JP2008256549A - 基材表面のメルカプト基の定量方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材表面のメルカプト基を、少量であっても、定量できる定量方法の提供。
【解決手段】下記工程A〜Eを含むことを特徴とする基材表面のメルカプト基の定量方法。工程A:基材11上に、該基材表面を底面とする、平均高さが500μm以下であり、底面積が100〜10000mmである空間14を形成する工程。工程B:空間14に、基材11表面のメルカプト基と反応するメルカプト基反応性物質を含む液体を満たす工程。工程C:基材11表面のメルカプト基と前記メルカプト基反応性物質とを反応させる工程。工程D:前記反応後の液体を回収する工程。工程E:回収した前記液体中の前記メルカプト基反応性物質を定量し、反応前後の差分を求める工程。
【選択図】図1

Description

本発明は、バイオチップ基板、配線基板等の基材表面のメルカプト基の定量方法に関する。
バイオチップなどに用いられるバイオチップ基板としては、一般的に、その効果を発現するために、ガラス基材等の基材の表面に種々の化学修飾を施したものが用いられている。該化学修飾方法としては、例えばシランカップリング剤を用いて、基材表面に官能基を導入する方法が知られている。
従来、基材表面に化学修飾によって導入された官能基の定量的な分析は行われてこなかった。これは、そのような測定が非常に困難であることが一つの要因である。また、二番目の要因として、定性的な分析により、基材表面の化学修飾によって基材表面全体の物性の変化したことが確認できれば、分子レベルでの定量的な把握ができていなくても、基材の表面特性に関して大きな問題は生じず、バイオチップ用基材としては充分であったことが挙げられる。
これまで、基材表面全体の物性の変化の確認には、例えば、水の接触角や透過率の変化、防汚性能などの評価試験が用いられている(非特許文献1参照。)。また、表面の官能基量の定性的な分析手法として、FT−IR(フーリエ変換赤外分光法)、ESCA(X線光電子分光法)、蛍光イメージ走査法なども用いられている。
しかし、これらの手法では、定性的に官能基量の多寡はわかるものの、定量的な官能基量の把握は困難である。
また、酵素標識法などの高感度な官能基の定量法も知られているが、これは主に生体試料の切片や抽出液に対して行われる手法であって、平坦な基板の表面に存在する官能基のように低濃度な領域の定量においては充分な感度が得られない。
しかし、近年開発が進むなか、バイオチップには、低発現と呼ばれる発現濃度の低い遺伝子まで網羅的、定量的に測定できる性能が求められるようになっている(特許文献1参照)。
バイオチップの性能を考える上で重要になるのが、基材表面に存在する官能基量を定量的に制御することである。しかし、上述したように、バイオチップなどに用いられる基材表面の官能基量を正確に定量することは難しく、官能基量を制御することは行われていないのが現状である。
一方、エレクトロニクスの分野においては、インクジェットなどを代表とする印刷によって配線基板を作成する際、インク中に含まれる導電性の金属微粒子の結合やメッキ処理などを強固にするために、予め、基板表面にメルカプトシランなどの結合材料を用いて表面処理をしておくことがある(特許文献2参照。)。
配線基板の場合でも、前記バイオチップ基板と同様、接着性・分散性・導電性などを期待する官能基が、基板上にどれだけ、化学的に有効な形態で存在しているのか、定量的に把握することは、表面処理条件の適正化にとって重要である。
技術情報協会、『"ぬれ性"と制御』、2000年1月発刊、第3章「ぬれの測定と接触角」、第25〜34頁、第81〜83頁 特開2006−29953号公報 特開2001−284798号公報
したがって、基材の化学的機能の発現に関与する基材表面の官能基量について直接に評価するために、基材表面の官能基を正確に定量できる定量方法が望まれている。特に、製造コスト、製造条件と品質の相関を早期に突き止める必要性等を考慮すると、正確さを損なわないよう、できるだけ、使用する基材を少数抜き取り、直接定量できることが望まれる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、基材表面のメルカプト基を、少量であっても、定量できる定量方法を提供する。
