建築物の外壁面を構成するカーテンウォールを構築する手法として、ユニット式カーテンウォールとノックダウン式カーテンウォールが知られている。前者は、方立や無目等の枠材を工場で予めパネル材に組み付けてユニット化しておき、このように工場生産されたユニットを施工場所に持ち込んで組み合わせてカーテンウォールを構築するものである。後者は、方立や無目等の各構成部材をそのまま施工場所へ持ち込んで、その現場で方立や無目を組立ててパネル材を組み付けカーテンウォールを構築するものである。前者の例として特許文献1〜3が、後者の例として特許文献4が例示される。
パネル材としてガラス板を用いた場合、どちらの方式のカーテンウォールにおいても、層間変位によるガラス板の破損を防止するため、方立や無目等の枠材とガラス板端部との間に比較的大きな空間を設けるのが一般的である。そのため、枠材の見付幅が広くなり、枠材の存在感が強調されるため、ガラスカーテンウォールとしての一体感や開放感が阻害され、意匠性が犠牲となる。
これに対して、特許文献5に示されるSCN(Structural Channel Glazing)構法では、略コ字形状をしたアルミニウム製の枠材をガラス板の端縁(辺部)に接着固定することによりパネルユニットを構成し、このパネルユニットを外壁面の開口部に組み付けることによりカーテンウォールを構築する構法である。このSCN構法によれば、枠材の機械的接合によりガラス板を支持し、構造シリコーンシーリング材の接着強度に依存しないため、すっきりとした内観意匠を実現できる。しかし、SCN構法では、溝状枠(枠材)を支持部材に対して取り付ける取付金物を、支持部材に取り付け、取付金物と溝状枠とを、ガラス板面に沿った全方向へのスライドを許容する層間変位吸収用の融通部を介して取り付ける複雑な機構が必要であり、部材コストや施工性の点であまり好ましくない。
また、SCN構法をそのまま複層ガラスに適用した場合には、複層ガラスの耐久性が低下するという懸念がある。これは、枠材と複層ガラスの小口との微小な隙間から浸入した水分が、複層ガラスの小口面に滞留し、その水分が、複層ガラス側にも影響し、複層ガラスの内部に水分が浸入することにより、複層ガラスの内部に結露が生じ、結果的に複層ガラスの耐久性を低下させるという問題である。
この問題は、図11に模式的に示す構成の一般的なユニット式カーテンウォールによって解消することができる。このガラスパネルユニット1は、複層ガラス2と枠材3とをシール材4を介して一体化することにより構成され、複層ガラス2と枠材3との間に、外部と略等圧な等圧空間部5が形成されている。この等圧空間部5を排水径路として利用することにより、複層ガラス2と枠材3との間に浸入した雨水等の水分を、各々の等圧空間部5、5を介して雨仕切りの空気取入孔兼排水口6、6(図12参照)から排水することができる。この等圧空間部5は、カーテンウォールの施工においてオープンジョイント方式の構成として知られており、雨仕切りによって雨水を仕切り、空気取入孔兼排水口6、6を通して空気が外部と等圧空気層5との間を容易に移動できる構造であり、図12の矢印に示すように外気が導入される。
ガラスパネルユニット1を使用してカーテンウォールを構築する場合には、図11の如く隣接するガラスパネルユニット1、1の枠材3、3同士を、シール材7、7を介して連結し、この連結部分を建物側の方立(不図示)に固定することによって行われる。なお、符号8は、複層ガラス2の周縁部に設けられるスペーサ8を模式的に示したものであり、不図示のシーリング材(一次シール材、二次シール材)により、ガラス板に接着されており、複層ガラス2の内部に密閉された中空層9が形成されている。
特開平7−180246号公報
特開2006−152560号公報
特開2005−155178号公報
特開2001−140390号公報
特許第2612400号公報
