JP2008206888A - 筋力評価システム、装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】拮(きっ)抗一関節筋群と拮抗二関節筋群との協調によって第1関節と第2関節とに同時に発生し得る軸トルクを測定し、第1関節及び第2関節の軸トルクを2本の軸とする平面で六角形の出力分布特性図を作成することによって、各機能別実効筋の個別の筋力を特定することなしに、また、被験者の姿勢が変化しても、関節角度が変化してもトレーニングによって変化した筋力を正確に評価することができるようにする。
【解決手段】拮抗一関節筋群と拮抗二関節筋群との協調によって第1関節及び第2関節に同時に発生し得る軸トルクを測定し、第1関節の軸トルク及び第2関節の軸トルクを2本の軸とする平面上で六角形の出力分布図を作成し、出力分布図によって被験者の2関節リンク機構の筋力を評価する。
【選択図】図1

Description

本発明は、筋力評価システム、装置及び方法に関するものである。
従来、二関節アーム装置のような二関節リンク機構を利用した筋力評価システムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。該筋力評価システムにおいては、被験者の拮(きっ)抗一関節筋群及び拮抗二関節筋群の筋出力を圧力センサによって測定している。そして、被験者の四肢において所定の複数方向に等尺的最大努力で力を発揮させ、これに基づいて六角形の出力分布特性図を作成し、機能別実行筋力を評価する。
また、二関節リンク機構を駆動させるためのアクチュエータとして、人間を含む動物において腕を曲げるために機能する二関節筋のモデルを提案し、該モデルを使用して二関節リンク機構の動作制御に関する研究も行われている(例えば、非特許文献1参照。)。この研究では、二関節同時駆動源を備えた二関節リンク機構においてアーム先端部の力と剛性を制御するためには、駆動源として、収縮方向に力を発揮する収縮要素及び弾性要素を有するアクチュエータのモデルを使用することが好適であるとされている。
特開2000−210272号公報 藤川智彦、他3名、「拮抗筋群による協調制御機能」、日本機械学会論文集(C編)、63巻607号(1997−3)、p.769−776、論文No.96−1040
しかしながら、前記従来の筋力評価システムにおいては、被験者の四肢をリンク系に擬えて六角形の出力分布特性図に基づいて筋力を評価するようになっているところ、リンク系先端における六角形の出力分布図は、リンク系の関節角度によって異なっているので、縮尺的収縮でなければ測定することができなかった。また、筋出力を測定する毎に被験者の姿勢が異なると、適切な比較を行うことが困難であった。
本発明は、前記従来の筋力評価システムの問題点を解決して、拮抗一関節筋群と拮抗二関節筋群との協調によって第1関節と第2関節とに同時に発生し得る軸トルクを測定し、第1関節及び第2関節の軸トルクを2本の軸とする平面で六角形の出力分布特性図を作成することによって、各機能別実効筋の個別の筋力を特定することなしに、また、被験者の姿勢が変化しても、関節角度が変化してもトレーニングによって変化した筋力を正確に評価することができる筋力評価システム、装置及び方法を提供することを目的とする。
そのために、本発明の筋力評価システムにおいては、両端に第1関節及び第2関節が接続された第1リンクと、一端が前記第2関節に接続され、他端が系先端である第2リンクと、前記第1関節、第2関節及び系先端を含む平面の運動に実効を及ぼす第1関節及び第2関節周りの拮抗一関節筋群と、前記第1関節及び第2関節に跨(またが)る拮抗二関節筋群とを備える被験者の2関節リンク機構の筋力評価システムであって、前記拮抗一関節筋群と拮抗二関節筋群との協調によって前記第1関節及び第2関節に同時に発生し得る軸トルクを測定し、前記第1関節の軸トルク及び第2関節の軸トルクを2本の軸とする平面上で六角形の出力分布図を作成し、該出力分布図によって前記被験者の2関節リンク機構の筋力を評価する。
