JP2008237193A - 鶏の腸内pH制御方法と養鶏用飼料 - Google Patents
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Abstract
【課題】
養鶏におけるサルモネラ等の有害微生物のリスク軽減と排せつ物の悪臭対策
【解決手段】
鶏の腸内pHを酸性に制御することで、有用微生物優位の腸内環境とし、有害微生物の増殖・定着を抑制し、同時に排せつ物から発生する悪臭の原因であるアンモニアの発生を抑制させる。
【選択図】 なし
養鶏におけるサルモネラ等の有害微生物のリスク軽減と排せつ物の悪臭対策
【解決手段】
鶏の腸内pHを酸性に制御することで、有用微生物優位の腸内環境とし、有害微生物の増殖・定着を抑制し、同時に排せつ物から発生する悪臭の原因であるアンモニアの発生を抑制させる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、鶏及びその生産物に対する有害微生物のリスクを軽減し、並びに、排せつ物の悪臭の発生を抑制・遅延させることを目的とした、鶏の腸内pH制御方法及び養鶏用飼料に関するものである。
通常、鶏の腸内pHは7.0前後であるが、鶏の腸内には、鶏にとって有用な微生物であるビフィズス菌が生息し、乳酸や酢酸を生成し腸内を酸性へと促すことが知られている。このビフィズス菌が増殖すると腸内pHは酸性に低下し、乳酸菌等の至適pHの比較的低い有用細菌の増殖をも促進する。このような腸内環境は、サルモネラ、大腸菌、クロストリジウム等の有害微生物の増殖・定着が困難な環境となり、鶏の健康維持や安全な鶏卵・鶏肉を生産するうえで適切な環境だということができる。また、有用微生物優位の腸内細菌叢は、腸管でのミネラル吸収が促進されたり、免疫力の増大など、生産性向上や疾病予防にも寄与することが知られている。このように、有用微生物由来の有機酸により腸内pHを酸性に保つことは、鶏や生産物に対する有害微生物のリスクを軽減させるうえで極めて有用だということができる。
鶏の腸内pHを酸性に促す、または保つ方法としては、鶏の腸内細菌叢を形成するビフィズス菌を増殖させる、多糖類であるオリゴ糖やデキストリンの副産物を摂取させ、有機酸の生産を増加・継続させることがあげられる(特許文献1、2参照)。また、酸性化剤であるプロピオン酸、蟻酸、クエン酸といった有機酸を摂取させる方法や(特許文献1参照)、有機酸を生産するビフィズス菌や乳酸菌を摂取させる方法がある。いずれの方法も最終的に有機酸を増やすことにより腸内pHを酸性に低下させる方法であるといえる。なお、デキストリン副産物を摂取させ腸内pHを酸性に低下させる方法では、鶏卵による食中毒の原因とされているサルモネラ・エンテリテデスの鶏盲腸内の菌数を10分の1に減らすことができ、サルモネラの感染を低減できることが確認されている(特許文献2参照)。
また、鶏の排せつ物の悪臭の原因であるアンモニアの発生は、酸性では抑制されるため、鶏糞の堆肥化施設では脱臭のために硫酸などが用いられている。
以上のことから、鶏の腸内pHは、鶏の健康状態や有害微生物のリスク、及び悪臭対策の指標となるものである。
しかし、上記の技術により養鶏生産物の安全性や環境問題を完全に解決できるわけではなく、食品の安全性や環境問題に対する意識の高揚にともない、常により高次元の技術開発が求められている。そのため、簡単で、より効果が明確な鶏の腸内pH制御方法の開発は、養鶏産業の持続的発展に寄与できるものといえる。
一方、桑科植物の特有成分である1−デオキシノジリマイシンは小腸の二糖類分解酵素α−グルコシターゼを強く阻害し、結果として大量の二糖類が吸収阻害され、血糖値の上昇が抑制されるため糖尿病予防素材として注目されている。また、大量の二糖類が大腸に移動し吸湿・保水されることや、腸内細菌叢に利用され炭酸ガスや水素ガスを生成し、そのガスの作用により腸蠕動が誘発されるため、整腸・便秘改善の有効成分とされている(特許文献3参照)。
しかし、これらは人やラットなどのほ乳類における検討結果であり、消化器の構造が異なる鶏を始めとする鳥類への効果は明らかにされていない。特に小腸で二糖類の吸収が阻害され、大腸に達することは、多糖類を大腸に確実に到達させる方法であり、それにより増殖したビフィズス菌等の腸内細菌叢が生成した有機酸が、腸内pHに及ぼす影響については明らかにされていない。
特開平10−215790
特開2000−270784
特開平11−335285
養鶏施設のサルモネラ汚染が安全な鶏卵・鶏肉を生産するうえで大きな問題となっており、生産現場ではそのリスクをいかに軽減させるが重要な課題となっている。
また、養鶏施設から発生するする悪臭の多くは、鶏糞から発生するアンモニアによるもので、養鶏施設の規模拡大や周囲の混住化が進む中、悪臭による環境問題が経営を脅かす問題となっている。
また、養鶏施設から発生するする悪臭の多くは、鶏糞から発生するアンモニアによるもので、養鶏施設の規模拡大や周囲の混住化が進む中、悪臭による環境問題が経営を脅かす問題となっている。
