JP2008166189A - 電気化学セルの診断装置及び診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】積層体内の個別の電気化学セルに付属した電位測定端子を使用しつつ、診断のためのデータを実用的な精度で測定可能な電気化学セルの診断装置及び診断方法を提供する。
【解決手段】電気化学セルの一対の電位ピン2に接続された等価回路ブロック11、電位ピン2に等価回路ブロック11及びバイパスライン14を介して接続された電圧制御装置7、等価回路ブロック11に並列配置され、電位ピン2及び電圧制御装置7に接続された可変電流発生装置8、可変電流発生装置8の発生電流を測定する電流計13、電圧制御装置7とバイパスライン14及び等価回路ブロック11との接続を切り替えるバイパス切替スイッチ9、制御の基準となる波形を発生させる診断用波形発生装置6、入力されたデータに基づく診断を行うデータ処理ブロック12を有する。
【選択図】図1
【解決手段】電気化学セルの一対の電位ピン2に接続された等価回路ブロック11、電位ピン2に等価回路ブロック11及びバイパスライン14を介して接続された電圧制御装置7、等価回路ブロック11に並列配置され、電位ピン2及び電圧制御装置7に接続された可変電流発生装置8、可変電流発生装置8の発生電流を測定する電流計13、電圧制御装置7とバイパスライン14及び等価回路ブロック11との接続を切り替えるバイパス切替スイッチ9、制御の基準となる波形を発生させる診断用波形発生装置6、入力されたデータに基づく診断を行うデータ処理ブロック12を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、燃料電池の電気化学セルを複数積層して構成される積層体(スタック)について、その劣化診断に使用する電気化学セルの診断装置及び診断方法に関するものである。
燃料電池は、酸化剤(例えば空気)と燃料(例えば水素を含む混合ガス)を、電池本体に供給することにより電気化学的に反応させ、燃料の持つ化学エネルギーを、直接電気エネルギーに変換して外部へ取り出す発電装置である。この燃料電池は、発電効率が高く、汚染物質の排出及び騒音が少ないため、環境負荷の少ない発電装置として近年脚光を浴びており、商用化を目指して、性能向上、コスト低減、高耐久化のための研究・開発が、活発に進められている。
一般的な燃料電池は、電解質(例えば、固体高分子イオン交換膜)を酸化剤極(カソード)と燃料極(アノード)で挟持してなる電気化学セルを単位として構成されている。燃料電池におけるエネルギー変換は、上述のように、電極における電気化学反応である。そして、この反応速度が遅い中温(100℃〜300℃)〜低温(100℃以下)で動作する燃料電池では、反応促進のために、一般的に、白金触媒あるいは白金を主体とする合金触媒が使用されている。
電気化学セルの性能は、触媒における電気化学反応の速度に支配される。この触媒における反応速度は、実際に反応に寄与する触媒の表面積(電気化学的表面積:ECA)、反応に関与する物質の濃度と移動速度、反応部での電位及び温度等、部材設計と運転条件に関わる多くのパラメータに影響される。これらの中でも、部材設計において、触媒の電気化学的表面積(ECA) は、最も重要なパラメータであり、電極仕様の妥当性評価、不純物による触媒の被毒評価、あるいは触媒の経時的な健全性・性能劣化の評価における評価指標として、広く用いられている。
そして、電気化学セルの診断には、各種の電気化学的手法が用いられている。特に、電極反応の解析に多用されるのが、サイクリックボルタンメトリー法である。サイクリックボルタンメトリー法については、多数の参考書(例えば、非特許文献1等)があり、その動作原理や適用事例はよく知られている。
このサイクリックボルタンメトリー法を実現するための基本的な原理構成を、図10に示す。すなわち、作用極(Working Electrode)、基準極(Reference Electrode)及び対極(Counter Electrode)の3電極と電解質からなる電解系が、ポテンショスタットと称される電圧制御装置に接続されている。このポテンショスタットは、信号発生器に接続されており、信号発生器から出力された電圧信号Einが入力されると、作用極と基準極の間の電位差 Emが、入力電圧Einと等しくなるように制御することができる。
