本発明の第1実施形態を図1を参照して説明する。図1は本実施形態のイオン生成装置の概略構成を示す図である。なお、本実施形態は、本発明の第1の態様の実施形態である。
図1を参照して、本実施形態のイオン生成装置1aは、第1放電電極2および第2放電電極3から成る1つの放電電極対4と、2つの対向電極5,6と、高周波交流低電圧発生手段としての高周波交流低電圧電源7と、第1高周波交流高電圧発生手段8および第2高周波交流高電圧発生手段9とを備える。
第1放電電極2および第2放電電極3は、いずれも尖鋭な先端部を有する針状の導体(放電針)であり、その軸心を同方向(図1では上下方向)に向けて互いに隣接して配置されている。なお、これらの放電電極2,3は、図示しない絶縁部材に保持されている。また、これらの放電電極2,3の軸心の間隔は、例えば50mmである。
対向電極5,6は、本実施形態ではいずれもリング状に形成された導体である。対向電極5,6は、それぞれ第1放電電極2、第2放電電極3に対応しており、対向電極5は、放電電極2の先端部の周囲を囲むようにして、該放電電極2と同軸心に配置されている。同様に、対向電極6は、放電電極3の先端部の周囲を囲むようにして、該放電電極3と同軸心に配置されている。この場合、各対向電極5,6の半径、すなわち、各対向電極5,6の軸心と、それに対応する対向電極5,6との距離は、放電電極2,3の間隔よりも短いものとされている。従って、これらの対向電極5,6はそれぞれに対応する放電電極2,3に近接して設けられている。そして、これらの対向電極5,6はいずれも接地され、該対向電極5,6の電位が、接地電位とほぼ同等の電位に保持されている。なお、図示の例では、対向電極5,6が各別に接地されているが、それらの対向電極5,6を導線を介して互いに導通させた上で、共用のアース線により一括して接地するようにしてもよい。
補足すると、本実施形態では、対向電極5,6はリング状のものであるが、対向電極5,6の形態はこれに限られるものではない。例えば、放電電極2,3の両者の軸心方向と直交し、且つその両者の軸心を含む平面と平行な方向に延在するロッド状の2つの対向電極を、当該平面の両側で放電電極2,3に近接させて配置するようにしてもよい。この場合、それらの2つの対向電極は、放電電極2,3のそれぞれに対して共通の対向電極となる。また、単一の対向電極を放電電極2,3の両者に近接させて設け、その単一の対向電極を放電電極2,3で共用するようにしてもよい。
前記高周波交流低電圧電源7は、一対の出力端子7a,7bの間に高周波交流低電圧を出力するものである。その高周波交流低電圧は、本実施形態では正弦波であり、その周波数は、例えば70kHzの高周波である。また、その振幅は、例えば12kVである。この場合、出力端子7a,7bのうちの一方、例えば出力端子7bが接地されている。従って、高周波交流低電圧電源7は、出力端子7aから、接地電位を中心電位とする正弦波の高周波交流低電圧を出力する。
前記第1高周波交流高電圧発生手段8および第2高周波交流高電圧発生手段9は、本実施形態では、それぞれ圧電トランス10,11により構成されている。圧電トランス10,11は、昇圧率(入力電圧に対する出力電圧の比率)などの仕様が互いに同一のものであり、それぞれ、一対の入力端子12a,12bと出力端子13とを有する。各圧電トランス10,11は、入力端子12a,12bの間に前記高周波交流低電圧を印加したとき、それを所定の昇圧率で昇圧してなる高周波交流高電圧(本実施形態では正弦波)を入力端子12a,12bの一方と、出力端子13との間に出力する。
この場合、入力端子12aの電位を基準電位(入力される高周波交流低電圧の中心電位)としたとき、該基準電位に対する出力端子13の電位は、入力端子12bの電位と同位相の高周波交流高電圧(基準電位を中心電位とする交流高電圧)となる。すなわち、入力端子12aに対する出力端子13の電位は、入力端子12aに対する入力端子12bの電位が正極性または負極性となる各半周期の期間で、該入力端子12bの電位と同極性の電位になるように変化する交流高電圧となる。また、入力端子12bの電位を基準電位としたとき、該基準電位に対する出力端子13の電位は、入力端子12aの電位と逆位相の高周波交流高電圧となる。すなわち、入力端子12bに対する出力端子13の電位は、入力端子12bに対する入力端子12aの電位が正極性または負極性となる各半周期の期間で、該入力端子12aの電位と同極性の電位になるように変化する交流高電圧となる。
本実施形態では、圧電トランス10は、その入力端子12aを基準電位として、該入力端子12aが高周波交流低電圧電源7の出力端子7bに接続され(接地され)、入力端子12bが高周波交流低電圧電源7の出力端子7aに接続されている。これにより、圧電トランス10は、接地電位を中心電位として、前記高周波交流低電圧(高周波交流低電圧発生電源7の出力端子7aの電位)をこれと同位相に昇圧してなる高周波交流高電圧(第1高周波交流高電圧)を該圧電トランス10の出力端子13から出力する。そして、該圧電トランス10の出力端子13が第1放電電極2に接続されている。これにより、該第1放電電極2に接地電位(≒対向電極5,6の電位)を振幅の中心電位とする前記第1高周波交流高電圧が印加されるようになっている。
一方、圧電トランス11は、圧電トランス10の場合とは逆に、その入力端子12bを基準電位として、該入力端子12bが高周波交流低電圧電源7の出力端子7bに接続され(接地され)、入力端子12aが高周波交流低電圧電源7の出力端子7aに接続されている。これにより、圧電トランス11は、接地電位を中心電位として、前記高周波交流低電圧をこれと逆位相に昇圧してなる高周波交流高電圧(第2高周波交流高電圧)を該圧電トランス11の出力端子13から出力する。そして、該圧電トランス11の出力端子13が第2放電電極3に接続されている。これにより、該第2放電電極3に接地電位(≒対向電極5,6の電位)を振幅の中心電位とする前記第2高周波交流高電圧が印加されるようになっている。
