JP2008225188A - 発光表示パネルの駆動方法および駆動装置 - Google Patents

発光表示パネルの駆動方法および駆動装置 Download PDF

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Abstract

【課題】発光素子(有機EL発光素子等)の表示履歴による劣化特性のばらつきを抑え、表示品位を向上可能な発光表示パネルの駆動方法を提供する。
【解決手段】表示階調に応じて有機EL発光素子の駆動信号の信号値とデューティーを決定し、表示階調に応じた駆動信号を表示パネルの有機EL発光素子に印加する。駆動信号の信号値とデューティーを決定する場合には、より低階調の表示ほどより大きな信号値で、より小さいデューティーとなるように駆動信号を決定する。また、その際、発光素子の寿命特性に基づきディスプレイパネル内の発光素子の劣化速度が合うように駆動信号の信号値とデューティーを決定するとよりよい。
【選択図】図8

Description

本発明は、発光表示パネルの駆動方法および駆動装置に関するものである。
発光表示パネルには、プラズマディスプレイパネル(PDP)や、電子放出素子からの放出電子により発光する発光体を備えた、電界放出表示パネル(FED)および表面伝導型電子放出表示パネル(SED)や、エレクトロルミネッセンス表示パネルなどがある。
このうち、エレクトロルミネッセンス表示パネル(EL表示パネル)は、無機発光材料を用いた無機EL表示パネルと有機発光材料を用いた有機EL表示パネルとに大きく分類される。
また、各画素を構成する個別のEL素子を駆動する方法は大きくは2つに分けられる。即ち、一定電流或いは一定電圧をEL素子に印加する直流(DC)駆動と、電流或いは電圧パルスにより瞬間的に一定時間だけ発光させるパルス駆動である。
前者のDC駆動は各画素に個別にスイッチング回路を持つアクティブマトリクス型の発光表示パネルに一般的に用いられているものである。各画素においては、後続のフレームにおいて異なる輝度に描きかえられるまでは、前のフレームと同じ輝度で光りつづける。そして、各画素のEL素子は電流制御による駆動方式と電圧制御による駆動方式のどちらかにより発光制御される。
駆動方式により画素の画素回路が異なり、電圧制御方式の場合には画素回路は比較的簡単になるが発光輝度の制御が難しい。電流制御の場合には発光輝度の制御がしやすい反面、画素回路が複雑になる。
一方、パルス駆動は、各画素に画素回路が無く縦横の電極配線の駆動のみで制御する単純マトリクス駆動と、前述したアクティブマトリクス駆動のいずれにおいても採用されうる。各画素は短時間に発光し、消灯後はその後次のフレームまでは発光させない。発光輝度は1フレーム時間で平均化されてしまうため、同じ輝度で表示させるためにはDC駆動の場合よりも高輝度で発光させる必要がある。パルス駆動の場合にも電圧制御方式と電流制御方式がある。
最近では有機EL発光材料として燐光を用いたものが開発され効率が向上しているため、微小な電流でも高輝度に発光するようになってきた。これは消費電力の向上という面では有利だが、微小駆動電流の制御という点では困難さを増している。パルス駆動方式はDC駆動方式に比べて高輝度で発光させる必要があるため駆動電流値が大きい。従って、特許文献1に開示されているように高効率の有機EL発光素子の駆動制御にはパルス駆動方式を用いることも考えられている。
特開2002−50484号公報
上述したように発光素子を用いた発光表示パネルの場合には、発光輝度の劣化がある。例えば、有機EL素子は一般的に総発光量に応じて輝度が低下していく。
劣化の進み方が色によって異なると、時間経過とともに色が変化してしまう。また、発光表示パネルの画面中で場所によって劣化の早さが異なると、時間経過とともに画面全体の輝度の均一さが損なわれてくる。
このように、発光表示パネルの焼きつきへの影響を考えた場合には、輝度劣化の問題はより深刻となる。
発光発光表示パネルは総発光量に応じて輝度が低下していく。一つの発光表示パネルの画面中においても、画素毎に過去の表示履歴が異なると、それらの画素毎に輝度低下の程度も異なってくる。画面上である画素が他の画素よりも高輝度で光っている累積時間が長いと、その画素の劣化が他の画素よりも早く進んでしまう。
