JP2008232916A - 標的物質検出キット - Google Patents

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優 海江田
Satoru Hatakeyama
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Abstract

【課題】目的タンパク質に付与したタグと相互作用する粒子の凝集により、目的タンパク質を精製する方法において、粒子の凝集効率を向上させた方法を提供すること。
【解決手段】へテロ多量体を形成することができるヘリックスペプチドを目的タンパク質及び凝集を検知可能な粒子に結合させ、ヘリックスペプチドどうしのヘテロ多量体の形成により生じる粒子凝集体として目的タンパク質を回収する。
【選択図】図1

Description

本発明は、目的タンパク質の存在を検知、分取する方法に関する。より詳細には、アルファヘリカルコイルドコイルヘテロトリマーの形成によって引き起こされる粒子凝集を観察することにより、目的タンパク質を検知、分取する方法に関する。
発現されたタンパク質を単離精製する方法として、アフィニティー精製や分子ふるいクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなど様々な手法が開発されている。上記の中でもアフィニティー精製は、目的タンパク質を小さいアフィニティータグと融合して発現することによって比較的簡便な精製が可能であるため、よく利用される手法である。上記のアフィニティータグの一例としてヒスチジンタグが一般に広く利用されている。またアルファヘリカルコイルドコイルヘテロダイマーを形成する相補的なヘテロダイマー-サブユニットペプチドをアフィニティータグとして利用する技術開発もなされている(特許文献1)。この特許文献1中では所望のタンパク質を精製する次のような手法が開示されている。すなわち、ヘテロダイマー-サブユニットの一方(第一のサブユニット)を粒子に固定化し、他方(第二のサブユニット)を所望のタンパク質との融合タンパク質として生産し、ヘテロダイマー-サブユニット同士の会合力を利用して所望のタンパク質を精製する。また、目的のタンパク質を検出する手法についても次のような方法が開示されている。すなわち、目的のタンパク質は第一のサブユニットとタンデムに発現され、第二のサブユニットは検出可能なレポーターと結合され、第一、第二のサブユニットの会合の後、第二のサブユニットに結合したレポーターの観察により目的タンパク質の存在を検出する。上記検出方法は、目的タンパク質に特異的な抗体を担体に固定化しておくことにより、目的タンパク質が担体上に固定化されることを利用する。固定化された目的タンパク質にタンデムに融合された第一のサブユニットとレポーターの結合した第二のサブユニットとを会合させ、レポーターを検出することによって、間接的に目的タンパク質を検出する方法である。
特表平11−512620号公報
特許文献1では、目的タンパク質のアフィニティー精製及び検出方法は開示されているが、目的タンパク質の存在及び、アフィニティー精製担体への目的タンパク質の結合をモニターしながら、前記目的タンパク質の精製を行う方法は開示されていない。一般に広く用いられているヒスチジンタグを利用したアフィニティー精製においても、精製用担体への目的タンパク質結合のモニターを行い、担体への結合量を確認しながら精製を進める手法は開示されていない。
特許文献1に開示のヘテロダイマー-サブユニットを用いる目的タンパク質のアフィニティー精製担体への結合の観察方法として、目的タンパク質が担体粒子へ結合することによって生じる担体粒子の凝集をモニターする方法が考えられる。しかし、この粒子の凝集を生じさせるためには、粒子に固定化されていない第二のサブユニットを所望のタンパク質に複数個融合させる必要がある。この場合、(1)所望のタンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端の両方に第二のサブユニットを融合するか、または(2)所望のタンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端のどちらかに第二のサブユニットを複数個タンデムに融合する必要がある。このように同一ポリペプチド内に融合された複数の第二のサブユニットは、同一の粒子上に固定化された第一のサブユニットと会合する可能性が高い。通常、反応効率を決定する一つの要因として、反応基質同士や基質と触媒のように反応に関わる物質の接触効率が挙げられる。第二サブユニットが一つの粒子上の第一サブユニットと会合した場合、同一ポリペプチド内に含まれるもう一つの第二サブユニットにとって、会合している同一粒子上に存在する第一サブユニットが最も近接している。そのため、別の粒子上に存在する第一サブユニットと接触するよりも、同一粒子上に存在する第一サブユニットと接触する可能性が極めて高くなる。上記のように、同一ペプチド内に含まれる第二サブユニットは会合した粒子上の複数の第一サブユニットと会合し、粒子が効率的に凝集しないため、所望の融合タンパク質の検出及び分取が効率的に行われないという問題がある。
よって本発明の目的は、目的タンパク質の存在をモニターしながら効率的に目的タンパク質を分取する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、標的物質を捕捉可能な捕捉分子を用いて試料中の標的物質を分取する方法において、標的物質を捕捉した捕捉分子を効率的に回収することを可能とする方法を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明の方法は、以下の通りである。
本発明の第一は、目的タンパク質の発現を検出する方法であって、
前記目的タンパク質を第一のヘリックスペプチドとの融合ペプチドとして発現させる工程と、
前記融合ペプチドと、粒子の表面に配置され、かつ前記第一のへリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドとを混合する工程と、
前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドとの会合により生じる前記粒子の凝集を測定する工程とを有し、
前記会合体が、前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドの2以上とからなるヘテロ多量体であることを特徴とする目的タンパク質の発現の検出方法である。
本発明の第二は、発現させた目的タンパク質を分取する方法であって、
前記目的タンパク質を第一のヘリックスペプチドとの融合ペプチドとして発現させる工程と、
前記融合ペプチドと、粒子の表面に配置され、かつ前記第一のへリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドとを混合する工程と、
前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドとの会合により生じる前記粒子の凝集体を回収する工程と、
前記凝集体から前記目的タンパク質を分離する工程とを有し、
前記会合体が、前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドの2以上とからなるヘテロ多量体であることを特徴とする目的タンパク質の分取方法である。
本発明の第三は、発現させた目的タンパク質を検出または/及び分取するためのキットであって、宿主細胞において第一のへリックスペプチドとの融合ペプチドとして前記目的タンパク質を発現させるための遺伝子発現ベクターと、
粒子の表面に配置され、かつ前記第一のヘリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドとを有し、
前記会合体が、前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドの2以上とからなるヘテロ多量体であることを特徴とするキットである。
本発明の第四は、試料中の標的物質を分取する方法であって、
試料と、標的物質を捕捉するための捕捉体によって修飾される第一のヘリックスペプチドとを混合する工程と、
前記捕捉体が前記標的物質を捕捉した状態の前記第一のヘリックスペプチドと、粒子の表面に配置され、かつ前記第一のへリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドとを混合する工程と、
