JP2008202674A - 動力伝達チェーンおよび動力伝達装置 - Google Patents

動力伝達チェーンおよび動力伝達装置 Download PDF

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伸志 山根
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Abstract

【課題】 リンクに発生する応力が最適化されるとともに、開発工数の削減が可能となる動力伝達チェーンおよび動力伝達装置を提供する。
【解決手段】 リンク11は、前挿通部12の前側に前側柱部20、後挿通部13の後側に後側柱部22および前挿通部12と後挿通部13との間に中間柱部21を有している。前側、後側および中間の各柱部20,22,21の最小幅が等しくなされるとともに、リンク11のピッチ長をPとして、前側、後側および中間の各柱部20,22,21の最小幅Qについて、0.2P<Q<0.8Pが満たされている。
【選択図】 図3

Description

この発明は、動力伝達チェーン、さらに詳しくは、自動車等の無段変速機(CVT)に好適な動力伝達チェーンおよびこれを用いた動力伝達装置に関する。
自動車用無段変速機として、図6に示すように、固定シーブ(2a)および可動シーブ(2b)を有しエンジン側に設けられたドライブプーリ(2)と、固定シーブ(3b)および可動シーブ(3a)を有し駆動輪側に設けられたドリブンプーリ(3)と、両者間に架け渡された無端状動力伝達チェーン(1)とからなり、油圧アクチュエータによって可動シーブ(2b)(3a)を固定シーブ(2a)(3b)に対して接近・離隔させることにより、油圧でチェーン(1)をクランプし、このクランプ力によりプーリ(2)(3)とチェーン(1)との間に接触荷重を生じさせ、この接触部の摩擦力によりトルクを伝達するものが知られている。
動力伝達チェーンとしては、特許文献1に、ピンが挿通される前後挿通部を有する複数のリンクと、一のリンクの前挿通部と他のリンクの後挿通部とが対応するようにチェーン幅方向に並ぶリンク同士を長さ方向に屈曲可能に連結する複数の第1ピンおよび複数の第2ピンとを備え、一のリンクの前挿通部に固定されかつ他のリンクの後挿通部に移動可能に嵌め入れられた第1ピンと一のリンクの前挿通部に移動可能に嵌め入れられかつ他のリンクの後挿通部に固定された第2ピンとが相対的に転がり接触移動することにより、リンク同士の長さ方向の屈曲が可能とされているものが提案されている。
特開2005−233275号公報
この種の動力伝達チェーンでは、ピッチ長が異なるリンクを2種類以上使用して、これをランダムに配置することで、騒音を低減することが図られている。ピッチ長の変更に伴って、柱部の幅(チェーン進行方向の寸法)を適切に設定することが必要であり、屈曲時にリンクとピンとが干渉せずかつリンクに生じる応力が所定値以下となるという条件を満たすように、この柱部の幅が設計されている。柱部の設計は、チェーンの開発において多くの時間を要するものとなっており、その工数の削減が望まれている。
この発明の目的は、リンクに発生する応力が最適化されるとともに、開発工数の削減が可能となる動力伝達チェーンおよび動力伝達装置を提供することにある。
この発明による動力伝達チェーンは、ピンが挿通される前後挿通部を有する複数のリンクと、一のリンクの前挿通部と他のリンクの後挿通部とが対応するようにチェーン幅方向に並ぶリンク同士を長さ方向に屈曲可能に連結する複数の第1ピンおよび複数の第2ピンとを備え、第1ピンと第2ピンとが相対的に転がり接触移動することにより、リンク同士の長さ方向の屈曲が可能とされている動力伝達チェーンにおいて、リンクは、前挿通部の前側に前側柱部、後挿通部の後側に後側柱部および前挿通部と後挿通部との間に中間柱部を有しており、前側、後側および中間の各柱部の最小幅が等しくなされるとともに、リンクのピッチ長をPとして、前側、後側および中間の各柱部の最小幅Qについて、0.2P<Q<0.8Pが満たされていることを特徴とするものである。
柱部の最小幅は、リンクの最弱部位(前後挿通部のチェーン外径側縁部および内径側縁部)の耐久性への寄与が大きいものであり、この最小幅が設計標準0.2P<Q<0.8Pを使用することによって適正に設定される。この設計標準は、柱幅=C(定数)×リンクピッチとして、Cの値を0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8および0.9と順次変更して、応力解析を行って応力を求めることで得られたもので、応力の最適値は、Cが0.3〜0.7のときに得られ、Cが0.2以下となると、所要の応力とすることができなくなり、Cが0.8以上となると、応力は許容レベルであっても、応力値以外のデメリットが生じるので好ましくない。
