JP2008284163A - クッションカバー - Google Patents

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Hajime Sato
元 佐藤
Hideki Nihei
秀規 二瓶
Toshimitsu Ebinuma
利光 海老沼
Hiromi Sanada
弘美 真田
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University of Tokyo NUC
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Abstract

【課題】座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力の低減及び着座者の姿勢の安定化の両立を図ることのできるクッションカバーを提供する。
【解決手段】褥瘡防止用クッション1の上面を覆うカバー上面33を、任意の伸張率における着座面前後方向の引張り剛性K1がその伸張率における着座面幅方向の引張り剛性K2に対して略1.4倍となる布材によって形成したことから、褥瘡防止用クッション1に着座した着座者の臀部が着座面幅方向と比較して着座面前後方向に移動し難くなる。このため、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力を低減するために、カバー上面33を形成する布材の引張り剛性を低く設定した場合でも、着座面前後方向の引張り剛性K1と着座面幅方向の引張り剛性K2が略等しい場合と比較し、着座者の臀部の着座面前後方向への移動量を低減することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば車椅子や椅子の着座面に載置されて着座者の臀部を軟らかく支持する褥瘡防止用クッションを覆うためのクッションカバーに関するものである。
一般に、この種のクッションカバーとしては、互いに水平方向に並ぶように設けられた複数のエアーセルによって着座者の臀部を支持する褥瘡防止用クッションのクッションカバーにおいて、褥瘡防止用クッションの上面を覆う上部パネルと、褥瘡防止用クッションの下面を覆う下部パネルと、褥瘡防止用クッションの側面に沿って設けられ、上部パネルの周縁部と下部パネルの周縁部に固定された側部パネルとを備え、上部パネルを下部パネル及び側部パネルと比較して伸縮性の高い布材によって形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許第2979202号公報
ところで、着座者の臀部は座骨及び尾骨の近傍が他の部分よりも突出しており、座骨及び尾骨の近傍に体重が集中し易いので、前記褥瘡防止用クッションでは、着座者が着座すると各エアーセルが臀部の形状に応じてそれぞれ上下方向に軟らかく潰れるとともに、各エアーセル内の空気圧が互いに略等しくなり、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力が臀部の全体に亘って分散するようになっている。また、各エアーセルはその上端側が臀部の水平方向の移動に円滑に追随するようになっている。
このため、前記クッションカバーでは、着座者の臀部の形状に応じて褥瘡防止用クッションの各エアーセルが上下方向に軟らかく潰れるとともに、各エアーセルの上端側が着座者の臀部の水平方向の移動に円滑に追随するように、上部パネルを伸縮性の高い布材によって形成している。また、上部パネルが各エアーセルに対して相対的に変位可能となるように、上部パネルと褥瘡防止用クッションの各エアーセルとは互いに連結されていない。ここで、上部パネル上に着座者が着座すると、上部パネルにおいて座骨及び尾骨に対応する位置の伸びが他の部分の伸びよりも大きくなり、その引張り変形に応じて上部パネルに生ずる反力が座骨及び尾骨の近傍に加わるので、上部パネルを構成する布材の引張り剛性を極力低くする方が好ましい。
しかしながら、上部パネルを構成する布材の引張り剛性を低くすると、上部パネル上の着座者の臀部が水平方向に移動し易くなり、着座者の姿勢を安定させる上で好ましくなく、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力の低減及び着座者の姿勢の安定化を両立させることが難しいという問題点があった。
特に、褥瘡防止用クッション上に着座者が着座する際は、着座と同時に背凭れに寄りかかる場合が多いので、上部パネルを構成する布材の引張り剛性を低くすると、背凭れに寄りかかることにより着座者の臀部が前方に向かって大きく移動し、着座者の臀部が前方にずれた状態になり易い。また、褥瘡防止用クッションを車椅子に載置して使用する場合に、上部パネルを構成する布材の引張り剛性を低くすると、車椅子の構造により着座者の臀部の幅方向への移動は規制されるが、着座者の臀部が前後方向に移動し易くなる。
