JP2008503561A - 骨芽細胞機能を刺激するためのpyk2阻害薬 - Google Patents

骨芽細胞機能を刺激するためのpyk2阻害薬 Download PDF

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Abstract

本発明は、骨粗鬆症、骨折、偽関節、偽関節症、歯周疾患、または他の骨代謝障害を伴う対象において、PYK2阻害薬により骨芽細胞機能を刺激する方法に関する。場合により本方法はさらに第2の骨療法薬の投与を含む。本発明は、骨療法薬として有効なPYK2阻害薬を同定する方法であって、被験物質を骨芽細胞様細胞に投与して骨芽細胞機能が刺激されるかを判定することを含む方法にも関する。場合により、この同定方法はさらに、被験物質をPYK2と接触させてPYK2活性が阻害されるかを判定することを含む。

Description

発明の詳細な説明
発明の分野
本発明は、骨粗鬆症、骨折、偽関節(non-union)、偽関節症(pseudoarthroses)、歯周疾患、および他の骨代謝障害を伴う対象の処置方法に関する。本発明は、骨芽細胞機能を刺激するのに有用な療法薬を同定するためのアッセイ法にも関する。
発明の背景
骨は動的臓器であり、増殖、リモデリングおよび再建(すなわち形成と吸収の反復サイクル)を行う。骨格の発達および維持には、骨形成性である骨芽細胞と骨吸収性である破骨細胞の協調活動が要求される。吸収が形成を上回ると、骨量の減損(オステオペニア(骨減少症))および/または骨統合性の減損(骨粗鬆症)が生じるであろう。
骨減損は成人早期に始まる進行性現象であるが、閉経期(自然または外科処置による)の女性ではこれが急激に加速され、この減損はエストロゲンが枯渇して2年以内に最大となる。この加速期には、骨形成が大幅に低下する。より軽度ではあるが骨吸収も低下することも指摘すべきである。
骨吸収を低下させる医薬(”抗吸収薬”)または骨形成を増大させる医薬(骨同化薬)が新療法の標的となっている。しかしながら、骨芽細胞と破骨細胞の機能は密接に関連しているため、骨芽細胞を刺激する薬剤は破骨細胞を刺激する可能性があり(およびその逆)、一方を阻害すると他方も阻害される可能性があるという事実により、それらの薬剤の療法効果には限界がある。
骨粗鬆症は全身性骨格疾患であり、低い骨量および骨組織の衰退を特徴とし、その結果、骨の脆弱性および骨折感受性が増大する。米国では、2500万人を超える人々がこの状態にあり、毎年130万例の骨折が起き、これには年間で脊椎500,000例、股関節250,000例および手首240,000例の骨折が含まれる。股関節骨折は骨粗鬆症の最も重篤な結果であり、1年以内に5〜20%の患者が死亡し、生存者のうち50%以上が身体障害となる。
高齢者は骨粗鬆症のリスクが最も高く、したがってこの問題は集団の高齢化に伴って著しく増大すると予想される。世界的な骨折発症率は今後60年間で3倍に増加すると予測されており、ある研究は2050年には世界中で450万例の股関節骨折が生じると推定している。
男性より女性の方が骨粗鬆症のリスクは高い。女性には閉経後の5年間に骨減損の急激な加速が起きる。このリスクを高める他の要因には、喫煙、アルコール中毒、坐位の生活様式、および低いカルシウム摂取量が含まれる。
骨粗鬆症のほか、約2000〜2500万人の女性に、また男性でも人数が増加しているが、骨量減少の結果としての脊椎骨折が検出され、米国だけでさらに年間250,000例の股関節骨折が報告されている。この場合は最初の2年間で12%の死亡率を伴い、患者のうち30%の割合が骨折後に自宅介護を必要とする。これが既に重大であるが、これらの骨折の治癒は遅く、または不完全であるので、集団全体の高齢化のため回復期の経済的および医療上の重大性は増大すると予想される。加齢に伴う骨減損を予防することによって衰弱をもたらす骨折の発生確率を減らすための開発において、幾つかの有望な療法がある(ビスホスホネート類など)が、これらの療法はいったん骨折が起きた場合の骨量回復のためには処方されない。
正常な総骨密度をもつ対象においてすら、骨格の局所領域では骨形成と骨吸収の不均衡が起きる可能性もある。たとえば、局所的な骨侵食および全身的な骨減損はリウマチ様関節炎の特徴であり、進行性能力障害の原因となる。
骨折修復に際して、骨形成レベル低下と共に骨吸収がより盛んである場合、治癒の遅れが臨床的に重大となる可能性がある。
エストロゲンは四肢骨折治癒の質を高めることが示された(Bolander et al., 38th Annual Meeting Orthopedic Research Society, 1992)。したがって、エストロゲン置換療法は骨折修復処置のための1方法であると思われる。しかし、月経の再開、乳房痛、子宮癌のリスク増大、乳癌の感知リスク増大を含めた副作用、およびプロゲスチンの併用のため、エストロゲン療法についての患者のコンプライアンスは比較的低い。さらに、男性はエストロゲン療法の使用を嫌う傾向がある。衰弱をもたらす骨折が起きた患者または骨量の低い患者にとって有益な、かつ患者のコンプライアンスを高める療法に対する要望があるのは明らかである。
プロリンリッチ-チロシンキナーゼ(proline-rich tyrosine kinase)(PYK2; CAKβおよびRAFTKとしても知られる)は、FAK(フォーカルアドヒージョンキナーゼ)ファミリーのメンバーである。PYK2は神経細胞および造血細胞に発現し、最近になって破骨細胞に高度に発現することが示された(Lakkakorpi et al., J Biol Chem. 2003年3月28日; 278(13) :11502-12。
さらに、破骨細胞の接着および運動のSrc依存性調節においてPYK2は重要な役割をもつという仮説が立てられ、したがって骨吸収に関与すると考えられている(Zhang et al. 2002, Bone 31(3): 359-365)。
WO 98/35056は、化合物とPYK2を接触させて結合が起きるかを判定することにより同定した化合物を投与することによって哺乳類において骨粗鬆症または炎症を治療または予防する方法を示す。
PYK2タンパク質は、たとえばU.S.P. No. 5,837,524に記載されている。
PYK2タンパク質は、たとえばU.S.P. No. 5,837,815にも記載されている。
骨代謝障害を伴う個体のための多様な療法があるが、他の骨療法に対する要望を満たすための研究が続けられている。より具体的には、骨粗鬆症など低い骨量を伴う状態において、骨芽細胞機能を刺激して骨形成を高め、これにより骨量を回復させ、骨構造を再建するための療法薬および方法が求められている。
発明の概要
本発明においては、骨芽細胞機能を刺激する方法であって、それを必要とする哺乳類に骨芽細胞機能を刺激するのに有効な量のPYK2阻害薬を投与することを含む方法が提供される。
望ましくは、本発明に有用なPYK2阻害薬はPYK2依存性キナーゼ活性を阻害する。
場合により、本発明に有用なPYK2阻害薬は直接的PYK2阻害薬である。
本発明は、骨芽細胞機能の刺激が有益となりうる哺乳類の処置に有用である。骨芽細胞機能の刺激が有益となりうる哺乳類は、骨量の補充および維持、骨減損の予防、および/または骨格の局所領域での骨芽細胞機能の刺激を必要とする哺乳類である。
本発明による骨芽細胞機能には、骨形成、骨形成に寄与する代謝活性、および骨芽細胞表現型に関連する代謝活性が含まれるが、これらに限定されない。そのような機能はインビボ、インビトロ、またはエクスビボで証明することができるものである。
場合により、本発明はさらに第2の骨療法薬の投与を含む。
場合により、第2の骨療法薬は抗吸収薬および/または骨同化薬である。
本発明の他の観点は、骨療法薬として有効なPYK2阻害薬を同定する方法であって、被験物質を骨芽細胞様細胞に投与して骨芽細胞機能が刺激されるかを判定することを含む方法である。
場合により、この同定方法はさらに、被験物質をPYK2と接触させてPYK2活性が阻害されるかを判定することを含む。
PYK2活性は、PYK2を含む内因性基質のPYK2依存性リン酸化を測定することにより評価でき、また外から添加した基質のリン酸化により評価でき、この場合、基質は天然または人工のいずれであってもよい。
発明の詳細な記述
本明細書中で用いるものとして下記の定義を適用する:
”PYK2阻害”は、PYK2機能の阻害を意味する。
”PYK2依存性リン酸化”は、リン酸化される基質とは関係のないPYK2のリン酸化活性を意味する。PYK2依存性リン酸化は、PYK2のリン酸化を表わす用語”PYK2リン酸化”と区別すべきであり、これには自己リン酸化(それ自身による、たとえばY402において起きることが知られているもの)またはトランスリン酸化(たとえばSrcによる、Y-579、580において起きることが知られているもの)が含まれる。
”選択的PYK2阻害薬”は、c-erbB-2、c-met、tie-2、PDGFr、FGFr、c-Src、またはVEGFRに対するよりPYK2に対して大きいインビトロIC50をもつPYK2阻害薬を意味する。
”直接的PYK2阻害薬”は、一部は阻害が阻害薬とPYK2の直接的な物理的相互作用により起きるPYK2阻害薬を意味する。
”PYK2阻害薬”には、医薬的に許容できる塩類も含まれる。
”医薬的に許容できる”は、キャリヤー、希釈剤、賦形剤、塩類、溶媒および/または水和物がその配合物の他の成分と適合性でなければならず、かつそのレシピエントに対して有害であってはならないことを意味する。
”PYK2阻害薬”には、それから製造したプロドラッグも含まれる。
”プロドラッグ”は、投与後にインビボで何らかの化学的または生理的プロセスにより(たとえばプロドラッグが生理的pHにされた際、または酵素作用により目的薬物の形に変換された際)その薬物を放出する薬物前駆物質を表わす。式Iの化合物のプロドラッグは米国特許出願No. 60/435,670に開示されており、これを本明細書に援用する。
”療法薬”は、哺乳類の処置に有用な薬剤を意味する。
”処置(treat、treating、またはtreatment)”には、阻止処置(たとえば予防処置)および対症処置ならびに矯正処置が含まれる。
”骨芽細胞様細胞”は、骨芽細胞機能を発現する細胞、または発現するように培養に際して操作しうる細胞を意味する。
”PYK2偽基質”は、PYK2チロシン402リン酸化部位SESCSIESDIYAEIPDETLRを含むが、少なくとも1つの他のPYK2領域、たとえばエズリン/ラジキシン/モエシン(ezrin/ radixin/ moesin)タンパク質ドメイン、フォーカルアドヒージョンターゲティング領域、または少なくとも100アミノ酸残基の他のいずれかの領域を欠如する基質である。
”医薬的に許容できる塩(類)”には、本発明化合物中に存在する場合がある酸性基または塩基性基の塩類が含まれる。塩基性である本発明化合物は、各種の無機酸および有機酸と多様な塩類を形成できる。それらの塩基性化合物の医薬的に許容できる酸付加塩の調製に使用できる酸は、無毒性の酸付加塩、すなわち医薬的に許容できるアニオンを含有する塩類、たとえば下記の塩類を形成する酸である:塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエン酸塩、およびパモ酸塩[すなわち1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)]。アミノ基などの塩基性部分を含む本発明化合物は、上記酸のほか各種アミノ酸と医薬的に許容できる塩類を形成できる。
本発明の1態様は、骨芽細胞機能を刺激する方法であって、それを必要とする哺乳類に骨芽細胞機能を刺激するのに有効な量のPYK2阻害薬を投与することを含む方法である。
1態様において、PYK2阻害薬は選択的阻害薬である。場合により、選択的PYK2阻害薬はFAKに対して阻害活性をもつPYK2阻害薬を含む。
他の態様において、PYK2阻害薬は直接阻害薬である。場合により、直接阻害薬は非共有結合性の直接的な物理的相互作用を示す。場合により、直接阻害薬はPYK2に対して少なくとも約1000 nMの平衡結合定数(すなわちKa)をもつ。場合により、Kaは少なくとも約300 nMである。当業者は多数の物理生化学的方法のいずれか、たとえばBioCore 3000(BioCore Medical Technologies, Inc.)を用いて容易にKaを判定できる。
