JP2008213179A - ランナー構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 複数のキャビティに温度や粘度といった条件の等しい溶融樹脂を送り込むことができるとともに各キャビティへの充填の同時性も高くすることができ、ランナーの量も少なくすることができる射出成形金型のランナー構造を提供する。
【解決手段】 金型に複数のキャビティdを有し、射出成形で複数の成形品を同時に成形する際に用いられるランナー構造において、複数のキャビティdには成形機のノズルに接続したスプルー部aから延び、途中で少なくとも1回分岐させたランナーを接続し、スプルー部から特定のキャビティまでの間のランナーで分岐部bにおける屈曲部一つに対して該分岐部における屈曲部で屈曲させた方向と逆の方向に屈曲させた逆の屈曲部cを一つ形成し、ランナーを屈曲させることにより発生する溶融樹脂の部位による差を軽減したランナー構造である。
【選択図】図3

Description

本発明は、射出成形にて複数個の製品を一度に成形する金型に設けられるランナーに係り、より詳しくは各キャビティに成形材料である溶融樹脂が温度差や粘度の差がない状態で充填され均質な製品を得ることができるランナーの配置に関する。
特許文献1には同一の成形品を一度に複数個射出成形する際の部品に連結するランナーを特定の配置することで成形後の後処理がしやすいように効率的に成形部品を整列させることが開示されている。
このように射出成形において複数個のキャビティを配置した多数個取りの金型を用いることによって一度にたくさんの製品を成形するといったことが例えば特許文献1に開示されているように従来から行われている。
このような金型を用いる場合、同一金型内の複数のキャビティ間で充填する材料の温度を一定に保つことと、キャビティへの材料の充填の同時性を高めることによって複数個の間で形状や寸法精度等において差異の少ない成形品を得ることができる。しかし、キャビティを複数配置しなければならないことから、各キャビティへ溶融樹脂を送り込むランナーの配置も複雑になってどうしても屈曲部を有する構造にならざるを得ない。ランナーの屈曲部において、屈曲したランナー内で溶融樹脂が屈曲部の内側を通過するものと外側を通過するものとがある。溶融樹脂がランナー内を通過するときに金型との間でせん断発熱があるが、内回りの樹脂は外回りの樹脂に比べて流速が早く金型との間のせん断発熱も大きくなる。発熱が大きいと樹脂の粘度も低下するので、ランナー内を温度と粘度が異なる溶融樹脂が流れることになる。すると複数のキャビティに対して温度や粘度の条件の異なる樹脂が充填され、また、充填の同時性に影響することもある。
例えば、複数のキャビティを同心円状に配置してそれに向かって放射状にランナーを延ばすことによって屈曲部を有しないランナーで温度や粘度に差がなく、しかも全キャビティにほぼ同時に溶融樹脂を充填することができる。しかし、この形態では製品に対するランナーの割合が非常に多くなってしまうという問題がある。通常ランナーは製品外の部分であり、回収粉砕してリサイクルされるとは言うものの製品機能上許容できる範囲を超える量については廃棄を余儀なくされる。よって、ランナーはできるだけ少なくする方がよい。ランナーを少なくするには途中で分岐させる形態をとることが有効であるが、分岐させると屈曲部を生じてしまう。
特許文献2では同一成形品を成形する複数のキャビティが溶融樹脂を移送するスプルーからランナーを介して等距離に配置され、且つ各キャビティ内の溶融樹脂の流動性および樹脂圧力を一定にするために流動調節ランナーが設けられている。
このように同一成形品の多数個取り金型においては、各キャビティに同時に原料である溶融樹脂が充填されることが成形品同士の差を無くす上で重要である。ランナーはスプルーからゲートまでの溶融樹脂を誘導する流路で、特にランナー内での流動圧力の損失が小さいことが要求される。そのためにランナーの断面や流路長等のランナー形状及び流路の加熱の調整などが技術上の課題となっている。
