JP2008249914A - 透過型偏光素子、及びそれを用いた複合偏光板 - Google Patents
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Abstract
【課題】 戻り光が少なく、耐久性に優れ、光吸収性の偏光板として用いうる透過型偏光素子を提供する。大きな消光比を確保しうる、当該透過型偏光素子を用いた複合偏光板を提供する。
【解決手段】 誘電体基板上に、断面形状が凸状で複数のリッジが周期的に平行に並ぶ構造が形成されており、前記構造の表面に、屈折率の異なる少なくとも2種類の膜が積み重なり、偏光機能を有する誘電体多層構造が形成されており、前記誘電体多層構造中に、さらに前記リッジの長さ方向にワイヤー状で複数の光吸収体が平行に配置されて構成されるワイヤーグリッド型の光吸収構造を含むことを特徴とする透過型偏光素子である。
この透過型偏光素子を光入射側に配置し、これとは異なる第2の透過型偏光子、例えばワイヤーグリッド型偏光子または光吸収性の方向性有機膜を光出射側に配置することを特徴とする複合偏光板である。
【選択図】 図2
【解決手段】 誘電体基板上に、断面形状が凸状で複数のリッジが周期的に平行に並ぶ構造が形成されており、前記構造の表面に、屈折率の異なる少なくとも2種類の膜が積み重なり、偏光機能を有する誘電体多層構造が形成されており、前記誘電体多層構造中に、さらに前記リッジの長さ方向にワイヤー状で複数の光吸収体が平行に配置されて構成されるワイヤーグリッド型の光吸収構造を含むことを特徴とする透過型偏光素子である。
この透過型偏光素子を光入射側に配置し、これとは異なる第2の透過型偏光子、例えばワイヤーグリッド型偏光子または光吸収性の方向性有機膜を光出射側に配置することを特徴とする複合偏光板である。
【選択図】 図2
Description
本発明は、略平行な光束の一偏光成分を透過させ、それとは異なる偏光成分を吸収可能で、偏光板として用いうる透過型偏光素子、及びそれを用いた複合偏光板に関する。
入射する光のうち特定の偏光成分のみを透過させる偏光板は、液晶パネル、光ディスク記録再生装置の読取り用や書込み用のヘッド部分、光通信などに広く用いられている。
図11は、液晶プロジェクターの光学系を示す模式図である。液晶プロジェクターを構成する液晶パネルの前後には、入射する光のうち一方の偏光成分のみを透過させるための入射側偏光板と出射側偏光板とが配置されている。
この液晶パネル用の偏光板には、両偏光成分の透過率の比率(消光比)が大きいこと、透過する偏光成分の透過率が高いことのほかに、出射側偏光板の反射による戻り光が少ないことが要求される。その理由は、図11に示す出射側偏光板の反射による戻り光が液晶パネルに再入射すると、それが迷光となって映像のコントラストを低下させてしまうからである。出射側偏光板の反射による戻り光を低減するためには、例えば、非透過偏光成分のエネルギーを吸収する構造(光吸収性の偏光板)が必要である。
光吸収性の偏光板としては、
(1)他方の偏光成分を吸収する方向性有機膜、
(2)極めて薄い金属膜を一定間隔で並べた積層型偏光器(例えば、鶴田匡夫:「第3・光の鉛筆」、p285、図23.7参照)、
(3)方向の揃った微小な針状の金属をランダムに含むガラス層(商品名:ポーラコア、米国コーニング社製)、
(4)透明体中に細長い金属部分を何層も重ねて配置したもの(例えば、特開平11−237507号公報参照)、
などが知られている。
鶴田匡夫:「第3・光の鉛筆」、株式会社新技術コミュニケーションズ p285,図23.7、(1993年) 特開平11−237507号公報
(1)他方の偏光成分を吸収する方向性有機膜、
(2)極めて薄い金属膜を一定間隔で並べた積層型偏光器(例えば、鶴田匡夫:「第3・光の鉛筆」、p285、図23.7参照)、
(3)方向の揃った微小な針状の金属をランダムに含むガラス層(商品名:ポーラコア、米国コーニング社製)、
