JP2008261282A - アルマイト処理された部品を有する燃料ポンプと、その燃料ポンプ部品のアルマイト処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な耐食性や耐摩耗性を有することはさることながら、耐剥離性が高く、かつクラックが発生し難いアルマイト処理された部品を有する燃料ポンプと、その燃料ポンプ部品のアルマイト処理方法を提供する。
【解決手段】ポンプボデーなどの純アルミニウムまたはアルミニウム合金製の燃料ポンプ部品を、弱酸である蓚酸浴中でアルマイト処理して表面にアルマイト層102を形成する。次いで酢酸ニッケル水溶液中に浸漬して、アルマイト層の表面に実質的に金属塩被膜が形成されない程度にアルマイト層の細孔103を金属塩105で封孔処理することを特徴とする。
【選択図】図5

Description

本発明は、封孔処理されたアルマイト層が形成された部品を有する燃料ポンプと、その燃料ポンプ部品のアルマイト処理方法に関する。
純アルミニウムやアルミニウム合金からなるアルミニウム製品は、軽量で加工が容易であるなどの利点から種々の分野で広く利用されている。反面、アルミニウム製品は柔らかく傷つき易いという欠点がある。したがって、耐食性、耐摩耗性、硬度の向上などを目的として、表面に酸化被膜を形成させる陽極酸化処理(アルマイト処理)が施されることが多い。アルマイト処理は、処理対象物を陽極として電解浴中で電解処理することで基材表面を酸化させ、徐々に耐食性、耐摩耗性、及び硬度などに優れた酸化アルミニウム(Al)被膜を生成させる処理であり、この酸化アルミニウム被膜をアルマイト層またはアルマイト被膜という。アルマイト層は、基材中のアルミニウムが酸化されて形成されていくが、ケイ素やマグネシウム等のアルミニウム以外の金属元素の存在や電気の流れなどにより、厚み方向に細長い細孔を多数有するポーラスな構造となる。このようなポーラス構造のアルマイト層のままでは、硬度、耐食性、及び耐磨耗性を十分に発現し切れず、アルミニウム製品の品質低下を招いてしまう。そのため、当該細孔を封孔して製品化することが一般的である。このような封孔処理の先行技術として特許文献1がある。
特許文献1では、上記のような課題を解決するために、アルマイト層が形成されたアルミニウム製品を各種金属のフッ化物水溶液に浸漬することで、アルマイト層の細孔を封孔すると共に、アルマイト層の表面に金属被膜を形成させている。
特開2005−97707号公報
特許文献1では、アルマイト層を確実に各種金属塩で封孔することで耐食性を向上させており、同時にアルマイト層の表面に金属被膜を形成させることで保護膜性能も付与している。しかしながら、アルマイト層の表面に金属塩被膜が形成されていると、製品の剥離性が悪化してしまう。すなわち、当該金属塩被膜はアルマイト層の表面に堆積するように析出形成されていくので、アルマイト層の細孔内部に充填された金属塩がアンカー効果を奏し得るものの、アルマイト層と金属塩被膜との接合強度は強くない。また、被膜金属塩同士の結合性もアルマイト層に比べて高くはないので耐剥離性に乏しく、金属塩被膜によってはアルマイト層の硬度よりも低くなる。
これでは、例えば回転可能に配されたインペラによって燃料を汲み上げる燃料ポンプの構成部品であるポンプボデーやポンプカバーであれば、特許文献1のようなアルマイト処理を施すだけでは十分な機能を発揮させることは難しい。このような燃料ポンプは、インペラの回転に伴う昇圧作用を利用して燃料を汲み上げているが、インペラを回転して燃料が攪拌されることに伴うキャビテーションの発生は避けられない。キャビテーションとは、高速で流れる水などの流体の中に圧力の低い部分が気化して蒸気の空洞(キャビティ)が生じ、極めて短時間でこの空洞が崩壊して消滅する現象のことをいう。キャビティの崩壊による衝撃力は数MPaから数GPaにも及ぶといわれており、この衝撃力によって構成部品が破損するなどの問題がある。このような事情の下、アルミニウム製品に良好な耐剥離性を有する被膜が形成されていなければ、インペラとの摺動摩擦やキャビテーションの衝撃などによって当該被膜が少なくとも部分的に剥離してしまい、腐食や動作不良の原因となってしまう。
