JP2008263948A - 新規クロストリジウム・スピーシーズkd13、およびこれを用いた浄化方法 - Google Patents

新規クロストリジウム・スピーシーズkd13、およびこれを用いた浄化方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2008263948A
JP2008263948A JP2007314312A JP2007314312A JP2008263948A JP 2008263948 A JP2008263948 A JP 2008263948A JP 2007314312 A JP2007314312 A JP 2007314312A JP 2007314312 A JP2007314312 A JP 2007314312A JP 2008263948 A JP2008263948 A JP 2008263948A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
strain
purification method
purification
purified
tetrachloromethane
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2007314312A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4577352B2 (ja
Inventor
Kazuhiro Niwa
和裕 丹羽
Kazuya Shimada
和哉 島田
Takuya Otanagi
拓也 小棚木
Masakazu Kusakabe
正和 日下部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority to JP2007314312A priority Critical patent/JP4577352B2/ja
Publication of JP2008263948A publication Critical patent/JP2008263948A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4577352B2 publication Critical patent/JP4577352B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A50/00TECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE in human health protection, e.g. against extreme weather
    • Y02A50/20Air quality improvement or preservation, e.g. vehicle emission control or emission reduction by using catalytic converters
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02CCAPTURE, STORAGE, SEQUESTRATION OR DISPOSAL OF GREENHOUSE GASES [GHG]
    • Y02C20/00Capture or disposal of greenhouse gases
    • Y02C20/30Capture or disposal of greenhouse gases of perfluorocarbons [PFC], hydrofluorocarbons [HFC] or sulfur hexafluoride [SF6]

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Treating Waste Gases (AREA)
  • Processing Of Solid Wastes (AREA)
  • Purification Treatments By Anaerobic Or Anaerobic And Aerobic Bacteria Or Animals (AREA)