本発明の他の筋力評価システムにおいては、さらに、前記被験者が着座するサドルと、前記被験者の上肢又は下肢の長さに調整可能なロボットアームと、該ロボットアームを前記被験者の上肢又は下肢に沿って固定する装着具と、前記ロボットアームの第1関節及び第2関節の軸トルクを制御する制御装置と、前記ロボットアームの関節角度を測定する角度測定装置とを備える筋力評価装置を有し、前記ロボットアームの先端において発揮される力を前記被験者の2関節リンク機構の系先端が発揮する力と拮抗させたときの第1関節及び第2関節の軸トルクを測定する。
本発明の筋力評価装置においては、被験者が着座するサドルと、前記被験者の上肢又は下肢の長さに調整可能なロボットアームと、該ロボットアームを前記被験者の上肢又は下肢に沿って固定する装着具と、前記ロボットアームの第1関節及び第2関節の軸トルクを制御する制御装置と、前記ロボットアームの関節角度を測定する角度測定装置とを有し、前記制御装置は、ロボットアームの先端が弾性を備え、かつ、該弾性が方向によって変化するように制御することにより筋力を測定するために前記被験者が発揮すべき力の方向を教示する。
本発明の筋力評価方法においては、両端に第1関節及び第2関節が接続された第1リンクと、一端が前記第2関節に接続され、他端が系先端である第2リンクと、前記第1関節、第2関節及び系先端を含む平面の運動に実効を及ぼす第1関節及び第2関節周りの拮抗一関節筋群と、前記第1関節及び第2関節に跨る拮抗二関節筋群とを備える被験者の2関節リンク機構の筋力評価方法であって、前記拮抗一関節筋群と拮抗二関節筋群との協調によって前記第1関節及び第2関節に同時に発生し得る軸トルクを測定し、前記第1関節の軸トルク及び第2関節の軸トルクを2本の軸とする平面上で六角形の出力分布図を作成し、該出力分布図によって前記被験者の2関節リンク機構の筋力を評価する。
本発明によれば、筋力評価システムは、拮抗一関節筋群と拮抗二関節筋群との協調によって第1関節及び第2関節に同時に発生し得る軸トルクを測定し、第1関節及び第2関節の軸トルクを2本の軸とする平面で六角形の出力分布特性図を作成するようになっている。これにより、各機能別実効筋の個別の筋力を特定することなしに、また、被験者の姿勢が変化しても、関節角度が変化してもトレーニングによって変化した筋力を正確に評価することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態における使用者の体肢の筋群を模式的に示す図、図3は本発明の第1の実施の形態における使用者の体肢の筋の活動パターンを示すグラフ、図4は本発明の第1の実施の形態における使用者の体肢の筋の出力分布特性を示す図である。
図2において、20は本実施の形態における被験者としての使用者であり、筋力評価システムを使用して筋力の評価を行う者である。まず、筋力評価システムの背景となる人間の体肢の2関節リンク機構について、本発明の理解に必要な範囲で説明する。
人間の体肢、すなわち、四肢には二関節筋が存在し、該二関節筋は、1つの関節に作用する一関節筋と協調して先端の出力を制御しており、その先端出力は、図4に示されるような六角形の出力分布で表されることが知られている(例えば、非特許文献2参照。)。そして、六角形の出力分布特性に基づいて機能別実行筋力を評価する方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
藤川智彦、大島徹、熊本水頼、山本倫久、「上肢における拮抗する一関節筋及び二関節筋群の協調活動とその機械モデルによる制御機能解析」、バイオメカニズム13、バイオメカニズム学会、(1996)181.。
次に、本発明の理解に必要な範囲で、非特許文献2及び特許文献1に記載された四肢の先端出力特性について説明する。
人間の上肢及び下肢ともに、第1関節、第2関節及び系先端を含む二次元平面内の運動において、第1関節及び第2関節に作用する筋群は、その機能を考慮すると、図2に示されるように、第1関節周りの一対の拮抗一関節筋ペア(f1、e1)、第2関節周りの一対の拮抗一関節筋ペア(f2、e2)、及び、第1関節と第2関節とに跨る一対の拮抗一関節筋ペア(f3、e3)の3対6筋で代表させることが可能であり、これを機能別実行筋と呼ぶ。なお、図2に示される例は、使用者20の下肢の股(こ)関節及び膝(ひざ)関節に作用する筋群である。