また、特許文献1ではアルマイト層へのクラックの発生には着目していないので、アルマイト処理に使用する電解浴は特に規定されておらず、硫酸等の強酸や蓚酸等の弱酸など、各種の電解浴を使用できるとしている。しかし、硫酸アルマイト処理の場合、残留応力等によるクラックの発生を防止するためには、一般的に0℃に近い低温で処理する必要があるので温度管理が煩雑であり、かつ余分なエネルギーコストも必要とする。しかも、硫酸アルマイトの細孔形成の特性上、クラックの発生防止には根本的に限界がある。具体的には、硫酸浴でアルマイト層を形成させた場合、硫酸は強酸であることからアルマイト層は比較的急速に形成されるので、靭性が低くなって残留応力によるクラックの発生率が高くなる。このときのアルマイト層には、図4に示すごとく周面が平滑な微細孔が多数緻密に形成されるので応力分散が困難であり、しかも微細孔同士の間隔が狭いのでアルマイト層自体の硬度も下がる。これでは、例えばかしめ固定など外部から応力が負荷される場合にも、クラックが発生する危険性が高い。なお、図4は、強酸浴中でアルマイト処理したときのアルマイト層の構造を概念的に示した要部拡大断面図である。図3〜6において、符号101はアルミニウム基材を、符号102はアルマイト層を、符号103は細孔を、それぞれ示す。
また、特許文献1には、その他の封孔処理方法として水蒸気封孔法や純水沸騰水封孔法の存在も開示されている。これらの封孔法は、アルマイト層を熱水などに晒すことによって、アルマイト層の表面に水和物であるベーマイト(Al・HO)が形成されることにより、図6に示すごとく各細孔の周面が膨張し封孔されることになる。しかし、図6によく示されるように、この場合のアルマイト層の表面は凸凹になっているので、ポンプカバーやポンプボデーのような燃料ポンプ部品に適用すると、燃料中のベーパー(気泡)を補足し易くなり、燃料の流動が阻害されるいわゆるベーパーロックが発生して燃料ポンプの機能低下や動作不良を誘発してしまう。しかも、形成されたベーマイトは強い衝撃等によって剥がれ落ち易く、耐剥離性が必要とされる部品には適さない。
そこで本発明は、上記課題を解決するものであって、良好な耐食性や耐摩耗性を有することはさることながら、耐剥離性が高く、かつクラックが発生し難いアルマイト処理された部品を有する燃料ポンプと、その燃料ポンプ部品のアルマイト処理方法を提供する。
そのために本願発明は、外壁を構成するハウジング内に、純アルミニウムまたはアルミニウム合金製のポンプカバーおよびポンプボデーと、前記ポンプカバーとポンプボデーとの間に回転可能に配されたインペラとを備え、前記インペラの回転によって前記ポンプカバー及びポンプボデーに形成されたポンプ流路を通して燃料を汲み上げる燃料ポンプにおいて、前記ポンプボデーの全面に、金属塩で封孔された弱酸浴によるアルマイト層が形成されているが、該アルマイト層の表面には実質的に封孔金属塩の被膜が形成されていないことを特徴とする燃料ポンプである。ここで、「実質的に被膜が形成されていない」とは、アルマイト層の表面に金属塩被膜が形成されていないことはもちろん、厳密には被膜が形成されているが、保護膜性能は有せずその存在が無視できる程度の極微量である場合も意味する。なお、封孔処理により被膜が形成されていない場合でも、アルマイト層の表面に金属塩が堆積していることを否定するものではない。
また、ポンプボデーなどの燃料ポンプ部品のアルマイト処理方法は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金製の部品を弱酸浴中でアルマイト処理して表面にアルマイト層を形成し、次いで該アルマイト層の形成された部品を金属塩水溶液中に浸漬して、アルマイト層の表面に実質的に金属塩被膜が形成されない程度に前記アルマイト層の細孔を金属で封孔処理することを特徴とする。