前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドとの会合により生じる前記粒子の凝集体を回収する工程と、
前記凝集体から前記標的物質を分離する工程とを有し、
前記会合体が、前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドの2以上とからなるヘテロ多量体であることを特徴とする標的物質の分取方法である。
本発明の第五は、試料中の標的物質を分取するためのキットであって、
標的物質を捕捉するための捕捉体によって修飾される第一のヘリックスペプチドと、
粒子の表面に配置され、かつ前記第一のヘリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドとを有し、
前記会合体が、前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドの2以上とからなるヘテロ多量体であることを特徴とするキットである。
本発明において、所望のタンパク質に融合したヘリックスペプチドが同一の粒子上に存在する相補的ヘリックスペプチドと会合することを抑制し、粒子の凝集をより効率的に行うことが可能となる。そのため、粒子凝集の度合いを観察することによって標的物質の効率的な検出及び分取を可能とするキット及び方法を提供できる。
以下、本発明の詳細について説明する。
(ヘリックスペプチド)
本発明においてヘリックスペプチドとは、二次構造においてへリックス構造を有するペプチドである。ヘリックス構造を形成するアミノ酸配列は、天然に存在するタンパク質もしくはペプチドのアミノ酸配列、又は人工的に設計したアミノ酸配列のいずれを用いてもよく、好ましくは、アルファヘリックス構造を形成するペプチドである。
(ヘテロ多量体)
本発明にかかるヘリックスペプチドが形成するヘテロ多量体とは、3以上のヘリックスペプチドの会合によって形成される多量体であって、アミノ酸配列において2種類以上のヘリックスペプチドを含んでいるトリマー以上の多量体である。例えば、ヘテロトリマーでは、アミノ酸配列の異なる3種類のヘリックスペプチドによって形成されてもよい。あるいは、アミノ酸配列の異なる2種類のヘリックスペプチドで構成され、あるアミノ酸配列からなるヘリックスペプチド1つと、これと異なるアミノ酸配列からなるヘリックスペプチド2つによって形成される会合体であってもよい。そして、ヘテロトリマーにおいては、3種類のヘリックスペプチドからなる場合は、本発明の目的タンパク質に融合される第一のヘリックスペプチドとして、3種類の中からいずれを選択してもよい。例えば、目的タンパク質との融合タンパク質を微生物宿主を利用して生産を行う場合、前記目的タンパク質に融合されるペプチドの種類によって生産性に影響を与える場合がある。この場合、ヘテロトリマーが3種類のヘリックスペプチドからなる構成が、前記融合タンパク質の生産性が最も良好となるように第一のヘリックスペプチドを選択することができるため好ましい。また、ヘテロトリマーが3種類のヘリックスペプチドからなる構成は、第二のヘリックスペプチドを固定化した粒子と第三のヘリックスペプチドを固定化した粒子とを夫々用意することで、前記融合ペプチドの定量性の向上が期待できるため好ましい。これは、前記二種類のヘリックスペプチド固定化粒子と前記第一のヘリックスペプチド融合ペプチドにおけるヘテロトリマー形成は、同一粒子上ではなく複数の粒子上に存在する第二、第三のペプチドを利用して行われるからである。ヘテロトリマーを形成するアルファヘリックスペプチドが2種類のペプチドからなる場合は、第一のヘリックスペプチドとして、ヘテロトリマーの構成に1つだけ含まれるヘリックスペプチドを選択する。この場合、例えば、粒子に固定化されるヘリックスペプチドは、同一粒子上で互いに近接しない量または密度で固定化されることにより、粒子間のヘテロトリマー形成を効率的に行うことが可能となる。また、ヘテロトリマーを形成可能な各ヘリックスペプチドによるホモダイマー等のホモ多量体の形成はヘテロ多量体の形成による粒子凝集の効率を低下させない程度に微量であることが好ましい。ヘテロトリマー以外にも例えばヘテロテトラマー、ヘテロペンタマー等がヘテロ多量体に含まれる。いずれの多量体も少なくともアミノ酸配列が異なる2種類以上のヘリックスペプチドによって形成されていれば粒子の凝集を形成することが可能である。定量性の観点でヘテロ多量体は1つだけ含まれるヘリックスペプチドを有することが好ましく、これを第一のヘリックスペプチドとして選択する。さらに、各サブユニットのみがホモ多量体を形成しないことが好ましい。
このようなヘリックスぺプチドが形成する会合体としては、アルファヘリックス構造を有するペプチドが形成するアルファへリカルコイルドコイル構造が挙げられる。例えば、配列番号1〜3に挙げる3つのペプチドは、それぞれアルファヘリックス構造を形成するペプチドであり、アルファへリカルコイルドコイルペプチド構造のヘテロトリマーを形成することが知られており、このような配列を用いることができる。
(アルファへリカルコイルドコイル構造)
アルファヘリカルコイルドコイル構造は複数のアルファ−ヘリックスが相互作用(会合)しながら巻き付き合った構造である。アルファへリックス構造は、7残基のアミノ酸がヘリックス2回転に対応し、7つの位置は図1で示すようにa、b、c、d、e、f、gで表記されることが多い。a、dはヘリックス間の会合に重要な疎水アミノ酸(Val、Ile、)やGlu、Lys、Gln、Argが挙げられる。取り分けVal、Ileであることが望ましい。これら会合面のアミノ酸の選択によっては複数のアルファヘリックスから構成されるコイルドコイルを作ることが可能である。また、ヘテロトリマーのコイルドコイル構造を取る場合、相補的なヘリックス分子間においてe及びgの位置が近接する(図1)。そのため、前記e及びgの位置の一方には正の電荷を有するアミノ酸残基(例えば、Arg、His,Lys)を、他方には負の電荷を有するアミノ酸残基(例えば、Asp、Glu)を導入することが望ましい。そうすることで静電的な作用によりヘテロトリマーの構造安定性を向上することが期待できる。とりわけGlu及びLysの組み合わせが好ましい。また、本発明で用いられるヘテロ多量体の結合力及び、構造安定性は、多量体を形成するそれぞれのアルファヘリックスペプチド鎖の長さに依存するため、鎖長の長いヘリックスペプチドが結合力向上、安定性向上が期待でき好ましい。化学合成及び生体を用いた合成のいずれにおいても100アミノ酸程度までが生産性の容易さという点で好ましい。また、ヘリックス鎖長としては2回転から28回転程度が好ましく、中でも8回転から12回転のヘリックスペプチド鎖が結合力、構造安定性、生産性の各々の観点において好ましい。
ここで、配列番号1〜3で示されるポリペプチドはそれぞれアルファヘリカル構造を形成する。これら3つのポリペプチドが共存する場合に、それぞれのポリペプチドがアルファヘリックス構造を取り、それら3つのアルファヘリックス構造が互いに巻き付き合ったアルファヘリカルコイルドコイル構造のヘテロトリマーを形成することが知られている(Protein Science, 1999, 8, 84-90を参照)。このようなヘテロトリマーを形成するアルファヘリックスペプチドのうち、スペーサー配列を付加した、第二(配列番号2)および第三(配列番号3)のペプチドを以下に詳述する粒子表面の少なくとも一部に配置した材料を本発明で用いることができる。また、本発明におけるヘテロトリマーを形成するヘリックスペプチドとしては、例えば、Chem. Eur. J, 2004, 10, 3548-3554に記載されるヘリックスペプチドも利用可能である。上記文献に記載のヘリックスペプチド以外にも、安定なヘテロ多量体を形成するペプチドをデザインし利用することが可能であり、本発明で使用可能なヘリックスペプチドはこれらに限定されない。
また、本発明で使用されるペプチドがアルファヘリカルコイルドコイル構造を形成することは、円二色性測定を用いて当該業者既知の方法で検知することが可能である。アルファヘリックス構造は波長225nm付近に負のコットン効果を示すことが知られているため、モル楕円率のスペクトルを、400−200nmの波長領域において観察するとことでアルファヘリックス構造の含量を検知することができる。
(遺伝子発現ベクター)
