JP2008215823A - 蛍光センサ - Google Patents
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Abstract
【課題】励起光の影響を受けずに蛍光を精度良く検出可能で、しかも小型かつ安価に形成できる蛍光センサを得る。
【解決手段】試料1中の検出対象物質2の存在を示す蛍光体10を集めるセンサ部20と、前記蛍光体10を励起する励起光8を発する励起光源7とを備えてなる蛍光センサにおいて、励起光源7の他に、励起光8とは波長が異なって実質的に蛍光体10を励起することがない光40を前記センサ部20に照射する別の光源41を少なくとも1つ設ける。
【選択図】図1
【解決手段】試料1中の検出対象物質2の存在を示す蛍光体10を集めるセンサ部20と、前記蛍光体10を励起する励起光8を発する励起光源7とを備えてなる蛍光センサにおいて、励起光源7の他に、励起光8とは波長が異なって実質的に蛍光体10を励起することがない光40を前記センサ部20に照射する別の光源41を少なくとも1つ設ける。
【選択図】図1
Description
本発明は、蛍光法により試料中の特定物質を検出する蛍光センサに関するものである。
従来、バイオ測定等において、高感度かつ容易な測定法として蛍光法が広く用いられている。この蛍光法は、特定波長の光により励起されて蛍光を発する検出対象物質を含むと考えられる試料に上記特定波長の励起光を照射し、そのとき蛍光を検出することによって検出対象物質の存在を確認する方法である。また、検出対象物質が蛍光体ではない場合、蛍光体で標識されて検出対象物質と特異的に結合する物質を試料に接触させ、その後上記と同様にして蛍光を検出することにより、この結合すなわち検出対象物質の存在を確認することも広くなされている。
図2は、上記の標識された物質を用いる蛍光法を実施するセンサの一例を概略図示するものである。本例の蛍光センサは一例として試料1に含まれる抗原2を検出するためのものであり、基板3には抗原2と特異的に結合する1次抗体4が塗布されている。そしてこの基板3上に設けられた試料保持部5の中において試料1が流され、次いで同様に蛍光体10で標識されて抗原2と特異的に結合する2次抗体6が流される。その後、基板3の表面部分に向けて励起光源7から励起光8が照射され、また光検出器9により蛍光検出がなされる。このとき、光検出器9によって所定の蛍光が検出されたなら、上記2次抗体6と抗原2との結合、すなわち試料中における抗原2の存在を確認できることになる。
なお以上の例では、蛍光検出によって実際に存在が確認されるのは2次抗体6であるが、この2次抗体6は抗原2と結合しなければ流されてしまって基板3上に存在し得ないものであるから、この2次抗体6の存在を確認することにより、間接的に検出対象物質である抗原2の存在が確認されることとなる。
また、光検出器9を用いずに人間が目視で蛍光を検出するようにしても、2次抗体6の存在を確認可能である。例えば、家庭で用いられるような簡易型のセンサを形成する場合は、コストを低く抑える観点から、光検出器を用いない構成が好適に採用される。
とりわけここ数年は、冷却CCDの発達など光検出器の高性能化が進んでいることもあって、以上述べた蛍光法はバイオ研究には欠かせない手段となっており、さらにバイオ以外の分野においても広範に利用されている。特に可視領域では、例えばFITC(蛍光波長:525nm、量子収率:0.6)や、Cy5(蛍光波長:680nm、量子収率:0.3)のように、実用の目安となる0.2を超える高い量子収率を持つ蛍光色素が開発されており、蛍光法の応用分野がさらに拡大することが期待されている。
しかしながら、図2に示したような従来の蛍光センサでは、基板と試料との界面における励起光の反射/散乱光や、検出対象物質以外の不純物/浮遊物M等による散乱光がノイズとなるため、せっかく光検出器を高性能化しても蛍光検出におけるS/Nは向上しないのが実情であった。
これに対する解決法として、従来、エバネッセント波を用いる蛍光法が提案されている。この方法を実施する蛍光センサの一例を図3に概略的に示す。なおこの図3において、図2中の要素と同等の要素には同番号を付し、それらについての説明は特に必要のない限り省略する(以下、同様)。
