JP2008256562A - レーダ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】送信周波数帯域を広げることなく距離分解能を向上させる。
【解決手段】チャープ周波数変調した送信信号を繰り返し送信する送信機a10と、送信信号のチャープ周波数変調と同じ傾きでチャープ周波数変調を行った局部発振信号を繰り返し生成する局部発振器a14と、目標2から反射してきた送信信号を受信信号として受信し、局部発振信号を用いて位相検波して、複素ビート信号を生成する受信機13と、複数の複素ビート信号間のコヒーレント性を補正し、コヒーレント性補正後複素ビート信号を生成するコヒーレント性補正器16と、コヒーレント性補正後複素ビート信号に対して補間を行い、補間後複素ビート信号を生成する信号補間器17と、補間後複素ビート信号をフーリエ変換することによって、目標2との高分解能な相対距離情報を得るフーリエ変換器18とを備えている。
【選択図】図1
【解決手段】チャープ周波数変調した送信信号を繰り返し送信する送信機a10と、送信信号のチャープ周波数変調と同じ傾きでチャープ周波数変調を行った局部発振信号を繰り返し生成する局部発振器a14と、目標2から反射してきた送信信号を受信信号として受信し、局部発振信号を用いて位相検波して、複素ビート信号を生成する受信機13と、複数の複素ビート信号間のコヒーレント性を補正し、コヒーレント性補正後複素ビート信号を生成するコヒーレント性補正器16と、コヒーレント性補正後複素ビート信号に対して補間を行い、補間後複素ビート信号を生成する信号補間器17と、補間後複素ビート信号をフーリエ変換することによって、目標2との高分解能な相対距離情報を得るフーリエ変換器18とを備えている。
【選択図】図1
Description
この発明はレーダ装置に関し、特に、FM(Frequency Modulation)レンジングによる測距を行うレーダ装置に関するものである。
従来のFMレンジングによる測距を行うレーダ装置では、送信信号をチャープ周波数変調して送信し、目標から反射してきた受信信号を、送信信号と同じ傾きでチャープ周波数変調された局部発振信号を用いてダウンコンバートすることによってビート信号を生成し、ビート信号をフーリエ変換することによって測距を行っている(例えば、非特許文献1参照。)。
Merrill I. Skolnik著、「Radar Handbook Second Edition」、McGraw-Hill, Inc、Chapters 14 and 17
しかしながら、上述の従来技術においては、距離分解能を向上するためには、送信周波数帯域を広くしなければならないという問題点があった。
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、FMレンジングによる測距を行うレーダ装置であって、送信周波数帯域を広げることなく距離分解能を向上させることが可能なレーダ装置を得ることを目的としている。
この発明は、チャープ周波数変調した送信信号を繰り返し送信する送信手段と、前記送信信号のチャープ周波数変調と同じ傾きでチャープ周波数変調を行った局部発振信号を繰り返し生成する局部発振手段と、目標から反射してきた前記送信信号を受信信号として受信し、前記局部発振信号を用いて位相検波して、複素ビート信号を生成する受信手段と、複数の前記複素ビート信号間のコヒーレント性を補正し、コヒーレント性補正後複素ビート信号を生成するコヒーレント性補正手段と、前記コヒーレント性補正後複素ビート信号をフーリエ変換することによって、目標との高分解能な相対距離情報を得るフーリエ変換手段とを備えたレーダ装置である。
この発明は、チャープ周波数変調した送信信号を繰り返し送信する送信手段と、前記送信信号のチャープ周波数変調と同じ傾きでチャープ周波数変調を行った局部発振信号を繰り返し生成する局部発振手段と、目標から反射してきた前記送信信号を受信信号として受信し、前記局部発振信号を用いて位相検波して、複素ビート信号を生成する受信手段と、複数の前記複素ビート信号間のコヒーレント性を補正し、コヒーレント性補正後複素ビート信号を生成するコヒーレント性補正手段と、前記コヒーレント性補正後複素ビート信号をフーリエ変換することによって、目標との高分解能な相対距離情報を得るフーリエ変換手段とを備えたレーダ装置であるので、送信周波数帯域を広げることなく距離分解能を向上させることができる。
