JP2008208985A - 伝動ベルト及びその製造方法 - Google Patents

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博史 笹部
Hitoshi Wakahara
仁志 若原
Yuichi Sano
裕一 佐野
Kenichi Okamoto
賢一 岡本
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Abstract

【課題】破断が生じにくく、かつ、製造が容易な伝動ベルト及びその製造方法を提供する。
【解決手段】抗張力体となる環状金属コードC1と、環状金属コードC1を覆う被覆部とを備え、環状金属コードC1は、第1の金属素線31の一部が所定の環状径のループとされ、当該ループに対して第1の金属素線31の余長が螺旋状に複数周巻き付けられ、第1の金属素線31の始端部31aと終端部31bが結合されて形成された環状コア部3と、第2の金属素線11を複数本撚り合わせてなる1本のストランド材1が環状コア部3に対して螺旋状に複数周巻き付けられて環状コア部3の外周面を覆い、ストランド材1の巻き付け始端部1aと巻き付け終端部1bが結合されて形成された外層部4と、を有する。
【選択図】図5

Description

本発明は、伝動ベルト及びその製造方法に関するものである。
従来、伝動ベルトの一種として、例えば特許文献1に記載されているように、芯材に金属コードを用いたものが知られている。芯材となる金属コードは、中心コアとなる少なくとも1本のフィラメントと、中心コアを取り巻く複数本のフィラメントとを備えている。
また、特許文献2に記載されているように、芯材に撚糸コードを用いた伝動ベルトも知られている。この伝動ベルトでは、一対の撚糸コードの端部を一旦解撚して結合し、結合後に再び撚り合わせたものを芯材としている。
特開平4−307146号公報 特開2000−213601号公報
特許文献1に記載の伝動ベルトでは、金属コードの両端部を結合して環状にする作業が必要である。金属コードの両端部を結合する際には、特許文献2に記載の撚糸コードの結合方法を金属コードに適用することができる。しかしながら、特許文献2に記載の結合方法を適用した場合には、フィラメントの解撚作業、結合作業、及び撚合作業が発生する。そのため、結合にかかる工程が煩雑となり、伝動ベルトの製造が困難となる。また、フィラメントの端部を再び撚り合わせる際に、結合部分と他の部分とで撚りの状態が異なってしまい、結合部分の機械的強度が低下するおそれがある。結合部分の機械的強度が低下すると、金属コードの破断が生じ、その結果、伝動ベルトも破断しやすくなる。
金属コードの両端部を結合する方法としては、金属コードの両端部を突き合わせて結合する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、周方向の一箇所に結合部分が集中することとなるため、金属コードの完全破断が生じやすくなる。
そこで、本発明の目的は、破断が生じにくく、かつ、製造が容易な伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできる本発明に係る伝動ベルトは、抗張力体となる環状金属コードと、前記環状金属コードを覆う被覆部とを備え、前記環状金属コードは、第1の金属素線の一部が所定の環状径のループとされ、当該ループに対して前記第1の金属素線の余長が螺旋状に複数周巻き付けられ、前記第1の金属素線の始端部と終端部が結合されて形成された環状コア部と、第2の金属素線を複数本撚り合わせてなる1本のストランド材が前記環状コア部に対して螺旋状に複数周巻き付けられて前記環状コア部の外周面を覆い、前記ストランド材の巻き付け始端部と巻き付け終端部が結合されて形成された外層部と、を有することを特徴とする。
このように、抗張力体となる環状金属コードは、その環状コア部が、第1の金属素線の一部でループを形成し、そのループに引き続き第1の金属素線の余長が螺旋状に複数周巻き付けられ、第1の金属素線の始端部と終端部が結合されて形成されている。そのため、環状コア部の結合箇所は第1の金属素線の始端部と終端部のみとなり、ストランド材を周方向の一箇所でまとめて結合する場合と比べて、環状コア部の結合部(結合部の断面積)が小さくなり、環状コア部の強度を向上することができる。
また、外層部は、環状コア部に対して、ストランド材を複数本巻き付けるのではなくストランド材が複数周にわたって連続して巻き付けられているので、ストランド材は1本あればよく、よって、ストランド材を複数本使用する場合と比べて結合箇所が少なくなるため、環状金属コードの破断強度の低下を抑制できるとともに、製造を容易にできる。また、外層部のストランド材の巻き付けを所定の巻き付け角度で行なえば、ストランド材の巻き乱れがなく、表面状態が略均一な環状金属コードを得ることができる。このような環状金属コードには外からの力が特定の部位に集中することが避けられ均一に付与されることとなるため、破断強度の低下を抑制できる。
このように、本発明によれば、製造が容易で破断強度に優れた環状金属コードを得ることができる。したがって、このような環状金属コードを被覆部で覆った伝動ベルトもまた、破断が生じにくく、かつ製造が容易となる。
本発明に係る伝動ベルトにおいて、前記第1の金属素線の前記ループに対して、前記第1の金属素線が螺旋状に巻き付けられた回数は、1周あたり3回以上30回以下であることが好ましい。
環状コア部としては、仮に、金属素線が並列揃えであるとすると、金属素線同士が自由に動き易く、一体感にも乏しく、また外力に対して均一負荷となりにくい。そこで、第1の金属素線をループに対して3回/周以上巻き付けることにより、動きやずれなどが生じにくい安定した一体的な構造となるため、外力に対して均一に負荷が作用するようになり、破断強度を高めることができる。また、巻き付けを30回/周以下に制限することで、環状金属コードとなったときに外力に対して伸びにくくすることができる。
本発明に係る伝動ベルトにおいて、前記第1の金属素線の前記ループに対して、前記第1の金属素線が螺旋状に巻き付けられた周数は、2周以上6周以下であることが好ましい。
これにより、第1の金属素線で形成する環状コア部に対して、第2の金属素線を用いたストランド材で巻き付けて外層部を形成する際、芯となる環状コア部については、ストランド材並みの剛性及び断面積を確保できる。
本発明に係る伝動ベルトにおいて、前記第1の金属素線の結合部分と第2の金属素線を用いた前記ストランド材の結合部分とは、前記環状金属コードの環状方向における位置が異なっていることが好ましい。
このように、結合部分の位置を互いにずらすことにより、環状コア部及び外層部の同時破断が生じにくくなる。したがって、環状金属コードにおける破断強度の低下を抑制でき、延いては伝動ベルトについても、破断強度の低下を抑制できる。
本発明に係る伝動ベルトにおいて、前記第1の金属素線の両端部は、溶接によって結合されており、前記ストランド材の両端部は、溶接によって結合されているとともに、コイルバネ状スリーブにより覆われて補強されていることが好ましい。
これにより、第1の金属素線の端部同士の結合が容易であるとともに、ストランド材の端部同士の結合が容易となり、外層部であるストランド材の結合箇所をコイルバネ状スリーブにより保護及び補強することができる。また、コイルバネ状スリーブは良好な可撓性を有するため、螺旋状に巻かれたストランド材の湾曲形状に合わせて柔軟に変形し、結合部分に対する密着状態を維持するとともに、結合部分におけるストランド材の変形を接続部材が阻害しない。すなわち、環状金属コードの機械的特性を全周に亘って略均一にすることができ、ストランド材の結合部分をより破断しにくくすることができる。したがって、伝動ベルトの製造を容易とすることができ、機械的特性も均一化でき、破断しにくいものとなる。
本発明に係る伝動ベルトにおいて、前記ストランド材の両端部は、溶接によって結合された箇所に接着剤が塗布されていることが好ましい。
これにより、結合部の動きを抑えることができるとともに、金属素線が一部で切断されても、外層部がばらけるのを防止できる。
本発明に係る伝動ベルトにおいて、前記第1の金属素線の線径は、0.10mm以上0.40mm以下であることが好ましい。
例えば、ストランド材を用いて環状コアを形成すると、その結合部分は環状コアにおいて全面溶接となるので強度低下が著しいものとなる。そこで、これを避けるために環状コア部を1本の金属素線により形成しているため、環状コアにおいて素線1本分の溶接が行われる。
また、一般に、線径を増大させると、溶接させた結合部分では、特に中心から離れる外側ほど大きな引張応力や圧縮応力が作用する傾向にある。この第1の金属素線の始端部と終端部の結合部分は、外層部とは異なり環状金属コードの中心に位置するために曲げ応力が軽減され、線径は太くても特に不都合がない。
本発明に係る伝動ベルトにおいて、前記ストランド材における前記第2の金属素線の撚り方向と、前記環状コア部に対する前記ストランド材の巻き付け方向とが逆であることが好ましい。
これにより、ストランド材の巻き付け後において、表面外観に凹凸の少ない環状金属コードを得ることができる。また、環状金属コードを捩れにくいものとすることができる。このような環状金属コードを用いることにより、伝動ベルトは更に破断しにくいものとなる。
本発明に係る伝動ベルトにおいて、前記環状コア部の中心軸に対する前記ストランド材の巻き付け角度が4.5度以上13.8度以下であることが好ましい。
