JP2008252189A - スピーカアレイおよびスピーカアレイシステム - Google Patents

スピーカアレイおよびスピーカアレイシステム Download PDF

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Abstract

【課題】指向性を持たせつつ楽音や音声の拡声を行う際に、高域においても定指向性を実現しつつ充分な音量を確保する。
【解決手段】直線状に配列された複数のスピーカと、各スピーカに対応して設けられ、入力された音声信号に所定のフィルタ処理を施して対応するスピーカへ出力する1次元デジタルフィルタとを備えるスピーカアレイにおいて、各1次元デジタルフィルタにより形成される2次元デジタルフィルタの周波数特性を2次元周波数平面で表した場合に、規格化時間周波数が一定である断面に、(a)規格化時間周波数が高いほど規格化空間周波数方向に広い通過域を有し、(b)通過域の端に近づくほど、また、規格化時間周波数が高くなるほど位相回転量が増加することを特徴とするフィルタ係数を各1次元デジタルフィルタへ設定する。
【選択図】図2

Description

本発明は、楽音や音声の拡声を指向性を持たせつつ行う際に、低域から高域までの広い音域で指向性に周波数依存性が現れない定指向性を実現する技術に関する。
スピーカを所定の間隔で直線状に複数配列して形成されるスピーカアレイを用いて定指向性を実現しつつ楽音や音声の拡声を行う技術が一般に普及している。
この種のスピーカアレイにおいては、低域から高域までの幅広い音域で定指向性を実現できることが好ましく、このようなことを実現する技術の一例としては、非特許文献1に開示された技術が挙げられる。
非特許文献1には、周波数領域で時間周波数別に空間窓を空間領域(または空間周波数領域)で設計し、時間周波数が高くなるほど空間窓の窓幅を狭くする(空間周波数領域では通過域を広くする)という手法が開示されている。
松本康志、西川清 "一定サイドローブ量の指向性アレイスピーカの設計方法" 電子情報通信学会 信学技報 2004−74 p13〜18
しかしながら、非特許文献1に開示された手法では、最終的に得られる係数はその設計通りに時間周波数が高い場合に空間窓の窓幅が狭く、係数が特定のチャネルに偏ってしまう。このため、非特許文献1に開示された手法にしたがって設計されたスピーカアレイには、同じ信号レベルの入力信号に対して、高域になるほど特定のスピーカに対するレベルが高くなり、結果的に音量を確保することが困難になってしまう、といった問題点があった。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、指向性を持たせつつ楽音や音声の拡声を行う際に、高域においても定指向性を実現しつつ充分な音量を確保することを可能にする技術を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明は、所定の間隔で直線状に配列された複数のスピーカと、前記複数のスピーカの各々に対応して設けられ、入力された音声信号に所定のフィルタ処理を施して出力する1次元デジタルフィルタと、を備え、入力された音声信号を前記各1次元デジタルフィルタへ供給する一方、前記各1次元デジタルフィルタから出力された音声信号を、対応する前記スピーカへ供給しその音声信号に応じた音声を出力させるスピーカアレイにおいて、前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、前記各1次元デジタルフィルタにより形成される2次元デジタルフィルタの周波数特性を2次元周波数平面で表した場合に、(a)規格化時間周波数が高くなるにつれて規格化空間周波数方向の幅が広くなる通過域を有する断面を規格化時間周波数毎に形成し、(b)前記2次元デジタルフィルタの位相特性を前記2次元周波数平面で表した場合に、前記通過域の端に近づくほど、また、規格化時間周波数が高くなるほど位相回転量が増加するように設定されていることを特徴とするスピーカアレイを提供する。
