しかしながら、上述した構成を備えた従来の濃淡燃焼バーナ100は、一般に、高負荷燃焼を達成するため、淡火炎101側および濃火炎103側の予混合気量を増加させると、図21に示すように、火炎基部106が浮き上がり、火炎が不安定になる。そのため、火炎の脈動や浮き上がり・戻りが生じる。あるいは、振動燃焼が発生する場合もある。その結果、濃用炎孔104周縁から未燃焼ガス107が流出し、火炎を通過しない不完全燃焼によるCOの発生が顕著に見られる。
したがって、従来の濃淡燃焼バーナでは、一般の予混合燃焼バーナに比べて単位炎孔面積当たりの燃焼量を大きく取ることが難しく、高負荷燃焼が困難な状況にあった。
このような状況は、火炎の安定化を図るためには、淡火炎と濃火炎との間に存在する環流領域を制御することが重要であるにもかかわらず、従来の濃淡燃焼バーナでは、閉塞部があるために環流領域を全く制御することができなかったことに起因するものと考えられる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、本発明の解決しようとする課題は、環流領域に環流領域用予混合気を導入可能な濃淡燃焼バーナを提供することにある。また、他の課題は、火炎を安定化させた状態で高負荷燃焼が可能な濃淡燃焼バーナを提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の濃淡燃焼バーナは、頂部略中央に設けられ、淡火炎用予混合気を噴出可能な淡用炎孔と、前記淡用炎孔の両外側に設けられ、濃火炎用予混合気を噴出可能な濃用炎孔と、前記淡用炎孔と前記濃用炎孔との間に設けられ、淡火炎と濃火炎との間の環流領域に環流領域用予混合気を噴出可能な環流領域用炎孔とを少なくとも備えたことを要旨とする。
また、請求項2に記載の濃淡燃焼バーナは、請求項1に記載のものであって、前記濃用炎孔の両外側には2次空気が供給されることを要旨とする。
また、請求項3に記載の濃淡燃焼バーナは、請求項1または2に記載のものであって、前記淡火炎用予混合気の流速VLとその空気比λL、前記濃火炎用予混合気の流速VRとその空気比λR、前記環流領域用予混合気の流速VRZとその空気比λRZは、(a)VR/VL=10/90〜90/10、(b)λL=1.3〜1.8、λR=0.3〜0.8、(c)VRZ=0.01〜3.0[m/s]、λRZ=0.3以上の条件を満たすことを要旨とする。
また、請求項4に記載の濃淡燃焼バーナは、請求項1〜3の何れかに記載のものであって、前記濃火炎用予混合気の流速VRと前記環流領域用予混合気の流速VRZは、(d)VRZ<VRを満たすことを要旨とする。
また、請求項5に記載の濃淡燃焼バーナは、請求項1〜4の何れかに記載のものであって、前記濃火炎用予混合気の空気比λRと前記環流領域用予混合気の空気比λRZは、(e)λR<λRZを満たすことを要旨とする。
また、請求項6に記載の濃淡燃焼バーナは、請求項1〜5の何れかに記載のものであって、前記環流領域用予混合気の空気比λRZは、1.0以上であることを要旨とする。
また、請求項7に記載の濃淡燃焼バーナは、請求項1〜6の何れかに記載のものであって、前記環流領域用予混合気は、前記淡火炎用予混合気の一部から生成されることを要旨とする。
また、請求項8に記載の濃淡燃焼バーナは、請求項1〜6の何れかに記載のものであって、前記環流領域用予混合気は、前記濃火炎用予混合気の一部から生成されることを要旨とする。
また、請求項9に記載の濃淡燃焼バーナは、請求項1〜6の何れかに記載のものであって、前記環流領域用予混合気は、前記淡火炎用予混合気の一部と前記濃火炎用予混合気の一部が混合されて生成されることを要旨とする。
請求項1に記載の濃淡燃焼バーナによれば、淡用炎孔と濃用炎孔との間に環流領域用炎孔を備えているので、淡火炎と濃火炎との間に存在する環流領域に環流領域用予混合気を噴出させることが可能となる。そのため、淡火炎用予混合気の流速とその空気比および濃火炎用予混合気の流速とその空気比以外にも、環流領域用予混合気の流速とその空気比などを種々制御することが可能となる。
これにより、例えば、高負荷時に浮き上がっていた濃火炎と淡火炎の火炎基部が環流領域用炎孔周辺に付着するなどして火炎が安定するために、火炎の脈動や浮き上がり・戻りが生じ難くなる。あるいは、振動燃焼が発生し難くなる。そのため、火炎の浮き上がり部分などから発生するCOを抑制することができる。したがって、従来よりも火炎を安定化させた状態で高負荷燃焼を行うことが可能となる。