このため、互いに表示履歴の異なる複数の画素を同じ電圧または電流で制御して発光させても、互いに異なる輝度になってしまう。これが、表示内容を切替えてもそれまでの画像が残るという、いわゆる焼きつきの原因である。焼きつきは表示品位を著しく悪くする。焼きつきは表示履歴に依存する問題であるから、製造直後つまり初期の劣化特性が色やパネル内の場所によらず均一であったとしても解決することが出来なかった。
本発明の目的は、発光表示パネルの表示履歴による劣化特性のばらつきを抑えることができ、表示品位を向上させることが可能な発光表示パネルの駆動方法および発光表示パネル用の駆動装置を提供することにある。
本発明の第1の骨子は、複数の発光素子を含む画素を有する発光表示パネルの駆動方法において、表示階調に応じて前記発光素子の駆動信号の信号値とデューティーを決定する決定工程と、前記信号値と前記デューティーが決定された前記駆動信号を前記発光素子に印加する印加工程とを含み、前記決定工程において、相対的に低い表示階調に応じた駆動信号は、相対的に高い表示階調に応じた駆動信号より、前記信号値が大きく、かつ、前記デューティーが小さくなるように前記駆動信号を決定することを特徴とする。
また、本発明の第2の骨子は、複数の発光素子を含む画素を有する発光表示パネル用の駆動装置において、表示階調に応じて前記発光素子の駆動信号の信号値とデューティーを決定する決定回路と、前記信号値と前記デューティーが決定された前記駆動信号を前記発光素子に印加する印加回路とを含み、前記決定回路は、相対的に低い表示階調に応じた駆動信号は、相対的に高い表示階調に応じた駆動信号より、前記信号値が大きく、かつ、前記デューティーが小さくなるように前記駆動信号を決定することを特徴とする。
本発明によれば、発光素子の発光履歴の違いによる劣化特性の素子間ばらつきを無くす或いは低減することができる。そのため、発光表示パネルの焼きつき現象を抑えられ、表示品位を向上させることができる。
次に、発明を実施のための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の一実施形態は、図1の(a)に、複数の発光素子を含む画素2を有する発光表示パネル3とその駆動装置4を有する表示装置を示す。駆動装置は、表示階調Dataに応じて発光素子の駆動信号Sdの信号値とデューティーを決定する決定回路(決定工程)5と、信号値とデューティーが決定された駆動信号Sdを発光素子に印加する印加回路(印加工程)6とを含む。
決定回路(決定工程)5は、相対的に低い表示階調に応じた駆動信号が、相対的に高い表示階調に応じた駆動信号より、信号値が大きく、かつ、デューティーが小さくなるように駆動信号、詳しくは駆動信号の波形を決定する。ここでいうデューティーとは1フレームにおける最大発光期間に対する実効発光期間の比、後述するb/aである。
ここで、表示階調Dataは、例えば256レベルの輝度に対応した映像信号などでありうる。
相対的に低い表示階調に応じた駆動信号とは、例えば、輝度レベル1〜254の範囲内から選択される表示階調に応じた第1の駆動信号である。相対的に高い表示階調に応じた駆動信号とは、輝度レベル2〜255の範囲内から選択される表示階調に応じた第2の駆動信号である。そして、第1の駆動信号の輝度レベルが第2の駆動信号の輝度レベルより低い場合に、第1の駆動信号の信号値を第2の駆動信号の信号値より大きく、かつ、第1の駆動信号のデューティーを第2の駆動信号のデューティーより小さくする。このとき、最大発光期間内における発光輝度の時間積分値は輝度レベルに応じた値となるように、駆動信号値とデューティーを決定する。
本発明に用いられる発光表示パネルとしては、PDP、FED、SED、ELD(エレクトロルミネッセンス表示パネル)などがある。本実施形態では、ELDを用いた場合を例に挙げて説明する。
有機EL素子の駆動方法としてはDC(直流)駆動とパルス駆動がある。所定の輝度を表示するために流す電流値はDC駆動で最も小さく、パルス駆動のデューティーを小さくするにつれて大きくなる。なお、本実施形態においてはアクティブマトリクス方式等の有機EL表示パネルを例に挙げる。この表示パネルには複数の画素が配列され、各画素は、有機EL素子と、それを駆動するための画素回路とを有する。
