の化合物;パラグラフ19に記載の抗体;パラグラフ20に記載の医薬組成物;およびパラグラフ20に記載のワクチン。
パラグラフ27. パラグラフ1、4もしくは5に記載のポリペプチド、またはその一部;パラグラフ2、3もしくは6に記載の核酸、またはその一部;パラグラフ7に記載のベクター;パラグラフ8に記載の細胞;パラグラフ16もしくは17に記載の化合物;および/あるいはパラグラフ19に記載の抗体、を含む試薬であって、疾患を治療または予防する方法において使用するための上記試薬。
パラグラフ28. 疾患を治療または予防するための医薬組成物を調製するための、パラグラフ1、4もしくは5に記載のポリペプチド、またはその一部;パラグラフ2、3もしくは6に記載の核酸、またはその一部;パラグラフ7に記載のベクター;パラグラフ8に記載の細胞;パラグラフ16もしくは17に記載の化合物;およびパラグラフ19に記載の抗体の、使用。
パラグラフ29. 改変されたGpr100遺伝子を含むことを特徴とする、非ヒトトランスジェニック動物。
パラグラフ30. パラグラフ29に記載の非ヒトトランスジェニック動物であって、該トランスジェニック動物における変化が、Gpr100の欠失、機能喪失を生じるGpr100の変異、標的変異またはランダム変異を有するヌクレオチド配列を有する外因性遺伝子のGpr100への導入、別種由来の外因性遺伝子のGpr100への導入、およびこれらいずれかの組み合わせ。
パラグラフ31. 機能的に破壊されている内在性Gpr100遺伝子を有する非ヒトトランスジェニック動物であって、該トランスジェニック動物は、そのゲノム内に該遺伝子を含み、異種性Gpr100タンパク質をコードする導入遺伝子を発現する、上記トランスジェニック動物。
パラグラフ32. 宿主細胞のGpr100遺伝子を機能的に破壊するための核酸構築物であって、該核酸構築物は、以下を有する;(a)非相同置換部分、(b)非相同置換部分の上流に配置されており、かつ第1Gpr100遺伝子配列と実質的同一性を有するヌクレオチド配列を有する、第1相同性領域、および(c)非相同置換部分の下流に配置されており、かつ第2Gpr100遺伝子配列と実質的同一性を有するヌクレオチド配列を有する、第2相同性領域であって、かかる第2Gpr100遺伝子配列は、天然の内在性Gpr100遺伝子の第1Gpr100遺伝子配列の下流に配置されている、第2相同性領域。
パラグラフ33. Gpr100 GPCRポリペプチドを作製するための方法であって、Gpr100 GPCRポリペプチドをコードする核酸が発現される条件下にて、パラグラフ8に記載の宿主細胞を培養することを含む、上記方法。
パラグラフ34. 試料中のパラグラフ2、3もしくは6に記載の核酸の存在を検出するための方法であって、試料を、当該核酸に特異的な少なくとも1つの核酸プローブと接触させること、および核酸の存在について試料をチェックすることを含む、上記方法。
パラグラフ35. 試料中のパラグラフ1、4または5に記載のポリペプチドの存在を検出するための方法であって、試料を、パラグラフ19に記載の抗体と接触させること、およびポリペプチドの存在について、当該試料をチェックすることを含む、上記方法。
パラグラフ36. Gpr100 GPCRの増加した、減少した、そうでなければ異常な発現によって生じるか、またはこれらに関連する疾患または症候群を診断するための方法であって、(a)肥満もしくは体重増加の予防を含む肥満症、食欲抑制、高脂血症、異リポイド血症(dyslipoidemia)および高トリグリセリド血症を含む脂質代謝障害、糖尿病および関連障害(限定はしないが、II型糖尿病、障害性グルコース耐性、インスリン抵抗性症候群、症候群X、高血糖、急性膵炎、循環器疾患、高血圧症、心肥大および高コレステロール血症が挙げられる)に罹患しているか、罹患していると思われる動物におけるGpr100 GPCRの発現レベルもしくは発現パターンを検出するステップ、ならびに(b)当該発現レベルまたはパターンを正常な動物のGpr100 GPCRの発現レベルもしくは発現パターンと比較するステップ、を含む。