また、請求項2に記載の濃淡燃焼バーナによれば、濃用炎孔の両外側に2次空気が供給されるので、濃火炎の安定が促進されるとともに、空気不足である濃火炎の燃焼反応が促進され、よりCOの発生を抑制することが可能となる。
また、請求項3に記載の濃淡燃焼バーナによれば、淡火炎用予混合気の流速VLとその空気比λL、濃火炎用予混合気の流速VRとその空気比λR、環流領域用予混合気の流速VRZとその空気比λRZが、特定の条件を満たすようにしたので、火炎の安定化を一層図り易く、上述した作用効果にも優れる。
また、請求項4に記載の濃淡燃焼バーナによれば、濃火炎用予混合気の流速VRと環流領域用予混合気の流速VRZが(d)VRZ<VRを満たすようにしたので、火炎の浮き上がりを抑制し易い。
また、請求項5に記載の濃淡燃焼バーナによれば、濃火炎用予混合気の空気比λRと環流領域用予混合気の空気比λRZが(e)λR<λRZを満たすようにしたので、環流領域上部に形成される火炎の燃焼速度を、濃火炎の燃焼速度よりも大きくすることができ、火炎の安定性を向上させることができる。
また、請求項6に記載の濃淡燃焼バーナによれば、環流領域用予混合気の空気比λRZが1.0以上であるので、環流流域上部に形成される火炎の燃焼速度を、最大燃焼速度程度とすることができ、火炎の安定化をさらに向上させることができる。
また、請求項7に記載の濃淡燃焼バーナによれば、環流領域用予混合気が淡火炎用予混合気の一部から生成されることとしたので、環流領域用予混合気を予め環流領域用混合室などで生成する必要がなく、バーナ構造を簡略化できるなどの利点がある。
また、請求項8に記載の濃淡燃焼バーナによれば、環流領域用予混合気が濃火炎用予混合気の一部から生成されることとしたので、環流領域用予混合気を予め環流領域用混合室などで生成する必要がなく、バーナ構造を簡略化できるなどの利点がある。
また、請求項9に記載の濃淡燃焼バーナによれば、環流領域用予混合気が淡火炎用予混合気の一部と濃火炎用予混合気の一部が混合されて生成されることとしたので、環流領域用予混合気を予め環流領域用混合室などで生成する必要がなく、バーナ構造を簡略化できるなどの利点がある。
以下に、本実施形態に係る濃淡燃焼バーナ(以下、「本バーナ」という。)について説明する。
図1は、本バーナの頂部付近の詳細を示した断面図である。本バーナ10は、金属板などの板状部材によりその頂部が所定間隔に区画されて形成された淡用炎孔11、濃用炎孔12、環流領域用炎孔13を少なくとも備えている。
淡用炎孔11は、頂部略中央に長手方向に亘って配設されており、理論空気比以上の淡火炎用予混合気14を噴出できるようになっている。淡用炎孔11の下方には、淡火炎用予混合気14を淡用炎孔11まで導く淡用流路15が形成されている。
濃用炎孔12は、淡用炎孔11の両外側に配設されており、理論空気比以下の濃火炎用予混合気16を噴出できるようになっている。濃用炎孔12の下方には、濃火炎用予混合気16を濃用炎孔12まで導く濃用流路17が形成されている。
環流領域用炎孔13は、淡用炎孔11と濃用炎孔12の間に配設されており、淡用炎孔11の上方に形成された淡火炎18と、濃用炎孔12の上方に形成された濃火炎19との間に存在する環流領域に環流領域用予混合気20を噴出できるようになっている。環流領域用炎孔13の下方には、環流領域用予混合気20を環流領域用炎孔13まで導く環流領域用流路21が形成されている。
ここで、本バーナ10は、上記各炎孔11、12、13以外にも、図1に示すように、2次空気孔22を備えていても良い。すなわち、2次空気孔22は、濃用炎孔12の両外側に配設されており、2次空気23を噴出できるようになっている。この2次空気孔22を備える場合には、濃火炎の安定が促進されるとともに、空気不足である濃火炎の燃焼反応が促進され、よりCOの発生を抑制することできるので有用である。2次空気孔22の下方には、2次空気23を2次空気孔22まで導く2次空気用流路24が形成されている。
