以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
本願発明を詳細に説明する前に、本願における用語の意味を説明すると次の通りである。
半導体ウェハ(半導体基板)とは、集積回路の製造に用いる単結晶シリコン基板(一般にほぼ平面円形状)、サファイア基板、ガラス基板、その他の絶縁、反絶縁または半導体基板など並びにそれらの複合的基板を言う。また、本願において半導体装置というときは、シリコン基板やサファイア基板などの半導体または絶縁体基板上に作られるものだけでなく、特に、そうでない旨が明示された場合を除き、TFT(Thin Film Transistor)およびSTN(Super Twisted Nematic)液晶などのようなガラスなどの絶縁基板上に作られるものなども含むものとする。
素子形成面とは、半導体ウェハの主面であって、その面にフォトリソグラフィ技術により、複数のチップ領域に対応するデバイスパターンが形成される面をいう。
プラズマCVD装置とは、減圧したチャンバ内に原料ガスを導入し、導入した原料ガスに対して高周波電界を印加することにより原料ガスをプラズマ化する。そして、プラズマ化したガスでの化学反応により半導体基板上に膜を堆積するものである。
高密度プラズマCVD装置とは、プラズマCVD装置の一種であり、チャンバ内に導入した原料ガスから高密度プラズマガスを生成し、この高密度プラズマガスを化学反応させることにより半導体基板上に膜を堆積させるものである。高密度プラズマCVD装置では、高周波電界・磁界を用いてガスを高密度にプラズマ化するものであり、高密度プラズマを発生するために、誘導結合プラズマを用いている。
誘導結合プラズマとは、チャンバを囲むように巻かれ、誘導結合した高周波コイルで、チャンバ内に導入した原料ガスを励起させて発生させるプラズマである。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1における半導体装置の製造方法で使用する高密度プラズマCVD装置1の概略構成を示す図である。この高密度プラズマCVD装置1は、半導体ウェハ(半導体基板)(以下、単にウェハという)上に例えば、酸化シリコン膜を形成する場合に使用されるものである。本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1は、チャンバ(反応処理室)2、カセット室3、ロードロック室4およびウェハ搬送室5を有している。チャンバ2は、中で化学反応を起こさせるための密閉した容器である。カセット室3は、複数枚のウェハを入れたカセット17を配置するためのものであり、ロードロック室4は、ウェハを減圧下におかれているチャンバ2内にウェハを搬送するためのものである。すなわち、大気圧下におかれたカセット室3から減圧下におかれているチャンバ2内にウェハを搬入する際に必要となる気密室である。ウェハ搬送室5は、ロードロック室4におかれているウェハをチャンバ2内に搬送する搬送機構を備えるように構成されている。
チャンバ2内にはステージが設けられ、このステージ上にサセプタ6が配置されている。サセプタ6はウェハWを載置するように機能し、サセプタ6にはRFバイアス発生装置7が電気的に接続されている。RFバイアス発生装置7は、高周波電圧を発生できるように構成されており、RFバイアス発生装置7で発生した高周波電圧をサセプタ6上に配置されているウェハWに印加できるようになっている。ウェハWに高周波電圧を印加する目的は、プラズマガスが化学反応することにより形成される膜の緻密性を向上させることにある。つまり、イオン種を含むプラズマガスをウェハに高周波電圧を印加することにより引き付けて、ウェハ上に形成されるプラズマを高密度化してウェハ上に形成される膜の緻密性を向上させるものである。
チャンバ2内ではプラズマガスを発生させてプラズマガスの化学反応を起こさせることによりウェハW上に膜を形成する。すなわち、チャンバ2内ではプラズマガスが発生し、このプラズマガスの発光スペクトル強度(発光強度という)を観察するために、チャンバ2には光ファイバ8が接続されている。光ファイバ8は分光器9に接続され、分光器9は検出装置10に接続されている。つまり、チャンバ2内に存在するプラズマガスによる発光は光ファイバ8を通って分光器9に導入され、分光器9で目的の発光スペクトルを有する光を選別して発光強度を電気信号として検出装置10に入力する。検出装置10は、例えば、コンピュータから構成され発光強度を監視測定できるようになっている。
チャンバ2内は成膜処理時に減圧するため、バルブ11を介して真空ポンプ12が接続されている。真空ポンプ12に接続されているバルブ11を開閉することにより、チャンバ2内の圧力を制御することができる。さらに、チャンバ2には酸素ガス供給部13とシランガス供給部14が接続されている。酸素ガス供給部13は、酸化シリコン膜を成膜する際の原料ガスとなる酸素ガスをチャンバ2内に導入するように構成されており、配管を介してチャンバ2に接続されている。配管には酸素ガスの流量を制御するマスフローコントローラやバルブが設けられている。同様に、シランガス供給部14は、酸化シリコン膜を成膜する際の原料ガスとなるシランガスをチャンバ2内に導入するように構成されており、配管を介してチャンバ2に接続されている。この配管にもシランガスの流量を制御するマスフローコントローラやバルブが設けられている。
チャンバ2の外周にはコイル15が巻きつけられており、このコイル15に高周波電圧発生装置16が接続されている。これにより、高周波電圧発生装置16で発生した高周波電圧がコイル15に印加される。すると、コイル15で囲まれたチャンバ2内に高周波電界および高周波磁界が発生する。この高周波電界および高周波磁界がチャンバ2内に導入される原料ガスにエネルギーを供給し、原料ガスからプラズマガスが生成される。すなわち、コイル15および高周波電圧発生装置16は、チャンバ2内に高周波電界および高周波磁界を発生させるように構成されている。チャンバ2の外周にコイル15を巻きつけ、このコイル15によってチャンバ2内に高周波電界および高周波磁界を発生させて生成するプラズマを誘導結合プラズマといい、本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1では、誘導結合プラズマを使用している。誘導結合プラズマを使用すると、高密度にプラズマを生成することができる利点がある。このように構成された高周波プラズマCVD装置1では、ウェハ上にエッチング作用をもちながら膜を堆積するという特性があるため、とくに溝の埋め込み特性に優れているという利点がある。具体的に説明すると、溝の内部を充分に埋め込む前に溝の上部が膜で覆われてしまうことを抑制できるので、溝の内部に充分に膜を埋め込むことができるのである。したがって、例えば、素子分離溝に酸化シリコン膜を埋め込む工程に高密度プラズマCVD装置1は使用される。
本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1は上記のように構成されており、以下にその動作について説明する。高密度プラズマCVD装置1の動作には、ウェハ上に膜を成膜する動作とチャンバ2内に堆積した膜を除去するクリーニング動作があるので、それぞれの動作について説明する。
まず、ウェハ上に酸化シリコン膜を成膜する動作について説明する。図2は本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1を用いてウェハ上に酸化シリコン膜を成膜する動作を説明するフローチャートである。最初にチャンバ2内の圧力は真空ポンプ12によって大気圧から減圧下におかれるように調整されている。これにより、チャンバ2およびウェハ搬送室5の圧力は減圧されている。ウェハ搬送室5は、ウェハ搬送室5専用の真空ポンプで、減圧される場合もある。
次に、図1および図2に示すように、複数のウェハWを入れたカセット17をカセット室3に搬入する(S101)。そして、カセット17から1枚のウェハWを取り出してロードロック室4へ搬送する(S102)。次に、ロードロック室4を気密封止した後、ロードロック室4の圧力をチャンバ2およびウェハ搬送室5の圧力と同じか、あるいは近い圧力にする。その後、ロードロック室4にあるウェハWをウェハ搬送室5にある搬送装置によってチャンバ2に搬送する(S103)。続いて、ウェハWをチャンバ2内のサセプタ6上に配置する(S104)。
次に、酸素ガス供給部13から酸素ガス(原料ガス)をチャンバ2内に供給する(S105)。そして、コイル15に対して高周波電圧発生装置16で発生させた高周波電圧を印加する(S106)。すると、コイル15を巻きつけているチャンバ2の内部に高周波電界および高周波磁界が発生する。この高周波電界および高周波磁界により、チャンバ2に供給されている酸素ガスにエネルギーが供給され、酸素プラズマ(第1プラズマガス)が生成される。すなわち、酸素ガスを構成する酸素分子が高周波電界や高周波磁界からエネルギーを供給され基底状態から励起状態に遷移して酸素イオンやラジカルになりプラズマガスが生成される。ここでいう酸素プラズマとは、酸素イオンやラジカルを含むプラズマをいう。
