JP2008233615A - 光学素子の製造方法 - Google Patents

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潔 箕浦
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Abstract

【課題】複数の単位構造を備えた光学素子を簡便かつ量産性に優れた方法で作製する。
【解決手段】基板1と、基板1の表面に形成された複数の単位構造3とを備え、各単位構造3は、基板1の表面に対して傾斜した傾斜面7aを有する光学素子100の製造方法であって、(a)ネガ型感光性樹脂を用いて、基板1の表面にレジスト層12を形成する工程と、(b)レジスト層12に対してフォトマスク20、30を用いて露光し、現像を行うことにより、間隔を空けて配置された複数の単位構造形成層13を形成する工程であって、各単位構造形成層13は、第1の露光量で露光された第1領域15と、前記第1の露光量よりも少ない第2の露光量で露光された第2領域17とを含む工程と、(c)複数の単位構造形成層13の熱処理を行って、各単位構造形成層13のうち少なくとも第2領域17を熱変形させて基板1の表面に対して傾斜した傾斜面7aを形成することにより、それぞれが傾斜面7aを有する複数の単位構造3を得る工程とを包含する。
【選択図】図2

Description

本発明は、光学素子の製造方法に関する。
回折格子やフルネルレンズなど、表面レリーフ型の光学素子が注目されている。これらの光学素子では、微細な凹凸が表面に配列されている。本明細書において、光学素子の表面に配列された個々の微細な凹凸を「単位構造」と呼ぶ。
このような単位構造を有する光学素子は、種々の光学系のデバイスに使用され得る。例えば、反射型液晶表示装置における液晶層の背面側に配置される散乱反射板(拡散反射板ともいう)として、または、垂直配向モードの液晶表示装置において、液晶分子の配向を制御するために、液晶層に接する表面に設けられる構造体(以下、「配向制御体」という)として用いることができる。
拡散反射板や配向制御体として用いられる光学素子では、極めて微細な単位構造を基板上に配列する必要があり、このような光学素子を量産化しようとすると、高い精度を確保しつつ、いかに簡便に作製するかが重要な課題となる。
上記のような光学素子の作製方法として、例えば機械切り法が提案されているが、機械切り法では、数μm以下の微小なピッチで、微細な単位構造を高精度に形成することは難しく、光学素子の設計の自由度が低くなる。
特許文献1には、原盤(金型)の表面形状を基板上に転写して、基板表面に微細な凹凸を形成することにより、複数の単位構造からなる構造体を形成する方法が記載されている。しかし、この方法によると、原盤として用いる金型の磨耗や変形、金型の表面凹凸に異物がかみ込んでしまうこと(異物のかみ込み)による金型の破損などを防止するために、金型には高い耐久性が要求される。また、この構造体を液晶表示装置に適用しようとすると、典型的には、液晶表示装置の背面基板におけるTFTや配線を含むアクティブマトリクス層と、その上に設けられる画素電極との間に配置される。従って、構造体の上に設けられた画素電極と、構造体の下にあるアクティブマトリクス層の配線とを電気的に接続するために、構造体内にコンタクトホールを形成する必要がある。しかし、このようなコンタクトホールを有する構造体を、金型を用いた転写工程のみによって形成することは困難であり、転写工程に加えて、コンタクトホールを確保するための工程を別途行なわなければならず、工程数が増えてしまうという問題がある。
上述したような問題を解決できる作製方法として、フォトリソグラフィーを利用したパターニングによって上記構造体を作製する方法が挙げられる。フォトリソグラフィーを利用すると、高精度で微細な凹凸を形成でき、かつ、原盤を用いないため、原盤の耐久性に起因する問題も生じない。また、工程数を増加させることなくコンタクトホールを容易に形成できるので、量産プロセスに適している。
フォトリソグラフィーを利用した構造体の作製方法は、例えば特許文献2に記載されている。特許文献2に記載された方法では、ポジ型レジストを使用し、グレイスケールマスクを用いた多重露光工程および現像工程により、傾斜面を有する単位構造(回折格子)を備えた光学素子を形成している。傾斜面の角度は、露光強度、感光樹脂の感度、現像液濃度、現像時間などを含むフォトリソグラフィー工程の諸条件によって決定される。
特許文献2に記載された方法では、フォトリソグラフィー工程の条件が変動すると、形成される単位構造の形状も変化するため、次のような問題が生じる。
一般的な感光樹脂材料は、現像によって感光樹脂材料が除去されるとき(抜き)の露光量と、感光樹脂材料が除去されないで残るとき(残し)の露光量との境界となる露光量に対して、感度が高くなるように設定されているため、露光量が所定の値から少しずれただけで単位構造の形状が大きく異なってしまう。従って、安定した形状を有する光学素子を作製することは難しい。光学素子の形状安定性を確保するためには、感光樹脂材料の感度を下げることが考えられるが、感度を調節するだけでは、形状安定性を十分に高めることが難しい。
また、特許文献3にも、フォトリソグラフィー工程を利用して複数の単位構造を有する構造体を形成する方法が開示されている。特許文献3の方法では、露光および現像工程によって得られるレジストパターンを焼成する点で、前述の特許文献2の方法と異なっている。具体的には、ポジレジストを用いて、多数回露光またはグレイトーンマスクを使用した露光および現像工程により、ステップ状の傾斜面を有するレジストパターンを形成する。この後、焼成を行うことにより、傾斜面に存在するステップを平坦化させた単位構造を得る。この方法によると、焼成工程を行って、露光量の差によるレジストパターンの段差を平坦化させるため、露光量のずれに起因する形状安定性の低下を抑制できる。
しかしながら、本願発明者らが検討したところ、特許文献3の方法では、ポジレジストを用いているために、現像後のレジストパターンにおけるレジストの硬化度(重合度)が均質である。よって、レジストパターンを焼成すると、露光によって得られたレジストパターンの形状が維持されず、所望の形状を有する単位構造を形成することが困難であるという問題がある。この問題については、後で図面を参照しながら詳しく説明する。この問題を解決するためには、レジストパターンの焼成温度を厳密に制御する必要があり、特に大面積の基板を用いた量産化プロセスに適用することは難しい。
一方、特許文献4は、フォトリソグラフィーを利用して、壁部材と傾斜部材とを有する単位構造を備えた光学素子を作製する方法を提案している。この方法では、例えばポジレジストを用いて、フォトリソグラフィー工程により壁部材を形成した後、壁部材の材料とは異なる材料を用いて、フォトリソグラフィー工程により中間部材を形成する。次いで、熱処理を行って、壁部材の形状を維持したまま、中間部材のみを熱変形させる。これにより、中間部材から、基板表面に対して傾斜した傾斜面を有する傾斜部材が形成される。傾斜部材の傾斜面は、熱処理による変形を利用して形成されるため、露光量などのフォトリソグラフィー工程の諸条件のずれにかかわらず、安定した形状の単位構造を得ることができる。
特開2001−269992号公報 特開2002−116315号公報 米国特許第6163405号明細書 特開2005−227665号公報
特許文献4の方法では、壁部材と傾斜部材とは互いに異なる材料を用いて別個に形成されるため、壁部材および傾斜部材をそれぞれ形成するために、レジスト膜の塗布、露光および現像の一連の工程を少なくとも2回繰り返す必要がある。しかしながら、量産性を考慮すると、より少ない工程数で光学素子を作製することが望ましい。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、微細な単位構造を備えた光学素子をより簡便に作製できる量産性に優れた方法を提供することにある。