以下、この発明の実施の形態について図1〜図7を用いて説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。この発明に係るレーダ装置は、FMレンジングによる測距を行うパルスレーダ装置である。図1に示すように、本実施の形態1に係るパルスレーダ装置1には、送信機a10と、送信機a10に設けられた送信アンテナ11と、受信機13と、受信機13に設けられた受信アンテナ12と、受信機13に接続された局部発振器a14とが設けられている。さらに、受信機13に接続された複数のA/D変換器15a、15bと、それらのA/D変換器15a,15bに接続されたコヒーレント性補正器16と、コヒーレント性補正器16に接続された信号補間器17と、信号補間器17に接続されたフーリエ変換器18とが設けられている。
図1はこの発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。この発明に係るレーダ装置は、FMレンジングによる測距を行うパルスレーダ装置である。図1に示すように、本実施の形態1に係るパルスレーダ装置1には、送信機a10と、送信機a10に設けられた送信アンテナ11と、受信機13と、受信機13に設けられた受信アンテナ12と、受信機13に接続された局部発振器a14とが設けられている。さらに、受信機13に接続された複数のA/D変換器15a、15bと、それらのA/D変換器15a,15bに接続されたコヒーレント性補正器16と、コヒーレント性補正器16に接続された信号補間器17と、信号補間器17に接続されたフーリエ変換器18とが設けられている。
当該構成において、パルスレーダ装置1は、送信信号をチャープ周波数変調して送信アンテナ11から送信し、目標2から反射してきた受信信号を受信アンテナ12で受信して、受信機13により、局部発振器a14により生成される局部発振信号を用いて位相検波し、複素ビート信号を生成する。なお、局部発振器a14は、送信信号のチャープ周波数変調と同じ傾きでチャープ周波数変調を行った局部発振信号を繰り返し生成している。受信機13で生成された複素ビート信号は、A/D変換器15a,15bによりディジタル化され、コヒーレント性補正器16に入力される。コヒーレント性補正器16は、複数の複素ビート信号間のコヒーレント性を補正し、コヒーレント性補正後複素ビート信号を生成する。次に、信号補間器17により、コヒーレント性補正後複素ビート信号に対し補間を行い、補間後複素ビート信号をフーリエ変換器18に入力する。フーリエ変換器18においては、補間後複素ビート信号をフーリエ変換することによって、目標2との高分解能な相対距離情報を得て、それにより、FMレンジングによる測距を行っている。
図2は、繰り返し数が3の場合のチャープ周波数変調された送信信号、受信信号、局部発振信号の周波数変化と、受信機13で生成される複素ビート信号との関係を示す図であり、送信信号の周波数変化30と、受信信号の周波数変化31と、局部発振信号の周波数変化32と、複素ビート信号33とを示している。
図2に示すように、送信機a10は、繰り返し行う送信信号30のチャープ周波数変調の傾きを全て同じとするとともに、送信信号30のチャープ周波数変調の初期周波数を全て同じとしている。局部発振器a14は、局部発振信号32のチャープ周波数変調を送信信号30のチャープ変調と同期して(送信周波数掃引時間T0ずつ遅延させて)、送信機a10と同じ予め定めた時間間隔毎に行う。また、局部発振器a14は、繰り返し行う局部発振信号32のチャープ周波数変調の傾きを全て同じとするとともに、局部発振信号32のチャープ周波数変調の初期周波数を全て同じとしている。さらに、局部発振器a14は、局部発振信号32の傾きを送信信号30の傾きと同じにするとともに、局部発振信号32の初期周波数を送信信号30の初期周波数と同じとしている。
図3は、A/D変換器15a,15bから出力されるディジタル複素ビート信号のコヒーレント性の補正と、信号補間器17による信号補間との関係を示す図であり、A/D変換器15a,15bから出力されるディジタル複素ビート信号34と、コヒーレント性補正器16から出力されるコヒーレント性補正後ディジタル複素ビート信号35と、信号補間器17から出力される補間後ディジタル複素ビート信号36とを示している。ただし、複素ビート信号33、ディジタル複素ビート信号34、コヒーレント性補正後ディジタル複素ビート信号35、および、補間後ディジタル複素ビート信号36は、図の簡略化のため、実部のみを示している。
また、図4は、コヒーレント性補正器16による、ディジタル複素ビート信号のコヒーレント性補正処理のフローチャートを示している。