この蛍光センサにおいては、前述の基板3に代わるものとしてプリズム(誘電体ブロック)13が用いられ、その上には金属膜20が形成されている。そして励起光源7からの励起光8が、このプリズム13と金属膜20との界面で全反射する条件で、プリズム13を通して照射される。この構成においては、励起光8が上記界面で全反射するとき該界面近傍に染み出すエバネッセント波11により2次抗体6が励起される。そして蛍光検出は、試料1に対してプリズム13と反対側(図中では上方)に配された光検出器9によってなされる。
この蛍光センサにおいて、励起光8は図中の下方に全反射するので、上方から蛍光を検出するに当たり、励起光検出成分が蛍光検出信号に対するバック・グラウンドとなってしまうことがない。またエバネッセント波11は上記界面から数百nmの領域にしか到達しないので、試料中の不純物/浮遊物Mからの散乱を殆ど無くすことができる。そのため、このエバネッセント蛍光法は、従来の蛍光法と比べて(光)ノイズを大幅に低減でき、検出対象物質を1分子単位で蛍光測定できる方法として注目されている。
なお図3に示したものは、エバネッセント蛍光法による蛍光センサの中でも、特に高感度化を図った表面プラズモン増強蛍光センサである。この表面プラズモン増強蛍光センサにおいては金属膜20が形成されていることにより、励起光8が照射されたとき該金属膜20中に表面プラズモンが生じ、その電界増幅作用によって蛍光が増幅されるようになる。あるシミュレーションによると、その場合の蛍光強度は1000倍程度まで増幅されることが判っている。
この種の表面プラズモン増強蛍光センサについては、例えば特許文献1に詳しい記載がなされている。また、例えば非特許文献1に記載があるように、特に表面プラズモン増強は利用しないで、エバネッセント蛍光法による蛍光検出を行う蛍光センサも知られている。その場合は図3に示した金属膜20が省かれて、プリズム13に直接試料が接する状態とされ、それら両者の界面から染み出すエバネッセント波11により2次抗体6等の蛍光体が励起される。
なお、上記の表面プラズモン増強蛍光センサにおいては、非特許文献2に示されているように、試料中の蛍光体と金属膜とが接近し過ぎていると、蛍光体内で励起されたエネルギーが蛍光を発生させる前に金属膜へ遷移してしまい、蛍光が生じないという現象(いわゆる金属消光)が起こり得る。この金属消光に対処するために非特許文献2には、金属膜の上にSAM(自己組織化膜)を形成し、それにより試料中の蛍光体と金属膜とを該SAMの厚さ以上離間させることが提案されている。なお図3でも、このSAMに番号21を付けて示してある。
特許第3562912号公報
「バイオイメージングでここまで理解る」p.104-113 楠見明弘他著 羊土社
W.Knoll他、Analytical Chemistry(Anal.Chem.)75(2003) p.2610
Guang S.He 他「Optical limiting effect in a two-photon absorption dye doped solid matrix」,Applied Physics Letters67(17),23 October 1995 pp.2433-2435
ところで、以上説明したような蛍光センサにおいては、現状で標識として使用されている蛍光体の励起波長と蛍光波長との差(いわゆる「ストークスシフト」)が比較的小さいため、プリズム中の不純物により散乱した励起光が蛍光検出用の光検出器によって検出されてしまい、それにより測定信号のS/Nが低下するという問題が認められる。例えば前述のCy5にあっては、励起波長635〜645nmに対して蛍光波長は680nmであり、ストークスシフトは高々40nm程度である。そこで蛍光検出の際には、光検出器の直前にバンドパスフィルターのような、シャープカット・フィルターと呼ばれる波長分離フィルターを設けることが普通に行われている。
しかしながら、この種のフィルターの波長分離能力は、上述のようなストークスシフトに対応するには不十分であるため、測定信号に光ノイズの混入が残ることが多い。また、この種のフィルターは概して透過率がかなり低いので、検出できる蛍光量が減少してしまい、この点から測定信号のS/N低下を招くこともある。さらにこの種のフィルターは高価であるので、それを用いた場合には蛍光センサのコストアップを招くという不都合も認められる。