ところで、図11、図12に示した従来のガラスカーテンウォールは、ガラスパネルユニット1毎に等圧空間部5が形成されている。すなわち、複層ガラス2と枠材3との間の水密性能と排水性能を確保するために、複層ガラス2の辺部と枠材3との間に広い等圧空間部5がパネルユニット1毎に形成されている。このため、枠材3の見付幅が広くなり、また、このような枠材3を図11の如く連結すると、ガラス面に対する枠材3の占める面積が大きくなるので、ガラスカーテンウォールの景観性、意匠性が悪くなるという欠点があった。
本発明は、前述の欠点を解決するためのものであり、景観性、意匠性を向上させるとともに、排水性のよいカーテンウォールを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、パネル材の少なくとも1つの辺部に枠材が予め一体に組み付けられたパネルユニットを縦方向および/または横方向に隣接配置して壁面が構成されるカーテンウォールにおいて、前記枠材は表面部、背面部、連結部からなり、前記表面部と前記背面部と前記連結部とで画成される第1パネル収容部と第2パネル収容部とが前記連結部を挟んで対向して設けられており、前記第1パネル収容部には該枠材が組み付けられる第1のパネル材の1つの辺部が該辺部と前記連結部の両者に接するスペーサを介して嵌め込まれて前記連結部と前記辺部との間に間隙部が形成され、前記第2パネル収容部には隣接するパネルユニットの第2のパネル材の辺部が前記連結部に接することなく嵌め込まれ、前記第2パネル収容部内に外部と略等圧な等圧空間部が設けられ、前記連結部に、前記等圧空間部と前記間隙部とを連通する通気口が形成されていることを特徴としている。
請求項1に記載の発明によれば、外部と略等圧な等圧空間部と連通する通気孔を枠材の連結部に形成し、第1パネル収容部に組み付けられる第1のパネル材の辺部と枠材との間の間隙部が狭くとも、その間隙部を等圧とすることが可能となる。よって、その間隙部に水の表面張力により滞水が生じた場合でも、通気孔を介して早期に排水及び乾燥させることができる。
したがって、請求項1に記載のカーテンウォールは、前記間隙部の縮小化により、枠材の見付幅が小さくなるので、景観性、意匠性が向上し、且つ、通気孔の作用により排水性能を確保できる。また、前記間隙部の縮小化とスペーサにより、パネル材と枠材とが比較的堅固に一体化でき生産性、搬送性、及び施工性が向上する。なお、前記通気孔は1個でもよく、複数個でもよい。複数個の場合には、十分小さな間隔で連続的に形成することが好ましい。
一方、前記等圧空間部は、第2のパネル材を第2パネル収容部に、連結部に接することなく嵌め込むことにより第2パネル収容部内に形成される。よって、この等圧空間部を隣接する第2のパネル材の等圧空間部として兼用できる。したがって、隣接する2枚のパネルユニットの連結部の見付寸法が、各々のパネルユニットに等圧空間部を有する従来のパネルユニットの連結部の見付寸法と比較して、十分に小さくなるので、カーテンウォールの景観性、意匠性がより一層向上する。
なお、パネル材は1枚であってもよく、ビジョン部、スパンドレル部を有するパネルユニットの場合にはビジョン部用のパネル材とスパンドレル用のパネル材の2枚であってもよい。また、枠材の組み付け位置は、パネル材の一辺のみに限定されず二辺以上であってもよい。
請求項2に記載の発明は、前記目的を達成するために、パネル材の少なくとも1つの辺部に枠材が予め一体に組み付けられたパネルユニットを縦方向および/または横方向に隣接配置して壁面が構成されるカーテンウォールにおいて、隣接するパネルユニット間の目地部において対向する第1のパネルユニットの辺部および第2のパネルユニットの辺部に、表面部、背面部、連結部からなる断面略コ字状の枠材がそれぞれ組み付けられており、前記辺部と前記枠材との間に両者に接するスペーサが設けられることにより前記連結部と前記辺部との間に間隙部が形成され、前記連結部に前記間隙部と前記枠材の外部とを連通する通気口が設けられており、前記枠材のうち、前記目地部において第1のパネルユニットの辺部に組み付けられた第1枠材と第2のパネルユニットの辺部に組み付けられた第2枠材とが、外部側に設けられた外部側シール材と室内側に設けられた室内側シール材とを介して密着し、該外部側シール材と該室内側シール材と前記第1枠材と前記第2枠材とで囲まれる外部と略等圧な等圧空間部が設けられ、前記通気口を介して前記等圧空間部と前記間隙部とが連通されていることを特徴としている。