本発明の光学素子の製造方法は、基板と、前記基板の表面に形成された複数の単位構造とを備え、各単位構造は、前記基板の表面に対して傾斜した傾斜面を有する光学素子の製造方法であって、(a)ネガ型感光性樹脂を用いて、基板の表面にレジスト層を形成する工程と、(b)前記レジスト層に対してフォトマスクを用いて露光し、現像を行うことにより、間隔を空けて配置された複数の単位構造形成層を形成する工程であって、各単位構造形成層は、第1の露光量で露光された第1領域と、前記第1の露光量よりも少ない第2の露光量で露光された第2領域とを含む工程と、(c)前記複数の単位構造形成層の熱処理を行って、前記各単位構造形成層のうち少なくとも前記第2領域を熱変形させて前記基板の表面に対して傾斜した傾斜面を形成することにより、それぞれが傾斜面を有する複数の単位構造を得る工程とを包含する。
ある好ましい実施形態において、前記フォトマスクのうち少なくとも1枚は、前記複数の単位構造を規定する複数の開口部を有しており、各開口部の形状は異方性を有する。
ある好ましい実施形態において、前記工程(b)は、(b1)第1のフォトマスクを用いて、前記第1および第2領域を第1の露光量で露光する第1の露光工程と、(b2)第2のフォトマスクを用いて、前記第1領域をさらに露光する第2の露光工程とを包含する。
前記工程(b1)と前記工程(b2)との間に、前記レジスト層のうち前記第1の露光工程で露光されなかった領域を現像によって除去する工程(b3)をさらに含んでもよい。
前記工程(b1)および(b2)の後に、前記レジスト層のうち前記第1および第2の露光工程で露光されなかった領域を現像によって除去することにより、前記複数の単位構造形成層を得る工程(b4)をさらに含んでもよい。
ある好ましい実施形態において、前記工程(b)は、グレイトーンマスクを用いて、前記第1の露光量で前記第1領域を露光するとともに、前記第2の露光量で前記第2領域を露光する工程を含む。
前記工程(c)は、前記各単位構造形成層のうち前記第1領域の軟化点以下であり、かつ、前記第2領域の軟化点よりも高い温度で熱処理を行う工程を含むことが好ましい。
前記傾斜面の法線方向は、前記基板の表面における予め決められた方位に傾斜していることが好ましい。
前記工程(c)の後に、前記複数の単位構造が形成された基板の表面に反射性の膜を形成する工程をさらに含んでもよい。
前記工程(c)の後に、前記複数の単位構造が形成された基板の表面に垂直配向膜を形成する工程をさらに含んでもよい。
前記傾斜面の法線方向は、前記基板の表面における位置に応じて、予め決められた方位に傾斜していてもよい。
本発明の光学素子は、上記の方法により製造される。
本発明の液晶表示装置は、上記の方法により製造された光学素子と、前記光学素子の上に配置された液晶層と、前記液晶層に電圧を印加するための電極とを備える。
本発明によれば、所定の方向に傾斜した傾斜面を有する単位構造を備えた光学素子を、量産化に適した方法で簡便に作製できる。また、単位構造のサイズ、配列ピッチ、各単位構造における傾斜面の向きや角度などを任意かつ正確に制御できる。本発明の方法によって作製された光学素子は、形状安定性に優れており、特に表面形状の異方性が要求される構造体、例えば異方性を有する反射特性を示す拡散反射板や、液晶層における液晶分子の配向を規制する配向制御体に好適に用いられ得る。
(実施形態1)
以下、図面を参照しながら、本発明による第1の実施形態を説明する。本実施形態の光学素子は、異方性を有する拡散特性を示す拡散反射板であり、特定の方向に傾斜した反射面の面積が、他の方向に傾斜した反射面の面積よりも十分に大きく、基板表面において方向依存性を有する表面形状を備えている。なお、本明細書では、このような反射板を「傾斜反射板」と呼び、光の入射方向に対して全方位に略均等に光を反射させるように設計された拡散反射板と区別する。本実施形態の傾斜反射板は、例えば反射型液晶表示装置の反射電極として好適に用いられる。
図1(a)〜(c)は、本実施形態における傾斜反射板の構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)および(c)は、(a)に示すIb−Ib’線およびIc−Ic’線に沿った断面図である。
傾斜反射板100は、基板1と、基板1の表面に配置された複数の単位構造3とを備えている。各単位構造3は、基板1の法線方向から見て扇形であり、壁部5と、壁部5における1つの側面5aと接触し、かつ、基板1の表面に対して傾斜した傾斜面7aを有する傾斜部7とを有している。壁部5における傾斜部7と接する側面5aに対向する側面5bは、基板1の表面に略垂直である。また、これらの単位構造3は、傾斜面7aの向きが互いに略同じとなるように配置されている。言い換えると、これらの単位構造3における傾斜面7aの法線方向Nは、全体として、予め決められた方位(図1(a)に示すX方向)に傾斜している。よって、図1(c)に示すように、基板1に垂直でX方向に沿った断面において、各単位構造3は左右非対称な形状を有する。
図1に示す構成では、複数の単位構造3の高さHは略等しいが、単位構造3の大きさ(基板1の法線方向から見た単位構造3の面積)は均一ではない。従って、単位構造3の傾斜面7aと基板1の表面とのなす角度(傾斜角度)αも均一ではなく、相対的に小さい単位構造3の傾斜面7aの傾斜角度αは、それよりも大きい単位構造3の傾斜面7aの傾斜角度αよりも大きくなる。一方、単位構造3の側面5bと基板1の表面とのなす角度(傾斜角度)βは、単位構造3の大きさにかかわらず、何れも約90°である。なお、傾斜角度βは、その単位構造3の傾斜面7aの傾斜角度αよりも大きくなるように設定されていればよく、90°でなくてもよい。
本実施形態では、各単位構造3の傾斜面7aの傾斜角度αは、90°以下であり、好ましくは0°より大きく30°以下、より好ましくは5°以上20°以下である。一方、各単位構造3の側面5bの傾斜角度βは、傾斜角度αよりも大きければよいが、好ましくは45°以上、より好ましくは60°以上90°以下である。
単位構造3の高さHは、傾斜反射板100の用途によって異なるが、例えば反射型表示装置に適用する場合には0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。なお、図1に示す構成では、単位構造3の高さHは均一であるが、互いに異なっていてもよい。
本実施形態における傾斜反射板100の構成は図示する例に限定されない。各単位構造3の平面形状は扇形でなくてもよい。また、単位構造ごとに異なる平面形状を有していてもよい。傾斜反射板100を構成する単位構造3は、特定の方向に傾斜した傾斜面7aを有していればよく、その形状や大きさは、必要に応じて適宜設計できる。また、図1(a)に示す構成では、回折現象を防止するために、単位構造3の配列に視認される周期性はないが、単位構造3は、周期的または準周期的に配列されていてもよい。「準周期的」とは、例えば、ピッチが規則的に変化する配列や、複数の周期の重ね合わせで表される配列などを含む。単位構造3が規則的に配列される場合の配列ピッチは、傾斜反射板100の用途によって異なるが、例えば反射型表示装置の反射電極として用いる際には5μm以上50μm以下であることが好ましい。
次に、本実施形態の傾斜反射板100の製造方法を説明する。本実施形態では、フォトリソグラフィー工程を利用して基板1の表面に複数の単位構造3を形成する。フォトレジストとしては、半導体装置や液晶表示装置の製造工程で一般的に使用されるポジレジストではなく、ネガレジストを用いる。
ポジレジストは、光で照射されると光分解する材料であり、光分解された部分が現像により除去される。従って、現像後に得られるレジストパターン(ポジレジスト膜のうち露光されなかった部分)の重合度(硬化度)は均一となる。これに対し、ネガレジストは、光で照射されると光重合する材料であり、露光量によって、ネガレジストの重合度(硬化度)を任意に制御することができる。光で照射されなかった部分は、重合度が低いために現像により除去される。従って、ネガレジスト膜に対して複数回の露光、またはグレイトーンマスクを用いた露光を行い、露光量の異なる複数の領域を形成することにより、同一のネガレジスト膜から、硬化度の異なる複数の領域を有するレジストパターンが得られる。ネガレジストの耐熱性は、その硬化度に依存し、硬化度が高いほど耐熱性も高くなるため、上記のようなレジストパターンは、部分的に耐熱性の低い領域を有することになる。
本願発明者らは、ネガレジストの上記のような特性に着目し、レジストパターンの熱だれ(熱変形)を利用して傾斜反射板100を作製する簡便な方法を見出した。
図2(a)〜(f)は、傾斜反射板100の製造方法の一例を説明するための図であり、図1(a)に示すX方向に沿った工程断面図である。
