JP2008288066A - 固体高分子型燃料電池の運転方法および運転システム - Google Patents

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Abstract

【課題】固体高分子型燃料電池の運転システムにおいて、金属セパレータの腐食を防止するための効率的な運転システムおよびそれを用いた運転方法を提供する。
【解決手段】セル内部が乾燥/結露混在状態となった状態での発電運転が回避できるように、セル内部の結露状態を把握または推定する判定手段とセル内部を暫定的な結露状態とするための注水手段を設けた固体高分子型燃料電池の運転システム。発電運転中にセル内部が乾燥/結露混在状態となった場合には、注水手段から水分を供給することによってセルの内部全域を迅速に暫定的な結露状態とし、その暫定的な結露状態の間に加湿手段の動作を変化させて、セルの内部全域を乾燥状態または結露状態のいずれかにすることができる露点のガスが加湿手段から供給できるように準備し、その準備が完了した後に注水手段からの水分の供給を止める。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属セパレータを用いた固体高分子型燃料電池の運転方法および運転システムであって、特に金属セパレータの腐食を軽減する運転方法および運転システムに関する。
固体高分子型燃料電池は、従来主に、イオン交換膜としてフッ素樹脂を用い、セパレータとしてカーボンを用いたものが各種実用化試験等に供されていたが、最近では低価格化のためセパレータ材としてステンレス鋼などの金属を適用する開発が進められている。ただし、金属セパレータを適用するには腐食の問題をクリアする必要がある。すなわち、固体高分子型燃料電池ではイオン交換膜の分解によって酸性物質が発生し、これが金属セパレータを腐食させる大きな要因となる。金属セパレータが腐食するとセパレータ/電極間の接触抵抗が増大して電池出力が低下するだけでなく、腐食により溶出した金属イオンがイオン交換膜に侵入するとイオン伝導性の低下につながり、さらには、この金属イオンによりイオン交換膜の分解が促進されることもある。
イオン交換膜の分解を抑制するには、セル内を湿潤環境に保つこと、セル温度を低くすること、高電位(低負荷状態)を避けることが効果的であるとされる。しかし、湿潤環境は結露水が発生しやすい状態を意味し、結露水はガスの供給・排出の妨げとなるため電池出力の低下を招く要因となる。セル温度を低下させると電池出力も小さくなるため、高出力化にはマイナス要因となる。また、負荷が急激に変動する用途では低負荷時に高電位になることが避けられない。したがって、実用上、イオン交換膜が分解する状態を常に回避するのは困難である。
以上のようなイオン交換膜の分解が避けられない環境においても腐食のおそれがない金属セパレータとしては金めっきなどの貴金属コーティングを行ったものが挙げられるが、高価なため普及材としては不適である。
現状で安価なステンレス鋼などをセパレータ材に適用するには、腐食環境を緩和する運転方法をとることも重要とされる。特許文献1には、電池電圧や電池出力、電池排水のpHなどからセル内環境を予測し、腐食しやすい環境になった場合、セル内に供給する水量(水蒸気量)を増加させ(または注水して)、酸性物質を希釈、または酸性物質の発生を抑制する方法が提案されている。また、特許文献2には、セル内を常に乾燥状態に保つことでセパレータの腐食を防止する方法が提案されている。
特開2006−40610号公報 特開2004−241174号公報
しかしながら、特許文献1のように電池排水のpHが低くなったことを検知してセル内への供給水量を増加させる手法では、低pH液が発生した状態での運転によって既にセパレータの溶解が始まっているため、その後に稀釈水を添加してもセパレータの腐食を完全に防止することができない。また、特許文献2のようにセル内を常に乾燥状態に保つ方法では、腐食の発生を防ぐことは可能でも、イオン交換膜の分解が速いために燃料電池の寿命が短くなってしまう。また、温度が低い場合には飽和水蒸気量が小さくなるため、セル内に結露を発生させないように運転すると電池出力を大きくとることができない。
このように、金属セパレータを用いた固体高分子型燃料電池においては、金属セパレータの腐食を防止した実用的な燃料電池の運転を実現することは容易ではない。
本発明はこのような状況に鑑み、金属セパレータの腐食を防止するために高濃度の酸性物質の発生を抑制した効率的な燃料電池運転システムおよびそれを用いた運転方法を提供しようというものである。
発明者らは種々検討の結果、金属セパレータを用いた固体高分子型燃料電池における金属セパレータの腐食は、セル内に乾燥状態と結露状態が混在する状態(乾燥/結露混在状態)において著しくなることを発見した。そして、この現象については以下のように考えられた。すなわち、イオン交換膜の分解はセル内が乾燥しているときに促進される。フッ素系イオン交換膜の分解により発生する主な酸性物質はフッ酸と硫酸である。セル内乾燥時にイオン交換膜が分解すると、フッ酸は揮発性であるためガスに随伴して排出されるが、硫酸は不揮発性であるためセル内にとどまっている。ただし、乾燥状態であるため、硫酸による金属セパレータの腐食は生じにくい。また、セル内が湿潤状態であるときにはイオン交換膜の分解はほとんど生じないので、セル内での酸性物質の生成を問題にする必要はない。これに対し、セル内が乾燥/結露混在状態であるときには、乾燥箇所でのイオン交換膜の分解によって生じたフッ酸および硫酸は、結露箇所で結露水に溶解して酸性溶液を作る。この酸性溶液がステンレス鋼などの金属セパレータを腐食させる。また、セル内が乾燥状態から乾燥/結露混在状態に移行した場合には、セル内に蓄積されていた硫酸が結露水に溶解するのでより高濃度の酸性溶液が生成し、金属セパレータの腐食は激しくなる。さらに、乾燥/結露混在状態において、セル温度上昇などにより酸溶液が排出される前に乾燥状態に移行した場合には、酸性物質の濃縮が起こり、その後に結露が生じたときに腐食はさらに進行する。
