JP2008192567A - 細管内プラズマ発生法とこれを用いた薄膜堆積方法及び細管内壁面改質方法 - Google Patents

細管内プラズマ発生法とこれを用いた薄膜堆積方法及び細管内壁面改質方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は極めて口径が小さく、細長く、湾曲するなど柔軟な形状をもつガラス管やプラスチック管の内側に長さ方向に渡って安定で一様なプラズマを発生する方法とこのプラズマを用いて高機能性の薄膜を堆積する方法及び細管内壁表面の改質方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 電圧Vの交流又はパルス電源により駆動される電極間に、絶縁物を介して長尺な細管を挟み、細管の内部圧力を細管の外部圧力よりも低くするとともに、電圧Vを細管内部のみで放電が開始し、細管内部のみにプラズマが生成される電圧に設定することを特徴とする細管内プラズマ発生法とこのプラズマを用いて高機能性の薄膜を堆積する方法及び細管内壁表面の改質方法である。
【選択図】 図3

Description

本発明は、細管内プラズマ発生法とこれを用いた薄膜堆積方法及び細管内壁面改質方法に関する。
内径1mm程度、又はそれ以下の微細ガラス管やプラスチック管などの細管は、微細光源、環境分析、バイオや医療分野で盛んに用いられようとしている。高分解能微細発光素子、ミクロンサイズガス分析管、医療用人工血管やカテーテルなどがその応用例である。ディスプレイ用微細発光子管では内壁面に電子放出材料膜、キャピラリー型のガス分析管では内壁面に各種ガスセンサー薄膜、人工血管やカテーテルなどには撥水性や親水性薄膜などの機能性薄膜をコーティングする必要がある。
このため細管内に原料ガスを流し、加熱して細管内壁面に薄膜を蒸着する方法等が提案されている(非特許文献1)が、この方法では加熱により細管が変形したり、変質する等の問題点があった。
また細管内にプラズマ発生させ、これを用いて原料ガスを分解し、細管内壁面に薄膜を形成しあるいは内壁面を改質する方法が提案されている。ところがこの方法では細管の一部に電極を巻き付けたり(非特許文献2)、細管を1対の電極で挟むなどの方法がある(非特許文献3)が、細管の内部圧力が細管の外部圧力と同程度以上であるため、放電安定のために多量のヘリウムガスを流す必要があるとともに、細管外側表面における沿面放電の発生により細管の内側のみに高密度のプラズマを発生させることが困難であった。また、減圧された細管の長手方向に1対の電極を置き電圧を印加するなどの方法もあるが(非特許文献4)、広範囲に均一なプラズマを生成することが困難であった。
このため細管の内側のみに、長さ方向に渡って高密度で一様なプラズマを発生させることは困難であり、このため細管の内側のみに、長さ方向に渡って、十分満足できる薄膜を形成しあるいは内壁面を改質するための、高密度で一様なプラズマを発生させることが困難であった。
Thin Solid Films 498,25(2006) Langmuir 15, 7055(1999) Thin Solid Films 515,1394(2006) J.Physics E Scientific Instruments 16, 74(1983)
したがって本発明は上記の欠点を改善した、極めて口径が小さく、細長く、湾曲するなど柔軟な形状をもつガラス管やプラスチック管等の絶縁体からなる細管の内壁面に長さ方向に渡って安定で一様なプラズマを発生する方法とこのプラズマを用いて高機能性の薄膜を堆積する方法及び細管内壁表面の改質方法を提供することを課題とするものである。
上記の課題を解決するために本発明は、次のような細管内プラズマ発生法を提供するものである。
(1)電圧Vの交流又はパルス電源により駆動される電極間に、誘電体を介して長尺な細管を挟み、細管の内部圧力を細管の外部圧力よりも低くするとともに、電圧Vを細管内部のみで放電が開始し、細管内部のみにプラズマが生成される電圧に設定することを特徴とする細管内プラズマ発生法。
(2)上記電圧Vを細管内部の放電開始電圧Vと電極間放電開始電圧Vとの間の電圧に設定することを特徴とする(1)に記載の細管内プラズマ発生法。
(3)細管外部の圧力を1気圧とし細管内部の圧力を1気圧未満とすることを特徴とする(1)又は(2)に記載の細管内プラズマ発生法。