本バーナ10において、上記各炎孔11、12、13および2次空気孔22は、幅方向に2つ以上形成されていても良い。図1では、頂部略中央に淡用炎孔11が3つ、淡用炎孔11の両外側に環流領域用炎孔13がそれぞれ1つずつ、環流領域用炎孔13の両外側に濃用炎孔12がそれぞれ1つずつ、濃用炎孔12の両外側に2次空気孔22がそれぞれ1つずつ形成された場合を例示している。
この際、上記各炎孔11、12、13および2次空気孔22の幅は、基本的には、単位面積当たりの燃焼量が1〜10kcal/mm2程度で、かつ、各予混合気の消炎距離以下となるように最適な幅に形成すれば良い。
本バーナにおいて、各予混合気14、16、20は、燃料ガスと空気とを所定の空気比となるように混合し、生成した予混合気をそれぞれ別個に各炎孔11、12、13に供給すれば良い。これ以外にも、濃火炎用予混合気16の一部を淡火炎用予混合気14として淡用炎孔11に供給しても良い。また、淡火炎用予混合気14の一部または濃火炎用予混合気16の一部を環流領域用予混合気20として環流領域用炎孔13に供給しても良い。また、淡火炎用予混合気14の一部と濃火炎用予混合気16の一部を混合して生成される予混合気を環流領域用予混合気20として環流領域用炎孔13に供給しても良い。
この際、淡火炎用予混合気14の一部または濃火炎用予混合気16の一部を環流領域用炎孔13に供給する場合には、例えば、淡用流路15と環流領域用流路21の間の隔壁または濃用流路17と環流領域用流路21の間の隔壁に適当な大きさの連通孔を設けるなどすれば良い。また、淡火炎用予混合気14の一部と濃火炎用予混合気16の一部を環流領域用炎孔13に供給する場合には、例えば、淡用流路15と環流領域用流路21の間の隔壁および濃用流路17と環流領域用流路21の間の隔壁に適当な大きさの連通孔を設けるなどすれば良い。
なお、本バーナに用いられる燃料ガスとしては、具体的には、都市ガス、LPG、H2、メタンなどが挙げられる。
ここで、本バーナでは、淡火炎用予混合気の流速VLとその空気比λL、濃火炎用予混合気の流速VRとその空気比λR、環流領域用予混合気の流速VRZとその空気比λRZとすると、これら各パラメータは、(a)VR/VL=10/90〜90/10、(b)λL=1.3〜1.8、λR=0.3〜0.8、(c)VRZ=0.01〜3.0[m/s]、λRZ=0.3以上の条件を満たすように設定されていると良い。
各パラメータが上記(a)〜(c)を満たす場合には、火炎の安定化を一層図り易く、従来よりも火炎を安定化させた状態で高負荷燃焼を行うことができる。また、火炎の安定性が増し、排ガス特性にも優れるなどの利点もある。
ここで、上記(a)におけるVR/VLは、好ましくは、VR/VL=25/75〜50/50、より好ましくは、VR/VL=30/70〜40/60の条件を満たすように設定されていることが好ましい。
また、上記(b)におけるλLは、好ましくは、λL=1.4〜1.7、より好ましくは、λL=1.5〜1.6の条件を満たすように設定されていることが好ましく、一方、λRは、好ましくは、λR=0.5〜0.7、より好ましくは、λR=0.5〜0.6の条件を満たすように設定されていることが好ましい。
また、上記(c)におけるVRZは、好ましくは、VRZ=0.05〜1.5[m/s]、より好ましくは、VRZ=0.05〜1.0[m/s]の条件を満たすように設定されていることが好ましく、一方、λRZは、好ましくは、λRZ=0.5以上、より好ましくは、λRZ=0.6以上、最も好ましくは、λRZ=1.0以上の条件を満たすように設定されていることが好ましい。
特に、λRZ=1.0以上の条件を満たすように設定されている場合には、環流領域上部に形成される火炎の燃焼速度を、最大燃焼速とほぼ同等の燃焼速度とすることができるので、火炎の安定化をより一層図り易くなる。
なお、λRZの上限値は、高負荷時における火炎の安定化に対する効果が顕著になるなどの観点からより大きいほど好ましく、特に限定されるものではない。
この際、上記(a)におけるVRの値と、上記(c)におけるVRZの値とは、(d)VRZ<VRの条件を満たすように設定されていると良い。環流領域用予混合気の流速が濃火炎用予混合気の流速より小さくなれば、火炎は浮き上がり難くなるからである。