これにより、ストランド材の巻き付け作業が容易となるため、環状金属コード延いては伝動ベルトをより容易に製造できる。また、適度な伸度を有し、かつストランド材の巻き緩みがない環状金属コードを得ることができる。これにより、伝動ベルトの破断強度を更に向上させることができる。
本発明に係る伝動ベルトにおいて、前記ストランド材が、前記環状コア部の外周面に沿って6周以上8周以下巻き付けられていることが好ましい。
これにより、外層部が環状コア部を密に覆うこととなるため、環状金属コードを幾何学的に安定した状態のものとすることができる。したがって、破断強度に優れ、径方向における変形が生じにくい環状金属コードを確実に得ることができる。その結果、伝動ベルトもまた、破断強度及び耐疲労性に優れ、変形が生じにくいものとなる。
上記課題を解決することのできる本発明に係る伝動ベルトは、抗張力体となる環状金属コードと、前記環状金属コードを覆う被覆部とを備え、前記環状金属コードは、第1の金属素線を複数本撚り合わせてなる第1のストランド材の両端を結合することによって形成された環状コア部と、第2の金属素線を複数本撚り合わせてなる第2のストランド材を、前記環状コア部に対して螺旋状に且つ複数周にわたって巻き付けることによって形成され、前記環状コア部の外周面を覆う外層部と、を有しており、前記外層部を形成する前記第2のストランド材は、前記環状コア部の中心軸に対して所定の巻き付け角度で巻き付けられており、当該第2のストランド材の巻き付け始端部と巻き付け終端部とは結合されていることを特徴とする。
このように、抗張力体となる環状金属コードは、金属素線を複数本撚り合わせてなる第1のストランド材に、同じく金属素線を複数本撚り合わせてなる第2のストランド材を巻き付けるので、環状金属コードを丈夫なものとすることができる。第1のストランド材の両端は環状コア部とする際に結合され、第2のストランド材の両端は巻き付けが終わった後に結合されるため、第1のストランド材及び第2のストランド材は、別々に結合されることとなる。したがって、第1のストランド材及び第2のストランド材をまとめて結合する場合と比べて、環状金属コードが完全に破断する可能性を抑制できる。第1のストランド材の両端を結合して環状コア部とするため、この環状コア部をベースとして第2のストランド材を巻き付けることが可能となる。その結果、破断強度の大きい環状金属コードを得ることができる。
外層部を形成する際には、第2のストランド材を複数本巻き付けるのではなく1本の第2のストランド材を複数周にわたって巻き付ける。複数本の第2のストランド材を用いる場合には結合箇所も複数となるが、本発明では第2のストランド材は1本で済むため、結合箇所は1箇所と最小になる。したがって、環状金属コードの破断強度をより大きくすることができると共に、製造を容易とすることができる。第2のストランド材の巻き付けは所定の巻き付け角度で行なわれるので、第2のストランド材の巻き乱れがなく、表面状態が均一な環状金属コードを得ることができる。表面状態が均一な環状金属コードには外からの力が均一に付与されることとなるため、破断強度の低下は抑制される。
このように、本発明によれば、製造が容易で破断強度に優れた環状金属コードを得ることができる。したがって、このような環状金属コードを被覆部で覆った伝動ベルトもまた、破断が生じにくく、かつ製造が容易なものとなる。
好ましくは、第1のストランド材の結合部分と第2のストランド材の結合部分とは、環状コア部の周方向における位置が異なっている。結合部分の位置を互いにずらすことにより、環状コア及び外層部の同時破断が生じにくくなる。したがって、環状金属コードにおける破断強度の低下を抑制することができ、ひいては伝動ベルトについても破断強度の低下を抑制することができる。
好ましくは、第1のストランド材の両端は溶接によって結合されており、第2のストランド材の巻き付け始端部と巻き付け終端部とは金属からなる接続部材によって結合されている。第1のストランド材の両端を溶接によって接合するため、結合部分の増径が殆ど無く破断しにくい環状コア部を得ることができる。このような環状コア部には、第2のストランド材を容易に巻き付けることができる。また、第2のストランド材の結合には接続部材を用いるため、結合作業を容易に行なうことができる。これらの結果、伝動ベルトの製造をより容易とすることができる。
好ましくは、接続部材は略円柱形状を呈しており、当該接続部材には、第2のストランド材の巻き付け始端部及び巻き付け終端部が挿入される断面多角形状の穴部が設けられている。穴部の角に相当する部分では、接続部材の内壁と第2のストランド材との間に間隙が形成されることになる。この間隙は、例えば、穴部に第2のストランド材を挿入したのち接続部材をかしめた際に、肉盗み(肉逃げ)として機能することとなる。よって、接続部材の外面の変形を抑制できるため、表面状態が均一な環状金属コードをより確実に得ることができる。表面状態が均一な環状金属コードには、均一に外力がかかることとなる。そのため、環状金属コードはより破断しにくいものとなる。その結果、伝動ベルトもまた、より破断しにくいものとなる。
好ましくは、穴部は接続部材の両端に設けられた凹部であって、接続部材の一端側の凹部と接続部材の他端側の凹部との間には仕切り壁が設けられている。凹部と凹部との間、すなわち接続部材の中央部分に仕切り壁を設けることで、接続部材に折れ曲がりや割れが生じにくくなる。その結果、環状金属コードひいては伝動ベルトをいっそう破断しにくいものとすることができる。
好ましくは、前記第1の金属素線の直径は、0.06〜0.40mmである。これにより、第1のストランド材に適度な剛性をもたせることができると共に、耐疲労性を向上させることができる。また、環状コア部を形成する第1のストランド材は、当該環状金属コードの断面中心に位置するため、環状金属コードを曲げた状態で第2のストランド材と比較して応力が小さくなる。そのため、第1の金属素線の直径を0.06〜0.40mmの範囲内で第2の金属素線より太径として剛性を高めることができる。
好ましくは、第1のストランド材と第2のストランド材とが同一の直径を有する、または前記第1のストランド材の直径が前記第2のストランド材の直径より大きい。これにより、環状コア部の外周面に沿って、第2のストランド材を実質的に隙間無く巻き付けることが可能となる。特に、環状金属コードを省スペース化に有利な横断面細密充填撚り構造とする場合、環状コア部を1本とし、その周りに1層目の外層部では第2のストランド材を6本配置する構成、2層目の外層部では第2のストランド材を12本配置する構成を基本とするが、第1のストランド材と第2のストランド材とが同一の直径である場合、線径公差によっては、1層目の外層部で第2のストランド材を6周させると、断面上、6本分の配列が困難となり第2のストランド材同士が干渉しあったり、環状コア部との接触が不均一となったりする。そこで、第1のストランド材の直径が第2のストランド材の直径より大きいと、このような不具合を回避することができる。
好ましくは、第1のストランド材における第1の金属素線の撚り方向と、第2のストランド材における第2の金属素線の撚り方向とは同一であり、且つ、第1のストランド材における第1の金属素線及び第2のストランド材における第2の金属素線の撚り方向と、第2のストランド材の巻き付け方向とは逆である。これにより、第2のストランド材の巻き付け後において、表面外観に凹凸の少ない環状金属コードを得ることができる。また、環状金属コードを捩れにくいものとすることができる。このような環状金属コードを用いることにより、伝動ベルトは更に破断しにくいものとなる。
好ましくは、環状コア部の中心軸に対する第2のストランド材の巻き付け角度が4.5〜13.8度である。これにより、第2のストランド材の巻き付け作業が容易となるため、環状金属コードひいては伝動ベルトをより容易に製造することができる。また、適度な伸度を有し、且つ第2のストランド材の巻き緩みがない環状金属コードを得ることができる。これにより、伝動ベルトの破断強度を更に向上させることができる。
好ましくは、第2のストランド材が、環状コア部の外周面に沿って6〜8周巻き付けられている。これにより、外層部が環状コア部を密に覆うこととなるため、環状金属コードを幾何学的に安定したものとすることができる。したがって、破断強度に優れ、径方向における変形に耐え得る環状金属コードを確実に得ることができる。その結果、伝動ベルトもまた、破断強度及び耐疲労性に優れ変形に耐え得るものとなる。
好ましくは、前記第1の金属素線の材質が、C:0.08〜0.27質量%、Si:0.30〜2.00質量%、Mn:0.50〜2.00質量%、Cr:0.20〜2.00質量%を含み、かつ、Al、Nb、Ti、及びVをそれぞれ0.001〜0.10質量%の範囲で少なくとも1種類含有し、残部がFe及び不可避的に混入してくる不純物からなる合金鋼である。これにより、第1の金属素線は、溶接性に優れたものとなる。その結果、環状金属コードひいては伝動ベルトの製造が一層容易となり、さらに破断強度も増大する。
好ましくは、前記第2の金属素線の線径は、0.06mm以上0.30mm以下である。これにより、第2の金属素線からなるストランド材に適度な剛性をもたせることができ、そのストランド材を良好な耐疲労性を有するものとすることができる。その結果、環状金属コードひいては伝動ベルトをより耐久性に優れたものとすることができる。