図1の(b)は、一つの画素2の回路構成を示している。一つの画素2は、駆動トランジスタ11とそのゲート容量12とゲート容量に電圧信号を書き込むためのアドレススイッチとしてのスイッチングトランジスタ13とを有する。14は行を選択(アドレス)するための行選択制御線、15は電圧信号が供給されるデータ信号線である。16は発光素子1の発光期間、つまりデューティーを変更可能に決定するスイッチングトランジスタであり、17は発光期間を決定する制御パルスが供給される発光制御線である。
相対的に高い表示階調、例えば輝度レベルが4〜7の範囲内から選択される表示階調の場合には、発光素子1に流れる駆動電流が小さくなるように、駆動トランジスタ11のゲート容量に書き込む電圧信号を比較的高くする。この場合は駆動トランジスタとしてpチャンネルFETを想定している。
一方、輝度レベルが1〜3の範囲内から選択される表示階調の場合には、発光素子1に流れる駆動電流が、輝度レベルが4〜7の場合より大きくなるように、駆動トランジスタ11のゲート容量に書き込む電圧信号をより低くする。この時同時に、スイッチングトランジスタ16のオン・オフを制御して、輝度レベルが相対的に高く、発光素子1に流れる駆動電流が相対的に小さい場合には、それを補償するようにデューティーを高くする。
このとき、最大発光期間内における発光輝度の時間積分値は輝度レベルに応じた値となるように、決定回路5が駆動信号値(電圧信号値、駆動電流値)とデューティーを決定する。そして、印加回路6が決定された電圧信号値でゲート容量に書き込み、発光制御線17を制御して決定されたデューティーで発光素子1を駆動する。
そして、決定工程においては、発光素子の寿命特性に基づいて、発光素子の劣化速度の差が所定の範囲内に収まるように、駆動信号の信号値とデューティーを決定する。よって、図1の(b)に示すトランジスタ回路も印加回路の一部とみることもできる。
図2はDC駆動の場合の電流と輝度の関係を模式的に示す図である。有機EL素子は図2に示すように発光輝度は有機EL素子に流れる駆動電流にほぼ比例する。パルス駆動の場合は発光が間欠的なので発光サイクルの一周期で発光輝度を平均化したものが、ここでいう発光輝度に相当する。
図3はパルス駆動とDC駆動の発光量(発光輝度)と時間の関係を示す。図3(a)はパルス駆動、図3(b)はDC駆動の場合である。平均輝度がL1、駆動パルスのデューティーがb/aの場合には、ピーク輝度はL2=(a/b)×L1となる。デューティーが50%の場合、DC駆動の場合の発光量と同じ発光量を得るためには、ピーク輝度を2倍(=100/50)にしなければならない。
次に、輝度劣化について説明する。有機EL素子は電極により有機発光材料にキャリアであるホール及び電子を注入し、発光材料内で再結合させることにより光を発する。ところが、一般的に電気伝導特性を有する有機物は、これらキャリアを無機半導体の様にバンド理論に従って流す原理とは異なる。つまり、電気伝導性の有機物を構成する有機分子やそれら分子が構成する複合体の一部のサイト(トラップ)にキャリアを取り込み、受け渡す様な仕組みによりキャリアを流す。
有機分子或いはその複合体はキャリアを取り込むとエネルギー的に励起状態になるため分解や変質の可能性が高くなる。これは、即ち、電荷によってラジカルイオン等が生成され、電気化学的変化を起こしていることが予想され、多くの場合これによって発光量が減少してしまう。これは、例えば、文献(IEEE J. on Selected Topics in Quantum Electronics, 8, p.362 (2002))に記載されている。
図4は一定の電流で有機EL素子を駆動しつづけた時の輝度の低下の様子を示す。横軸は電流を流しつづけた時間、縦軸は初期輝度L0に対する輝度Lの比(L/L0)である。多くの有機EL素子は図4に示すように時間に対して指数関数的な劣化特性を有しており、経験上以下の式(1)で近似できることが判った。

…式(1)
ここで、Lは輝度、L0は初期輝度、τは時定数を示す。βは0<β≦1の定数、tは発光時間である。この式の時定数τの値は印加電流と一定の関係があり、経験的に以下の式(2)で表される。
τ=k(I)−α …式(2)
ここで、Iは印加電流、kは比例係数、αは定数(1<α≦2)である。