本発明は以下の態様を有する。
[1]下記工程A〜Eを含むことを特徴とする基材表面のメルカプト基の定量方法。
工程A:基材上に、該基材表面を底面とする、平均高さが500μm以下であり、底面積が100〜10000mmである空間を形成する工程。
工程B:前記空間に、前記基材表面のメルカプト基と反応するメルカプト基反応性物質を含む液体を満たす工程。
工程C:前記基材表面のメルカプト基と前記メルカプト基反応性物質とを反応させる工程。
工程D:前記反応後の液体を回収する工程。
工程E:回収した前記液体中の前記メルカプト基反応性物質を定量し、反応前後の差分を求める工程。
[2]前記メルカプト基反応性物質が、マレイミド基およびベンゼン環を含む化合物である[1]に記載の定量方法。
[3]前記マレイミド基およびベンゼン環を含む化合物が、N−フェニルマレイミドである[2]に記載の定量方法。
[4]前記工程Eにおいて、前記メルカプト基反応性物質の定量を、高速液体クロマトグラフィーを用いて行う[2]または[3]に記載の定量方法。
[5]前記液体の溶媒がジメチルホルムアミドおよび/またはN−メチルピロリドンである[1]〜[4]のいずれか一項に記載の定量方法。
[6]前記基材が、メルカプトシランで表面処理された基材である[1]〜[5]のいずれか一項に記載の定量方法。
[7]前記基材が、バイオチップ基板または配線基板である[6]に記載の定量方法。
本発明の定量方法によれば、従来技術では困難であった、基材表面のメルカプト基を、少量であっても、定量できる。
バイオチップでは、基材表面にDNAや蛋白質、またはこれらを金などの金属微粒子で修飾した試料を固定化しやすいため、さらには、配線などの導電性薄膜を形成する目的で金属微粒子もしくはメッキ処理を強固に結合させやすいため、基材表面をメルカプト基で化学修飾した基材が好ましく用いられる。
そのため、本発明の定量方法を、バイオチップ基板や配線基板などの用途に用いられる基材の評価に用いることにより、バイオチップ基板や配線基板として最適な官能基量の基材を提供することが可能となる。
以下、本発明の定量方法をより詳細に説明する。
[工程A]
工程Aは、基材上に、該基材表面を底面とする、平均高さが500μm以下であり、底面積が100〜10000mmである空間(以下、微量容積空間ということがある。)を形成する工程である。
該微量容積空間の高さは、500μm以下であればよいが、低いほど好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。該高さが低いほど、工程Bにおいて、基材上のメルカプト基と、該メルカプト基と反応するメルカプト基反応性物質とが拡散距離以内に接近する機会が増大し、それによって、工程Cにおける反応が促進される。また、微量容積空間の容積が減ることで、工程Bにおいて使用するメルカプト基反応性物質を含む液体の濃度を濃くすることが可能となり、それによって、工程Eにおいて定量するまでの吸着などによる誤差を少なくすることが出来る。
微量容積空間の高さの下限としては、特に制限はないが、工程Dにおける液体の回収のしやすさ、工程Eにおいてメルカプト基反応性物質の定量を高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略記する。)を用いて行う場合のサンプリングのしやすさ等を考慮すると、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
微量容積空間は、その空間内にメルカプト基反応性物質を含む液体を満たした際に、基材表面のメルカプト基とメルカプト基反応性物質との反応時間中は液体を保持し、液体が揮散しないような空間であればよい。
このような空間は、例えば、平均高さが500μm以下の凸部が長辺側の両縁に形成されているカバーグラスを基材上に重ねることによって形成できる。この場合、基材上には、カバーグラスにより、トンネル上の空間が形成される。このとき、カバーグラスの短辺側の両縁には凸部が形成されていないが、平均高さが500μm以下という微細な空間であるため、液体毛管現象により、当該空間内の液体は、カバーグラスと基材との間に保持される。