好ましくは、前記環状コア部及び前記外層部には低温焼鈍処理が施されている。これにより、金属素線の内部歪みを除去できる。よって、環状金属コードひいては伝動ベルトを、いっそう破断しにくいものとすることができる。
また、上記課題を解決することのできる本発明に係る伝動ベルトの製造方法は、抗張力体となる環状金属コードと、前記環状金属コードを覆う被覆部とを備え、前記環状金属コードが、環状に形成された環状コア部と、前記環状コア部に対して螺旋状に複数周巻き付けられて前記環状コア部の外周面を覆う外層部とを有する伝動ベルトの製造方法であって、第1の金属素線の一部を所定の環状径のループにして、前記ループに対して前記第1の金属素線の余長を引き続き螺旋状に複数周に巻き付け、前記第1の金属素線の始端部と終端部を結合することにより環状コア部を形成し、第2の金属素線を複数本撚り合わせてなる1本のストランド材を前記環状コア部に対して螺旋状に複数周巻き付けることにより前記環状コア部の外周面を覆い、前記ストランド材の巻き付け始端部と巻き付け終端部とを結合させることにより外層部を形成して、前記環状金属コードを形成することを特徴とする。
このように、抗張力体となる環状金属コードは、その環状コア部は、第1の金属素線の一部でループを形成し、そのループに引き続き第1の金属素線の余長を螺旋状に複数周巻き付け、第1の金属素線の始端部と終端部を結合することで形成する。そのため、環状コア部の結合箇所は第1の金属素線の始端部と終端部のみとなり、ストランド材を周方向の一箇所でまとめて結合する場合と比べて、環状コア部の結合部(結合部の断面積)が小さくなり、環状コア部の強度を向上することができる。
また、外層部は、環状コア部に対して、ストランド材を複数本巻き付けるのではなくストランド材を複数周にわたって連続して巻き付けるので、ストランド材は1本あればよく、よって、ストランド材を複数本使用する場合と比べて結合箇所が少なくなるため、環状金属コードの破断強度の低下を抑制できるとともに、製造を容易にできる。また、外層部のストランド材の巻き付けを所定の巻き付け角度で行なえば、ストランド材の巻き乱れがなく、表面状態が略均一な環状金属コードを得ることができる。このような環状金属コードには外からの力が特定の部位に集中することが避けられ均一に付与されることとなるため、破断強度の低下を抑制できる。
このように、本発明によれば、製造が容易で破断強度に優れた環状金属コードを製造することができる。したがって、このような環状金属コードを被覆部で覆った伝動ベルトもまた、破断が生じにくく、かつ製造が容易となる。
本発明によれば、破断強度及び耐疲労性に優れ、かつ製造が容易な伝動ベルト及びその製造方法を提供することができる。したがって、本発明の伝動ベルトを産業機械に用いれば、当該産業機械を耐久性に優れたものとすることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る伝動ベルトの断面斜視図である。本実施形態に係る伝動ベルトB1は、一般産業用のVベルトである。伝動ベルトB1は、抗張力体である環状金属コードC1と、被覆部70とを備えている。被覆部70は環状金属コードC1を覆っており、この被覆部70の上面及び下面には、布層72が設けられている。被覆部70は、例えばゴムといった材料を含んでいる。
伝動ベルトB1は、5本の環状金属コードC1を有している。図2は環状金属コードC1の斜視図であり、図3は環状金属コードC1を示す径方向の断面斜視図である。図4は、第1の金属素線31から環状コア部3を形成するときの様子を示す斜視図である。図5(a)は、環状金属コードC1が備える環状コア部3にストランド材1を1周巻き付けた様子を示す斜視図であり、同図(b)は、そのA部拡大図である。図6(a)は、環状金属コードC1を示す径方向の断面図であり、同図(b)は、環状金属コードC1の側面図である。図7は、環状金属コードC1の一部を示す拡大斜視図である。
図2及び図3に示すように、環状金属コード(環状金属コードの第1形態)C1は、環状コア部3と、環状コア部3の外周面を覆う外層部4とを備えるものである。
環状コア部3は、図4に示されるように、第1の金属素線31の一部で環状コア部として必要な所定の環状径のループを形成しながら、このループに対して引き続きその第1の金属素線31の余長を螺旋状に、かつ、複数周にわたって巻き付けた後、図5に示されるように、第1の金属素線31の始端部31aと終端部31bを溶接により結合することにより形成される。
環状コア部3は、例えば、予め複数の金属素線が撚り合わされたストランド材を結合して形成すると、その結合部分はストランド材の全面溶接となるので強度低下が著しいものとなる。そこで、本実施形態では、この強度低下を避けるために1本の金属素線31を用いて上記のようにループを形成して余長を引き続き巻き付けることで、ストランド材と同等の撚り線構造としながら、第1の金属素線31の1本分の溶接で結合している。
環状コア部3の周囲の外層部4は、図6に示すように、第2の金属素線11を複数本(本実施形態では7本)撚り合わせてなる、ストランド材1で環状コア部3の外周面を覆うことにより形成される。
第1の金属素線31のループに対して、第1の金属素線31自身で引き続き螺旋状に巻き付ける1周あたりの回数は、3回以上30回以下の巻き付けであることが好ましい。
このような回数で巻きつけるのは、環状コア部として第1の金属素線31を並列揃えにすると、第1の金属素線31同士の一体感に乏しくなり、自由に動き易くなったり、外力に対して均一負荷とならない、といったことを防止するためである。したがって、このような不都合を回避するために、最低でも3回/周の巻き付けが必要である。また、30回/周を超えると、巻き付けた第1の金属素線31が環状コア部3の周方向に伸び易くなるため、環状金属コードC1となったときに均一負荷を確保するのが困難となる。
また、第1の金属素線31のループに対して、第1の金属素線31自身で引き続き螺旋状に巻き付ける周数は、本実施形態の場合には6周である。なお、ループに対して巻き付ける周数は、2周以上6周以下であることが好ましい。このような周数で巻き付けるのは、外層部4を構成するストランド材1を巻き付けて外層部4を形成する際、芯となる環状コア部3の剛性及び断面形状を確保するためである。
なお、本実施形態において、第1の金属素線31のループに対して第1の金属素線31自身で引き続き螺旋状に巻き付ける方向は、S撚り方向としている。
第1の金属素線31の材質は、C:0.08〜0.27質量%、Si:0.30〜2.00質量%、Mn:0.50〜2.00質量%、Cr:0.20〜2.00質量%を含み、かつ、Al、Nb、Ti、及びVをそれぞれ0.001〜0.10質量%の範囲で少なくともいずれか1種類含有し、残部がFe及び不可避的に混入してくる不純物からなる合金鋼を用いる。これにより、第1の金属素線31は溶接性に優れたものとなる。その結果、環状コア部3、延いては環状金属コードC1、さらには伝動ベルトの製造がいっそう容易となり、更に破断強度も向上する。
また、第1の金属素線31の線径は、0.10mm以上0.40mm以下となっている。
上記のように、環状コア部3は第1の金属素線31を1本使用して形成しており、第1の金属素線31の1本分の溶接が行われる。金属素線1本分の溶接では、溶接の断面積が小さくなるため、第1の金属素線31の線径を比較的太くすることが要求されるが、本実施形態では、第1の金属素線31の線径が、第2の金属素線11の線径よりも太い、0.10mm以上0.40mm以下としてある。
その一方、一般に線径を増大させると、素線内において中心から径方向に離れる外側ほど大きな引張応力や圧縮応力が作用する傾向にある。しかし、この第1の金属素線31の始端部31aと終端部31bの結合部分は、外層部4とは異なり環状金属コードC1の中心付近に位置するので曲げ応力が軽減される。そのため、第1の金属素線31は、線径が太くても特に不都合が生じにくい。
外層部4は、環状コア部3を形成する第1の金属素線31とは別の第2の金属素線11からなるストランド材1により形成されている。この外層部4を構成するストランド材1は、環状コア部3に対して複数周にわたって巻き付けられるとともに、図3及び図5に示されるように、螺旋状に巻き付けられる。このストランド材1は、捩れがないように巻き付けられる。捩れなく巻き付けることによって、ストランド材1の巻き緩みを抑制することができる。
この外層部4を構成するストランド材1は、第2の金属素線11を複数本撚り合わせたものである。本実施形態においては、ストランド材1は、図3及び図6(a)に示すように、1本の第2の金属素線11を中心とし、この第2の金属素線11の外周面に6本の第2の金属素線11をS撚りに巻き付けたものである。このように、ストランド材1は幾何学的に安定した7本撚りであるため、使用過程で形状が崩れることがなく、丈夫で破断が生じにくいものとなっている。
また、本発明のストランド用の第2の金属素線の線径は0.06mm以上0.30mm以下である。このように、本発明では、第2の金属素線の直径が0.06mm以上であるので、ストランド材1の剛性を最低限維持することができ、外層部4を変形に耐え得るものとすることができる。また、第2の金属素線の直径が0.30mm以下であるので、外層部4を構成するストランド材1の剛性が過度に大きくならずにすむ。したがって、環状金属コードC1は、繰り出し応力による疲労破断を生じにくくすることができる。
