JP2008252189A - スピーカアレイおよびスピーカアレイシステム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】直線状に配列された複数のスピーカと、各スピーカに対応して設けられ、入力された音声信号に所定のフィルタ処理を施して対応するスピーカへ出力する1次元デジタルフィルタとを備えるスピーカアレイにおいて、各1次元デジタルフィルタにより形成される2次元デジタルフィルタの周波数特性を2次元周波数平面で表した場合に、規格化時間周波数が一定である断面に、(a)規格化時間周波数が高いほど規格化空間周波数方向に広い通過域を有し、(b)通過域の端に近づくほど、また、規格化時間周波数が高くなるほど位相回転量が増加することを特徴とするフィルタ係数を各1次元デジタルフィルタへ設定する。
【選択図】図2
Description
この種のスピーカアレイにおいては、低域から高域までの幅広い音域で定指向性を実現できることが好ましく、このようなことを実現する技術の一例としては、非特許文献1に開示された技術が挙げられる。
非特許文献1には、周波数領域で時間周波数別に空間窓を空間領域(または空間周波数領域)で設計し、時間周波数が高くなるほど空間窓の窓幅を狭くする(空間周波数領域では通過域を広くする)という手法が開示されている。
松本康志、西川清 "一定サイドローブ量の指向性アレイスピーカの設計方法" 電子情報通信学会 信学技報 2004−74 p13〜18
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、指向性を持たせつつ楽音や音声の拡声を行う際に、高域においても定指向性を実現しつつ充分な音量を確保することを可能にする技術を提供することを目的としている。
また、前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、さらに、位相回転量と規格化時間周波数とが比例関係を持たない部分が含まれるように設定されていてもよい。
また、前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、さらに、位相回転量と規格化時間周波数とが比例関係を持たない部分が含まれるように設定されていてもよい。
(A−1:構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るスピーカアレイ100の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、このスピーカアレイ100は、所定の間隔(本実施形態では、一定の間隔D)で直線状に配列されたトランスデューサ(本実施形態では、スピーカ)110−1、110−2…110−nと、それらスピーカと同数の1次元デジタルフィルタ120−1、120−2…120−nと、を有している。
なお、本実施形態では、アナログ形式の音声信号が外部音源からスピーカアレイ100へ供給される場合について説明するが、デジタル形式の音声信号が外部音源からスピーカアレイ100へ供給されるとしても勿論良く、このように、デジタル形式の音声信号が外部音源から供給される場合には、スピーカアレイ100に上記A/D変換器を設けておく必要がないことは言うまでもない。
そして、1次元デジタルフィルタ120−iの各々から出力された音声信号は、D/A変換器(図示省略)によって音声信号へと変換され、その1次元デジタルフィルタ120−iに対応するスピーカ110−iへ供給される。
なお、本実施形態では、スピーカ110−iがアナログ形式の音声信号に応じた音を放音する場合について説明するが、スピーカ110−iがデジタル形式の音声信号に応じた音を放音する場合には、上記D/A変換器を設ける必要がないことは言うまでもない。
以上がスピーカアレイ100の構成である。
しかしながら、スピーカアレイ100においては、1次元デジタルフィルタ120−iの各々に、本発明に係るスピーカアレイに特徴的なフィルタ係数が予め設定されているため、それら1次元デジタルフィルタにより形成される2次元デジタルフィルタには本発明に係るスピーカアレイに特徴的な指向特性および周波数特性が実現されるようになっている。
以下、上記1次元デジタルフィルタ120−iに設定されているフィルタ係数と、そのフィルタ係数により実現される指向特性および周波数特性とについて図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、スピーカ110−iの各々は理想的な特性(すなわち、その指向特性が出力音声の周波数に依存しないといった特性)を有しているものする。また、以下では、スピーカの配置間隔D=0.068[m]、サンプリング周波数fs=7000[Hz]、FIRタップ数=31、n(スピーカの個数)=15、音響ビーム端の角度φs=37°であるとする。
さて、1次元デジタルフィルタ120−iの各々に設定されているフィルタ係数は所謂フーリエ級数近似により算出されたものであるが、以下では、まず、フーリエ級数近似の際の目標振幅特性および目標位相特性について説明する。
より詳細に説明すると、非特許文献1には、各スピーカに接続されている1次元デジタルフィルタ群により形成される2次元デジタルフィルタの振幅特性を2次元周波数平面で見た場合、スピーカアレイの出力を充分遠方の観測点で観測した場合の周波数特性は、2次元周波数平面において以下の数1で表される直線上に分布する振幅特性であることが開示されている。
(数1)f2=f1・D・sin(φ)/(c・T)
ただし、数1において、f1は規格化時間周波数、f2は規格化空間周波数、Dはトランスデューサ間隔、Tは時間サンプリング周期、cは音速である。
(数2)φ=sin-1{(f2・c・T)/(f1・D)}
(数3)θ=α(1−cos(φ))f1
数3においてはαの絶対値が大きい程、位相回転量θの絶対値が大きくなるが、位相を回転しすぎると振幅特性に乱れが生じてしまうため、上記αの値は上記振幅特性の乱れと、高域での音量上昇の度合いとを見極めて適宜定めるようにすれば良い。