本発明にかかる遺伝子発現ベクターとは、所望の宿主細胞中に導入されることによって、前記宿主が所望の融合ペプチドを発現可能な形質を獲得するためのものである。前記融合ペプチドとは、第一のヘリックスペプチドと異種タンパク質がインフレームの状態で発現されたペプチドを含むペプチドのことである。前記遺伝子発現ベクターは、前記宿主細胞において有効な所望のプロモーター支配下に第一のヘリックスペプチドをコードする遺伝子と前記異種タンパク質をコードする遺伝子が挿入されるマルチクローニングサイトを少なくとも含む。目的タンパク質をコードする遺伝子を挿入することにより、第一のヘリックスペプチドと目的タンパク質が融合した融合ペプチドを発現させることで、目的タンパク質の検出及び/又は分取に利用することができる。分泌シグナル配列を含む場合、融合ペプチドは培地中への分泌発現がなされ、融合ペプチドの回収に際して、前記宿主菌体の破砕操作等を行う必要がなくなるためより好ましい。
(粒子)
本発明において、粒子の材料となる物質はその凝集、分散の状態を検知可能な材料であればどのような材料で構成されていても構わない。例えば、金粒子は分光光度計による吸収波長が溶液中での凝集状態によって変化することが知られている。このように粒子の凝集分散状態を容易に測定できる金粒子は本発明で使用される粒子として望ましい。また着色ラテックスポリマーのように目視で粒子凝集を確認できる材料を用いることも可能である。前記粒子は全面もしくは一部が化学物質で修飾されていてもよい。ここで言う化学物質によって粒子を修飾する効果の一例としては、粒子の分散性の向上が挙げられる。水中での粒子の分散性の向上とは、粒子への水中での溶解性を付与または、水中での沈殿性の凝集構造を生じさせない性質を付与することを意味する。水中での分散性向上は、第一のヘリックスペプチドが存在しない場合における粒子の凝集を抑制する効果が期待される。また、化学物質の修飾により前記粒子表面への望まない物質の非特異的な吸着を防止することも期待される。このような前記粒子の分散性向上または/及び前記粒子への非特異吸着防止の効果を発揮する化学物質としては例えば界面活性剤やポリエチレングリコール等の水溶性ポリマーや、ウシ血清アルブミン等がある。また、特定のDNA配列を金粒子に固定化することで金粒子の溶液中での分散性が向上することが報告されており(JACS, 2003, 125, 8102-8103を参照)、そのようなDNA配列を粒子に固定化することもできる。粒子表面へ固定化される化学物質は粒子表面に配置されるヘリックスペプチドと遊離の第一のヘリックスペプチドとの会合性を阻害するものでない限り特に限定されるものではない。
(ヘリックスペプチドの粒子表面への配置方法)
ヘテロトリマーを形成するヘリックスペプチドを粒子表面の少なくとも一部に固定化する方法を説明する。粒子表面に配置させるヘリックスペプチドは所望の宿主を利用した合成、大腸菌や小麦胚芽等の細胞抽出物を利用する無細胞系による合成、化学合成のいずれの手法でも生産することが可能であり、当該分野の一般的手法に従って生産することが可能である。上記手法で生産されるヘリックスペプチドの粒子への配置方法として、粒子材料に対して(1)物理的吸着による配置、(2)化学架橋による配置、(3)分子認識性の物質を利用して配置する方法がある。
(1)物理吸着
上記いずれかの手法で生産されたヘリックスペプチドを所望の材質の粒子と共に懸濁することによって非特異的に粒子表面にヘリックスペプチドを吸着させることができる。
上記のように調製したヘリックスペプチド配置粒子は、湿潤または乾燥状態で保存することが可能である。物理吸着は非特異的な吸着であるためヘリックスペプチド分子の機能である目的物質に対する親和性を損なう恐れ、また粒子上に一度配置されたヘリックスペプチドが脱落する恐れがある。一方でヘリックスペプチドに余分な物質の付加を行うことなく粒子上に配置させることができるという利点がある。
(2)化学架橋
粒子表面の材料とヘリックスペプチドとを化学処理することで、共有結合的にヘリックスペプチドを粒子表面に配置することが可能であり、粒子とヘリックスペプチドの強固な結合を行うことができるという利点がある。前記化学架橋の方法の一例として、例えば、粒子表面にカルボキシレート基を提示した粒子を用いることで、ペプチド中のアミン類と共有結合的に粒子上にペプチドを配置することが可能である。
(3)分子認識
粒子に配置されるヘリックスペプチドは、粒子材料に親和性を有する親和性ペプチドと融合ペプチドとして生産されることにより粒子への結合能を持つことができる。本発明で粒子材料として用いられる無機材料に親和性を持つペプチドは多数報告されており、所望の粒子及び粒子表面材料に応じて選択して用いることが可能である。例えば、金、銀、アルミナ等の材料親和性ペプチドが報告されている。上記材料親和性ペプチドは、上記材料親和性ペプチドを一単位として繰り返し構造とすることで、材料親和性を高めることが可能なことも知られている。例えば、14アミノ酸残基からなる金結合性ペプチドを1単位として5〜9回の繰り返し構造とすることにより、金への結合性を向上することができると報告されている(Nature biotechnology, 15, 1997, 269-272を参照のこと)。このような材料親和性のペプチドを利用してヘリックスペプチドを粒子表面に配置することが可能である。
また、へリックスペプチドの粒子への結合の足場としてアミノ酸を利用することもできる。例えば、システイン残基は金への結合能を持つことが知られており、タンパク質の金への固定化にしばしば利用されている。へリックスペプチドを化学合成する場合、へリックスペプチドの両末端にシステイン残基を付加することが可能である。また大腸菌や酵母、昆虫細胞等の宿主細胞を利用、または大腸菌や小麦胚芽等の抽出物を利用した無細胞系によるタンパク質合成系を利用した上記へリックスペプチドを生産させる場合は次のようにシステイン残基を付加する。すなわち、上記ヘリックスペプチドをコードする遺伝子の5’末端もしくは3’末端にシステイン残基をコードする遺伝子を付加することで生産されるヘリックスペプチドの所望の末端にシステイン残基を融合することができる。
(ヘリックスペプチド固定化粒子)
ヘリックスペプチド固定化粒子は(1)一つの粒子上に一種類のヘリックスペプチドを配置する場合と、(2)一つの粒子上に複数種類のヘリックスペプチドを配置する場合が考えられる。
(1)一つの粒子上に一種類のヘリックスペプチドを配置する場合、上記の方法を用いてヘリックスペプチドを配置することが可能である。上記の化学架橋や分子認識を用いて配向性を持って粒子上にヘリックスペプチドを配置させる場合、ヘリックスペプチドはスペーサーを介して粒子上に配置されることも可能である。スペーサーは粒子上に配置されたヘリックスペプチドを粒子表面から離す効果があり、相補的なヘリックスペプチドと会合することをより容易にすることが可能となる。また、ヘリックスペプチドが2次構造を取るための自由度を与える効果が期待される。スペーサーの配列としては、上記性質を有するものであれば特には限定されないが、例えば、GGGGS(G:グリシン、S:セリン)、あるいはこの配列単位が2以上5以下程度繰り返されている配列を挙げることができる。スペーサー配列は、会合タンパク質を構成する各々のタンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子DNAの塩基配列において、夫々の塩基配列の読み枠がずれないようにして挿入すればよく、当該分野の公知の方法を用いて挿入することができる。即ち、タンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子DNAの塩基配列と、ポリペプチド会合部のアミノ酸配列をコードする遺伝子DNAの塩基配列との間に、スペーサーのアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を夫々の読み枠がずれないように挿入する。
