JP2008260906A - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 熱可塑性ポリウレタン系樹脂の特徴を維持しながら、柔軟性、耐摩耗性、圧縮永久ひずみ特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)が、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の存在下で、ヒドロシリル基含有化合物により溶融混練下で架橋された組成物と、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)とからなる、熱可塑性エラストマー組成物により達成される。
【選択図】 なし
【解決手段】 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)が、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の存在下で、ヒドロシリル基含有化合物により溶融混練下で架橋された組成物と、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)とからなる、熱可塑性エラストマー組成物により達成される。
【選択図】 なし
Description
本発明は、特定のイソブチレン系熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリウレタン系樹脂を含有してなる熱可塑性樹脂組成物、特に柔軟性、耐摩耗性、圧縮永久歪み特性に優れた新規な熱可塑性エラストマー組成物に関する。
近年ゴム的な軟質材料であって、加硫工程を要せず、熱可塑性樹脂と同様な成形加工性を有する熱可塑性エラストマーが注目されている。このような熱可塑性エラストマーには現在、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリスチレン系等の種々のポリマーが開発され、市販されている。
中でも、熱可塑性ポリウレタン系樹脂は、ゴム弾性、耐摩耗性、耐薬品性、耐寒性などの物性に優れた素材であるが、柔軟性に乏しく、それ自体の硬さを下げる方法によって柔軟性を持たせた場合、合成段階での反応硬化が遅く、粘着性が高く、融点が低いために、効率良く製造することが難しい。
また、熱可塑性ポリウレタン系樹脂に可塑剤や他の熱可塑性樹脂等を添加することで、低硬度の熱可塑性エラストマーを得る方法がある。中でも特定のイソブチレン系ブロック共重合体を軟質化剤として使用することで、柔軟性、透明性、耐油性等に優れる熱可塑性樹脂組成物が得られるが、耐摩耗性、圧縮永久歪み特性が不十分な場合があった。
特開2005−187721公報
本発明の目的は、熱可塑性ポリウレタン樹脂の特徴を維持しながら、柔軟性、耐摩耗性、圧縮永久ひずみ特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ねた結果、特定のイソブチレン系熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、を含有してなる熱可塑性樹脂組成物が前記課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち本発明は、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)が、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の存在下で、ヒドロシリル基含有化合物により溶融混練下で架橋された組成物と、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)とからなる、熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様としては、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)100重量部に対し、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の含有量が0.5〜900重量部であることを特徴とするイソブチレン系熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)と芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の合計量100重量部に対し、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)の含有量が5〜900重量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様としては、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)が、アリルトリメチルシラン中のアリル基と塩素の置換反応により末端にアリル基が導入されたものであることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)の数平均分子量が、1,000〜500,000であり、1分子あたり少なくとも0.2個のアルケニル基を末端に有する重合体であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)が、イソブチレンを50重量%以上含む重合体であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)が、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b1)とイソブチレン系重合体ブロック(b2)からなるブロック共重合体であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
好ましい実施態様としては、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)を含むことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形性、柔軟性、耐摩耗性、圧縮永久歪み特性に優れているため、パッキング材、シール材、ガスケット、栓体などの密封用材、自動車内外装材、クッション材、日用品、電気部品、電子部品、スポーツ部材、グリップまたは緩衝材、電線被覆材、包装材、各種容器、文具部品として有効に使用することができる。特に、耐油性、低硬度、低圧縮永久ひずみ特性が要求されるパッキング、ガスケット用途に好適である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)が、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の存在下で、ヒドロシリル基含有化合物により溶融混練下で架橋された組成物と、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)とからなるものである。
本発明のイソブチレン系重合体(A)とは、イソブチレンが50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占める重合体のことをいう。イソブチレン系重合体(A)、またはイソブチレンを主体とする重合体ブロック中の、イソブチレン以外の単量体は、カチオン重合可能な単量体成分であれば特に限定されないが、芳香族ビニル類、脂肪族オレフィン類、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン等のジエン類、ビニルエーテル類、β−ピネン等の単量体が例示できる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