図4および図5を参照すれば明らかなように、本実施形態に係るスピーカアレイ100によれば、一定の値以上の周波数について、音響ビームの主ローブ幅が略一定に保たれていること(すなわち、定指向性が実現されていること)が判る。
このため、スピーカアレイ100によれば、その中央部に位置するスピーカに過負荷がかかって破損することを回避しつつ、高域の音量を上げることが可能になり、結果として、充分な音量を確保することが可能になる。また、本実施形態に係るスピーカアレイ100が高域で定指向性を有していることは図4および図5を参照すれば明らかである。
つまり、本実施形態によれば、指向性を持たせつつ楽音や音声の拡声を行う際に、高域においても定指向性を実現しつつ充分な音量を確保することが可能になる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態に以下に説明するような変形を加えても良いことは勿論である。
(1)上述した実施形態では、スピーカ110−iが理想的な特性を有している場合について説明した。しかしながら、スピーカなどトランスデューサは、周波数別指向特性を有していることが一般的であるから、2次元デジタルフィルタに付与すべき振幅特性(すなわち、各1次元デジタルフィルタ120−iに設定すべきフィルタ係数)を、トランスデューサの周波数別指向特性を加味して決定するようにしても良い。このようなことは、例えば、「西川清、大崎貴也“2次元デジタルフィルタを用いた指向性アレイスピーカ”(1995)」に開示された方法と同様の方法を適用することにより可能である。
例えば、比例係数αをf1の関数α(f1)として、以下の(数4)のようにしてもよい。
(数4)θ=α(f1)×(1−cos(φ))f1
ここで、α(f1)は、f1が増加するとα(f1)の絶対値が増加するような関数であれば、θとf1とを比例関係としなくてもよい。このようにすると、高域側の位相を回転させても低域側の位相の回転を抑えることも可能となり、振幅特性の乱れを低減することができる。α(f1)が、所定のf1までは0とし、所定のf1以上では絶対値が増加していくような関数とした場合には、所定のf1より低域側ではα(f1)=0となり位相を回転させず、高域側では空間領域における窓幅が非常に狭くなる影響を抑制することが可能となる。このようにすると、図7に示すような目標位相特性となる。
しかしながら、「西川清、横山哲哉、宮岸美貴子“直線状スピーカアレーと2次元FIRフィルタを用いた音像移動の方法”(信学論J83-A No7 P.839-849 2000年7月)」に開示されている焦点を形成する設計によっても、上記実施形態と同様に位相の回転を設定するため、指向性に周波数依存性が現れない定指向性を高域においても実現するとともに、充分な音量を確保することが可能になる。
ただし、上記の如きスピーカアレイシステムに本発明を適用する場合には、そのスピーカアレイシステムを構成する全てのスピーカアレイについて位相回転により空間窓幅が広がってしまうことは好ましくないため、最も高い出力音域に対応するスピーカアレイ(各スピーカの配置間隔が最も狭いスピーカアレイ)にのみ上記実施形態にて説明した位相回転を施す(具体的には、図2(b)に示す位相特性を設定する)ようにすれば良い。
Claims (4)
- 所定の間隔で直線状に配列された複数のスピーカと、前記複数のスピーカの各々に対応して設けられ、入力された音声信号に所定のフィルタ処理を施して出力する1次元デジタルフィルタと、を備え、入力された音声信号を前記各1次元デジタルフィルタへ供給する一方、前記各1次元デジタルフィルタから出力された音声信号を、対応する前記スピーカへ供給しその音声信号に応じた音声を出力させるスピーカアレイにおいて、
前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、
前記各1次元デジタルフィルタにより形成される2次元デジタルフィルタの周波数特性を2次元周波数平面で表した場合に、
(a)規格化時間周波数が高くなるにつれて規格化空間周波数方向の幅が広くなる通過域を有する断面を規格化時間周波数毎に形成し、
(b)前記通過域の端に近づくほど、また、規格化時間周波数が高くなるほど位相回転量が増加するように設定されている
ことを特徴とするスピーカアレイ。 - 前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、さらに、位相回転量と規格化時間周波数とが比例関係を持たない部分が含まれるように設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載のスピーカアレイ。 - 各々出力音域の異なる複数のスピーカアレイを有するスピーカアレイシステムにおいて、
前記複数のスピーカアレイの各々は、
出力音域が高い程狭い間隔で直線状に配列された複数のスピーカと、
前記複数のスピーカの各々に対応して設けられ、入力された音声信号に所定のフィルタ処理を施して出力する1次元デジタルフィルタと、
を備え、入力された音声信号を前記各1次元デジタルフィルタへ供給する一方、前記各1次元デジタルフィルタから出力された音声信号を、対応する前記スピーカへ供給しその音声信号に応じた音声を出力させ、
前記複数のスピーカアレイのうち、出力音域が最も高いスピーカアレイの前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、
前記各1次元デジタルフィルタにより形成される2次元デジタルフィルタの周波数特性を2次元周波数平面で表した場合に、
(a)規格化時間周波数が高くなるにつれて規格化空間周波数方向の幅が広くなる通過域を有する断面を規格化時間周波数毎に形成し、
(b)前記通過域の端に近づくほど、また、規格化時間周波数が高くなるほど位相回転量が増加するように設定されている
ことを特徴とするスピーカアレイシステム。 - 前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、さらに、位相回転量と規格化時間周波数とが比例関係を持たない部分が含まれるように設定されている
ことを特徴とする請求項3に記載のスピーカアレイシステム。
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