一関節筋は1つの関節にのみ作用する筋で、上肢では肩関節の三角筋前部や三角筋後部、肘(ひじ)関節の上腕筋や上腕三頭筋外側頭が相当し、下肢では股関節の大殿筋や大腰筋、膝関節の大腿(たい)二頭筋短頭や外側広筋が相当する。そして、二関節筋は、2つの関節に跨って作用する筋で、上肢では上腕二頭筋や上腕三頭筋長頭が相当し、下肢ではハムストリングスや大腿直筋が相当する。
人間の上肢及び下肢の2関節リンクの系先端、すなわち、上肢では手根関節部、下肢では足関節部、において発揮される力及びその出力方向は、3対6筋の機能別実行筋の協調活動で制御される。前記系先端で各方向に最大努力で力を発揮すると、力の出力方向に応じて3対6筋の機能別実行筋が、図3に示されるように交代的に収縮する。なお、図3において、Fは添え字で示される関節筋の力を表している。
また、3対6筋の機能別実行筋が発揮する収縮力によって体肢先端に発生する力の方向は、図4に示されるとおりであり、図3に示されるような交代パターンに従った協調制御による力の合成によって、六角形の最大出力分布特性を示す。
この最大出力分布特性の六角形の各辺は、第1リンク、第2リンク、第1関節と系先端とを結ぶ直線に平行であるという特徴がある。したがって、六角形の形状は体肢の姿勢によって異なる。そして、筋の収縮力が一定で各関節に発生しているトルクが変化しなくても、関節軸トルクによって、人間の体肢の先端に発生する力は、上肢又は下肢の姿勢によってその方向も大きさも変化する。
次に、本実施の形態における筋力評価システムで使用される筋力評価装置10の構成について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における筋力評価装置の構造を模式的に示す図である。なお、図1において、(a)は側面を示す図であり、(b)は正面を示す図である。
本実施の形態における筋力評価装置10は、前述のような人間の体肢の先端における出力特性を考慮し、効果的な筋力評価を実現するものである。そして、前記筋力評価装置10は、図1に示されるように、使用者20が着座するサドル11、使用者20の体肢に沿って装着されるロボットアーム12、該ロボットアーム12を制御する図示されない制御装置、使用者20が筋力評価の意図を入力する図示されない入力操作装置で構成される。なお、ここでは説明の都合上、下肢の例についてのみ説明するが、上肢についても同様である。
そして、前記ロボットアーム12は、大腿部に対応する第1リンク14aと、下腿部に対応する第2リンク14bとの2つのリンクから成る2自由度のロボットアームである。また、第1リンク14a及び第2リンク14bは、リンク長を調節することができるスライド機構を備え、筋力評価を行うときには、それぞれ、使用者20の大腿部及び下腿部の長さと同じになるように調整され、第1装着具15a及び第2装着具15bによって大腿部及び下腿部に固定される。なお、第1リンク14a及び第2リンク14b並びに第1装着具15a及び第2装着具15bを統合的に説明する場合には、各々、リンク14及び装着具15として説明する。
なお、前記ロボットアーム12は、使用者20がサドル11に着座した状態で、使用者20に装着されるが、このとき、ロボットアーム12の第1関節軸16aを使用者20の股関節に一致させ、ロボットアーム12の第2関節軸16bを使用者20の膝関節軸に一致させる。また、前記第1関節軸16a及び第2関節軸16bには、第1サーボモータ17a及び第2サーボモータ17bが連結され、さらに、関節角度を測定するための角度検出装置としてアブソリュート型エンコーダが装備されている。なお、前記第1関節軸16a及び第2関節軸16b並びに第1サーボモータ17a及び第2サーボモータ17bを統合的に説明する場合には、各々、関節軸16及びサーボモータ17として説明する。ここで、該サーボモータ17は、関節駆動源として機能し、関節軸を回転させるためのトルクを発生する。そして、サーボモータ17の発生するトルクは、前記制御装置によって制御される。また、該制御装置に接続された記録装置によって、ロボットアーム12の関節軸が発生しているトルクを記録することができる。
