JP2008167739A - Rna干渉効果が高い修飾型二本鎖rna - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、ヌクレアーゼ耐性が高く、優れたRNA干渉効果を奏することができる新規な二本鎖RNAを提供することである。
【解決手段】標的遺伝子の発現を抑制できる修飾型二本鎖RNAとして、下記の(1)〜(4)の特徴を備えさせる:(1)前記センス鎖RNAの5’末端側が平滑末端である、(2)前記センス鎖RNAが25〜27個のヌクレオチドからなる、(3)前記センス鎖RNAの5’末端側から1〜6番目のヌクレオチドの少なくとも1つに対してのみ置換基が結合している、及び(4)前記センス鎖RNAに結合している前記置換基が、アミノアルキル基、チオアルキル基、コレステロールを有する基、ペプチドを有する基、芳香族化合物を有する基、ポリエチレングリコールを有する基、及び核酸を有する基よりなる群から選択される少なくとも1種である。
【選択図】なし

Description

本発明は、標的遺伝子の発現を効果的に抑制できる修飾型RNAに関する。より具体的には、本発明は、25〜27塩基からなるセンス鎖RNA(標的遺伝子中の標的配列に相補的な配列)を有し、ヌクレアーゼ耐性が高く、優れたRNA干渉効果を奏することができる修飾型RNAに関する。
ガンやエイズなどの難病を効率的に治療する医薬の開発は、ライフサイエンス分野における大きな一つの課題である。この課題を克服できる可能性がある有力な方法の一つとして、特定の遺伝子にのみ作用する遺伝子医薬がある。この遺伝子医薬の中でも特に最近21塩基の短い2本鎖RNA (small interfering RNA:siRNA )を利用するRNA干渉(RNA interference:RNAi)法 が注目されている。このRNAi法は、1998年にFireらにより初めて報告された(非特許文献1参照)。Fireらの報告によると、機能阻害したい遺伝子の特定領域と相同な100塩基対程度の2本鎖RNAを細胞内へ導入させることにより、細胞質内でDicerの働きにより20〜25塩基対程度の2本鎖RNAへと分解され、その後複数のタンパク質とRNA/タンパク質複合体を形成し(この複合体をRICS:RNA-induced silencing complexと呼ぶ)、標的遺伝子から産出されたmRNAの相同部位と結合し強力に遺伝子発現を抑制するというものである。しかしながら哺乳細胞では、約30塩基対以上の長い2本鎖RNAを導入させると、ウィルス応答反応であるインターフェロン反応が誘導され結果的に細胞が死んでしまうという現象が報告され、哺乳動物細胞系ではRNAi法は適用し難いと考えられた。そこでTuschlらは、3’末端にダングリングエンドをもつ21塩基長の2本鎖RNAを化学的に合成し、哺乳動物細胞へ直接導入させることにより、インターフェロン応答を回避し配列特異的に高い遺伝子発現抑制能を示すことを報告した(非特許文献2参照)。また彼らは、2本鎖領域が19塩基対で、3’末端又は5’末端に様々な長さのダングリングエンド鎖をもつ短い2本鎖RNAを合成しRNA干渉効果を検討した。その結果、3’末端に2塩基のダングリングエンドをもつ21塩基長のsiRNAは非常に高いRNA干渉効果が観測されたが、それ以外のあらゆるタイプの短い2 本鎖RNAにおいては顕著なRNA干渉効果が観測されなかった。この報告により、今日では21塩基長であり、3’末端に2塩基のダングリングエンドをもつ2本鎖RNAを用いたRNA干渉法が一般的となっている。ここでは21塩基長の短い2本鎖RNAを用いて標的遺伝子発現を阻害する方法を、RNAi法と区別してsiRNA法を呼ぶ。
このsiRNA法は合成RNAを用いるのでサンプル調整も比較的容易であり、取り扱い操作も簡便で、かつ、非常に強力な効果を示す為、ライフサイエンス分野のみならずバイオビジネス分野においても大きな注目を浴びている。
しかしながら、この優れたsiRNA法にも解決しなければならない問題点がある。上記したようにsiRNAはRNA分子から構成されており、細胞内および倍地中に含まれるヌクレアーゼの働きにより速やかに分解される。また2本鎖RNA領域は1本鎖RNAに比べ比較的高いヌクレアーゼ耐性を示すが、19塩基対からなる2本鎖RNAは殆ど従来のRNA干渉効果を示さない。そのため合成siRNAは、標的遺伝子配列をもつ細胞への導入後、2日〜4日間程度までは高い遺伝子発現抑制効果を示すが、その後はRNA干渉効果が急激に弱まり、7日程度でRNA干渉効果が殆ど無くなると報告されている。
最近、合成siRNAにおいて細胞導入性に優れ長時間高活性なRNA干渉効果を獲得するために、様々な化学修飾型siRNAが報告されている。例えば、エキソヌクレアーゼからの分解耐性を獲得する為に、siRNAの末端をアミノ基やチオール基、アベーシックなどに修飾したsiRNAが合成されている。しかしながら、末端を修飾した21塩基長のsiRNAのほとんどの場合で、RNA干渉効果が著しく減少すると既に報告されている。
また、細胞導入性や組織選択性を持たせる為にコレステロールや長鎖アルキル、糖鎖、ペプチドなどをsiRNAの末端に修飾したものが報告されている。コレステロールや長鎖アルキルを修飾したsiRNAは、細胞導入性が向上するだけではなく、in vivoにおいて肝臓への蓄積が観測されている。また、糖鎖やペプチドを修飾したsiRNAにおいても細胞導入性の向上が観測されている。しかしながら、いずれの場合においても修飾されていないsiRNAに比べ、同程度又は低いRNA干渉効果を観測しており、また、ヌクレアーゼ耐性も獲得していない。
一方、近年、J. Rossiらの報告により、27塩基対からなる2本鎖RNAが21塩基長からなるsiRNAに比べ100倍程度高いRNA干渉効果を示すことが明らかとなった(非特許文献3参照)。これは、27塩基対からなるRNAがRNase III様の酵素であるDicerによって21塩基長のsiRNAに切断された後、タンパク複合体であるRISCにそのまま認識され、高効率にsiRNA効果を発揮できる為だと考えられている。
このように、27塩基長のRNAは、優れたRNA干渉効果を奏し得るため、今後、遺伝子医薬としての応用が益々期待されている。しかしながら、27塩基長のRNAによるRNA干渉効果をより増強させるためには、どのような技術的手段が有効であるかについては一切分かっていない。更に、RNA干渉効果を奏する二本鎖RNAに関して、27塩基長のRNAのみならず、他の塩基長のRNAについても、RNA干渉効果を高めるための技術的手段については明らかにされていない。
また、RNA干渉効果を奏する二本鎖RNAでは、末端にダングリングエンドを有する構造が一般的に採用されているが、末端にダングリングエンドを有していない構造(即ち、平滑末端を有する構造)についても、RNA干渉効果の検討が行われている。しかしながら、センス鎖RNAの5’末端側を平滑末端にした構造では、センス鎖RNAの5’末端側にダングリングエンドがある場合に比して、RNA干渉効果が殆ど変わらない、或いはRNA干渉効果が低減することが示唆されている(非特許文献4参照)。
更に、RNA干渉効果を奏する二本鎖RNAに、機能性分子(タンパク質、ペプチド、コレステロール等)を結合させておくことにより、RNA干渉効果に加えて、当該機能性分子に基づく有用効果も奏されることが期待される。しかしながら、RNA干渉効果を奏する二本鎖RNAに、単に機能性分子を結合させると、RNA干渉効果の顕著な減弱化を招くことが分かっており、従来技術では、優れたRNA干渉効果と機能性分子に基づく有用効果とを兼ね備えた機能性分子修飾型RNAを構築できていないのが現状である。
Fire et. al, Nature, 391, 806-811 (1998) Tuschl et. al., EMBO Journal, 20, 6877-6888 (2001) J. Rossi et. al. Nature Biotech., 23, 222-226 (2005) J. T. Marques et. al., Nature Biotech., 24, 559-565 (2005)
本発明は、ヌクレアーゼ耐性が高く、優れたRNA干渉効果を奏することができる新規な二本鎖RNAを提供することを目的とする。更に、本発明は、優れたRNA干渉効果と機能性分子に基づく有用効果とを兼ね備えた機能性分子修飾型二本鎖RNAを提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねたところ、標的遺伝子中の標的配列に相補的な塩基配列を含むセンス鎖RNA、及び該センス鎖RNAに相補的な塩基配列を含むアンチセンス鎖RNAを有し、標的遺伝子の発現を抑制できる二本鎖RNAにおいて、下記(1)〜(4)の構成を具備させることによって、ヌクレアーゼ耐性が高く、一層優れたRNA干渉効果を奏するRNAを獲得できることを見出した。また、当該二本鎖RNAにおいて、置換基として、コレステロールやペプチド等の機能性分子を有する基を採用することにより、優れたRNA干渉効果に加えて、当該機能性分子に基づく有用効果とを兼ね備えた機能性分子修飾型の二本鎖RNAを構築できることを見出した。
(1)前記センス鎖RNAの5’末端側が平滑末端である。
(2)前記センス鎖RNAが25〜27個のヌクレオチドからなる。
(3)前記センス鎖RNAの5’末端側から1〜6番目のヌクレオチドの少なくとも1つに対してのみ置換基が結合している。
(4) 前記センス鎖RNAに結合している前記置換基が、アミノアルキル基、チオアルキル基、コレステロールを有する基、ペプチドを有する基、芳香族化合物を有する基、ポリエチレングリコールを有する基、及び核酸を有する基よりなる群から選択される少なくとも1種である。
本発明は、かかる知見に基づいて、更に改良を重ねることにより完成したものである。即ち、本発明は、下記に掲げる修飾型2本鎖RNAを提供する。
項1. 標的遺伝子中の標的配列に相補的な塩基配列からなるセンス鎖RNA、及び該センス鎖RNAに相補的な塩基配列を有するアンチセンス鎖RNAを有し、且つ前記標的遺伝子の発現を抑制できる二本鎖RNAであって、下記(1)〜(4)の特徴を備えている修飾型2本鎖RNA:
(1)前記センス鎖RNAの5’末端側が平滑末端である。
(2)前記センス鎖RNAが25〜27個のヌクレオチドからなる。
(3)前記センス鎖RNAの5’末端側から1〜6番目のヌクレオチドの少なくとも1つに対してのみ置換基が結合している。
(4)前記センス鎖RNAに結合している前記置換基が、アミノアルキル基、チオアルキル基、コレステロールを有する基、ペプチドを有する基、芳香族化合物を有する基、ポリエチレングリコールを有する基、及び核酸を有する基よりなる群から選択される少なくとも1種である。
項2. 前記センス鎖RNAの5’末端側から1〜4番目のヌクレオチドに、前記置換基が結合している、項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
項3. 前記センス鎖RNAの5’末端側から1番目のヌクレオチドにのみ1つの前記置換基が結合している、項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
項4. 前記置換基が、炭素数1〜40のアミノアルキル基である、項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
項5. 前記置換基が、炭素数1〜40のチオアルキル基である、項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
項6. 前記置換基が、コレステロールにリンカーが結合した基である、項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
項7. 前記置換基が、3〜40個のアミノ酸残基から構成されるペプチドにリンカーが結合した基である、項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
項8. 前記置換基が、ベンゼン、フェノール、又はナフタレンに、リンカーが結合した基である、項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
項9. 前記置換基が、平均重合度7〜200のポリエチレングリコールにリンカーが結合した基である、項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
項10. 前記置換基が、塩基数5〜50のDNA又は塩基数5〜50の2'-O-Me RNAである、項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
項11. 前記置換基が、塩基数5〜50のDNA又は塩基数5〜50の2'-O-Me RNAであり、更に、前記DNA又2'-O-Me RNAに相補的なヌクレオチド配列であり、且つ該配列の末端ヌクレオチドに機能性分子が結合した核酸コンジュゲートが、前記基のDNA又2'-O-Me RNAにハイブリダイズしている、項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
項12. 前記センス鎖RNAが27個のヌクレオチドからなるものである、項1乃至12のいずれかに記載の修飾型2本鎖RNA。
項13. 前記センス鎖RNA及び前記アンチセンス鎖RNAが共に27個のヌクレオチドからなる、項1乃至12のいずれかに記載の修飾型2本鎖RNA。
項14. 前記センス鎖RNAが25個のヌクレオチドからなり、前記アンチセンス鎖RNAが23個のヌクレオチドからなる、項1乃至12のいずれかに記載の修飾型RNA。
本発明の修飾型2本鎖RNAは、21〜27個のヌクレオチドからなるセンス鎖RNAの5’末端側のみがアミノアルキル基やチオアルキル基等の置換基で修飾されており、これによって飛躍的にRNA干渉効果が向上している。また、本発明の修飾型2本鎖RNAは、ヌクレアーゼ耐性も高く、かつRNA干渉効果の持続性も優れている。
また、本発明の修飾型2本鎖RNAによれば、コレステロールなどの比較的大きな分子をセンス鎖RNAの5’末端側に結合していてもDicerによるプロセシングやRISCとの複合体を妨げておらず、高いRNA干渉効果を保持できる。
更に、センス鎖RNAの5’末端側にコレステロールやペプチドで修飾されている本発明の修飾型2本鎖RNAは、既存の遺伝子導入剤を使用しなくてもRNA干渉効果を奏することができるので、医薬への応用に大きく貢献できる。
また、本発明修飾型2本鎖RNAが、センス鎖RNAの5’末端に核酸を有する基を結合したものである場合、当該核酸と相補的な塩基配列を有するDNAを更にハイブリダイズさせて複合体を形成させることが可能になる。このような形態の本発明の修飾型2本鎖RNAは、当該DNAに基づく更なる有用機能を付与することもできる。
このように、本発明の修飾型2本鎖RNAによれば、高いRNA干渉効果に加えて、5’末端側に結合した置換基に基づく機能をも発揮できる高機能型RNA干渉材料が構築できる。
本発明の修飾型2本鎖RNAは、25〜27個の塩基から構成され、標的遺伝子中の標的配列に相補的な塩基配列であるセンス鎖RNAを含む。
ここで、標的遺伝子とは、RNA干渉効果によって遺伝子発現の抑制対象となる遺伝子である。本発明の修飾型RNAにおいて、標的対象遺伝子については、特に制限されず、該修飾型RNAの用途に基づいて適宜選択することができる。
標的遺伝子中の標的配列については、RNA干渉効果によって遺伝子発現を抑制可能な配列である限り特に制限されず、公知の方法で、具体的には、NCBIのBLASTサーチ等を用いて適宜決定することができる。例えば、標的遺伝子のコード領域(ORF)の開始コドンから50〜100塩基下流のエキソン部分にある塩基"AA"に続く19〜30塩基からなる領域であって、GC含有量が50%前後の領域を標的配列とすればよい。このような標的配列に対する相補鎖を採用することで、優れたRNA干渉効果を獲得することが、当業界で経験的に明らかにされている。また、例えば、上記標的配列は、IDT社(Integrated DNA Technologies, INC)のマニュアル(Dicer Substrate RNAi Design)に従って設定することが出来る。また最近では、(i)アンチセンス鎖RNAの5’末端がA/Uペアであり、(ii)センス鎖RNAの5’末端がG/Cペアであり、(iii)アンチセンス鎖RNAの5’末端側に5つ程度のA/Uペアがあり、且つ(vi)2本鎖中に9つ以上のG/Cペアが無い2本鎖RNAを設計することで高いRNA干渉効果をもつ2本鎖RNAをデザインできると報告されている(Ui-Tei et. al, Nucleic Acids Res., 32, 936-948 (2004))。
本発明の修飾型2本鎖RNAは、以下説明する(1)〜(4)の構成を具備することを特徴とする。
構成(1)
本発明の修飾型2本鎖RNAにおいて、前記センス鎖RNAの5’末端側が平滑末端である。即ち、本発明の修飾型2本鎖RNAは、センス鎖RNAに対して、センス鎖RNAの5’末端側が平滑末端(ブランドエンド)となるように、アンチセンス鎖RNAがハイブリダイズすることにより、二本鎖を形成している。ここで、センス鎖RNAの5’末端側が平滑末端となる構造とは、センス鎖RNAの5’末端のみならず、アンチセンス鎖RNAの3’末端もダングリングエンドを有していない構造を意味する。
構成(2)
本発明の修飾型2本鎖RNAにおいて、前記センス鎖RNAは25〜27個のヌクレオチドからなる。即ち、本発明の修飾型2本鎖RNAにおけるセンス鎖RNAは、上記標的配列に対する25〜27塩基長の相補鎖である。上記センス鎖を構成するヌクレオチド数としては、好ましくは25又は27個、更に好ましくは27個が挙げられる。なお、ここでいうセンス鎖RNAのヌクレオチド数は、標的遺伝子中の上記標的配列に相補的な塩基配列を構成するヌクレオチドの数を意味し、センス鎖RNAが置換基としてDNAやPNA等の核酸を有する場合には、これらの置換基を構成するヌクレオチドの数を含まない。
構成(3)
本発明の修飾型2本鎖RNAにおいて、前記センス鎖RNAの5’末端側から1〜6番目のヌクレオチドの少なくとも1つに対してのみ置換基が結合している。つまり、本発明の修飾型2本鎖RNAにおいて、上記センス鎖RNAの5’末端側以外の部位には、置換基は結合していない。即ち、上記センス鎖RNAの5’末端側以外の部分、及びアンチセンス鎖RNA部分は置換基によって置換されておらず、ヌクレオチドのみから構成される。このように、上記センス鎖RNAの5’末端側にのみ置換基が結合していることによって、格段に優れたRNA干渉効果を発現させることが可能になる。
上記センス鎖RNAにおいて、上記置換基の結合対象となるヌクレオチドは、上記センス鎖RNAの5’末端側から1〜6番目のヌクレオチドであれば特に制限されないが、好ましくは5’末端側から1〜4番目のヌクレオチド、更に好ましくは5’末端側から1及び/又は2番目のヌクレオチド、特に好ましくは5’末端(5’末端側から1番目)のヌクレオチドである。
また、上記置換基の結合部位については、特に限定されるものではないが、上記置換基が、上記センス鎖RNAの所定のヌクレオチドのリン酸部分の水酸基を構成する水素原子と置換されて結合していることが好ましい。