また、上記(b)におけるλRの値と、上記(c)におけるλRZの値とは、(e)λR<λRZの条件を満たすように設定されていると良い。環流領域における淡火炎側の燃焼速度が濃火炎の燃焼速度よりも大きくなるので、火炎安定限界が広がり易くなるからである。
なお、各パラメータを上述した条件を満たすように設定するには、本バーナに供給する燃料および空気の流量や圧力を適宜調整したり、各炎孔に各予混合気が至るまでの流路の断面積を適宜変化させるなど、常法にしたがって行えば良い。
本願において、「火炎が安定状態にある」とは、図2(a)に模式的に示すように、淡火炎18と濃火炎19の火炎基部25が環流領域用炎孔13付近に互いに付着しており、かつ、濃火炎19の外側の火炎基部25Rが濃用炎孔12付近に互いに付着している状態にある場合をいう。
これに対して、「火炎が安定状態にない」とは、例えば、図2(b)に示すように、濃火炎19および淡火炎18の火炎基部25が環流領域用炎孔13から浮き上がった状態、または、図2(c)に示すように、淡火炎18の火炎先端部26が開いてしまった状態、または、図2(d)に示すように、濃火炎19の外側の火炎基部25Rが浮き上がった状態、または、図2(e)に示すように、淡火炎18の火炎基部両端の少なくとも何れか一方が吹き飛んでしまった状態、あるいは、これらに準ずる状態にある場合などをいう。
図2(b)の場合、火炎基部25が浮き上がり、火炎全体の脈動や浮き上がり・戻りが生じやすくなるため、燃焼騒音が大きくなる、あるいは、振動燃焼が発生しやすくなる。また、図2(c)の場合、火炎先端部26から淡火炎用予混合気14が大気中へ放出されるので、COや未燃焼ガスであるハイドロカーボンが増加し、燃焼性が悪くなる。また、図2(d)の場合、濃火炎19の外側の火炎基部25Rが浮き上がった状態となるので、濃用炎孔12周縁から未燃焼ガスが流出して、COやハイドロカーボンが増加し、燃焼性が悪くなる。また、図2(e)の場合、淡火炎18の左右のうち、いずれか一方が吹き飛んだ状態となるので、未燃焼ガスであるハイドロカーボンが増加し、燃焼性が悪くなる。したがって、「火炎安定限界」とは、火炎が安定状態にある場合から火炎が安定状態にない場合に移行する限界を指す。
上記濃淡燃焼バーナによれば、淡用炎孔と濃用炎孔との間に環流領域用炎孔を備えているので、淡火炎と濃火炎との間に存在する環流領域に環流領域用予混合気を噴出させることが可能となる。そのため、淡火炎用予混合気の流速とその空気比および濃火炎用予混合気の流速とその空気比以外にも、環流領域用予混合気の流速とその空気比を種々制御することが可能となる。
これにより、例えば、高負荷時に浮き上がっていた淡火炎と濃火炎の火炎基部が環流領域用炎孔周辺に付着するなどして、未燃焼ガスの流出を抑制することができる。そのため、COの発生を抑制することができる。したがって、従来よりも火炎を安定化させた状態で高負荷燃焼を行うことが可能となる。
以上、本実施形態に係る濃淡燃焼バーナについて説明したが、上記実施形態は本発明を何ら限定するものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形・改良が可能である。
例えば、本バーナでは、各予混合気および2次空気の流路は、最終的に、上述した順に配設された各炎孔および2次空気孔に連通されておれば、どのような経路を経ても良く、特に限定されるものではない。
また、本バーナでは、バーナ頂部付近において、淡用流路を3つとしたが、上述の単位面積当たりの燃焼量および消炎距離以下の流路幅であれば、その数は特に限定されるものではない。
また、本実施形態では1連(1個)のバーナについて説明したが、本バーナを複数並設し、多連(複数個)のバーナとしても良く、本バーナが適用されるガス機器類の仕様などを考慮して、適宜その使用個数を設定することができる。
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付してある。
(本実施例に係る濃淡燃焼バーナの作製)
初めに、図3〜図5に示す構成(構成部材の寸法の単位はmmである。)を有する濃淡燃焼バーナを作製した。
すなわち、濃淡燃焼バーナ10は、薄板状のステンレスを所定間隔離間させて複数枚積層するなどして形成されたものであり、頂部略中央に淡用炎孔11を3つ、淡用炎孔11の両外側に環流領域用炎孔13をそれぞれ1つずつ、環流領域用炎孔13の両外側に濃用炎孔12をそれぞれ1つずつ、濃用炎孔12の両外側に2次空気孔22をそれぞれ1つずつ有している。各炎孔11、13、12および2次空気孔22の長手方向は、スペーサー27により5つのブロックに分割されている。