さらに、前記制御装置には、図示されないCRT、液晶ディスプレイ等を備える表示装置、プリンタ等の印刷装置等の出力手段が接続されている。該出力手段は、後述される六角形の出力分布図を作成して表示又は印刷したり、使用者20に対して発揮すべき力の方向等に関する教示を行う。
次に、前記構成の筋力評価装置10の動作について説明する。
図5は本発明の第1の実施の形態におけるリンク系先端の力の出力分布図と関節軸トルクの出力分布図との対比を示す図、図6は本発明の第1の実施の形態におけるトレーニング前後の関節軸トルクの出力分布図の変化を示す図である。なお、図5において、(a)はリンク系先端の力の出力分布図を示し、(b)は関節軸トルクの出力分布図を示している。
上肢では手根関節部、また、下肢では足関節部に該当するリンク系先端において発揮される力の出力分布図は、リンク系の関節角度によって変化する。そこで、本実施の形態においては、図5(b)に示されるように、横軸に第1関節の軸トルク(τ1)を採り、縦軸に第2関節の軸トルク(τ2)を採った図であって、第1関節と第2関節とで同時に発生し得る軸トルクをプロットした関節軸トルクの出力分布図を考える。
機能別実効筋の理論によれば、関節軸トルクの出力分布図も、図5(a)に示されるようなリンク系先端の力の出力分布図と同様に、六角形となる。図5には、関節軸トルクの出力分布図とリンク系先端における力の出力分布図とが対応するように示されている。
ここで、図5(a)及び(b)に示される2つの六角形の対応について説明する。
図5(a)は特許文献1の出力分布特性に対応するものであるが、図5(a)に示される六角形において、第2杆(かん)、すなわち、第2リンクに平行な2辺は、第2関節に対するモーメントが変化しないので、関節軸トルクの出力分布図では、τ2=一定、すなわち、τ1軸に平行な直線と等価である。同様に、図5(a)に示される六角形において、第1関節とリンク系先端とを結ぶ直線に平行な2辺は、第1関節に対するモーメントが変化しないので、関節軸トルクの出力分布図では、τ1=一定、すなわち、τ2軸に平行な直線と等価である。
また、図5(a)に示される六角形の辺のうち、第1杆、すなわち、第1リンクに平行な2辺については、該辺のいずれか一方の頂点から他方の頂点への力の変化を考えれば、その方向は第1リンクの方向に等しく、第1関節と第2関節とに等しいトルク変化を与えると考えられるので、τ1=τ2の直線に平行な直線と等価である。
そして、図5(b)に示されるような関節軸トルクの出力分布図を測定することができれば、任意の関節角度におけるリンク先端の出力分布図を得ることも可能である。
また、各機能別実効筋の個別の筋力を評価するには、特許文献1に示されるように、一対の拮抗二関節筋の除脂肪断面積を特定することによって推定することができる。
前記筋力評価装置10において、関節軸トルクの出力分布図を得るには、使用者20の下肢にロボットアーム12を沿うように装着した状態で、使用者20が最大努力で様々な方向に出した力を関節軸トルクとして記録する。この場合、使用者20に力の方向を、図示などの手段によって指示しながら、力を発揮させる。また、ロボットアーム12は、関節角度が変化しないように関節軸トルクを制御することによって、使用者20に対して反力を発生するので、関節角度が変化しないときの関節軸トルクを、使用者20が発揮した関節軸トルクとして記録する。
そして、記録された関節軸トルクを2つの関節軸が同時に発生し得るトルクとして、図6に示されるようなτ1−τ2座標平面にプロットする。続いて、プロット全体の集合を内部に含み、2辺がτ1軸に平行であり、2辺がτ2軸に平行であり、他の2辺がτ2=τ1の直線に平行であるような六角形であって最小の六角形を描画し、該六角形を関節軸トルクの出力分布図とする。そして、使用者20がトレーニングを行う前に筋力評価装置10を使用して作成した六角形と、同じ使用者20がトレーニングを行った後に筋力評価装置10を使用して作成した六角形とを、図6に示されるように、同一画面上に示すことによって、トレーニング前後の筋力の変化を把握することができる。
