JP2008239587A - 一剤型透析用固形剤およびその製造方法 - Google Patents

一剤型透析用固形剤およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 保存安定性、流動性及び耐固結性に優れた一剤型透析用固形剤及び製造方法を提供する。
【解決手段】 塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、pH調整剤、ブドウ糖及び炭酸水素ナトリウムを含む一剤型透析用固形剤において、炭酸水素ナトリウムの表面が特殊な構造を有する塩化ナトリウムからなる被覆層で覆われた造粒物を含有することを特徴とする一剤型透析用固形剤。
【選択図】 図8

Description

本発明は、透析用固形剤に関し、詳しくは、腎不全患者の透析療法に使用される重炭酸透析液調製用の一剤型透析用固形剤及びその製造方法に関する。
透析療法は、腎不全患者の治療法として確立されており、老廃物の除去、電解質の調節等を目的に定期的な永続的治療として行われている。透析療法に用いられる透析液は、正常な血清電解質濃度に類似した組成を持つように作成されており、近年では生体に負担の少ない重炭酸透析剤が用いられている。重炭酸透析液は、重炭酸ナトリウムが塩化カルシウムや塩化マグネシウムと反応して炭酸塩の沈殿を生じるため、一般的に塩化カルシウムや塩化マグネシウムを含み重炭酸ナトリウムを含まない製剤(A剤)と重炭酸ナトリウムを含み塩化カルシウムや塩化マグネシウムを含まない製剤(B剤)との2剤に分けられており、使用直前にそれぞれが溶解、希釈混合されて重炭酸透析液が調製される。
現在、血液透析で使用されている主な製剤の形式は、A剤濃厚原液+B剤濃厚原液の「液液タイプ」、A剤濃厚原液+B剤粉末(重炭酸ナトリウム)の「液粉タイプ」、A剤粉末+B剤粉末の「粉粉タイプ」の3種類がある。「液液タイプ」、「液粉タイプ」のうち濃厚原液の製剤は、通常ポリエチレン製の容器に10kg前後の濃厚液が充填されているため容器の嵩が大きく質量があり、輸送、搬入、保管スペース、取り扱い方法、使用済み容器の廃棄等について、種々の課題を抱えていたが、現在は「粉粉タイプ」の普及によりこれらの課題が大幅に改善されている。
しかし、粉末化された「粉粉タイプ」と言えども、やはり液剤の時と同様にA剤とB剤の2剤に分かれたものであり、透析液を調製する際には、A剤とB剤を別々に溶解しないといけないので、ハンドリングの面から考えると、まだ充分とは言えない状態である。また、入れ間違いや数量間違いといった人為的ミスを引き起こす可能性もある。そこで、更に病院での作業効率向上のため、A剤とB剤を1つにする一剤型透析用固形剤が開発されるようになってきた。
例えば、各原料成分をあらかじめ粉砕し、水もしくはブドウ糖水溶液を噴霧しながら、多層構造を有する積層型製剤が開示されている(例えば特許文献1及び特許文献2を参照)。しかし、これらの製剤は、バインダーにブドウ糖水溶液を用いて塩化マグネシウムや塩化カルシウムをコーティングするため、ブドウ糖が塩化カルシウムや塩化マグネシウムとの接触率が高くなり保存時に分解する恐れがある。また、粉砕した微粉末原料成分をコーティングして得られる製剤はコーティング層が脆く、医療現場において粉立ち等により作業環境を悪化させる原因となる。更に、特許文献1の製剤においては、最外層が炭酸水素ナトリウムであるので、溶解時にアルカリ性である炭酸水素ナトリウムから順次溶解していくため難溶性の炭酸塩を生成するので好ましくない。特許文献2の製剤においても、有機酸に酢酸を用いているので、粒子が崩壊すると炭酸水素ナトリウムと酢酸及び電解質と接触することによって、pH変動やそれに伴う成分の減少及び難溶性の炭酸塩を生成するので好ましくない。
また、塩化ナトリウムと塩化カリウムの混合物に塩化カルシウムと塩化マグネシウムの水溶液を添加し混合後、クエン酸ナトリウムを添加し混合したものを、乾燥、篩過して造粒物を得、これにブドウ糖、クエン酸及び炭酸水素ナトリウムを配合する製剤が開示されている(例えば特許文献3を参照)。しかし、この製剤は、有機酸と炭酸水素ナトリウムが直接接触することによってpH変動やそれに伴う成分が減少し所定の濃度が得られない問題がある。また、クエン酸等の固体有機酸は医学的に問題がないかどうかまだ解明されていないため一般的ではない。
更に、塩化ナトリウムとブドウ糖を塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び酢酸ナトリウムでコーティングしたA剤と炭酸水素ナトリウムを酢酸ナトリウムでコーティングしたB剤を混合した製剤が開示されている(例えば特許文献4)。しかし、このB剤においては、炭酸水素ナトリウムを酢酸ナトリウムでコーティングしているが、酢酸ナトリウムのコーティング量が少ないため充分な厚みを有したコーティング層が得られない場合がある。特に核粒子となる炭酸水素ナトリウム結晶のエッジの部分においては、十分な厚みを有したコーティング層が得られず表面が露出している可能性がある。また、表面が露出している場合には、有機酸と炭酸水素ナトリウムが直接接触することによってpH変動やそれに伴う成分が減少し所定の濃度が得られない問題がある。