請求項2に記載の発明は、隣接する第1のパネルユニットと第2のパネルユニットの目地部において対向するそれぞれの辺部に、枠材(第1枠材、第2枠材)が設けられて構築されるカーテンウォールを対象としている。各々のパネルユニットと枠材との間にはスペーサによって間隙部が形成され、この間隙部が通気口を介して枠材の外部と連通されている。そして、各々の枠材は目地部において、外部側シール材と室内側シール材とを介して密着され、外部側シール材と室内側シール材と各々の枠材とで囲まれる空間部を、外部と略等圧な等圧空間部として利用している。このように等圧空間部を形成することにより、パネルユニットと枠材との間の間隙部が狭くとも、その間隙部を等圧とすることが可能となるので、間隙部に水の表面張力により滞水が生じた場合でも、通気孔を介して早期に排水及び乾燥させることができる。
したがって、請求項2に記載のカーテンウォールは、前記間隙部の縮小化により、枠材の見付幅が小さくなるので、景観性、意匠性が向上し、且つ、通気孔の作用により排水性能を確保できる。なお、前記通気孔は1個でもよく、複数個でもよい。複数個の場合には、十分小さな間隔で連続的に形成することが好ましい。
請求項3に記載の発明は、前記目的を達成するために、複数のパネル材を縦方向および/または横方向に隣接配置して壁面が構成されるカーテンウォールにおいて、隣接するパネル材間の目地部に設けられる支持フレーム内に外部と略等圧な等圧空間部が設けられ、該目地部に面する少なくとも一方のパネル材の辺部と略対向する支持フレームの部分には、前記等圧空間部と連通する通気口が形成されるとともに、前記辺部と支持フレームとの間に両者に接するスペーサが設けられることにより、前記通気口と前記辺部との間に間隙部が形成され、該間隙部が前記通気口を介して前記等圧空間部と連通されていることを特徴としている。
請求項3に記載のカーテンウォールによれば、支持構造体に予め設けられた方立や無目等の支持フレームに、枠材無しのパネル材の辺部を組み付けて構築されるカーテンウォールにも適用することができる。すなわち、外部と略等圧な等圧空間部と連通する通気孔を目地部に面する少なくとも一方のパネル材の辺部と略対向する支持フレームの部分に形成し、このパネル材の辺部と略対向する支持フレームの部分との間の間隙部が狭くとも、その間隙部を等圧とすることが可能となる。よって、その間隙部に水の表面張力により滞水が生じた場合でも、通気孔を介して早期に排水及び乾燥させることができる。
したがって、請求項3に記載のカーテンウォールは、前記間隙部の縮小化により、枠材の見付幅が小さくなるので、景観性、意匠性が向上し、且つ、通気孔の作用により排水性能を確保できる。なお、前記通気孔は1個でもよく、複数個でもよい。複数個の場合には、十分小さな間隔で連続的に形成することが好ましい。
請求項4に記載の発明は、請求項1、2において、前記パネル材の面または辺部と前記枠材との間には前記間隙部を封止する室内側封止材と外部側封止材とが設けられていることを特徴としている。
請求項4に記載の発明によれば、室内側封止材と外部側封止材とを設けることにより、間隙部の気密性能、水密性能が向上するので好ましい。この場合、パネル材と枠材とを接着剤により接着し、この接着剤層をスペーサとして兼用すると、この接着材層によって、搬送中や地震時においてパネル材と枠材の位置関係を維持できるので、室内側封止材と外部側封止材とを例えば乾式のゴム製ガスケットとすることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項3において、前記パネル材の面または辺部と前記支持フレームとの間には前記間隙部を封止する室内側封止材と外部側封止材とが設けられていることを特徴としている。