所望のリンク形状を得るには、リンクの基本輪郭形状、前後挿通部形状およびピッチ長PをFEM解析などを用いて検討し、この際、リンクの前後挿通部を形成している前側柱部、後側柱部および中間柱部の最小幅Q同士が等しいとするとともに、このQが0.2P<Q<0.8Pに入るように設計する。そして、ピッチが異なる新たなリンクを得るには、この新たなリンクのピッチ長Pを0.2P<Q<0.8Pに代入して、この範囲内に入るQを選択する。この関係を満たせば、適切な応力が得られるので、新たな応力解析は不要であり、ピンが屈曲したときにリンクの外側面と干渉しないことを考慮してQの値を決定すればよい。
第1ピンおよび第2ピンのうちの一方は、一のリンクの前挿通部に固定されかつ他のリンクの後挿通部に移動可能に嵌め入れられ、同他方は、一のリンクの前挿通部に移動可能に嵌め入れられかつ他のリンクの後挿通部に固定されていることが好ましく、この場合の固定(圧入)は、挿通部の長さ方向に対して直交する部分の縁(上下の縁)で行われることが好ましい。
この発明による動力伝達チェーンでは、第1ピンおよび第2ピンの少なくとも一方がプーリと接触して摩擦力により動力伝達する。いずれか一方のピンがプーリと接触するチェーンにおいては、第1ピンおよび第2ピンのうちのいずれか一方は、このチェーンが無段変速機で使用される際にプーリに接触する方のピン(以下では、「第1ピン」または「ピン」と称す)とされ、他方は、プーリに接触しない方のピン(インターピースまたはストリップと称されており、以下では、「第2ピン」または「インターピース」と称す)とされる。
リンクは、例えば、ばね鋼や炭素工具鋼製とされる。リンクの材質は、ばね鋼や炭素工具鋼に限られるものではなく、軸受鋼などの他の鋼でももちろんよい。ピンの材質としては、軸受鋼などの適宜な鋼が使用される。
第1ピンおよび第2ピンは、例えば、いずれか一方の転がり接触面が平坦面とされ、他方の転がり接触面が相対的に転がり接触移動可能なように所要の曲面に形成される。また、第1ピンおよび第2ピンは、それぞれの転がり接触面が所要の曲面に形成されるようにしてもよい。いずれの場合でも、各ピンの転がり接触面形状がそれぞれ2種類(例えば相対的に曲率が大のものと相対的に曲率が小のもの)形成されることで、転がり接触移動の軌跡が相違するピンの組が2種類存在するようにしてもよい。第1ピンと第2ピンとの接触位置の軌跡は、例えば、インボリュート曲線とされる。第1ピンおよび第2ピンは、異なる断面形状であってもよく、同一形状であってもよい。
なお、この明細書において、リンクの長さ方向の一端側を前、同他端側を後としているが、この前後は便宜的なものであり、リンクの長さ方向が前後方向と常に一致することを意味するものではない。
上記の動力伝達チェーンは、いずれか一方のピン(インターピース)が他方のピン(ピン)よりも短くされ、長い方のピンの端面が無段変速機のプーリの円錐状シーブ面に接触し、この接触による摩擦力により動力を伝達するものであることが好ましい。各プーリは、円錐状のシーブ面を有する固定シーブと、固定シーブのシーブ面に対向する円錐状のシーブ面を有する可動シーブとからなり、両シーブのシーブ面間にチェーンを挟持し、可動シーブを油圧アクチュエータによって移動させることにより、無段変速機のシーブ面間距離したがってチェーンの巻き掛け半径が変化し、スムーズな動きで無段の変速を行うことができる。
この発明による動力伝達装置は、円錐面状のシーブ面を有する第1のプーリと、円錐面状のシーブ面を有する第2のプーリと、これら第1および第2のプーリに掛け渡される動力伝達チェーンとを備えたもので、動力伝達チェーンが上記いずれかに記載のものとされる。
この動力伝達装置は、自動車等の無段変速機としての使用に好適なものとなる。
この発明の動力伝達チェーンおよび動力伝達装置によると、2種類以上のリンクを使用する際に、0.2P<Q<0.8Pという関係を常に維持することによって、リンクに生じる応力が適正範囲に収まるので、リンクに発生する応力が最適化され、しかも、ピッチ長変更に伴う追加の応力解析は不要であるので、開発工数の削減が可能となる。
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。以下の説明において、上下は、図2の上下をいうものとする。
図1は、この発明による動力伝達チェーンの一部を示しており、動力伝達チェーン(1)は、チェーン長さ方向に所定間隔をおいて設けられた前後挿通部(12)(13)を有する複数のリンク(11)と、チェーン幅方向に並ぶリンク(11)同士を長さ方向に屈曲可能に連結する複数のピン(第1ピン)(14)およびインターピース(第2ピン)(15)とを備えている。インターピース(15)は、ピン(14)よりも短くなされ、両者は、インターピース(15)が前側に、ピン(14)が後側に配置された状態で対向させられている。