更にまた、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウムを混合して粉砕後に造粒したA剤と炭酸水素ナトリウムを塩化ナトリウム及びブドウ糖でコーティングしたB剤を混合した製剤及びその製造方法が開示されている(例えば特許文献5)。特許文献5の方法で得られた製剤は、バインダーにブドウ糖を用いているので、造粒及び乾燥時の熱履歴を受けるので、ブドウ糖の保存安定性に問題が生じる。更に、ブドウ糖の安定性を考慮すると、40℃程度でコーティングする事が好ましいが、乾燥速度が遅くなるため、造粒時間が長時間の運転を要することとなり、製造方法としては好ましくない。
特許第3415291号公報 特開平10−259133号公報 特開平10−087478号公報 特開2001−070440号公報 特開2005−200373号公報
本発明の目的は、従来の製造方法で得られる製剤よりも、炭酸水素ナトリウムがpH調整剤、塩化カルシウム、塩化マグネシウムと反応することなく保存安定性に優れた一剤型透析用固形剤を提供することにある。
本発明者等は、上述した課題を解決するために、塩化ナトリウムの飽和水溶液を冷却して過飽和溶液状態とし、該過飽和溶液を流動層型晶析装置に供給して流動状態下で炭酸水素ナトリウムの表面上に塩化ナトリウムの結晶を成長させて被覆層を形成することにより、該被覆層中及び表面上には細孔が少なく、より強固で緻密な構造となり、上記の課題が達成される事を見出した。
即ち、本発明(1)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、pH調整剤、ブドウ糖及び炭酸水素ナトリウムを含む一剤型透析用固形剤において、炭酸水素ナトリウムは、その表面が、塩化ナトリウム結晶からなる連続した被覆層で被覆されているか、あるいは面接触した複数の塩化ナトリウム結晶の粒子からなる被覆層で被覆されている造粒物として存在することを特徴とする一剤型透析用固形剤である。
本発明(2)は、該被覆層が、炭酸水素ナトリウムに対して、2.0〜3.5質量倍の塩化ナトリウムを含む、前記発明(1)の一剤型透析用固形剤である。
本発明(3)は、被覆層が、塩化ナトリウム結晶核を過飽和の塩化ナトリウム水溶液により結晶成長させることにより形成される、前記発明(1)又は(2)の一剤型透析用固形剤である。
本発明(4)は、被覆層の表面が更に塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、pH調整剤及びブドウ糖からなる群から選択した少なくとも一種以上で覆われている前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの一剤型透析用固形剤である。
本発明(5)は、顆粒剤及び/又は散剤である、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つの一剤型透析用固形剤である。
本発明(6)は、透湿度(40℃、90%RH)2.0g/m・24hr以下であり、背面電極効果を有する積層構造の防湿包材に収納されている、前記発明(1)〜(5)のいずれか一つの一剤型透析用固形剤である。
本発明(7)は、炭酸水素ナトリウムの表面が、塩化ナトリウム結晶からなる連続した被覆層で被覆されているか、あるいは面接触した複数の塩化ナトリウム結晶の粒子からなる被覆層で被覆されている、炭酸水素ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる造粒物である。
本発明(8)は、前記発明(7)の造粒物の製造方法であって、下記〔1〕〜〔2〕の工程を含む方法:
〔1〕粉粒体の炭酸水素ナトリウムに塩化ナトリウム水溶液をスプレーしながら乾燥造粒し、プレコーティングされた炭酸水素ナトリウム粒子を得る工程;
〔2〕工程〔1〕で得られたプレコーティングされた炭酸水素ナトリウム粒子上の塩化ナトリウムを、流動状態にある過飽和の塩化ナトリウム水溶液により結晶成長させて塩化ナトリウムからなる被覆層を形成する工程;である。
本発明(9)は、前記発明(7)の造粒物又は前記発明(8)の方法で得られた造粒物を含む一剤型透析用固形剤である。
本発明に係る一剤型透析用固形剤は、炭酸水素ナトリウムの表面を塩化ナトリウムからなる特殊な被覆層で被覆した造粒物を含有する製剤であり、該造粒物の被覆層は、従来の造粒方法(例えば、水溶液を噴霧してコーティングする方法、微粉末をコーティングする方法等である)で得られた微粒子の、堆積構造の被覆層(例えば、図4に示したような状態)や結合剤により架橋された構造の被覆層(例えば、図5に示したような状態)に比べて、連続構造又は塊状構造(例えば、図1や図2や図3に示したような状態)の被覆層であるため、被覆層中及び表面上には細孔が少なく、より強固で緻密な構造となり、pH調整剤、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムとの反応を防止することができると共に、保存安定性、流動性及び耐固結性が極めて良好であるという効果を奏する。