(4)透明体中に細長い金属部分を何層も重ねて配置したもの(例えば、特開平11−237507号公報参照)、
などが知られている。
鶴田匡夫:「第3・光の鉛筆」、株式会社新技術コミュニケーションズ p285,図23.7、(1993年)
方向性有機膜は、安価であるために液晶パネルに広く用いられている。しかし、光の照射によって劣化しやすいという問題点があり、特に緑色光及び青色光の場合にそれが著しい。
また、無機材料を用いた偏光板は耐久性に優れている。しかし、無機材料を用いた積層型偏光器では、非常に薄い層を多数重ねて成膜する必要があるためにコスト高となり、加えて、大面積のものを生産しにくいという問題点もある。
さらに、上述のポーラコアや、透明体中に、細長い金属部分を何層も重ねて配置したものは、作製に手間がかかると共に、高価であるという問題点がある。
また、無機材料を用いた偏光板は耐久性に優れている。しかし、無機材料を用いた積層型偏光器では、非常に薄い層を多数重ねて成膜する必要があるためにコスト高となり、加えて、大面積のものを生産しにくいという問題点もある。
さらに、上述のポーラコアや、透明体中に、細長い金属部分を何層も重ねて配置したものは、作製に手間がかかると共に、高価であるという問題点がある。
本発明の目的は、戻り光が少なく、耐久性に優れ、光吸収性の偏光板として用いうる透過型偏光素子を提供することである。また、本発明は、当該透過型偏光素子を用い、大きな消光比を確保しうる複合偏光板を提供する。
本発明の第一形態である透過型偏光素子は、
誘電体基板上に、断面形状が凸状で複数のリッジが周期的に平行に並ぶ構造が形成されており、
前記構造の表面に、屈折率の異なる少なくとも2種類の膜が積み重なり、偏光機能を有する誘電体多層構造が形成されており、
前記誘電体多層構造中に、さらに前記リッジの長さ方向にワイヤー状で複数の光吸収体が平行に配置されて構成されるワイヤーグリッド型の光吸収構造を含むことを特徴とする透過型偏光素子である。
誘電体基板上に、断面形状が凸状で複数のリッジが周期的に平行に並ぶ構造が形成されており、
前記構造の表面に、屈折率の異なる少なくとも2種類の膜が積み重なり、偏光機能を有する誘電体多層構造が形成されており、
前記誘電体多層構造中に、さらに前記リッジの長さ方向にワイヤー状で複数の光吸収体が平行に配置されて構成されるワイヤーグリッド型の光吸収構造を含むことを特徴とする透過型偏光素子である。
さらに本発明の第二形態は、上述の第一形態の透過型偏光素子を光入射側に配置し、前記透過型偏光子とは異なる第2の透過型偏光子を光出射側に配置することを特徴とする偏光板である。この第2の透過型偏光子は、ワイヤーグリッド型偏光子または光吸収性の方向性有機膜であればよい。
本発明の第一形態によれば、簡便な構成で戻り光の少ない光吸収性の透過型偏光素子を、耐久性に優れた無機材料を用いて構成することができる。
さらに本発明の第二形態によれば、上述の第一形態の透過型偏光素子を光入射側に配置し、前記透過型偏光子とは異なる第2の透過型偏光子を光出射側に配置して、複合偏光板とすることで、大きな消光比の複合偏光板が得られる、という特徴を有する。
以下、実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
まず、本発明の透過型偏光素子に用いる、誘電体多層構造の基本について説明する。図1は、山形断面を有する誘電体多層構造を示す側面図である。「H」層は高屈折率層を、「L」層は低屈折率層を表す。
まず、本発明の透過型偏光素子に用いる、誘電体多層構造の基本について説明する。図1は、山形断面を有する誘電体多層構造を示す側面図である。「H」層は高屈折率層を、「L」層は低屈折率層を表す。
この図1に示した構造は、例えば、周期Pで凸状断面を持つリッジが形成された誘電体基板を用意し、その表面に、例えばNb2O5層(H層)とSiO2層(L層)とを交互にスパッタ法により成膜して得られる。このとき、基板にバイアス印加する電圧やガス圧を調整して、スパッタリングすると、凸状断面を持つリッジ上に、山形(逆V字形)断面の誘電体膜を形成することができる。