本発明は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、桑葉の乾燥粉砕物である桑の葉粉末を養鶏飼料に添加し鶏に摂取させることで、腸内のpHが著しく低下することを発見し、更に桑粉末の添加量を増減することで鶏の腸内pHを比較的容易に制御できることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は桑科植物の乾燥粉砕物を添加または含有する養鶏飼料を鶏に摂取させることを特徴とした鶏の腸内pH制御方法であり、単なる整腸とは異なる。また鶏の腸内pHを人為的且つ積極的に、より酸性に制御することで、サルモネラをはじめとする有害微生物の増殖・定着を抑制し、そのリスクを軽減するものである。また、同時に排せつ物のpHを低下させることで悪臭の原因であるアンモニアの発生時期を抑制・遅延させることに関する。
すでに鶏の腸内に定着している有用微生物を優勢にすることで、有機酸の生成を増加させ腸内pHを酸性に制御し、有害微生物の増殖・定着が困難な腸内環境を作り出すことで、健康な鶏からより安全な鶏卵・鶏肉を生産することができる。また、同時に鶏舎から発生する悪臭の発生時期を遅延することができ、その間に適切に排せつ物を処理(堆肥化施設・乾燥施設への移動)することで鶏舎から発生する大容量の悪臭を抑制することが可能となる。以上のことにより、養鶏経営の根幹を脅かす、生産物の安全性の問題と環境問題を同時に解決することに本発明は貢献でき、養鶏経営の安定・発展に寄与できる。
養鶏用飼料に桑科植物の乾燥粉砕物を0.1〜3.0重量%添加または含有させ、鶏に自由摂取させる。また、排せつされた鶏糞は1〜5日以内に鶏舎から、堆肥化施設または乾燥施設に移動する。
以下に本発明の実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
桑の葉粉末を3%添加した養鶏用飼料と桑の葉粉末無添加の養鶏用飼料をそれぞれ8羽の採卵鶏に給与し、排せつ物のpHを測定することで腸内pHを推定した。排せつ物は桑の葉粉末添加飼料を給与開始2日後に採取した。採取した排せつ物は盲腸経由した茶色の部分である盲腸便と盲腸を経由しなかったそれ以外の部分に分離し、それぞれ良く混合した後pHを測定した。また、排せつ物を盲腸経由の有無に関わらず全て混合し、そのうち100gをシャーレに入れ、更にそのシャーレを45リットルのポリバケツに入れ、フタにより密閉し24時間毎に発生したアンモニア濃度を測定し14日間継続した。
桑の葉粉末を3%添加した養鶏用飼料と桑の葉粉末無添加の養鶏用飼料をそれぞれ8羽の採卵鶏に給与し、排せつ物のpHを測定することで腸内pHを推定した。排せつ物は桑の葉粉末添加飼料を給与開始2日後に採取した。採取した排せつ物は盲腸経由した茶色の部分である盲腸便と盲腸を経由しなかったそれ以外の部分に分離し、それぞれ良く混合した後pHを測定した。また、排せつ物を盲腸経由の有無に関わらず全て混合し、そのうち100gをシャーレに入れ、更にそのシャーレを45リットルのポリバケツに入れ、フタにより密閉し24時間毎に発生したアンモニア濃度を測定し14日間継続した。
この結果は図1、2に示したとおりで、桑の葉を3%飼料添加することで排せつ物のpHは著しく低下し、特に盲腸便のpHは約4.0まで低下することが判明した(図1)。なお、4.5以下のpHはサルモネラに殺菌効果があるとされている。また、桑の葉を3%飼料添加することで約5日間はアンモニアの発生を完全に抑制できることが判明した(図2)。
実施例2
桑の葉粉末を0.1、0.3、1.0%添加した採卵鶏用飼料と、桑の葉粉末無添加の採卵用飼料をそれぞれ8羽の採卵鶏に給与し、採取した糞は良く混合した後、pHを測定した。また、実施例1と同様に発生したアンモニアを測定し7日間継続した。
桑の葉粉末を0.1、0.3、1.0%添加した採卵鶏用飼料と、桑の葉粉末無添加の採卵用飼料をそれぞれ8羽の採卵鶏に給与し、採取した糞は良く混合した後、pHを測定した。また、実施例1と同様に発生したアンモニアを測定し7日間継続した。
この結果は、図3、4に示したとおりで、桑の葉粉末の添加量が増加するに伴いpHが酸性へと低下することが判明した(図3)。また、桑の葉粉末の添加量が増加するに伴いアンモニアの発生するまで時間が遅延した(図4)。
実施例3
鶏は高い飼育密度で高エネルギーに飼料を給与されているため、体脂肪の過剰蓄積、特に腹腔内のへの過剰な脂肪蓄積が問題となっている。そこで、桑の葉粉末による腸内pH制御の副次的な効果として、小腸での二等類の吸収阻害が体脂肪の蓄積及ぼす影響について検討した。
鶏は高い飼育密度で高エネルギーに飼料を給与されているため、体脂肪の過剰蓄積、特に腹腔内のへの過剰な脂肪蓄積が問題となっている。そこで、桑の葉粉末による腸内pH制御の副次的な効果として、小腸での二等類の吸収阻害が体脂肪の蓄積及ぼす影響について検討した。
桑の葉粉末を3%添加した養鶏用飼料と桑の葉粉末無添加の養鶏用飼料をそれぞれ30羽のブロイラー及び風雷どり(群馬県の肉用銘柄鶏))に対し試験終了(ブロイラー56日齢、風雷どり84日齢)から遡って28日間給与し、終了時に体重測定を実施し、平均体重に近い6羽の個体について腹腔内脂肪量を測定し比較をした。