つまり、このような径の第2の金属素線11でストランド材1を形成すると、適度な剛性を有するストランド材1を得ることができる。よって、環状コア部3に対する外層部4(ストランド材1)の巻き付けが容易となり、かつ外層部4の巻き緩みが生じにくくなる。
本実施形態において、外層部4を構成するストランド材1は、図3に示すように、環状コア部3の外周面に沿って6周巻き付けられている。外層部4を構成するストランド材1の環状コア部3への巻き付け回数は、6周以上8周以下であることが好ましい。このように、環状金属コードC1の外層部4は、連続した1本のストランド材1から構成されているが、図6(a)に示すように、断面でみると、ストランド材1が、環状コア部3の周りに6つ均等に配置された形状となっている。この断面形状は、環状コア部3の周りに、ストランド材1を6本撚りした場合の断面形状と実質的に同一である。したがって、環状金属コードC1は幾何学的に安定した構造を有している。このため、環状金属コードC1は、破断強度及び耐疲労性に優れ、かつ径方向の変形に耐え得るものとなっている。
環状金属コードC1は、図6(a)に示すように、省スペース化に有利な横断面細密充填撚り構造であり、1本の環状コア部3の周りに1層目の外層部ではストランド材1を6本配置した構成、2層目の外層部ではストランド材1を12本配置した構成となるが、環状コア部3とストランド材1とが同一の直径である場合、線形公差によっては、1層目の外層部でストランド材1を6周させると、断面上、6本分の配列が困難となりストランド材1同士が干渉しあったり、環状コア部3との接触が不均一となったりする。そこで、環状コア部3の直径がストランド材1の直径より大きいと、このような不具合を回避することができる。
外層部4を構成するストランド材1は、図3及び図5に示すように、環状コア部3の外周面にZ撚り、つまりストランド材1を構成する第2の金属素線11の撚り方向とは逆方向に巻き付けられる。一方、環状コア部3は第1の金属素線31がS撚りされた構成であり、ストランド材1は第2の金属素線11がS撚りされた構成であるため、環状金属コードC1はS撚り構造とZ巻き構造を組み合わせたものとなる。よって、第1の金属素線31及び第2の金属素線11の撚り方向と、環状コア部3に対する外層部4の巻き付け方向とが逆であり、捩れにくく、表面外観に凹凸の少ない環状金属コードC1を得ることができる。
また、外層部4を構成するストランド材1は、環状コア部3の中心軸に対して所定の巻き付け角度で巻き付けられている。このため、ストランド材1が乱れなく巻かれ、表面状態が略均一な環状金属コードC1を得ることができる。本実施形態においては、図6(b)に示すように、X方向、すなわち環状コア部3の中心軸が延びる方向に対するストランド材1の巻き付け角度θは、4.5度以上13.8度以下となっている。巻き付け角度θを4.5度以上とすることで、ストランド材1の巻き緩みが生じにくくなる。巻き付け角度θを13.8度以下とすることで、ストランド材1の伸度が過度に大きくなることを防ぐことができる。つまり、環状コア部3に巻き付ける外層部4のストランド材1の巻き付け角度θを4.5度以上13.8度以下とすることで、適度な伸度を有し、かつしなやかな環状金属コードC1を得ることができる。
図7に示すように、外層部4を構成するストランド材1の巻き付けの始端部1aと巻き付けの終端部1bとは、互いに溶接によって結合されており、さらに、その結合部分は、接続部材7によって覆われている。また、このストランド材1の(巻き付け始端部1aと巻き付け終端部1bとの)結合部分と第1の金属素線31の(始端部31aと終端部31bとの)結合部分とは、環状金属コードC1の環状方向における位置が異なるようにしている。このように、結合位置を異なるように配置することで、強度的に弱くなりやすい箇所が集中することを回避できる。
この接続部材7は、コイルバネ状に形成された可撓性に優れるスリーブからなるもので、この接続部材7がストランド材1の両端部である始端部1aと終端部1bとの結合部分の外周を覆うように接着剤によって固定されている。コイルバネ状スリーブからなる接続部材7は、ストランド材1の湾曲形状に合わせて柔軟に変形し、ストランド材1の溶接箇所を保護及び補強する。
このように、可撓性に優れたコイルバネ状スリーブからなる接続部材7を用いてストランド材1の始端部1aと終端部1bとを結合することにより、環状コア部3側のストランド材1の始端部1aと、この始端部1aに対して傾斜した外層部4のストランド材1の終端部1bとの結合部分を、その形状に合わせて良好に覆った状態に取り付けることができる。これにより、このストランド材1の始端部1aと終端部1bとの結合部分を良好に保護することができる。また、接続部材7は結合部分におけるストランド材1の変形を阻害しないため、結合部分とその他の箇所とのストランド材1の可撓性を同等に確保でき、環状金属コードC1の機械的特性を全周に亘って略均一にすることができる。
また、この始端部1aと終端部1bとの結合部分は、環状金属コードC1の円弧に対して、その円弧の内周側及び外周側を除く、両側部側の一方に配置されている。これにより、環状金属コードC1がその径方向に変形しても、この結合部分に作用する負荷の低減を図ることができ、結合部分における破断を抑制できる。
このように、環状金属コードC1は、1本の第1の金属素線31からなる環状コア部3の外周に外層部4を構成する1本のストランド材1を巻き付けた後に、接続部材7を用いてストランド材1の始端部1aと終端部1bとを結合することによって形成されている。
続いて、環状金属コードC1の製造方法について説明する。図8は、環状金属コードC1を製造するための製造装置の一例を示す斜視図である。
この製造装置M1は、環状コア部3を周方向に回転させるドライビングユニット40と、リール51に巻かれたストランド材1を環状コア部3の巻き付け部に供給するストランド材1のサプライ部50とを有する。
上記ストランド材1のサプライ部50は、所定位置に固定されている。
ドライビングユニット40は、弓形の保持アーム41に設置され、駆動モータと連結された、環状コア部3を周方向に回転させる2つのピンチローラ42a,42bを有する。
上記保持アーム41には、環状コア部3の回転方向と逆方向に位置するストランド材1の供給側に、環状コア部3の周囲を囲むクランプユニット43を設けている。このクランプユニット43は、2個のローラ43a,43bからなり、環状コア部3の横方向の振れを防止し、安定した周方向回転を維持し、ストランド材1の巻き付け点の位置決めを行い、高い巻き付け性を得ている。なお、この例では環状コア部3を垂直にして横振れを抑えて、周方向に回転させている。
上記2個のローラ43a,43bからなるクランプユニット43は、環状コア部3の横方向の振れを防止し、最終仕上げコード径でも環状コア部3の周囲を囲んで、安定した周方向回転を維持し、ストランド材1の撚り口として、巻き付け点を固定する機能を持たせればよいので、溝形状は特に拘らず、コ字形の溝形状のほか、円弧状の溝形状、V字形の溝形状でもよい。
上記保持アーム41は、クランプユニット43の部分を支点にして、回転円盤61とクランクシャフト62からなる揺動機構60によって振り子運動するように、スタンド44に揺動可能に設置されている。
保持アーム41に保持された環状コア部3は、振り子運動の周期の一端で、図9の実線で示すように、リール51が、環状コア部3の輪の外に位置し、環状コア部3の振り子運動の周期の他端で、図9の実線で示すように、環状コア部3の輪の中に位置するように、スイングする。
ストランド材1のサプライ部50には、前後一対の対向するカセットスタンド52が、保持アーム41に保持された環状コア部3の振り子運動を妨げない距離をおいて水平に設置され、カセットスタンド52の先端に、環状コア部3の面を挟んで対向するリール受け渡し機構が設けられている。
サプライ部50は、ストランド材1を巻き取ったリール51と、このリール51の外径より少し大きい径で、且つ少なくともリール内幅に相当する円筒形状の外周壁を有するカセット53とからなる。リール51は、ストランド材1の巻き面全体を被うようにカセット53内に回転可能に収容され、所謂カートリッジ化されている。カセット53の外周壁には、巻き出し穴が形成され、この巻き出し穴からストランド材1が環状コア部3の巻き付け点のクランプユニット43に向かって引き出されている。ストランド材1は、予め調整されたコイル径でリール51に巻かれており、サプライ部50のカセット53内にセットされている。
前記一対のカセットスタンド52の先端の対向位置には、それぞれカセット53を抜き差し自在に装着することができるガイドロッドと、一方のガイドロッドに装着されたカセット53を他方のガイドロッドに移し替える受け渡し機構とが設置されている。この受け渡し機構は、エアーシリンダによってロッドを出入りさせ、カセット53の中心部を押すことにより、一方のガイドロッドに装着されたカセット53を他方のガイドロッドに移し替えることができる。
このような構成を有する製造装置M1を用いた場合、環状金属コードC1は以下の工程を経て製造される。
まず、第1の金属素線31の一部で環状コア部として必要な所定の環状径のループを形成しながら、このループに対して引き続きその第1の金属素線31の余長を螺旋状に、かつ、複数周にわたって巻き付けた後、図5に示したように、第1の金属素線31の始端部31aと終端部31bを溶接により結合し、環状コア部3を形成する。なお、環状コア部3の形成においても、第1の金属素線31の余長を螺旋状に巻き付ける工程は、これ以降説明する製造装置M1を用いたストランド材1の巻き付け工程と同様に行なうことができる。