ここで、スパッタとエッチングとを組み合わせると、山形断面の形状を崩さずに100層以上成膜することも可能となる。このような手法は「オートクローニング法」と呼ばれている(参考文献:特許第3486334号公報)。
なお、本明細書において、「凸状」、「山形」、「逆V字形」、「V字形」などの形状は、特に断りのない限り、文字の読める向きで図面を見たときの形状をいう。
なお、本明細書において、「凸状」、「山形」、「逆V字形」、「V字形」などの形状は、特に断りのない限り、文字の読める向きで図面を見たときの形状をいう。
図1に示した構造は、H層とL層の繰り返しにより、Z方向にフォトニックバンドキャップができるので、Z方向の垂直入射光に対して特定の波長域の光を反射する効果がある。さらに、X方向とY方向との構造に大きな違いがあるために、「TM偏光は透過し、TE偏光は反射する」条件とすることができるので、偏光子として作用する。もちろん「TM偏光は反射し、TE偏光は透過する」条件とすることも可能である。
誘電体多層構造の材料はすべて誘電体とするので、基本的に光エネルギーの吸収は起こらない。また、H層とL層の屈折率差は大きいほど、フォトニックバンドギャップの帯域が広がり、偏光子として作用する波長域を広くすることができるので、有利である。
[第1の実施形態]
図2は、本発明における透過型偏光素子の実施形態を説明する側面図である。この実施形態の透過型偏光素子は、誘電体基板と、その表面に形成された誘電体多層構造と、光吸収構造とから構成される。
誘電体基板は、複数の凸状断面のリッジが平行に並ぶ構造をその片側の表面に有している。光吸収構造は、誘電体多層構造中に形成され、リッジの長さ方向に複数のワイヤーが周期的に配置された、ワイヤーグリッド型の構造を有している。複数のワイヤーは、光吸収物質を含んで構成される。
図2に示した透過型偏光素子は、図1に示した誘電体多層構造において、ある一つのL層中に複数のワイヤーが周期的に配置されたと理解することができる。
図2は、本発明における透過型偏光素子の実施形態を説明する側面図である。この実施形態の透過型偏光素子は、誘電体基板と、その表面に形成された誘電体多層構造と、光吸収構造とから構成される。
誘電体基板は、複数の凸状断面のリッジが平行に並ぶ構造をその片側の表面に有している。光吸収構造は、誘電体多層構造中に形成され、リッジの長さ方向に複数のワイヤーが周期的に配置された、ワイヤーグリッド型の構造を有している。複数のワイヤーは、光吸収物質を含んで構成される。
図2に示した透過型偏光素子は、図1に示した誘電体多層構造において、ある一つのL層中に複数のワイヤーが周期的に配置されたと理解することができる。
この光吸収構造の各ワイヤーは、Y軸方向に複数の山形をなす誘電体多層構造において、その周期の谷の位置にそれぞれ配置されている。これに限られることなく、誘電体多層構造の周期の山の位置に、各ワイヤーがそれぞれ配置されていてもよい。
図2の場合、光吸収構造の各ワイヤーは、ある一つのL層中に配置されているが、これに限られることなく、H層中に配置されてもよく、またL層とH層との間に配置されてもよい。
この誘電体多層構造は、使用波長域において垂直入射光(Z方向)のTM偏光成分に対しては透過率が高く、TE偏光に対しては反射率が高くなるような構成となっている。したがって、TM偏光成分はワイヤー部分でわずかに吸収されるものの、多層構造はほとんど素通りするので、全体的な透過率は高くなる。
これに対して、TE偏光は、光吸収構造を挟む両側の誘電体多層構造に反射されて、光吸収構造を何回か通過する度に吸収され、全体的には非常に吸収率が高くなる。このことによって、本発明の透過型偏光素子を光吸収性の偏光板とすることができる。
本発明では、誘電体多層構造による反射作用を積極的に利用するため、H層とL層の屈折率差をある程度大きくすることが好ましい。波長域を広く取るためには、H層とL層の屈折率差を0.5以上とすることが望ましい。
