JP2008240174A - 抗菌性スエード調人工皮革の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属錯塩酸性染料で染色されたスエード調人工皮革に抗菌性を付与して抗菌性スエード調人工皮革を製造する方法であって、スエード調人工皮革を金属錯塩酸性染料で染色する工程、染色工程で得られたスエード調人工皮革をカチオン系薬剤を用いて前処理する工程、前処理されたスエード調人工皮革に抗菌剤を付与する工程を含む抗菌性スエード調人工皮革の製造方法。
【選択図】なし
Description
また、金属錯塩酸性染料の構造によっては、抗菌剤との相互作用が大きいものもあり、染料の使用量が少ない場合でも、十分な抗菌効果が発現しないケースもある。かかる場合には、使用する抗菌剤の濃度を高くすることによって解決できることもあるが、抗菌剤の濃度を高くすると、得られる抗菌性スエード調人工皮革の風合いや、タッチの悪化を伴い、また、高価な抗菌剤を使用する場合には高濃度化はコスト増につながるため好ましい方法とはいえない。
(1)金属錯塩酸性染料で染色されたスエード調人工皮革に抗菌性を付与して抗菌性スエード調人工皮革を製造する方法であって、スエード調人工皮革を金属錯塩酸性染料で染色する工程、染色工程で得られたスエード調人工皮革をカチオン系薬剤を用いて前処理する工程、前処理されたスエード調人工皮革に抗菌剤を付与する工程を含む抗菌性スエード調人工皮革の製造方法、
(2)カチオン系薬剤が、有機第四級アンモニウム塩である上記(1)に記載の抗菌性スエード調人工皮革の製造方法、
(3)抗菌剤が、有機第四級アンモニウム塩を含む抗菌剤である上記(1)に記載の抗菌性スエード調人工皮革の製造方法、
である。
本発明で使用する原料繊維としては、金属錯塩酸性染料で染色できる繊維であれば通常の繊維、例えば、ポリアミドで代表される合成樹脂からなる合成繊維、絹、ウール等の天然繊維等が挙げられる。合成繊維の場合には、単独ポリマーからなる繊維はもちろんのこと、2種以上のポリマーを混合紡糸又は複合紡糸した合成繊維でもよい。例えば、ポリアミド繊維単独で、又は該ポリアミド繊維と、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリビニルアルコールなどの合成繊維とを混合紡糸した繊維や複合紡糸した繊維を挙げることができる。
混合紡糸した繊維や複合紡糸した繊維を用いる場合には、後の工程で、該繊維を構成している2種以上のポリマーのうちから、少なくともひとつのポリマーを皮革様シートを製造する任意の段階で抽出除去又は分解除去する方法か、又は繊維を構成している各ポリマー成分に分割処理する方法を採用して、繊維を極細繊維に又は内部に多数の中空を有する多孔中空繊維にするのが好ましい。
上記のようにして得られた未染色のスエード調人工皮革用の繊維集合体が、主としてポリアミド系の樹脂の繊維からなる場合には、次いで金属錯塩酸性染料による染色処理を行う。使用する染色機としては、ウィンス染色機、ダッシュライン染色機、サーキュラー染色機等が挙げられ、いずれも好適に用いることができる。染色条件としては、染料濃度は、該スエード調人工皮革の質量に対して0.01質量%以上、20質量%以下、特に2〜20質量%が好ましい。染色処理の温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70〜90℃で、染着時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは30〜60分程度である。必要に応じて均染剤等の助剤を使用しても良い。
用いる金属錯塩酸性染料としては、イルガラン イエロー GRL、イソラン オリーブ 2S−BGL、PM レッド 531、イルガラン レッド 2GL、ラナクロン オリーブ SG、カヤカラン ブラック 2RL、イルガラン グレー GLN、ビタニール ネイビー KM、イルガラン ブルー 3GL、ラナクロン ブラウン SGR、PM ブラウン GF、ラナクロンレッドブラウンSR等を挙げることができ、特に黒色染料としては、カヤカラン ブラック 2RL、イルガラン グレー GLN等を、濃紺色の染料としては、ビタニール ネイビー KM、イルガラン ブルー 3GL等を、濃茶系の染料としては、ラナクロン ブラウン SGR、PM、ブラウン GF、ラナクロンレッドブラウンSR等を挙げることができる。