酸素プラズマに含まれる酸素イオンやラジカルによって酸素プラズマは発光する。酸素プラズマからの発光光は、酸素イオンやラジカル中の電子が遷移することに基づくものであり、特定の波長を有するスペクトルである。この酸素プラズマから射出される発光光は、チャンバ2に設けられている光ファイバ8を通って分光器9に入射する。分光器9によって酸素プラズマ特有の波長を有する発光光が抽出され、分光器9に接続されている検出装置10により酸素プラズマの発光強度が測定される(S107)。
続いて、シランガス供給部14からチャンバ2内にシランガス(原料ガス)を供給するとともに、ウェハWにRFバイアス発生装置7からRFバイアスを印加する(S108)。このとき、チャンバ2内にシランガスが導入されると、シランガスにも高周波電界および高周波磁界からの作用によりプラズマ化される。すなわち、シランガスからシリコンイオンやラジカルを含むプラズマ(第2プラズマガス)が生成される。このプラズマに含まれるシリコンイオンやラジカルによってプラズマは発光する。このプラズマによる発光光は、シリコンイオンやラジカル中の電子が遷移することに基づくものであり、特定の波長を有するスペクトルである。シランガスから生成されたプラズマには、シリコンイオンの他に水素イオンなども含まれるため、シリコンイオンに基づく発光光や水素イオンに基づく発光光などが存在する。このシランガスをプラズマ化したプラズマから射出される発光光も光ファイバ8を通って分光器9に入射する。分光器9によってシリコンイオン特有の発光光が抽出され、分光器9に接続されている検出装置10によりシリコンイオンの発光強度が測定される。
検出装置10では、シリコンイオンの発光強度の上昇により成膜開始時刻が特定され(S109)、酸素イオンの発光強度の上昇によりウェハにRFバイアスを印加した時刻が特定される(S110)。そして、検出装置10では、成膜開始時刻とRFバイアスを印加した時刻とのずれを測定し保存する(S111)。この点が本願で開示される発明の1つの特徴である。このとき、チャンバ2内では、シランガスから生成されたプラズマに含まれるシリコンイオン(ラジカルも含む)と酸素プラズマに含まれる酸素イオン(ラジカルも含む)が化学反応して酸化シリコンが形成され、この酸化シリコンがウェハW上に酸化シリコン膜として成膜される。
その後、ウェハW上に所定の膜厚の酸化シリコン膜を形成すると成膜処理を終了する(S112)。そして成膜処理の終了したウェハWはチャンバ2から搬出される(S113)。このようにして、ウェハW上に酸化シリコン膜を形成することができる。
上述したようにして複数枚のウェハW上に酸化シリコン膜を形成することが行なわれるが、複数枚のウェハWに成膜処理を繰り返し行なうとチャンバ2の内壁などに酸化シリコン膜が徐々に堆積する。チャンバ2の内壁などに堆積した酸化シリコン膜は、膜厚が厚くなるとやがて剥がれて異物となる。この異物がウェハW上に付着すると製品不良の原因となるおそれがある。そこで、チャンバ2の内壁などに堆積した酸化シリコン膜が剥がれることにより発生する異物を低減するために、チャンバ2内に堆積した酸化シリコン膜を除去するクリーニングが行なわれる。以下では、チャンバ2内に堆積した酸化シリコン膜を除去するクリーニング動作について説明する。図3は、チャンバ2内のクリーニング動作を説明するフローチャートである。
図1および図3に示すように、ウェハWを搬出した後、NF3ガス供給部(図1に図示せず)からチャンバ2内にクリーニングガスであるNF3ガスを供給する(S201)。そして、コイル15に対して高周波電圧発生装置16で発生させた高周波電圧を印加する(S202)。すると、コイル15を巻きつけているチャンバ2の内部に高周波電界および高周波磁界が発生する。この高周波電界および高周波磁界により、チャンバ2に供給されているNF3ガスにエネルギーが供給され、NF3プラズマが生成される。
NF3プラズマが生成されると、このNF3プラズマとチャンバ2の内壁などに堆積している酸化シリコン膜が化学反応してSiFガスが生成される。すなわち、NF3プラズマと酸化シリコン膜が化学反応することにより、チャンバ2の内壁に堆積している酸化シリコン膜が徐々に除去される。この酸化シリコン膜が除去される程度は、反応生成物であるSiFガスの量によって推定することができる。酸化シリコン膜が多量に存在している場合には、NF3プラズマと酸化シリコン膜との化学反応が進むので、反応生成物であるSiFガスも多くなる。やがて、酸化シリコン膜がなくなると、NF3プラズマと酸化シリコン膜との化学反応が少なくなる。したがって、反応生成物であるSiFガスも少なくなる。そこで、反応生成物であるSiFガスの量を推測することで、クリーニングの終点を検出することができる。具体的に、SiFガスはチャンバ2内でプラズマ化しているので発光している。このSiFプラズマの発光強度を測定することにより、反応生成物であるSiFガスの量を推測できる。例えば、SiFガスの量が多い場合にはSiFプラズマの発光強度が大きくなり、SiFガスの量が少なくなるとSiFプラズマの発光強度が小さくなるのである。
また、この酸化シリコン膜が除去される程度は、NF3ガスの量によって推定することもできる。具体的に、NF3ガスはチャンバ2内でプラズマ化しているのでFプラズマとして発光している。このFプラズマの発光強度を測定することにより、NF3ガスの量を推測できる。例えば、酸化シリコン膜が多量に存在している場合には、NF3プラズマと酸化シリコン膜との化学反応が進むので、NF3ガスは消費され少なくなる。やがて、酸化シリコン膜がなくなると、NF3プラズマと酸化シリコン膜との化学反応が少なくなる。したがって、NF3ガス消費量も少なくなり、チャンバ2内のNF3ガス量は多くなる。そこで、反応ガスであるNF3ガスの量を推測することで、クリーニングの終点を検出することができる。NF3ガスの量が少ない場合にはFプラズマの発光強度が小さく、NF3ガスの量が多くなるとFプラズマの発光強度が大きくなるのである。
このSiFプラズマあるいはFプラズマの発光光は光ファイバ8を通って分光器9に入射する。そして、分光器9でSiFプラズマあるいはFプラズマの発光光を抽出し、検出装置10でSiFプラズマあるいはFプラズマの発光強度を測定する(S203)。検出装置10でSiFプラズマあるいはFプラズマの発光強度を測定した結果、SiFプラズマの発光強度あるいは強度変化量が一定値以下、またはFプラズマの発光強度が一定値以上あるいはFプラズマの発光強度変化量が一定値以下になると(S204)、チャンバ2の内壁などに堆積した酸化シリコン膜が充分に除去されたとみなしてクリーニングを終了する(S205)。一方、SiFプラズマの発光強度あるいは発光強度変化量が一定値以上、またはFプラズマの発光強度が一定値以下あるいはFプラズマの発光強度変化量が一定値以上であるとであると、酸化シリコン膜の除去が充分に行なわれていないとみなしてクリーニングを続行する。このようにして、本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1のクリーニングを行なうことができる。高密度プラズマCVD装置1では、ウェハW上に酸化シリコン膜を成膜する成膜処理を所定枚数のウェハWについて連続して行なった後、チャンバ2内のクリーニングを実施するという動作を繰り返すことが行なわれている。
ここで、本実施の形態1では、高密度プラズマCVD装置1に光ファイバ8、分光器9および検出装置10などの光学処理系を設けているが、これらの構成は、そもそも上述したクリーニング時の終点検出のために設けられているものである。つまり、NF3ガスによって酸化シリコン膜を除去する際、反応生成物であるSiFプラズマが生成されるが、このSiFプラズマの発光強度を上述した光学処理系で測定することにより、SiFプラズマの量を推測してクリーニングの終点検出をしている。あるいはFプラズマの強度を推測してクリーニングの終点検出をしている。本実施の形態1では、光学処理系をクリーニングの終点検出に使用するだけでなく、ウェハWの成膜処理において、酸素プラズマに含まれる酸素イオンの発光強度およびシランガスから生成されたプラズマに含まれるシリコンイオンの発光強度の検出にも上述した光学処理系を使用している点に特徴の1つがある。すなわち、光ファイバ8、分光器9および検出装置10などからなる光学処理系をウェハWの成膜処理にも利用している点に特徴の1つがある。このように光学処理系をウェハWの成膜処理において、酸素プラズマに含まれる酸素イオンの発光強度およびシランガスから生成されたプラズマに含まれるシリコンイオンの発光強度の検出に使用する利点について説明する。