更には、本発明の造粒物の製造方法によれば、従来のコーティング方法よりも造粒温度が低い温度で調製できるにもかかわらず、短時間でコーティングができるので、調製時における炭酸水素ナトリウムの分解抑制ができる。
本発明の一剤型透析用固形剤は、成分組成としては、従来のものと本質的には変わりなく、各種電解質組成物(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウム)、pH調整剤、ブドウ糖及び炭酸水素ナトリウムを含むものである。ここで、pH調整剤としては、薬理学的に許容されるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、酢酸、塩酸等の液体状の酸、乳酸、クエン酸、りんご酸、二酢酸ナトリウム等の固体状の酸を挙げることができ、これらを単独で又は組み合わせて用いてもよい。好適には、酢酸及び二酢酸ナトリウムである。尚、本発明において、塩化カルシウムは塩化カルシウム二水和物、塩化マグネシウムは塩化マグネシウム六水和物、酢酸ナトリウムは無水酢酸ナトリウムのことである。
本発明の一剤型透析用固形剤の特徴は、炭酸水素ナトリウムの表面が実質的に塩化ナトリウムからなる緻密で強固な被覆層で覆われている造粒物を含有している点である。
<造粒物>
本発明に係る造粒物の被覆層を構成する成分は、塩化ナトリウムである。被覆層を構成する成分は、塩化ナトリウムのみであることが好ましいが、本発明の効果を奏する範囲の量(例えば塩化ナトリウムに対して16.0質量%以下の量)で、その他の成分(例えば、塩化カリウムや酢酸ナトリウム)を含ませることもできる。塩化ナトリウムは透析用固形剤における含量が多いので、十分な被覆層の厚みを有する事ができると共に、pH調整剤、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムとの接触を充分に避ける事ができるので、炭酸水素ナトリウムの分解や炭酸塩の生成を抑制することができ、保存安定性が極めて良好である。
本発明に係る造粒物の被覆層の状態は、断面を観察した時に連続構造又は塊状構造形態、つまり、図1に示すような連続一体化した構造あるいは図2に示す粗大粒子の堆積構造であることが特に好ましい。ここで、従来の製造方法(例えば、水溶液を噴霧してコーティングする方法、微粉末をコーティングする方法等である)により形成される被覆層と本発明に係る被覆層との違いをイメージ図で説明する。まず、従来技術により形成される被覆層は、図4に示すように、無数の小さい粒子D(粒径は3〜20μm)が母粒子2′上に堆積したような状態、又は図5に示すように、粒子Dと粒子Dが結合剤で架橋している構造をとっていると理解される。他方、本発明に係る被覆層は、図1に示すように、塩化ナトリウム単一結晶により炭酸水素ナトリウムが被覆された「一体化した構造」であるか、あるいは、図2に示すように、「面接触した粗大粒子B(粒径は30〜80μm)が堆積した構造」である。但し、図3に示すように、被覆層1の内部に、粗大粒子Bより小さな粒子C(粒径は3〜20μm)が多少存在する場合もある。
したがって、従来技術で得られた被覆層は、多くの微粒子が堆積した構造をしているため細孔が多く存在するか、粒子と粒子が点で架橋している粒子が多いので被覆層が脆くなると理解される。他方、本発明に係る被覆層は、塩化ナトリウムの過飽和水溶液中で塩化ナトリウム結晶核を結晶成長させて形成するので、連続した結晶構造又は面と面が接触する粗大粒子が堆積した状態となり、細孔が少なくなると共に、粒子間の結合が強くなり、強固で緻密な被覆層が形成される。
本発明の一剤型透析用固形剤においては、固形剤に含まれる炭酸水素ナトリウムの実質的に全量が造粒物中に含まれることが必要である。また、該造粒物における被覆層は、一剤型透析用固形剤に含まれる実質的に全量の塩化ナトリウムを含み得、炭酸水素ナトリウムに対して、一般的には2.0〜3.5質量倍、好ましくは2.4〜3.1質量倍の塩化ナトリウムを含む。
また、該造粒物の塩化ナトリウムからなる被覆層の表面上に、さらに被覆層を形成することも可能であり、この際の被覆成分としては、特に限定されず、透析用固形剤の原料成分であればよく、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、pH調整剤及びブドウ糖を挙げることができる。但し、塩化マグネシウムと塩化カルシウムをコーティングする際には、酢酸ナトリウムと共にコーティングすることが好ましい。通常、ブドウ糖は塩化カルシウム及び塩化マグネシウムと接触することによって、分解が促進される。しかし、酢酸ナトリウムを含有してコーティング造粒を行うと、塩化カルシウムと塩化マグネシウムと酢酸ナトリウムの高次化合物が生成されるので、ブドウ糖の分解を抑制することができる。
本発明に係る造粒物は、典型的には、顆粒剤及び/又は散剤である。そして、その平均粒子径は、約150〜1400μmであり、被覆層の厚さは約25〜250μmであることが好適である。また、造粒物の形態は、炭酸水素ナトリウム母粒子の表面に被覆層が形成された単核コーティングであってもよいし、複数の被覆された母粒子が被覆層を介して結合した凝集造粒コーティングであってもよい。