また、前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、さらに、位相回転量と規格化時間周波数とが比例関係を持たない部分が含まれるように設定されていてもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明は、各々出力音域の異なる複数のスピーカアレイを有するスピーカアレイシステムにおいて、前記複数のスピーカアレイの各々は、出力音域が高い程狭い間隔で直線状に配列された複数のスピーカと、前記複数のスピーカの各々に対応して設けられ、入力された音声信号に所定のフィルタ処理を施して出力する1次元デジタルフィルタと、を備え、入力された音声信号を前記各1次元デジタルフィルタへ供給する一方、前記各1次元デジタルフィルタから出力された音声信号を、対応する前記スピーカへ供給しその音声信号に応じた音声を出力させ、前記複数のスピーカアレイのうち、出力音域が最も高いスピーカアレイの前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、前記各1次元デジタルフィルタにより形成される2次元デジタルフィルタの周波数特性を2次元周波数平面で表した場合に、(a)規格化時間周波数が高くなるにつれて規格化空間周波数方向の幅が広くなる通過域を有する断面を規格化時間周波数毎に形成し、(b)前記2次元デジタルフィルタの位相特性を前記2次元周波数平面で表した場合に、前記通過域の端に近づくほど、また、規格化時間周波数が高くなるほど位相回転量が増加するように設定されていることを特徴とするスピーカアレイシステムを提供する。
また、前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、さらに、位相回転量と規格化時間周波数とが比例関係を持たない部分が含まれるように設定されていてもよい。
本発明によれば、指向性を持たせつつ楽音や音声の拡声を行う際に、高域においても定指向性を実現しつつ充分な音量を確保することが可能になるといった効果を奏する。
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施する際の最良の形態について説明する。
(A−1:構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るスピーカアレイ100の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、このスピーカアレイ100は、所定の間隔(本実施形態では、一定の間隔D)で直線状に配列されたトランスデューサ(本実施形態では、スピーカ)110−1、110−2…110−nと、それらスピーカと同数の1次元デジタルフィルタ120−1、120−2…120−nと、を有している。
図1のスピーカアレイ100においては、外部音源(図示省略)から供給される音声信号(アナログ信号)は、A/D変換器(図示省略)によってデジタルデータ(以下、音声信号)に変換され、1次元デジタルフィルタ120−i(i:1〜nの自然数:以下、同じ)の各々へ供給される。
なお、本実施形態では、アナログ形式の音声信号が外部音源からスピーカアレイ100へ供給される場合について説明するが、デジタル形式の音声信号が外部音源からスピーカアレイ100へ供給されるとしても勿論良く、このように、デジタル形式の音声信号が外部音源から供給される場合には、スピーカアレイ100に上記A/D変換器を設けておく必要がないことは言うまでもない。
図1の1次元デジタルフィルタ120−iの各々には、本発明に係るスピーカアレイに特徴的なフィルタ係数が予め設定されており、これら1次元デジタルフィルタ120−iの各々は、上記A/D変換器から引渡された音声信号にそのフィルタ係数に応じたフィルタ処理を施して出力する。
そして、1次元デジタルフィルタ120−iの各々から出力された音声信号は、D/A変換器(図示省略)によって音声信号へと変換され、その1次元デジタルフィルタ120−iに対応するスピーカ110−iへ供給される。
その結果、スピーカ110−iの各々からは、上記D/A変換器から供給された音声信号に対応する音声が放音されることになる。
なお、本実施形態では、スピーカ110−iがアナログ形式の音声信号に応じた音を放音する場合について説明するが、スピーカ110−iがデジタル形式の音声信号に応じた音を放音する場合には、上記D/A変換器を設ける必要がないことは言うまでもない。
以上がスピーカアレイ100の構成である。
以上に説明したように、本実施形態に係るスピーカアレイ100のハードウェア構成は、従来のスピーカアレイのハードウェア構成と何ら変わるところはない。
しかしながら、スピーカアレイ100においては、1次元デジタルフィルタ120−iの各々に、本発明に係るスピーカアレイに特徴的なフィルタ係数が予め設定されているため、それら1次元デジタルフィルタにより形成される2次元デジタルフィルタには本発明に係るスピーカアレイに特徴的な指向特性および周波数特性が実現されるようになっている。