また、片面に上記微量容積空間に相当する凹部を有するカバーグラスを基材上に重ねることによっても微量容積空間を形成できる。かかるカバーグラスは、たとえば、スライドガラスの片面に、エッチングなどにより前記凹部を形成することにより作製できる。
図1に、前記基材とカバーグラスとの配置の一例を示す。また、図2にその断面図を示す。図1〜2に示すように、片面に凹部を有するカバーグラス12を基材11上に設置することにより、基材11と、前記凹部の底面12aと、該底面12aの周縁部から突出する土手12bの内壁とにより、空間14が形成されている。
また、カバーグラス12には、空間14と外部とを連絡する2つの孔13が形成されている。これら2つの孔13は、それぞれ、液体注入用およびエア抜き用として利用できるため、孔13を設けることにより、定量をより容易に実施できる。孔13の大きさは、直径1mm以下とすることが好ましい。
上記の例のうち、前者のカバーグラスの両縁に形成される凸部の幅や、後者のカバーグラスの土手12bの幅は、1mm未満であることが望ましい。これにより、凸部または土手12bと基材との間に、液体毛管現象によって優先的に液体を取られてしまうロスを低減できる。
[工程B]
工程Bは、前記微量容積空間に、前記基材表面のメルカプト基と反応するメルカプト基反応性物質(以下、単に反応性物質ということがある。)を含む液体を満たす工程である。
前記液体を微量容積空間内に満たす方法としては、どのような方法を用いてもよく、例えばスポイトやシリンジなど通常の手段を用いて行ってもよい。
反応性物質を含む液体については、詳しくは後述する。
[工程C]
工程Cは、前記基材表面のメルカプト基と前記反応性物質とを反応させる工程である。
工程Cにおいて、基材表面のメルカプト基と反応性物質との反応は定量的である。ここで、反応が「定量的である」とは、前記液体に含まれる反応性物質と、基材表面のメルカプト基とが、適切な反応時間のうちに、それぞれの存在量に比例して反応することを意味する。実際には完全には比例せず、実務上問題にならない範囲で定量的であると言う。例えば、反応性物質として、メルカプト基1モルに対して1モル反応する反応性物質を用いた場合、該反応性物質のモル数と基材表面のメルカプト基とのモル数が同じであれば、それらはほぼ完全に反応し、どちらか一方のモル数が他方の半分であれば、該他方の半分は反応せずに残存する。
工程Cでは、基材表面のメルカプト基と反応性物質との反応を充分に進行させる必要がある。そのため、工程Dを行う前に、反応が充分進むためのある程度の反応時間が必要となる。この反応時間は、基材表面のメルカプト基と、使用する反応性物質との反応性に依存する。
[工程D]
工程Dは、前記反応後の液体を回収する工程である。
このとき、微量容積空間内から回収する液体の量は、工程Eで当該液体中の反応性物質を定量し、差分を求めることができる量であればよく、定量に使用する装置の検出限界等を考慮して決定すればよい。たとえばHPLCを用いて定量を行う場合は、0.5〜10μLが好ましく、1〜5μLがより好ましい。
回収の方法は、種々存在するが、たとえば微量容積空間が、基材と、上述したようなカバーグラスとで構成されている場合には、簡便には、カバーガラスを開き、シリンジなどで回収することが可能ある。
[工程E]
工程Eは、回収した前記液体中の反応性物質を定量し、反応前後の差分を求める工程である。このとき、回収した液体中に含まれる反応性物質は、基材表面のメルカプト基と反応しなかったものである。したがって、液体中の反応性物質について、反応前後の差分を求めることにより、基材表面のメルカプト基と反応した反応性物質の量を求めることができる。該反応性物質と基材表面のメルカプト基との反応は定量的であるため、基材表面のメルカプト基と反応した反応性物質の量から、基材表面のメルカプト基の量を求めることができる。
反応性物質の定量は、使用する反応性物質に応じて公知の手法を用いて行うことができる。微量サンプルの測定の簡便さと、各化合物を分離し、定量することが可能なこと等の点から、HPLCやガスクロマトグラフィー(以下、GCと略記する。)などの、分析装置を用いて行うことが好ましい。検出感度の点ではGCが優れているが、HPLCを用いるほうが、定量性の点で実績があり、好ましい。たとえば反応性物質として、後述するN−フェニルマレイミド等の、マレイミド基およびベンゼン環を含む化合物を使用する場合は、HPLCを用いて、波長254nmにおける光吸収を検出することにより、当該反応性物質を特異的に定量することができる。