本発明による処置を必要とする哺乳類には、骨芽細胞機能を刺激することが望ましい哺乳類が含まれる。それらの哺乳類には、ヒト、愛玩動物(たとえばイヌ、ネコ、他の飼育された哺乳類など)、および農業関連哺乳類(たとえばウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなど)が含まれる。
本発明によれば、骨芽細胞機能を刺激することが望ましい状態には、限定ではない例として骨粗鬆症、オステオペニア、骨折、骨軟化症、くる病、骨線維形成不全症、歯周炎、骨密度低下、およびそのリスクを伴う状態から選択される状態が含まれる。
骨芽細胞機能を刺激することが望ましい他の状態には、低い骨量を示す状態が含まれる。”低い骨量を示す状態”という句は、骨量レベルが年齢別正常値より低い状態を表わす。たとえば、年齢別正常値は世界保健機構”骨折リスクの評価と閉経後骨粗鬆症のスクリーニングのためのその適用(1994).世界保健機構研究グループ報告.世界保健機構テクニカルシリーズ843(Assessment of Fracture Risk and its Application to Screening for Postmenopausal Osteoporosis (1994). Report of a World Health Organization Study Group. World Health Organization Technical Series 843)”(p.1-29)による基準に定められている。”低い骨量を示す状態”には、原発性および続発性骨粗鬆症が含まれる。続発性骨粗鬆症には、グルココルチコイド誘発-骨粗鬆症、甲状腺機能亢進誘発-骨粗鬆症、運動抑制(immobilization)誘発-骨粗鬆症、ヘパリン誘発-骨粗鬆症および免疫抑制薬誘発-骨粗鬆症が含まれる。歯周疾患、歯槽骨減損、骨切断術、および小児特発性骨減損も含まれる。
場合により、骨粗鬆症状態はグルココルチコイド誘発-骨粗鬆症、甲状腺機能亢進誘発-骨粗鬆症、運動抑制誘発-骨粗鬆症、ヘパリン誘発-骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、およびビタミンD欠乏性骨粗鬆症ならびに免疫抑制薬誘発-骨粗鬆症から選択されるタイプのものであってよい。
”低い骨量を示す状態”には、骨粗鬆症の長期合併症、たとえば脊椎弯曲、身長低下および補綴術も含まれる。
”低い骨量を示す状態”という句は、骨粗鬆症を含めた本明細書に記載する疾患の平均発症リスクより有意に高いリスクをもたらすことが知られている状態(たとえば閉経後の女性、60歳を超えた男性、喫煙する個体、平均より多量のアルコールを摂取する個体、坐位の生活様式をもつ個体、カルシウム摂取量の低い個体、低体重の個体、低い骨量または股関節骨折の家族歴をもつ個体など)をも表わす。
骨芽細胞機能を刺激することが望ましい他の状態には、さらに年齢別および性別の対応集団より大きい速度で経時的に骨減損が起きる状態が含まれる。限定ではない例として、そのような状態は骨粗鬆症、骨関節炎、リウマチ様関節炎、歯周炎関連の骨減損、歯槽骨減損、および小児特発性骨減損を含めた状態から選択できる。
骨芽細胞機能を刺激することが望ましい他の状態には、限定ではない例として、さらに外科処置が含まれる。処置の例には、復顔、上顎再建、下顎再建、骨移植、補綴物移植および脊椎骨癒合術が含まれる。
骨芽細胞機能を刺激することが望ましい他の状態は、長骨伸長の促進が望ましい状態である。
骨芽細胞機能を刺激することが望ましい他の状態は、対象が前記のいずれかの状態のリスクをもつ状態である。
有用な投与量は、約0.001〜約100 mg/kg/日のPYK2阻害薬である。場合により投与量は約0.01〜約10 mg/kg/日のPYK2阻害薬である。
PYK2阻害薬
本明細書中で用いるPYK2阻害薬は、PYK2機能を阻害するいずれかの薬剤、たとえば低分子阻害薬であってよい。望ましくは、低分子阻害薬は2000ダルトン未満の分子量をもつ。
本発明によるPYK2阻害薬を同定するための方法は、たとえばUSP No. 5,837,524に示されており、これを本明細書に援用する。
本発明によるPYK2阻害薬を同定するための他の方法は、たとえばUSP No. USP No. 5,837,815に示されており、これを本明細書に援用する。これらの方法には、たとえば複合体の成分間の相互作用、たとえばPYK2とNBP、ゲロシン(gelosin)、Srcキナーゼ、パキシリン(paxillin)、CAS120などとの相互作用を撹乱もしくは阻害または促進しうる薬剤を同定するためのアッセイ法を含めることができる。
PYK2阻害薬を同定するための他の方法は、本明細書の実施例に示されている。
さらに、PYK2阻害薬はそれが後記(”PYK2阻害”)のようにPYK2活性を阻害する能力により同定できる。
式I(後記)の種類に属するFAKタンパク質チロシンキナーゼ阻害薬はPYK2阻害薬でもあり、本発明に有用である。式Iの化合物は、同一出願人による米国特許出願60/435670(2002年12月20日出願)に記載されており、これを本明細書に援用する。
式Iの化合物は、同一出願人による米国特許出願60/500742(2003年9月5日出願)にも記載されており、これを本明細書に援用する。
式Iの化合物は、同一出願人による米国特許出願10/734039(2003年12月11日出願)にも記載されており、これを本明細書に援用する。
式Iの化合物は、同一出願人による米国特許出願10/733215(2003年12月11日出願)にも記載されており、これを本明細書に援用する。
式Iの化合物は、同一出願人による米国特許出願60/571312(2004年5月14日出願)にも記載されており、これを本明細書に援用する。
式Iの化合物は、同一出願人による米国特許出願60/571210(2004年5月14日出願)にも記載されており、これを本明細書に援用する。
式Iの化合物は、同一出願人による米国特許出願60/571209(2004年5月14日出願)にも記載されており、これを本明細書に援用する。
式Iの化合物は下記に示す広範なクラスのトリフルオロメチルピリミジン化合物を含み、ただし、”A”および”Ar”置換基は米国特許出願60/435,670により示されるものであり、これを本明細書に援用する。
Figure 2008503561
場合により、本発明に有用な式Iの化合物は米国特許出願10/733,215(本明細書に援用する)に記載される5-アミノオキシインドール化合物を含む。そのような化合物は一般に下記の式IIに示され、ただし、”A”置換基は米国特許出願10/733,215により示されるものであり、これを本明細書に援用する。
Figure 2008503561
場合により、本発明に有用な式Iの化合物は米国特許出願10/734039(2003年12月12日出願)(本明細書に援用する)に記載される第三級アミノピリミジン化合物を含む。そのような化合物は一般に下記の式IIIに示され、ただし、置換基”Ar、R1、R2、R3、R4、およびn”は米国特許出願10/734039に示されるものであり、これを本明細書に援用する。
Figure 2008503561
たとえば、本発明によるPYK2阻害薬は式I、IIおよびIIIの一種である下記の化合物PF-Xである。
Figure 2008503561
PF-Xの構造および一般合成法は米国特許出願60/435,670(2002年12月20日出願)に記載されており、これを本明細書に援用する。
PF-Xの構造および一般合成法は米国特許出願10/734039(2003年12月11日出願)にも記載されており、これを本明細書に援用する。
場合により、本発明に有用なPYK2阻害薬は、Flk-1受容体のシグナル伝達経路を遮断する化合物から選択され、たとえば下記の化合物PF-Yである。
Figure 2008503561
PF-Yの構造および合成法は米国特許出願09/569,545(公開番号US 2003/0191162 A1)(2000年5月12日出願)に記載されており、これを本明細書に援用する。
併用療法
本発明は、場合によりさらに第2の骨療法薬の投与を含むことができる。そのような有用な骨療法薬は、抗吸収薬もしくは骨同化薬、または抗吸収性かつ骨同化性である薬剤のいずれであってもよい。
本明細書において用語”第2の骨療法薬”の使用には、1種類より多い薬剤の使用が含まれる。本明細書に記載する用語”第2の骨療法薬”は、投与の順序(PYK2阻害薬に対する)を示すものではなく、PYK2阻害薬の前、後、またはそれと同時に投与できる。
本発明にはいかなる抗吸収薬も第2の骨療法薬として使用でき、これにはエストロゲン化合物、選択的エストロゲン受容体調節薬、またはビスホスホネート類が含まれるが、これらに限定されない。
例示にすぎないが、ラロキシフェン(raloxifene)、すなわち6-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-[4-(2-ピペリジノエトキシ)ベンゾイル]ベンゾ[b]チオフェンが報告された(Osteoporosis Conference Scrip No. 1812/13 Apr. 16/20, 1993, p. 29)。
ラロキシフェンは骨および脂質に対するエストロゲンの好ましい作用を模倣しているが、エストロゲンと異なり子宮刺激作用が最小限である[Black, L. J. et al., ラロキシフェン(LY139481 HCI)は、卵巣摘除ラットにおいて子宮肥大を引き起こすことなく骨減損を阻止し、血清コレステロールを低下させる。
そのような選択的作用を示す関連研究が、J. Clin. Invest., 1994, 93, 63-69 and Delmas, P. D. et alに報告された。
さらに他の研究がラロキシフェンの選択的作用を示し、New England Journal of Medicine, 1997, 337, 1641-1647]に報告された。
同様にタモキシフェン(tamoxifen)、すなわち1-(4-b-ジメチルアミノエトキシフェニル)-1,2-ジフェニル-ブタ-1-エンは、骨粗鬆症薬として報告され、乳癌に対する対症的作用をもつ抗エストロゲン薬であるが、子宮において若干のエストロゲン活性をもつと報告された。
U.S.P. No. 5,254,595には、骨減損を阻止するドロロキシフェン(droloxifene)などの薬剤は骨折のリスクを減らし、骨粗鬆症の治療に有用であることが開示されており、これを本明細書に援用する。
U.S.P. No. 5,552,412(本明細書に援用する)には、次式の選択的エストロゲン受容体調節(SERM)化合物
Figure 2008503561
が開示されており、式中の可変基はそこに示されるとおりである。シス-6-フェニル-5-(4-(2-ピロリジン-1-イル-エトキシ)-フェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-オール、より具体的には(-)-シス-6-フェニル-5-(4-(2-ピロリジン-1-イル-エトキシ)-フェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-オールは、経口活性をもつ有効性の高いSERMであり、骨減損を阻止し、総血清コレステロールを低下させ、卵巣摘除ラットにおいてエストロゲン様の子宮刺激作用をもたない。U.S.P. No. 5,948,809(同様に本明細書に援用する)には、(-)-シス-6-フェニル-5-(4-(2-ピロリジン-1-イル-エトキシ)-フェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-オール酒石酸塩が開示されている。
いかなる骨同化薬も場合により本発明の第2の骨療法薬として使用でき、これには下記のものが含まれるが、これらに限定されない:IGF-I(場合によりIGF-I結合タンパク質3を含む)、IGF-II、プロスタグランジン、プロスタグランジンアゴニスト/アンタゴニスト、フッ化ナトリウム、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモンの活性フラグメント、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、ならびに副甲状腺ホルモン関連ペプチドの活性フラグメントおよび類似体、成長ホルモンまたは成長ホルモン分泌促進薬、ならびにその医薬的に許容できる塩類。