輝度低下の時定数が式(2)のように電流に依存するということは、高輝度表示と低輝度表示では劣化の速さが違うことを意味する。同じデューティーのパルス駆動を行った場合には、高輝度表示では大きな電流を要するので、低輝度低電流の場合よりも時定数は短く、劣化は速い。
初期に50%と100%の輝度レベルを表示させた同じ構成の2つの有機EL素子をそのまま、つまり電流を変えることなく一定時間駆動して表示を行う。この場合、一定時間の駆動の後、α=1と仮定して、それら2つの素子の特性を比較すると、50%の階調レベルの輝度を表示し続けた素子(試料1)は45%の輝度に低下する。即ち10%の輝度低下率を示す。それに対し、電流を2倍にして100%の階調レベルの輝度を表示した素子(試料2)は約80%の輝度まで低下する。即ち20%の輝度低下率を示す。
その後、試料1,2の両EL素子に同じ電流、例えば、100%の輝度レベルに相当する電流を流すと、試料1は90%の輝度で発光するのに対し、試料2は80%の輝度で発光する。即ち、表示履歴により輝度差が生じる。
図5はDC駆動で、最高輝度で発光させた場合とその半分の輝度で発光させた場合の輝度低下を比較して示す図である。図5のL1は最高輝度、L1/2はその半分の輝度の場合の特性を示す。また、横軸は時間、縦軸は同様に初期輝度L0に対する輝度Lの比(L/L0)である。図5に示すように寿命は輝度半分の方が最高輝度の場合よりも3.5倍程度大きいことが分かる。
図6は同じ条件で作製した2つの素子を、一方はDC駆動、他方はパルス駆動(50%デューティー)で同じ輝度で発光させ、その後の経過時間に対する輝度の低下を比較して示すものである。横軸は実際の経過時間を取ってある。縦軸は同様に初期輝度L0に対する輝度Lの比(L/L0)である。
図6に示すように同じ輝度で比較すると、パルス駆動の方がDC駆動よりも実経過時間での劣化が速い。αが1なら、時定数は1:2で、デューティーによる違いを打ち消すから、実時間での劣化は同じになるはずである。図6の結果はαが1より大きいことを示している。
図7はある有機EL素子の時定数と印加電流の関係を両対数グラフで示す。α=1.8である。αの値は使用材料、デバイス構成等によりいくらか変動する。α=1.8の場合、上述した例の様に50%のデューティーでパルス駆動した場合と、同一輝度のDC駆動の場合とを比較する。電流はDC駆動の場合の2倍であるから、
時定数は2−1.8倍=0.287倍となる。
駆動信号のデューティーは50%なので実際のパルス駆動時の寿命は0.287×100/50=0.574となる。つまり、同じ初期輝度で比較してパルス駆動では寿命がDC駆動の約57%に短くなってしまう。
本実施形態の発光表示パネルの駆動方法は、上述のような劣化時定数が電流に依存するという特性を利用して、高輝度表示では駆動信号のデューティーを大きく、低輝度表示ではデューティーを小さくして、輝度低下の時定数が輝度によらず、等しくなるようにする。これによって、輝度による劣化の差がなくなり、素子の発光履歴による寿命特性のばらつきを無くす或いは低減することが可能となる。
具体的には、式(1)、(2)より実経過時間での劣化が同一になる、即ち、実経過時間での輝度低下率が等しくなるように駆動信号のデューティー及び電流値(信号値)を調整する。ここでは仮に最高輝度表示を100%デューティー、即ち、DCで駆動するとして、中間の階調レベルの表示条件をデューティー及び電流値で調整する場合を説明する。
DC駆動(デューティーTa=100%)でLa(=100%)の輝度を表示する時の電流値(信号値)をIaとし、ある中間レベルLb(0≦Lb≦La)の表示のための電流値(信号値)をIbとする。電流が(Ib/Ia)倍になると瞬間輝度も同じく(Ib/Ia)倍になるから、所定の中間レベルLbを得るためにはパルス駆動のデューティーTbを、
Tb/Ta=(Lb/La)・(Ia/Ib) …式(3)
とする。
一方、式(2)により時定数はDC駆動時に比べて(Ib/Ia)−α倍になる。輝度低下は電流が流れているTbの期間中に進行するから、実時間での輝度低下の時定数はDC駆動時の時定数に対して以下の式となる。即ち、
(Ib/Ia)−α・(Ta/Tb)=(La/Lb)・(Ib/Ia)−α+1 …式(4)
倍となる。この時定数がDC駆動時の輝度低下時定数に等しくなるには、式(4)が1に等しいとおいて、電流比を求め、
