JP2008185287A - 濃淡燃焼バーナ - Google Patents

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Abstract


【課題】 火炎安定を強化するとともに、低NOx化,高負荷・高TDR化,振動燃焼および低周波燃焼騒音の防止が可能な濃淡燃焼バーナを提供する。
【解決手段】 淡炎口11と濃炎口12との間の境界に予混合気または空気を供給する境界領域用流路出口としての補助炎口13を備え、淡炎口11と補助炎口13、あるいは濃炎口12と補助炎口13との境界を形成するリム厚さtが1mm以下の板部材から形成されるとともに、補助炎口13が0.4〜2.0mmの流路幅H1を有するように構成した。この構成によれば、このリム上に渦を形成し難くすることができ、さらに、前記補助炎口を0.4〜2mmの流路幅とすることによって、この補助炎口上部に平面状火炎を形成させることができる。この平面状火炎によって、濃火炎および淡火炎の両火炎の安定性を強化することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は,家庭用・業務用ガス機器などに用いて好適な濃淡燃焼バーナに関し,さらに詳しくは,最適なバーナ形状寸法や最適な燃焼条件に設定した濃淡燃焼バーナに関する.
近年,給湯・暖房用ガス燃焼器の分野では,燃焼機器の低NOx化のため,濃淡燃焼方式が採用されている.濃淡燃焼とは,燃料希薄な淡火炎と燃料過濃な濃火炎とを交互に配置して,燃料が希薄なため,単独では火炎安定領域の狭い淡火炎を,火炎安定領域の広い濃火炎によって保炎し,火炎の安定化を高めると同時に,低NOx化を実現しようとした燃焼技術である.
これまで,濃淡燃焼の燃焼特性,火炎構造,NOx生成機構に関する研究がいくつかなされているが(非特許文献1〜4),その詳細については,不明な点が多く,燃焼器の開発や設計は,現場での経験的判断に頼らざるを得ないのが現状である.特に,給湯・暖房用ガス燃焼器は,トップランナー方式の採用が確定し,そのため,今後さらに高効率で,環境負荷低減を目指した新たな濃淡バーナの開発が必要とされている.
高効率で,かつ環境負荷低減を目指した新たな濃淡バーナの開発においては,火炎の安定化が重要である.濃淡バーナの火炎安定化においては,濃火炎と淡火炎の間の境界領域における火炎の挙動が重要であることが知られている(非特許文献3,4).前述したように,濃淡燃焼バーナにおける淡火炎は,低NOx燃焼を実現させるために,淡混合気の空気比を1.5以上と大きく設定している.また,燃焼負荷(燃料流量)が大きい条件においては,淡混合気の流速が大きいため,単独では安定できない.このため,淡火炎と濃火炎を交互に配置することによって,淡火炎の安定領域を確保している.
淡火炎と濃火炎を交互に配置する場合,即ち,図19に示すように,淡火炎の両側に濃火炎を配置する場合には,それぞれの火炎の境界に配置されているバーナリムの厚さH0が重要な設計パラメータとなっている.我々の調査によれば,この境界バーナリムの暑さH0は,H0=2.0〜3.5mmとした場合に,図19(a)のように,最大燃焼負荷における淡混合気の流速で淡火炎を安定して形成させることができることが明らかになっている.
H0=2.0mmより小さい場合には,図19(b)に示すように,濃火炎と淡火炎は,分離独立して形成されず,基部が合体したような形状になる.このような淡火炎が常に浮き上がった状態においては,給湯器や暖房機熱源用バーナとして応用された場合には,振動燃焼や低周波騒音を引き起こすことが経験的に知られている.したがって,通常,このような火炎形状となる燃焼設定条件を避けて設計される.
また,H0=3.5mmより大きい場合には,図19(c)に示すように,淡火炎の基部は常には吹き飛んだ状態になっており,給湯器や暖房機熱源用バーナとして応用された場合には,大きな燃焼騒音や振動燃焼を発生させるとともに,一酸化炭素(CO)や燃料の未然分(HC:ハイドロカーボン)が多くなるため,実用に供さないことは明らかである.
したがって,境界バーナリムの暑さH0は,H0=2.0〜3.5mmとしてバーナ設計を行えばよいことが分かる.ところが,さらなる高負荷燃焼・高TDR燃焼を目的として,淡混合気および濃混合気の流速を上昇させると,図19(b)に示すような浮き上がった火炎になってしまい,火炎を安定して形成させることができなくなるという問題があった.
一方,濃火炎と淡火炎との間の境界領域に,濃火炎又は淡火炎用混合気の微小量を供給できるようなバーナ構造にすることによって,火炎安定を制御することが可能であることが知られている(特許文献1,2).ところが,この境界領域を制御し, それが火炎の安定化やNOxなどの排出特性に及ぼす効果を系統的に調べた研究開発はなされていなかった.
長谷耕志,燃焼研究,第105号(1996),pp.39-50. 十河桜子,本間理陽司,長谷耕志,日本機会学会論文集(B編),第64巻,第617号(1997),pp.290-297. 渡邊俊哉,中島健,日本機会学会論文集(B編),第66巻,第643号(2000),pp.904-910 小山田弘樹,中島健,日本機会学会論文集(B編),第68巻,第674号(2002),pp.2927-2934. 特開平7-310906号公報 特開2004-308945号公報
そこで我々は,高効率で,かつ環境負荷低減を目指した新たな濃淡バーナの開発を目的として,特に火炎安定化が濃淡バーナのさらなる低NOx化,高負荷・高TDR化,振動燃焼および燃焼騒音の防止に重要であることを考え,濃火炎と淡火炎の間の境界領域を制御できるバーナを製作し,この境界領域に供給するバーナ寸法形状について追求した.また,この領域の制御が淡火炎および濃火炎の火炎安定化特性に及ぼす効果を調べた.さらにこの結果を基に,実用燃焼器を想定した燃焼条件における火炎安定限界や排ガス特性を調べた.