まず、図2(a)に示すように、基板1の表面にネガレジスト層12を形成する。ネガレジスト層12は、例えばスピンコート法を用いて、基板1の表面にJSR製の透明ネガレジストを塗布することにより形成できる。ネガレジスト層12の厚さは例えば2μmである。
続いて、図2(b)に示すように、単位構造を規定する複数の開口部22を有するフォトマスク20を用いて、ネガレジスト層12の露光を行う(第1の露光工程)。露光量は、例えば90mJ/cm2とする。これにより、ネガレジスト層12のうち光で照射された部分13が光重合する。
この露光工程で使用するフォトマスク20の平面形状を図3に示す。図示するように、複数の開口部22は、間隔を空けて配置されている。ここでは、複数の開口部22の形状は全て扇形であり、その要(かなめ)と円弧の中点とを結ぶ直線がX方向に平行になるように、同じ向きで配置されている。各開口部22の扇形の半径は5μm以上20μm以下であり、中心角は例えば140°である。なお、扇形の中心角は、90°以上180°以下であることが好ましい。120°以上であれば、傾斜面7aの面積を十分に確保でき、175°以下であれば、傾斜面7aの傾斜方向をより確実に制御することができる。
フォトマスク20における各開口部22の形状は扇形に限定されず、任意に選択され得るが、異方性を有することが好ましい。異方性を有する形状とは、線対称性を有しない非対称な形状を指し、例えば台形、五角形等が含まれる。
第1の露光工程後、現像を行うと、図2(c)に示すように、ネガレジスト層12のうち光で照射されなかった部分のみが除去されて、互いに間隔を空けて配置された複数の単位構造形成層(高さ:2μm)13が得られる。各単位構造形成層13は、後のプロセスにより単位構造となる。
この後、図2(d)に示すように、フォトマスク30を用いて、単位構造形成層13の一部をさらに露光する(第2の露光工程)。露光量は、例えば300mJ/cm2とする。フォトマスク30は、単位構造形成層13のうち壁部となる部分を規定する開口部32を有している。
フォトマスク30の平面形状を図4に示す。ここでは、フォトマスク30の各開口部32は、図3に示すフォトマスク20の開口部22の扇形における半径と弦とによって規定される二等辺三角形である。二等辺三角形の底辺は、X方向に垂直になるように配置されており、壁部5と傾斜部7との境界面(図1に示す側面5a)を規定している。
単位構造形成層13のうち第2の露光工程で露光された領域、すなわち上記開口部32によって規定された領域は、さらに光重合して重合度の高い壁部形成領域15となる。一方、フォトマスク30によって遮光されて照射されなかった部分は、壁部形成領域15よりも重合度の低い傾斜部形成領域17となる。
このようにして、単位構造形成層13に、第1および第2の露光工程によって十分に硬化した壁部形成領域15と、第1の露光工程のみで露光され、十分に硬化していない傾斜部形成領域17とを形成できる。前述したように、レジスト材料の軟化点は、その硬化度(重合度)によって決まり、硬化度が高いほど軟化点が高くなるので、壁部形成領域15は、傾斜部形成領域17よりも高い耐熱性を有する。
次いで、単位構造形成層13の焼成を行う。焼成温度は、傾斜部形成領域17の軟化点以上であり、かつ、壁部形成領域15の軟化点よりも低くなるように選択されることが好ましい。ここでは、ホットプレート上に単位構造形成層13が形成された基板1を設置して150℃の温度で10分間の焼成を行う。これにより、図2(e)に示すように、耐熱性の高い壁部形成領域15は、ほとんど熱変形せずに、その形状を維持したまま壁部5となる。一方、耐熱性の低い傾斜部形成領域17は、熱だれを起こして、壁部5の上面に接する部分から基板1の表面に向かって傾斜した傾斜面7aを有する傾斜部7となる。このようにして、壁部5および傾斜部7を有する単位構造3が得られる。
この後、図2(f)に示すように、単位構造3が形成された基板1の表面に反射性の膜(例えばアルミニウム膜)9を形成する。反射性の膜9は、膜9の表面が単位構造3による凹凸を反映した表面形状を有することができるように、十分に薄いことが好ましく、その厚さは例えば0.5μm以下である。このようにして、傾斜反射板100が完成する。
上記の方法によると、ネガレジストを用いているので、ネガレジスト層12のうち壁部を形成しようとする領域に対する露光量を、傾斜部を形成しようとする領域に対する露光量よりも多くすることによって、耐熱性の高い壁部形成領域15と、耐熱性が低く、熱だれを生じやすい傾斜部形成領域17とを形成することができる。なお、ここでいう露光量(単位:mJ/cm2)とは、焼成前に行われる全露光工程(ここでは第1および第2の露光工程)を通して、ネガレジスト層12の所定の領域に照射された光の量(照度(mW/cm2)×照射時間(sec))をいう。
前述した特許文献4に記載された方法では、耐熱性の高い壁部材と、耐熱性が低く、熱変形により傾斜部材となる中間部材とを、それぞれ別個の材料を用いて形成する必要があったが、本実施形態では、同一の材料(ネガレジスト)からなる層に耐熱性の異なる2つの部分を形成できるので、製造プロセスをより簡略化できるメリットがある。
また、前述した特許文献3に記載された方法では、ポジレジストを用いて、露光および現像後に焼成工程を行うことにより、傾斜面を有する単位構造を形成している。
図5(a)および(b)は、特許文献3に記載された方法を説明するための工程断面図である。この方法では、まず、図5(a)に示すように、基板62に形成されたポジレジスト層に対して複数回の露光またはグレイトーンマスクを用いた露光を行った後、現像を行うことにより、高さの異なる複数の部分66a、66bおよび66cを有する凸部66を形成する。次いで、凸部66を焼成して、各部分66a、66b、66cの縁部を滑らかにすることによって、図5(b)に示すように、左右非対称な断面形状を有する凸部68を形成している。
しかしながら、本願発明者らが上記方法を追試したところ、図5(c)に示すような左右対称な断面形状を有する凸部69が得られた。これは、ポジレジストの軟化点以上の温度で焼成を行ったために、レジストの表面張力によって凸部66の形状が維持されず、等方的な形状に変形したからと考えられる。つまり、ポジレジスト層の露光および現像によって得られたパターン(凸部66)では、硬化度が均一であるため、そのレジストの軟化点以上の温度で焼成を行うと、凸部66の全体が熱だれを生じて変形してしまう。焼成温度を厳密に制御することによって、図5(b)に示すような凸部68を形成できる可能性はある。しかし、量産化のために大面積の基板を用いる場合には、基板全体に亘って焼成温度を均一に制御することが困難であり、基板に生じる温度分布を反映して、部分的に図5(c)に示すような左右対称な断面形状を有する凸部69が形成されるおそれがある。
このように、特許文献3の方法によると、焼成後の単位構造の形状、例えば傾斜面の向きや角度などを正確に制御することが難しく、所望の形状の単位構造が得られないという問題がある。
これに対して、本実施形態の方法によると、ネガレジスト層12を用いて、耐熱性の異なる2つの領域15、17を容易に形成できるので、一方の領域17のみを大きく熱変形させることができ、より確実に、左右対称な断面形状を有する単位構造3を形成できる。このとき、耐熱性の高い壁部形成領域15はほとんど変形しないので、ネガレジスト層12における壁部形成領域15の厚さを制御することによって、所望の高さの単位構造3が得られる。
従って、本実施形態の方法では、焼成時に基板全体が略均一な温度となるような厳密な温度制御を行う必要がなく、壁部形成領域15の軟化点よりも低く、かつ、傾斜部形成領域17の軟化点以上の範囲内で温度分布を有していても、基板全体に亘って、所望の形状の単位構造3を形成することが可能である。よって、特許文献3の方法よりも高い形状安定性を実現でき、かつ、量産性にも優れている。
なお、焼成時に基板1に温度分布が生じた結果、部分的に壁部形成領域15の軟化点よりも高くなっても、その部分に形成される単位構造3の形状が設計値から大きくずれて、例えば図5(c)に示すような対称な断面形状を有してしまうおそれはほとんどない。焼成時に、温度が高くなりすぎて壁部形成領域15にも熱変形が生じたとしても、その変形は、傾斜部形成領域17の変形の大きさよりも十分に小さいため、壁部5の側面5bの傾斜角度βは、傾斜部7の傾斜面7aの傾斜角度αよりも大きくなるからである。