この実施形態の誘電体基板の材料は、使用する光の波長域に対して透明な物質であればよく、溶融石英、光学ガラス、板ガラス、結晶化ガラス、単結晶シリコンなどの半導体など、耐熱性の良好な無機材料であるのが好ましい。また、耐熱性がそれほど要求されない用途であれば、誘電体基板の材料として、アクリルやポリカーボネートなどのプラスチック材料を用いることもできる。
誘電体基板の表面に形成された複数の断面凸状のリッジは、
(a)誘電体基板の表面に平行な線状のマスクパターンを形成して、エッチングを行う、
(b)誘電体基板の表面に樹脂層を塗布して型押しを行う(ナノインプリンティング)、
(c)誘電体基板の表面にゾルゲルガラス層を形成して型押しを行った後、それを硬化させる、
(d)誘電体基板の表面に対して直接型押しを行う、
といった方法により形成することができる。なお、誘電体基板部分と凸状のリッジ部分との材料は、異なっていても差し支えない。
(a)誘電体基板の表面に平行な線状のマスクパターンを形成して、エッチングを行う、
(b)誘電体基板の表面に樹脂層を塗布して型押しを行う(ナノインプリンティング)、
(c)誘電体基板の表面にゾルゲルガラス層を形成して型押しを行った後、それを硬化させる、
(d)誘電体基板の表面に対して直接型押しを行う、
といった方法により形成することができる。なお、誘電体基板部分と凸状のリッジ部分との材料は、異なっていても差し支えない。
光吸収体の材料としては、チタン、クロム、金、銀、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、白金の単体や、それらの合金、炭化タングステン、珪化タングステンなどを用いることができる。なお、光吸収体の材料は、金属に限定されるものではなく、シリコン、ゲルマニウムなどの半導体や化合物半導体、グラファイトなどであってもよい。そして、これらの材料は、スパッタリング法、真空蒸着法、化学めっき法、液相成長法、気相成長法といった方法により薄膜とした後に、マスキングとエッチングによって、容易に周期的に配置されたワイヤー状とすることができる。
例えば、光吸収体としてアルミニウムなどの金属線を用いた「ワイヤーグリッド型(WG型)偏光子」が知られている。このWG型偏光子は、TE偏光成分(電場の振動方向がX軸方向)をほとんど反射するとされてきた。しかし、光吸収体の材質、周期P、幅MY、高さMZを適切に選択すると、TE偏光成分の吸収をより大きくすることもでき、本発明における光吸収構造に適用可能である。
誘電体多層構造の材料としては、Ta2O5(屈折率2.1)、TiO2(屈折率2.2〜2.5)、Nb2O5(屈折率2.35)、SiO2(屈折率1.45)、Si(波長1300nmで誘電体、屈折率3.59)、などから、その屈折率差を考慮して2つの材料を組み合わせて用いることができる。
また、有害な回折光が発生しにくいように、誘電体多層構造の山形部分の高さや周期が、使用する光の波長よりも十分に小さくすることが望ましい。
また、有害な回折光が発生しにくいように、誘電体多層構造の山形部分の高さや周期が、使用する光の波長よりも十分に小さくすることが望ましい。
この実施形態の透過型偏光素子の構成によれば、
(1)誘電体基板平面に周期的なリッジ形状を形成(溝の加工)、
(2)オートクローニング法による多層構造の形成、
(3)光吸収構造の形成、
(4)オートクローニング法による多層構造の形成、
という、比較的単純な一連の工程によって大面積のものを安価に生産することができる。
(1)誘電体基板平面に周期的なリッジ形状を形成(溝の加工)、
(2)オートクローニング法による多層構造の形成、
(3)光吸収構造の形成、
(4)オートクローニング法による多層構造の形成、
という、比較的単純な一連の工程によって大面積のものを安価に生産することができる。