環状コア部3を形成した後、ストランド材1の巻き付け始端(始端部1a)を、粘着テープ等を用いて環状コア部3に仮止めする。仮止め後、環状コア部3を製造装置M1のドライビングユニット40にセットし、この環状コア部3を周方向に回転させて、ストランド材1の環状コア部3への巻き付けを開始する。
環状コア部3を周方向に回転させ、Z巻きの場合は、ストランド材1のリール51が環状コア部3の面に対して左側に位置し、図9に実線で示すリール51が環状コア部3の輪の外に位置する状態から、環状コア部3を、クランプユニット43を支点にして、図10に実線で示すリール51が環状コア部3の輪の中に入る位置まで、環状コア部3を振り子運動させ、カセットスタンド52の先端に設けてあるエアーシリンダにより、リール51を環状コア部3の面に対して直角に移動させ、他方のカセットスタンド52のガイドロッドにカセット53を移し替えると、巻き付けが半巻き行われる。その後、図10に実線で示すリール51が環状コア部3の輪の中に位置する状態から、環状コア部3を、クランプユニット43を支点にして、図9に実線で示すリール51が環状コア部3の輪の外に出る位置まで、環状コア部3を振り子運動させ、環状コア部3の輪の外で、再びエアーシリンダによりカセット53とともにリール51を環状コア面に対して直角に移動させると、1巻き付けが完了する。このような動作を繰り返すことにより、外層部4となるストランド材1は環状コア部3の外周面に螺旋状に巻き付けられることとなる。
リール51は、所定位置で環状コア部3のコア面を横断往復し、環状コア部3は、ストランド材1の巻き付け点となるクランプユニット43を支点にして、振り子運動するので、リール51からストランド材1の巻き付け点までの距離がほぼ一定に保たれ、巻き付けの際に、リール51から引き出されるストランド材1が緩んだりせず、一定の張力下でストランド材1が環状コア部3に巻き付けられる。
ストランド材1を巻いたリール51の移動軌跡と、振り子運動する環状コア部3の移動軌跡とを、図示すると、図11のようになる。
即ち、リール51が、環状コア部3の外側の図11(a)に示す位置にある状態から、図11(b)に示す環状コア部3の輪の中にリール51が位置する状態まで環状コア部3を振り子運動させ、この図11(b)に示す位置で、リール51を図11(c)に示す環状コア部3の反対面に移し替え、次いで、環状コア部3の反対面にリール51がある状態で、図11(c)に示す位置から図11(d)に示す環状コア部3の輪の外にリール51が位置する状態まで、環状コア部3を振り子運動させ、リール51を環状コア部3の反対面から元の面の始点位置(図11の(a)の位置)に戻すというサイクルを繰り返す。このように、本実施形態では、図11の(a)→(b)→(c)→(d)→(a)のように、リール51に対して、環状コア部3を振り子移動させ、図11の(b)→(c)、(d)→(a)のように、環状コア部3のコア面に対してリール51を直角移動させることにより、ストランド材1を環状コア部3の周囲に螺旋状に巻き付けている。
ストランド材1の巻き付け終了後、ストランド材1の巻き付け終端部1bを接続部材7(図7参照)に挿通させるとともに始端部1aの仮止めを取り外し、始端部1aと終端部1bとを溶接して結合する。次いで、始端部1aと終端部1bとの結合部分に接着材を塗布し、結合部分を覆う位置まで接続部材7をスライドさせる。このようにすると、図7に示されるように、接着材によって接続部材7が結合部分に固定され、結合部分が接続部材7によって保護され、結合箇所における破断が抑制される。
ここで、ストランド材1は、環状金属コードC1の環状形状に伴って結合部分が多少湾曲するが、接続部材7はコイルバネ状スリーブからなる可撓性に優れたものであるので、接続部材7を結合部分へ容易に装着することができる。
そして、上記のように、環状コア部3にストランド材1を巻き付けて始端部1aと終端部1bとを結合することにより、環状コア部3の周囲に外層部4を設けることができる。
始端部1a及び終端部1bを結合した後、上述の環状コア部3及び外層部4に低温焼鈍処理を施すと良い。より具体的には、真空中又は減圧雰囲気中にアルゴンを導入した圧力室内で、環状コア部3及び外層部4に対して熱処理を施す。熱処理する際の温度は、70℃〜380℃である。これにより、第1の金属素線31及び第2の金属素線11の内部歪みを除去することができ、歪みのない環状金属コードC1を得ることができる。このような環状金属コードC1を伝動ベルトに用いた場合、蛇行せずに回転する伝動ベルトを得ることができる。蛇行せずに回転する伝動ベルトは、周囲の部品と接触して磨耗することが無いため、長期間にわたって高性能を維持することができる。
なお、低温焼鈍処理は、始端部1aと終端部1bとの結合部分に接続部材7を接着するための接着剤を塗布するよりも前に行うと良い。
以上のように、本実施形態の伝動ベルトB1は、抗張力体として環状金属コードC1を有している。環状金属コードC1は、1本の第1の金属素線31で形成した環状コア部3と、第2の金属素線11を7本撚り合わせてなる1本のストランド材1により、この環状コア部3に対して螺旋状に複数周巻き付けられて環状コア部3の外周面を覆う外層部4とで構成されている。
したがって、従来のようにストランド材を環状コア部とする構成では環状コア部の環状方向の一部分で全面溶接の結合箇所が形成されるため強度低下のおそれがあるが、本実施形態では1本の金属素線で環状コア部3を形成しているので、第1の金属素線31の1本分だけを、つまり環状コア部3を部分的に一箇所溶接するだけで済み、強度の向上を図ることができる。
しかも、本実施形態では、外層部4を形成する際には、ストランド材1を複数本巻き付けるのではなく、環状コア部3の周囲にストランド材1を連続して6周にわたって巻き付けるため、ストランド材1は1本あればよい。したがって、ストランド材1を複数本使用する場合と比べて、結合箇所が少なくなるため、環状金属コードC1の破断強度の低下を抑制することができるとともに、製造を容易とすることができる。また、外層部4のストランド材1の巻き付けは所定の巻き付け角度で行なうので、ストランド材1の巻き乱れがなく、表面状態が略均一な環状金属コードC1を得ることができる。このような環状金属コードC1には外からの力が均一に付与されることとなるため、破断強度の低下を抑制できる。
また、ストランド材1の始端部1aと終端部1bとは接続部材7を用いて結合され、この接続部材7によって結合部分が保護されている。この場合、ストランド材1の結合部分がより破断しにくくなる。また、接続部材7がコイルバネ状スリーブからなるので、装着の容易化を図ることができ、したがって、ストランド材1の始端部1aと終端部1bとの結合が容易となる。
また、ストランド材1を構成する第2の金属素線11の直径は、0.06mm以上0.30mm以下であり、この場合、ストランド材1に適度な剛性をもたせることができ、ストランド材1が良好な耐疲労性を有するものとすることができる。
また、ストランド材1は第2の金属素線11をS撚りしたものであるが、環状コア部3に対する外層部4となるストランド材1の巻き付けはZ巻きとなっている。この場合、表面外観に凹凸が少ないうえに捩れにくく、かつ環状コア部3に対する外層部4のストランド材1の巻き緩みが生じにくい環状金属コードC1を得ることができる。
また、環状コア部3の中心軸に対するストランド材1の巻き付け角度は4.5度以上13.8度以下となっている。この場合、ストランド材1の巻き付け作業が容易となる。また、適度な伸度を有し、かつストランド材1の巻き緩みがない環状金属コードC1を得ることができる。
また、外層部4となるストランド材1は環状コア部3の外周面に沿って6周にわたって巻き付けられている。これにより、外層部4が環状コア部3を密に覆うこととなるため、環状金属コードC1を幾何学的に安定したものとすることができる。その結果、破断強度及び耐疲労性に優れ、径方向の変形に耐え得る環状金属コードC1を確実に得ることができる。
また、環状コア部3及び外層部4には低温焼鈍処理が施されている。この場合、第1の金属素線31及び第2の金属素線11の内部歪みを除去することができる。内部歪みが除去された第1,第2の金属素線を用いることで、更に破断しにくい環状金属コードC1を確実に得ることができる。
以上のように、破断強度及び耐疲労性に優れ、かつ製造が容易な環状金属コードC1を用いるため、伝動ベルトB1もまた、破断強度及び耐疲労性に優れ、かつ製造が容易なものとなる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。
例えば、本実施形態の伝動ベルトB1の環状金属コードC1では、ストランド材1を環状コア部3の外周面に沿って6周巻き付けて外層部4を形成したが、これを、環状コア部3を太径化して7周或いは8周巻き付けてもよい。
また、本実施形態の伝動ベルトB1の環状金属コードC1では、図6(a)に示したように、環状コア部3の外周面を1層のストランド材1が覆っている。これを、環状コア部3の外周面を複数層のストランド材1が覆うようにしてもよい。例えば、環状コア部3の外周面を2層のストランド材1で覆う場合には、ストランド材1を環状コア部3の外周面に6周巻き付けて1層目を形成した後、かかる1層目の外周面にストランド材1を12周巻き付けて2層目を形成することとなる。なお、2層目に相当する12周の巻き付け方向(撚り方向)は、1層目に相当する6周の巻き付け方向とは逆方向とすることが好ましい。このような巻き付け方向とすることは、良好な巻き付け性を得、凹凸の少ない外面を得る上で重要である。