ここで、図6(a)〜(d)を参照しながら、本明細書における単位構造3の配列ピッチや傾斜面7aの傾斜角度αの定義を説明する。
前述したように、図1に示す構成では、単位構造3は周期的に配列されていないが、単位構造3を周期的に配列することもできる。このような場合、単位構造3の配列ピッチは、隣接する単位構造3における側面5bの頂点間の基板表面内における距離をいうものとする。例えば、図6(a)に示す単位構造3のピッチPXは、隣接する単位構造3における側面5bの最も高い点5p間の基板表面内における距離である。
傾斜面7aの傾斜角度αは、単位構造3の傾斜面7aと基板表面とのなす角度を指す。しかし、単位構造3の形成条件などによっては、各単位構造3の傾斜面7aが平面にならない場合もある。このような場合、各単位構造3における傾斜面7aの傾斜角度αは、図6(b)および(c)に例示するように、基板表面に垂直で、X方向に沿った断面において、傾斜面7aのうち高さが単位構造3の高さHの1/2である点7hと、傾斜面7aおよび基板表面の接する点7iとを結ぶ直線7Aを引き、この直線7Aと基板表面とのなす角度αをいう。
一方、焼成時に基板表面に温度分布が生じて、局所的に温度が高くなりすぎた場合などに、一部の単位構造3では、耐熱性の高い壁部形成領域15も熱変形してしまい、単位構造3の側面5bが平面にならないおそれがある。このときには、単位構造3の側面5bと基板表面との間の角度(傾斜角度)βは、図6(d)に示すように、側面5bのうち高さが単位構造の高さHの1/2である点5hと、側面5bおよび基板表面が接する点5iとを結ぶ直線5Bを引き、その直線5Bと基板表面とのなす角度βをいう。
本実施形態の傾斜反射板の製造方法は、図2を参照しながら前述した方法に限定されない。例えば、ネガレジスト層12に対して複数回の露光工程を行って露光量の異なる2つの領域15、17を形成した後に、現像により、ネガレジスト層12のうち露光されなかった領域を除去してもよい。
図7(a)〜(f)は、本実施形態の他の作製方法を例示する模式的な工程断面図である。
まず、図7(a)に示すように、基板1の上にネガレジスト層12を形成する。
次いで、図7(b)に示すように、壁部を規定する複数の開口部32を有するフォトマスク30を用いて、ネガレジスト層12を露光して壁部形成領域15を形成する。フォトマスク30の形状は、図4を参照しながら説明した形状と同様であってもよい。露光量は、例えば300mJ/cm2とする。
次いで、図7(c)に示すように、単位構造を規定する複数の開口部22を有するフォトマスク20を用いて、ネガレジスト層12のうち壁部形成領域15を含む複数の領域を露光する。フォトマスク20の形状は、図3を参照しながら説明した形状と同様であってもよい。また、露光量は、例えば90mJ/cm2とする。これにより、壁部形成領域15はさらに露光され、また、この工程で露光された領域のうち壁部形成領域15以外の領域は、傾斜部形成領域17となる。
なお、ここでは、フォトマスク30を用いた露光工程の後に、フォトマスク20を用いた露光工程を行っているが、この順序は逆であってもよい。また、本実施形態では、異なるフォトマスクを用いた複数の露光工程によって、露光量の異なる2つの領域15、17を有する単位構造形成層13が形成されればよいので、露光工程の回数も2回に限定されない。
この後、ネガレジスト層12の現像を行う。これにより、図7(d)に示すように、上記の何れの露光工程でも遮光されていた領域が除去され、それぞれが壁部形成領域15および傾斜部形成領域17を含む複数の単位構造形成層13が形成される。
続いて、図2(e)を参照しながら説明した方法と同様の方法で単位構造形成層13の焼成を行うことにより、図7(e)に示すように、傾斜部形成領域17に熱だれを生じさせて、傾斜部形成領域17から傾斜面7aを有する傾斜部7を形成する。壁部形成領域15は、焼成によってもほとんど変形せず、現像時の形状を維持したまま壁部5となる。このようにして、所定の方向に傾斜した傾斜面7aを有する単位構造3が得られる。
この後、図7(f)に示すように、単位構造3が形成された基板1の表面に反射性の膜(例えばアルミニウム膜)9を形成して、傾斜反射板100が完成する。
なお、この方法によると、現像時に重合度の異なる2つの領域(壁部形成領域15および傾斜部形成領域17)が存在するため、露光および現像の条件によっては、現像後、これらの領域15、17の間で段差が生じるおそれがある。具体的には、壁部形成領域15の高さが傾斜部形成領域17の高さよりも大きくなってしまう。このような段差が生じると、焼成後に得られる単位構造3の上面が滑らかな曲面にならずに、段差を有してしまう可能性があり、光学素子の特性を低下させる要因となり得る。従って、図2(a)〜(f)を参照しながら上述した方法のように、現像後に第2の露光工程を行うことが好ましい。
図7を参照しながら説明した方法では、現像を行う前に2回の露光工程を行っているが、代わりに、グレイトーンマスクを用いて1回の露光工程のみを行ってもよい。以下、図面を参照しながら、グレイトーンマスクを用いた傾斜反射板の作製方法を説明する。
図8(a)は、グレイトーンマスクの一例を示す平面図である。図8(a)に示すグレイトーンマスク40は、単位構造を規定する複数の透過領域42を有しており、各透過領域42は図3に示すフォトマスク20の開口部22と同様の扇形である。各透過領域42の透過率は、扇形の円弧から要に向って高くなるように設定されている。図示する各透過領域42の透過率は、中心43からの距離に応じて7段階で変化する。具体的には、扇形の弦の中心43を含む領域pの透過率は100%であり、円弧に向って、90%(領域q)、80%(領域r)、70%(領域s)、60%(領域t)、50%(領域u)と徐々に小さくなり、円弧を含む領域vで40%である。
図8(a)に示すようなグレイトーンマスク40を用いて露光を行った後、現像すると、ステップ状の上面を有する単位構造形成層が得られる。
このようにして得られた単位構造形成層の断面図を図8(b)に示す。図8(b)は、図8(a)のVIIIaーVIIIa’に対応する断面における単一の単位構造形成層の形状を示している。単位構造形成層13’の上面は、グレイトーンマスク40の透過領域42の透過率分布に起因して7段のステップを有している。単位構造形成層13’のうちグレイトーンマスク40の領域pを透過した光によって露光された領域が壁部形成領域15’となり、他の領域は傾斜部形成領域17’となる。
次いで、図2(e)を参照しながら説明した方法と同様の方法で単位構造形成層13’の焼成を行うと、図8(c)に示すように、傾斜部形成領域17’が熱だれを生じて、滑らかな傾斜面7a’を有する傾斜部7’となり、壁部形成領域15’はほとんど熱変形せずに、その形状を維持したまま壁部5’となる。このようにして、傾斜部7’および壁部5’から構成される単位構造3’が得られる。
この後、図示しないが、単位構造3’が形成された基板表面を覆う反射性の膜を形成し、傾斜反射板が完成する。
上記方法のように、グレイトーンマスク40を用いて露光を行うと、その後の焼成によって得られる単位構造3’の傾斜面7a’の設計がさらに容易となる。
なお、本実施形態の傾斜反射板は、転写物(レプリカ)であってもよい。例えば、図2、7および8を参照しながら説明した方法を用いて、表面に単位構造が配列された基板を作製し、これを原盤として、表面に樹脂層を有する他の基板にその表面形状を転写する。その後、表面形状が転写された他の基板の表面に反射性の膜を形成することにより、傾斜反射板を得ることができる。
本実施形態の傾斜反射板は、反射型液晶表示装置の反射電極として好適に用いられ得る。図9は、本実施形態の傾斜反射板を用いた反射型液晶表示装置の一例を模式的に示す断面図である。
液晶表示装置200は、背面基板(TFT基板)73と、前面基板83と、これらの基板73、83の間に配置された液晶層77とを備えている。液晶層77と背面基板73との間には、画素電極としての機能と反射板としての機能を併せ持つ反射電極として、図1を参照しながら前述した傾斜反射板100が設けられている。前面基板83の液晶層側の表面には、カラーフィルター81および透明電極79がこの順で形成されており、前面基板83の観察者側の表面には位相差板85および偏光板88が形成されている。