本実施形態の透過型偏光素子においては、誘電体基板の山形部分の底辺(図3における周期)をP、高さをBとして、山形部分のアスペクト比をB/Pと定義した場合、アスペクト比は0.3〜1.0の範囲であることが望ましい。TE偏光とTM偏光の透過率差を確保するために、アスペクト比は0.3以上が好ましい。また、山形部分の形状維持のために、アスペクト比は1.0以下が好ましい。
第1の実施形態において、空気層に露出しているのは誘電体膜なので、表面についた汚れを容易に拭き取ることができる、という長所もある。これに対して、金属部分が露出するワイヤーグリッド偏光子では、一度ついた汚れが落としにくい、という短所がある。
[第2の実施形態]
図4は、本発明による複合偏光板の実施形態を示す側面図である。
本発明による透過型偏光素子の消光比が不足する場合には、当該透過型偏光素子を複数枚重ねて用いることもできるが、本発明の透過型偏光素子とは異なる偏光素子を組み合わせた構成(複合偏光板)としても、消光比の不足を補うことができる。以下、図4を参照しながら、この実施形態の複合偏光板について、さらに詳細に説明する。
図4は、本発明による複合偏光板の実施形態を示す側面図である。
本発明による透過型偏光素子の消光比が不足する場合には、当該透過型偏光素子を複数枚重ねて用いることもできるが、本発明の透過型偏光素子とは異なる偏光素子を組み合わせた構成(複合偏光板)としても、消光比の不足を補うことができる。以下、図4を参照しながら、この実施形態の複合偏光板について、さらに詳細に説明する。
図4に示すように、本実施形態の複合偏光板は、光の入射側に配置される第1の透過型偏光素子と、光の出射側に配置される第2の透過型偏光素子とを備えた構成である。このうち、第1の透過型偏光素子は、上述した第1の実施形態による透過型偏光素子において、光吸収構造を構成する各ワイヤーを、誘電体多層構造の周期の山の位置にそれぞれ配置したものである。
第2の透過型偏光素子としては、例えば、一般的なワイヤーグリッド(以下WGともいう)型偏光素子などを用いることができる。
第2の透過型偏光素子としては、例えば、一般的なワイヤーグリッド(以下WGともいう)型偏光素子などを用いることができる。
この実施形態の複合偏光板において、第1の透過型偏光素子は、TM偏光成分を透過させ、TE偏光成分を吸収する。これに対し、第2の透過型偏光素子は、TM偏光成分を透過させ、TE偏光成分を反射する。
先の図3に示したような、第1の透過型偏光素子は、消光比の小さいものであり、ここでは一例として、第1の透過型偏光素子の消光比が10に設定されている。この第1の透過型偏光素子に、第2の透過型偏光素子(例えば、消光比を100とする)を、重ねることにより、全体の消光比として、10×100=1000という大きな消光比が得られる。なお、WG型偏光素子であれば、消光比が100程度のものを容易に得ることができる。
WG型の偏光板などによる、第2の透過型偏光素子におけるTM偏光成分の透過率は高く、90%以上の透過率が得られる。したがって、複合偏光板全体としてのTM偏光成分の透過率を高いレベルに保つことができる。
なお、第1の透過型偏光素子を透過したTE偏光成分は、その大部分が第2の透過型偏光素子によって反射されるが、再び第1の透過型偏光素子による吸収を受けて戻り光はほとんどなくなるので、全体として光吸収性の偏光子となる(図4参照)。
本発明の第1の実施形態による透過型偏光素子において、TE偏光成分の透過率が低くする(すなわち、消光比が大きいこと)ためには、・アスペクト比を大きくする、・光吸収性物質の断面をZ方向に長いものとする、といった手段が有効である。しかし、そのような透過型偏光素子の作製はより困難となる。
これに対し、TE偏光成分の透過率を幾分高くした(すなわち、消光比が小さいこと)透過型偏光素子の作製は比較的容易である。したがって、図4の複合偏光板は、2枚の透過型偏光素子を要するものの、作製の難易度を考慮すると非常に実用的である。
なお、図4の複合偏光板においては、第2の透過型偏光素子として、広く市販されている、安価な光吸収性の方向性有機膜を用いることもできる。有機膜は、TE偏光成分のエネルギーを吸収することによって劣化しやすい。しかしながら、TE偏光成分は第1の透過型偏光素子によって大部分が除去されるので、図4の複合偏光板において、有機膜の劣化が問題となることはない。