請求項5に記載の発明によれば、室内側封止材と外部側封止材とを設けることにより、間隙部の気密性能、水密性能が向上するので好ましい。
請求項6に記載の発明は、請求項4または5において、前記室内側封止材、外部側封止材の少なくとも一方の封止材が前記スペーサと兼用されていることを特徴としている。
請求項6に記載の発明によれば、室内側封止材、外部側封止材の少なくとも一方の封止材を前記スペーサと兼用したので、部品点数を削減することができるとともに、パネルユニットやカーテンウォールの組立施工性が向上する。また、スペーサを室内側封止材、外部側封止材の少なくとも一方の封止材と兼用させてもよい。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6において、前記パネル材は、複層ガラスであることを特徴としている。
本発明のパネル材として単板ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス等のガラス板の他、ポリカーボネート類やポリスチレン類等のいわゆる有機透明樹脂材等を例示できるが、本発明は、排水性の向上により耐久性を維持できる複層ガラスに好適である。
本発明に係るカーテンウォールによれば、外部と略等圧な空間部と連通する通気孔を枠材の連結部に形成し、パネル材の辺部と枠材との間の間隙部が狭くとも、その間隙部を等圧とすることが可能となるので、その間隙部に水の表面張力により滞水が生じた場合でも、通気孔を介して早期に排水及び乾燥させることができる。したがって、本発明に係るカーテンウォールによれば、前記間隙部の縮小化により、枠材の見付幅が小さくなるので、景観性、意匠性が向上し、且つ、通気孔の作用により排水性能も確保できる。
以下、添付図面に基づいて本発明に係るカーテンウォールの好ましい実施の形態を詳説する。
図1は、実施の形態に係るガラスパネルユニット(パネルユニット)10、10…によって構築されたガラスカーテンウォール12を室外側から見た要部正面図であり、等圧ジョイント方式が適用された高層ビルのガラスカーテンウォール12が示されている。同図に示すガラスカーテンウォール12は、ガラスパネルユニット10、10を横方向、縦方向(不図示)に隣接配置して構築されている。
また、このガラスカーテンウォール12において、図中の斜線部が等圧ジョイント方式による等圧区画14を示している。この等圧区画14は、隣接する2枚のガラスパネルユニット10、10の連結部である枠材16、天井側サッシ18及び床側サッシ20において、図示した工の字形状に形成される。更に、隣接する等圧区画14、14(図1には一つの等圧区画14のみ図示)同士は、天井側サッシ18と床側サッシ20に配置された不図示の隔壁を介して仕切られており、等圧区画14内での気流の発生が抑えられている。更にまた、ガラスパネルユニット10の上辺部、下辺部は、図2に示す天井側サッシ18、図3に示す床側サッシ20に嵌め込まれ、これによって多数枚のガラスパネルユニット10、10…からなるガラスカーテンウォール12が横連窓構造に構築される。
等圧区画14の構造について説明すると、図2に示す天井側サッシ18の雨仕切りには空気取入孔22、24が形成され、外気は矢印の如く、これらの空気取入孔22、24を介して天井側サッシ18内に導入され、図4に示す枠材16の等圧空間部26に導入される。この等圧空間部26は、枠材16の全長に亘って形成されている。また、図3に示す床側サッシ20の雨仕切りにも空気取入孔28、30、32が形成され、外気はこれらの空気取入孔28、30、32を介して床側サッシ20内に導入され、図4に示した枠材16の等圧空間部26に導入される。すなわち、枠材16の全長に亘って形成された等圧空間部26は、空気の流れを示す図5の矢印の如く、空気取入孔22、24、28、30、32を介して外部と連通され、その内圧が外部と略等圧に維持される。