ここで、入力されるドライブ信号として三角波を用いると、一定の掃引速度で電極電位を上昇・下降させることにより、電極反応に伴って充放電される電流を再現性良く測定することができる。また、電位の掃引パターン、掃引速度、掃引開始電位、掃引範囲を変えることにより、性質の異なる情報を得ることができる。
このようなサイクリックボルタンメトリー法を適用すると、触媒に関する様々な情報を得ることが可能となる。その一例として、多結晶白金を担持させた電極を作用電極として、サイクリックボルタンメトリー法で測定した電流−電位曲線(サイクリックボルタモグラム)を、図11に示す。この電流−電位曲線には、触媒の結晶面に特有な「水素の吸脱着ピーク」、触媒と電解質の境界部分に形成される「電気二重層の静電容量」、さらに「触媒表面に吸着する不純物の酸化に起因する電流ピーク」等の情報が含まれている。
水素は、触媒表面における電気化学的に活性な表面に、単層で吸着する。このため、触媒表面を被覆するのに必要な電気量は、電気化学的表面積(ECA)を反映したものとなる。電流−電位曲線(サイクリックボルタモグラム)上では、水素吸収の領域を、容易に識別することができる。したがって、水素吸収の領域の面積(=電気量)を計算することにより、電気化学的表面積(ECA)を算定することが可能となる。
以上のようなサイクリックボルタンメトリー法は、触媒活性を評価するのに有効であるため、実験室レベルの測定装置としてだけではなく、電気化学セルを応用した製品の診断装置にも適用されている。このような診断装置の一例として、電極上に酵素を固定したバイオセンサーの活性低下を検出し、さらにその想定原因に関する情報を得ることができる自動化した診断装置が挙げられる(特許文献1における“バイオセンサーの電極活性低下状態検出装置”参照)。
この装置は、以下の各部により構成されている。
(a) 診断の対象となるセンサ部
(b) センサ部に電圧を印加する電圧発生部
(c) センサ部からの電流信号を電圧信号に変換する変換部
(d) 電圧信号をデジタル信号に変換するA/D変換部
(e) デジタル化された信号を処理する演算制御部
(f) 表示部
(g)サイクリックボルタンメトリー法による診断に必要な三角波を発生する三角波発生部
さらに、三角波発生部は電圧発生部と併置されており、切替スイッチによって、通常測定のための電圧供給と診断のための三角波入力とを切替えることができるように構成されている。
(a) 診断の対象となるセンサ部
(b) センサ部に電圧を印加する電圧発生部
(c) センサ部からの電流信号を電圧信号に変換する変換部
(d) 電圧信号をデジタル信号に変換するA/D変換部
(e) デジタル化された信号を処理する演算制御部
(f) 表示部
(g)サイクリックボルタンメトリー法による診断に必要な三角波を発生する三角波発生部
さらに、三角波発生部は電圧発生部と併置されており、切替スイッチによって、通常測定のための電圧供給と診断のための三角波入力とを切替えることができるように構成されている。
この装置において診断対象となるセンサ部は、通常の燃料電池の電気化学セルとは構造が異なる。すなわち、中央部に作用極となる棒状の白金電極(アノード)、その周囲に対極となる筒状のAg電極(カソード)が配置され、それらの上部全体を覆う形で、酵素であるグリコースオキシターゼを固定化した膜(=GOD固定化膜)が配置されている。そして、GOD固定化膜の下には、過酸化水素透過膜が設けられている。センサ部全体はモールドされており、作用極(アノード)と対極(カソード)のそれぞれの信号を取り出す2本の導線が引き出されている。
このGOD固定化膜に、測定液中の対象物質(例えば、グルコースや尿素)が接触すると、酵素反応によって酸素が消費されて過酸化水素が生成される。生成された過酸化水素は、透過膜中を拡散して、白金電極(アノード)上で電気化学的に酸化される。この際の酸化電流(数μAオーダー)は、測定液中の対象物質の濃度に比例する。したがって、酸化反応を発生させるのに必要な電位を印加した状態で酸化電流を測定することにより、対象物質濃度の測定を行う。
この装置においては、センサ部の特徴データ生成の手段として、サイクリックボルタンメトリー法が活用されている。基準極を対極で兼用し、作用極であるアノードの電位を、対極であるカソードに対して−0.6Vから0.75Vの範囲の三角波で掃引しながら、電位−電流曲線を測定する。そして、あらかじめセンサ部が正常な場合や、特定の酵素活性阻害物質が付着して性能が低下した場合等における電位−電流曲線を、演算制御部に記憶させておき、測定して得られた電位−電流曲線と比較することにより診断を行う。