この結果は、図5に示したとおりで、桑を飼料添加することで、明らかに鶏の腹腔内脂肪を減らすことが可能であり、体脂肪の過剰蓄積を制御するものである。なお、これについてはオリゴ糖やデキストリン副産物の摂取では得ることができない効果である。
以上の、実施例から、桑の葉粉末を添加、又は含有している飼料による鶏の腸内pH調整法は現在の養鶏産業が直面している、生産物の安全性確保、悪臭による環境問題という養鶏経営を存続を脅かす課題、更には鶏の体脂肪の過剰蓄積といった、三つの課題を同時に解決することが可能であり極めて画期的な方法である。
なお、本発明は有用微生物を多く含む糞を排泄させる方法でもある。たとえば豚では、子豚が授乳期間に母豚と一緒に生活する際に、母豚の糞を摂取することで腸内細菌を獲得するわけであるが、この場合、摂取した糞に有害微生物が多く含まれている場合は、下痢を起こす等体調不良となり、以後の発育に悪影響を及ぼす。逆に有用微生物を多く含む糞を摂取した場合には、良好な腸内細菌叢を早期に獲得でき、以後の発育に好影響を及ぼす。
本発明は、鶏において極めて有益な技術であるが、以上のように母親の排せつ物から腸内細菌叢を獲得する動物に適用することが可能な技術でもある。
本発明では、桑の葉粉末の飼料添加又は含量を0.1〜3.0としているが、これは鶏に対する効果や桑の葉粉のコスト、鶏の嗜好性等を勘案して導き出したものである。しかし、必要に応じてそれ0.1%未満、或いは3.0%以上の桑の葉粉末を飼料添加してもよいが、多く添加すると飼料摂取の減退を招き、腸内pH制御の効果が十分得られない場合もあるので、鶏や生産物、飼料摂取量、或いは排せつ物をよく観察し、適宜添加量を調整する。
また、桑の葉粉末は繊維質に富み、鶏が消化しにくい素材であるため、少ない添加量で十分な腸内pH制御効果を得るには、桑の葉をより細かく粉砕する必要がある。なお、多少の枝が混入しても、なんら問題はない。
桑の粉末の大きさは、10メッシュ以下の粉末、できれば100〜150メッシュ以下の微粉末とし、飼料に添加・含有させることが望ましい。また、セルラーゼ等の繊維の消化を促す酵素を添加することにより腸内pH制御の効果を更に高めることが期待できる。
本発明は現在の養鶏産業が直面している、生産物の安全性確保、悪臭による環境問題という養鶏経営を存続を脅かす課題、更には鶏の体脂肪の過剰蓄積といった、三つの課題を同時に解決することが可能な画期的な方法であり、産業上の利用可能性は極めて高い。
Claims (4)
- 桑葉の乾燥粉砕物を添加または含有する養鶏用飼料を鶏に摂取させることを特徴とした鶏の腸内pH制御方法。
- 桑葉の乾燥粉砕物を添加または含有し、鶏に摂取させることで鶏の腸内pH制御することを特徴とした養鶏用飼料。
- 桑葉の乾燥粉砕物を0.1〜3.0重量%添加または含有する養鶏用飼料を鶏に摂取させることで腸内または排せつ物のpHを4.0〜6.0に制御することを特徴とした請求項1の鶏の腸内pH制御方法。
- 排せつ物からのアンモニア発生を抑制すること特徴とした、請求項1の鶏の腸内pH制御方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007086640A JP2008237193A (ja) | 2007-03-29 | 2007-03-29 | 鶏の腸内pH制御方法と養鶏用飼料 |
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Publications (1)
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JP2008237193A true JP2008237193A (ja) | 2008-10-09 |
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JP2007086640A Pending JP2008237193A (ja) | 2007-03-29 | 2007-03-29 | 鶏の腸内pH制御方法と養鶏用飼料 |
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JP (1) | JP2008237193A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN101773205A (zh) * | 2010-03-17 | 2010-07-14 | 汪玉攸 | 畜禽桑饲料的加工方法 |
JP2012016293A (ja) * | 2010-07-06 | 2012-01-26 | Nippon Formula Feed Mfg Co Ltd | 家禽用飼料 |
CN111513205A (zh) * | 2020-04-30 | 2020-08-11 | 西南林业大学 | 一种肉鸡竹叶饲料的制备方法及其应用 |
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2007
- 2007-03-29 JP JP2007086640A patent/JP2008237193A/ja active Pending
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