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力の低減及び着座者の姿勢の安定化の両立を図ることのできるクッションカバーを提供することにある。
本発明は前記目的を達成するために、所定の着座面に載置されて着座者の臀部を支持する褥瘡防止用クッションの少なくとも上面を覆うクッションカバーにおいて、前記褥瘡防止用クッションの上面を覆うカバー上面を、10%以上40%以下の伸張率のうち任意の伸張率における着座面前後方向の引張り剛性がその伸張率における着座面幅方向の引張り剛性に対して1.2倍以上となる布材によって形成している。
これにより、褥瘡防止用クッションの上面を覆うカバー上面を、10%以上40%以下の任意の伸張率における着座面前後方向の引張り剛性がその伸張率における着座面幅方向の引張り剛性に対して1.2倍以上となる布材によって形成したことから、褥瘡防止用クッションに着座した着座者の臀部が着座面幅方向と比較して着座面前後方向に移動し難くなる。このため、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力を低減するために、カバー上面を形成する布材の引張り剛性を低く設定した場合でも、着座面前後方向と幅方向の引張り剛性が略等しい場合と比較し、着座者の臀部の着座面前後方向への移動量を低減することができる。
本発明によれば、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力を低減するために、カバー上面を形成する布材の引張り剛性を低く設定した場合でも、着座面前後方向と幅方向の引張り剛性が略等しい場合と比較し、着座者の臀部の着座面前後方向への移動量を低減することができるので、例えば、着座と同時に背凭れに寄りかかった際の着座者の臀部の前方への移動を抑制することができるとともに、車椅子上における着座者の臀部の前後方向の移動を抑制することができ、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力の低減及び着座者の姿勢の安定化の両立を図る上で極めて有利である。
図1乃至図8は本発明の一実施形態を示すもので、図1はクッションカバーの斜視図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は布材の引張り剛性の試験方法を示す図、図4は布材の引張り剛性の試験結果を示すグラフ、図5は繊維の引張り剛性の試験結果を示すグラフ、図6は布材の着座面前後方向の引張り剛性と着座面幅方向の引張り剛性との関係を示すグラフ、図7はカバー上面の動作説明図、図8は布材のヒステリシスカーブを示すグラフである。尚、以下の文章中の方向の説明は図1乃至図3及び図7に示した前後方向、着座面幅方向及び上下方向に準ずる。また、前後方向は着座面前後方向と一致している。
本実施形態のクッションカバー30は褥瘡防止用クッション1の上面、側面及び底面を覆うように形成されている。
褥瘡防止用クッション1は、車椅子の着座面や椅子の着座面等の所定の着座面に沿って延びるように形成された平板状のベース部材10と、それぞれベース部材10の上面から上方に向かって延びるように形成されるとともに、互いに着座面の前後方向及び幅方向に並ぶように配置された複数のエアーセル20とを有する。また、各エアーセル20の上端面によって褥瘡防止用クッション1の上面が形成され、各エアーセル20から成るエアーセル群の側面及びベース部材10の側面によって褥瘡防止用クッション1の側面が形成され、ベース部材10の底面によって褥瘡防止用クッション1の底面が形成されている。
ベース部材10はゴムやプラスチックから成るとともに、上側ベース部材11と下側ベース部材12とから成る。下側ベース部材12は上側ベース部材11の下面に沿うように形成されるとともに、上側ベース部材11の下面に接着等によって取り付けられている。また、ベース部材10内には各エアーセル20内を互いに連通させる図示しない空気通路が形成されている。
各エアーセル20は下端が開口するとともに内部に空気を封入可能な空気袋から成るとともに、ゴムや熱可塑性エラストマーから成る。また、各エアーセル20の下端側は上側ベース部材11によって上下方向に支持されるとともに、各エアーセル20の下端の開口が下側ベース部材12の上面によって閉鎖されている。この状態において各エアーセル20内は前記空気通路によって互いに連通している。さらに、空気通路には図示しない電動エアーポンプが接続され、電動エアーポンプによって各エアーセル20内に空気を供給可能である。このため、褥瘡防止用クッション1上に着座者が着座すると、着座者の臀部が各エアーセル20によって支持される。また、各エアーセル20が着座者の臀部の形状に応じてそれぞれ上下方向に潰れるとともに、各エアーセル20内の空気圧が互いに略等しくなり、着座者の座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力を臀部の全体に亘って分散させることができる。さらに、各エアーセル20は下端側を支持部材10によって支持されるとともに、支持部材10の上面から上方に向かって延びるように形成されているので、各エアーセル10の上端側は臀部の水平方向の移動に円滑に追随する。
