JP2008254262A - 枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法において、製造コストを低減させるとともに、耐久性を向上させ、かつ安定したくわえ力を得る。
【解決手段】 爪台4に対して開閉自在な爪13のくわえ面16には多数の突起20が一体に突設されており、これらの突起20の紙搬送方向下流側の側壁20cが搬送される紙12に対して垂直方向を指向している。突起20の紙搬送方向上流側の側壁20bが紙搬送方向下流側に傾斜している。この爪13を金属粉末射出成形法によって形成する。
【選択図】 図6
【解決手段】 爪台4に対して開閉自在な爪13のくわえ面16には多数の突起20が一体に突設されており、これらの突起20の紙搬送方向下流側の側壁20cが搬送される紙12に対して垂直方向を指向している。突起20の紙搬送方向上流側の側壁20bが紙搬送方向下流側に傾斜している。この爪13を金属粉末射出成形法によって形成する。
【選択図】 図6
Description
本発明は、爪台とこの爪台に対して開閉する爪とによってシート状物をくわえる枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法に関するものである。
枚葉輪転印刷機においては、紙を一枚ずつくわえて搬送するために開閉自在な爪とこの爪に対向する爪台とからなる爪装置が回転胴の外周切欠きや排紙チェーンに支架された軸上に配設されている。この種の爪装置における爪は、一枚ずつ送られてくる紙を常に同じ位置でくわえる必要があり、仮に紙のくわえ位置がずれると、見当ずれと称する絵柄位置の誤差やばらつきが発生したり、ダブリと称して絵柄が二重に印刷されたりして、印刷品質を低下させる原因となる。このために、爪と爪台との紙をくわえるそれぞれのくわえ面に、紙との摩擦力を増大させるための表面加工が施されている。
例えば、爪と爪台のいずれか一方のくわえ面に多数の凹部を設け、この凹部内にゴムを充填させ、このゴムによってくわえ面の摩擦力を増大させたものがある(特許文献1参照)。また、爪と爪台のそれぞれのくわえ面に爪チップと爪台チップを設けたり、爪台のくわえ面に電気メッキ層の溶着材層を形成し、この溶着材層中に超砥粒を略半分だけ埋設し、この超砥粒によって爪台のくわえ面のくわえ力を増大させたものもある(例えば、特許文献2参照)。また、爪と爪台のくわえ面にセレーション等の突起を加工したものや、タングステンカーバイトの溶射等によってくわえ面に梨地加工を施したものもある。
実開昭60−157234号公報
実開昭63−47133号公報
上述した従来の枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法のうち、凹部内にゴムを充填させるものは、ゴム自体の摩耗が比較的早く耐久性に劣るという問題があった。また、上記した凹部内にゴムを充填させるものや、爪と爪台のそれぞれのくわえ面に爪チップと爪台チップを設けるものでは、2部材を各々に作成した後に2部材を一体化させる構造であるため、加工工数や一体化させるための工数が増加するという問題があった。また、溶着材層中に超砥粒を埋設するものや、くわえ面にセレーション等の突起を加工するものは、耐久性には優れているが、切削や研磨等による加工が必要となるため、品質にばらつきが発生することにより所定のくわえ力が得られない場合があり、かつ加工のための工数も大幅にかかるため製造コストも嵩むといった問題があった。また、くわえ面に梨地加工を施すものは梨地面が比較的早く摩耗してしまい耐久性に劣るという問題があった。
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、製造コストを低減させるとともに、耐久性を向上させ、かつ安定したくわえ力を得ることができる枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法を提供するところにある。
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、爪台と爪とによってシート状物をくわえる枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法であって、前記爪のくわえ面に多数の突起を一体に設けるとともに、前記爪のくわえ面と反対側の部位にくわえ面と略平行な面を設け、この爪を金属粉末射出成形法によって形成したものである。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記突起のシート状物搬送方向下流側がシート状物搬送方向下流側に傾斜しているものである。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記突起の先端が先鋭化しているものである。