Abstract

【課題】従来の微生物を用いた有機塩素化合物に汚染された地下水または土壌の浄化方法では、有機塩素化合物の脱塩素に伴い、副生成物が生成し蓄積するため二次汚染が発生し、迅速に浄化を完了させることが困難であるという課題があった。
【解決手段】テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレン、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタンの浄化において、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 受託番号:FERM P−21115)またはそれを含む浄化製剤を用いると、副生成物の生成がなく、速やかに浄化を遂行できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば有機塩素化合物に汚染された地下水、土壌またはガスの浄化に使用される新規な微生物株およびこれを用いた有機塩素化合物に汚染された地下水、土壌、ガス、廃液、廃ガスなどの浄化方法に関する。
従来、この種の微生物およびそれを用いた有機塩素化合物に汚染された地下水または土壌の浄化方法は、汚染された地下水や土壌中に投与された微生物により有機塩素化合物を脱塩素して無害化する浄化方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
以下、その浄化方法について説明する。
特許文献1に示された方法は、有機塩素化合物の一つであるテトラクロロエチレンに汚染された地下水または土壌に複数の微生物を添加する浄化方法である。まずテトラクロロエチレンを嫌気的に脱塩素しトリクロロエチレンに変換する微生物群を添加する。添加された微生物群によりテトラクロロエチレンから生成されたトリクロロエチレンはトリクロロエチレンを好気的に分解することのできる別の微生物を土壌または地下水中に添加して分解する。つまり、嫌気的な状態で投与した微生物群がテトラクロロエチレンをトリクロロエチレンに変化させ、さらに好気的な状態で投与した微生物がトリクロロエチレンを分解するという浄化方法である。
本来の浄化対象物であるテトラクロロエチレンから生成したトリクロロエチレンはそれ自体も生物に対する有害性があり環境中において浄化すべき対象である。特許文献1の方法においては、テトラクロロエチレンを浄化する過程で副生成物として有害性のあるトリクロロエチレンが生成してしまうため、テトラクロロエチレンから生成したトリクロロエチレンを後から追加した好気性微生物により分解する方法を提案している。トリクロロエチレンを分解するために、土壌または地下水中で好気性微生物を利用するので、本来は嫌気状態である土壌または地下水を、好気性微生物が生育できる環境に変える目的で過酸化水素水を地下水または土壌中に添加する方法が示されている。
また、他の有機塩素化合物としてジクロロメタンは有機溶剤の一種であり、金属加工業においてはプレス加工や切削加工の段階で金属製部品の表面に付着した油脂を、後処理工程で除去するための洗浄剤に使用されることが多い。また塗装の剥離剤およびアクリル樹脂の接着剤としても活用されている。一方、ジクロロメタンは動物実験ではマウスに対する発がん性が示唆されており、環境中の濃度レベルを管理すべき化学物質の一つとされている。環境基本法により定められた地下水の水質汚濁に係る環境基準において、ジクロロメタンの地下水環境基準は1リットルあたり0.02mgとされている。
ジクロロメタンは洗浄剤や剥離剤として優れた特性を示すことから、広く利用されているが、中には不適切な取り扱い方法が原因で地下水や土壌中に漏洩した事例も報告されている。ジクロロメタンは水に溶けやすいので、漏洩したジクロロメタンは地下水や土壌中で広範囲に拡散して汚染を拡大する可能性がある。
従来、ジクロロメタン等を含有する地下水または土壌の浄化方法は、汚染された地下水や土壌中に鉄粉を投与し、ジクロロメタン等の有機塩素化合物を脱塩素化して無害化する浄化方法などが知られている(例えば、特許文献2参照)。
以下、その浄化方法について説明する。
特許文献2に示された方法は、ジクロロメタン等を含有する被浄化物質として、ジクロロメタンに汚染された地下水または土壌に鉄粉を添加する浄化方法である。図15に従来の浄化方法において使用される鉄粉の断面図を示す。図15に示すように鉄粉の表面には黒鉛が析出している。析出した黒鉛と鉄粉の界面でジクロロメタンの脱塩素化が進むとされている。鉄粉とジクロロメタンとの反応方法は、ジクロロメタンを含有する地下水をくみ上げ、鉄粉に接触させる方法や、ジクロロメタンで汚染された土壌を掘削し、掘削された土壌と鉄粉を混合する方法が提案されている。ジクロロメタンは鉄粉表面において脱塩素化される。本方法で用いられている鉄粉の粒子径は数10μm〜数100μmであることから、効率よく反応を進めるためには鉄粉と土壌中に浸透しているジクロロメタンを接触させる必要がある。
特開2000−102377号公報 特開2002−166171号公報
このような従来の浄化方法では、浄化の途中で地下水または土壌中に本来の浄化対象物である有機化合物であるテトラクロロエチレンから生成した副生成物であるトリクロロエチレンが蓄積する。蓄積したトリクロロエチレンが地下水の拡散に伴って移動することで新たな汚染が拡大する可能性もあるという課題があり、浄化対象物から生成した副生成物が蓄積しない方法で浄化できることが要求されている。また従来の浄化方法では、本来の浄化対象物よりも浄化対象物から生成した副生成物の浄化に時間がかかる事が多く、施工費用の増加にもつながっている。さらに、浄化対象物が存在している環境の近傍に存在する人間にとって、浄化対象物とは異なる副生成物に暴露されることはさらに新たな健康リスクが増えることになる。本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、地下水または土壌中に浄化対象物から生成した副生成物が蓄積することなしに浄化することのできる浄化方法を提供することを目的としている。
また、このような従来の浄化方法では、本来の浄化対象から生成した副生成物であるトリクロロエチレンをさらに浄化しなければならず、そのために別の好気性微生物を利用する必要があり、好気性微生物を利用するためには地下水または土壌中の環境を本来の嫌気的環境から酸素含有量の高い好気的環境に変えなければならず、浄化途中で地下水または土壌中のテトラクロロエチレンの減少とトリクロロエチレンの増加を確認した後に地下水または土壌中の嫌気的環境を好気的環境に変更しなければならない。つまり浄化の進行度に応じて地下水または土壌中の環境を本来の嫌気的環境から好気的環境へと変化させなければならないという課題があり、地下水または土壌中での浄化対象物の減少度と副生成物の増加量を監視し、状況に応じて薬剤等を添加しなければならないという課題があり、浄化開始から終了まで一定の環境条件のままで浄化できることが要求されている。また、本来の嫌気的環境から好気的環境へと土壌中の環境を変化させるために投入する過酸化水素水は酸化能力が高く刺激性があるので、その使用には安全上の注意が必要であり、不適切な使用は二次災害を発生させる可能性があるという課題もある。
また、従来の浄化方法では、ジクロロエタンのような有機塩素化合物を効率よく反応させるために、鉄粉と有機塩素化合物を積極的に接触させる必要がある。鉄粉の粒子径は数10μm〜数100μmであることから、地表に鉄粉を散布しただけでは、地下水または土壌中への浸透は容易に進まない。そのためには地下水を汲み上げるか土壌を掘削するなどの作業により有機塩素化合物等を含有する地下水や土壌と鉄粉を混合させる作業が必要であり、ポンプや掘削装置などの大掛かりな設備を使用しなければならないという課題があり、作業工数や費用を削減して簡単に浄化できることが要求されている。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、一定の環境条件のままで容易に地下水または土壌中の有機塩素化合物を浄化することのできる浄化方法を提供することを目的としている。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、大掛かりな設備を必要とせず簡単で安価な方法で塩素化合物を含有する被浄化物質を浄化することのできる浄化方法を提供することを目的としている。
本発明の新規微生物およびこれを用いた浄化方法は上記目的を達成するために、新規微生物としてクロストリジウム・スピーシーズKD13を用いて水、廃水、土壌、ガスまたは廃ガスを浄化する方法としたものである。
この手段により地下水または土壌中に浄化対象物から生成した副生成物が蓄積することなしに浄化することのできる浄化方法が得られる。また、一定の環境条件のままで地下水または土壌を容易に浄化することのできる浄化方法が得られる。
また、本発明の浄化方法は上記目的を達成するために、新規微生物としてクロストリジウム・スピーシーズKD13を含む浄化製剤を用いて有機塩素化合物を含有する被浄化物質を浄化する方法としたものである。
この手段により、大掛かりな設備を必要とせず簡単で安価な方法で有機塩素化合物を含有する被浄化物質を浄化することのできる浄化方法が得られる。
本発明によれば地下水または土壌中に浄化対象物から生成した副生成物が蓄積することなしに浄化することができるので、浄化に伴う二次汚染の発生の恐れが無いという効果のある浄化方法を提供できる。従来の方法では、本来の浄化対象物よりも浄化対象物から生成した副生成物の浄化に時間がかかる事が多いので、浄化に伴う二次汚染の発生の恐れが無いということは、浄化にかかる時間を短縮し、浄化にかかる費用を削減することもできる。また副生成物に暴露されることによる健康リスクを低減することができる。
また、本発明によれば一定の環境条件のままで地下水または土壌を浄化することができるので、地下水または土壌中での浄化対象物の減少度を監視しなくても良いので浄化現場の管理が容易であり、環境条件を変化させるための薬剤等が不要であるという効果のある新規微生物およびこれを用いた浄化方法を提供できる。
また、本発明の浄化製剤の主要な成分である新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)は数μmの大きさであり、地下水や土壌への浸透性や拡散性が優れていることから溶液状の浄化製剤を注入するだけで良く、有機塩素化合物を含有する被浄化物質と浄化製剤の混合のために地下水を汲み上げる作業や土壌を掘削する作業が不要となるので、大掛かりな設備を必要とせず簡単で安価な方法で有機塩素化合物を含有する被浄化物質を浄化することができるという効果のある浄化方法を提供できる。
また、本発明の請求項1と2記載の発明は、有機塩素化合物で汚染された被浄化物質に新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)を作用させて、有機塩素化合物を分解することを特徴とする有機塩素化合物汚染被浄化物質の浄化方法であり、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)により、有機塩素化合物を副生成物が生成することなく脱塩素するという作用を有する。
また、本発明の請求項3記載の発明は、有機化合物で汚染された被浄化物質に新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)を含む浄化製剤により有機塩素化合物を分解することとしたものであり、多量の被浄化物質に対し、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)の増殖特性を高めて脱塩素するという作用を有する。