場合により、本発明に有用な第2の骨療法薬はプロスタグランジンアゴニストである。場合によりプロスタグランジンアゴニストはPGE2 EP2選択的受容体アゴニストである。限定ではないが、EP2選択的受容体アゴニストの例は、U.S.P. No. 6,498,172に示される式AAのアゴニストであり、これを本明細書に援用する。
Figure 2008503561
本発明に使用できる他のEP2選択的受容体アゴニストには、U.S.P. No. 6,288,120に開示されたプロスタグランジン受容体アゴニストが含まれ、これを本明細書に援用する。
本発明に使用できる他のEP2選択的受容体アゴニストには、U.S.P. No. 6,124,314に開示されたプロスタグランジン受容体アゴニストが含まれ、これを本明細書に援用する。
場合によりEP2選択的受容体アゴニストはU.S.P. No. 6,288,120に開示された7-[(4-ブチル-ベンジル)-メタンスルホニル-アミノ]-ヘプタン酸、あるいはその医薬的に許容できる塩もしくはプロドラッグ、またはプロドラッグの塩であり、これを本明細書に援用する。場合により7-[(4-ブチル-ベンジル)-メタンスルホニル-アミノ]-ヘプタン酸の塩はモノナトリウム塩である。
場合により、EP2受容体アゴニストは(3-(((4-t-ブチル-ベンジル)-(ピリジン-3-スルホニル)-アミノ)-メチル)-フェノキシ)-酢酸、あるいはその医薬的に許容できる塩もしくはプロドラッグ、またはプロドラッグの塩である。場合により、塩はナトリウム塩である。(3-(((4-t-ブチル-ベンジル)-(ピリジン-3-スルホニル)-アミノ)-メチル)-フェノキシ)-酢酸化合物はU.S.P. No. 6,498,172に示され、これを本明細書に援用する。
投与
PYK2阻害薬および/または第2の骨療法薬の投与量(およびタイミング)は、処置される対象、障害の重症度、投与様式、および処方医の判断に当然依存するであろう。たとえば、患者間の変動性のため、以下に示す投与量は指針基準であって、処置(たとえば骨量補充)を達成するために医師がその患者に適切と考える薬物の用量を医師は判定することができる。目的とする処置の程度を考慮する際、医師は骨量の出発レベル、患者の年齢、既存疾患の存在、および他の疾患(たとえば心血管疾患)の存在など、多様な要因のバランスをとらなければならない。
場合により、骨量を骨折閾値(本明細書中で前記に引用した世界保健機構の研究に詳述)より高いレベルにまで補充するのに十分な量の本発明のPYK2阻害薬および/または第2の骨療法薬を使用する。
骨同化薬の使用量は、たとえば後記の”骨形成のインビボアッセイ法”により決定される。
一般に同化薬の有効量は、0.001〜100 mg/kg/日、好ましくは0.01〜50 mg/kg/日である。
抗吸収薬の使用量は、骨減損阻害薬としてのそれの活性により決定される。療法量はさらに、本明細書に記載するプロトコル(エストロゲン欠乏誘発-骨減損の阻止活性を判定するためのアッセイ)を用いて、骨減損阻害における個々の薬剤の薬物動態およびそれの最小最大有効量により決定できる。
一般に抗吸収薬の有効量は、約0.001〜約20 mg/kg/日である。
共投与方式
本発明の1態様においては、PYK2阻害薬および第2の骨療法薬を同時に、または任意の順序で逐次、共投与でき、あるいは前記のPYK2阻害薬および前記の第2の骨療法薬を医薬的に許容できるキャリヤー中に含む単一の医薬組成物を投与できる。第2の骨療法薬は骨同化薬、抗吸収薬、および/または抗吸収性かつ骨同化性である薬剤のいずれであってもよい。
たとえば、PYK2アンタゴニストを単独で、または第2の骨療法薬と組み合わせて、約1週間〜約3年間使用し、続いて第2の骨療法薬を単独で約1週間〜約30年間使用する;この全処置サイクルを任意回数反復することができる。
あるいは、たとえばPYK2アンタゴニストを単独で、または第2の骨療法薬と組み合わせて約1週間〜約30年間使用し、続いて第2の骨療法薬を単独でその患者の生涯の残りの期間使用することができる。
あるいは、たとえば前記のPYK2阻害薬を1日1回投与し、前記の第2の骨療法薬(たとえばエストロゲンアゴニスト/アンタゴニスト)を毎日1回または多数回で投与してもよい。
あるいは、たとえばPYK2阻害薬および骨療法薬を逐次投与してもよく、この場合、前記のPYK2阻害薬を1日1回、骨折閾値より高いレベルにまで骨量を補充するのに十分な期間投与することができる。場合により骨折閾値は、世界保健機構研究”骨折リスクの評価と閉経後骨粗鬆症のスクリーニングのためのその適用(1994).世界保健機構研究グループ報告.世界保健機構テクニカルシリーズ843”(p.1-29)により示されている。PYK2阻害薬の投与後、第2の骨療法薬を毎日1回または多数回で投与することができる。場合により、前記のPYK2阻害薬を1日1回、経口送達などの迅速送達形態で投与する(たとえば持続放出送達形態を避けるのが好ましい)。
場合により本発明の1観点においては、PYK2阻害薬と第2の骨療法薬を実質的に同時に投与する。
場合により本発明の1観点においては、PYK2阻害薬を約1週間〜約30年間投与する。
場合により、PYK2阻害薬の投与に続いて第2の骨療法薬を投与し、その際、第2の骨療法薬は選択的エストロゲン受容体調節薬であって約3カ月〜約30年間投与され、この約3カ月〜約30年間の第2期間中は第1薬剤を投与しない。
あるいは、PYK2阻害薬の投与に続いて第2の骨療法薬を投与し、その際、第2の骨療法薬は選択的エストロゲン受容体調節薬であって約30年より長い期間投与され、この約30年より長い期間中は第1薬剤を投与しない。
投与経路
本発明薬剤の投与は、本発明薬剤を全身および/または局所(たとえば骨折、骨切除術または整形外科処置の部位に)に送達するいずれの方法によるものであってもよい。これらの方法には、経口経路、非経口経路、十二指腸内経路などが含まれる。一般に本発明薬剤を経口投与するが、たとえばそのターゲットについて経口投与が不適切な場合、または患者がその薬物を摂取できない場合は、非経口投与(たとえば静脈内、筋肉内、皮下または骨髄内)を採用できる。
PYK2阻害薬および場合により第2の骨療法薬は、骨折および骨切除術の治療および治癒促進のために、本発明薬剤またはその組成物の局所適用(たとえば骨折または骨切除術の部位に)により使用できる。たとえば適切な溶媒(たとえばラッカセイ油などの油性溶媒)中の薬剤を軟骨成長板に注射することにより、または切開術の場合は骨ろう、脱灰骨粉、高分子骨セメント、骨シーラントなど適切なキャリヤー中の前記薬剤をそこに局所投与することにより、本発明薬剤を骨折または骨切除術の部位に適用できる。あるいは、適切なキャリヤー中における前記薬剤の溶液または分散液を表面に適用することにより、または整形外科処置で慣用される固体もしくは半固体インプラント、たとえばダクロン(dacron)-メッシュ、Gore-tex(登録商標)、ゲルフォームおよびキールボーン(kiel bone)、または補綴物に薬剤を取り込ませることにより、局所適用を達成できる。
本発明のPYK2阻害薬および場合により第2の骨療法薬は、1種類以上の前記の骨療法薬と組み合わせた適切なキャリヤー中において、全身投与および/または骨折もしくは骨切除術の部位に局所適用することができる。
本発明において、PYK2阻害薬および場合により第2の骨療法薬は一般に、少なくとも1種類の本発明薬剤を医薬的に許容できるビヒクルまたは希釈剤と共に含む医薬組成物の形で投与される。したがって、本発明薬剤は個別に、または一緒に、いずれかの一般的な経口、非経口、直腸もしくは経皮剤形で投与できる。
経口投与用として、医薬組成物は液剤、懸濁液剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤などの形をとることができる。種々の賦形剤、たとえばクエン酸ナトリウム、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムを、種々の崩壊剤、たとえばデンプンおよび好ましくはバレイショデンプンまたはタピオカデンプンおよびある種の複合ケイ酸塩、ならびに結合剤、たとえばポリビニルピロリドン、ショ糖、ゼラチンおよびアラビアコムと共に含有する錠剤を使用できる。さらに、滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクは、錠剤製造の目的にしばしばきわめて有用である。同様なタイプの固体組成物を、軟および硬-充填ゼラチンカプセル中の充填物としても使用できる;これに関して好ましい物質には、乳糖(lactose、milk sugar)および高分子量ポリエチレングリコールも含まれる。水性懸濁液剤および/またはエリキシル剤が経口投与用として望ましい場合、本発明薬剤を種々の甘味剤、着香剤、着色剤、乳化剤および/または懸濁化剤、ならびに水、エタノール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの希釈剤、およびその種々の組合わせと組み合わせることができる。
非経口投与用としては、ゴマ油もしくはラッカセイ油またはポリエチレングリコール水溶液中の液剤、および対応する水溶性塩類の無菌水性液剤を使用できる。それらの水性液剤を必要ならば適切に緩衝化し、液剤希釈剤をまず十分な量の塩類溶液またはグルコースで等張にすることができる。これらの水性液剤は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内注射の目的に特に適切である。これに関して、用いる無菌水性媒質はすべて、当業者に周知の標準法で容易に入手できる。
経皮(たとえば局所)投与用としては、他の点では前記の非経口液剤と類似する、低濃度、無菌の水性または部分水性液剤(通常は約0.1〜5 %濃度)を調製する。
一定量の有効成分を含む種々の医薬組成物を調製する方法は、当業者に既知であるか、あるいは本明細書の記載を考慮すると明らかであろう。医薬組成物の調製方法の例としては、Remington's Pharmaceutical Sciences , Mack Publishing Company, ペンシルベニア州イースター, 第15版(1975)を参照。
本発明による医薬組成物は、0.1〜95%、好ましくは1〜70%の本発明薬剤(1種類以上)を含有することができる。いずれにしろ、投与される組成物または配合物は、処置される対象の疾患/状態、たとえば骨障害を処置するのに有効な量の本発明薬剤(1種類以上)を含有するであろう。
骨芽細胞機能を刺激する療法薬の同定方法
本発明の1観点は、骨療法薬として有効なPYK2阻害薬を同定する方法であって、被験物質を骨芽細胞様細胞に投与し、骨芽細胞機能が刺激されるかを判定することを含む方法である。場合により、この同定方法はさらに、被験物質をPYK2と接触させ、PYK2活性が阻害されるかを判定することを含む。
被験物質がPYK2活性に及ぼす作用は、インビボまたはインビトロで、当業者に既知のいずれかの方法、たとえば本明細書に教示されるいずれかの方法に従って判定できる。
1態様においては、被験物質がPYK2活性に及ぼす作用をインビトロで全細胞または無細胞アッセイにより判定する。全細胞アッセイについて、細胞は無傷でも破壊されていてもよい。この細胞は骨芽細胞様細胞または骨芽細胞代替細胞モデルであってもよい。
被験物質が骨芽細胞機能に及ぼす作用は、エクスビボ、インビボまたはインビトロで、当業者に既知のいずれかの方法、たとえば本明細書に教示されるいずれかの方法に従って判定できる。
1態様においては、被験物質がPYK2活性に及ぼす作用および被験物質が骨芽細胞機能に及ぼす作用をインビトロで判定する。場合により、PYK2活性のインビトロでの判定は、内因性または組換えPYK2を発現する培養した骨芽細胞様細胞もしくは適切な代替骨芽細胞モデルにおいて、または無細胞インビトロアッセイにおいて行われる。
他の態様においては、被験物質がPYK2活性に及ぼす作用をインビトロで判定し、被験物質が骨芽細胞機能に及ぼす作用をインビボで判定する。