その結果,我々は,濃火炎と淡火炎の間の境界領域に微量の混合気または空気を供給する濃淡燃焼バーナにおいて,そのバーナ形状寸法に最適な範囲があることを見出した.また,その形状寸法範囲において,境界領域に供給する混合気や空気の流量や,濃混合気あるいは淡混合気の流量範囲等に最適範囲があることを見出した.
本発明は,濃火炎と淡火炎の間の境界領域に微量の混合気または空気を供給する濃淡燃焼バーナにおいて,バーナ形状寸法や燃焼条件をある一定の範囲に設定することによって,さらに火炎安定を強化するとともに,低NOx化,高TDR化,振動燃焼および燃焼騒音の防止が可能な濃淡燃焼バーナを提供することを目的とする.
前記目的を達成するために,本発明のうちで請求項1に記載の濃淡燃焼バーナは,
理論空燃比より燃料濃度が希薄な予混合気を供給する流路出口に淡火炎を形成する淡炎口と,
理論空燃比より燃料濃度が過濃な予混合気を供給する流路出口に濃火炎を形成する濃炎口と,
前記淡炎口と前記濃炎口との間に設けられ,前記淡火炎と前記濃火炎との境界領域に予混合気または空気を供給する境界領域用流路出口に補助火炎を形成する補助炎口と,を備えた濃淡燃焼バーナにおいて,
前記淡炎口と前記補助炎口,あるいは前記濃炎口と前記補助炎口との境界を形成するリム厚さが1mm以下の板部材から形成されるとともに,前記補助炎口が0.4〜2.0mmの流路幅を有する,ことを特徴とする.
請求項1に記載の濃淡燃焼バーナによれば,
前記濃炎口と前記補助炎口との境界を形成するリム厚さが1mm以下の板部材から形成されることによって,このリム上に渦を形成し難くすることができる.さらに,前記補助炎口を0.4〜2.0mmの流路幅とすることによって,この補助炎口上部に平面状火炎を形成させることができる.この平面状火炎によって,濃火炎および淡火炎の両火炎の安定性を強化することができる.すなわち,濃火炎および淡火炎のいずれか一方に不安定現象が生じた場合でも,他の火炎に影響を及ぼしにくくなるため,火炎の安定性が強化されたことにより,総空気比の過濃側に火炎安定範囲が広がるとともに,燃焼負荷を上昇させた場合においても,火炎が安定するので,高負荷・高TDR燃焼が可能となる.
以上の本発明の濃淡燃焼バーナによれば,火炎安定を強化するとともに,低NOx化,高負荷・高TDR化,振動燃焼および低周波燃焼騒音の防止が可能な濃淡燃焼バーナを提供することができる.
(濃淡燃焼バーナの実施形態)
図1に,バーナ出口断面の詳細を示す.本発明の濃淡燃焼バーナ10の構造は以下のようである.即ち,理論空燃比より燃料濃度が希薄な予混合気(希薄混合気)を供給する流路出口に淡火炎11fを形成する淡炎口11と,理論空燃比より燃料濃度が過濃な予混合気(過濃混合気)を供給する流路出口に濃火炎12fを形成する濃炎口12と,淡炎口と濃炎口の境界領域に予混合気または空気を供給する境界領域用流路出口に補助火炎13fを形成する補助炎口13と,を備えた濃淡燃焼バーナである.
ここでは,淡火炎用流路,境界領域制御用流路および濃火炎用流路の各流路出口上部をそれぞれ,淡炎口11,補助炎口13および濃炎口12と定義している.また,淡炎口11に供給する希薄予混合気を淡火炎混合気11m,濃炎口に供給する過濃混合気を濃火炎用混合気12m,および,補助炎口13に供給する混合気または空気を境界領域制御用混合気13mと定義している.
本実施形態においては,淡炎口11と補助炎口13,あるいは濃炎口12と補助炎口13との境界を形成するリム厚さtが1mm以下の板部材から形成されるとともに,補助炎口13が0.4〜2.0mmの流路幅H1を有するように,濃淡燃焼バーナが形成されている.
濃炎口12と補助炎口13との境界を形成する板部材のリム厚さtを1mm以下としたのは,リム上部に渦を形成させないようにするためである.このリム暑さをt=1.0〜2.0mmとすると,リム上部に微小渦が形成されやすくなり,2.0mmを超えると渦が安定して形成されるようになる.境界領域に微小量の混合気や空気を供給する場合,リム上部に渦が形成されると,境界領域に供給する微小量の混合気や空気が,濃火炎および淡火炎に与える影響が妨げられる.
補助炎口の流路幅H1=0.4〜2.0mmとしたのは,この補助炎口13から供給される微小量の混合気の余剰空気または空気と,濃火炎12fの未燃分とが混合することによって,略平面状の補助火炎13fを形成させるようにするためである.さらにこの補助火炎13fによって,淡火炎11fの基部を保持し安定化させるためである.
補助炎口13の流路幅H1=0.4mm以下とすると,このような略平面状の補助火炎13fを形成することができなくなる.この理由は,ガス混合気における消炎距離がおよそ0.5mmであるためであり,火炎を形成することができない.消炎距離以下では火炎は伝播せず消炎されることはよく知られている事実である.この条件では,図2(a)に示すように,補助火炎13fは形成されず,基部が浮き上がった火炎になる.