また、本発明の請求項4記載の発明は、有機塩素化合物がテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレンのうちいずれか一つ以上を含むことを特徴としたものであり、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)は被浄化物質中のテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレンのうちいずれか一つ以上に対して副生成物が生成することなく脱塩素するという作用を有する。
また、本発明の請求項5記載の発明は、有機化合物がテトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタンのうちいずれか一つを含むこととしたものであり、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)は被浄化物質中のテトラクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロエタンのうちいずれか一つ以上に対して副生成物が生成することなく脱塩素するという作用を有する。
また、本発明の請求項6から8記載の発明は、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)を含む浄化製剤を用いて有機塩素化合物を含有する土壌または液体、ガスを浄化するものであり、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)の大きさが数μm程度という特徴から、液体、ガスのみならず、土壌いった狭い間隙にも到達し、浄化を遂行することができるという作用を有する。
また、本発明の請求項9から14記載の発明は、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)の浄化製剤にグルコース、ラクトース、スクロース、マルトース、フルクトースの栄養源が含まれるものであり、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)の増殖を促進させるという作用を有する。
また、本発明の請求項15から20記載の発明は、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)の浄化製剤にグルコース、ラクトース、スクロース、マルトース、フルクトースといった栄養源を吸収する吸収剤が含まれるものであり、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)の増殖を促進し、持続性を高めるという作用を有する。
また、本発明の請求項21から25記載の発明は、被浄化物質に含まれるテトラクロロメタンがクロロホルム、クロロメタン、ジクロロメタン、フルオロカーボン、テトラクロロエチレンの製造過程において生成したものであるとしたものであり、被浄化物質が流動的に発生する製造過程でも、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)を反応させ脱塩素するという作用を有する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
新規クロストリジウム・スピーシーズKD13の単離とその生物学的特性
本発明者らは有機塩素化合物を分解する菌種を探索した結果、過去にトリクロロエチレンが土壌中に漏洩したことのある工場の敷地内の地下水中から、有機塩素化合物を分解する能力を有する新たな菌種としてクロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)を分離することに成功した。この現場では地下水中のトリクロロエチレン濃度の減少が確認されており、トリクロロエチレンなどの有機塩素化合物を分解する菌種の地下水中での存在可能性が予測されていた。そこで本発明者らは前記工場の敷地内に設けられた地下水監視用の井戸から嫌気的に地下水を採取し、その地下水の中からトリクロロエチレンを含む有機塩素化合物を分解する能力を有する菌の採取を目指すこととした。具体的には、あらかじめ地下の帯水層に達する深さまで掘られた井戸の中に、先端に水中ポンプを装着したサンプリング用の配管を挿入した。井戸の最下端には地下水が滞留しているので水中ポンプを稼動させることで、地上に地下水をくみ上げることができる。くみ上げた地下水は、できるだけ空気の混入を防止しながら、速やかにサンプリング用容器に充填して密栓する。
上記方法により採取した地下水を下記に示す組成の寒天培地に塗布した後、嫌気的に培養することでクロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)を含む複数のコロニーが形成される。それぞれのコロニーを形状や色の違いごとに、個別の培養液を充填した容器に再添加する。それぞれのコロニーを添加した培養液を含む容器にはさらに有機塩素化合物を添加し、一定時間培養後に有機塩素化合物の濃度を計測する。有機塩素化合物の濃度が初期濃度に比べて減少した培養液から本発明の新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)を絞り込むことができた。培地や培養温度などの条件は土壌中の菌を分離採取するための定法に従えば良い。なお、土壌中の嫌気環境において有機塩素化合物を分解する能力を有する菌を選択する目的であるために、地下水の採取から培養までは酸素を除去した嫌気状態でおこない、その状態で生成したコロニーから有機塩素化合物分解能を有する菌を選択することが望ましい。また、一度の培養ではコロニーが単一の菌に分離されないこともあるので、寒天平板培地への植え継ぎを繰り返すことで、単一の菌からなるコロニーを得る事ができる。また、培養液中の有機塩素化合物の濃度はヘッドスペース法に基づいてガスクロマトグラフにより計測することができる。また、同様にガスクロマトグラフ質量分析計を用いたとしても培養液中の有機塩素化合物の濃度を計測することができる。
本発明の新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)の性質を以下に示す。
(A)形態的性質
細胞の形及び大きさ:桿菌 幅1.0μm 長さ2.0〜3.0μm
運動性:あり
胞子の有無:あり
(B)培養的性質
下記に組成を記載した寒天培地における生育状態としてコロニーの形態を記載する。
本発明の新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)の培養に用いた培地組成を以下に示す。
培地組成
2HPO4 0.3%
KH2PO4 0.08%
MgSO4・7H2O 0.02%
L−アスパラギン一水和物 0.5%
L−システイン塩酸塩一水和物 0.05%
D−グルコース 1.0%
寒天 1.5% (寒天を添加する場合)
培養時間:48時間
培養温度:25℃
直径:1.0〜2.0mm
色調:白色
形:円形
隆起状態:半球状
周縁:全縁
表面の形状など:スムーズ
透明度:不透明
粘稠度:粘稠性あり
(C)生理学的性質
グラム染色性:陽性
インドールの生成:陰性
デンプンの加水分解:陽性
ウレアーゼ産生:陰性
オキシダーゼ:陰性
カタラーゼ:陰性
酸素に対する態度(好気性、嫌気性の区別など):嫌気性
さらに、下記の糖類からの酸及びガスの生成の有無を記載する。
L−アラビノース 陽性
D−キシロース 陽性
D−グルコース 陰性
D−マンノース 陽性
マルトース 陽性
シュークロース 陽性
ラクトース 陽性
D−トレハロース 陽性
D−ソルビトール 陰性
D−マンニトール 陽性
グリセリン 陽性
サリシン 陰性
D−セロビオース 陽性
D−メレチトース 陽性
D−ラフィノース 陽性
L−ラムノース 陰性
ゼラチン加水分解 陰性
エスクリン加水分解 陽性
(D)新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)の特徴を示す性質
リパーゼ活性 陰性
レシチナーゼ活性 陰性
(E)化学分類学的性質
培養後の新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)菌体から抽出したゲノムDNAを鋳型として、PCRにより16SribosomalRNA遺伝子(以後16SrDNAとする)のうち、5’末端側約500bpの領域を増幅した。その後増幅された塩基配列をシーケンシングし、16SrDNA部分塩基配列を得た。得られた16SrDNAの部分塩基配列を用いて国際塩基配列データベースに対し相同性検索を行ったところ、クロストリジウム・ベイエリンキイ(Clostridium beijerinckii)と16SrDNAの部分塩基配列の相同率が98%であることが判明した。
新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)は上記の諸性質および16SrDNAの部分塩基配列の解析結果からクロストリジウム属に属している可能性が高い。しかし、各種糖の発酵性においては、16SrDNAの部分塩基配列から近縁と思われるクロストリジウム・ベイエリンキイ(Clostridium beijerinckii)の特性とは異なる発酵性を示すことから、該当種を判定することはできず、クロストリジウム・スピーシーズ(Clostridium.sp)とするのが適当であると考えられる。具体的には16SrDNAの部分塩基配列において新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)との相同率が高いクロストリジウム・ベイエリンキイ(Clostridium beijerinckii)と比較すると、D−マンニトール、ラクトース、サッカロースを発酵する特性においては一致しているが、サリシンを発酵する特性においては一致しない。クロストリジウム・ベイエリンキイ(Clostridium beijerinckii)はサリシンを発酵することができるが、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)はサリシンを発酵することができない。
また、後述する実施の形態からも明らかなように、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)は優れた有機塩素化合物分解能を有しており、有害な分解生成物の蓄積が無い状態で地下水または土壌の浄化が可能であることから、本菌を新菌株として、クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)と命名し、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した(受託番号:FERM P−21115)。
以下、新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 受託番号:FERM P−21115)を本菌KD13株として記載することとする。
なお、本菌KD13株は以下に示す液体培地中で増殖させることができる。
2HPO4 0.3%
KH2PO4 0.08%
MgSO4・7H2O 0.02%
L−アスパラギン一水和物 0.5%
L−システイン塩酸塩一水和物 0.05%
D−グルコース 1.0%
(pH6.8)