発明が解決しようとする課題で説明しているようにウェハWの成膜処理において、ウェハWにRFバイアスを印加するタイミングと、シランガスを導入して酸化シリコン膜を形成するタイミングとを合わせることが理想的である。しかし、現実には、ウェハWにRFバイアスを印加するタイミングと、シランガスを導入して酸化シリコン膜を形成するタイミングがずれる。そこで、本実施の形態1では、ウェハWにRFバイアスを印加するタイミングと、シランガスを導入して酸化シリコン膜を形成するタイミングとを、酸素プラズマに含まれる酸素イオンの発光強度およびシランガスから生成されたプラズマに含まれるシリコンイオンの発光強度の検出することにより特定できることを見出した点に特徴の1つがある。これにより、プラズマの発光強度を計測することで、ウェハWにRFバイアスを印加する時刻と、シランガスを導入して酸化シリコン膜を形成する成膜開始時刻とのずれを監視することができる利点がある。
まず、酸素プラズマに含まれる酸素イオンの発光強度を測定することでウェハWにRFバイアスを印加する時刻を特定できる点について説明する。酸素プラズマは、ウェハW上に酸化シリコン膜を成膜する前から形成されている。すなわち、酸素プラズマは高密度プラズマCVD装置1のアイドリング時から形成されている。したがって、酸素プラズマは成膜開始時刻よりも前であっても一定の発光強度を有している。この状態で成膜処理を開始すると、ウェハWにRFバイアスが印加される。このとき、ウェハWにRFバイアスが印加されると、その影響で酸素プラズマのプラズマ化が一層進行する。つまり、ウェハWにRFバイアスを印加することにより、酸素プラズマに含まれる酸素イオンが増加する。酸素イオンが増加すると、酸素プラズマの発光強度が上昇する。このことから、酸素プラズマの発光強度が上昇する時刻を測定することで、ウェハWにRFバイアスを印加した時刻を特定することができる。
続いて、シランガスから生成されたプラズマに含まれるシリコンイオンの発光強度の検出することでウェハW上に酸化シリコン膜が形成される成膜開始時刻を特定できる点について説明する。上述したように酸素プラズマは成膜開始時刻よりも前からチャンバ2内に形成されているが、シランガスが導入されていないので成膜処理は行なわれない。成膜処理が開始されるには、シランガスをチャンバ2内に導入しシリコンイオンを含むプラズマが生成された時点である。つまり、シランガスをチャンバ2内に導入する時点では成膜処理は開始されていない。これは、シランガスをチャンバ2内に導入するようにバルブを開いた時点は成膜開始時刻ではないことを意味する。すなわち、機械的にバルブの開閉を行なうための時間や配管をシランガスが流れる時間およびチャンバ2内にシランガスが導入されてプラズマガスが生成されるまでの時間などを考慮すると、バルブの開閉を行なうタイミング(シランガスを導入するタイミング)が成膜開始時刻とはならない。実際に成膜処理が開始されるのは、シランガスがチャンバ2内に導入されてシリコンイオンを含むプラズマが生成されてからである。したがって、プラズマ中のシリコンイオンが増加する時点でシリコンイオンを含むプラズマと酸素プラズマが化学反応して酸化シリコン膜の成膜処理が開始されることになる。このことから、シリコンイオンを含むプラズマにおいて、シリコンイオンの発光強度が上昇する時刻を測定することで酸化シリコン膜の成膜開始時刻を特定することができる。
以上のように、ウェハWにRFバイアスを印加するタイミングと、シランガスを導入して酸化シリコン膜を形成するタイミングとを、酸素プラズマに含まれる酸素イオンの発光強度の上昇およびシランガスから生成されたプラズマに含まれるシリコンイオンの発光強度の上昇を検出することにより特定できることがわかる。したがって、光ファイバ8、分光器9および検出装置10などの光学処理系を使用してプラズマに含まれる特定成分の発光強度を測定することで、ウェハWにRFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻とのずれを検出し半導体装置の製造工程を監視することができる。
本実施の形態1では、光ファイバ8、分光器9および検出装置10などの光学処理系をクリーニングガスの終点検出と、ウェハWにRFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれの検出で共用している。この場合、高密度プラズマCVD装置1の構成を大幅に変更することなく、ウェハWにRFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれの検出を行なうことができる利点がある。分光器9では、クリーニングガスの終点を検出するためのSiFプラズマあるいはFプラズマの発光光の他に、酸素イオンによる発光光およびシリコンイオンによる発光光を抽出して検出できるようにすればよい。そして、検出装置10では、SiFプラズマの発光光、Fプラズマの発光光、酸素イオンによる発光光およびシリコンイオンによる発光光を測定できるように構成すればよい。
なお、上述したように、本実施の形態1では、光ファイバ8、分光器9および検出装置10などの光学処理系をクリーニングガスの終点検出と、ウェハWにRFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれの検出で共用しているが、別々に構成してもよいし、クリーニングガスの終点検出を行なわないように構成してもよい。
次に、ウェハW上に成膜処理を実施する工程とチャンバ2内のクリーニングを実施する工程で供給されるガスのタイミングおよびウェハWへRFバイアスを印加するタイミングをプロセスシーケンスとして図4に示す。図4に示すように、ウェハWへの成膜処理工程で高密度プラズマCVD装置1のチャンバ2には、まず、酸素ガスが導入され酸素プラズマが生成されている。そして、この状態で、シランガスが導入され、シリコンイオンを含むプラズマが生成される。これにより、ウェハW上に酸化シリコン膜が形成される。このとき、ウェハWにはRFバイアスが印加されている。その後、例えば、3枚〜6枚程度のウェハについて同様の処理が施される。酸素プラズマは成膜処理工程の間にわたってチャンバ2内に導入され酸素プラズマが形成されている。一方、シランガスは、1枚のウェハWの成膜処理を開始する時点で導入され、1枚のウェハWの成膜処理が終了した時点でチャンバ2への供給が停止される。また、ウェハWに印加されるRFバイアスも1枚のウェハWを処理する毎に印加される。
続いて、クリーニング工程では、チャンバ2内から酸素ガスおよびシランガスが排気される。そして、ウェハWも搬出される。この後、チャンバ2内にNF3ガスを導入することにより、チャンバ2の内壁などに堆積した酸化シリコン膜を除去する。このように本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1では、3枚〜6枚のウェハW上に酸化シリコン膜を形成する成膜処理を行なった後、チャンバ2内のクリーニングが実施され、以後この動作が繰り返される。
次に、ウェハWへの成膜処理で供給されるガスのタイミングとウェハWへRFバイアスを印加するタイミングの一例について説明する。図5は、ウェハW上にRFバイアスを印加する時刻が酸化シリコン膜の成膜を開始する成膜開始時刻よりも早い場合の一例を示す図である。図5に示すように、酸素ガスはウェハWに酸化シリコン膜を成膜する前から導入され酸素プラズマが形成されている。その後、チャンバ2内にウェハWを搬入し、バルブを開けてシランガス供給部14からシランガスが導入される。バルブを開けた時点では酸化シリコン膜の成膜は開始されず、チャンバ2内に充分にシランガスが導入され、かつ、シランガスからシリコンイオンを含むプラズマが充分に形成された時点で酸化シリコン膜の成膜が開始される。この成膜開始時刻は、バルブを開く時刻よりも遅れて例えば(1)で示す時刻となる。これに対し、ウェハWにRFバイアスを印加する時刻を、例えば、シランガスを導入するバルブを開いた時刻である(2)で示す時刻とする。すると、成膜開始時刻とRFバイアスを印加する時刻とのずれがΔtだけ存在することになる。
本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1ではこの成膜開始時刻とRFバイアスを印加する時刻とのずれを、酸素イオンの発光強度の上昇とシリコンイオンの発光強度の上昇を測定することによって検出することができる。このことを図6で説明する。図6は、酸素イオン、シリコンイオンおよび水素イオンの発光強度(発光スペクトル強度)と時刻との関係を示すグラフである。図6において、横軸が時刻(s)を示し、縦軸が発光強度を示している。図6に示すように、酸素イオンの発光強度に着目すると、時刻43.5(s)から時刻44.7(s)程度までは、発光強度が1000程度で推移している。そして、時刻44.7(s)になると発光強度が1100程度にまで上昇していることがわかる。このことから、時刻44.7(s)をRFバイアスが印加された時刻とみなすことができる。一方、シリコンイオンの発光強度に着目すると、43.5(s)から45.2(s)程度までは、発光強度が100程度で推移するが、45.2(s)を超えると発光強度が急激に上昇していることがわかる。これにより、シリコンイオンを含むプラズマが充分に生成された時刻(成膜開始時刻)を45.2(s)とみなすことができる。この時刻45.2(s)を見ると、酸素イオンの発光強度が著しく低下していることがわかる。これは、酸素イオンがシリコンイオンと化学反応して酸化シリコン膜が形成されつつあることを示していると見ることができる。なお、シランガスを導入する前の時刻においてもシリコンイオンの発光強度が存在するのは、前のウェハW上に成膜処理を施す際に使用したシランガスが残存している影響によるものであると考えることができる。