以上、プリズム(誘電体ブロック)を用いてエバネッセント波により蛍光体を励起するようにした蛍光センサにおける問題について説明したが、プリズムを用いない構成においても、何らかの理由により励起光が光検出器に検出されたり、あるいは目視で蛍光を検出しようとするセンサ使用者の目に入ったりすると、同様に蛍光検出の精度が損なわれることになる。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、励起光の影響を受けずに蛍光を精度良く検出可能で、しかも小型かつ安価に形成できる蛍光センサを提供することを目的とする。
本発明による蛍光センサは、前述したように、
試料中の検出対象物質の存在を示す蛍光体を集めるセンサ部と、
前記蛍光体を励起する励起光を発する励起光源とを備えてなる蛍光センサにおいて、
励起光源の他に、励起光とは波長が異なって実質的に前記蛍光体を励起することがない光を前記センサ部に照射する別の光源が少なくとも1つ設けられていることを特徴とするものである。
試料中の検出対象物質の存在を示す蛍光体を集めるセンサ部と、
前記蛍光体を励起する励起光を発する励起光源とを備えてなる蛍光センサにおいて、
励起光源の他に、励起光とは波長が異なって実質的に前記蛍光体を励起することがない光を前記センサ部に照射する別の光源が少なくとも1つ設けられていることを特徴とするものである。
なお、この本発明による蛍光センサはより望ましくは、
前記励起光を透過させる材料から形成された誘電体ブロックと、
この誘電体ブロックの前記センサ部となる一表面の近傍位置に試料を保持する試料保持部と、
前記励起光を、前記一表面部分の誘電体ブロックとその外側の媒質との界面に向けて、全反射条件を満たすように誘電体ブロックを通して入射させる励起光入射光学系とが設けられて、エバネッセント蛍光法により蛍光検出するものとされる。
前記励起光を透過させる材料から形成された誘電体ブロックと、
この誘電体ブロックの前記センサ部となる一表面の近傍位置に試料を保持する試料保持部と、
前記励起光を、前記一表面部分の誘電体ブロックとその外側の媒質との界面に向けて、全反射条件を満たすように誘電体ブロックを通して入射させる励起光入射光学系とが設けられて、エバネッセント蛍光法により蛍光検出するものとされる。
また、上述のようにエバネッセント蛍光法により蛍光検出する構成を有する場合、さらに望ましくは、誘電体ブロックの一表面に金属膜が形成された上で、前記入射光学系が、この金属膜と誘電体ブロックとの界面に向けて励起光を入射させるように構成される。そしてそのように構成される場合、上記金属膜の上には、疎水性材料からなる不撓性膜が形成されることが望ましい。
本発明の蛍光センサは、励起光源の他に、励起光とは波長が異なって実質的に蛍光体を励起することがない光をセンサ部に照射する別の光源が少なくとも1つ設けられているので、例えば前述したプリズムの部分で散乱した励起光は、人間の目には、その別の光源からの光と混合して別の波長域の光として視認されるようになる。その別の波長域の光は、上記別の光源からの光の波長次第で、一般に励起光と色の違いが僅少である蛍光と大きく色が異なるものとすることができる。そこで検出対象の蛍光は、プリズムの部分で散乱する等した励起光と明確に弁別して、精度良く視認されるようになる。
そしてこの本発明による蛍光センサは、互いに波長差が小さい励起光と蛍光とを弁別するために従来装置のように高価なシャープカット・フィルター等を用いる必要も無いものであるから、その種の従来装置と比較して安価に形成可能となる。
なお、この本発明による蛍光センサが、誘電体ブロックを用いてエバネッセント蛍光法により蛍光検出するものである場合は、本来誘電体ブロックにおいて励起光が散乱しやすくなっていても、その影響を確実に回避できるので、蛍光を精度良く視認できる効果が特に顕著なものとなる。
また本発明の蛍光センサにおいて、特に誘電体ブロックの一表面に金属膜が形成された上で、前記入射光学系が、この金属膜と誘電体ブロックとの界面に向けて励起光および前記別の光を入射させるように構成された場合は、金属膜において発生する表面プラズモンセンサの電界増幅作用によって蛍光が増幅されるので、蛍光をより明確に視認可能となる。