(4)上記細管内部の圧力を1〜100Torrに選定することを特徴とする(3)に記載の細管内プラズマ発生法。
(5)上記電極は、平行平板電極であることを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の細管内プラズマ発生法
(6)細管を円周方向に回転することを特徴とする(5)に記載の細管内プラズマ発生法。
(7)上記平行平板電極は、複数に分割された平行平板から構成されていることを特徴とする(5)又は(6)に記載の細管内プラズマ発生法。
(8)上記細管は、平行平板電極の間に湾曲した状態又は同心円状に配置されていることを特徴とする(5)に記載の細管内プラズマ発生法。
(9)平行平板電極間に、誘電体を介して長尺な細管を挟み、細管に隣接した両側面に平行平板電極を構成する各電極とはスペーサーを介して配置された中間電極を設けるとともに、細管の内部圧力を細管の外部圧力よりも低くし、平行平板電極と中間電極との間に交流又はパルス電源により駆動される電圧Vを引加し、該電圧Vを細管内部のみで放電が開始し、細管内部のみにプラズマが生成される電圧に設定することを特徴とする細管内プラズマ発生法。
(10)上記電極は、同心軸状の円筒電極であり、細管は内円筒電極と外円筒電極の間に挟まれていることを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の細管内プラズマ発生法。
(11)上記細管は内円筒電極面の周囲にスパイラル状に巻かれていることを特徴とする(10)に記載の細管内プラズマ発生法。
(12)上記電極は、円筒電極とその周囲に配置された複数個のローラー電極であり、細管は内円筒面と外円筒面との間に挟まれていることを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の細管内プラズマ発生法。
また本発明は、次のような細管内プラズマ発生法を用いた薄膜堆積方法及び細管内壁面改質方法を提供するものである。
(13)細管内部に原料ガスを充填し、(1)ないし(12)のいずれかに記載の細管内プラズマ発生法により得られた細管内プラズマを用いて原料ガスを分解し、細管内壁面上に堆積させることを特徴とする薄膜堆積方法。
(14)原料ガスの充填時にはプラズマを停止し、原料ガスの充填後にガスの流れを止めてからプラズマを発生させて原料ガスを分解し、細管内壁面上に薄膜を堆積し、プラズマ停止後、残留ガスを排気する工程を1回以上含むことを特徴とする(13)に記載の薄膜堆積方法。
(15)細管内部に原料ガスを充填し、(1)ないし(12)のいずれかに記載の細管内プラズマ発生法により得られた細管内プラズマを用いて原料ガスを分解し、細管内壁面を改質させることを特徴とする細管内壁面改質方法。
(16)細管の材質はフッ素樹脂であり、原料ガスは還元性ガスであることを特徴とする(15)に記載の細管内壁面改質方法。
本発明の細管内プラズマ発生法によれば、極めて口径が小さく、細長く、湾曲するなどの形状をもつガラス管やプラスチック管等の細管の内側のみに、長さ方向に渡って安定で一様なプラズマを発生することができる。
またこのプラズマを用いて高機能性の薄膜を堆積したり細管内壁表面を改質することができる。
本発明に係る細管内プラズマ発生法について詳細に説明する。
1m級の長さがあり、内径がミリ又はミクロンサイズの細長いガラス管やプラスチック管は、メートルとミリ・ミクロンという長さのスケールを併せ持つ。細管の長さは目的に応じて変わり得るので、ここでは半径方向のスケールに着目してプラズマを生成する。細管内でプラズマを発生させるためには、細管の直径dと管内部気体圧力pの積pdが放電の開始電圧Vを決定する。一般に、Vはpd積の変化に対して最小値VSmを持つ。このときのpd値を(pd)とすると、pd>(pd)の範囲では、同じdならばpが低いほど放電開始電圧が低く、放電させやすい。また、dがミクロンサイズになれば、pは1気圧の程度となる。
図1は本発明の細管内プラズマ発生法に係る放電装置の原理図である。図1に示すように、外径Dの細管を間隔Dの平行平板電極間に隙間なく挟む(D=D)。細管内部の圧力をpとし、細管外部の電極間の圧力Pより低く保つと、細管の内径dがd<Dとなることと相俟ってpd<PDとなる。電極間の電圧Vを徐々に増加していくと、細管内部で最初に放電が開始する。このときの電圧をVとする。このとき細管外部の電極間では放電しない。さらに電圧を増加させていくと、ついには電極間でも放電が開始する。このときの電圧をVとする。電源電圧VをV<V<Vのように設定しておけば、細管内部のみで放電が開始し、細管内部のみにプラズマが生成される。pdとPDの差が大きいほど、VとVの差も大きくとれる。