クッションカバー30は、褥瘡防止用クッション1の底面を覆うように形成されたカバー底面31と、褥瘡防止用クッション1の側面を覆うように形成されたカバー側面32と、褥瘡防止用クッション1の上面を覆うように形成されたカバー上面33とを有する。
カバー底面31はポリエステル繊維、ナイロン繊維、ウレタン繊維等から成る可撓性を有する布材であり、褥瘡防止用クッション1の底面に沿って延びるように形成されている。また、カバー底面31と前記所定の着座面との摩擦係数が大きくなるように、カバー底面31に滑り止め加工を施すことも可能である。尚、カバー底面31をゴム、プラスチック、熱可塑性エラストマー等から成る板状部材によって形成することも可能である。
カバー側面32はカバー底面31の周縁から上方に向かって延びるように形成されるとともに、褥瘡防止用クッション1の側面を全周に亘って覆うように形成されている。また、カバー底面31の周縁はカバー側面32に固定されている。カバー側面32はポリエステル繊維、ナイロン繊維、ウレタン繊維等から成る可撓性を有する布材である。カバー側面32の前面部分にはファスナー32aが設けられ、ファスナー32aは着座面幅方向に延びるように形成されるとともに、両側面部分まで延びるように形成されている。即ち、ファスナー32aはクッションカバー30の前端を開口可能であり、ファスナー32aによる開口部を介して褥瘡防止用クッション1をクッションカバー30内に収容するようになっている。
カバー上面33は褥瘡防止用クッション1の上面に沿って延びるように形成され、その周縁がカバー側面32の前面部分、背面部分及び両側面部分にそれぞれ固定されている。カバー上面33は例えばポリオレフィン系弾性繊維とポリエステル繊維とを用いた布材によって形成されている。ポリオレフィン系弾性繊維の例としてはザ・ダウ・ケミカル・カンパニーのXLA(商標、以下省略)が挙げられる。このXLAは、図5に示すように、ポリエステル繊維やナイロン繊維等の一般の合成繊維に比べて延びが極めて大きく、且つ、引張り剛性が極めて低い繊維である。また、カバー上面33を形成する布材は10%以上40%以下の伸張率のうち任意の伸張率における着座面前後方向の引張り剛性が着座面幅方向の引張り剛性に対して略1.4倍である。
ここで、カバー上面33を形成する布材の前記任意の伸張率(例えば伸張率40%)における引張り剛性を求める場合は、先ず、カバー上面33を形成する布材から所定寸法(本実施形態では10cm四方)の矩形状の試験片TPを作成する。また、図3(a)に示すように、試験片TPの着座面前後方向の両端部をそれぞれ把持部材CHによって把持するとともに、図3(b)に示すように、各把持部材CHのうち一方の把持部材CHを所定の速度で移動させることにより、試験片TPに引張り方向の歪を与えながら、各把持部材CHの間に加わる引張り荷重を測定する。ここで、試験温度は室温であり、試験速度やその他の条件はJIS−L−1096に示されているストリップ法に準ずる。これにより、カバー上面33を形成する布材を着座面前後方向に引張る場合の荷重と伸張率との関係が得られる。また、各把持部材CHによって試験片TPの着座面幅方向の両端部をそれぞれ把持することにより、カバー上面33を形成する布材を着座面幅方向に引張る場合の荷重と伸張率との関係が得られる。続いて、以下のように布材の伸張率40%における引張り剛性を算出する。即ち、着座面前後方向の荷重と伸張率との関係において、伸張率が40%になった時の荷重が620gfであることから、伸張率40%における着座面前後方向の引張り剛性K1は、K1=620gf/0.4/10cm=155gf/cm(1.55N/cm)となる。また、着座面前後方向についても、伸張率が40%になった時の荷重が440gfであることから、伸張率40%における着座面幅方向の引張り剛性K2は、K2=440gf/0.4/10cm=110gf/cm(1.1N/cm)となる。即ち、伸張率40%における着座面前後方向の引張り剛性K1は着座面幅方向の引張り剛性K2に対して略1.4倍となる。
また、着座面前後方向の荷重と伸張率との関係は、伸張率が0%乃至45%の範囲で略直線状で比例関係にあることから、伸張率が0%乃至45%の範囲において引張り剛性K1は155gf/cmとなる。また、着座面前後方向の荷重と伸張率との関係は、伸張率が0%乃至62%の範囲で略直線状で比例関係にあることから、伸張率が0%乃至62%の範囲において引張り剛性K2は110gf/cmとなる。
以上のように構成された褥瘡防止用クッション1はクッションカバー30内に収容されるとともに、前記所定の着座面に載置され、着座者の臀部を支持するようになっている。