そしてその場合、特に上記金属膜の上に、疎水性材料からなる不撓性膜が形成されている場合は、例えば液体状の試料中の蛍光体が金属膜に対して、金属消光が起きる程度まで近接してしまうことが防止される。そこでこの場合は前述のような金属消光を招くことがなくなり、表面プラズモンによる電場増幅作用を確実に得て、高感度で蛍光を視認可能となる。
また、特に不撓性膜が疎水性材料から形成されていれば、液体状の試料中に存在する金属イオンや溶存酸素のような消光の原因となる分子が該不撓性膜の内部にまで入り込むことが無く、よってそれらの分子が励起光の励起エネルギーを奪ってしまうことが防止される。そこでこの場合は、極めて高い励起エネルギーが確保され、極めて高い感度で蛍光を視認可能となる。
なお、上記の「不撓性」とは、センサを普通に使用しているうちに膜厚が変わってしまうほどに変形することが無い程度の剛性を備えていることを意味するものとする。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による表面プラズモン増強蛍光センサ(以下、単に蛍光センサという)を示す概略側面図である。図示の通りこの蛍光センサは、例えば波長650nm の励起光8を発する半導体レーザ等の励起光源7と、上記励起光8を透過させる材料からなり、この励起光8が一端面から入射する位置に配されたプリズム(誘電体ブロック)13と、このプリズム13の一表面13aに形成された金属膜20と、この金属膜20の上に形成されたポリマーからなる不撓性膜31と、プリズム13と反対側から不撓性膜31に液体状試料1が接するように該試料1を保持する試料保持部5と、センサ部となる上記金属膜20の部分に向けて例えば波長500nmの光40を照射する発光ダイオード(LED)等の光源41とを備えてなるものである。
本実施形態では励起光源7が、励起光8を、プリズム13と金属膜20との界面に向けて、全反射条件を満たすようにプリズム13を通して入射させるように配置されている。つまりこの励起光源7自体が、プリズム13に対して励起光8を上述のように入射させる励起光入射光学系を構成している。しかしこのような構成に限らず、励起光8を上述のように入射させるレンズやミラーなどからなる入射光学系を、励起光源7とは別途設けるようにしても構わない。さらには、上記光40を金属膜20の部分に導く光学系を別途設けてもよい。
プリズム13は一例として、日本ゼオン株式会社製 ZEONEX(登録商標) 330R(屈折率1.50)からなるものである。一方金属膜20は、プリズム13の一表面13a上に金をスパッタして形成されたものであり、膜厚は50nmとされている。また不撓性膜31は、金属膜20の上に屈折率1.59のポリスチレン系ポリマーをスピンコートして形成されたものであり、膜厚は20nmとされている。
なお、プリズム13は上記材料の他、公知の樹脂や光学ガラスを用いて適宜形成することができる。コストの点からは、光学ガラスよりも樹脂の方がより好ましいと言える。樹脂から形成する場合は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネイト(PC)、シクロオレフィンを含む非晶性ポリオレフィン(APO)等の樹脂を好適に用いることができる。
この蛍光センサが検出対象としているのは、一例としてCRP抗原2(分子量11万 Da)であり、それと特異的に結合する1次抗体(モノクロナール抗体)4が上記不撓性膜31の上に固定されている。この1次抗体4は、例えば末端をカルボキシル基化したPEGを介して、アミンカップリング法により、上記ポリマーからなる不撓性膜31に固定される。一方2次抗体6としては、蛍光体(蛍光色素: Cy5)10で標識化したモノクロナール抗体(1次抗体4とはエピトープ <epitope;抗原決定基>が異なる)が用いられる。
上記アミンカップリング法は一例として次の(1)〜(3)のステップからなるものである。なおこれは、30μl(マイクロ・リットル)のキュベット/セルを用いた場合の例である。
(1)リンカー先端(末端)の-COOH基を活性化
0.1molのNHSと0.4molのEDCとを等体積混合した溶液を30μl加え、30分間室温静置。なお、
NHS:N-hydrooxysuccinimide
EDC:1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide
である。
0.1molのNHSと0.4molのEDCとを等体積混合した溶液を30μl加え、30分間室温静置。なお、
