JP2008237024A - ガラクトース誘導系を有する形質転換体及びその利用 - Google Patents

ガラクトース誘導系を有する形質転換体及びその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な応答性を有する遺伝子発現の誘導系を有する形質転換体を提供する。
【解決手段】ガラクトース誘導系を有し、構成的プロモーターの制御下にGal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質をコードするコード領域と、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に内在性又は外来性の所望のタンパク質をコードするコード領域とを保持するようにする。この核酸コントラクトのセットを備える酵母等の形質転換体。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガラクトース誘導系を用いた遺伝子発現技術に関し、詳しくは、ガラクトース誘導系を備える形質転換体、核酸コンストラクト、発現ベクター、培養方法、遺伝子発現方法、物質生産方法等に関する。
従来、細胞等において遺伝子発現を所望のタイミングで誘導することが望まれている。例えば、形質転換体を用いた発酵生産においては、細胞を最大限増殖させた上で所望の遺伝子産物を生産させることがエネルギー収支及び遺伝子産物の回収操作等において好ましい。一般に、こうした遺伝子の発現誘導に利用できる要素としては、グルコースの欠乏と新たな基質の供給が挙げられる。グルコースは多くの生物にとって最も利用しやすい栄養源であり、生物においてはグルコースの欠乏により種々の応答が生じるやすくなる。
こうしたグルコース欠乏時の応答として出芽酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cereivisiae)等におけるガラクトース誘導がある。ガラクトース誘導は、グルコースの欠乏時においてガラクトースによりガラクトース代謝遺伝子(GAL遺伝子)群が活性化され誘導されるシステムである。ガラクトース誘導は、ただ一つの転写活性化因子であるGal4タンパク質(以下、単に、Gal4と称する。)によってガラクトース代謝に関連するGAL遺伝子群を正に制御しており、培地にガラクトースが存在しない間はGAL遺伝子群の転写開始を抑制しているが、培地中にグルコースがなくなりガラクトースが添加されると、この抑制が解除されてGAL遺伝子群の発現が誘導される。
Gal4は、出芽酵母等においてガラクトース代謝に必要なGAL1(ガラクトカイネース)遺伝子、GAL2(ガラクトパーミアーゼ)遺伝子、GAL7(α−D−ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ)遺伝子及びGAL10(ウリジンホスホガラクトース−1−エピメラーゼ)遺伝子(以下、単に、GAL10等と称する。)の各遺伝子を活性化するほか、GAL80、GAL3及びMEL1を活性化するとされている(非特許文献1)。
このようなGal4のGAL遺伝子群の転写活性化能力を利用して、GAL4遺伝子をガラクトース誘導性プロモーターの制御下に連結して出芽酵母の染色体に組み込むことが開示されている(特許文献1)。すなわち、この特許文献では、こうした組換え酵母において、培地中のグルコース量及びガラクトース量を制御して、Gal4を過剰発現させることを意図している。
また、ガラクトース誘導性プロモーターを利用してCre遺伝子を発現させて所望の時期に部位特異的な組み換えを行わせることも開示されている(特許文献2)。
特許第2708154号公報 特許第2721666号公報 D. Lohr et al,TheFASEB Journal (1995), p.777-787
特許文献1に記載の方法では、正の転写調節因子としてのGal4の量が非常に少量であることに鑑み、Gal4をガラクトースによって誘導して過剰に発現させることにより他の多数のガラクトース誘導性プロモーターに連結される所望の外来遺伝子の発現を効果的に行おうとするものである。
しかしながら、こうしたGal4をガラクトース誘導的に過剰に発現させても必ずしも意図したように外来遺伝子がガラクトース誘導的に発現されるわけではなかった。反応基質であるガラクトースをグルコースと同等程度に要したり、反応時間が長くかかるなどその応答性は十分なものではなかった。また、単位時間当たりの発現量も小さく必ずしも十分な感度を有しているわけではなかった。
また、特許文献2に記載の方法では、ガラクトース誘導的にCre遺伝子を発現させてCre酵素を産生させ、次いで、Cre酵素が部位特異的組み換えによりLoxP部位などで識別されるDNA上の特定部位を削除等することで、他の所望の遺伝子を発現させるものである。したがって、所望の遺伝子を発現させるには、Cre遺伝子の発現とCre酵素による部位特異的組み換えが必要であり、ガラクトース添加から所望の遺伝子の発現までの応答時間が長くならざるを得なかった。また、感度も良好ではなかった。
そこで、本発明では、良好な応答性を有する遺伝子発現の誘導系を有する形質転換体及びその用途を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、迅速な応答性を有する遺伝子発現誘導のための形質転換体、核酸コンストラクト、形質転換用宿主、遺伝子発現方法、物質生産方法を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、高い応答性を有する遺伝子発現誘導のための形質転換体、核酸コンストラクト、形質転換用宿主、遺伝子発現方法、物質生産方法を提供することを一つの目的とする。
本発明者らは、ガラクトース誘導系について詳細に検討した結果、ガラクトース誘導系は、Gal4自体を制御するよりもむしろGal4の制御下にあってGal80によるGal4活性の抑制解除に関与するタンパク質やガラクトースの取り込みに関与するタンパク質を構成的に発現させることにより、ガラクトースに対して良好な応答性でガラクトース誘導系が発現されてくることを見出した。また、本発明者らは、より迅速にまた、より強力に所望の因子を発現させる手法を見出した。本発明によれば、以下の手段が提供される。
本発明は、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に所望の因子をコードするコード領域を保持する染色体外自律複製体を有するガラクトース誘導系と、構成的プロモーターの制御下にあってGal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質をコードするコード領域と、を備える、形質転換体が提供される。
本発明によれば、前記染色体外自律複製体は多コピー数性である前記形質転換体にも関し、また、前記ガラクトース誘導系がガラクトース誘導性プロモーターの制御下にGal4活性を有するタンパク質をコードするコード領域を有する前記形質転換体にも関する。
さらに、本発明は、前記ガラクトース誘導系がガラクトース誘導性プロモーターの制御下に部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質のコード領域を有する前記形質転換体にも関する。この形質転換体は、前記部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質の識別部位と前記タンパク質による組換えにより非ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に発現可能に備えられる所望の因子をコードする領域を備えることができる。
本発明は、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質をコードするコード領域を有するガラクトース誘導系と、構成的プロモーターの制御下にあってGal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質をコードするコード領域と、を備える、形質転換体に関する。この形質転換体は、前記部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質の識別部位と前記タンパク質による組換えにより非ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に発現可能に備えられる所望の因子をコードするコード領域を備えることができる。前記部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質をコードするコード領域は、宿主染色体外自律複製体上にあってもよい。また、前記部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質の前記識別部位と前記所望の因子をコードするコード領域は宿主染色体上にあってもよいし染色体外自律複製体上にあってもよい。
本発明によれば、また、核酸コンストラクトのセットであって、構成的プロモーターと、該構成的プロモーターの制御下にあってGal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質をコードするコード領域とを備える第1の核酸コンストラクトと、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に所望の因子をコードするコード領域又は当該コード領域を導入可能な導入部位を有する第2の核酸コンストラクトと、を備えるセットが提供される。
この核酸コンストラクトセットにおいては、前記第2の核酸コンストラクトの前記ガラクトース誘導性プロモーターの制御下の前記コード領域は、部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質をコードしていてもよい。また、前記部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質の識別部位と前記タンパク質による組換えにより非ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に発現可能に備えられる所望の因子をコードするコード領域又は当該コード領域を導入可能な導入部位を有する第3の核酸コンストラクトを備えていてもよい。前記第2の核酸コンストラクトは、染色体外自律複製体であってもよい。
本発明によれば、構成的プロモーターの制御下にあってGal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質をコードするコード領域を備える、宿主細胞が提供される。この宿主細胞においては、前記ガラクトース誘導系は、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下にGal4活性を有するタンパク質をコードするコード領域を有することができる。
本発明によれば、遺伝子の発現方法であって、上記いずれかに記載の形質転換体において、前記ガラクトース誘導系を活性化させることにより前記所望の因子を発現させる発現工程を備える、方法が提供される。この方法においては、前記形質転換体を、実質的にガラクトースを含まない培地で培養する第1の培養工程と、実質的にグルコースを含まず、前記形質転換体の前記ガラクトース誘導系を発現可能な程度のガラクトースの存在下で前記形質転換体を培養する第2の培養工程と、を備えることができる。
本発明によれば、物質の生産方法であって、上記いずれかに記載の形質転換体において、前記ガラクトース誘導系を活性化させて前記所望の因子を発現させることにより前記物質を生産する生産工程を備える方法が提供される。この方法においては、前記物質生産工程は、前記形質転換体を、実質的にガラクトースを含まない培地で培養する第1の培養工程と、実質的にグルコースを含まず、前記形質転換体の前記ガラクトース誘導系を発現可能な程度のガラクトースの存在下で前記形質転換体を培養する第2の培養工程と、を含むことができる。さらに、前記形質転換体は、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質のコード領域を有する前記形質転換体のときには、前記生産工程は、前記形質転換体を、実質的にガラクトースを含まない培地で培養する第1の培養工程と、実質的にグルコースを含まず、前記形質転換体の前記ガラクトース誘導系を発現可能な程度のガラクトースの存在下で前記形質転換体を培養する第2の培養工程と、実質的にガラクトースを含まない培地で培養する第3の培養工程と、を備えることができる。
本発明は、ガラクトース誘導系を備える形質転換体、形質転換体の作製及びその用途に関し、転写活性化因子であるGal4活性を有するタンパク質(以下、単にGal4活性タンパク質という。)による転写活性化を支援する支援タンパク質を構成的に発現させるとともに、こうしたガラクトース誘導性プロモーターの制御下に所望の因子をコードするコード領域を含むガラクトース誘導系を染色体外自律複製体に形質転換体に準備しておくことで、応答性よく又は感度よくガラクトース誘導性プロモーター制御下の所望の因子を発現させることができる。
また、本発明は、支援タンパク質を構成的に発現させるとともに、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に、宿主内において部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質を発現させることで、ガラクトース誘導系によって宿主内のDNAの改変を応答性よく行って、形質転換体における遺伝子の発現調節を行うことができる。ガラクトース誘導系によって自律複製可能なDNA上で組換えされた場合には、当該DNAの改変は複製により維持される。このため、ガラクトースによる誘導状態を解除してもガラクトース誘導後の状態を維持することができる。
図1に、ガラクトース誘導系において考えられる制御機構のうちガラクトース、Gal4及び各種の支援タンパク質との関係についての概略を示す。図1(a)に示すように、Gal4は、GAL遺伝子群の転写活性化因子として、GAL1などのプロモーターの上流側にあるUASgal部位に結合して転写活性化作用を奏する。図(b)に示すように、培地中にガラクトースが存在していないときには、Gal4に阻害因子であるGal80が結合するため、転写を活性化することができず、GAL1の発現は抑制されている。一方、図1(c)に示すように、培地中にグルコースがなくガラクトースが存在しているときには、Gal80の阻害作用が解除され、GAL1の転写が活性化される。