本菌KD13株は嫌気状態で培養することができる。本菌KD13株を含む上記培養液を滅菌したガラスバイアル瓶に充填した後でブチルゴムセプタムを用いて密栓し、気相部分の酸素を除去することで嫌気培養が可能である。気相部分の酸素を除去する方法は定法に従えばよく、高純度の窒素ガスを用いて気相を置換することで嫌気化してもよく、ブチルゴムセプタムを用いて密栓する前に酸素吸収剤を用いて気相部分の酸素を除去する方法により嫌気化してもよい。
なお、本菌KD13株の培養条件はこの条件に限ったものではなく、菌体が良好に増殖し、有機塩素化合物の分解が可能な条件であれば、別の異なる組成の培養液を用いても同様の効果を得る事ができる。例えばclostridium属の培養に適した強化クロストリジウム培地を用いてもよい。
なお、本菌KD13株は他のclostridium属の菌と同様に、菌体の周囲環境が菌体の生育にとって好ましくない状態に変化すると、菌体内に耐環境性の高い芽胞を形成する事が判明している。環境を浄化する目的などで長期間に渡り本菌KD13株株を保存する必要がある場合は、芽胞状態で保管すれば長期間の安定的な保存が可能になる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態2)
有機塩素化合物で汚染された被浄化物質において、本菌KD13株を接触させることにより有機塩素化合物を分解する方法を以下に示す。
容量20mLのガラスバイアルに滅菌済みの上記培養液10mLを嫌気的に充填し、ブチルゴムセプタムとアルミシールで密栓した。あらかじめ別の容器を用いて同様の組成の培養液中で数日間前培養しておいた本菌KD13株の懸濁液を、前記ガラスバイアル中の培養液に針付き注射器を用いて嫌気的に0.1mL添加し、さらに25℃の恒温槽内に48時間以上静置すると培養液中で本菌KD13株が増殖する。次にガラスバイアルの嫌気状態を保ったまま、針付き注射器を用いて所定の濃度のテトラクロロエチレン/メタノール溶液を培養液中に嫌気的に添加する。ヘッドスペース法に従い、気相中に含まれるテトラクロロエチレンの濃度をガスクロマトグラフにより定量分析することで、液体培地中に含まれるテトラクロロエチレンの濃度を定量可能である。
本菌KD13株を含んだ培養液にテトラクロロエチレンを添加後、培養液が嫌気的に充填されたバイアルの気相中のテトラクロロエチレン濃度を定期的に計測することで、培養液中のテトラクロロエチレンの減少を確認することができる。25℃の恒温槽内に静置されたバイアル内におけるテトラクロロエチレンの残存率の推移を図1に示す。縦軸にはテトラクロロエチレンの残存率をPCE残存率として示している。横軸は培養開始からの時間を示している。液体培地中に添加したテトラクロロエチレンは、本菌KD13株のはたらきにより約200時間後には初期濃度の約45%まで減少している事が分かる。従来の微生物による有機塩素化合物の分解方法ではテトラクロロエチレンの脱塩素に伴いトリクロロエチレンが生成してしまう事が課題であったが、本菌KD13株を用いた場合はテトラクロロエチレンを添加した培養液中にトリクロロエチレンは生成されない。また、テトラクロロエチレンを添加した培養液中にジクロロエチレン、塩化ビニルも生成されない。また、テトラクロロエチレンが減少した培養液において、有機塩素化合物の分解生成物として化合物の構造中に塩素を含有する化合物は生成されない。
なお、本菌KD13株の培養条件は上記内容に限ったものではなく、培養液中において菌体が増殖し、有機塩素化合物を分解できる条件であれば同様の効果を得る事ができる。
(実施の形態3)
同様に、本菌KD13株を用いたトリクロロエチレンの分解について図2を用いて説明する。実施の形態2と同様に、本菌KD13株を25℃の恒温槽内で嫌気的に培養している培養液中に添加したトリクロロエチレンの残存率の推移を図2に示している。縦軸にはトリクロロエチレンの残存率をTCE残存率として示している。横軸は培養開始からの時間を示している。液体培地中に添加したトリクロロエチレンは本菌KD13株のはたらきにより約200時間後には初期濃度の約45%まで減少している事が分かる。実施の形態1と同様に、本菌KD13株を用いた場合はトリクロロエチレンを添加した培養液中にジクロロエチレン、塩化ビニルは生成されない。また、テトラクロロエチレンが減少した培養液において、有機塩素化合物の分解生成物として分子中に塩素を含有する化合物は生成されない。
なお、本菌KD13株の培養条件は上記内容に限ったものではなく、培養液中において菌体が増殖し、有機塩素化合物を分解できる条件であれば同様の効果を得る事ができる。
(実施の形態4)
同様に本菌KD13株を用いたcis−1,2ジクロロエチレンの分解について図3を用いて説明する。実施の形態2と同様に本菌KD13株を25℃の恒温槽内で嫌気的に培養している培養液中に添加したcis−1,2ジクロロエチレンの残存率の推移を図3に示している。縦軸にはcis−1,2ジクロロエチレンの残存率をDCE残存率として示している。液体培地中に添加したcis−1,2ジクロロエチレンは本菌KD13株のはたらきにより約160時間後には初期濃度の約40%まで減少している事が分かる。実施の形態2と同様に、本菌KD13株を用いた場合はcis−1,2ジクロロエチレンを添加した培養液中に塩化ビニルの生成は確認されなかった。また、cis−1,2ジクロロエチレンが減少した培養液において、有機塩素化合物の分解生成物として分子中に塩素を含有する化合物は確認されなかった。
なお、本菌KD13株の培養条件は上記内容に限ったものではなく、培養液中において菌体が増殖し、有機塩素化合物を分解できる条件であれば同様の効果を得る事ができる。
また、本菌KD13株を用いて、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレンを分解する方法の一例を示したが、浄化対象は上記3種の有機塩素化合物に限ったものではなく、さまざまな有機塩素化合物に対して脱塩素能力を発現できる可能性がある。
(実施の形態5)
新規クロストリジウム・スピーシーズKD13のジクロロメタン分解能力
ジクロロメタンで汚染された被浄化物質において、本菌KD13株を接触させることによりジクロロメタンを分解する方法を以下に示す。
容量20mLのガラスバイアルに滅菌済みの上記培養液10mLを嫌気的に充填し、ブチルゴムセプタムとアルミシールで密栓した。あらかじめ別の容器を用いて同様の組成の培養液中で数日間前培養しておいた本菌KD13株の懸濁液を、前記ガラスバイアル中の培養液に針付き注射器を用いて嫌気的に0.1mL添加し、さらに25℃の恒温槽内に48時間以上静置すると培養液中で本菌KD13株が増殖する。次にガラスバイアルの嫌気状態を保ったまま、針付き注射器を用いて所定の濃度のジクロロメタン/メタノール溶液を培養液中に嫌気的に添加する。ジクロロメタン/メタノール溶液を添加した後はガラスバイアルを25℃の恒温槽内に静置しておく。液体培地中に含まれるジクロロメタンの濃度は、ヘッドスペース法に従い気相中に含まれるジクロロメタンの濃度をガスクロマトグラフにより定量分析することで定量可能である。
本菌KD13株を含んだ培養液にジクロロメタンを添加後、培養液が嫌気的に充填されたバイアルの気相中のジクロロメタン濃度を定期的に計測することで、培養液中のジクロロメタンの減少を確認することができる。25℃の恒温槽内に静置されたバイアル内におけるジクロロメタンの残存率の推移を図4に示す。縦軸にはジクロロメタンの残存率を示している。横軸は培養開始からの時間を示している。液体培地中に添加したジクロロメタンは、本菌KD13株の働きにより約100時間後には初期濃度の約60%まで減少している。さらに約400時間後には初期濃度の約40%以下まで減少している事が分かる。さらに約700時間後には初期濃度の約30%まで減少している事が分かる。
なお、本菌KD13株の培養条件は上記内容に限ったものではなく、培養液中において菌体が増殖し、ジクロロメタンを分解できる条件であれば同様の効果を得る事ができる。
また、本菌KD13株によりジクロロメタンを分解すると、培養液中にクロロメタンは検知されない。環境中においてクロロメタンの有害性は少ないとされているが、本菌KD13株によりジクロロメタンを分解することで新たな有害物質を生成する可能性が少ないといえるので、地下水または土壌中のジクロロメタンを分解する際には優れた特性である。
(実施の形態6)
新規クロストリジウム・スピーシーズKD13のテトラクロロメタン分解能力
本菌KD13株とテトラクロロメタンを含む被浄化物質とを接触させた場合の本菌KD13株によるテトラクロロメタンの分解能力を以下に記す。
容量20mLのガラスバイアルに滅菌済みの上記培養液10mLを嫌気的に充填し、ブチルゴムセプタムとアルミシールで密栓した。あらかじめ別の容器を用いて同様の組成の培養液中で数日間前培養しておいた本菌KD13株の懸濁液を、前記ガラスバイアル中の培養液に針付き注射器を用いて嫌気的に0.1mL添加し、さらに25℃の恒温槽内に48時間以上静置すると培養液中で本菌KD13株が増殖する。次にガラスバイアルの嫌気状態を保ったまま、針付き注射器を用いて所定の濃度のテトラクロロメタン/メタノール溶液を培養液中に嫌気的に添加する。テトラクロロメタン/メタノール溶液を添加した後はガラスバイアルを25℃の恒温槽内に静置しておく。液体培地中に含まれるテトラクロロメタンの濃度は、ヘッドスペース法に従い気相中に含まれるテトラクロロメタンの濃度をガスクロマトグラフにより定量分析することで定量可能である。
本菌KD13株を含んだ培養液にテトラクロロメタンを添加後、培養液が嫌気的に充填されたバイアルの気相中のテトラクロロメタン濃度を定期的に計測することで、培養液中のテトラクロロメタンの減少を確認することができる。25℃の恒温槽内に静置されたバイアル内におけるテトラクロロメタンの残存率の推移を図5に示す。縦軸はテトラクロロメタンの残存率を示している。横軸は培養開始からの時間を示している。液体培地中に添加したテトラクロロメタンは、本菌KD13株のはたらきにより約400時間後は初期濃度の約80%までしか減少していないが、約700時間後には初期濃度の約50%にまで減少している事が分かる。
なお、本菌KD13株の培養条件は上記内容に限ったものではなく、培養液中において菌体が増殖し、テトラクロロメタンを分解できる条件であれば同様の効果を得る事ができる。
また、本菌KD13株を上記の液体培地で700時間培養した後、ヘッドスペースのガス組成をガスクロマトグラフによって分析した結果、図6aに示すクロマトグラムが得られた。同様に、クロロメタンの標準液を分析した結果、図6bに示すクロマトグラムが得られた。同様に、テトラクロロメタンとジクロロメタンの混合標準液を分析した結果、図6cに示すクロマトグラムが得られた。図6aに示す通り、700時間後の培養液にはテトラクロロメタンのピークに加え、本菌KD13株が培地中のグルコースを代謝したことに由来する多くのピークが検出されたが、クロロメタンのピーク(図6b)は検出されない。同様に、700時間後の培養液中にジクロロメタンのピーク(図6c)も検出されなかった。このことは、本菌KD13株によるテトラクロロメタンの分解に伴って、ジクロロメタンやクロロメタンといった新たな有害な分解生成物が生成される可能性が極めて少ないことを示しており、土壌または地下水中、廃液や廃ガス中に含まれるテトラクロロメタンを分解する際には非常に優位である。
(実施の形態7)