液晶表示装置200は、傾斜反射板100を用いているので、等方性を有する反射特性を示す従来の拡散反射板を用いた表示装置と比べて、明るく視認性に優れた表示が得られるという利点がある。以下に、図面を参照しながら詳しく説明する。
まず、傾斜反射板100と比較するための従来の拡散反射板の構成を説明する。図10(a)は従来の拡散反射板を模式的に示す平面図であり、(b)および(c)は拡散反射板における単一の単位構造を示す断面図である。拡散反射板90は、基板91の表面にランダムに配列された複数の単位構造92を備えている。図示していないが、拡散反射板90の表面は反射性の膜(例えばアルミニウム膜)で覆われている。各単位構造92は、基板91の法線方向から見て略円形であり、図10(b)および(c)からわかるように、基板91の表面における方向にかかわらず、基板に垂直な断面において、左右対称な形状を有している。
図11(a)および(b)は、半透過型もしくは反射型液晶表示装置の使用形態を示す概略図であり、(a)は図10に示す従来の拡散反射板90、(b)は本実施形態の傾斜反射板100を用いて表示を行う際の、入射光のうち表示に寄与する光の割合を説明するための図である。
図11(a)に示すように、光源を周囲光とする反射表示を行う場合、使用者94が遮光体として働くために、表示装置に対する入射光95、96は、主にパネルの上方向から入射する。入射光95、96は、パネルに入射して液晶層(図示せず)を通過した後、拡散反射板90で反射して、使用者94の方向へと出射する。このとき、拡散反射板90の単位構造92における上方向に傾斜した傾斜面92uに入射した入射光95は、使用者94の顔(眼)の方向へと出射して表示に寄与する。一方、拡散反射板90の単位構造92における下方向に傾斜した傾斜面92dに入射した入射光96は、使用者94の胸から腹の方向へと出射し、表示には寄与しない。
これに対して、図11(b)に示すように、傾斜反射板100を用いて反射表示を行う場合には、表示装置に対する入射光97、98は、パネルに入射して液晶層(図示せず)を通過した後、傾斜反射板100で反射する。このとき、傾斜反射板100の単位構造3における傾斜面7aが使用者94から見て上側となるように傾斜反射板100を配置することにより、入射光97、98の大部分を傾斜面7aで反射させて、使用者94の顔の方向へ出射させることができる。従って、傾斜反射板100を用いた液晶表示装置によると、拡散反射板90を用いた液晶表示装置に比べて、入射光のうち表示に寄与する光の割合を増加させることができるので、より明るく良好な反射表示を実現できる。
また、図12および図13は、それぞれ、拡散反射板90および傾斜反射板100を用いた表示装置に入射した光の反射方向を説明するための図である。図12(a)は、拡散反射板90を用いた場合の、パネルの表面に対して斜め30°の方向から光を入射するときの反射光のふるまいを示す図であり、(b)は、図12(a)に示す反射光の角度分布を示すグラフである。図13(a)は、傾斜反射板100を用いた場合の、パネルの表面に対して斜め30°の方向から光を入射するときの反射光のふるまいを示す図であり、(b)は、図13(a)に示す反射光の角度分布を示すグラフである。
図12(a)および(b)からわかるように、拡散反射板90を用いた反射型液晶表示装置では、表示装置に入射した光101の大部分は、パネル表面110から液晶層(図示せず)を通過して拡散反射板90で反射し、パネル表面110から観察者側へ出射して表示に寄与する(表示光)が、入射光101の一部は、パネル表面110で反射して観察者側へ出射する(表面反射光102)。このとき、表示光103が最も多く出射する方向(最も明るい方向)と表面反射光102の出射方向とが重なってしまうため、使用者にとって非常に視認性の悪い表示となる。
これに対し、傾斜反射板100を用いた反射型液晶表示装置では、図13(a)および(b)からわかるように、パネル表面110で反射した表面反射光105の出射方向と、表示光106が最も多く出射する方向(最も明るい方向)とが重ならず、分離している。従って、使用者にとって視認性の良い表示が得られる。
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明による光学素子の第2の実施形態を説明する。本実施形態の光学素子は、垂直配向モードの液晶表示装置において、垂直配向型液晶層の液晶分子の配向を規制する配向制御体である。前述した実施形態では、大きさや形状(傾斜角度α)が異なる複数の単位構造が配列され、その配列に周期性がなかったが、本実施形態では、大きさや形状が略同じ複数の単位構造を周期的に配列する点で、前述の実施形態と異なっている。また、本実施形態では、単位構造が形成された基板表面に反射性の膜を形成する必要はなく、必要に応じて、垂直配向膜などの配向膜が形成される。
図14(a)は、本実施形態の配向制御体を示す模式的な断面図である。図示するように、配向制御体300は、基板1および、基板1の表面に配列された複数の単位構造3を有している。各単位構造3は、壁部5および、壁部5に隣接し、基板1の表面に対して傾斜した傾斜面7aを有する傾斜部7を有している。壁部5における傾斜部7と反対側の側面5bは、基板1に対して略垂直である。また、これらの単位構造3の傾斜面7aが基板1の表面となす角度(傾斜角度)αは略同じであり、例えば5°である。また、これらの単位構造3は、傾斜面7aの向きが略同じになるように、すなわち、傾斜面7aの法線方向Nが、全体として、基板1の表面における特定の方位(X方向)に傾斜するように、配列されている。なお、前述した傾斜反射板100と異なり、配向制御体300の表面は反射性の膜で覆われていない。
配向制御体300の平面図を図14(b)および(c)に例示する。配向制御体300における複数の単位構造3は、基板1の法線方向から見て、図14(b)に示すように、上記X方向に直交するY方向に延びる比較的長い短冊状の形状を有し、X方向に平行に配列されていてもよい。あるいは、図14(c)に示すように、Y方向に、所定の溝4を空けて配列された複数の比較的短い短冊状の単位構造3を有していてもよい。図14(c)では、Y方向とX方向とは直交しているが、Y方向はX方向と異なる方向であればよい。なお、単位構造3は周期的に配列されているが、周期的に配列されていなくてもよい。
配向制御体300は、例えば、垂直配向型液晶表示装置において、液晶層の背面側に、液晶層と接するように配置される。液晶層としては、ネガ型ネマティック液晶(Δε<0)を用いた垂直配向型液晶層が用いられる。なお、配向制御体300を用いてポジ型ネマティック液晶(Δε>0)を用いた水平配向型液晶層の配向を制御することも可能である。
ここで、液晶層に含まれる液晶分子が、どのようにして単位構造3の傾斜面7aによって配向制御されるかを、例を挙げて説明する。以下の説明では、単位構造3が図14(c)に示すように配列されているものとする。
例えば、液晶層としてネガ型ネマティック液晶を用いる場合、液晶層に電圧を印加しない状態(以下、「OFF状態」という)において、傾斜面7aの表面における液晶分子の長軸は、配向制御体300の傾斜面7aに対して略垂直方向に配向している。このため、液晶層の液晶分子は、基板1の表面の法線方向から傾いている(プレチルト方向)。この液晶層に対して、基板1と垂直方向に電圧を印加すると、それぞれの液晶分子はプレチルト方向に倒れようとする。印加される電圧が十分に高いと、液晶分子は基板1の表面と略平行になる。このとき、液晶分子の長軸は溝4の方向に沿う。
本実施形態における配向制御体300が十分な液晶配向制御性を有するためには、単位構造3の平均ピッチPは10nm以上であることが好ましい。一方、液晶の配向方向を配向制御体300の表面全体で制御するためには、単位構造3の平均ピッチPは10μm以下であることが好ましい。なお、単位構造3の(平均)ピッチPは、図6(a)を参照しながら前述したように定義される。
単位構造3がY方向に所定の溝4を空けて配列される構成(図14(c))の場合、Y方向における単位構造3のピッチPYは、例えば10nm以上10μm以下である。また、それぞれの溝4の幅dは、例えば10nm以上で、単位構造3のX方向におけるピッチPX以下である。
本実施形態では、単位構造3の高さ(すなわち壁部5の高さ)は10nm以上10μm以下であることが好ましい。高さが10nm以上であれば、配向制御体300の表面形状は液晶分子の配向をより確実に規制できる。一方、高さが10μm以下であれば、単位構造3によって液晶層の実質的な厚さが変化することによる弊害を抑制できる。