イソブチレン系重合体(A)の数平均分子量に特に制限はないが、1,000から500,000が好ましく、5,000から200,000が特に好ましい。数平均分子量が1,000未満の場合、機械的な特性等が十分に発現されず、また、500,000を超える場合、成形性等の低下が大きい。
本発明のアルケニル基とは、本発明の目的を達成するための(A)成分の架橋反応に対して活性のある炭素−炭素二重結合を含む基であれば特に制限されるものではない。具体例としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環式不飽和炭化水素基を挙げることができる。
本発明のイソブチレン系重合体(A)の末端へのアルケニル基の導入方法としては特開平3−152164号公報や特開平7−304909号公報に開示されているような、水酸基などの官能基を有する重合体に不飽和基を有する化合物を反応させて重合体に不飽和基を導入する方法が挙げられる。またハロゲン原子を有する重合体に不飽和基を導入するためにはアルケニルフェニルエーテルとのフリーデルクラフツ反応を行う方法、ルイス酸存在下アリルトリメチルシラン等との置換反応を行う方法、種々のフェノール類とのフリーデルクラフツ反応を行い水酸基を導入した上でさらに前記のアルケニル基導入反応を行う方法などが挙げられる。さらに米国特許第4316973号、特開昭63−105005号公報、特開平4−288309号公報に開示されているように単量体の重合時に不飽和基を導入することも可能である。この中でもアリルトリメチルシラン中のアリル基と塩素の置換反応により末端にアリル基を導入したものが、確実性の点から好ましい。
本発明のイソブチレン系重合体(A)の末端のアルケニル基の量は、必要とする特性によって任意に選ぶことができるが、架橋後の特性の観点から、1分子あたり少なくとも0.2個のアルケニル基を末端に有する重合体であることが好ましい。0.2個未満であると架橋による改善効果が十分に得られない場合がある。なお、本発明において、イソブチレン系重合体(A)の末端のアルケニル基の量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量と、重合体の1H−NMRスペクトル図より算出される。
本発明に使用される芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)は、特に制限はないが、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b1)とイソブチレン系重合体ブロック(b2)からなるブロック共重合体であることが好ましい。また芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)は、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b1)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(b3)からなるブロック共重合体、及び/又はこれを水素添加して得られるブロック共重合体であることが好ましい。また芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)は、芳香族ビニル系化合物とイソブチレン系重合体のランダム共重合体であってもよい。また芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)は、芳香族ビニル系化合物と共役ジエン化合物を主体とする重合体のランダム共重合体及び/又はこれを水素添加して得られる共重合体であることが好ましい。
芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体中の芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン、ジビニルベンゼン、 N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。上記化合物の中でもコストと物性及び生産性のバランスからスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデンが好ましく、その中から2種以上選んでもよい。
共役ジエン化合物としては1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレンなどが挙げられるが、工業的に利用でき、また物性の優れた水添ジエン系重合体を得るには、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の構造としてはランダム共重合体でもAB型あるいはABA型などのブロック共重合体でも特に制限なく使用できる。好ましい構造としては、例えばイソブチレン−ビニル芳香族系化合物ランダム共重合体、イソブチレン−ビニル芳香族系化合物ブロック共重合体、ビニル芳香族系化合物−イソブチレン−ビニル芳香族系化合物三元ブロック共重合体、イソプレン−ビニル芳香族系化合物ランダム共重合体、イソプレン−ビニル芳香族系化合物ブロック共重合体、ビニル芳香族系化合物−イソプレン−ビニル芳香族系化合物三元ブロック共重合体、ブタジエン−ビニル芳香族系化合物ランダム共重合体、ブタジエン−ビニル芳香族系化合物ブロック共重合体、ビニル芳香族系化合物ブタジエン−ビニル芳香族系化合物ブロック共重合体、およびこれら共重合体中の共約ジエン系重合体部分が水添された物である。これらの中でも、イソブチレン系重合体の特徴を保持しやすいという点から、イソブチレン−ビニル芳香族系化合物ランダム共重合体、イソブチレン−ビニル芳香族系化合物ブロック共重合体、ビニル芳香族系化合物−イソブチレン−ビニル芳香族系化合物三元ブロック共重合体が好ましく、引張強度が高くなるという点から、ビニル芳香族系化合物−イソブチレン−ビニル芳香族系化合物三元ブロック共重合体が最も好ましい。
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体の割合に関しては、特に制限はないが、物性と加工性のバランスから、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体が5〜80重量%であることが好ましく、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体が10〜40重量%であることが特に好ましい。
芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の数平均分子量にも特に制限はないが、15,000から500,000が好ましく、40,000から400,000が特に好ましい。数平均分子量が15,000未満の場合、引張特性などの機械的な特性が不十分となる傾向があり、また、500,000を超える場合、成形性の低下が著しい傾向がある。
上記芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の配合量は末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)100重量部に対し、0.5〜900重量部、好ましくは1〜100重量部である。芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の配合量が900重量部を越えると、圧縮永久歪み特性が悪化する傾向にある。また0.5重量部を下回ると成形性の低下が著しくなる傾向にある。