また,補助炎口13の流路幅H1=2.0mm以上とすると,略平面状の補助火炎13fの淡火炎側の基部13faは,図2(b)に示すように,淡火炎側のリム上部11aに付着しなくなる.その結果,淡火炎11fの基部を保持し安定化させることができなくなる.特に,補助炎口から供給される微小量の混合気の空気比が1.0に近くなると,補助火炎13fは補助炎口13の上流側へ逆火しやすくなる.燃焼速度以下の流速を持つ混合気が逆火しやすくなることはよく知られた事実である.
このようなバーナ構成において,補助炎口13に混合気または空気を流した場合における優位性について説明する.補助炎口13に混合気または空気を流さない場合(つまり,従来の燃焼バーナと同様に濃火炎と淡火炎との間に無炎口部である一定暑さの境界リムを配置した場合に相当する)には,最大燃焼負荷に相当する燃焼条件において火炎は安定するものの,それ以上の負荷に相当する燃焼条件に設定すると,既に述べたように図2(a)に示すような淡火炎が浮き上がった状態になる.しかし,この条件において,補助炎口に微小量の希薄混合気または空気を供給すると,驚くことに,浮き上がっていた両火炎間の基部は,補助炎口13上に付着し,そこに形成された略平面状の補助火炎13fによって,淡火炎と濃火炎とが保持され,淡火炎と濃火炎とは互いに変動を受けにくい分離独立した火炎として安定化する.
表1には,境界領域に空気を供給した場合の一例を示した結果である(本発明の一例であってこの結果に限定されない).燃焼負荷Qf=5.2l/min(試験No.1)においては,境界領域に微小量の空気を供給してもしなくても,火炎は安定している.ところが,燃焼負荷Qf=7.8l/min(試験No.2),即ち,濃混合気流速および淡混合気流速を試験No.1の状態の1.5倍にした場合には,境界領域に微小量の空気を供給しないと,火炎は浮き上がるが,境界領域に微小量の空気を供給すれば,火炎が戻り安定化する.この結果は,本発明の一例であって,境界領域に理論混合気や希薄混合気を供給した場合でも同様の現象が現れる.
Figure 2008185287
次に,このような構成の濃淡燃焼バーナにおいて,火炎安や排ガス特性等に関する種々の実験を行ったので,実験条件や測定方法等の条件および実験結果を以下に述べる.
(濃淡燃焼器の構造および流路系統)
図3に燃焼器全体の構造を示す.燃焼器は,市販の濃淡燃焼器と同様にステンレス板金製である.燃焼器上部には,火炎形状が観察できるように石英ガラス製観察窓を設置した.燃焼器は,中央部の淡火炎用流路,その外側の境界領域制御用流路,さらに,その外側の濃火炎用流路および,その外側の二次空気用流路の四重構造となっている.
淡火炎,境界領域,濃火炎,および二次空気の流量をそれぞれ考慮して,ノズル出口速度が十分発達した流速分布になるように,混合気入口部からバーナ出口までの助走距離を十分長くとってある(図3(a)). 淡火炎用の希薄予混合気は,図3(b)に示す燃焼器側壁部に取り付けられたガス流入口(直径10 mm)から流入し,中央部の淡火炎用流路を通過して,バーナ出口に至る.濃淡火炎間の境界領域制御用の予混合気は,淡火炎用の希薄予混合気と同様に,燃焼器側壁部に取り付けられたガス流入口から流入し,淡火炎用予混合気流路の外側に沿って流れ,バーナ出口に至る.濃火炎用の過濃予混合気は,境界領域制御用予混合気流路の外側に沿って流れ,バーナ出口に至る.二次空気は,濃火炎用予混合気流路の外側に沿って流れ,同様にバーナ出口に至る.
試験には,乾燥空気を使用し,燃料はメタンを使用した.燃料および空気は図示しないオリフィス流量計で測定され,図示しない混合室で均質に混合された後,濃火炎用,淡火炎用,および境界領域制御用混合気としてそれぞれ独立して燃焼器に導かれる.
(火炎安定限界の測定方法)
図4にバーナ出口部に形成される濃火炎および淡火炎を模式的に示す.濃火炎と淡火炎の火炎基部は,図4(a)に示すように,境界領域付近に互いに付着して安定している.バーナに供給する混合気流量や空気比を変化させると,濃火炎と淡火炎の火炎基部が浮き上がる(図4(b)).また,淡火炎の空気比が大きくなると,図4(c)のように淡火炎先端部分が開くようになる.一方,濃火炎の空気比が大きくなると,図4(d)のように濃火炎の二次空気側が浮き上がり,リフト火炎となる.さらに,境界領域制御用混合気の流速が大きくなると,淡火炎が吹き飛ぶ(図4(e)).
このように,火炎の安定化には,各流路に供給される混合気の空気比と出口流速が大きく関係する.流速および空気比を調整し火炎を安定させ,濃火炎,淡火炎および境界領域の混合気の燃料流量を変化させ,上述したような現象が起こった時の空気流量と燃料流量を読み取り,これにより求めた流速と空気比をもって各々の安定限界とした.なお,それぞれの火炎安定限界の状態を,濃淡火炎基部浮き上がり限界(図4(b)),淡火炎先端の消炎限界(図4(c)),濃火炎外側浮き上がり限界(図4(d))および淡火炎吹き飛び限界(図4(e))と定義した.
(排ガス濃度の測定方法)
給湯器などに搭載されている実用燃焼器においては,濃火炎および淡火炎用流路に配置された燃料ノズルの孔径と,濃火炎および淡火炎用流路に供給される空気の流入面積があらかじめ決定されているため,濃火炎および淡火炎に供給される空気および燃料の比率が必然的に一定に保たれる.このような制限された実用燃焼条件のもとで,境界領域に混合気や空気を供給するには,図5に示すような方法が考えられる.濃淡火炎の境界領域に空気比λBZ>1.0の混合気を流すためには,濃混合気流路壁と淡混合気流路壁にバイパス用の穴(図5の(1)および(2)を設け, 濃淡混合気の適当な量をバイパスすることによって実現できる.また,境界領域に空気を流すためには,濃混合気通路を横切って,二次空気流路との間にバイパス流路を設置する(図5の(3))ことによって実現できる.