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記爪のくわえ部が側面視において先端に向かって先細状に形成されているものである。
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記突起のシート状物搬送方向下流側が搬送されるシート状物に対して垂直方向を指向しているものである。
請求項6に係る発明は、請求項1または5に係る発明において、前記突起のシート状物搬送方向上流側がシート状物搬送方向下流側に傾斜しているものである。
請求項7に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記突起は円錐形に形成されているものである。
本発明によれば、爪のくわえ面に一体に設けた多数の突起によって爪によるくわえ力が増大することにより、一枚ずつ送られてくる紙が常に同じ位置でくわえられ紙のくわえ位置がずれないため、見当ずれやダブリが発生するようなことがないから印刷品質を向上させることができる。また、爪のくわえ面と反対側の部位にくわえ面と平行な面を設けたことにより、金属粉末射出成形法によって形成する際に、爪のくわえ面にひけが発生するようなことがないから、くわえ面に一体に設けた多数の突起の高さにばらつきが発生することなく均一の高さに形成される。このため、安定したくわえ力が得られるとともに、くわえ力が一部の突起に偏ることによってシート状物に突起跡が形成されることやシート状物に孔が形成されるようなこともない。また、切削や研磨等の加工が不要になるため加工工数を削減でき、かつ爪と突起とを一体化させるための工数を削減することができるから、製造コストを低減することができる。また、金属粉末射出成形法による高圧での射出成形によって、爪の突起の耐久性を向上させることができる。
請求項2および5に係る発明によれば、爪にくわえられているシート状物が引っ張られることにより、シート状物に対する突起の食い込み量が増加するため、シート状物と突起との間の摩擦力が増大するから、紙のくわえ位置のずれをより一層規制することができる。
請求項3に係る発明によれば、金属粉末射出成形法による高圧での射出成形によって、突起の先端を確実に先鋭化することができる。このため、突起の先端がシート状物により一層確実に食い込むから、シート状物に対して大きな摩擦力が得られ、紙のくわえ位置のずれをより一層規制することができる。
請求項6および7に係る発明によれば、爪のシート状物を保持する先端の表面積を小さくすることにより、爪によるシート状物を保持する保持力が増大するから、紙のくわえ位置のずれをより一層規制することができる。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係る枚葉輪転印刷機における爪装置の爪が設けられた圧胴の一部を示す側面図、図2は同じく爪を示し、同図(A)は側面図、同図(B)は外観斜視図、同図(C)は一部を破断して示す外観斜視図、図3は図2(A)におけるIII 矢視図、図4(A)は図3におけるIV(A)部の拡大図、同図(B)は同図(A)におけるIV(B)-IV(B) 線断面図、図5は同じく製造方法の工程図、図6は図1におけるVI部の拡大図、図7は同じく爪によるシート状物を保持する保持力が増大する理由を説明するためのモデルであって、同図(A)は突起のシート状物搬送方向下流側が搬送されるシート状物に対して垂直方向を指向し、かつ突起のシート状物搬送方向上流側がシート状物搬送方向下流側に傾斜している場合を示し、同図(B)は突起のシート状物搬送方向下流側がシート状物搬送方向下流側に傾斜している場合を示す。
図1に符号1で示す圧胴の外周部に設けられた切欠き2内には、圧胴1の胴軸方向に延在する爪軸3が図示を省略した軸受によって回動自在に軸架されている。切欠き2の壁面の外周側端部には、圧胴1の胴軸方向に延在する長尺状に形成された爪台4が複数個のボルト5によって固定されている。爪軸3上には爪台4とともに形成される複数個のくわえ替え装置6が軸方向に並設されている。すなわち、爪軸3には、ばね受け7aとストッパ受け7bとを有するブラケット7がボルト8によって割締め固定されている。