NHS:N-hydrooxysuccinimide
EDC:1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide
である。
(2)1次抗体4の固定化
PBSバッファ(pH7.4)で5回洗浄後、1次抗体溶液(500μg/ml)を30μl加え、30〜60分間室温静置
(3)未反応の -COOH基をブロッキング
PBSバッフア(pH7.4)で5回洗浄後、1Mのエタノールアミン(pH8.5)を30μl加え、20分間室温静置。さらにPBSバッフア(pH7.4)で5回洗浄。
PBSバッファ(pH7.4)で5回洗浄後、1次抗体溶液(500μg/ml)を30μl加え、30〜60分間室温静置
(3)未反応の -COOH基をブロッキング
PBSバッフア(pH7.4)で5回洗浄後、1Mのエタノールアミン(pH8.5)を30μl加え、20分間室温静置。さらにPBSバッフア(pH7.4)で5回洗浄。
一方、励起光源7としては上記半導体レーザに限らず、その他の公知の光源を適宜選択使用可能である。また励起波長を変えれば、Cy5以外の蛍光体を標識として用いることもできる。
以下、この蛍光センサの作用について説明する。まず試料保持部5の中において液体状の試料1が流され、次いで同様に蛍光体10で標識されてCRP抗原2と特異的に結合する2次抗体6が流される。
その後、プリズム13に向けて励起光源7から励起光8が照射される。このとき、プリズム13と金属膜20との界面からエバネッセント波11が染み出すようになる。そこで、もし1次抗体4にCRP抗原2が結合していれば、さらに該抗原2に2次抗体6が結合し、その2次抗体6の標識である蛍光体10がエバネッセント波11によって励起されることとなる。励起された蛍光体10はピーク波長が680nmの蛍光42を発し、その蛍光42は例えば分析実施者の目によって視認される。こうして蛍光42が視認された場合は、それにより、CRP抗原2に2次抗体6が結合していること、すなわち試料1にCRP抗原2が含まれていることを確認可能となる。
なお上記エバネッセント波11は、プリズム13と金属膜20との界面から数百nm程度の領域にしか到達しない。そこで、試料1中の不純物/浮遊物による励起光の散乱は略皆無とすることができる。
上述のようにして蛍光検出する際、励起光8がプリズム13中の不純物によって散乱することがあり、その散乱光は前述した全反射の条件を満足しなくなって、一部が金属膜20を抜けて上方に出射することがある。この励起光8の波長は650nmであって波長680nmの蛍光42と同様に赤色領域にあるので、それら両者を目視により弁別するのは困難である。そうであると、実際に蛍光42が発せられたかどうか、すなわち試料1中にCRP抗原2が存在するのかどうかを判断することが難しくなる。
本実施形態の蛍光センサにおいては、このような不具合を無くすために前述の光源41が設けられており、この光源41は蛍光検出に際して励起光源7とともに駆動される。光源41から出射して金属膜20の部分に向かう波長500nmの光40は、励起光8と同様にプリズム13内の不純物において散乱して、一部が金属膜20を抜けて上方に出射する。そこで分析実施者には、この波長500nmの光40と波長650nmの励起光8とが混合した光43が観察されるようになる。この光43は、人間の目には概ね黄色の光として視認されるので、赤色領域の光とは明確に弁別可能である。そこで分析実施者は、金属膜20の部分に光を視認したとき、その光が黄色であれば蛍光42は生じていないと判断でき、一方その光がほぼ赤色(波長500nmの光40と波長650nmの励起光8と波長680nmの蛍光42が混合したもの)であれば蛍光42が生じている、つまり試料1中にCRP抗原2が存在すると判断できることになる。
また本実施形態の蛍光センサにおいては、金属膜20の上に膜厚が20nmの不撓性膜31が設けられているので、試料1中の蛍光体10が金属膜20に対して、金属消光が起きる程度まで近接してしまうことが防止される。そこでこの蛍光センサによれば、前述のような金属消光を招くことがなくなり、表面プラズモンによる電場増幅作用を確実に得て、高感度で蛍光を検出可能となる。