本発明において、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)は、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の存在下で、ヒドロシリル基含有化合物により溶融混練下で架橋されてなる組成物を形成している。このような手法は、一般に動的架橋と称され、通常の化学架橋(静的架橋)と異なり、溶融混練下で架橋反応が進行することで、生成したポリマーネットワークが剪断力により分断され、架橋後も熱可塑性を示すことが特徴である。本来、イソブチレン系重合体には架橋性の官能基がなく、また、架橋反応として汎用的に用いられるラジカル反応では分解反応が起こりやすいという傾向があった。本発明では、イソブチレン系重合体の末端にアルケニル基を導入することで、ヒドロシリル化反応を可能とし、ヒドロシリル基含有化合物を架橋剤として使用する架橋反応を可能としている。このヒドロシリル化反応には、副生成物の発生がなく、また不要な副反応を起こさない等の利点がある。
本発明の末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系重合体(A)の架橋物を得るためのヒドロシリル基含有化合物としては特に制限はなく、各種のものを用いることができる。すなわち、一般式(I)または(II)で表される鎖状ポリシロキサン;
R1 3SiO−[Si(R1)2O]a−[Si(H)(R2)O]b−[Si(R2)(R3)O]c−SiR1 3 (I)
HR1 2SiO−[Si(R1)2O]a−[Si(H)(R2)O]b−[Si(R2)(R3)O]c−SiR1 2H (II)
(式中、R1およびR2は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R3は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を示す。aは0≦a≦100、bは2≦b≦100、cは0≦c≦100を満たす整数を示す。)
一般式(III)で表される環状シロキサン;
R1 3SiO−[Si(R1)2O]a−[Si(H)(R2)O]b−[Si(R2)(R3)O]c−SiR1 3 (I)
HR1 2SiO−[Si(R1)2O]a−[Si(H)(R2)O]b−[Si(R2)(R3)O]c−SiR1 2H (II)
(式中、R1およびR2は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R3は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を示す。aは0≦a≦100、bは2≦b≦100、cは0≦c≦100を満たす整数を示す。)
一般式(III)で表される環状シロキサン;
末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)とヒドロシリル基含有化合物は任意の割合で混合することができるが、反応性の面から、アルケニル基のヒドロシリル基に対するモル比が5〜0.2の範囲にあることが好ましく、さらに、2.5〜0.4であることが特に好ましい。モル比が5以上になると架橋が不十分でべとつきがあり、圧縮永久歪み特性が悪化する傾向が見られ、また、0.2より小さいと、架橋後も活性なヒドロシリル基が大量に残るので、加水分解により水素ガスが発生し、クラックやボイドを生じやすい傾向がある。
イソブチレン系重合体(A)とヒドロシリル基含有化合物との架橋反応は、2成分を混合して加熱することにより進行するが、反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒を添加することができる。このようなヒドロシリル化触媒としては特に限定されず、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤、および遷移金属触媒が挙げられる。
ラジカル開始剤としては特に限定されず、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼンのようなジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのようなアシルペルオキシド、過安息香酸−t−ブチルのような過酸エステル、過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシルのようなペルオキシジカーボネート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなペルオキシケタール、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾイソブチロバレロニトリルのようなアゾ化合物等を挙げることができる。
また、遷移金属触媒としても特に限定されず、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジアルケニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh3)3,RhCl3,RuCl3,IrCl3,FeCl3,AlCl3,PdCl2・H2O,NiCl2,TiCl4等が挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもかまわない。触媒量としては特に制限はないが、(A)成分のアルケニル基1molに対し、10−1〜10−8molの範囲で用いるのが良く、好ましくは10−3〜10−6molの範囲で用いるのがよい。10−8molより少ないと架橋が十分に進行しない傾向がある。また、10−1mol以上用いても明確な効果は見られないため、経済性の面から、10−1molよりも少ないことが好ましい。これらのうち、相溶性、架橋効率、スコーチ安定性の点で、白金ビニルシロキサンが最も好ましい。
末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)が、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の存在下で、ヒドロシリル基含有化合物により溶融混練下で架橋された組成物は、以下に例示する方法によって製造することができる。
例えば、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉型または開放型のバッチ式混練装置を用いて製造する場合は、予め混合した架橋剤以外の全ての成分を混練装置に投入し、均一になるまで溶融混練し、次いでそれに架橋剤を添加して架橋反応が十分に進行したのち、溶融混練を停止する方法が挙げられる。
また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続式の溶融混練装置を用いて製造する場合は、架橋剤以外の全ての成分を予め押出機などの溶融混練装置によって均一になるまで溶融混練した後ペレット化し、そのペレットに架橋剤をドライブレンドした後、更に押出機やバンバリーミキサーなどの溶融混練装置で溶融混練して、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)を動的に架橋する方法や、架橋剤以外のすべての成分を押出機などの溶融混練装置によって溶融混練し、そこに押出機のシリンダーの途中から架橋剤を添加して更に溶融混練し、末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)を動的に架橋する方法などが挙げられる。
溶融混練を行うに当たっては、140〜210℃の温度範囲が好ましく、150〜200℃の温度範囲がさらに好ましい。溶融混練温度が140℃よりも低いと、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)が溶融せず、十分な混合ができない傾向があり、210℃よりも高いと、イソブチレン系重合体(A)の熱分解が起こり始める傾向がある。