なお、第1高周波交流高電圧と第2高周波交流高電圧とは、いずれも共通の高周波交流低電圧を圧電トランス10,11により同一の昇圧率で昇圧したものである。従って、それらの振幅および周波数は、互いに実質的に同一となる。その振幅は、本実施形態では12kVである。また、その周波数は、前記高周波交流低電圧の周波数(本実施形態では70kHz)と同一である。そして、第1高周波交流高電圧および第2高周波交流高電圧は、それぞれ前記高周波交流低電圧と同位相、逆位相のものであるので、互いに半周期の位相差を有するものとなる。また、本実施形態では、各圧電トランス10,11に入力する高周波交流低電圧は正弦波であるので、第1高周波交流高電圧および第2高周波交流電圧の波形も、ひずみの小さい正弦波となる。このため、第1高周波交流高電圧と前記第2高周波交流高電圧とは、その一方の高周波交流高電圧の波形の正負を反転させてなる波形と他方の高周波交流高電圧の波形とが実質的に合致するものとなる。ひいては、任意の時刻における第1高周波交流高電圧および第2高周波交流電圧のそれぞれの瞬時値の絶対値は、互いにほぼ一致するものとなる。
また、放電電極対4の上方には、図示を省略するファンなどの送風手段が設けられており、その送風手段によって、図1の矢印Yで示す気流が放電電極対4を経由して流されるようになっている。その気流Yの向きは、各放電電極2,3の軸心方向でその基端側から先端側に向かう向きであり、放電電極2,3の先端側に後述するように配置される除電対象物Wに向かう気流である。なお、気流Yは、空気流でよいが、例えば窒素ガスの気流であってもよい。
補足すると、図1中のC2、C4、C5は浮遊静電容量を示しており、これについては後述する。
以上のように構成されたイオン生成装置1aにより、半導体デバイスなどの除電対象物Wの除電を行なう場合には、図1に示す如く、該除電対象物Wが前記気流Yの下流側で放電電極対4の放電電極2,3の先端に対向するように配置される。そして、この状態で、イオン生成装置1aの運転が行なわれる。
このとき、第1放電電極2に、圧電トランス10から、前記した如く、接地電位を中心電位とする第1高周波交流高電圧が印加される。その第1高周波交流高電圧によって第1放電電極2と対向電極5との間で第1放電電極2の先端部に集中するような電界(交流の電界)が形成される。その電界によって、第1放電電極2の先端部近傍でコロナ放電が発生し、そのコロナ放電によって、正のイオン、負のイオンが第1高周波交流高電圧の周波数と同等の高周波で交互に生成される。正のイオンは、第1高周波交流高電圧が接地電位に対して正極性となる期間に生成され、負のイオンは、第1高周波交流高電圧が接地電位に対して負極性となる期間に生成される。
同時に、第2放電電極3に、圧電トランス11から、前記した如く、接地電位を中心電位とする第2高周波交流高電圧が印加される。それにより、第1放電電極2側と同様に、第2放電電極3の先端部近傍でコロナ放電が発生し、そのコロナ放電によって、正のイオン、負のイオンが第2高周波交流高電圧の周波数(=第1高周波交流高電圧の周波数)と同等の高周波で交互に生成される。
なお、前記したように、第1高周波交流高電圧と第2高周波交流高電圧とは、互いに半周期の位相差を有する。このため、第1放電電極2側で正のイオンが生成される期間では、同時に第2放電電極3側で負のイオンが生成される。また、第1放電電極2側で負のイオンが生成される期間では、同時に第2放電電極3側で正のイオンが生成される。
上記の如く第1放電電極2の先端部近傍で交互に生成された正のイオンおよび負のイオンの一部は、第1放電電極2との反発力や気流Yによって除電対象物Wに向かって移動する。同様に、第2放電電極3の先端部近傍で交互に生成された正のイオンおよび負のイオンの一部は、第2放電電極3との反発力や気流Yによって除電対象物Wに向かって移動する。そして、除電対象物Wに到達した正のイオンおよび負のイオンによって、該除電対象物Wの帯電電荷が中和され、該除電対象物Wの除電がなされる。
この場合、各放電電極2,3の先端部近傍での正のイオン、負のイオンの生成は高周波(本実施形態では70kHzの高周波)で交互に行なわれる。さらに、それらの正のイオン、負のイオンは、気流Yによる撹乱を受けながら、除電対象物Wに向かって移動する。
このため、除電対象物Wと放電電極対4との間で、正のイオン群と、負のイオン群とが離散的に分布するようなことが防止され、除電対象物Wと放電電極対4との間で、正のイオンと負のイオンとが比較的高密度で混合されたようなイオン群が形成される。そして、そのイオン群の各イオンが発生する電界ノイズが、巨視的には相殺されるようになる。その結果、生成されて除電対象物Wに向かう正および負のイオンから除電対象物Wへの電界ノイズを低減できる。
また、第1放電電極2および第2放電電極3にそれぞれ印加される第1高周波交流高電圧および第2高周波交流高電圧は、前記したように互いに半周期の位相差を有する。また、それらの高周波交流高電圧は、接地電位を中心電位として、互いにほぼ同一の振幅を有する正弦波である。このため、各放電電極2,3への高周波交流高電圧の印加に起因してそれぞれ発生する電界は、放電電極対4の近傍を除いて、相殺されるようになる。その結果、放電電極対4による除電対象物Wに対する電界ノイズを十分に低減できる。
より具体的には、図1に示す如く、第1放電電極2と除電対象物Wとの間の浮遊静電容量をC4、第2放電電極3と除電対象物Wとの間の浮遊静電容量をC5、接地電位に対する除電対象物Wの浮遊静電容量をC2とおく。また、第1高周波交流高電圧および第2高周波交流高電圧の振幅、および角周波数をそれぞれVp、ωとおく。このとき、任意の時刻tにおける除電対象物Wの接地電位に対する誘導電位Viは、次式(1)により表される。なお、ここでは、第1高周波交流高電圧および第2高周波交流高電圧の両者の値が0となる時刻をt=0の時刻としている。
Vi=((C4/(C4+C2))・Vp・sin(ω・t)
+((C5/(C5+C2))・Vp・sin(ω・t+π)……(1)
式(1)の右辺の第1項は、第1高周波交流高電圧を第1放電電極2に印加することに起因する電界による誘導電位であり、第2項は、第2高周波交流高電圧を第2放電電極3に印加することに起因する電界による誘導電位である。