これらの図を基に、本実施の形態1に係るレーダ装置の動作について詳細に説明する。
パルスレーダ装置1の送信機a10は、図2の送信信号の周波数変化30に示すように、ある基準時刻の周波数が送信初期周波数f0であり、送信周波数帯域B0、送信周波数掃引時間T0、傾きB0/T0で直線状に周波数が変化するチャープ周波数変調された送信信号を、時間間隔TL毎に繰り返し発生する。
パルスレーダ装置1の送信機a10は、図2の送信信号の周波数変化30に示すように、ある基準時刻の周波数が送信初期周波数f0であり、送信周波数帯域B0、送信周波数掃引時間T0、傾きB0/T0で直線状に周波数が変化するチャープ周波数変調された送信信号を、時間間隔TL毎に繰り返し発生する。
送信信号の振幅をA1、送信信号の初期位相をφtx(n)、チャープ周波数変調された送信信号の繰り返し数をN1とすると、送信信号Stx,n(t)は次式(1)で表される。ただし、Reは複素数の実部を示す。
式(1)において、BLは、傾きB0/T0で周波数掃引時間がTLの場合のチャープ周波数変調信号帯域を示し、後に示す局部発振信号帯域と同じ値となるため同一の記号で表現している。
また、時間間隔TLは、送信周波数掃引時間T0と最大探知距離Rmaxとにより、次式(2)を満足するように設定する。
また、時間間隔TLは、送信周波数掃引時間T0と最大探知距離Rmaxとにより、次式(2)を満足するように設定する。
このようにして発生した送信信号は送信アンテナ11から目標2の方向に照射される。目標2で反射した送信信号は、受信信号として、受信アンテナ12で受信される。目標2とレーダ装置1との相対距離をR、光速をcとすれば、受信信号は送信信号に対し、2R/cの遅延時間を経て受信アンテナ12に到来する。よって、受信信号Srx,n(t)は次式(3)で表される。ただし、A2は受信信号の振幅を示す。また、受信信号の周波数変化は、図2の受信信号の周波数変化31に示すように、送信信号の周波数変化30を2R/cだけ遅延時間させたものとなる。
受信アンテナ12で受信された受信信号は、受信機13に入力される。一方、局部発振器a14は、図2の局部発振信号の周波数変化32で示すように、送信信号の周波数変化30と同様、ある基準時刻の周波数が送信初期周波数f0、局部発振信号帯域がBL、局部発振信号掃引時間が式(2)の時間間隔と同じTL、傾きBL/TLで直線状に周波数が変化するチャープ周波数変調された局部発振信号を、時間間隔TL毎に繰り返し発生し、受信機13に出力する。また、傾きBL/TLは送信信号の傾きB0/T0と同じである。
局部発振信号の振幅をA3、局部発振信号の初期位相をφex(n)とすると、局部発振信号Sex,n(t)は式(4)で表される。
受信機13は、局部発振器a14で生成した局部発振信号を用いて、受信アンテナ12からの受信信号を位相検波し、所定の帯域のみを通過させる帯域通過フィルタを通過させて複素ビート信号33を得る。A4を複素ビート信号の振幅とすると、複素ビート信号Sb,n(t)は、式(5)で表される。ただし、*は複素共役を示す。
式(5)において、送信信号の初期位相φtx(n)と局部発振信号の初期位相φex(n)がn毎に同じとするとビート信号Sb(t)は、式(6)で表される。
受信機13で生成された複素ビート信号33は、A/D変換器15a,15bに出力される。A/D変換器15a,15bは、送信周波数掃引時間T0内に複数のサンプル点が得られるサンプリング間隔で複素ビート信号をA/D変換し、ディジタル複素ビート信号を生成し、コヒーレント性補正器16に出力する。A/D変換器15a,15bのサンプリング間隔をΔtとすると、ディジタル複素ビート信号S'b,n(m)は次式(7)で表される。ただし、M1は送信周波数掃引時間T0内のサンプル点数、Toffsetは、ディジタル複素ビート信号の最初のA/D変換器サンプリング点の時間、A5はディジタル複素ビート信号の振幅を表し、ここでは、簡単のため量子化誤差は無視している。また、時間間隔TLはサンプリング間隔Δtの整数倍としている。
コヒーレント性補正器16では、図3に示すように、n毎のディジタル複素ビート信号34のコヒーレント性を補正し、コヒーレント性補正後ディジタル複素ビート信号35を生成する。
式(7)において、n=0、1、2の場合の複素ビート信号S'b,0(m),S'b,1(m),S'b,2(m)は、それぞれ次式(8)で表される。