特に同一成形品の多数個取り金型においては、各キャビティに同時に溶融樹脂が充填されることが要求されるため、ランナー形状にて充填バランスをとるように配置されるとともに、スプルーからゲートまでの流動距離が等距離で、できるだけ短くなるように考慮されている。
更に、特許文献3においては各キャビティの容積がゲートに対して非対称である場合に、ゲート周りに等しい中心角度でキャビティを複数設置し、射出される溶融樹脂を各キャビティの容積に相違に応じて振り分ける流量調整コマを設けており、ランナーの途中で原料の流動を調節することでスプルーから各キャビティに導入される溶融樹脂の流動性や樹脂圧力の均一化を図り、各キャビティ内への充填の同時性を向上させたものなどがある。
特開平6−182825号公報 特開2003−39495号公報 特開平5−84787号公報
このように、複数のキャビティを有する金型で複数の成形品を同時に射出成形する場合に、各キャビティに充填される溶融樹脂の流動性や樹脂圧や充填の同時性が重要な要素となってくる。
上記特許文献2や特許文献3は、流量調整コマを用いることでそれらの目的を達成仕様とするものであるが、流量調整コマを設けることで金型を含む成形装置のコンパクトさが損なわれてしまうことや、コストの面でも不利であること、更に、流量調整コマの働きをコントロールしなければならないといったわずらわしさがある。
そこで、本発明では余計なコストをかけることなく、成形時の微調整やコントロールを必要とせず、また、金型装置のコンパクトさを損なうことがなく複数のキャビティに温度や粘度といった条件の等しい溶融樹脂を送り込むことができ、しかも各キャビティへの充填の同時性も高くすることができる複数個取り射出成形金型のランナー構造の提供を目的とする。
請求項1では、金型に複数のキャビティを有し、射出成形で複数の成形品を同時に成形する際に用いられるランナー構造において、複数のキャビティには成形機のノズルに接続したスプルー部から延び、途中で少なくとも1回分岐させたランナーを接続し、スプルー部から特定のキャビティまでの間のランナーで分岐部における屈曲部一つに対して該分岐部における屈曲部で屈曲させた方向と逆の方向に屈曲させた逆屈曲部を一つ形成し、ランナーを屈曲させることにより発生する溶融樹脂の部位による差を軽減したことを特徴とする複数個取り射出成形金型のランナー構造である。
請求項1によれば、ランナーを途中で分岐させていることからランナー量を低減することができており、しかもランナーを分岐させることによってできた屈曲部に対してその逆方向の屈曲部を1対になるように形成しているので、屈曲することで発生する溶融樹脂の流速や温度、粘度の差が逆屈曲部によって解消もしくは軽減され、温度や粘度がより一定に近い溶融樹脂がキャビティにほぼ同時に充填されることになるので、良好な成形品を得ることができる。
以下、高負荷伝動ベルトに用いるブロックを射出成形する場合を例に挙げて本発明を説明する。図1に示すのは、高負荷伝動ベルトの一例を示す斜視図であり、図2は側面図である。本発明の高負荷伝動ベルト1は、エラストマー4内に心線5をスパイラル状に埋設してなる同じ幅の二本のセンターベルト3a、3bと、このセンターベルト3a、3bに係止固定されている複数のブロック2とから構成されている。このブロック2の両側面2a、2bは、プーリのV溝と係合する傾斜のついた面となっており、駆動されたプーリから動力を受け取って、係止固定されているセンターベルト3a、3bを引張り、駆動側プーリの動力を従動側プーリに伝動している。
センターベルト3a、3bのエラストマー4として使用されるものは、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴムなどの単一材又はこれらを適宜ブレンドしたゴムあるいはポリウレタンゴム等が挙げられる。そして、心線5としてはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、スチールワイヤ等から選ばれたロープが用いられる。また、心線5はロープをスパイラル状に埋設したもの以外にも、上記の繊維からなる織布、編布や金属薄板等を使用することもできる。