ガラクトースと結合したGal1やGal3はGal80と結合できることが知られているが、Gal1やGal3の全ての機能は解明されているわけではない。培地中のガラクトースは、ガラクトースパーミアーゼ活性を有するGal2により細胞内に取り込まれる。また、Gal1はガラクトース代謝の第1段階の酵素であるガラクトカイネース活性を有している。しかしながらこれらの関係もまた解明されているわけではない。
本発明者らによれば、例えば、Gal80結合活性及び/又はガラクトカイネース活性を有するタンパク質などの支援タンパク質を構成的に発現させることでガラクトースの存在下に、予想を超えて迅速そして高感度にガラクトース誘導性プロモーターを作動させることができることがわかった。このため、本発明の形質転換体によれば、ガラクトースの非存在下で、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下の遺伝子、例えば、外来タンパク質などの宿主細胞にとって質的及び/又は量的に異質なタンパク質を発現させることなく、すなわち、増殖を阻害する可能性のある遺伝子を発現させることなく形質転換体を十分に増殖させることができる。そして、その後に、高密度又は大規模容量に増殖された形質転換体においてガラクトース誘導性プロモーター制御下の遺伝子をガラクトース誘導的に一挙にかつ多量に発現させることができる。したがって、本発明によれば、Gal4を誘導的に過剰発現するよりも応答性よくガラクトース誘導系を誘導できる。
このため、上記したように、ガラクトース誘導的に染色体外で自律複製体上の所望の因子を発現可能に予め備えておくことで、一層応答性よくまた強力に所望の因子を発現させることができる。また、ガラクトース誘導的に部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質を発現可能に予め備えておくことで、応答性よく宿主の遺伝的に改変できるのである。後者の形質転換体によれば、ガラクトースによる誘導によって宿主が遺伝子的に改変されるとともにその後当該改変は維持されるため、ガラクトースによる誘導状態を解除することもできる。
なお、本明細書において、例えば、Gal4活性タンパク質などとタンパク質の名称に活性タンパク質を付記して表記するとき、該名称に係るタンパク質のほか、該名称に係るタンパク質以外のタンパク質であって該名称に係るタンパク質の生理活性のうち本発明に必要な生理活性を有しているタンパク質も包含している。したがって、こうした生理活性を有している限り、該名称に係る天然のタンパク質を改変したり人工的に合成したタンパク質も包含される。また、サッカロマイセス・セレビシエ以外の他の細胞のガラクトース誘導系におけるGal4に相当するタンパク質も包含される。なお、タンパク質を改変するには、天然タンパク質における生理活性部位についての情報が必要である。生理活性部位の情報は、部位特異的変異の挿入等の手法を用いて特定することができる。また、天然タンパク質のホモログ、オルソログ又はパラログを公知の相同性検索システムを用いて検索し、これらのタンパク質間において可能性ある生理活性部部位を特定することによっても得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(形質転換体)
(ガラクトース誘導系)
本発明の形質転換体は、ガラクトース誘導系を有している。本明細書において、ガラクトース誘導系とは、栄養源としてのガラクトースによって転写活性化されるガラクトース代謝に関連する遺伝子群を意味している。ガラクトース誘導系としては、例えばサッカロマイセス・セレビシエ酵母が備えるGAL遺伝子群が知られている。サッカロマイセス・セレビシエにおけるGAL遺伝子群としては、GAL4及びGAL4の遺伝子産物であるGal4によって正に制御されるGAL1、GAL2、GAL5、GAL7及びGAL10が挙げられる。また、同様にGal4によって正に制御されるGAL80、GAL3及びMEL1が挙げられる。ガラクトース誘導系を構成するコンポーネントには、これら構造遺伝子のほか、プロモーターやそのGal4結合部位などの調節領域が含まれる。なお、本発明においてガラクトース誘導系というときには、ガラクトース誘導的に機能すればよく、これらのすべての遺伝子群を備えていなくてもよい。
形質転換体の有するガラクトース誘導系は、宿主細胞が本来的に有するガラクトース誘導系であることが好ましい。すなわち、宿主細胞としてガラクトース誘導系を有する細胞を用いることが好ましい。こうした細胞は、ガラクトース誘導系を備える細胞であればよく、サッカロマイセス・セレビシエのほか、サッカロマイセス・ポンベ、カルルスベンゲルス、ノルベンシス、ジアストチクス、オビホルミス、ウバルム、ロウキシ、モンタヌス、クルイベリ、エロンギスポルス等の他の種であってもよい。また、ピキア、クルイベロミセス等の他の属の酵母であってもよい。さらに、カンジダ・アルビカンスなどのカンジダ属であってもよい。ガラクトース誘導系を備える細胞を宿主細胞として用いることで形質転換体へ導入する外来遺伝子数を抑制できる。
なお、形質転換体の有するガラクトース誘導系は、宿主細胞の内在性遺伝子からなるガラクトース誘導系であってもよいが、一部又は全部が人工的に構築されていてもよい。すなわち、宿主細胞は、ガラクトース誘導系を本来的に有する細胞のほか、ガラクトース誘導系を遺伝子工学的手法により構築された細胞を用いることができる。例えば、ガラクトース誘導系のない宿主細胞にガラクトース誘導系を構築可能な外来遺伝子群を導入したり、ガラクトース代謝能力を有するがガラクトース誘導的でない場合においてガラクトース誘導的に改変したり、宿主のガラクトース誘導系の構造遺伝子や調節領域の一部又は全部を外来性遺伝子で置換したりしてもよい。また、ガラクトース誘導系のコンポーネントは、ガラクトース誘導的にガラクトース代謝が可能である限り、内在性の構造遺伝子や転写調節領域等が改変されていたり、欠損されていたりしてもよい。例えば、サッカロマイセス・セレビシエのガラクトース誘導系におけるGal4やGal80を改変してGal4活性タンパク質やGal80活性タンパク質を発現するように改変されていてもよい。また、ガラクトース誘導系は、その全てが宿主染色体上にある必要はなく、機能可能に宿主染色体及び/又は宿主染色体外に保持されていればよい。
以上のことから、本発明の宿主細胞としては、酵母などの単細胞真核生物を好ましく用いることができる。こうした宿主としては、サッカロマイセス・セレビジエ、サッカロマイセス・ポンベ、カンジダ・アルビカンス、ピキア・パストリス、クルイベロマイセス・ラクティスが好ましいものとして挙げられる。より好ましくは、サッカロマイセス・セレビシエ、クルイベロミセス・ラクティスである。
(構成的プロモーター)
形質転換体は、構成的プロモーターの制御下にGal4活性タンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質をコードするコード領域を保持している。ここで、構成的とは、宿主細胞の生育条件とは無関係に、という意味であり、構成的プロモーターとは、宿主細胞の生育条件とは無関係に制御下にある遺伝子を発現させるプロモーターを意味している。構成的プロモーターは、特に限定しないで使用する宿主細胞の種類に応じてまた制御する遺伝子の種類等に応じて適宜選択すればよい。
例えば、サッカロマイセス・セレビシエにおける構成的プロモーターとしては、ADH1プロモーター、HIS3プロモーター、TDH3プロモーター、CYC1プロモーター及びHOR7プロモーターが挙げられる。なお、本明細書において、例えば、ADH1プロモーターと記載した場合、このプロモーターの塩基配列の一部のみからなる改変体や塩基配列の一部が置換、欠失、挿入等された改変体などの各種の改変体も含んでいる。
構成的プロモーターは、構成的プロモーターにより作動可能に連結される支援タンパク質の種類に応じた発現レベルのものを選択することができる。例えば、Gal80結合活性及び/又はガラクトカイネース活性を有するタンパク質の構成的プロモーターとしてはHIS3プロモーター、CYC1プロモーターを選択することができる。また、Gal2活性タンパク質などのガラクトーストランスポーター活性を有するタンパク質の構成的プロモーターとしては、HIS3プロモーターを使用できる。HIS3プロモーターは、ガラクトーストランスポーター活性タンパク質を、Gal80結合活性及び/又はガラクトカイネース活性を有するタンパク質と同時に発現させる態様において好ましい。
(Gal4活性タンパク質による転写の活性化を支援する支援タンパク質)
本発明において、Gal4活性タンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質とは、Gal4活性タンパク質以外のタンパク質であって、結果として、Gal80活性タンパク質のGal4活性タンパク質に対する転写活性化阻害作用を解除するタンパク質であればよい。
ここで、Gal4活性タンパク質とは、具体的には、染色体上等のGal4結合部位やUASgalに結合するとともに、Gal80活性タンパク質等との相互作用により下流の遺伝子の転写活性を正に制御するタンパク質であればよい。したがって、サッカロマイセス・セレビシエのGal4のほか、Gal4結合部位への結合活性と転写制御活性を維持して人工的に改変されたタンパク質であってもよい。また、Gal4活性タンパク質は、Gal4に相当する他の種又は属の酵母等のタンパク質であってもよい。
既に、Gal4の全アミノ酸配列(GenBankアクセス番号:Z73604)及びDNA結合活性部位、転写活性化部位等は知られており(D. Lohr et al,The FASEB Journal (1995), p.777-787)、こうした配列に基づいて人工的なタンパク質を作製するのは当業者であれば容易に行うことができる。
本発明においては、支援タンパク質は、Gal80結合活性及び/又はガラクトカイネース活性を有するタンパク質であることが好ましい。Gal80結合活性を有するタンパク質は、Gal80活性タンパク質のGal4活性タンパク質に対する転写活性化阻害作用を解除できると考えられる。また、ガラクトカイネース活性を有するタンパク質は、ガラクトースの細胞内取り込みを促進するものと考えられ、Gal80結合活性を有するタンパク質の該結合活性を促進するものと考えられるからである。
なお、Gal80結合活性とは、Gal80活性タンパク質に対する結合活性であって結果としてGal80活性タンパク質のガラクトース誘導系の転写阻害作用を解除するような結合活性である。また、Gal80活性タンパク質とは、サッカロマイセス・セレビシエのGal80(GenBankアクセス番号:X01667)のほか、Gal4に結合してその転写活性化作用を阻害する活性を維持して人工的に改変されたタンパク質であってもよい。また、Gal80に相当する他の種又は属の酵母等のタンパク質であってもよい。
Gal80結合活性及びガラクトカイネース活性を有するタンパク質としては、Gal1活性タンパク質を用いることができる。また、Gal80結合活性を有するタンパク質としては、Gal1活性タンパク質及びGal3活性タンパク質を用いることができる。ガラクトカイネース活性を有するタンパク質としては、Gal1活性タンパク質を用いることができる。サッカロマイセス・セレビシエのガラクトース誘導系においては、Gal1及びGal3は、Gal80と結合能力があり、Gal80によるGal4に対する転写活性化阻害作用の解除を促進することが知られている。また、Gal1は、ガラクトカイネース活性を有している。
Gal1活性タンパク質としては、Gal1(GenBankアクセス番号:Z35889)のほか、Gal1のガラクトースカイネース活性及びGal80結合活性を有するタンパク質、ガラクトカイネース活性を有するタンパク質及びGal80結合活性を有するタンパク質のいずれかを用いることができる。好ましくは、Gal1、ガラクトカイネース活性及びGal80結合活性を有するタンパク質を用いることができる。Gal3活性タンパク質としては、Gal3のほか、Gal3のGal80結合活性を有するタンパク質を用いることができる。
なお、Gal1活性タンパク質とは、サッカロマイセス・セレビシエのGal1のほか、Gal80結合活性及び/又はガラクトカイネース活性を有して、Gal80活性タンパク質のGal4活性タンパク質に対する転写活性阻害作用を解除できるものであればよく、人工的に構築又は改変されたタンパク質であってもよい。また、Gal1に相当する他の種又は属の酵母等のタンパク質であってもよい。
また、Gal3活性タンパク質とは、サッカロマイセス・セレビシエのGal3(GenBankアクセス番号:Z74305)のほか、Gal80結合活性を有して、Gal80活性タンパク質のGal4活性タンパク質に対する転写活性阻害作用を解除できるものであればよく、人工的に構築又は改変されたタンパク質であってもよい。また、Gal3に相当する他の種又は属の酵母等のタンパク質であってもよい。
支援タンパク質としては、ガラクトーストランスポーター活性を有するタンパク質を用いることができる。ガラクトーストランスポーターは、ガラクトースの細胞内への取り込みを促進でき、Gal80結合活性を有するタンパク質の該結合活性を促進するものと考えられるからである。ガラクトーストランスポーター活性を有するタンパク質としては、Gal2活性タンパク質を用いることができる。
Gal2活性タンパク質は、グルコースの存在下では細胞内において分解されることがわかっている。このため、この支援タンパク質を単独で用いてガラクトース誘導系を応答性よく発現させるには、Gal80結合活性等を有するタンパク質と併用する場合と同等若しくは高レベルに構成的に発現させることが好ましく、そうしたプロモーターを選択することが好ましい。
Gal2活性タンパク質としては、Gal2(GenBankアクセス番号:Z73253)のほか、Gal2のガラクトーストランスポーター活性を有するタンパク質を用いることができる。なお、Gal2活性タンパク質とは、サッカロマイセス・セレビシエのGal2のほか、ガラクトーストランスポーター活性を有するものであればよく、人工的に構築又は改変されたタンパク質であってもよい。また、Gal2に相当する他の種又は属の酵母等のタンパク質であってもよい。