9は爪ホルダーであって、ばね受け7aと対向するばね受け9aとストッパ受け7aと対向し進退調整自在なストッパ10とを備え、ブラケット7に隣接し軸方向への移動が規制された状態で爪軸3に回動自在に軸装されている。ばね受け7aとばね受け9aとの間には、これらを互いに離間させる方向の回動力を爪ホルダー9に付与する爪ばね11が弾装されており、その弾発力による爪ホルダー9の回動限はストッパ10によって規制されている。爪ホルダー9の遊端部には、爪台4とでシート状物としての紙12をくわえる爪13がねじ止めされており、胴端部の図示しないカム機構で爪軸3を所定角度ずつ往復回動させることにより、爪ばね11を介し爪ホルダー9が回動して爪13が爪台4に対して開閉するように構成されている。紙12をくわえた圧胴1は図中矢印A方向(紙搬送方向)に回転して紙12を搬送する。以上説明した圧胴1に設けられた爪装置については、従来から広く知られている枚葉輪転印刷機の爪装置と格別変わるところはない。
本発明の特徴とするところは、爪13を金属粉末射出成形法によって形成した点にある。以下、図2ないし図7を用いてこれを説明する。図2において、爪13は支持部14とこの支持部14の上部に一体に設けられたくわえ部15とによって略逆L字状に形成されている。くわえ部15は、爪13が設けられた圧胴1と対向する渡し胴(図示せず)との間で紙12をくわえ替えるとき、先端部が渡し胴に干渉しないように、下面に設けたくわえ面16と上面17との間に角度αが形成されるように、側面視において先端に向かって(矢印B方向)先細状に形成されている。くわえ部15の上面17には、底面18aがくわえ面16と平行で平面視矩形状に形成された凹部18が設けられており、上面17の両側部にはリブ17a,17aが形成されている。
爪13のくわえ面16には、図3に示すように多数の突起20が互いに等間隔おいて一体に設けられている。これらの突起20は、図4に示すように先端20aが平坦状で平面視において菱形に形成されており、矢印B方向(紙搬送方向上流)側に位置する側壁20bが、同図(B)に示すように矢印A方向(紙搬送方向下流側)に傾斜するように形成され、紙搬送方向下流側の側壁20cが搬送される紙12に対して垂直方向を指向している。すなわち、紙12に対する側壁20cのなす角度βが90°に形成されている。
次に、図5を用いてこのような形状を呈する爪13の製造方法について説明する。先ず、爪13の材料となる金属の粉末と粘結材として機能するプラスチック(バインダー)とを混合して粘土状とする。次いで、この混合体を造粒工程においてかき混ぜ、射出成形機と金型とを用いて成形品を加工する。加工した成形品を脱脂工程において炉に入れて加熱し成形品からプラスチックを除去する。さらに、焼成工程において脱脂工程よりも高い温度によって成形品を加熱し焼結させ、仕上げ工程によって外観の精度を向上させる。
このように、爪13のくわえ面16に一体に設けた多数の突起20によって爪13によるくわえ力が増大することにより、一枚ずつ送られてくる紙12が常に同じ位置でくわえられ紙12のくわえ位置がずれないため、見当ずれやダブリが発生するようなことがないから印刷品質を向上させることができる。また、爪13を金属粉末射出成形法によって形成したことにより、切削や研磨等の加工が不要になるため、加工工数が削減されるから製造コストの低減を図ることができる。また、金属粉末射出成形法による高圧での射出成形によって、爪13の突起20の耐久性を向上させることができる。また、爪13のくわえ面16に一体に設けた多数の突起20の紙搬送方向上流側(矢印B方向)の側壁20bを、図7(A)に示すように紙搬送方向下流側(矢印A方向)に傾斜させたことにより、先端20aの表面積が小さくなる。このため、紙12に対する突起20の押圧力が増大することにより、爪13による紙12を保持する保持力が増大するため、一枚ずつ送られてくる紙が常に同じ位置でくわえられ紙のくわえ位置がずれないため、見当ずれやダブリが発生するようなことがないから印刷品質を向上させることができる。また、爪13と突起20とを金属粉末射出成形法によって一体形成することができるため、突起20を加工する加工工数や爪13と突起20とを一体化させるための工数を削減することができる。
また、爪13のくわえ面16と反対側の上面17にくわえ面16と平行な底面18aを有する凹部18を設けたことにより、金属粉末射出成形法で形成する際に、爪13のくわえ面16にひけが発生するようなことがないから、くわえ面16に一体に設けた多数の突起20の高さにばらつきが発生することなく均一の高さに形成される。このため、安定したくわえ力が得られるだけではなく、くわえ力が一部の突起に偏ることによって爪13にくわえられる紙12に突起跡が形成されることや紙12に孔が形成されるようなこともない。
また、爪13と爪台4とによって搬送される紙12が矢印B方向へ引っ張られたとき、この紙12の矢印B方向への移動を規制する側壁20cが、図7(A)に示すように、紙12に対して角度βが90°に形成されていることにより、紙12に対する突起20の食い込み量がより増加する。このため、紙12と突起20との間の摩擦力が増大するから、紙12のくわえ位置のずれをより一層規制することができる。この側壁20cの角度βが90°を越えると、紙12が矢印B方向へ引っ張られたとき、この側壁20cによる紙12の矢印B方向への移動を規制する規制力が弱くなる。したがって、この側壁20cの角度βは、同図(B)に示すように90°以下に設定することが望ましい。