ブロック2として用いられる素材として、熱可塑性樹脂に少なくとも繊維補強材および摩擦低減材を配合した樹脂組成物からなり、例えば樹脂組成物の全量に対して熱可塑性樹脂30〜89質量%、繊維補強材は10〜60質量%、摩擦低減材は1〜50質量%の割合で配合してなる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、4,6−ナイロン、9,T−ナイロン等を挙げることができる。これらの中でも4,6−ナイロンもしくは9,T−ナイロンを使用することが好ましい。4,6−ナイロンおよび9,T−ナイロンは、結晶性樹脂で熱可塑性樹脂の中でも剛性等の機械的強度や耐摩耗性に優れ、繊維補強材を添加することでこれらの特性が一層向上するものである。また、射出成形が可能になることから、ブロックの成形を行うのがより簡単であるというメリットもある。更に4,6−ナイロンや9,T−ナイロンからなるブロックを用いたベルトは走行させたときに、プーリを摩耗させる量が少ないので、プーリの摩耗により走行を不安定にするといった問題も少なくなる。
9,T−ナイロンは、芳香環と長鎖ジアミンを有するポリアミド樹脂で、ノナンジアミンとテレフタル酸の重縮合により製造され、芳香環と高級脂肪族鎖を有していることから、耐熱性、低吸水性を有している。また、ホモポリマーで結晶化度が高いため、結晶化度の低いポリアミドと比較すると4,6−ナイロンと同様に耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性に優れている。従って、本材料を使用することにより、耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性、熱時の曲げ剛性などの物性に優れているとともに吸水性の問題も少ないブロックを得ることができる。9,T−ナイロンの商品の例としては株式会社クラレの「ジェネスタ」を挙げることができる。
これらの樹脂組成物を用いてブロック2を射出成形する際に用いられる本発明における金型のランナー構造は、図3に示すようなものとなっている。スプルー部aて一次分岐されて6方向にランナーが延びており、次にランナー途中分岐部bで二次分岐して2方向にランナーが延びている。この分岐部bがランナーの分岐による屈曲部となっている。更にそのさきで、ランナーは前記分岐部bの屈曲部とは逆の方向に屈曲する逆屈曲部cを形成しており、その先で製品を成形するキャビティdにつながっている。
例えば図4に示すようなランナーの構造では、図3と同様に12個のキャビティを有しているが、スプルー部Aにおいて12方向に分岐させてそのまま直接キャビティDに接続している。このような構造によっても一度に12個の製品を成形することができるが、図3と比較してランナーの占める割合が多くなってしまう。ランナーは成形品とならない不要部分であり、成形品を取り出した後は、回収粉砕されてリサイクルに供されることになるが、リサイクル原料では必ずしも新しい原料と同じ物性の成形品を得ることができない。よって、求められる物性に程度にもよるが、リサイクル原料の使用量は通常限度がありその限度を超えるものについては廃棄することになってしまう。そのことからランナーはできるだけ少なくなるような構造とすることが好ましい。
本発明ではランナーを途中で少なくとも1回は分岐させるとしており、図3と図6との比較のように同じ12個のキャビティを有する場合であってもランナーを途中で1回分岐させた図3に示す本発明のランナー構造において、ランナーの占める割合は少なくなっている。
また、図3における本発明のランナー構造では、ランナーの途中で2回屈曲しており、分岐部bでの屈曲とは逆方向の屈曲部cを形成している。金型内を通る溶融樹脂は金型面との間でせん断発熱し温度が上昇するとともに粘度も多少低下することになる。ランナーの屈曲部においてその中を通過する溶融樹脂は内回りで通過するものと外回りで通過するものがあり、内回りで通過するものはせん断発熱が大きく温度も大きく上昇して粘度も大きく低下するので流速も速くなるのに対して、外回りで通過する溶融樹脂はせん断力があまりかからず比較的温度も上昇せず粘度の低下も少ないことから流速の向上もあまりない。そこで屈曲部を通過した後は温度と粘度の異なる樹脂が流れることになる。そのままキャビティ内へ送り込んだ場合、製品の左右で異なる温度の樹脂が流入することになり、キャビティ内でも流入速度に差が生じる。その結果、キャビティにおける樹脂充填量が左右非対称となり、製品の形状や寸法が非対称となってしまう不具合を生じる。