以下、上記1次元デジタルフィルタ120−iに設定されているフィルタ係数と、そのフィルタ係数により実現される指向特性および周波数特性とについて図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、スピーカ110−iの各々は理想的な特性(すなわち、その指向特性が出力音声の周波数に依存しないといった特性)を有しているものする。また、以下では、スピーカの配置間隔D=0.068[m]、サンプリング周波数f=7000[Hz]、FIRタップ数=31、n(スピーカの個数)=15、音響ビーム端の角度φ=37°であるとする。
(A−2:2次元デジタルフィルタの振幅特性および指向特性)
さて、1次元デジタルフィルタ120−iの各々に設定されているフィルタ係数は所謂フーリエ級数近似により算出されたものであるが、以下では、まず、フーリエ級数近似の際の目標振幅特性および目標位相特性について説明する。
図2(a)は、上記目標振幅特性を2次元周波数平面で表した図であり、図2(b)は、同2次元周波数平面で上記目標位相特性を表した図である。なお、図2(a)および図2(b)において、規格化時間周波数fとは、非規格化時間周波数fを時間サンプリング間隔の逆数で規格化して得られる値であり、規格化空間周波数f2とは、空間周波数をスピーカの配置間隔Dの逆数で規格化して得られる値である。
図2(a)を参照すれば明らかなように、図2(a)に示す目標振幅特性では、前述した非特許文献1に開示されている技術と同様に、少なくとも低域を除いて、規格化空間周波数f2方向の断面(すなわち、f=一定値の断面)に、その規格化時間周波数fの絶対値が大きいほど(すなわち、規格化時間周波数が高いほど)、規格化空間周波数方向に広い幅を有する通過域が設定されている。前述したように、このような振幅特性の設計は、高域で定指向性を実現するためである。
次いで、フーリエ級数近似によるフィルタ係数算出方法について説明する。なお、以下に説明するフィルタ係数算出方法については、前述した非特許文献1にて詳細に説明されており、本実施形態においても非特許文献1に開示された手法を利用している。
より詳細に説明すると、非特許文献1には、各スピーカに接続されている1次元デジタルフィルタ群により形成される2次元デジタルフィルタの振幅特性を2次元周波数平面で見た場合、スピーカアレイの出力を充分遠方の観測点で観測した場合の周波数特性は、2次元周波数平面において以下の数1で表される直線上に分布する振幅特性であることが開示されている。
(数1)f=f・D・sin(φ)/(c・T)
ただし、数1において、fは規格化時間周波数、fは規格化空間周波数、Dはトランスデューサ間隔、Tは時間サンプリング周期、cは音速である。
したがって、ある非規格化時間周波数fにおけるスピーカアレイの指向特性は、2次元周波数平面では、その非規格化時間周波数fに対応する規格化時間周波数f=f・Tで規定される直線上に、以下の数2で示される関係で分布しているといえる。
(数2)φ=sin-1{(f・c・T)/(f・D)}
すなわち、各非規格化時間周波数fにおける所望の指向特性が、直線f=f・T上に上記数2で示される関係で分布するように2次元デジタルフィルタを設計することができれば、結果として所望の指向特性が得られることになる。非特許文献1には、上記のように2次元周波数平面の規格化空間周波数方向の断面に1次元のフィルタ特性を並べて2次元デジタルフィルタの目標特性を設定し、その目標特性に対して2次元フーリエ級数近似を施すことによって、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ係数を得る方法が開示されている。
ところで、図2(a)に示す目標振幅特性を設定して非特許文献1に開示されたフーリエ級数近似により得られるフィルタ係数を各1次元デジタルフィルタ120−iに設定した場合には、高域において充分な音量を確保することができないという問題が生じる。何故ならば、図2(a)に示す目標振幅特性は、通過域の振幅が規格化時間周波数fに依存していない(すなわち、通過域の振幅が平坦になっている)ため、高域において通過域の幅が広くなると、空間領域ではその窓幅が非常に狭くなるとともに、そのレベルが極めて高くなるからである。