他方、サイクリックボルタンメトリー法は、実機構成の電気化学セル(単位セル)の診断にも適用されている。図12は、実機に使用される電気化学セルの診断に、サイクリックボルタンメトリー法を採用する場合の構成の一例を示したものである。
実機構成の電気化学セルは、そのまま発電試験に供することができるように、冷却プレートを兼ねたセパレータ板で挟持され、さらに集電体を兼ねた締付板で挟持されている。一般的な電気化学セルは、アノード・カソードの2極で構成され、基準電位を与える電解質電位を取り出すことができない。そのため、測定に際しては、基準極を対極で兼用し、診断の対象となる電極を作用極とする。作用極側には、残留酸素を取り除くため、窒素ガス等の不活性ガスを流通させ、対極側には、基準極と兼用するため、基準電位を与えるよう水素ガスを流通させる。
測定に際しては、ポテンショスタットの対極接続線(図中“CE”で示す)と基準極接続線(図中“RE”で示す)を対極側の締付板に、2本の作用極接続線(図中“WE1”及び“WE2”で示す)を作用極側の締付板に接続する。
実験室レベルの要素試験あるいは特許文献1に示されるようなセンサ部と、実サイズの電気化学セルとでは、測定系構成上、以下のような点が大きく異なっている。
(i) 電極の面積(実セルでは数10cm2〜数100cm2)と充放電の電流レベル(実セルでは数A)が桁違いに大きい点
(ii) 電極、電解質とも面積が大きく厚さが極端に薄い平板状を成している点
(iii)作用極と対極が同サイズである点
(i) 電極の面積(実セルでは数10cm2〜数100cm2)と充放電の電流レベル(実セルでは数A)が桁違いに大きい点
(ii) 電極、電解質とも面積が大きく厚さが極端に薄い平板状を成している点
(iii)作用極と対極が同サイズである点
こうした測定系構成上の特異性が測定データに及ぼす影響を極力少なくするためには、以下のような配慮が必要となる。
(1) 電流を流す接続線とは独立した電位(電位差)計測線を接続して抵抗ロスを排除して作用電極電位を設定・測定する
(2) 対極には潤沢な水素を供給する
(3) 面積の広い平板をなす電極平面内で反応の不均一を無くするため、電流を良導体で厚みのある締付板を介して平面内に均一に流す
(1) 電流を流す接続線とは独立した電位(電位差)計測線を接続して抵抗ロスを排除して作用電極電位を設定・測定する
(2) 対極には潤沢な水素を供給する
(3) 面積の広い平板をなす電極平面内で反応の不均一を無くするため、電流を良導体で厚みのある締付板を介して平面内に均一に流す
上記のような配慮のもとで測定した電流−電位曲線(サイクリックボルタモグラム)の例を、図13に示す。この図13には、白金触媒における水素吸脱着のピーク、電気二重層容量、水素の極間クロスオーバーに対応した電流シフト等電極の特性を示す情報が表されている。また、触媒活性の指標である電気化学的表面積は、水素吸着領域の吸着電荷量として、図中の斜線部分に示されている。
以上の通り、サイクリックボルタンメトリー法を適用することにより、電気化学セルの触媒について多面的な評価を行うことができる。
技報堂出版 藤島昭、相澤益男、井上徹著、 電気化学測定法(上・下)、1984年11月 特開平6−213856号公報
技報堂出版 藤島昭、相澤益男、井上徹著、 電気化学測定法(上・下)、1984年11月
ところで、自動車用や定置用プラント等の実アプリケーションに使用されている燃料電池では、大出力・高電圧を得るために、多数の電気化学セルをセパレータ板を介して積層した電池スタックとして使用する。したがって、実際のアプリケーションで運用された電気化学セルに対し、運転に伴う劣化を評価・診断する場合には、その評価・診断にあたって、電池スタックを分解する必要がなく、可能であれば電池スタックをプラントから取り外す必要がなければ、燃料電池の保守及び開発に大きく寄与する。
しかしながら、上述のようなサイクリックボルタンメトリー法では、測定できる対象が、独立して構成された電気化学セル(単位セル)のみである。既に電池スタックに含まれている特定の電気化学セルを対象にした測定手法は、未だ実用化されていない。
サイクリックボルタンメトリー法では、供試体の電位と電流を制御・測定することで分析を行う。この手法を積層スタック内の特定セルに適用するためには、電池スタック内の単位セルに対して、個別に電圧と電流を操作することが必要になる。