したがって,各混合気流路に対する空気および燃料の比率が必然的に一定に保たれることを想定し,かつ,図5の(1)〜(3)のバイパス通路のいずれかから混合気または空気がバイパスされる実用燃焼器を想定した条件を今回の実験条件とした.即ち,総燃料流量,燃料配分比率Xi(iは各流路),および燃焼用空気配分比率Yi(iは各流路)を一定とし,総空気量Qaを変化させることによって総空気比λを変化させて火炎観察および排ガス測定を行った.また,境界領域に空気を供給した場合の排ガス特性に及ぼす効果を明らかにするために,濃淡混合気の空気比λR ,λL および流速VR,VLを一定とし,境界領域に供給する空気流速VBZを変化させて火炎観察および排ガス測定を行った.
図6は,排ガス濃度測定のための実験装置を示す.排ガス濃度の測定には,燃焼器の下流部には高温の排ガスを冷却するために熱交換器を設置した.なお,熱交換器内の結露を防止するために,熱交換器には60℃の温水を流した.熱交換器の下流部には排ガス集合筒を設け,出口での排ガス濃度の均一化を図った.排ガスの採取には,石英ガラス製のサンプリングプローブを使用して,各成分の排ガス濃度(CO,CO,NOxおよびO)を測定した.プローブによって吸引された採取ガスは,リボンヒータで保温されたテフロン(登録商標)チューブ内を通過し,アイスバスで排ガス中の水分を除去した後,排ガス測定器によってそれぞれの排ガス成分濃度が測定される.
(燃焼ガス温度および燃焼ガス濃度の測定方法)
バーナ出口下流部(x=30,60,90 mm)の燃焼ガス温度および燃焼ガス濃度を測定する際には,熱交換器を取りはずし,燃焼室側面に観察窓のみを設け,トラバース装置に設置した熱電対または,ガス採取プローブをバーナ出口下流部に移動させ,その位置の燃焼ガス温度および燃焼ガス濃度を測定した.燃焼ガス温度の測定には,白金-白金・ロジウム13%熱電対を用いた.なお,白金-白金・ロジウム13%熱電対は,メタン−空気予混合気に対する触媒作用を有しているので,酸化ケイ素の被膜を施した後に使用した.燃焼ガスの採取には,外径3mmの石英ガラス管を吸入口直径1mmに加工したガス採取プローブを用い,燃焼ガス中の各成分の濃度(CO,CO,NOxおよびO)を測定した.
以下に述べる実施例におけるバーナ形態では,淡火炎用流路,境界領域制御用流路,濃火炎用流路および二次空気用流路の境界のバーナリム厚さt=0.4mm,また,二次空気用流路出口の幅は2.0mmで,境界領域制御用流路は,深さ4.0mm の幅H1=1.2 mmとし,境界領域への流入口は幅0.4 mm とした.濃火炎用および淡火炎用流路出口の幅は,共に0.8mmとしている(図7参照).なお,以下の実施例では,図6のバーナ構造においてなされた実験結果を示しているが,これらは例示であって,リム厚さt=1mm以下で,補助炎口の流路幅H1=0.4〜2.0mmであれば,これらの実施例から把握される技術思想の作用・効果と同様な作用・効果を示すことを確認している.
(淡火炎の安定特性について)
図8および図9は,境界領域制御用混合気の空気比および流速を変えた場合の火炎安定限界と淡火炎用混合気流速VLおよび空気比λLの関係を示す.図中の●印は,VBZ= 0m/s ,すなわち境界領域を制御していない場合の結果を示す.図8に示すように,境界領域を制御しない場合と比較すると,λBZ=0.5,VBZ0.2m/sでは,濃淡火炎の火炎基部浮き上がり限界(実線)は希薄側へと狭くなるが,λBZ ≧1.0とし, λBZ を増加するほど,濃淡火炎の火炎基部浮き上がり限界は空気比 λ の過濃側へ広くなっている.つまり,濃淡火炎の基部が浮き上がっていた火炎が,境界領域に希薄で低流速の予混合気または空気を供給した場合には,浮き上がらなくなり安定した状態となることが分かる.一方,淡火炎先端消炎限界(破線)は,λBZ に依存せず, どの条件でも同様な傾向を示しており,境界領域制御用混合気の空気比にほとんど左右されない.
また,図9に示すように,境界領域に空気を供給し,流速VBZを増加すると,火炎基部浮き上がり限界(実線)は空気比 λ の過濃側へ広くなるが,VBZ= 0.3m/sを越えると,火炎基部浮き上がり限界は限りなくλ =0に近づく(図示されていない).一方,淡火炎先端消炎限界(破線)は,VBZ に依存せず, どの条件でも同様な傾向を示しており,境界領域制御用混合気の流速にほとんど左右されない.
(濃火炎の安定特性について)
図10に,境界領域制御用混合気の空気比を変えた場合の火炎安定限界と濃火炎用混合気流速Vおよび空気比λの関係を示す.図中の●印は,VBZ=0m/s,すなわち境界領域を制御していない場合の結果を示す.λBZ=0.5では,濃淡火炎基部浮き上がり限界(実線)は,希薄側へと狭くなっている.λBZ≧1.0とし,λBZを増加すると,濃淡火炎基部浮き上がり限界が過濃側へ広くなっている.つまり,濃淡火炎の基部が浮き上がっていた火炎が,境界領域に希薄で低流速の予混合気または空気を供給した場合には,浮き上がらなくなり安定した状態となる.一方,濃火炎外側浮き上がり限界は, λBZ に依存せず,濃淡火炎間の火炎基部における混合気流速や空気比に左右されないことがわかる.