(2)一つの粒子上に複数種類のヘリックスペプチドを配置する場合も上記(1)と同様の手法で複数のヘリックスペプチドを粒子上に配置することが可能である。そして、粒子材料への修飾の足場は、粒子表面に配置する複数のヘリックスペプチドに関して同じでも異なっていても構わない。粒子材料親和性ペプチドのN末端側に第二のへリックスペプチドのC末端側を融合し、同一の前記粒子材料親和性ペプチドのC末端側に第三のヘリックスペプチドのN末端側を融合したポリペプチドを生産する。それにより2種のへリックスペプチドを一種のポリペプチド鎖として粒子に修飾することも可能である。この場合、第二及び第三のへリックスペプチドが同一粒子上に同数修飾されることになり、均一なヘリックスペプチド固定化粒子を作成する上で好ましい。また、第二のへリックスペプチドは長いリンカーを介して粒子上に配置し、第三のへリックスペプチドは短いリンカーを介して粒子上に配置することにより、粒子表面からの第二、第三のへリックスペプチドの距離を変えることも可能である。第二、第三のへリックスペプチドの粒子表面からの距離が異なる場合、同一粒子上のへリックスペプチドが接触する可能性を減じることができ、同一粒子上での会合体形成を抑制する効果が期待できる。また、上記方法によってヘリックスペプチドを固定した粒子は、ヘリックスペプチドの会合を妨げない限りにおいて粒子表面全体または一部が化学物質で修飾されていてもよい。ここで言う化学物質によって粒子を修飾する効果の一例としては、水中での粒子の分散性の向上が挙げられる。水中での粒子の分散性の向上とは、粒子への水中での溶解性を付与または、水中での沈殿性の凝集構造を生じさせない性質を付与することを意味する。このような化学物質による粒子表面の修飾は、本発明における目的タンパク質と融合された第一のヘリックスペプチドが存在しない場合における粒子の非特異的な凝集を抑制する。これにより前記目的タンパク質と融合した第一のヘリックスペプチドの存在による粒子の凝集を高感度に検知することが可能となるため、このような修飾は好ましい。
(ヘリックスペプチド固定化粒子の凝集の検出工程)
本発明において、ヘリックスペプチド固定化粒子の凝集の検出は、以下の第1の工程および第2の工程を少なくとも有する。
(第1工程)第一のへリックスペプチド融合ペプチドとヘリックスペプチド固定化粒子を混合する工程。
(第2工程)粒子の凝集を測定する工程。
第1工程は、(1)一つの粒子上に一種類のヘリックスペプチドを配置する粒子を用いる場合と、(2)一つの粒子上に複数種類のヘリックスペプチドを配置する粒子を用いる場合で異なる。上記いずれかの場合の粒子と第一のヘリックスペプチドとが共存することにより、粒子上のヘリックスペプチドと第一のヘリックスペプチドとの会合によって粒子の凝集が起こる。
(1)一つの粒子表面に一種類のヘリックスペプチドを配置する粒子を用いる場合、第1工程は次の工程を含む。
(第1−1工程)各へリックスペプチド固定化粒子を混合する工程。
(第1−2工程)第一のへリックスペプチドを含む融合ペプチドと前記へリックスペプチド固定化粒子とを混合する工程。
第1−1工程は、同一の容器内に各ヘリックスペプチド固定化粒子が一緒に存在する状態をつくることである。ここで前記粒子が容器内に存在する順番は問わない。また、前記各ヘリックスペプチド固定化粒子を懸濁する溶液は、粒子の非特異的な凝集を抑制し、かつアルファヘリカルコイルドコイル構造を形成できる溶液条件であれば特に限定されない。例えば、溶液中の塩は上記粒子の非特異的な凝集やアルファヘリカルコイルドコイル構造形成に影響を与える因子となる。そのような因子となる使用可能な塩としては塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等が挙げられ、0.01〜1Mの濃度で用いることができる。
第1−2工程は、第一のヘリックスペプチドと第一工程で混合したヘリックスペプチド固定化粒子とを共存させることにより、第一のヘリックスペプチドと粒子上の相補的なヘリックスペプチドの会合性を利用して、粒子を凝集させる工程である。
(2)一つの粒子表面に複数種類のヘリックスペプチドを配置する粒子を用いる場合、第1工程は複数種類のヘリックスペプチドを粒子上に配置した一種類のヘリックスペプチド固定化粒子と第一のへリックスペプチド融合ペプチドとの混合を行うだけでよい。この混合により、へリックスペプチド固定化粒子の凝集を行うことが可能である。
第2工程における粒子の凝集または分散を測定する方法としては、粒子形状を観察する方法、粒子懸濁液の光の散乱度または透過度を測定する方法が考えられる。具体的には目視や顕微鏡での観察、分光光度計を用いた測定が挙げられる。また、粒子の凝集体の沈降速度を観察することもできる。
本発明は、上述したヘリックスペプチド固定化粒子の凝集の検出工程を用いて、目的タンパク質の発現を検出する方法を包含する。この方法は、本発明にかかるヘテロ多量体である会合体を形成する第一のヘリックスペプチドと、第一のヘリックスペプチドに相補的なヘリックスペプチドの2以上とを用い、以下の(i)および(ii)の工程を有する。
(i)目的タンパク質を第一のヘリックスペプチドとの融合ペプチド(第一のへリックスペプチド融合ペプチド)として発現させる工程。
(ii)上記したヘリックスペプチド固定化粒子の凝集を検出する工程。
ここで、ヘリックスペプチド固定化粒子とは、第一のヘリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドを表面に配置した粒子であり、工程(ii)は次の工程を有する。すなわち、第一のヘリックスペプチド融合ペプチドと、粒子の表面に配置され、かつ第一のへリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチド(ヘリックスペプチド固定化粒子)とを混合する工程、および第一のヘリックスペプチドと相補的なヘリックスペプチドとの会合により生じる粒子の凝集を測定する工程、である。これらの工程については上で述べたとおりである。
(異種タンパク質の生産性確認)
本発明を用いた所望の異種タンパク質生産性の確認方法について述べる。所望の異種タンパク質のN末端もしくはC末端に第一のヘリックスペプチドを融合したペプチドをコードした遺伝子発現ベクターを構築し、所望の宿主(例えば、大腸菌や酵母、昆虫細胞等)に形質転換することによって生産することが可能である。所望の融合ペプチドは分泌シグナルペプチドをN末端に付加することによって培地中に分泌することもできるし、分泌シグナルをつけることなく菌体内での生産を行うこともできる。菌体内での生産によって封入体となった場合においては、巻き戻し工程を経ることにより可溶化させ、融合ペプチドを得ることも可能である。形質転換された宿主により生産される融合ペプチドは、分泌生産であれば培地中に、菌体内での生産であれば所望の菌体破砕用バッファー中で菌体破砕を行うことにより前記菌体破砕用バッファー中に可溶性であれば溶出し、不溶性であれば凝集体として存在する。前記不溶性の凝集体として生産された場合は、巻き戻し工程を経て可溶性タンパク質として回収することが可能である。この培地上清または菌体破砕用バッファー、または巻き戻し工程後の巻き戻しバッファーを、前記ヘリックスペプチド固定化粒子懸濁液に適宜混合することで、ヘリックスペプチド固定化粒子の凝集が起こる。ここで凝集の確認には、第一のヘリックスペプチドと、第一のヘリックスペプチドに相補的なヘリックスペプチド固定化粒子とが共存する場合に生じる粒子凝集に関してあらかじめ検量線を作成して用いることができる。この検量線により、前記粒子の凝集度を観察することにより第一のヘリックスペプチドとの融合ペプチドとして生産される異種タンパク質の生産性を確認することができる。このとき粒子材料に着色ラテックスポリマーを用いれば、粒子の凝集を目視にて確認することや、粒子懸濁液の光の散乱度または透過度を測定することによりタンパク質の生産性を簡便に観察できる。また、生細胞を用いない無細胞合成系において融合タンパク質を生産することもでき、前記無細胞合成系で生産された第一のヘリックスペプチドと融合した異種タンパク質の生産性確認も上記と同様の方法で確認することができる。
(第一のへリックスペプチドと融合した異種タンパク質の分取工程)
形質転換された宿主細胞による異種タンパク質の発現や無細胞合成系において、第一のヘリックスペプチドとの融合ペプチドとして発現される異種タンパク質を分取する工程は少なくとも以下の工程を含む。
(第1工程)第一のへリックスペプチド融合ペプチドとへリックスペプチド固定化粒子とを混合する工程。
(第2工程)第一のヘリックスペプチド融合ペプチドとヘリックスペプチド固定化粒子との会合により生じる凝集塊(以下粒子凝集体ともいう)を回収する工程。
(第3工程)粒子凝集体から異種タンパク質を分離する工程。