図4の複合偏光板においては、同じ誘電体基板の両面に、第1の透過型偏光素子と第2の透過型偏光素子とが設けられているが、それぞれ別の基板に設けたものを組み合わせてもよい。
上述した実施形態において、光吸収構造のワイヤーの断面が矩形状である場合を例に挙げて説明した。しかし、断面形状は矩形状に限定されるものではない。例えば、オートクローニングの工程に合わせて図5に示すような、V字形状であっても差し支えない。
さらに、複数のワイヤーグリッドをZ方向に積み重ねた光吸収構造としてもよい。
さらに、複数のワイヤーグリッドをZ方向に積み重ねた光吸収構造としてもよい。
また、複数の山形形状において、底辺、高さ、形状に多少のばらつきがあっても、本発明による透過型偏光素子の光学的特性は十分に発揮される。
[設計例]
以下に、以上説明した透過型偏光素子の設計例を示す。
図3は、透過型偏光素子のY方向における1周期分の断面を示す模式図である。Y方向の周期はP、山形形状の高さはBであり、アスペクト比Aは、A=B/P により定義される。
以下に、以上説明した透過型偏光素子の設計例を示す。
図3は、透過型偏光素子のY方向における1周期分の断面を示す模式図である。Y方向の周期はP、山形形状の高さはBであり、アスペクト比Aは、A=B/P により定義される。
各層のZ方向の厚さを空気層側から順番に、d1,d2,d3,・・・とする。また、基板の屈折率はnS,基板と多層膜部分に挟まれたリッジ部の屈折率はnRとする。多層膜構造の中に矩形断面のワイヤーグリッドからなる光吸収構造が1層形成され、そのY方向の幅はMY,Z方向の厚さはMZである。ワイヤーグリッドの形成されている位置は、それぞれ多層構造の山の位置である。なお、図3は本発明の構造を数値で表すための模式図であり、後述する設計例の層数や光吸収体の位置は図3と一致するとは限らない。
空気側から平面波(TE偏光及びTM偏光)をZ方向に沿って垂直に入射させ、透過率、反射率、吸収率を計算した。TE偏光は、電場の振動方向がX軸方向であり、TM偏光は、磁場の振動方向がX軸方向である。なお、透過率、反射率、吸収率の計算には、アメリカ合衆国 RSoft Design Group, Inc. 製のRCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)法による計算ソフト“DiffractMOD”を使用した。
(設計例1)
図3に示す透過型偏光素子について、以下のように設定した。
(A)誘電体基板の屈折率:nS=1.52(波長によらず一定)
(B)誘電体基板と多層構造部分に挟まれたリッジ部の屈折率:nRは後述するL層と同じ
(C)誘電体基板のリッジ部分の底辺:P=193nm(Y軸方向の構造周期に等しい)
(D)誘電体基板の山形断面部分の高さ:B=96.5nm(アスペクト比A=0.5)
(E)光吸収性物質のY方向の幅:MY=40nm
(F)光吸収性物質のZ方向の厚さ:MZ=40nm
(G)光吸収性物質の複素屈折率 n+kiの値:図6に示す
(H)低屈折率誘電体層を「L層」とする。その屈折率は図7Aに示す。
(I)高屈折率誘電体層を「H層」とする。その屈折率は図7Bに示す。
図3に示す透過型偏光素子について、以下のように設定した。
(A)誘電体基板の屈折率:nS=1.52(波長によらず一定)
(B)誘電体基板と多層構造部分に挟まれたリッジ部の屈折率:nRは後述するL層と同じ
(C)誘電体基板のリッジ部分の底辺:P=193nm(Y軸方向の構造周期に等しい)
(D)誘電体基板の山形断面部分の高さ:B=96.5nm(アスペクト比A=0.5)
(E)光吸収性物質のY方向の幅:MY=40nm
(F)光吸収性物質のZ方向の厚さ:MZ=40nm
(G)光吸収性物質の複素屈折率 n+kiの値:図6に示す
(H)低屈折率誘電体層を「L層」とする。その屈折率は図7Aに示す。