<一剤型透析用固形剤>
本発明に係る一剤型透析用固形剤の形態は、特に限定されず、上記の造粒物及び透析液に必要なその他の成分を含んでいればよい。例えば、塩化ナトリウムで被覆した炭酸水素ナトリウムの造粒物と他の原料成分の造粒物との混合物でもよいし、塩化ナトリウムで被覆した炭酸水素ナトリウムの造粒物と、他の原料成分の造粒物とその際に使用されなかった原料成分の粉粒体との混合物でもよいし、塩化ナトリウムで被覆した炭酸水素ナトリウムの造粒物の表面に更に他の原料成分がコーティングされた多層構造の造粒物でもよいし、塩化ナトリウムで被覆した炭酸水素ナトリウムの造粒物の表面に更に他の原料成分がコーティングされた多層構造の造粒物とその際に使用されなかった原料成分の粉粒体との混合物でもよい。但し、塩化カルシウムと塩化マグネシウムとブドウ糖とが直接接触しない混合形態及び造粒形態が好ましい。尚、粉粒体とは、粉と粒とが集まった集合体である。
本発明に係る一剤型透析用固形剤は、典型的には、顆粒剤及び/又は散剤である。そして、その平均粒子径は、約250〜1400μmであることが好適である。また、塩化ナトリウムで被覆した炭酸水素ナトリウムの造粒物と他の原料成分の粉粒体を混合する場合には、造粒物及び各粉粒体の平均粒子径の差ができるだけ小さくなるような組合せが、含量均一性の保持という面から好ましい。即ち、造粒物及び原料成分それぞれの粒子の平均粒子径は、造粒物及びその他の原料成分の全粒子の平均粒子径との差が後者の30%以内になるように選択することが好ましい。
尚、混合で使用する攪拌型混合造粒装置としては、高速攪拌造粒装置が好適である。操作条件は、通常混合する一般的条件の範囲内で目的は充分達成される。
<造粒物の製造方法>
次に、本発明の塩化ナトリウムで被覆した炭酸水素ナトリウム造粒物の製造方法の説明をする。該製造方法は、炭酸水素ナトリウムの表面を塩化ナトリウムで被覆する新たな方法であり、従来の方法と比べて、被覆層の状態がより強固な状態で調製できる。詳しくは、以下の通りである。
造粒物の製造方法は、下記〔1〕〜〔2〕の工程を含む:
〔1〕粉粒体の炭酸水素ナトリウムに塩化ナトリウム水溶液をスプレーしながら乾燥造粒し、プレコーティングされた炭酸水素ナトリウム粒子を得る工程;
〔2〕工程〔1〕で得られたプレコーティングされた炭酸水素ナトリウム粒子上の塩化ナトリウムを、流動状態にある過飽和の塩化ナトリウム水溶液により結晶成長させて塩化ナトリウムからなる被覆層を形成する工程。
<工程〔1〕>
本発明の工程〔1〕は、炭酸水素ナトリウムの表面を塩化ナトリウムでプレコーティングする工程である。塩化ナトリウムのプレコーティングは、工程〔2〕における塩化ナトリウムの結晶成長の際に、炭酸水素ナトリウムが塩化ナトリウム水溶液に溶解するのを防ぐとともに、塩化ナトリウムの結晶成長に必要な塩化ナトリウム結晶核を提供するために行う。プレコーティング方法としては、通常のコーティング方法が使用でき、遠心流動コーティング造粒装置(例えば、高速攪拌造粒装置である)、流動層コーティング装置やパンコーティング装置等、好ましくは、流動層コーティング装置を適用できる。
ここで、流動層コーティング装置は、底部の通気構造から、流動層コーティング装置(一般的なトップスプレー式流動層やサイドスプレー式流動層)、噴流層コーティング装置(ドラフト管付)、攪拌転動流動層(転動流動層型、攪拌転動流動層型、回転円板付流動層型)コーティング装置の三つに分類される。また、各装置の選定は、調製しようとする造粒物によって選定することが好ましい。例えば、単粒子コーティングであれば、噴流層コーティング装置が挙げられる。
本発明に係る工程〔1〕の粉粒体の炭酸水素ナトリウムについて説明する。本発明に係る粉粒体の炭酸水素ナトリウムとは、固体状態の炭酸水素ナトリウムのことであり、平均粒子径は特に限定されるものではないが、ハンドリング面を考慮すると、平均粒子径は100〜1500μmが好ましく、好適には、100〜900μmである。また、粒度分布はシャープなものが好適である。
本発明に係る工程〔1〕の水溶液に関して説明する。該水溶液の溶質は、塩化ナトリウムであるが、その他の成分を、本発明の効果を妨げない範囲の量(例えば、塩化ナトリウムに対して16.0質量%以下の量)で含ませることもできる。該水溶液の塩化ナトリウム濃度は20〜28質量%が好ましく、好適には25〜27質量%である。該水溶液の塩化ナトリウム濃度が低くなると水溶液の量が多くなるためプレコーティング時間が長くなり、28質量%以上より高いと塩化ナトリウムが100℃では溶解しなくなり懸濁液となり、好ましくない。