単位構造3の傾斜面7aと基板1の表面との間の傾斜角度αは、例えば0°より大きく45°以下の範囲で適宜選択できる。なお、傾斜角度αは、図6(b)および(c)を参照しながら前述したように定義される。傾斜角度αを10°以上45°以下とすると、配向制御体300における各傾斜面7aの近傍では、液晶分子は基板1の法線方向から10°以上45°以下傾いて配向させることができる。
単位構造3の壁部5の側面5bと、基板1の表面との間の角度(傾斜角度)βは、上述した傾斜面7aと基板1の表面との間の傾斜角度αよりも大きいことが好ましい。側面5bの傾斜角度βは、図6(d)を参照しながら前述したように定義され、典型的には45°より大きく180°未満である。
配向制御体300の表面と接するように垂直配向型の液晶層を配置すると、液晶層と配向制御体300との界面にある液晶分子は、配向制御体300の表面の法線方向に沿って配向する。すなわち、傾斜面上の液晶分子は、傾斜面7aの法線方向Nに沿って配向するプレチルト(第1プレチルト)、壁部の側面5bの上の液晶分子は側面5bの法線方向に沿って配向するプレチルト(第2プレチルト)をそれぞれ有する。本実施形態における各単位構造3は非対称な断面を有し、傾斜面7aの付与するプレチルトが壁部5の側面5bの付与するプレチルトよりも支配的である。そのため、液晶層の厚さ方向の中間付近の液晶分子は、傾斜面7aによる第1プレチルトの影響をより大きく受けて、例えば、第1プレチルトと同じプレチルト方向を有し、かつ第1プレチルトよりも小さいプレチルト角を有する。なお、液晶層の厚さ方向の中間付近にある液晶分子のプレチルトは、配向制御体300の表面形状だけではなく、液晶層の上面と接する対向基板の表面の形状および状態によっても影響される。
なお、配向制御体300における単位構造3の露出表面と液晶層とは接触していなくてもよい。例えば、配向制御体300と液晶層との間に、壁部5および傾斜部7の露出表面を覆う膜を有していてもよい。この膜は、垂直配向膜などの配向膜であってもよいし、液晶層に電圧を印加するための電極として機能できる導電膜であってもよい。または、導電膜と配向膜とをこの順で積層した積層膜であってもよい。上記膜は、単位構造3の形状を反映した表面形状を有するように十分薄い(例えば厚さが1μm以下)ことが望ましい。上記膜が十分に薄いと、配向制御体300の表面形状によって液晶層の配向を制御できるからである。
図14に示すような構成を有する配向制御体300は、例えば図2、図7または図8を参照しながら前述した方法と同様の方法で作製することができる。ただし、基板1の表面に単位構造3を形成した後、基板1の表面を覆う反射性の膜を形成する工程を行わない。また、露光工程の際に用いるフォトマスクやグレイトーンマスクの形状は、前述の実施形態で用いたそれらのマスクの形状と異なる。具体的には、本実施形態では、大きさおよび形状の略等しい複数の開口部または透過領域が、規則的または準規則的に配列されたフォトマスクやグレイトーンマスクを用いる。
図15(a)〜(c)は、配向制御体300を作製する方法を説明するための平面図である。
まず、図示しないが、基板1にネガレジスト層を形成する。ネガレジスト層は、図2(a)を参照しながら説明した材料と同様の材料を用いて同様の方法で形成することができる。ネガレジスト層の厚さは、例えば300nmとする。
次いで、図15(a)に示すように、単位構造を規定する複数の開口部を有するフォトマスクを用いてネガレジスト層を露光し(第1の露光工程)、続いて現像を行うことにより、基板1の表面に複数の単位構造形成層13を形成する。露光条件は、図2(b)を参照しながら前述した条件と同様とする。この例は、単位構造形成層13は、基板1の表面においてX方向に直交するY方向に沿って、溝4を空けて配置されている。X方向に沿った単位構造形成層13のピッチPを1.6μm、Y方向におけるピッチPを3.2μm、溝4の幅dを0.8μmとする。また、各単位構造形成層13のX方向の幅wは1.0μmとする。
この後、第1の露光工程で用いたフォトマスクとは異なるフォトマスクを用いて、単位構造形成層13の一部を露光する(第2の露光工程)。露光条件は、図2(d)を参照しながら前述した条件と同様とする。これにより、図15(b)に示すように、単位構造形成層13のうち第2の露光工程で露光された部分は、壁部形成領域15となり、露光されなかった部分が傾斜部形成領域17となる。壁部形成領域15のX方向における幅w5は、例えば0.4μmとする。
次いで、単位構造形成層13の焼成を行う。焼成条件は、図2(e)を参照しながら前述した条件と同様とする。この焼成により、図15(c)に示すように、傾斜部形成領域17は主にX方向に熱だれを生じて、傾斜面7aを有する傾斜部7となる。一方、壁部形成領域15は、ほとんど熱変形せずに、その形状を維持したまま壁部5となる。なお、図示しないが、焼成を行った後に、単位構造3の表面を含む基板1の表面全体に垂直配向膜などの配向膜を形成してもよい。
このようにして、壁部5および傾斜部7を有する単位構造3が配列された配向制御体300が得られる。得られた配向制御体300のX方向に沿った断面は、図14(a)に示すような略台形である。各単位構造3の壁部5の高さは約300nm、傾斜部7の傾斜面7aの傾斜角度αは12°、壁部5の側面5bの傾斜角度βは約85°である。
上記方法では、2回の露光工程の間に現像工程を行っているが、図7を参照しながら前述したように、第1および第2の露光工程を行った後に現像してもよいし、図8を参照しながら前述したように、グレイトーンマスクを用いた1回の露光工程を行ってもよい。
本実施形態の方法によると、液晶層と接触する面全体で液晶層の初期配向を制御し得る配向制御体300を簡便に作製できる。配向制御体300を用いると、液晶層の配向をより均一に制御できるので有利である。また、配向制御体300における単位構造3の平均ピッチPXを小さく(例えば数μm以下)しても、傾斜面7aと基板1の表面との間の傾斜角度αや壁部5の高さなどを任意かつ精確に設定できる。また、傾斜面7aの傾斜角度αを、単位構造形成層13のピッチや高さ、傾斜部形成領域17の幅などによって簡単に調整できるので、従来の方法では困難であったハイプレチルトが実現可能となる。
なお、図15(c)に示す構造体を原盤として、転写物(レプリカ)を作製することにより配向制御体300を形成することもできる。
以下、転写によって配向制御体300を形成する方法について説明する。
まず、例えば図15を参照しながら説明した方法と同様の方法により、表面に複数の単位構造を有する原盤を作製する。
次に、この原盤をマスターとして用いて、原盤の表面形状を樹脂材料からなる層(樹脂層)などに転写することにより、配向制御体300を形成する。樹脂層は、例えばガラス基板上などに配置されていてもよい。樹脂層の材料は特に限定されないが、公知の配向膜の材料と同じ材料を用いることができる。また、上記原盤を転写して得られた転写物をマスターとして用いて更なる転写を行うことにより、配向制御体300を形成してもよい。
次に、図面を参照しながら、本実施形態の配向制御体の他の構成例を説明する。この例の配向制御体では、単位構造3の傾斜面7aの法線方向Nは、基板1の表面における位置に応じて異なる方位に傾斜している。なお、傾斜面7aが平面でない場合、「傾斜面7aの法線方向N」は、その傾斜面7aにおける平均の法線方向をいう。このような配向制御体を表示装置に適用すると、1画素内に配向方向(例えばプレチルト方向)が互いに異なる複数の領域を混在させることができるので(配向分割)、表示の視野角特性を大幅に改善できる。
以下、図16(a)〜(d)を参照しながら、配向制御体のより詳細な構成を説明する。
配向制御体は、例えば図16(a)に示すような基板(石英基板など)122の上に形成される。基板122は、配向制御体によって規定される60mm×60mmの配向制御領域126を有している。配向制御領域126には、300μm×100μmの単位領域124が200個×600個並べられている。例えば、配向制御領域126は表示装置における表示領域に、単位領域124は表示装置における画素にそれぞれ対向して設けられる。