本発明の図3のランナー構造では、ランナー途中の分岐部bで屈曲し、更にそれに対応する逆屈曲部cを形成することによって、溶融樹脂中の温度や粘度の差を解消する、もしくはより小さなものとすることができる。
ところが、図5に示すようなランナー構造ではスプルー部Aから2方向にランナーが延びていて、ランナー途中分岐部Bで2方向に分岐させておりランナーが屈曲している。また、その次の分岐部Cにおいて再度、2方向に分岐しており、ここでもランナーが屈曲している。その先で2つのキャビティD1、D2に接続されている。ここでキャビティD1に注目して考えるとスプルー部Aから延びたランナーが分岐部Bにおいて右方向にほぼ直角に屈曲しており、次いで分岐部Cで逆の左方向にほぼ直角に屈曲している。この場合は2箇所の分岐部B、Cにおける屈曲が逆の方向に屈曲しており、その屈曲角度も同等であることから樹脂の温度や粘度の差も緩和されているといえるが、キャビティD2に注目すると2箇所の分岐部B、Cでの屈曲はともに右方向にほぼ直角に屈曲しており、1回目の分岐部Bで内回りの溶融樹脂がせん断発熱で温度上昇するとともに粘度が低下したのを、更に2回目の分岐部Cで同じ方向に屈曲し溶融樹脂内での左右の温度差や年度の差が更に増す結果となってしまう。このことによりキャビティD2には溶融樹脂は非対称に注入されることとなり成形品の寸法や形状も影響を受けることになる。また、キャビティD1とキャビティD2との間で溶融樹脂の充填の同時性が損なわれてしまうことにもなる。
前記のように図3に示す本発明のランナー構造を採用することで、ランナーを途中で分岐させていることからランナーの占める割合を減少させて回収粉砕してリサイクル樹脂を減らすことができるとともに、分岐させることにより屈曲するランナーを再度逆方向に屈曲させることによって、溶融樹脂が片側のみでせん断発熱による温度上昇や粘度低下を起こし、製品の形状や寸法が左右非対称となってしまう問題も解消・緩和することができるものである。
なお、図3の例ではランナー途中の分岐回数が1回の場合を挙げているが、1回に限られるものではなく2回以上複数回の分岐であっても構わない。また、1回目の屈曲角度と2回目の逆方向への屈曲角度は同じ角度とすることが好ましい。
また、使用する樹脂流動速度に適したランナー径とし、せん断率を15000sec−1未満、キャビティに充填する樹脂の温度差は15℃未満とすることが好ましい。
複数の成形品を一度の成形する複数個取り射出成形装置に適用することができる。
高負荷伝動ベルトの一例を示す斜視概略図である。 高負荷伝動ベルトの側面図である。 本発明のランナー構造を示す正面図である。 従来のランナー構造を示す正面図である。 従来の別のランナー構造を示す正面図である。
符号の説明
1 高負荷伝動ベルト
2 ブロック
3 センターベルト
4 エラストマー
5 心線
a スプルー部
b 分岐部
c 屈曲部
d キャビティ

Claims (1)

  1. 金型に複数のキャビティを有し、射出成形で複数の成形品を同時に成形する際に用いられるランナー構造において、複数のキャビティには成形機のノズルに接続したスプルー部から延び、途中で少なくとも1回分岐させたランナーを接続し、スプルー部から特定のキャビティまでの間のランナーで分岐部における屈曲部一つに対して該分岐部における屈曲部で屈曲させた方向と逆の方向に屈曲させた逆屈曲部を一つ形成し、ランナーを屈曲させることにより発生する溶融樹脂の部位による差を軽減したことを特徴とする射出成形金型のランナー構造。
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