従来、適正な燃料電池運転条件としては、イオン伝導性向上、イオン交換膜の分解抑制、結露水による流路閉塞防止などの観点から、セル内湿度は100%近傍が好ましいとされてきた。しかし、この環境は運転状況の変動により結露と乾燥の変化が起きやすい状況にある。つまりこの環境では、イオン交換膜の分解による酸の発生と溶出、濃縮が起こりやすいため金属セパレータにとっては厳しい運転条件となる。
そこで本発明では、上記目的を達成するために、セル内が乾燥/結露混在状態であるかどうかを検知して、もし乾燥/結露混在状態であれば直ちにセル内に注水して迅速にセル内全域を暫定的な結露状態とし、その後、定常的な乾燥状態または結露状態に移行させる運転方法を採用する。また、意図的に定常的な結露状態から定常的な乾燥状態への移行を行う場合や、その逆の移行を行う場合にも、その移行過程で酸溶液が濃化するような乾燥/結露混在状態を経ないように、暫定的な結露状態としてから定常的な状態へ移行させる。
すなわち本発明では、金属セパレータを用いた固体高分子型燃料電池の運転において、セルのアノード側およびカソード側にそれぞれ独立したガス供給経路を有し、各ガス供給経路に、供給ガスの露点を調整可能な「加湿手段」、およびその加湿手段とセルの間に水滴をガス流に乗せて供給可能な「注水手段」を有するシステムを使用し、
発電運転中に、アノード側セルおよびカソード側セルの内部全域を定常的な結露状態または乾燥/結露混在状態から、定常的な乾燥状態に移行させるに際し、
アノード側およびカソード側についてそれぞれ独立して、注水手段から水分を供給することによってセルの内部全域を迅速に暫定的な結露状態とし、その暫定的な結露状態の間に加湿手段の動作を変化させて、セルの内部全域を定常的な乾燥状態とすることができる露点のガスが加湿手段から供給できるように準備し、その準備が完了した後に注水手段からの水分の供給を止め、セルの内部全域を定常的な乾燥状態に移行させる燃料電池の運転方法が提供される。
ただし、「定常的」とは注水手段からの注水を行わない運転状態をいう。
また、発電運転中に、アノード側セルおよびカソード側セルの内部全域を定常的な乾燥状態または乾燥/結露混在状態から、定常的な結露状態に移行させる運転方法として、上記システムを使用し、好ましくはさらに、セルのアノード側およびカソード側にそれぞれ少なくとも一部が独立した排出経路を有し、各排出経路には互いに独立した箇所に排出液の液性を検出する「液性検出手段」があるシステムを使用し、
アノード側およびカソード側についてそれぞれ独立して、注水手段から水分を供給することによってセルの内部全域を迅速に暫定的な結露状態とし、その暫定的な結露状態の間に加湿手段の動作を変化させて、セルの内部全域を定常的な結露状態とすることができる露点のガスが加湿手段から供給できるように準備し、その準備が完了し、好ましくはさらに液性検出手段により排出液のpHが規定値以上(例えばpH5.0以上)であることが確認された後に、注水手段からの水分の供給を止め、セルの内部全域を定常的な結露状態に移行させる燃料電池の運転方法が提供される。
また、これらの運転方法を実現するための燃料電池運転システムとして、本発明では、
金属セパレータを用いた固体高分子型燃料電池の運転システムにおいて、セルのアノード側およびカソード側にそれぞれ独立したガス供給経路を有し、各ガス供給経路には「ガス流量調整手段」、ガスの露点を調整可能な「加湿手段」、およびその加湿手段とセルの間に水滴をガス流に乗せて供給可能な「注水手段」があり、好ましくはさらに、セルのアノード側およびカソード側にそれぞれ少なくとも一部が独立した排出経路を有し、各排出経路には互いに独立した箇所に排出液の液性を検出する「液性検出手段」があり、
アノード側およびカソード側それぞれについて、前記加湿手段で生成される加湿ガスの露点と、セル温度とを比較することによりセル入口近傍で定常的に結露が生じるかどうかを判定する「入口結露判定手段」、並びに、前記加湿ガスの露点、電流およびガス流量から求まるセル出口通過ガス中のトータル水分量と、セル温度およびセル内ガス圧力から求まる飽和水蒸気量とを比較することによりセル出口近傍で定常的に結露が生じるかどうかを判定する「出口結露判定手段」を備え、
アノード側およびカソード側それぞれに、前記入口結露判定手段および出口結露判定手段による判定結果、好ましくはさらに前記液性検出手段による液性検出結果に応じて、前記注水手段の動作を下記(A)、(B)のいずれかの状態に切り替える制御を行う「注水制御手段」を有する、燃料電池運転システムが提供される。
(A)注水手段から注水しない。
(B)セル内部全域が暫定的に結露状態となるに足る量の水分を注水手段から注水する。
ただし、「定常的」とは注水手段からの注水を行わない運転状態をいう。
本発明によれば、金属セパレータを用いた固体高分子型燃料電池の運転において、金属セパレータの腐食が生じやすい乾燥/結露混在状態を避けることができる。しかも、そのときの負荷の状態などに応じて、セル内の環境を定常的な乾燥状態および定常的な結露状態のうち、より適切な方に容易に切り替えることが可能であり、例えばあまり大きな電池出力が必要ないときにはイオン交換膜の分解防止に優れた結露状態を選択するなど、効率的な運転が実現できる。また本発明の運転システムは装置構成も比較的簡単である。したがって本発明は、金属セパレータを用いた固体高分子型燃料電池の普及に寄与するものである。
図1に、本発明の燃料電池運転システムの構成を模式的に例示する。
固体高分子型燃料電池1には、フッ素樹脂からなるイオン交換膜11を挟んでカーボンからなるアノード側電極12aとカソード側電極12bが設けられ、電極12aおよび12bはそれぞれ金属セパレータ13によって挟まれており、電極12aと金属セパレータ13の間および電極12bと金属セパレータ13の間にはそれぞれガス成分が通り抜けることのできる空間14aおよび14bがある。金属セパレータ13と電極12a、12bはそれぞれ電気的な接触を有している(その接触箇所は図示されていない)。空間14a側の金属セパレータ13と空間14b側の金属セパレータ13との間に1つのセルが形成されている。固体高分子型燃料電池1は単セル構造としても機能するが、実用的なものとしては複数のセルを直列につなげた構造のものが採用される。その場合、各セルは金属セパレータ13によって隣のセルと隔離される。1つのセルにおいて、アノード側の電極12aと金属セパレータ13に囲まれる領域およびカソード側の電極12bと金属セパレータ13に囲まれる領域を、本明細書ではそれぞれ「アノード側セル」および「カソード側セル」と呼んでいる。金属セパレータ13は各セルを隔離するとともにセル間の導電を担う。固体高分子型燃料電池1によって発生した電力は負荷21によって消費される。