本発明の修飾型RNAに結合した上記置換基の数としては、特に制限されないが、例えば1〜3個、好ましくは1又は2個、更に好ましくは1個が例示される。
構成(4)
本発明の修飾型2本鎖RNAにおいて、前記センス鎖RNAの5’末端に結合している置換基は、アミノアルキル基、チオアルキル基、コレステロールを有する基、ペプチドを有する基、芳香族化合物を有する基、ポリエチレングリコールを有する基、及び核酸を有する基よりなる群から選択される少なくとも1種である。
上記アミノアルキル基としては、炭素数1〜40、好ましくは炭素数2〜20、更に好ましくは炭素数4〜12のアミノアルキル基が例示される。
上記チオアルキル基としては、炭素数1〜40、好ましくは炭素数2〜20、更に好ましくは炭素数4〜12のチオアルキル基が例示される。
上記コレステロールを有する基としては、コレステロールにリンカーが結合した基が例示される。この場合、リンカーがコレステロールとセンス鎖RNAの5’末端とを連結することになる。
上記ペプチドを有する基としては、例えば、3〜40個、好ましく6〜30個、更に好ましくは8〜25個のアミノ酸残基から構成されるペプチドにリンカーが結合している基が例示される。この場合、リンカーがペプチドとセンス鎖RNAの5’末端とを連結することになる。本発明に使用されるペプチドとしては、例えば、R8、核局在化シグナルペプチド配列(HIV-1 TatやSV40T抗原等)、核外移行性シグナルペプチド(HIV-1 RevやMAPKK等)、細胞膜融合ペプチド等が挙げられる。
上記芳香族化合物を有する基としては、例えば、ベンゼン、フェノール、又はナフタレンに、リンカーが結合した基が例示される。この場合、リンカーが芳香族化合物とセンス鎖RNAの5’末端とを連結することになる。
上記ポリエチレングリコールを有する基としては、例えば、平均重合度7〜200、好ましくは10〜150、更に好ましくは20〜100のポリエチレングリコールにリンカーが結合した基が例示される。この場合、リンカーがポリエチレングリコールとセンス鎖RNAの5’末端とを連結することになる。
上記核酸を有する基としては、例えば、塩基長が5〜50(好ましくは5〜25)のDNA、塩基長が5〜50(好ましくは5〜25)の2’−0Me修飾RNA(RNAを構成するヌクレオチド残基の2’部位の水酸基がメトキシ基に置換されている修飾RNA)、又はこれらにリンカーが結合した基が例示される。この場合、DNA又は2’−0Me修飾RNAの3’末端が、直接又はリンカーを介して、センス鎖RNAの5’末端と結合することになる。置換基が核酸を有する基である場合、当該置換基中の核酸と相補的なヌクレオチド配列を有する核酸分子を、又は当該置換基中の核酸と相補的なヌクレオチド配列を有する核酸に機能性分子を結合させた核酸コンジュゲートを、上記置換基中の核酸とハイブリダイズさせることもできる。このように他の核酸分子又は核酸コンジュゲートを置換基中の核酸とハイブリダイズさせることにより、本発明の修飾型2本鎖RNAに、他の核酸分子又は核酸コンジュゲートに基づく有用機能を付加させることもできる。上記核酸コンジュゲートに使用される機能性分子としては、例えば、ベンゼン、フェノール、又はナフタレン等の芳香族化合物;パルミチン酸、ラウリン酸等の炭素数12〜16の脂肪酸;R8、核局在化シグナルペプチド配列(HIV-1 TatやSV40T抗原等)、核外移行性シグナルペプチド(HIV-1 RevやMAPKK等)、細胞膜融合ペプチド等等のペプチドが挙げられる。上記核酸コンジュゲートにおいて、DNAと機能性分子はリンカーを介して結合していればよい。
ここで、リンカーとしては、官能基を2つ含むリンカーであれば特に制限されないが、例えば、N-スクシニミジル=3-(2-ピリジルジチオ)プロピナート、N-4-マレイミド酪酸、S-(2-ピリジルジチオ)システアミン、ヨードアセトキシスクシンイミド、N-(4-マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミド、N-[5-(3’-マレイミドプロピルアミド)−1−カルボキシペンチル]イミノジアセティクアシッド、N-(5-アミノペンチル)-イミノジアセテックアシッド等を使用できる。
上記のものの他に、上記リンカーとして、下記の構造のものを使用することもできる。
Figure 2008167739
上記一般式(L-4)〜(L-21)、において、n1は、1〜40の整数、好ましくは2〜20の整数、更に好ましくは2〜12の整数を示す。
また、上記一般式(L-22)及び(L-23)、において、n2は、1〜20の整数、好ましくは1〜10の整数、更に好ましくは1〜6の整数を示す。
上記一般式(L-4)〜(L-23)に示すリンカーは、その右側又は左側のいずれにセンス鎖RNA(又は核酸コンジュゲートの場合は核酸)が結合していてもよい。好ましくは右側に上記センス鎖RNA(又は核酸コンジュゲートの場合は核酸)の所定の部位が結合するように構成されているものである。
上記リンカーは、結合させる化合物の種類に応じて適宜選択して使用すればよい。例えば、コレステロールを有する基で使用するリンカーとしては、一般式(L-22)又は(L-23)のリンカー、特に一般式(L-22)のリンカーが好適である。
上記置換基の中でも、更なる新たな機能性を付加するという観点から、好ましくはコレステロールを含む基、ペプチドを含む基又は核酸を含む基である。上記置換基として核酸(特にDNA)を含む基を採用すると、当該核酸と相補的な塩基配列を有するDNAやRNAを更にハイブリダイズさせて複合体を形成させることが可能になり、当該DNAに基づく更なる有用機能を本発明の修飾型RNAに備えさせることができる。また、上記置換基として、コレステロールやペプチドを含む基を採用すると、遺伝子導入剤を使用しなくても本発明の修飾型RNAを細胞内に導入可能になるという利点を獲得できる。
また、上記置換基の中でも、飛躍的にRNA干渉効果を向上させるという観点から、アミノアルキル基又はチオアルキル基が挙げられる。また、置換基がアミノアルキル基又はチオアルキル基である場合、そのアミノ基又はチオール基を利用して、膜透過性ペプチド、糖、タンパク質等の機能性分子を共有結合で結合させることができるので、2本鎖RNAに様々な機能性を付与できるという利点も得られる。
上記センス鎖RNAの5’末端側のヌクレオチドへの置換基の結合は、使用する置換基の種類等に応じて、公知の化学合成法に従って実施される。
本発明の修飾型2本鎖RNAは、上記(1)〜(4)の構成を具備する限り、アンチセンス鎖を構成するヌクレオチドの数については特に制限されない。言い換えれば、当該アンチセンス鎖RNAは、上記センス鎖RNAの5’末端側(即ち、アンチセンス鎖RNAの3’末端側)を平滑末端にし、且つ上記センス鎖RNAとハイブリダイズして二本鎖を形成可能である限り、アンチセンス鎖RNAを構成するヌクレオチドの数については特に制限されない。例えば、当該アンチセンス鎖RNAとしては23〜29個、好ましくは23〜27個、更に好ましくは27個のヌクレオチドから構成されるものが例示される。本発明の修飾型2本鎖RNAにおいて、センス鎖RNAの5’末端側が平滑末端である限り、センス鎖RNAの3’末端又はアンチセンス鎖RNAの5’末端はダングリングエンドを形成していても良い。
本発明の修飾型2本鎖RNAにおいて、一層優れたRNA干渉効果を獲得させるという観点から、より好適なセンス鎖RNAとアンチセンス鎖RNAの組み合わせとしては、27個のヌクレオチドからなるセンス鎖RNAと27個のヌクレオチドからなるアンチセンス鎖RNAの組み合わせ;25個のヌクレオチドからなるセンス鎖RNAと23個のヌクレオチドからなるアンチセンス鎖RNAの組み合わせ;27個のヌクレオチドからなるセンス鎖RNAと23個のヌクレオチドからなるアンチセンス鎖RNAの組み合わせが挙げられる。中でも、27個のヌクレオチドからなるセンス鎖RNAと27個のヌクレオチドからなるアンチセンス鎖RNAの組み合わせ、及び25個のヌクレオチドからなるセンス鎖RNAと23個のヌクレオチドからなるアンチセンス鎖RNAの組み合わせは好適であり、更には27個のヌクレオチドからなるセンス鎖RNAと27個のヌクレオチドからなるアンチセンス鎖RNAの組み合わせが特に好適である。
なお、前述するように、本発明の修飾型2本鎖RNAは、センス鎖RNAの5’末端側が平滑末端である。それ故、例えば、本発明の修飾型RNAが27個のヌクレオチドからなるセンス鎖RNAと27個のヌクレオチドからなるアンチセンス鎖RNAの組み合わせの場合には、センス鎖の3’末端側及び5’末端側の双方において平滑末端の構造をとる。また、例えば、本発明の修飾型2本鎖RNAが25個のヌクレオチドからなるセンス鎖RNAと23個のヌクレオチドからなるアンチセンス鎖RNAの組み合わせの場合には、センス鎖RNAの5’末端側が平滑末端であり、センス鎖RNAの3’末端に2個のヌクレオチドからなるダングリングエンドが有する構造をとる。
本発明の修飾型2本鎖RNAは、上記構造の置換基を有するセンス鎖RNA、及び上記構造のアンチセンス鎖RNAを合成し、これらのセンス鎖RNA及びアンチセンス鎖RNAを公知の方法に従ってハイブリダイズさせることにより、調製される。
本発明の修飾型2本鎖RNAは、細胞内に導入されることにより使用される。本発明の修飾型RNAについては、従来siRNAとして使用されているRNAと同様の方法で、目的の細胞内に導入され使用される。
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。これらの実施例は、単なる例示であり、本発明を限定するものではない。
実施例1A 末端アミノ修飾27nt dsRNA
ウミシイタケルシフェラーゼと相同配列を持ち、ウミシイタケルシフェラーゼの遺伝子発現を抑制できる27塩基対からなる2本鎖(以下、27nt dsRNAと表記する)と、該27nt dsRNAとウミシイタケルシフェラーゼ標的部位が同一である21塩基長のsiRNA(以下、21siRNAと表記する)を用いて、以下の実験を行った。なお、27nt dsRNAは、ダングリングエンド(1本鎖領域)を持たない完全2本鎖RNAであり、21siRNAは3’末端に2塩基のダングリングエンドを持つ2本鎖RNAである。使用した27nt dsRNA及び21siRNAの配列は、以下の通りである。
27nt dsRNA センス鎖 :5’-CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC-3’
アンチセンス鎖:3’-GACCGGAAAGUGAUGAGGAUGCUCGUG-5’
21siRNA センス鎖 :5’-GGCCUUUCACUACUCCUACGA-3’
アンチセンス鎖:3’-GACCGGAAAGUGAUGAGGAUG−5’
1.末端アミノ修飾27nt dsRNAの構造
27nt dsRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖の5’末端又は3’末端をアミノ化した末端アミノ修飾27nt dsRNAを合成した。合成した末端アミノ修飾27nt dsRNAの構造を図1に示す。具体的な合成方法を以下に示す。まず、末端アミノ修飾RNAは、1本鎖の状態のRNA(林化成株式会社より購入;HPLC精製、MALDI-TOF MS解析済み)を用い、5’末端アミノ化は5’-Amino-Modifier C6 (Glen Research)、3’末端アミノ化は3’-Amino-Modifer C7 GPG (Glen Research)を用いて合成した。合成された末端アミノ修飾27nt dsRNAは、5’末端がアミノ化されたものには該末端(5’末端側から1番目のヌクレオチド)に−(CH2)6−NH2が結合されており、また3’末端がアミノ化されたものには該末端(3’末端側から1番目のヌクレオチド)に−(CH2)7−NH2が結合されている。合成した1本鎖RNAは、UVスペクトル検出器を用い、260nmの吸光度を測定することにより濃度を算出した。また、universal buffer(林化成株式会社)中、同モルのセンス鎖およびアンチセンス鎖1本鎖RNAを混合し、92℃で2分間加熱した後、4℃まで徐々に温度を下げることで作成した。末端が修飾されていない天然型27nt dsRNAを27A;センス鎖、アンチセンス鎖の両方の5’末端にアミノ基をもつ27nt dsRNAを27B;アンチセンス鎖の5’末端のみをアミノ化した27nt dsRNAを27C;センス鎖の5’末端のみをアミノ化した27nt dsRNA(本発明の修飾型RNA)を27Dとした。同様に、センス鎖、アンチセンス鎖の両方の3’末端にアミノ基をもつ27nt dsRNAを27E、アンチセンス鎖の3’末端のみをアミノ化した27nt dsRNAを27F、センス鎖の3’末端のみをアミノ化した27nt dsRNAを27Gとした。また、センス鎖の5’末端とアンチセンス鎖の3’末端をアミノ化した27nt dsRNAを27H、センス鎖の3’末端とアンチセンス鎖の5’末端をアミノ化した27nt dsRNAを27Iとした。
2.末端アミノ修飾27nt dsRNAの分解酵素耐性
末端アミノ修飾27nt dsRNA(27B〜27I)のヌクレアーゼ耐性を検討した。実験は、最終濃度が2 μMになるよう調整した末端アミノ修飾27nt dsRNAを10%FBS(三光純薬株式会社)を含むRPMI-1640培地(インビトロジェン)中(最終量110μl)、37℃でインキュベートし、0h、0.5h、1h、2h、4h、6h、8h、12h、24h、48h後にそれぞれ10μl取り、2μlのローデングダイを含むサンプルチューブに添加した。分解反応を停止させる為、サンプル採取後すぐ液体窒素中にて凍結し、−20℃にて保存した。得られた産物を20% ポリアクリルアミドゲルを用い250Vで70分間サンプルを電気泳動した。その後、銀染色キット(GEヘルスケア バイオサイエンス)で産物を染色し(染色条件は製品マニュアル参照)、ChemiImager 4000(Alpha Innotech corporation)でゲル解析を行った。5’末端のみをアミノ修飾した27nt dsRNA (27B, 27C, 27D)のヌクレアーゼ耐性結果を図2に、3’末端のみをアミノ修飾した27nt dsRNA(27E, 27F, 27G)の結果を図3に、5’末端および3’末端の両方にアミノ修飾した27nt dsRNA(27H、27I)の結果を図4に示す。また比較として前述した21siRNAおよび天然型27nt dsRNA(27A)のヌクレアーゼ耐性結果も同時に示す。その結果、21siRNAは速やかに分解されていたのに対し、いずれの末端アミノ修飾27nt dsRNAも非常に高いヌクレアーゼ耐性を保有していた(図2〜4)。それぞれの半減期は、21siRNAで約1.6時間、27A で約83時間、27Bで約92時間、27Cで約92時間、27Dで約74時間、27E で約100時間、27Fで約64時間、27Gで約69時間、27H で約125時間、27Iで約105時間であった。いずれの末端アミノ修飾27nt dsRNAも21siRNAに比べ50〜70倍程度高い安定性を保有していることが明らかとなった。
3.末端アミノ修飾27nt dsRNAのDicerによるプロセシング
次に、それぞれのアミノ修飾27nt dsRNAのDicerによるプロセシングを検討した。Dicerによる切断実験は、20mM Tris-HCl(pH 8.0), 15 mM NaCl, 2.5mM Mg2Cl溶液中、0.5 UのリコンビナントDicer(Gene Therapy Systems)と最終濃度2 μMになるよう調整したアミノ修飾27nt dsRNAをサンプルチューブに10 μl準備し、37℃に設定したインキュベーター中、12時間インキュベートした。その後、Dicerによる切断反応を停止させる為に、2μlのDicer Stop Solution (Gene Therapy Systems)を反応溶液に加え、更に2μlのローデングダイを加えた。得られた産物を20% ポリアクリルアミドゲルを用い250Vで70分間サンプルを電気泳動した。その後、銀染色キット(GEヘルスケア バイオサイエンス)で産物を染色し(染色条件は製品マニュアル参照)、ChemiImager 4000(Alpha Innotech corporation)でゲル解析を行った。また、比較として21siRNA及び天然型27nt dsRNA(27A)のDicerによるプロセシング結果も同時に図5に示す。
その結果、天然型27nt dsRNAである27Aや5’末端をアミノ化した27B、27C、27Dは、リコンビナントDicer存在下において21siRNAと同様の位置にバンドが確認され、Dicerの切断によって2塩基のダングリングエンドを含む21塩基長のsiRNAが生成していることが強く示唆された。また、5’末端に修飾基を導入してもDicerによる切断を阻害していないことが明らかとなった。同様に、アンチセンス鎖の3’末端のみをアミノ化した27F、センス鎖の5’末端及びアンチセンス鎖の3’末端の両末端をアミノ化した27H はDicerの働きにより21塩基長のsiRNAまでプロセシングされているのが確認された。しかしながら、センス鎖の3’末端のみをアミノ化した27G や、センス鎖の3’末端およびアンチセンス鎖の5’末端をアミノ化した27I は21siRNAまでプロセシングされたものとプロセシングを受けてないものの2つのバンドが確認された。更に、センス鎖、アンチセンス鎖の3’末端をアミノ化した27E はDicerによるプロセシングを全く受けていないことが明らかとなった。この結果より、Dicerによる切断は、3’末端を修飾した場合、特にセンス鎖の3’末端を修飾した場合、大きく阻害されていることが明らかとなった。
4.末端アミノ修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果
つぎにそれぞれの末端アミノ修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果をウミシイタケルシフェラーゼをターゲットとして評価した。実験前に1x105cell/mlに調整したHeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞、東北大学加齢医学研究所)を96wellプレート上にそれぞれ100μl撒き、37℃で一晩インキュベートした。翌日、ウェル上の古い培地を取り除き、抗生物質を含ない新しい培地をウェルにそれぞれ80 μl加え、ホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼを発現するベクター(psiCHECKTM-2 Vector: プロメガ)とLipofectamineTM 2000 (商品名、インビトロジェン)の複合溶液を10μlずつHeLa細胞が入ったそれぞれのウェルに加えた。ここで発現ベクターは1ウェルあたり0.02μgになるように、またLipofectamineTM 2000は1ウェルあたり0.2μlになるよう設定し、OptiMem(インビトロジェン)で必要量を調整した。また、複合体を形成させる為に、発現ベクターとLipofectamineTM 2000をOptiMemを用いて混合した後、室温で30分間インキュベートした。複合溶液を加えた後、細胞を5% CO2 存在下、37℃で4時間インキュベートした。その後、ウミシイタケルシフェラーゼの遺伝配列と相同的なアンチセンス配列を含む21siRNAおよび27nt dsRNA、末端アミノ修飾27nt dsRNA を最終濃度が0nM, 0.2nM, 0.5nM, 1nM, 2nM, 5nM, 10nM, 20nM, 50nM, 100nMになるようLipofectamineTM 2000 (インビトロジェン) と複合体を形成させ、10μlの複合体溶液を発現ベクターを導入したHeLa細胞に加えた。ここで、1ウェルあたりの最終量は100 μlとなる。RNAとLipofectamineTM 2000の複合溶液は、1ウェルあたり5 μlのRNA水溶液と5 μlのLipofectamineTM 2000 (0.2μl) OptiMem溶液を混合し、30分間室温でインキュベートすることにより作成した。RNAを導入させた後、48時間インキュベートし、Dula-GloTMLuciferase Assay System(プロメガ)を用いてホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼの発現量をルミノメータ(MicroLumat LB96p: BERTHOLD)で測定し、ホタルルシフェラーゼの発現量をコントロールとしてウミシイタケルシフェラーゼの発現抑制効果を算出した。