本菌KD13株を用いた水の浄化方法について図7を用いて説明する。図7に示すように工場1は舗装面2の上面に建設されている。工場の内部で有機塩素化合物3が漏洩した場合、舗装面2の間隙を通過して有機塩素化合物3が地下へ浸透する。工場の地下に透水層4と不透水層5が形成されていた場合、不透水層5の上部に被浄化物質6である水7が地下水として滞留していることがある。工場1から漏洩した有機塩素化合物3は土壌中において浸透しやすい性質を有しているので、重力により透水層4内部を通過して下方に浸透していき、不透水層5の上部に存在する水7に溶解することになる。また、有機塩素化合物3により汚染された水7を観測するための観測井戸8が舗装面2の上部から水7まで透水層4を貫通して設けられている。このように水7が有機塩素化合物3に汚染されている場合、観測井戸8を利用して水7に本菌KD13株を含む培養液を添加することで、水中で本菌KD13株が増殖することができる。その結果、本菌KD13株の増殖に伴い、有機塩素化合物の分解が促進され速やかに浄化を進めることができるものである。
従来例とは異なり有機塩素化合物からの分解生成物である塩素を含有する化合物が蓄積する事が無く、そのような分解生成物を浄化する目的で別の菌株を添加するために嫌気状態を好気状態に変化させる必要は無い。
なお、本菌KD13株と同時に添加する浄化製剤9は上記に記載した組成の培養液でもよく、菌体の増殖に必要な栄養源を含む培養液であれば上記に記載した組成の培養液と異なる組成の培養液を用いても同様の効果を得ることができる。
具体的には、菌体の増殖に必要な栄養源として、グルコースの他に、ラクトース、スクロース、マルトース、フルクトースなどが挙げられ、そのうちいずれか2種類以上を添加しても効率的に菌体を増殖させることができる。浄化製剤9を投与する前から地下水または土壌中に存在する菌を土着菌とすると、投与した浄化製剤9に含まれる栄養源を本菌KD13株ではなく土着菌が先に消費してしまう可能性がある。そこで、2種類以上の栄養源を含むことで、土着菌が消費してしまうことによる影響を減少させることができる。具体的には、土着菌は消費しにくく本菌KD13株が利用しやすい栄養源を組み合わせることで、土着菌による消費の影響を減少させることができる。
また、ここに示した糖以外でも菌体の増殖に必要な栄養源があればその成分を添加することで同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では既に観測井戸8が施工されているものとしたが、もし未施工の場合は透水層4を通過し、有機塩素化合物3に汚染された水7に到達するような配管を施工すればよい。観測井戸8からの培養液の注入は重力による自然滴下と浸透拡散を利用してもよく、ポンプを用いて圧入する方法を用いても良い。
なお、被浄化物質6である水は工場敷地内の地下水に限ったものではなく、有機塩素化合物3を含む工場廃水であっても、廃水内に本菌KD13株を含む培養液を添加することで同様の効果を得ることができる。
また、地下水を浄化する場合には、地中からポンプなどの手段を用いて地下水をくみ上げてもよく、ポンプで揚水して貯留した地下水中に本菌KD13株を含む培養液を添加することで浄化を進めることができるものである。
また、揚水した地下水を本菌KD13株が担持された微生物担体を充填した容器内に通水することで浄化を進めることができるものである。菌体と被浄化物質6を含む水7を接触させることができれば同様の効果を得ることができるものである。
また、本菌KD13株を含む培養液を添加する場合には、事前に別の培養液中で本菌KD13株の活性を高めておくことで速やかに浄化することができるものである。具体的には本菌KD13株の活性を高める為に、培養液中に微量の有機塩素化合物3を添加する方法などが考えられる。なお本菌KD13株を含む培養液を環境中に添加する前に、培養液中に添加した有機塩素化合物3を削減または除去しておく必要がある。
また、本菌KD13株を添加するための手法として、培養液中の菌体を添加するだけでなく、乾燥状態の菌体を散布する方法を用いても同様の効果を得ることができる。具体的には、本菌KD13株は耐乾燥性のある芽胞を形成するので、芽胞状態の菌体として散布することができる。散布された芽胞状態の菌体は水中に浸漬されることで発芽するので菌体が増殖し、有機塩素化合物の分解が促進されることになる。
また、本菌KD13株を含む浄化製剤9は地下水または土壌中への注入の直前に栄養源を添加混合してもよく、本菌KD13株または本菌KD13株の芽胞を先に地下水または土壌中に注入した後で栄養源を注入しても良い。本菌KD13株の芽胞は粒子径が小さいことから浸透性に優れているので、地下水または土壌中において速やかに広範囲に拡散させることが可能である。
また、事前に観測井戸8からの観測により水7の環境条件が本菌KD13株の生育に適していない環境条件であった場合は、本菌KD13株を投与する前に水7の環境を変化させることで本菌KD13株の生育を促進させることができ、有機塩素化合物の分解を促進することができるものである。
(実施の形態8)
本菌KD13株を用いた土壌の浄化方法について図8を用いて説明する。図8に示すように工場1は舗装面2の上面に建設されている。工場1の内部で有機塩素化合物3が漏洩した場合、舗装面2の間隙を通過して有機塩素化合物3が地下へ浸透する。工場の地下に透水層4と不透水層5が形成されていた場合、不透水層5の上部に被浄化物質6である土壌10が汚染土壌として滞積することになる。工場1から漏洩した有機塩素化合物3は土壌中において浸透しやすい性質を有しているので、重力により下方に浸透していき、透水層4を通過して不透水層5の上部に停滞することになる。また、有機塩素化合物3により汚染された土壌10を観測するための観測井戸8が舗装面2の上部から土壌10まで透水層4を貫通して設けられている。
このように土壌10が有機塩素化合物3に汚染されている場合、観測井戸8を利用して土壌10に本菌KD13株を含む培養液を添加することで、土壌10中で本菌KD13株が増殖することができる。その結果、本菌KD13株の増殖に伴い、有機塩素化合物の分解が促進され速やかに土壌10の浄化を進めることができるものである。
なお、本菌KD13株を用いた場合は従来例とは異なり有機塩素化合物からの分解生成物である塩素を含有する化合物が土壌中に蓄積する事が無く、分解生成物を浄化する目的で別の菌株を添加するために嫌気状態を変化させる必要は無い。
なお、本菌KD13株と同時に添加する培養液は上記に記載された組成の培養液でもよく、菌体の増殖に必要な栄養源を含む培養液であれば上記記載の培養液と異なる組成の培養液を用いても同様の効果を得ることができる。
また、土壌を浄化する場合には土壌を掘削して別の場所に搬送してから本菌KD13株を含む培養液を添加することで土壌を浄化する方法を用いてもよい。
(実施の形態9)
本菌KD13株を用いたガスの浄化方法について図9を用いて説明する。図9に示すように、カラム11内には本菌KD13株を担持させた担体12が充填されている。カラム11は2ヶ所の開口部を有し、一方の開口部にはポンプ13が装着され、もう一方の開口部からガス14を吸引することができる。ガス14は実際には容易に目視できるものではないが、説明を容易にするために明確な形状のあるものとして記載した。開口部から吸引されたガス14は担体12の空隙を通過し、もう一方の開口部に装着されたポンプ13を通過し、排出口15から排出される。ガス14が担体12の空隙を通過する際に担体12の表面に存在する本菌KD13株の働きにより、ガス14に含まれる有機塩素化合物が分解されるものである。担体12への本菌KD13株の担持方法については、本菌KD13株の培養液に多孔質の担体12を浸漬することで担体12表面に本菌KD13株を担持させる方法が適当であるが、この方法に限ったものではなく、本菌KD13株の活性を維持したまま担体12の表面または内部に本菌KD13株を固定化することができれば同様の効果を得ることができる。
また、担体12の素材についても特に限定するものではなく、本菌KD13株を固定化できる構造を有していれば、活性炭や合成高分子などでも同様の効果を得ることができる。
また、本菌KD13株を担持した担体12において本菌KD13株の活性を維持するために、本菌KD13株の栄養源となる成分を含む培養液を担体12に含浸させて用いても良い。栄養源としては上記に記載した培地の成分等が望ましいが、本菌KD13株の活性維持に必要な成分であれば他の成分であっても同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態ではポンプ13の構成について詳細は記載しなかったが、担体12が充填されたカラム11の内部にガスを通過させる能力を有するポンプ13であればどのような構成のポンプを用いても良い。本菌KD13株を担持した担体12とガスの接触時間が、本菌KD13株とガス14に含まれる有機塩素化合物の作用に十分な時間に設定できる流量を有するポンプが望ましい。同様にカラム11の構造についても詳細は記載していないが、本菌KD13株を担持した担体12を内部に保持し、また外部に流出しないような構造で、さらに開口部からガス14を吸引できるような構造であればどのような形状であっても同様の効果を得ることができる。一般的にはステンレスやガラスのカラムなど、耐食性に優れた材料で作られたカラムが用いられることが多い。本菌KD13株を担持した担体12の表面状態は本菌KD13株を用いたガス14の浄化方法において重要な監視条件であるので、ガラスカラムであれば、本菌KD13株を担持した担体12の表面状態を観察しやすいので好ましい。
また、本菌KD13株をガス14の浄化に用いる場合、ガス14の浄化を継続していると、本菌KD13株を担持した担体12の表面に本菌KD13株からの代謝物が滞積する可能性がある。担体12表面での代謝物の滞積は本菌KD13株の活性を維持するためには望ましくない条件であるので、適宜担体12の表面を洗浄することで本菌KD13株の活性を維持することができる。
なお、担体12表面を洗浄する方法としては、カラム11内に洗浄液を充填し、一定時間経過後に排出することで担体12表面を洗浄する事が可能である。洗浄液には界面活性剤等を添加してもよいが、担体12表面から本菌KD13株を脱落させることがない特性の洗浄液を用いることが望ましい。
ガス14の浄化方法はこの方法に限ったものではなく、本菌KD13株とガス14に含まれる有機塩素化合物を作用させる方法であれば同様の効果を得ることができる。具体的には本菌KD13株を含む培養液中にバブリング装置などでガス14を通過させることでも同様の効果を得る事ができるものである。
また、本菌KD13株は嫌気性菌であることからガス14中に多くの酸素が含まれる場合は酸素を事前に除去することでカラム11内の担体12に保持された菌の活性を長期間維持することができるものである。
また、浄化対象であるガス14は有機塩素化合物に汚染された土壌中から真空ポンプにより吸引したガスや、有機塩素化合物使用施設から排出されるガスなどの有機塩素化合物を含有しているものであれば同様の効果を得ることができる。
(実施の形態10)
本菌KD13株を用いた廃液の浄化方法について図10を用いて説明する。図10に示すようにジクロロメタンを含む廃液16が容器17に蓄えられている。ジクロロメタンは金属加工業において金属部品の洗浄剤として用いられることが多い。また、塗装の剥離剤やアクリル樹脂の接着剤としても利用されている。本実施の形態では洗浄剤や剥離剤としての用途を終え廃液として保管する場合、またアクリル樹脂の接着作業において余剰になった接着剤を廃液として保管する場合の処理方法について示す。連続的に廃液が発生しない場合や、廃液の発生量が一定ではない場合など、ジクロロメタンの廃液は一旦容器に回収して、一定量が蓄積された段階で専門の産業廃棄物処理業者に委託することが多い。しかしジクロロメタンの廃液を産業廃棄物処理業者へ委託する前に、ジクロロメタンが容器から揮散して周囲の環境を汚染することがある。したがって、廃液を保管している容器内部でジクロロメタンを安全に処理することが望まれている。