上記により得られた染色スエード調人工皮革に抗菌剤を付与するにあたり、従来の如く直接抗菌剤を付与した場合には、用いた染料によって抗菌性能がばらつくことがある。この原因は染色スエード調人工皮革中、なかでも弾性重合体成分中に残存する染料由来のアニオン成分が、抗菌剤のカチオン成分と結合し、抗菌成分と菌との接触を阻害して、抗菌成分を失活させることに起因することが判明した。したがって、本発明では、まず、カチオン系薬剤による前処理を施し、該カチオン系薬剤を染料由来のアニオン成分(主としてスルホン酸残基)とイオン結合させて固定化する前処理を行う。前処理の方法としては、染色スエード調人工皮革に対して、カチオン系薬剤を含む液をパディング処理等により染色スエード調人工皮革全体に分散させる方法、グラビア処理等により染色スエード調人工皮革の表面に塗布する方法、染色工程に続いて染色釜中で処理する方法等のいずれの方法も用いることができるが、処理の有効濃度確保の観点および処理効率の観点から、パディング処理が好ましく用いられる。
カチオン系薬剤による前処理の温度は室温〜60℃程度が好ましく、25〜40℃がより好ましい。処理時間は1分〜1時間程度が好ましい。
カチオン系薬剤を含む液の調製に用いる溶剤又は分散媒としては、カチオン系薬剤を溶解又は分散することのできるものであれば特に制限はなく、好ましくは水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、メチルエチルケトン又はこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
次いで、前処理後の染色スエード調人工皮革に対し、抗菌剤を付与する。付与する抗菌剤および付与量は、目標とする抗菌規格に応じて適宜選定することができる。例えば、抗菌性スエード調人工皮革100質量部に対して、1〜15質量部であることが好ましい。粉体状の抗菌剤を付与する場合には、風合い,立毛を損なわない範囲で樹脂バインダーを併用しても良い。
用いられる抗菌剤としては、従来から使用されているものを用いることができるが、具体的には、例えば、塩化ベンザルコニウム、ヘキサメチレンビグアミド塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアミド塩酸塩、有機シリコーン系第四級アンモニウム塩等を挙げることができる。
抗菌剤を含む液の調製に用いる溶剤又は分散媒としては、抗菌剤を溶解又は分散することのできるものであれば特に制限はなく、好ましくは、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、メチルエチルケトンあるいはこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
抗菌剤を含む液には必要に応じて、例えば、浸透剤、耐光剤等の添加剤、例えば、浸透剤としてタクリールNS−170(日動化学工業(株)製)等を添加することができる。その添加量としては、抗菌剤100質量部当り、50〜200質量部程度である。
抗菌剤の付与方法としては、前処理工程のカチオン系薬剤による処理方法と同様に、例えば、前処理された染色スエード調人工皮革に対して、抗菌剤を含む液をパディング処理等により該染色スエード調人工皮革全体に分散させる方法、グラビア処理等により該染色スエード調人工皮革の表面に塗布する方法等のいずれの方法も用いることができるが、処理の有効濃度確保の観点および処理効率の観点から、パディング処理が好ましく用いられる。
付与時間としては、1分〜1時間程度が好ましく、温度としては室温〜40℃程度が好ましい。
極細繊維の形成に使用したポリマーの密度と極細繊維の断面積とから計算により求めた。その断面積は、走査型電子顕微鏡を用いて数百倍〜数千倍程度の倍率にて観察して求めた。