電池スタックにおける個別のセル電圧に関しては、図14に示すように、各々の電気化学セルに常設あるいは仮設の電位測定端子が取り付けられていて、直接計測が可能なことが多い。しかし、電流に関しては、締付板そのものが電気伝導性を有し集電体を兼ねているものと、締付板とは別に集電板を持つものがある。いずれの場合にも、電気化学セル全面に接して電流を流し得る構造を持つ部材は、電池スタックの両端にしか存在しない。
このような現状の構成を変更することなく、個別の電気化学セルの電圧と電流とを独立に操作する方法としては、各電気化学セルの電位測定端子を、電位測定と電流印加の両方に兼用する方法が考えられる。そこで、本発明者らは、本発明に先立って、個別の電気化学セルの電位測定端子を、電位測定と電流印加の両方に兼用して、サイクリックボルタンメトリー法を適用する方法について、幾つかの実験を実施し、その課題を明らかにした。
図15は、各電気化学セルの電位測定端子を、電位測定と電流印加の両方に兼用して、サイクリックボルタンメトリー法を適用する実験における接続構成を示したものである。図中の“RE”、“CE”、“WE1”、“WE2”はそれぞれ図12で同じ名称を付した結線を示す。
電流−電位曲線(サイクリックボルタモグラム)、つまり“RE”に対する“WE2” の電位が三角波となるように、“CE”〜“WE1”の間に流れる電流を制御しながら測定した。図16は、このようにして測定した電流−電位曲線(図中A)を、標準的な方法で測定した電流−電位曲線(図中B)と比較して示したものである。
この図16によれば、電位の変化速度を合せているにもかかわらず、両者の不一致は明らかであり、標準的な方法で測定した場合に現れるピークが小さく、位置も大きくずれていることが分かる。触媒の活性を表す水素吸着領域の電荷量(図中斜線領域)も、標準の方法での測定した場合の50%程度しかない。
図17は、前記の図16と同様の接続方法で、電位の変化速度を変化させたときに、波形を比較したものである。一般的に、水素の吸脱着にともなう電気量は一定のため、電位の変化速度を遅くすると面積が小さくなるが、電極反応における電荷移動速度が十分大きく反応が可逆であるとみなせる場合(=正しい計測の条件)には、ピークの位置は電位の変化速度に対して不変であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、図17に示すように、電位の変化速度を早くすると、‘B’に示される標準データから、ピークが離れてゆくことが分かる。これは見かけ上、あたかも反応が準可逆(Quasi−Reversible)となっていることを示す。標準的な接続方法で測定したデータでは、電位変化速度に依存したピーク位置の移動は見られない。同じ電極、同じ電位変化速度であっても、作用極電位の測定位置と電流の印加経路によって、応答が大きく異なることを示している。
この現象の原因として、図15に示す構成の場合、作用極の面積が大きく、しかも、電圧の制御も充放電も1つのコーナーで行われていることから、電位変化にともなって、作用極面内において時間遅れに起因する過渡的な反応不均一が生じている可能性が考えられる。
次に、図18は、図16の電流−電位曲線の測定に際して、電流制御側と対角位置に仮設した電位線において測定した作用極電位の変化(図中A)を、標準的に接続した場合の電位変化(図中B)、充放電電流(図中C)及び標準的に接続した場合の充放電電流(図中D)と比較して示したものである。この図17から明らかな通り、対角位置での作用極電位の応答が、制御点より遅れており、結果として、電位範囲が狭まっているだけでなく、電位パターンそのものが異なっていることが分かる。
特に、触媒表面への水素吸脱着の生じる範囲(〜400mV)における対角位置コーナー電位の遅れが大きいこと、それに対応して充放電電流の応答も鈍くなっていることが分かる。充放電電流の変化が小さいことは、そのまま測定される水素吸着面積も小さくなることを意味している。こうした作用極内での電位の不均一と充放電電流の減少が、特異な電流−電位曲線と電気化学的表面積(ECA)の測定値過小の要因となっていると考えられる。
さらに、作用極での不均一の原因と考えられる時間遅れを測定するために、ステップ応答実験を行った結果を、図19に示す。この図19では、電位制御点(電流印加点)の電位を、水素吸脱着範囲と電気二重の充放電が同時に進行する〜400mVとその先、主に電気二重の充放電のみとなる範囲の2段のステップを、上昇方向と下降方向に入力した際の対角コーナーに於ける作用極電位と充放電電流の応答を示している。