図10に示すようにジクロロメタンを含む廃液16に本菌KD13株を含む浄化製剤9を添加する。ジクロロメタンが高濃度の場合は本菌KD13株の増殖が阻害される場合があるので廃液16を水で適当な濃度に希釈しても良い。
なお、本菌KD13株を含む浄化製剤9は上記に記載した組成のようにグルコースを含む培養液でもよく、菌体の増殖に必要な栄養源を含む浄化製剤9であれば上記に記載した組成の培養液と異なる組成の浄化製剤9を用いても同様の効果を得ることができる。具体的には、菌体の増殖に必要な栄養源として、グルコースの他に、ラクトース、スクロース、マルトース、フルクトースなどが挙げられ、そのうちいずれか2種類以上を添加しても効率的に菌体を増殖させることができる。
また、ここに示した糖以外でも菌体の増殖に必要な栄養源があればその成分を添加することで同様の効果を得ることができる。
本実施の形態では浄化製剤9として本菌KD13株を含む溶液を示したが、浄化製剤9の形状は溶液に限ったものではなく、本菌KD13株を芽胞状態で乾燥した粉末状の浄化製剤9を利用しても良い。その場合は本菌KD13株の栄養源も同様に粉末状で供給し、さらに水分のみを別に供給してもよく、本菌KD13株の増殖に必要な栄養源や水分が得られる方法であればどのような浄化製剤9の形状であってもよい。
(実施の形態11)
本菌KD13株を用いた有機塩素化合物を含有する液体の浄化方法について図11を用いて説明する。有機塩素化合物を含有する液体として、洗浄剤や剥離剤としての用途を終えた廃液16、またアクリル樹脂の接着作業において余剰になった接着剤である廃液16を想定している。図11に示すように吸収剤18と本菌KD13株を含む浄化製剤9が処理容器19に収納されている。本実施の形態では浄化製剤9を粉末状の浄化製剤9とした。吸収剤18は多孔質の物質でありセルロースやポリアクリル酸ナトリウムなどの高分子材料やシリカゲルやゼオライトなどの無機材料や活性炭など様々な素材を採用することができる。特に本菌KD13株の増殖場所として適当な大きさの空隙を有する素材や、ジクロロメタンとの親和性の高い素材が適している。
処理容器19に容器17にあるジクロロメタンを含む廃液16を注入すると浄化製剤9が含まれている本菌KD13株の働きによりジクロロメタンが分解される。廃液16中のジクロロメタンが高濃度の場合は本菌KD13株の増殖が阻害される場合があるので廃液16を水で適当な濃度に希釈しても良い。
本実施の形態では吸収剤18を備えたことにより本菌KD13株が付着して増殖する場所を提供することができ、またジクロロメタンを吸収し吸収剤18内に濃縮することができるので、本菌KD13株によるジクロロメタンの分解を促進することができるものである。ジクロロメタンを吸収することで濃縮する効果は本実施の形態のように浄化製剤9に廃液16を添加する方法だけでなく、廃液中に浄化製剤9を添加する場合でも同様な効果を得ることができる。
なお、本実施の形態では浄化製剤9における吸収剤18の含有量については特定しなかったが、ジクロロメタンを含む廃液の量に合わせて吸収剤18の含有量を設定すればよい。
また、本実施の形態では浄化製剤9に廃液を添加する方法を示したが、それ以外にも同様に地下水または土壌中に吸収剤18を含む浄化製剤9を添加しても同様の効果を得ることができる。地下水または土壌中に井戸などを利用して吸収剤18を含む浄化製剤9を添加することができる。地下水または土壌中に添加された吸収剤18を含む浄化製剤9は地下水または土壌中のジクロロメタンを含有する被浄化物質6を吸収濃縮し浄化製剤9に含まれる本菌KD13株により分解を促進することができる。地下水または土壌中に吸収剤18を含む浄化製剤9を添加する場合は、吸収剤18の特性としてジクロロメタンとの親和性だけでなく、吸水力に優れた吸収剤18を利用しても良い。ジクロロメタンは水溶性が高いので、地下水または土壌中での水の吸収に伴いジクロロメタンを吸収することができるものである。
(実施の形態12)
新規クロストリジウム・スピーシーズKD13を用いたテトラクロロメタン含有廃液の浄化方法
本菌KD13株を用いたテトラクロロメタンを含有する廃液の浄化方法について図11、図12を用いて説明する。まず、図11に示すようにクロロホルム、ジクロロメタン、クロロメタンやフルオロカーボン、テトラクロロエチレンといった物質を製造するときに生成されたテトラクロロメタンを含む廃液16が容器17に蓄えられている。テトラクロロメタンを含む廃液16に本菌KD13株を含む浄化製剤9を添加する。テトラクロロメタンが高濃度の場合は本菌KD13株の増殖が阻害される場合があるので廃液16を水で適当な濃度に希釈しても良い。ここで、浄化製剤9は液状のものが廃液16内での分散性が高く好ましいが、これに限定されず、顆粒、ペレット、打錠、粉状であっても良い。そのような場合は、廃液16中に入れた後、攪拌する、または加熱する等の方法により浄化製剤9の成分を分散させる操作を行っても良い。
また、図12に示すように、処理容器19に本菌KD13株を含む浄化製剤9を吸着させた担体12を充填し、テトラクロロメタンを含む廃液16を流入パイプ20を介して処理容器19内に流入せしめ、担体12と接触させる。これにより、浄化製剤9に含まれる本菌KD13株とテトラクロロメタンが接触し、分解が行われる。テトラクロロメタンが分解されて環境基準値以下の濃度になった後、廃液16は処理容器19の上部に設けられたポンプ13により汲み上げられ、排出パイプ21を通過して河川や海洋といった環境中に放出される。
ここで、浄化の対象となる、テトラクロロメタンが含まれる廃液16はクロロホルム、ジクロロメタン、クロロメタンやフルオロカーボン、テトラクロロエチレンといった物質を製造するときに生成された場合に限らず、テトラクロロメタンが遺漏した地下水といった環境中の水を採取してきたものであっても良い。
また、担体12の例としては、活性炭のように多孔質なものが好ましいが、これに限定されず、本菌KD13株を含む浄化製剤9が吸着可能なものであれば良い。
また、廃液16に含まれるテトラクロロメタンの濃度により、処理容器19内での滞留時間、即ち本菌KD13株とテトラクロロメタンとの接触時間を調節するのが好ましい。テトラクロロメタン含有廃液の量が多い場合は、浄化製剤9を追加で処理容器19に投入することにより対応できる。
なお、本菌KD13株を含む浄化製剤9は上記に記載した組成のようにグルコースを含むものが望ましいが、菌体の増殖に必要な栄養源を含有しておれば、これに限定されない。また、テトラクロロメタンの浄化を繰り返し、長時間行うことにより、本菌KD13株を含む浄化製剤9に含まれる栄養源が枯渇した場合は、流入パイプ20からテトラクロロメタンを含む廃液16とともに栄養源を処理容器19へ送液することで、本菌KD13株のテトラクロロメタン分解活性を高めることができる。
(実施の形態13)
新規クロストリジウム・スピーシーズKD13を用いたテトラクロロメタン含有廃ガスの浄化方法
本菌KD13株を用いたテトラクロロメタンを含有する廃ガスの浄化方法について図13、図14を用いて説明する。
図13に示すように、処理容器19に液状またはゲル状に調整した本菌KD13株を含む浄化製剤9を充填する。クロロホルム、ジクロロメタン、クロロメタンやフルオロカーボン、テトラクロロエチレンといった物質を製造するときに生成されたテトラクロロメタンを含む廃ガス22を処理容器19の下部に設けられた流入パイプ20から流入させる。テトラクロロメタンを含む廃ガス22は泡状となり、処理容器19の上部まで昇っていく間に本菌KD13株と接触し、分解が行われる。分解が十分に行われ、テトラクロロメタンの含有量が環境基準値以下に下がったガスは、ポンプ13、排出パイプ21により大気中に放出される。ここで、泡状のテトラクロロメタンを含む廃ガス22と浄化製剤9に含まれる本菌KD13株との接触時間を上げて分解の効率化を図るためには、処理容器19に浄化製剤9を追加で投入する方法に加え、テトラクロロメタンを含む廃ガス22の泡の粒径は小さく、かつ処理容器19の高さは長くするのが好ましく、廃ガス22に含まれるテトラクロロメタン濃度に応じて調節する必要がある。
図14に示すように、処理容器19に本菌KD13株を含む浄化製剤9を吸着させた担体12を充填し、流入パイプ20を介して処理容器19内に流入したテトラクロロメタンを含む廃ガス22を担体12と接触せしめる。これにより、本菌KD13株とテトラクロロメタンが接触し、分解が行われる。テトラクロロメタンが分解されて環境基準値以下の濃度になった後、廃ガス22は処理容器19の上部に設けられたポンプ13により汲み上げられ、排出パイプ21を通過して大気中に放出される。
ここで、担体12の例としては活性炭のように多孔質なものが好ましいが、これに限定されず、本菌KD13株を含む浄化製剤9が吸着可能なものであれば良い。
なお、本菌KD13株を含む浄化製剤9は上記に記載した組成のようにグルコースを含むものが望ましいが、菌体の増殖に必要な栄養源を含有しておれば、これに限定されない。
また、浄化を繰り返し、長時間行うことで本菌KD13株を含む浄化製剤9に含まれる栄養源が枯渇した場合は、流入パイプ20からテトラクロロメタンを含む廃ガス22とともに栄養源を処理容器19へ流入させることで、担体12へ吸着した本菌KD13株のテトラクロロメタン分解活性を高めることができる。
これらの方法の浄化対象となる、テトラクロロメタンが含まれる廃ガス22はクロロホルム、ジクロロメタン、クロロメタンやフルオロカーボン、テトラクロロエチレンといった物質を製造するときに生成される場合に限らず、テトラクロロメタンが遺漏した土壌や地下水を加熱、曝気してテトラクロロメタンを揮発させたガスといった環境試料由来のものであっても良い。
本発明の新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13)を用いることで有機塩素化合物に汚染された地下水または土壌またはガスを浄化する用途に適用できる。
本発明の実施の形態2におけるテトラクロロエチレンの減少を示す図 本発明の実施の形態3におけるトリクロロエチレンの減少を示す図 本発明の実施の形態4におけるジクロロエチレンの減少を示す図 本発明の実施の形態5におけるジクロロメタンの減少を示す図 本発明の実施の形態6におけるテトラクロロメタンの減少を示す図 本発明の実施の形態6におけるクロロメタン、ジクロロメタンの生成の有無を示す図 本発明の実施の形態7における水の浄化方法を示す図 本発明の実施の形態8における土の浄化方法を示す図 本発明の実施の形態9におけるガス浄化方法を示す図 本発明の実施の形態10における廃液の浄化方法を示す図 本発明の実施の形態11および12における廃液の浄化方法を示す図 本発明の実施の形態12における廃液の浄化方法を示す図 本発明の実施の形態13における廃ガスの浄化方法を示す図 本発明の実施の形態13における廃ガスの浄化方法を示す図 従来例の浄化化方法において使用される鉄粉の断面を示す図
符号の説明
1 工場
2 舗装面
3 有機塩素化合物
4 透水層
5 不透水層
6 被浄化物質
7 水
8 観測井戸
9 浄化製剤
10 土壌
11 カラム
12 担体
13 ポンプ
14 ガス
15 排出口
16 廃液
17 容器
18 吸収剤
19 処理容器
20 流入パイプ
21 排出パイプ
22 廃ガス
101 鉄粉
102 黒鉛