ここで、C4≒C5であり、また、sin(ω・t+π)=−sin(ω・t)であるから、式(1)によって、Vi≒0となる。従って、除電対象物Wには、実質的に放電電極対4から電界ノイズが作用しないこととなる。
以上のように、本実施形態によれば、生成されるイオンや放電電極対4から除電対象物Wに作用する電界ノイズを十分に低減できる。その結果、除電対象物Wが半導体デバイスであっても、該半導体デバイスの誤作動や損傷が生じるのを防止しつつ、該半導体デバイスの除電を効果的に行なうことができる。
次に、本発明の第2実施形態を図2を参照して説明する。図2は本実施形態のイオン生成装置1bの概略構成を示す図である。なお、本実施形態の説明では、第1実施形態と同一の構成要素については、第1実施形態と同一の参照符号を用いて詳細な説明を省略する。そして、第1実施形態と相違する事項を中心に説明する。また、本実施形態は、本発明の第1の態様の実施形態である。
本実施形態のイオン生成装置1bは、放電電極対4と、その放電電極対4を構成する第1放電電極2および第2放電電極3にそれぞれ近接して設けられた対向電極5,6との組を複数備えている。各放電電極対4とそれに対応する対向電極5,6との各組において、該放電電極対4の放電電極2,3の構成、対向電極5,6の構成、およびそれらの配置構成は、第1実施形態と同じである。
この場合、イオン生成装置1bに備えた複数の放電電極対4は、各第1放電電極2および第2放電電極3の軸心を同方向に向けて、該軸心と直交する方向に1列に並ぶように配列されている。また、本実施形態では、対向電極5,6は、互いに隣り合うもの同士が導線14によって接続されている。そして、これらの対向電極5,6の全てが、単一のアース線15により一括して接地されている。なお、対向電極5,6は各別に接地してもよい。また、対向電極5,6は、リング状のものに限らず、前記第1実施形態で補足説明したロッド状の対向電極を使用してもよい。
また、本実施形態のイオン生成装置1bは、前記第1実施形態と同一の高周波交流低電圧電源7(高周波交流低電圧発生手段)を備えると共に、各放電電極対4にそれぞれ対応する第1高周波交流高電圧発生手段8および第2高周波交流高電圧発生手段9の組を、放電電極対4の個数と同数備えている。各放電電極対4に対応する第1高周波交流高電圧発生手段8および第2高周波交流高電圧発生手段9は、前記第1実施形態のものと同一であり、それぞれ圧電トランス10,11により構成されている。
この場合、各放電電極対4に対応する圧電トランス10,11のそれぞれと、該放電電極対4の第1放電電極2および第2放電電極3のそれぞれとの接続構成、並びに、各圧電トランス10,11と高周波交流低電圧電源7との接続構成は、第1実施形態と同じである。
また、第1実施形態と同様に、図示しないファンなどの送風手段が備えられ、その送風手段によって、各放電電極対4を経由して、その上方から下方に向かう気流Yが生成されるようになっている。
以上説明した如く構成されたイオン生成装置1bでは、除電対象物の除電を行なうときの各放電電極対4毎のイオン生成動作は前記第1実施形態と同様に行なわれる。このため、本実施形態のイオン生成装置1bにおいても、生成されるイオンや各放電電極対4から除電対象物に作用する電界ノイズを十分に低減できる。その結果、除電対象物が半導体デバイスであっても、該半導体デバイスの誤作動や損傷が生じるのを防止しつつ、該半導体デバイスの除電を効果的に行なうことができる。
なお、本実施形態では、各放電電極対4毎に、圧電トランス10,11の組を備えるようにしたが、圧電トランス10,11の出力容量が十分に確保できるような場合には、1つの圧電トランス10から2つ以上の放電電極対4の第1放電電極2に第1高周波交流高電圧を印加すると共に、1つの圧電トランス11から2つ以上の放電電極対4の第2放電電極3に第2高周波交流高電圧を印加するようにして、圧電トランス10,11の組の個数を放電電極対4の個数よりも少なくしてもよい。
次に、本発明の第3実施形態を図3を参照して説明する。図3は本実施形態のイオン生成装置1cの概略構成を示す図である。なお、本実施形態の説明では、第1実施形態と同一の構成要素については、第1実施形態と同一の参照符号を用いて詳細な説明を省略する。そして、第1実施形態と相違する事項を中心に説明する。また、本実施形態は、本発明の第1の態様の実施形態である。
本実施形態のイオン生成装置1cは、2つの放電電極対4,4を備えている。各放電電極対4を構成する第1放電電極2および第2放電電極3は第1実施形態のものと同じである。
この場合、本実施形態では、一方の放電電極対4の放電電極2,3および他方の放電電極対4の放電電極2,3は、筒状の絶縁部材16に取り付けられている。より詳しくは、各放電電極対4の放電電極2,3は、筒状の絶縁部材16の外周面から該絶縁部材16の直径方向に突出し、且つ、絶縁部材14の周方向に所定角度の位相差を存して互いに隣接するように絶縁部材16に取り付けられている。本実施形態では、各放電電極対4の放電電極2,3は、絶縁部材16の周方向に90度の位相差を存して互いに隣接されている。また、一方の放電電極対4の放電電極2,3のそれぞれと、他方の放電電極対4の放電電極2,3のそれぞれとが、絶縁部材16の周方向で180度の位相差を有して配列されている。換言すれば、一方の放電電極対4の第1放電電極2と他方の放電電極対4の第1放電電極2とが、絶縁部材16の直径方向の1つの軸線上で該絶縁部材16の外周面から互いに反対の向きに突出し、且つ、一方の放電電極対4の第2放電電極3と他方の放電電極対4の第1放電電極3とが、絶縁部材16の直径方向で第1放電電極2,2の軸心に対して直交する軸線上で該絶縁部材16の外周面から互いに反対の向きに突出するように絶縁部材16に取り付けられている。
なお、筒状の絶縁部材16の周方向における各放電電極対4の放電電極2,3の位相差は、90度よりも小さくてもよい。