しかし、電圧を上げて放電電力を増加させていくと、細管の外表面を伝わる沿面放電が発生する場合がある。細管の外側で沿面放電が起こると、放電電力を更に増加させることが困難となるばかりでなく、内部の放電効率が低下する。また、オゾンなどの異臭を発生することもある。この沿面放電を押さえるために、金属電極を剥き出しにしないで薄い誘電体(厚さ0.2mm程度)の薄板又はフィルムで被う方法が有効である。
図2に本発明のプラズマ発生方法に係る、細管と金属電極間に雲母板などの薄い誘電体を挟んだ放電装置の例を示す。
細管内部の圧力pを1気圧とすれば、pd<<PDとなるようにするためには、細管外部の電極間の圧力Pはp<<Pとなるように1気圧以上に加圧するか、もしくは電極間隔Dをd<<Dとなるように広げるかのいずれかである。沿面放電などの外部の放電を防ぐために空気以外の絶縁性気体SFなどを封入し、加圧する方法もある。いずれにしてもpd<<PDとなることが必要である。外部がP=1気圧であってもpd<<PDを実現する方法として、図3のように細管部分以外の電極間隔Dを広める方法がある。薄型電極の厚さをTとすると、T<Dの関係が必要である。薄型電極以外の部分ではpd<<PDが成り立つ。沿面放電を回避するために図3のように誘電体を挟む。電極幅Tを細管直径Dよりも狭くする必要があるので、細管と電極の軸位置を合わせるのが難しくなるという問題がある。細管直径が1mm以下になれば電極接触部をさらに薄くする必要が生じる。しかし、これらの場合には、細管を電極直下に合わせるための側壁ガイド機構を左右から付加すれば実用可能である(図3参照)。また、放電開始電圧がかなり高電圧になるという装置上の要請も克服可能である。Dは長いほど良いので、極端な場合には図3の平行平板電極は無くても良い。細管を上下に挟む1対の厚さTの薄型電極のみでもよい。
逆に、細管外部の圧力Pが1気圧とすると、細管内部pは真空ポンプなどで減圧する必要がある。1〜100Torrに減圧すれば細管内外の圧力差(p<P)が充分になり、pd<<PDが成り立つ。電極間に挟まれた細管内部のみで放電が発生する。図2のように電極は広い平板でもよいので、細管との位置合わせは不要である。そして平行平板電極間では一様な電界が発生するため、細管のどの場所でも均等な放電が実現でき、長い細管内に同時に放電が発生する。
図4は、内径d=1.5mm、外径D=3mm、内部圧力p=0.2気圧(空気)のガラス管からなる細管を間隔D=3mmのステンレス製の平行平板電極で挟み、大気圧中でインパルス電圧を印加した時の放電の様子を示す。細管外の気圧はP=1気圧である。このように細管の外側が1気圧なので、装置上の特別な構造を必要としない。
図4に示すように、ガラス管内部のみで一様な放電が観測される。図4の上図は、その拡大写真である。なお発光しているのはガラス管内部1.5mm以内であるが、光がガラス管壁を通して出てくるため、ガラス管壁を含む細管全体が光っているように見えている。
細管は平行電極間であれば、中央部に置く必要は無く、どのようにずらして置いてもよい。
多くのガスの場合、放電開始電圧の最小値が得られるのは(pd)〜1cm・Torr程度(1気圧=760Torr)なので、直径d〜1mm程度の細管の場合の最も効率的な管内圧力は、p〜10Torr程度となる。すなわち、細管内部を10Torr程度にまでロータリーポンプで排気しておけば、低い印加電圧で細管内部のみで放電が開始する。細管外側の電極部の圧力をP=1気圧にしておけば管の内外で約100倍の圧力差ができるので、印加電圧上昇によって細管内部の放電電力を増加させても、放電を細管内部に限定させることができ、細管外部での放電は起こりにくい。さらに誘電体で電極を被っておけば沿面放電の防止に有効である。
ガスの導入や換気・排気にはロータリーポンプ程度の排気装置でよいので、簡便であり容易に導入可能である。さらに10Torr程度での放電は、グロー状に管に沿って細長く伸びるので、上下電極で挟まれた範囲から外れた部分の管内にもプラズマが伸びて、電極の幅よりも広い範囲でプラズマが生成できる利点がある。そのため、電極を図2のものに代えて図5に示すように多段に分割しても、全体に亘って細管内部ではほぼ一様な放電を得ることができる。