セルのアノード側およびカソード側にはそれぞれ独立したガス供給経路31aおよび31bを有しており、アノード側セルには水素と水分、カソード側セルには酸素と水分が供給されるようになっている。各々のガス供給経路31a、31bには、ガス流量調整手段32a、32b、加湿手段33a、33b、注水手段34a、34bがある。アノード側のガス流量調整手段32aは水素源から導入する水素ガスの流量を調整するものである。カソード側のガス流量調整手段32bは酸素源から導入する酸素含有ガス(例えば空気)の流量を調整するものである。
ガス流量調整手段32a、32bを出たガスは、加湿手段33a、33bによって反応に必要な水分が添加される。加湿手段33a、33bはガスの露点がセル作動温度範囲をカバーする任意の温度となるように加湿できる構造となっている。例として、水中にガスをバブリングし湿度100%RHの加湿ガスを発生させるバブラー式加湿器が挙げられる。この場合、加湿手段33a、33bから出てくるガスの露点は水温と等しくなる。このため、ガスの露点を変化させるためには加湿水温を変化させる必要があり、新たな露点のガスが安定して供給できるようになるまでには多少の時間がかる。
加湿手段33a、33bとセル1の間のガス流路には注水手段34a、34bが設けられている。注水手段34a、34bは、加湿手段33a、33bから出てくるガス流に水滴状の水分を添加する機構を有する。例えば気流中に水ミストを噴霧する機構が挙げられる。この加湿手段34a、34bで添加された水滴状の水分はガス流に乗ってセル1に供給される。この水分によってセル1の内部を迅速に暫定的な結露状態にすることができる。
セル1にはセル温度を検知するための温度センサー41が備えられ、セル1あるいはガス供給経路31a、31bにはセル内ガス圧力を検知するための圧力センサー42が備えられている。また、セル1に流れる電流から電池反応による生成水量を求めるため、負荷1につながる回路に電流計22が設けられている。
セル1のアノード側およびカソード側にはそれぞれ少なくとも一部が独立した排出経路51aおよび51bを有し、各排出経路51a、51bには互いに独立した箇所に排出液の液性を検出する液性検出手段52a、52bがある。
本発明の電池運転システムは、加湿手段33a、33bで生成される加湿ガスによる発電運転によってセル入口15a、15b近傍で結露が生じるかどうかを判定する入口結露判定手段61a、61bを有している。その結露判定は加湿手段33a、33bで生成される加湿ガスの露点と、セル温度とを比較することにより行われる。加湿ガスの露点情報は加湿手段33a、33bから得られる。また、セル出口16a、16b近傍で結露が生じるかどうかを判定する出口結露判定手段62a、62bを有している。その結露判定は露点、電流およびガス流量から求まるセル出口通過ガス中のトータル水分量と、セル温度およびセル内ガス圧力から求まる飽和水蒸気量とを比較することにより行われる。ガス流量の情報はガス流量調整手段32a、32bから得られる。
さらに本発明の電池運転システムは、注水制御手段63a、63bを有している。注水制御手段63a、63bは、入口結露判定手段61a、61bおよび出口結露判定手段62a、62bによる判定結果に基づいて、注水手段34a、34bの動作(注水の開始および停止)を制御するものである。また、加湿手段33a、33bを制御するための加湿制御手段64a、64bを設けることができる。入口結露判定手段61a、61b、出口結露判定手段62a、62b、注水制御手段63a、63b、あるいはさらに加湿制御手段64a、64bなどの各種制御手段は、例えば1つの制御装置の中に内蔵させることができる。
アノード側およびカソード側での電池反応は以下のように表される。
・アノード側での反応; H2 → 2H++2e-
・カソード側での反応; 2H++2e-+1/2O2 → H2
アノード側で発生した水素イオンは、随伴水とともにイオン交換膜中を拡散して、カソード側に移動する。
図2(a)および(b)に、それぞれアノード側セルおよびカソード側セルにおけるセル内の水量分布を模式的に示す。アノード側では、供給された水分が反応の進行に伴い随伴水としてイオン交換膜を通して出て行くので、反応中、セル入口(セルのガス入口)側からセル出口(セルのガス出口)側に行くほどセル内部の水分量は減少する。一方、カソード側では、セル入口から供給された水分とイオン交換膜を通して入ってくる随伴水に加え、上記反応によって生成水が生じるので、反応中、セル入口側からセル出口側に行くほどセル内部の水分量は増加する。セル内が結露状態となるか乾燥状態となるかそれらの混在状態となるかは、セル内の温度および圧力に依存する飽和水蒸気量と、セル内の水分量の関係によって以下のように変動する。
〔アノード側セル;図2(a)〕
・飽和水蒸気量=Xのとき; セル入口から出口まで全域において水分量が飽和水蒸気量を上回っているので、セル全域が結露状態にある。
・飽和水蒸気量=Yのとき; セル入口から点Pの位置にかけて水分量が飽和水蒸気量を上回っているので、この領域は結露状態にある。一方、点Pの位置からセル出口にかけて水分量が飽和水蒸気量を下回っているので、この領域は乾燥状態にある。したがって、セル内には点Pを境に結露状態と乾燥状態が混在している。
・飽和水蒸気量=Zのとき; セル入口から出口まで全域において水分量が飽和水蒸気量を下回っているので、セル全域が乾燥状態にある。
〔カソード側セル;図2(b)〕
・飽和水蒸気量=Xのとき; セル入口から出口まで全域において水分量が飽和水蒸気量を上回っているので、セル全域が結露状態にある。
・飽和水蒸気量=Yのとき; セル入口から点Pの位置にかけて水分量が飽和水蒸気量を下回っているので、この領域は乾燥状態にある。一方、点Pの位置からセル出口にかけて水分量が飽和水蒸気量を上回っているので、この領域は結露状態にある。したがって、セル内には点Pを境に乾燥状態と結露状態が混在している。