図6に、1 nM濃度のときの末端アミノ修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果の結果を示す。図6の縦軸には、21siRNAを導入した際のウミシイタケルシフェラーゼ発現量に対する、各末端アミノ修飾27nt dsRNAを導入した際のウミシイタケルシフェラーゼ発現量の相対値(%;21siRNAの場合のウミシイタケルシフェラーゼ発現量を100%として換算)を示す。
その結果、27nt dsRNAのセンス鎖の5’末端のみをアミノ化した27Dは、21siRNA や27Aに比べ飛躍的に高いRNA干渉効果が観測され非常に高い遺伝子発現抑制能を持っていることが明らかとなった。一方、27D以外の末端アミノ修飾27nt dsRNAでは、21SiRNAと同程度又はこれに劣るRNA干渉効果しか示さなかった。
今回得られた結果から、細胞内でのDicerによる切断効率、その後の21siRNAの構造、RISCとの複合体形成効率、mRNA切断効率などがRNA干渉効果に大きく影響しており、27nt dsRNAのセンス鎖の5’末端のみにアミノ修飾を施すことにより飛躍的にRNA干渉効果が向上するという新たな知見が得られた。
5.末端アミノ修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果の持続性
次に、末端アミノ修飾型 27nt dsRNAのRNA干渉効果の持続性を検討した。RNA干渉効果の持続性を評価するために、50nMに調整した末端アミノ修飾型27nt dsRNAをそれぞれ2日間、4日間、7日間、HeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞、東北大学加齢医学研究所)とインキュベートし、その後のRNA干渉効果を追跡した。遺伝子発現抑制実験で用いたターゲットはウミシイタケルシフェラーゼで、測定の48時間前にホタル及びウミシイタケルシフェラーゼの遺伝子をもつベクター(psiCHECKTM-2 Vector: プロメガ)をLipofectamineTM 2000を用い細胞へ導入させた。また、末端アミノ修飾27nt dsRNAもLipofectamineTM 2000を用いて細胞内へ導入させておいて、2日おきに培地交換を行った。遺伝子発現抑制解析は、Dula-GloTMLuciferase Assay System(プロメガ)を用いてホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼの発現量をルミノメータで測定し、ホタルルシフェラーゼの発現量をコントロールとしウミシイタケルシフェラーゼの発現抑制効果を算出した。ここで使用した発現ベクターやRNAの導入方法は前述と同様の方法でLipofectamineTM 2000と複合体を形成させ、それぞれ10 μlのサンプルを細胞に添加した。また、細胞溶液の最終容量は100 μlになるよう調整した。また、比較として21siRNAおよび天然型27nt dsRNA(27A)も同様
に検討した。
得られた結果を図7に示す。その結果21siRNAは、細胞に添加後2日目には高いRNA干渉効果が観測されており、ウミシイタケルシフェラーゼの発現を80%以上抑制していたが、細胞添加後4日目にはRNA干渉効果が激減し、7日目には40%程度しか遺伝子発現を抑制することが出来なかった。これに対して、センス鎖の5’末端をアミノ基で修飾した27Dでは、高い遺伝子発現抑制効果の持続性を示していた。
6.分解酵素耐性とRNA干渉効果の相関性
次に、21siRNA、天然型・末端修飾型27nt dsRNAを10%FBS(三光純薬株式会社)を含むMEM(Minimum Essential Medium;インビトロジェン)培地中において37℃で48時間インキュベートし、その後のRNA干渉効果を2本鎖RNAの濃度を0.5nM又は1nMに設定して測定した。評価はウミシイタケルシフェラーゼの発現量を解析することにより行った。実験は最終濃度が2μMになるよう調整した21siRNAおよび天然型・末端アミノ修飾型27nt dsRNAを10%FBSを含む倍地を用いて準備し、ヌクレアーゼ分解反応を行う為に37℃で48時間インキュベートした。その後分解産物を確認する為、サンプル中から10μl取り20% ポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析を行った。泳動条件、染色条件は前述と同様の方法で行った。残りのサンプルは、RNA干渉効果を観察する為、最終濃度が0.5nM又は1nMになるようOptiMemで調整した後、前述と同様の方法でLipofectamineTM 2000との複合体を形成させ、前述と同様の方法でルシフェラーゼ発現ベクター(psiCHECKTM-2 Vector: プロメガ)を添加したHeLa細胞に10 μl加えた。その後48時間インキュベートし、ルシフェラーゼの発現をルミノメーターで測定した。図8には、10%血清を含む培地中で48時間インキュベート後のゲル電気泳動結果と、その後のウミシイタケルシフェラーゼを標的としてHeLa細胞と48時間インキュベートしたときのRNA干渉効果の結果を示す。
その結果、10%FBSを含むMEM培地中で48時間インキュベート後のゲル電気泳動解析において21siRNAはコントロールの21siRNAの位置にバンドが確認されずそのほとんどが分解されていることが明らかになった。これに対して、図6で高いRNA干渉効果が観測された27Dは、ヌクレアーゼ処理後も優れた遺伝子抑制能を保有しており、0.5 nMで85%程度のウミシイタケルシフェラーゼ発現を抑制していた(天然型27nt dsRNAは約50%の発現抑制)。対照的に図6において天然型の27nt dsRNAに比べRNA干渉効果が減少していた27Cや27Eは、高いヌクレアーゼ耐性は保有するものの、そのRNA干渉効果は非常に低いものであった。この結果からも、高いRNA干渉効果を獲得させる為には、高いヌクレアーゼ耐性を保有させることや導入効率を向上させることは重要であるが、RNA干渉効果を効率的に引き起こす2本鎖RNAも特に重要であることが明らかとなった。
実施例1B 末端アミノ修飾27nt dsRNA
VEGF(vascular endothelial growth factor: 血管内皮成長因子)と相同配列を持ち、VEGFの遺伝子発現を抑制できる27及び21塩基長のセンス鎖RNAと27及び21塩基長のアンチセンス鎖RNAの2本鎖RNAをデザインした。これらの2本鎖RNAを用いて、以下の実験を行った。なお、27nt dsRNAは、ダングリングエンド(1本鎖領域)を持たない完全2本鎖RNAであり、21siRNAは3’末端に2塩基のダングリングエンドを持つ2本鎖RNAである。使用した27nt dsRNA及び21siRNAの配列は、以下の通りである。
27nt dsRNA センス鎖 :5’- CUUCCUACAGCACAACAAAUGUGAAUG -3’
アンチセンス鎖:3’- GAAGGAUGUCGUGUUGUUUACACUUAC-5’
21siRNA センス鎖 :5’- UCCUACAGCACAACAAAUGUG-3’
アンチセンス鎖:3’- GAAGGAUGUCGUGUUGUUUAC−5’
1.末端アミノ修飾27nt dsRNAの構造
実施例1Aと同様の方法で、アミノ基は上記27nt RNAのセンス鎖の5’末端(5’末端側から1番目のヌクレオチド)においてのみ−(CH2)6−NH2が結合している末端アミノ修飾27nt dsRNAを合成した。
2.末端アミノ修飾27nt dsRNAによる癌細胞中VEGF発現阻害
末端を修飾していない21nt siRNA、末端を修飾していない27nt dsRNA(VEGF)、センス鎖の5’末端をアミノ化したNH2-27nt dsRNA(末端アミノ修飾27nt dsRNA)のVEGF遺伝子発現阻害効果をHeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞、東北大学加齢医学研究所)、Jurkat細胞(急性リンパ性白血病細胞、東北大学加齢医学研究所)、及びK-562細胞(慢性骨髄性白血病細胞、東北大学加齢医学研究所)を用いて評価した。また、VEGF遺伝子と相同な遺伝子配列を持たない2本鎖RNA(27nt dsRNA(Random)、21nt siRNA(Random))についても同様の評価を行った。
実験は以下の操作で行った。実験前に1x105 cell/mlに調整したHeLa細胞、2x105 cell/mlに調整したJurkat細胞及びK-562細胞を24wellプレート上にそれぞれ500μl撒き、37℃で一晩インキュベートした。翌日、ウェル上の古い培地を取り除き、抗生物質を含ない新しい培地をウェルにそれぞれ450 μl加えた。ここで、HeLa細胞はMEM培地、Jurkat細胞及びK-562 細胞はPRMI-1640培地を用いた。VEGFの遺伝配列と相同的なアンチセンス配列を含む2本鎖RNAを最終濃度が200nMになるようLipofectamineTM 2000 (インビトロジェン)と複合体を形成させ、50μlの2本鎖RNA溶液を450μlの上記細胞に加えた。ここで、1ウェルあたりの最終量は500 μlとなる。RNAとLipofectamineTM 2000の複合溶液は、1ウェルあたり25 μlのRNA水溶液と25 μlのLipofectamineTM 2000 (2μl) OptiMem溶液を混合し、30分間室温でインキュベートすることにより作成した。RNAを導入させた後、37℃で48時間、5%CO2存在下インキュベートした。インキュベート後、細胞をPBS(-)で3回洗浄し、RNeasy Plus Mini Kit (キアゲン)で細胞中のTotal-RNAを抽出した。その後、VEGFのmRNA量を測定するためにRT-PCR反応を行った。RT-PCR反応用としてQiagen OneStep RT-PCR Kit (キアゲン)を用い行い、VEGF用PCRプライマーとして、5’-CCC TGA TGA GAT CGA GTA CAT CTT-3’及び5’-ACC GCC TCG GCT TGT CAC-3’ を用いた。またコントロールとしてGADPH遺伝子を同様の方法で測定した。GAPDH用プライマーとして5’-GGAAAGCTGTGGCGTGATG-3’及び5’-CTGTTGCTGTAGCCGTATTC-3’を用いた。RT-PCR反応は、50℃で30分間RT(Reverse Transcripratase)反応を行い、PCR反応として92℃で30秒間2本鎖解離反応、55℃で30秒間アニーリング反応、68℃で45秒間伸長反応を25回〜28回(使用する細胞により異なる)繰り返し行い、最後に68℃で10分間インキュベートし、4℃まで温度を下げ反応を終了した。RT-PCRに用いた試薬、Total-RNA、プライマー等はQiagen OneStep RT-PCR Kit (キアゲン)の反応条件に従い作成した。RT-PCR反応後、ローディングダイを2μl加え、2%アガロースゲルでVEGF及びGADPHのmRNAからのRT-PCR産物を確認した。遺伝子発現抑制効果の評価は、コントロール細胞(2本鎖RNAを導入していない細胞)のVEGF遺伝子発現量を100としたときの、2本鎖RNA(非修飾、修飾を含む)を導入した細胞のVEGF発現量を測定することにより行った。また、各細胞間の発現量の誤差はコントロール遺伝子(GADPH)の遺伝子発現量で補正した。
図9〜図11に、VEGFをターゲットとしたときのアミノ修飾27nt dsRNA干渉効果及び非修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果の結果を示す。その結果、27nt dsRNAのセンス鎖の5’末端にアミノ基を修飾したNH2-27nt dsRNAは非修飾の21nt siRNA及び27nt dsRNAよりも高いRNA干渉効果を保有していることが確認された。また、その効果はHeLa細胞、Jurkat細胞、及びK-562細胞の全てで観測され、アミノ修飾27nt dsRNAが細胞種によらず高い遺伝子発現抑制能を保有していることが明らかとなった。一方、VEGF遺伝子と相同な遺伝子配列を持たない2本鎖RNA(27nt dsRNA(Random)、21nt siRNA(Random))を用いた場合はコントロール細胞と同レベルのVEGF遺伝子発現を示した。
実施例2 末端チオール修飾27nt dsRNA
1.末端チオール修飾27nt dsRNAの構造
実施例1Aにおいて使用した27nt dsRNAを用いて、27nt dsRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖の5’末端をチオール(SH)化した末端チオール修飾27nt dsRNAを合成した。合成した末端アミノ修飾27nt dsRNAの構造を図12に示す。具体的な合成方法を以下に示す。まず、末端チオール修飾RNAは、1本鎖の状態のRNA(林化成株式会社より購入;HPLC精製、MALDI-TOF MS解析済み)を用い、5’-Thiol-Modifier C6(Glen Research)を用いてDNA/RNA合成機で合成した。合成された末端チオール修飾27nt dsRNAは、5’末端(5’末端側から1番目のヌクレオチド)に−(CH2)6−SHが結合されている。合成した1本鎖RNAは、UVスペクトル検出器を用い、260nmの吸光度を測定することにより濃度を算出した。また、universal buffer(林化成株式会社)中、同モルのセンス鎖およびアンチセンス鎖1本鎖RNAを混合し、92℃で2分間加熱した後、4℃まで徐々に温度を下げることで2本鎖を作成した。27Jは、27nt dsRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖の5’末端をチオール化したもの;27Kは27nt dsRNAのアンチセンス鎖の5’末端のみをチオール化したもの;及び27L(本発明の修飾型RNA)はセンス鎖の5’末端のみをチオール化したものある。
2.末端チオール修飾27nt dsRNAの分解酵素耐性
このチオール修飾27nt dsRNAの10%血清中におけるヌクレアーゼ耐性を評価した。実験は、最終濃度が2 μMになるよう調整した末端チオール修飾27nt dsRNAを10%FBSを含むRPMI-1640培地中 (最終量110μl)、37℃でインキュベートし、0h、0.5h、1h、2h、4h、6h、8h、12h、24h、48h後にそれぞれ10μl取り、2μlのローデングダイを含むサンプルチューブに添加した。分解反応を停止させる為、サンプル採取後速やかに液体窒素中にて凍結し、−20℃にて保存した。得られた産物を20% ポリアクリルアミドゲルを用い250Vで70分間サンプルを電気泳動した。その後、銀染色キット(GEヘルスケア バイオサイエンス)で産物を染色し(染色条件は製品マニュアル参照)、ChemiImager 4000(Alpha Innotech corporation)でゲル解析を行った。
結果を図13に示す。その結果、チオール修飾した27nt dsRNAもアミノ化した修飾27ntdsRNAと同様に高い分解酵素耐性を保有していることが明らかになった。また、チオール化した修飾27nt dsRNAは、分子間でジチオール結合を形成しており、27K及び27Lではダイマー化したものが、27Jでは多分子化したものが観察された(図14参照)。
3.末端チオール修飾27nt dsRNAのDicerによるプロセシング
次に、チオール修飾27nt dsRNAのDicerによるプロセシングを検討した。Dicerによる切断実験は、20mM Tris-HCl(pH 8.0), 15 mM NaCl, 2.5mM MgCl2溶液中、0.5 UのリコンビナントDicer(Gene Therapy Systems)と最終濃度2 μMになるよう調整した末端チオール修飾27nt dsRNAをサンプルチューブに10 μl準備し、37℃に設定したインキュベーター中、12時間インキュベートした。その後、Dicerによる切断反応を停止させる為に、2μlのDicer Stop Solution (Gene Therapy Systems)を反応溶液に加え、更に2μlのローデングダイを加えた。得られた産物を20% ポリアクリルアミドゲルを用い250Vで70分間サンプルを電気泳動した。その後、銀染色キット(GEヘルスケア バイオサイエンス)で産物を染色し(染色条件は製品マニュアル参照)、ChemiImager 4000(Alpha Innotech corporation)でゲル解析を行った。また、コントロールとして21siRNAを用いて同様に実験を行った。
得られた結果を図15に示す。その結果27J、27K、27Lのすべてのチオール修飾27nt dsRNAにおいて21塩基長のsiRNA と同様の位置にバンドを確認し、Dicerによるプロセシングをうけていることが分かった。また、27Jにおける多分子化した27nt dsRNAや27K及び27Lにおけるダイマー化したものも、Dicerによるプロセシングを受け21塩基長のsiRNAに変化していた。
4.末端チオール修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果