本発明では、こうした支援タンパク質として、少なくともGal80結合活性及び/又はガラクトカイネース活性を有するタンパク質を用いることが好ましく、より好ましくはGal80結合活性及びガラクトカイネース活性を有するタンパク質を用いることが好ましい。すなわち、Gal1活性タンパク質かGal3タンパク質を好ましく用いることができ、Gal1活性タンパク質をより好ましく用いることができる。本発明を拘束はしないが、Gal80結合活性とガラクトカイネース活性とを有するタンパク質を構成的に発現させることで、ガラクトースの細胞内取り込みを促進するとともに、取り込んだガラクトースと結合してGal80結合活性を発揮し、細胞核内におけるGal80活性タンパク質の濃度を速やかに低下させることができると推論される。Gal80結合活性を有するタンパク質及びガラクトカイネース活性を有するタンパク質のいずれかを構成的に発現させることでも、細胞核内におけるGal80活性タンパク質濃度を速やかに低下させ、ガラクトース誘導系を応答性よく誘導させることができると推論される。
また、本発明の支援タンパク質としては、Gal80結合活性タンパク質及び/又はガラクトカイネース活性を有するタンパク質とともにガラクトーストランスポーター活性を有するタンパク質を用いることが好ましい。すなわち、Gal1活性タンパク質及び/又はGal3活性タンパク質とともにGal2活性タンパク質を用いることが好ましく、Gal1活性タンパク質及びGal2活性タンパク質を用いることがより好ましい。本発明を拘束するものではないが、ガラクトーストランスポーター活性を有するタンパク質を構成的に発現させることで、グルコースの欠乏に伴って、ガラクトーストランスポーター活性タンパク質が速やかに細胞膜に保持されるようになり、ガラクトースの取り込みを促進し、細胞核内におけるGal80活性タンパク質濃度を低下させ、ガラクトース誘導系を応答性よく誘導させることができると推論される。
形質転換体は、こうした支援タンパク質をコードするコード領域を当該支援タンパク質を発現可能に保持している。コード領域は、各種支援タンパク質の公知のアミノ酸配列及び塩基配列に基づいて決定することができるし、また、ガラクトース誘導系の各種タンパク質の各種活性部位の情報や部位特異的変異導入等の手法による活性化部位の決定結果に基づいて決定することもできる。コード領域を構成するポリヌクレオチドは、好ましくはDNAであり、DNAは、イントロンを含んでいてもよいが好ましくはcDNAである。なお、コード領域には、人工的なデオキシリボヌクレオチドを含んでいてもよく修飾がなされていてもよい。また、構成的プロモーター及びコード領域は、宿主染色体上にあっても宿主染色体外にあってもよい。好ましくは宿主染色体上に保持される。
(Gal4活性タンパク質)
形質転換体は、Gal4活性タンパク質をガラクトース誘導的に発現するものであってもよい。すなわち、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下にGal4活性タンパク質をコードするコード領域を当該タンパク質を発現可能に保持していてもよい。支援タンパク質を構成的に発現させることなくGal4活性タンパク質をガラクトース誘導的に発現させても良好な応答性は得られていないが、支援タンパク質を構成的に発現させた上でGal4活性タンパク質をガラクトース誘導的に発現させることで、構成的に発現される支援タンパク質によるガラクトース誘導系の誘導の応答性を高め、ガラクトース誘導下での発現強度を増強できる。
ガラクトース誘導性プロモーターとしては、GAL1、GAL2、GAL3、GAL5、GAL7、GAL10及びMEL1の各遺伝子のプロモーターを用いることができる。本明細書において、こうしたプロモーターはガラクトース誘導的である限り改変されていてもよく、そうした改変プロモーターも包含されるのは既に述べたとおりである。また、これらのプロモーターには、UASgal等のGal4活性タンパク質結合部位を含んでいる。好ましくは、GAL1、GAL2、GAL7及びGAL10のいずれかのプロモーターであり、より好ましくは、GAL10プロモーターを用いる。
また、Gal4結合部位を上流側に備えGal4活性を有するタンパク質によって活性化可能なガラクトース代謝遺伝子以外の内在性プロモーター又は外来性プロモーターをガラクトース誘導性プロモーターとして用いることができる。なお、いわゆるガラクトース誘導性プロモーターでないプロモーターであっても、その上流側にGal4結合部位を備えることでガラクトース誘導性プロモーターとして機能することはよく知られている。例えば、宿主細胞が本来的に有するプロモーターの上流側にGal4結合部位を保持させることで該内在性プロモーターをガラクトース誘導性プロモーターとして利用できる。ガラクトース誘導的でない外来性プロモーターについても同様である。こうした内在性プロモーター及び外来性プロモーターとしては、CYC1プロモーター、CUP1プロモーター及びHOR7プロモーターを好ましく用いることができる。
Gal4活性タンパク質をガラクトース誘導的に発現させるための領域は、宿主染色体上に保持されていても宿主染色体外に保持されていてもよいが、好ましくは宿主染色体上に保持される。
以上説明した本発明の形質転換体は、ガラクトース誘導的に所望の遺伝子を応答性よく発現させるのに適した改変されたガラクトース誘導系を備えるものとなっている。すなわち、こうした形質転換体において、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に所望の遺伝子を発現させることで、効率的な物質生産に適した形質転換体を得ることができる。したがって、こうした形質転換体を、ガラクトース誘導系の制御下に所望の遺伝子を発現させるのに好ましい宿主細胞として用いることができる。
(ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に所望の因子をコードするコード領域を保持する形質転換体)
本発明の形質転換体は、ガラクトース誘導的に内在性又は外来性の所望の因子を発現可能な形質転換体とすることができる。すなわち、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に内在性又は外来性の所望の因子をコードするコード領域を保持することができる。この形質転換体によれば、ガラクトース誘導系の応答性が向上されているため、ガラクトース誘導的に応答性よく遺伝子を発現させて所望のタンパク質などの因子又はその代謝物を得ることができる。ガラクトース誘導性プロモーターとしては、既に説明したものから適宜選択して用いることができる。好ましくは、GAL1プロモーターを用いる。
ガラクトース誘導系は、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に内在性又は外来性の所望の因子をコードするコード領域を宿主染色体上に保持していてもよいし、宿主染色体外に保持していてもよい。宿主染色体に保持することで宿主の増殖にあたり安定的に保持されやすい。また、ガラクトース誘導性プロモーターとその制御下で発現可能な所望の因子を染色体外に保持するときには、染色体外で自律複製できるプラスミドや人工染色体などのベクターに保持されていることが好ましい。自律複製が可能であると、宿主の分裂増殖に伴って娘細胞に分配され継続的に維持される。また、自律複製体としては、多コピー数で保持されるものが好ましい。本発明の形質転換体においては、予め支援タンパク質を構成的に発現させておいた上でガラクトース誘導するのであるが、このとき、Gal4活性タンパク質により転写活性化されるターゲットであるガラクトース誘導性プロモーター及びその制御下の発現される遺伝子を多コピー数備えておくことで、より応答性よくより高感度に所望の遺伝子を発現させることができる。
こうした自律複製可能なベクターは、宿主に応じて選択される。酵母を宿主とする場合には、2μオリジンを有する2μプラスミドや酵母染色体等を好ましく用いることができ、より好ましくは2μプラスミドである。2μプラスミドは各種形態のものを商業的に容易に入手することができる。
ガラクトース誘導的に発現させる所望のタンパク質などの因子としては、ガラクトース代謝に関連するタンパク質以外であることが好ましく、必要に応じて選択される。例えば、研究用途等において発現レベルを視覚化するためにGFPなどの各種の蛍光タンパク質を用いることができる。因子が、形質転換体における物質生産や代謝に促進的に作用するタンパク質である場合には、ガラクトース誘導により、物質生産等が促進される。一方、遺伝子が形質転換体における物質生産等に抑制的に作用する場合には、ガラクトース誘導により、当該物質生産が抑制される。こうした因子は、酵素、転写因子、受容体などのタンパク質のほか、siRNAやリボザイム等、RNAとして機能するものも含んでいる。
ガラクトース誘導的に発現させる因子は、部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質とすることができる。本形質転換体において、こうしたタンパク質をガラクトース誘導的に発現させることで、部位特異的組換えにより応答性よく形質転換体に新たな遺伝的改変を生じさせ、それにより新たな形質を発現させることができる。ガラクトース誘導的に部位特異的組換え酵素を有するタンパク質を発現させて遺伝的改変を生じさせることで、遺伝的改変後はガラクトースによる誘導を解除してもガラクトース誘導によって生じた状態を維持することができる。物質生産を目的にこの遺伝的改変を生じさせる場合に、コスト的に不利なガラクトースを用いた培養状態を早期に解除できることは有利である。
部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質は、天然の部位特異的組換え酵素のほか当該酵素活性を維持して当該酵素のアミノ酸配列及び/又は塩基配列を改変したタンパク質も包含する(以下、単に、組換え酵素タンパク質という。)。組換え酵素タンパク質は、通常、特徴的なDNA配列を有する組換え酵素認識配列とともに部位特異的組換え系を構成する。組換え酵素タンパク質は、特徴的なDNA配列を有する組換え酵素認識配列を認識し、この認識配列が2以上存在したとき、その配列間の組換えを触媒することができる。すなわち、組換え酵素タンパク質は、この認識配列が同一DNA分子上に、互いに同方向を向いてある一定の間隔で二つ存在している場合には、これに挟まれた領域がこのDNA分子から脱離する、という挙動を示すことができる。また、認識配列が同一DNA分子上に反対方向を向いてある一定間隔で存在している場合には、これに挟まれた領域の配列の逆位を生じさせることができる。本発明では、部位特異的組換え酵素による二つの認識配列に挟まれた領域の脱離や逆位を利用することで、所望の因子の発現を調節(活性化)する。また、場合によっては、発現していた所望の因子の発現を抑制する。
組換え酵素タンパク質による脱離を利用して所望の因子を発現させるには、プロモーターと所望の因子をコードしたコード領域との間に、同方向に配列した認識配列間に配した阻害配列を導入して因子の発現を阻害させておき。ガラクトース誘導的に組換え酵素タンパク質を発現させて、阻害配列を脱離させることで、プロモーターの制御下に因子を発現させるようにする。阻害配列は、プロモーターによりコード領域が発現することを阻害できるものであればよい。したがって、プロモーターと遺伝子とを適度に離間させるスペーサーであってもよいし、プロモーターにより発現されて所望の因子の発現を阻害する阻害因子であってもよいし、プロモーターにより発現される選択マーカー遺伝子であってもよい。なお、選択マーカー遺伝子としては、宿主に応じたものを選択することができ、栄養要求性や抗生物質耐性に関連する遺伝子とすることができる。
また、組換えによる逆位を利用して所望の因子を発現させるには、上流側のプロモーターの下流側に反対方向に配列した認識配列間に逆位に所望の因子のコード領域伝子を導入する。ガラクトース誘導前は、所望の因子のコード領域はアンチセンス方向に転写されるため、所望の因子は発現されない。ガラクトース誘導的に組換え酵素タンパク質を発現させて、認識配列間のコード領域の逆位を生じさせることで、コード領域は適切な方向で転写されるため、所望の因子が発現される。
なお、組換えにより所望の因子の発現を抑制するには、同一方向に配列した認識配列間に組換え酵素タンパク質によって脱離可能に所望の因子のコード領域を発現可能に保持しておいたり、逆方向に配列した認識配列間に組換え酵素タンパク質によって逆位可能にかつ逆位前は発現可能に所望の因子のコード領域を保持しておくなどにより可能である。
ガラクトース誘導性プロモーター及び組換え酵素タンパク質のコード領域は、宿主染色体上にあってもよいし、宿主染色体外にあってもよい。染色体外にある場合には自律複製可能で娘細胞に分配される自律複製体上に備えられることが好ましい。また、多コピー数で存在しうる自律複製体上に備えられることが好ましい。組換え酵素タンパク質のコード領域がガラクトース誘導的に発現可能に多コピー数備えられることで迅速にまた強力に組換え酵素タンパク質を発現させることができ、より短時間に所望の遺伝的改変が可能になる。
組み換え酵素タンパク質による組換えにより発現される所望の因子のコード領域は、非ガラクトース誘導性プロモーターの制御下で発現可能に備えられていることが好ましい。非ガラクトース誘導性プロモーターであれば、非ガラクトース誘導性プロモーターとは、ガラクトース以外の他の物質によって誘導されるプロモーターと構成的プロモーターとを包含している。ガラクトース以外の物質で誘導されるものであれば、ガラクトース以外のコスト的にメリットのある成分での誘導が可能であるほか、ガラクトース以外の別の誘導物質によって初めて当該因子を発現させることができる。また、構成的プロモーターであれば、組換えと同時に発現される。組換え後の迅速な発現を意図する場合には、構成的プロモーターを用いることが好ましい。非ガラクトース誘導性プロモーターとしては、熱により誘導されるSSA1プロモーターが挙げられる。また、構成的プロモーターとしては、PFK2プロモーター及びRPS4プロモーターが挙げられる。
組換え酵素タンパク質による組換えの対象となる2以上の認識配列を含む組換え対象部位は、宿主染色体上にあっても宿主染色体外にあってもよい。組換え酵素系による遺伝的改変を継続的に維持するために、自律複製され安定的に娘細胞に分配されるものであることが好ましい。