・飽和水蒸気量=Zのとき; セル入口から出口まで全域において水分量が飽和水蒸気量を下回っているので、セル全域が乾燥状態にある。
以上のことから、アノード側セル、カソード側セルいずれにおいても、
(i)セル入口近傍で結露が生じるか、
(ii)セル出口近傍で結露が生じるか、
について判定すれば、水分量と飽和水蒸気量が図2(a)(b)のX、Y、Zのうちいずれの関係になっているかを判断することができる。
以下、本発明の燃料電池運転システムを用いた運転方法について説明する。
アノード側セルとカソード側セルは、それぞれ独立して乾燥状態と結露状態の制御ができるが、アノード側セルとカソード側セルの一方を「定常的な結露状態」とし、他方を「定常的な乾燥状態」とするような運転方法をとることは稀だと考えられるので、以下においては特に断らない限り、「定常的な結露状態」、「定常的な乾燥状態」、「乾燥/結露混在状態」、「暫定的な結露状態」の用語は、アノード側セルとカソード側セルに共通して適用される。
《定常的な結露状態から定常的な乾燥状態に移行させる運転モード》
定常的な結露状態での運転ではイオン交換膜の分解は抑制されるが、結露水があまりに多いと電極へのガスの供給が妨げられるため、高い電池出力を得ることは難しくなる。セル温度が低い起動時などは、出力が小さく、また飽和水蒸気量も小さいため、結露運転とするのが適している。そのほか、電池出力が小さい状態での稼働が続く場合も膜分解を抑制できる結露状態での運転が有利である。しかし、運転中に高出力が必要になった場合など、定常的な乾燥状態に移行させる必要が生じることがある。図3に、この運転モードを実施する場合のフローを例示する。
初期状態(移行前)では加湿手段33a、33bから供給されるガス・水分によってセル内部全域が結露状態となっている。以下のような場合に、このような状態であると判断される。
・アノード側セル; 出口結露判定手段62aにより出口近傍で定常的に結露を生じていると判定されるとき。
・カソード側セル; 入口結露判定手段61bにより入口近傍で定常的に結露を生じていると判定されるとき。
この場合の判定は現実に結露が生じていることを確認することが目的であるから、セル入口近傍および出口近傍に設置した結露センサーからの情報に基づいて出口結露判定手段62aあるいは入口結露判定手段61bが結露の有無を判定するようにしても構わない。
このあとセル内部全域を定常的な乾燥状態に変えるためには、加湿手段33a、33bから出てくるガスの露点(すなわち加湿温度)を変化させる必要がある。加湿手段の稼働状態をこのように変化させるには多少の時間がかる。このため、加湿手段から出てくるガス・水分をそのままセル内に送り続けると、この過渡的な段階でセル内部は乾燥/結露混在状態を経ることになり、金属セパレータの腐食を招く状況となる。そこで、本発明の運転方法においては、まず、注水手段34a、34bによって液滴状の水分を気流に乗せて添加し、セル内部全域を暫定的な結露状態とする。注水手段からの水分添加量は、セル内部の電極12a、12bと金属セパレータ13の表面を結露状態に維持することができる水分量とする必要があるが、その添加された水分を気流に乗って運ぶことができる範囲で設定される。
次いで、暫定的な結露状態の間に加湿手段33a、33bの動作を変化させて、セルの内部全域を定常的な乾燥状態にすることができる露点のガスが加湿手段から供給できるように準備する。加湿手段33a、33bの動作は例えば加湿制御手段64a、64bによって制御される。この準備が完了したことは以下のようになったことにより判断される。
・アノード側セル; 入口結露判定手段61aによる判定結果が「セル入口近傍で定常的に結露が生じない」である ……(1)
・カソード側セル; 出口結露判定手段62bによる判定結果が「セル出口近傍で定常的に結露を生じない」である ……(2)
この場合の判定は、注水手段34a、34bからの水分の供給がない状態(注水を止めた状態)を想定した上で、加湿手段33a、33bからのガス・水分の供給によって結露が生じるかどうかを推定することが目的であるから、入口結露判定手段61aによる判定は加湿手段33aで生成される加湿ガスの露点と、セル温度とを比較することにより行われ、出口結露判定手段62bによる判定は加湿手段33bからの加湿ガスの露点、電流およびガス流量から求まるセル出口通過ガス中のトータル水分量と、セル温度およびセル内ガス圧力から求まる飽和水蒸気量とを比較することにより行われる。
入口結露判定手段61a、出口結露判定手段62bによる判定結果は、直接または間接的にそれぞれ注水制御手段63a、63bに伝送される。間接的にというのは例えばシステム全体を統括的に制御する制御手段を経由するような場合である。注水制御手段63a、63bは、上記(1)、(2)の内容の判定結果を受けるとセル内部全域を定常的な乾燥状態とするための準備が完了したと判断し、注水手段34a、34bに注水を止めるように指示信号を送る。その結果、注水が停止され、加湿手段33a、33bから供給されるガス・水分によってセル内部全域が迅速に乾燥状態となり、定常的な乾燥状態への移行が完了する。
《定常的な乾燥状態から定常的な結露状態に移行させる運転モード》
定常的な乾燥状態での運転では、高い電池出力が得られる反面、イオン交換膜の分解が進行しやすい。このため、例えば運転中に電池出力が比較的低い状態となった場合など、定常的な結露状態で運転した方がイオン交換膜の寿命を考慮するとトータル的には有利となる場合がある。したがって、定常的な乾燥状態から定常的な結露状態に移行させる必要が生じることがある。図4に、この運転モードを実施する場合のフローを例示する。
初期状態(移行前)では加湿手段33a、33bから供給されるガス・水分によってセル内部全域が乾燥状態となっている。以下のような場合に、このような状態であると判断される。
・アノード側セル; 入口結露判定手段61aにより入口近傍で定常的に結露を生じていないと判定されるとき。
・カソード側セル; 出口結露判定手段62bにより出口近傍で定常的に結露を生じていないと判定されるとき。
この場合の判定は現実に結露が生じていることを確認することが目的であるから、セル入口近傍および出口近傍に設置した結露センサーからの情報に基づいて入口結露判定手段61aあるいは出口結露判定手段62bが結露の有無を判定するようにしても構わない。