ここで、褥瘡防止用クッション1の上面を覆うカバー上面33を、10%以上40%以下の任意の伸張率における着座面前後方向の引張り剛性K1がその伸張率における着座面幅方向の引張り剛性K2に対して略1.4倍となる布材によって形成したことから、褥瘡防止用クッション1に着座した着座者の臀部が着座面幅方向と比較して着座面前後方向に移動し難くなる。このため、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力を低減するために、カバー上面33を形成する布材の引張り剛性を低く設定した場合でも、着座面前後方向の引張り剛性K1と着座面幅方向の引張り剛性K2が略等しい場合と比較し、着座者の臀部の着座面前後方向への移動量を低減することができる。
このように、本実施形態によれば、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力を低減するために、カバー上面33を形成する布材の引張り剛性を低く設定した場合でも、着座面前後方向の引張り剛性K1と着座面幅方向の引張り剛性K2が略等しい場合と比較し、着座者の臀部の着座面前後方向への移動量を低減することができるので、例えば、着座と同時に背凭れに寄りかかった際の着座者の臀部の前方への移動を抑制することができるとともに、車椅子上の着座者の臀部の前後方向の移動を抑制することができ、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力の低減及び着座者の姿勢の安定化の両立を図る上で極めて有利である。
また、カバー上面33を形成する布材を、着座面前後方向に引張り変形させる際の荷重と伸張率との関係が伸張率0%以上40%以下の範囲で略比例関係になるとともに、着座面幅方向に引張り変形させる際の荷重と伸張率との関係が伸張率0%以上40%以下の範囲で略比例関係になるように構成したので、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力を臀部の全体に亘って効率良く分散させることができ、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力の低減を図る上で極めて有利である。尚、着座面幅方向に引張り変形させる際の荷重と伸張率との関係が伸張率0%以上50%以下の範囲で略比例関係になるように構成すると、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力の低減を図る上でより有利である。
ここで、伸張率40%における着座面前後方向の引張り剛性K1と着座面幅方向の引張り剛性K2をそれぞれ変化させた複数種類の布材を形成するとともに、その布材によってカバー上面33を形成し、そのカバー上面33を装着したクッションカバー30を用いて着座試験を行ったところ、図6に示すような結果が得られた。即ち、伸張率40%における着座面前後方向の引張り剛性K1が120gf/cm以上の場合は、着座者の姿勢を安定させることができるが、引張り剛性K1が120gf/cm未満の場合は、着座者の臀部が着座面前後方向に移動し易くなり、着座者の姿勢が安定しなくなる。また、引張り剛性K1が250gf/cmを超える場合は、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力が大きくなり、褥瘡を防止する上で好ましくない。さらに、伸張率40%における着座面幅方向の引張り剛性K2が50gf/cm以上であれば、着座者の姿勢を安定させることができるが、引張り剛性K2が50gf/cm未満の場合は、着座者の臀部が着座面幅方向に移動し易くなり、着座者の姿勢が安定しなくなる。また、引張り剛性K2が200gf/cmを超える場合は、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力が大きくなり、褥瘡を防止する上で好ましくない。さらに、引張り剛性K1が120gf/cm以上250gf/cm以下、且つ、引張り剛性K2が50gf/cm以上200gf/cm以下の範囲において、引張り剛性K1が引張り剛性K2に対して1.2倍以上であれば、前述の略1.4倍である場合と同様に、着座者の臀部の着座面前後方向への移動量を低減する作用が認められるが、引張り剛性K1が引張り剛性K2に対して1.2倍未満の場合は、前記作用が明確ではなくなる。
従って、引張り剛性K1が70gf/cm以上250gf/cm以下であるとともに、引張り剛性K2が50gf/cm以上200gf/cm以下であり、さらに引張り剛性K1が引張り剛性K2に対して1.2倍以上であれば(図6において斜線で示した範囲内であれば)、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力の低減及び着座者の姿勢の安定化の両立を図ることができる。