つぎにそれぞれのチオール修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果をウミシイタケルシフェラーゼをターゲットとして評価した。実験前に1x105cell/mlに調整したHeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞、東北大学加齢医学研究所)を96wellプレート上にそれぞれ100μl撒き、37℃で一晩インキュベートした。翌日、ウェル上の古い培地を取り除き、抗生物質を含ない新しい培地をウェルにそれぞれ80 μl加え、ホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼを発現するベクター(psiCHECKTM-2 Vector: プロメガ))とLipofectamineTM 2000 (商品名、インビトロジェン)の複合溶液を10μlずつHeLa細胞が入ったそれぞれのウェルに加えた。ここで発現ベクターは1ウェルあたり0.02μgになるように、またLipofectamineTM 2000は1ウェルあたり0.2μlになるよう設定し、OptiMem(インビトロジェン)で必要量を調整した。また、複合体を形成させる為に、発現ベクターとLipofectamineTM 2000をOptiMemを用いて混合した後、室温で30分間インキュベートした。複合溶液を加えた後、細胞を5% CO2 存在下、37℃で4時間インキュベートした。その後、ウミシイタケルシフェラーゼの遺伝子配列と相同的なアンチセンス配列を含む21siRNA、27nt dsRNA、又は末端チオール修飾27nt dsRNAを最終濃度が0nM, 0.2nM, 0.5nM, 1nM, 2nM, 5nM, 10nM, 20nM, 50nM, 100 nMになるようLipofectamineTM 2000 (インビトロジェン)と複合体を形成させ、10μlの複合体溶液を発現ベクターを導入したHeLa細胞に加えた。ここで、1ウェルあたりの最終量は100μlとなる。RNAとLipofectamineTM 2000の複合溶液は、1ウェルあたり5 μlのRNA水溶液と5 μlのLipofectamineTM 2000(0.2 μl) OptiMem溶液を混合し、30分間室温でインキュベートすることにより作成した。RNAを導入させた後、48時間インキュベートし、Dula-GloTMLuciferase Assay System(プロメガ)を用いてホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼの発現量をルミノメータ(MicroLumat LB96p: BERTHOLD)で測定した。
RNA干渉効果はホタルルシフェラーゼの発現量をコントロールとしウミシイタケルシフェラーゼの発現量を算出した。図16に、1 nM濃度のときのチオール修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果の結果を示す。図13の縦軸には、21siRNAを導入した際のウミシイタケルシフェラーゼ発現量に対する、各末端チオール修飾27nt dsRNAを導入した際のウミシイタケルシフェラーゼ発現量の相対値(%;21siRNAの場合のウミシイタケルシフェラーゼ発現量を100%として換算)を示す。
その結果、特に27nt dsRNAのセンス鎖の5’末端をチオール基で修飾した27Lにおいて、非常に高いRNA干渉効果が観測された。また、このチオール修飾27nt dsRNAは、その濃度が0.5 nMと低濃度のときもウミシイタケルシフェラーゼの発現を80〜85%以上抑制しており、高いRNA干渉効果を示していることが明らかとなった。また、これらの結果はアミノ基を27nt dsRNAの末端に修飾したものの同様の実験結果と同じ傾向を示した。
5.末端チオール修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果の持続性
次にチオール修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果の持続性について検討した。RNA干渉効果の持続性を評価するために、50nMに調整した21siRNAおよび天然型・末端チオール修飾型27nt dsRNAをそれぞれ2日間、4日間、7日間、HeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞、東北大学加齢医学研究所)とインキュベートし、その後のRNA干渉効果を追跡した。遺伝子発現抑制実験で用いたターゲットはウミシイタケルシフェラーゼで、測定の48時間前にホタル及びウミシイタケルシフェラーゼの遺伝子をもつベクター(psiCHECKTM-2 Vector: プロメガ)をLipofectamineTM 2000を用い細胞へ導入させた。また、21siRNA、27nt dsRNAおよびチオール修飾27nt dsRNAもLipofectamineTM 2000を用いて細胞内へ導入させておき、2日毎に培地交換を行った。遺伝子発現抑制解析は、Dula-GloTMLuciferase Assay System(プロメガ)を用いてホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼの発現量をルミノメータで測定し、ホタルルシフェラーゼの発現量をコントロールとしウミシイタケルシフェラーゼの発現抑制効果を算出した。ここで使用した発現ベクターやRNAの導入方法は前述と同様の方法でLipofectamineTM 2000と複合体を形成させ、それぞれ10 μlのサンプルを細胞に添加した。また、細胞溶液の最終容量は100 μlになるよう調整した。
得られた結果を図17に示す。21siRNAは4日程度でRNA干渉効果が減少していた。これに対して、センス鎖の5’末端のみにチオール基で修飾した27Lは高いRNA干渉効果を示し、かつ、長時間の遺伝子発現抑制を維持できることが分かった。
実施例3 コレステロール修飾27nt dsRNA
1.末端コレステロール修飾2本鎖RNAの構造
実施例1Aにおいて使用した27nt dsRNAを用いて、27nt dsRNAのセンス鎖の5’末端(5’末端側から1番目のヌクレオチド)にコレステロールを有する基を結合させたコレステロール修飾27nt dsRNA (27M);及びセンス鎖の5’末端(5’末端側から1番目のヌクレオチド)にコレステロールを有する基が結合されてなり、且つアンチセンス鎖の5’末端(5’末端側から1番目のヌクレオチド)又は3’末端(3’末端側から1番目のヌクレオチド)にアミノ基を持つコレステロール修飾化27nt dsRNA(27N,27O)を合成した。また、実施例1Aにおいて使用した21siRNAを用いて、同様のコレステロールを有する基をセンス鎖RNAの5’末端に修飾したChol修飾21nt siRNA(21-Chol)も合成した。なお、ここで使用した「コレステロールを有する基」とは、以下の式で示される基である。
Figure 2008167739
合成した末端コレステロール修飾27nt dsRNA及び21nt siRNAの構造を図18に示す。具体的な合成方法を以下に示す。まず、末端コレステロール修飾RNAは、1本鎖の状態のRNA(林化成株式会社より購入;HPLC精製、MALDI-TOF MS解析済み)を用い、Cholesterl-TEG (Glen Research)を用いて、DNA/RNA合成機で合成した。また、5’末端又は3’末端へのアミノ基の導入は、実施例1と同様の方法で実施した。合成した1本鎖RNAは、UVスペクトル検出器を用い、260nmの吸光度を測定することにより濃度を算出した。また、universal buffer(林化成株式会社)中、同モルのセンス鎖およびアンチセンス鎖1本鎖RNAを混合し、92℃で2分間加熱した後、4℃まで徐々に温度を下げることで完全2本鎖RNAを作成した。合成したコレステロール修飾化27nt dsRNAにおいて、センス鎖の5’末端にのみコレステロールを修飾したものを27M(本発明の修飾型RNA);センス鎖の5’末端にコレステロールを有する基が結合されてなり、且つ5’末端にアミノ基を持つものを27N;センス鎖の5’末端にコレステロールを有する基が結合されてなり、且つ3’末端にアミノ基を持つものを27Oとした。また、合成したコレステロール修飾化21nt siRNAにおいて、センス鎖の5’末端にコレステロールを有する基が結合されてなり、センス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端に2塩基長のダングリングエンドを持つものを21-Cholとした。
2.末端コレステロール修飾27nt dsRNAの分解酵素耐性
合成したコレステロール修飾27nt dsRNA(27M、27O)の10%血清中におけるヌクレアーゼ耐性を評価した。実験は、最終濃度が2 μMになるよう調整したコレステロール修飾27nt dsRNAを10%FBSを含むRPMI-1640培地中 (最終量110μl)、37℃でインキュベートした。0h、0.5h、1h、2h、4h、6h、8h、12h、24h、48h後にそれぞれ10μl取り、2μlのローデングダイを含むサンプルチューブに添加した。分解反応を停止させる為、サンプル採取後速やかに液体窒素中にて凍結し、−20℃にて保存した。得られた産物を20% ポリアクリルアミドゲルを用い250Vで70分間サンプルを電気泳動した。その後、銀染色キット(GEヘルスケア バイオサイエンス)で産物を染色し(染色条件は製品マニュアル参照)、ChemiImager 4000(Alpha Innotech corporation)でゲル解析を行った。また、合成したコレステロール修飾21nt siRNA(21-Chol)についても同様に試験を行った。
結果を図19に示す。その結果、コレステロール修飾した27nt dsRNAもその他の修飾された27nt dsRNAと同様に高い分解酵素耐性を保有していることが明らかになった。また、27nt dsRNA以外にもバンドが確認され、血清中のタンパク質や脂質などの因子と結合している可能性が示唆される。また、21-Cholにおいても血清中タンパク質と強く結合している可能性が高い結果を得た。
3.末端コレステロール修飾27nt dsRNAのDicerによるプロセシング
次に、コレステロール修飾27nt dsRNAのDicerによるプロセシングを検討した。Dicerによる切断実験は、20mM Tris-HCl(pH 8.0), 15 mM NaCl, 2.5mM MgCl2溶液中、0.5 UのリコンビナントDicer(Gene Therapy Systems)と最終濃度2 μMになるよう調整したコレステロール修飾27nt dsRNAをサンプルチューブに10 μl準備し、37℃に設定したインキュベーター中、12時間インキュベートした。その後、Dicerによる切断反応を停止させる為に、2μlのDicer Stop Solution (Gene Therapy Systems)を反応溶液に加え、更に2μlのローデングダイを加えた。得られた産物を20% ポリアクリルアミドゲルを用い250Vで70分間サンプルを電気泳動した。その後、銀染色キット(GEヘルスケア バイオサイエンス)で産物を染色し(染色条件は製品マニュアル参照)、ChemiImager 4000(Alpha Innotech corporation)でゲル解析を行った。同様の操作をコレステロール修飾 21nt siRNA(21-Chol)についても行った。また、コントロールとして21siRNA及び27nt dsRNAの泳動も行った。
結果を図20に示す。その結果、27M、27N、27Oのすべてのコレステロール修飾27nt dsRNAにおいて21塩基長のsiRNA と同様の位置にバンドを確認し、Dicerによるプロセシングをうけていることが判明し、アミノ基やチオール基よりも比較的大きな分子をセンス鎖の5’末端に修飾した際も、Dicerによるプロセシングを妨げないということが明らかとなった。一方、コレステロール修飾21nt siRNA(21-Chol)は、Dicer存在下においてもDicer非存在下時と変化が認められず、プロセシングを受けていないことが確認された。
4.末端コレステロール修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果
つぎにコレステロール修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果をウミシイタケルシフェラーゼをターゲットとして評価した。実験前に1x105cell/mlに調整したHeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞、東北大学加齢医学研究所)を96wellプレート上にそれぞれ100μl撒き、37℃で一晩インキュベートした。翌日、ウェル上の古い培地を取り除き、抗生物質を含ない新しい培地をウェルにそれぞれ80 μl加え、ホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼを発現するベクター(psiCHECKTM-2 Vector: プロメガ)とLipofectamineTM 2000 (商品名、インビトロジェン)の複合溶液を10μlずつHeLa細胞が入ったそれぞれのウェルに加えた。ここで発現ベクターは1ウェルあたり0.02μgになるように、またLipofectamineTM 2000は1ウェルあたり0.2μlになるよう設定し、OptiMem(インビトロジェン)で必要量を調整した。また、複合体を形成させる為に、発現ベクターとLipofectamineTM 2000をOptiMemを用いて混合した後、室温で30分間インキュベートした。複合溶液を加えた後、細胞を5% CO2 存在下、37℃で4時間インキュベートした。その後、ウミシイタケルシフェラーゼの遺伝配列と相同的なアンチセンス配列を含むコレステロール修飾型27nt dsRNAを最終濃度が0nM, 0.2nM, 0.5nM, 1nM, 2nM, 5nM, 10nMになるようLipofectamineTM 2000 (インビトロジェン) と複合体を形成させ、10μlの複合体溶液を発現ベクターを導入したHeLa細胞に加えた。ここで、1ウェルあたりの最終量は100 μlとなる。RNAとLipofectamineTM 2000の複合溶液は、1ウェルあたり5 μlのRNA水溶液と5 μlのLipofectamineTM 2000(0.2μl)OptiMem溶液を混合し、30分間室温でインキュベートすることにより作成した。RNAを導入させた後、48時間インキュベートし、Dula-GloTMLuciferase Assay System(プロメガ)を用いてホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼの発現量をルミノメータ(MicroLumat LB96p: BERTHOLD)で測定した。
RNA干渉効果はホタルルシフェラーゼの発現量をコントロールとしウミシイタケルシフェラーゼの発現量を算出した。図21にその結果を示す。その結果、センス鎖の5’末端のみをコレステロールで修飾した27Mは、他の末端にアミノ基をもつ27Nや27Oに比べ高いRNA干渉効果が確認された。この結果は27nt dsRNAのセンス鎖をアミノ基で修飾した27Dやチオール基で修飾した27Lと一致した結果である。
5.末端コレステロール修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果 (遺伝子導入剤なし)
次に、LipofectamineTM 2000等の遺伝子導入剤と使用せず、コレステロール修飾27nt dsRNA(27M)単独で細胞内に導入し、かつ、RNA干渉効果を示すか検討した。
実験前に1x105cell/mlに調整したHeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞、東北大学加齢医学研究所)を96wellプレート上にそれぞれ100μl撒き、37℃で一晩インキュベートした。翌日、ウェル上の古い培地を取り除き、抗生物質を含ない新しい培地をウェルにそれぞれ80μl加え、ホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼを発現するベクター(psiCHECKTM-2 Vector: プロメガ)とLipofectamineTM 2000 (商品名、インビトロジェン)の複合溶液を10μlづつHeLa細胞が入ったそれぞれのウェルに加えた。ここで発現ベクターは1ウェルあたり0.02μgになるように、またLipofectamineTM 2000は1ウェルあたり0.2μlになるよう設定し、OptiMem(インビトロジェン)で必要量を調整した。また、複合体を形成させる為に、発現ベクターとLipofectamineTM 2000をOptiMemを用いて混合した後、室温で30分間インキュベートした。複合溶液を加えた後、細胞を5% CO2 存在下、37℃で4時間インキュベートした。その後、Lipofectamine TM 2000を培地から取り除く為、100 μlの培地でウェルをそれぞれ3回洗浄した。その後、90 μlの抗生物質を含む培地を細胞に加え、ウミシイタケルシフェラーゼの遺伝配列と相同的なアンチセンス配列を含むコレステロール修飾型27nt dsRNAを最終濃度が0nM, 0.2nM, 0.5nM, 1nM, 2nM, 5nM, 10nM, 20nM, 50nM, 100nM, 200nM, 400nM, 600n, 800nM, 1μMになるようにOptiMemで調整したサンプルを10μl細胞へ添加し、37℃で48時間インキュベートした。Dula-GloTMLuciferase Assay System(プロメガ)を用いてホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼの発現量をルミノメータ(MicroLumat LB96p: BERTHOLD)で測定した。また、対象としてコレステロールを修飾していない天然型の27nt RNAも上記と同様の条件でRNA干渉効果検討した。
RNA干渉効果はホタルルシフェラーゼの発現量をコントロールとしウミシイタケルシフェラーゼの発現量を算出した。20nM 〜1μMの結果を図22に示す。その結果、高濃度ではあるがコレステロール修飾27nt dsRNA濃度依存的にウミシイタケルシフェラーゼ発現を抑制しており、コレステロールを修飾することにより単独でも細胞内へ導入し、Dicerによるプロセシングを受けた後、RNA干渉反応を起こしていることが明らかとなった。一方、天然型の27nt RNAは高濃度領域において若干の遺伝子発現抑制効果が確認されたが、コレステロールを修飾したものに比べその効果は格段に低かった。一方、天然型の27nt dsRNA(27A)及び21nt siRNAは上記試験と同濃度を細胞に添加しても顕著な遺伝子発現抑制効果は観測されておらず、この結果からもコレステロール修飾27nt dsRNA(27M)が遺伝子導入剤を使用しなくても優れたRNA干渉を発揮していることが明らかである。
6.末端コレステロール修飾27nt dsRNAのHeLa細胞に対する細胞導入性の検討
実験前に1x105cell/mlに調整したHeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞、東北大学加齢医学研究所)を24ウェルプレートにそれぞれ1ml撒き10 % ウシ胎児血清 (FBS:三光純薬株式会社製)及び抗生物質(Kanamycin Sulfate : インビトロジェン社製)含む培地中(MEM : インビトロジェン社製)、5 % CO2存在下、37 ℃で培養した。蛍光ラベル化オリゴヌクレオチド導入前に、抗生物質を含まない培地(450μl)へ交換した。蛍光ラベル化オリゴヌクレオチドは、27nt RNAのアンチセンス鎖の5’末端をFAMラベル化したものを使用し、非修飾の27nt センス鎖RNA及びコレステロール修飾した27ntセンス鎖RNAと2本鎖を形成させた。蛍光ラベル化非修飾27nt RNAを27A-F、蛍光ラベル化コレステロール修飾27nt RNAを27M-Fとした。