Ib/Ia=(Lb/La)1/(1−α) …式(5)
とすればよい。この時のデューティー比は、
Tb/Ta=(Lb/La)α/(α−1) …式(6)
となる。以上がDC駆動と同じ輝度で、且つ、同じ実時間劣化を与えるパルス駆動の条件である。α=1の時は上記条件を満足する電流比及びデューティー比は存在しない。つまり、電流とデューティーを調節して同じ輝度で同じ劣化時間になるようにすることはできない。
α=2の時は、
Ib/Ia=La/Lb、Tb/Ta=(Lb/La) …式(7)
となる。つまり、中間調表示電流を中間調輝度に逆比例させ、且つ、デューティーを中間調輝度の2乗に比例させる。
図8はα=1.8として中間調50%を表示する時の電流とデューティーを上記方法によって求め、劣化特性をDC駆動と比較して示すものである。図8のL1はDC駆動、L1/2はパルス駆動を示す。求めた電流はDC駆動の2.38倍、デューティーは21.0%である。
初期輝度に対する低下は図7に示すようにDC駆動の場合とほぼ等しくなる。従って、どの時点で停止しても劣化の程度は同じであり、そこから任意の同じ電流で駆動しても同じ輝度が得られる。即ち、表示履歴の差を解消することが可能となる。同様の方法によってすべての中間輝度レベルについて劣化特性を等しくし、表示履歴による寿命特性の差をなくすことができる。
以上の説明では、基準となる輝度を100%DC駆動としたが、上記説明中、Laを100%とし、Taを100%とすることは必要な仮定ではなかった。そのため、中間的な輝度レベルを基準輝度Laにとり、その時のデューティーを基準デューティーTaとすることもできる。
また、互いに発光色の異なる複数の発光素子を用いて表示パネルを構成する場合、式(1)のβの値が各色の発光素子においてほぼ等しい場合には、本実施形態の駆動方法によって各色の劣化速度を最も劣化速度の大きなものに合わせることが可能となる。これによりホワイトバランスの経時変化(表示色の経時変化)を抑えることが可能である。
つまり、本発明は、複数の発光素子は互いに発光色の異なる複数の発光素子を含み、各色の発光素子の劣化速度を、最も劣化速度の速い色の発光素子の劣化速度に近づけるように、駆動信号を決定する。
ここで、本実施形態の駆動方法により有機EL素子を用いた有機EL表示パネルを駆動する場合には、後述するように、決定回路に変換パラメータを格納したメモリなどの変換テーブル等を用いる。そして表示階調に応じて素子への印加電流(または印加電圧)や印加時間を設定する。例えば、中間調を表示する場合には、最高階調を表示する場合の瞬時電流(または電圧)よりも大きな電流(または電圧)を素子に印加して高輝度で光らせ、デューティーを小さくする。これによって、有機EL素子への負担を大きくし、劣化速度を素子間で合わせる。
また、中間調の階調の大きさに応じて、輝度レベルが低くなるに従って、駆動信号の信号値である駆動電流または駆動電圧を大きくし、その代わり、駆動信号のデューティーを小さくするように、変換テーブルを作製する。こうして、中間階調の表示用映像信号が入力された場合であっても、表示すべき輝度レベルが相対的に低い時、つまり低階調時にはより大きな瞬時電流(電圧)が素子に印加され素子の劣化速度を早くする。逆に、表示すべき輝度レベルが相対的に高い時、つまり高階調時にはより小さな瞬時電流(電圧)が素子に印加され素子の劣化速度を抑える。
以上のように、低階調の表示時に高電流(高電圧)を低デューティーにて印加することにより、ディスプレイパネル内の素子間の劣化速度のばらつきを抑え、焼きつきを低減することが可能となる。つまり、低輝度になった場合の寿命特性を電流(電圧)を大きくすることによってある一定の寿命特性に近づける制御を行う。
更に、本発明は素子の非点灯に対しても対応可能である。即ち、素子の非点灯時間を累計し、最も劣化が進んでいる画素の素子に合わせるように制御する。非点灯とは、全く発光していない場合に限定されず、例えば、256階調のうち0〜16階調の範囲のように、所定輝度以下の場合も非点灯として、累積してもよい。
このように本発明は、発光素子の非点灯時間を累積し、当該非点灯時間が予め設定された累積時間になった場合には、その発光素子に対して前記駆動信号の信号値をより大きく、デューティーをより小さくするように補正する補正工程を含む。非点灯時間は表示階調に基づいて累積する。