以上より、RFバイアスを印加した時刻が時刻44.7(s)であり、成膜開始時刻が時刻45.2(s)であると特定される。したがって、RFバイアスを印加した時刻と成膜開始時刻との間には、約0.5(s)程度のずれが存在し、RFバイアスを印加した時刻が成膜開始時刻より早いことが検出される。
このようにRFバイアスを印加した時刻が成膜開始時刻よりも早いと、ウェハW上に酸化シリコン膜を形成する工程で以下に示す不都合が生じる。この不都合について本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1を素子分離溝に酸化シリコン膜を埋め込む工程に適用する場合を例に挙げて説明する。
図7は、半導体基板(ウェハ)20上にパターニングした酸化シリコン膜21および窒化シリコン膜22を形成し、このパターニングした酸化シリコン膜21および窒化シリコン膜22をマスクにして半導体基板20に素子分離溝23を形成している。そして、素子分離溝23の側面に熱酸化法などを用いて酸化シリコン膜24を形成している。このように素子分離溝23が形成された半導体基板20が本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1に搬入される。
素子分離溝23が形成された半導体基板20がチャンバ2に搬入されると、図8に示すように、半導体基板20は酸素プラズマ27にさらされることになる。そして、半導体基板20にRFバイアスがRFバイアス発生装置26により印加される。すると、酸素プラズマ27に含まれる酸素イオンがRFバイアスの影響で半導体基板20に加速して衝突する。このため、素子分離溝23近傍の半導体基板20の表面にピット50と呼ばれる不良が形成される。
続いて、図9に示すように、RFバイアスを印加した時刻より遅れてシランガスからシリコンイオンを充分に含むプラズマが生成される。このシリコンイオンを充分に含むプラズマと酸素プラズマを合わせたものがプラズマ28である。このプラズマ28に含まれる酸素イオンとシリコンイオンが化学反応して酸化シリコン膜25が半導体基板20上に形成される。すなわち、RFバイアスを印加した時刻より遅れて酸化シリコン膜25の成膜処理が開始される。この成膜処理を続けることにより、半導体基板20上に形成された素子分離溝23を埋め込むように酸化シリコン膜25が形成される。
その後、図10に示すように、CMP工程を経ることにより、酸化シリコン膜25を除去し、その後、パターニングされた窒化シリコン膜22および酸化シリコン膜21を除去する。そして、半導体基板20の表面を洗浄する。このCMP工程および洗浄工程を経ることにより、半導体基板20に素子分離領域29が形成されるが、同時にピット50が拡大して素子分離領域29の近傍に穴51が形成される。このような穴51が形成されると、CMISFETの電気的特性が変化し品質不良を引き起こすことになる。したがって、RFバイアスを印加する時刻が酸化シリコン膜の成膜開始時刻よりも早い方向にずれるとCMISFETの品質不良を引き起こすことになる。
さらに、ウェハWへの成膜処理で供給されるガスのタイミングとウェハWへRFバイアスを印加するタイミングの他の例について説明する。図11は、ウェハW上にRFバイアスを印加する時刻が酸化シリコン膜の成膜を開始する成膜開始時刻よりも遅い場合の一例を示す図である。図11に示すように、酸素ガスはウェハWに酸化シリコン膜を成膜する前から導入され酸素プラズマが形成されている。その後、チャンバ2内にウェハWを搬入し、バルブを開けてシランガス供給部14からシランガスが導入される。バルブを開けた時点では酸化シリコン膜の成膜は開始されず、チャンバ2内に充分にシランガスが導入され、かつ、シランガスからシリコンイオンを含むプラズマが充分に形成された時点で酸化シリコン膜の成膜が開始される。この成膜開始時刻は、バルブを開く時刻よりも遅れて例えば(1)で示す時刻となる。これに対し、ウェハWにRFバイアスを印加する時刻を、例えば、(1)で示す成膜開始時刻よりも遅い(2)で示す時刻とする。すると、成膜開始時刻とRFバイアスを印加する時刻とのずれがΔtだけ存在することになる。
本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1ではこの成膜開始時刻とRFバイアスを印加する時刻とのずれを、酸素イオンの発光強度の上昇とシリコンイオンの発光強度の上昇を測定することによって検出することができる。このことを図12で説明する。図12は、酸素イオン、シリコンイオンおよび水素イオンの発光強度(発光スペクトル強度)と時刻との関係を示すグラフである。図12において、横軸が時刻(s)を示し、縦軸が発光強度を示している。図12に示すように、シリコンイオンの発光強度に着目すると、時刻47(s)から時刻48.8(s)程度までは、発光強度が125程度で推移している。そして、時刻48.8(s)になると発光強度が急激に400程度にまで上昇していることがわかる。これにより、シリコンイオンを含むプラズマが充分に生成された時刻(成膜開始時刻)を48.8(s)とみなすことができる。この時刻48.8(s)を見ると、酸素イオンの発光強度が著しく低下していることがわかる。これは、酸素イオンがシリコンイオンと化学反応して酸化シリコン膜が形成されつつあることを示していると見ることができる。一方、酸素イオンの発光強度について着目すると、時刻47(s)から時刻48.8(s)程度までは、発光強度が約900〜1000程度で推移している。そして、時刻48.8(s)を過ぎると酸素イオンの発光強度が減少していることがわかる。このため、酸素イオンがシリコンイオンとの化学反応で使用され酸化シリコン膜が形成されていることがわかる。その後、時刻49.3(s)程度で酸素イオンの発光強度が一時上昇していることがわかる。このことから、時刻49.3(s)をRFバイアスが印加された時刻とみなすことができる。
以上より、RFバイアスを印加した時刻が時刻49.3(s)であり、成膜開始時刻が時刻48.8(s)であると特定される。したがって、RFバイアスを印加した時刻と成膜開始時刻との間には、約0.5(s)程度のずれが存在し、RFバイアスを印加した時刻が成膜開始時刻より遅いことが検出される。
このようにRFバイアスを印加した時刻が成膜開始時刻よりも遅い場合でも、ウェハW上に酸化シリコン膜を形成する工程で以下に示す不都合が生じる。この不都合について本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1を素子分離溝に酸化シリコン膜を埋め込む工程に適用する場合を例に挙げて説明する。
図13は、半導体基板(ウェハ)20上にパターニングした酸化シリコン膜21および窒化シリコン膜22を形成し、このパターニングした酸化シリコン膜21および窒化シリコン膜22をマスクにして半導体基板20に素子分離溝23を形成している。そして、素子分離溝23の側面に熱酸化法などを用いて酸化シリコン膜24を形成している。このように素子分離溝23が形成された半導体基板20が本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1に搬入される。
素子分離溝23が形成された半導体基板20がチャンバ2に搬入されると、図14に示すように、酸素イオンを含む酸素プラズマに半導体基板20はさらされる。そして、シランガスが充分にチャンバ2内に導入された後、シランガスがプラズマ化されてシリコンイオンを含むプラズマガスが充分に形成される。これにより、酸素プラズマとシリコンイオンを含むプラズマからなるプラズマ28が形成される。ここで、半導体基板20は、酸素プラズマにさらされることになるが、半導体基板20にRFバイアスが印加されていないので、酸素イオンが加速されて半導体基板20に衝突することはなく、素子分離溝23の近傍にピットと呼ばれる不良は形成されない。
しかし、プラズマ28には、酸素イオンとシリコンイオンが充分に含まれるので、酸素イオンとシリコンイオンが化学反応して酸化シリコン膜25が形成される。すなわち、半導体基板20にRFバイアスが印加されない状態で酸化シリコン膜25が半導体基板20上に形成されることになる。RFバイアスを半導体基板20に印加する目的は、緻密な酸化シリコン膜を形成するためである。ところが、いまの場合、RFバイアスが印加される時刻よりも先に酸化シリコン膜が形成される。RFバイアスが印加されない状態で形成された酸化シリコン膜は緻密でなく脆弱な膜質を有する。すなわち、図14に示す酸化シリコン膜25は脆弱な性質の膜として形成される。