基材表面のメルカプト基と反応した反応性物質の量は、たとえば以下の手順で算出できる。
まず、HPLC、GC等により、反応前の液体および反応後の液体をそれぞれ分析し、各液体中の反応性物質の検出強度(たとえばHPLCの場合はピークエリア)を求める。そして、反応前の液体の反応性物質の検出強度(A)と、反応後の液体の反応性物質の検出強度(A)から、式(A−A)/Aにより、反応前後の正味減少率(Adr)を求める。このAdrは、「反応前に液体中に含まれていた反応性物質の量」に対する「基材表面のメルカプト基と反応した反応性物質の量」の割合に相当する。
したがって、式:微量容積空間に満たした液体の量×該液体中の反応性物質のモル濃度により、前記微量容積空間に満たした液体(反応前の液体)中に含まれる反応性物質の量(モル数)を求め、該量にAdrを乗じることにより、該微量容積空間の底面(基材表面)のメルカプト基と反応した反応性物質の量(モル数)が算出される。
このようにして求められる「微量容積空間の底面のメルカプト基と反応した反応性物質の量(モル数)」は、「微量容積空間の底面のメルカプト基の量(モル数)」に相当する。
したがって、基材表面が均一に処理されていると仮定すると、式:微量容積空間の底面のメルカプト基の量(モル数)×基材の表面積/微量容積空間の底面積により、基材表面のメルカプト基の量(モル数)が求められる。
また、上述のようにして求められる「微量容積空間の底面のメルカプト基の量(モル数)」から、基材表面のうち、メルカプト基で被覆されている割合(面積%)(メルカプト基密度)を求めることができる。
具体的には、基材として、メルカプト基を有するシランカップリング剤(メルカプトシラン)で表面処理された基材を用いる場合を例に挙げて説明すると、まず、メルカプトシランが、そのアルキル鎖部位が基材表面の平面に対して垂直になるように基材表面に結合した状態で存在していると仮定する。そして、メルカプトシランの分子模型から、当該メルカプトシラン分子を基材表面の平面に垂直な上方から見た場合の最も広い幅を分子幅と見なして、該分子幅を1辺とする正方形の面積を求め、該面積を、メルカプトシラン1分子により被覆される基材表面の面積、と定義する。
上記正方形が、単層を成して理論密度で前記微量容積空間の底面に敷き詰められていると考えると、微量容積空間の底面積を、前記正方形の面積で除することにより、微量容積空間の底面に敷き詰められた正方形の数が求められる。この正方形の数1個は、メルカプトシラン1分子に相当する。したがって、ここで求めた正方形の数は、微量容積空間の底面に存在し得るメルカプトシラン分子の理論上の最大の数(モル数)(以下、細密メルカプト基密度という。)である。
したがって、式:{微量容積空間の底面のメルカプト基の量(モル数)/細密メルカプト基密度(モル数)}×100により、基材表面のメルカプト基密度(%)が算出される。
[メルカプト基反応性物質を含む液体]
メルカプト基と反応する反応性物質としては、少なくとも、メルカプト基と特異的に反応することが知られている官能基、およびHPLCなどの光学検出による試験装置で検出が可能なように、光(紫外線)吸収特性もしくは蛍光特性をもつ部位を含む物質が好ましい。メルカプト基と特異的に反応することが知られている官能基としては、たとえばマレイミド基、ハロゲン化カルボキシ基、カルボン酸無水物基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、ベンゾフラザン骨格の4位置換フッ素等が挙げられる。光(紫外線)吸収特性もしくは蛍光特性をもつ部位としては、ベンゼン環などの共役結合を有する部位、フルオレン骨格、ベンゾフラザン骨格等が挙げられる。前記官能基と光(紫外線)吸収特性もしくは蛍光特性をもつ部位とを含む物質として、具体的には、塩化ベンゾイル、無水フタル酸、イソチオシアン酸フェニル、N−フェニルマレイミド、4−フルオロ−7−スルファモイルベンゾフラザン、4−フルオロ−7−スルフォベンゾフラザンアンモニウム塩などが使用できるが、上記物質に限定されるものではない。