プレコーティングされる塩化ナトリウムの量は、炭酸水素ナトリウムに対して、0.8〜2.8質量倍、好ましくは0.9〜2.5質量倍である。更に、該水溶液でプレコーティングした際のプレコーティング率(質量%)は、40〜80%が好ましい。40%以下だと工程〔2〕において、被覆層による被覆が不完全であったり、被覆層が剥離・脱落したりするので、結晶成長時に炭酸水素ナトリウムの塩化ナトリウム水溶液への溶出率が1%以上となり、好ましくない。他方、80%以上になると、工程2で結晶成長させる塩化ナトリウムの量が少なくなり、緻密な被覆層が得られなくなるので、また、工程〔1〕のコーティング時間が長くなり生産性に問題が生じるので、好ましくない。ここで、プレコーティング率とは、炭酸水素ナトリウムの表面を所定量(一剤型透析用固形剤に含有される塩化ナトリウムの量であり、一般的に、炭酸水素ナトリウムに対して、2.0〜3.5質量倍の任意の量)の塩化ナトリウムでコーティングした時を100%とした場合に、実際に工程〔1〕でプレコーティングされた塩化ナトリウムの量の割合である。また、溶出率とは、工程〔2〕において、炭酸水素ナトリウムが結晶成長中に塩化ナトリウム水溶液に溶出した割合のことである。
本発明に係る工程〔1〕のプレコーティング条件に関して説明する。先ず造粒温度及び乾燥温度は、25〜65℃で行うので好ましく、好適には40〜60℃である。温度が低くなると、プレコーティング時間が長くなり、65℃以上になると、炭酸水素ナトリウムが分解する恐れがある。
次に、風量に関しては、一般的条件の範囲内で目的は充分達成される。ただし、風量が少ないと母粒子同士が凝集しやすくなる。また、多くなると水溶液中の成分がスプレードライ現象を生じやすくなり微粉末が増える。更に、各粒子が受ける衝撃が大きくなるため微粉末が生じやすくなる。
<工程〔2〕>
本発明に係る工程〔2〕は、工程〔1〕で得られた造粒物の表面に存在する塩化ナトリウム粒子を核として、過飽和の塩化ナトリウム水溶液から塩化ナトリウムの結晶を成長させて被覆層を形成する工程である。塩化ナトリウムの結晶を成長させることにより、塩化ナトリウム結晶からなる連続した被覆層又は面接触した複数の塩化ナトリウム結晶の粒子からなる被覆層が形成できる。この結晶成長のためには、一般的な晶析装置が使用でき、晶析装置としては、クリスタル−オスロ型晶析装置、逆円錐型晶析装置、DTB型晶析装置、DP型晶析装置を用いてもよいが、好ましくは、図6の逆循環流動式晶析装置(以下、単に晶析槽という)である。また、図6は、実施例で使用した装置のフローシートを示している。つまり、内容量1000mlの槽aにおいて、攪拌機bにより飽和水溶液を調製した。この飽和水溶液をポンプcを介して熱交換器dで冷却して過飽和水溶液とし、入口口径が5mmで出口口径が35mm、高さが165mmの円筒形で下部が円錐型をした晶析槽eの下部に供給し、晶析槽から溢流した溶液は槽aに循環させた。
本発明の工程〔2〕の飽和水溶液に関して説明する。溶質は工程〔1〕で調製したプレコーティング被覆層成分と同じ塩化ナトリウムであるが、16.0質量%以下のその他の成分を含有してもよい。槽aにおいて攪拌器bにより塩化ナトリウムの飽和水溶液が調製される。また、過剰量の塩化ナトリウムが非溶解状態で槽aに存在することが好ましい。槽aにおける飽和水溶液の温度は、20〜60℃、好ましくは30〜50℃である。
本発明の工程〔2〕の過飽和水溶液に関して説明する。槽aで調製された塩化ナトリウムの飽和水溶液がポンプcを介して熱交換器dで冷却されて過飽和の塩化ナトリウム水溶液が調製される。また、過飽和水溶液の過飽和度の値が大きいほど結晶の成長速度は大きくなる。ここで、過飽和度とは、例えば、50℃での塩化ナトリウム飽和濃度と冷却温度の30℃の塩化ナトリウム飽和濃度の差である。
本発明に係る工程〔2〕の晶析条件(結晶成長条件)に関して説明する。先ず、晶析槽での過飽和水溶液の温度は10〜40℃が好ましい。10℃以下になると、結晶成長速度が小さくなり、炭酸水素ナトリウムが溶出しやすくなり、好ましくない。また、40℃以上になると結晶成長時に炭酸水素ナトリウムの分解率及び溶出率が高くなり、好ましくない。次に、ポンプの流量はカラムから造粒物が溢流しない程度が好ましいが、流動状態が大きいと結晶が破砕してしまうので、穏やかな流動状態が好ましい。
工程〔2〕で結晶成長させる塩化ナトリウムの量は、炭酸水素ナトリウムに対して、0.4〜2.1質量倍、好ましくは0.4〜1.9質量倍である。結晶成長によるコーティング率(質量%)は20〜60%が好ましく、結晶成長によるコーティングは、総コーティング率(質量%)、すなわち、プレコーティング率と結晶成長によるコーティング率の和が100%になるまで行うのが好ましい。結晶成長によるコーティング率とは、炭酸水素ナトリウムの表面を所定量(一剤型透析用固形剤に含有される塩化ナトリウムの量であり、一般的に、炭酸水素ナトリウムに対して、2.0〜3.5質量倍の任意の量)の塩化ナトリウムでコーティングした時を100%とした場合に、実際に工程〔2〕で結晶成長により被覆された塩化ナトリウムの量の割合であり、総コーティング率とは、炭酸水素ナトリウムの表面を所定量(一剤型透析用固形剤に含有される塩化ナトリウムの量であり、一般的に、炭酸水素ナトリウムに対して、2.0〜3.5質量倍の任意の量)の塩化ナトリウムでコーティングした時を100%とした場合に、実際に工程〔1〕でプレコーティングされた塩化ナトリウムと工程〔2〕で結晶成長により被覆された塩化ナトリウムの合計量の割合である。