他の態様においては、被験物質がPYK2活性に及ぼす作用をインビボで判定し、被験物質が骨芽細胞機能に及ぼす作用をインビトロで判定する。
他の態様においては、被験物質がPYK2活性に及ぼす作用および被験物質が骨芽細胞機能に及ぼす作用をインビボで判定する。
場合により、被験物質がPYK2活性に及ぼす作用の判定にはPYK2の活性化を伴う(すなわち、予め活性化されたPYK2に対する被験物質の作用を判定する)。限定ではない一例として、後記のようにPYK2をSrc仲介リン酸化により予め活性化しておくことができる。
骨芽細胞機能
本発明による骨芽細胞機能には、骨形成、骨形成に寄与する代謝活性、および骨芽細胞表現型(”骨芽細胞機能”)に関連する代謝活性のうち1以上が含まれるが、これらに限定されない。これらの機能をインビボ、インビトロ、またはエクスビボで証明できる。
骨芽細胞機能は、インビボで一般に骨芽細胞に起因する1以上の特徴を測定するためのいずれかの手段で定量できる。”インビボで一般に骨芽細胞に起因する特徴”の意味は当業者に容易に理解されるであろうが、限定ではないリストには、アルカリホスファターゼ(組織-非特異的タイプのもの)、オステオポンチン、PYK2、I型コラーゲン、IGF-I、IGF-II、IGF結合タンパク質、細胞外マトリックス、カルシウムおよびリン酸を含む不溶性細胞外無機質、ならびに無機質化マトリックスの産生が含まれる。骨芽細胞機能をインビボで測定する場合、上記の例のほかに骨量、骨強度、骨修復、組織形態計測的特徴、および血清バイオマーカーを測定できる。骨芽細胞機能の血清バイオマーカーは、限定ではない例として、オステオカルシン、骨特異的アルカリホスファターゼ、I型プロコラーゲンのアミノ末端プロペプチド(P1 NP)またはプロコラーゲン伸長ペプチド(P1 CP)であってよい。
骨芽細胞様細胞
骨芽細胞様細胞として当業者に認識される細胞には、MC3T3類、SAOS、ROS(たとえばROS 17/2.8)、UMR、および骨髄から単離された間葉幹細胞(たとえばヒト、マウス)が含まれる。
PYK2(天然または組換え)を発現するいずれかの骨芽細胞様細胞を、本発明によるスクリーニング法に従って使用できる。したがって、組換えPYK2を含有するベクターで形質転換され、PYK2をコードする核酸を転写および翻訳することができる骨芽細胞様細胞も、前記の細胞に含まれるものとする。たとえば骨芽細胞様細胞は、内因性PYK2、組換えPYK2または両方を発現しうる細胞であってよい。マウス、ラットおよびヒトを含めた幾つかの種に由来するPYK2の配列が知られており、当業者は種々のPYK2構築体を用いて骨芽細胞様細胞の形質転換を容易に実施できる。
骨形成のインビボアッセイ
骨芽細胞機能の刺激における本発明のPYK2阻害薬または第2の骨療法薬の有用性および投与は、限定ではない例として、それが骨形成を補充して骨量を増加させる能力により評価できる。それらの能力は、無傷の雄または雌ラット、性ホルモン欠乏雄(睾丸摘除)または雌(卵巣摘除)ラットにおいて試験できる。
種々の月齢(たとえば3カ月齢)の雄または雌ラットをこの試験に使用できる。ラットは無傷であるか、または性腺摘除(卵巣摘除または睾丸摘除)されており、種々の用量(たとえば1、3、または10mg/kg/日)のプロスタグランジンアゴニストを30日間、皮下注射または胃管投与される。性腺摘除ラットにおいては、外科処置の翌日(骨減損を予防する目的で)または骨減損が既に起きた時点で(骨量を回復させる目的で)処理を開始する。試験期間中、すべてのラットに水とペレット状の市販飼料(Tekladげっ歯類試料#8064, Harlan Teklad, ウィスコンシン州テクラド)(1.46%のカルシウム、0.99%のリン、および4.96 IU/gのビタミンD3を含有)を自由に摂取させる。すべてのラットに、屠殺の12および2日前に10 mg/kgのカルセイン(calcein)を皮下注射する。ラットを屠殺する。下記の終末点を測定する。
大腿骨無機質測定
各ラットから右大腿骨を剖検時に摘出し、”Regional High Resolution Scan”ソフトウェア(Hologic Inc., マサチュセッツ州ウォルサム)を備えた二重エネルギーX線吸光光度法(DXA, QDR 1000/W, Hologic Inc., マサチュセッツ州ウォルサム)により走査する。走査野サイズは5.08×1.902 cm、解像は0.0254×0.0127 cm、走査速度は7.25 mm/秒である。大腿骨走査画像を分析し、全大腿骨(WF)、遠位大腿骨骨幹端(DFM)、大腿骨骨幹(FS)および近位大腿骨(PF)の骨面積、骨無機質含量(BMC)および骨無機質密度(BMD)を測定する。
腰椎骨無機質測定
”Regional High Resolution Scan”ソフトウェア(Hologic Inc., マサチュセッツ州ウォルサム)を備えた二重エネルギーX線吸光光度法(QbR 10001W, Hologic Inc., マサチュセッツ州ウォルサム)を用いて、麻酔ラットの全腰椎および6本の腰椎それぞれ(LV1〜6)の骨面積、骨無機質含量(BMC)および骨無機質密度(BMD)を測定する。ラットを1 ml/kgのケタミン/ロンパン(ketamine/rompun)混合物(比率4:3)の注射(腹腔内)により麻酔し、次いでラットプラットホームに乗せる。走査野サイズは6×1.9 cm、解像は0.0254×0.0127 cm、走査速度は7.25 mm/秒である。全腰椎走査画像を得て分析する。全腰椎および6本の腰椎それぞれ(LV1〜6)について、骨面積30 (BA)および骨無機質含量(BMC)を測定し、骨無機質密度(MBCをBAで割ったもの)を計算する。
脛骨組織形態計測分析
右脛骨を剖検時に摘出し、筋肉を切除し、3部分に切断する。近位脛骨および脛骨骨幹を70%エタノール中に固定し、勾配濃度エタノール中で脱水し、アセトン中で脱脂し、次いでメタクリル酸メチル(Eastman Organic Chemicals, ニューヨーク州ロチェスター)に包埋する。
Reichert-Jung Polycut Sミクロトームを用いて、近位脛骨骨幹端の前側切片を厚さ4および10μmで切り取る。4μm切片を改変Masson's Trichrome染色法で染色し、一方10μm切片は染色しないままにする。各ラットからの4μm切片1枚および10μm切片1枚を海綿骨の組織形態計測に用いる。
Reichert-Jung Polycut Sミクロトームを用いて、脛骨骨幹の横断切片を厚さ10μmで切り取る。これらの切片を皮質骨の組織形態計測分析に用いる。
皮質骨の組織形態計測:Bioquant OS/2組織形態計測システム(R&M biometrics, Inc. , テネシー州ナッシュビル)を、成長板-骨端接合部に対して遠位1.2〜3.6 mmにある近位脛骨骨幹端の第2海綿骨の静的および動的組織形態計測に用いる。測定を第2海綿骨に限定するために、最初の1.2 mmの脛骨骨幹端領域は排除する必要がある。4μm切片を用いて骨容積、骨構造および骨吸収に関する指数を決定し、一方10μm切片を用いて骨形成および骨代謝回転に関する指数を決定する。
骨梁骨の容積および構造に関する測定
(1)全骨幹端面積(TV, mm2):成長板-骨端接合部に対して遠位1.2〜3.6 mmにある骨幹端の面積;
(2)骨梁骨面積(BV, mm2):TV内の全面積;
(3)骨梁骨周囲(BS, mm):骨梁骨全周の長さ;
(4)骨梁骨量(BV/TV, %):BV/TV×100;
(5)骨梁骨数(TBN, #/mm):1.199/2×BS/TV;
(6)骨梁骨厚さ(TBT, μm):(2000/1.199)×(BV/BS);
(7)骨梁骨分離(TBS, μm):(2000×1.199)×(TV-BV)。
骨吸収に関する測定および計算
(1)破骨細胞数(OCN, #):全骨幹端面積内の総破骨細胞数;
(2)破骨細胞周囲(OCP, mm):破骨細胞が覆った骨梁周囲長さ;
(3)破骨細胞数/mm (OCN/mm, #/mm):OCN/ BS;
(4)破骨細胞周囲率(% OCP, %):OCP/BS×100。
骨形成および代謝回転に関する測定および計算
(1)単一カルセイン標識周囲(SLS, mm):1つのカルセイン標識で標識した全骨梁周囲長さ;
(2)二重カルセイン標識周囲(DLS, mm):2つのカルセイン標識で標識した全骨梁周囲長さ;
(3)標識間幅(ILW, μm):2つのカルセイン標識間の平均間隔;
(4)無機質化周囲率(PMS, %):(SLS/2+DLS)/BS×lOO;
(5)無機質付着速度(MAR, μm/日):ILW/標識間隔;
(6)骨形成速度/表面指標(ref.) (BFR/BS, μm2/日/μm):(SLS/2+DLS)×MAR/BS;
(7)骨代謝速度(BTR, %/年):(SLS/2+DLS)×MAR/BV×lOO。
皮質骨組織形態計測
いかなる組織形態計測法も使用できる。たとえばBioquant OS/2組織形態計測システム(R&M biometrics, Inc. , テネシー州ナッシュビル)を、脛骨骨幹皮質骨の静的および動的組織形態計測に使用できる。全組織面積、髄腔面積、骨膜周囲、皮質内周囲、単一標識周囲、二重標識周囲、および骨周囲と皮質内表面の両方の標識間幅を測定し、皮質骨面積(全組織面積−髄腔面積)、皮質骨面積率(皮質面積/全組織面積×100)、髄腔面積率(髄腔面積/全組織面積×100)、骨周囲および皮質内標識周囲率[(単一標識周囲/2+二重標識周囲)/全周囲×100]、無機質付着率(標識間幅/間隔)、ならびに骨形成速度[無機質付着速度×(単一標識周囲/2+二重標識周囲)/全周囲]を計算する。
統計値はStatView 4.0パッケージ(Abacus Concepts, Inc., カリフォルニア州バークレー)を用いて計算できる。フィッシャーのPLSDに従った分散分析(ANOVA)検定を用いて、グループ間の差を比較する。
全身投与後の骨折治癒に対する影響についての骨折治癒アッセイ
骨芽細胞機能の刺激に関する本発明のPYK2阻害薬または第2の骨療法薬の全身投与の有用性および投与は、それが骨折治癒を助成する能力により評価でき、当業者に既知のいずれかの方法により評価できる。
そのような骨折治癒アッセイ法のひとつを後記に示す(局所投与後の骨折治癒に対する影響についての骨折治癒アッセイ)。PYK2阻害薬の全身投与による処置の有効性を判定するための他の任意アッセイ法は下記のものである。
骨折手法:3カ月齢のSprage-Dawleyラットをケタミンで麻酔する。右脛節または大腿の近位部分の前内面を1 cm切開する。脛骨外科処置手法を以下に記載する。骨に達するまで切開し、遠位脛骨粗面に対して4 mm近位、前隆線にに対して2 mm内側に1 mmの孔を開ける。直ちに0.8 mmのステンレス鋼管で釘固定を行う(最大負荷36.3 N、最大剛性61.8 N/mm、骨と同一条件下で試験した)。骨髄管のリーミングは行わない。特別に設計されたブラントジョー付き調節式鉗子を用いる3点屈曲により、脛腓接合部の2 mm上方に標準皮下骨折を形成する。軟組織損傷を最小限に抑えるために、骨折が転位しないように注意を払う。皮膚をモノフィラメントナイロン縫合糸で閉じる。この操作を無菌条件下で行う。釘固定の直後にすべての骨折のX線像を撮影し、特定した骨幹領域以外の骨折を伴う動物または釘がずれた動物を除外する。残りの動物を、骨折治癒試験のための各サブグループにつき10〜12匹ずつランダムに下記のグループに分ける。第1グループにはビヒクル(水:100%エタノール=95:5)1 ml/ラットを1日1回、胃管投与し、他には0.01〜100 mg/kg/日の被験物質(1 ml/ラット)を10、20、40および80日間、胃管投与する。
10、20、40および80日目に各グループから10〜12匹のラットをケタミンで麻酔し、瀉血剖検する。両脛腓骨を切開により摘出し、すべての軟組織を剥ぎ取る。各グループにつき5〜6匹のラットからの骨を組織学的分析のために70%エタノール中に保存し、各グループにつきさらに5〜6匹のラットからの骨をX線撮影および実施する生体力学的試験のために緩衝化リンガー液(+4℃、pH 7.4)中に保存する。