蛍光ラベル化オリゴヌクレオチドとLipofectamineTM 2000 (インビトロジェン社製)と複合体を形成させる為に、20μM の蛍光ラベル化オリゴヌクレオチド水溶液12.5μlとOptiMem溶液12.5μlの混合溶液25μlと、LipofectamineTM 2000 (インビトロジェン社製)溶液2μlとOptiMem溶液23μlの混合溶液25μlそれぞれ混ぜ合わせた50μlの混合溶液を室温で30分間インキュベートした。また、LipofectamineTM 2000 (インビトロジェン社製)を使用しない場合(図23中の‐LF2000)は、上記複合体形成条件中の2μlのLipofectamineTM 2000溶液をOptiMem溶液に代え、同様の操作でサンプルを調整した。調整した50μlの蛍光ラベル化オリゴヌクレオチド複合体は、上記で準備した450μlの細胞へ添加し(siRNAの終濃度:500 nM)、5 % CO2存在下、37 ℃で4時間インキュベートした。その後、細胞をPBS(-)又は培地で3回洗浄し、共焦点蛍光レーザー顕微鏡、及びフローサイトメトリーにて細胞導入を評価した。
共焦点蛍光レーザー顕微鏡は、Radiance 2000システム(Bio Rad社)を用い、アルゴンレーザーを用いて蛍光を観察した。フローサイトメトリーは、coulter EPICS XL cytometer(Beckman coulter) を用い、細胞10000カウントあたりの細胞導入性について測定した。フローサイトメトリー解析はXL EXPO32TM software (Beckman coulter) を用いた。
結果を図23に示す。図23において、-LF2000はLipofectamineTM 2000を使用しなかった場合、+LF2000はLipofectamineTM 2000を導入剤として使用した場合の結果である。その結果、LipofectamineTM 2000非存在下において27A-Fは細胞内への導入が確認されなかったが、コレステロールを修飾した27M-Fは細胞内への導入が確認された。なお、LipofectamineTM 2000存在下においては、27A-F及び27M-Fにおいて同程度の細胞への導入が確認されている。
実施例4 5’末端アミノ修飾2本鎖RNA
ウミシイタケルシフェラーゼと相同配列を持ち、ウミシイタケルシフェラーゼの遺伝子発現を抑制できる25〜27塩基長のセンス鎖RNAと21〜27塩基長のアンチセンス鎖RNAの2本鎖RNAをデザインし、センス鎖の5’末端にアミノ基を修飾した2本鎖RNAと修飾していない2本鎖RNAを比較した。該二本鎖RNAはアンチセンス鎖とセンス鎖の組み合わせにより様々な形態の二本鎖を形成できる。該2本鎖RNA においてダングリングエンド(一本鎖領域)を持たない完全2本鎖RNA をDS (double strand) RNA、二本鎖RNAの両末端にダングリングエンド(オーバーハング)を持つ2本鎖RNAをSi RNA、センス鎖の5’末端を左側に示したときに右側のみにダングリングエンドを持つ2本鎖RNAをRO (Right Overhang) RNA、センス鎖の5’末端を左側に示したときに左側のみにダングリングエンドを持つ2本鎖RNAをLO (Left Overhang) RNAと名付けた。また、各種2本鎖RNAの命名はセンス鎖をA(A1又はA2)、アンチセンス鎖をBとし、センス鎖およびアンチセンス鎖となる1本鎖RNAの塩基の数を記載することにより区別している。また、センス鎖は2種類のものをデザインしたので区別のためにA1及びA2としている。また、センス鎖の5’末端をアミノ基で修飾したものをAxN(x=1, 2)と記載している。使用したRNAの配列は、以下の通りである。
<センス鎖>
27nt 27A1:5’-CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC-3’
27A2:5’-GGCCUUUCACUACUCCUACGAGCACCA−3’
27A1N:5’NH2-(CH2)6-PO3-CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC-3’
27A2N:5’NH2-(CH2)6-PO3-GGCCUUUCACUACUCCUACGAGCACCA−3’
25nt 25A1:5’-CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGC-3’
25A2:5’-GGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC-3’
25A1N:5’NH2-(CH2)6-PO3-CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGC-3’
25A2N:5’NH2-(CH2)6-PO3-GGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC-3’
<アンチセンス鎖>
27nt 27B:5’-GUGCUCGUAGGAGUAGUGAAAGGCCAG-3’
25nt 27B:5’-GCUCGUAGGAGUAGUGAAAGGCCAG -3’
23nt 27B:5’-UCGUAGGAGUAGUGAAAGGCCAG-3’
21nt 27B:5’-GUAGGAGUAGUGAAAGGCCAG-3’
1.末端アミノ修飾二本鎖RNAの構造
2 本鎖RNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖の5’末端をアミノ化した末端アミノ修飾2本鎖RNAを合成した。具体的な合成方法を以下に示す。まず、末端アミノ修飾RNAは、1本鎖の状態のRNA(林化成株式会社より購入;HPLC精製、MALDI-TOF MS解析済み)を用い、5’末端アミノ化は5’-Amino-Modifier C6 (Glen Research)を用いて合成した。合成された5’末端アミノ修飾2本鎖RNAは、該末端(5’末端側から1番目のヌクレオチド)に−(CH2)6−NH2が結合されている。合成した1本鎖RNAは、UVスペクトル検出器を用い、260nmの吸光度を測定することにより濃度を算出した。また、universal buffer(林化成株式会社)中、同モルのセンス鎖およびアンチセンス鎖1本鎖RNAを混合し、92℃で2分間加熱した後、4℃まで徐々に温度を下げることで作成した。合成した各種2本鎖RNAは、20% ポリアクリルアミドゲルを用い、250Vの条件化で60分間電気泳動し、その後、銀染色キット(GEヘルスケア バイオサイエンス)で2本鎖RNAを染色することにより確認した。末端が修飾されていない非修飾2本鎖RNAおよび5’末端をアミノ基で修飾した修飾型2本鎖RNAの構造を図24に示す。
2.末端アミノ修飾二本鎖RNAの分解酵素耐性
非修飾2本鎖RNAおよび5’末端アミノ修飾2本鎖RNAのヌクレアーゼ耐性を検討した。実験は、上記実施例1Aと同様の方法で実施した。結果を図25に示す。この結果より、2本鎖RNAの鎖長が長い方が分解酵素耐性に優れていることが示唆され、かつ、5’末端にアミノ基が結合した方が分解酵素耐性に優れていることが示唆された。
3.末端アミノ修飾二本鎖RNAのDicerによるプロセシング
次に、それぞれの5’末端アミノ修飾2本鎖RNAのDicerによるプロセシングを検討した。実験は、上記実施例1Aと同様の方法で実施した。また、コントロールとしてDicer処理していない21塩基長の2本鎖RNAからなるsiRNA (Si 21A2/21B1 RNA;21 SiRNA)も同時に測定した。
図26に結果を示す。図26のAにはDS RNA、BにはSi RNA、CにはRO RNA、DにはLO RNAについて、リコンビナントDicerによるプロセシングの結果を示す。その結果、DS 25A1/25B RNA及びDS 25A1N/25B RNAはリコンビナントDicer存在下において21 siRNAと同様の位置にバンドが確認され、Dicerの切断によって2塩基のダングリングエンドを含む21塩基長のsiRNAが生成していることが強く示唆された。
Si RNAにおいては、Si 25A2/25B RNA及びSi 25A2N/25B RNAは、ほぼ全てのRNAがDicerにより21塩基長のSiRNAへとプロセシングされていた。
RO RNAのセンス鎖の5’末端をアミノ化したものは、Dicerによるプロセシングを受けるものと受けないものがRNA分子の構造の違いにより確認された。センス鎖に27塩基長のRNA分子をもつRO RNAでは、センス鎖のダングリングエンドの長さによりDicer処理後のRNA産物の種類も異なっており、短いダングリングエンドを持つものの方がDicer処理後のRNA産物の種類は少なく、かつ、21塩基長のsiRNAと同様の産物が多く生成されていることが確認された。センス鎖に25塩基長のRNA分子をもつRO RNAにおいても、上記と同様の挙動を示した。また、アンチセンス鎖の5’末端にダングリングエンドを持つRO 25A1N/27Bは、全くプロセシングを受けていないRNA分子と、21塩基のsiRNAまでプロセシングを受けたRNA分子に分かれた。
LO RNAのセンス鎖の5’末端をアミノ化したものにおいては、RNAの鎖長が長いものの方がDicerによるプロセシングを受けやすいことが分かった。また、若干ではあるが、センス鎖の5’末端をアミノ化したLO RNAの方がアミノ化していないLO RNAよりもDicerによるプロセシング産物が複数であることが確認されている。この結果より、LO RNAはRO RNAに比べ、センス鎖の5’末端のアミノ化には不向きである可能性が示唆された。
4.末端アミノ修飾二本鎖RNAのRNA干渉効果
つぎにそれぞれの末端アミノ修飾 2本鎖RNAのRNA干渉効果をウミシイタケルシフェラーゼをターゲットとして評価した。実験は、上記実施例1Aと同様の方法で実施した。
図27に、0.5nM濃度のときの末端アミノ修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果の結果を示す。その結果、DS RNAやRO RNAのようなセンス鎖の5’末端側が平滑末端のものにアミノ基を修飾することにより、同様のRNA構造の修飾されていないRNA分子に比べ飛躍的なRNA干渉効果の向上が観察された。また、その効果はRO RNAにおける平滑末端側を逆側にあるダングリングエンドの鎖長に関係なく、かつ、アンチセンス鎖の5’末端にダングリングエンドが存在する場合も全て同様に、センス鎖の5’末端をアミノ修飾することにより高いRNA干渉効果が得られた。一方、アンチセンス鎖の3’末端側にダングリングエンドを持つSi RNAやLO RNAにおいては、センス鎖の5’末端をアミノ基で修飾を施しても、非修飾で同様の構造を持つRNA分子と比べ、ほぼ同程度のRNA干渉効果を示した。この結果より、DS RNAやRO RNAといったセンス鎖の5’末端側が平滑末端となっているRNA干渉分子のセンス鎖の5’末端のみに修飾を施すことにより飛躍的にRNA干渉効果が向上するという新たな知見が得られた。
5.末端アミノ修飾二本鎖RNAのRNA干渉効果の持続性
次に、末端アミノ修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果の持続性を検討した。実験は、上記実施例1Aと同様の方法で実施した。
得られた結果を図28に示す。その結果、上記でRNA干渉効果が高かったDS RNAやRO RNAのセンス鎖の5’末端をアミノ基で修飾した末端修飾型RNA干渉分子は、高いRNA干渉効果の持続性も示し、かつ、細胞添加後7日後においてもセンス鎖の5’末端をアミノ基で修飾したのもの方が非修飾RNA に比べ高いRNA 干渉効果を示した。
実施例5 5’末端ペプチド修飾2本鎖RNA
ウミシイタケルシフェラーゼ(Luc)又はVEGFと相同配列を持ち、ウミシイタケルシフェラーゼ又はVEGFの遺伝子発現を抑制できる27及び21塩基長のセンス鎖RNAと27及び21塩基長のアンチセンス鎖RNAの2本鎖RNAをデザインした。このセンス鎖RNAの5’末端にペプチドを修飾した2本鎖RNAを修飾していない2本鎖RNAと比較した。また、センス鎖の5’末端にペプチドを修飾した2本鎖RNAにおいて27塩基長の平滑末端を持つ2本鎖RNA(Pep-27nt dsRNA)と21塩基長の3’末端に2塩基長のダングリングエンド(オーバーハング)を持つ2本鎖RNA(Pep-21nt siRNA)についても比較した。使用した27nt dsRNA及び21siRNAはルシフェラーゼ及びVEGF遺伝子をターゲットとした配列を持つ。使用したRNAの配列を以下に示す。
27nt dsRNA センス鎖(Luc) :5’-CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC-3’
アンチセンス鎖(Luc):3’-GACCGGAAAGUGAUGAGGAUGCUCGUG-5’
27nt dsRNA センス鎖(VEGF) :5’-CUUCCUACAGCACAACAAAUGUGAAUG -3’
アンチセンス鎖(VEGF):3’-GAAGGAUGUCGUGUUGUUUACACUUAC-5’
21siRNA センス鎖(Luc) :5’-GGCCUUUCACUACUCCUACGA-3’
アンチセンス鎖(Luc):3’-GACCGGAAAGUGAUGAGGAUG−5’
21siRNA センス鎖(VEGF) :5’- UCCUACAGCACAACAAAUGUG-3’
アンチセンス鎖(VEGF):3’- GAAGGAUGUCGUGUUGUUUAC−5’
1.ペプチド修飾2本鎖RNAの合成
ルシフェラーゼ遺伝子又はVEGF遺伝子の発現を抑制できる27nt dsRNA及び21nt siRNA中のセンス鎖の5’末端にペプチドを結合させたコンジュゲート2本鎖RNAを合成した。当該コンジュゲート2本鎖RNAにおいて、ペプチドは上記センス鎖RNAの5’末端にリンカーを介して共有結合で結合している。
具体的な合成方法を以下に示す。まず、RNAの5’末端をアミノ化するために、RNA固相合成上で5’-Amino-Modifier C6 (Glen Research)を用いて通常の方法(ホスホロアミダイト合成法)により5’末端アミノ修飾RNAを合成した。なお、非修飾RNA及びアミノ修飾RNAはHPLC精製、MALDI-TOF MS解析済みのものを林化成株式会社より購入した。合成された5’末端アミノ修飾2本鎖RNAは、該末端(5’末端側から1番目のヌクレオチド)に−(CH2)6−NH2が結合されている。合成した1本鎖RNAは、UVスペクトル検出器を用い、260nmの吸光度を測定することにより濃度を算出した。このアミノ修飾1本鎖RNAを200μMになるようH2O(RNase Free)で調整しペプチドコンジュゲート合成に使用した。アミノ修飾1本鎖RNAとリンカーを結合させるために、200μMのRNA溶液20μlと100 mMのN-(6-Maleimidocaproyloxy) succinmide (EMCS; Dojindo)8μlを混ぜ合わせ、最終容量を40μlとしたpH 8.0のTEAA(Triethylammonium acetate)緩衝液中、室温で約12時間反応させた。なお、当該反応系には、反応促進の目的でDIEA(ジイソプロピルエチルアミン)を適当量加えておいた。反応後、RNA-リンカーサンプル中の過剰なEMCSを取り除くため、サンプルをPolyPakカラム(Glen Research)で精製し(説明書参照)、凍結乾燥させた。次に、RNA−リンカーとペプチドを結合させるため、凍結乾燥したRNA−リンカーサンプルとペプチドのC末端側にシステインが結合したペプチド(1mg)を40μlのTEAA緩衝液中(pH8.0)約12時間反応させた。反応後、ペプチド−RNAサンプル中の過剰なペプチドを取り除くため、サンプルをHPLCで精製した。HPLC精製は、緩衝液としてA:100% 20mM TEAA(pH 7.0), B:70% CH3CN/20mM TEAA (pH 7.0)を用い、10% B緩衝液から100% B緩衝液を50分のリニアーグラジェントになるよう設定し精製を行った。また、精製用カラムはCAP CELL (4.6 x 150 mm, 5μm;shiseido)を使用した。合成したペプチドコンジュゲートRNAはアミノ修飾RNA単独とは異なる位置にHPLCのピークとして検出された。HPLC解析結果を図29に示す。HPLCにおいて精製されたペプチドコンジュゲートRNAは凍結乾燥し、20μlのH2Oに再び溶解させた後、UVスペクトル解析により濃度及び合成収率を算出した。
以下に合成したペプチドコンジュゲートを示す。
Figure 2008167739
上記ペプチドコンジュゲートの構造式において、ペプチド部分については、システイン残基を3文字表記で示し、それ以外のアミノ酸残基は1文字表記で示す。(A)にはRevペプチドが結合したRNAの構造を示し、(B)にはMAPKKペプチドが結合したRNAの構造を示す。
合成したペプチド修飾RNAは相補鎖RNAと2本鎖を形成させ、センス鎖の5’末端にペプチドが修飾された21nt siRNA及び27nt dsRNAを作成した。ペプチド修飾2本鎖RNAは20%アクリルアミドゲル電気泳動で解析した(図30)。
2.ペプチド修飾27nt dsRNA及び21nt siRNAのDicerによるプロセシング
次に、合成したペプチド修飾2本鎖RNAのDicerによるプロセシングを検討した。Dicerによる切断実験は、上記実施例1Aと同様の方法で実施した。また、コントロールとしてDicer処理していない21塩基長の2本鎖RNAからなるsiRNA (Si 21A2/21B1 RNA)も同時に測定した。
図31に結果を示す。その結果、RNA鎖長が21塩基長からなるsiRNAにRevペプチドを結合させたRev-21siRNAはDicer存在下においてもDicer非存在下時と同様の位置にバンドが確認され、Dicerによるプロセシングを受けていないことが明らかとなった。一方、RNA鎖長が27塩基長からなるdsRNAにRevペプチド及びMAPKKペプチドを結合させたRev-27dsRNA及びMAPKK-27dsRNAはDicer存在下において非修飾21 siRNAと同様の位置にバンドが確認され、Dicerの切断によって2塩基のダングリングエンドを含む21塩基長のsiRNAが生成していることが強く示唆された。また、ペプチド修飾27nt dsRNAのDicerによるプロセシングは、末端にMAPKKペプチドが結合したものよりもRevペプチドが結合した方がより高効率に21塩基長のsiRNAにプロセシングされていることが明らかとなった。
3.ペプチド修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果 (ルシフェラーゼ遺伝子発現抑制)
合成した末端ペプチド修飾 2本鎖RNAのRNA干渉効果をウミシイタケルシフェラーゼをターゲットとして評価した。ペプチド修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果実験は、上記実施例1Aと同様の方法で実施した。