一方、図2〜図4に示すようにガラスパネルユニット10を構成するパネル材として、実施の形態では複層ガラスGを例示している。複層ガラスGは中空層34を確保するために、2枚のガラス板36、38の周囲にスペーサが配置され、このスペーサによって中空層34の気密性が確保されている。スペーサは、通常は、アルミニウムを押し出し成形した金属製部材40と、この金属製部材40とガラス板36、38とを接着一体化するシーリング材42によって構成されている。また、金属製部材40の側面とガラス板36、38との間は、ブチルシール等の低透湿性のシーリング材で封止されている(不図示)。金属製部材40は中空形状であり、内部に乾燥剤が充填されていることが通常であるが、この構成以外にも、乾燥剤とシーリング材42、金属製部材40の機能が一体化された形態もある。このように構成された複層ガラスGの縦辺部に図4に示したアルミニウム製の枠材16が工場にて予め組み付けられてガラスパネルユニット10が構成されている。予め枠材16が組みつけられることにより、枠材16と天井側サッシ18や床側サッシ20とを機械的に接合する部品を使用せずに施工およびサッシカーテンウォーウォールとして機能や性能を発揮できる。接合する部品を使用しない場合の上下のサッシへの荷重伝達はガラス板(パネル材)を介して行う方法と枠材16を天井側サッシ18と床側サッシ20に差し込み、はめ合わせる方法とがある。
なお、パネル材として複層ガラスGを例示するが、これに代えて単板ガラス、強化ガラス、合わせガラス等のガラス板の他、ポリカーボネート類やポリスチレン類等のいわゆる有機透明樹脂材等を例示できる。但し、後述するように排水性の向上により耐久性を維持できる点で複層ガラスGが好適である。また、複層ガラスGに代えてLow−E複層ガラスを適用してもよい。
図2に示す天井側サッシ18は、アンカーボルト44によってビルの躯体46に固定され、この天井サッシ18に複層ガラスGの上辺部が、シール材48及びバッカー50を介して嵌合されるとともにシーリング材52によって接着されている。また、図3に示す床側サッシ20に複層ガラスGの下辺部がセッティングブロック54を介して載置され、シール材56及びバッカー58を介して嵌合されるとともにシーリング材60によって接着されている。
次に、枠材16に形成された等圧空間部26について説明する。
図4に示すように枠材16は表面部17A、背面部17B、連結部17Cから構成されるとともに、表面部17Aと背面部17Bと連結部17Cとで画成される第1パネル収容部19Aと第2パネル収容部19Bとが連結部17Cを挟んで対向して設けられている。第1パネル収容部19Aには、図中右側に位置する複層ガラス(第1のパネル材)Gの縦辺部が収容され、この縦辺部と略対向する部分に、等圧空間部(外部と略等圧な空間部)26と連通する通気口62が連結部17Cに形成される。この通気孔62は、枠材16の全長に亘って所定の間隔に複数形成されるとともに所定の開口面積で形成される。また、複層ガラスGの縦辺部と枠材16との間に、両者に接するスペーサ64、66が設けられることにより、通気口62と複層ガラスGの縦辺部との間に、等圧空間部26より十分に狭い間隙部68が形成され、この間隙部68が複数の通気口62、62…を介して等圧空間部26と連通されている。
すなわち、実施の形態のガラスパネルユニット10によれば、図4中右側の複層ガラスGの縦辺部に枠材16が予め一体に組み付けられて構成され、この複層ガラスGに隣接する図4中左側の複層ガラス(第2のパネル材)Gの縦辺部が、枠材16の左辺部に形成された第2パネル収容部19Bに等圧空間部26を介して枠体16に封着され、この等圧空間部26が図4中左側の複層ガラスGの等圧空間部として兼用されている。
このようにガラスカーテンウォール12を構成することによって、図4中右側の複層ガラスGの縦辺部と枠材16との間の間隙部68が狭くとも、その間隙部68を等圧とすることが可能となる。よって、その間隙部68に水の表面張力により滞水が生じた場合でも、複数の通気孔62、62…を介して早期に排水及び乾燥させることができる。