この図19から明らかな通り、作用極内の反応に時定数にして5秒〜6秒という極めて緩慢なプロセスがあることが分かった。また、充放電電流の推移が対角電位の推移と一致していることから、面内の触媒及び電気二重層への充電・放電のプロセスそのものが、遅れの要因となっていることが推察される。
これらの諸実験の結果から、個別の電気化学セルの電位測定端子を、電位測定と電流印加の両方に兼用して、サイクリックボルタンメトリー法をそのまま適用しても、測定系構成上の特異性の影響に起因する作用極内の応答遅れのため、正確な測定が困難であることが明らかになった。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、積層体内の個別の電気化学セルに付属した電位測定端子を使用しつつ、診断のためのデータを実用的な精度で測定可能な電気化学セルの診断装置及び診断方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明は、電解質を一対の電極板で挟持した電気化学セルを、複数個積層することにより構成した積層体について、そこに含まれる電気化学セルを診断対象セルとして診断する電気化学セルの診断装置において、診断対象セルに設けられた少なくとも一対の電位測定端子と、前記電位測定端子に接続された等価回路部と、前記等価回路部に接続された電圧制御装置と、前記等価回路部に電気的に並列に配置され、前記電位測定端子に接続されるとともに、前記電圧制御装置に接続された可変電流発生装置と、前記可変電流発生装置からの発生電流を測定する電流測定手段と、前記電位測定端子と前記電圧制御装置との間に設けられ、前記等価回路部をバイパスするように接続されたバイパス線と、前記電圧制御装置を前記バイパス線に接続するか前記等価回路部に接続するかを切替えるバイパス切替スイッチと、前記電圧制御装置に接続され、制御の基準となる波形を発生させる診断用波形発生装置と、前記等価回路ブロックに接続され、入力されたデータに基づく診断を行うデータ処理部と、を有することを特徴とする。
以上のような本発明では、等価回路部を用いて信号処理を行うことにより、積層体内の各電気化学セルに付属した電位測定端子を使用して、測定される電圧から、電池内の最も応答の遅れた部位の電圧変化を推定することが可能となる。したがって、積層体を分解したり、取り外すことなく、触媒の電気化学的表面積を始めとする診断データを、実用上妥当な精度で測定することができる。
以上のように、本発明によれば、積層体内の個別の電気化学セルに付属した電位測定端子を使用しつつ、診断のためのデータを実用的な精度で測定可能な電気化学セルの診断装置及び診断方法を提供することができる。
以下、本発明に係る電気化学セル診断装置及び診断方法の実施形態を、図1〜図9を参照して説明する。
[実施形態の構成]
まず、本実施形態の構成を図1〜図3を参照して説明する。まず、図1に示す電気化学セル1は、セル積層体内の診断対象セルであり、その側面には、セル電圧測定用の一対の電位ピン2が設けられている。
[実施形態の構成]
まず、本実施形態の構成を図1〜図3を参照して説明する。まず、図1に示す電気化学セル1は、セル積層体内の診断対象セルであり、その側面には、セル電圧測定用の一対の電位ピン2が設けられている。
本実施形態は、上記の電位ピン2を介して、電気化学セル1を診断する診断装置であり、大別すると、制御部3、信号処理部4、オペレーション部5から構成されている。以下、それぞれを詳述する。
[制御部]
制御部3は、従来のサイクリックボルタンメトリー装置と同等の構成と機能を有する装置であり、診断用波形発生装置6、電圧制御装置7、可変電流発生装置8、バイパス切替スイッチ9等によって構成されている。診断用波形発生装置6は、診断用の階段波および三角波を出力する手段である。
制御部3は、従来のサイクリックボルタンメトリー装置と同等の構成と機能を有する装置であり、診断用波形発生装置6、電圧制御装置7、可変電流発生装置8、バイパス切替スイッチ9等によって構成されている。診断用波形発生装置6は、診断用の階段波および三角波を出力する手段である。