図32に、0.5nM濃度のときのRevペプチド修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果の結果を示す。その結果、21nt siRNAのセンス鎖の5’末端にRevペプチドを修飾したRev-21nt siRNAは非修飾の21nt siRNAのRNA干渉効果とほぼ同程度の効果を示した。一方、27nt dsRNAのセンス鎖の5’末端に同様のRevペプチドを修飾したRev-27nt dsRNAは、非修飾の21nt siRNAよりも高い遺伝子発現抑制効果が確認された。また、Rev-27nt dsRNAは非修飾27nt dsRNAよりも高いRNA干渉効果を確認している。これらの結果より、ペプチドを修飾したRNAをRNA干渉反応に利用する際、21nt siRNAよりも27nt dsRNAに結合させたほうがより効果を増強させることが出来るという新たな知見が得られた。また、27nt dsRNA以外にもアミノ基を修飾した効果の増強が得られた2本鎖RNAにおいても、同様の位置にペプチドを修飾することにより更なる効果が期待される。
4.ペプチド修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果 (VEGF遺伝子発現抑制)
合成した末端ペプチド修飾 2本鎖RNAのRNA干渉効果をVEGFをターゲットとして評価した。実験前に1x105cell/mlに調整したHeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞、東北大学加齢医学研究所)、2x105 cell/mlに調整したJurkat細胞(急性リンパ性白血病細胞、東北大学加齢医学研究所)及びK-562細胞(慢性骨髄性白血病細胞、東北大学加齢医学研究所)を24wellプレート上にそれぞれ500μl撒き、37℃で一晩インキュベートした。翌日、ウェル上の古い培地を取り除き、抗生物質を含ない新しい培地をウェルにそれぞれ450 μl加えた。ここで、HeLa細胞はMEM培地、Jurkat細胞及びK-562 細胞はPRMI-1640培地を用いた。VEGFの遺伝配列と相同的なアンチセンス配列を含むペプチド修飾2本鎖RNA を最終濃度が200nMになるようLipofectamineTM 2000 (インビトロジェン) と複合体を形成させ、50μlの2本鎖RNA溶液を450μlの上記細胞に加えた。ここで、1ウェルあたりの最終量は500 μlとなる。RNAとLipofectamineTM 2000の複合溶液は、1ウェルあたり25 μlのRNA水溶液と25 μlのLipofectamineTM 2000 (2μl) OptiMem溶液を混合し、30分間室温でインキュベートすることにより作成した。RNAを導入させた後、37度で48時間、5%CO2存在下インキュベートした。インキュベート後、細胞をPBS(-)で3回洗浄し、RNeasy Plus Mini Kit(キアゲン)で細胞中のTotal-RNAを抽出した。その後、VEGFのmRNA量を測定するためにRT-PCR反応を行った。RT-PCR反応用としてQiagen OneStep RT-PCR Kit (キアゲン)を用い行い、VEGF用PCRプライマーとして、5’-CCC TGA TGA GAT CGA GTA CAT CTT-3’及び5’-ACC GCC TCG GCT TGT CAC-3’ を用いた。またコントロールとしてGADPH遺伝子の発現(mRNA量)を同様の方法で測定した。GAPDH用プライマーとして5’-GGAAAGCTGTGGCGTGATG-3’及び5’-CTGTTGCTGTAGCCGTATTC-3’を用いた。RT-PCR反応は、50度で30分間RT(Reverse Transcripratase)反応を行い、PCR反応として92度で30秒間2本鎖解離反応、55度で30秒間アニーリング反応、68度で45秒間伸長反応を25回〜28回(使用する細胞により異なる)繰り返し行い、最後に68度で10分間インキュベートし、4度まで温度を下げ反応を終了した。RT-PCRに用いた試薬、Total-RNA、プライマー等はQiagen OneStep RT-PCR Kitの反応条件に従い作成した。RT-PCR反応後、ローディングダイを2μl加え、2%アガロースゲルでVEGF及びGADPHのmRNAからのRT-PCR産物を確認した。遺伝子発現抑制効果の評価は、コントロール細胞(2本鎖RNAを導入していない細胞)のVEGF遺伝子発現量を100としたときの、2本鎖RNA(非修飾、修飾を含む)を導入した細胞のVEGF発現量を測定することにより行った。また、各細胞間の発現量の誤差はコントロール遺伝子(GADPH)の遺伝子発現量で補正した。また、VEGF遺伝子と相同な配列を持たない非修飾2本鎖RNA(Random-27nt dsRNA、Random-21nt siRNA)及びRevペプチドをセンス鎖の5’末端に修飾した修飾RNA(Random-Rev 27nt dsRNA)も同様に評価した。
図33に、VEGFをターゲットとしたときのRNA干渉効果の結果を示す。
その結果、27nt dsRNAのセンス鎖の5’末端にRevペプチドを修飾したRev-27nt dsRNAは非修飾の21nt siRNA及び27nt dsRNAよりも高いRNA干渉効果を保有していることが確認された。一方、VEGF遺伝子と相同な配列を持たない非修飾及びぺプチド修飾2本鎖RNAは、コントロール細胞と同程度のVEGF発現量を示した。
5.末端ペプチド修飾27nt dsRNAの細胞導入性の検討
実験前に1x105cell/mlに調整したHeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞、東北大学加齢医学研究所)を24ウェルプレートにそれぞれ1ml撒き10 % ウシ胎児血清 (FBS:三光純薬株式会社製)及び抗生物質(Kanamycin Sulfate : インビトロジェン社製)含む培地中(MEM : インビトロジェン社製)、5 % CO2存在下、37 ℃で培養した。蛍光ラベル化オリゴヌクレオチド導入前に、抗生物質を含まない培地(450μl)へ交換した。蛍光ラベル化オリゴヌクレオチドは、27nt RNAのアンチセンス鎖の5’末端をFAMラベル化したものを使用し、非修飾の27nt センス鎖RNA及びペプチド修飾した27ntセンス鎖RNAと2本鎖を形成させた。細胞導入実験は、上記実施例3の場合と同様の方法で実施した。
共焦点蛍光レーザー顕微鏡は、Radiance 2000システム(Bio Rad社)を用い、アルゴンレーザーを用いて蛍光を観察した。フローサイトメトリーは、coulter EPICS XL cytometer (Beckman coulter) を用い、細胞10000カウントあたりの細胞導入性について測定した。フローサイトメトリー解析はXL EXPO32TM software (Beckman coulter) を用いた。
結果を図34〜36に示す。図34はHeLa細胞に対する細胞導入性、図35はK-562細胞に対する細胞導入性、図36はJurkat細胞に対する細胞導入性である。また、図34〜36において、-LF2000はLipofectamineTM 2000を使用しなかった場合、+LF2000はLipofectamineTM 2000を導入剤として使用した場合の結果である。その結果、LipofectamineTM 2000非存在下において、Revペプチドを修飾したRev-27nt dsRNAは非修飾27nt dsRNAよりも細胞内に導入されていることがフローサイトメトリーにより確認された。また、LipofectamineTM 2000存在下においても、Revペプチドを修飾したRev-27nt dsRNAは非修飾27nt dsRNAよりも高い細胞導入性が共焦点蛍光顕微鏡及びフローサイトメトリーにおいて確認された。この結果より、ペプチドを27nt dsRNAの5’末端に対して修飾することにより、細胞導入性が向上するという知見が得られた。
実施例6 5’芳香環修飾2本鎖RNA
ウミシイタケルシフェラーゼ及びVEGF遺伝子と相同配列を持ち、ウミシイタケルシフェラーゼ及びVEGFの遺伝子発現を抑制できる27及び21塩基長のセンス鎖RNAと27及び21塩基長のアンチセンス鎖RNAの2本鎖RNAをデザインした。上記中の27塩基長からなるセンス鎖RNAの5’末端に芳香環基を修飾した2本鎖RNAを修飾していない27塩基長の平滑末端を持つ2本鎖RNA(27nt dsRNA)及び21塩基長のRNAで3’末端に2塩基長のダングリングエンド(オーバーハング)を持つ2本鎖RNA (21nt siRNA)の遺伝子発現抑制効果ついて比較した。使用したRNAの配列を以下に示す。
27nt dsRNA センス鎖(Luc) :5’-CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC-3’
アンチセンス鎖(Luc):3’-GACCGGAAAGUGAUGAGGAUGCUCGUG-5’
27nt dsRNA センス鎖(VEGF) :5’-CUUCCUACAGCACAACAAAUGUGAAUG -3’
アンチセンス鎖(VEGF):3’-GAAGGAUGUCGUGUUGUUUACACUUAC-5’
1.芳香環修飾2本鎖RNAの合成
ルシフェラーゼ遺伝子及又はVEGF遺伝子の発現を抑制できる27nt dsRNAのセンス鎖の5’末端に芳香環基を結合させたコンジュゲート2本鎖RNAを合成した。当該コンジュゲート2本鎖RNAにおいて、芳香環基は上記センス鎖RNAの5’末端に修飾されたアミノ基(Amino Modifier C6; Glen Research)を介して共有結合で結合している。芳香環修飾2本鎖RNAは、活性エステルもつ芳香環化合物と5’末端をアミノ化修飾したセンス鎖RNAとを液相中で反応させることで合成した。
具体的な合成法を以下に示す。RNAの5’末端をアミノ化するために、RNA固相合成上で5’-Amino-Modifier C6 (Glen Research)を用いて通常の方法(ホスホロアミダイト合成法)により5’末端アミノ修飾RNAを合成した。なお、非修飾RNA及びアミノ修飾RNAはHPLC精製、MALDI-TOF MS解析済みのものを林化成株式会社より購入した。合成された5’末端アミノ修飾2本鎖RNAは、該末端(5’末端側から1番目のヌクレオチド)に−(CH2)6−NH2が結合されている。合成した1本鎖RNAは、UVスペクトル検出器を用い、260nmの吸光度を測定することにより濃度を算出した。このアミノ修飾1本鎖RNAを200μMになるようH2O(RNase Free)で調整し芳香環修飾RNA合成に使用した。アミノ修飾1本鎖RNAと芳香環化合物を結合させるために、20μlのRNA溶液(200μM)と8μlの芳香環活性エステル化合物(100 mM/H2O)を混ぜ合わせ、100 mM TEAA緩衝液を8μl加え、最後に水(RNase Free水)で最終容量を40μlとした。なお、当該反応系には、反応促進の目的でDIEA(ジイソプロピルエチルアミン)を適当量加えておいた。その後、サンプルを室温で約12時間反応させた。使用した活性エステル化芳香環化合物は、Phenoxy acetic acid N-hydroxy succinimide ester(シグマ-アルドリッチ社)、3-(4-Hydroxy phenyl) propionic acid N-hydroxy succinimide ester(関東化学)、(2-Naphthoxy)acetic acid N-hydroxy succinimide ester(関東化学)の3種である。反応後、芳香環が結合したRNAサンプル中の不要な試薬を取り除くため、サンプルをHPLCで精製した。HPLC精製は、緩衝液としてA:100% 20mM TEAA(pH 7.0), B:70% CH3CN/20mM TEAA (pH 7.0)を用い、10% B緩衝液から100% B緩衝液を50分のリニアーグラジェントになるよう設定し精製を行った。また、精製用カラムはCAP CELL (4.6 x 150 mm, 5μm;SHISEIDO)を使用した。HPLC解析結果を図37に示す。HPLCにおいて精製された芳香環修飾RNAは凍結乾燥し、20μlのH2Oに再び溶解させた後、UVスペクトル解析により濃度及び合成収率を算出した。
以下に芳香環修飾RNAの構造モデル及び収率を示す。以下の構造においてRNAはターゲット遺伝子により異なる。なお、収率はUVスペクトルで算出しているため、芳香環の吸光度も影響していると考えられる。
Figure 2008167739
2.芳香環修飾27nt dsRNAのDicerによるプロセシング
合成した芳香環修飾RNAは相補鎖RNAと2本鎖を形成させ、センス鎖の5’末端に芳香環が修飾された27nt dsRNAを作成した。芳香環修飾2本鎖RNAは20%アクリルアミドゲル電気泳動で解析した(図38-A)。合成した芳香環修飾2本鎖RNAのDicerによるプロセシングを検討した。実験は、上記実施例1Aと同様の方法で実施した。また、また、コントロールとしてDicer処理していない21塩基長の2本鎖RNAからなる21nt siRNA も同時に測定した。
図38-Bに結果を示す。その結果、センス鎖の5’末端に芳香環が結合したすべての芳香環修飾27nt dsRNAにおいてDicer存在下での反応後に非修飾21 siRNAと同様の位置にバンドが確認され、Dicerの切断によって2塩基のダングリングエンドを含む21塩基長のsiRNAが生成していることが強く示唆された。
3.芳香環修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果 (ルシフェラーゼ遺伝子発現抑制)
合成した芳香環修飾 2本鎖RNAのRNA干渉効果をウミシイタケルシフェラーゼをターゲットとして評価した。実験は、上記実施例1Aと同様の方法で実施した。
芳香環修飾27nt dsRNA及び非修飾27 nt dsRNA、21nt siRNAの濃度が0.2nMのときの結果を図39に示す。その結果、芳香環修飾27nt dsRNAは一般に広く使用されている21nt siRNAや最近報告された27nt dsRNAよりも高いRNA干渉効果、又は、同程度のRNA干渉効果が確認された。この結果により、芳香環を2本鎖RNAに修飾してもRNA干渉効果を妨げず、使用する芳香環によってはRNA干渉効果が向上することが明らかとなった。
4.芳香環修飾27nt dsRNAのHeLa細胞に対する細胞導入性の検討
実験前に1x105cell/mlに調整したHeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞、東北大学加齢医学研究所)を24ウェルプレートにそれぞれ1ml撒き10 % ウシ胎児血清 (FBS:三光純薬株式会社製)及び抗生物質(Kanamycin Sulfate : インビトロジェン社製)含む培地中(MEM : インビトロジェン社製)、5 % CO2存在下、37 ℃で培養した。蛍光ラベル化オリゴヌクレオチド導入前に、抗生物質を含まない培地(450μl)へ交換した。蛍光ラベル化オリゴヌクレオチドは、27nt RNAのアンチセンス鎖の5’末端をFAMラベル化したものを使用し、非修飾の27nt センス鎖RNA及び芳香環を修飾した27ntセンス鎖RNAと2本鎖を形成させた。今回細胞導入試験で使用した芳香環修飾27nt dsRNAはセンス鎖の5’末端にフェニル基が結合したPhe-27nt dsRNAである。細胞導入実験は、上記実施例3の場合と同様の方法で実施した。
共焦点蛍光レーザー顕微鏡は、Radiance 2000システム(Bio Rad社)を用い、アルゴンレーザーを用いて蛍光を観察した。フローサイトメトリーは、coulter EPICS XL cytometer (Beckman coulter) を用い、細胞10000カウントあたりの細胞導入性について測定した。フローサイトメトリー解析はXL EXPO32TM software (Beckman coulter) を用いた。
結果を図40に示す。図40において、-LF2000はLipofectamineTM 2000を使用しなかった場合、+LF2000はLipofectamineTM 2000を導入剤として使用した場合の結果である。その結果、LipofectamineTM 2000非存在下においは非修飾27nt dsRNA及び芳香環修飾27nt dsRNAは顕著な細胞内への導入は確認されなかった。また、LipofectamineTM 2000存在下においては、非修飾27nt dsRNA及び芳香環修飾27nt dsRNA のどちらも細胞への導入が共焦点蛍光顕微鏡及びフローサイトメトリーにおいて確認された。これらの2つの2本鎖RNAの細胞導入性は同程度であった。この結果より、27nt dsRNAの5’末端を芳香環で修飾しても、2本鎖RNAの細胞導入性を妨げていないことが分かった。
実施例7 5’PEG修飾2本鎖RNA
ウミシイタケルシフェラーゼ(Luc)及びVEGF遺伝子と相同配列を持ち、ウミシイタケルシフェラーゼ及びVEGFの遺伝子発現を抑制できる27及び21塩基長のセンス鎖RNAと27及び21塩基長のアンチセンス鎖RNAの2本鎖RNAをデザインした。この21塩基長及び27塩基長のセンス鎖の5’末端にPEG(ポリエチレングリコール)基を修飾した2本鎖RNAを、修飾していない27塩基長の平滑末端を持つ2本鎖RNA (27nt dsRNA)と21塩基長の3’末端に2塩基長のダングリングエンド(オーバーハング)を持つ2本鎖RNA (21nt siRNA)とを比較した。また、PEG修飾2本鎖RNAにおいても、27nt dsRNAと21nt siRNAについて比較した。使用した27nt dsRNA及び21siRNAはルシフェラーゼ及びVEGF遺伝子をターゲットとした配列を持つ。使用したRNAの配列を以下に示す。
27nt dsRNA センス鎖(Luc) :5’-CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC-3’
アンチセンス鎖(Luc):3’-GACCGGAAAGUGAUGAGGAUGCUCGUG-5’
27nt dsRNA センス鎖(VEGF) :5’-CUUCCUACAGCACAACAAAUGUGAAUG -3’
アンチセンス鎖(VEGF):3’-GAAGGAUGUCGUGUUGUUUACACUUAC-5’
21siRNA センス鎖(Luc) :5’-GGCCUUUCACUACUCCUACGA-3’
アンチセンス鎖(Luc):3’-GACCGGAAAGUGAUGAGGAUG−5’
21siRNA センス鎖(VEGF) :5’- UCCUACAGCACAACAAAUGUG-3’
アンチセンス鎖(VEGF):3’- GAAGGAUGUCGUGUUGUUUAC−5’
1.PEG修飾2本鎖RNAの合成
ルシフェラーゼ遺伝子又はVEGF遺伝子の発現を抑制できる27nt dsRNA及び21nt siRNA中のセンス鎖の5’末端にPEG基を結合させたコンジュゲート2本鎖RNAを合成した。当該コンジュゲート2本鎖RNAにおいて、PEG基は上記センス鎖RNAの5’末端に修飾されたアミノ基(Amino Modifier C6; Glen Research)を介して共有結合で結合している。PEG修飾2本鎖RNAは、ホスホロアミダイト化したPEG基をRNA固相合成法で合成する方法と活性エステルをPEG基の末端に持つ活性エステル化PEG化合物を用いアミノ化修飾したRNAと液相中で合成する2通りの合成法を今回使用した。