式(8a)、(8a)、(8c)より、測距に関係する項は、それぞれ時間mΔtの関数であるexp(j2π (B0/T0) (-2R/c)mΔt)の項である。しかし、それぞれの初期位相は、n=0の時がexp(j2πf0 (-2R/c)) exp(j2π(B0/2T0) (2R/c)2) exp(j2π(B0/2T0) (2R/c)Toffset)、n=1の時がexp(j2πf0 (-2R/c)) exp(-j2πBL(-2R/c)) exp(j2π(B0/2T0) (2R/c)2) exp(j2π(B0/2T0) (2R/c)Toffset) exp(j2π(B0/2T0) (2R/c)TL)、n=2の時がexp(j2πf0 (-2R/c)) exp(-j2π2BL(-2R/c)) exp(j2π(B0/2T0) (2R/c)2) exp(j2π(B0/2T0) (2R/c)Toffset) exp(j2π(B0/2T0) (2R/c)2TL)となり、n毎に異なる。そのため、n毎のディジタル複素ビート信号34の間には相互にコヒーレント性はなく、図3の上段の図に示すように、ディジタル複素ビート信号34が存在しない2R/c + T0 ≦ t < TL + 2R/c、TL + 2R/c + T0 ≦ t < 2TL + 2R/c の区間にディジタル複素ビート信号34が存在したとしても、TL + 2R/cや2TL + 2R/cの部分で位相の不連続が生じ、このままではフーリエ変換を行っても、exp(j2π (B0/T0) (-2R/c)mΔt)の項に関する距離を正しく求めることはできなない。そこで、コヒーレント性補正器16において、n毎のディジタル複素ビート信号34のコヒーレント性の補正を行う。
図4にコヒーレント性補正器16におけるコヒーレント性補正処理のフローチャートを示す。ただし、ここでは、n=0のディジタル複素ビート信号S'b,0(m)と、n=1のディジタル複素ビート信号のS'b,1(m)の相互コヒーレント性補正を行う場合を代表して記載している。N1個の全てのディジタル複素ビート信号に対してコヒーレント性を補正する場合は、下記処理を、他の全ての組み合わせに対して適用することによって実現することができる。
コヒーレント化補正を行うには、はじめに、n=0、1の場合のディジタル複素ビート信号S'b,0(m)、S'b,1(m)のそれぞれに対し、次式(9a),(9b)に示す(M1−L+1)行L列のHankel行列H0、H1を作成する(ステップS1)。
ただし、Lは、想定する信号数の最大値Pmaxと送信周波数掃引時間T0内のサンプル点数M1より、次式(10)を満足する正の整数として設定する。
次に、生成した式(9a),(9b)で表されるHankel行列H0、H1のそれぞれに対し、特異値分解を行い、次式(11a),(11b)を得る(ステップS2)。ただし、*は複素共役を、Tは転置行列を示す。
式(11a),(11b)において、U0、U1は(M1−L+1)行(M1−L+1)列のユニタリ行列、S0、S1は(M1−L+1)行L列で、対角要素に非負の特異値をもち、対角要素以外は0の行列、V0 *T、V1 *T、はL行L列のユニタリ行列Vの共役複素転置行列を示し、V0、V1の列ベクトルは、特異値に対する特異値ベクトルを示す。行列S0、S1より求まる特異値に対し、あらかじめ定めた閾値以上の特異値を信号+雑音の特異値、閾値より小さい特異値を雑音の特異値とすることによって、信号数Pを特定する(ステップS3)。ただし、ここでは、行列S0、S1より求まる特異値から求めた信号数Pは同じであるとしている。
次に、root−MUSIC(MUlutiple SIgnal Classication)の手法を導入し、各信号の周波数を推定する(ステップS4)。
まず、式(11a),(11b)で求めた行列V0、V1を、信号数Pを用いて次式(12a),(12b)に示すように、信号+雑音の特異値に対する特異値ベクトルから構成されるL行P列行列V0 SN、V1 SNと雑音の特異値に対する特異値ベクトルから構成されるL行(L−P)列行列V0 N、V1 Nに分解する。
まず、式(11a),(11b)で求めた行列V0、V1を、信号数Pを用いて次式(12a),(12b)に示すように、信号+雑音の特異値に対する特異値ベクトルから構成されるL行P列行列V0 SN、V1 SNと雑音の特異値に対する特異値ベクトルから構成されるL行(L−P)列行列V0 N、V1 Nに分解する。
式(12a),(12b)で求めた雑音の特異値に対する特異値ベクトルV0 N、V1 Nを用いて、次式に示す演算を行う。
式(13a),(13b)で求めたD0、D1の1行目の要素を、それぞれd0,i、d1,iとし、次式(14a),(14b)に示す多項式を求める。