(火炎安定特性に及ぼす境界領域制御用混合気の影響について)
図11は,燃焼負荷を変えた場合の火炎安定限界と境界領域制御用混合気の流速および空気比の関係を示す.図中の▲,●,■は濃淡火炎基部の浮き上がり限界を示し,△,○,□は淡火炎吹き飛び限界を示している.濃混合気および淡混合気の空気比および流速を一定とし,燃焼負荷(Qf[l/min])を3種類,即ち,負荷1(Qf = 5.2 l/min,λR = 0.5,VR = 1.25 m/s,λL = 1.6,VL= 3.5 m/s),負荷3/2(Qf = 7.8 l/min,λR = 0.5,VR = 1.87 m/s,λL = 1.6,VL= 5.25 m/s),および負荷1/2(Qf = 3.6 l/min,λR = 0.5,VR = 0.63 m/s,λL = 1.6,VL= 1.5 m/s)の場合について測定した.なお,負荷1(Qf = 5.2 l/min)および負荷 3/2(Qf = 7.8 l/min)の条件において,境界領域へ混合気を供給しない場合には,濃淡火炎基部は浮き上がっていることを確認している.
負荷1(Qf = 5.2 l/min)および負荷3/2(Qf = 7.8 l/min)の条件において,λBZ =1.0付近に濃淡火炎浮き上がり限界(曲線1)が現れており,λBZ =1.0以上で火炎が安定することがわかる.また,曲線3から分かるように,境界領域に空気比λBZ =1.0以上の混合気をわずかに供給することによって,濃淡火炎基部が浮き上がっていた火炎を安定化させることができる.図中,負荷1/2(Qf = 3.6 l/min)の条件では,曲線1で示す濃淡火炎浮き上がり限界が,λBZ =1.0よりわずかに小さくなっている.これは,負荷1(Qf = 5.2 l/min)および負荷3/2(Qf = 7.8 l/min)の条件と比較して,濃混合気および淡混合気の流速が小さく,各々の火炎が安定化しやすくなっているためである.
一方,空気比λBZ が大きくなるほど,淡火炎吹き飛び限界(曲線2)の流速VBZは小さくなり,λBZ=∞(空気)で最小となる.境界領域に混合気を供給した場合には,境界領域制御用流路出口の後流に平面状の火炎が形成され,この火炎の保炎効果によって,淡火炎が安定化する.この平面状火炎は,濃混合気の余剰燃料と,境界領域に供給される余剰空気との混合によって,局所的な空気比が1.0に近い火炎が形成されている.空気比λBZ の大きな混合気中の余剰空気は,当然,空気比λBZ の小さな混合気中の余剰空気よりも多いので,境界領域に供給する混合気の流量(流速)を小さくしても火炎は安定化する.つまり,空気比λBZ =∞(空気)の場合が最も小さい吹き飛び限界流速となり,空気比λBZ を1.0に近づけるほど,この吹き飛び限界流速は大きくなる.また,燃焼負荷が大きくなるにしたがって,濃混合気中の余剰燃料量が多くなるため,火炎が安定化するためには,境界領域に供給する混合気中の余剰空気量を多く供給しなければならない.つまり,燃焼負荷の増加と共に,濃混合気の流速が大きくなり,それに伴って境界領域に供給する混合気の流速も大きくすることができ,淡火炎の吹き飛び限界流速が大きくなる.
(排ガス特性について)
図12は,燃料流量Qf = 5.2 l/min において,境界領域を制御していない場合の総空気比λと排ガス成分濃度(COおよびNOx)の関係を示す.図中の矢印(a)は,濃火炎と淡火炎の基部が浮き上がった状態を示し(図4(b)),矢印(b)は,通常の実用機の運転条件として仮定した条件を示し,その条件での火炎形状は図4(a)である.矢印(c)は,濃火炎の二次空気側の火炎基部が浮き上がった状態を示す(図4(d)).
矢印(X)は,濃火炎および淡火炎基部の浮き上がり限界を示す.また,破線および一点鎖線は,実用機として排ガス制限されるNOxの規制値60 ppm,COの規制値200 ppm(両者ともO=0% 換算値)を示している.図中の矢印(b)の条件(λ= 1.27,λL = 1.6,VL = 3.5 m/s,λR = 0.5,VR = 1.25 m/s,V2a = 0.23 m/s )におけるCOの排出量は微量であり,NOxの排出量は規制値に近い値であるが,排ガス規制を考慮したとしても実用条件においては,設定可能となる.しかし,濃火炎と淡火炎の基部が浮き上がった状態に近い火炎になっているため,実用機においては,燃焼騒音の増大,あるいは,振動燃焼の発生を起こす可能性が大きい条件となっている.従って,火炎が安定した状態で実用条件を設定する必要が生じる.
図13は,燃料流量Qf = 5.2 l/min において,境界領域に空気を供給した場合の総空気比λと排ガス成分濃度(COおよびNOx)の関係を示す.これは,二次空気の一部から空気を漏らして,境界領域制御用空気を作り出すことを想定している(図7の(3)参照).図13における矢印(b)の条件(λ= 1.3,λL = 1.6,VL = 3.5 m/s,λR = 0.5,VR = 1.25 m/s,V2a = 0.23 m/s,λBZ = 1.0,VBZ = 0.1 m/s)では,COの排出量は微量であり,NOxの排出量は規制値に近い値であるが,排ガス規制を考慮したとしても実用条件として設定可能となる.