反応性物質としては、特に、マレイミド基およびベンゼン環を含む化合物が好ましく、具体的にはN−フェニルマレイミドが特に好ましい。N−フェニルマレイミドは、メルカプト基と特異的に反応する官能基と、紫外線を吸収するベンゼン環との最小限の構成であるために、メルカプト基が高密度で基材表面に存在している場合でも、反応性物質自身の体積によって、本発明による定量結果が飽和してしまうのを避けることができこと、ジメチルホルムアミド溶液にしたときの安定性に優れていること、メルカプト基との反応も数分以内に行われること、などの点から好適である。
反応性物質としてN−フェニルマレイミドを用いる場合には、上記工程Cにおける反応が進むための時間は1〜10分間程度が必要となる。基材表面のメルカプト基とN−フェニルマレイミドとが完全に反応するには、室温で10分間ないし30分間を要するが、反応時間が過大に延長されると、溶媒の揮発(N−フェニルマレイミドの濃縮)などの誤差因子が拡大するおそれがある。そのため、反応時間は、実用的には、メルカプト基とN−フェニルマレイミドとの反応が充分に進行し、かつ、測定上の定量性が充分に向上する5分間程度が好適である。
液体中、反応性物質の濃度は、使用する反応性物質によっても異なるが、たとえばN−フェニルマレイミドを用いる場合は、60〜600μモル/Lが好ましく、150〜450μモル/Lがより好ましい。
上記反応性物質を含む液体の溶媒は、反応性物質を均一に溶解するものであればよい。好ましい具体例としては、基材表面のメルカプト基および反応性物質との相互作用が少ないことから、ジメチルスルフォオキシド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアルデヒド、N−メチルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記の中でもジメチルホルムアルデヒドおよび/またはN−メチルピロリドンが好適に用いられる。これらの溶媒は、揮発性が低いため上記工程BおよびDにおける正確な操作が容易であること、反応性物質の溶解性が高いこと、基材表面に対する濡れ性が適度であること、さらに、特にN−フェニルマレイミドを反応性物質として用いる場合に、N−フェニルマレイミドの、基材表面のメルカプト基との結合以外による分解を最小限に抑える目的で、無水グレードの溶媒が入手しやすいこと、などの利点を有する。
また、上記液体は、内部標準物質として、メルカプト基と反応せず、基材表面への吸着が少なく、HPLCで定量できる物質を含有していてもよい。上記液体中に内部標準物質が含まれていると、基材表面のメルカプト基の定量性を向上させることが可能となる場合もあるからである。
内部標準物質としては、例えば、トルエン、ピリジン、アセトアミノフェン、N−フェニルアセトアミン、ジメチルアニリンなどの物質を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
上記本発明の定量方法により定量する基材としては、メルカプト基を有するシランカップリング剤(メルカプトシラン)で表面処理された基材が好適である。
メルカプトシランとしては、一般的にシランカップリング剤として用いられているメルカプトシランを用いることができ、たとえば下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
R−Si(X)(X)(X) …(I)
[式(I)中、Rは、メルカプト基を有する有機性官能基であり、X〜Xは、それぞれ独立に、無機材料と反応する1価の加水分解性基またはアルキル基であって、X〜Xの内の少なくとも1つが加水分解性基である。]
Rは、当該基の末端のうちの少なくとも1つがメルカプト基であることが好ましく、例えば、直鎖または分岐鎖のアルキル基の末端の炭素原子に結合した水素原子がメルカプト基で置換されたメルカプトアルキル基等が挙げられる。Rの具体例としては、例えば、3−メルカプトプロピル基等が挙げられる。
〜Xの加水分解性基としては、ハロゲン原子またはアルコキシ基が好ましい。該ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。該アルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