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では有機EL素子の階調数を例えば8とする。ディスプレイとして使用する場合に最も明るい階調7の時に1400cd、最も暗い階調0の時には0cdとする。また、本実施例では自然画等の動画像、すなわち、非発光時間が表示画面中のどの素子でもほぼ等しい時間であると思われる画像を表示対象とした場合について示す。
通常、表示パネルの場合は中間階調での輝度(ガンマ特性)は、素子の発光特性や人間の視覚特性等によって決められる。そのため、必ずしも階調と輝度が比例関係にあるわけではないが、本実施例では簡便性のため階調と輝度が比例関係の場合を考える。勿論、所定のガンマ特性を持ち、比例関係でない場合でも本発明の駆動方法は効果的である。
また輝度とDC駆動時の電流の大きさとの関係は、効率が電流によって変化しない領域を考え、図2の様に比例関係を示すものとする。本素子を用いた場合の階調と輝度と電流の関係は、例えば、表1に示す通りである。
最高階調である表示階調7(本実施例で使用した素子の場合の輝度は1400cd)において最も劣化が小さい駆動は最も電流が小さい駆動であるため、DC駆動である。従って最高階調はDC駆動、つまり1フレーム期間中、画素回路へのプログラミング期間を除いた全表示期間中、常にEL素子を駆動して表示することを考える。以下、この劣化特性へ他の階調の特性も合わせるという意味で、この特性を以降「基準劣化特性」と呼び、この輝度を基準輝度という。
但し、本実施例では劣化が最も小さいという理由でDC駆動を選んだだけであり、最高階調表示もパルス駆動で行う場合を基準としても本発明には何ら影響を与えない。
次に階調6を表示する場合、DC駆動を用いると、上述の通り階調7のDC駆動寿命特性とは異なり劣化の時定数は長くなるため劣化特性が変わってしまう。例えば、隣り合った素子で階調7と階調6をDC駆動で一定時間表示した後は階調7と階調6の輝度はそれぞれ変化してしまうため、その後両素子で同一階調を表示した場合、輝度差即ち焼きつきが生じてしまう。
この現象を抑えるために本発明は、階調6をDC駆動ではなくパルス駆動にしてデューティーを小さくし、階調7の場合のDC駆動時より大きな電流で駆動する。そうすることによって、基準輝度である階調7の劣化に合わせる。具体的な電流とパルスのデューティーを算出は、先の説明(式(5)、(6))で導出した以下の式で行う。即ち、決定工程において、表示階調に応じた駆動信号の信号値Ib及びデューティーTbは、以下の式を満たすように決定する。
Tb=(Lb/La)−(α/α−1)・Ta …式(8)
Ib=(La/Lb)(α/α−1)・Ia …式(9)
但し、1<α≦1とする。また、Laは基準輝度、Lbは表示輝度、Taは基準輝度表示時のパルスデューティー値、Tbは表示輝度表示時のパルスデューティー値、Iaは基準輝度表示時の電流、Ibは表示輝度表示時の電流である。
ここで、α=1.8では電流値は階調7の電流値の1.21倍、デューティーは70.7%となる。このパルスを印加して駆動することによって階調6も階調7のDC駆動時劣化特性とほぼ等しくなる。即ち、階調7と階調6の表示による素子劣化への影響をほぼ等しくできる。
以下、階調5から階調1までも同様に対応付けると表2の様に印加することで階調7と劣化特性を合わせることが可能となる。表2は表示階調(表示輝度)に対してそれぞれ算出した信号値としての駆動電流(波高値)と、デューティーの値とを示す。
なお、表2において駆動電流は基準輝度(最大輝度7)の電流値の倍率で示す。以下の表でも同様である。例えば、最大階調7の電流値が2mAの場合には、表示すべき階調に応じて表2の駆動電流欄の数値に2mAを乗算することによって各階調の電流値を決定する。
上述のように表2に従って電流値(波高値)と駆動パルスのデューティーを制御することが望ましい。但し、実際の表示画像においては自然画表示の動画表示等においてそうであるように統計的にそれほど大きく表示階調が特定画素に偏ることがない場合がある。その場合には、デューティー値として表3に示すようにある程度粗く設定することでも制御可能である。
表3の場合にはデューティーを優先して決定し、その変化に応じて電流値を変えることで階調毎の輝度を合わせる必要がある。