また、本実施形態の伝動ベルトB1の環状金属コードC1では、ストランド材1を構成する第2の金属素線11をS撚りとし、環状コア部3に対する外層部4のストランド材1の巻き付けをZ撚りで行なうとしたが、ストランド材1の第2の金属素線11をZ撚りとし、環状コア部3に対する外層部4のストランド材1の巻き付けをS撚りで行なう構成としてもよい。
また、本実施形態の環状金属コードC1は、図6(a)に示したように、断面が略円形状となっているが、断面を扁平形状としてもよい。この場合、略円形状の環状金属コードC1にプレス等を施して、変形させることとなる。
また、第1の金属素線31及び第2の金属素線11の材料は、上記のものに限られない。
また、本実施形態の環状金属コードC1は、環状コア部として、第1の金属素線の一部が所定の環状径のループとされ、当該ループに対して第1の金属素線の余長が螺旋状に複数周巻き付けられ、第1の金属素線の始端部と終端部が結合されて形成されたものであるが、環状コア部を別の形態とすることもできる。
以下、その形態例について説明する。
第2形態の環状金属コードは、第1の金属素線を複数本撚り合わせてなる第1のストランド材の両端を結合することによって形成された環状コア部と、第2の金属素線を複数本撚り合わせてなる第2のストランド材を、環状コア部に対して螺旋状に且つ複数周にわたって巻き付けることによって形成され、環状コア部の外周面を覆う外層部と、を有しており、外層部を形成する第2のストランド材は、環状コア部の中心軸に対して所定の巻き付け角度で巻き付けられており、当該第2のストランド材の巻き付け始端部と巻き付け終端部とは結合されているものである。
図12に示されるように、環状金属コード(環状金属コードの第2形態)C2は、環状コア部23と環状コア部23の外周面を覆う外層部24とを備えるものである。
環状コア部23は、第1のストランド材21の両端を結合することによって形成される。そのため、環状コア部23は、図13に示されるように結合部分23aを有している。本実施形態では、第1のストランド材21の両端は溶接によって結合されている。溶接で結合した場合には、他の方法で結合した場合と比較して結合部分の増径が生じにくい。そのため、結合部分においても第2のストランド材22の巻き付けがスムーズな環状コア部23を得ることができる。
第1のストランド材21は、図14(a)に示されるように、第1の金属素線25を複数本撚り合わせたものである。本実施形態においては、第1のストランド材21は、図12に示されるように、1本の第1の金属素線25を中心とし、この第1の金属素線25の外周面に6本の第1の金属素線25をS撚りに巻き付けたものである。このように、第1のストランド材1は幾何学的に安定した7本撚りであるため、使用過程で形状が崩れることがなく、丈夫で破断が生じにくいものとなっている。
第1の金属素線25は合金鋼であり、材質として、C:0.08〜0.27質量%、Si:0.30〜2.00質量%、Mn:0.50〜2.00質量%、Cr:0.20〜2.00質量%を含んでいる。また、Mo:0.01〜1.00質量%、Ni:0.10〜2.00質量%、Co:0.10〜2.00質量%、及びW:0.01〜1.00質量%のうち少なくともいずれか1種類を含有している。更に、Al、Nb、Ti、及びVをそれぞれ0.001〜0.10質量%の範囲で少なくともいずれか1種類含有し、残部がFe及び不可避的に混入してくる不純物からなっている。このような材料からなる第1の金属素線25を第1のストランド材21に用いているため、第1のストランド材21は溶接性が良好で且つ耐熱性に優れたものとなっている。
第1の金属素線25は、0.06〜0.40mmといった直径を有している。仮に、第1の金属素線25の直径が0.06mmよりも大きいので、第1のストランド材21の剛性が十分となり、環状コア部23を変形しにくいものとすることができる。第1の金属素線25の直径が0.40mmよりも小さいので、第1のストランド材21の剛性が過度に大きくならず、環状金属コードC2を繰り返し応力による疲労破断が生じにくいものとすることができる。
また、環状コア部23を形成する第1のストランド材21は、環状金属コードC2の断面中心に位置するため、環状金属コードC2を曲げた状態で第2のストランド材22と比較して応力が小さくなる。そのため、第1の金属素線25の直径を0.06〜0.40mmの範囲内で第2の金属素線26より太径として剛性を高めることもできる。
外層部24は、環状コア部23を軸芯として第2のストランド材22を巻き付けることにより形成される。第2のストランド材22は、図14(a)に示されるように、第2の金属素線26を複数本撚り合わせたものである。
第2の金属素線26は、材料として0.60質量%以上のCを含む高炭素鋼を用いる。0.60質量%以上のCを含む材料を選定することで、第2の金属素線26をより破断強度に優れた鋼線とすることができる。なお、第2の金属素線26は、第1の金属素線25と同質の材料からなっていてもよいが、溶接接合をしない第2の金属素線26には、0.60質量%以上のCを含む材料を用いることがより好ましい。
第2の金属素線26の直径は、第1の金属素線25の直径と同一もしくは第1の金属素線25の直径より小径であって、0.06〜0.30mmとなっている。より好ましくは、第2の金属素線26の直径は0.06〜0.22mmである。このような直径の第2の金属素線26で第2のストランド材22を形成すると、第1のストランド材21と同様、適度な剛性を有する第2のストランド材22を得ることができる。そのため、環状コア部23に対する第2のストランド材22の巻き付けが容易となり、且つ第2のストランド材22の巻き緩みが生じにくくなる。
本実施形態において、第2のストランド材22は、図12に示されるように、第2の金属素線26の外周面に6本の第2の金属素線26をS撚りに巻き付けたものである。つまり、第2のストランド材22は幾何学的に安定した7本撚りであるため、使用過程で形状が崩れることがなく、丈夫で破断が生じにくいものとなっている。第2のストランド材22と第1のストランド材21とでは、用いる素線の直径、本数、及び撚り方が同一である。もしくは、第2のストランド材22より第1のストランド材21の方が用いる素線の直径が大きい。したがって、第2のストランド材22は第1のストランド材21と同一の直径を有するか、または第1のストランド材21の直径が第2のストランド材22の直径より大きい。
第2のストランド材22は、環状コア部23に対して複数周にわたって巻き付けられると共に、図12及び図13に示されるように、螺旋状に巻き付けられる。第2のストランド材22は、捩れが無いように巻き付けられる。捩れ無く巻き付けることによって、第2のストランド材22の巻き緩みを抑制することができる。
本実施形態において、第2のストランド材22は環状コア部23の外周面に沿って6周巻き付けられている。第2のストランド材22は第1のストランド材21と同一の直径を有しているので、環状コア部23の外周面には、第2のストランド材22が実質的に隙間無く巻き付けられる。よって、外層部24が環状コア部23を密に覆うこととなる。環状金属コードC2の断面は、図14(a)に示されるように、環状コア部23である第1のストランド材21の周りに6つの第2のストランド材22が配列された形状となる。この断面形状は、第1のストランド材21あるいは第2のストランド材22を7本撚りした場合の断面形状と同一である。このように、環状金属コードC2は幾何学的に安定した構造を有しているため、破断強度及び耐疲労性に優れ、且つ径方向における変形に耐え得るものとなっている。
環状金属コードC2は、図14(a)に示されるように、省スペース化に有利な横断面細密充填撚り構造であり、1本の環状コア部23の周りに1層目の外層部では第2のストランド材22を6本配置した構成、2層目の外層部では第2のストランド材22を12本配置した構成となるが、第1のストランド材21と第2のストランド材22とが同一の直径である場合、線径公差によっては、1層目の外層部で第2のストランド材22を6周させると、断面上、6本分の配列が困難となり第2のストランド材22同士が干渉しあったり、環状コア部23との接触が不均一となったりする。そこで、第1のストランド材21の直径が第2のストランド材22の直径より大きいと、このような不具合を回避することができる。
第2のストランド材22は、図13に示されるように、環状コア部23の外周面にZ撚りに巻き付けられる。第1のストランド材21及び第2のストランド材22自体はS撚りで形成されているため、環状金属コードC2はS撚りとZ撚りとが混在したものとなる。よって、捩れにくく、表面外観に凹凸の少ない環状金属コードC2を得ることができる。
また、第2のストランド材22は、環状コア部23の中心軸に対して所定の巻き付け角度で巻き付けられている。このため、第2のストランド材22が乱れなく巻かれ、表面状態が略均一な環状金属コードC2を得ることができる。本実施形態においては、図14(b)に示されるように、X方向、すなわち環状コア部23の中心軸が延びる方向、に対する第2のストランド材22の巻き付け角度θは、4.5〜13.8度となっている。巻き付け角度θを4.5度より大きくすることで、第2のストランド材22の巻き緩みが生じにくくなる。巻き付け角度θを13.8度より小さくすることで、第2のストランド材22の伸度が過度に大きくなることを防ぐことができる。つまり、第2のストランド材22の巻き付け角度θを4.5〜13.8度とすることで、適度な伸度を有し、且つ曲げやすい環状金属コードC2を得ることができる。