また、イオン生成装置1cは、接地された単一の対向電極17を有する。この対向電極17は、リング状に形成された導体である。この場合、対向電極17の半径は、前記絶縁部材16の軸心から各放電電極2,3の先端までの距離よりも若干大きいものとされている。そして、該対向電極17は、その内周部を各放電電極対4の放電電極2,3の先端に近接させて対向させるようにして、前記絶縁部材16と同軸心に配置されている。
なお、対向電極17は、筒状のものであってもよい。また、各放電電極2,3毎に、第1実施形態と同様の対向電極を備えるようにしてもよい。
イオン生成装置1cは、さらに、前記第1実施形態と同一の高周波交流低電圧電源7(高周波交流低電圧発生手段)を備えると共に、各放電電極対4にそれぞれ対応する第1高周波交流高電圧発生手段8および第2高周波交流高電圧発生手段9の組を2組備えている。各放電電極対4に対応する第1高周波交流高電圧発生手段8および第2高周波交流高電圧発生手段9は、前記第1実施形態のものと同一であり、それぞれ圧電トランス10,11により構成されている。
この場合、各放電電極対4に対応する圧電トランス10,11のそれぞれと、該放電電極対4の第1放電電極2および第2放電電極3のそれぞれとの接続構成、並びに、各圧電トランス10,11と高周波交流低電圧電源7との接続構成は、第1実施形態と同じである。なお、この場合、各放電電極対4の放電電極2,3のそれぞれと、該放電電極対4に対応する圧電トランス10,11のそれぞれとを接続するための接続線は、例えば絶縁部材16の内部を通して配線される。
また、本実施形態では、筒状の絶縁部材16の内部には、その一端側から図示しないファンなどの送風手段により空気(あるいは窒素ガスなど)が供給され、それにより、放電電極対4,4を経由して絶縁部材16内を流れる気流が生成されるようになっている。その気流の向きは、例えば図3の紙面の表側から裏側の向きである。
以上説明した如く構成されたイオン生成装置1cでは、除電対象物の除電を行なうときに、図示を省略する除電対象物が、前記絶縁部材16の軸心方向で、放電電極対4,4の下方(図3の紙面の裏側)に配置され、この状態で、イオン生成装置1cの運転が行なわれる。このとき、各放電電極対4毎のイオン生成動作は前記第1実施形態と同様に行なわれる。このため、本実施形態のイオン生成装置1cにおいても、生成されるイオンや各放電電極対4から除電対象物に作用する電界ノイズを十分に低減できる。その結果、除電対象物が半導体デバイスであっても、該半導体デバイスの誤作動や損傷が生じるのを防止しつつ、該半導体デバイスの除電を効果的に行なうことができる。
なお、本実施形態では、放電電極対4を2つ備えたが、さらに多くの放電電極対を備えるようにしてもよい。また、圧電トランス10,11の出力容量が十分に確保できるような場合には、一組の圧電トランス10,11のそれぞれから、各放電電極対4の第1放電電極2、第2放電電極3に高周波交流高電圧を印加するようにしてもよい。
次に、本発明の第4実施形態を図4を参照して説明する。図4は本実施形態のイオン生成装置1dの概略構成を示す図である。なお、本実施形態の説明では、第1実施形態と同一の構成要素については、第1実施形態と同一の参照符号を用いて詳細な説明を省略する。そして、第1実施形態と相違する事項を中心に説明する。また、本実施形態は、本発明の第2の態様の実施形態である。
本実施形態のイオン生成装置1dは、第1電極18および第2電極19から成る1つの電極対20を備える。本実施形態では、第1電極18および第2電極19は、いずれも尖鋭な先端部を有する針状の導体、すなわち、前記第1実施形態の放電電極2,3と同様の放電針であり、放電電極として機能するものである。そして、電極18,19は、その先端を互いに近接させて対向させた状態で同軸心に配置されている。これらの電極18,19の先端の間隔は、例えば10mmである。
この場合、電極18,19は、本実施形態では、筒状の絶縁部材21に取り付けられている。より詳しくは、電極18,19は、筒状の絶縁部材21の内周面から該絶縁部材21の軸心に向かって、該絶縁部材21の直径方向に突出するように絶縁部材21に取り付けられている。
なお、電極18,19は、必ずしも同軸心に配置する必要はなく、それらの軸心が、絶縁部材21の軸心上で交差するように配置してもよい。また、電極18,19は必ずしも、筒状の絶縁部材21に取り付ける必要はなく、例えば、各別の絶縁部材に取り付けるようにしてもよい。
イオン生成装置1dは、さらに、高周波交流低電圧電源7(高周波交流低電圧発生手段)、第1高周波交流高電圧発生手段8、および第2高周波交流高電圧発生手段9を備えている。これらは、第1実施形態のものと同一であり、第1高周波交流高電圧発生手段8および第2高周波交流高電圧発生手段9は、それぞれ圧電トランス10,11により構成されている。
この場合、高周波交流低電圧電源7と、圧電トランス10,11との接続構成は、前記第1実施形態と同じである。また、圧電トランス10と第1電極18との接続構成、並びに、圧電トランス11と第2電極19との接続構成は、それぞれ、前記第1実施形態における圧電トランス10と第1放電電極2との接続構成、並びに、圧電トランス11と第2放電電極19との接続構成と同じである。
また、本実施形態では、筒状の絶縁部材21の内部には、その一端側から図示しないファンなどの送風手段により空気(あるいは窒素ガスなど)が供給され、それにより、図4に矢印Yで示す如く、電極対20を経由して絶縁部材21の内部を流れる気流Yが生成されるようになっている。その気流Yの向きは、図示の例では下向きである。
補足すると、本実施形態では、後述する如く、圧電トランス10,11の昇圧率は、前記第1実施形態のものよりも低くてもよく、例えば、前記第1実施形態のものの半分程度の昇圧率のものでもよい。
以上のように構成されたイオン生成装置1dにより、半導体デバイスなどの除電対象物Wの除電を行なう場合には、図4に示す如く、該除電対象物Wが前記気流Yの下流側で絶縁部材21の端部に対向するように配置される。そして、この状態で、イオン生成装置1dの運転が行なわれる。