(2)抗菌性評価
抗菌性の評価は以下の実験方法により行った。
試験方法:ASTM E 2149 抗菌防臭加工製品の加工結果試験マニュアル・シェイクフラスコ法により、所定の菌液と試料をリストアクションシェーカーにより1時間振とうし、減菌率70%以上を合格とした。
試験菌:肺炎桿菌・Klebsiella pneumoniae ATCC 4352
6ーナイロン60部(島成分)と高流動性低密度ポリエチレン(海成分)からなる海島型複合繊維を溶融紡糸法により調製し、これを70℃の温水中で2.5倍に延伸し、延伸された海島型複合繊維に繊維油剤を付与し、機械捲縮をかけて乾燥後、51mmにカットして4dtexのステープル繊維とした。このステーブル繊維を用いてスクラップ法で目付600g/m2のウェッブを形成し、ついで両面から交互に合わせて約500パンチ/cm2のニードルパンチングを行い、さらに120℃に加熱し、カレンダーロールでプレスすることで表面の平滑な絡合不織布(繊維集合体)をつくった。この絡合不織布の目付は400g/m2、見かけ比重は0.3であった。この絡合不織布に、ポリテトラメチレンエーテル系ポリウレタンを主体とする13%濃度のポリウレタンのジメチルホルムアミド(DMF)溶液を含浸し、DMF/水=15/85の混合液の中に浸してポリウレタンを多孔質状に湿式凝固した後、熱トルエン中で複合繊維中の海成分を溶出除去して極細繊維(平均繊維太さ0.05dtexを発現させ、皮革様シートを得た。得られた皮革様シートは厚さが1.4mmで、ポリウレタンの量は160g/m2あった。得られた皮革様シートを二分割し、スライス面をバフして、厚さ0.55mmとした後、他の面を粒度#400のサンドペーパーで起毛処理を施し、未染色スエード調人工皮革を得た。
染料仕込:
(a)PMレッド 531(住友化学株式会社製):1.60owf%
(b)イルガランイエロー(登録商標、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)GRL:5.50owf%
(c)ラナクロンブラウン(登録商標、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)SGR:7.50owf%
浴比:1:100
温度,時間:90℃、60分
染色機 :ウインス染色機
次いで、前処理として、表1の条件で含浸液を調製し、含水率70%となるようにパディング処理を行った後、ピンテンターにて140℃で乾燥処理した。さらに、抗菌剤として、AEM5772−2(AEGIS社製、(オクタデシルアミノ)(ジメチル)(トリヒドロキシシリル)(プロピル)アンモニウムクロライド)を用いて、表−1に示す含浸液により含水率70%となるようにパディング処理を行った後、ピンテンターにて140℃で乾燥処理した。乾燥後、揉み、整毛処理を行うと、外観が極めて良好でかつ機械物性に優れ、茶色の抗菌性スエード調人工皮革が得られた。抗菌性評価を表1に併せて示した。
実施例1において、前処理を実施することなく、抗菌処理のみを行なった。抗菌性能が目標に到達しなかった。抗菌性評価を表1に併せて示した。
実施例1において、前処理を実施せず、抗菌剤の濃度を27%に上げた。抗菌性能が目標に到達しなかった。抗菌性評価を表1に併せて示した。
Claims (3)
- 金属錯塩酸性染料で染色されたスエード調人工皮革に抗菌性を付与して抗菌性スエード調人工皮革を製造する方法であって、スエード調人工皮革を金属錯塩酸性染料で染色する工程、染色工程で得られたスエード調人工皮革をカチオン系薬剤を用いて前処理する工程、前処理されたスエード調人工皮革に抗菌剤を付与する工程を含む抗菌性スエード調人工皮革の製造方法。
- カチオン系薬剤が、有機第四級アンモニウム塩である、請求項1に記載の抗菌性スエード調人工皮革の製造方法。
- 抗菌剤が、有機第四級アンモニウム塩を含む抗菌剤である請求項1に記載の抗菌性スエード調人工皮革の製造方法。
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