式(14a),(14b)の多項式の根のうち、単位円に近い根が、各信号の周波数の推定値となる。
次に、式(14a)から推定した信号の周波数をfe,0,0〜fe,P-1,0、式(14b)から推定した信号の周波数をfe,0,1〜fe,P-1,1とすると、それらの周波数と推定した信号数Pより、次式(15a),(15b)に示す線形最小2乗法によって、各信号の振幅と初期位相を推定することができる(ステップS5)。
ただしξp,0、ξp,1は、それぞれ、次式(16a),(16b)で表される。
式(15a),(15b)の線形最小2乗法を解くことによって、各信号の複素振幅α0、0〜αP−1、0、α0、1〜αP−1、1を推定することができる。推定した複素振幅の振幅が推定振幅Ae,0、0〜Ae,P−1、0、Ae,0、1〜Ae,P−1、1、位相が推定する初期位相φe,0、0〜φe,P−1、0、φe,0、1〜φe,P−1、1となる。
推定した、n=0、n=1の時の各信号に対する周波数fe,0,0〜fe,P-1,0、fe,0,1〜fe,P-1,1、振幅Ae,0、0〜Ae,P−1、0、Ae,0、1〜Ae,P−1、1、初期位相φe,0、0〜φe,P−1、0、φe,0、1〜φe,P−1、1を用いて模擬信号を生成し(ステップS6)、n=1の時の模擬信号が、n=0の模擬信号に対してコヒーレントになる係数(コヒーレント化係数)をもとめる(ステップS7)。この問題は、非線形問題となるため、次式で表される評価関数F1が最小となる複素係数Kを、非線形最小2乗法による繰り返し演算によって求める。ただし、MLは、TL内のサンプリング点数を示す。
求めたコヒーレント化係数Kをn=1の時のディジタル複素ビート信号S'b,1(m)に掛けることによって、図3の35に示すn=0の時のディジタル複素ビート信号S'b,0(m)とコヒーレントになったn=1の時のディジタル複素ビート信号S''b,1(m)を得ることができる。上記処理を全ての組み合わせに対して実施することによって、N1個の全てのディジタル複素ビート信号に対してコヒーレント性の補正を行い、図3に示すコヒーレント性補正後ディジタル複素ビート信号35を生成する(ステップS8)。
上述のようにしてコヒーレント性補正器16によって生成されたコヒーレント性補正後ディジタル複素ビート信号は、信号補間器17に入力される。信号補間器17では、式(9a),(9b)で表されるn=0、1の時のディジタル複素ビート信号を用いて生成したHankel行列H0とH1を用いて、次式(18)で求まるGlobal Hankel行列Hに対し、式(11)から(16)の手順で、信号数、各信号に対する周波数、振幅、初期位相を推定する。
推定した信号数、各信号に対する周波数、振幅、初期位相を初期値として、次式(19)に示す関数F2が最小となる信号の周波数ft,p、振幅At,p、初期位相φt,pを非線形最小2乗法を用いて求める。
ただし、S'b,01(m)は、n=0の時のディジタル複素ビート信号S'b,0(m)とS'b,0(m)とコヒーレントになったn=1の時のディジタル複素ビート信号S''b,1(m)を用いて次式(20)で表される。
求めた信号の周波数ft,p、振幅At,p、初期位相φt,pを用いて信号の補間を行い、図3の補間後ディジタル複素ビート信号36を生成する。
フーリエ変換器18では、信号補間器17で求めた補間後ディジタル複素ビート信号36をフーリエ変換することによって、目標の距離を求める。また、その時の距離分解能ΔR1と補間後ディジタル複素ビート信号の長さ((N1−1)ML+M1)Δtには、次式(21)に示す関係が成立する。
よって、距離分解能は次式(22)で表され、M1/((N1−1)ML+M1)が1よりも小さいため、送信信号の帯域で決まる距離分解能c/2B0より高くなる。
以上のように、本実施の形態1によれば、チャープ周波数変調した送信信号を繰り返し送信する送信機a10と、送信信号のチャープ周波数変調と同じ傾きでチャープ周波数変調を行った局部発振信号を繰り返し生成する局部発振器14と、目標2から反射してきた送信信号に対する受信信号を、局部発振信号を用いて位相検波し、複素ビート信号を生成する受信機13と、複数の複素ビート信号間のコヒーレント性を補正し、コヒーレント性補正後複素ビート信号を生成するコヒーレント性補正器16と、コヒーレント性補正後複素ビート信号をフーリエ変換することによって、目標との高分解能な相対距離情報を得るフーリエ変換器18とを備え、上述したような処理を行うことによって、送信信号のチャープ周波数変調の帯域を広げることなく、距離分解能を向上することができるFMレンジングによる測距を行うレーダ装置を得ることができる。