一方,濃火炎と淡火炎の基部浮き上がり限界(矢印X)は,図12の場合と比較して,空気比λの過濃側になっており,実用機として仮定した燃焼条件である矢印(b)では,火炎は安定している.なお,境界領域に希薄混合気を供給した場合においても,濃火炎と淡火炎の基部浮き上がり限界(矢印X)は,図12の場合と比較して,空気比λの過濃側になることが確認されている.但し,境界領域に空気を供給した場合と比較すると,濃火炎と淡火炎の基部浮き上がり限界(矢印X)は,希薄側に現れる.
このように,境界領域を制御することによって,実用機としての燃焼条件において,火炎安定範囲を空気比λの過濃側へ広げることが可能となる.特に境界領域に空気を供給した場合,その効果が著しい.給湯器等に搭載された実用機の着火始動時においては,空気供給用ファンと燃料供給系との関係から,濃淡火炎用混合気の空気比が過濃側から設定値へと漸近する.従って,過濃側に火炎安定限界が広く取ることが可能という本バーナの特性は,実用機の着火始動時における低周波燃焼騒音や振動燃焼の防止に役立つことが理解できる.
図14および図15は,燃料流量Qf = 2.6 l/min,すなわち燃焼負荷1/2 における総空気比λと排ガス成分濃度(COおよびNOX)の関係を示す.図14は境界領域を制御していない場合,図15は境界領域に空気を供給した場合である.図14における矢印(b)の条件(λ= 1.26,λL = 1.6,VL = 1.75 m/s,λR = 0.5,VR = 0.61 m/s)および図15における矢印(b)の条件(λ=1.26,λL = 1.6,VL = 1.75 m/s,λR = 0.5,VR = 0.61 m/s, V2a =0.23m/s,λBZ = ∞,VBZ = 0.05 m/s)では,共にCOの排出量は微量であり,NOxの排出量は規制値よりも小さく, 実用条件においては,設定可能である.境界領域へ空気を供給した場合(図14参照)は,空気を供給していない場合(図14参照)と比較して,濃火炎と淡火炎の基部が浮き上がる条件(矢印X)は,空気比λの過濃側になっている.また,総空気比λの大小に関わらず,NOxの排出量が低下している.
なお,境界領域へ希薄混合気を供給した場合には,境界領域を制御していない場合と比べて,NOxはほとんど低減しないことが確認されている.また,燃焼負荷1/3,即ち,燃料流量Qf = 1.8 l/min の場合においてもほぼ同様な傾向となることが確認されている.これらの結果から,燃焼負荷が少なくなるほど,境界領域へ空気を供給することによって,濃火炎と淡火炎の基部が浮き上がる条件を過濃側へ移行させるとともに,NOxを低減させる効果があることが分かる.
図16は,境界領域に供給する空気の配分率と排ガス成分濃度の関係を示す.濃混合気の空気比λRと淡混合気の空気比λLとを一定とし,これらの流速VRとVとを比例的に変化させることによって,燃料流量を変化させている.燃料流量が小さくなるほどNOx排出量は少なくなっており,前述の結果と同様に,燃焼負荷が小さい方がNOx低減に効果があることが分かる.また,いずれの条件においても,境界領域へ供給する空気配分率を増加させていくと,NOx排出量は減少していくが,この空気配分量が総空気流量の15%を超えると,CO排出量が急激に増加することが分かる.このことから境界領域へ供給する空気配分比率は15%以下としなければならない.
( バーナ出口下流部の燃焼ガス温度分布および燃焼ガス成分濃度分布)
図17に,バーナ出口下流部の温度および燃焼ガス成分濃度分布を示す.ただし,温度は実測値を示し,輻射などの補正は行っていない.バーナ出口からx=30mmの位置における境界領域を制御していない場合の淡火炎下流部の燃焼ガス温度が約1573Kで,淡火炎の空気比λL = 1.6 の断熱火炎温度1740Kより低い値を示している.一方,濃火炎下流部の燃焼ガス温度は約1520Kで,濃火炎の空気比λR=0.5の断熱火炎温度1500Kより高くなっている.これは濃火炎からの余剰燃料と二次空気とで作られる外炎の温度を計測していることが原因である.
境界領域に空気を供給すると,バーナ下流領域において,燃焼ガス温度の低下が見られ,VBZ = 0.3 m/sの場合,淡火炎下流で最大約100 Kの燃焼ガス温度の低下となっている.バーナ出口からx = 60 mmの位置では,境界領域を制御した場合の燃焼ガス温度は,制御していない場合に比べて,低い値を示しているが,その差は,x = 30 mmの位置での温度差より小さくなっている.x = 90 mmの位置では,境界領域を制御した場合としない場合の温度差はさらに小さくなっている.また,境界領域に流す空気流速の増加と共に,燃焼ガス温度は低下している.
バーナ出口からの各位置において,温度は濃火炎下流部より淡火炎下流部のほうが高いにもかかわらず,NOx濃度は淡火炎下流部に比べ濃火炎下流部のほうが多い.これは,濃火炎下流部のNOx濃度は,サーマルNOxだけに起因するものではなく,その大半がプロンプトNOxに起因するためである.バーナ出口からの距離が大きくなっても,NOx濃度およびその分布に大差は見られない.しかし,境界領域に空気をVBZ = 0.15 m/sで供給すると,バーナ出口下流部の各位置においてNOx濃度の低減が見られる.これは,境界領域へ空気を供給すると,燃焼ガス温度が低下するため,サーマルNOxの生成が減少することに起因している.この傾向はVBZ が大きいほど顕著である.