続いて、図15に示すように、成膜開始時刻より遅れてRFバイアスが半導体基板20に印加される。RFバイアスが印加された後に形成される酸化シリコン膜は緻密な性質を有する。すなわち、いまの場合、半導体基板20上には脆弱な酸化シリコン膜25が形成され、この脆弱な酸化シリコン膜25上に緻密な酸化シリコン膜25が形成されることになる。この成膜処理を続けることにより、半導体基板20上に形成された素子分離溝23を埋め込むように酸化シリコン膜25が形成される。
その後、図16に示すように、CMP工程を経ることにより、酸化シリコン膜25を除去し、その後、パターニングされた窒化シリコン膜22および酸化シリコン膜21を除去する。そして、半導体基板20の表面を洗浄する。このCMP工程および洗浄工程を経ることにより、半導体基板20に素子分離領域29が形成されるが、脆弱な酸化シリコン膜25を除去することになるので、素子分離領域29を埋め込んでいる脆弱な酸化シリコン膜25が過剰に除去され、素子分離領域29に穴(ウィークスポット)52が形成される。このような穴52が形成されると、CMISFETの電気的特性が変化し品質不良を引き起こすことになる。したがって、RFバイアスを印加する時刻が酸化シリコン膜の成膜開始時刻よりも遅い方向にずれる場合も、CMISFETの品質不良を引き起こすことになる。
以上のことから、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻との間にずれが生じると、高密度プラズマCVD装置1を使用して形成される半導体装置の品質不良を引き起こすおそれがあることがわかる。そこで、本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1では、酸素イオンの発光強度の上昇よりRFバイアスを印加する時刻を特定し、シリコンイオンの発光強度の上昇より酸化シリコン膜の成膜開始時刻を特定することができるので、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻のずれを検出して監視することができる。この点が本願で開示される発明の1つの特徴であるが、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻のずれを検出できる点から、さらに、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻のずれをなくすように調整する処理を行なうことができる。
図17はRFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻のずれをなくすように調整する処理を説明するフローチャートである。まず、図2に示すフローチャートのようにRFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻のずれを検出することができ、この検出したずれを検出装置10などに保存することができる(S301)。
続いて、半導体装置の製造工程の管理者が検出装置10などに保存されたRFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻のずれを取得する(S302)。この結果、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻との間にあるずれが一定値以上ある場合には、このずれをなくすように調整する。具体的には、RFバイアスを印加する時刻を調整してずれをなくすように設定しなおす。あるいは、チャンバ2内にシランガスを供給する時刻を調整する。
その後、ずれを補正した状態で次にウェハの成膜処理を開始する(S304)。このようにすることにより、ずれを調整してウェハW上に酸化シリコン膜を成膜することができるので、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻との間にずれがある状態で成膜処理を行なう場合に生じるCMISFETの品質不良を防止することができる。
以下では、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻との間にあるずれを調整した後のCMISFET(半導体装置)の製造工程について説明する。このCMISFETの製造工程において、例えば、本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1は、素子分離溝に酸化シリコン膜を埋め込む工程に適用される。
まず、図18に示すように、ホウ素(B)などのp型不純物を導入したシリコン単結晶よりなる半導体基板20を用意する。このとき、半導体基板20は、略円盤形状をした半導体ウェハの状態になっている。
次に、図19に示すように、半導体基板20上に酸化シリコン膜21および窒化シリコン膜22を順次形成する。窒化シリコン膜22および酸化シリコン膜21は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を使用して形成することができる。
続いて、図20に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、窒化シリコン膜22および酸化シリコン膜21をパターニングする。パターニングは、素子分離溝を形成する領域に窒化シリコン膜22および酸化シリコン膜21が残らないように行なわれる。
そして、図21に示すように、パターニングした窒化シリコン膜22および酸化シリコン膜21をハードマスク膜にしたプラズマエッチングにより半導体基板20に素子分離溝23を形成する。この素子分離溝23を形成するプラズマエッチング工程で本実施の形態におけるプラズマエッチング装置が使用される。
次に、図22に示すように、半導体基板20に形成した素子分離溝23の表面に酸化シリコン膜24を形成する。この酸化シリコン膜24は、例えば、熱酸化法によって形成することができる。その後、図23に示すように、素子分離溝23内を含む半導体基板20上に酸化シリコン膜25を形成する。酸化シリコン膜25は、例えば、本実施の形態1における高密度プラズマCVD法により形成することができる。
図23に示すように、半導体基板20上には酸素イオンを含む酸素プラズマとシリコンイオンを含むプラズマからなるプラズマ28が形成される。これにより、酸素イオンとシリコンイオンが化学反応して酸化シリコン膜25が半導体基板20上に形成される。このとき、RFバイアス発生装置26により半導体基板20にRFバイアスが印加されるので、半導体基板20上に形成される酸化シリコン膜25は緻密な膜となる。すなわち、いまの場合、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜25が形成される成膜開始時刻とのずれがなくなるように調整されているため、酸素イオンがRFバイアスによって加速されて衝突することにより生じるピットを防止することができるとともに、脆弱な酸化シリコン膜25の形成も防止できる。
図24は、半導体基板20上にRFバイアスを印加する時刻が酸化シリコン膜の成膜を開始する成膜開始時刻と同時刻になる一例を示す図である。図24に示すように、酸素ガスは半導体基板20に酸化シリコン膜25を成膜する前から導入され酸素プラズマが形成されている。その後、チャンバ2内に半導体基板20を搬入し、バルブを開けてシランガス供給部14からシランガスが導入される。バルブを開けた時点では酸化シリコン膜の成膜は開始されず、チャンバ2内に充分にシランガスが導入され、かつ、シランガスからシリコンイオンを含むプラズマが充分に形成された時点で酸化シリコン膜の成膜が開始される。この成膜開始時刻は、バルブを開く時刻よりも遅れて例えば(1)で示す時刻となる。そして、半導体基板20にRFバイアスを印加する時刻を、例えば、(1)で示す成膜開始時刻に合っている(2)で示す時刻に調整する。すると、成膜開始時刻とRFバイアスを印加する時刻とのずれがなくなることになる。