図8は本発明の第2の実施の形態において要部を拡大して示し、同図(A)はくわえ爪の正断面図、同図(B)は図1におけるVI部の拡大図である。同図に示すように、この第2の実施の形態においては、爪30のくわえ面31に一体に設けられた多数の突起32は鉛直下方に向かって突設されており、先端32aが先鋭化された円錐形に形成されている。この第2の実施の形態の爪30も上述した第1の実施の形態の爪13と製造方法は同じで金属粉末射出成形法によって形成されている。
このように爪30を金属粉末射出成形法によって形成したことにより、金属粉末射出成形法による高圧での射出成形によって、突起32の先端32aを確実に先鋭化することができる。このため、突起32の先端32aが紙12に一層確実に食い込むから、紙12に対して大きな摩擦力が得られ、紙12のくわえ位置のずれをより一層規制することができる。
図9は本発明の第3の実施の形態において要部を拡大して示し、同図(A)はくわえ爪の正断面図、同図(B)は図1におけるVI部の拡大図、図10は同じく爪によるシート状物を保持する保持力が増大する理由を説明するためのモデルである。図9に示すように、この第3の実施の形態においては、爪40のくわえ面41に一体に設けられた多数の突起42は、上述した第2の実施の形態と同様に金属粉末射出成形法によって、先端42aが先鋭化されている。この第3の実施の形態では、紙搬送方向上流側に位置する側壁42bが、図10に示すように紙搬送方向下流側(矢印A方向)に傾斜するように形成され、かつ紙搬送方向下流側の側壁42cが紙搬送方向下流側(矢印A方向)に傾斜するように形成されている。すなわち、紙12に対する側壁42cのなす角度βが90°未満に形成されている。
このように構成されていることにより、爪42によって搬送される紙12が矢印B方向へ引っ張られたとき、この紙12の矢印B方向への移動を規制する側壁42cが、紙12に対して角度βが90°未満に形成されていることにより、紙12に対する突起42の食い込み量がより増加する。また、突起42の先端42aが先鋭化されていることにより、突起42の先端42aが紙12に一層確実に食い込む。このため、紙12と突起42との間の摩擦力が増大するから、紙12のくわえ位置のずれをより一層規制することができる。
なお、本実施の形態においては、圧胴に設けられた爪について説明したが、渡し胴や排紙チェーンあるいはスイング装置等に設けられた爪にも適用してもよい。
1…圧胴、4…爪台、12…紙、13,30,40…爪、15…くわえ部、16,31,41…くわえ面、18…凹部、20,32,42…突起。
Claims (7)
- 爪台と爪とによってシート状物をくわえる枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法であって、前記爪のくわえ面に多数の突起を一体に設けるとともに、前記爪のくわえ面と反対側の部位にくわえ面と略平行な面を設け、この爪を金属粉末射出成形法によって形成したことを特徴とする枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法。
- 前記突起のシート状物搬送方向下流側がシート状物搬送方向下流側に傾斜していることを特徴とする請求項1記載の枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法。
- 前記突起の先端が先鋭化していることを特徴とする請求項1記載の枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法。
- 前記爪のくわえ部が側面視において先端に向かって先細状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法。
- 前記突起のシート状物搬送方向下流側が搬送されるシート状物に対して垂直方向を指向していることを特徴とする請求項1記載の枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法。
- 前記突起のシート状物搬送方向上流側がシート状物搬送方向下流側に傾斜していることを特徴とする請求項1または5記載の枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法。
- 前記突起は円錐形に形成されていることを特徴とする請求項1記載の枚葉輪転印刷機における爪装置の爪の製造方法。
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