アルミニウム製品を弱酸浴でアルマイト処理すると、基材は緩慢的に酸化されていくので、ある程度の靭性を有するアルマイト層が形成される。図3は、弱酸浴中でアルマイト処理したときのアルマイト層の構造を概念的に示した要部拡大断面図であり、図5は、金属封孔されたアルマイト層を概念的に示した要部拡大断面図である。符号104は、各細孔から枝分かれ状に形成された微細孔であり、符号105は、アルマイト層の細孔内に充填された金属塩である。アルマイト層が緩慢形成されることによって、図3に示すごとく比較的径大の細孔が互いに比較的広い間隔をもって形成されていく。そのとき、アルマイト層はアルミニウム製品の表面に残存する潤滑油等由来のタールやピッチなどを取り込むように形成されていくので、各細孔から枝分かれ状に形成された微細孔を有することがある。そのうえで、アルマイト層の形成された部品を金属塩水溶液中に浸漬することで、図5に示すごとく金属塩が各細孔内に充填されて封孔されることになる。
上記の場合、中でも弱酸浴としてはシュウ酸が、金属塩としては酢酸ニッケルがそれぞれ好適であり、アルマイト層の細孔内に金属塩が析出し始めてからの封孔処理時間は10分以上60分未満とすることが好ましい。また、アルマイト層の膜厚は10〜50μmとすることが好ましい。アルマイト処理を施す燃料ポンプ部品としては、例えばポンプボデーを挙げることができ、これにハウジングをかしめ固定することができる。
本発明によれば、アルミニウム製の部品を弱酸浴中でアルマイト処理しているので、有意な靭性を有するアルマイト層を形成でき、低温処理などの特別な温度設定によることなくクラックの発生を有効に防止することができる。また、このアルマイト層は応力分散が可能なポーラス構造となっていること、及びアルマイト層自体の硬度も有意に高いことなどにより、残留応力や外部応力等によってもクラックの発生を回避させることができる。したがって、アルマイト処理されたポンプボデーにハウジングをかしめ固定した場合でも、当該かしめ固定部分におけるクラックの発生を避けることができる。
そのうえで、アルマイト層の細孔を金属塩により封孔しているので、例えばベーマイトが剥離するなどの問題なく耐剥離性を向上させることができる。さらに、アルマイト層の表面に封孔金属塩による被膜も実質的に存在しないので、このような金属塩被膜が剥がれるなどの問題もなく耐剥離性をより向上させることができる。このように、アルマイト処理条件と封孔処理条件とを的確に制御することで、例えば公知の蓚酸アルマイト処理と酢酸ニッケル封孔処理とを単に組み合わせただけでは達成できなかった効果を得ることができる。
蓚酸アルマイト処理や酢酸ニッケル封孔処理はポピュラーな処理方法の1つなので、従来にはない特別な方法によらずとも簡便かつ容易にクラックの発生防止と耐剥離性の向上とを達成することができる。アルマイト層の膜厚が10〜50μmであれば、効率よく良好な耐食性、耐摩耗性、及び耐剥離性を発現できる。
先ず、図1及び図2を参照しながら、本発明のアルマイト処理部品を備える一般的な燃料ポンプについて説明する。したがって、ここで説明するような構成の燃料ポンプに限られるものではなく、本発明のアルマイト処理が施された部品を備える燃料ポンプであれば、その他種々の燃料ポンプも含まれることは言うまでも無い。図1は、燃料ポンプ1の一部破断側面図である。図2は、燃料ポンプ1のハウジング10内に配されたポンプボデー20、インペラ30、及びポンプカバー40の相対位置関係を示した分解斜視図である。この燃料ポンプ1は、主として自動車の燃料供給経路に設置される部材であって、その内部下方にインペラ30を挟んで対向状に設置されたポンプボデー20とポンプカバー40とを備える。
図1において燃料ポンプ1は、ほぼ円筒状で外壁を構成する金属製のポンプハウジング10と、ポンプハウジング10の上部に配置された電動モーター部2と、ポンプハウジング10の下端部に取り付けられたポンプ部3とから構成されている。そして、このポンプ部3が、燃料ポンプ1の底壁を構成するアルミニウムダイカスト製のポンプボデー20と、これの上方に対向状に配されたアルミニウムダイカスト製のポンプカバー40と、ポンプボデー20とポンプカバー40との間に回転可能に配された合成樹脂製のインペラ30とで構成されている。燃料ポンプ1は、自動車の燃料タンクの内部空間にほぼ垂直状に設置される。電動モーター部2における回転子11の駆動軸12は、ポンプカバー40に軸受13を介して回転可能に支持されており、駆動軸12の下方部にインペラ30が係合されている。インペラ30は、ほぼ円板形状を成しかつその外周縁部に複数の羽根溝31(図2参照)を有している。