このあとセル内部全域を定常的な結露状態に変えるためには、加湿手段33a、33bから出てくるガスの露点(すなわち加湿温度)を変化させる必要があり、それには多少の時間がかる。このため、加湿手段から出てくるガス・水分をそのままセル内に送り続けると、この過渡的な段階でセル内部は乾燥/結露混在状態を経ることになり、金属セパレータの腐食を招く状況となる。そこで、この過渡的段階でも前述の場合と同様に、まず、注水手段34a、34bによって液滴状の水分を気流に乗せて添加し、セル内部全域を暫定的な結露状態とする。
次いで、暫定的な結露状態の間に加湿手段33a、33bの動作を変化させて、セルの内部全域を定常的な結露状態にすることができる露点のガスが加湿手段から供給できるように準備する。加湿手段33a、33bの動作は例えば加湿制御手段64a、64bによって制御される。この準備が完了したことは以下のようになったことにより判断される。
・アノード側セル; 出口結露判定手段62aによる判定結果が「セル出口近傍で定常的に結露が生じる」である ……(3)
・カソード側セル; 入口結露判定手段61bによる判定結果が「セル入口近傍で定常的に結露を生じる」である ……(4)
この場合の判定は、注水手段34a、34bからの水分の供給がない状態(注水を止めた状態)を想定した上で、加湿手段33a、33bからのガス・水分の供給によって結露が生じるかどうかを推定することが目的であるから、出口結露判定手段62aによる判定は加湿手段33aからの加湿ガスの露点、電流およびガス流量から求まるセル出口通過ガス中のトータル水分量と、セル温度およびセル内ガス圧力から求まる飽和水蒸気量とを比較することにより行われ、入口結露判定手段61bによる判定は加湿手段33bで生成される加湿ガスの露点と、セル温度とを比較することにより行われる。
出口結露判定手段62a、入口結露判定手段61bによる判定結果は、直接または間接的にそれぞれ注水制御手段63a、63bに伝送される。間接的にというのは例えばシステム全体を統括的に制御する制御手段を経由するような場合である。注水制御手段63a、63bは、上記(3)、(4)の内容の判定結果を受けるとセル内部全域を定常的な乾燥状態とするための準備が完了したと判断し、注水手段34a、34bに注水を止めるように指示信号を送る。その結果、注水が停止され、加湿手段33a、33bから供給されるガス・水分によってセル内部全域の結露状態が継続され、定常的な結露状態への移行が完了する。
ただし、初期状態の定常的な乾燥状態において、セル内部には酸性物質が濃化していることが考えられるので、暫定的な結露状態を利用してこの酸性物質をできるだけ洗い流してしまうことが金属セパレータの防食効果を高める上で望ましい。すなわちここでは、低pH液が発生した状態での運転になったことを検知して稀釈のための注水を開始するのではなく、低pH液の発生によるセパレータの溶解が始まる前に注水によって迅速に酸性物質を洗い流してしまうのである。酸性物質が十分に洗い流されたかどうかは、例えば排出経路51a、51bに設けられた液性検出手段52a、52bにより排出液の液性を測定することにより判断することができる。種々検討の結果、この排出液のpHが5.0以上になっている場合には、その後定常的な結露状態を維持している間における金属セパレータの防食効果が非常に高くなる。なお、アノード側とカソード側の排出経路51a、51bは、少なくとも液性検出手段52a、52bによる測定箇所までは互いに独立した経路を有していることが必要である。
排出液の液性を注水手段34a、34bからの注水を停止させるための条件に加味する場合は、前記(3)、(4)の判定に代えて、以下の(3)’、(4)’のようになったことをもって注水を停止するための条件が揃ったと判断される。
・アノード側セル; 出口結露判定手段62aによる判定結果が「セル出口近傍で定常的に結露が生じる」であり、かつ液性検出手段52aによる排出液のpH測定値が規定値以上である ……(3)’
・カソード側セル; 入口結露判定手段61bによる判定結果が「セル入口近傍で定常的に結露を生じる」であり、かつ液性検出手段52bによる排出液のpH測定値が規定値以上である ……(4)’
pHの規定値は金属セパレータの材質や個々の装置構成によって設定されるが、例えば上述のようにpH=5.0以上となっている場合、ステンレス鋼製セパレータの腐食は顕著に抑制される。
出口結露判定手段62a、入口結露判定手段61bによる判定結果と、液性検出手段52a、52bによる液性の測定値は、直接または間接的に注水制御手段63a、63bに伝送される。注水制御手段63a、63bは、上記(3)’、(4)’の内容の判定結果を受けると注水を停止するための条件が整ったと判断し、注水手段34a、34bに注水を止めるように指示信号を送る。その結果、注水が停止され、加湿手段33a、33bから供給されるガス・水分によってセル内部全域の結露状態が継続され、定常的な結露状態への移行が完了する。セル内の酸性物質は十分に洗い流されているので、金属セパレータの防食効果は一層高まる。
《乾燥/結露混在状態となった場合の措置》
定常的な結露状態または定常的な乾燥状態で運転中に、出力変動その他の要因により、セルの内部が乾燥/結露混在状態になる場合がありうる。このような状態であることが検知された場合は、そのまま放置すると金属セパレータの腐食の進行を招くので、速やかに定常的な結露状態、あるいは定常的な乾燥状態のいずれかに移行させる措置をとることが望まれる。
以下のような場合に、乾燥/結露混在状態であると判断される。
・アノード側セル; 入口結露判定手段61aによる判定結果が「入口近傍で定常的に結露を生じる」であり、かつ出口結露判定手段62aによる判定結果が「出口近傍で定常的に結露を生じない」である ……(5)
・カソード側セル; 入口結露判定手段61bによる判定結果が「入口近傍で定常的に結露を生じない」であり、かつ出口結露判定手段62bによる判定結果が「出口近傍で定常的に結露を生じる」である ……(6)