(I)高屈折率誘電体層を「H層」とする。その屈折率は図7Bに示す。
多層構造の、Z方向における物理的厚さは以下のとおりである。
(空気側)
第1層:L層(光吸収体を含む層)
上側の物理的厚さ d1A=135.9nm
光吸収体の物理的厚さ MZ=40.0nm
下側の物理的厚さ d1B=73.3nm
第2層:H層 物理的厚さ d2=104.6nm
第3層:L層 物理的厚さ d3=135.2nm
第4層:H層 物理的厚さ d4=104.6nm
第5層:L層 物理的厚さ d5=135.2nm
第6層:H層 物理的厚さ d6=104.6nm
第7層:L層 物理的厚さ d7=135.2nm
第8層:H層 物理的厚さ d8=104.6nm
第9層:L層 物理的厚さ d9=113.9nm
第10層:H層 物理的厚さ d10=103.9nm
リッジ部:L層 物理的厚さ B=96.5nm
基板
(基板側)
(空気側)
第1層:L層(光吸収体を含む層)
上側の物理的厚さ d1A=135.9nm
光吸収体の物理的厚さ MZ=40.0nm
下側の物理的厚さ d1B=73.3nm
第2層:H層 物理的厚さ d2=104.6nm
第3層:L層 物理的厚さ d3=135.2nm
第4層:H層 物理的厚さ d4=104.6nm
第5層:L層 物理的厚さ d5=135.2nm
第6層:H層 物理的厚さ d6=104.6nm
第7層:L層 物理的厚さ d7=135.2nm
第8層:H層 物理的厚さ d8=104.6nm
第9層:L層 物理的厚さ d9=113.9nm
第10層:H層 物理的厚さ d10=103.9nm
リッジ部:L層 物理的厚さ B=96.5nm
基板
(基板側)
設計例1の透過型偏光素子に、空気側から真空中の波長が0.42μm〜0.52μmの光を垂直に入射させた場合における、空気側への反射割合、誘電体基板側への透過割合、及び吸収割合を、TM偏光及びTE偏光について、それぞれ図8A、図8Bに示す。ここで、透過割合は、誘電体基板から外部へ光線が出て行かない状態でのエネルギーから計算したものである。これは、外部(例えば、空気層)への出射時に生じるフレネル反射の影響を無くすためである。
図8A,8Bからわかるように、TM偏光については0.9弱の透過割合であるのに対して、TE偏光では波長域470〜480nmにおいて0.9以上のエネルギーが吸収され、透過率は10%以下となり、光吸収性偏光子として作用していることがわかる。
同じ形状の光吸収構造を用いたWG型偏光子(比較例1)と比較すると、特性は大きく向上していることから、多層構造の効果を確認することができる。
(比較例1)
比較例1は、設計例1の光吸収構造と誘電体基板のみを組み合わせてWG型の偏光素子としたものである(図9参照)。各ワイヤーは、その長さ方向をX方向とし、Y方向に周期Pで並んでいる。各ワイヤーの断面は、Y方向の幅をMY、Z方向の高さをMZとする矩形である。光吸収構造の大きさと屈折率、基板の屈折率、周期Pは設計例1と同一である。
比較例1は、設計例1の光吸収構造と誘電体基板のみを組み合わせてWG型の偏光素子としたものである(図9参照)。各ワイヤーは、その長さ方向をX方向とし、Y方向に周期Pで並んでいる。各ワイヤーの断面は、Y方向の幅をMY、Z方向の高さをMZとする矩形である。光吸収構造の大きさと屈折率、基板の屈折率、周期Pは設計例1と同一である。
比較例1の透過型偏光素子に、空気側から真空中の波長が0.42μm〜0.52μmの光を垂直に入射させた場合の、空気側への反射割合、誘電体基板側への透過割合、及び吸収割合を、TM偏光及びTE偏光について、それぞれ図10A、図10Bに示す。TM偏光の透過割合は約0.9であり、設計例1の場合とほぼ同じであるが、TE偏光波長域470nmにおいて透過割合は0.26と大きな値であり、消光比が小さい。また、反射割合が0.28と大きく、吸収割合は0.46にとどまる。
100:液晶プロジェクター、
10:液晶素子、
11:光源、
12:ミラー、