そこで、本実施形態では、高域での音量を充分に確保することができるようにするため、図2(b)に示すように、少なくとも通過域において、その端に近いほど回転量が大きく、かつ、同一方向に位相を回転させる位相特性(例えば、通過域の中央付近に位相回転の基準となる直線(本実施形態では、f=0)を定め、その直線上から遠ざかるほど回転量を大きくする位相特性)を設定した上でフーリエ級数近似を行っている。
さて、本実施形態では、上記位相回転量θを、αを正または負の定数(本実施形態では負の定数)として以下の数3で定めている。
(数3)θ=α(1−cos(φ))f1
数3においてはαの絶対値が大きい程、位相回転量θの絶対値が大きくなるが、位相を回転しすぎると振幅特性に乱れが生じてしまうため、上記αの値は上記振幅特性の乱れと、高域での音量上昇の度合いとを見極めて適宜定めるようにすれば良い。
図3は、図2(a)に示す目標振幅特性を設定し、さらに、図2(b)に示す位相特性を設定した上でフーリエ級数近似により得られるフィルタ係数により実現される振幅特性を示した図である。図2(a)と図3とを対比すれば明らかなように、図2(a)に示す目標振幅特性においては、通過域の振幅は規格化空間周波数のfの値によらず一定であるが、図3に示す振幅特性の通過域の振幅は若干のf依存性を有しており、一定にはなっていない(前述した振幅特性の乱れが生じている)。これは、図2(b)に示す位相特性を設定したことに起因している。
図4は、図3に示す振幅特性を、各スピーカ110−iとスピーカアレイ100から出力される音声の観測点とを含む平面内でスピーカ110−iの配列方向と直角方向を0度とした場合にスピーカ配列の中央から見た観測点の方向の角度(図1の角度φ)についての周波数特性として示した図であり、図5は、図2に示す振幅特性を、いくつかの周波数での指向特性として示した図である。
図4および図5を参照すれば明らかなように、本実施形態に係るスピーカアレイ100によれば、一定の値以上の周波数について、音響ビームの主ローブ幅が略一定に保たれていること(すなわち、定指向性が実現されていること)が判る。
図6(a)および図6(b)は、スピーカアレイのアレイ面から所定の方向に所定の距離だけ離れた観測点において所定の音量レベルの音を再生する際に要する各スピーカのゲインを規格化時間周波数f毎にプロットした図である。より詳細には、図6(a)は図2(b)に示す位相特性を設定しなかった場合における各スピーカのゲインを示す図であり、図6(b)は図2(b)に示す位相特性を設定した場合(すなわち、本実施形態に係るスピーカアレイ100)における各スピーカのゲインを示す図である。
図6(a)および図6(b)において、グラフL1は、スピーカアレイのアレイ面の中央に配置されたスピーカのゲインを示すグラフである。図6(a)および図6(b)を参照すれば明らかなように、図2(b)に示す位相特性を設定するか否かに関わらず、スピーカアレイのアレイ面の中央に配置されたスピーカのゲインが最も高くなっていることが判る。特に、図6(a)を参照すれば明らかように、図2(b)に示す位相特性を設定しなかった場合には、高域になるほどアレイ面の中央に配置されたスピーカのゲインが他のスピーカのゲインに比較して高くなっており、高域においては、アレイ面の中央に配置されたスピーカのみが実質的に駆動していることが判る。
これに対して、図6(a)のグラフL1と図6(b)のグラフL1とを対比すれば明らかなように、図2(b)に示す位相特性を設定した場合の方がスピーカアレイの中央に配置されるスピーカのゲインが6[dB]ほど小さくなっており、その分だけ他のスピーカのゲインが大きくなっている。つまり、図2(b)に示す位相特性を設定することによって、スピーカアレイの中央に配置されるスピーカに偏っていたゲインが他のスピーカへ分散されている。
例えば、図6(a)および図6(b)において、ゲインの値が0[dB]であることが、「スピーカに過負荷がかかり、そのスピーカが破損してしまうこと」を意味しているとするならば、図2(b)に示す位相特性を設定しなかった場合には、高域(例えば、f1=0.45)においては、4[dB]程度のゲインの上昇に見合った音量上昇しか見込めないが、図2(b)に示す位相特性を設定した場合(すなわち、本実施形態に係るスピーカアレイ100の場合)には、12[dB]程度のゲインの上昇に見合った音量上昇が見込まれる。
以上に説明したように、本実施形態に係るスピーカアレイ100においては、図2(a)に示すように、規格化時間周波数が高いほど規格化空間周波数方向の幅を広くした通過域を規格化空間周波数方向の断面に有する目標振幅特性を設計し、さらに、図2(b)に示すように通過域の端ほど回転量が大きくなる位相回転を施した上でフーリエ級数近似を行うことにより得られるフィルタ係数を各1次元デジタルフィルタに設定することによって、高域においてもスピーカアレイ100の中央部に位置するスピーカにゲインが偏ることが回避される。