なお、前記筋力評価装置10を使用してトレーニングを行うこともできる。トレーニングを行う場合、使用者20は、まず、筋力評価装置10の入力操作装置を操作して、トレーニングメニューを入力する。該トレーニングメニューの入力は、例えば、図4に示されるような最大出力分布特性の六角形に基づいて、自身の体肢先端で増強したい出力方向とトレーニング負荷の大きさとを入力することである。
例えば、立ち幅跳びの跳躍距離を伸ばしたいという意図で、図4に示されるような六角形におけるb方向の先端出力を増強したい場合、使用者20は、トレーニングする出力方向としてb方向を選択し、トレーニング負荷の大きさを入力する。そして、図3に示されるような3対6筋の交代パターンから、b方向に力を発揮する場合に活動する筋は、f1(股関節一関節屈筋群)、e2(膝関節一関節屈筋群)及びf3(大腿部二関節筋屈筋群)であることが分かる。
b方向の先端出力を増強するには、前記f1、e2及びf3の3筋群を鍛えればよいので、筋力評価装置10は、前記3筋群が活動したときに股関節及び膝関節に対応する第1サーボモータ17a及び第2サーボモータ17bが発生するトルクを反対方向で、使用者20が入力したトレーニング負荷の大きさまで徐々に、又は、段階的に増加させる。そして、使用者20は、筋力評価装置10が発生するトルクに対抗するように力を入れることによって、所定の筋出力の状態を維持し、筋力をトレーニングすることができる。
前記筋力評価装置10は、使用者20に対して一定のトルクを負荷としてかけているので、使用者20が、体肢先端(前記の例の場合、足首)の位置を変化させないように努力することで、等尺性のトレーニングをすることも可能である。また、トレーニング中に使用者20の姿勢が変化しても筋に対する負荷が変化しないので、等張性のトレーニングをすることも可能である。
このように、本実施の形態においては、使用者20が何らかのトレーニングを行うことによって変化した筋力を評価したい、すなわち、変化した筋力の差を評価したいという目的であれば、必ずしも各機能別実効筋の個別の筋力を特定しなくても、関節軸トルクの出力分布を示す六角形の変化から、筋力にどのような変化があったのかを評価することができる。
例えば、何らかのトレーニングを行うことによって、関節軸トルクの出力分布図が図6に示されるように変化したとすれば、実効筋f3の筋力が増大した場合と同等の効果が得られていると評価することができる。
リンク系先端の力の出力分布図は、各リンクの長さ及びリンクの角度によって変化するが、関節軸トルクの出力分布図は、実効筋の出力によってのみ変化する。したがって、関節軸トルクの出力分布図を得る目的において、使用者20の姿勢の情報は必要としない。
このように、関節軸トルクの出力分布図を使用することによって、測定時の関節角度が異なっていても、実効筋力を比較することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
本実施の形態においては、筋力評価装置10に本出願人の先願である特願2006−205829号に記載のリンク先端のスティフネス特性制御を用いる。なお、その他の構成については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
次に、本実施の形態における筋力評価装置10の動作について説明する。
図7は本発明の第2の実施の形態における負荷の方向とスティフネス特性の固有ベクトルとを一致させる方法を示す図である。
前記筋力評価装置10は、各関節に配設された角度検出装置によって測定された関節角度に基づき、各関節に装備された関節駆動源が発生するトルクが、次の式(1)によって計算されるトルクとなるように制御される。
Figure 2008206888

これにより、非特許文献2によって明らかにされた人間の四肢の先端出力特性及びスティフネス特性と同等な特性を再現するものである。
本実施の形態においては、前記筋力評価装置10のロボットアーム12の先端に、その特性が楕(だ)円で示されるスティフネス特性を持たせることができる。そして、該スティフネス特性を利用して使用者20に測定中の力の方向を表示することによって、適切に測定することができるように誘導する。