各炎孔11、13、12および2次空気孔22の下方には、略中央に淡用流路15、その両外側に環流領域用流路21、その両外側に濃用流路17、その外側に2次空気用流路24がそれぞれ形成されており、これら各流路15、21、17、24は、それぞれ各炎孔11、13、12および2次空気孔22に連通されている。なお、本実施例では、淡火炎用予混合気14の流量、環流用予混合気20の流量、濃火炎用予混合気16の流量および2次空気23の流量を考慮した上で、図に示す助走距離が設けられている。
淡火炎用予混合気14は、バーナ側壁部に取り付けられた流入口28から流入し、淡用流路15を通過して淡用炎孔11に至る。同様に、環流領域用予混合気20は、バーナ側壁部に取り付けられた流入口29から流入し、淡用流路15の外側に沿って流れ、環流領域用炎孔13に至る。濃火炎用予混合気16は、バーナ側壁部に取り付けられた流入口30から流入し、環流領域用流路21の外側に沿って流れ、濃用炎孔12に至る。2次空気23は、バーナ側壁部に取り付けられた流入口31から流入し、濃用流路17の外側に沿って流れ、2次空気孔22に至る。
なお、本実施例に係る濃淡燃焼バーナ10では、実験の便宜上、各種パラメータを正確に変化させることができるように、各流路15、21、17、24に対して予混合気ないし2次空気をそれぞれ独立して供給可能な構成を採用している。また、本実施例に係る濃淡燃焼バーナ10を構成する各構成部材の寸法は、市販の濃淡燃焼バーナを出来る限り模擬して決定されたものであり、特に限定されるものではない。また、濃淡燃焼バーナ10の上部には、火炎形状を観察するため、石英ガラス製の観察窓32を設置したが、これにより火炎の形状が大きく変化することはなく、その影響は十分小さいものである。
(流路系統)
次に、上記作製した濃淡燃焼バーナに供給する燃料および空気の流路系統について説明する。
図6に示すように、空気33は、コンプレッサー(図示されない)によって供給され、水蒸気分離装置34、貯気槽35を通り、フィルタ36によって、水分、油分、粉塵を除去された後、減圧弁37を通り、圧力調整器38で調圧され、オリフィス流量計39を経て、再び圧力調整器40で調圧された後、淡用混合室41、濃用混合室42、環流領域用混合室43へ至る。
一方、燃料(メタン)44は、ボンベ(図示されない)から供給され、減圧弁45を通り、圧力調整器46で調圧され、オリフィス流量計47を経て、再び圧力調整器48で調圧された後、淡用混合室41、濃用混合室42、環流領域用混合室43へ至る。なお、流量は、オリフィス流量計39、47の上流および下流に設けた水柱マノメータ49、50の液面差を読み取ることにより測定できるようになっている。
各混合室41、42、43で所定の空気比に混合された燃料44と空気33は、淡火炎用予混合気14、濃火炎用予混合気16、環流領域用予混合気20として、濃淡燃焼バーナ10へ導かれる。
(淡火炎用予混合気の流速VLとその空気比λLが火炎安定限界に与える影響について)
次に、上記濃淡燃焼バーナに供給する濃火炎用予混合気の流速(噴出速度)VRとその空気比λRを、一般的な濃淡燃焼バーナの定格インプット時と同様に、VR=1.25[m/s]、λR=0.5とし、環流領域用予混合気の流速VRZとその空気比λRZを種々変化させることにより、淡火炎用予混合気の流速VLとその空気比λLが火炎安定限界に与える影響を調べた。
具体的には、各予混合気の流速とその空気比を調節して火炎を安定化させた。次いで、火炎の安定状態から淡火炎用予混合気の燃料流量を上げていく、すなわち、バーナ全体に投入される燃料の量を増やしていくと、ある空気比で安定していた濃火炎および淡火炎の火炎基部は、バーナ出口付近から剥がれる(図2(b)参照)。
また、淡火炎用予混合気の燃料流量を下げていくと、ある空気比で安定していた淡火炎は細く長くなっていき、さらに燃料流量を下げていくと、火炎先端部分は開いてしまう(図2(c)参照)。