Claims (25)

  1. 新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)。
  2. 有機化合物で汚染された被浄化物質に新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)を作用させて、有機塩素化合物を分解することを特徴とする浄化方法。
  3. 有機化合物で汚染された被浄化物質に新規クロストリジウム・スピーシーズKD13(clostridium sp.KD13 特許生物寄託センター受託番号:FERM P−21115)を含む浄化製剤を作用させて有機塩素化合物を分解することを特徴とする浄化方法。
  4. 有機化合物がテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレンのうちいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項2または3記載の浄化方法。
  5. 有機化合物がテトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタンのうちいずれか一つを含むことを特徴とする請求項2または3記載の浄化方法。
  6. 被浄化物質が液体であることを特徴とする請求項2から5いずれか1項に記載の浄化方法。
  7. 被浄化物質が土壌であることを特徴とする請求項2から5いずれか1項に記載の浄化方法。
  8. 被浄化物質がガスであることを特徴とする請求項2から5いずれか1項に記載の浄化方法。
  9. 浄化製剤がグルコースを含むことを特徴とする請求項3記載の浄化方法。
  10. 浄化製剤がラクトースを含むことを特徴とする請求項3記載の浄化方法。
  11. 浄化製剤がスクロースを含むことを特徴とする請求項3記載の浄化方法。
  12. 浄化製剤がマルトースを含むことを特徴とする請求項3記載の浄化方法。
  13. 浄化製剤がフルクトースを含むことを特徴とする請求項3記載の浄化方法。
  14. 浄化製剤がグルコース、ラクトース、スクロース、マルトース、フルクトースのうちいずれか2種類以上を含むことを特徴とする請求項3記載の浄化方法。
  15. 浄化製剤が吸収剤を含むことを特徴とする請求項3または10から14いずれか1項に記載の浄化方法。
  16. 吸収剤がセルロースであることを特徴とする請求項15記載の浄化方法。
  17. 吸収剤がポリアクリル酸ナトリウムであることを特徴とする請求項15記載の浄化方法。
  18. 吸収剤がシリカゲルであることを特徴とする請求項15記載の浄化方法。
  19. 吸収剤がゼオライトであることを特徴とする請求項15記載の浄化方法。
  20. 吸収剤が活性炭であることを特徴とする請求項15記載の浄化方法。
  21. 被浄化物質に含まれるテトラクロロメタンがクロロホルムの製造過程において生成したものであることを特徴とする請求項5から8いずれか1項に記載の浄化方法。
  22. 被浄化物質に含まれるテトラクロロメタンがクロロメタンの製造過程において生成したものであることを特徴とする請求項5から8いずれか1項に記載の浄化方法。
  23. 被浄化物質に含まれるテトラクロロメタンがジクロロメタンの製造過程において生成したものであることを特徴とする請求項5から8いずれか1項に記載の浄化方法。
  24. 被浄化物質に含まれるテトラクロロメタンがフルオロカーボンの製造過程において生成したものであることを特徴とする請求項5から8いずれか1項に記載の浄化方法。
  25. 被浄化物質に含まれるテトラクロロメタンがテトラクロロエチレンの製造過程において生成したものであることを特徴とする請求項5から8いずれか1項に記載の浄化方法。
JP2007314312A 2006-12-12 2007-12-05 新規クロストリジウム・スピーシーズkd13、およびこれを用いた浄化方法 Expired - Fee Related JP4577352B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007314312A JP4577352B2 (ja) 2006-12-12 2007-12-05 新規クロストリジウム・スピーシーズkd13、およびこれを用いた浄化方法