ここで、各単位領域124は、図16(b)に示すように、縦横ともに2分割された4つの「サブ」の領域を有している。サブ領域は、画素分割されたサブ画素に対向づけられる。各サブ領域には複数の単位構造3が配列されている。それぞれのサブ領域では、単位構造3の傾斜面7aは略同一の法線方向Nを有している。また、図16(c)に、図16(b)のI―I’およびII−II’断面図を示す。図16(b)および(c)に示すように、各サブ領域における傾斜面7aは、そのサブ領域を含む単位領域124の中心に対して外を向くように形成されている。
図16(d)は、各サブ領域における単位構造3の配列状態をより詳しく説明するための斜視図である。単位構造3は、基板表面におけるX方向に1.6μmの平均ピッチPXで配列され、また、基板表面におけるX方向と直交するY方向に、0.8μmの溝を空けて、3.2μmの平均ピッチPYで配列されている。
各単位構造の傾斜面の法線方向は、その単位構造の基板表面における位置に応じて予め決められた方位に傾斜している。従って、液晶層のプレチルト方向を所定の領域ごとに制御する、いわゆる配向分割が可能になる。
なお、配向分割が可能な配向制御体の構成は、図16に示す構成に限定されない。例えば、単位領域124のサイズやサブ領域の数、形状なども任意に設定できる。このような配向制御体を表示装置に適用する場合には、単位領域124のサイズは、適用しようとする表示装置の画素のサイズに対応させることが好ましい。また、各単位構造3のサイズやピッチも任意に設定できる。さらに、配向制御体は、表面に配向膜および/または導電膜を有していてもよい。この場合、配向膜と接するように液晶層を配置するとよい。
上述したような配向分割可能な配向制御体は、例えば次のような方法で製造される。
まず、図15(a)を参照しながら説明した方法と同様の方法で、基板1の上に単位構造形成層(厚さ:300nm)13を形成する。ただし、本実施形態では、単位構造形成層13の配列方向は、図16(b)に示す単位構造3の配置に応じて、サブ領域毎に選択される。
次いで、図15(b)を参照しながら説明した方法と同様の方法で、単位構造形成層13のうち壁部を形成しようとする部分のみを露光して、壁部形成領域15を得る。単位構造形成層13のうち本工程で露光されなかった部分は、壁部形成領域15よりも露光量の少ない傾斜部形成領域17となる。本実施形態では、図16(b)に示す単位領域の右上のサブ領域では、単位構造形成層13のうち左下に位置する部分を露光して、右上に傾斜部形成領域17を形成する。同様に、左上のサブ領域では左上に、右下のサブ領域では右下に、左下のサブ領域では左下に傾斜部形成領域17をそれぞれ形成する。
この後の工程は、図15(c)を参照しながら説明した工程と同様である。これにより、基板表面における位置に応じて、傾斜面7aの向きが異なる単位構造3を容易に形成できる。
上記の方法によると、単位構造3の配列ピッチ、高さおよび傾斜面7aの傾斜角度αなどが任意かつ精確に制御され、かつ配向分割が可能な配向制御体を容易に作製できる。
なお、上記方法の代わりに、図15を参照しながら説明した方法で、例えば右上のサブ領域と対応するマスターを作製し、このマスターの表面形状を、基板表面における異なる領域に、向きを変えながら4回転写することにより、サブ領域ごとに傾斜面の法線方向が異なる配向制御体を形成することもできる。
本実施形態の配向制御体は、液晶表示装置に好適に用いることができる。
図17(a)および(b)はそれぞれ、本実施形態の配向制御体を用いた表示装置の構成を示す模式的な断面図である。ここでは、配向制御体として、図16を参照しながら説明したような配向分割が可能な配向制御体を用いた構成を例に説明する。
図17(a)に示す表示装置では、表面に導電膜134および垂直配向膜136をこの順で有する配向制御体132と、表面に電極144および垂直配向膜142が形成された基板146とが対向し、配向制御体132および基板146によって液晶層140が狭持されている。垂直配向膜136は、液晶層140と接するように形成されている。液晶層140は垂直配向型液晶層である。配向制御体132は、傾斜面の向きの異なる複数の領域を有している。配向制御体132は、図15を参照しながら前述した方法を用いて形成されてもよいし、転写物であってもよい。
また、図17(b)の表示装置は、図17(a)に示す表示装置と同様の構成を有しているが、配向制御体132が基板と複数の単位構造との間に導電膜134を備えている点で異なる。図17(b)に示すような配向制御体132は、例えば、基板1の表面に導電膜134を形成した後、導電膜134の上に、図15を参照しながら説明した方法で単位構造を形成することによって得られる。あるいは、ガラス基板1の表面に導電膜134および樹脂層をこの順で形成した後、前述の方法によって作製されたマスターの表面形状を樹脂層に転写することによって形成できる。
図17(a)および(b)に示す表示装置によると、液晶層140に電圧が印加されていない状態(OFF状態)では、図17(a)および(b)に示すように、液晶層140に含まれる液晶分子138の長軸は、配向制御体132の表面(傾斜面)の影響を受けて傾いている。導電膜134および電極144によって液晶層140に電圧が印加されると、液晶分子138は、OFF状態で傾いていた方向に倒れる。この例では、配向制御体132が傾斜面の向きの異なる複数の領域を有しているので、それぞれの領域ごとに液晶分子138の倒れる方向を制御できる。
なお、基板146の代わりに、他の配向制御体を配向制御体132と対向するように配置して、液晶層140が2つの配向制御体によって狭持される構成にしてもよい。また、液晶層140は水平配向型であってもよい。さらに、配向制御体として、図14に示すような傾斜面の向きが一定の配向制御体を用いることもできる。
このように、本実施形態の配向制御体を用いて表示装置を構成すると、液晶層140の配向を略均一に制御できるので、高コントラストな表示が得られる。また、リブやスリットなどの従来の配向制御手段を備えた表示装置と比べて、リタデーションや開口率を向上できる。さらに、配向分割も可能であるため、視野角特性を改善できる。液晶層140のプレチルト角θを任意に設定でき、プレチルト角θを大きく(ハイプレチルト)することにより、液晶分子の配向をより安定して制御できる。
さらに、図17(a)および(b)に示す表示装置は、リブやスリットを利用した表示装置と比べて、優れた応答特性を実現できるという利点もある。この利点について、以下に説明する。
リブやスリットなどの従来のMVA型LCDで用いられる配向制御手段は、画素内の液晶層に対して局所的(一次元的)に配置される。そのため、2次元的な広がりを有する画素内において、配向制御手段近傍にある液晶分子は比較的速く応答するのに対し、配向制御手段の影響を受けにくい位置にある液晶分子の応答が遅くなる。この応答特性の分布が表示特性を低下させることがある。
リブ法では、リブの近傍に存在する液晶分子は、リブ形状の影響を受けて所定のプレチルト(プレチルト方向およびプレチルト角)を有する。一方、隣接するリブの中間に位置する液晶分子はリブ形状の影響を受けにくいので、そのプレチルト角は、リブの近傍に存在する液晶分子よりも小さくなる。このような液晶層に電圧を印加すると、プレチルト角の大きい液晶分子から順にプレチルト方向に倒れていくため、液晶層の応答速度が小さくなる。
同様に、斜め電界法においても、スリットの近傍に存在する液晶分子と隣接するスリットの中間に位置する液晶分子とでは、スリット近傍に存在する液晶分子の方が斜め電界の影響を大きく受ける。従って、電圧を印加すると、スリット近傍に存在する液晶分子から順に応答していく。そのため、液晶層の応答時間は長くなってしまう。
これに対し、本発明では、画素部のほぼ全域に(2次元的に)均一に液晶層140の配向制御手段を形成できるので、液晶分子は液晶層における位置にかかわらず高速で応答できる。従って、液晶層140の応答速度を従来よりも大幅に向上できる。
なお、一般的に行われているラビング処理も、画素部のほぼ全域に液晶層の配向制御手段を形成するものであり、応答速度の分布が形成されることはない。しかしながら、垂直配向型液晶層の液晶分子の配向を制御することはできない。また、プレチルト方向の異なる領域を作るためには異なる方向にラビングする必要があり、配向制御するためのプロセスが複雑になるという問題がある。これに対し、本発明では、プレチルト方位は、傾斜面(例えば図14の傾斜面7a)の法線方向が傾斜している方位によって制御され、傾斜面の角度によってプレチルトの「角度」を制御することもできる。そのため、所定の領域ごとに異なる表面形状を形成することにより、容易に配向分割できる。