組織学的分析:骨折した骨の組織学的分析のための方法は、先に公表されている:Mosekilde and Bak(ラットにおいて成長ホルモンが骨折治癒に及ぼす影響:組織学的記述,Bone, 14:19-27, 1993)。要約すると、骨折側部を骨折線の各側8 mmの位置で鋸切断し、脱灰せずにメタクリル酸メチルに包埋し、前側切片をReichert-Jung Polycutミクロトームで8μmの厚さで切断する。Masson-Trichrome染色した中前切片(脛骨と腓骨の両方を含む)を、処置の有無に伴う骨折治癒に対する細胞応答および組織応答の視覚化に用いる。シリウスレッド(Sirius red)染色した切片を用いて、カルス構造の特徴を証明し、骨折部位の網状骨と層状骨を識別する。下記の測定を行う:(1)骨折間隙−骨折部の皮質骨端間の最短距離として測定、(2)カルス長さおよびカルス直径、(3)カルスの全骨面積、(4)カルス領域内の組織面積当たりの骨組織、(5)カルス内の線維組織、(6)カルス内の軟骨面積。
生体力学的分析
骨芽細胞機能の刺激に関する本発明のPYK2阻害薬および/または第2の骨療法薬の局所投与の有用性および投与は、それが骨の生体力学的統合性に有益な影響を及ぼす能力により評価できる。
生体力学的分析のための方法は先に公表されている:Bak and Andreassen(ラットにおいて老化が骨折治癒に及ぼす影響,Calcif Tissue Int 45: 292-297, 1989)。
本発明に有用な他の生体力学的分析方法がPeterらにより先に公表されている(Peter, C. P. ; Cook, W. O.; Nunamaker, D. M. ; Provost, M. T. ; Seedor, J. G.; Rodan, G. A. イヌにおいてアレンドロナート(Alendronate)が骨折治癒および骨リモデリングに及ぼす影響,J. Orthop. Res. 14:74-70, 1996)。
要約すると、生体力学的試験の前にすべての骨折のX線像を撮影する。治癒しつつある骨折の力学的特性を破壊的3点または4点屈曲法により分析する。最大負荷、剛性、最大負荷時のエネルギー、最大負荷時の変形、および最大応力を測定する。
局所投与後の骨折治癒に対する影響についてのアッセイ
骨芽細胞機能の刺激に関する本発明のPYK2阻害薬および/または第2の骨療法薬の局所投与の有用性および投与は、それが骨折治癒を助成する能力により評価でき、当業者に既知のいずれかの方法により評価できる。
そのような骨折治癒アッセイ法のひとつを前記に示す(全身投与後の骨折治癒に対する影響についての骨折治癒アッセイ)。PYK2阻害薬の局所投与による処置を評価するのに有用な他の任意の骨折治癒アッセイ法は下記のものである。
骨折手法:ほぼ2歳の雌または雄ビーグル犬を試験に用いる。Lenehanらの記載(Lenehan, T. M. ; Balligand, M. ; Nunamaker, D. M. ; Wood, F. E. : イヌにおいてEHDPが骨折治癒に及ぼす影響,J Orthop Res 3: 499- 507; 1985)に従って、3点屈曲法で徐々に連続的に負荷することにより、横橈骨骨折を形成する。骨折部位にワイヤを通して引張り、骨を確実に解剖学的完全に破壊する。次いで徐放性ペレットまたはAlzetミニポンプで薬剤を10、15または20週間、徐々に放出することにより、プロスタグランジンアゴニストを骨折部位へ局所送達する。
組織学的分析
骨折した骨の組織学的分析方法はPeterら(Peter, C. P. ; Cook, W. O.; Nunamaker, D. M. ; Provost, M. T. ; Seedor, J. G.; Rodan, G. A. イヌにおいてアレンドロナートが骨折治癒および骨リモデリングに及ぼす影響,J. Orthop. Res. 14:74-70, 1996)およびMosekilde and Bak(ラットにおいて成長ホルモンが骨折治癒に及ぼす影響:組織学的記述,Bone, 14:19-27, 1993)により先に公表されている。要約すると、骨折側部を骨折線の各側3 cmの位置で鋸切断し、脱灰せずにメタクリル酸メチルに包埋し、Reichert-Jung Polycutミクロトームで8μmの厚さの前側切片に切断する。Masson-Trichrome染色した中前切片(脛骨と腓骨の両方を含む)を、処置の有無に伴う骨折治癒に対する細胞応答および組織応答の視覚化に用いる。シリウスレッド染色した切片を用いて、カルス構造の特徴を証明し、骨折部位の網状骨と層状骨を識別する。
下記の測定を行う:
(1)骨折間隙−骨折部の皮質骨端間の最短距離として測定;
(2)カルス長さおよびカルス直径;
(3)カルスの全骨面積;
(4)カルス領域内の組織面積当たりの骨組織;
(5)カルス内の線維組織;
(6)カルス内の軟骨面積。
生体力学的分析:生体力学的分析に多様な方法があることは当業者に認識されるであろうが、限定ではない一例を前記の”全身投与後の骨折治癒に対する影響についての骨折治癒アッセイ”に示す。
エストロゲン欠乏誘発-骨減損の阻止に関する活性を測定するためのアッセイ
骨芽細胞機能の刺激に関する本発明のPYK2阻害薬および/または第2の骨療法薬の局所投与の有用性および投与は、それが骨粗鬆症を阻止する能力により評価でき、当業者に既知のいずれかの方法により評価できる。
そのような方法のひとつは、閉経後骨減損の卵巣摘除ラット骨減損モデルである。
種々の月齢(たとえば5カ月齢)のSprague-Dawley雌ラット(Charles River,マサチュセッツ州ウィルミントン)をこれらの試験に用いる。ラットを実験期間中、20 cm×32 cm×20 cmのケージに個別に収容する。すべてのラットに水とペレット状の市販飼料(Agway ProLab 3000, Agway County Food, Inc., ニューヨーク州シラキュース)(0.97%のカルシウム、0.85%のリン、および1.05 IU/gのビタミンD3を含有)を自由に摂取させる。
1グループのラット(8〜10匹)を擬似手術し、ビヒクル(10%のエタノールおよび90%の塩類溶液、1 ml/日)で経口処理する。一方、残りのラットを両側卵巣摘除(OVX)し、ビヒクル(経口投与)、PYK2阻害薬、17β-エストラジオール(Sigma, E-8876, E 2 , 30μg/kg, 1日1回の皮下注射)、または選択的エストロゲン受容体調節薬(たとえばドロロキシフェン5、10または20 mg/kg, 1日1回の経口投与)で一定期間(たとえば4週間)処理する。骨組織における動的変化を調べるために、すべてのラットに屠殺の12および2日前に10 mg/kgのカルセイン(蛍光色素系の骨マーカー)を皮下注射する。4週間の処理後、ラットを屠殺し、剖検する。下記の終末点を測定する。
体重増加:剖検時の体重から外科処置時の体重を差し引く。
子宮の重量および組織学的所見:剖検に際して各ラットから子宮を摘出し、直ちに秤量する。次いで子宮を組織学的測定、たとえば子宮組織横断面積、間質厚さ、および管腔上皮厚さの測定のために処理する。
総血清コレステロール:心臓穿刺により血液を採取し、4℃で凝固させ、次いで2,000 gで10分間、遠心分離する。高性能コレステロール比色アッセイ(Boehringer Mannheim Biochemicals, インディアナ州インディアナポリス)により、血清試料を総血清コレステロールについて分析する。
大腿骨無機質測定:大腿骨無機質測定に多様な方法があることは当業者に認識されるであろうが、限定ではない一例を前記の”骨形成のインビボアッセイ”に示す。
近位脛骨骨幹端海綿骨の組織形態計測分析:近位脛骨骨幹端海綿骨の組織形態計測分析に多様な方法があることは当業者に認識されるであろうが、限定ではない一例を前記の”骨形成のインビボアッセイ”に示す。
組合わせ処理プロトコル
本発明のPYK2阻害薬と本発明による第2の骨療法薬の組合わせの有用性および投与は、本明細書に記載した方法を含めた当業者に既知のいずれかの方法により評価できる。
当業者は下記のプロトコルを容易に変更できることを認識するはずであるが、他の方法の一例は下記のものである:
無傷の雄または雌ラット、性ホルモン欠乏雄(睾丸摘除)または雌(卵巣摘除)ラットを使用できる。さらに、種々の月齢(たとえば13カ月齢)の雄または雌ラットをこれらの試験に使用できる。ラットは無傷または性腺摘除(卵巣摘除または睾丸摘除)されており、種々の投与量の本発明のPYK2阻害薬を一定期間(たとえば2週間ないし2カ月)投与され、続いて種々の投与量(たとえば1、5、または10mg/kg/日)のいずれかの同化薬および/またはいずれかの抗吸収薬、たとえばドロロキシフェンを一定期間(たとえば2週間ないし2カ月)投与されるか、あるいは種々の投与量のPYK2阻害薬(たとえば抗吸収薬)と骨療法薬の両方で一定期間(たとえば2週間ないし2カ月)組合わせ処理される。
性腺摘除ラットにおいては、外科処置の翌日(骨減損を予防する目的で)または骨減損が既に起きた時点で(骨量を回復させる目的で)処理を開始することができる。
ラットをケタミン麻酔下で屠殺する。下記の終末点を測定する:
I. 大腿骨無機質測定;
II. 腰椎骨無機質測定;
III. 近位脛骨骨幹端海綿骨の組織形態計測分析;
IV. 骨梁骨の容積および構造に関する測定と計算;
V. 骨吸収に関する測定と計算;
VI. 骨の形成および代謝回転に関する測定と計算;
VII. 統計処理。
上記の終末点を測定するために多様な方法があることは当業者に認識されるであろうが、各測定方法の限定ではない一例を前記の”骨形成のインビボアッセイ”に示す。
PYK2阻害
本発明によるPYK2機能阻害を、骨芽細胞様細胞(インビボ、インビトロ、またはエクスビボ)または適切な代替骨芽細胞において測定する。限定ではない一例として、適切な代替骨芽細胞はNIH3T3遺伝子スイッチ細胞、PC12神経細胞、または初代リンパ球である。
1態様において、阻害されるPYK2機能はPYK2依存性リン酸化(すなわちチロシンキナーゼ活性)である。
チロシンキナーゼ活性は、内因性基質、たとえばPYK2のPYK2依存性リン酸化を測定することにより、または外から添加した基質のリン酸化により評価できる。外から添加した基質は天然基質または人工基質のいずれであってもよい。
場合により、基質のリン酸化はチロシン残基において測定される。場合により、チロシン残基はPYK2チロシン残基である。
本発明の1態様においては、PYK2チロシン402のリン酸化を測定する。限定ではない一例として、リン酸化されたチロシン402をもつPYK2に特異的な抗体を用いて、PYK2チロシン402のリン酸化を測定する。本発明に適切なそのような一次抗体のひとつは、Biosource からのpyk2ホスホ-Y402(カタログ# 44-618G)である。
限定ではない一例として、PYK2依存性リン酸化は本発明に従ってインビトロキナーゼアッセイにより測定できる。このアッセイにおいては、PYK2がリン酸を基質に取り込む能力を測定することにより、PYK2依存性リン酸化を測定する。場合により、リン酸を標識する。場合により、リン酸を放射性標識する。
PYK2依存性リン酸化は、たとえばWO 98/35016の例4に示されるようにガンマ-32P標識ATPを用いて測定することもできる;これを本明細書に援用する。
PYK2依存性リン酸化は、本発明に従ってPYK2がPYK2をチロシン残基402においてリン酸化する能力を測定することによっても測定できる。このアッセイは、一般に前掲のようにポリ-(glu, tyr)を用いるインビトロキナーゼアッセイのものと類似の条件を用いて実施され、ただし外因性基質は存在する必要がない。1態様においては、場合によりリン酸を放射性標識し、PYK2へのそれの取込みをSDS-PAGE、続いてX線ラジオグラフィーによりモニターする。PYK2のリン酸化量は一般にPYK2の活性化状態を反映する。したがって、PYK2のPYK2依存性リン酸化を阻害する化合物はPYK2阻害薬であろう。
他の例においては、実施例5に示すように、リン酸化されたPYK2に特異的な抗体を用いて、PYK2依存性リン酸化を測定できる。リン酸化されたPYK2に特異的な抗体の量(たとえばウェスタンブロットにより視覚化)を、PYK2に特異的な抗体(すなわちリン酸化されたPYK2およびリン酸化されていないPYK2と免疫反応する抗体)の量に標準化することができる。