13:ダイクロック光源、
14,15,16:液晶パネル、
17:プリズム、
18:レンズ、
19:入射側偏光板、
20:出射側偏光板、
30:透過型偏光素子、
31:誘電体基板、
32:リッジ部、
33:誘電体多層構造、
35:(矩形の)ワイヤーグリッド、
36:V字形断面のワイヤーグリッド、
40:ワイヤーグリッド型偏光素子、
41:ワイヤーグリッド、
50:偏光板、
60:透明体、
61:光吸収体、
10:液晶素子、
11:光源、
12:ミラー、
13:ダイクロック光源、
14,15,16:液晶パネル、
17:プリズム、
18:レンズ、
19:入射側偏光板、
20:出射側偏光板、
30:透過型偏光素子、
31:誘電体基板、
32:リッジ部、
33:誘電体多層構造、
35:(矩形の)ワイヤーグリッド、
36:V字形断面のワイヤーグリッド、
40:ワイヤーグリッド型偏光素子、
41:ワイヤーグリッド、
50:偏光板、
60:透明体、
61:光吸収体、
Claims (9)
- 誘電体基板上に、断面形状が凸状で複数のリッジが周期的に平行に並ぶ構造が形成されており、
前記構造の表面に、屈折率の異なる少なくとも2種類の膜が積み重なり、偏光機能を有する誘電体多層構造が形成されており、
前記誘電体多層構造中に、さらに前記リッジの長さ方向にワイヤー状で複数の光吸収体が平行に配置されて構成されるワイヤーグリッド型の光吸収構造を含むことを特徴とする透過型偏光素子。 - 前記リッジの断面形状が山形である請求項1に記載の透過型偏光素子。
- 前記リッジの長さ方向における、前記誘電体多層構造の断面形状が山形である請求項1に記載の透過型偏光素子。
- 前記ワイヤーの断面形状が略V字形である請求項1に記載の透過型偏光素子。
- 前記誘電体多層構造を構成する各層における最大屈折率差は、使用波長域において少なくとも0.5である請求項1に記載の透過型偏光素子。
- 前記ワイヤーが、金属材料、タングステン化合物、半導体材料のうちのいずれかを含んでなる請求項1に記載の透過型偏光素子。
- 前記金属が、チタン、クロム、金、銀、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、白金、またはそれらの合金を含んでなる請求項6に記載の透過型偏光素子。
- 請求項1〜7いずれか1項に記載の透過型偏光素子を光入射側に配置し、前記透過型偏光子とは異なる第2の透過型偏光子を光出射側に配置することを特徴とする複合偏光板。
- 請求項8に記載の複合偏光板において、
前記第2の透過型偏光子は、ワイヤーグリッド型偏光子または光吸収性の方向性有機膜である複合偏光板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007089990A JP2008249914A (ja) | 2007-03-30 | 2007-03-30 | 透過型偏光素子、及びそれを用いた複合偏光板 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010210706A (ja) * | 2009-03-06 | 2010-09-24 | Seiko Epson Corp | 偏光素子 |
JP2016012063A (ja) * | 2014-06-30 | 2016-01-21 | 信越化学工業株式会社 | 光アイソレータ付偏波保存ファイバ |
-
2007
- 2007-03-30 JP JP2007089990A patent/JP2008249914A/ja active Pending
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JP2010210706A (ja) * | 2009-03-06 | 2010-09-24 | Seiko Epson Corp | 偏光素子 |
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