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。図5において、パルスレーダ装置3は、送信機b19、送受信アンテナ20、サーキュレーター21、局部発振器b22を備えている。送受信アンテナ20は、図1における送信アンテナ11と受信アンテナ12の両方の機能を果たすものである。また、図5に示すように、サーキュレーター21は、送受信アンテナ20に接続されるとともに、送信機b19および受信機13に接続されており、送信動作/受信動作の切り替えを制御するものである。局部発振器b22は、受信機13に接続されている。その他、実施の形態1と同一の符号を付した構成要素は実施の形態1と同様の構成をしている。
図5はこの発明の実施の形態2に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。図5において、パルスレーダ装置3は、送信機b19、送受信アンテナ20、サーキュレーター21、局部発振器b22を備えている。送受信アンテナ20は、図1における送信アンテナ11と受信アンテナ12の両方の機能を果たすものである。また、図5に示すように、サーキュレーター21は、送受信アンテナ20に接続されるとともに、送信機b19および受信機13に接続されており、送信動作/受信動作の切り替えを制御するものである。局部発振器b22は、受信機13に接続されている。その他、実施の形態1と同一の符号を付した構成要素は実施の形態1と同様の構成をしている。
図6は、受信パルス数を4とした場合の送信パルス、受信パルス、送信信号、受信信号、局部発振信号の周波数変化と受信機13から出力される複素ビート信号の関係を示す図であり、送信パルス4、受信パルス5、送信信号の周波数変化30、受信信号の周波数変化31、局部発振信号の周波数変化32、複素ビート信号33を示している。
本実施の形態2においては、図6に示すように、局部発振器b22は、局部発振信号32のチャープ周波数変調を送信信号30のチャープ変調と同期させて(パルス幅Tpずつ遅延させて)、送信機b19と同じ予め定めた時間間隔毎に行うが、このとき、送信機b19は、繰り返し行う送信信号のチャープ周波数変調の初期周波数を予め定めた周波数間隔ずつ変化させ、局部発振器b22は、繰り返し行う局部発振信号のチャープ周波数変調の初期周波数を送信機b19と同じ予め定めた周波数間隔ずつ変化させており、局部発振信号32のチャープ周波数変調の初期周波数は、対応する送信信号30のチャープ周波数変調の初期周波数と同じになっている。但し、送信信号30のチャープ周波数変調の傾きは、全て同じとする。
図7は、ディジタル複素ビート信号のコヒーレント性の補正と信号補間との関係を示す図であり、ディジタル複素ビート信号34、コヒーレント性補正後ディジタル複素ビート信号35、補間後ディジタル複素ビート信号36を示している。ただし、複素ビート信号33、ディジタル複素ビート信号34、コヒーレント性補正後ディジタル複素ビート信号35、補間後ディジタル複素ビート信号36は、表現の簡略化のため実部にみを示している。
パルスレーダ装置3の送信機b19は、図6の示ように、パルス幅Tp、パルス繰返し周期Tpriでパルスを送信する。その際、パルス幅Tp内を次式(23)で示す傾きB0/(N2Tp)で直線状に周波数変化するチャープ周波数変調を行う。ただし、B0は送信周波数帯域、N2は送信パルス数を示す。また、各パルスの初期周波数は送信パルス毎に次式で表される周波数とする。
送信信号の振幅をA1、送信信号の初期位相をφtx(n)とすると上述の送信信号Stx,n(t)は式(24)で表される。ただし、Reは複素数の実部を示す。
このようにして発生した送信信号はサーキュレーター21を介し、送受信アンテナ20から目標2の方向に照射される。目標2に反射した送信信号は受信信号として送受信アンテナ20で受信される。目標2とレーダ装置の相対距離をR、光速をcとすれば、受信信号は送信信号に対し、2R/cの遅延時間を経て受信アンテナ12に到来する。よって、受信信号Srx,n(t)は式(25)で表される。ただし、A2は受信信号の振幅を示す。また、受信信号の周波数変化は、図6の受信信号の周波数変化31に示すように、送信信号の周波数変化30を2R/cだけ遅延時間させたものとなる。
送受信アンテナ20で受信された受信信号は、サーキュレーター21を介し、受信機13に入力される。一方、局部発振器b22は、図6の局部発振信号の周波数変化32で示すように、パルスが送信されていない時間間隔TLoに、同じパルス繰返し周期の送信パルスと同じ初期周波数で、同じ傾きで周波数が変化するチャープ周波数変調信号を生成する。