また、有機EL素子への電流印加に際して、その電源の性能によっては低階調側の高電流を流すことができない場合もある。例えば、最大階調7の時の電流値が1.5mAの場合で、電源が5mAまで印加可能の場合には表4の様に印加することによって素子間のばらつきをある程度低減することが可能である。
階調3〜7の領域では表2と同様に駆動電流値は5mA以下であるが、階調1及び2の領域では電流値が5mAを超えてしまうので最大電流5mAをセットし、必要輝度に合うようにデューティーを増やすことによって調整する。
また、本実施例では階調数8の場合を例として示したが、本発明は階調8に限定されるものではなく、駆動電流やデューティー値の設定が許せばもっと多階調の場合でも同様の方法で制御できる。
ここで、表2、表3或いは表4に示す表示階調に応じた駆動電流値または駆動電圧値(いずれも波高値)あるいはそれを決定するパラメータ(例えば表2、表3の倍率値)は信号値の変換パラメータとして予めメモリ上に格納しておく。これとともに、該メモリには表2、表3或いは表4に示す表示階調に応じたデューティー値を変換パラメータとして予め格納しておく。こうして、変換テーブルを用意する。そして、実際の表示パネルの駆動時には、入力された映像信号の階調レベルに応じて、決定回路が変換テーブルを参照して素子毎に表示輝度に応じた駆動電流(電圧)値とデューティー値を決定する。そして、駆動回路によりディスプレイパネルの素子毎に決定した駆動電流(電圧)値とデューティー値の駆動信号を印加することでディスプレイパネルの表示を行う。
(実施例2)
実施例1では非発光時間を考慮しない場合の例を示したが、実施例2では非発光時間を計測する手段を持ち、その割合を参照して駆動制御を行う。なお、本実施例でも実施例1と同様に8階調の場合を説明する。
まず、階調0が設定されて非発光であった時間を除いた実表示時間が多い素子Aと少ない素子Bについて説明する。
AとBの実表示時間の差が最大でも数十時間程度の差であり、小さい場合には劣化特性も大きく変化しないため補正はしない。一方、AとBの値の差が、例えば、寿命の時定数の10%を超えた場合は補正を行う。差が10%より大きくなってしまった場合、劣化が少ない素子の寿命を短くすべく、劣化率を高くするためには、素子Bのデューティー値を所定の量だけ小さく設定する。そして、その分輝度を大きく、即ち、駆動電流を大きくする補正を行い、全体として初期に見積もった時定数に近くなるように調整する。
10%非点灯時間があった場合には想定していた劣化特性よりも10%短い期間に所定の劣化を生じさせる必要がある。即ち、寿命をn=0.91倍(補正係数)になるように再設定する必要がある。実施例1と同様な条件で、α=1.8及び電流効率が一定であるとして式(1)、(2)を用いて算出するとデューティーは、
−1/α−1=0.89倍z
にする必要がある。式(1)から、駆動信号を補正する場合、補正後のパルスデューティー値Tb′=n−(α/α−1)・Taを満たすように決定する。nは非発光時間に素子の劣化時定数に対する補正の割合、Taは補正前の基準輝度表示時のデューティーである。
また、駆動電流は、
(1/n)1/α−1=1.13倍
にする必要がある。つまり、式(2)から、駆動信号を補正する場合、補正後の信号値、即ち駆動電流値Ib′=(1/n)(α/α−1)・Iaを満たすように決定する。Iaは補正前の基準輝度表示時の電流値、nは同様に非発光時間に素子の劣化時定数に対する補正の割合、つまり劣化係数である。
実施例1の場合と同様な表示を考え、表2に相当する10%非点灯の場合を示すと表5に示す通りとなる。
最大階調時(階調7)の電流値が、例えば、2mAの場合には表5の駆動電流欄の値(倍率)に2mAを乗算した値が実際に印加する電流波高値となる。またDC駆動の低階調表示時の劣化がほとんどないような素子の場合には、低階調表示時はDC駆動で表示し、その時間を非点灯時間に加えることによって非点灯扱いにして制御することも可能である。
ここで、上述のような素子の劣化特性を合わせる補正を行うには、素子毎に非点灯時間を累積する。これは、例えば、入力された映像信号の輝度レベル(表示階調)から計算できる。このように入力された映像信号を監視することで素子毎の非点灯時間を累積する。そして、非点灯時間が予め設定した累積時間を超えた場合には、その素子に対して表5に従って補正を行う。素子の非点灯とは、予め決められた所定輝度以下の輝度とする。