〜Xのうちの1つまたは2つはアルキル基であってもよい。該アルキル基としては、炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
メルカプトシランの具体例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−ジメトキシ−メチルシランなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。中でも特に3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが、構造がシンプルで、取り扱いが容易なため、好適に用いられる。
メルカプトシランで表面処理される基材としては、シランカップリング剤を表面に結合させられるものであればどのようなものであってもよい。入手の容易さの点と、バイオチップ用途における実績の点で、合成石英、ホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス等のガラスが好ましい。また、ガラス以外の無機材料、たとえば金属、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料からなるもの、または、これらを任意の基材の表面にスパッタや蒸着などによりコーティングさせたもの等を用いることもできる。また、有機物では、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルムを用いることもできる。
メルカプトシランによる表面処理は、たとえば、メルカプトシランを溶解した溶液(メルカプトシラン溶液)を基材表面に所定時間(メルカプトシランが基材表面に吸着するのに必要な時間))接触させることにより行うことができ、たとえば、メルカプトシラン溶液中に基材を浸漬する、基材表面にメルカプトシラン溶液を塗布する等の従来公知の方法が利用できる。
本発明の定量方法によれば、基材表面のメルカプト基量を定量できる。基材表面のメルカプト基量は、バイオチップ用途における品質や、印刷配線用のインクとの結合力の高さと関連しているため、本発明の定量方法を利用することにより、バイオチップの用途に応じた品質の高いバイオチップ基板や、印刷配線用のインクとの結合力が高い基板を作製することが可能となる。
上記本発明の定量方法は、基材表面のメルカプト基に、該基と特異的に反応する反応性物質を作用させた後、基材表面のメルカプト基と反応しなかった反応性物質を回収し、定量する方法である。そのため、本発明の定量方法により定量されるメルカプト基が、基材表面において、反応性物質と反応し得るメルカプト基、つまり化学的反応性を有した状態のメルカプト基量であると考えられる。このように、化学的反応性を有した状態のメルカプト基量を定量することは、従来の方法、たとえば基材表面の水の接触角を測定する方法などでは困難である。
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[実施例1]
横25mm×縦76mm×厚さ1mmのソーダライムガラス基板(以下、ガラス基板)を10%NaCl水溶液中で10分間超音波処理し、純水で3回リンスし、サンプル0を4枚得た。
水1gと2−プロパノール40gとの混合液を70℃以上に熱して還流状態とし、これに3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(以下、メルカプトシランと略記する。)1gを加えて溶液(以下、メルカプトシラン溶液)を得た。
このメルカプトシラン溶液中に、4枚のうち2枚のサンプル0を10分間浸し、2−プロパノールでよくリンスしたのち、105℃のオーブン内に10分間置いた。以上の操作を3回繰り返し、サンプル1を得た。
サンプル表面のメルカプト基の定量に用いる高速液体クロマトグラフ装置(以下、HPLC装置)を次の条件で準備した。
(1)検出波長:254nm。
(2)カラム:Imtakt社製CadenzaCD−C18。
(3)流速:1.0mL/分(min)。
(4)溶媒:水/アセトニトリル=4/6(体積比)。