尚、工程〔2〕で得られた被覆造粒物を乾燥する時期については特に限定されないが、工程〔2〕の直後に乾燥することが好ましい。また、乾燥で使用する乾燥装置としては特に限定されないが、流動層乾燥機が好適である。操作条件は、通常乾燥する一般的条件の範囲内で目的は充分達成される。但し、乾燥温度は炭酸水素ナトリウムが分解しない温度が好ましい。
本発明の一剤型透析用固形剤を所定の水に溶解すれば重炭酸透析液を、例えば下記の濃度に調整することができる:
Na+ 125〜150 mEq/L
+ 1.0〜3.0 mEq/L
Ca2+ 1.5〜3.5 mEq/L
Mg2+ 0.5〜1.5 mEq/L
Cl 90.0〜135 mEq/L
CHCO 5.0〜10.0 mEq/L
HCO3 20.0〜35.0 mEq/L
ブドウ糖 0.5〜2.5 g/L
このようにして得られる一剤型透析用固形剤の包装材料としては、防湿性能が良く、しかも背面電極効果を有するものが好ましい。従来より帯電防止剤を樹脂に練りこんでフィルムを作成し、帯電防止機能を有する包装材料に加工して使用された例はあったが、樹脂からのブリード現象により製品に異物が混入するなどの不都合が見られた。これに比べ、本発明において帯電防止剤はフィルムの接着に使用する接着剤中に含まれているためフィルムを浸透することはなく、ブリード現象は起こりえない。帯電防止剤は透析用固形剤と接するフィルム面の裏側にある接着剤中にあり、背面まで帯電防止機能を有するラミネートフィルムである。すなわち、透湿度(40℃、90%RH)2.0g/m2・24hr以下のフィルム、例えばシリカ蒸着フィルムを用い、静電防止性接着剤、例えばボンディップ(登録商標)(コニシ社製)を用いて接着したラミネートフィルムを用いて加工した背面電極効果を有する包装材料に透析用固形剤を充填、包装するのが好ましい。その様な積層構造を有するラミネートフィルムの構成例としては、
PET/SiO/ボンディップ(登録商標)/PE、
PVA/SiO/ボンディップ(登録商標)/PE、
ONY/SiO/ボンディップ(登録商標)/PE(ONY:二軸延伸ナイロンフィルム)、
PET/SiO/ボンディップ(登録商標)/CPP(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム)、
OPP/SiO/ボンディップ(登録商標)/CPP(OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、
を挙げることができ、これらを包装材料に加工して用いることができる。ラミネートフィルムは公知の方法により容易に製造できる。製造方法の一例としては、静電防止性接着剤の必要量を計り取り、必要により溶剤で希釈するなどして液が均一になるように混合し、グラビアコーター、リバースコーター等のコーターを用いて上記のフィルムに塗布し、温風乾燥して完全に硬化させる方法を挙げることができる。得られたラミネートフィルムはヒートシールすることによって包装材料に加工することができる
以下に本発明の実施例を示して、更に具体的に説明する。
[実施例1]
塩化ナトリウム192.9gを精製水578.7gに溶解して水溶液とした。トップスプレー式流動層造粒装置(FL−LABO フロイント産業株式会社製)に、母粒子として炭酸水素ナトリウム100g(平均粒子径:280μm)を投入し、給気温度60℃、風量0.4m/minの条件下で、前記水溶液を噴霧すると同時に乾燥させて塩化ナトリウムでプレコーティングされた炭酸水素ナトリウム粒子を得た(プレコーティング率;80%)。
[実施例2]
塩化ナトリウム132.6gを精製水397.8gに溶解して水溶液とした。トップスプレー式流動層造粒装置(FL−LABO フロイント産業株式会社製)に、母粒子として炭酸水素ナトリウム100g(平均粒子径:280μm)を投入し、給気温度60℃、風量0.4m/minの条件下で、前記水溶液を噴霧すると同時に乾燥させて塩化ナトリウムでプレコーティングされた炭酸水素ナトリウム粒子を得た(プレコーティング率;55%)。
[実施例3]
塩化ナトリウム96.5gを精製水289.5gに溶解して水溶液とした。トップスプレー式流動層造粒装置(FL−LABO フロイント産業株式会社製)に、母粒子として炭酸水素ナトリウム100g(平均粒子径;280μm)を投入し、給気温度60℃、風量0.4m/minの条件下で、前記水溶液を噴霧すると同時に乾燥させて塩化ナトリウムでプレコーティングされた炭酸水素ナトリウム粒子を得た(プレコーティング率;40%)。
[実施例4]
塩化ナトリウム24.1gを精製水72.3gに溶解して水溶液とした。トップスプレー式流動層造粒装置(FL−LABO フロイント産業株式会社製)に、母粒子として炭酸水素ナトリウム100g(平均粒子径:280μm)を投入し、給気温度60℃、風量0.4m/minの条件下で、前記水溶液を噴霧すると同時に乾燥させて塩化ナトリウムでプレコーティングされた炭酸水素ナトリウム粒子を得た(プレコーティング率;10%)。
[実施例5]