ここで、スティフネス特性は、関節軸トルクと変位角との関係として、次の式(2)のような行列で表され、2関節リンクの場合は楕円で表現することができる。
Figure 2008206888

楕円の長軸と短軸は、行列の固有ベクトルの方向に一致し、互いに垂直である。そして、楕円の長軸又は短軸方向の弾性率は、固有ベクトルに対する固有値に一致する。筋力評価装置10のロボットアーム12においては、固有値及び固有ベクトルを任意に設定することが可能である。
この場合、入力された測定メニューによって負荷の方向が決まるので、負荷の方向の弾性率を、負荷に垂直な方向の弾性率に対して小さくなるように設定する。そして、制御装置は、ロボットアーム12を、設定されたスティフネス特性に基づき、外部からの関節角度変位に応答して関節軸トルクを発生するように制御する。また、使用者20が力を入れてロボットアーム12に角度変位を与えると、該角度変位に応じてロボットアーム12が負荷トルクを発生する。
使用者20が測定したい力の方向は、その他の方向に対して弾性率が低く、変位しやすい方向となっている。したがって、使用者20は、測定する体肢、例えば、下肢を動かしたときに動かしやすい方向として、力を入れるべき方向を認識することができる。
次に、負荷の方向とスティフネス特性の固有ベクトルとを一致させる方法について説明する。
図7に示されるように、測定の作業空間内での方向をaベクトル(股関節を始点とし、足関節を終点とするベクトル)とbベクトル(膝関節を始点とし、足関節を終点とするベクトル)を基底ベクトルとして表す。そして、図4に示されるような六角形において力をかける方向を次の式(3)で示される方向とする。
Figure 2008206888

また、二関節アーム機構先端のヤコビ行列をJとするとps に垂直な方向は、次の式(4)で表すことができる。
Figure 2008206888

さらに、次の式(5)が成立する。
Figure 2008206888

したがって、関節軸トルクと二関節アーム機構先端の変位との関係は、次の式(6)で表される。
Figure 2008206888

そして、二関節アーム機構先端の変位と関節角度変位との関係を使って、関節軸トルクと関節角度変位との関係に直すと、次の式(7)となる。
Figure 2008206888

Jはヤコビ行列であるので、関節角度の関数となる。そのため、Jの行列の成分を求めるために、ロボットアーム12の関節に配設された関節角度検出装置によって実際の関節角度を測定する。
そして、以上の数式によって、ロボットアーム12を基準点から変位させたときに、ロボットアーム12が発生すべき関節軸トルクを計算し、計算された関節軸トルクを目標値として制御装置がロボットアーム12の関節軸トルクを制御することによって、所望のスティフネス特性を得ることができる。
前記式(3)において、a及びbベクトルにかかるスカラーの組(α、β)の比が等しければ、3対6筋の各実効筋が発生している筋力の比が等しい。そして、3対6筋の各実効筋が発生している筋力の比が等しければ、τ1−τ2平面における方向も等しい。
関節軸トルクの出力分布図を測定するには、六角形の各辺を決定することができるように、使用者20が複数の方向に最大努力で力を発揮する必要がある。そのため、関節軸トルクの出力分布図の測定に必要な力の方向を教示するために、スティフネス特性制御を用いる。使用者20に対して力を出して欲しい方向の弾性率を低く、また、それに垂直な方向の弾性率を高くすることによって、使用者20が脚に力を入れて動かしたときの反力の硬軟の違いにより方向を教示する。使用者20によっては、硬軟を逆にして、力を出して欲しい方向の弾性率を高く、また、それに垂直な方向の弾性率を低くすることによって教示してもよい。
このように、本実施の形態においては、関節軸トルクの出力分布図の六角形は関節角度に依存しないので、測定中に使用者20の姿勢が変化してもよい。そのため、使用者20が発揮した力に対する反力の硬軟によって、触覚的に力を発揮すべき方向を分かりやすく教示することができる。
なお、前記第1及び第2の実施の形態においては、下肢の実効筋力の評価について説明したが、人間の上肢は、下肢と同様に、一関節筋と二関節筋とを備える筋配列構造を有しているので、筋力評価装置10を使用して、同様に、上肢の実効筋力の評価を行うこともできる。