このとき、圧電トランス10から第1電極18に、接地電位を中心電位とする第1高周波交流高電圧が印加されると同時に、圧電トランス11から第2電極19に、接地電位を中心電位とする第2高周波交流電圧が印加される。ここで、第1高周波交流高電圧と第2高周波交流高電圧とは、前記第1実施形態で説明した如く半周期の位相差を有するので、第1電極18と第2電極19との間の電位差は、第1高周波交流高電圧および第2高周波交流高電圧の振幅の2倍の振幅を有する交流電圧となる。
そして、この電極18,19は、いずれも放電針であるので、第1電極18と第2電極19との電位差によって、各電極18,19の先端部に集中するような電界(交流の電界)が形成される。その電界によって、各電極18,19の先端部近傍でコロナ放電が発生し、そのコロナ放電によって、正のイオン、負のイオンが第1および第2の高周波交流高電圧と同等の高周波で交互に生成される。すなわち、第1電極18が接地電位に対して正極性、負極性となる期間において、それぞれ該第1電極18の先端部近傍で正のイオン、負のイオンが生成される。同様に、第2電極19が接地電位に対して正極性、負極性となる期間において、それぞれ該第2電極19の先端部近傍で正のイオン、負のイオンが生成される。なお、第1高周波交流高電圧と第2高周波交流高電圧とは、互いに半周期の位相差を有するので、第1電極18の先端部近傍で正のイオンが生成される期間では、同時に第2電極19の先端部近傍で負のイオンが生成される。また、第1電極18の先端部近傍で負のイオンが生成される期間では、同時に第2電極19の先端部近傍で正のイオンが生成される。
上記の如く第1電極18の先端部近傍で交互に生成された正のイオンおよび負のイオンの一部は、第1電極2との反発力や気流Yによって除電対象物Wに向かって移動する。同様に、第2電極19の先端部近傍で交互に生成された正のイオンおよび負のイオンの一部は、第2電極19との反発力や気流Yによって除電対象物Wに向かって移動する。そして、除電対象物Wに到達した正のイオンおよび負のイオンによって、該除電対象物Wの帯電電荷が中和され、該除電対象物Wの除電がなされる。
この場合、各電極18,19の先端部近傍での正のイオン、負のイオンの生成は高周波(本実施形態では70kHzの高周波)で交互に行なわれる。さらに、それらの正のイオン、負のイオンは、気流Yによる撹乱を受けながら、除電対象物Wに向かって移動する。
このため、第1実施形態と同様に、除電対象物Wと電極対20との間で、正のイオンと負のイオンとが比較的高密度で混合されたような状態になり、ひいては、各イオンが発生する電界ノイズが、巨視的には相殺される。その結果、生成された正および負のイオンによる除電対象物Wに対する電界ノイズを低減できる。
また、第1電極18および第2電極19にそれぞれ印加される第1高周波交流高電圧および第2高周波交流高電圧は、前記したように互いに半周期の位相差を有し、また、接地電位を中心電位として、互いにほぼ同一の振幅を有する正弦波である。このため、第1実施形態と同様に、各電極18,19への高周波交流高電圧の印加に起因してそれぞれ発生する電界は、電極対20の近傍を除いて、相殺されるようになる。その結果、電極対20による除電対象物Wに対する電界ノイズを十分に低減できる。
さらに、本実施形態では、各電極18,19でコロナ放電を発生させる電界は、両電極18,19間の電位差に起因する電界であり、その電位差は前記したように第1高周波交流高電圧および第2高周波交流高電圧の振幅の2倍の振幅を有する交流電圧である。そして、当該電位差の振幅が、各電極18,19でコロナ放電を発生させる上で十分な電圧になっていればよい。このため、第1高周波交流高電圧および第2高周波交流高電圧の振幅は、前記第1実施形態の場合の半分程度の振幅で十分である。従って、本実施形態の圧電トランス10,11として、第1実施形態のものよりも最大出力電圧や昇圧率が小さい圧電トランスを使用することができ、ひいては、圧電トランス10,11の小型化、コスト低減を図ることができる。
補足すると、本実施形態では、電極対20の両者の電極18,19が放電電極として機能するようにしたが、電極18,19のいずれか一方のみが、放電電極として機能するようにしてもよい。この場合の例を変形例として、図5(a)〜(c)を参照して説明する。図5(a)〜(c)はそれぞれ、その変形例における電極対20を示している。
例えば、図5(a),(b)に示すように、第2電極19だけを針状の放電針にすると共に、第1電極18を円柱状の電極にして、該第1電極18でコロナ放電が発生しにくいか、もしくは発生しないようにしてもよい。図5(a)の変形例では、円柱状の第1電極18の外周面が第1電極18の先端に対向し、図5(b)の変形例では、円柱状の第1電極18の一端面が第1電極18の先端に対向する。また、例えば、図5(c)に示すように、第2電極19だけを針状の放電針にすると共に、第1電極18を、その第2電極19に対向する部分に丸みを持たせた棒状の電極にしてもよい。
これらの例の電極対20を使用した場合には、基本的には、第2電極19の先端部近傍だけでコロナ放電が発生して、該先端部近傍で正負のイオンが交互に生成される。この場合であっても、正負のイオンは、第1および第2高周波交流高電圧の周波数と同等の高周波で交互に生成され、また、気流Yによる撹乱を受けながら、除電対象物Wに向かって移動するので、前記第4実施形態の場合と同様に、除電対象物Wと電極対20との間で、正のイオンと負のイオンとが比較的高密度で混合され、ひいては、生成された正および負のイオンによる除電対象物Wに対する電界ノイズを低減できる。また、各電極18,19にそれぞれ印加される第1高周波交流高電圧および第2高周波交流高電圧は、前記第4実施形態の場合と同じであるので、電極対20による除電対象物Wに対する電界ノイズを十分に低減できる。
なお、図5(a)〜(c)では、第2電極19だけを放電電極としたが、第1電極18だけを放電電極としてもよいことはもちろんである。
次に、本発明の第5実施形態を図6を参照して説明する。図5は本実施形態のイオン生成装置1eの概略構成を示す図である。なお、本実施形態の説明では、第1実施形態または第4実施形態と同一の構成要素については、第1実施形態または第4実施形態と同一の参照符号を用いて詳細な説明を省略する。そして、第1実施形態または第4実施形態と相違する事項を中心に説明する。また、本実施形態は、本発明の第2の態様の実施形態である。