電圧制御装置7は、可変電流発生装置8から発生する電流を制御する手段である。より具体的には、電位ピン2から計測された電圧が、診断用波形発生装置6と一致するように、可変電流発生装置8から発生する電流を制御する。バイパス切替スイッチ9は、電圧制御装置7を、後述するバイパスライン14に接続するか、等価回路ブロック11に接続するかを切り替える手段である。
[信号処理部]
信号処理部4は、上記の電位ピン2に接続されたアナログ/デジタル(A/D)変換器10、等価回路ブロック11、データ処理ブロック12、電流計13、バイパスライン14によって構成されている。
信号処理部4は、上記の電位ピン2に接続されたアナログ/デジタル(A/D)変換器10、等価回路ブロック11、データ処理ブロック12、電流計13、バイパスライン14によって構成されている。
等価回路ブロック11は、評価対象セルの過渡特性を再現する信号処理装置である。この等価回路ブロック11の機能ブロック構成の一例を、図2に示す。等価回路には様々な構成のものが想定されるが、本実施形態では、比較的簡単なものを示す。なお、図中、R1〜R4は抵抗要素23〜25,29、C1〜C2は容量要素(キャパシタンス)26,27を示す。また、28は容量切替スイッチである。
抵抗要素23〜25は、セル内の厚さ方向及び平面内(In−Plane)方向の電荷移動抵抗・拡散抵抗を模擬している。容量要素26,27は電気二重層容量と触媒表面の水素吸着容量を模擬している。容量切替スイッチ28は、実データで示される電位上昇時と下降時の応答の違いを模擬するためのスイッチであり、測定対象セルのファラデー(Faraday)電流と測定対象セルの触媒表面への水素吸着電位範囲で開閉する。抵抗要素29は、セル内のクロスオーバーの影響を模擬している。実際の信号処理は、図2に示した回路網の回路方程式をリアルタイムで計算することにより実行される。
データ処理ブロック12は、入力されたデータを処理し、結果を出力する処理装置である。このデータ処理ブロック12の機能ブロック構成の一例を、図3に示す。すなわち、データ処理ブロック12は、データ入出力部119、回路定数設定部120、特徴データ生成部121、判定部122、データ比較部123の4つの機能ブロックから構成されている。
回路定数設定部120は、測定データに基づいて、電気二重層容量に相当する電気量、水素吸着に相当する電気量、容量が変化する電位、系全体の遅れ時定数、等価抵抗、水素クロスオーバー電流等を求め、これに基づいて、等価回路ブロック11の回路定数を設定・変更する手段である。
特徴データ生成部121は、回路定数設定部120にて求めたデータとともに、回路定数、電位−電流曲線、水素吸着電荷量、電気化学的表面積、電気二重層容量を、特徴データとして生成する手段である。判定部122は、入力された波形を比較し、特定のデータの値が、あらかじめ設定された閾値内に収まっているか否かを判定する手段である。データ比較部123は、特徴データをあらかじめ保存してある標準データと比較する手段である。
オペレーション部5は、オペレータと診断装置とのインターフェース部である。このオペレーション部5は、図1に示すように、操作入力部15、表示部16、出力部17、データ記録装置18によって構成されている。操作入力部15は、ユーザの操作に応じた信号を、コンピュータに入力するマウスやキーボード等の入力手段である。表示部16は、処理結果等を表示するディスプレイである。出力部17は、処理結果等を出力する手段であり、プリンタ等の出力装置を含む。データ記憶装置18は、処理結果等を記録する手段であり、ハードディスク、各種メモリ、光ディスク等が考えられるが、媒体の種類は問わない。
あらかじめ設定・保存されるデータはデータ記憶装置18に記憶されている。例えば、印加すべき各種電気量の所定値、判定のための閾値、満たすべき判定項目、繰り返しの回数、標準データ等は、操作入力部15から入力されデータ記憶装置18に記憶されたり、操作入力部15からの指示により更新することができる。
なお、本実施形態の各機能を実現するための回路は、例えば、各機能を実現するASICやCPU等のICチップその他の周辺回路によって構成したり、複数の機能を集約したシステムLSIによって構成する等、種々考えられるものであり、特定のものには限定されない。ハードウェア処理によって実現する範囲とソフトウェア処理によって実現する範囲も自由である。