こうした部位特異的組換え系による最終的な効果は、組換えにより発現される因子の作用に依存する。因子が形質転換体における物質生産や代謝に促進的に作用するタンパク質をコードする場合には、部位特異的組換え系による遺伝子改変により、物質生産等が促進される。一方、因子が形質転換体における物質生産等に抑制的に作用する場合には、当該物質生産が抑制される。こうした因子は、タンパク質をコードするもののみならず、siRNAやリボザイム等、RNAとして機能するものも含んでいる。
組換え酵素タンパク質及び当該タンパク質が認識する認識配列としては、Cre/lox系、R/RS系、FLP/FRT系、cer系、fim系など、ファージ、細菌(例えば大腸菌)、酵母等の微生物から分離されたもののみが知られており(N L. Craig、Annu. rev. genet.、22:17、1988)、高等生物ではまだその存在を知られていない。しかし、微生物から分離されたこれらの組換え酵素タンパク質認識配列及び組換え酵素タンパク質も、その由来する生物種と異なる生物種、即ち、植物や動物に導入された場合でも、由来する生物内における挙動と同一の挙動をとることが明らかとなっており、本発明においても、こうした組換え酵素
認識配列及び組換え酵素 の組合せを自由に選択し、脱離部位を構成し、また、脱離酵素として利用することができる。中でも、Cre/lox系及びFLP/FRT系等を用いることが好ましい。より好ましくは、Cre/lox系を用いる。なお、本発明において、認識配列は、上記野生型の認識配列だけではなく、そのDNA配列が一部改変された、変異型認識配列を用いることもできる。ただし、このとき、変異型認識配列は、組換え酵素タンパク質により認識され得るものであることを要する。
(核酸コンストラクト)
本発明の核酸コンストラクトは、構成的プロモーターと、該構成的プロモーターの制御下に連結されGal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質をコードするコード領域と、を備えている。構成的プロモーターとしては、既に説明したのと同様のプロモーターを用いることができる。また、支援タンパク質についても既に説明した支援タンパク質を用いることができる。また、転写調節領域としてターミネーター他、必要に応じてエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)を連結することができる。選択マーカーとしては、特に限定しないで、薬剤抵抗性遺伝子、栄養要求性遺伝子などを始めとする公知の各種選択マーカー遺伝子を利用できる。こうした核酸コンストラクトは、通常、DNAの形態を採ることができるが、修飾塩基等人工的な修飾が施されていてもよい。
核酸コンストラクトは、1種の支援タンパク質をコードするのであってもよいが、2種類以上の支援タンパク質をコードするものであってもよい。例えば、第1の構成的プロモーターと、該第1の構成的プロモーターの制御下に連結されるGal80結合活性を有するタンパク質及び/又はガラクトカイネース活性を有するタンパク質などの第1の支援タンパク質をコードする第1のコード領域と、第2の構成的プロモーターと、該第1の構成的プロモーターの制御下に連結されるガラクトーストランスポーター活性を有するタンパク質等の第2の支援タンパク質をコードする第2のコード領域と、を備えるようにしてもよい。こうした核酸コンストラクトは、宿主染色体との一つ以上の相同性領域を備えさせることで染色体導入型として構築することもできる。また、自律複製可能な染色体外構築物としてもよい。
本発明の他の核酸コンストラクトは、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下にGal4活性タンパク質をコードするコード領域を発現可能に備えることができる。こうしたコンストラクトを用いて宿主を形質転換することで、ガラクトースによってガラクトース誘導系を作動させたとき、速やかにGal4活性タンパク質によって他のガラクトース誘導系を作動させることができる。こうした核酸コンストラクトは、染色体導入型であってもよいし、2μプラスミド等染色体外自律複製体であってもよい。
本発明のさらに他の核酸コンストラクトは、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に所望の因子をコードするコード領域を発現可能に備えることができる。こうしたコンストラクトを用いて宿主を形質転換することで、速やかに所望の因子を発現させることができる。所望の因子としては、既に述べたように各種のタンパク質や機能的RNA等とすることができる。部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質であってもよい。こうした核酸コンストラクトは、染色体導入型であってもよいし、2μプラスミド等染色体外自律複製体であってもよい。応答性又は高感度に所望の因子を発現させたいときには、多コピー数で保持可能な染色体外プラスミド型ベクターとして用いることが好ましい。
なお、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に所望の因子をコードするコード領域を発現可能に備える核酸コンストラクトは、当該コード領域に替えて当該コード領域を導入可能な導入部位を有するものであってもよい。導入部位は、1又は2以上の制限酵素認識部位を有することができる。
本発明のさらに他の核酸コンストラクトは、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に組換え酵素タンパク質をコードするコード領域を発現可能に備えることができる。また、この核酸コンストラクトは、当該部位特異的酵素活性を有するタンパク質による2以上の認識配列を含む組換え対象部位を含む核酸コンストラクトと組み合わせて用いることができる。組換え対象部位を含む核酸コンストラクトは、認識配列間又はその下流等に組換えにより発現される所望の因子を備えることができる。組換え対象部位を含む核酸コンストラクトにおけるプロモーター、認識配列、所望の因子等の配列は、組換えによる認識配列間にある配列の脱離や逆位など組換えの形態に応じて選択することができる。組換え対象部位を含む核酸コンストラクトにおけるプロモーターは、ガラクトース誘導性であっても非ガラクトース誘導性であってもよいが、構成的プロモーターであると、組換えと同時に所望の因子が発現される点で好ましい。
これらの部位特異的組換え系のための核酸コンストラクトは、染色体導入型であってもよいし、2μプラスミド等染色体外自律複製体であってもよい。迅速又は強力に所望の因子を発現させたいときには、多コピー数で保持可能な染色体外自律複製プラスミド型ベクターとして用いることが好ましい。特に、組換えタンパク質をコードするコード領域をガラクトース誘導的に発現させるための核酸コンストラクトは、多コピー数で染色体外自律複製プラスミドであることが好ましい。
なお、組換え対象部位を含む核酸コンストラクトは、所望の因子のコード領域に替えて当該コード領域を導入可能な導入部位を有するものであってもよい。
(核酸コンストラクトのセット)
本発明は、こうした核酸コンストラクトを2種以上組み合わせた核酸コンストラクトのセットの形態を採ることができる。例えば、構成的プロモーターと、該構成的プロモーターの制御下にあってGal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質をコードするコード領域とを備える第1の核酸コンストラクトと、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に所望の因子をコードするコード領域又は当該コード領域を導入可能な導入部位を有する第2の核酸コンストラクトと、を組み合わせることができる。こうしたセットによれば、第2の核酸コンストラクトに所望の因子のコード領域を導入することで、所望の因子をガラクトース誘導的に発現する形質転換体を容易に作製できる。
また、第2の核酸コンストラクトの前記ガラクトース誘導性プロモーターの制御下の前記コード領域は、組換え酵素タンパク質をコードするようにしたセットによれば、ガラクトース誘導的に部位特異的組換えを発現する形質転換体を容易に作製できる。さらに、組換え酵素タンパク質の識別配列と前記タンパク質による組換えにより発現可能に備えられる所望の因子をコードする領域又は当該コード領域を導入可能な導入部位を備える第3の核酸コンストラクトとを組み合わせたセットとすることもできる。こうしたセットによれば、組換えにより所望の因子を発現する形質転換体を容易に作製できる。第3の核酸コンストラクトは、所望の因子の発現のためのプロモーターは、ガラクトース誘導性であっても非ガラクトース誘導性であってもよい。
これらの核酸コンストラクトのセットには、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下にGal4活性タンパク質をコードするコード領域を発現可能に備える核酸コンストラクトをさらに組み合わせてもよい。
さらに、ガラクトース誘導系を増強するための核酸コンストラクトセットとしては、上記第1の核酸コンストラクトと、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下にGal4活性タンパク質をコードするコード領域を発現可能に備える核酸コンストラクトとを備えることができる。
これらの核酸コンストラクトのセットにおいては、各核酸コンストラクトの形態は特に限定しない。それぞれの核酸コンストラクトは、染色体導入型であってもよいし染色体外自律複製体であってもよく、必要に応じ適切な形態を採ることができる。
これらの核酸コンストラクトにおける各種のコンポーネントは、PCR法等従来公知の手法により取得することができ、こうした核酸コンストラクトは適当なプラスミドベクター等に保持される。用いる遺伝子導入法に応じ、必要時に制限酵素等により切り出されてコンストラクト自体が用いられる。コンポーネントの取得及びコンストラクトの構築操作は従来公知の手法に従って行うことができる。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual second edition(Maniatis et al.,Cold
Spring Harbor Laboratory press.1989)に従うことができる。
(発現ベクター)
こうした核酸コンストラクトは、各種ベクターの形態で提供することができる。ベクターとしては、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、トランスポゾン、人工染色体(YAC、BAC、PAC等)を、外来遺伝子の導入形態(染色体上あるいは染色体外)や宿主細胞の種類に応じて選択される。また、こうした発現ベクターは、適当な宿主細胞に保持された状態で提供される。
(形質転換体の作製方法)
形質転換体は、好ましくは、ガラクトース誘導系を有する宿主細胞に、上記した各種のコンストラクトから選択される1種又は2種以上、例えば、構成的プロモーターの制御下に連結されたGal結合活性を有するタンパク質のコード領域などを含む発現カセットを備える核酸コンストラクトをトランスフォーメーション法や、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、酢酸リチウム法、パーティクルガン法等の公知の遺伝子導入法を用いて導入することによって得ることができる。形質転換体としては、適当な選択培地によって形質転換体を選択し、遺伝子の導入の確認できたものを用いればよい。
宿主細胞は、ガラクトース誘導系を本来的に備えていることが好ましいが、必ずしもこうした宿主に限定されない。所望の因子をガラクトース誘導的に発現するのに必要なガラクトース誘導系のコンポーネントを備えるように遺伝子工学的に改変されたものであってもよい。
形質転換体の作製にあたっては、構成的プロモーターの制御下に支援タンパク質をコードするコード領域を有するガラクトース誘導系を備える宿主細胞を予め準備し、この宿主細胞に、ガラクトース誘導的に所望の因子を発現させるための核酸コンストラクト等を導入することが好ましい。また、宿主細胞として、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下にGal4タンパク質をコードするコード領域を有するガラクトース誘導系を備えるものを準備するのがさらに好ましい。このように、予め、増強されたガラクトース誘導系を備える宿主細胞を準備しておけば、所望の因子をガラクトース誘導的に発現させるための核酸コンストラクトを導入するだけで所望の形質転換体を得ることができる。
(形質転換体の培養方法)
本発明の形質転換体の培養方法は、Gal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質を構成的に発現するとともに、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に内在性又は外来性の所望の因子をコードするコード領域を宿主細胞の染色体上又は染色体外に保持する形質転換体を、実質的にガラクトースを含まない培地で培養する培養工程を備えている。こうした培養工程を備えることで、形質転換体におけるガラクトース誘導的に発現される外来性遺伝子等は発現されないで、細胞にとって質的及び/又は量的に異常にタンパク質が発現されることなく細胞が増殖される。これにより、容易に高密度又は大規模に細胞を増殖させることができる。さらに、この形質転換体によれば、応答性よくガラクトース誘導系を発現させることができる。したがって、本培養方法によれば、ガラクトース誘導系を感度よく、短時間でしかも大量に発現させるのに適した細胞増殖状態を容易に得ることができる。なお、本明細書において、「実質的にガラクトースを含まない培地」とは、ガラクトースを含まない培地又は形質転換体の有するガラクトース誘導系が誘導されない程度の濃度を限度としてガラクトースを含む培地を含んでいる。