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)としては、エステル系、エーテル系、カーボネート系等、各種の熱可塑性ウレタン系樹脂を使用することができる。熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)としては、例えば、(イ)有機ジイソシアネート、(ロ)鎖伸張剤、(ハ)高分子ポリオールからなる熱可塑性ポリウレタン系樹脂が挙げられる。熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)は、いかなる方法で製造しても良く、例えば上記(イ)成分と予め均一に混合した(ロ)成分および(ハ)成分とを高速攪拌混合して、これを離型処理したバット上に流延して、必要に応じて200℃以下の温度で反応させることにより製造するか、或いは、(イ)成分と(ロ)成分を加えて末端イソシアネート基のプレポリマーとした後、(ハ)成分を加えて高速攪拌混合し、これを離型処理したバット上に流延して、必要に応じて200℃以下の温度で反応させることにより製造するなど、従来より公知の技術を利用できる。
有機ジイソシアネート(イ)としては、従来より公知のものを適宜使用することができるが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどを単独であるいはこれらを二以上組み合わせて使用できる。
鎖伸張剤(ロ)としては、分子量が500より小さいジヒドロキシ化合物を使用するのが好ましい。このようなものとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,2’−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールなどを単独であるいはこれらを二以上組み合わせて使用できる。
高分子ポリオール(ハ)としては、平均分子量が500〜4000のジヒドロキシ化合物を使用するのが好ましい。このようなものとしては、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。ポリエステルジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、或いはその他の低分子ジオール成分の1種叉は2種以上とグルタル酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の低分子ジカルボン酸の1種または2種以上との縮合重合物や、ラクトンの開環重合で得たポリラクトンジオール、例えばポリプロピオラクトンジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール等が挙げられる。ポリエーテルジオールとしては、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、その他の共重合ポリエーテルグリコール等が挙げられる。ポリカーボネートジオールとしては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールにラクトンを開環付加重合して得られるジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールと他のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテル・エステルジオールとの共縮合物等が挙げられる。
本発明の熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)の数平均分子量にも特に制限はないが、5,000から1,000,000が好ましく、10,000から500,000が特に好ましい。数平均分子量が5,000未満の場合、機械的な特性が不十分となる傾向があり、また、1,000,000を超える場合、成形性が低下する傾向がある。
上記熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)の配合量は末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)と芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の合計量100重量部に対し、5〜900重量部、好ましくは20〜700重量部である。熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)の配合量が900重量部を越えると、得られる熱可塑性エラストマーの硬度が上昇し、柔軟性が不十分となる。また5重量部を下回ると得られる熱可塑性エラストマーの耐油性、耐摩耗性が低下する傾向にある。
本発明では、上述の方法で得られるイソブチレン系重合体(A)、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)との動的架橋組成物と、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)を溶融混練することにより、目的とする熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)を溶融混練するには、公知の方法を採用すればよく、前述のバッチ式混練装置や連続式混練装置を使用することができる。例えば、イソブチレン系重合体(A)、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)との動的架橋組成物と、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)を計量した後、タンブラーや、ヘンシェルミキサー、リボブレンダー等で混合した後、押出機や、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法が挙げられる。このときの混練温度は、特に限定はないが、100〜250℃の範囲が好ましく、150〜220℃の範囲がより好ましい。混練温度が100℃よりも低くなると、溶融が不十分となる傾向があり、250℃よりも高くなると、加熱による劣化が起こり始める傾向がある。
また本発明の組成物には、さらには、各用途に合わせた要求特性に応じて、物性を損なわない範囲で、例えばエチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、エチレン−ブテン共重合ゴム(EBM)、アモルファスポリα−オレフィン(APAO)、エチレン−オクテン共重合体などの柔軟なオレフィン系ポリマー、そのほかにも、ヒンダードフェノール系やリン系、イオウ系の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、界面活性剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤、シリコーンオイル、充填剤、補強剤等を適宜配合することができる。無機充填剤としては軽質炭酸カルシウム、重質ないし炭酸カルシウム、その他のカルシウム系充填材、ハードクレー、ソフトクレー、カオリンクレー、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、無定形シリカ、ウォラスナイト、合成ないし天然ゼオライト、ケイソウ土、ケイ砂、軽石粉、スレート粉、アルミナ、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムや、これらをシラン処理したもの等が挙げられる。