火炎が安定状態にある場合から以上のような現象が起こった時の淡火炎の空気流量および燃料流量を読み取り、これにより求めた淡火炎用予混合気の流速VLとその空気比λLの値を、濃淡火炎基部浮き上がり限界および淡火炎先端消炎限界と定めた。
なお、これらの実験は、大気開放状態で行い、2次空気は供給していない。
図7〜図10は、環流領域用予混合気の空気比λRZを一定とし、環流領域用予混合気の流速VRZを変化させた場合における、淡火炎用予混合気の流速VLとその空気比λL、火炎安定限界の関係を示したものである。ここで、VRZ=0.00[m/s]は、環流領域を制御していない場合の結果を示している。また、図中の実線は、濃淡火炎基部浮き上がり限界を、図中の破線は、淡火炎先端消炎限界を示している。
図7に示すように、環流領域用予混合気の空気比λRZ=0.5とした場合、VRZを増加させると、環流領域を制御していない場合と比較して濃淡火炎基部浮き上がり限界は小さくなっている。一方、淡火炎先端消炎限界は、VRZに依存せず、どの条件でも同様であった。これは、淡火炎先端消炎限界は、濃淡火炎の火炎基部に存在する環流領域の条件にほとんど左右されないことを示している。この結果より、λRZがλR以下であることは、火炎安定に対し効果が少ないことが分かる。
また、図8に示すように、λRZ=0.6とした場合、濃淡火炎基部浮き上がり限界は、VRZ=0.12[m/s]の条件まで広がっていることが分かる。なお、VRZ=0.16[m/s]より大きくなると、環流領域を制御していない場合と比較して同程度であった。
また、図9に示すように、λRZ=0.7とした場合、濃淡火炎基部浮き上がり限界は、λRZ=0.6とした場合(図8)より広がっていることが分かる。また、VRZを増加するにつれて徐々に広がることが分かる。
また、図10に示すように、λRZ=1.6とした場合、濃淡火炎基部浮き上がり限界は、λRZ=0.7とした場合(図9)より広がっていることが分かる。また、VRZの増加とともに濃淡火炎基部浮き上がり限界は広くなるが、VRZ=0.5[m/s]を越えると逆に狭くなる傾向が見られた。この結果より、λRZがλRより大きい方が火炎安定に対し効果が大きいことが分かる。
一方、図11は、環流領域用予混合気の流速VRZを一定とし、環流領域用予混合気の空気比λRZを変化させた場合における、淡火炎用予混合気の流速VLとその空気比λL、火炎安定限界の関係を示したものである。何れの条件においても、λRZを増加させると、濃淡火炎基部浮き上がり限界は広くなっていることが分かる。特に、λRZを1.0以上とすることで、火炎の安定化に対し著しい効果があることが分かる。
以上の結果から、火炎安定領域を効果的に拡大させるには、(e)λR<λRZを満たしていることが好ましいことが分かる。
このように環流領域用炎孔に環流領域用予混合気を流すと、環流領域の上部に火炎が形成され、この火炎により濃火炎と淡火炎の安定性を向上させることができ、さらには、この環流領域の上部に形成される火炎の燃焼速度が大きいほど、すなわち、この燃焼速度が最大燃焼速度に近いほど、火炎安定性に対する効果が大きくなることが確認できた。
次に、図12に、VR、λR、λRZをそれぞれ、VR=1.25[m/s]、λR=0.5、λRZ=1.6に固定し、VRZ=0、0.4[m/s]とした時の、全インプット量と火炎安定限界の関係を示す。
図12によれば、環流領域を制御しない場合には、全インプット量が3230[kcal/h]で火炎基部の浮き上がりが生じ、安定な火炎を形成し難くなることが分かる。
これに対し、環流領域を制御し、環流領域用予混合気を環流領域に噴出させることで、火炎安定限界が大きく広がり、全インプット量を4460[kcal/h]まで増やすことが可能であることが分かる。したがって、この場合には、全インプット量で約35%の高負荷燃焼が可能となる。
(濃火炎用予混合気の流速VRとその空気比λRが火炎安定限界に与える影響について)
次に、上記濃淡燃焼バーナに供給する淡火炎用予混合気の流速VLとその空気比λLを、VL=3.5[m/s]、λL=1.6とし、環流領域用予混合気の流速VRZとその空気比λRZを種々変化させることにより、濃火炎用予混合気の流速VRとその空気比λRが火炎安定限界に与える影響を調べた。