本実施形態のイオン生成装置1eは、2つの電極対20,20を備えている。各電極対20を構成する第1電極18および第2電極19は第4実施形態のものと同じであり、いずれも放電針である。
この場合、本実施形態では、一方の電極対20の電極18,19および他方の電極対20の電極18,19は、次のように筒状の絶縁部材21に取り付けられている。なお、絶縁部材21は、前記第4実施形態のものと同じであるが、図6に示す絶縁部材21は、その軸心に直交する横断面で表している。
各電極対20の電極18,19は、筒状の絶縁部材21の外周面から該絶縁部材21の軸心に向かって該絶縁部材21の直径方向に突出し、且つ、絶縁部材21の周方向に所定角度の位相差を存して互いに隣接するように絶縁部材21に取り付けられている。本実施形態では、各電極対20の電極18,19は、絶縁部材21の周方向に90度の位相差を存して配置され、電極18,19の先端が近接されている。また、一方の電極対20の放電電極18,19のそれぞれと、他方の電極対20の放電電極18,19のそれぞれとが、絶縁部材21の周方向で180度の位相差を有して配列されている。換言すれば、一方の電極対20の第1電極18と他方の電極対20の第1電極18とが、絶縁部材21の直径方向の1つの軸線上で該絶縁部材21の内周面から該絶縁部材21の軸心に向かって突出し、且つ、一方の電極対20の第2電極19と他方の電極対21の第2電極19とが、絶縁部材21の直径方向で第1電極18,18の軸心に対して直交する軸線上で該絶縁部材21の内周面から該絶縁部材21の軸心に向かって突出するように絶縁部材21に取り付けられている。
なお、筒状の絶縁部材21の周方向における各電極対20の電極18,19の位相差は、90度よりも小さくてもよい。
イオン生成装置1eは、さらに、高周波交流低電圧電源7(高周波交流低電圧発生手段)、第1高周波交流高電圧発生手段8、および第2高周波交流高電圧発生手段9を備えている。これらは、第1実施形態または第4実施形態のものと同一であり、第1高周波交流高電圧発生手段8および第2高周波交流高電圧発生手段9は、それぞれ圧電トランス10,11により構成されている。
この場合、高周波交流低電圧電源7と、圧電トランス10,11との接続構成は、前記第1実施形態と同じである。また、圧電トランス10と第1電極18との接続構成、並びに、圧電トランス11と第2電極19との接続構成は、それぞれ、前記第1実施形態における圧電トランス10と第1放電電極2との接続構成、並びに、圧電トランス11と第2放電電極3との接続構成と同じである。
なお、前記第4実施形態と同様に、圧電トランス11,12の昇圧率は、第1実施形態のものよりも小さくてよい。
また、筒状の絶縁部材21の内部に、気流が生成されることは、前記第4実施形態と同じである。
以上説明した如く構成されたイオン生成装置1eでは、除電対象物の除電を行なうときの各電極対20毎のイオン生成動作は前記第4実施形態と同様に行なわれる。このため、本実施形態のイオン生成装置1eにおいても、生成されるイオンや各放電電極対4から除電対象物に作用する電界ノイズを十分に低減できる。その結果、除電対象物が半導体デバイスであっても、該半導体デバイスの誤作動や損傷が生じるのを防止しつつ、該半導体デバイスの除電を効果的に行なうことができる。また、第4実施形態と同様に、圧電トランス10,11として、第1実施形態のものよりも最大出力電圧や昇圧率が小さい圧電トランスを使用することができ、ひいては、圧電トランス10,11の小型化、コスト低減を図ることができる。
なお、本実施形態では、電極対20を2つ備えたが、さらに多くの電極対を備えるようにしてもよい。また、圧電トランス10,11の出力容量が十分に確保できるような場合には、一組の圧電トランス10,11のそれぞれから、各電極対20の第1電極18、第2電極19に高周波交流高電圧を印加するようにしてもよい。また、各電極18,19は必ずしも、筒状の絶縁部材21に取り付ける必要はなく、例えば、各別の絶縁部材に取り付けるようにしてもよい。また、例えば、前記図5に示した変形例と同様に、各電極対20の電極18,19のいずれか一方だけを放電電極とするようにしてもよい。
また、以上説明した各実施形態では、高周波交流低電圧並びに、第1および第2高周波交流高電圧の周波数を70kHzに設定したが、その周波数は、10kHz〜100kHzの範囲内、望ましくは、30kHz〜70kHzの範囲内で設定すればよい。
次に、前記第1実施形態のイオン生成装置1aに関する動作試験について図7〜図10を参照して説明する。
本願発明者は、前記した各実施形態のイオン生成装置1a〜1eのうち、例えばイオン生成装置1aに関する動作試験(第1および第2の動作試験)を行なった。また、その動作試験結果と比較するために、比較例のイオン生成装置の動作試験を行なった。図7は、イオン生成装置1aの第1の動作試験に関するシステム構成の概要を示す図、図8はイオン生成装置1aの第2の動作試験に関するシステム構成の概要を示す図、図9は比較例のイオン生成装置Xの概略構成を示す図、図10は該動作試験により得られたデータを示すグラフである。なお、図7および図8では、イオン生成装置1aは、その要部構成のみを図示している。
図7を参照して、イオン生成装置1aの第1の動作試験は、帯電プレートモニタ装置50を使用した動作試験である。この帯電プレートモニタ装置50は、その本体筐体部51上に、複数の絶縁部材52を介して支持された金属製(導電性)の帯電プレート53を有する。帯電プレート53は、150mm角の金属プレート(20pF)である。そして、帯電プレートモニタ装置50は、その本体筐体部51内に、+1000Vまたは−1000Vの直流高電圧(接地電位に対する電圧)を帯電プレート53に印加可能な高圧電源54と、帯電プレート53の電位(接地電位に対する電位)を測定する電位測定器55と、計時タイマ56とを備えている。