PYK2依存性リン酸化は、本発明に従って外から添加した基質中への標識リン酸の取込みを測定することによっても測定できる。可能性のあるPYK2阻害薬および内因性PYK2基質をPYK2に添加し、推定PYK2阻害薬の存在下および不存在下で取込みを定量する。この態様において、PYK2は組換え体でも天然物(哺乳動物由来)であってもよく、あるいは無傷または破壊した骨芽細胞様細胞中において供給されてもよい。
PYK2偽基質
他の態様において、PYK2依存性リン酸化(またはその阻害)は、PYK2偽基質を含む外因性基質を用いて定量できる。PYK2偽基質は、いずれかのNまたはC末端修飾、たとえば限定ではない一例としてビオチンを含むことができる。システイン残基をセリンで修飾または置換してジスルフィド形成を阻止してもよい。
推定PYK2阻害薬をPYK2偽基質およびPYK2と共にインキュベートすることにより、本発明によるアッセイを実施できる。PYK2は、組換え体でも天然物(哺乳動物由来)であってもよく、あるいは無傷または破壊した骨芽細胞様細胞中において供給されてもよい。
PYK2偽酵素
1態様において、組換えPYK2は、PYK2アミノ酸残基414〜692に対応するPYK2キナーゼドメインを含むペプチド(”PYK2偽酵素”)である。PYK2偽酵素は、さらにN-末端His-タグを含むことができる。PYK2偽酵素は、バキュロウイルスにおいて発現させることができる。PYK2偽酵素は、アフィニティーおよび/または一般的なクロマトグラフィーにより精製できる。
PYK2活性の任意増強
場合により、PYK2偽酵素(または他の態様においては内因性もしくは外因性PYK2)のチロシンキナーゼ活性は、PYK2偽酵素を組換えSrcチロシンキナーゼ(Upstate Biochemicalまたは同様に製造されたタンパク質)およびATPと共に製造業者が推奨する条件でインキュベートすることにより、Srcリン酸化部位(Y-579、Y-580)をリン酸化することによって増強できる。次いで、リン酸化されたPYK2偽酵素をアフィニティーおよび/または一般的なクロマトグラフィーによりSrcから実質的に精製する。
PYK2人工基質
他の態様においては、下記のように外から添加したPYK2人工基質、たとえばポリ(glu, tyr)[モル比約4: 1; Sigma Chemical Company, ミズーリ州セントルイス]を用いてPYK2阻害薬を同定し、PYK2阻害活性を定量することができる:WO 98/35056に記載:
骨芽細胞様細胞を被験PYK2阻害薬と共にインキュベートした後、細胞をTNE細胞溶解用緩衝液[50 mM Tris-HCI (pH 7.4), mM NaCl, 1% NP-40, I mM EDTA, 10%グリセロール, 50 mM NaF, I mMバナジン酸ナトリウムおよびプロテアーゼ阻害薬を含有]中で可溶化することができる。
試料の半分を抗PYK2抗体でイムノブロッティングし、他方の半分を2回、同じ溶解用緩衝液、およびキナーゼアッセイ用緩衝液(1×)[20 mM Tris-HCI, pH 7.4, 100 mM NaCl, 10 mM MnC12および1 mMジチオトレイトールを含有]で洗浄することができる。洗浄用緩衝液を除去した後、50μlのキナーゼアッセイ用緩衝液[5μCi [y-32P] ATP (3000 Ci/mmol, Amersham), 10μM ATP, 0.1% BSAおよび100μgポリ(Glu, Tyr)を含有]を添加し、30℃で10分間インキュベートすることができる(Howell and Cooper, 1995 Mol. Cell. Biol. 14: 5402-5411)。この反応混合物(25μl)を25μlの30%トリクロロ酢酸(TCA)および0.1 Mピロリン酸ナトリウムに添加し、続いて45℃で15分間インキュベートすることができる。沈殿したタンパク質をMultiscreen-FC濾板(Millipore, マサチュセッツ州マールボロ)へ移し、氷冷15% TCAで洗浄し(3回)、乾燥させ、偽基質に取り込まれた32PをPackardトップカウントマイクロプレートシンチレーション計数器(Packard, コネチカット州メリディン)で計数することができる。
II)放射能計数とイムノブロット信号を比較することにより、比活性を決定できる。イムノブロッティングは下記に従って実施できる:HRP結合-抗ホスホチロシンモノクローナル抗体4G10または抗PYK2モノクローナル抗体を用い、続いてHRP結合-抗ウサギIgGを用いてイムノブロッティングすることにより、ホスホチロシンを検出することができる。
ブロットを増強化学発光(ECL, Amersham)により現像することができる。ECL信号をLKB ultroscan XLレーザーデンシトメーター(LKB, Bromma, スウェーデン)により測定し、推定ホスホチロシン含量をPYK2のタンパク質レベルと比較することによりチロシンリン酸化PYK2の比活性を計算することができる。リン酸化PYK2の相対比活性は、普通は三重実験から判定される。
蛍光偏光法によるPYK2依存性リン酸化アッセイ
他の態様においては、蛍光偏光法によりPYK2依存性リン酸化活性を検出できる。蛍光偏光法には、フルオレセイン標識ホスホペプチド(”トレーサー”)、PYK2基質、PYK2、および場合により推定PYK2阻害薬を用いる。PYK2依存性リン酸化活性の不存在下(たとえばPYK2阻害薬の存在下)では、有意部分のトレーサーに抗ホスホチロシン抗体が結合して、高い偏光値が生じるであろう。阻害されていないPYK2依存性リン酸化活性の存在下では、基質はリン酸化されるであろう。生成したそれらのリン酸化基質は、抗ホスホチロシン抗体との結合に対してトレーサーと競合して結合トレーサー量を低下させ、したがって試料の蛍光偏光値を低下させるであろう。この反応に際して十分なキナーゼ反応生成物が生成すると、蛍光トレーサーを抗ホスホチロシン抗体から完全に排除でき、発光光線は完全に偏光解消されるであろう。このように、蛍光偏光の変化はPYK2依存性リン酸化活性に正比例する。
他の態様においては、約150 pMのPYK2偽酵素を15μMのPYK2偽基質と共にキナーゼアッセイ用緩衝液(50mM HEPES pH 7.5, 1 mM MgC12, 0.1 % BSA, 10 mM DTTおよび50 M ATP)中でインキュベートする。アッセイに推定PYK2阻害薬を含有させる場合、対照インキュベーションには適切なビヒクルを含有させ、最後にATPを添加する。反応を30℃で1〜2時間進行させる。EDTA、10×PTKグリーントレーサー(Invitrogen #P2843)および10×抗ホスホチロシン抗体(Invitrogen)を含有する停止/検出混合物の添加により、反応を停止する。室温で1時間の平衡化後、Molecular Devices Analyst GTによりグリーントレーサーに適合するフィルターおよび設定を用いてプレートを読み取る。GraphPad Prismまたはこれに類するソフトウェアを用い、可変勾配付き線形回帰により、S状用量応答曲線を作成する。漸増量のPF-Xを用いてそのような実験を行った場合、IC50が30.9 nMと判定された。
誘導性PYK2で形質転換した細胞を用いるインビトロPYK2依存性リン酸化
PYK2依存性リン酸化は、PYK2を過剰発現するように形質転換した骨芽細胞様細胞または代替骨芽細胞を用いてアッセイできる。構成性PYK2過剰発現により、多数の細胞タイプが組織培養プレートから経時的に離脱する。場合により、誘導性PYK2で形質転換した細胞を用いてPYK2依存性リン酸化をアッセイできる。当業者は、哺乳動物細胞培養のために幾つかの誘導性遺伝子発現系を容易に利用できる(たとえばテトラサイクリン、エクジソン(ecdysone)など)。
場合により、誘導性系RU486(Invitrogen)を用いて細胞を形質転換できる。たとえば、詳細は実施例9に示されている。
III)本明細書には主題を含めたが、それらの主題は読者の便宜のためのものであり、限定とみなすべきではない。多数の用語(限定ではない一例として、PYK2阻害薬、骨芽細胞機能、骨芽細胞様細胞など)を本発明の多数の態様に適用できることは自明である。
実施例
本発明を一般的に記載したが、下記の実施例を参照することにより本発明はより容易に理解されるであろう。これらは説明のために示したものであり、明記しない限り本発明を限定するものではない。
実施例1
PYK2 SDS PAGEブロット.ネズミ骨芽細胞(MC3T3およびC3H10T1/2)およびヒト骨芽細胞(2人のドナーに由来する間葉幹細胞およびMG63)からの細胞溶解物を、ポリクローナル抗PYK2抗体(3P#5またはSanta Cruz 抗PYK2)で免疫沈降させた。免疫沈降PYK2をSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜にブロットし、次いで抗PYK2ポリクローナル抗体、続いてHRP結合したプロテインAで検査した。PYK2発現ベクターで形質転換した293Tからの細胞溶解物を、陽性対照として用いた。2つの異なるブロット照射を図1に示す。これらの結果は、PYK2がネズミおよびヒト骨芽細胞様細胞において発現していることを証明する。
実施例2、3、4および6に用いた方法
アルカリホスファターゼの定量測定.アルカリホスファターゼの定量測定のために、細胞をダルベッコのリン酸緩衝化生理食塩水(DPBS)で2回洗浄し、続いて1.3 mg/mlのリン酸p-ニトロフェノールを含有する基質用緩衝液(50 mMグリシン, 1 mM塩化マグネシウム, pH 10.5)と共にインキュベートした。405 nMにおける吸光を測定し、p-ニトロフェノール標準品と比較することにより、アルカリホスファターゼ活性レベルを判定した。このアルカリホスファターゼ活性レベルを各試料中のDNA量に対して補正した。
アルカリホスファターゼの染色(定性).アルカリホスファターゼの定性を白血球アルカリホスファターゼキット(Sigma, #85L-3R)により実施した。細胞をDPBSで2回すすぎ、クエン酸:アセトン(2:3 vol/vol)で1分間固定した。固定液をDPBSですすぎ、Napthol AS-MX ホスファターゼアルカリ溶液を含有するFast Violet B溶液により製造業者の指示に従って細胞を染色した。細胞を暗所で室温において1時間インキュベートした。細胞を水で3回すすいだ。
カルシウムのアッセイ.細胞が沈着したカルシウムを診断キット(Sigma #587A)により測定した。要約すると、細胞をDPBSで2回すすぎ、0.5 N HCI中で回転させながら4℃で一夜加水分解した。次いで細胞を掻き取り、細胞屑をペレット化した。上清を用い、製造業者のプロトコルに従ってカルシウムレベルを測定した。570 nmにおける吸光を測定し、カルシウム標準品と比較した。カルシウムレベルを各ウェル中のDNA含量に対して補正した。
DNAアッセイ.DNA含量をHoechst 33258蛍光ビスベンズイミド色素により測定する。細胞をDPBSで2回洗浄し、トリプシン処理する。細胞を60℃で一夜、パパイン消化用緩衝液(0.1 M酢酸ナトリウム, pH 5.6, 0.05 M EDTA, 0.001 Mシステイン, 150μg/mlパパイン)で消化する。消化の後、100μlの試料をTNE緩衝液(100 mM Tris-HCI, 10 mM EDTA, 2 M NaCl, pH 7.4)中の1μg/ml Hoescht色素100μlに添加する。356nm/ 458 nmで吸光度の読みを測定し、ウシ胸腺DNA標準品と比較する。
Von Kossa染色.試料をアルカリホスファターゼ用に染色した後に、Von Kossa染色を実施した。水を吸引し、細胞を2%硝酸銀と共に暗所で10分間インキュベートした。次いで細胞を水で3回洗浄し、最終すすぎ液を細胞上に残した。プレートを15分間、UV光線下に置き、または明るい太陽光線に露光した。次いで細胞を水で3回すすぎ、黒色のVon Kossaノジュールを撮影した。
実施例2
骨芽細胞の分化および機能におけるPYK2の役割を、インビトロでPYK2阻害薬が骨芽細胞のアルカリホスファターゼおよびカルシウム沈着に及ぼす影響を調べることにより試験した。