第1工程は、へリックスペプチド固定化粒子の凝集の検出工程に記載の通りである。具体的には第一のへリックスペプチドとの融合ペプチドとして発現される異種タンパク質がヘリックスペプチドの会合を通してヘリックスペプチド固定化粒子上に配位され、へリックスペプチド固定化粒子を凝集させる工程である。ここで、前記各ヘリックスペプチド固定化粒子と第一のヘリックスペプチド融合ペプチド溶液を懸濁する溶液は、粒子の非特異的な凝集を抑制し、かつアルファヘリカルコイルドコイル構造を形成できる溶液条件であれば特に限定されない。好ましくは前記融合ペプチドが構造を維持できる溶液条件であることである。例えば、前記第一のヘリックスペプチドと融合される目的のペプチドがタンパク質である場合、前記タンパク質が安定な構造を取ることができる一般的な溶液条件を選択することができる。タンパク質は中性条件下で一般に安定であることが多いが、酸性またはアルカリ性において安定に存在し、機能を発現するタンパク質も知られている。上記のように、生産するタンパク質の性質に合わせて適宜溶液条件を検討する。塩濃度やその他、バッファ組成に関しても同様に選択することができる。使用可能な塩としては塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等が挙げられ、0.01〜1Mの濃度で用いることができる。この粒子凝集工程は上記の通り、(1)一つの粒子上に一種類のヘリックスペプチドを配置する粒子を用いる場合と、(2)一つの粒子上に複数種類のヘリックスペプチドを配置する粒子を用いる場合で工程が異なる。前記(1)(2)どちらの凝集であっても異種タンパク質を分取するための以降の操作は同様である。ヘリックスペプチド固定化粒子材料の特性に応じた前記粒子の凝集度の確認を、目視や分光光度計を用いて行う。これにより、異種タンパク質との融合ペプチドとして存在する第一のヘリックスペプチドと粒子表面に配置される相補的なヘリックスペプチドとの会合度を確認することができ、粒子凝集体の回収工程前に所望の異種タンパク質の回収量を推定することができる。前記粒子の凝集度が小さい場合、異種タンパク質と融合した第一のヘリックスペプチドとヘリックスペプチド固定化粒子の混合時間を延長することによってヘリックスペプチドの会合を促すことが可能であり、異種タンパク質の回収率向上に寄与することができる。
第2工程は、上記のように凝集したヘリックスペプチド固定化粒子と第一のへリックスペプチド融合異種タンパク質とが形成する凝集塊(すなわち、粒子凝集体)を回収する工程である。
第3工程は、粒子凝集体から異種タンパク質を分離する工程である。この分離工程は、次の(1)または(2)の方法により行うことができる。
(1)第一のヘリックスペプチドと相補的なヘリックスペプチドとの会合を解離させることにより、粒子凝集体から第一のヘリックスペプチドと融合した状態で異種タンパク質を溶出する方法。
(2)第一のヘリックスペプチドと異種タンパク質との融合箇所を切断することにより異種タンパクを粒子凝集体から分離する方法。
(1)の方法では、上記タンパク質の生産性確認の箇所で記載したとおり、形成される粒子凝集体は異種タンパク質と融合した第一のヘリックスペプチドと、粒子表面に配置された第一のへリックスペプチドと相補的なヘリックスペプチドとの会合性により生じる。そのため、この粒子凝集体を適切な溶液で洗浄することによりへリックスペプチド固定化粒子から所望の融合ペプチドを溶出させて回収することができる。この洗浄工程は、以下のいずれかの工程を少なくともひとつ含む工程である。(a)塩を含有する溶液で、粒子凝集体を洗浄する工程を包含する塩洗浄工程、ならびに(b)有機溶媒を含有する溶液で、粒子凝集体を洗浄する工程を包含する有機洗浄工程、である。(a)の塩の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、リン酸ナトリウム、およびリン酸カリウム等が挙げられる。(b)の有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、トリフルオロエタノール、およびアセトニトリル等が挙げられる。洗浄後、選択されたポリペプチドは、溶出によってマトリックスから放出される。
(2)の方法では、融合ペプチドを構成するヘリックスペプチドと所望のタンパク質の間に所望のプロテアーゼ(タンパク質分解酵素、例えばトリプシン、FactorXa等)によって選択的に分解される配列を導入することで行うことができる。この場合、上記のようにヘリックスペプチド固定化粒子と会合した所望の融合ペプチドは所望のプロテアーゼ処理により分解され、粒子凝集体から溶離される。生産された所望のタンパク質の機能発現(活性等)がヘリックスペプチドの付加により抑制される場合はこのようなプロテアーゼ処理によって所望のタンパク質とヘリックスペプチドを分離することが好ましい。よって、このような分離を行った後に、所望タンパク質をゲルろ過クロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィーを用いて精製、回収する方法がより好ましい。
本発明は、上記した第一のへリックスペプチドと融合した異種タンパク質の分取工程を利用する、発現させた目的タンパク質を分取する方法を包含する。この方法は、本発明にかかるヘテロ多量体である会合体を形成する第一のヘリックスペプチドと、第一のヘリックスペプチドに相補的なヘリックスペプチドの2以上とを用い、以下の(i)および(ii)の工程を有する。
(i)目的タンパク質を第一のヘリックスペプチドとの融合ペプチド(第一のへリックスペプチド融合ペプチド)として発現させる工程。
(ii)先に述べた第一のへリックスペプチドと融合した異種(目的)タンパク質の分取工程。
よって、工程(ii)は、次の工程を有する。
・第一のヘリックスペプチド融合ペプチドと、粒子の表面に配置され、かつ第一のへリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチド(ヘリックスペプチド固定化粒子)とを混合する工程。
・第一のヘリックスペプチドと相補的なヘリックスペプチドとの会合により生じる粒子凝集体を回収する工程。
・粒子凝集体から目的タンパク質を分離する工程。
更に、本方法は、第一のヘリックスペプチドと相補的なヘリックスペプチドとの会合により生じる粒子の凝集を測定する工程を有していてもよい。この工程を行なうことにより粒子の凝集をモニターし、あらかじめ作成した検量線と照らし合わせることで、目的タンパク質の発現量を確認して、粒子凝集体を効率的に回収する時期を判断することができる。
(目的タンパク質の検出/分取キット)
本発明は、発現させた目的タンパク質を検出または/及び分取するためのキットであって、以下の遺伝子発現ベクターとヘリックスペプチドとを有するキットを包含する。すなわち、本キットが有する遺伝子発現ベクターは、宿主細胞において第一のへリックスペプチドとの融合ペプチドとして異種タンパク質を発現させるための遺伝子発現ベクターである。本キットが有するヘリックスペプチドは、所望の粒子表面に配置され、かつ前記第一のヘリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドである。第一のヘリックスペプチドおよび相補的なヘリックスペプチドは、互いの会合によりトリマー以上のヘテロ多量体を形成することを特徴とする。このキットを用いることによって、前記第一のヘリックスペプチドとの融合ペプチドとして発現される異種タンパク質の検出及び分取をすることが可能となる。また、前記キットを用いることで、前記第一のヘリックスペプチドに融合した所望のタンパク質が前記ヘリックス固定化粒子に結合した量を推定することが可能となる。具体的には、粒子の凝集を、目視や顕微鏡での観察、分光光度計を用いた粒子懸濁液の光の散乱度または透過度の測定、あるいは粒子の凝集体の沈降速度の観察により、検量線を作成して当該タンパク質量を求めることができる。
(標的物質を分取する方法)
本発明は、標的物質を分取する工程を利用する、試料中の標的物質を分取する方法を包含する。この方法は、本発明に係るヘテロ多量体である会合体を形成する第一のヘリックスペプチドと、第一のヘリックスペプチドに相補的なヘリックスペプチドの2以上とを用いて以下の(i)乃至(iv)の工程を行なう。
(i)試料と、標的物質を捕捉するための捕捉体によって修飾される第一のヘリックスペプチド
とを混合する工程。
(ii)捕捉体が標的物質を捕捉した状態の第一のヘリックスペプチドと、粒子の表面に配置され、かつ第一のへリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドとを混合する工程。
(iii)第一のヘリックスペプチドと相補的なヘリックスペプチドとの会合により生じる粒子の凝集体を回収する工程。
(iv)回収した粒子の凝集体から標的物質を分離する工程。
(標的物質の分取キット)