局部発振信号の振幅をA3、局部発振信号の初期位相をφex(n)とすると、局部発振信号Sex,n(t)は式(26)で表される。
受信機13は、局部発振器b22で生成した局部発振信号を用いて、サーキュレーター21からの受信信号を位相検波し、所定の帯域のみを通過させる帯域通過フィルタを通過させて複素ビート信号33を得る。A4を複素ビート信号の振幅とすると、複素ビート信号Sb,n(t)は、式(27)で表される。ただし、*は複素共役を示す。
式(27)において、送信信号の初期位相φtx(n)と局部発振信号の初期位相φex(n)がn毎に同じとするとビート信号Sb(t)は、式(28)で表される。
受信機13で生成された複素ビート信号33は、A/D変換器15a,15bに出力される。A/D変換器15a,15bは、送信パルス幅Tp内に複数のサンプル点が得られるサンプリング間隔で複素ビート信号をA/D変換し、ディジタル複素ビート信号を生成し、コヒーレント性補正器16に出力する。A/D変換器15a,15bのサンプリング間隔をΔtとすると、ディジタル複素ビート信号S'b,n(m)は次式で表される。ただし、M2は送信パルス幅Tp内のサンプル点数、Toffsetは、ディジタル複素ビート信号の最初のA/D変換器サンプリング点の時間、A5はディジタル複素ビート信号の振幅を表し、ここでは、簡単のため量子化誤差は無視している。また、パルス繰返し周期Tpriはサンプリング間隔Δtの整数倍としている。
コヒーレント性補正16では、図7に示すように、n毎のディジタル複素ビート信号34のコヒーレント性を補正し、コヒーレント性補正後ディジタル複素ビート信号35を生成する。
式(29)において、n=0、1、2の場合の複素ビート信号S'b,0(m),S'b,1(m),S'b,2(m)は、それぞれ次式で表される。
式(30a)、(30a)、(30c)より、測距に関係する項は、それぞれ時間mΔtの関数であるexp(j2π B0/(N2Tp) (Tp-2R/c) mΔt)の項である。しかし、それぞれの初期位相は、n=0の時がexp(j2πf0 (Tp-2R/c)) exp(-j2πB0/(2N2Tp)((Tp)2-(2R/c)2) exp(-j2πB0/(2N2Tp)((Tp)2-(2R/c)Toffset)、n=1の時がexp(j2πf0 (Tp-2R/c)) exp(-j2π(Tpri/Tp -1) B0/N2 (Tp-2R/c)) exp(-j2π(B0/(2N2Tp)) ((Tp)2- (2R/c)2) exp(-j2πB0/(2N2Tp)((Tp)2-(2R/c)Toffset) exp(-j2πB0/(2N2Tp)((Tp)2-(2R/c)Tpri)、n=2の時がexp(j2πf0 (Tp-2R/c)) exp(-j2π2(Tpri/Tp -1) B0/N2 (Tp-2R/c)) exp(-j2π (B0/(2N2Tp) ((Tp)2-(2R/c)2) exp(-j2πB0/(2N2Tp)((Tp)2-(2R/c)Toffset) exp(-j2πB0/(2N2Tp)((Tp)2-(2R/c)2Tpri)となり、n毎に異なる。そのため、n毎のディジタル複素ビート信号34の間には相互にコヒーレント性はなく、図3の上段の図に示すように、ディジタル複素ビート信号34が存在しない2R/c + Tp ≦ t < Tpri + 2R/c、Tpri + 2R/c + Tp ≦ t < 2Tpri + 2R/c、2Tpri + 2R/c + Tp ≦ t < 3Tpri + 2R/cの区間にディジタル複素ビート信号34が存在したとしても、Tpri + 2R/c、2Tpri + 2R/c、3Tpri + 2R/c部分で位相の不連続が生じ、このままではフーリエ変換を行っても、exp(j2π B0/(N2Tp) (Tp-2R/c) mΔt)の項に関する距離を正しく求めることはできない。そこでコヒーレント性補正器16において、n毎のディジタル複素ビート信号34のコヒーレント性の補正を行う。コヒーレント性補正器16および信号補間器17の動作は上記実施の形態1と同じである。
フーリエ変換器18では、信号補間器17で求めた補間後ディジタル複素ビート信号36をフーリエ変換することによって、目標の距離を求める。また、その時の距離分解能ΔR2と補間後ディジタル複素ビート信号の長さ(N2−1)Tpri+Tpには、次式に示す関係が成立する。