燃料ポンプ1の底壁を構成するポンプボデー20の外側に、ポンプハウジング10がこれの下端縁をかしめることによって固定されている。ポンプボデー20とポンプカバー40には、インペラ30の外周部に沿うほぼC字形状の凹溝21・41が形成されている(図2参照)。この凹溝21・41は、インペラ30を回転した際に燃料が流通する流路4となる。図1における断面では表れていないが、流路4はポンプボデー20に形成されたインレットポート22と連通されている。インレットポート22の下部にはフィルタ(図示せず)が設けられている。このフィルタを燃料タンクの底部に当接させ、図1に示す状態で燃料タンクに燃料ポンプ1が取り付けられる。また、流路4はポンプカバー40に形成されたアウトレットポート(図示せず)を通じてポンプハウジング10の内部空間14と連通されている。
そして、燃料を汲み上げるには電動モーター部2に通電してこれを駆動させ、駆動軸12とともに羽根溝31を有するインペラ30を回転させる。すると、流路4内に昇圧作用が生じることで燃料タンク内の燃料がインレットポート22から流路4内に吸入される。燃料は、流路4内を流れながら昇圧された後、アウトレットポートからポンプハウジング10の内部空間14へ圧送されていくことになる。
このような燃料ポンプにおいて、インペラと摺接することで耐摩耗性が必要であり、燃料が流通すると共にキャビテーションの衝撃を受けることで耐食性及び耐剥離性が必要であり、かつハウジングがかしめ固定される、アルミニウム製のポンプボデー20の全面に少なくともアルマイト処理を施す必要がある。同様の理由から、ポンプカバー40にもアルマイト処理を施すことが好ましい。但し、ポンプカバー40の場合は少なくともインペラとの対向面にアルマイト層を有していればよく、必ずしもその全面をアルマイト処理する必要はない。アルマイト処理を施すポンプボデー20やポンプカバー40は、アルミニウム鋳造品やアルミニウムダイカスト品のようなアルミニウム製品であればその素材は特に限定されず、純アルミニウムのほか、Al−Cu系、Al−Mn系、Al−Si系、Al−Mg系、及びAl−Zn系の合金を使用することができる。
アルマイト処理は弱酸の電解浴により行なう。その電解浴としては、ケイ酸、リン酸、ホウ酸、蓚酸、クエン酸又はマロン酸等を使用することができるが、中でも、蓚酸が好ましい。アルマイト処理自体は周知の方法により行なえばよく、常温において電解処理できる。アルマイト層の厚みは、求められる耐食性や耐摩耗性等により適宜設定することができるが、10〜50μm程度が好ましい。アルマイト層の厚みが10μmより小さいと、良好な耐摩耗性や耐食性を担保できない。一方、アルマイト層の厚みが50μmより大きいと、細孔も大きくなるのでクラックが発生し易くなったり、処理時間に対する物性の向上率が低くコストの無駄になる。より好ましくは15〜40μmであり、さらに好ましくは20〜30μmである。
アルマイト処理によりアルマイト層を形成させたら、次いで封孔処理を行なう。当該封孔処理は、各細孔内に各種の金属塩を充填することで行なう。但し、アルマイト層の表面には実質的に金属塩被膜が形成されない範囲で行なうことが重要である。この処理条件を満たす限り、封孔金属としては、ニッケル、コバルト、カドミウム、クロム、亜鉛、銅、ケイ素、アルミニウム及び鉛などを挙げることができ、アルマイト層をこれら金属の酢酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、塩化物、硝酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、ふっ化物、スルファミン酸塩などの金属塩水溶液に浸漬することで封孔処理を行うことができる。代表的には、酢酸ニッケル法、重クロム酸法、ケイ酸ナトリウム法などを挙げることができるが、中でも酢酸ニッケル法による封孔処理が最も好ましい。