1000ml四つ口フラスコ(槽a)に塩化ナトリウム380.5gと精製水1000gを仕込んで45℃に設定したオイルバスで飽和水溶液を調製した。次に、晶析槽eに実施例1、実施例2、実施例3又は実施例4で得られた造粒物20gを仕込んだ後、熱交換器に3〜10℃の冷水を循環すると共に、オイルバスの温度を95℃に設定して0.325m3/minの速度で塩化ナトリウム水溶液を循環させた。この時の槽aの温度は38〜42℃であり、戻ってくる塩化ナトリウム水溶液の温度は放熱して18〜21℃であった。尚、槽eの温度は、戻ってくる水溶液の温度と同程度であると考えられる。また、各実施例で得られたプレコーティングされた炭酸水素ナトリウム粒子の総コーティング率(所定量の塩化ナトリウムは、炭酸水素ナトリウムに対して、2.41質量倍である)が100%になったときに結晶成長を止め、濾過し、40℃で乾燥して被覆造粒物を得た。但し、この条件での結晶成長速度は6g/hrである。結晶成長時間(総コーティング率が100%になるまでの結晶成長時間)を表1に示す。実施例4は、結晶成長途中で全てのプレコーティングされた炭酸水素ナトリウム粒子が塩化ナトリウム水溶液中に溶解した。
[実施例6]
実施例5(実施例2)から得られた被覆造粒物100gをトップスプレー式流動層造粒装置(FL−LABO フロイント産業株式会社製)に、母粒子として投入し、給気温度60℃、風量0.4m/minの条件下で、塩化カルシウム2.6g、塩化マグネシウム1.2g及び酢酸ナトリウム5.7gを精製水28.5gに溶解した水溶液を噴霧すると同時に乾燥させた。また、得られた造粒物に酢酸1.4gを添加して混合後、塩化カリウム1.7g及びブドウ糖11.6gを混合して一剤型透析用固形剤を得た。
[比較例1]
塩化ナトリウム241.2gを精製水723.6gに溶解して水溶液とした。トップスプレー式流動層造粒装置(FL−LABO フロイント産業株式会社製)に、母粒子として炭酸水素ナトリウム100g(平均粒子径:280μm)を投入し、給気温度60℃、風量0.4m/minの条件下で、前記水溶液を噴霧すると同時に乾燥させて得られた造粒物100gをさらにトップスプレー式流動層造粒装置(FL−LABO フロイント産業株式会社製)に、母粒子として投入し、給気温度60℃、風量0.4m/minの条件下で、塩化カルシウム2.6g、塩化マグネシウム1.2g及び酢酸ナトリウム5.7gを精製水28.5gに溶解した水溶液を噴霧すると同時に乾燥させた。また、得られた造粒物に酢酸1.4gを添加して混合後、塩化カリウム1.7g及びブドウ糖11.6gを混合して、一剤型透析用固形剤を得た。
[試験例1]
実施例5(実施例2)で得られた塩化ナトリウムで被覆した造粒物の顕微鏡写真(キーエンス社製)を図7に示す。この図より、どの造粒物も凹凸のない状態であることから、結晶成長過程で炭酸水素ナトリウムが溶出していないことがわかる。また、同造粒物の走査型電子顕微鏡(日立製作所製)による被覆層及び母粒子の断面の表面構造を図8に示す。比較例1で噴霧乾燥して得られた造粒物の被覆層及び母粒子の断面の表面構造を図9に示す。図8より、被覆層(図8の上部)及び母粒子(図8の下部)を有していることが確認できると共に、被覆状態が連続一体化又は粗大粒子が面接触し堆積した構造であり、細孔が少なく、強固で緻密であることが確認できる。更に、実施例5(実施例2)の造粒物の母粒子及び被覆層の元素分析結果(エネルギー分散型X線分析装置(EDX))を図10及び図11に夫々示す。これらの図より、母粒子が炭酸水素ナトリウムであり、被覆層が塩化ナトリウムであることが確認された。一方、図9より、比較例1の噴霧乾燥造粒品は、無数の塩化ナトリウムの小粒子が母粒子上に堆積した構造を有しており、細孔が多く脆弱であることが確認された。
[試験例2]
実施例5で得られた各造粒物について、JISハンドブック2006 K8622に準じて炭酸水素ナトリウムの残存率測定をおこなった。詳細の分析方法は各造粒物10.0gを精製水に溶かして正確に200mlとし、0.5mol/L塩酸で滴定した(指示薬:ブロモフェノールブルー溶液)。結果を表2に示す。これらの結果より、プレコーティング率が40%以上であれば、工程〔2〕における炭酸水素ナトリウムの残存率が約99%以上(溶出率が約1%以下)にできることがわかる。
[試験例3]
実施例5(実施例1と実施例2)で得られた各造粒物をアルミニウムラミネート製包材に充填し、ヒートシールした後に、40℃(75%RH)の条件下で固結状態の観察及び炭酸水素ナトリウムの残存率試験(炭酸水素ナトリウムの保存安定性を示す)をおこなった。結果を表3(上段が残存率、下段が固結状態を示す)に示す。先ず、固結試験においては、所定の時間経過した後に包材を開封し、9メッシュ(目開き2mm)のふるいで篩過して篩残の量を測定した。ふるい残が15質量%以内の場合は◎、15〜40質量%の場合は○、40〜70質量%の場合は△、70質量%以上の場合は×で表した。次に、残存率試験においては、試験例2と同様の分析方法で炭酸水素ナトリウムの残存率測定を行った。この結果より、造粒物は、固結安定性及び炭酸水素ナトリウムの保存安定性に優れていることがわかる。
[試験例4]
実施例6又は比較例1の固形剤をアルミニウムラミネート製包材に充填し、ヒートシールした後に、40℃(75%RH)の条件下で安定性試験を行った。所定の時間経過した後に包材を開封し、実施例及び比較例の検体から10.68gを精製水に溶かして正確に1000mlとし、その水溶液のpHメーター(PH81 横河電機社製)を用いてpHの測定を行った。酢酸と炭酸水素ナトリウムが反応すると、高pHになる。結果を表4に示す。この結果より、一剤型透析用固形剤も保存安定性に優れていることがわかる。
[試験例5]
実施例5(実施例2)で得られた造粒物又は実施例6(塩化カリウムとブドウ糖を添加する前の状態)で得られた造粒物の安息角を注入法により求めた。結果を表5に示す。この結果より、いずれの造粒物も流動性に優れていることがわかる。
本発明の造粒物及び一剤型透析用固形剤は、腎不全患者の透析療法に使用される重炭酸透析液の調製に用いることができる。
図1は、塩化ナトリウムの連続結晶により粒子が被覆されたタイプの、本発明に係る造粒物の断面の状態を示したイメージ図である。尚、図中、Aは連続一体化した状態の被覆層、1は被覆層、2は母粒子を示す。 図2は、粗大粒子が面接触し堆積したタイプの、本発明に係る造粒物の断面の状態を示したイメージ図である。尚、図中、Bは粗大粒子、1は被覆層、2は母粒子を示す。 図3は、面接触した粗大粒子の他に小粒子が存在したタイプの、本発明に係る造粒物の断面の状態を示したイメージ図である。尚、図中、Bは粗大粒子、Cは小粒子、1は被覆層、2は母粒子を示す。 図4は、無数の小粒子が堆積した、従来技術における製法で得られた造粒物の断面の状態を示したイメージ図である。尚、図中、1′は被覆層、2′は母粒子、Dは小粒子を示す。 図5は、従来技術における被覆層の意義を示したイメージ図である。尚、図中、Dは小粒子又は結晶、Eは結合剤を示す。 図6は、本発明の造粒物を製造するのに好適に用いられる晶析装置を説明する図である。 図7は、実施例5(実施例2)で得られた造粒物の顕微鏡写真である。 図8は、実施例5(実施例2)で得られた造粒物の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 図9は、比較例1で得られた造粒物の断面の走査型電子顕微鏡写真である。 図10は、実施例5(実施例2)で得られた造粒物の母粒子(炭酸水素ナトリウム)の元素分析結果(エネルギー分散型X線分析装置(EDX))を示す。 図11は、実施例5(実施例2)で得られた造粒物の被覆層(塩化ナトリウム)の元素分析結果(エネルギー分散型X線分析装置(EDX))を示す。
符号の説明
1:被覆層
1′:被覆層
2:母粒子
2′:母粒子
A:連続一体化した状態の被覆層
B:面接触した粗大粒子
C:小粒子
D:小粒子/結晶
E:結合剤
a:飽和溶液を調製する槽
b:攪拌モーター
c:ポンプ
d:冷却器
e:晶析槽

Claims (9)

  1. 塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、pH調整剤、ブドウ糖及び炭酸水素ナトリウムを含む一剤型透析用固形剤において、炭酸水素ナトリウムは、その表面が、塩化ナトリウム結晶からなる連続した被覆層で被覆されているか、あるいは面接触した複数の塩化ナトリウム結晶の粒子からなる被覆層で被覆されている造粒物として存在することを特徴とする一剤型透析用固形剤。
  2. 被覆層が、炭酸水素ナトリウムに対して、2.0〜3.5質量倍の塩化ナトリウムを含む、請求項1記載の一剤型透析用固形剤。
  3. 被覆層が、塩化ナトリウム結晶核を過飽和の塩化ナトリウム水溶液により結晶成長させることにより形成される、請求項1又は2記載の一剤型透析用固形剤。
  4. 被覆層の表面が更に塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、pH調整剤及びブドウ糖からなる群から選択した少なくとも一種以上で覆われている、請求項1〜3のいずれか一項記載の一剤型透析用固形剤。
  5. 顆粒剤及び/又は散剤の形態にある、請求項1〜4のいずれか一項記載の一剤型透析用固形剤。
  6. 透湿度(40℃、90%RH)が2.0g/m・24hr以下であり、背面電極効果を有する積層構造の防湿包材に収納されている、請求項1〜5のいずれか一項記載の一剤型透析用固形剤。
  7. 炭酸水素ナトリウムの表面が、塩化ナトリウム結晶からなる連続した被覆層で被覆されているか、あるいは面接触した複数の塩化ナトリウム結晶の粒子からなる被覆層で被覆されている、炭酸水素ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる造粒物。
  8. 請求項7記載の造粒物の製造方法であって、下記〔1〕〜〔2〕の工程を含む方法:
    〔1〕粉粒体の炭酸水素ナトリウムに塩化ナトリウム水溶液をスプレーしながら乾燥造粒し、プレコーティングされた炭酸水素ナトリウム粒子を得る工程;
    〔2〕工程〔1〕で得られたプレコーティングされた炭酸水素ナトリウム粒子上の塩化ナトリウムを、流動状態にある過飽和の塩化ナトリウム水溶液により結晶成長させて塩化ナトリウムからなる被覆層を形成する工程。
  9. 請求項7記載の造粒物又は請求項8記載の方法で得られる造粒物を含む一剤型透析用固形剤。
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