固相合成法を用いる方法は、RNAを固相上でRNA合成機を用いて公知の方法で合成し、その後PEG修飾ホスホロアミダイト(Spacer18; Glen Research社)を同様の合成法で結合させた。その後、通常の方法で固相担体からの切断及びRNA保護基の脱保護を行った。固相合成法で得られるPEG修飾RNAは林化成株式会社より合成され、HPLC精製及びMALDI-TOF MSで解析されている。
液相法におけるPEG修飾RNAの合成方法を以下に示す。まず、RNAの5’末端をアミノ化するために、RNA固相合成上で5’-Amino-Modifier C6 (Glen Research)を用いて通常の方法(ホスホロアミダイト合成法)により5’末端アミノ修飾RNAを合成した。なお、非修飾RNA及びアミノ修飾RNAはHPLC精製、MALDI-TOF MS解析済みのものを林化成株式会社より購入した。合成された5’末端アミノ修飾2本鎖RNAは、該末端(5’末端側から1番目のヌクレオチド)に−(CH2)6−NH2が結合されている。合成した1本鎖RNAは、UVスペクトル検出器を用い、260nmの吸光度を測定することにより濃度を算出した。このアミノ修飾1本鎖RNAを200μMになるようH2O(RNase Free)で調整しPEGコンジュゲート合成に使用した。アミノ修飾1本鎖RNAとPEG基を結合させるために、20μlのRNA溶液(200μM)と8μlのPEG−NHS活性エステル(100 mM/H2O; Fluka社)を混ぜ合わせ100 mM TEAA緩衝液を8μl加え、最後に水(RNase Free水)で最終容量を40μlとした。なお、当該反応系には、反応促進の目的でDIEA(ジイソプロピルエチルアミン)を適当量加えておいた。その後、サンプルを室温で約12時間反応させた。反応後、PEG基が結合したRNAサンプル中の過剰なPEG等を取り除くため、サンプルをHPLCで精製した。HPLC精製は、緩衝液としてA:100% 20mM TEAA(pH 7.0), B:70% CH3CN/20mM TEAA (pH 7.0)を用い、10% B緩衝液から100% B緩衝液を50分のリニアーグラジェントになるよう設定し精製を行った。また、精製用カラムはCAP CELL (4.6 x 150 mm, 5μm;SHISEIDO)を使用した。HPLCにおいて非修飾RNAは上記条件において6.8分後付近にピークが検出されるのに対し、合成したPEG修飾RNAは16分〜20分付近にブローディングしたピークが検出され、PEG修飾RNAが合成されていることを確認した。HPLC解析結果を図41に示す。HPLCにおいて精製されたPEG修飾RNAは凍結乾燥し、20μlのH2Oに再び溶解させた後、UVスペクトル解析により濃度及び合成収率を算出した。
今回RNA使用したPEGは、Spacer18、PEG2000、PEG5000の3種類である。以下にPEG修飾RNAの構造モデルを示す。
Figure 2008167739
上記構造においてnは使用するPEGにより異なり、またRNAはターゲット遺伝子により異なる。
合成したPEG修飾RNAは相補鎖RNAと2本鎖を形成させ、センス鎖の5’末端にPEGが修飾された21nt siRNA及び27nt dsRNAを作成した。PEG修飾2本鎖RNAは20%アクリルアミドゲル電気泳動で解析した(図42)。
2.PEG修飾27nt dsRNA及び21nt siRNAのDicerによるプロセシング
次に、合成したPEG修飾2本鎖RNAのDicerによるプロセシングを検討した。Dicerによる切断実験は、上記実施例1Aと同様の方法で実施した。また、また、コントロールとしてDicer処理していない21塩基長の2本鎖RNAからなるsiRNA (Si 21A2/21B1 RNA)も同時に測定した。
図43に結果を示す。図43において、「A」は2本鎖のセンス鎖の5’末端にSpacer18を用いたPEG基が結合したPEG修飾2本鎖RNA、「B」は2本鎖RNAのセンス鎖の5’末端にPEG2000が結合したPEG修飾2本鎖RNAである。その結果、センス鎖の5’末端にSpacer18が結合した27nt dsRNA(Spacer-27nt dsRNA)はDicer存在下において非修飾21 siRNAと同様の位置にバンドが確認され、Dicerの切断によって2塩基のダングリングエンドを含む21塩基長のsiRNAが生成していることが強く示唆された。センス鎖の5’末端にPEG2000が結合した27nt dsRNA(PEG2000-27nt dsRNA)はDicer存在下においてもDicer非存在下時と同様の位置にバンドが確認され、Dicerによるプロセシングを受けていないことが明らかとなった。この結果により結合させるPEGの長さによりDicerの認識が異なることが明らかとなった。
3.PEG修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果 (ルシフェラーゼ遺伝子発現抑制)
合成した末端ペプチド修飾 2本鎖RNAのRNA干渉効果をウミシイタケルシフェラーゼをターゲットとして評価した。PEG修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果の実験は、上記実施例1Aと同様の方法で実施した。
図44及び図45に結果を示す。図44はSpacer18を修飾したときの結果、図45はPEG2000を修飾したときの結果で、それぞれ0.5nM濃度のときのPEG修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果の結果を示す。
その結果、Spacer18を結合させたPEG修飾27nt dsRNAはRNA干渉反応で一般に広く使用されている21nt siRNAよりも高いRNA干渉効果を示した。また、PEG2000を修飾した2本鎖RNAにおいて、21nt siRNAの5’末端にPEG基を修飾したPEG2000-21nt siRNAよりも27nt dsRNAの5’末端にPEG基を修飾したPEG2000-27nt dsRNAの遺伝子発現抑制の方が非常に優れていることが明らかとなった。これらの結果より、27nt dsRNAの5’末端をPEGで修飾させることによりRNA干渉効果を向上させるという知見が得られた。また、PEGを結合させることによって、2本鎖RNAの細胞内エンドソームからのリリース等の機能化向上も期待される。
実施例8 5’末端DNA修飾2本鎖RNA
ウミシイタケルシフェラーゼと相同配列を持ち、ウミシイタケルシフェラーゼの遺伝子発現を抑制できる修飾型二本鎖RNAとして、27塩基長のセンス鎖RNAの5’末端に9塩基長のDNAを結合させた36個のヌクレオチドからなるキメラオリゴヌクレオチドと27塩基長のアンチセンス鎖RNAとの2本鎖キメラオリゴヌクレオチドを作成し、非修飾の27nt RNA及び21siRNAと比較した。また、27塩基長のRNA鎖の5’末端に18塩基長の2'‐O-Me RNA鎖を持つ45塩基長の2’-O-Me RNA-RNAキメラオリゴヌクレオチドをそれぞれ合成し、27塩基長のアンチセンスRNAとアニーリングさせることにより、18塩基長の1本鎖2’-O-Me RNA領域をもつ2本鎖オリゴヌクレオチド(2’-O-Me RNA結合2本鎖RNA)を形成させ同様に評価した。使用したRNAおよびDNA-RNAキメラ、2’-O-Me RNA-RNAキメラの配列は、以下の通りである。
<センス鎖>
27A:5’-CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC-3’
9D-27A: 5’- ttc gca cca - CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC -3’
21A2:5’-GGCCUUUCACUACUCCUACGA-3’
9D-21A:5’- ttc gca cca -GGCCUUUCACUACUCCUACGA-3’
18Me-27A: 5’-aau ucu ccg aac gug uca-CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC-3’
<アンチセンス鎖>
27B:5’-GUGCUCGUAGGAGUAGUGAAAGGCCAG-3’
21B:5’-GUAGGAGUAGUGAAAGGCCAG-3’
上記配列中の小文字部分はDNAを、アンダーライン部分は2’-O-Me RNAを示している。
1.5’末端DNA 修飾及び2’-O-Me RNA 修飾dsRNAの構造
30塩基長及び36塩基長のセンス鎖RNA及びDNA-RNAキメラオリゴヌクレオチド、並びに21塩基長及び27塩基長のアンチセンス鎖RNAを合成した。また、45塩基長の2’-O-Me RNA-RNAキメラオリゴヌクレオチドも同様に合成した(林化成株式会社より合成;HPLC精製、MALDI-TOF MS解析済み)。合成した1本鎖RNA(キメラオリゴヌクレオチドを含む)は、UVスペクトル検出器を用い、260nmの吸光度を測定することにより濃度を算出した。また、universal buffer(林化成株式会社)中、同モルのセンス鎖およびアンチセンス鎖1本鎖RNAを混合し、92℃で2分間加熱した後、4℃まで徐々に温度を下げることで作成した。合成した各種2本鎖RNAは、20% ポリアクリルアミドゲルを用い、250Vの条件化で60分間電気泳動し、その後、銀染色キット(GEヘルスケア バイオサイエンス)で2本鎖RNAを染色することにより確認した。5’末端がDNA及び2’-O-Me RNAで修飾された2本鎖RNAを図46に示す。
2.5’末端DNA 修飾dsRNAのDicerによるプロセシング
次に、それぞれのDNA修飾2本鎖RNA及び2’-O-Me RNA修飾2本鎖RNAのDicerによるプロセシングを検討した。実験は、上記実施例1と同様の方法で実施した。また、コントロールとしてDicer処理していない21塩基長の2本鎖RNAからなる21siRNAも同時に測定した。
図47に結果を示す。その結果、9D-27A/27B 2本鎖RNAはリコンビナントDicer存在下において21 siRNAと同様の位置にバンドが確認され、Dicerの切断によって2塩基のダングリングエンドを含む21塩基長のsiRNAが生成していることが強く示唆された。一方、9D-21A/21B 2本鎖RNAは、Dicer存在下においてもバンドに変化が観測されず、Dicerによる影響を全く受けていないことが明らかとなった。また、2’-O-Me 27A/27B 2本鎖RNAもDicerによるプロセシングを受け21塩基長のsiRNAと同様の位置にバンドが確認された。これらの結果より、センス鎖の5’末端にDNAや2’-O-Me RNAが結合してもRNA鎖長が27塩基長の2本鎖RNAはDicerによるプロセシングを受けていることが明らかとなった。
3.末端DNA 修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果
次に、それぞれのDNA 修飾 2本鎖RNAのRNA干渉効果をウミシイタケルシフェラーゼをターゲットとして評価した。実験は、上記実施例1Aと同様の方法で実施した。
図48に、0.2nM濃度のときの末端DNA修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果の結果を示す。その結果、27nt 2本鎖RNAの末端をDNAで修飾した9D-27A/27B 2本鎖RNA は、非修飾の27nt 2本鎖RNA (27A)に比べ、遺伝子発現抑制能が高くRNA干渉効果が高いことが明らかとなった。また、2’-O-Me RNAを修飾した2’-O-Me 27A/27B 2本鎖RNAも、非修飾の27nt 2本鎖RNA(27A)に比べ、遺伝子発現抑制能が高くRNA干渉効果が向上していることが明らかとなった。一方、21ntの2本鎖RNAの末端をDNAで修飾した9D-21A/21B 2本鎖RNA は、非修飾の21 siRNAに比べ遺伝子発現抑制能の低下が観測された。この結果より、21siRNAの末端にDNAを修飾するよりも、27nt RNAの5’末端にDNAを修飾した方がRNA干渉効果の向上が期待できることが明らかとなった。
実施例9 DNAコンジュゲート/2本鎖RNA 複合体
1. DNAコンジュゲートの合成
18塩基長からなるDNAの5’末端又は3’末端に機能性分子を結合させたコンジュゲートDNAを合成した。5’末端又は3’末端がアミノ化されたDNAをオペロンバイオテクノロジー株式会社より購入し、DNAコンジュゲート合成を行った。5’末端アミノ化はAminoC6、3’アミノ化はAmC7-Qを用いた。5’末端アミノ化は5’-Amino-Modifier C6 (Glen Research)、3’末端アミノ化は3’-Amino-Modifer C7 GPG (Glen Research)を用いて合成されている。合成された末端アミノ化DNAは、5’末端がアミノ化されたものには該末端(5’末端側から1番目のヌクレオチド)に−(CH2)6−NH2が結合されており、また3’末端がアミノ化されたものには該末端(3’末端側から1番目のヌクレオチド)に−(CH2)7−NH2が結合されている。このアミノ修飾1本鎖DNAを200μMになるようH2O(RNase Free)で調整しコンジュゲート合成に使用した。DNAコンジュゲートに使用した機能性分子は、(1)パルミチン酸、(2)ラウリン酸、(3)フェノール基、(4)ナフチル基、(5)PEG2000、(6)SV40 T antigenペプチドである。上記(1)〜(5)の機能性分子は、N-ヒドロキシスクシイミジル活性エステル化又は4-ニトロフェニルエステル等の活性エステルしたものを使用し、DNAのアミノ基とアミド結合で結合させたDNAコンジュゲートを作成した。また、上記(6)の機能性分子は、DNAのアミノ基と2価性リンカーであるEMCS(N-(6-Maleimidocaproyloxy) succinmide; Dojindo)をまず結合させ、その後ペプチドのシステイン基とDNA−リンカー末端のマレイミド基とを結合させた。
具体的な上記(1)〜(5)の機能性分子のDNAへのコンジュゲート合成法を以下に示す。アミノ修飾1本鎖DNAと上記(1)〜(5)の機能性分子を結合させるために、20μlのRNA溶液(200μM)と8μlの機能性分子−NHS活性エステル(100 mM/DMF)を混ぜ合わせ、100 mM TEAA緩衝液を8μl加え、最後に水(RNase Free水)で最終容量を40μlとした。その後、サンプルを室温で約12時間反応させた。使用した活性エステル化機能性分子は、Palmitic acid N-hydroxy succinimide easter(シグマ−アルドリッチ社)、ラウリン酸-4-ニトロフェニルエステル(TCI)、3-(4-Hydroxy phenyl) propionic acid N-hydroxy succinimide ester(関東化学)、(2-Naphthoxy)acetic acid N-hydroxy succinimide ester(関東化学)、PEG2000-NHSである。なお、上記反応系には、溶解性を向上させるためメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサン、DMF等を適宜添加した。また、上記反応系には、反応性向上のためDIEAやTEA等のアミン化合物を適量添加した。反応後、機能性分子が結合したDNAサンプル中の不要な試薬を取り除くため、サンプルをHPLCで精製した。HPLC精製は、緩衝液としてA:100% 20mM TEAA(pH 7.0), B:70% CH3CN/20mM TEAA (pH 7.0)を用い、10% B緩衝液から100% B緩衝液を50分のリニアーグラジェントになるよう設定し精製を行った。また、精製用カラムはCAP CELL (4.6 x 150 mm, 5μm;SHISEIDO)を使用した。HPLCにおいて精製された芳香環修飾RNAは凍結乾燥し、20μlのH2Oに再び溶解させた後、UVスペクトル解析により濃度及び合成収率を算出した。
次に、上記(6)の機能性分子とDNAとの具体的なコンジュゲート合成を示す。
アミノ修飾1本鎖DNAとリンカーを結合させるために、200μMのDNA溶液20μlと100 mMのN-(6-Maleimidocaproyloxy)succinmide (EMCS; Dojindo)8μlを混ぜ合わせ、最終容量を40μlとしたpH 8.0のTEAA (Triethylammonium acetate)緩衝液中、室温で約12時間反応させた。反応後、DNA-リンカーサンプル中の過剰なEMCSを取り除くため、サンプルをPolyPakカラム(Glen Research)で精製し(説明書参照)、凍結乾燥させた。次に、DNA−リンカーとペプチドを結合させるため、凍結乾燥したDNA−リンカーサンプルとペプチドのC末端側にシステインが結合したペプチド(1mg)を40μlのTEAA緩衝液中(pH8.0)約12時間反応させた。なお、当該反応系には、溶解性を向上させるためメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサン、DMF等を適宜添加した。また、当該反応系には、反応性向上のためDIEAやTEA等のアミン化合物を適量添加した。反応後、ペプチド−DNAサンプル中の過剰なペプチドを取り除くため、サンプルをHPLCで精製した。HPLC精製は、緩衝液としてA:100% 20mM TEAA(pH 7.0), B:70% CH3CN/20mM TEAA (pH 7.0)を用い、10% B緩衝液から100% B緩衝液を50分のリニアーグラジェントになるよう設定し精製を行った。また、精製用カラムはCAP CELL (4.6 x 150 mm, 5μm;SHIEIDO)を使用した。合成したペプチドコンジュゲートDNAはアミノ修飾DNA単独とは異なる位置にHPLCのピークとして検出された。HPLCにおいて精製されたペプチドコンジュゲートDNAは凍結乾燥し、20μlのH2Oに再び溶解させた後、UVスペクトル解析により濃度及び合成収率を算出した。
以下に合成したペプチドコンジュゲート及び収率を示す。
Figure 2008167739
2.DNAコンジュゲート−2本鎖RNAの複合体形成
上記DNAコンジュゲートのDNA配列と相同的な配列を持つ18塩基長のDNA又は2’-O-Me RNAが27塩基長のRNA鎖の5’末端に結合した45塩基長のDNA-RNAキメラオリゴヌクレオチド及び2’-O-Me RNA-RNAキメラオリゴヌクレオチドをそれぞれ合成し、これをセンス鎖とした。上記45塩基長からなるDNA−RNAキメラオリゴ中のRNA領域に対し相補的な配列をもつ27塩基長のアンチセンスRNAを合成し、2つをアニーリングさせることにより、18塩基長の1本鎖DNA領域又は1本鎖2’-O-Me RNA領域を持つ2本鎖オリゴヌクレオチド(DNA結合又は2’-O-Me RNA結合2本鎖RNA)を形成させた。ここで使用したオリゴヌクレオチドはウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子と相同配列をもつアンチセンスRNAを含むものであり、細胞中においてRNA干渉反応を行うようデザインした2本鎖オリゴヌクレオチドである。合成した1本鎖RNAは、UVスペクトル検出器を用い、260nmの吸光度を測定することにより濃度を算出した。また2本鎖のアニーリングは、universal buffer(林化成株式会社)中、同モルのセンス鎖およびアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドを混合し、92℃で2分間加熱した後、4℃まで徐々に温度を下げることで作成した。キメラオリゴヌクレオチド配列およびRNA領域と相同なRNA配列を以下に示す。