処理液中の金属塩の濃度としては、アルマイト層に対して化学的悪影響を与えない範囲で適宜設定できるが、例えば酢酸ニッケル法の場合は、2〜10g/l、好ましくは約4〜7g/l程度である。この場合、水溶液にほう酸を5〜20g/l程度に添加し、かつpHを5〜6の弱酸性に設定しておくとよい。このように調製された処理溶液に、アルマイト層が形成された部品を所定時間浸漬することで、封孔処理する。その際、処理溶液は70〜90℃に加熱しておく。処理温度が低いと処理時間が長くなるだけでなく、良好な耐摩耗性や耐剥離性を得られない。逆に、処理温度は90℃を越えても良いが、エネルギーコストの無駄になる。
そして、確実に細孔を封孔できるが、実質的に金属被膜が形成されないようにするために、アルマイト層の厚さなどに合わせて浸漬時間を調整することが重要となる。例えば上記処理条件による酢酸ニッケル法では、金属塩が細孔内部に析出し始めてからの処理時間を10分以上60分未満とする。実際の浸漬時間はこれよりも長くなるが、処理溶液温度や金属塩濃度などによって異なる。金属塩が細孔内部に析出し始めてからの処理時間が10分未満であると細孔が確実に封孔されず、60分以上であるとアルマイト層の表面に金属被膜が形成されて耐剥離性が低下する。好ましくは、金属塩が細孔内部に析出し始めてからの処理時間が10分以上30分以下であり、より好ましくは10分以上20分以下である。また、同様の理由による別の観点からは、アルマイト層の膜厚に対する処理時間を0.4〜2.4min/μm、好ましくは0.4〜1.2min/μm、より好ましくは0.4〜0.8min/μmとする。
(実施例)
ADC6製のポンプボデーを脱脂洗浄した後、濃度3%、温度20℃の蓚酸浴にて60分間アルマイト処理を行ない、膜厚25μmのアルマイト層を形成した。次いで、流水洗浄したアルマイト処理ポンプボデーを、濃度5g/lの酢酸ニッケルと、濃度40g/lのホウ酸とを含有し、ph5〜6、温度70℃の水溶液に浸漬した。細孔内に酢酸ニッケルが析出し始めてから15分後にポンプボデーを処理溶液から取り出した。なお、アルマイト層の膜厚は、電磁膜厚計(パーマスコープ)によって測定した。
(比較例)
実施例と同じポンプボデーを使用して、表1に示す各条件にて封孔処理された膜厚25μmのアルマイト層を形成させた。なお、各比較例の蓚酸アルマイト処理及び酢酸ニッケル封孔方法は、実施例と同じ条件により行い、その他の各処理条件は以下の通りである。また、表中の「封孔処理時間」は、実際に反応が起きてからの時間である。すなわち、酢酸ニッケル封孔の場合は細孔内に酢酸ニッケルが析出し始めてからの時間であり、水蒸気封孔法の場合は細孔周面にベーマイトが形成され始めてからの時間である。したがって、浸漬時間ではないことに留意されたい。
硫酸アルマイト処理:
濃度15%の硫酸浴にて、温度を約5℃に保ちながら60分間アルマイト処理した。
水蒸気封孔法:
0.2〜0.5MPaの加圧蒸気により封孔処理した。
蓚酸アルマイト処理した比較例1、2も、封孔処理する前にアルマイト層の表面を観測してもクラックは発生していなかった。一方、硫酸アルマイト処理をした比較例3、4のアルマイト層の表面には、僅かながらクラックの発生が確認された。
Figure 2008261282
(耐剥離性試験)
上記のようにして得られた実施例及び各比較例のキャビテーションの衝撃に対する剥離性を調べた。その試験方法は、十分な量の水中に実施例等を沈め、キャビテーション・エロージョン試験機(超音波工業社製)の電歪振動子からの20KHzの電歪振動を増幅ホーンにて増幅させ、水中にキャビテーションを人工的に発生させてこれに晒し、1時間後のアルマイト層の剥離面積を計測した。その結果を図7に示す。なお、剥離面積は画像処理装置により計測した。