本発明は、標的物質を分取する方法を行うためのキットであって、以下のヘリックスペプチドを備えるキットを包含する。すなわち、標的物質を捕捉するための捕捉体によって修飾される第一のヘリックスペプチドと、粒子表面に配置され、かつ第一のヘリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドとを有する。第一のヘリックスペプチドおよび相補的なヘリックスペプチドは、互いの会合によりトリマー以上のヘテロ多量体を形成することを特徴とする。このキットを用いることで凝集した相補的なヘリックスペプチド固定化粒子を回収することで捕捉体によって捕捉された標的物質を分取することが可能となる。ここで第一のヘリックスペプチドおよび相補的なヘリックスペプチドには、目的タンパク質の検出および分取方法で説明したものを用いることができる。即ち、ヘリックスペプチドとして、アルファヘリックス構造を有するものを好適に用いることができ、ヘテロ多量体としては、例えば、ヘテロトリマーを形成するものを用いることができる。好ましくは、アルファヘリカルコイルドコイル構造のヘテロトリマーを形成するペプチドを用いることができ、例えば、配列番号1から3のアルファヘリックスペプチド構造を有するペプチドを好適に用いることができる。また、相補的なヘリックスペプチドを配置した粒子の構成についても目的タンパク質の検出および分取方法で説明したものを用いることができる。つまり、粒子表面に配置される相補的なヘリックスペプチドは同一粒子上において単一種類であってもよいし、同一粒子上において複数種類であってもよい。
本発明における捕捉体は例えば、標的物質に対する抗体からの抗体断片や、標的物質に対して親和性を有する親和性ペプチド等を利用することができる。前記抗体断片や前記親和性ペプチドの選択方法としては、例えば、M13ファージに代表されるウイルス外殻タンパク質や大腸菌、酵母等の細胞の表面に抗体断片を提示する表面提示法が利用できることが知られている。このような手法を用いることで、例えば生体に対して毒性のある物質または生体内で非自己として認識されない(免疫系の標的とならない)ような物質に対しても、高い特異性と親和性をもつ抗体断片を取得することが期待できる。また、このような抗体断片表面提示法は、遺伝子工学的な取扱いも比較的に容易であることが知られている。遺伝子工学的な操作により、抗体断片のアミノ酸変異/挿入/削除などを導入し、自然界に存在しない抗体断片を上記ウイルスや細胞表面に提示し、所望の標的物質に対して免疫法で得られるよりもより特異性、結合性の高い抗体断片を選択することも可能である。
以下、本発明の実施例としてヘテロトリマー形成アルファヘリカルペプチドを用いた金粒子の凝集実験及びその利用法について述べる。本発明は、本実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
(実施例1)へテロトリマーを形成するアルファヘリカルペプチドを用いた金粒子の凝集確認実験
(1)へテロトリマー形成アルファヘリカルペプチドを用いた金粒子の凝集実験
配列1〜3に記載のヘテロトリマーを形成するアルファヘリカルペプチドを含むペプチドを一般的なタンパク質受託合成サービスを利用して精製品を購入する。配列2及び配列3のアルファヘリカルペプチドをそれぞれ500nMとなるようPKTバッファー(10mM リン酸カリウム、0.1M 塩化カリウム、1% Triton X−100(pH7.0))1mlに懸濁する。それぞれのペプチド溶液に直径15nmの金ナノ粒子(British−Biocell製)を1.4×1012/mL(=2.3nM)濃度になるよう添加し、配列番号2及び配列番号3のアルファヘリカルペプチドをそれぞれ金粒子表面に提示する。続いて、10%ウシ血清アルブミンを加え、ブロッキングをした後、未反応のアルファヘリカルペプチド及びウシ血清アルブミンを除くため遠心分離する。上清を除去し、PKTバッファーで再懸濁し、アルファヘリカルペプチド固定化粒子を得る。
配列番号2を配置したアルファヘリカルペプチド固定化粒子と配列番号3を配置したアルファヘリカルペプチド固定化粒子とを混合し、混合溶液の吸収波長を分光光度計で測定すると525nmで極大を示す。この金コロイド溶液中に、配列番号1で示されるアルファヘリカルペプチドを500nMとなるよう添加し、室温で1時間ゆっくりと振とうする。溶液の吸収波長を分光光度計で測定すると長波長側へのピークシフト(極大値555nm付近)が観察される。また、配列番号1で示されるアルファヘリカルペプチドを添加する前の金コロイド溶液をコントロールとし、配列番号1で示されるアルファヘリカルペプチドを添加した後の吸光度を測定すると、555nm付近の吸光度変化が観察される。よって、長波長側へのピークシフト及び555nmでの吸光度変化から金コロイドの凝集が確認できる。
(2)ヘテロトリマーを形成しないペプチドを用いた金粒子の凝集実験
(1)の配列番号1で示されるアルファヘリカルペプチドを配列番号4で示されるペプチドに変更する以外は(1)と同様の実験を行う。配列番号4で示されるペプチドを添加後の吸収波長の極大は525nmのままであり、また555nmでの吸収増大も確認できないことから、ヘリックスペプチド固定化金粒子の凝集が起こらないことが確認できる。
(3)アルファヘリックス非修飾金粒子の凝集実験
配列番号2及び配列番号3のアルファヘリカルペプチドを修飾しない金粒子を用いること以外は(1)と同様の実験を行う。配列番号1で示されるアルファヘリカルペプチドを添加しても金コロイド溶液の吸収波長は525nm付近のままであり、また555nm付近での吸光度変化も確認できないことから、ヘリックスペプチド固定化金粒子の凝集が起こらないことが確認できる。(1)〜(3)の結果から、ヘテロトリマーを形成するアルファヘリカルペプチドが金粒子の凝集を引き起こすことが確認できる。
(実施例2)ヘテロトリマーを形成するヘリックスペプチドとヘテロダイマーを形成するヘリックスペプチドを用いた粒子の凝集実験の比較(対照実験)
(1)ヘテロダイマーを形成するアルファヘリカルペプチドを用いた金粒子の凝集確認実験
ヘテロダイマー会合体を形成するヘリックスペプチドの第一のヘリックスペプチドペプチド(配列番号13)をリンカー配列(配列番号14)のカルボキシ末端及びアミノ末端の両末端にタンデムに融合したペプチド(配列番号15)を用意する。一方、へテロダイマー会合体を形成するヘリックスペプチドの第二のヘリックスペプチドを含むペプチド(配列番号16)についても用意する。いずれのペプチドも一般的なタンパク質受託合成サービスを利用して精製品を購入する。アミノ酸配列番号15で記されるペプチドを500nMとなるようPKTバッファー1mlに懸濁する。夫々のペプチド溶液に直径15nmの金ナノ粒子を1.4×1012/mL(=2.3nM)濃度になるよう添加し、配列番号16のアルファヘリカルペプチドを金粒子表面に提示する。続いて、10%ウシ血清アルブミンを加え、ブロッキングをした後、未反応のアルファヘリカルペプチド及びウシ血清アルブミンを除くため遠心分離する。上清を除去し、PKTバッファーで再懸濁し、アルファヘリカルペプチド固定化粒子を得る。このアルファヘリカルペプチド固定化粒子の吸収波長を分光光度計で測定すると525nm付近に極大を示す。この固定化粒子の懸濁液に、配列番号15で示されるペプチドを500nMとなるよう添加し、室温で1時間ゆっくりと振とうする。溶液の吸収波長を分光光度計で測定すると長波長側へのピークシフト(極大値550nm付近)が観察される。また、配列番号1で示されるアルファヘリカルペプチドを添加する前の金コロイド溶液をコントロールとし、配列番号1で示されるアルファヘリカルペプチドを添加した後の吸光度を測定すると、550nm付近の吸光度変化が観察される。
(2)粒子凝集の比較