図15に示されるように、第2のストランド材22の巻き付け始端部22aと巻き付け終端部22bとは接続部材27によって結合されている。接続部材27を用いることにより、第2のストランド材22の巻き付け始端部22a及び巻き付け終端部22bの結合が容易となる。環状コア部23の周方向において、第2のストランド材22の結合部分の位置は、環状コア部23の結合部分の位置と異なっている。結合部分の位置を互いにずらすことにより、環状コア部23及び外層部24の同時破断を抑制できる。
接続部材27は例えば真鍮といった金属からなっている。接続部材27は略円柱形状を呈している。接続部材27の寸法は、例えば直径W1が約1.1mm、長さL1が約8mmとなっている。接続部材27の両端には、図16(a)及び図16(b)にも示されるように、断面多角形状の凹部28(穴部)がそれぞれ設けられている。一方の凹部28には第2のストランド材22の巻き付け始端部22aが挿入されており、他方の凹部28には第2のストランド材22の巻き付け終端部22bが挿入されている。凹部28は、より具体的には略正六角形状を呈している。凹部28の寸法は、例えば深さL2が約1.5mm、幅W2が約0.7mmとなっている。
接続部材27において、各凹部28の外壁に相当する部分はかしめ治具等によってかしめられている。この部分をかしめることによって、第2のストランド材22の巻き付け始端部22aと巻き付け終端部22bとを、接続部材27を介して結合することができる。凹部28の断面は略正六角形状となっているため、角に相当する部分27aでは、接続部材27の内壁と第2のストランド材22との間に間隙が形成されることになる。この間隙が、かしめた際に肉盗みとして機能するため、接続部材27の外面の変形を抑制することが可能となる。
接続部材27の軸方向における略中央部分、すなわち凹部28と凹部28との間には、仕切り壁27bが設けられている。
ここで、例えば、内部に貫通孔を有する円筒形状の接続部材を考える。このような形状の接続部材を用いる場合には、貫通孔の両端から第2のストランド材22の巻き付け始端部22aと巻き付け終端部22bとを挿通し、貫通孔内でこれらを突き合わせて結合することとなる。このため、円筒形状の接続部材に折れ曲がりや割れが生じ易くなる可能性がある。接続部材に折れ曲がりや割れが生じると、貫通孔内の第2のストランド材22が破断するおそれがある。本実施形態のように、接続部材27の略中央部分に仕切り壁27bを設けた場合には、接続部材27に折れ曲がりや割れが生じにくくなり、接続部材27の機械的強度を上げることができる。
このように、外層部24は、第2のストランド材22を環状コア部23に巻き付けた後に、接続部材27で第2のストランド材22の巻き付け始端部22aと巻き付け終端部22bとを結合することによって形成されている。
続いて、環状金属コードC2の製造方法について説明する。製造装置としては、環状金属コードC1と同様に図8から図10に示したものを使用できる。
まず、第2のストランド材22の巻き付け始端を、粘着テープ等を用いて環状コア部23に仮止めする。仮止め後、環状コア部23を製造装置M1(図8から図10参照)のドライビングユニット40にセットし、この環状コア部23を周方向に回転させて、第2のストランド材22の環状コア部23への巻き付けを開始する。
第2のストランド材22の巻き付けは、環状金属コードC1と同様、図11に示されるように行われ、外層部24となる第2のストランド材22は環状コア部23の外周面に螺旋状に巻き付けられることとなる。
第2のストランド材22の巻き付け終了後、図15に示されるように、第2のストランド材22の巻き付け始端部22aと巻き付け終端部22bとを接続部材27の凹部28にそれぞれ挿入し、挿入部分をかしめ治具等で外からかしめる。これにより、第2のストランド材22からなる外層部24を得ることができる。
接続部材27をかしめた後、上述の環状コア部23及び外層部24に低温焼鈍処理を施す。より具体的には、真空中又は減圧雰囲気中にアルゴンを導入した圧力室内で、環状コア部23及び外層部24に対して熱処理を施す。熱処理する際の温度は、70〜380度である。これにより、第1の金属素線25及び第2の金属素線26の内部歪みを除去することができ、歪みのない環状金属コードC2を得ることができる。このような環状金属コードC2を伝動ベルトに用いた場合、蛇行せずに回転する伝動ベルトを得ることができる。蛇行せずに回転する伝動ベルトは、周囲の部品と接触して磨耗することが無いため、長期間にわたって高性能を維持することができる。
以上のように、環状金属コードC2では、第1の金属素線25を7本撚り合わせてなる第1のストランド材21に、第2の金属素線26を7本撚り合わせてなる第2のストランド材22を巻き付けるので、環状金属コードC2を丈夫なものとすることができる。第1のストランド材21及び第2のストランド材22は別々に結合されるので、第1のストランド材21及び第2のストランド材22をまとめて結合する場合と比べて、環状金属コードC2が完全に破断する可能性を抑制できる。第1のストランド材2から環状コア部23を形成し、かかる環状コア部23を軸芯として第2のストランド材22を巻き付けるため、破断強度の大きい環状金属コードを得ることができる。外層部24を形成する際には、第2のストランド材22を複数本巻き付けるのではなく第2のストランド材22を6周にわたって巻き付けるので、第2のストランド材22は1本あればよい。よって、第2のストランド材22を複数本使用する場合と比べて結合箇所が少なくなるため、環状金属コードC2の破断強度をより大きくすることができる共に、製造を容易とすることができる。第2のストランド材22の巻き付けは所定の巻き付け角度で行なうので、第2のストランド材22の巻き乱れがなく、表面状態が略均一な環状金属コードC2を得ることができる。このような環状金属コードC1には外からの力が均一に付与されることとなるため、破断強度をさらに向上させることができる。
以上のように、破断強度及び耐疲労性に優れ、かつ製造が容易な環状金属コードC2を用いるため、伝動ベルトB1もまた、破断強度及び耐疲労性に優れ、かつ製造が容易なものとなる。
なお、環状金属コードC2は、種々の変形が可能である。
例えば、上記環状金属コードC2では、第2のストランド材22を環状コア部23の外周面に沿って6周巻き付けるとした。これを、第1のストランド材21と第2のストランド材22との直径が異なる場合には、7周或いは8周巻き付けるとしてもよい。
また、上記環状金属コードC2では、図14(a)に示されるように、環状コア部23の外周面を1層の第2のストランド材22が覆っている。これを、環状コア部23の外周面を複数層の第2のストランド材22が覆うようにしてもよい。例えば、環状コア部23の外周面を2層の第2のストランド材22で覆う場合には、第2のストランド材22を環状コア部23の外周面に6周巻き付けて1層目を形成した後、かかる1層目の外周面に第2のストランド材22を12周巻き付けて2層目を形成することとなる。
また、上記環状金属コードC2では、第1のストランド材21及び第2のストランド材22をS撚りとし、環状コア部23に対する第2のストランド材22の巻き付けをZ撚りで行なうとしたが、第1のストランド材21及び第2のストランド材22をZ撚りとし、環状コア部23に対する第2のストランド材22の巻き付けをS撚りで行なうとしてもよい。
また、上記環状金属コードC2は、図14(a)に示されるように、断面が略円形状となっているが、断面を扁平形状としてもよい。この場合、略円形状の環状金属コードC2にプレス等を施して、変形させることとなる。
また、第1の金属素線25及び第2の金属素線26の材料は、上記のものに限られない。
また、本実施形態の伝動ベルトB1は、環状金属コードを5本有するとしたが、環状金属コードの本数はこれに限られない。求められる耐屈曲性及び耐久性に応じて、環状金属コードの本数を調整することが可能である。
また、伝動ベルトの種類は一般産業用Vベルトに限られない。図17は、伝動ベルトの他の変形例を示す断面斜視図である。図17に示される伝動ベルトB2は、歯付タイミングベルトであって、環状金属コードC1またはC2を抗張力体とし被覆部80で覆ったものである。被覆部80は、例えばゴムといった材料を含んでいる。このような伝動ベルトB2もまた、破断強度及び耐疲労性に優れたものとなる。