また、引張り剛性K1が120gf/cm以上200gf/cm以下であるとともに、引張り剛性K2が100gf/cm以上170gf/cm以下であり、さらに引張り剛性K1が引張り剛性K2に対して1.2倍以上2倍以下であれば(図6において網掛けで示した範囲内であれば)、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力の低減及び着座者の姿勢の安定化をより好適に行うことが可能である。
さらに、褥瘡防止用クッション1の構造、着座者の体重、臀部の形状等の条件により、着座者が着座した際のカバー上面33の伸張率が異なる。このため、前述では、伸張率40%における引張り剛性K1及び引張り剛性K2が前述の特性を有していると、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力の低減及び着座者の姿勢の安定化の両立を図ることができる旨を示したが、出願人の経験上、10%以上40%以下の伸張率のうち任意の伸張率において引張り剛性K1及び引張り剛性K2が前述のような特性を有している場合、座骨及び尾骨に加わる圧力の低減及び着座者の姿勢の安定化を図ることができる。例えば伸張率10%における引張り剛性K1及び引張り剛性K2が前述の特性を有し、伸張率40%における引張り剛性K1及び引張り剛性K2が前述の特性を有さない場合でも、褥瘡防止用クッション1の構造、着座者の体重、臀部の形状等の条件により、前述と同様の効果を達成することが可能である。
また、着座面前後方向の引張り剛性K1を着座面幅方向の引張り剛性K2に対して1.2倍以上2倍以下にすると、着座面前後方向の引張り剛性K1が高い分だけ座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力が増加すると思われるが、引張り剛性K1と引張り剛性K2が略等しい場合と比較し、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力は増加しない。即ち、着座者が着座すると、臀部における座骨近傍HBからカバー上面33に下方に向かう力P1が加わるとともに、着座者が背凭れに寄りかかることにより前方に向かう力P2が加わり、各力P1,P2によってカバー上面33が下方に変形するとともに、その変形によってカバー上面33に生ずる反力が座骨近傍HBに加わる。このため、着座面前後方向の引張り剛性K1を低く設定しても、カバー上面33の反力及び褥瘡防止用クッション1の支持力と前方に向かう力P2とが釣り合うまでは着座者の臀部が前方に移動することになり、引張り剛性K1を引張り剛性K2に対して1.2倍以上2倍以下にする場合と同等の反力がカバー上面33から座骨近傍HBに加わる(図7参照)。従って、引張り剛性K1と引張り剛性K2が略等しい場合と比較し、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力は増加しない。
また、カバー上面33を形成する布材を、着座面前後方向及び着座面幅方向に所定の引張り方向の歪を与えるとともにその引張り方向の歪を除去する際に、30%以上のヒステリシスロスが生ずるように構成することも可能である。ここで、前記ヒステリシスロスは、試験片TPに例えば伸張率40%の引張り方向の歪を与えるとともにその引張り方向の歪を除去して得られるヒステリシスカーブから求められる。即ち、前記ヒステリシスロスは、試験片TPに歪を与える際に要するエネルギー(図8の斜線で示す範囲)に対する試験片TPに歪を与える工程と歪を除去する工程との間で失われるエネルギー(図8の網掛けで示す範囲)の比率である。図8のヒステリシスカーブは、図3(a)に示すように試験片TPを各把持部材CHによって把持し、試験片TPに着座面前後方向に伸張率40%の引張り方向の歪を与えるとともにその引張り方向の歪を除去することにより得られたものである。また、試験温度は室温であり、試験速度やその他の条件はJIS−L−1096に示されているストリップ法に準ずる。さらに、試験片TPの伸張率は10%以上40%以下の範囲で設定することが好ましい。
このように、カバー上面33を形成する布材が伸縮変形時に30%以上のヒステリシスロスを生ずるように構成すると、座骨及び尾骨の近傍を支持するカバー上面33の反力が早期に緩和するので、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力を低減する上で有利である。また、着座者の臀部が水平方向に移動する場合はカバー上面33が臀部の移動に伴って変形するが、カバー上面33が変形するためには図8の斜線で示す範囲のようなエネルギーを必要とするので、ヒステリシスロスを生じさせることにより着座者の臀部が水平方向に移動し易くなることはない。即ち、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力の低減及び着座者の姿勢の安定化の両立を図る上でより有利である。