以上により実施の形態のガラスカーテンウォール12によれば、間隙部68の縮小化により、枠材16の見付幅が小さくなるので、景観性、意匠性が向上し、且つ、通気孔62の作用により排水性能を確保できる。また、間隙部68の縮小化とスペーサ64、66により、複層ガラスGと枠材16とが比較的堅固に一体化でき生産性、搬送性、及び施工性が向上する。なお、スペーサ64、66は、間隙部68の間隔を確保する目的のほか、複層ガラス(第1のパネル材)Gと枠材16とを組み付ける際にスペーサ64、66と複層ガラス(第1のパネル材)Gとを直接接触させることにより両者の位置決めが容易になり、さらには、ガラスカーテンウォール12に層間変位が生じた場合に複層ガラス(第1のパネル材)Gが枠材16と直接接触しエッジ部が損傷すること防止する、という利点がある。また、図4中で符号70はレインバリアであり、符号72はバッカー、符号74は、室内側から打設されるシリコーンシーラントである。
上述した実施の形態では、一枚の複層ガラスGに枠材16を組み付けたガラスパネルユニット10を例示したが、これに限定されるものではなく、例えばビジョン部、スパンドレル部を有するガラスパネルユニットの場合には、二枚のガラス板に枠材16を組み付けたガラスパネルユニットであってもよい。また、枠材16の組み付け位置はパネル材の一辺のみであっても二辺以上であってもよい。通気孔62は、複数でなく、枠材16の全長に亘って大きな1つの通気口として設けることも可能である。ただし、ガラスカーテンウォール12が風圧力等の面外方向の荷重を受けた場合の負圧を確実に支持する必要があるため、表面部17Aと背面部17Bとの間で枠材16の長手方向に亘って連続的に設けられる連結部17Cに、所定の開口面積を有する通気口62が所定の間隔に複数形成されるのが好ましい。
図6は、他の実施の形態のガラスカーテンウォール80の断面図が示され、図4に示したガラスカーテンウォール12と同一または類似の部材については同一の符号を付しその説明は省略する。
このガラスカーテンウォール80は、図中右側の複層ガラスGの小口がスペーサ82、82を介して枠材16に組み付けられることにより間隙部68が形成され、この間隙部68が通気孔62を介して等圧空間部26に連通されている。また、その複層ガラスGの面(又は辺部)と枠材16との間には間隙部68を封止するシリコーンシーラント(室内側封止材)84とシリコーンシーラント(外部側封止材)86とが打設されている。このように封止材であるシリコーンシーラント84、86を打設することにより、間隙部68の気密性能、水密性能が向上するので好ましい。また、外部側封止材として乾式シール材ではなく湿式シール材であるシリコーンシーラント86を適用することにより、確実な止水を達成でき、ガラス板と枠材との適度な変位量を吸収できるとともにその変位を戻すことができ、適度な拘束力も得ることができる。なお、複層ガラスGと枠材16とを接着剤により接着し、この接着剤層をスペーサ82として兼用した場合には、この接着材層によって水密性能、機密性能を維持できるので、湿式のシリコーンシーラント84、86に代えて例えばレインバリア、ウインドバリア等の乾式ガスケット法、インターロッキング法による乾式シール材を適用することができる。これにより、現場でのガラスカーテンウォール12の施工が容易になる。また、室内側、室外側の一方をシリコーンシーラント84とし、他方を前記乾式シール材としてもよい。
更に、シリコーンシーラント84、86の少なくとも一方の封止材を、スペーサ82、82と兼用してもよい。これにより、部品点数が削減するとともに、ガラスパネルユニット80の組立性が向上する。また、スペーサ82、82をシリコーンシーラント84、86の少なくとも一方の封止材と兼用させてもよい。
なお、図中左側の複層ガラスGの面と枠材16との隙間にも同様に、シリコーンシーラント(室内側封止材)84とシリコーンシーラント(外部側封止材)86とが打設されている。