別途、N−フェニルマレイミド45mgをジメチルホルムアミド(以下、DMF)450μLに溶解した溶液(以下、テスト液0)を、DMFで2000倍希釈し、テスト液1を得た。このテスト液1には、およそ2.9×10−4M(以下、テスト液濃度とする)のN−フェニルマレイミドが含まれていることになる。
次に、それぞれ2枚ずつのサンプル0および1(以下、各サンプル)の上に、図1と同様のカバーグラス12を置き、各サンプルとカバーグラス12との間に挟まれる空間14の体積が20μLになるようにした。カバーグラス12としては、各サンプルと接触する面積(凹部12の底面12aの面積)が1000mm、土手12bの高さが20μm、土手12bの幅が0.5mmの凹部12と、2つの孔13とが形成されたものを用いた。
次に、この空間14内に、20μLのテスト液1を、20μL用のマイクロピペットを用い、カバーグラス12の片方の孔13にピペットチップの先端を接触させてゆっくりと供給し、テスト液1で空間14内を満たし(以下、満たした容積を投入容積とする。)、この時を時間0とし、各サンプルとカバーグラス12とからなる全体を、それぞれ個別にポリプロピレン製の密閉容器に入れた。
時間0から10分間が経過したとき、各サンプルとカバーグラス12との間の空間14内のテスト液1を、それぞれ、次の方法で回収した。すなわち、カバーグラス12の一辺にピンセットを当てて持ち上げ、持ち上げた辺と反対側の辺が各サンプルに接触したままの状態にした。このとき、空間14内のテスト液1は、表面張力により、各サンプルとカバーグラス12が接触している辺の周囲に集まるので、ここに20μL用のマイクロピペットの先端を当て慎重に吸いとり、吸いとったテスト液1をHPLC用サンプル瓶に移した。
それぞれ2枚のサンプル0および1から回収したテスト液1(以下、サンプル0から回収したテスト液1をサンプル0液、サンプル1から回収したテスト液1をサンプル1液という。)を、それぞれ直ちに上述した条件でHPLC装置により分析してN−フェニルマレイミドのピークエリアを求めた。表1に各液(サンプル0液×2、サンプル1液は×2)のピークエリアを示す。
また、別途、テスト液1の調製後、その一部(20μL×2)を直ちに取り分けてHPLC用サンプル瓶に密閉した。これを無操作テスト液1とした。そして、2つの無操作テスト液1について、時間0から3時間が経過したとき、前記サンプル0液、サンプル1液と同様、HPLC装置で分析してN−フェニルマレイミドのピークエリアを求めた。2つの無操作テスト液1のHPLCピークエリアを表1に示す。
Figure 2008256549
表1において、サンプル0液のピークエリアよりもサンプル1液のピークエリアのほうが有意に少なく、この結果から、メルカプトシランで表面処理したガラス基板表面がメルカプト基で修飾され、該メルカプト基にN−フェニルマレイミドが反応したことが分かる。
また、表1の結果から、無操作テスト液1のピークエリアよりもサンプル0液のピークエリアが大きく、操作によって促進誤差が生じていることがわかるが、該促進誤差は、常にサンプル0液を同時に定量操作する限り、最終的に得る結果(メルカプト基密度)には影響しない。その理由を以下に示す。
すなわち、テスト液1においては、調製後、時間の経過や空間14への供給、空間14からの回収などの操作によって、上述したように、促進誤差が生じている。これはDMFの揮発がおこり、そのぶん、HPLCで分析したときにN−フェニルマレイミドのHPLCピークエリアが大きく評価されたためと推測されるが、HPLCピークエリアの変化率を取り扱う限り、以下に示す理由から、定量誤差としての影響は無視して良い。
すなわち、まず、無操作テスト液1のN−フェニルマレイミドピークエリアAiと、サンプル0液のN−フェニルマレイミドピークエリアA0との比(Ai/A0)を誤差係数eとする。また、A0と、サンプル1液のN−フェニルマレイミドピークエリアA1との差(A0−A1)を見かけの減少量Adaとすると、Adaに対してeを乗じる(Ada×e)ことにより、サンプル1の表面においてメルカプト基と反応して減少したN−フェニルマレイミドの量(正味減少量)が求められる。
ここで、(正味減少量/Ai)×100を正味減少率Adr(%)と定義すると、これはすなわち{(A0−A1)/A0}×100のことであり、もはやAiは介在しない。したがって、Adrを求めた場合、Aiの変化、つまり促進誤差は無視できる。