形質転換体の培養には、宿主細胞や形質転換内容に応じて培養条件を選択することができる。宿主を酵母とする形質転換体を培養する培地としては、酵母が資化可能なガラクトース以外の炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれも使用することができる。炭素源としては、グルコース、フルクトース、スクロース、デンプン、セルロース等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコールを用いることができる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物の他、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等を用いることができる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなどを用いることができる。
培養方法は、特に限定しないで、従来公知の培養方法を利用できる。例えば、回分培養、半回分培養、連続培養等のいずれかあるいはこれらを組み合わせて実施することができる。また、酸素供給方式や攪拌方式も、形質転換体の種類に応じて選択すればよい、サッカロマイセス・セレビシエなどの酵母の場合には、通常、振とう培養または通気攪拌培養等の好気条件下、28〜30℃で6〜24時間行う。また、培養中は、必要に応じてアンピシリン、テトラサイクリンなどの抗生物質を培地に添加することができる。
(遺伝子の発現方法)
本発明の遺伝子の発現方法は、本発明の形質転換体において、前記ガラクトース誘導系を活性化させることにより前記所望の因子を発現させる発現工程を備えることができる。好ましくは、Gal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質を構成的に発現するとともに、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に内外性又は外来性の所望のタンパク質をコードするコード領域を宿主細胞の染色体上又は染色体外に保持する形質転換体を、実質的にガラクトースを含まない培地で培養する第1の培養工程と、グルコースを実質的に含まないでガラクトース誘導系を発現可能な程度のガラクトースの存在下で形質転換体を培養し、内在性又は外来性のタンパク質を発現させる第2の培養工程と、を備えている。この発現方法によれば、上記第1の培養工程を備えることで、上記したように、ガラクトース誘導系を感度よく、短時間でしかも大量に発現させるのに適した状態となっている。次いで、第2の培養工程においてガラクトースを添加してガラクトース誘導系を発現させることで、一挙にかつ大量にガラクトース誘導的にガラクトース誘導系を発現させてガラクトース誘導的に所望のタンパク質を発現させて該タンパク質又はその代謝物を得ることができる。
本発現方法における第1の培養工程は、本発明の培養方法と同様の各種態様で実施することができる。第2の培養工程においては、グルコースを実質的に含まない。本明細書において、「グルコースを実質的に含まない」とは、グルコースを含まないか又は形質転換体の有するガラクトース誘導系の誘導を抑制しない程度の濃度を限度としてグルコースが含まれてもよいことを意味している。
また第2の培養工程におけるガラクトース誘導系を発現可能な程度のガラクトースの初期濃度は、20g/l未満とすることができる。好ましくは2g/l以下であり、さらに好ましくは1g/l以下である。また、好ましくは、0.05g/l以上であり、さらに好ましくは、0.01g/l以上である。一過性のガラクトース誘導の場合には、ガラクトース濃度は特に維持する必要はないが、必要に応じて維持する場合もある。また、好気的条件で行うことが好ましく、撹拌操作も行うことができる。
ガラクトース誘導性プロモーターの制御下で部位特異的組換え酵素系を発現させて遺伝的改変を行う場合には、前記第2の培養工程を、部位特異的組換え系によって形質転換体において組換え酵素によって改変される程度に一過的に行い、その後、通常の培養条件(例えば、炭素源としてガラクトースを実質的に用いない培養条件)での培養を実施する第3の培養工程を実施することができる。こうすることで、ガラクトース誘導的な培養条件に制限されずに形質転換体を培養することができる。
(物質の生産方法)
本発明の物質生産方法は、本発明の形質転換体において前記ガラクトース誘導系を活性化させて前記所望の因子を発現させることにより物質を生産する生産工程、を備えることができる。本生産方法は、好ましくは、本発明の形質転換体につき、前記第1の培養工程と前記第2の培養工程を備えることができる。これらの培養工程を通じて、ガラクトース誘導的に発現された所望のタンパク質又はそのタンパク質による代謝産物を本生産方法の物質として得ることができる。また、第1の培養工程において形質転換体を十分に増殖させておき、その後第2の培養工程でガラクトース誘導的に所望の因子を発現させて物質を生産させることで、異種物質の生産又は過剰生産による増殖抑制を回避するとともに、産物自体による生産抑制を回避して、生産性よく物質を生産させることができる。
ガラクトース誘導的に部位特異的組換え系を発現可能な形質転換体を用いる場合、前記第2の培養工程を、部位特異的組換え系によって形質転換体において組換え酵素によって改変される程度に一過的に行い、その後、通常の培養条件(例えば、炭素源としてガラクトースを実質的に用いない培養条件)での培養を実施する第3の培養工程を実施することができる。第3の培養工程を実施することで、ガラクトース誘導状態を解除して物質生産により適した条件下で組換え後の形質転換体を培養して、効率的に物質を生産することができる。
また、本生産方法は、生産した物質の回収工程を備えることができる。回収工程は、例えば、形質転換体内にこれらの産物が生産された場合は、常法により菌体を超音波破壊処理、摩砕処理、加圧破砕などで細胞を破壊した後、産物と細胞と分離することができる。この場合、必要に応じてプロテアーゼを添加する。また、菌体外に産物が生産された場合には、この培養液等を、ろ過、遠心分離などにより菌体などの固形分を除去する。これらの粗抽出画分に対しては、従来公知の各種精製分離法等を利用して、これらの産物を精製することができる。
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施しすることができる。
(ベクターの構築)
本実施例においては、サッカロマイセス・セレビシエ由来のイミダゾールグリセロールリン酸脱水素酵素遺伝子(HIS3遺伝子)プロモーター配列の制御下で、目的遺伝子としてサッカロマイセス・セレビシエ由来のガラクトカイネース遺伝子(GAL1遺伝子)及びガラクトースパーミアーゼ遺伝子(GAL2遺伝子)を使用した。さらに、サッカロマイセス・セレビシエ由来のUDP−グルコース−4−エピメラーゼ遺伝子(GAL10遺伝子)プロモーター配列の制御下でサッカロマイセス・セレビシエ由来のGAL4遺伝子を使用した。以上に加え、サッカロマイセス・セレビシエ由来のガラクトカイネース遺伝子(GAL1遺伝子)プロモーター配列の制御下でオワンクラゲ由来のGreen
Fluorescent Protein遺伝子(GFP遺伝子)を使用した。
本実施例のために新たに構築した染色体導入型ベクターをpBS−HIS3p−GAL1−HIS3p−GAL2(図2)、pBS−GAL10p−GAL4(図3)、pBS−GAL1p−GFP(図4)と名付け、以下に本ベクター構築例の詳細を記す。なお本実施例の概要を図2〜4に示す。但し、ベクター構築の手順はこれに限定されるものではない。ベクターの構築にあたって、必要な遺伝子断片であるHIS3遺伝子のプロモーター断片(HIS3p)329bp、GAL1遺伝子cDNA断片(GAL1c)1608bp、GAL2遺伝子cDNA断片(GAL2c)1746bp、GAL10遺伝子のプロモーター断片(GAL10p)380bp、GAL4遺伝子cDNA断片(GAL4c)2667bp、CYC1遺伝子のターミネーター断片(CYC1t)231bpはサッカロマイセス・セレビシエ
W303−1a株(ATCC:The Global Bioresource
center)のゲノムDNAを鋳型として使用したPCR増幅法によって単離を行った。
また、URA3遺伝子断片(URA3g)1056bpはプラスミドpRS406(Stratagene社)、TRP1遺伝子断片(TRP1g)1021bpはプラスミドpRS404(Stratagene社)、LEU2遺伝子断片(LEU2g)2237bpはプラスミドpRS405(Stratagene社)、GFP遺伝子cDNA断片(GFPc)741bpはプラスミドpQBI25(和光純薬社)のDNAをそれぞれ鋳型として使用したPCR増幅法によって単離を行った。
サッカロマイセス・セレビシエ W303−1a株のゲノムDNAは、ゲノム調製キットFast DNA
Kit(Bio 101社)を用い、詳細は付属のプロトコールに従い、調製した。DNA濃度は分光光度計Ultro
spec 3000(Amersham
Biosciences社)にて測定した。PCR反応には、増幅酵素として、増幅断片の正確性が高いとされるKOD
DNA polymerase(東洋紡社)を使用した。上記手法にて調製したサッカロマイセス・セレビシエW303−1a株のゲノムDNA 50ng/サンプル、プライマーDNA 50pmol/サンプル、及びKOD DNA
polymerase 0.2ユニット/サンプルを合計で50μlの反応系に調製した。反応溶液を、PCR増幅装置Gene Amp PCR
system 9700(PE
Applied Biosystems社)によってDNA増幅を行った。PCR増幅装置の反応条件は、94℃、
30秒の後、(94℃、30秒→50℃、30秒→68℃、3分)を30サイクル行い、その後4℃とした。HIS3p増幅断片1及び2、GAL1c増幅断片、GAL2c増幅断片、GAL10p増幅断片、GAL4c増幅断片、CYC1t増幅断片1〜3、URA3増幅断片、TRP1増幅断片、LEU2増幅断片、GFPc増幅断片を1%TBEアガロースゲル電気泳動にて遺伝子増幅断片の確認を行った。なお反応に使用したプライマーDNAは、合成DNA(サワデーテクノロジー社)を用い、このプライマーのDNA配列は以下の通りである。
HIS3p増幅断片1
・KpnI-His3p (29mer)末端に制限酵素KpnIサイトを付加:AGA GGT ACC CGT TTT
AAG AGC TTG GTG AG(配列番号1)
・His3-BamHI (31mer)末端に制限酵素BamHIサイトを付加:AGA GGA TCC CTT TGC
CTT CGT TTA TCT TGC C
HIS3p増幅断片2(配列番号2)
・SalI-His3 (29mer)末端に制限酵素SalIサイトを付加:AGA GTC GAC CGT TTT
AAG AGC TTG GTG AG(配列番号3)
・His3-XhoI(31mer)末端に制限酵素XhoIサイトを付加:AGA CTC GAG CTT TGC
CTT CGT TTA TCT TGC C(配列番号4)
GAL1c増幅断片
・BglII-Gal1c (39mer)末端に制限酵素BglIIサイトを付加:AGA AGA TCT ATA ATG
ACT AAA TCT CAT TCA GAA GAA GTG(配列番号5)
・Gal1c-NheI (34mer)末端に制限酵素NheIサイトを付加:AGA GCT AGC TTA TAA
TTC ATA TAG ACA GCT GCC C(配列番号6)
GAL2c増幅断片
・SalI-Gal2c (38mer)末端に制限酵素SalIサイトを付加:AGA GTC GAC ATA ATG
GCA GTT GAG GAG AAC AAT GTG CC(配列番号7)
・Gal2c-XbaI (32mer)末端に制限酵素XbaIサイトを付加:GAG TCT AGA TTA TTC
TAG CAT GGC CTT GTA CC(配列番号8)
GAL10p増幅断片
・SacI-Gal10p (29mer)末端に制限酵素SacIサイトを付加:AGA GAG CTC AAA GCT
AGT ATT GTA GAA TC(配列番号9)
・Gal10p-BamHI (32mer)末端に制限酵素BamHIサイトを付加:AGA GGA TCC TTA TAT
TGA ATT TTC AAA AAT TC(配列番号10)
GAL4c増幅断片
・BglII-Gal4c (34mer)末端に制限酵素BglIIサイトを付加:AGA AGA TCT ATA ATG
AAG CTA CTG TCT TCT ATC G(配列番号11)
・Gal4-NheI (32mer)末端に制限酵素NheIサイトを付加:AGA GCT AGC TTA CTC
TTT TTT TGG GTT TGG TG(配列番号12)
CYC1t増幅断片1
・XbaI-Cyc1t (31mer)末端に制限酵素XbaIサイトを付加:GAA TCT AGA ACA GGC
CCC TTT TCC TTT GTC G(配列番号13)
・Cyc1t-SalI (27mer)末端に制限酵素SalIサイトを付加:AGA GTC GAC GTT ACA
TGC GTA CAC GCG(配列番号14)
CYC1t増幅断片2
・NheI-Cyc1t (31mer)末端に制限酵素NheIサイトを付加:GAA GCT AGC ACA GGC
CCC TTT TCC TTT GTC G(配列番号15)
・Cyc1t-SalI (27mer)末端に制限酵素SalIサイトを付加:AGA GTC GAC GTT ACA
TGC GTA CAC GCG(配列番号16)
CYC1t増幅断片3
・XbaI-Cyc1t (31mer)末端に制限酵素XbaIサイトを付加:GAA TCT AGA ACA GGC
CCC TTT TCC TTT GTC G(配列番号17)
・Cyc1t-KpnI (27mer)末端に制限酵素KpnIサイトを付加:AGA GGT ACC GTT ACA
TGC GTA CAC GCG(配列番号18)
URA3g増幅断片
・SalI-Ura3g (30mer)末端に制限酵素SalIサイトを付加:AGA GTC GAC GAT TCG
GTA ATC TCC GAA CAG(配列番号19)
・Ura3g-SacI (35mer)末端に制限酵素SacIサイトを付加:AGA GAG CTC GGG TAA
TAA CTG ATA TAA TTA AAT TG(配列番号20)
TRP1g増幅断片
・SalI-5-Trp1g(41mer)末端に制限酵素SalIサイトを付加:AGA GTC GAC AAC GAC
ATT ACT ATA TAT ATA ATA TAG GAA GC(配列番号21)