チェーン(1)は、チェーン進行方向同位相の複数のリンクで構成されるリンク列を進行方向(前後方向)に3つ並べて1つのリンクユニットとし、この3列のリンク列からなるリンクユニットを進行方向に複数連結して形成されている。この実施形態では、リンク枚数が9枚のリンク列とリンク枚数が8枚のリンク列2つとが1つのリンクユニットとされている。
図2に示すように、ピン(14)は、インターピース(15)に比べて前後方向の幅が広くなされており、インターピース(15)の上下縁部には、ピン(14)側にのびる突出縁部(15a)(15b)が設けられている。
各リンク(11)は、前挿通部(12)の前面形状を形成するための前側柱部(20)と、後挿通部(13)の後面形状を形成するための後側柱部(22)と、前挿通部(12)と後挿通部(13)との間の中間柱部(21)とを有している。リンク(11)の前挿通部(12)は、ピン(14)が移動可能に嵌め合わせられるピン可動部(16)およびインターピース(15)が固定されるインターピース固定部(17)からなり、後挿通部(13)は、ピン(14)が固定されるピン固定部(18)およびインターピース(15)が移動可能に嵌め合わせられるインターピース可動部(19)からなる。
チェーン幅方向に並ぶリンク(11)を連結するに際しては、一のリンク(11)の前挿通部(12)と他のリンク(11)の後挿通部(13)とが対応するようにリンク(11)同士が重ねられ、ピン(14)が一のリンク(11)の後挿通部(13)に固定されかつ他のリンク(11)の前挿通部(12)に移動可能に嵌め合わせられ、インターピース(15)が一のリンク(11)の後挿通部(13)に移動可能に嵌め合わせられかつ他のリンク(11)の前挿通部(12)に固定される。そして、このピン(14)とインターピース(15)とが相対的に転がり接触移動することにより、リンク(11)同士の長さ方向(前後方向)の屈曲が可能とされる。
リンク(11)のピン固定部(18)とインターピース可動部(19)との境界部分には、インターピース可動部(19)の上下の凹円弧状案内部(19a)(19b)にそれぞれ連なりピン固定部(18)に固定されているピン(14)を保持する上下の凸円弧状保持部(18a)(18b)が設けられている。同様に、インターピース固定部(17)とピン可動部(16)との境界部分には、ピン可動部(16)の上下の凹円弧状案内部(16a)(16b)にそれぞれ連なりインターピース固定部(17)に固定されているインターピース(15)を保持する上下の凸円弧状保持部(17a)(17b)が設けられている。
ピン(14)を基準としたピン(14)とインターピース(15)との接触位置の軌跡は、円のインボリュートとされており、この実施形態では、ピン(14)の接触面が、断面において半径Rb、中心Mの基礎円を持つインボリュート形状を有し、インターピース(15)の接触面が平坦面(断面形状が直線)とされている。これにより、各リンク(11)がチェーン(1)の直線部分から曲線部分へまたは曲線部分から直線部分へと移行する際、前挿通部(12)においては、ピン(14)が固定状態のインターピース(15)に対してその接触面がインターピース(15)の接触面に転がり接触(若干のすべり接触を含む)しながらピン可動部(16)内を移動し、後挿通部(13)においては、インターピース(15)がインターピース可動部(19)内を固定状態のピン(14)に対してその接触面がピン(14)の接触面に転がり接触(若干のすべり接触を含む)しながら移動する。なお、図2において、符号AおよびBで示す箇所は、チェーン(1)の直線部分においてピン(14)とインターピース(15)とが接触している線(断面では点)であり、AB間の距離がピッチである。
このピッチに関しては、騒音低減の点から、異なるピッチ長のリンク(11)を組み合わせてチェーン(1)を構成することが好ましいが、ピッチ長が変わるごとにリンク(11)の輪郭形状や各柱部(20)(21)(22)の幅を種々変更してその都度応力解析を行うと、開発工数が多くかかることになる。そこで、開発工数削減のために、リンクピッチと柱幅の関係が次のようにして設計標準化されている。
まず、図3(a)に示すように、各柱部(20)(21)(22)の最小幅Qをすべて同じにする。そして、柱部の最小幅Q=C(C:定数)×リンクピッチPとし、C=0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8および0.9のときに、応力σ(N)がどうなるかを解析する。この結果が図4に示されている。図4から、C=0.4〜0.6のときに応力が最小(最適)で、C=0.8,0.9および0.2では応力がやや大きく(許容範囲)なり、C=0.1では許容範囲外と判断することができる。C=0.9では、柱幅が大きい割りには応力が最適値に比べて劣るので、これも適用範囲から除外される。