実施例1(1)と実施例2(1)の各々で観察されるピークシフトと吸光度変化を比較すると、実施例1(1)で観察されるピークシフト及び吸光度変化の方が、変化量が大きいことが確認できる。よって、ヘテロトリマーを形成するアルファヘリックスペプチドを用いた方が効率的な粒子凝集が可能であることが確認できる。実施例1に記載する通り、配列番号2あるいは3のペプチドを配置した夫々のアルファヘリカルペプチド固定化粒子を混合した液に配列番号1のアルファヘリカルペプチドを添加すると、アルファヘリカルペプチドが互いに会合すれば粒子の凝集が引き起こされる。それは、配列番号1のペプチドが配列番号2および3のペプチドの両方を含んでヘテロトリマーを形成するため、配列番号2および3のペプチドの夫々が固定される異なる粒子がペプチドの会合を通して結び付けられるためである。一方、ヘテロダイマーを形成するアルファヘリカルコイルドコイルの場合、実施例2の(1)に記載のようにリンカー配列のカルボキシ末端およびアミノ末端の両端に第一のアルファヘリックスペプチドを融合した融合ペプチドを用いる。そして、この融合ペプチドは、リンカー配列のカルボキシ末端またはアミノ末端に融合されたどちらかの第一のアルファヘリックスペプチドを介して、所望の粒子上に存在する第二のアルファヘリックスペプチドと会合し粒子上に固定化される。その後、前記粒子上に固定化された前記融合ペプチドが有する、前記粒子上に固定されない他の末端に存在する第一のアルファヘリックスペプチドは、最も近接する第二のアルファヘリックスペプチドと接触し、会合体を形成すると予想される。つまり、前記融合ペプチドの固定されない末端に融合されたアルファヘリックスペプチドにとって最も近接に存在する第二のアルファヘリックスペプチドは、前記融合ペプチドが固定された同一粒子上に存在する第二のアルファヘリックスペプチドと考えられる。そのため、前記融合ペプチドの両末端に融合された2つの第一のアルファヘリックスペプチドは、前記同一粒子上に存在する2つの第二のアルファヘリックスペプチドと接触し、会合体を形成する可能性が高い。その結果、前記融合ペプチドの両末端に融合される2つのアルファヘリックスペプチドは、各々が2つの粒子間で会合体を形成せず、粒子の凝集が生じない可能性がある。上記のような理由から、ヘテロトリマーを形成するアルファヘリックスペプチドを用いた方が効率的な粒子凝集が可能であると期待できる。
(実施例3)遊離のアルファヘリカルペプチドの添加量とアルファヘリカルペプチド固定化金粒子の凝集度の相関の確認
実施例1(1)で添加する配列番号1のアルファヘリカルペプチドの添加量を250nM及び100nMとすること以外は実施例1(1)と同様の実験を行う。配列番号1のアルファヘリカルペプチドの添加量が250nM及び100nMのとき、金コロイド溶液の555nm付近でのそれぞれの吸光度は濃度依存的に変化する。よって、金コロイド溶液の555nm付近の吸光度が配列1のアルファヘリカルペプチドの添加量に相関して変化することが確認できる。
上記実施例1及び実施例2の結果からヘテロトリマーを形成する第一のアルファヘリカルペプチドを用いた、前記第一のアルファヘリカルペプチドに相補的なアルファヘリカルペプチド固定化金粒子の凝集が可能であることが示される。そして、前記アルファヘリカルペプチド固定化金粒子の凝集が前記第一のアルファヘリカルペプチドの添加量に比例することを確認できる。次に、ヘテロトリマーを形成するアルファヘリカルペプチドを用いた異種タンパク質の生産性確認及び異種タンパク質の分取に関して以下に記載する。
(実施例4)へテロトリマー会合体を形成するヘリックスペプチドを用いたタンパク質の生産性確認
(1)融合ペプチドの生産工程
配列番号5で示されるアルカリフォスファターゼと配列番号1で示されるアルファヘリックスとをリンカー配列(GGGSGGGSGGGS)及びトロンビン認識配列(LVPRGS)を介して融合したポリペプチドの発現ベクターを構築する。もととなるベクターとしてpGEX−6P−1(Amersham Biosciences製)ベクターを用いる。酸配列番号1及び配列番号5の(ポリ)ペプチドをコードする遺伝子はそれぞれ配列番号6及び配列番号7に示す。上記融合ペプチド(配列番号8)をコードする遺伝子(配列番号9)は、遺伝子断片を取得する際によく行われるオーバーラップPCRにより取得する。取得される増幅遺伝子断片の5’末端にはBamHI、3’末端にはEcoRIの制限酵素サイトを付加しておき、pGEX−6P−1ベクターのフレームと合うように増幅遺伝子断片を導入する。その後、DNAシーケンサーにて配列を確認する。
上記のように構築されるポリペプチド発現ベクターにて大腸菌Escherichiacoli BL21を形質転換する。16時間インキュベーションを行った後、培養プレートからシングルコロニーをつつき取り、3mlの2×YT培地に植菌して、37℃で振とう培養(前培養)を行う。なお、2×YT培地の組成は、トリプトン16wt%、イーストエクストラクト10wt%、塩化ナトリウム5wt%であり、終濃度100μg/mlとなるようにアンピシリンを添加して用いる。
12時間後、その培養物の3mlを250mlの2×YT培地(終濃度100μg/mlのアンピシリンを含む)に加え、28℃で振とう培養を行う。培養液の吸光度OD600が0.8に達したところで、培養液に終濃度1mMとなるようにIPTG(イソプロピル−β―D−ガラクトピラノシド)を添加してポリペプチドの生産を誘導し、12時間培養する。
(2)融合ペプチドの生産性確認
IPTG誘導した大腸菌を集菌(8,000×g,2分、4℃)し、1/10量の4℃リン酸緩衝生理食塩水((PBS)NaCl;8g、Na2HPO4;1.44g、KH2PO4;0.24g、KCl;0.2g、精製水;1000ml)に再懸濁する。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(8,000×g、10分、4℃)して固形夾雑物を取り除く。実施例1(1)で調製する2種類のアルファヘリカルペプチド固定化金粒子の混合液1mlに上記遠心後の上清100μlを加え室温で1時間ゆっくりと振とうした後、分光光度計にて吸収を測定する。この場合、555nm付近にピークの極大が観察される。上記上清をPBSにて2倍、5倍に希釈し、同様の実験を行うと、555nm付近の吸光度は、上清添加量に相関して変化する。吸光度と上記融合ペプチドの添加量が相関関係を示し、吸光度から融合ペプチドの生産性を確認することができる。
(3)第一のアルファヘリカルペプチド非存在下での粒子の凝集に関する対照実験
配列番号1のアルファヘリカルペプチド遺伝子を導入してないpGEX−6P−1を用いること以外は(2)と同様の実験を行う。この場合、アルファヘリカルペプチド修飾金粒子の溶液をゆっくりと1時間振とうした後でも、525nmにピークの極大を示し粒子の凝集は観察されない。上記(2)及び(3)の結果から、本発明におけるキットを用いることにより、第一のヘリックスペプチドとの融合ペプチドとして生産される異種タンパク質の定量を行うことが可能である。
(実施例5)へテロトリマー会合体を形成するヘリックスペプチドを利用した融合タンパク質の精製実験
(1)実施例4の(1)(2)と同様にしてアルカリフォスファターゼとアルファヘリカルペプチドの融合ペプチドを生産し、生産した融合ペプチドを用いてアルファヘリカルペプチド修飾金粒子の凝集実験を行う。凝集沈殿した金粒子を遠心分離によって回収し、PBSバッファー2mlで2回洗浄を行った後、PBS1mlを添加する。この溶液に市販のトロンビン(1U)を添加し、22℃で12時間ゆっくりと振とうする。遠心分離後、上清をゲルろ過クロマトグラフィーにて精製し、110KDaのサイズの画分を分取する。前記画分をトリクロロ酢酸を用いて濃縮後、SDS−PAGEにより110KDaのサイズの単一バンドを確認し、所望の融合ペプチドが精製されることが確認できる。
(実施例6)抗卵白リゾチーム抗体と第一のへリックスペプチドとの融合ペプチドを用いた卵白リゾチームの分取実験
(1)融合ペプチドの生産及び精製工程
配列番号12の塩基配列を、遺伝子断片を取得する際によく行われるオーバーラップPCRにより取得する。配列番号12の塩基配列は、抗卵白リゾチーム抗体(HyHEL10)の一本鎖抗体断片(single chainFv;scFv)(配列番号10)と第一のヘリックスペプチド(配列番号1)を融合した融合ペプチド(配列番号11)をコードする。取得される増幅遺伝子断片の5’末端にはBamHI、3’末端にはEcoRIの制限酵素サイトを付加しておき、pGEX−6P−1ベクターのフレームと合うように増幅遺伝子断片を導入する。前記遺伝子発現ベクターを使用して形質転換を行う以外は、実施例2(1)と同様の手法で融合ペプチドの生産のための培養を行う。IPTG誘導した大腸菌を集菌(8,000×g,2分、4℃)し、1/10量の4℃リン酸緩衝生理食塩水((PBS)NaCl;8g、Na2HPO4;1.44g、KH2PO4;0.24g、KCl;0.2g、精製水;1000ml)に再懸濁する。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(8,000×g、10分、4℃)して固形夾雑物を取り除く。誘導され発現されたGST融合ポリペプチドをグルタチオン・セファロース4B(アマシャムバイオサイエンス(株)製)で業者推奨の方法にて精製する。使用するグルタチオン・セファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行う。すなわち、グルタチオン・セファロースを同量のPBSで3回洗浄(8,000×g、1分、4℃)した後、4%ウシ血清アルブミン含有PBSを同量加えて、4℃で1時間処理する。処理後、同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁する。前処理したグルタチオン・セファロース 40μlを、無細胞抽出液1mlに添加し、4℃で静かに攪拌する。前記の手順で、GST融合ポリペプチドをグルタチオン・セファロースに吸着させる。吸着後、遠心(8,000×g、1分、4℃)してグルタチオン・セファロースを回収し、400μlのPBSで3回洗浄する。その後、10 mMグルタチオン40μlを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着したGST融合ポリペプチドを溶出する。遠心(8,000×g、2分、4℃)して上清を回収した後、PBSに対して透析しグルタチオンを除去し、GST融合ポリペプチドを精製する。SDS−PAGEにより、GST融合ポリペプチドのバンドを確認する。