このため、スピーカアレイ100によれば、その中央部に位置するスピーカに過負荷がかかって破損することを回避しつつ、高域の音量を上げることが可能になり、結果として、充分な音量を確保することが可能になる。また、本実施形態に係るスピーカアレイ100が高域で定指向性を有していることは図4および図5を参照すれば明らかである。
つまり、本実施形態によれば、指向性を持たせつつ楽音や音声の拡声を行う際に、高域においても定指向性を実現しつつ充分な音量を確保することが可能になる。
(B.変形)
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態に以下に説明するような変形を加えても良いことは勿論である。
(1)上述した実施形態では、スピーカ110−iが理想的な特性を有している場合について説明した。しかしながら、スピーカなどトランスデューサは、周波数別指向特性を有していることが一般的であるから、2次元デジタルフィルタに付与すべき振幅特性(すなわち、各1次元デジタルフィルタ120−iに設定すべきフィルタ係数)を、トランスデューサの周波数別指向特性を加味して決定するようにしても良い。このようなことは、例えば、「西川清、大崎貴也“2次元デジタルフィルタを用いた指向性アレイスピーカ”(1995)」に開示された方法と同様の方法を適用することにより可能である。
(2)上述した実施形態では、規格化時間周波数fと位相回転量θとが数3に示す比例関係を満たし、数3の比例係数αが負の値である場合について説明した。しかしながら、規格化時間周波数の絶対値が大きいほど位相回転量θの絶対値を大きくする態様であれば、比例係数αは正の値であっても良い。また、規格化時間周波数のべき乗に位相回転量θを比例させるとしても勿論良く、規格化時間周波数の絶対値を非線形の単調増加関数(例えば、指数関数や対数関数)の引数として得られる値を位相回転量θとして用いても良い。
例えば、比例係数αをfの関数α(f)として、以下の(数4)のようにしてもよい。
(数4)θ=α(f)×(1−cos(φ))f1
ここで、α(f)は、fが増加するとα(f)の絶対値が増加するような関数であれば、θとfとを比例関係としなくてもよい。このようにすると、高域側の位相を回転させても低域側の位相の回転を抑えることも可能となり、振幅特性の乱れを低減することができる。α(f)が、所定のfまでは0とし、所定のf以上では絶対値が増加していくような関数とした場合には、所定のfより低域側ではα(f)=0となり位相を回転させず、高域側では空間領域における窓幅が非常に狭くなる影響を抑制することが可能となる。このようにすると、図7に示すような目標位相特性となる。
(3)上述した実施形態では、図2(a)に示す目標振幅特性を設定し、さらに、図2(b)に示す位相特性を設定してフーリエ級数近似により得られたフィルタ係数を各1次元デジタルフィルタに設定することによって、指向性に周波数依存性が現れない定指向を高域で実現するとともに、充分な音量を確保することを可能にする場合について説明した。
しかしながら、「西川清、横山哲哉、宮岸美貴子“直線状スピーカアレーと2次元FIRフィルタを用いた音像移動の方法”(信学論J83-A No7 P.839-849 2000年7月)」に開示されている焦点を形成する設計によっても、上記実施形態と同様に位相の回転を設定するため、指向性に周波数依存性が現れない定指向性を高域においても実現するとともに、充分な音量を確保することが可能になる。
(4)上述した実施形態では、単一のスピーカアレイに本発明を適用する場合について説明した。しかしながら、各々出力音域の異なる複数のスピーカアレイを有し、複数のスピーカアレイの各々が、出力音域が高い程狭い間隔で直線状に配列された複数のスピーカと、複数のスピーカの各々に対応して設けられ、入力された音声信号に所定のフィルタ処理を施して出力する1次元デジタルフィルタと、で構成されるスピーカアレイシステム(所謂サブアレイ構成のスピーカアレイシステム)に本発明を適用することも可能である。
ただし、上記の如きスピーカアレイシステムに本発明を適用する場合には、そのスピーカアレイシステムを構成する全てのスピーカアレイについて位相回転により空間窓幅が広がってしまうことは好ましくないため、最も高い出力音域に対応するスピーカアレイ(各スピーカの配置間隔が最も狭いスピーカアレイ)にのみ上記実施形態にて説明した位相回転を施す(具体的には、図2(b)に示す位相特性を設定する)ようにすれば良い。