この場合の判定は現実に乾燥/結露混在状態となっているかどうかを判断することが目的であるから、セル入口近傍および出口近傍に設置した結露センサーからの情報に基づいて入口結露判定手段61a、61b、出口結露判定手段62a、62bが結露の有無を判定するようにしても構わない。
入口結露判定手段61a、61b、出口結露判定手段62a、62bによる判定結果は、直接または間接的にそれぞれ注水制御手段63a、63bに伝送される。注水制御手段63a、63bは、上記(5)、(6)の内容の判定結果を受けると乾燥/結露混在状態であると判断し、注水手段34a、34bに注水を開始するように指示信号を送る。注水手段34a、34bは注水を開始し、セル内部は迅速に暫定的な結露状態となる。
次いで、定常的な乾燥状態に移行させるか、あるいは定常的な結露状態に移行させるように、加湿手段33a、33bの動作を変化させる。加湿手段33a、33bの動作は例えば加湿制御手段64a、64bによって制御される。どちらの状態に移行させるかは、負荷や温度、あるいは今後の運転状況予測などに応じてより適切な方が選択される。その選択は例えば統括的な制御装置によって行われる。あるいは外部入力手段からオペレータが指示を与えても構わない。その後は、前述のようにして適切な時期に注水手段34a、34bからの注水が停止され、定常的な乾燥状態または定常的な結露状態への移行が完了する。
〔システムの構成〕
図1に示した構成の燃料電池運転システムを構築した。固体高分子型燃料電池1は、SUS316製の金属セパレータ13とパーフルオロスルホン酸系のイオン交換膜11を組み合わせた単セル構造とした。電極12a、12bは白金触媒担持カーボンペーパー電極とし、電極面積はアノード側、カソード側それぞれ25cm2である。 液性検出手段52a、52bとしてpHセンサーを用いた。負荷21としては電流調整ができる電子負荷装置を用いた。アノード側およびカソード側のガス供給源はそれぞれ水素ガスボンベおよび空気タンクとし、ガス流量調整手段32a、32bはガス流量調整バルブで構成し、加湿手段33a、33bには加湿水温=露点となるバブラ型加湿器を用いた。加湿水温を調整することで任意の露点に調整することができる。ガス供給経路31a、31bは内径4mmのステンレス鋼製パイプで構成し、その途中には注水手段34a、34bとしてミスト状の水を気流中に噴霧することのできる気液混合装置を設けた。入口結露判定手段61a、61b、出口結露判定手段62a、62bとしてはパーソナルコンピュータを使用し、各種信号に基づいてアノード側セルおよびカソード側セルのセル入口近傍、出口近傍の定常的な(すなわち気液混合装置からの注水が無い場合を想定した)結露状態を演算により判定できるようにした。判定結果はディスプレイ上に逐次表示される。また、その判定結果から前記(1)、(2)の結果になったこと、あるいはさらにpHセンサーからのpH値を加味して前記(3)’、(4)’の結果になったことを演算により判断し、注水手段34a、34bの動作を切り替える信号を生成し、その信号が生成されたことをディスプレイ上に表示するようにプログラミングした。すなわち、パーソナルコンピュータにおいてこのプログラムを実行するハードウエアが注水制御手段63a、63bに相当する。実際の運転システムでは注水制御手段63a、63bによって生成された信号を用いて、注水手段34a、34bの動作を自動的に切り替えるように制御することが望ましいが、ここでは前記ディスプレイ上の表示に従ってオペレータが注水手段34a、34bの動作を手動で切り替えるようにした。また、加湿手段33a、33bについても加湿制御手段64a、64bによる自動制御とすることが望ましいが、ここではオペレータが加湿制御手段64a、64bに手動で制御情報を入力する方法とした。
〔共通の実験条件〕
以下の実験では、セルに導入するガス(水分を含む)の圧力はアノード側、カソード側とも1気圧、ガス流量はアノード側;100mL/min、カソード側;500mL/minと一定にした。発電電力はカーボン電極の単位面積当たりの電流密度が0.2A/cm2となるように定電流状態とした。セル温度は80℃と一定になるようにした。
《実施例1》
セル内部全域を定常的な乾燥状態として発電運転を行い、金属セパレータの腐食状態を調べた。
上記条件において、セル内部全域を定常的な乾燥状態とするためには(つまり前記(1)、(2)を満たす状態とするためには)、バブラ型加湿器での加湿水温(=露点)を、アノード側;80℃以下、カソード側;75℃以下とする必要があることが、予備実験により確かめられている。そこで、新しいセル(作製後、未使用の状態のもの、以下同様)を用いて、加湿水温をアノード側;79℃、カソード側;74℃として、定常的な乾燥状態で300時間の発電運転を行った。その後、セルを分解して金属セパレータの腐食状態を観察した。その結果、金属セパレータに腐食や変色は認められなかった。
《実施例2》
セル内部全域を定常的な結露状態として発電運転を行い、金属セパレータの腐食状態を調べた。
上記条件において、セル内部全域を定常的な結露状態とするためには(つまり前記(3)、(4)を満たす状態とするためには)、バブラ型加湿器での加湿水温(=露点)を、アノード側;85℃以上、カソード側;80℃以上とする必要があることが、予備実験により確かめられている。そこで、新しいセルを用いて、加湿水温をアノード側;86℃、カソード側;81℃として、定常的な乾燥状態で300時間の発電運転を行った。その後、セルを分解して金属セパレータの腐食状態を観察した。その結果、金属セパレータに腐食や変色は認められなかった。
《比較例1》
セル内部を乾燥/結露混在状態として発電運転を行い、金属セパレータの腐食状態を調べた。
上記条件において、セル内部を乾燥/結露混在状態とするためには(つまり前記(5)、(6)を満たす状態とするためには)、バブラ型加湿器での加湿水温(=露点)を、アノード側;80℃超え〜85℃未満、カソード側;75℃超え〜80℃未満とする必要があることが、予備実験により確かめられている。そこで、新しいセルを用いて、加湿水温をアノード側;83℃、カソード側;78℃として、定常的な乾燥状態で300時間の発電運転を行った。その後、セルを分解して金属セパレータの腐食状態を観察した。その結果、金属セパレータの一部に腐食が認められた。
《実施例3》