図7は、他の実施の形態のガラスカーテンウォール90の断面図が示されている。このガラスカーテンウォール90は、各々の複層ガラスG、Gの縦辺部に小さめの断面略コ字状の枠材16A(第1枠材)、16A(第2枠材)が組み付けられている。この枠材16Aも表面部17A、背面部17B、連結部17Cから構成されている。
また、複層ガラスGの小口がスペーサ82を介して枠材16Aに組み付けられることにより、複層ガラスGの辺部と連結部17Cとの間に間隙部68が形成され、この間隙部68が通気孔62を介して等圧空間部26に連通されている。この等圧空間部26は、枠材16A、16Aの対向面間の室外側に介在されたレインバリア(外部側シール材)92と、前記対向面間の室内側に介在されたウインドバリア(室内側シール材)94とに囲まれて形成されている。
図7の如く、各々の枠材16Aに間隙部68と通気孔62を形成し、枠材16A、16Aの対向面間に等圧空間部26を形成しても、図11に示した従来のカーテンウォールと比較して、枠材16Aの見付寸法を小さくできる。図7のガラスカーテンウォール90によれば、図1〜図6に示したガラスカーテンウォール12、80と同様の効果を得ることができる。
上述した実施の形態では、パネル材として複層ガラスGを例示している。これは、排水性の向上により耐久性を維持できる点で複層ガラスに好適であるからである。
なお、図1〜図7では、複層ガラスGの辺部に枠材16、16Aが予め組み付けられたガラスパネルユニットを縦方向および/または横方向に隣接配置して壁面が構成されるガラスカーテンウォール12、80、90について例示したが、本発明はこのガラスカーテンウォール12、80、90に限定されるものではない。すなわち、支持構造体に予め設けられた方立や無目等の支持フレームに、枠材が組み付けられていないパネル材の辺部を組み付けて構築されるカーテンウォールにも適用することができる。
具体的な構成は、隣接するパネル材間の目地部に設けられる支持フレーム内に、外部と略等圧な等圧空間部を設ける。そして、前記目地部に面する少なくとも一方のパネル材の辺部と略対向する支持フレームの部分に、前記等圧空間部と連通する複数の通気口を形成するとともに、前記辺部と支持フレームとの間に両者に接するスペーサを設けることにより、前記通気口と前記辺部との間に間隙部を形成する。この間隙部が前記複数の通気口を介して前記等圧空間部に連通することにより、ガラスカーテンウォール12、80、90と同様の効果を有する、枠材無しのパネル材によるカーテンウォールを構築することができる。
例えば、図8に示す枠材無しのパネル材によるガラスカーテンウォール100は、外部と略等圧な等圧空間部26が形成された中空状の方立102を、支持構造体(不図示)に連結される基部104と、基部104から室外側に延在する連結部106と、連結部106の先端に嵌合部107を介して取り付けられるカバー部108とで構成する。そして、基部104の連結部106を挟んで両側の面にそれぞれ通気孔62、62を形成する。
方立102に複層ガラスGを組み付ける場合には、まず、カバー部108が取り外された状態で、連結部106の両側から2枚の複層ガラス(パネル材)Gを取り付けた後、カバー部108を、スペーサ110、110とバッカー112、112とを介して装着し、その後、シリコーンシーラント(室内側封止材)84とシリコーンシーラント(外部側封止材)86とを打設することで、連結部106の全長に亘って設けた通気口62、62を介して、複層ガラス(パネル材)Gの小口と連結部106との間に形成される両側の間隙部114、114を等圧とする。この間隙部114、114を狭小化することにより、方立102の見付幅が小さくなり、景観性、意匠性が向上し、且つ、通気孔62、62の作用により排水性能を確保できる。なお、図中右側の複層ガラスGの小口は、スペーサ110と直接接触しないように設置されている。これは、層間変位が生じた場合に図中右側の複層ガラスGが方立102の連結部106と直接接触しエッジ部が損傷すること防止するとともに、施工時の誤差を吸収するためである。