これらの添加剤は、2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。たとえば、無機充填剤を含有させることにより、硬度や引張強度を向上することが可能である。また、無機充填剤として水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を使用した場合には、優れた難燃性を付与できる場合がある。また前記ブロッキング防止剤としては、例えばシリカ、ゼオライト等が好適であり、これらは天然、合成の何れでもよくまた架橋アクリル真球粒子などの真球架橋粒子も好適である。また前記帯電防止剤としては、炭素数12〜18のアルキル基を有するN,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−アルキルアミン類やグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。さらに、前記滑剤としては、脂肪酸アミドが好ましく、具体的にはエルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等が挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の最も好ましい組成物としては、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系重合体(A)の100重量部に対し、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)0.5〜900重量部を添加して、ヒドロシリル基含有化合物で溶融混練下で架橋した組成物100重量部に対し、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)を5〜900重量部配合した組成物である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂組成物に対して一般に採用される成形方法及び成形装置を用いて成形でき、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、ブロー成形などによって溶融成形できる。
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
尚、実施例に先立ち各種測定法、評価法、実施例について説明する。
尚、実施例に先立ち各種測定法、評価法、実施例について説明する。
(硬度)
JIS K 6352に準拠し、試験片は2.0mm厚プレスシートを3枚重ねて測定した。
JIS K 6352に準拠し、試験片は2.0mm厚プレスシートを3枚重ねて測定した。
(圧縮永久歪み)
JIS K 6262に準拠し、試験片は12.0mm厚さプレスシートを使用した。70℃×22時間、25%変形の条件にて測定した。
JIS K 6262に準拠し、試験片は12.0mm厚さプレスシートを使用した。70℃×22時間、25%変形の条件にて測定した。
(引張特性)
引張特性は、JIS K−6251(加硫ゴムの引張試験方法)に準拠し、2.0mm厚さのプレスシートをダンベル状3号形の試験片に打ち抜いて、23℃、500mm/minの条件で測定した。用いた装置は、オートグラフAG−10TB(株式会社島津製作所製)である。
引張特性は、JIS K−6251(加硫ゴムの引張試験方法)に準拠し、2.0mm厚さのプレスシートをダンベル状3号形の試験片に打ち抜いて、23℃、500mm/minの条件で測定した。用いた装置は、オートグラフAG−10TB(株式会社島津製作所製)である。
(耐摩耗性)
JIS K−6264(加硫ゴムの摩耗試験方法)に準拠し、2.0mm厚さプレスシートを使用し、テーバー摩耗試験を実施した。摩耗輪にはH−18摩耗輪(Taber Industries社製)を用い、23℃、750g荷重にて3,000回転後のシートの重量減を測定した。用いた装置は、ロータリーアブレージョンテスタ(株式会社東洋精機製作所製)である。
JIS K−6264(加硫ゴムの摩耗試験方法)に準拠し、2.0mm厚さプレスシートを使用し、テーバー摩耗試験を実施した。摩耗輪にはH−18摩耗輪(Taber Industries社製)を用い、23℃、750g荷重にて3,000回転後のシートの重量減を測定した。用いた装置は、ロータリーアブレージョンテスタ(株式会社東洋精機製作所製)である。
(実施例等記載成分の内容)
成分(A):
APIB:末端にアリル基が導入されたポリイソブチレン(製造例1)
成分(B):
SIBS:スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(製造例2)
成分(C):
TPU:エステルタイプ、ディーアイシーバイエルポリマー(株)製(商品名:パンデックス T−1180)、硬度82(JIS A)
架橋剤(ヒドロシリル基含有化合物):
ポリメチルハイドロジェンシロキサン、GE東芝シリコーン株式会社製(商品名「TSF−484」)
架橋触媒:
0価白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジアルケニルジシロキサン錯体、3重量%キシレン溶液
(製造例1)[末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系共重合体(APIB)の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、エチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)142mL及びトルエン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)427mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー277mL(2934mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.85g(3.7mmol)及びα−ピコリン0.68g(7.4mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン5.8mL(52.7mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から2.5時間撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、アリルトリメチルシランの75%トルエン溶液1.68g(11mmol)を重合容器内に添加した。該混合溶液を添加してから2時間後に、大量の水に加えて反応を終了させた。
成分(A):
APIB:末端にアリル基が導入されたポリイソブチレン(製造例1)
成分(B):
SIBS:スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(製造例2)
成分(C):
TPU:エステルタイプ、ディーアイシーバイエルポリマー(株)製(商品名:パンデックス T−1180)、硬度82(JIS A)
架橋剤(ヒドロシリル基含有化合物):
ポリメチルハイドロジェンシロキサン、GE東芝シリコーン株式会社製(商品名「TSF−484」)
架橋触媒:
0価白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジアルケニルジシロキサン錯体、3重量%キシレン溶液