・Trp1g-SacI (30mer)末端に制限酵素SacIサイトを付加:AGA GAG CTC AGG CAA
GTG CAC AAA CAA TAC(配列番号22)
LEU2g増幅断片
・SacI-Leu2g (40mer)末端に制限酵素SacIサイトを付加:AGA GAG CTC TCG AGG
AGA ACT TCT AGT ATA TCT ACA TAC C(配列番号23)
・Leu2-SacI (33mer)末端に制限酵素SacIサイトを付加:AGA GAG CTC TCG ACT
ACG TCG TAA GGC CGT TTC(配列番号24)
GFPc増幅断片
・BglII-Gfpc (36mer)末端に制限酵素BglIIサイトを付加:AGA AGA TCT ATA ATG
GCT AGC AAA GGA GAA GAA CTC(配列番号25)
・Gfpc-BlnI (32mer)末端に制限酵素ApaIサイトを付加:GAG CCT AGG TCA GTT
GTA CAG TTC ATC CAT GC(配列番号26)
上記反応にて取得した各増幅断片をそれぞれ、エタノール沈殿処理によって精製した後、HIS3p増幅断片1を制限酵素KpnI/BamHI、HIS3p増幅断片2を制限酵素SalI/XhoI、GAL1c増幅断片を制限酵素BglII/NheI、GAL2c増幅断片を制限酵素SalI/XbaI、GAL10p増幅断片を制限酵素SacI/BamHI、GAL4c増幅断片を制限酵素BglII/NheI、CYC1t増幅断片1を制限酵素XbaI/SalI、CYC1t増幅断片2を制限酵素NheI/SalI、CYC1t増幅断片3を制限酵素XbaI/KpnI、URA3g増幅断片を制限酵素SalI/SacI、TRP1g増幅断片を制限酵素SalI/SacI、LEU2g増幅断片を制限酵素SacI/SacI、GFPc増幅断片を制限酵素BglII/BlnIでそれぞれ制限酵素反応処理を行った。なお以下に用いた酵素類はすべて宝酒造社製のものを用いた。また、エタノール沈殿処理、制限酵素処理の一連操作の詳細なマニュアルはMolecular
Cloning A
Laboratory Manual second edition(Maniatis et al.,Cold Spring Harbor
Laboratory press.1989)に従った。
ベクターの構築における一連の反応操作は、一般的なDNAサブクローニング法に準じて行った。すなわち、適当な制限酵素処理を行い、脱リン酸化酵素(AlkalinePhosphatase(BAP、宝酒造社))処理を施したpBluescriptII
SK(−)ベクター(Stratagene社)に対して、制限酵素処理を施した上記のDNA増幅断片をT4DNA
Ligase反応によって、連結させた。T4 DNA Ligase反応には、LigaFast
Rapid DNA
Ligation System(プロメガ社)を用い、詳細は付属のプロトコールに従った。次にLigation反応を行った溶液を、コンピテント細胞へ形質転換を行った。コンピテント細胞は大腸菌JM109株(東洋紡社)を用い、詳細は付属のプロトコールに従って行った。得られた培養液は抗生物質アンピシリン100μg/mlを含有したLBプレートにまいて一晩培養した。生育したコロニーをLB液体培地(アンピシリン100μg/ml)で一晩培養して、ミニプレップによるプラスミドDNA調製を行い、その溶液を制限酵素処理による確認をして、目的とするコンストラクトを持つ株を単離した。上記の操作を繰り返して、pBS−HIS3p−GAL1−HIS3p−GAL2、pBS−GAL10p−GAL4、pBS−GAL1p−GFPの3つの染色体導入型ベクターを作製した。
コントロール実験用の染色体導入型ベクターとして、GAL1遺伝子のみの効果を検証するpBS−HIS3p−GAL1、GAL2遺伝子のみの効果を検証するpBS−HIS3p−GAL2、ウラシル栄養要求性マーカーのみのpBS−URA3g、ロイシン栄養要求性マーカーのみのpBS−LEU2gも作製した。
構築した染色体導入型ベクターの確認の為に塩基配列決定を行った。塩基配列解析装置としてABI
PRISM 310
Genetic Analyzer(PE
Applied Biosystems社)を使用し、試料の調製法、及び機器の使用方法などの詳細は本装置付属のマニュアルに従った。試料となるベクターDNAはアルカリ抽出法により調製したものを用い、これをGFX
DNA Purification
kit(Amersham Biosciences社)にてカラム精製した後、分光光度計Ultro spec 3000(Amersham Biosciences社)にてDNA濃度を測定したものを用いた。
(形質転換酵母の作製)
宿主である酵母W303−1a株(半数体株、TRP1変異、LEU2変異、URA3変異)はトリプトファン合成能、ロイシン合成能、ウラシル合成能を欠損した株である。この株をSD培養液5mlにて、30°Cで対数増殖期(OD660nm=0.8)まで培養した。これにFrozen−EZ
Yeast Transformation
IIキット(ZYMO RESEARCH社製)を用いてコンピテントセルを作製した。キット添付のプロトコールに従い、このコンピテントセルに上述の実施例にて構築した染色体導入型ベクターpBS−GAL1p−GFPを制限酵素XbaI処理し、遺伝子導入した。この形質転換試料を洗浄後、100μlの滅菌水に溶解させてトリプトファン選抜培地に塗沫し、それぞれについて30°C静置培養下で形質転換体の選抜を行った。
得られたそれぞれのコロニーを新たなトリプトファン選抜培地で再度単離し、生育能を安定に保持している株を形質転換候補株とした。次に、これらの候補株をYPD培養液2mlで一晩培養し、これにゲノムDNA調製キット、GenとるくんTM−酵母用−(タカラバイオ社製)を用いてゲノムDNAを調製した。調整した各ゲノムDNAを鋳型にPCR解析を行い、導入遺伝子の有無が確認できたものを形質転換株1とした。形質転換株1における染色体中の導入遺伝子の構造を図5に示す。
形質転換株1を用いて、上記と同様の方法でコンピテントセルを作製した。このコンピテントセルに上述の実施例にて構築した染色体導入型ベクターpBS−URA3g、pBS−HIS3p−GAL2、pBS−HIS3p−GAL1、pBS−HIS3p−GAL1−HIS3p−GAL2をそれぞれ制限酵素NcoI処理し、遺伝子導入した。この形質転換試料を洗浄後、100μlの滅菌水に溶解させてウラシル選抜培地に塗沫し、それぞれについて30°C静置培養下で形質転換体の選抜を行い、上記と同様の方法で導入遺伝子の確認を行い、有無が確認できたものをそれぞれ形質転換株2〜5とした。これらの形質転換酵母株における染色体中の導入遺伝子の構成を表1に示し、構造を図6〜図9に示す。
形質転換株2及び5を用いて、上記と同様の方法でコンピテントセルを作製した。これらのコンピテントセルに上述の実施例にて構築した染色体導入型ベクターpBS−GAL10p−GAL4を制限酵素EcoRI処理し、遺伝子導入した。また、形質転換株5のコンピテントセルにはpBS−LEU2gを制限酵素EcoRI処理し、遺伝子導入した。これらの形質転換試料を洗浄後、100μlの滅菌水に溶解させてロイシン選抜培地に塗沫し、それぞれについて30°C静置培養下で形質転換体の選抜を行い、上記と同様の方法で導入遺伝子の確認を行い、有無が確認できたものをそれぞれ形質転換株6〜8とした。それぞれの形質転換酵母株における染色体中の導入遺伝子の構成を表1に示し、構造を図10〜12に示す。
(発酵試験によるガラクトース誘導性能の検証)
これらの形質転換株2〜8について以下の条件でグルコース存在下(ガラクトース添加なし)で培養し、その後、培地交換してガラクトース存在下(0.05g/l〜20g/l、グルコース添加なし)で培養し、産生したタンパク質を抽出し、ウェスタンブロッティングによりGFPタンパク量を評価した。
(培養条件)
SD培養液(グルコース2%)5mlにて、各形質転換株を30°Cで一夜前培養した。SD培養液(グルコース2%)10mlにこの前培養液100μlを植菌して、30°CでOD660nm=1.0〜1.2のものを0時間とし、培養液1mlを採取して、遠心を行って集菌して−20°C保存した。残りの培養液を遠心して菌体を集めて、8mlのSC培地(ガラクトース濃度:0.05g/l〜20g/l)を加えて懸濁して30°Cで0〜4時間、培養を行った(L字試験管、70rpm(小型振盪培養装置(ADVANTEC))。経時的(1h,2h及び4h)に培養液1mlを採取して、遠心を行って集菌して、−20°C保存した。
(タンパク質抽出)
−20°C保存した菌体を融解し、6μl50mM PMSFと50μl Y−PER Yeast Protein
Extraction Reagent(PIERCE社)を加えて、ゆるく振とうしながら室温で20分間処理した。4°C、15,000rpmで15分間遠心し、上清を別の1.5mlチューブに移して、タンパク質溶液とした。このタンパク質溶液を1/3希釈し、Quick
Start プロテインアッセイキット(BIO−RAD社)を用いて、BSA溶液を基準としてOD595の吸光度を分光光度計Ultra
spec 3000(Amersham
Biosciences社)で測定し、タンパク質濃度を決定した。
(ウエスタンブッロッティング)
12%のアクリルアミドゲルを作製し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動をTris−Glycineバッファーを用いて、100Vの定電圧で行った。ゲルをTowbinの転写バッファー(25mM
Tris,192mM Glycine,20% Methanol,pH8.3)に20分間浸して平衡化した。トランスブロットSDセル(BIO−RAD社)を用いて、上記の転写バッファーで既に平衡化を行ったタンパク質転写用メンブレンHybond−P(Amersham
Biosciences社)に対してゲル中のタンパク質を15Vの定電圧で40分間転写した。メンブレンを軽く水ですすいだ後、2%BSAを含む1xTBSバッファー中に浸して、室温で一夜振とうしてブロッキングを行った。
抗オート蛍光たん白、モノクローナル抗体Anti−AFP,mAb(11E5)(和光純薬社製)を一次抗体として、1xTBSバッファーに1:1000倍希釈した。この溶液中にメンブレンを浸して、室温で2時間振とうした。0.1%のTween20(BIO−RAD社)を含む1xTBSバッファーで10分間・室温で振とうしてメンブレンを洗浄した。バッファーを取り替えて、この洗浄操作を3回繰り返した。
次に、ECL Plus
Western blotting
reagent pack(Amersham
Biosciences社)に含まれているAnti mouse−IgG(peroxidase−linked)を二次抗体として、1xTBSバッファーに1:10000倍希釈した。この溶液中にメンブレンを浸して、室温で2時間振とうした。0.1%のTween20(BIO−RAD社)を含む1xTBSバッファーで10分間・室温で振とうしてメンブレンを洗浄した。バッファーを取り替えて、この洗浄操作を3回繰り返した。
ECLPlusキットのプロトコールにしたがって、化学発光を行い(2%,0.2% 2min;0.01%,0.005%,10min)、化学発光検出器(アイシン精機)でシグナルを検出し、画像データと発光強度の数値データを得た。形質転換株2〜5についての画像データを図13に示し、得られた測定値に基づくグラフを図14に示す。なお、これらのグラフにおける発光強度は、メンブレン毎の相対的な数値データであり、メンブレン内の形質転換株4の2時間ガラクトース誘導培地で培養した後の発光強度を1とした場合の比で表した。また、形質転換株6〜8についての画像データを図15に示す。
図13及び図14に示すように、Gal1をHIS3プロモーターで構成的に発現させた形質転換株4とGal1とGal2とをHIS3プロモーターで構成的に発現させた形質転換株5とは、全てのガラクトース濃度においても最も強い発光強度を示した。また、Gal2のみをHISプロモーターで発現させた形質転換株3は、ガラクトース濃度が20g/lのとき、対照となる形質転換株2を上回った。このことから、Gal4による転写活性化を支援するタンパク質であるGal1、Gal3及びGal2のいずれかを構成的に発現させることで、ガラクトース誘導的にGFPを効率的に発現させることができることがわかった。
また、ガラクトース濃度が20g/l及び2g/lのときには、Gal1のみを構成的に発現させた形質転換株4がGal1とGal2とを構成的に発現させた形質転換株5よりも上回っていた。一方、ガラクトース濃度が0.1g/l及び0.05g/lのときには、形質転換株5が形質転換株4を大きく上回っていた。すなわち、比較的高濃度のガラクトース存在下では、形質転換株4と5とでは、Gal1のみを構成的に発現させた形質転換株4のほうがどちらかといえば優勢ではあるがガラクトース誘導の応答性はそれほど大きく変らないのに対し、ガラクトース濃度が低くなると、これらの応答性は逆転ししかも濃度が低いほど応答性の差は顕著に拡大した。以上のことから、比較的低濃度のガラクトース濃度で有効な応答性を得ようとする場合、Gal1とGal2とを組み合わせて使用することが好ましいことがわかった。また、Gal2(ガラクトパーミアーゼ)は、ガラクトース濃度が低い場合において、Gal1との相乗作用が増強されることがわかった。さらに、Gal2のHIS3プロモーターによるGal2のみの構成的発現では、ガラクトース濃度がある程度高い場合には効果的であり、より強力な構成的発現による効果の増大が期待できることがわかった。
また、図15に示すように、Gal1とGal2とを構成的に発現する形質転換株7,8では、いずれも、Gal4をガラクトース誘導的に発現する形質転換株6よりも早くかつ多量のGFPを産生していた。少なくとも、2時間以内においては、形質転換株6においては、有意なシグナルを検出できなかった。また、特に、Gal1とGal2とを構成的に発現するとともにGal4をガラクトース誘導的に発現する形質転換株7においては、形質転換株6よりも良好な応答性を示した。
以上のことから、Gal4をガラクトース誘導的に発現させるだけでは、ガラクトース誘導系を応答性よく誘導できないことがわかった。また、Gal1やGal2などの支援タンパク質を構成的に発現させるともに、Gal4をガラクトース誘導的に発現させることで相乗的な効果があることがわかった。