一方,CO濃度はバーナ出口から30 mmの位置において,淡火炎下流部では約110 ppm,濃火炎下流部では不完全燃焼が原因で200〜300 ppmの値となっているが,バーナ出口からの距離が大きくなると,高温の燃焼ガス中のCOが淡火炎下流の余剰空気および二次空気からの酸素と反応し,CO濃度が減少する.境界領域に空気を供給すると,バーナ出口から30 mmの位置における濃火炎下流部のCO濃度が大幅に減少する.これは,境界領域に空気を供給することにより,濃火炎の不完全燃焼が緩和されるためである.しかし,バーナ下流部までに,COの大半がCOへと反応するため,バーナ出口から90 mmの位置におけるCO濃度は,境界領域を制御していない場合とほぼ同様な値となっている.
(燃焼良好範囲について)
図18は,各燃料流量Qfに対する総空気比λの燃焼良好範囲を示す.この図は,これまでの実験結果から,NOxとCO規制値および濃淡火炎基部の浮き上がり限界から,燃料流量毎に燃焼良好範囲を求めたものである.○,△および□印はCO排出量およびNOx排出量の限界曲線,●,■,◆および▲印は,濃淡火炎の基部浮き上がり限界曲線を示している.また,括弧内の数値は,境界領域へ供給した混合気の空気比および空気の総空気量に対する配分比率を示している.■印は,境界領域に濃および淡混合気の中間の空気比の混合気を供給した場合,◆印は,境界領域に淡混合気と同様の空気比を供給した場合の濃淡火炎の基部浮き上がり限界曲線を示している.
図18から,COの規制値とNOxの規制値で決定される排ガス濃度良好範囲は,燃焼負荷が大きくなると狭くなる. 境界領域に混合気または空気を導入していない場合には,燃料流量が4.3 l/min以上になると,この排ガス濃度良好範囲内で,濃淡火炎基部の浮き上がりが現れるので,実用上の安定燃焼良好範囲が急激に狭くなる.
一方,境界領域に混合気または空気を導入した場合には,この濃淡火炎基部の浮き上がり限界曲線が,NOx排出規制値で決定される限界曲線よりも,空気比の過濃側で現れるようになり,排ガス濃度良好範囲を広く確保することが可能となる.
また,実用燃焼器においては,着火後,燃料流量Qfの設定値に対する空気流量Qaの追従が遅れるために,空気比の小さい領域で燃焼する過程が生じる.そのため,NOx排出規制値で決定される限界曲線よりも空気比の小さい側で燃焼することがある.このとき,濃淡火炎基部が浮き上がると,低周波燃焼騒音や振動燃焼が起きやすくなる.しかし,濃淡火炎基部の浮き上がり限界曲線が空気比の小さい領域まで拡大していれば,これが生じない.したがって,空気比の大きな混合気を境界領域へ供給するほど,低周波燃焼騒音や振動燃焼を防止する効果が大きくなる.
図18の結果から,境界領域へ混合気を供給しない場合,約Qf = 4.3 l/minの燃料供給量が最大の定格燃焼負荷値(実用燃焼器の設定基準)となるが,境界領域へ混合気を供給することによって,本実験範囲において,この約1.34倍の燃料流量を供給しても良好な燃焼が可能となり,高負荷・高TDR燃焼を実現することができる.
(本実施形態から把握される作用・効果)
以上に示したバーナ構造および燃焼試験の結果から把握される発明とその作用効果を記載する.
(1)本実施形態の濃淡燃焼バーナは,淡炎口11と濃炎口12との間に設けられ,淡火炎11fと濃火炎12fとの境界領域に予混合気または空気を供給する境界領域用流路出口に補助火炎13fを形成する補助炎口13を備え,淡炎口11と補助炎口13,あるいは濃炎口12と補助炎口13との境界を形成するリム厚さtが1mm以下の板部材から形成されるとともに,補助炎口13が0.4〜2.0mmの流路幅H1を有するように構成した.この構成によれば,このリム上に渦を形成し難くすることができる.さらに,前記補助炎口を0.4〜2mmの流路幅とすることによって,この補助炎口上部に平面状火炎を形成させることができる.この平面状火炎によって,濃火炎および淡火炎の両火炎の安定性を強化することができる.すなわち,濃火炎および淡火炎のいずれか一方に不安定現象が生じた場合でも,他の火炎に影響を及ぼしにくくなるため,火炎の安定性が強化されたことにより,総空気比の過濃側に火炎安定範囲が広がるとともに,燃焼負荷を上昇させた場合においても,火炎が安定するので,高負荷・高TDR燃焼が可能となる.
(2)本実施形態の濃淡燃焼バーナは,一方向に長手の長方形断面を有する淡炎口11を略中央部に形成し,淡炎口11の長手方向の両側面には,一方向に長手の長方形断面を有する一対の補助炎口13,13を隣接し,さらにその補助炎口13,13の外側の両側面には,一方向に長手の長方形断面を有する一対の濃炎口12,12を隣接するようにする.この構成によれば,前記(1)に記載の基本構成を矩形型バーナに適用することが可能であり,前記(1)と同様の作用・効果を奏する.
(3)本実施形態の濃淡バーナは,濃炎口12,12の両外側には,2次空気を供給するようにした.この構成によれば,濃火炎の外側基部をリム上に付着させ火炎を安定化することができるとともに,濃混合気中に存在する余剰燃料と2次空気とが反応するため,不完全燃焼を防止することができる.
(4)本実施形態の濃淡バーナにおける運転条件として,境界領域に供給する混合気の空気比λBZは,λBZ≧1.0とすることによって,濃火炎および淡火炎の安定領域を拡大することができるとともに,高負荷・高TDR燃焼を実現させることが可能となる.この結果は,表1の試験結果や,実施例1〜4で例示される.なお,λBZの上限は無限大∞であり,これは空気そのものを意味する.特に空気を供給した場合には,NOxを低減することも可能となる.この結果は,実施例4および実施例5に例示される.