センス鎖:
18D-27A: 5’- aat tct ccg aac gtg tca-CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC
18Me-27A: 5’-aau ucu ccg aac gug uca-CUGGCCUUUCACUACUCCUACGAGCAC
アンチセンス鎖:
27B: 3’-GACCGGAAAGUGAUGAGGAUGCUCGUG-5’
上記配列中の小文字部分はDNAを、アンダーライン部分は2’-O-Me RNAを示している。
DNAコンジュゲートとDNA結合又は2’-O-Me RNA2本鎖RNAとの間で複合体を形成させる為に、上記キメラ2本鎖RNAと5’末端又は3’末端に機能性分子を持つDNA(DNAコンジュゲート)を同モル量加え、アニーリングを行った。
27塩基長の2本鎖RNAと18塩基長の1本鎖DNAを持つDNA結合2本鎖RNAを18D-27A/27B、27塩基長の2本鎖RNAと18塩基長の1本鎖2’-O-MeRNAを持つ2本鎖RNAを18Me-27A/27Bとした。この18D-27A/27B及び18Me-27A/27Bに機能性分子を結合させたDNAコンジュゲート/2本鎖RNA 複合体をX-18D-27A/27B 及びX-18Me-27A/27B とした。ここで前記記載のXはDNAコンジュゲートを意味しており、末端アミノ修飾されたDNAはNH2-、パルミチン酸修飾DNAの場合はC16-、ラウリン酸修飾DNAはC12-、フェノール修飾DNAはPhOH-、ナフチル修飾DNAはNap-、PEG2000修飾DNAはPEG2000−、SV40 T antigen修飾DNAはSV40-と記載する。また、DNAの5’末端に機能性分子をコンジュゲートしたもの使用する場合は5’-をDNAの3’末端に機能性分子をコンジュゲートしたもの使用する場合は3’-を名称の一番前に記載する。図49に18Me-27dsRNAを使用した場合のDNAコンジュゲートとの複合体の構造及び名称を示す。合成したDNAコンジュゲート/RNA複合体は20%ポリアクリルアミドゲルを用いて確認した。10μl(2μM)のハイブリッド溶液を20%ポリアクリルアミドゲルにアプライし、250Vで70分間サンプルを電気泳動した。その後、銀染色キット(GEヘルスケア バイオサイエンス)で産物を染色し(染色条件は製品マニュアル参照)、ChemiImager 4000(Alpha Innotech corporation)でゲル解析を行った。
3.DNAコンジュゲート/2本鎖RNA複合体のDicerによるプロセシング
次に、合成したDNAコンジュゲート/2本鎖RNA複合体のDicerによるプロセシングを検討した。Dicerによる切断実験は、上記実施例1Aと同様の方法で実施した。また、また、コントロールとしてDicer処理していない21塩基長の2本鎖RNAからなる21nt siRNAも同時に測定した。
図50及び図51に結果を示す。その結果、キメラ2本鎖RNA鎖に5’末端又は3’末端がアミノ化されたDNAをハイブリダイゼイションさせた5’-NH2-18Me-27dsRNA及び3’-NH2-18Me-27dsRNAはDicer存在下において21nt siRNAと同様の位置にバンドを確認し、Dicerによって21nt RNAへプロセシングされていることが明らかとなった。また、このDNAの5’末端又は3’末端を脂質、芳香環で修飾した5’-/3’- C16-18Me-27dsRNA、5’-/3’- C12-18Me-27dsRNA、5’-/3’- PhOH-18Me-27dsRNA、5’-/3’- Nap-18Me-27dsRNAも同様にDicerによるプロセシングを受け21nt siRNAと同様の位置にバンドが確認された。一方、DNAの末端にPEG基およびSV40 T antigenを結合させたDNAコンジュゲートと複合体を形成させた5’-/3’- PEG2000-18Me-27dsRNA、5’-/3’- SV40-18Me-27dsRNA はDicer存在下においてもDicer非存在下と同様の位置にバンドが確認され、21nt siRNAと同様の位置にはバンドが確認されず、Dicerによるプロセシングを受けていないことが分かった。これらの結果より、センス鎖の5’末端にDNAコンジュゲートが結合した27nt dsRNAでも、Dicerによるプロセシングを妨げていないということが今回明らかとなった。
4.DNAコンジュゲート/2本鎖RNA複合体のRNA干渉効果
合成したDNAコンジュゲート/2本鎖RNA複合体のRNA干渉効果をウミシイタケルシフェラーゼをターゲットとして評価した。DNAコンジュゲート/2本鎖RNA複合体のRNA干渉効果の実験は上記実施例1Aと同様の方法で実施した。
図52に、0.5nM濃度のときの5’-修飾DNA/2本鎖RNA複合体のRNA干渉効果の結果を、また図53に、0.5nM濃度のときの3’-修飾DNA/2本鎖RNA複合体のRNA干渉効果の結果を示す。
5’-修飾DNA/2本鎖RNA複合体において、アミノ修飾したDNAを利用した5’-NH2-18Me-27dsRNAは21nt siRNAや27nt dsRNAよりもRNA干渉効果が減少した。一方、パルミチン酸やラウリン酸などの脂質、フェノールやナフチルなどの芳香環を5’末端に修飾したDNAを利用した場合、21nt siRNAや27nt dsRNAのRNA干渉効果と同程度のRNA干渉効果を示し、アミノ化したDNAを用いた場合よりもRNA干渉効果が向上した。この結果はDNAに修飾した機能性分子がRNA干渉効果を向上させたものと考えられる。PEG2000を5’末端に修飾したDNAを用いた場合はRNA干渉効果の減少が確認された。SV40 T antigenを5’末端に修飾したDNAを利用した場合は21nt siRNAや27nt dsRNAのRNA干渉効果と同程度のRNA干渉効果で、5’末端をアミノ化したDNAを利用した場合よりもRNA干渉効果の向上が観測された。
一方、3’-修飾DNA/2本鎖RNA複合体では、DNAの3’末端をアミノ化した修飾DNAを利用した場合においても21nt siRNAや27nt dsRNAの遺伝子発現抑制効果よりも高い効果が確認された。また、パルミチン酸、ラウリン酸などの脂質、フェノール、ナフチルなどの芳香環、SV40 T antigenなどのペプチドをDNAの3’末端に修飾した3’-修飾DNAを利用した2本鎖RNA複合体においても21nt siRNAや27nt dsRNAの遺伝子発現抑制効果よりも高い効果、又は、同程度の抑制効果が確認された。特にラウリン酸をDNAの3’末端に修飾した3’-C12-18Me-27dsRNAは、21nt siRNAや27nt dsRNAに比べ著しいRNA干渉効果の向上が観測された。PEG2000をDNAの3’末端に修飾した3’-PEG2000-18Me 27dsRNAは、PEG2000をDNAの5’末端に修飾したもの同様、21nt siRNAや27nt dsRNAに比べRNA干渉効果の減少が確認された。
以上の結果より、DNAコンジュゲートを27nt RNAの5’末端に結合させることにより、2本鎖RNA自身の遺伝子発現抑制効果を妨げておらず、また結合させる機能性分子によっては複合化させた2本鎖RNAの遺伝子発現抑制効果を著しく向上させることができるという新たな知見を得た。また、DNAの5’末端より3’末端に機能性分子を結合させた方が高いRNA干渉効果を発現できることが今回明らかとなった。
また、今回使用した機能性分子以外にも様々な機能性分子を応用可能で、例えば、膜透過ペプチドやタンパク質、糖分子などを利用することにより遺伝子導入剤を使用せずに2本鎖RNAのRNA干渉効果を発現ことが可能性で、かつ、あらゆる2本鎖RNAに対応できる為、その応用範囲は幅広いと考えられる。また、5’末端又は3’末端の片方のみならず、両末端に同時に機能性分子をもつDNAコンジュゲート、及びDNA塩基中にも機能性分子を持つ多機能修飾DNAを2本鎖RNAと複合体を形成させることで、これまでに無い優れた遺伝子発現抑制効果が発揮されると考えられる。
実施例1Aで合成した末端アミノ修飾27nt dsRNAの構造を示す図である。 実施例1Aにおいて、5’末端をアミノ修飾した27nt dsRNA (27B, 27C, 27D)のヌクレアーゼ耐性結果を示す図である。 実施例1Aにおいて、3’末端をアミノ修飾した27nt dsRNA(27E, 27F, 27G)の結果を示す図である。 実施例1Aにおいて、5’末端及び3’末端の両方にアミノ修飾した27nt dsRNA(27H、27I)の結果を示す図である。 実施例1Aにおいて、それぞれのアミノ修飾27nt dsRNAのDicerによるプロセシングを検討した結果を示す図である。 実施例1Aにおいて、1 nM濃度のときの末端アミノ修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果の結果を示す図である。 実施例1Aにおいて、末端アミノ修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果の持続性を評価した結果を示す図である。 実施例1Aにおいて、末端アミノ修飾27nt dsRNAをヌクレアーゼ処理した後のRNA干渉効果の持続性を評価した結果を示す図である。 実施例1Bにおいて、末端アミノ修飾27nt dsRNAのHeLa細胞中VEGF遺伝子に対するRNA干渉効果の結果を示す図である。 実施例1Bにおいて、末端アミノ修飾27nt dsRNAのJurkat細胞中VEGF遺伝子に対するRNA干渉効果の結果を示す図である。 実施例1Bにおいて、末端アミノ修飾27nt dsRNAのK-562細胞中VEGF遺伝子に対するRNA干渉効果の結果を示す図である。 実施例2で合成した末端チオール修飾27nt dsRNAの構造を示す図である。 実施例2において、5’末端をチオール修飾した27nt dsRNA (27J, 27K, 27L)のヌクレアーゼ耐性結果を示す図である。 実施例2において、5’末端をチオール修飾した27nt dsRNA (27J, 27K, 27L)の多分子化を示す電気泳動写真及びそれらの分子イメージを示す図である。 実施例2において、5’末端をチオール修飾した27nt dsRNAのDicerによるプロセシングを検討した結果を示す図である。 実施例2において、1 nM濃度のときの5’末端をチオール修飾した27nt dsRNAのRNA干渉効果の結果を示す図である。 実施例2において、5’末端をチオール修飾した27nt dsRNAのRNA干渉効果の持続性を評価した結果を示す図である。 実施例3で合成した末端コレステロール修飾27nt dsRNAの構造を示す図である。 実施例3において、5’末端をコレステロール修飾した27nt dsRNAのヌクレアーゼ耐性結果を示す図である。 実施例3において、5’末端をコレステロール修飾した27nt dsRNAのDicerによるプロセシングを検討した結果を示す図である。 実施例3において、5’末端をコレステロール修飾した27nt dsRNAのRNA干渉効果の結果を示す図である。 実施例3において、5’末端をコレステロール修飾した27nt dsRNAのRNA干渉効果(遺伝子導入剤未使用)の結果を示す図である。 実施例3において、5’末端をコレステロール修飾した27nt dsRNAの細胞内導入特性を評価した結果を示す図である。 実施例4で合成した末端アミノ修飾2本鎖RNAの構造を示す図である。 実施例4において、末端アミノ修飾2本鎖RNAのヌクレアーゼ耐性結果を示す図である。 実施例4において、末端アミノ修飾2本鎖RNAのDicerによるプロセシングを検討した結果を示す図である。 実施例4において、末端アミノ修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果の結果を示す図である。 実施例4において、末端アミノ修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果の持続性を評価した結果を示す図である。 実施例5において、ペプチド修飾1本鎖RNAのHPLC解析結果を示す図である。 実施例5において、ペプチド修飾2本鎖RNAの2本鎖形成を確認した結果を示す図である。 実施例5において、ペプチド修飾2本鎖RNAのDicerによるプロセシングを検討した結果を示す図である。 実施例5において、ペプチド修飾2本鎖RNAのルシフェラーゼ遺伝子に対するRNA干渉効果の結果を示す図である。 実施例5において、ペプチド修飾2本鎖RNAのVEGF遺伝子に対するRNA干渉効果の結果を示す図である。 実施例5において、ペプチド修飾2本鎖RNAのHeLa細胞に対する細胞内導入性を評価した結果を示す図である。 実施例5において、ペプチド修飾2本鎖RNAのK-562細胞に対する細胞内導入性を評価した結果を示す図である。 実施例5において、ペプチド修飾2本鎖RNAのJurkat細胞に対する細胞内導入性を評価した結果を示す図である。 実施例6において、芳香環修飾1本鎖RNAの構造及びHPLC解析結果を示す図である。 実施例6において、芳香環修飾2本鎖RNAの2本鎖形成確認及びDicerによるプロセシングを検討した結果を示す図である。 実施例6において、芳香環修飾2本鎖RNAのルシフェラーゼ遺伝子に対するRNA干渉効果の結果を示す図である。 実施例6において、芳香環修飾2本鎖RNAの細胞内導入特性を評価した結果を示す図である。 実施例7において、PEG修飾1本鎖RNAのHPLC解析結果を示す図である。 実施例7において、PEG修飾2本鎖RNAの2本鎖形成を確認した結果を示す図である。 実施例7において、PEG修飾2本鎖RNAのDicerによるプロセシングを検討した結果を示す図である。 実施例7において、PEG18修飾27nt dsRNAと非修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果を比較したを示す図である。 実施例7において、PEG修飾21nt siRNAとPEG修飾27nt dsRNAのRNA干渉効果を比較したを示す図である。 実施例8で合成した末端DNA及び2’-O-Me RNA修飾2本鎖RNAの構造を示す図である。 実施例8において、末端DNA及び2’-O-Me RNA修飾2本鎖RNAのDicerによるプロセシングを検討した結果を示す図である。 実施例8において、末端DNA及び2’-O-Me RNA修飾2本鎖RNAのRNA干渉効果の結果を示す図である。 実施例9において、DNAコンジュゲート−2本鎖RNAの複合体の構造を示す図である。 実施例9において、5’末端DNAコンジュゲート−2本鎖RNAの複合体のDicerによるプロセシングを検討した結果を示す図である。 実施例9において、3’末端DNAコンジュゲート−2本鎖RNAの複合体のDicerによるプロセシングを検討した結果を示す図である。 実施例9において、5’末端DNAコンジュゲート−2本鎖RNAの複合体のRNA干渉効果の結果を示す図である。 実施例9において、3’末端DNAコンジュゲート−2本鎖RNAの複合体のRNA干渉効果の結果を示す図である。

Claims (14)

  1. 標的遺伝子中の標的配列に相補的な塩基配列からなるセンス鎖RNA、及び該センス鎖RNAに相補的な塩基配列を有するアンチセンス鎖RNAを有し、且つ前記標的遺伝子の発現を抑制できる二本鎖RNAであって、下記(1)〜(4)の特徴を備えている修飾型2本鎖RNA:
    (1)前記センス鎖RNAの5’末端側が平滑末端である。
    (2)前記センス鎖RNAが25〜27個のヌクレオチドからなる。
    (3)前記センス鎖RNAの5’末端側から1〜6番目のヌクレオチドの少なくとも1つに対してのみ置換基が結合している。
    (4)前記センス鎖RNAに結合している前記置換基が、アミノアルキル基、チオアルキル基、コレステロールを有する基、ペプチドを有する基、芳香族化合物を有する基、ポリエチレングリコールを有する基、及び核酸を有する基よりなる群から選択される少なくとも1種である。
  2. 前記センス鎖RNAの5’末端側から1〜4番目のヌクレオチドに、前記置換基が結合している、請求項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
  3. 前記センス鎖RNAの5’末端側から1番目のヌクレオチドにのみ1つの前記置換基が結合している、請求項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
  4. 前記置換基が、炭素数1〜40のアミノアルキル基である、請求項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
  5. 前記置換基が、炭素数1〜40のチオアルキル基である、請求項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
  6. 前記置換基が、コレステロールにリンカーが結合した基である、請求項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
  7. 前記置換基が、3〜40個のアミノ酸残基から構成されるペプチドにリンカーが結合した基である、請求項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
  8. 前記置換基が、ベンゼン、フェノール、又はナフタレンに、リンカーが結合した基である、請求項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
  9. 前記置換基が、平均重合度7〜200のポリエチレングリコールにリンカーが結合した基である、請求項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
  10. 前記置換基が、塩基数5〜50のDNA又は塩基数5〜50の2'-O-Me RNAである、請求項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
  11. 前記置換基が、塩基数5〜50のDNA又は塩基数5〜50の2'-O-Me RNAであり、
    更に、前記DNA又2'-O-Me RNAに相補的なヌクレオチド配列であり、且つ該配列の末端ヌクレオチドに機能性分子が結合した核酸コンジュゲートが、前記基のDNA又2'-O-Me RNAにハイブリダイズしている、請求項1に記載の修飾型2本鎖RNA。
  12. 前記センス鎖RNAが27個のヌクレオチドからなるものである、請求項1乃至12のいずれかに記載の修飾型2本鎖RNA。
  13. 前記センス鎖RNA及び前記アンチセンス鎖RNAが共に27個のヌクレオチドからなる、請求項1乃至12のいずれかに記載の修飾型2本鎖RNA。
  14. 前記センス鎖RNAが25個のヌクレオチドからなり、前記アンチセンス鎖RNAが23個のヌクレオチドからなる、請求項1乃至12のいずれかに記載の修飾型RNA。
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