そして上記不撓性膜31は疎水性材料であるポリスチレン系ポリマーから形成されているので、液体状の試料1中に存在する金属イオンや溶存酸素のような消光の原因となる分子が該不撓性膜31の内部に入り込むことが無く、よってそれらの分子が励起光8の励起エネルギーを奪ってしまうことが防止される。そこでこの蛍光センサによれば、極めて高い励起エネルギーが確保され、極めて高い感度で蛍光を検出可能となる。
なお、この蛍光センサにおいて、CRP抗原2と結合しないで不撓性膜31の表面から離れている2次抗体6は、そこまでエバネッセント波11が届かないので蛍光を発することがない。そこで、試料1中でそのような2次抗体6が浮遊していても測定上問題が無いので、測定毎に洗浄つまりB/F分離(バウンド/フリー分離)を行う必要もない。
また、図1中に破線で示す光検出器9を設けて、分析実施者が蛍光42を視認したとき、その蛍光の強度を該光検出器9で検出するようにしてもよい。その蛍光強度は、試料1中にCRP抗原2が多く存在するほど高くなるので、その検出蛍光強度に基づいてCRP抗原2を定量分析することも可能になる。
また、励起光8とともに金属膜20の部分に入射させる光40の波長や数は、以上説明した実施形態のものに限定されるものではない。すなわち、例えば赤色領域の励起光とともにシアン領域の光40をセンサ部に入射させれば、それらが混合した光43は白色光となり、それも赤色領域の蛍光42と明確に弁別可能となる。また、上記シアン領域の光40に代えて、青色領域および緑領域の2つの光を用いても、同様に混合した光43は白色光となる。
また本発明の蛍光センサは、前述した金属膜20を省いて、表面プラズモン増強は行わないように構成することも可能であるし、さらにはエバネッセント波11で蛍光体10を励起することはしないで、通常の伝搬光である励起光によって蛍光体10を励起するように構成することも可能である。そのようないずれの構成においても、励起光とともに別の光をセンサ部に入射させることにより、先に説明した通りの効果を同様に得ることができる。
1 試料
2 抗原
4 1次抗体
6 2次抗体
7 励起光源
8 励起光
9 光検出器
10 蛍光体
11 エバネッセント波
13 プリズム(誘電体ブロック)
20 金属膜
31 不撓性膜
40 励起光以外の別の光
41 光源
42 蛍光
43 励起光と別の光が混合した光
2 抗原
4 1次抗体
6 2次抗体
7 励起光源
8 励起光
9 光検出器
10 蛍光体
11 エバネッセント波
13 プリズム(誘電体ブロック)
20 金属膜
31 不撓性膜
40 励起光以外の別の光
41 光源
42 蛍光
43 励起光と別の光が混合した光
Claims (4)
- 試料中の検出対象物質の存在を示す蛍光体を集めるセンサ部と、
前記蛍光体を励起する励起光を発する励起光源とを備えてなる蛍光センサにおいて、
前記励起光源の他に、前記励起光とは波長が異なって実質的に前記蛍光体を励起することがない光を前記センサ部に照射する別の光源が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする蛍光センサ。 - 前記励起光を透過させる材料から形成された誘電体ブロックと、
この誘電体ブロックの前記センサ部となる一表面の近傍位置に試料を保持する試料保持部と、
前記励起光を、前記一表面部分の誘電体ブロックとその外側の媒質との界面に向けて、全反射条件を満たすように誘電体ブロックを通して入射させる励起光入射光学系とを備えていることを特徴とする請求項1記載の蛍光センサ。 - 前記誘電体ブロックの一表面に金属膜が形成されており、
前記入射光学系が、この金属膜と誘電体ブロックとの界面に向けて励起光を入射させるように構成されていることを特徴とする請求項2記載の蛍光センサ。 - 前記金属膜の上に、疎水性材料からなる不撓性膜が形成されていることを特徴とする請求項3記載の蛍光センサ。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007049324A JP2008215823A (ja) | 2007-02-28 | 2007-02-28 | 蛍光センサ |
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Applications Claiming Priority (1)
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