次に、上記HPLCの分析結果から、N−フェニルマレイミドのAdrを求めた。すなわち、表1に示す、サンプル0液の2つのHPLCピークエリアの平均値をA0、サンプル1液の2つのHPLCピークエリアの平均値をA1として、式{(A0−A1)/A0}×100によりAdrを求めた。その結果、該Adrは12.0%であった。
次に、下記式により、空間14の底面(サンプル1の表面)のメルカプト基と反応した反応性物質の量を算出した。その結果、該反応性物質の量は、6.96×10−10モルであった。
式:テスト液1中のN−フェニルマレイミド濃度(2.9×10−4M)×テスト液1の投入容積(20μL)×正味減少率(12.0%)/100
したがって、サンプル1における空間14の底面のメルカプト基量は、6.96×10−10モルであった。
次に、以下の計算によって、サンプル1表面のメルカプト基密度(ガラス基板の表面をメルカプトシランがどれだけ覆っているか)を評価した。
すなわち、まず、メルカプトシランの分子模型から、メルカプトシランのアルキル鎖部位がガラス基板表面の平面に対して垂直に存在していると仮定し、メルカプトシラン分子をガラス基板表面の平面に垂直な上方から見た場合の最も広い幅を0.5nmと見なした。該幅を1辺とする正方形が単層を成して理論密度で空間14の底面(1000mm)に敷き詰められた場合、正方形の数は6.64×10−9個と推定される。したがって、この場合の細密メルカプト基密度は6.64×10−9molである。
次に、上記で求めた「空間14の底面のメルカプト基量」から、式:(空間14の底面のメルカプト基量/細密メルカプト基密度)×100により、空間14の底面のメルカプト基密度を算出した。その結果、サンプル1における空間14の底面のメルカプト基密度は10.5%であった。
したがって、サンプル1表面のメルカプト基密度も10.5%であると推測される。
以上のように、本発明の定量方法により、ガラス基板上にコーティングされたメルカプト基の量を定量することが出来た。ここで定量されたメルカプト基の量は、N−フェニルマレイミドと反応し得るメルカプト基、つまり化学的に有効であったメルカプト基の量である。
本発明の定量方法を用いれば、バイオチップ基板、配線基板などに必要な官能基量を定量できるため、バイオチップ基板、配線基板等として高品質な基材を提供できる。
基材11上にカバーグラス12により空間を形成する際の基材11とカバーグラス12との配置を説明する概略図である。 図1に示す基材11とカバーグラス12との配置の縦断面図である。
符号の説明
11…基材、12…カバーグラス、13…孔、14…空間。

Claims (7)

  1. 下記工程A〜Eを含むことを特徴とする基材表面のメルカプト基の定量方法。
    工程A:基材上に、該基材表面を底面とする、平均高さが500μm以下であり、底面積が100〜10000mmである空間を形成する工程。
    工程B:前記空間に、前記基材表面のメルカプト基と反応するメルカプト基反応性物質を含む液体を満たす工程。
    工程C:前記基材表面のメルカプト基と前記メルカプト基反応性物質とを反応させる工程。
    工程D:前記反応後の液体を回収する工程。
    工程E:回収した前記液体中の前記メルカプト基反応性物質を定量し、反応前後の差分を求める工程。
  2. 前記メルカプト基反応性物質が、マレイミド基およびベンゼン環を含む化合物である請求項1に記載の定量方法。
  3. 前記マレイミド基およびベンゼン環を含む化合物が、N−フェニルマレイミドである請求項2に記載の定量方法。
  4. 前記工程Eにおいて、前記メルカプト基反応性物質の定量を、高速液体クロマトグラフィーを用いて行う請求項2または3に記載の定量方法。
  5. 前記液体の溶媒がジメチルホルムアミドおよび/またはN−メチルピロリドンである請求項1〜4のいずれか一項に記載の定量方法。
  6. 前記基材が、メルカプトシランで表面処理された基材である請求項1〜5のいずれか一項に記載の定量方法。
  7. 前記基材が、バイオチップ基板または配線基板である請求項6に記載の定量方法。
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