また、本実施形態の全部若しくは一部を、汎用のコンピュータをプログラムで制御することによって実現することもできる。この場合のプログラムは、コンピュータのハードウェアを物理的に活用することで、各部の機能を実現するものであり、かかるプログラムおよびプログラムを記録したハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMその他の種々の記録媒体は単独でも本発明の一態様である。したがって、例えば、パーソナルコンピュータにアプリケーションプログラムをインストールすることにより、本発明を構成することもできる。
[実施形態の作用]
以上のような構成の本実施形態による診断処理の詳細を、図8及び図9のフローチャートを参照して説明する。
[ステップ801]
まず、対象となる電気化学セル1の診断対象電極を作用極とし、その反対側の電極を基準極兼対極とし、作用極側に不活性ガス、対極側に水素ガスを流通させる。
以上のような構成の本実施形態による診断処理の詳細を、図8及び図9のフローチャートを参照して説明する。
[ステップ801]
まず、対象となる電気化学セル1の診断対象電極を作用極とし、その反対側の電極を基準極兼対極とし、作用極側に不活性ガス、対極側に水素ガスを流通させる。
[ステップ802]
次に、バイパス切替スイッチ9をバイパスライン14側に切り替える。このように、等価回路ブロック11をバイパスした状態で、可変電流発生装置8からの電流を、電圧制御装置7によって制御することにより、所定のステップ幅と保持時間に設定された多段ステップ上昇波と下降波を、電気化学セル1に入力する。そして、電流計13により電流応答を測定する。なお、本実施形態の場合、第1ステップは触媒の水素吸着範囲を、第2ステップは電気二重層が現れている部分を丁度カバーするように設定する。
次に、バイパス切替スイッチ9をバイパスライン14側に切り替える。このように、等価回路ブロック11をバイパスした状態で、可変電流発生装置8からの電流を、電圧制御装置7によって制御することにより、所定のステップ幅と保持時間に設定された多段ステップ上昇波と下降波を、電気化学セル1に入力する。そして、電流計13により電流応答を測定する。なお、本実施形態の場合、第1ステップは触媒の水素吸着範囲を、第2ステップは電気二重層が現れている部分を丁度カバーするように設定する。
実動作としては、電圧制御装置7からの指示で、電位ピン2で計測された電圧が、診断用波形発生装置6より出力された階段波(図4参照)と一致するように、可変電流発生装置8より発生される電流を制御する。
[ステップ803]
ステップ802で得られた測定データに基づいて、データ処理ブロック12の回路定数設定部120が、電気二重層容量に相当する電気量、水素吸着に相当する電気量、容量が変化する電位、系全体の遅れ時定数、等価抵抗、水素クロスオーバー電流を求める(図5参照)。
[ステップ804]
そして、回路定数設定部120は、ステップ803で求めたデータに基づいて、等価回路ブロック11の回路定数を設定する。
ステップ802で得られた測定データに基づいて、データ処理ブロック12の回路定数設定部120が、電気二重層容量に相当する電気量、水素吸着に相当する電気量、容量が変化する電位、系全体の遅れ時定数、等価抵抗、水素クロスオーバー電流を求める(図5参照)。
[ステップ804]
そして、回路定数設定部120は、ステップ803で求めたデータに基づいて、等価回路ブロック11の回路定数を設定する。
[ステップ805]
等価回路ブロック11をバイパスした状態で、可変電流発生装置8からの電流を電圧制御装置7によって制御することにより、所定の周波数と掃引電位範囲を有する三角波を入力し、これにより得られる電位−電流曲線(サイクリックボルタモグラム)をデータ記録装置18に記録する。
等価回路ブロック11をバイパスした状態で、可変電流発生装置8からの電流を電圧制御装置7によって制御することにより、所定の周波数と掃引電位範囲を有する三角波を入力し、これにより得られる電位−電流曲線(サイクリックボルタモグラム)をデータ記録装置18に記録する。
実動作としては、電圧制御装置7からの指示で、電位ピン2で計測された電圧が、診断用波形発生装置6より出力された三角波(図6参照)と一致するように、可変電流発生装置8より発生される電流を制御する。
[ステップ806]
ステップ805において記録された電位−電流曲線に基づいて、電気二重層電流を求め、ステップ803の電気二重層容量を補正する。
[ステップ807]
バイパス切替スイッチ9を等価回路ブロック11側に切り替える。これにより、電圧制御装置7を、等価回路ブロック11に接続する。