また図2のように、1対の平行平板電極又は多段に分割した電極によって細管を上下にサンドイッチする方法は、上下方向の放電の状態により円周方向における膜厚などの一様性を欠く可能性がある。このような場合には、図6に示すように、プラズマ処理中に細管を円周方向に回転できるようにすれば、一様性は更に改善される。柔らかい細管には適用が難しいが、ある程度の堅さを持つ直線状の細管ならば適用できる。
また図7のように、平行平板電極間に、絶縁物を介して長尺な細管を挟み、細管に隣接した両側面に平行平板電極を構成する各電極とはスペーサーを介して配置された中間電極を設けるとともに、平行平板電極と中間電極との間に電圧を引加して、管の周方向の一様性を改善することもできる。
さらに図2に示す放電装置の平行平板電極間に、図8のように湾曲した細管を配置したり、図9のように同心円状に巻いた細管を配置することもできる。
次にプラスチック管などは変形できるので、図10のように電極を同心軸状の円筒にして、接地した内円筒電極と電圧印加用の外円筒電極の隙間に細管を挟み、電圧を印加して放電させながら内円筒電極を回転させて、滑らせながら送り出すこともできる。また図11のように内円筒電極面の周囲に複数回巻き付ける方式も可能となる。この場合、回転させることによって放電電極部を複数回通過させることができる。
さらに図12のように電圧印加電極をローラー型に分割して、滑らすこと無く送り出すようにすることもできる。この場合各ローラーの接触部で放電を発生させるが、低圧力のためプラズマはローラーの中間にも広がり、ほぼ一様なプラズマ分布とすることができる。
次に本発明の細管内プラズマ発生法を用いた薄膜堆積方法について説明する。
細管内部に充填した原料ガスを内部に発生したプラズマで分解して、薄膜を細管内壁面上に堆積させる。
薄膜は原料ガスを流しながら堆積させることになるが、細管の内径が小さくなったり、長くなったりすると、管のコンダクタンスが悪くなり原料ガスは流れにくくなる。一定の流量で流そうすると、管の入口と出口の圧力差が大きくなり、管に沿って一様な圧力分布とならず、放電も不均一になる。また、ガスに流れがあると、上流と下流で分解ガスの組成が異なり、均質な膜質が得られない。このような場合には、図13に示すように、ガスの充填時にはプラズマを停止し、充填後にガスの流れを止めてからプラズマを発生させて、ガスを分解し、薄膜を堆積させる。プラズマ停止後、残留ガスを排気して、その後再び原料ガスを充填する。この操作を繰り返すことにより放電時間1分程度で数m長の細管内面に均等に薄膜を堆積できる。
原料ガスの種類によって薄膜の性質が決まる。メタンなど炭素系のガスを使えば、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブなどのナノ構造を内壁面上に堆積できる。チタン、マグネシウム、亜鉛などを含む有機錯体を使えば、透明な光触媒材料、電子放出材料、光半導体材料物質の薄膜を内壁面に堆積できる。
細管内プラズマ発生法を用いて原料ガスを分解し、細管内壁面を改質することができる。例えばフッ素樹脂細管では、還元性ガスを原料ガスとして、本発明による細管内プラズマ発生法によりフッ素樹脂表面のフッ素を還元、除去することによりC−F結合を部分的に置換し、細管の内壁面を親水性に改質することができる。
またArなどに非反応性ガスプラズマを細管内部に発生させ、イオンによるスパッタリングにより表面粗さを変化させ、細管の内壁面を親水性に改質することもできる。
原料ガスのキャリヤーガスとして、ヘリウムHeやアルゴンArなどの不活性ガス、あるいは窒素Nなどの分子性ガスを単独、又は混合して用いることもできる。また、薄膜堆積の効率化高品質化を図るために、必要があれば細管及び放電電極系の全体をある温度に加熱するシステムを追加してもよい。