(5)上述した実施形態では、通過域に位相回転を施す場合について説明したが、過渡域についても同様に位相回転を施すようにしても勿論良い。また、低域において主ローブ幅を一定に保ちつつサイドローブの出現を抑えるために、阻止域に所定の振幅特性を与える設計(非特許文献1参照)を行う場合には、阻止域についても位相回転を施すようにしても良い。
本発明の一実施形態に係るスピーカアレイ100の電気的な構成を表すブロック図である。 同スピーカアレイ100の2次元デジタルフィルタの目標振幅特性および目標位相特性の各々を2次元周波数平面で示した図である。 フーリエ級数近似により得られた振幅特性を2次元周波数平面で示した図である。 フーリエ級数近似により得られた振幅特性をいくつかの角度で示した図である。 フーリエ級数近似により得られた振幅特性をいくつかの周波数で指向特性として示した図である。 スピーカアレイを構成する各スピーカについて、最大の値をとる係数の値を周波数別に示した図である。 変形例2のスピーカアレイ100の2次元デジタルフィルタの目標位相特性を2次元周波数平面で示した図である。
符号の説明
100…スピーカアレイ、110−i(i:1〜nの自然数)…スピーカ、120−i…1次元デジタルフィルタ。

Claims (4)

  1. 所定の間隔で直線状に配列された複数のスピーカと、前記複数のスピーカの各々に対応して設けられ、入力された音声信号に所定のフィルタ処理を施して出力する1次元デジタルフィルタと、を備え、入力された音声信号を前記各1次元デジタルフィルタへ供給する一方、前記各1次元デジタルフィルタから出力された音声信号を、対応する前記スピーカへ供給しその音声信号に応じた音声を出力させるスピーカアレイにおいて、
    前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、
    前記各1次元デジタルフィルタにより形成される2次元デジタルフィルタの周波数特性を2次元周波数平面で表した場合に、
    (a)規格化時間周波数が高くなるにつれて規格化空間周波数方向の幅が広くなる通過域を有する断面を規格化時間周波数毎に形成し、
    (b)前記通過域の端に近づくほど、また、規格化時間周波数が高くなるほど位相回転量が増加するように設定されている
    ことを特徴とするスピーカアレイ。
  2. 前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、さらに、位相回転量と規格化時間周波数とが比例関係を持たない部分が含まれるように設定されている
    ことを特徴とする請求項1に記載のスピーカアレイ。
  3. 各々出力音域の異なる複数のスピーカアレイを有するスピーカアレイシステムにおいて、
    前記複数のスピーカアレイの各々は、
    出力音域が高い程狭い間隔で直線状に配列された複数のスピーカと、
    前記複数のスピーカの各々に対応して設けられ、入力された音声信号に所定のフィルタ処理を施して出力する1次元デジタルフィルタと、
    を備え、入力された音声信号を前記各1次元デジタルフィルタへ供給する一方、前記各1次元デジタルフィルタから出力された音声信号を、対応する前記スピーカへ供給しその音声信号に応じた音声を出力させ、
    前記複数のスピーカアレイのうち、出力音域が最も高いスピーカアレイの前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、
    前記各1次元デジタルフィルタにより形成される2次元デジタルフィルタの周波数特性を2次元周波数平面で表した場合に、
    (a)規格化時間周波数が高くなるにつれて規格化空間周波数方向の幅が広くなる通過域を有する断面を規格化時間周波数毎に形成し、
    (b)前記通過域の端に近づくほど、また、規格化時間周波数が高くなるほど位相回転量が増加するように設定されている
    ことを特徴とするスピーカアレイシステム。
  4. 前記各1次元デジタルフィルタのフィルタ係数は、さらに、位相回転量と規格化時間周波数とが比例関係を持たない部分が含まれるように設定されている
    ことを特徴とする請求項3に記載のスピーカアレイシステム。
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