(5)本実施形態の濃淡バーナにおける運転条件として,境界領域に供給される混合気を形成する空気の総空気量に対する比率を,15.0%以下とすることによって,不完全燃焼を防止できるとともに,振動燃焼や低周波騒音を防止し,低NOx燃焼を実現することができる.さらには,高負荷・高TDR燃焼も実現可能となる.この結果は,実施例4および実施例6に例示される.より好ましくは,1.0〜3.0%,さらに好ましくは,2.0%とするのがよい.
(6)本実施形態の濃淡バーナにおける運転条件として,境界領域に空気を供給し,濃混合気の空気比λを0.5以下にすることによって,さらなる低NOxを可能とする.これは,実施例2に例示されるように,境界領域に空気を供給することによって,濃火炎をさらに過濃な領域まで安定させることができるため,濃火炎から発生せるプロンプトNOxを低減することが可能となるためである.
(その他の実施形態)
本実施形態では,矩形の淡炎口の両側に補助炎口を設け,さらにその両外側に濃炎口を設けたが,淡炎口を円形とし,その同心円状に補助炎口および濃炎口を設けてもよい(図18参照).このようなバーナ構成としても,t=1mm以下かつH1=0.4〜2.0mmであれば,前記実施形態と同様な効果を得ることができる.また,濃炎口の外周に2次空気通路を設け,2次空気を供給するようにしてもよい.このような構成にすれば,前記(3)と同様な効果を得ることができる.
(本実施形態およびその他の実施形態から把握される技術的思想)
以上の実施形態等から把握される技術的思想を列記する.
(A)理論空燃比より燃料濃度が希薄な予混合気を供給する流路出口に淡火炎を形成する淡炎口と,理論空燃比より燃料濃度が過濃な予混合気を供給する流路出口に濃火炎を形成する濃炎口と,前記淡炎口と前記濃炎口との間に設けられ,前記淡火炎と前記濃火炎との境界領域に予混合気または空気を供給する境界領域用流路出口に補助火炎を形成する補助炎口と,を備えた濃淡燃焼バーナにおいて,前記淡炎口と前記補助炎口,あるいは前記濃炎口と前記補助炎口との境界を形成するリム厚さが1mm以下の板部材から形成されるとともに,前記補助炎口が0.4〜2.0mmの流路幅を有する,ことを特徴とする濃淡燃焼バーナ.
(B)一方向に長手の長方形断面を有する少なくとも一つの前記淡炎口を略中央部に形成し, 前記淡炎口の長手方向の両側面には,一方向に長手の長方形断面を有する一対の補助炎口を隣接し,さらに前記補助炎口の外側の両側面には,一方向に長手の長方形断面を有する一対の濃炎口を隣接する,ことを特徴とする前記(A)に記載の濃淡燃焼バーナ.
(C)前記濃炎口の両外側には,2次空気が供給されることを特徴とする前記(B)に記載の濃淡燃焼バーナ.
(D)略円形断面を有する前記淡炎口を略中心軸上に形成し,前記淡炎口の外周には,同心円状の断面形状を有する補助炎口を形成し,さらに前記補助炎炎口の外周には,複数の濃炎口を略同心円状に形成する,ことを特徴とする前記(A)に記載の濃淡燃焼バーナ.
(E)前記濃炎口の外周には,2次空気が供給されることを特徴とする前記(D)に記載の濃淡燃焼バーナ.
(F)前記補助炎口に供給される混合気を形成する空気比λBZは,1.0以上である,ことを特徴とする前記(B)〜(E)のいずれかに記載の濃淡燃焼バーナ.
(G)前記補助炎口に供給される混合気を形成する空気の総空気量に対する比率は,1.0〜15.0%であることを特徴とする前記(F)に記載の濃淡燃焼バーナ.
(H)前記補助炎口に空気を供給するとともに,濃混合気の空気比λを0.5以下にする,ことを特徴とする前記(F)または前記(G)に記載の濃淡燃焼バーナ.
濃淡燃焼バーナの実施形態の断面図である. 実施形態に係る濃淡火炎の安定・不安定を説明する図である. 濃淡燃焼バーナ全体の概略図である. 火炎形状の模式図である. 濃淡燃焼バーナの実施形態の断面図(応用例)である. 実験装置全体を示す図である. 実施例に係る濃淡燃焼バーナの構造を示す図である. 淡火炎の安定領域を示す図である. 淡火炎の安定領域を示す図である. 濃火炎の安定領域を示す図である. 濃淡火炎基部の安定領域を示す図である. 排ガス特性を示す図である. 排ガス特性を示す図である. 排ガス特性を示す図である. 排ガス特性を示す図である. 境界領域用空気配分率と排ガス特性との関係を示す図である. バーナ下流部の燃焼ガス温度および濃度分布を示す図である. 燃焼良好範囲を示す図である. 従来の濃淡燃焼バーナにおける火炎状態を説明する図である.
符号の説明
10・・・濃淡燃焼バーナ,11・・・淡炎口,12・・・濃炎口,13・・・補助炎口

Claims (1)

  1. 理論空燃比より燃料濃度が希薄な予混合気を供給する流路出口に淡火炎を形成する淡炎口と、
    理論空燃比より燃料濃度が過濃な予混合気を供給する流路出口に濃火炎を形成する濃炎口と、
    前記淡炎口と前記濃炎口との間に設けられ、前記淡火炎と前記濃火炎との境界領域に予混合気または空気を供給する境界領域用流路出口に略平面状火炎を形成する補助炎口と、を備えた濃淡燃焼バーナにおいて、
    前記淡炎口と前記補助炎口、および前記濃炎口と前記補助炎口との境界を形成するリム厚さが1mm以下の板部材から形成されるとともに、前記補助炎口が0.4〜2.0mmの流路幅を有する、ことを特徴とする濃淡燃焼バーナ。
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