次に本発明のプラズマ発生方法を用いて細長い管状のポリテトラフルオロエチレン(PTFE:4フッ化エチレン)樹脂等の内面の表面改質を応用の1例として示す。その代表であるテフロン(登録商標)は、材質が化学的、熱的、電気的な安定性をもつことから化学産業のみならず絶縁材料、環境や生体関連産業にも盛んに応用されている。表面は滑らかであり、極めて摩擦係数が低く、撥水性が高く濡れにくいなどの性能を有している。しかしその反面、液体との親水性や他の材料との接着性が極めて悪く、細くて長い管に低圧力差でスムーズに液体を流したり、内部表面に他の素材を接着させたいときに問題が生ずる。テフロン(登録商標)の化学組成は炭素Cとフッ素Fのポリマー状C−F結合から構成され、他の元素を含まない。表面原子Fの電子雲の電気的な偏りにより水の酸素原子を寄せ付けないため撥水性を示すと考えられ、また表面の分子構造の平滑性により接着剤をはじき、うまく馴染まず、強い接着性を持たないものと考えられる。
この問題を解決するために2つの方法が考えられる。第1に、表面のF結合を別の元素で還元(置換)除去すれば撥水性が弱まる。第2に、表面をナノ・ミクロンレベルで粗くしてやれば表面積が増え接着性も強まる。すなわち、表面がナノ・ミクロン程度で粗くて還元された表面を形成できれば、親水性と接着性を併せ持つ表面を形成できるものと考えられる。実験ではメタンとアルゴン(CH/Ar)混合ガスに依る放電を試みた。CHの炭素Cは表面のFをCF(フッ化水素)やCF(フロン)の気体の形に還元して除去する。テフロン(登録商標)内部のCは、Hと結びつき炭化水素(CH)膜を表面に形成する。また、Arイオンは表面をたたくため、上記の表面化学反応を促進するとともに、表面が物理的にスパッタリングされて、平滑性を失い、原子レベルで粗い表面を作り出すことができる。
実験装置の1例を図14に示す。テフロン(登録商標)細管(外径3mm、内径2mm、長さ15cm)を雲母板(厚さ0.3mm)を介して、長さ10cm幅5cm厚さ2mmの金属電極の間に隙間なく挟む。雲母板はテフロン(登録商標)管外側の沿面放電を防ぐためのものである。ArとCHガスはそれぞれ独立の流量計を通って混合器で混合され、テフロン(登録商標)管の片端から細管内部に導入される。放電処理ガスは他端からロータリーポンプで排気される。テフロン(登録商標)管が短いため、管の入口と出口の圧力差が少ないので、本実験はガスを流しながら行った。放電時の管内ガス圧力はピラニ−真空計で測定する。典型的な実験パラメータは全ガス流量20ccm、CH/Ar流量比は1、放電圧力は10Torr、放電処理時間は30分である。細管外側の電極部の圧力は1気圧(空気)である。
水滴の濡れ角と接着力の評価方法を図15に示す。細管は内面が湾曲しているため角度の測定が難しい。そこで細管の代わりに間隔2mm離した2枚のテフロン(登録商標)平板の間において同条件で放電を起こさせ、放電後平板の内側面に水滴を垂らし濡れ角θの測定を行った。接着力の評価には、放電処理した細管を管軸に沿って2分割し、内面に金属棒をエポキシ系接着剤により一定面積で接着させ、1日乾燥後に金属棒を引っ張り、接着剤とテフロン(登録商標)との接着面が剥がれたときの力Fを測定した。放電処理前後における濡れ角の比較と接着力の比較を表1に示す。水滴の形状は処理前のほぼ半球状から、処理後は平たい盾状に変形した。また、接着力は60倍以上に向上した。
内表面の微細構造をSEMで観察した。テフロン(登録商標)細管を管軸に沿って2分割し、その細管内表面のSEM写真を撮った。結果を図16に示す。左の処理前に比べて右の処理後は表面が粗くなり、その表面層の厚さも深くなっていることが分かる。
以上本発明に係る細管内プラズマ発生法とこれを用いた薄膜堆積方法及び細管内壁面改質方法について好ましい実施形態を例示して説明したが、本発明はこれに限定されず本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の実施形態に適用できることはいうまでもないことである。
例えば細管としては、断面形状が円形に限らず、4角、6角などの中空な管でもよい。また、1本1本が細管同等と考えられる、長手方向に多数の穴が形成されているものやマイクロチップの流路などの内面あるいはポーラス材料にも適用可能である。
さらに本発明に係る細管内プラズマ発生法の応用として薄膜堆積方法及び細管内壁面改質方法について説明したが、本発明に係る細管内プラズマ発生法はこれに限らず、例えば医療関連の殺菌・滅菌・洗浄などにも適用可能である。