具体的には、各予混合気の流速とその空気比を調節して火炎を安定化させた。次いで、火炎の安定状態から淡火炎用予混合気の燃料流量を上げていくと、ある空気比で安定していた濃火炎および淡火炎の火炎基部は、バーナ出口付近から剥がれる(図2(b)参照)。
また、濃火炎用予混合気の流速VRとその空気比λRをある範囲に変化させると、濃火炎の外側の火炎基部が浮き上がってしまう(図2(d)参照)。
火炎が安定状態にある場合から以上のような現象が起こった時の濃火炎の空気流量および燃料流量を読み取り、これにより求めた濃火炎用予混合気の流速VRとその空気比λRの値を、濃淡火炎基部浮き上がり限界および濃火炎外側浮き上がり限界と定めた。
図13および図14は、環流領域用予混合気の空気比λRZを一定とし、環流領域用予混合気の流速VRZを変化させた場合における、濃火炎用予混合気の流速VRとその空気比λR、火炎安定限界の関係を示したものである。ここで、VRZ=0.00[m/s]は、環流領域を制御していない場合の結果を示している。また、図中の実線は、濃淡火炎基部浮き上がり限界を、図中の破線は、濃火炎外側浮き上がり限界を示している。
図13に示すように、環流領域用予混合気の空気比λRZ=0.5とした場合、VRZを増加させると、環流領域を制御していない場合と比較して濃淡火炎基部浮き上がり限界は小さくなっている。
また、図14に示すように、環流領域用予混合気の空気比λRZ=1.6とした場合、VRZを増加させると、濃淡火炎基部浮き上がり限界は広くなる。一方、濃火炎外側浮き上がり限界は、VRZに依存せず、濃淡火炎間の火炎基部の条件に左右されないことが分かる。
次に、図15は、環流領域用予混合気の流速VRZを一定とし、環流領域用予混合気の空気比λRZを変化させた場合における、濃火炎用予混合気の流速VRとその空気比λR、火炎安定限界の関係を示したものである。何れの条件においても、λRZを増加させると、濃淡火炎基部浮き上がり限界が広くなっていることが分かる。
ここで、環流領域を制御した場合、λRZを増加させたときに濃淡火炎基部浮き上がり限界が広がる要因について検討する。最初に、燃料過濃な濃火炎がバーナリム上に保炎されるメカニズムについて述べる。
すなわち、バーナ近傍では、濃火炎の過濃な予混合気が周囲の空気を混合することによって、局所的に理論空気比に近い燃焼速度が大きな領域が形成されて濃火炎が安定する。したがって、環流領域用流路に供給する環流領域用予混合気は、余剰空気を多く含むほど、濃火炎基部において、理論空気比に近い燃焼速度が大きな領域が形成されやすくなる。
つまり、環流領域用予混合気の空気比λRZが大きいほど、濃火炎用予混合気の空気比λRの小さな濃火炎を安定させやすくなると考えられる。その結果、環流領域用予混合気の空気比λRZが大きくなるほど、濃淡火炎基部浮き上がり限界は、過濃側に広がることになる。
また、環流領域用予混合気の空気比λRZが1.0より大きい場合は、環流領域用予混合気の流速VRZが大きくなるほど、濃淡火炎基部浮き上がり限界が大きくなる。これは、理論空気比に近い燃焼速度が大きな領域に形成される平面状の火炎が、後流側へ移動することによって、バーナ出口への熱損失が減少することが原因であると考えられる。
但し、さらに環流領域用予混合気の流速VRZを大きくした場合には、火炎が浮き上がり始める傾向が見られるため、VRZの大きさに最適な範囲があるものと考えられる。
次に、図16は、濃火炎用予混合気の流速VRとその空気比λRおよび淡火炎用予混合気の流速VLとその空気比λLを一定とした場合における、環流領域用予混合気の流速VRZとその空気比λRZ、火炎安定限界の関係を示したものである。なお、図中において、黒丸●は、濃淡火炎基部浮き上がり限界を示し、一方、黒三角▲は、淡火炎吹き飛び限界(図2(e)参照)を示している。
本条件であるVL=3.5[m/s]、λL=1.6、VR=1.25[m/s]、λR=0.5において、環流領域に環流領域用予混合気を供給しない場合には、図2(b)のように、火炎は浮き上がった状態になっている。この状態において、図16の3本の曲線で囲まれた安定領域に示した条件(例えば、λRZ=1.6、VRZ=0.5[m/s]など)にて環流領域に環流領域用予混合気を供給すると、図2(a)に示すように、火炎は安定した状態になる。