セル内部全域を定常的な結露状態から定常的な乾燥状態に移行させる運転モードで発電運転を行い、金属セパレータの腐食状態を調べた。
新しいセルを用いて、まず、バブラ型加湿器での加湿水温をアノード側;86℃、カソード側;81℃として、定常的な結露状態で200時間の発電運転を行った。
次に、定常的な乾燥状態へ移行するために過渡的な段階として、気液混合装置からミスト状の水滴を添加することによって注水を行い、セル内部全域を迅速に暫定的な結露状態とした。注水量は供給ガス量の1/10とした。具体的にはアノード側注水量;10mL/min、カソード側注水量;50mL/minである。この注水量は、添加された水がミスト状の液滴としてセルに届き、かつセル内部全域を暫定的な結露状態とすることができる適切な注水量であることが、予め予備実験により確かめられている。
その後、バブラ型加湿器の動作を変化させ、定常的な乾燥状態が得られるように加湿水温をアノード側;79℃、カソード側;74℃に向けて降温していった。その間、注水を継続し、暫定的な結露状態が維持されるようにした。パーソナルコンピュータを使用して構成した注水制御手段63a、63bによって、入口結露判定手段61a、出口結露判定手段62bの判定結果を基に前記(1)、(2)を満たすかどうかを逐次演算させ、前記(1)、(2)を満たしたことがディスプレイに表示された時点で、定常的な乾燥状態への移行準備が完了したと判断し、気液混合装置からの注水を停止した。この暫定的な結露状態に要した時間は約6分であった。
続いて、加湿水温をアノード側;79℃、カソード側;74℃とする定常的な乾燥状態で200時間の発電運転を行った。その後、セルを分解して金属セパレータの腐食状態を観察した。その結果、金属セパレータに腐食や変色は認められなかった。これは、乾燥/結露混在状態での発電運転が回避されたことによる効果である。
《比較例2》
気液混合装置からの注水を行わなかったことを除き、実施例3と同様の実験を行った。実験後にセルを分解して金属セパレータの腐食状態を観察した結果、金属セパレータに腐食が認められた。これは、定常的な結露状態から定常的な乾燥状態に移行させるための過渡的な段階で乾燥/結露混在状態での発電運転が回避できなかったことによる。
《実施例4》
セル内部全域を定常的な乾燥状態から定常的な結露状態に移行させる運転モードで発電運転を行い、金属セパレータの腐食状態を調べた。
新しいセルを用いて、まず、バブラ型加湿器での加湿水温をアノード側;79℃、カソード側;74℃として、定常的な乾燥状態で200時間の発電運転を行った。
次に、定常的な結露状態へ移行するために過渡的な段階として、気液混合装置からミスト状の水滴を添加することによって注水を行い、セル内部全域を迅速に暫定的な結露状態とした。注水量は実施例3と同じく供給ガス量の1/10とした。
その後、バブラ型加湿器の動作を変化させ、定常的な結露状態が得られるように加湿水温をアノード側;86℃、カソード側;81℃に向けて昇温していった。その間、注水を継続し、暫定的な結露状態が維持されるようにした。パーソナルコンピュータを使用して構成した注水制御手段63a、63bによって、入口結露判定手段61b、出口結露判定手段62aの判定結果、およびpHセンサーによるpH測定値を基に前記(3)’、(4)’を満たすかどうかを逐次演算させ、前記(3)’、(4)’を満たしたことがディスプレイに表示された時点で、注水を停止するための条件が整ったと判断し、気液混合装置からの注水を停止した。この暫定的な結露状態に要した時間は約4分であった。なお、pHの規定値としてはpH=5.0を採用した。
続いて、加湿水温をアノード側;86℃、カソード側;81℃とする定常的な結露状態で200時間の発電運転を行った。その後、セルを分解して金属セパレータの腐食状態を観察した。その結果、金属セパレータに腐食や変色は認められなかった。これは、乾燥/結露混在状態での発電運転が回避され、かつ初期の定常的な乾燥状態で生じた酸性物質が暫定的な結露状態の間に十分に洗い流されたことによる効果である。
《比較例3》
気液混合装置からの注水を行わなかったことを除き、実施例4と同様の実験を行った。実験後にセルを分解して金属セパレータの腐食状態を観察した結果、金属セパレータに腐食が認められた。これは、定常的な乾燥状態から定常的な結露状態に移行させるための過渡的な段階で乾燥/結露混在状態での発電運転が回避できなかったことによる。
本発明の燃料電池運転システムの構成を模式的に例示した図。 アノード側セルにおけるセル内の水量分布を模式的に示した図。 カソード側セルにおけるセル内の水量分布を模式的に示した図。 定常的な結露状態から定常的な乾燥状態に移行させる運転モードを実施する場合のフローを例示した図。 定常的な乾燥状態から定常的な結露状態に移行させる運転モードを実施する場合のフローを例示した図。
符号の説明
1 固体高分子型燃料電池
11 イオン交換膜
12a アノード側電極
12b カソード側電極
13 金属セパレータ
14a、14b 空間
15a、15b セル入口
16a、16b セル出口
21 負荷
22 電流計
31a、31b ガス供給経路
32a、32b ガス流量調整手段
33a、33b 加湿手段
34a、34b 注水手段
41 温度センサー
42 圧力センサー
51a、51b 排出経路
52a、52b 液性検出手段
61a、61b 入口結露判定手段
62a、62b 出口結露判定手段
63a、63b 注水制御手段
64a、64b 加湿制御手段

Claims (8)

  1. 金属セパレータを用いた固体高分子型燃料電池の運転において、セルのアノード側およびカソード側にそれぞれ独立したガス供給経路を有し、各ガス供給経路に、供給ガスの露点を調整可能な「加湿手段」、およびその加湿手段とセルの間に水滴をガス流に乗せて供給可能な「注水手段」を有するシステムを使用し、
    発電運転中に、アノード側セルおよびカソード側セルの内部全域を定常的な結露状態または乾燥/結露混在状態から、定常的な乾燥状態に移行させるに際し、
    アノード側およびカソード側についてそれぞれ独立して、注水手段から水分を供給することによってセルの内部全域を迅速に暫定的な結露状態とし、その暫定的な結露状態の間に加湿手段の動作を変化させて、セルの内部全域を定常的な乾燥状態とすることができる露点のガスが加湿手段から供給できるように準備し、その準備が完了した後に注水手段からの水分の供給を止め、セルの内部全域を定常的な乾燥状態に移行させる燃料電池の運転方法。