そして、図3(b)に示すように、ピッチ長がP’と拡大されたリンク(11)が必要となった場合、各柱部(20)(21)(22)の最小幅Q’をすべて同じにするとともに、このQ’が0.2P’<Q’<0.8P’の関係を満たすように設計される。この関係は、上述のように、応力が適正範囲であることを保証するものであるので、新たな応力解析は不要であり、こうして、開発工数が削減される。
この動力伝達チェーン(1)は、必要な数のピン(14)およびインターピース(15)を台上に垂直状に保持した後、リンク(11)を1つずつあるいは数枚まとめて圧入していくことにより製造される。この圧入は、ピン(14)およびインターピース(15)の上下縁部とピン固定部(18)およびインターピース固定部(17)の上下縁部との間において行われており、その圧入代は0.005mm〜0.1mmとされている。こうして、組み立てられたチェーン(1)には張力が付与(予張)される。
上記の動力伝達チェーン(1)では、ピンの上下移動の繰り返しにより、多角形振動が生じ、これが騒音の要因となるが、ピン(14)とインターピース(15)とが相対的に転がり接触移動しかつピン(14)を基準としたピン(14)とインターピース(15)との接触位置の軌跡が円のインボリュートとされていることにより、ピンおよびインターピースの接触面がともに円弧面である場合などと比べて、振動を小さくすることができ、騒音を低減することができる。また、上記の0.2P<Q<0.8Pを満たす異なるピッチ長のリンク(11)が組み合わせていることによっても、騒音が低減される。
上記の動力伝達チェーンは、図6に示したCVTで使用されるが、この際、図5に示すように、プーリ軸(2e)を有するプーリ(2)の固定シーブ(2a)および可動シーブ(2b)の各円錐状シーブ面(2c)(2d)にインターピース(15)の端面が接触しない状態で、ピン(14)の端面がプーリ(2)の円錐状シーブ面(2c)(2d)に接触し、この接触による摩擦力により動力が伝達される。ピン(14)とインターピース(15)とは、上述のように、各可動部(16)(19)に案内されて転がり接触移動するので、プーリ(2)のシーブ面(2c)(2d)に対してピン(14)はほとんど回転しないことになり、摩擦損失が低減し、高い動力伝達率が確保される。
図1は、この発明による動力伝達チェーンの1実施形態の一部を示す平面図である。 図2は、リンクおよびピンの拡大側面図である。 図3は、ピッチ長を大きくするときに考慮される部分を示す図である。 図4は、C(柱幅/リンクピッチ)をパラメータとして、リンクの応力を解析した結果を示す図である。 図5は、動力伝達チェーンがプーリに取り付けられた状態を示す正面図である。 図6は、この発明による動力伝達チェーンが使用される一例の無段変速機を示す斜視図である。
符号の説明
(1) 動力伝達チェーン
(2)(3) プーリ
(2a)(3b) 固定シーブ
(2b)(3a) 可動シーブ
(2c)(2d) 円錐状シーブ面
(11) リンク
(12) 前挿通部
(13) 後挿通部
(14) ピン(第1ピン)
(15) インターピース(第2ピン)
(20) 前側柱部
(21) 中間柱部
(22) 後側柱部

Claims (2)

  1. ピンが挿通される前後挿通部を有する複数のリンクと、一のリンクの前挿通部と他のリンクの後挿通部とが対応するようにチェーン幅方向に並ぶリンク同士を長さ方向に屈曲可能に連結する複数の第1ピンおよび複数の第2ピンとを備え、第1ピンと第2ピンとが相対的に転がり接触移動することにより、リンク同士の長さ方向の屈曲が可能とされている動力伝達チェーンにおいて、
    リンクは、前挿通部の前側に前側柱部、後挿通部の後側に後側柱部および前挿通部と後挿通部との間に中間柱部を有しており、前側、後側および中間の各柱部の最小幅が等しくなされるとともに、リンクのピッチ長をPとして、前側、後側および中間の各柱部の最小幅Qについて、0.2P<Q<0.8Pが満たされていることを特徴とする動力伝達チェーン。
  2. 円錐面状のシーブ面を有する第1のプーリと、円錐面状のシーブ面を有する第2のプーリと、これら第1および第2のプーリに掛け渡される動力伝達チェーンとを備え、動力伝達チェーンが請求項1記載のものである動力伝達装置。
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