C57B1/6マウスの大腿骨および脛骨から単離したネズミ間葉幹細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するアルファ-MEM中で培養し、6ウェル皿に3×106個/ウェルの密度で接種した。接種の翌日、培地を除去し、培地のみ、OSを含む培地、または1μMのデキサメタゾンもしくは漸増量のPF-Yを含有するOS培地で置き換え、21日間おいた。”OS”培地は、50μMのアスコルビン酸および10mMのβ-グリセロリン酸を含有する。培地を3日毎に交換した。7および21日目にアルカリホスファターゼの量を測定した。分泌されたカルシウム量を21日目にのみ測定した。アルカリホスファターゼ用の21日目の試料の染色後、VonKossa染色を行った。
図2に示すように、ネズミMSCを既知の骨芽細胞機能アゴニストであるデキサメタゾンと共にインキュベートすると、アルカリホスファターゼ活性(骨芽細胞機能のマーカー)が刺激された。PF-Yもアルカリホスファターゼ活性を増強した。PYK2拮抗は、培養当たりの単位(左パネル)またはDNA μg当たりの単位(右パネル)のいずれで表わした場合であってもアルカリホスファターゼ活性を刺激した。
図3に示すように、ネズミMSCを既知の骨芽細胞機能アゴニストであるデキサメタゾンと共にインキュベートすると、カルシウム沈着レベル(骨芽細胞機能のマーカー)が上昇した。PF-Yとのインキュベーションもカルシウム沈着レベルを上昇させた。PYK2拮抗は、培養当たりのμg(左パネル)またはDNA μg当たりのg(右パネル)のいずれで表わした場合であってもカルシウム沈着レベルを刺激した。
実施例3
ヒト間葉幹細胞を、10%のFBSおよび10 mMのl-グルタミンを含有するDMEM-高グルコース中で培養し、6ウェル皿に3×104個/ウェルの密度で接種した。接種の翌日、これらの細胞を実施例2の場合と同様に処理し、分析した。
図4に示すように、ヒトMSCをPF-Yと共にインキュベートすると、DNA μg当たりの単位で表わしたアルカリホスファターゼ活性(右パネル)が増大した。
図5に示すように、ヒトMSCを既知の骨芽細胞機能アゴニストであるデキサメタゾンと共にインキュベートすると、カルシウム沈着レベル(骨芽細胞機能のマーカー)が上昇した。OS培養のみと比較すると、同様にPF-Y(特に、低い方の2用量)とのインキュベーションは培養当たりのμg(左パネル)またはDNA μg当たりのg(右パネル)のいずれで表わしたカルシウム沈着レベルも上昇させた。
実施例4
MC3T3細胞を、10%FBSを含有するアルファ-MEM培地中で培養し、6ウェル皿に5×104個/ウェルの密度で接種した。接種の翌日、培地を除去し、漸増量のPF-Yを含有するOS培地を添加した。培地を3日毎に交換した。アルカリホスファターゼの量を実施例2および3の場合と同様に測定した。
図6に示すように、ネズミMC3T3細胞をPF-Yと共にインキュベートすると、プレート当たりの単位(左パネル)またはDNA μg当たりの単位(右パネル)で表わしたアルカリホスファターゼ活性が増大した。
実施例5
ネズミMC3T3細胞をアルミニウムフルオレート(AIF)のみで、または3 mMのPF-Yの存在下で処理した。細胞を溶解し、全PYK2またはリン酸化Tyr 402 PYK2を認識する抗体で免疫沈降させ、続いてSDS-PAGEにより、全PYK2およびリン酸化PYK2(P-Y402)の量を測定した。
図7に示すように、AIFはチロシン402のリン酸化を刺激し、PF-YはAIF誘導リン酸化を阻害した。
実施例6
PYK2 KO(ノックアウト)骨芽細胞アッセイ.C57B1/6またはPYK2ノックアウト雌マウスの大腿骨および脛骨から単離した骨髄細胞を、培地のみ、または50μMのアスコルビン酸および10mMのβ-グリセロリン酸を補充した培地(OS)で培養した。培地を3〜4日毎に交換した。7および21日目にアルカリホスファターゼ活性を測定した。細胞外マトリックス中へ分泌されたカルシウム量を21日目にのみ測定し、細胞外マトリックスをvonKossa方により視覚化した。
図8(左パネル)に示すように、補充していない培地(”基礎”)またはOS培地で7日間の培養後、PYK2欠損骨髄細胞の方が大きいアルカリホスファターゼ活性を示した。
図9に示すように、細胞外カルシウム沈着は、野生型骨髄細胞と比較した場合、OS培養で培養したPYK2欠損骨髄細胞において大幅に増加した。
図10に示すように、VonKossa染色により視覚化した細胞外カルシウム沈着は、野生型骨髄細胞と比較した場合、OS培養で培養したPYK2欠損骨髄細胞において大幅に増加した。
実施例7
Pyk2ノックアウトマウス.Pyk2ノックアウトマウスをOkigaki et al., PNAS, 100(19): 10740-10745, 2003の記載に従って作製した。
6カ月齢の雌Pyk2ノックアウトマウス(n=7)および雌野生型同腹仔(C57BI/6)対照(n=5)に、屠殺の10日前にテトラサイクリン(20 mg/kg)、4日前に骨形成測定のための骨蛍光マーカーとしてのカルセイン(20 mg/kg)を皮下注射した。遠位大腿骨骨幹端および第4腰椎のマイクロコンピュータ断層撮影(Scanco micro-CT 40, Scanco Medical AG, スイス、バッサードルフ)分析を行って、骨量および骨構造の変化を評価した。脱灰していない第4腰椎体の縦断面について、静的および動的組織形態計測を行った。さらに、大腿骨骨幹において4点屈曲試験を用いて骨強度を評価した。
遠位大腿骨骨幹端のマイクロコンピュータ断層撮影分析は、6カ月齢の雌野生型同腹仔(C57BI/6)対照と比較して雌Pyk2ノックアウトマウスにおいて有意の増加を示した(図11)。
同様に、第4腰椎体のマイクロコンピュータ断層撮影は、図12の右パネルに示すように、6カ月齢の雌野生型同腹仔(C57BI/6)対照と比較して雌Pyk2ノックアウトマウスにおいて有意の増加を示した。
雌野生型同腹仔(C57BI/6)対照と比較して、雌Pyk2ノックアウトマウスは、骨梁骨容積、骨梁骨厚さおよび骨梁骨数の統計的に有意の増大(+48%〜+206%)ならびに骨梁骨分離の低下(-67%)を示した。動的組織形態計測分析は、Pyk2ノックアウトマウスの骨形成が雌野生型同腹仔(C57BI/6)対照と比較して有意に増大したことを示し、これには無機質化表面率(MS/BS)、無機質付着速度(MAR)、骨形成速度−表面指標(referent) (BFR/BS)および骨形成−組織容積指標(BFR/TV)の統計的に有意の増大(+22%〜+323%)が含まれる。図12の左パネルは、Pyk2ノックアウトマウス(下)が野生型同腹仔(C57BI/6)対照(上)と比較して、骨表面に有意に多量の蛍光標識をもつことを表わし、これは骨無機質化および骨形成の増大を指摘する。Pyk2ノックアウトマウスからの大腿骨は、野生型同腹仔(C57BI/6)対照と比較して有意に剛性であり、破断するのに有意に大きい負荷が必要であった。
結論として、これらのデータはPyk2欠損が骨形成、骨量および骨強度を増大させることを証明する。
実施例8
式IのPYK2アンタゴニスト、すなわちPF-Xの二塩酸塩による哺乳類処置の効果を調べた。PF-Xは30.9 nMのIC50をもつPYK2阻害薬である。卵巣摘除(OVX)ラットモデルを用いた。
動物および試験計画.50匹の5カ月齢Sprague-Dawley雌ラット(Taconic Farms Inc, ニューヨーク州ジャーマン・タウン)(4.5〜5カ月齢時の体重約330 g)をこの試験に用いた。動物を24℃、12時間明/12時間暗のサイクルで収容し、水と市販飼料(Purina実験室用げっ歯類固形飼料5001, Purina-Mills, ミズーリ州セントルイス)(0.95%のカルシウム、0.67%のリン、および4.51 IU/gのビタミンD3を含有)を自由に摂取させた。Pfizer Animal Care and Useが推奨するプロトコルに従って実験を行い、動物をILAR (Institute of Laboratory Animal Research)の実験動物の飼育と使用に関する指針に従って飼育した。10匹のラットをを擬似手術し(擬似)、ビヒクル(20%のベータ-シクロデキストリン、1 ml/ラット)の1日1回、経口胃管投与により処理した。一方、残りのラット(n=10/グループ)を両側卵巣摘除(OVX)し、外科手術後1日目から開始して28日間、ビヒクル、用量10もしくは30μg/kg/日のPF-X、または30μg/kg/日の17 -エチニルエストラジオール(EE)の経口胃管投与により処理する。骨組織の動的変化を測定するために、すべてのラットに10 mg/kgのカルセイン(Sigma Chemical Co. , ミズーリ州セントルイス)(蛍光色素系の骨マーカー)を屠殺の12および2日前に皮下注射する(Frost HM 1969 テトラサイクリンをベースとする骨リモデリングの組織学的分析. Calcif Tissue Int 3:211-237)。4週間の処理後、ラットを秤量し、体重増加を求めた。次いでラットをケタミン/キシラジン麻酔下での心臓穿刺により安楽死させた。
血清オステオカルシン:2週間の処理後に尾採血により血清を得た。RIAにより血清オステオカルシンを測定した(Price PA, Nishimoto SK 1980 骨のビタミンK依存性タンパク質のラジオイムノアッセイおよび血漿中におけるその発見. Proc Natl Acad Sci USA 77: 2234-2238)。
末梢型定量コンピュータ断層撮影(Peripheral Quantitative Computerized Tomography (pQCT))分析:切除した大腿骨を、ソフトウェアバージョン5.04付きpQCT X線装置(Stratec XCT Research M, Norland Medical Systems, ウィスコンシン州フォート・アトキンス)により走査した。近位末端から5.0 mmの位置で厚さ1-mmの大腿骨骨幹端横断切片をボクセルサイズ0.10 mmで採取した。輪郭モード2および皮質モード4で皮質骨を判定し、分析した。皮質殻を軟組織から識別するために外側閾値設定340 mg/cm3を用い、皮質骨を皮質内表面に沿って識別するために内側閾値529mg/cm3を用いた。皮質(下)骨を海綿骨から識別するために、ピールモードを用い、閾値設定655mg/cm3で骨梁骨を測定した。皮質(下)骨を分析から確実に除外するために、さらに特定した海綿骨の1 %の同心ピールを用いた。骨梁骨および皮質骨の両方について容積含量、密度および面積を測定した。以上の設定を用いて、全骨、骨梁骨および皮質骨領域の容積含量、密度および面積のエクスビボ精度は、リポジショニングを含めて0.99%〜3.49%であると判定した(Ke HZ et al., 選択的エストロゲン受容体調節薬ラゾホキシフェンはラット成体において老化および睾丸摘除により誘発される骨減損を阻止する. Endocrinology, 141:1338-1344, 2000)。
近位脛骨骨幹端(PTM)骨梁骨の組織形態計測:剖検に際して、各ラットから右脛骨の近位第3骨を摘出し、軟組織を切除し、70%エタノール中に固定し、Villanueva骨染色で染色し、勾配濃度のエタノール中で脱水し、アセトン中で脱脂し、メタクリル酸メチル中に包埋した。組織形態計測用に厚さ4および10μmの近位脛骨骨幹端縦断切片を先の記載に従って調製した(Baron R, Vignery A, Neff L, Silvergate A, Maria AS 1983 骨組織形態計測のための未脱灰骨検体の処理: Recker RR編, Bone Histomorphometry: Techniques and Interpretation. フロリダ州ボカ・レイトン: CRC Press, 13-36)。
他の方法がJee WSS, Li XJ, Inoue J, Jee KW, Haba T, Ke HZ, Setterberg RB, Ma YF 1997 成長下の長骨の組織形態計測アッセイ: Takahashi H.編, Handbook of Bone Morphology. Nishimusa, 日本、新潟市, 87-112に報告された。
骨梁骨の組織形態計測分析をImage Analysis System(Osteomeasure, Inc., ジョージア州アトランタ)により実施した。成長板-骨端接合部に対して遠位0.5〜3.5 mmにある近位脛骨骨幹端の骨梁骨組織において組織形態計測測定を実施し、縦方向に皮質内表面へ拡張した。