本実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1ではこの成膜開始時刻とRFバイアスを印加する時刻を、酸素イオンの発光強度の上昇とシリコンイオンの発光強度の上昇を測定することによって検出することができる。このことを図25で説明する。図25は、酸素イオン、シリコンイオンおよび水素イオンの発光強度(発光スペクトル強度)と時刻との関係を示すグラフである。図25において、横軸が時刻(s)を示し、縦軸が発光強度を示している。図25に示すように、シリコンイオンの発光強度に着目すると、時刻70.5(s)から時刻72(s)程度までは、発光強度が125程度で推移している。そして、時刻72(s)になると発光強度が急激に250程度にまで上昇していることがわかる。これにより、シリコンイオンを含むプラズマが充分に生成された時刻(成膜開始時刻)を72(s)とみなすことができる。この時刻72(s)を見ると、酸素イオンの発光強度が著しく低下していることがわかる。これは、酸素イオンがシリコンイオンと化学反応して酸化シリコン膜が形成されつつあることを示していると見ることができる。一方、酸素イオンの発光強度について着目すると、時刻70.5(s)から時刻72(s)程度までは、発光強度が約800程度で推移している。そして、時刻72(s)程度で酸素イオンの発光強度が一時上昇していることがわかる。このことから、時刻72(s)をRFバイアスが印加された時刻とみなすことができる。
以上より、RFバイアスを印加した時刻が時刻72(s)であり、成膜開始時刻も時刻72(s)であると特定される。したがって、RFバイアスを印加した時刻と成膜開始時刻との間には、ずれがないことが検出される。
続いて、図26に示すように、半導体基板20の表面を化学的機械的研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)で研磨する。そして、露出した窒化シリコン膜22を熱リン酸で除去することにより、半導体基板20上に素子分離領域29を形成することができる。この素子分離領域29は、素子が互いに干渉しないようにするために設けられる。本実施の形態1では、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜処理を開始する時刻との間にずれが生じないように調整されているので、この素子分離領域29の周囲にはピットやウィークスポットは形成されない。したがって、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻との間にずれがある状態で成膜処理を行なう場合に生じるCMISFETの品質不良を防止することができる。
次に、図27に示すように、素子分離領域29で分離された活性領域に不純物を導入してウェルを形成する。例えば、活性領域のうちnチャネル型MISFET形成領域には、p型ウェル30を形成し、pチャネル型MISFET形成領域には、n型ウェル31を形成する。p型ウェル30は、例えばホウ素などのp型不純物をイオン注入法により半導体基板20に導入することで形成される。同様に、n型ウェル31は、例えばリン(P)や砒素(As)などのn型不純物をイオン注入法により半導体基板20に導入することで形成される。
続いて、p型ウェル30の表面領域およびn型ウェル31の表面領域にチャネル形成用の半導体領域(図示せず)を形成する。このチャネル形成用の半導体領域は、チャネルを形成するしきい値電圧を調整するために形成される。
次に、半導体基板20上にゲート絶縁膜32を形成する。ゲート絶縁膜32は、例えば、酸化シリコン膜から形成され、例えば熱酸化法を使用して形成することができる。ただし、ゲート絶縁膜32は、酸化シリコン膜に限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、ゲート絶縁膜32を酸窒化シリコン膜(SiON)としてもよい。すなわち、ゲート絶縁膜32と半導体基板20との界面に窒素を偏析させる構造としてもよい。酸窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜に比べて膜中における界面準位の発生を抑制したり、電子トラップを低減する効果が高い。したがって、ゲート絶縁膜32のホットキャリア耐性を向上でき、絶縁耐性を向上させることができる。また、酸窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜に比べて不純物が貫通しにくい。このため、ゲート絶縁膜32に酸窒化シリコン膜を用いることにより、ゲート電極中の不純物が半導体基板側に拡散することに起因するしきい値電圧の変動を抑制することができる。酸窒化シリコン膜を形成するのは、例えば、半導体基板20をNO、NO2またはNH3といった窒素を含む雰囲気中で熱処理すればよい。また、半導体基板20の表面に酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜32を形成した後、窒素を含む雰囲気中で半導体基板20を熱処理し、ゲート絶縁膜32と半導体基板20との界面に窒素を偏析させることによっても同様の効果を得ることができる。
また、ゲート絶縁膜32は、例えば酸化シリコン膜より誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。従来、絶縁耐性が高い、シリコン−酸化シリコン界面の電気的・物性的安定性などが優れているとの観点から、ゲート絶縁膜32として酸化シリコン膜が使用されている。しかし、素子の微細化に伴い、ゲート絶縁膜32の膜厚について、極薄化が要求されるようになってきている。このように薄い酸化シリコン膜をゲート絶縁膜32として使用すると、MISFETのチャネルを流れる電子が酸化シリコン膜によって形成される障壁をトンネルしてゲート電極に流れる、いわゆるトンネル電流が発生してしまう。
そこで、酸化シリコン膜より誘電率の高い材料を使用することにより、容量が同じでも物理的膜厚を増加させることができる高誘電体膜が使用されるようになってきている。高誘電体膜によれば、容量を同じにしても物理的膜厚を増加させることができるので、リーク電流を低減することができる。
例えば、高誘電体膜として、ハフニウム酸化物の一つである酸化ハフニウム膜(HfO2膜)が使用されるが、酸化ハフニウム膜に変えて、ハフニウムアルミネート膜、HfON膜(ハフニウムオキシナイトライド膜)、HfSiO膜(ハフニウムシリケート膜)、HfSiON膜(ハフニウムシリコンオキシナイトライド膜)、HfAlO膜のような他のハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。さらに、これらのハフニウム系絶縁膜に酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウムなどの酸化物を導入したハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。ハフニウム系絶縁膜は、酸化ハフニウム膜と同様、酸化シリコン膜や酸窒化シリコン膜より誘電率が高いので、酸化ハフニウム膜を用いた場合と同様の効果が得られる。
続いて、図28に示すように、ゲート絶縁膜32上にポリシリコン膜(導体膜)33を形成する。ポリシリコン膜33は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。そして、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用して、nチャネル型MISFET形成領域に形成されているポリシリコン膜33中にリンや砒素などのn型不純物を導入する。同様に、pチャネル型MISFET形成領域に形成されているポリシリコン膜33中にホウ素などのp型不純物を導入する。
そして、図29に示すように、ポリシリコン膜33上に酸化シリコン膜34を形成した後、フォトリソグラフィ技術を使用することにより、酸化シリコン膜34上にパターニングしたレジスト膜35a、35bを形成する。レジスト膜35aおよびレジスト膜35bは、ゲート電極形成領域を覆うように形成される。
続いて、図30に示すように、レジスト膜35a、35bをマスクにしたエッチングにより酸化シリコン膜34をパターニングして酸化シリコン膜34a、34bを形成する。この酸化シリコン膜34a、34bはポリシリコン膜33を加工してゲート電極を形成する際のハードマスクとなる膜である。このハードマスク膜は酸化シリコン膜だけでなく、窒化シリコン膜等の材質を用いてもよい。
次に、図31に示すように、パターニングした酸化シリコン膜34aおよび酸化シリコン膜34bをハードマスク膜にしたプラズマエッチングによりポリシリコン膜33を加工して、nチャネル型MISFET形成領域にゲート電極36aを形成し、pチャネル型MISFET形成領域にゲート電極36bを形成する。
この後、図32に示すように、ハードマスク膜である酸化シリコン膜34a、34bを除去することにより、ゲート電極36a、36bを形成することができる。ここで、nチャネル型MISFET形成領域のゲート電極36aには、ポリシリコン膜33中にn型不純物が導入されている。このため、ゲート電極36aの仕事関数値をシリコンの伝導帯近傍(4.15eV)の値にすることができるので、nチャネル型MISFETのしきい値電圧を低減することができる。一方、pチャネル型MISFET形成領域のゲート電極36bには、ポリシリコン膜33中にp型不純物が導入されている。このため、ゲート電極36bの仕事関数値をシリコンの価電子帯近傍(5.15eV)の値にすることができるので、pチャネル型MISFETのしきい値電圧を低減することができる。このように本実施の形態1では、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETの両方でしきい値電圧を低減することができる(デュアルゲート構造)。