GST融合ポリペプチドをPreScissionプロテアーゼ(アマシャム・ファルマシア・バイオテク(株)製、5U)を用いて業者推奨の方法にて消化する。その後、グルタチオン・セファロースに通して前記プロテアーゼとGSTとを除去後、SDS−PAGEにより29kDaのバンドの確認を行う。
(2)実施例1(1)で作成したヘリックスペプチド固定化粒子2種をPKTバッファー中で混合し1.4×1012/mL(=2.3nM)のヘリックスペプチド固定化粒子懸濁液を1ml作成する。前記懸濁液に上記(1)で精製した融合ペプチドと卵白リゾチーム(HEL)をそれぞれ500nMとなるように添加する。室温でゆっくりと1時間振とう後、凝集塊を回収し、PBSバッファー5mlで3回洗浄する。0.1M Glycine−HCl(pH2.0)1.5mlにて懸濁し、その上清を1M Trisバッファー(pH7.5)1mlと混合する。前記混合液をトリクロロ酢酸を用いて濃縮しSDS−PAGE泳動を行うことによりHELのバンドが確認できる。
実施例4で示すように第一のヘリックスペプチドに標的物質を捕捉するための捕捉体を修飾する。それにより、前記第一のヘリックスペプチド及び前記ヘリックスペプチド固定化粒子と標的物質が共存する場合、ヘリックスペプチド固定化粒子の凝集塊を適切な溶出バッファーで処理することにより、標的物質を分取することができる。
本発明により、異種タンパク質生産を行うに際し、異種タンパク質との融合ペプチドとして発現される第一のヘリックスペプチドが、前記第一のヘリックスペプチドに相補的なヘリックスペプチド固定化粒子の凝集を効率的に行うことを可能とする。粒子凝集の度合いを観察することによって異種タンパク質の存在をモニターしながら分取することを可能とし、異種タンパク質の生産、精製分野に利用できる。
へテロトリマー会合体を形成するヘリックス構造の概念図である。

Claims (15)

  1. 目的タンパク質の発現を検出する方法であって、
    前記目的タンパク質を第一のヘリックスペプチドとの融合ペプチドとして発現させる工程と、
    前記融合ペプチドと、粒子の表面に配置され、かつ前記第一のへリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドとを混合する工程と、
    前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドとの会合により生じる前記粒子の凝集を測定する工程とを有し、
    前記会合体が、前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドの2以上とからなるヘテロ多量体であることを特徴とする目的タンパク質の発現の検出方法。
  2. 発現させた目的タンパク質を分取する方法であって、
    前記目的タンパク質を第一のヘリックスペプチドとの融合ペプチドとして発現させる工程と、
    前記融合ペプチドと、粒子の表面に配置され、かつ前記第一のへリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドとを混合する工程と、
    前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドとの会合により生じる前記粒子の凝集体を回収する工程と、
    前記凝集体から前記目的タンパク質を分離する工程とを有し、
    前記会合体が、前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドの2以上とからなるヘテロ多量体であることを特徴とする目的タンパク質の分取方法。
  3. 前記会合体の形成により生じる前記粒子の凝集を測定する工程を更に有し、
    前記凝集体を回収する工程を前記粒子の凝集をモニターしながら行うことを特徴とする請求項2に記載の目的タンパク質の分取方法。
  4. 発現させた目的タンパク質を検出または/及び分取するためのキットであって、
    宿主細胞において第一のへリックスペプチドとの融合ペプチドとして前記目的タンパク質を発現させるための遺伝子発現ベクターと、
    粒子の表面に配置され、かつ前記第一のヘリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドとを有し、
    前記会合体が、前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドの2以上とからなるヘテロ多量体であることを特徴とするキット。
  5. 前記粒子表面に配置された前記相補的なヘリックスペプチドが同一粒子上において単一種類であることを特徴とする請求項4に記載のキット。
  6. 前記粒子表面に配置された前記相補的なヘリックスペプチドが同一粒子上において複数種類であることを特徴とする請求項4に記載のキット。
  7. 前記ヘリックスペプチドがアルファヘリックスであることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載のキット。
  8. 請求項4に記載のキットを用いる請求項1に記載の目的タンパク質の発現を検出する方法。
  9. 請求項4に記載のキットを用いる請求項2に記載の目的タンパク質を分取する方法。
  10. 試料中の標的物質を分取する方法であって、
    試料と、標的物質を捕捉するための捕捉体によって修飾される第一のヘリックスペプチドとを混合する工程と、
    前記捕捉体が前記標的物質を捕捉した状態の前記第一のヘリックスペプチドと、粒子の表面に配置され、かつ前記第一のへリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドとを混合する工程と、
    前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドとの会合により生じる前記粒子の凝集体を回収する工程と、
    前記凝集体から前記標的物質を分離する工程とを有し、
    前記会合体が、前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドの2以上とからなるヘテロ多量体であることを特徴とする標的物質の分取方法。
  11. 試料中の標的物質を分取するためのキットであって、
    標的物質を捕捉するための捕捉体によって修飾される第一のヘリックスペプチドと、
    粒子の表面に配置され、かつ前記第一のヘリックスペプチドと会合体を形成し得る相補的なヘリックスペプチドとを有し、
    前記会合体が、前記第一のヘリックスペプチドと前記相補的なヘリックスペプチドの2以上とからなるヘテロ多量体であることを特徴とするキット。
  12. 前記粒子表面に配置された前記ヘリックスペプチドが同一粒子上において単一種類であることを特徴とする請求項11に記載のキット。
  13. 前記粒子表面に配置された前記ヘリックスペプチドが同一粒子上において複数種類であることを特徴とする請求項11に記載のキット。
  14. 前記ヘリックスペプチドがアルファヘリックスであることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載のキット。
  15. 請求項11に記載のキットを用いる請求項10に記載の標的物質を分取する方法。
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