図16によれば、環流領域用予混合気の空気比λRZが1.0以上の条件を満たす場合には、濃淡火炎の火炎基部が極めて安定することが分かる。一方、環流領域用予混合気の空気比λRZが比較的大きい領域において、環流領域用予混合気の流速VRZを大きくし過ぎると、淡火炎が吹き飛んでしまう傾向が見られる。これは、環流領域用炎孔から噴出する環流領域用予混合気が、希薄かつ流速が大きくなるため、濃火炎と淡火炎との間に平面状の火炎が形成され難くなり、濃火炎と淡火炎との間に隙間ができるためであると推察される。
以上、上述した図7〜図16の結果によれば、環流領域用予混合気の流速VRZとその空気比λRZを制御することによって、淡火炎および濃火炎の安定領域を拡大させることが可能なことが確認できた。また、環流領域用予混合気の流速VRZとその空気比λRZを最適な範囲に設定すれば、淡火炎および濃火炎の火炎の安定性に大きく寄与することが確認できた。
(排ガス特性の測定)
次に、上記濃淡燃焼バーナの排ガス特性を測定した。図17に排ガス測定装置の概略を示す。図17に示すように、濃淡燃焼バーナ10の上部には、高温の排ガスを冷却する熱交換器51を設置した。熱交換器51には、熱交換器51内の結露を防止するため60℃の温水52を流した。熱交換器51の上部には、排ガス集合筒53を設け、出口での排ガス濃度の均一化を図った。
そして石英ガラス製のプローブ54を使用し、排ガス濃度(NOx、CO、CO2およびO2)を測定した。この際、プローブ54の先端は、排ガス集合筒53の出口上流部10mmの断面をトラバース装置55により移動させた。プローブ54により吸引されたサンプリングガスは、保温されたチューブ56(ポリテトラフルオロエチレン製)内を通過し、その後アイスバス57を通過するようになっている。
このアイスバス57によりサンプリングガス中の水分を除去した後、NOx計58、CO・CO2計59、O2計60によりNOx、CO、O2の濃度を測定した。なお、NOxの測定は、化学発光法により測定した。また、COの測定は、非分散赤外線分析法により測定した。また、O2の測定は、磁気式酸素測定法により測定した。図18〜図19にその結果を示す。
図18は、環流領域を制御していない場合における総空気比λと排ガス濃度(COおよびNOx)の関係を示している。一方、図19は、環流領域を制御した場合(VRZ=0.30、λRZ=1.6)における総空気比λと排ガス濃度(COおよびNOx)の関係を示している。
なお、両図中、Qfは濃淡燃焼バーナに供給される燃料の総流量、XL、XR、XRZはそれぞれ、淡火炎、濃火炎、環流領域へ供給される燃料の流量比、YL、YR、YRZ、Y2aはそれぞれ、淡火炎、濃火炎、環流領域、2次空気の全空気に対する配分比率である。図18および図19中の矢印Aは、火炎の状態が図2(a)の状態から図2(b)の状態に移る境界の空気比であり、火炎が浮き上がる限界を示している。
図18〜図19によれば、上記濃淡燃焼バーナについて、環流領域用炎孔より環流領域用予混合気を噴出して環流領域を制御した場合も制御しない場合も、排ガス特性がほとんど変わらず(グラフの形状がほとんど同じ)、環流領域を制御することは、排ガス特性に無関係であることが確認できた。
しかしながら、環流領域に環流領域用予混合気を流していない場合(図18)には、火炎の浮き上がり限界が、λ=1.22付近であったのに対し、環流領域に環流領域用予混合気を流した場合(図19)には、火炎の浮き上がり限界が、λ=0.52付近まで拡大する。したがって、環流領域に環流領域用予混合気を供給すると、火炎の安定領域が広がることが確認できた。
このように、上記濃淡燃焼バーナによれば、良好な排ガス特性を維持したまま、火炎を安定化させた状態で高負荷燃焼を行うことができる。
以上、本実施例に係る濃淡燃焼バーナについて説明したが、上記実施例は本発明を何ら限定するものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形・改良が可能である。
例えば、上記濃淡燃焼バーナでは、各予混合気を別個に生成して供給したが、それ以外にも、淡火炎用予混合気の一部または濃火炎用予混合気の一部を環流領域用予混合気として環流領域用炎孔に供給したり、淡火炎用予混合気の一部と濃火炎用予混合気の一部を混合して生成される予混合気を環流領域用予混合気として環流領域用炎孔に供給したりすることが可能なものである。