(製造例1)[末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系共重合体(APIB)の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、エチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)142mL及びトルエン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)427mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー277mL(2934mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.85g(3.7mmol)及びα−ピコリン0.68g(7.4mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン5.8mL(52.7mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から2.5時間撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、アリルトリメチルシランの75%トルエン溶液1.68g(11mmol)を重合容器内に添加した。該混合溶液を添加してから2時間後に、大量の水に加えて反応を終了させた。
反応溶液を2回水洗し、溶媒を蒸発させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。Mwが52800である末端にアリル基を有するポリイソブチレンが得られた。
(製造例2)[スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)の製造]
500mLのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)95.4mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)135mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー54.4mL(576mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.178g(0.77mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド0.124g(1.42mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン1.69mL(15.44mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から75分撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、スチレンモノマー13.83g(132.8mmol)を重合容器内に添加した。スチレンモノマーを添加してから45分後に、大量の水に加えて反応を終了させた。
500mLのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)95.4mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)135mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー54.4mL(576mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.178g(0.77mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド0.124g(1.42mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン1.69mL(15.44mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から75分撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、スチレンモノマー13.83g(132.8mmol)を重合容器内に添加した。スチレンモノマーを添加してから45分後に、大量の水に加えて反応を終了させた。
反応溶液を2回水洗し、溶媒を蒸発させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体(SIBS)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。ブロック共重合体のMwが79000であるブロック共重合体が得られた。
(実施例1〜4)
製造例1で得られた成分(A)APIB、製造例2で得られた成分(B)SIBSを表1に示した割合で合計40gになるように計量し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機株式会社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋剤を表1に示した割合で添加し、架橋触媒を5μl添加後、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し動的架橋を行った。トルクの最高値を示してから3分混練後、動的架橋組成物を取り出した。次に、得られた動的架橋組成物と成分(C)TPUを表1に示した割合で合計40gになるように計量し、200℃に設定したラボプラストミルを用いて5分間溶融混練し、熱可塑性エラストマー組成物を取り出した。得られた熱可塑性エラストマー組成物は200℃で加熱プレス(神藤金属工業株式会社製)にて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引張特性、耐摩耗性を上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表1に示す。
製造例1で得られた成分(A)APIB、製造例2で得られた成分(B)SIBSを表1に示した割合で合計40gになるように計量し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機株式会社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋剤を表1に示した割合で添加し、架橋触媒を5μl添加後、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し動的架橋を行った。トルクの最高値を示してから3分混練後、動的架橋組成物を取り出した。次に、得られた動的架橋組成物と成分(C)TPUを表1に示した割合で合計40gになるように計量し、200℃に設定したラボプラストミルを用いて5分間溶融混練し、熱可塑性エラストマー組成物を取り出した。得られた熱可塑性エラストマー組成物は200℃で加熱プレス(神藤金属工業株式会社製)にて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引張特性、耐摩耗性を上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表1に示す。
(実施例5)