本実施形態に係る伝動ベルトの断面斜視図である。 環状金属コード(第1形態)の斜視図である。 環状金属コードを示す径方向の断面斜視図である。 環状金属コードに含まれる環状コア部の金属素線のループ部分に引き続き金属素線を巻き付けていく様子を示す斜視図である。 (a)は環状金属コードに含まれる環状コア部にストランド材を1周巻き付けた様子を示す斜視図であり、(b)は環状コア部の結合部分を示す拡大図である。 (a)は環状金属コードを示す径方向の断面図であり、(b)は環状金属コードの側面図である。 環状金属コードの外層部の結合部を含む、一部を示す拡大斜視図である。 環状金属コードを製造するための製造装置の一例を示す斜視図である。 環状コア部の振り子運動の周期の一端でリールが環状コア部の輪の外に位置する状態を実線で示し、環状コア部の振り子運動の周期の他端でリールが環状コア部の輪の中に位置する状態を鎖線で示した図8の装置の正面図である。 図9とは反対に、環状コア部の振り子運動の周期の一端でリールが環状コア部の輪の中に位置する状態を実線で示し、環状コア部の振り子運動の周期の他端でリールが環状コア部の輪の外に位置する状態を鎖線で示した図8の装置の正面図である。 本実施形態に係る環状金属コードを製造する際のリールの移動状態を上面から見たときの概念図である。 環状金属コード(第2形態)を示す径方向の断面斜視図である。 環状金属コードに含まれる環状コア部に第2のストランド材を1周巻き付けた様子を示す斜視図である。 (a)は環状金属コードを示す径方向の断面図であり、(b)は当該環状金属コードの側面図である。 環状金属コードの一部を示す拡大斜視図である。 (a)は環状金属コードに含まれる接続部材の側面図であり、(b)は当該接続部材の断面図である。 伝動ベルトの変形例を示す断面斜視図である。
符号の説明
1…ストランド材、1a…巻き付け始端部、1b…巻き付け終端部、3…環状コア部、11…第2の金属素線、21…第1のストランド材、22…第2のストランド材、23…環状コア部、23a…結合部分、24…外層部、25…第1の金属素線、26…第2の金属素線、27…接続部材、27b…仕切り壁、28…凹部、31…第1の金属素線、31a…始端部、31b…終端部、4…外層部、7…接続部材(コイルバネ状スリーブ)、70,80…被覆部、B1,B2…伝動ベルト、C1…環状金属コード。

Claims (21)

  1. 抗張力体となる環状金属コードと、前記環状金属コードを覆う被覆部とを備え、
    前記環状金属コードは、
    第1の金属素線の一部が所定の環状径のループとされ、当該ループに対して前記第1の金属素線の余長が螺旋状に複数周巻き付けられ、前記第1の金属素線の始端部と終端部が結合されて形成された環状コア部と、
    第2の金属素線を複数本撚り合わせてなる1本のストランド材が前記環状コア部に対して螺旋状に複数周巻き付けられて前記環状コア部の外周面を覆い、前記ストランド材の巻き付け始端部と巻き付け終端部が結合されて形成された外層部と、を有することを特徴とする伝動ベルト。
  2. 請求項1に記載の伝動ベルトであって、
    前記第1の金属素線の前記ループに対して、前記第1の金属素線が螺旋状に巻き付けられた回数は、1周あたり3回以上30回以下であることを特徴とする伝動ベルト。
  3. 請求項1または2に記載の伝動ベルトであって、
    前記第1の金属素線の前記ループに対して、前記第1の金属素線が螺旋状に巻き付けられた周数は、2周以上6周以下であることを特徴とする伝動ベルト。
  4. 請求項1から3の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記第1の金属素線の結合部分と前記ストランド材の結合部分とは、前記環状金属コードの環状方向における位置が異なっていることを特徴とする伝動ベルト。
  5. 請求項1から4の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記第1の金属素線の両端部は、溶接によって結合されており、
    前記ストランド材の両端部は、溶接によって結合されているとともに、コイルバネ状スリーブにより覆われて補強されていることを特徴とする伝動ベルト。
  6. 請求項5に記載の伝動ベルトであって、
    前記ストランド材の両端部は、溶接によって結合された箇所に接着剤が塗布されていることを特徴とする伝動ベルト。
  7. 請求項1から6の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記第1の金属素線の線径は、0.10mm以上0.40mm以下であることを特徴とする伝動ベルト。
  8. 請求項1から7の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記ストランド材における前記第2の金属素線の撚り方向と、前記環状コア部に対する前記ストランド材の巻き付け方向とが逆であることを特徴とする伝動ベルト。
  9. 請求項1から8の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記環状コア部の中心軸に対する前記ストランド材の巻き付け角度が4.5度以上13.8度以下であることを特徴とする伝動ベルト。
  10. 請求項1から9の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記ストランド材が、前記環状コア部の外周面に沿って6周以上8周以下巻き付けられていることを特徴とする伝動ベルト。
  11. 抗張力体となる環状金属コードと、前記環状金属コードを覆う被覆部とを備え、
    前記環状金属コードは、
    第1の金属素線を複数本撚り合わせてなる第1のストランド材の両端を結合することによって形成された環状コア部と、
    第2の金属素線を複数本撚り合わせてなる第2のストランド材を、前記環状コア部に対して螺旋状に且つ複数周にわたって巻き付けることによって形成され、前記環状コア部の外周面を覆う外層部と、を有しており、
    前記外層部を形成する前記第2のストランド材は、前記環状コア部の中心軸に対して所定の巻き付け角度で巻き付けられており、当該第2のストランド材の巻き付け始端部と巻き付け終端部とは結合されていることを特徴とする伝動ベルト。
  12. 請求項11に記載の伝動ベルトであって、
    前記第1のストランド材の結合部分と前記第2のストランド材の結合部分とは、前記環状コア部の周方向における位置が異なることを特徴とする伝動ベルト。
  13. 請求項11または12に記載の伝動ベルトであって、
    前記第1の金属素線の線径は、0.06mm以上0.40mm以下であることを特徴とする伝動ベルト。
  14. 請求項11から13の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記第1のストランド材と前記第2のストランド材とが同一の直径を有する、または前記第1のストランド材の直径が前記第2のストランド材の直径より大きいことを特徴とする伝動ベルト。
  15. 請求項11から14の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記第1のストランド材における前記第1の金属素線の撚り方向と、前記第2のストランド材における前記第2の金属素線の撚り方向とは同一であり、且つ、前記第1のストランド材における前記第1の金属素線及び前記第2のストランド材における前記第2の金属素線の撚り方向と、前記第2のストランド材の巻き付け方向とは逆であることを特徴とする伝動ベルト。
  16. 請求項11から15の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記環状コア部の中心軸に対する前記第2のストランド材の巻き付け角度が4.5度以上13.8度以下であることを特徴とする伝動ベルト。
  17. 請求項11から16の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記第2のストランド材が、前記環状コア部の外周面に沿って6周以上8周以下巻き付けられていることを特徴とする伝動ベルト。
  18. 請求項1から17の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記第1の金属素線の材質が、C:0.08〜0.27質量%、Si:0.30〜2.00質量%、Mn:0.50〜2.00質量%、Cr:0.20〜2.00質量%を含み、かつ、Al、Nb、Ti、及びVをそれぞれ0.001〜0.10質量%の範囲で少なくとも1種類含有し、残部がFe及び不可避的に混入してくる不純物からなる合金鋼であることを特徴とする伝動ベルト。
  19. 請求項1から18の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記第2の金属素線の線径は、0.06mm以上0.30mm以下であることを特徴とする伝動ベルト。
  20. 請求項1から19の何れか一項に記載の伝動ベルトであって、
    前記環状コア部及び前記外層部には低温焼鈍処理が施されていることを特徴とする伝動ベルト。
  21. 抗張力体となる環状金属コードと、前記環状金属コードを覆う被覆部とを備え、前記環状金属コードが、環状に形成された環状コア部と、前記環状コア部に対して螺旋状に複数周巻き付けられて前記環状コア部の外周面を覆う外層部とを有する伝動ベルトの製造方法であって、
    第1の金属素線の一部を所定の環状径のループにして、前記ループに対して前記第1の金属素線の余長を引き続き螺旋状に複数周に巻き付け、前記第1の金属素線の始端部と終端部を結合することにより環状コア部を形成し、
    第2の金属素線を複数本撚り合わせてなる1本のストランド材を前記環状コア部に対して螺旋状に複数周巻き付けることにより前記環状コア部の外周面を覆い、前記ストランド材の巻き付け始端部と巻き付け終端部とを結合させることにより外層部を形成して、前記環状金属コードを形成することを特徴とする伝動ベルトの製造方法。
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