続いて、図33に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、nチャネル型MISFETのゲート電極36aに整合した浅いn型不純物拡散領域37を形成する。浅いn型不純物拡散領域37は、半導体領域である。同様に、pチャネル型MISFET形成領域に浅いp型不純物拡散領域38を形成する。浅いp型不純物拡散領域38は、pチャネル型MISFETのゲート電極36bに整合して形成される。この浅いp型不純物拡散領域38は、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより形成することができる。
次に、図34に示すように、ゲート電極36a、36bを覆うように、半導体基板20上に酸化シリコン膜39を形成する。酸化シリコン膜39は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。そして、図35に示すように、酸化シリコン膜39を異方性エッチングすることにより、サイドウォール40をゲート電極36a、36bの側壁に形成する。サイドウォール40は、酸化シリコン膜39の単層膜から形成するようにしたが、これに限らず、例えば、窒化シリコン膜のみ、もしくは、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜の積層膜からなるサイドウォールを形成してもよい。
続いて、図36に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、nチャネル型MISFET形成領域にサイドウォール40に整合した深いn型不純物拡散領域41を形成する。深いn型不純物拡散領域41は、半導体領域である。この深いn型不純物拡散領域41と浅いn型不純物拡散領域37によってソース領域が形成される。同様に、深いn型不純物拡散領域41と浅いn型不純物拡散領域37によってドレイン領域が形成される。このようにソース領域とドレイン領域を浅いn型不純物拡散領域37と深いn型不純物拡散領域41で形成することにより、ソース領域およびドレイン領域をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることができる。
同様に、pチャネル型MISFET形成領域にサイドウォール40に整合した深いp型不純物拡散領域42を形成する。この深いp型不純物拡散領域42と浅いp型不純物拡散領域38によってソース領域およびドレイン領域が形成される。したがって、pチャネル型MISFETにおいてもソース領域およびドレイン領域はLDD構造をしている。
このようにして、深いn型不純物拡散領域41および深いp型不純物拡散領域42を形成した後、1000℃程度の熱処理を行なう。これにより、導入した不純物の活性化が行なわれる。
その後、半導体基板20上にコバルト膜を形成する。このとき、ゲート電極36a、36bに直接接するようにコバルト膜が形成される。同様に、深いn型不純物拡散領域41および深いp型不純物拡散領域42にもコバルト膜が直接接する。
コバルト膜は、例えば、スパッタリング法を使用して形成することができる。そして、コバルト膜を形成した後、熱処理を施すことにより、ゲート電極36a、36bを構成するポリシリコン膜33とコバルト膜を反応させて、コバルトシリサイド膜43を形成する。これにより、ゲート電極36a、36bはポリシリコン膜33とコバルトシリサイド膜43の積層構造となる。コバルトシリサイド膜43は、ゲート電極36a、36bの低抵抗化のために形成される。同様に、上述した熱処理により、深いn型不純物拡散領域41および深いp型不純物拡散領域42の表面においてもシリコンとコバルト膜が反応してコバルトシリサイド膜43が形成される。このため、深いn型不純物拡散領域41および深いp型不純物拡散領域42においても低抵抗化を図ることができる。
そして、未反応のコバルト膜は、半導体基板20上から除去される。なお、本実施の形態1では、コバルトシリサイド膜43を形成するように構成しているが、例えば、コバルトシリサイド膜43に代えてニッケルシリサイド膜やチタンシリサイド膜を形成するようにしてもよい。
次に、図37に示すように、半導体基板20の主面上に層間絶縁膜となる酸化シリコン膜44を形成する。この酸化シリコン膜44は、例えばTEOS(tetra ethyl ortho silicate)を原料としたCVD法を使用して形成することができる。その後、酸化シリコン膜44の表面を、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を使用して平坦化する。
続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、酸化シリコン膜44にコンタクトホール45を形成する。そして、コンタクトホール45の底面および内壁を含む酸化シリコン膜44上にチタン/窒化チタン膜46aを形成する。チタン/窒化チタン膜46aは、チタン膜と窒化チタン膜の積層膜から構成され、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。このチタン/窒化チタン膜46aは、例えば、後の工程で埋め込む膜の材料であるタングステンがシリコン中へ拡散するのを防止する、いわゆるバリア性を有する。
続いて、コンタクトホール45を埋め込むように、半導体基板20の主面の全面にタングステン膜46bを形成する。このタングステン膜46bは、例えばCVD法を使用して形成することができる。そして、酸化シリコン膜44上に形成された不要なチタン/窒化チタン膜46aおよびタングステン膜46bを例えばCMP法で除去することにより、プラグ47を形成することができる。
次に、図38に示すように、酸化シリコン膜44およびプラグ47上にチタン/窒化チタン膜48a、銅を含有するアルミニウム膜48b、チタン/窒化チタン膜48cを順次、形成する。これらの膜は、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、これらの膜のパターニングを行い、配線49を形成する。さらに、配線49の上層に配線を形成するが、ここでの説明は省略する。このようにして、本実施の形態1における半導体装置を形成することができる。
本実施の形態1によれば、高密度プラズマCVD装置による酸化シリコン膜の成膜工程において、半導体基板(ウェハ)にRFバイアスを印加する時刻と、酸化シリコン膜の成膜開始時刻とのずれを監視することができる。具体的には、RFバイアスを印加する時刻を酸素イオンの発光強度が上昇する時刻から特定し、酸化シリコン膜の成膜開始時刻をシリコンイオンの発光強度が上昇する時刻から特定することができるので、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻のずれを監視することができる。したがって、不良品となるCMISFET(半導体装置)の作りこみを把握することができる。
さらに、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻とのずれがなくなるように、RFバイアスを印加する時刻あるいはシランガスの導入開始時刻を調整するので、CMISFET(半導体装置)の品質低下を防止することができる。特に、高密度プラズマCVD装置を素子分離溝に酸化シリコン膜を埋め込む工程に用いる場合には、素子分離領域に形成されるピットやウィークスポットの発生を防止できる。本実施の形態1においては、素子分離領域の形成工程に用いる高密度プラズマCVD装置について説明しているが、その他の半導体装置の製造工程、例えば、コンタクトホールやスルーホールに絶縁膜を埋め込む工程に高密度プラズマCVD装置を使用する場合にも膜の信頼性向上を図ることができる。つまり、RFバイアスを印加する時刻が成膜開始時刻よりも早まると下地膜にプラズマによるダメージを与えやすくなる一方、RFバイアスを印加する時刻が成膜開始時刻よりも遅くなると脆弱な性質の膜が形成されてしまうが、本実施の形態1による高密度プラズマCVD装置によれば、RFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とを合わせることができるので、品質の高い膜を成膜することができる。このため、CMISFETの品質向上を図ることができる。また、本実施の形態1では、誘導結合プラズマを用いる高密度プラズマCVD装置について説明しているが、平行平板型のプラズマCVD装置にも適用することができる。