尚、本実施形態では、カバー上面33を形成する布材を、着座面前後方向に引張り変形させる際の荷重と伸張率との関係が伸張率0%以上40%以下の範囲で略比例関係になるとともに、着座面幅方向に引張り変形させる際の荷重と伸張率との関係が伸張率0%以上40%以下の範囲で略比例関係になるように構成したものを示した。これに対し、図9に示すように、着座面前後方向に引張り変形させる際の荷重と伸張率との関係が比例関係にならず、着座面幅方向に引張り変形させる際の荷重と伸張率との関係も比例関係にならない場合でも、10%以上40%以下の伸張率のうち任意の伸張率における引張り剛性K1及び引張り剛性K2が前述の特性を有する場合は、略比例関係になる場合と同様の効果を達成することが可能である。ちなみに、図9の場合は、伸張率10%において引張り剛性K1及び引張り剛性K2が前述の特性を有さないが、伸張率20%以上40%以下の範囲で引張り剛性K1及び引張り剛性K2が前述の特性を有するので、図9の特性を有する布材を用いたカバー上面33は荷重と伸張率とが比例関係を有する布材の場合と同等の効果を達成することが可能である。
また、本実施形態では、カバー上面33の周縁がカバー側面32の前面部分、背面部分及び両側面部分にそれぞれ固定されているものを示した。これに対し、カバー上面33の周縁をカバー側面32の前面部分及び背面部分にのみ固定することも可能であり、カバー側面32に両側面部分にのみ固定することも可能である。
尚、本実施形態では、褥瘡防止用クッション1として、平板状のベース部材10と、ベース部材10の上面側から上方に向かって延びるように形成された複数のエアーセル20とを有するものを示した。これに対し、褥瘡防止用クッション1の代わりにウレタンフォーム、ビーズ、ジェル等で着座者の臀部を支持する褥瘡防止用クッションを用いることも可能であり、この場合でも前記カバー上面33は、座骨及び尾骨の近傍に加わる圧力の低減及び着座者の姿勢の安定化の両立を図る上で極めて有利である。
尚、本実施形態では、クッションカバー30を褥瘡防止用クッション1の上面、側面及び下面を覆うように形成したものを示したが、カバー下面31を設けずに、褥瘡防止用クッション1の上面及び側面のみを覆うように形成することも可能であり、カバー下面31及びカバー側面32を設けずに、上面カバー33によって褥瘡防止用クッション1の上面のみを覆うように形成することも可能である。
本発明における一実施形態を示すクッションカバーの斜視図 図1におけるA−A線断面図 布材の引張り剛性の試験方法を示す図 布材の引張り剛性の試験結果を示すグラフ 繊維の引張り剛性の試験結果を示すグラフ 布材の着座面前後方向の引張り剛性と着座面幅方向の引張り剛性との関係を示すグラフ カバー上面の動作説明図 布材のヒステリシスカーブを示すグラフ 布材の引張り剛性の他の試験結果を示すグラフ
符号の説明
1…褥瘡防止用クッション、10…ベース部材、11…上側ベース部材、12…下側ベース部材、20…エアーセル、30…クッションカバー、31…底面カバー、32…側面カバー、33…上面カバー、TP…試験片、CH…把持部材、HB…座骨近傍。

Claims (4)

  1. 所定の着座面に載置されて着座者の臀部を支持する褥瘡防止用クッションの少なくとも上面を覆うクッションカバーにおいて、
    前記褥瘡防止用クッションの上面を覆うカバー上面を、10%以上40%以下の伸張率のうち任意の伸張率における着座面前後方向の引張り剛性がその伸張率における着座面幅方向の引張り剛性に対して1.2倍以上となる布材によって形成した
    ことを特徴とするクッションカバー。
  2. 前記カバー上面を形成する布材を、前記任意の伸張率における着座面前後方向の引張り剛性が120gf/cm以上250gf/cm以下となり、前記任意の伸張率における着座面幅方向の引張り剛性が50gf/cm以上200gf/cm以下となるように構成した
    ことを特徴とする請求項1記載のクッションカバー。
  3. 前記カバー上面を形成する布材を、着座面前後方向に引張り変形させる際の荷重と伸張率との関係が伸張率0%以上40%以下の範囲で略比例関係になるとともに、着座面幅方向に引張り変形させる際の荷重と伸張率との関係が伸張率0%以上40%以下の範囲で略比例関係になるように構成した
    ことを特徴とする請求項1または2記載のクッションカバー。
  4. 前記カバー上面を形成する布材を、伸縮変形時に30%以上のヒステリシスロスが生ずるように構成した
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載のクッションカバー。
JP2007132009A 2007-05-17 2007-05-17 クッションカバー Pending JP2008284163A (ja)

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