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006333969 2006-12-12
JP2007046492 2007-02-27
JP2007074207 2007-03-22
JP2007314312A JP4577352B2 (ja) 2006-12-12 2007-12-05 新規クロストリジウム・スピーシーズkd13、およびこれを用いた浄化方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008263948A true JP2008263948A (ja) 2008-11-06
JP4577352B2 JP4577352B2 (ja) 2010-11-10

Family

ID=40044356

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007314312A Expired - Fee Related JP4577352B2 (ja) 2006-12-12 2007-12-05 新規クロストリジウム・スピーシーズkd13、およびこれを用いた浄化方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4577352B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008229579A (ja) * 2007-03-23 2008-10-02 Matsushita Electric Ind Co Ltd 土壌及び地下水の浄化方法
JP2008238027A (ja) * 2007-03-27 2008-10-09 Matsushita Electric Ind Co Ltd 土壌及び地下水の浄化方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000262174A (ja) * 1999-03-18 2000-09-26 Takekichi Ito 動物の調教装置
JP2005262107A (ja) * 2004-03-19 2005-09-29 Internat Center For Environmental Technol Transafer 有機塩素化合物で汚染された物質の浄化方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000262174A (ja) * 1999-03-18 2000-09-26 Takekichi Ito 動物の調教装置
JP2005262107A (ja) * 2004-03-19 2005-09-29 Internat Center For Environmental Technol Transafer 有機塩素化合物で汚染された物質の浄化方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008229579A (ja) * 2007-03-23 2008-10-02 Matsushita Electric Ind Co Ltd 土壌及び地下水の浄化方法
JP2008238027A (ja) * 2007-03-27 2008-10-09 Matsushita Electric Ind Co Ltd 土壌及び地下水の浄化方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4577352B2 (ja) 2010-11-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10364415B2 (en) 1,4-dioxane-degrading bacteria culture method, medium, and 1,4-dioxane treatment method using 1,4-dioxane-degrading bacteria
Sivakumar et al. Bioremediation studies on reduction of heavy metals toxicity
Guerrero-Barajas et al. Enhanced sulfate reduction and trichloroethylene (TCE) biodegradation in a UASB reactor operated with a sludge developed from hydrothermal vents sediments: process and microbial ecology
JP4839665B2 (ja) シス−1,2−ジクロロエチレン分解微生物群の培養方法、該培養方法によって得られた培養液、並びに地下水及び/又は土壌の浄化方法
JP5186169B2 (ja) 帯水層中の土壌、地下水の浄化方法
CN1173835A (zh) 通过重复厌氧/好氧处理净化被ddt污染的土壤
JP6103518B2 (ja) 揮発性有機塩素化合物の脱塩素化能を有する新規微生物およびその利用
JP4577352B2 (ja) 新規クロストリジウム・スピーシーズkd13、およびこれを用いた浄化方法
Yu et al. Comparison of trichloroethylene reductive dehalogenation by microbial communities stimulated on silicon-based organic compounds as slow-release anaerobic substrates
Brennan et al. Chitin and corncobs as electron donor sources for the reductive dechlorination of tetrachloroethene
JP4770767B2 (ja) 土壌及び地下水の浄化方法
US7160461B2 (en) Water purification with catalytic surfaces and microorganisms
CN106520631A (zh) 一种复合菌剂及其在污水处理中的应用
KR20130116318A (ko) 1,4-디옥산 함유 폐수의 처리 방법 및 처리 장치
Xing et al. Quantitative analysis of TCE biodegradation pathway in landfill cover utilizing continuous monitoring, droplet digital PCR and multi-omics sequencing technology
De Marines et al. Degradation of 1, 2-dichloroethane in real polluted groundwater by using enriched bacterial consortia in aerobic and anaerobic laboratory-scale conditions
Han et al. Liquid-gas phase transition enables microbial electrolysis cell to treat organic pollution and synchronously remediate nitrate-contaminated groundwater via hydrogenotrophic denitrification
El-Bestawy et al. Effect of nutrient amendments and sterilization on mineralization and/or biodegradation of 14C-labeled MCPP by soil bacteria under aerobic conditions
Xiaoran et al. Removal of di-n-butyl phthalate using immobilized microbial cells
CN105884039A (zh) 一种用于处理高浓度苯酚废水的微生物固化床反应器
CN205856279U (zh) 一种适用于中水回用中挥发性有机物分离装置
US7615153B1 (en) Microbial based chlorinated ethene destruction
JP2005270970A (ja) テトラクロロエチレンの分解方法および脱塩素微生物
Hauck et al. Anaerobic degradation of 1, 2-dichloropropane in batch and continuous culture
De Wildeman et al. Reductive biodegradation of 1, 2-dichloroethane by methanogenic granular sludge: perspectives for in situ remediation

Legal Events

Date Code Title Description
RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

Effective date: 20091127

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100727

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100809

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130903

Year of fee payment: 3

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4577352

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130903

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees