JP2008239488A - 動脈硬化の治療剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、新規な動脈硬化の予防および/または治療剤を提供することを目的とする。
【解決手段】血小板第4因子(PF4)に対する抗体(抗PF4抗体)を有効成分として含有する動脈硬化の予防および/または治療剤、抗PF4抗体を有効成分として含有する血管石灰化および/またはアテローム性動脈硬化プラークの石灰化抑制剤、抗PF4抗体を有効成分として含有する動脈平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化抑制剤、及び抗PF4抗体を用いる動脈平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化を抑制する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、動脈硬化の予防および/または治療剤に関する。また、本発明は、動脈硬化における血管石灰化および/または粥状硬化(アテローム性動脈硬化)プラークの石灰化抑制剤に関する。本発明はさらに、動脈平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化抑制剤に関する。
動脈硬化の発症機序は未だ良くわかっておらず、それ故動脈硬化に有効な治療剤は開発されていないのが現状である。しかしながら、動脈硬化発症のリスクファクターとして、老化、糖尿病、高コレステロール血症、機械的に異常な弁および慢性腎不全などが知られている。動脈硬化等に見られる血管石灰化は血管損傷に対する一様な応答であるように見えるが、発症イニシエーションと増悪の明らかに異なるメカニズムが重なった複雑な障害であると考えられている。動脈硬化がよく起こる場所は動脈の枝分れ部分や冠動脈の弓状血管領域などの血流が渦巻くような部位である。そのような部位では血流により血管が損傷を受け、その修復をするために最初にその損傷部位に凝集するのが血小板である。血小板が活性化し、フィブリンとともに血管損傷部位の修復に関与する。血小板が血管内皮細胞の剥離した部位に粘着して、活性化され、PDGF(platelet derived growth factor)が放出され、これが血管平滑筋細胞の遊走と増殖を惹起するという概念は傷害反応“response to injury”(Ross R.: Nature 362: 801-809, 1993)として有名である。
しかしながら、この古典的な説に対して、高LDL血症による動脈硬化は、まず単球の遊走と同細胞の血管への接着に始まるというのが今や常識となっている(北 徹編:動脈硬化の最前線―発症のメカニズムと臨床、Page 12, 1999)。動脈硬化のイニシエーションには、白血球や単球の血管損傷部位への遊走に必要な走化性因子(ケモカイン)の産生とそれらの細胞が血管に接着するために必要な細胞接着因子の産生と蓄積が必要とされている(同 page 61-62)。血小板は損傷部位の血管内皮細胞を活性化し、血管内皮細胞による細胞接着因子、ICAM(intercellular adhesion molecule)および単球走化性因子、MCP-1(monocyte chemotactic protein-1)などのケモカインの産生を促進することが知られている( Gawaz M., et al.: Circulation 98: 1164-1171, 1998 )。しかしながら、血小板中のいかなる分子が主体となり、どのような分子メカニズムで血管内皮細胞を活性化し、これら細胞接着因子やケモカインの産生を亢進させるのかについては未だ明らかにされていない。血小板の放出するPDGFが動脈硬化発症および進展に重要な因子であることが示唆されているが(Ross R.: Nature 362: 801-809, 1993)、PDGFが血管内皮細胞に作用してこれら接着因子やケモカインの産生を亢進させるという報告はない。現在では、後述するように動脈硬化の後期における石灰化において、PDGFは粥状硬化プラーク内への動脈平滑筋細胞の遊走と増殖に関与していると考えられている。
血管壁に損傷が起きると、ケモカインにより血管損傷部位に単球や白血球が遊走し、集まってくる。病変部位に蓄積された細胞接着因子により単球は血管に接着、血管内皮細胞層の下に潜り込み、マクロファージに分化する。マクロファージにはリポタンパク質に対する受容体としてLDL(low density lipoprotein)受容体、酸化LDL受容体としてLRP (LDL receptor-related protein)、LR11 (LDL receptor relative with 11 ligand binding repeats), VLDL (very low density lipoprotein)受容体、CD34、スカベンジャー受容体などが発現していることが知られている。血管内皮細胞層下に潜り込んだマクロファージは酸化LDLをLRPなどの受容体を介して取り込み、泡沫化する。泡沫化マクロファージおよび蓄積されたLDLなどにより血管内側に粥状硬化プラーク(こぶ)が形成される。さらに、動脈硬化の後期においては、この粥状硬化プラークが石灰化することが知られている。
血管石灰化には、少なくとも組織解剖学的に異なる4つの形態、アテローム性動脈硬化の石灰化(atherosclerotic calcification)、心臓弁石灰化(cardiac valve calcification)、内側動脈石灰化(medial artery calcification)および血管カルシフィラキシー(vascular calciphylaxis)が知られている。これらの血管石灰化は骨形成における石灰化と同様であると考えられているが、血管石灰化の分子メカニズムはいまだによく分かっていない。骨組織と異なり、血管にはもともと石灰化、骨形成を担当する骨芽細胞が存在しないことから、骨芽細胞様細胞のリクルートメントが起こっていることが示唆されている。このことは、石灰化した粥状硬化プラーク病変部位にはアルカリフォスファターゼ(ALP)、BMPs (bone morphogenetic protein:骨形成誘導因子), osteocalcinやosteopontinが含まれていることからも支持されている(Mohler ER. III., et al.: Circulation 103: 1522-1528, 2001; Shioi A.: “Calcium in internal medicine” ed. by Morri H., and Nishizawa Y, and Massry S. London; Splinger. pp. 479-494, 2002)。ここで、BMPとは、骨形成を担う骨芽細胞の分化・成熟を促進する骨形成誘導因子である。BMPは、骨の中に存在する骨形成を誘導する活性因子として約40年前に見出され(Urist MR.: Science 150: 893-899, 1965)、WozneyらによってそのcDNAがクローニングされた(Wozney JM., et al.: Science 242: 1528-1534, 1988)。
血管石灰化に関与する骨芽細胞様細胞は動脈平滑筋細胞からのトランスディファレンシェーション(transdifferentiation)によりリクルートされるとされているが、その分化に関与する因子については特定されていない。例えば、血小板やマクロファージ由来のPDGFがアテローム性動脈硬化プラークに平滑筋細胞を遊走させ、増殖を促進すると考えられている。粥状硬化プラーク内には、白血球等の炎症性細胞の浸潤があり、それら炎症性細胞により産生される炎症性メディエーター、たとえばインターフェロンーγ(IFN-γ)、TNF-α(tumor necrosis factor-α)やoncostatin Mなどが動脈平滑筋細胞を骨芽細胞様細胞へと分化誘導し、スタチン(statins)がこの分化誘導を抑制するという報告がある(Kizu A., et al.: J. Cellular Biochem. 93: 1011-1019)。一方、平滑筋細胞からの骨芽細胞への分化において、粥状硬化プラーク内で増殖した平滑筋細胞由来の筋線維芽細胞(myofibroblasts)により産生されるBMP-2の関与が報告されている(Bostrom K. et al.: J. Clin. Invest. 91: 1800-1809, 1993; Watson KE., et al.:J. Clin. Invest. 93: 2106-2113, 1994)。BMP-2はMsx2およびRunx2/Cbfa1の両転写因子を誘導し、前者は内膜性骨化に、また後者は内軟骨性骨化に関与している(Karsenty G.: Endocrinlogy 142: 2731-2733,2001)。大動脈の筋線維芽細胞はBMP-2―Msx2シグナリングに応答し、Msx2依存的な転写プログラムにより骨芽細胞系の細胞へと転換することが報告されている(Chen NX., et al.: Curr. Diab. Rep. 3: 28-32, 2003; Towler DA., et al.: J. Biol. Chem. 273: 30427-30434, 1998)。一方、動脈の筋線維芽細胞の異なるサブセットにおいては、Runx2/Cbfa1依存的な内軟骨性骨化が優性であること(Tyson KL., et al.: Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23: 489-494, 2003)、また平滑筋細胞は石灰化に伴いRunx2/Cbfa1の発現の上昇と平滑筋細胞系のマーカーであるSM 22αおよびSMα-actinの発現が減少することが報告されている(Steitz SA., et al.: Circ. Res. 89: 1147-1154, 2001)。対照的に、動脈硬化および慢性腎不全のマウスモデルにおいて、血管の石灰化はBMP-7(OP-1)の投与により軽減されること、さらに血管壁における骨芽細胞様の表現型を示す細胞によるosteocalcin発現がBMP-7の投与により抑制されることが明らかにされている(Davies MR., et al.: J. Am. Soc. Nephrol. 14: 1559-1567, 2003)。このことは、BMP-7が平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化を抑制し、石灰化を抑制していることを示唆している。また、BMP-2はPDGFによるヒト動脈平滑筋細胞の増殖を抑制することも報告されている(Wong GA., et al.: Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 284: E972-E979, 2003)。BMP-2と同様にBMP-4が大動脈の病変部位に発現しており(Dhore CR., et al.: Ateroscler. Thromb. Vasc. Biol. 21: 1998-2003, 2001)、動脈平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化を促進するBMP-2とは別のパラクラインシグナルを供給しているかもしれないと考えられている。また、異所性骨形成部位で間葉系細胞からの骨形成を誘導することが知られているBMP-6も石灰化したプラークに存在することから、血管石灰化にも関与することが示唆されており、またそのメジャーな供給源は平滑筋細胞であることが明らかにされている( Jeziorska M., et al.: Virchow Arch 433: 559-565, 1998 )。これらBMPの供給源は平滑筋細胞であることが示唆されているが、それ以外に巨核球や血小板にもBMP-2, BMP-4およびBMP-6の存在が知られており(Sipe JB., et al.: Bone 35: 1316-1322, 2004)、粥状硬化プラーク中におけるこれらBMPsの存在は血小板由来である可能性も否定できない。
骨組織における骨芽細胞の分化・成熟、および間葉系細胞である骨髄ストローマ細胞から骨芽細胞様細胞への分化でもBMPが必須であるが、特に後者の間葉系細胞は骨芽細胞よりBMPに対する感受性が低いことから、BMP単独では骨芽細胞への分化誘導には高濃度のBMPが必要と考えられる。このことが、BMPが骨形成促進剤として未だに医薬品化されていない理由の一つと考えられる。実際に、BMPの医薬品化に向けての大きな障害の1つはin vivoでの薬効投与量が非常に多いことであり、コスト面からも開発が困難視されている。
血管の石灰化に不可欠な動脈平滑筋細胞から骨芽細胞系の細胞への分化においても、上記したようにその分化誘導因子および分化誘導メカニズムに関して種々の説がある。このように血管石灰化における平滑筋細胞からの骨芽細胞のリクルートメントに関わる最も主要な因子が何であるのか、また統一された血管石灰化の分子メカニズムも確立されていないのが現状である。
Ross R.: Nature 362: 801-809, 1993 北 徹編:動脈硬化の最前線―発症のメカニズムと臨床、Page 12, 及びpage 61-62,1999 Gawaz M., et al.: Circulation 98: 1164-1171, 1998 Mohler ER. III., et al.: Circulation 103: 1522-1528, 2001 Shioi A.: "Calcium in internal medicine" ed. by Morri H., and Nishizawa Y, and Massry S. London; Splinger. pp. 479-494, 2002 Urist MR.: Science 150: 893-899, 1965 Wozney JM., et al.: Science 242: 1528-1534, 1988 Kizu A., et al.: J. Cellular Biochem. 93: 1011-1019 Bostrom K. et al.: J. Clin. Invest. 91: 1800-1809, 1993 Watson KE., et al.:J. Clin. Invest. 93: 2106-2113, 1994 Karsenty G.: Endocrinlogy 142: 2731-2733,2001 Chen NX., et al.: Curr. Diab. Rep. 3: 28-32, 2003 Towler DA., et al.: J. Biol. Chem. 273: 30427-30434, 1998 Tyson KL., et al.: Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23: 489-494, 2003 Steitz SA., et al.: Circ. Res. 89: 1147-1154, 2001 Davies MR., et al.: J. Am. Soc. Nephrol. 14: 1559-1567, 2003 Wong GA., et al.: Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 284: E972-E979, 2003 Dhore CR., et al.: Ateroscler. Thromb. Vasc. Biol. 21: 1998-2003, 2001 Jeziorska M., et al.: Virchow Arch 433: 559-565, 1998 Sipe JB., et al.: Bone 35: 1316-1322, 2004
以上のように、動脈硬化は血管損傷をトリガーとし、発症イニシエーションから進展に至るまで異なるメカニズムが重なった非常に複雑な障害であることから、現在においても動脈硬化の予防および治療に有効な治療薬はなく、有効な治療薬の開発が望まれていた。本発明は、新規な動脈硬化の予防および/または治療剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、骨形成誘導因子(BMP)の存在下において、血小板第4因子(platelet factor 4: PF4)が、血管細胞から石灰化を伴う骨芽細胞様細胞への分化を促進することを見出し、また、抗PF4抗体がこれを抑制することを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のものに関する。
(1)血小板第4因子(PF4)に対する抗体(抗PF4抗体)を有効成分として含有する動脈硬化の予防および/または治療剤。
(2)動脈硬化がアテローム性動脈硬化である(1)に記載の予防および/または治療剤。
(3)抗PF4抗体を有効成分として含有する血管石灰化および/またはアテローム性動脈硬化プラークの石灰化抑制剤。
(4)抗PF4抗体を有効成分として含有する動脈平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化抑制剤。
(5)抗PF4抗体を用いる動脈平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化を抑制する方法。
血小板第4因子(PF4)
血小板第4因子(PF4)としては、公知の種々のものを使用することができる。血小板第4因子は、巨核球や血小板のα-顆粒に存在する因子であることから、天然原料である血小板から精製することにより得ることができる。また、公知のPF4遺伝子(Poncz M., et al.: Blood 69: 219-223, 1987)をクローニングし、遺伝子工学を利用して遺伝子組み換えPF4を生産することができる。具体的には、ヒト血小板第4因子(Ilermodson M., et al.: J. Biol. Chem. 252: 6276-6278, 1977)、ウシ血小板第4因子(Ciaglowski RE., et al.: Arch. Biochem. Biophys. 250: 249-256, 1986)、マウス血小板第4因子(Watanabe O., et al.: J. Hum. Genet. 44: 173-176, 1999)などが挙げられる。あるいは、その活性を保持している限り、その一部のアミノ酸を欠失、置換、付加等の改変を行ったものであってもよい。ヒト血小板第4因子が好ましい。
血小板第4因子(PF4)に対する抗体(抗PF4抗体)
本発明の予防および/または治療剤に用いる血小板第4因子(PF4)に対する抗体(抗PF4抗体)は、PF4と結合する限り特に制限はなく、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体、キメラ抗体、ヒト型化抗体、ヒト抗体等を適宜用いることができる。抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、均質な抗体を安定に生産できる点でモノクローナル抗体が好ましい。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は当業者に周知の方法により作製することができる。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、PF4やPF4を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングすることによって作製できる。ハイブリドーマの作製は、たとえば、ミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73: 3-46 )等に準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行えばよい。
また、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた遺伝子組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。具体的には、ハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成する。目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
また、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(chimeric)抗体、ヒト型化(humanized )抗体などを使用することもできる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体であり、マウス抗体の可変領域をコードするDNAをヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 96/02576参照)。CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。
また、ヒト抗体の取得方法も知られている。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を抗原で免疫することで所望のヒト抗体を取得することができる(国際特許出願公開番号WO 93/12227, WO 92/03918,WO 94/02602, WO 94/25585,WO 96/34096, WO 96/33735参照)。さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列をを適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は既に衆知であり、WO 92/01047, WO 92/20791, WO 93/06213, WO 93/11236, WO 93/19172, WO 95/01438, WO 95/15388を参考にすることができる。
抗体遺伝子を一旦単離し、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いることができる。動物細胞としては、(1) 哺乳類細胞、例えば、CHO, COS,ミエローマ、BHK (baby hamster kidney ),HeLa,Vero,(2) 両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3) 昆虫細胞、例えば、sf9, sf21, Tn5などが知られている。植物細胞としては、ニコティアナ(Nicotiana)属、例えばニコティアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces )属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces serevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus )属、例えばアスペスギルス・ニガー(Aspergillus niger )などが知られている。原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が知られている。これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。
骨形成誘導因子(BMP)
骨形成誘導因子(BMP)としては、公知の種々のBMPを使用することができる。具体的には、BMP-2、BMP-4、BMP-7などが挙げられる。あるいは、その活性を保持している限り、その一部のアミノ酸を欠失、置換、付加等の改変を行ったものであってもよい。その由来も特に制限はないが、ヒト由来のBMPが好ましい。なお、BMP-2、BMP-4の配列は前記Wozney JM., et al.: Science 242: 1528-1534, 1988に記載されており、またBMP-7の配列は、Anthony JC. et al.: Proc. Natl. Acid. Sci. USA 87: 9843-9847, 1990に記載されている。
骨形成誘導因子(BMP)に対する抗体(抗BMP抗体)
本発明の予防および/または治療剤において、抗PF4抗体と組み合わせて用いる骨形成誘導因子(BMP)に対する抗体(抗BMP抗体)は、BMPと結合する限り特に制限はなく、抗PF4抗体について記載したのと同様の方法により作製することができる。
医薬用途
本発明の、抗PF4抗体を有効成分として含有する予防および/または治療剤は動脈硬化の予防および/または治療に有用である。本発明の抗PF4抗体を有効成分として含有する動脈硬化の予防および/または治療剤は、抗BMP抗体と組み合わせて使用するとさらに有用である。抗PF4抗体と抗BMP抗体は同一の製剤中に含めてもよいし、あるいは別の製剤として同時に、あるいは、逐次的に投与してもよい。
本発明において、動脈硬化とは、血管の内側の壁面に脂質、繊維、カルシウムなどが蓄積して、血管が固くなってしまう状態をいう。動脈硬化には、アテローム性動脈硬化(粥状動脈硬化)、細動脈硬化及び中膜硬化が含まれ、本発明の予防および/または治療剤は、アテローム性動脈硬化に特に有用である。
本発明は、抗PF4抗体を有効成分として含有する血管石灰化および/またはアテローム性動脈硬化プラークの石灰化抑制剤も提供する。血管石灰化は動脈硬化の初期病変から既に存在し、進行した病変においては、ほとんどの場合に認められる。血管石灰化には2つのタイプがある。1つは、高齢者、糖尿病患者、末期腎不全患者や閉塞性動脈硬化患者に認められるメンケベルグ型石灰化であり、これは動脈中膜の平滑筋にカルシウム・リンを含むハイドロキシアパタイトが沈着して石灰化するタイプであり、もう1つは粥状動脈硬化の進行に伴って、動脈内膜のアテロームが石灰化するアテローム性動脈硬化プラークの石灰化である。血管石灰化および/またはアテローム性動脈硬化プラークの石灰化抑制効果が得られたかどうかについては、当業者に公知の方法により測定することが可能であり、例えば、CTおよびエコー診断等により可能である。
本発明はまた、抗PF4抗体を有効成分として含有する動脈平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化抑制剤も提供する。動脈平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化抑制効果が得られたかどうかについては、当業者に公知の方法により測定することが可能であり、例えば、アルカリフォスファターゼ活性、アリザリンレッドS染色、フォンコッサ染色等より可能である。
本発明はさらに、抗PF4抗体を用いる動脈平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化を抑制する方法も提供する。
製剤
本発明の動脈硬化の予防および/または治療剤、血管石灰化および/またはアテローム性動脈硬化プラークの石灰化抑制剤及び動脈平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化抑制剤(以下において本発明の製剤という)には、その投与方法や剤型に応じて必要により、懸濁化剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性化剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、含硫還元剤、酸化防止剤等を適宜添加することができる。
懸濁剤の例としては、メチルセルロース、ポリソルベート80、ポリソルベート20,ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等を挙げることができる。
溶液補助剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ポリソルベート20,ニコチン酸アミド、マグロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステル等を挙げることができる。
安定化剤としては、デキストラン40、メチルセルロース、ゼラチン、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム等を挙げることができる。
等張化剤としては例えば、D−マンニトール、ソルビート等を挙げることができる。
保存剤としては例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール等を挙げることができる。
吸着防止剤としては例えば、ヒト血清アルブミン、レシチン、デキストラン、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、例えばソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノミリテート、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグリセリルモノリノレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビットテトラステアレート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチエレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン水素ヒマシ油)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンラノリン等のポリオキシエチレンラノリン誘導体;ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のHLB6〜18を有するもの;陰イオン界面活性剤、例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等の炭素原子数10〜18のアルキル基を有するアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等の、エチレンオキシドの平均付加モル数が2〜4でアルキル基の炭素原子数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ラウリルスルホコハク酸エステルナトリウム等の、アルキル基の炭素原子数が8〜18のアルキルスルホコハク酸エステル塩;天然系の界面活性剤、例えばレシチン、グリセロリン脂質;スフィンゴミエリン等のフィンゴリン脂質;炭素原子数12〜18の脂肪酸のショ糖脂肪酸エステル等を典型的例として挙げることができる。本発明の製剤には、これらの界面活性剤の1種または2種以上を組み合わせて添加することができる。好ましい界面活性剤は、ポリソルベート20,40,60又は80などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、ポリソルベート20及び80が特に好ましい。また、ポロキサマー(プルロニックF−68(登録商標)など)に代表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールも好ましい。
含硫還元剤としては例えば、N−アセチルシステイン、N−アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、炭素原子数1〜7のチオアルカン酸等のスルフヒドリル基を有するもの等が挙げられる。
酸化防止剤としては例えば、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、L−アスコルビン酸及びその塩、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピルあるいはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等のキレート剤が挙げられる。
さらには、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩;クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの有機塩などの通常添加される成分を含んでいてもよい。
本発明の製剤は、通常は注射剤(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内など)として投与する。しかし、経皮、経粘膜、経鼻などの投与に適した剤形、又は経口投与に適した剤形(錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤など)として投与することも可能である。本発明は投与経路や剤形などによって限定されるものではない。
本発明の製剤の投与量、投与回数は対象の疾患患者の病状を配慮して当業者が適宜決定することができるが、通常、成人一人あたり、10〜1000 mg/body、好ましくは、100〜500 mg/bodyの用量で抗PF4抗体を投与することができる。また、抗BMP抗体の投与量は、通常、成人一人あたり、10〜500 mg/body、好ましくは、50〜300 mg/bodyの用量である。
本発明の効果
本発明者らは、後述の実施例に示したように、正常ヒト平滑筋細胞にBMP-4を作用させても、骨芽細胞のマーカーであるアルカリフォスファターゼ活性(ALP活性)が上昇しないことから、正常ヒト平滑筋細胞が容易に骨芽細胞に分化を起こさないことを明らかにした。そこで血管平滑筋細胞をコンフルエントの状態で培養したところ、幹細胞様のCVC(calcifying vascular cells :石灰化動脈細胞)を得ることができた。本実験で得られたCVCクローンは、程度の差はあるが、一様にBMP-4に反応し、ALP活性が上昇することから、BMP-4に反応し骨芽細胞様の細胞に分化することが明らかになった。そこで、得られたCVCクローンを用い、BMP-4存在下において、PF4の影響を試験した。試験は、アルカリホスファターゼ活性(ALP活性)を測定することにより行った。その結果、PF4は、BMP-4の存在下、濃度依存的にCVCのALP活性を促進することを確認した。さらに、同じ試験を抗ヒトPF 4抗体を添加して行うと、抗PF4抗体はPF4によるCVCのALP活性の上昇を抑制した。したがって、抗PF4抗体は血管平滑筋細胞の石灰化を伴う骨芽細胞様細胞への分化を抑制し、血管の動脈硬化を抑制し得ることが示された。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されない。種々の変更、修飾が当業者には可能であり、これらの変更、修飾も本発明に含まれる。
実施例 1:正常ヒト平滑筋細胞に対するBMPの効果
試験方法
正常ヒト血管平滑筋細胞(倉敷紡績会社)を購入し、説明書に従い培養した。培地は、血管平滑筋細胞増殖用低血清培地を用いた。
正常ヒト平滑筋細胞をコラーゲンIコート96穴プレート(旭テクノグラス社)にウエルあたり5,000個播種した。 コンフルエント後、ウシ胎児血清1%を含むDMEM培地に交換し、BMP-4(R and Dシステム社)を0〜1μg/mlになるように添加した。さらに、CO2インキュベーター中で、7日間培養した。
培養後、培養液を除き、細胞をPBS(-)(タカラバイオ社)で洗浄後、エタノール・アセトン溶液(エタノール:アセトン=1:1)100μLずつ各ウエルに添加し室温で1分間放置後直ちに除去した。風乾後1mg/mlのp-ニトロフェニルフォスフェート(p-nitrophenyl phosphate)を含む溶液(0.1M Diethanolamine、1mM MgCl2 pH10)100μLを各ウエルに添加し室温で20分間反応させた。50μLの3N NaOHを各ウエルに添加し反応を止めた後、各ウエルの405nmの吸光度を測定することにより骨芽細胞のマーカーである、アルカリホスファターゼ活性(ALP活性)を測定した。
結果
得られた結果を図1に示す。正常ヒト平滑筋細胞は、生理的濃度のBMP-4に対し、若干のALP活性阻害効果が見られるが、ALP活性促進効果は認められなかった。つまり、正常ヒト平滑筋細胞はBMP-4では容易には骨芽細胞に分化しないことが明らかとなった。

実施例 2:CVCに対するBMP-4の効果
試験方法
正常ヒト血管平滑筋細胞を血管平滑筋細胞増殖用低血清培地を用い培養した。論文記載の方法(Bone morphogenic protein expression in human atherosclerotic lesions. J.Clin.Invest 91:1800-1809 1993)に準じ、細胞をコンフルエント状態で約2から3週間培養後、出現したコロニーを、トリプシン処理により単離し、幾つかのcalcifying vascular cells (以下CVCと略す)クローンを得た。得られたCVCクローンを、コラーゲンIコート96穴プレートに播種した。コンフルエント後、ウシ胎児血清1%を含むDMEM培地に交換し、BMP-4(R and Dシステム社)を100ng/ml濃度になるように添加した。CO2インキュベーター中で、5〜6日間培養した。培養後、実施例1で示す方法でALP活性を測定した。
結果
CVCのクローンの写真を図2に示す。得られたCVCは、接触阻害を起こさない、細胞境界が明瞭でないなど、幹細胞様の性質を持つと推測された。さらに、試験されたCVC5クローンのBMP-4に対する結果を図3に示す。 BMP-4 (100ng/ml)添加実験において、5クローン全てが、ALP活性の上昇を示した。

実施例 3:CVCに対する、PF4の効果
試験方法
実施例2と同様に得られたCVCを、コラーゲンIコート96穴プレートに播種し、コンフルエント後、ウシ胎児血清1%を含むDMEM培地に交換し、BMP-4を50 ng/ml、さらにPF4(R and Dシステム社)を20μg/ml添加した。CO2インキュベーター中で、5〜6日間培養した。実施例1と同様に、アルカリホスファターゼ活性(ALP活性)を測定した。
結果
得られた結果を図4に示す。PF4は、BMP-4の存在下、濃度依存的にCVCのALP活性を促進した。

実施例 4:抗PF4抗体の効果
試験方法
実施例2と同様に得られたCVCを、コラーゲンIコート96穴プレートに播種し、コンフルエント後、ウシ胎児血清1%を含むDMEM培地に交換し、BMP-4(R and Dシステム社)を50ng/ml、PF4(R and Dシステム社)を20μg/ml、さらに抗ヒトPF 4抗体(Cedarlane社)500μg/mlになるように添加した。CO2インキュベーター中で、5〜6日間培養した。実施例1と同様に、アルカリホスファターゼ活性(ALP活性)を測定した。
結果
得られた結果を図5に示す。抗PF4抗体はPF4によるCVCのALP活性の上昇を抑制した。
正常ヒト血管平滑筋細胞細胞を用いて行った、BMP-4の影響を示すグラフである。 正常ヒト血管平滑筋細胞細胞から単離した代表的なCVCクローンの写真である。(矢印で示す) CVCを用いて行った、BMP-4の影響を示すグラフである CVCを用いて行った、BMP-4の存在下における、PF4の影響を示すグラフである。 CVCを用いて行った、BMP-4及びPF4の存在下における、抗PF4抗体の影響を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 血小板第4因子(PF4)に対する抗体(抗PF4抗体)を有効成分として含有する動脈硬化の予防および/または治療剤。
  2. 動脈硬化がアテローム性動脈硬化である請求項1に記載の予防および/または治療剤。
  3. 抗PF4抗体を有効成分として含有する血管石灰化および/またはアテローム性動脈硬化プラークの石灰化抑制剤。
  4. 抗PF4抗体を有効成分として含有する動脈平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化抑制剤。
  5. 抗PF4抗体を用いる動脈平滑筋細胞から骨芽細胞様細胞への分化を抑制する方法。
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