よって、距離分解能は次式で表され、N2Tp/((N2−1)Tpri+Tp)が1よりも小さいため、送信信号の帯域で決まる距離分解能c/2B0より高くなる。
以上のように、本実施の形態2によれば、チャープ周波数変調した送信信号を繰り返し送信する送信機b19と、送信信号のチャープ周波数変調と同じ傾きでチャープ周波数変調を行った局部発振信号を繰り返し生成する局部発振器b22と、目標2から反射してきた送信信号に対する受信信号を、局部発振信号を用いて位相検波し、複素ビート信号を生成する受信機13と、複数の複素ビート信号間のコヒーレント性を補正し、コヒーレント性補正後複素ビート信号を生成するコヒーレント性補正器16と、コヒーレント性補正後複素ビート信号をフーリエ変換することによって、目標との高分解能な相対距離情報を得るフーリエ変換器18とを備えて、上述のような処理をすることによって、本実施の形態2においては、送信信号のチャープ周波数変調の帯域を広げることなく、距離分解能を向上することができるFMレンジングによる測距を行うレーダ装置を得ることができる。
1,3 パルスレーダ装置、2 目標、10 送信機a、11 送信アンテナ、12 受信アンテナ、13 受信機、14 局部発振器a、15a,15b A/D変換器、16 コヒーレント性補正器、17 信号補間器、18 フーリエ変換器、20 送受信アンテナ、21 サーキュレーター、22 局部発振器b。
Claims (8)
- チャープ周波数変調した送信信号を繰り返し送信する送信手段と、
前記送信信号のチャープ周波数変調と同じ傾きでチャープ周波数変調を行った局部発振信号を繰り返し生成する局部発振手段と、
目標から反射してきた前記送信信号を受信信号として受信し、前記局部発振信号を用いて位相検波して、複素ビート信号を生成する受信手段と、
複数の前記複素ビート信号間のコヒーレント性を補正し、コヒーレント性補正後複素ビート信号を生成するコヒーレント性補正手段と、
前記コヒーレント性補正後複素ビート信号をフーリエ変換することによって、目標との高分解能な相対距離情報を得るフーリエ変換手段と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。 - 前記コヒーレント性補正手段と前記フーリエ変換手段との間に設けられ、前記コヒーレント性補正後複素ビート信号に対して補間を行い、補間後複素ビート信号を生成する補間手段をさらに備え、
前記フーリエ変換手段は、前記補間後複素ビート信号をフーリエ変換することによって、目標との高分解能な相対距離情報を得ることを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。 - 前記送信手段は、予め定めた時間間隔毎に、前記送信信号のチャープ周波数変調を前記時間間隔より短い予め定めた周波数掃引時間で繰り返し行うことを特徴とする請求項1および2記載のレーダ装置。
- 前記局部発振手段は、前記局部発振信号のチャープ周波数変調を送信信号のチャープ変調と同期して、前記送信手段と同じ予め定めた時間間隔毎に行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のレーダ装置。
- 前記送信手段は、繰り返し行う送信信号のチャープ周波数変調の傾きを全て同じとすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーダ装置。
- 前記送信手段は、繰り返し行う送信信号のチャープ周波数変調の初期周波数を全て同じとし、
前記局部発振手段は、繰り返し行う局部発振信号のチャープ周波数変調の初期周波数を全て同じとすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のレーダ装置。 - 前記送信手段は、繰り返し行う送信信号のチャープ周波数変調の初期周波数を予め定めた周波数間隔ずつ変化させ、
前記局部発振手段は、繰り返し行う局部発振信号のチャープ周波数変調の初期周波数を前記送信手段と同じ予め定めた周波数間隔ずつ変化させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のレーダ装置。 - 前記局部発振手段は、繰り返し行う局部発振信号のチャープ周波数変調の初期周波数を前記送信信号のチャープ周波数変調の初期周波数と同じとすることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のレーダ装置。
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