(2μプラスミドベクターp2mGGの構築)
ガラクトース誘導性プロモーターとして、サッカロマイセス・セレビジエ由来のガラクトカイネース遺伝子(GAL1)を用い、目的遺伝子としてオワンクラゲ由来のGreen
Flurescent Protein遺伝子(GFP遺伝子)とした2μプラスミドベクターp2mGGを構築した(図16参照)。ベクターの構築にあたり、必要な遺伝子断片であるGAL1遺伝子のプロモーター断片(GAL1p)673bp、CYC1遺伝子のターミネーター断片(CYC1t)234bpは、サッカロマイセス・セレビジエW303−1a株(ATCC:The
Global Bioresorce
Center)のゲノムDNAを鋳型として使用したPCRにより単離した。また、GFP遺伝子のcDNA断片(GFPc)741bpはプラスミドpQBI25(和光純薬工業株式会社)のDNAをそれぞれ鋳型として使用したPCRにより増幅して単離した。
なお、サッカロマイセス・セレビジエW303−1a株のゲノムDNAは、ゲノム調製キットFastDNAKit(Bio101社製)を用い、詳細は付属のプロトコールに従って調製した。DNA濃度は、分光高度計Ultro
Spec3000(Amersham Biosciences社)にて測定した。PCR反応には、増幅酵素として、増幅断片の正確性が高いとされるKOD+DNAPolymerase(東洋紡社)を使用した。上記手法にて調製したサッカロマイセス・セレビジエW303−1a株のゲノムDNA50ng/サンプル、プライマーDNA50pmol/サンプル、及びKOD+DNAPolymerase0.2ユニット/サンプルを合計で50μlの反応系に調製した。反応溶液を、PCR増幅装置Gene
Amp PCR
System9700(PE Applied Biosystems社)によって増幅した。PCR反応条件は、94℃で30秒の後、94℃で30秒−50℃で30秒−68℃−3分のサイクルを30サイクル実施し、その後、4℃とした。GAL1p断片、CYC1p断片及びGFPc断片を1%TBEアガロースゲル電気泳動にて増幅断片の確認を行った。なお、反応に用いたプライマーDNAは合成DNA(オペロンバイオテクノロジ社製)を用いた。
プライマーは、GAL1p断片用としてSacI−Gal1p(配列番号:27)及びGal1p−SalI(配列番号:28)を用い、CYC1t断片用として、ApaI−Cyc1t(配列番号:29)及びCyc1t−XhoI(配列番号:30)を用い、GFPc断片としてSalI−Gfpc(配列番号:31)及びGfpc−ApaI(配列番号:32)を用いた。
こうして取得した各増幅断片をそれぞれエタノール沈殿処理して精製した後、GAL1p断片を制限酵素SacI/SalI、CYCIt断片を制限酵素ApaI/XhoI、GFPc断片を制限酵素SalI/ApaI(以上、制限酵素は全てタカラ酒造株式会社製)でそれぞれ処理した。なお、エタノール沈殿処理、制限酵素処理の一連の操作の詳細なマニュアルは、Molecular
Cloning A
Laboratory Manual Second Edition(Maniatis et al.,Cold Spring Harbor
Laboratory press.1989)に従った。
以下、ベクターの構築における一連の反応操作は、一般的なDNAサブクローニング法に準じて行った。すなわち、適当な制限酵素処理を行い、脱リン酸価酵素(Alkaline
Phosphatase(BAP、タカラ酒造株式会社製)処理を施した2μプラスミドベクターBYP563(酵母遺伝資源センターNRBP:National
−Bio−Resorces−Project、AmpR遺伝子、HIS3遺伝子をもつ)に対して、制限酵素処理を施した上記DNA増幅断片をT4DNALigase反応によって連結させた。T4DNAligase反応には、LigaFast
Rapid DNA
LigationSystem(プロメガ社製)を用い、詳細は付属のプロトコールに従った。次に、Ligation反応を行った溶液を、コンピテント細胞へ形質転換を行った。コンピテント細胞は、大腸菌JM109株(東洋紡株式会社製)を用い、詳細は付属のプロコトールに従って行った。
得られた培養液はアンピシリン100μg/mlを含有するLBプレートにまいて一晩培養した。生育したコロニーをLB液体培地(アンピシリン100μg/ml)で一晩培養して、ミニプレップによるプラスミドDNA調製を行い、その溶液につき制限酵素処理による確認を行い、目的とするコンストラクトを持つ株を単離した。この操作を繰り返して2μプラスミドベクターp2mGGを作製した。なお、p2mGGベクターについてABI
PRISM 310
Genetic Analyzer(PE
Applied Biosystems社製)を使用して塩基配列を決定した。
(p2mGGを導入した遺伝子組換え酵母の作製)
宿主である酵母の親株には、トリプトファン合成能、ロイシン合成能、ウラシル合成能、ヒスチジン合成能を欠損したW303−1a株(ATCC、半数体株、TRP1変異、LEU2変異、URA3変異、HIS3変異)を用いた。この親株について、実施例1及び実施例2で作製したプラスミドを以下の組み合わせで導入し、合計6種の組換え酵母を作製した。すなわち、まず親株に実施例1で作製したプラスミドを導入して、コントロール株(C株:GAL1P::GFP+TRP1、LEU2、URA3)、GAL1+GAL4株(12株:GAL1p::GFP+TRP1、HIS3p::GAL1+URA3、GAL10p::GAL4+LEU2)、GAL1+GAL2+GAL4株(14株:GAL1P::GFP+TRP1、HIS3p::GAL1+HIS3p::GAL2+URA3、GAL10p::GAL4+LEU2)の3株(C株、12株及び14株)を作製した。次いで、これらの株のそれぞれをSD培養液5mlにて、30℃で対数増殖期(OD660=0.8)まで培養した。これに、Frozen−EZ
Yeast TranformationIIキット(Zymo
Research社製)を用いてコンピテントセルを作製した。キット添付のプロトコールに従い、p2mGGのプラスミドを導入して、11株、13株及び15株を作製した。これらの菌体を洗浄し、100μlの滅菌水に懸濁した後、ヒスチジン選抜培地に塗沫し、それぞれについて30℃静置培養して形質転換体を選抜した。表2に作製した形質転換株における導入遺伝子構成を示す。
得られたそれぞれのコロニーを新たなヒスチジン選抜培地で再度単離し、生育能を安定に保持している株を形質転換候補株とした。次に、これらの候補株をヒスチジン選択培養液2mlで一晩培養し、これにゲノムDNA調製キット、Genとるくん(タカラバイオ社製)を用いてゲノムDNAを調製した。調製した各ゲノムDNAを鋳型にPCR解析を行い、導入遺伝子の有無が確認できたものを形質転換株とした。
(ガラクトース誘導性能の評価)
実施例5で作製した6種の形質転換株について以下の条件でグルコース存在下(ガラクトース添加なし)で培養し、その後、培地交換してガラクトース存在下(0.2%、グルコース添加なし)で培養し、産生したタンパク質を抽出し、ウェスタンブロッティングによりGFPタンパク量を評価した。なお、培養条件において、30°CでOD660nm=1.0〜1.2のものを0時間としその培養液1mlを採取して遠心を行って集菌して−20°C保存した残りの培養液を遠心して集めた菌体に対して8mlのSC培地(ガラクトース濃度:0.2%)を加える以外は、すべて実施例3と同様にしてガラクトース誘導能を評価した。
0時間及びガラクトース誘導1時間後の形質転換株C及び11〜15の導入遺伝子構成、画像データ及び発光強度比を組み合わせて図17に示す。なお、図17における発光強度比は、メンブレン内の形質転換株12のガラクトース誘導1時間後の発光強度を1とした場合の比で表した。
図17に示すように、GAL1を構成的に発現させるとともにGAL4をガラクトース誘導的に発現させるように構築した形質転換株2と当該株にp2mGGを導入した形質転換株3とを比較すると、形質転換株3は形質転換株2の1.9倍の発光強度であった。また、GAL1及びGAL2を構成的に発現させるとともにGAL4をガラクトース誘導的に発現させるように構築した形質転換株4と当該株にp2mGGを導入した形質転換株5とを比較すると、形質転換株5は形質転換株4の2.8倍の発光強度であった。すなわち、GAL1等を構成的に発現させることでガラクトースによる誘導を応答性よく行うことができるとともに2μプラスミドなど多コピー数でガラクトース誘導性プロモーターの制御下で目的遺伝子を発現させることで単位時間で誘導できる遺伝子産物の量を飛躍的に増大させることができることがわかった。
以上のことから、2μプラスミドにてガラクトース誘導的に所望の遺伝子を発現させることでガラクトース誘導後極めて短時間で遺伝子発現量を増大させることができることがわかった。すなわち、これらの形質転換株ではガラクトース誘導性プロモーターの正の転写因子であるGAL4による転写活性化を支援する支援タンパク質であるGAL1等を予め十分量有しているため、ガラクトース誘導的にGAL4が十分量存在するようになったとき、2μプラスミドによって多コピー数で存在する目的遺伝子のガラクトース誘導性プロモーターにGAL4が高い確率で結合し、下流の目的遺伝子の転写を活性化することができたためであると考えられた。
(プラスミドp2mCGの作製)
P1ファージ由来のタンパク質であるCreリコンビナーゼ遺伝子をサッカロマイセス・セレビジエにおいて効率的に生産するために、CreリコンビナーゼのcDNA配列に対して、(1)サッカロマイセス・セレビジエにおいて多用されているコドン用法をコドンユーセージデータベース(http://www.kazusa。or.jp/codon/)から取得して利用し、(2)開始コドンを挟んでコザック配列(ANNATG)を付加し、(3)BYP563ベクターに導入するため、5‘末端に制限酵素SalI部位を、3’末端にApaI部位を導入して、Creリコンビナーゼをコードする新たな塩基配列(配列番号:33)を設計した。
設計した酵母用のCreリコンビナーゼ遺伝子を、長鎖DNAの合成方法として知られている藤本らの手法(藤本英也、合成遺伝子の作製法、植物細胞工学シリーズ7植物のPCR実験プロトコール、1997、秀潤社、p95〜100)を用いて全合成した。この方法は、100mer程度のオリゴヌクレオチドプライマーを3‘末端に10〜12mer程度のオーバーラップを持つように作製し、お互いのオリゴヌクレオチドプライマーのオーバーラップ領域を利用して、欠損部分を伸張し、さらに両末端のプライマーを用いてPCRを行うことによって増幅し、この操作を順次繰り返して目的とする長鎖DNAを合成する。
最初に連結したい2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを混合し、KOD+DNAPolymerase(東洋紡株式会社製)の存在下で、96℃で2分−68℃で2分−54℃で2分−72℃で30分の反応条件でDNA伸長反応を行った。次に、本試料の1/10量を鋳型にして両末端のプライマー存在下で96℃2分後、96℃で30秒−55℃で30秒−72℃で90秒のサイクルを25サイクル実施し、その後4℃とするPCRを行った。反応におけるバッファー、dNTPmix等はDNApolymeraseに付属のものを用いた。さらに、これらのPCRにより得られたDNAの中から連結させたい2種類のDNA断片を混合して、上記PCRを実施して、最終的に酵母Creリコンビナーゼ遺伝子のDNA断片をZero−BluntTOPOベクター(Invitrogen社製)にクローニングし、塩基配列を確認した。
正しい塩基配列が確認された全合成酵母用Creリコンビナーゼ遺伝子をSalI/ApaI処理を行って切り出して、SacI/SalI処理したGAL1p断片、ApaI/XhoI処理したCYC1t断片とともに、実施例2と同様にして2μプラスミドベクターBYP563に導入して、プラスミドp2mCGを作製した(図18参照)。
(lox部位特異的組換え検出用コンストラクトの作製)
Creリコンビナーゼ酵素は34bpのlox配列を認識し、lox配列で挟まれたDNAを切り出す活性を有している。そのため、Creリコンビナーゼ酵素による組換えが生じていない菌体のゲノムと組換えが生じたゲノムとの間、制限酵素パターンに予め多型が生じるように設計されたコンストラクトを導入した遺伝子組換え体を用いることでゲノミックサザンにより組換え効率を測定することができる(PNAS(2002),Vol.99、4489−4494、Nature
Methods(2006),vol.3,461−467)。
本実施例では、図19に示すように、欠損しても表現型に影響がでないことが知られているサッカロマイセス・セレビジエのPDC6遺伝子座に組み込み可能な確認用コンストラクトを構築した。選択マーカーには、ハイグロマイシン耐性遺伝子を用い、lox配列で挟んだ。この確認用コンストラクトによれば、ガラクトース誘導前には、BamHI制限酵素処理後に、GFP遺伝子のプローブを用いてゲノミックサザンを行った場合、0.7kbpの長さのDNA断片が検出されるが、ガラクトース誘導後、BamHI制限酵素処理後には同じくGFP遺伝子のプローブを用いてゲノミックサザンを行った場合、5.6(4.9+0.7)kbpの長さのDNA断片が検出されることになる。
ベクターの構築のために必要な断片の調製には、本コンストラクトに特有のプライマーを使用する以外は、実施例4と同様にして行った。PDC6相同配列1断片(673bp)、PFK2遺伝子のプロモーター+lox配列断片(953bp)及びPDC6相同配列2断片(624bp)はサッカロマイセス・セレビジW303−1a株のゲノムDNAを鋳型として使用したPCRにより単離した。PDC6相同配列1断片にはKpnI−ClaI−PDC6f1及びPDC6f1−EcoRI(配列番号:34及び35)を用い、PFK2遺伝子のプロモーター+lox配列断片には、EcoRI−PFK2p−lox及びPFK−2p−lox−BglII(配列番号:36及び37)及びPDC6相同配列2断片には、BamHI−PDC6f2及びPDC−6f2−SphI−SacI(配列番号:38及び39)を用いた。