イオン生成装置1aの第1の動作試験では、図7に示す如く、帯電プレート53の上方に、該帯電プレート53と所定の間隔DESを存して放電電極対4が位置するように帯電プレートモニタ装置50とイオン生成装置1aとを設置する。そして、この状態で、帯電プレートモニタ装置50を高圧電源54によって所定の電位(以下、初期帯電電位という)に帯電させた後、イオン生成装置1aの運転を行って、帯電プレート53の除電を行う。このとき、帯電プレート53の電位の時間的変化率(微小時間当たりの電位変化量または電位の時間微分値)を電位測定器55と計時タイマ56とを使用して計測する。
そして、この第1の動作試験では、帯電プレート53とイオン生成装置1aの放電電極対4との間隔DES(図7参照)を、100mm、150mm、200mm、250mmの4種類に設定した。また、それぞれ間隔DESに対して、帯電プレート53の初期帯電電位を+1000Vと−1000Vとの2種類に設定し、その初期帯電電位のそれぞれに対応して計測された時間的変化率から、平均除電電流INAを測定した。ここで、帯電プレート53を+1000Vに帯電した場合と−1000Vに帯電した場合とのそれぞれおける電位の時間的変化率の計測値の絶対値をV+'(≡|dV/dt|V=+1000V)、V-'(≡|dV/dt|V=−1000V)とおき、帯電プレート53の接地電位に対する静電容量をCpとおいたとき、上記平均除電電流INAは、次式(2)により定義されるものであり、イオン生成装置1aから、帯電プレート53に供給される平均イオン電流を意味する。なお、Cpは、20pFである。
INA=((V+'/Cp)+(V-'/Cp))/2 ……(2)
この平均除電電流INAは、イオン生成装置1aの放電電極対4から帯電プレート53(+1000Vまたは−1000V)に単位時間当たりに供給される正および負のイオン量の平均値、換言すれば、除電に寄与するイオンの単位時間当たりの平均的な生成量を意味する。
また、図8を参照して、イオン生成装置1aの第2の動作試験は、電界センサ60を使用した動作試験である。この電界センサ60は、図8に示す如く、その本体筐体部61上に金属製(導電性)のアンテナプレート62を有する。アンテナプレート62は、直径45mmの円板である。本体筐体部61には、MOSFET63(以下、単にFET63という)と、抵抗素子64,65と、定電圧の直流電源66とを備える。FET63のドレインは直流電源66の正極に接続され、FET63のソースが抵抗素子65を介して直流電源66の接地された負極に接続されている。また、FET66ゲートとソースとの間に抵抗素子64が接続されている。そして、FET6のゲートがアンテナプレート62に接続(導通)されている。
この電界センサ60は、アンテナプレート62に作用する電界の強度に応じた正弦波状の電圧Voを抵抗素子64の両端間に発生し、その電圧Voを電界強度の検出信号として出力する。なお、直流電源66の電圧は例えば5V、抵抗素子65の抵抗値は例えば300Ωである。また、抵抗素子64は、電界センサ60の感度を調整するためのものであり、その抵抗値は、本動作試験では例えば2kΩである。
この電界センサ60を使用した第2の動作試験では、図8に示す如く、アンテナプレート62の上方に、該アンテナプレート62と所定の間隔DESを存して放電電極対4が位置するように電界センサ60とイオン生成装置1aとを設置する。そして、この状態で、イオン生成装置1aの運転を行って、電界センサ60の出力電圧Vo(より詳しくは、Voの振幅値あるいはpeak-to-peak値)を測定する。この出力電圧Voが高いほど、アンテナプレート62の位置での電界強度が高い(電界ノイズが大きい)ことを意味する。
そして、この第2の動作試験では、アンテナプレート62とイオン生成装置1aの放電電極対4との間隔DESを、前記第1の動作試験の場合と同一の4種類の値に設定した。
なお、イオン生成装置1aの放電電極対4の放電電極2,3の間隔DEE(図7を参照)は50mm、第1および第2高周波交流高電圧の周波数は70kHz、気流Yの速度(風速)は0.3m/sとした。
また、図9を参照して、比較例のイオン生成装置Xは、イオン生成装置1aと同じ放電電極対4、対向電極5,6、高周波交流低電圧電源7、および圧電トランス10,11を備えるものである。ただし、このイオン生成装置Xは、圧電トランス11と、高周波交流低電圧電源7との接続構成だけが前記イオン生成装置1aと相違している。
すなわち、圧電トランス11の入力端子12aが高周波交流低電圧電源7の出力端子7bに接続されて接地され、入力端子12bが高周波交流低電圧電源7の出力端子7aに接続されている。これ以外は、イオン生成装置1aと全く同じである。
従って、比較例のイオン生成装置Xは、両圧電トランス10,11を互いに同じ形態で、高周波交流低電圧電源7に接続したものである。このため、比較例のイオン生成装置Xででは、放電電極2,3の両者に互いに同位相の高周波交流高電圧が印加されるようになっている。このようなイオン生成装置Xは、従来の一般的なイオン生成装置に相当するものである。
この比較例のイオン生成装置Xの動作試験では、イオン生成装置1aの動作試験(第1および第2の動作試験)と全く同様に、帯電プレートモニタ装置50を使用した平均除電電流INAの測定と、電界センサ60の出力電圧Voの測定とを行なった。
なお、比較例のイオン生成装置Xの放電電極対4の放電電極2,3の間隔、高周波交流高電圧の周波数、および気流Yの風速は、イオン生成装置1aと同じである。
以降の説明では、イオン生成装置1aの動作試験で得られた平均除電電流、電界センサ60の出力電圧にそれぞれINA(1a)、Vo(1a)を付し、比較例のイオン生成装置Xの動作試験で得られた平均除電電流、電界センサ60の出力電圧にそれぞれINA(X)、Vo(X)を付する。