放電装置の原理を示す図 本発明に係る細管内プラズマ発生法を実施する放電装置を示す図 放電装置の変形例を示す図 内径1.5mm、外径3mmのガラス管内部の放電の例を示す図 多段平板電極を有する放電装置を示す図 細管回転方式を有する放電装置を示す図 2対電極系を有する放電装置を示す図 湾曲した細管を有する放電装置を示す図 同心円状に巻いた細管を有する放電装置を示す図 円筒型回転電極を有する放電装置を示す図 円筒電極へスパイラル状に巻いた細管を有する放電装置を示す図 ローラー分割型の円筒型回転電極を有する放電装置を示す図 細管内壁表面への薄膜堆積プロセス例を示す図 実験装置の1例を示す図 水滴の濡れ角と接着力の評価方法を示す図 細管内表面のSEM写真

Claims (16)

  1. 電圧Vの交流又はパルス電源により駆動される電極間に、誘電体を介して長尺な細管を挟み、細管の内部圧力を細管の外部圧力よりも低くするとともに、電圧Vを細管内部のみで放電が開始し、細管内部のみにプラズマが生成される電圧に設定することを特徴とする細管内プラズマ発生法。
  2. 上記電圧Vを細管内部の放電開始電圧Vと電極間放電開始電圧Vとの間の電圧に設定することを特徴とする請求項1に記載の細管内プラズマ発生法。
  3. 細管外部の圧力を1気圧とし細管内部の圧力を1気圧未満とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の細管内プラズマ発生法。
  4. 上記細管内部の圧力を1〜100Torrに選定することを特徴とする請求項3に記載の細管内プラズマ発生法。
  5. 上記電極は、平行平板電極であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の細管内プラズマ発生法。
  6. 細管を円周方向に回転することを特徴とする請求項5に記載の細管内プラズマ発生法。
  7. 上記平行平板電極は、複数に分割された平行平板から構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の細管内プラズマ発生法。
  8. 上記細管は、平行平板電極の間に湾曲した状態又は同心円状に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の細管内プラズマ発生法。
  9. 平行平板電極間に、誘電体を介して長尺な細管を挟み、細管に隣接した両側面に平行平板電極を構成する各電極とはスペーサーを介して配置された中間電極を設けるとともに、細管の内部圧力を細管の外部圧力よりも低くし、平行平板電極と中間電極との間に交流又はパルス電源により駆動される電圧Vを引加し、該電圧Vを細管内部のみで放電が開始し、細管内部のみにプラズマが生成される電圧に設定することを特徴とする細管内プラズマ発生法。
  10. 上記電極は、同心軸状の円筒電極であり、細管は内円筒電極と外円筒電極の間に挟まれていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の細管内プラズマ発生法。
  11. 上記細管は内円筒電極面の周囲にスパイラル状に巻かれていることを特徴とする請求項10に記載の細管内プラズマ発生法。
  12. 上記電極は、円筒電極とその周囲に配置された複数個のローラー電極であり、細管は内円筒面と外円筒面との間に挟まれていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の細管内プラズマ発生法。
  13. 細管内部に原料ガスを充填し、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の細管内プラズマ発生法により得られた細管内プラズマを用いて原料ガスを分解し、細管内壁面上に堆積させることを特徴とする薄膜堆積方法。
  14. 原料ガスの充填時にはプラズマを停止し、原料ガスの充填後にガスの流れを止めてからプラズマを発生させて原料ガスを分解し、細管内壁面上に薄膜を堆積し、プラズマ停止後、残留ガスを排気する工程を1回以上含むことを特徴とする請求項13に記載の薄膜堆積方法。
  15. 細管内部に原料ガスを充填し、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の細管内プラズマ発生法により得られた細管内プラズマを用いて原料ガスを分解し、細管内壁面を改質させることを特徴とする細管内壁面改質方法。
  16. 細管の材質はフッ素樹脂であり、原料ガスは還元性ガスであることを特徴とする請求項15に記載の細管内壁面改質方法。
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