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の第1の実施の形態における筋力評価装置の構造を模式的に示す図である。 本発明の第1の実施の形態における使用者の体肢の筋群を模式的に示す図である。 本発明の第1の実施の形態における使用者の体肢の筋の活動パターンを示すグラフである。 本発明の第1の実施の形態における使用者の体肢の筋の出力分布特性を示す図である。 本発明の第1の実施の形態におけるリンク系先端の力の出力分布図と関節軸トルクの出力分布図との対比を示す図である。 本発明の第1の実施の形態におけるトレーニング前後の関節軸トルクの出力分布図の変化を示す図である。 本発明の第2の実施の形態における負荷の方向とスティフネス特性の固有ベクトルとを一致させる方法を示す図である。
符号の説明
10 筋力評価装置
11 サドル
12 ロボットアーム
14a 第1リンク
14b 第2リンク
15a 第1装着具
15b 第2装着具
20 使用者

Claims (4)

  1. (a)両端に第1関節及び第2関節が接続された第1リンクと、
    (b)一端が前記第2関節に接続され、他端が系先端である第2リンクと、
    (c)前記第1関節、第2関節及び系先端を含む平面の運動に実効を及ぼす第1関節及び第2関節周りの拮抗一関節筋群と、
    (d)前記第1関節及び第2関節に跨る拮抗二関節筋群とを備える被験者の2関節リンク機構の筋力評価システムであって、
    (e)前記拮抗一関節筋群と拮抗二関節筋群との協調によって前記第1関節及び第2関節に同時に発生し得る軸トルクを測定し、前記第1関節の軸トルク及び第2関節の軸トルクを2本の軸とする平面上で六角形の出力分布図を作成し、該出力分布図によって前記被験者の2関節リンク機構の筋力を評価することを特徴とする筋力評価システム。
  2. 前記被験者が着座するサドルと、前記被験者の上肢又は下肢の長さに調整可能なロボットアームと、該ロボットアームを前記被験者の上肢又は下肢に沿って固定する装着具と、前記ロボットアームの第1関節及び第2関節の軸トルクを制御する制御装置と、前記ロボットアームの関節角度を測定する角度測定装置とを備える筋力評価装置を有し、前記ロボットアームの先端において発揮される力を前記被験者の2関節リンク機構の系先端が発揮する力と拮抗させたときの第1関節及び第2関節の軸トルクを測定する請求項1に記載の筋力評価システム。
  3. (a)被験者が着座するサドルと、
    (b)前記被験者の上肢又は下肢の長さに調整可能なロボットアームと、
    (c)該ロボットアームを前記被験者の上肢又は下肢に沿って固定する装着具と、
    (d)前記ロボットアームの第1関節及び第2関節の軸トルクを制御する制御装置と、
    (e)前記ロボットアームの関節角度を測定する角度測定装置とを有し、
    (f)前記制御装置は、ロボットアームの先端が弾性を備え、かつ、該弾性が方向によって変化するように制御することにより筋力を測定するために前記被験者が発揮すべき力の方向を教示することを特徴とする筋力評価装置。
  4. (a)両端に第1関節及び第2関節が接続された第1リンクと、
    (b)一端が前記第2関節に接続され、他端が系先端である第2リンクと、
    (c)前記第1関節、第2関節及び系先端を含む平面の運動に実効を及ぼす第1関節及び第2関節周りの拮抗一関節筋群と、
    (d)前記第1関節及び第2関節に跨る拮抗二関節筋群とを備える被験者の2関節リンク機構の筋力評価方法であって、
    (e)前記拮抗一関節筋群と拮抗二関節筋群との協調によって前記第1関節及び第2関節に同時に発生し得る軸トルクを測定し、前記第1関節の軸トルク及び第2関節の軸トルクを2本の軸とする平面上で六角形の出力分布図を作成し、該出力分布図によって前記被験者の2関節リンク機構の筋力を評価することを特徴とする筋力評価方法。
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