図10は、以上説明したイオン生成装置1aの動作試験により得られたデータを示すグラフである。図中のグラフaは、INA(1a)とINA(X)との比(=INA(1a)/INA(X))と、DESとの関係を示すグラフ、グラフbは、Vo(1a)とVo(X)との比(=Vo(1a)/Vo(X))と、DESとの関係を示すグラフ、グラフcは、INA(1a)/Vo(1a)とINA(X)/Vo(X)との比(=(INA(1a)/Vo(1a))/(INA(X)/Vo(X)))と、DESとの関係を示すグラフである。ここで、平均除電電流INAは、放電電極対4から帯電プレート53に単位時間当たりに供給される平均的なイオン量を意味し、出力電圧Voは、アンテナプレート62の位置における電界ノイズの強度を示すものであるから、INA(1a)/Vo(1a)、INA(X)/Vo(X)は、それぞれイオン生成装置1a、XのS/N比に相当するものである。そこで、以降、INA(1a)/Vo(1a)、INA(X)/Vo(X)をS/N比という。
図10のグラフaに見られるように、INA(1a)/INA(X)は、0.96〜0.8であった。従って、イオン生成装置1aの平均除電電流INA(1a)と、比較例のイオン生成装置Xの平均除電電流INA(X)とは、概ね同等であることが判る。一方、グラフbに見られるように、Vo(1a)/Vo(X)は、0.18〜0.23であった。従って、アンテナプレート62の位置での電界ノイズは、比較例のイオン生成装置Xに対して、イオン生成装置1aでは、概ね1/5に低減されていることが判る。そして、グラフcに見られるように、イオン生成装置1aのS/N比と、イオン生成装置XのS/N比との比に相当する(INA(1a)/Vo(1a))/(INA(X)/Vo(X))は、5.1〜3.4であった。このことから、第1実施形態のイオン生成装置1aの如く、半周期の位相差を有する第1高周波交流高電圧および第2高周波交流高電圧をそれぞれ放電電極対4の第1放電電極2および第2放電電極3に印加することによって、電界ノイズを効果的に低減できることが判る。
次に、前記第4実施形態のイオン生成装置1dの動作試験について図11および図12を参照して説明する。
本願発明者は、例えば、前記第4実施形態のイオン生成装置1dについても、動作試験(第1および第2の動作試験)を行なった。図11はイオン生成装置1dの第1の動作試験に関するシステム構成の概要を示す図、図12は該動作試験により得られたデータを示すグラフである。なお、図11では、イオン生成装置1dは、その要部構成のみを図示している。
図11を参照して、イオン生成装置1dの第1の動作試験は、前記帯電プレートモニタ装置50を使用した動作試験である。この第1の動作試験では、帯電プレート53の上方に、該帯電プレート53と所定の間隔DPSを存して前記イオン生成装置1dの筒状の絶縁部材21の下端(気流Yの出口)が位置するように帯電プレートモニタ装置50とイオン生成装置1dとを設置する。また、イオン生成装置1dの絶縁部材21の下端の周囲に、接地された導電性の接地プレート70を配置し、この接地プレート70によって、絶縁部材21の外部の電界が帯電プレート53に作用するのを遮蔽する。この状態で、前記したイオン生成装置1aの第1の動作試験の場合と同様に、帯電プレートモニタ装置50およびイオン生成装置1dを動作させ、平均除電電流INAを測定する。
このイオン生成装置1dの第1の動作試験では、該帯電プレート53と筒状の絶縁部材21の下端との間隔DPSは、100mmに設定した。また、この第1の動作試験では、絶縁部材21の内部に流す気流Yの速度(風速)を0m/s、1m/s、2m/s、3m/s、4m/s、5m/sの5種類に設定した。
また、イオン生成装置1dの第2の動作試験は、図11のシステムにおいて、帯電プレートモニタ装置50の代わりに、前記電界センサ60を使用した動作試験である。この第2の動作試験では、前記電界センサ60のアンテナプレート62の上方に、該アンテナプレート62と所定の間隔DPSを存して前記イオン生成装置1dの筒状の絶縁部材21の下端(気流Yの出口)が位置するように電界センサ60とイオン生成装置1dとを設置する。そして、この状態で、前記したイオン生成装置1aの第2の動作試験の場合と同様に、イオン生成装置1dを動作させ、電界センサ60の出力電圧Voを測定する。なお、イオン生成装置1dの第2の動作試験では、前記電界センサ60の前記抵抗素子64の抵抗値は1MΩに設定した。このため、イオン生成装置1aの第2の動作試験の場合と電界センサ60の感度が相違している。
そして、この第2の動作試験では、アンテナプレート62とイオン生成装置1dの絶縁部材21の下端との間隔DPSを、帯電プレートモニタ装置50を使用した第1の動作試験と同一(100mm)に設定した。また、絶縁部材21の内部に流す気流Yの風速を、第1の動作試験の場合と同一の5種類の値に設定した。
なお、イオン生成装置1dの電極対20の電極18,19の先端の間隔DEE(図11を参照)は10mm、第1および第2高周波交流高電圧の周波数は70kHz、絶縁部材21の内径は38mmである。また、前記接地プレート70は、例えば200mm角の方形板である。
図12は、以上説明したイオン生成装置1dの動作試験により得られたデータを示すグラフである。図中のグラフdは、平均除電電流INAと気流Yの速度との関係を示すグラフ、グラフeは、電界センサ60の出力電圧Voと気流Yの速度との関係を示すグラフ、グラフfは、イオン生成装置1dのS/N比(=INA/Vo)と気流Yの速度との関係を示すグラフである。グラフd,eに見られるように、気流Yの速度が0m/Sから5m/sまで上昇するに伴い、帯電プレート53への単位時間当たりのイオンの平均的な供給量を示す平均除電電流INAが増加する一方、電界ノイズの強度を示す電界センサ60の出力電圧Voは、十分に低レベルでほぼ一定に維持される。このため、グラフfに見られるように、気流Yの速度が上昇するに伴い、S/N比(=INA/Vo)が高くなる。このことから、イオン生成装置1dの如く、電極対20の箇所に除電対象物に向かう気流を発生させることで、イオン生成装置1dの除電性能を高めることができることが判る。
1a〜1e…イオン生成装置、2,3…放電電極、4…放電電極対、5,6…対向電極、7…高周波交流低電圧電源(高周波交流低電圧発生手段)、8,9…高周波交流高電圧発生手段、10,11…圧電トランス、18,19…電極、20…電極対、Y…気流、W…除電対象物。