また、lox配列+GFP遺伝子cDNA断片(773bp)はプラスミドpQBI25(和光純薬株式会社製)及びハイグロマイシン耐性遺伝子断片(2097bp)は、プラスミドpBHPH−PT(特開2006−6271号公報)をそれぞれ鋳型として使用したPCRにより単離した。lox配列+GFP遺伝子cDNA断片には、Sal1−lox−GFPc及びGFPc−BamHI(配列番号:40及び41)を用い、ハイグロマイシン耐性遺伝子断片には、ApaI−BglII−HPHg及びHPHg−BamHI−SalI取得には、プライマー(配列番号:42及び43)を用いた。
これら調製した各DNA断片をそれぞれエタノール沈殿処理により精製した後、PDC6f1断片を制限酵素KnpI/EcoRI、PFK2p−lox断片をEcoRI/BglII、PDC6f2断片をBamHI/SacI、lox−GFPc断片をSalI/BamHI、HPHg断片をBglI/SalIでそれぞれ処理した。その後、実施例1と同様に常法に従い、pBluescriptIISK(−)ベクター(Stratagene社製)のKpnI−SacI部位にクローニングした。
(p2mGCと組換え検出用コンストラクトとを導入した遺伝子組換え酵母の作製)
実施例5で作製した形質転換株14(GAL1+GAL2+GAL4)のコンピテント細胞へ実施例8で作製した検出コンストラクトを導入した。形質転換試料をヒスチジン選択培地にて一夜培養し、洗浄後、100μlの滅菌水に溶解させてヒスチジン+ハイグロマイシン選抜培地に塗沫し、それぞれについて30℃静置培養下で形質転換体の選抜を行った。
得られたそれぞれのコロニーを新たなヒスチジン+ハイグロマイシン選抜培地で再度単離し、生育能を安定に保持している株を形質転換候補株とした。次に、これらの候補株をハイグロマイシン100μg/ml含有するYPD培養液2mlで一晩培養し、これにゲノムDNA調製キット、Genとるくん(タカラバイオ株式会社製)を用いてゲノムDNAを調製した。調整した各ゲノムDNAを鋳型にPCR解析を行い、導入遺伝子の有無が確認できたものを形質転換株16とした。
形質転換株16のコンピテント細胞を実施例5と同様にして作製し、p2mGCを導入した。この形質転換試料を洗浄後、100μlの滅菌水に溶解させてヒスチジン+ハイグロマイシン選抜培地に塗沫し、それぞれについて30℃で静置培養下で形質転換体を行った。最終的に得られた株を形質転換株17とした。
(ゲノミックサザンを用いた組換え効率の測定)
実施例9で作製した形質転換株7について以下の条件で培養し、その後、培地交換してガラクトース存在下(0.2%、グルコース添加なし)で培養し、DNAを抽出し、ゲノミックサザンにより組換え効率を測定した。
(1)培養条件
SC(ヒスチジン欠乏+100μg/mlハイグロマイシン含有)培養液(グルコース2%)5mlにて、形質転換株7を30°Cで一夜前培養した。SC培養液100mlにこの前培養液をOD660nm=0.1となるように植菌してさらに培養を行いOD660nm=1.0〜1.2のものを0時間とし、培養液20mlを採取して、遠心を行って集菌して−20°C保存した。残りの培養液を遠心して菌体を集めて、80mlのSC培地(ガラクトース濃度:0.2%)を加えて懸濁して30°Cで6時間培養を行い、培養液20mlを採取して遠心により集菌して−20℃で保存した。
(2)ゲノム抽出
−20℃で穂損しておいた0時間及び誘導6時間の菌株から、実施例9と同様にGenとるくんを用いてゲノムNDAを抽出した。
(3)ゲノミックサザン実験
「細胞工学実験プロコトール」(秀潤社p。143−148)を参照して、常法に従って行った。すなわち、抽出したゲノムDNAをBamHIで処理後、反応液をエタノール沈殿により濃縮し、20μlのTEに溶解した。アガロースゲル電気泳動を行った後、DNAをナイロン・メンブレン(Roche
Diagnostics社)にトランスファーし、続いて120℃、30分間ベーキングを行った。
GFP遺伝子全長からPCR DIG Probe Systemを用いて、DIGプローブをキットのプロトコールに従って作製した。続いてDIG
High Prime
DNA Labeling
and Detection
kitII及びDIG Wash and Block Buffer
Set(以上、Roche Diagnostics社)を用いて、キットのプロトコールに従ってハイブリダイゼーション及び化学発光を行った。DIGプローブの発光検出は、化学発光検出器(アイシン精機)でシグナルを検出し、画像データと発光の数値データを得た。結果を図20に示す。
図20に示すように、0時間サンプルでは、発光強度の98%が0.7kbpのDNA断片(部位特異的組換え前のもの)であった。これに対し、誘導6時間後のサンプルでは、逆に発光強度の77%が5.6kbpのDNA断片(組換え後のもの)であった。すなわち、ガラクトース誘導6時間後において、Creリコンビナーゼの発現と当該Creリコンビナーゼによる遺伝子組換えで組換え対象部位のほとんどについて組換えを完了できることがわかった。Creリコンビナーゼのガラクトース誘導は、従来8時間で数%、24時間でほぼ100%であったところ、本発明によれば、Creリコンビナーゼによる組換えによるスイッチングの応答性を飛躍的に高めることができた。
配列番号1〜26:プライマー
配列番号27〜32及び34〜43:プライマー
配列番号33:コドン用法が改変されたCreリコンビナーゼのcDNA
ガラクトース誘導系におけるガラクトース、Gal80、Gal4及び支援タンパク質の関係を示す図。 pBS-HIS3p-GAL1-HIS3p-GAL2を示す図。 pBS-GAL10p-GAL4を示す図。 pBS-GAL1p-GFPを示す図。 形質転換株1を示す図。 形質転換株2を示す図。 形質転換株3を示す図。 形質転換株4を示す図。 形質転換株5を示す図。 形質転換株6を示す図。 形質転換株7を示す図。 形質転換株8を示す図。 実施例3におけるウェスタンブロッティングのメンブランの画像データを示す図。 図13の画像データをグラフ化した図。 実施例3におけるウェスタンブロッティングのメンブランの画像データを示す図。 プラスミドp2mGGにおける遺伝子構造の特徴を示す図。 形質転換体C及び11〜15における導入遺伝子の種類、ウェスタンブロッティングのメンブランの画像データ及び発光強度比を組み合わせて示す図。 プラスミドp2mGCにおける遺伝子構造の特徴を示す図。 形質転換体lox部位組換え検出用コンストラクトにおける遺伝子構造を示す図。 形質転換体17におけるゲノミックサザンブロッティングのメンブランの画像データ及び発光強度比を示す図。

Claims (26)

  1. ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に所望の因子をコードするコード領域を保持する染色体外自律複製体を有するガラクトース誘導系と、
    構成的プロモーターの制御下にあってGal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質をコードするコード領域と、
    を備える、形質転換体。
  2. 前記染色体外自律複製体は多コピー数性である、請求項1に記載の形質転換体。
  3. 前記ガラクトース誘導系は、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下にGal4活性を有するタンパク質をコードするコード領域を有する、請求項1又2に記載の形質転換体。
  4. 前記ガラクトース誘導系は、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質のコード領域を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の形質転換体。
  5. 前記部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質の識別部位と前記タンパク質による組換えにより非ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に発現可能に備えられる所望の因子をコードする領域を備える、請求項5に記載の形質転換体。
  6. ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質をコードするコード領域を有するガラクトース誘導系と、
    構成的プロモーターの制御下にあってGal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質をコードするコード領域と、
    を備える、形質転換体。
  7. 前記部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質の識別部位と前記タンパク質による組換えにより非ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に発現可能に備えられる所望の因子をコードする領域を備える、請求項6に記載の形質転換体。
  8. 前記ガラクトース誘導性プロモーターは、GAL1プロモーター、GAL2プロモーター、GAL3プロモーター、GAL4プロモーター、GAL5プロモーター、GAL7プロモーター、GAL10プロモーター及びMEL1プロモーターからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の形質転換体。
  9. 前記支援タンパク質は、Gal80結合活性及び/又はガラクトカイネース活性を有するタンパク質を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の形質転換体。
  10. 前記支援タンパク質は、ガラクトーストランスポーター活性を有するタンパク質を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の形質転換体。
  11. 前記支援タンパク質は、Gal80結合活性及び/又はガラクトカイネース活性を有するタンパク質とガラクトーストランスポーター活性を有するタンパク質とを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の形質転換体。
  12. 前記支援タンパク質は、Gal1活性を有するタンパク質とGal2活性を有するタンパク質とを含む、請求項1〜11のいずれかに記載の形質転換体。
  13. 前記構成的プロモーターは、HIS3プロモーター、TDH3プロモーター及びADH1プロモーターから選択される、請求項1〜12のいずれかに記載の形質転換体。
  14. 前記形質転換体の宿主は酵母である、請求項1〜13のいずれかに記載の形質転換体。
  15. 前記酵母は、サッカロマイセス・セレビシエ、サッカロマイセス・ポンベ、ピキア・パストリス、クルイベロマイセス・ラクティス及びカンジダ・アルビカンスから選択される、請求項14に記載の形質転換体。
  16. 核酸コンストラクトのセットであって、
    構成的プロモーターと、該構成的プロモーターの制御下にあってGal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質をコードするコード領域とを備える第1の核酸コンストラクトと、
    ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に所望の因子をコードするコード領域又は当該コード領域を導入可能な導入部位を有する第2の核酸コンストラクトと、
    を備えるセット。
  17. 前記第2の核酸コンストラクトの前記ガラクトース誘導性プロモーターの制御下の前記コード領域は、部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質をコードする、請求項16に記載のセット。
  18. 前記部位特異的組換え酵素活性を有するタンパク質の識別部位と前記タンパク質による組換えにより非ガラクトース誘導性プロモーターの制御下に発現可能に備えられる所望の因子をコードする領域又は当該コード領域を導入可能な導入部位を備える第3の核酸コンストラクトを備える、請求項17に記載のセット。
  19. 前記第2の核酸コンストラクトは、染色体外自律複製体である、請求項16〜18のいずれかに記載のセット。
  20. ガラクトース誘導系を備える形質転換用宿主細胞であって、
    構成的プロモーターの制御下にあってGal4活性を有するタンパク質による転写活性化を支援する支援タンパク質をコードするコード領域を備える、宿主細胞。
  21. 前記ガラクトース誘導系は、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下にGal4活性を有するタンパク質をコードするコード領域を有する、請求項20に記載の宿主細胞。
  22. 遺伝子の発現方法であって、
    請求項1〜15のいずれかに記載の形質転換体において、前記ガラクトース誘導系を活性化させることにより前記所望の因子を発現させる発現工程を備える、方法。
  23. 前記発現工程は、前記形質転換体を、実質的にガラクトースを含まない培地で培養する第1の培養工程と、実質的にグルコースを含まず、前記形質転換体の前記ガラクトース誘導系を発現可能な程度のガラクトースの存在下で前記形質転換体を培養する第2の培養工程と、を有する、請求項22に記載の方法。
  24. 物質の生産方法であって、
    請求項1〜15のいずれかに記載の形質転換体において前記ガラクトース誘導系を活性化させて前記所望の因子を発現させることにより前記物質を生産する生産工程、を備える、方法。
  25. 前記生産工程は、前記形質転換体を、実質的にガラクトースを含まない培地で培養する第1の培養工程と、実質的にグルコースを含まず、前記形質転換体の前記ガラクトース誘導系を発現可能な程度のガラクトースの存在下で前記形質転換体を培養する第2の培養工程と、を含む、請求項24に記載の方法。
  26. 前記形質転換体は、請求項6又は7に記載の形質転換体であり、
    前記生産工程は、前記形質転換体を、実質的にガラクトースを含まない培地で培養する第1の培養工程と、実質的にグルコースを含まず、前記形質転換体の前記ガラクトース誘導系を発現可能な程度のガラクトースの存在下で前記形質転換体を培養する第2の培養工程と、実質的にガラクトースを含まない培地で培養する第3の培養工程と、を備える、請求項25に記載の方法。
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