図7の結果を検討すると、同じ条件で封孔処理した比較例1と比較例3、及び実施例と比較例4を比べると、蓚酸アルマイト処理した比較例1や実施例の方が、硫酸アルマイト処理した比較例3や比較例4よりも剥離面積が小さい。これにより、硫酸浴によってアルマイト処理するよりも蓚酸浴によってアルマイト処理する方が、耐剥離性が高いことがわかる。また、同じ時間封孔処理した比較例1、比較例2、比較例3とを比べると、水蒸気法によって封孔処理した比較例1や比較例3よりも、酢酸ニッケル法によって封孔処理した比較例2の方が剥離面積が小さい。これにより、ベーマイトを生成させて封孔処理するよりも、金属塩を充填して封孔処理する方が、耐剥離性が高いことがわかる。さらに、封孔処理時間のみが異なる実施例と比較例2とを対比すると、実施例は剥離面積が十分に小さい。これに対し、比較例2の剥離面積は比較例1より若干小さい程度である。これは、実施例にはアルマイト層の表面に金属被膜が実質的に形成されていないが、比較例2には金属被膜が形成されており、この金属被膜が剥離したことによると考えられる。したがって、酢酸ニッケル法による封孔処理時間は、60分を上限とすることが好ましいことがわかる。
燃料ポンプの一部破断側面図である。 ポンプボデー、インペラ、ポンプカバーの相対位置関係を示した分解斜視図である。 弱酸アルマイト処理したアルマイト層の要部拡大断面図である。 強酸アルマイト処理したアルマイト層の要部拡大断面図である。 金属封孔されたアルマイト層の要部拡大断面図である。 水蒸気法で封孔処理したアルマイト層の要部拡大断面図ある。 耐剥離性試験結果を示す棒グラフである。
符号の説明
1 燃料ポンプ
10 ハウジング
20 ポンプボデー
30 インペラ
40 ポンプカバー
101 基材
102 アルマイト層
103 細孔
104 微細孔
105 充填金属

Claims (6)

  1. 外壁を構成するハウジング内に、純アルミニウムまたはアルミニウム合金製のポンプカバーおよびポンプボデーと、前記ポンプカバーとポンプボデーとの間に回転可能に配されたインペラとを備え、前記インペラの回転によって前記ポンプカバー及びポンプボデーに形成されたポンプ流路を通して燃料を汲み上げる燃料ポンプにおいて、
    前記ポンプボデーの全面に、金属塩で封孔された弱酸浴によるアルマイト層が形成されているが、該アルマイト層の表面には実質的に封孔金属塩の被膜が形成されていないことを特徴とする燃料ポンプ。
  2. 前記弱酸浴が蓚酸であり、
    前記金属塩が酢酸ニッケルであり、
    前記ハウジングは、前記ポンプボデーの外面にかしめ固定されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ。
  3. 前記アルマイト層の膜厚が、10〜50μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料ポンプ。
  4. 燃料ポンプ部品のアルマイト処理方法であって、
    純アルミニウムまたはアルミニウム合金製の部品を弱酸浴中でアルマイト処理して表面にアルマイト層を形成し、
    該アルマイト層の形成された部品を金属塩水溶液中に浸漬して、アルマイト層の表面に実質的に金属被膜が形成されない程度に前記アルマイト層の細孔を金属塩で封孔処理することを特徴とする燃料ポンプ部品のアルマイト処理方法。
  5. 前記弱酸浴が蓚酸であり、
    前記金属塩が酢酸ニッケルであり、
    前記燃料ポンプ部品が、該燃料ポンプの外壁を構成するハウジングがかしめ固定されるポンプボデーであることを特徴とする請求項3に記載の燃料ポンプ部品のアルマイト処理方法。
  6. 前記封孔処理を、前記アルマイト層の細孔内に金属塩が析出し始めてから10分以上60分未満の範囲で行なうことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の燃料ポンプ部品のアルマイト処理方法。

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