本実施の形態1では、RFバイアスを印加する時刻と酸化シリコン膜の成膜開始時刻とのずれがなくなるように、RFバイアスを印加する時刻あるいはシランガスの導入開始時刻を調整するように構成しているが、この調整方法は手動で行なわれている。つまり、RFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれを監視し、任意の時刻においてこのずれをなくすように製造工程の管理者などがRFバイアスを印加する時刻や原料ガスの導入する時刻を手動で設定している。RFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれが発生した場合、自動的にずれをなくすようにRFバイアスを印加する時刻や原料ガスを導入する時刻を調整することもできるが、手動で設定する場合には自動で設定する場合に比べて以下に示す効果が得られる。例えば、自動でずれを調整する場合には、ずれが一定値以上である場合に調整することが行なわれる。このとき、ずれが一定値以下である場合はずれの調整が行なわれない。したがって自動でずれを調整するときには、一定値以下のずれが発生している状態で製造工程が実施されていることになる。この一定値以内のずれの範囲内であれば問題ないように設定されるが、手動で設定する場合は、RFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれが限りなくゼロに近づくように設定することが可能である。すなわち、手動で設定する場合の方がずれを限りなくゼロに近づくように調整することができる。
従来の技術では、RFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれを把握することができなかったため、RFバイアスを印加する時刻を変えて複数のウェハをサンプルとして形成していた。そして、各サンプルの断面を解析することにより、ピットやウィークスポットの有無を判定することが行なわれていた。これにより、ピットやウィークスポットの発生しないように、RFバイアスを印加するタイミングを決定していた。このような方法では、大変な労力と時間を要することになる。これに対し、本実施の形態1によれば、プラズマの発光強度を解析するだけで、RFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれを特定することができる。したがって、このずれを把握するのに必要とされる労力と時間を大幅に低減することができる。
さらに、従来の技術では、一旦RFバイアスを印加するタイミングを決定したとしても、原料ガスのガス流量コントローラや遮断バルブの劣化、遮断弁駆動空気圧などの変化によって、RFバイアスを印加する適切なタイミングが決定したタイミングからずれることがある。したがって、素子分離領域に形成されるピットやウィークスポットの発生を防止するためには、外観検査に依存することになる。外観検査でピットやウィークスポットが発見されるときには、大量に製品不良を作りこんでいることになる。これに対し、本実施の形態1によれば、RFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれが変化しても、プラズマの発光強度から逐一ずれを監視することが可能であるため、ずれの変化に対応することができ、大量の製品不良を作りこむことを防止できる。
なお、本実施の形態1では、原料ガスとしてシランガスを用いているが、例えば、ジシランガスなどを用いる場合も適用することができる。さらに、酸化シリコン膜を形成する場合だけでなく、その他の種類の膜についても適用することができる。
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、RFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれを手動で調整する例について説明したが、本実施の形態2では、このずれを自動調整する例について説明する。
図39は、本実施の形態2における高密度プラズマCVD装置1の構成を示す図である。この図39は、前記実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1とほぼ同様の構成をしているため、異なる構成について説明する。図39において、前記実施の形態1と異なる点は、ずれ制御部18が設けられている点である。このずれ制御部18は、検出装置10において検出されるRFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれが一定値以上ある場合に、RFバイアスを印加する時刻あるいはシランガスを導入する時刻をずれが一定値以下になるように調整するように構成されている。このように構成された本実施の形態2における高密度プラズマCVD装置1の動作について説明する。
図40は、本実施の形態2における高密度プラズマCVD装置1の動作を説明するフローチャートである。図40は前記実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1の動作と同様であるため、異なる動作について説明する。図2に示すS101〜S111までの動作は、前記実施の形態1と同様である。すなわち、前記実施の形態1と同様にして成膜開始時刻とRFバイアスを印加する時刻とのずれが検出装置10で測定される。この測定結果がずれ制御部18に入力される。ずれ制御部18では、入力したずれが一定時間内であるか判断される(S401)。入力したずれが一定時間内である場合には、ずれは調整されない。一方、入力したずれが一定時間以上である場合には、ずれの調整が行なわれる(S402)。すなわち、ずれをなくすようにRFバイアスを印加する時刻あるいはシランガスを導入する時刻が調整される。これにより、ずれがない状態で高密度プラズマCVD装置1を稼動させることができる。
本実施の形態2によれば、自動でずれを調整することができるため、あるウェハの成膜処理でずれが一定時間を超えた場合、すぐに次のウェハの成膜処理からずれを調整した状態で実施することができる。このようにずれを自動調整することができるように構成することにより、ずれがなくなるように直ちに成膜処理にフィードバックすることができるので、製品不良の大量の作りこみを防止することができる。
(実施の形態3)
前記実施の形態1では、RFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれを調整する例について説明したが、本実施の形態3では、このずれが一定時間以上である場合、アラームを発生するあるいは高密度プラズマCVD装置を停止する例について説明する。
図41は、本実施の形態3における高密度プラズマCVD装置1の構成を示す図である。この図41は、前記実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1とほぼ同様の構成をしているため、異なる構成について説明する。図41において、前記実施の形態1と異なる点は、装置制御部19が設けられている点である。この装置制御部19は、検出装置10において検出されるRFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれが一定値以上ある場合に、アラームを発生させ、さらには、高密度プラズマCVD装置を停止させるように構成されている。このように構成された本実施の形態3における高密度プラズマCVD装置1の動作について説明する。
図42は、本実施の形態3における高密度プラズマCVD装置1の動作を説明するフローチャートである。図42は前記実施の形態1における高密度プラズマCVD装置1の動作と同様であるため、異なる動作について説明する。図2に示すS101〜S111までの動作は、前記実施の形態1と同様である。すなわち、前記実施の形態1と同様にして成膜開始時刻とRFバイアスを印加する時刻とのずれが検出装置10で測定される。この測定結果が装置制御部19に入力される。装置制御部19では、入力したずれが一定時間内であるか判断される(S501)。入力したずれが一定時間内である場合には、そのまま成膜処理が続けられる。一方、入力したずれが一定時間以上である場合には、アラームを発生するかまたは高密度プラズマCVD装置を停止する(S502)。これにより、ずれが一定時間以上ある状態での製品の作りこみを防止することができる。
本実施の形態3によれば、ずれが一定時間以上存在する場合にアラームで警告することができるため、RFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれが一定時間以上あることを作業者などに知らせることができる。さらに、RFバイアスを印加する時刻と成膜開始時刻とのずれが一定時間以上ある場合に高密度プラズマCVD装置1を停止することができるので、製品不良の大量の作りこみを防止することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。