    ただし、「定常的」とは注水手段からの注水を行わない運転状態をいう。
  2. 金属セパレータを用いた固体高分子型燃料電池の運転において、セルのアノード側およびカソード側にそれぞれ独立したガス供給経路を有し、各ガス供給経路に、供給ガスの露点を調整可能な「加湿手段」、およびその加湿手段とセルの間に水滴をガス流に乗せて供給可能な「注水手段」を有するシステムを使用し、
    発電運転中に、アノード側セルおよびカソード側セルの内部全域を定常的な乾燥状態または乾燥/結露混在状態から、定常的な結露状態に移行させるに際し、
    アノード側およびカソード側についてそれぞれ独立して、注水手段から水分を供給することによってセルの内部全域を迅速に暫定的な結露状態とし、その暫定的な結露状態の間に加湿手段の動作を変化させて、セルの内部全域を定常的な結露状態とすることができる露点のガスが加湿手段から供給できるように準備し、その準備が完了した後に注水手段からの水分の供給を止め、セルの内部全域を定常的な結露状態に移行させる燃料電池の運転方法。
    ただし、「定常的」とは注水手段からの注水を行わない運転状態をいう。
  3. 請求項2に記載の運転方法において、さらに、セルのアノード側およびカソード側にそれぞれ少なくとも一部が独立した排出経路を有し、各排出経路には互いに独立した箇所に排出液の液性を検出する「液性検出手段」があるシステムを使用し、
    前記準備が完了し、かつ液性検出手段により排出液のpHが規定値以上であることが確認された後に注水手段からの水分の供給を止め、セルの内部全域を定常的な結露状態に移行させる燃料電池の運転方法。
  4. 金属セパレータを用いた固体高分子型燃料電池の運転システムにおいて、セルのアノード側およびカソード側にそれぞれ独立したガス供給経路を有し、各ガス供給経路には「ガス流量調整手段」、ガスの露点を調整可能な「加湿手段」、およびその加湿手段とセルの間に水滴をガス流に乗せて供給可能な「注水手段」があり、
    アノード側およびカソード側それぞれについて、前記加湿手段で生成される加湿ガスの露点と、セル温度とを比較することによりセル入口近傍で定常的に結露が生じるかどうかを判定する「入口結露判定手段」、並びに、前記加湿ガスの露点、電流およびガス流量から求まるセル出口通過ガス中のトータル水分量と、セル温度およびセル内ガス圧力から求まる飽和水蒸気量とを比較することによりセル出口近傍で定常的に結露が生じるかどうかを判定する「出口結露判定手段」を備え、
    アノード側およびカソード側それぞれに、前記入口結露判定手段および出口結露判定手段による判定結果に応じて、前記注水手段の動作を下記(A)、(B)のいずれかの状態に切り替える制御を行う「注水制御手段」を有する、燃料電池運転システム。
    (A)注水手段から注水しない。
    (B)セル内部全域が暫定的に結露状態となるに足る量の水分を注水手段から注水する。
    ただし、「定常的」とは注水手段からの注水を行わない運転状態をいう。
  5. さらに、セルのアノード側およびカソード側にそれぞれ少なくとも一部が独立した排出経路を有し、各排出経路には互いに独立した箇所に排出液の液性を検出する「液性検出手段」があり、
    アノード側およびカソード側それぞれに、前記入口結露判定手段および出口結露判定手段による判定結果、並びに前記液性検出手段による液性検出結果に応じて、前記注水手段の動作を前記(A)、(B)のいずれかの状態に切り替える制御を行う「注水制御手段」を有する、請求項4に記載の燃料電池運転システム。
  6. アノード側およびカソード側の注水制御手段は、それぞれ下記の条件1のときに、注水手段の動作を前記(A)から前記(B)の状態に切り替える制御信号を生成する機能を有するものである請求項4に記載の燃料電池運転システム。
    〔アノード側注水制御手段〕
    条件1; 入口結露判定手段によりセル入口近傍で定常的に結露が生じると判定され、かつ出口結露判定手段によりセル出口近傍で定常的に結露が生じないと判定された(乾燥/結露混在状態)
    〔カソード側注水制御手段〕
    条件1; 入口結露判定手段によりセル入口近傍で定常的に結露が生じないと判定され、かつ出口結露判定手段によりセル出口近傍で定常的に結露が生じると判定された(乾燥/結露混在状態)
  7. アノード側およびカソード側の注水制御手段は、それぞれ下記の条件2または条件3のときに、注水手段の動作を前記(B)から前記(A)の状態に切り替える制御信号を生成する機能を有するものである請求項4に記載の燃料電池運転システム。
    〔アノード側注水制御手段〕
    条件2; 入口結露判定手段によりセル入口近傍で定常的に結露が生じないと判定された(セル内部全域を定常的な乾燥状態とする準備完了)
    条件3; 出口結露判定手段によりセル出口近傍で定常的に結露が生じる判定された(セル内部全域を定常的な結露状態とする準備完了)
    〔カソード側注水制御手段〕
    条件2; 出口結露判定手段によりセル出口近傍で定常的に結露が生じないと判定された(セル内部全域を定常的な乾燥状態とする準備完了)
    条件3; 入口結露判定手段によりセル入口近傍で定常的に結露が生じる判定された(セル内部全域を定常的な結露状態とする準備完了)
  8. アノード側およびカソード側の前記条件2に代えて、それぞれ下記の条件2’を採用する請求項7に記載の燃料電池運転システム。
    〔アノード側注水制御手段〕
    条件2’; 入口結露判定手段によりセル入口近傍で定常的に結露が生じないと判定され(セル内部全域を定常的な乾燥状態とする準備完了)、かつ液性検出手段により排出液のpHが規定値以上である
    〔カソード側注水制御手段〕
    条件2’; 出口結露判定手段によりセル出口近傍で定常的に結露が生じないと判定され(セル内部全域を定常的な乾燥状態とする準備完了)、かつ液性検出手段により排出液のpHが規定値以上である
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