製造例1で得られた成分(A)APIB、製造例2で得られた成分(B)SIBSを表1に示した割合で合計40gになるように計量し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機株式会社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋剤を表1に示した割合で添加し、架橋触媒を5μl添加後、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し動的架橋を行った。トルクの最高値を示してから3分混練後、動的架橋組成物を取り出した。次に、得られた動的架橋組成物40gを、200℃に設定したラボプラストミルを用いて5分間溶融混練し、取り出した。次に、200℃で加熱プレス(神藤金属工業株式会社製)にてシート状に成形した。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引張特性を上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表1に示す。
製造例1で得られた成分(A)APIB、製造例2で得られた成分(B)SIBSを表1に示した割合で合計40gになるように計量し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋精機株式会社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋剤を表1に示した割合で添加し、架橋触媒を5μl添加後、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し動的架橋を行った。トルクの最高値を示してから3分混練後、動的架橋組成物を取り出した。次に、得られた動的架橋組成物40gを、200℃に設定したラボプラストミルを用いて5分間溶融混練し、取り出した。次に、200℃で加熱プレス(神藤金属工業株式会社製)にてシート状に成形した。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引張特性を上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表1に示す。
(比較例1〜3)
製造例2で得られた成分SIBSと成分(C)TPUを表1に示した割合で合計40gになるように計量し、200℃に設定したラボプラストミルを用いて5分間溶融混練し、取り出した。次に、200℃で加熱プレス(神藤金属工業株式会社製)にてシート状に成形した。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引張特性、耐摩耗性を上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表1に示す。
製造例2で得られた成分SIBSと成分(C)TPUを表1に示した割合で合計40gになるように計量し、200℃に設定したラボプラストミルを用いて5分間溶融混練し、取り出した。次に、200℃で加熱プレス(神藤金属工業株式会社製)にてシート状に成形した。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引張特性、耐摩耗性を上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表1に示す。
(比較例4)
成分(C)TPU40gを200℃に設定したラボプラストミルを用いて5分間溶融混練し、取り出した。次に、200℃で加熱プレス(神藤金属工業株式会社製)にてシート状に成形した。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引張特性を上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表1に示す。
成分(C)TPU40gを200℃に設定したラボプラストミルを用いて5分間溶融混練し、取り出した。次に、200℃で加熱プレス(神藤金属工業株式会社製)にてシート状に成形した。得られたシートの、硬度、圧縮永久歪み、引張特性を上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表1に示す。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形性、柔軟性、耐摩耗性、圧縮永久歪み特性に優れているため、パッキング材、シール材、ガスケット、栓体などの密封用材、自動車内外装材、クッション材、日用品、電気部品、電子部品、スポーツ部材、グリップまたは緩衝材、電線被覆材、包装材、各種容器、文具部品として有効に使用することができる。特に、耐油性、低硬度、耐摩耗性、低圧縮永久ひずみ特性が要求されるパッキング、ガスケット用途に好適である。
Claims (7)
- 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)が、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の存在下で、ヒドロシリル基含有化合物により溶融混練下で架橋された組成物と、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)とからなる、熱可塑性エラストマー組成物。
- 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)100重量部に対し、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の含有量が0.5〜900重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)と芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)の合計量100重量部に対し、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(C)の含有量が5〜900重量部であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)が、アリルトリメチルシラン中のアリル基と塩素の置換反応により末端にアリル基が導入されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)の数平均分子量が、1,000〜500,000であり、1分子あたり少なくとも0.2個のアルケニル基を末端に有する重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 末端にアルケニル基を有するイソブチレン系重合体(A)が、イソブチレンを50重量%以上含む重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー(B)が、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b1)とイソブチレン系重合体ブロック(b2)からなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2011129433A1 (ja) * | 2010-04-15 | 2011-10-20 | 三井化学株式会社 | スパンボンド不織布、その製造方法及びその用途 |
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---|---|---|---|---|
JP2005187509A (ja) * | 2003-12-24 | 2005-07-14 | Kaneka Corp | 樹脂組成物からなる成形体および改質剤 |
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-
2007
- 2007-08-02 JP JP2007201636A patent/JP2008260906A/ja active Pending
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