骨梁骨の容積および構造に関連する測定および計算には骨梁骨の容積(TBV)、厚さ(Tb. Th)、個数(Tb. N)、および分離(Tb. Sp)が含まれ、一方、骨吸収に関連する測定および計算には破骨細胞表面および破骨細胞数が含まれていた。
骨形成に関連するパラメーターには、無機質化表面率[(二重標識表面+1/2単一標識表面)/全骨梁骨表面×100]、無機質付着速度、骨形成速度/TV、骨形成速度/BV、骨形成速度/BSが含まれていた。
これらのパラメーターを計算するための定義および方程式は先にParfittらが記載している(Parfitt AM, Drezner MK, Glorieux FH, Kanis JA, Malluche H, Meunier PJ, Ott SM, Recker RR 1987 骨の組織形態計測:命名法、記号および単位の標準化. J Bone Miner Res 2:595-610)。
他の方法がJeeらにより記載されている(Jee WSS, Li XJ, Inoue J, Jee KW, Haba T, Ke HZ, Setterberg RB, Ma YF 1997 成長下の長骨の組織形態計測アッセイ: Takahashi H.編, Handbook of Bone Morphology. Nishimusa, 日本、新潟市, 87-112)。
試験結果と考察:ビヒクル処理したOVXラットは擬似対照と比較して有意に体重が増加した。EE処理したOVXラットでは、OVX誘発体重増加が阻止された。ビヒクル処理またはPF-X処理したOVXラット間の体重には両用量とも有意差がなかった。
骨形成マーカーである血清オステオカルシンは、ビヒクル処理したOVXラットと比較して2週間後に、PF-X処理したOVXラットでは有意に増加し、一方EE処理したOVXラットでは有意に減少した。これらのデータは、ヒト骨粗鬆症のOVXラットモデルにおける骨形成を、EEは減少させ、一方PYK2阻害薬は増加させたことを指摘する。
遠位大腿骨骨幹端のPQCT分析は、ビヒクル処理したOVXラットと比較して、10または30 mg/kg/日のPF-Xで処理したOVXラットでは、全骨無機質含量、全骨無機質密度、全骨面積、骨梁骨密度および皮質骨含量が有意に増加することを示した。これは、OVXラットモデルにおいてPYK2阻害薬が骨梁骨および皮質骨を両方とも増加させたことを指摘する。EE処理したOVXラットは、ビヒクル処理したOVXラットと比較してより高い全骨無機質含量、全骨無機質密度、および皮質骨含量を示した。
近位脛骨骨幹端の骨梁骨組織形態計測分析は、ビヒクル処理したOVXラットと比較して、30 mg/kg/日のPF-Xで処理したOVXラットでは、骨梁骨容積、骨梁骨厚さ、無機質付着速度、無機質化表面率、骨形成速度/BVおよび骨形成速度/TVが有意に増大し、破骨細胞表面および破骨細胞数が有意に低下することを示した。これらのデータは、PYK2阻害薬が骨芽細胞数および骨芽細胞活性の増大の組合わせにより骨量を増加させることを指摘する。これに対し、OVXラットにおけるEE処理は無機質付着速度、無機質化表面率、骨形成速度/BVおよび骨形成速度/TV、破骨細胞表面および破骨細胞数を有意に低下させる。
これらのデータは、PYK2阻害薬であるPF-Xが骨芽細胞の機能および個数を刺激することを証明する。
実施例9
全長ヒトPYK2 cDNAを、V5-Hisエピトープタグ(Invitrogen)を含むpGENE中へクローニングした。このプラスミドをNIH 3T3 Switch細胞系(Invitrogen)中へトランスフェクションし、適切な選択培地中でクローン系列を選択し、クローニングシリンダーを用いて単離した。細胞溶解物およびウェスタンブロット、ならびに抗PYK2抗体または抗V5エピトープタグ抗体による検出を用いて、誘導性PYK2遺伝子発現についてクローンを分析した。
PF-Xを下記に従ってPYK2阻害について分析した:選択したGeneSwitch PYKクローン系を、Biocoat(登録商標)コラーゲンコーティングプレート(Becton-Dickinsonカタログ# 359132)内で増殖培地(DMEM高グルコース;10%ウシ血清, 1×グルタミン, 50 g/mlハイグロマイシン, 150μg/mlゼオシンを補充(すべての細胞培養製品をInvitrogenから入手))に接種した。翌日、培地を無血清のものに交換した。翌日、最終10nMのミフェプリストン(mifepristone)(RU486)でpyk2発現を誘導した。4時間の誘導期間後、被験化合物またはビヒクルを適切なウェルに添加した。1時間の処理期間後、PBS中に希釈したばかりのホルムアルデヒド(1: 10,37%溶液)と培地を交換して室温に20分間おくことにより、細胞を固定した。次いで細胞を、PBS中0.1 % Triton X-100の洗浄液100μlで4回(それぞれ5分間、回転振とうしながら)、室温で透析した。100μlのOdyssey遮断用緩衝液(licor.com カタログ # 927-40000)により4℃で一夜遮断することにより、非特異的結合を阻止した。
翌日、一次抗体(pyk2 ホスホ-Y402 , Biosource カタログ # 44-618G)をOdyssey遮断用緩衝液中1:200で添加し、回転振とうしながら室温に2時間おいた。あるいは、細胞タイプに応じて抗体を他のPYK2ホスホ基質と置き換えることができる(たとえばコルタクチン(cortactin)ホスホ-Y421, Sigma C0739; パキシリン(paxillin)ホスホ-Y31 Sigma P6368)。PBS Tween 20(0.1 %)で5分間、4回の洗浄後、IR Dye 800結合-抗ウサギ二次抗体(Rockland カタログ #611-132-122)を添加し、回転振とうしながら室温に1時間おいた。同じ洗浄操作の後、プレートをブロッティングにより乾燥させ、LICOR計測器で走査した。IC50を判定するために、曲線フィッティングソフトウェア(たとえばGraphPad Prism、可変勾配付き線形回帰)によりPF-X処理グループの相対信号をビヒクル処理グループのものと比較した。この方法でPF-Xは約136 nMのIC50をもつことが認められた。
本明細書の実施例1に記載するように、ネズミおよびヒトの骨芽細胞におけるPYK2発現を示すSDS-PAGEブロットである。 本明細書の実施例2に記載するように、ネズミMSCをPYK2阻害薬と共に培養することにより得られるアルカリホスファターゼ活性がより大きいことを示すグラフである。 本明細書の実施例2に記載するように、PYK2阻害薬と共に培養した後のネズミMSCにおいてインビトロでのカルシウム沈着がより大きいことを示すグラフである。 本明細書の実施例3に記載するように、PYK2阻害薬と共に培養した後のヒトMSCのアルカリホスファターゼ活性がより大きいことを示すグラフである。 本明細書の実施例3に記載するように、PYK2阻害薬で処理したヒトMSCのカルシウム沈着が対照MSCと比較して大きいことを示すグラフである。 本明細書の実施例4に記載するように、PYK2阻害薬と共に培養したネズミMSC細胞においてアルカリホスファターゼ活性が増大していることを示すグラフである。 本明細書の実施例5に記載するように、MC3T3細胞において、刺激したPYK2のチロシン402のリン酸化がPYK2阻害薬PF-Yにより阻害されることを示すSDS-PAGEブロットである。 本明細書の実施例6に記載するように、PYK2ノックアウト間葉幹細胞(MSC)の分化(アルカリホスファターゼ活性によりみたもの)が対照MSCと比較して促進されたことを示すグラフである。 本明細書の実施例6に記載するように、PYK2ノックアウト骨芽細胞のインビトロでのカルシウム沈着が対照骨芽細胞と比較してより大きいことを示すグラフである。 本明細書の実施例6に記載するように、培養21日後の分化したPYK2ノックアウト骨芽細胞の無機質化が対照骨芽細胞と比較してより大きいことを示す写真である。 本明細書の実施例7に記載するように、6カ月齢のPYK2ノックアウトマウスの骨量が野生型対照と比較して有意に増大していることを示す、遠位大腿骨骨幹端のマイクロコンピューター断層撮影分析の写真である。 本明細書の実施例7に記載するように、野生型同腹仔対照(C57BI/6)と比較して、6カ月齢のPYK2ノックアウト雌マウスの腰椎体の骨量がより高いこと(マイクロCT画像、右パネル)および骨形成がより大きいこと(組織形態計測画像、左パネル)を示す写真である。

Claims (21)

  1. 哺乳類において骨芽細胞機能を刺激する方法であって、それを必要とする哺乳類に骨芽細胞機能を刺激するのに有効な量のPYK2阻害薬を投与することを含む方法。
  2. PYK2阻害薬がトリフルオロメチルピリミジン化合物である、請求項1に記載の方法。
  3. PYK2阻害薬が5-アミノオキシインドール化合物である、請求項1に記載の方法。
  4. PYK2阻害薬が第三級アミノピリミジン化合物である、請求項1に記載の方法。
  5. PYK2阻害薬が式PF-Xの化合物
    Figure 2008503561
    である、請求項1に記載の方法。
  6. PYK2阻害薬が式PF-Yの化合物
    Figure 2008503561
    である、請求項1に記載の方法。
  7. PYK2阻害薬が選択的PYK2阻害薬である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. PYK2阻害薬がFAK阻害薬である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  9. PYK2阻害薬がFlk阻害薬である、請求項1に記載の方法。
  10. PYK2阻害薬が直接的PYK2阻害薬である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  11. 哺乳類が、骨粗鬆症、オステオペニア、骨折、骨軟化症、くる病、骨線維形成不全症、もしくは骨密度低下、またはそのリスクを伴う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  12. 哺乳類が、小児特発性骨減損または歯周炎性骨減損を伴う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  13. 骨粗鬆症がグルココルチコイド誘発-骨粗鬆症、甲状腺機能亢進誘発-骨粗鬆症、運動抑制誘発-骨粗鬆症、ヘパリン誘発-骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、ビタミンD欠乏性骨粗鬆症、または免疫抑制薬誘発-骨粗鬆症である、請求項11に記載の方法。
  14. 哺乳類がヒトである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  15. 骨芽細胞の機能が、類骨産生、無機質化、オステオポンチン産生、オステオネクチン産生、細胞外カルシウム蓄積、または骨治癒である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  16. 哺乳類が骨治癒を必要とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  17. 哺乳類が、復顔、上顎再建、下顎再建、脊椎骨癒合術、骨移植、骨切断術、または補綴物移植に伴う骨治癒を必要とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  18. さらに、ある量の第2の骨療法薬を投与することを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  19. 第2の骨療法薬が、骨同化薬、抗吸収薬、または同化型抗吸収薬である、請求項18に記載の方法。
  20. 第2の骨療法薬が、(-)-シス-6-フェニル-5-[4-(2-ピロリジン-1-イル-エトキシ)-フェニル]-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-オールまたはその医薬的に許容できる塩である、請求項18に記載の方法。
  21. 第2の骨療法薬がPGE2 EP2選択的受容体アゴニストである、請求項18に記載の方法。
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