本発明の実施形態による発光表示パネル用の駆動装置を説明するための図である。 発光素子の輝度・駆動電流特性の直線関係を示す図である。 同じ輝度を得るために、パルス駆動とDC駆動で表示する場合のパルス条件を説明する図である。 発光素子の寿命特性を示す図である。 印加電流と劣化の時定数の関係を示す図である。 同一輝度を得る際に、DC駆動とデューティー50%のパルス駆動で表示した場合の劣化特性を比較して示す図である。 DC駆動時に輝度を半分にした場合の劣化特性を示す図である。 所定のパルス条件でのパルス駆動で、半分の輝度を表示した場合の劣化特性を示す図である。
符号の説明
1 発光素子
2 画素
3 発光表示パネル
4 駆動装置
5 決定回路
6 印加回路

Claims (8)

  1. 複数の発光素子を含む画素を有する発光表示パネルの駆動方法において、
    表示階調に応じて前記発光素子の駆動信号の信号値とデューティーを決定する決定工程と、前記信号値と前記デューティーが決定された前記駆動信号を前記発光素子に印加する印加工程とを含み、
    前記決定工程において、相対的に低い表示階調に応じた駆動信号は、相対的に高い表示階調に応じた駆動信号より、前記信号値が大きく、かつ、前記デューティーが小さくなるように前記駆動信号を決定することを特徴とする発光表示パネルの駆動方法。
  2. 前記決定工程において、前記発光素子の寿命特性に基づいて、前記発光素子の劣化速度の差が所定の範囲内に収まるように、前記駆動信号の信号値とデューティーを決定する請求項1に記載の発光表示パネルの駆動方法。
  3. 前記決定工程において、前記表示階調に応じた駆動信号の信号値Ib及びデューティーTbは、
    基準輝度をLa、前記基準輝度表示時の駆動信号のデューティーをTa、前記基準輝度表示時の駆動信号の電流値をIa、表示輝度をLbとする場合(但し、1<α≦1)、
    Tb=(Lb/La)−(α/α−1)・Ta
    Ib=(La/Lb)(α/α−1)・Ia
    を満たすように決定する請求項1又は2に記載の発光表示パネルの駆動方法。
  4. 前記発光素子の非点灯時間を累積し、当該非点灯時間が予め設定された累積時間になった場合には、その発光素子に対して前記駆動信号の信号値をより大きく、デューティーをより小さくするように補正する補正工程を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光表示パネルの駆動方法。
  5. 前記非点灯時間は表示階調に基づいて累積する請求項4に記載の発光表示パネルの駆動方法。
  6. 前記駆動信号を補正する場合、補正後のデューティーTb′及び補正後の駆動信号の電流値Ib′は、
    補正係数をn、補正前の基準輝度表示時の駆動信号のデューティーをTa、補正前の基準輝度表示時の駆動信号の電流値をIaとする場合、
    Tb′=n−(α/α−1)・Ta
    Ib′=(1/n)(α/α−1)・Ia
    を満たすように決定する請求項4又は5に記載の発光表示パネルの駆動方法。
  7. 前記複数の発光素子は互いに発光色の異なる複数の発光素子を含み、各色の発光素子の劣化速度を、最も劣化速度の速い色の発光素子の劣化速度に近づけるように、前記駆動信号を決定する請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光表示パネルの駆動方法。
  8. 複数の発光素子を含む画素を有する発光表示パネル用の駆動装置において、
    表示階調に応じて前記発光素子の駆動信号の信号値とデューティーを決定する決定回路と、前記信号値と前記デューティーが決定された前記駆動信号を前記発光素子に印加する印加回路とを含み、
    前記決定回路は、相対的に低い表示階調に応じた駆動信号は、相対的に高い表示階調に応じた駆動信号より、前記信号値が大きく、かつ、前記デューティーが小さくなるように前記駆動信号を決定することを特徴とする発光表示パネル用の駆動装置。
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