また、図9に示す枠材無しのパネル材によるガラスカーテンウォール120は、図6に示したガラスカーテンウォール80の変形例である。すなわち、方立102の連結部106と図中右側の複層ガラスGの小口との間に、外部と略等圧な等圧空間部26を形成する。そして、方立102の連結部106と図中左側の複層ガラスGの小口との間にスペーサ124を介することによって間隙部126を形成し、この間隙部126を、連結部106の全長に亘って形成された通気孔62を介して等圧空間部26と連通させる。この間隙部126を狭小化することにより、方立102の見付幅が小さくなり、景観性、意匠性が向上し、且つ、通気孔62の作用により排水性能を確保できる。スペーサ122は、層間変位が生じた場合に図中右側の複層ガラスGが方立102の連結部106と直接接触しエッジ部が損傷すること防止するとともに、施工時の誤差を吸収する目的で設けられる。なお、図9では、図8に示したガラスカーテンウォール100の部材と同一、類似のものに同一の符号を付して説明している。
更に、図10に示す枠材無しのパネル材によるガラスカーテンウォール130は、図7に示したガラスカーテンウォール90の変形例である。すなわち、小さめの一対の方立132、132をレインバリア92とウインドバリア94とを介して突き合わせることにより、方立132、132との間に等圧空間部26を形成する。そして、図中右側の方立132の連結部134と図中右側の複層ガラスGの小口との間にスペーサ138を介することによって間隙部136を形成する。そして、方立132の連結部134の全長に亘って形成された通気孔62を介して等圧空間部26と連通させる。図中左側の方立構造も同様であり、符号140は、連結部134に取り付けられるカバー部である。よって、双方の間隙部136、136を狭小化することにより、方立132、132の見付幅が小さくなり、景観性、意匠性が向上し、且つ、通気孔62、62の作用により排水性能を確保できる。なお、図10では、図8に示したガラスカーテンウォール100の部材と同一、類似のものに同一の符号を付して説明している。
要するに、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等が可能である。また、前記パネル材の面または辺部と前記支持フレームとの間には前記間隙部を封止する室内側封止材と外部側封止材とが設けられていることが好ましい。これにより、間隙部の気密性能、水密性能が向上し、スペーサによる気密性能、水密性能への寄与を考慮する必要がなくなる。
10…ガラスパネルユニット、12…ガラスカーテンウォール、14…等圧区画、16、16A…枠材、17A…表面部、17B…背面部、17C…連結部、18…天井側サッシ、19A…第1パネル収容部、19B…第2パネル収容部、20…床側サッシ、22、24、28、30、32…空気取入孔、26…等圧空間部、34…中空層、36、38…ガラス板、40…金属製部材、42…シーリング材、44…アンカーボルト、46…ビルの躯体、48…シール材、50…バッカー、52…シーリング材、54…セッティングブロック、56…シール材、58…バッカー、60…シーリング材、62…通気孔、64、66…スペーサ、68…間隙部、70…レインバリア、72…バッカー、74…シリコーンシーラント、80…ガラスカーテンウォール、82…スペーサ、84、86…シリコーンシーラント、90…ガラスカーテンウォール、92…レインバリア、94…ウインドバリア、100…ガラスカーテンウォール、102…方立、104…基部、106…連結部、108…カバー部、110…スペーサ、112…バッカー、114…間隙部、120…ガラスカーテンウォール、122…スペーサ、124…スペーサ、126…間隙部、130…ガラスカーテンウォール、132…方立、134…連結部、136…間隙部、138…スペーサ、140…カバー部、G…複層ガラス