本発明は、上述の実施形態に限定されず、傾斜反射板や配向制御体以外の用途に使用される光学素子に適用してもよい。例えば種々の回折格子としても用いられ得る。本発明をブレーズド回折格子に適用すると、格子定数やブレーズ角などを任意かつ精確に制御できるので有利である。
本発明によれば、表面に複数の単位構造が配列された基板を備えた高精細な光学素子が簡便に作製できる。本発明は、例えば液晶表示装置の液晶パネル内に配置される拡散反射板、反射電極、配向制御体などに好適に用いられ得る。
本発明を、例えば反射型液晶表示装置の拡散反射板や反射電極に適用すると、拡散反射板や反射電極を構成する単位構造の傾斜面の向きを容易に制御できるので、従来よりも明るく視認性の高い表示を実現できる。
また、液晶表示装置において、液晶層の液晶分子の配向を規制する配向制御体に適用すると、液晶層をより均一に配向制御することができ、高コントラストな表示が得られるだけでなく、プレチルト角を容易かつ任意に制御できるメリットがある。さらに、配向制御体に、単位構造の傾斜面の向きが異なる複数の領域を形成することによって配向分割を行うことができるので、視野角特性を向上できる。
(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態の光学素子(傾斜反射板)の構成を説明するための模式図であり、(a)は平面図、(b)および(c)は、(a)に示すIb−Ib’線およびIc−Ic’線に沿った断面図である。 (a)〜(f)は、本発明の第1の実施形態の傾斜反射板の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。 本発明の第1の実施形態で使用するフォトマスクの形状を例示する平面図である。 本発明の第1の実施形態で使用するフォトマスクの形状を例示する平面図である。 (a)および(b)は、特許文献3に記載された従来の方法を説明するための工程断面図であり、(c)は、本願発明者らがこの従来の方法を追試した結果得られた光学素子の形状を模式的に示す断面図である。 (a)〜(d)は、本発明の光学素子における単位構造のピッチ、および傾斜面または側面の角度を説明するための図である。 (a)〜(f)は、本発明による第1の実施形態の他の製造方法を説明するための模式的な工程断面図である。 (a)〜(c)は、本発明による第1の実施形態のさらに他の製造方法を説明するための図であり、(a)は、グレイトーンマスクの一例を示す平面図であり、(b)および(c)は、模式的な工程断面図である。 本発明による第1の実施形態の傾斜反射板を用いた反射型液晶表示装置を例示する模式的な断面図である。 (a)〜(c)は、従来の拡散反射板の構成を説明するための図であり、(a)は平面図、(b)および(c)は、単一の単位構造を示す断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、従来の拡散反射板および第1の実施形態の傾斜反射板を用いた反射型液晶表示装置において、入射光のうち表示に寄与する光の割合を説明するための図である。 (a)は、従来の拡散反射板を用いた場合の、パネルの表面に対して斜め30°の方向から光を入射するときの反射光のふるまいを示す図であり、(b)は、(a)に示す反射光の角度分布を示すグラフである。 (a)は、第1の実施形態の傾斜反射板を用いた場合の、パネルの表面に対して斜め30°の方向から光を入射するときの反射光のふるまいを示す図であり、(b)は、(a)に示す反射光の角度分布を示すグラフである。 本発明による第2の実施形態の光学素子(配向制御体)を示す模式図であり、(a)は断面図、(b)および(c)は平面図である。 (a)〜(c)は、本発明による第2の実施形態の配向制御体の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。 (a)〜(d)は、本発明による第2の実施形態の配向制御体の他の構成を説明するための図である。 (a)および(b)は、それぞれ、本発明による第2の実施形態の配向制御体を用いた液晶表示装置を例示する模式的な断面図である。
符号の説明
1 基板
3 単位構造
5 壁部
5a、5b 壁部の側面
7 傾斜部
7a 傾斜面
9 反射性の膜
12 ネガレジスト層
20、30、40 フォトマスク
22、32、42 開口部
13、13’ 単位構造形成層
15、15’ 壁部形成領域
17、17’ 傾斜部形成領域
100、300 光学素子

Claims (13)

  1. 基板と、前記基板の表面に形成された複数の単位構造とを備え、各単位構造は、前記基板の表面に対して傾斜した傾斜面を有する光学素子の製造方法であって、
    (a)ネガ型感光性樹脂を用いて、基板の表面にレジスト層を形成する工程と、
    (b)前記レジスト層に対してフォトマスクを用いて露光し、現像を行うことにより、間隔を空けて配置された複数の単位構造形成層を形成する工程であって、各単位構造形成層は、第1の露光量で露光された第1領域と、前記第1の露光量よりも少ない第2の露光量で露光された第2領域とを含む工程と、
    (c)前記複数の単位構造形成層の熱処理を行って、前記各単位構造形成層のうち少なくとも前記第2領域を熱変形させて前記基板の表面に対して傾斜した傾斜面を形成することにより、それぞれが傾斜面を有する複数の単位構造を得る工程と
    を包含する光学素子の製造方法。
  2. 前記フォトマスクのうち少なくとも1枚は、前記複数の単位構造を規定する複数の開口部を有しており、各開口部の形状は異方性を有する請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  3. 前記工程(b)は、
    (b1)第1のフォトマスクを用いて、前記第1および第2領域を第1の露光量で露光する第1の露光工程と、
    (b2)第2のフォトマスクを用いて、前記第1領域をさらに露光する第2の露光工程と
    を包含する請求項1または2に記載の光学素子の製造方法。
  4. 前記工程(b1)と前記工程(b2)との間に、前記レジスト層のうち前記第1の露光工程で露光されなかった領域を現像によって除去する工程(b3)をさらに含む請求項3に記載の光学素子の製造方法。
  5. 前記工程(b1)および(b2)の後に、前記レジスト層のうち前記第1および第2の露光工程で露光されなかった領域を現像によって除去することにより、前記複数の単位構造形成層を得る工程(b4)をさらに含む請求項3に記載の光学素子の製造方法。
  6. 前記工程(b)は、グレイトーンマスクを用いて、前記第1の露光量で前記第1領域を露光するとともに、前記第2の露光量で前記第2領域を露光する工程を含む請求項1または2に記載の光学素子の製造方法。
  7. 前記工程(c)は、前記各単位構造形成層のうち前記第1領域の軟化点以下であり、かつ、前記第2領域の軟化点よりも高い温度で熱処理を行う工程を含む請求項1から6のいずれかに記載の光学素子の製造方法。
  8. 前記傾斜面の法線方向は、前記基板の表面における予め決められた方位に傾斜している請求項1から7のいずれかに記載の光学素子の製造方法。
  9. 前記工程(c)の後に、前記複数の単位構造が形成された基板の表面に反射性の膜を形成する工程をさらに含む請求項1から8のいずれかに記載の光学素子の製造方法。
  10. 前記工程(c)の後に、前記複数の単位構造が形成された基板の表面に垂直配向膜を形成する工程をさらに含む請求項1から8のいずれかに記載の光学素子の製造方法。
  11. 前記傾斜面の法線方向は、前記基板の表面における位置に応じて、予め決められた方位に傾斜している請求項10に記載の光学素子の製造方法。
  12. 請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法により製造された光学素子。
  13. 請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法により製造された光学素子と、
    前記光学素子の上に配置された液晶層と、
    前記液晶層に電圧を印加するための電極と
    を備えた液晶表示装置。
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