ステップ805において記録された電位−電流曲線に基づいて、電気二重層電流を求め、ステップ803の電気二重層容量を補正する。
[ステップ807]
バイパス切替スイッチ9を等価回路ブロック11側に切り替える。これにより、電圧制御装置7を、等価回路ブロック11に接続する。
[ステップ808]
このように、電圧制御装置7を、等価回路ブロック11を介して電気化学セル1に接続した状態で、可変電流発生装置8からの電流を電圧制御装置7によって制御することにより、所定の三角波を印加し、これにより得られる電位−電流曲線を(サイクリックボルタモグラム)を、データ記録装置18に記録する。
[ステップ809]
特徴データ生成部121は、ステップ808で取得された電位−電流曲線の波形データに基づいて、水素吸脱着のピーク及び電気二重層容量の範囲、電位折り返し点の電位を求める(図7参照)。
このように、電圧制御装置7を、等価回路ブロック11を介して電気化学セル1に接続した状態で、可変電流発生装置8からの電流を電圧制御装置7によって制御することにより、所定の三角波を印加し、これにより得られる電位−電流曲線を(サイクリックボルタモグラム)を、データ記録装置18に記録する。
[ステップ809]
特徴データ生成部121は、ステップ808で取得された電位−電流曲線の波形データに基づいて、水素吸脱着のピーク及び電気二重層容量の範囲、電位折り返し点の電位を求める(図7参照)。
[ステップ810]
可変電流発生装置8からの電流を電圧制御装置7によって制御することにより、前記三角波の周波数(電位掃引速度)を変更し、再度印加して、これにより得られる電位-電流曲線(サイクリックボルタモグラム)を、データ記録装置18に記録する。
[ステップ811]
ステップ808と同様にして、再度電位−電流曲線の波形データより水素吸脱着のピーク及び電気二重層容量の範囲、電位折り返し点の電位を求める。
可変電流発生装置8からの電流を電圧制御装置7によって制御することにより、前記三角波の周波数(電位掃引速度)を変更し、再度印加して、これにより得られる電位-電流曲線(サイクリックボルタモグラム)を、データ記録装置18に記録する。
[ステップ811]
ステップ808と同様にして、再度電位−電流曲線の波形データより水素吸脱着のピーク及び電気二重層容量の範囲、電位折り返し点の電位を求める。
[ステップ812〜815]
次に、データ処理ブロック12の判定部122が、上記の各種データに基づく値が所定の値に収まっているか否かを判定する。すなわち、ステップ808とステップ810にて記録された電位−電流曲線の波形データを比較し(ステップ812)、水素吸収ピーク位置の差が所定の閾値以内に収まっているか否かを判定する(ステップ815)。また、ステップ810にて記録された電位−電流曲線の波形データにおいて、電位折り返し点の電位と印加された三角波の折り返し点との差を求め(ステップ813)、これが所定の閾値以内に収まっているか否かを判定する(ステップ815)。さらに、ステップ810にて記録された電位−電流曲線の波形データにおいて、電気二重層の電位範囲を求め(ステップ814)、これが所定の範囲に収まっているか否かを判定する(ステップ815)。
次に、データ処理ブロック12の判定部122が、上記の各種データに基づく値が所定の値に収まっているか否かを判定する。すなわち、ステップ808とステップ810にて記録された電位−電流曲線の波形データを比較し(ステップ812)、水素吸収ピーク位置の差が所定の閾値以内に収まっているか否かを判定する(ステップ815)。また、ステップ810にて記録された電位−電流曲線の波形データにおいて、電位折り返し点の電位と印加された三角波の折り返し点との差を求め(ステップ813)、これが所定の閾値以内に収まっているか否かを判定する(ステップ815)。さらに、ステップ810にて記録された電位−電流曲線の波形データにおいて、電気二重層の電位範囲を求め(ステップ814)、これが所定の範囲に収まっているか否かを判定する(ステップ815)。
[ステップ819,820]
ステップ815の判定結果の内、あらかじめ選定した1つ以上の項目を満足しない場合には、回路定数設定部120は、回路定数を修正し、ステップ808から815を、所定回数繰り返す。所定回数繰り返しても、項目を満足しない場合には、異常であるとして終了する(ステップ820)。
[ステップ816]
所定回数以内に、あらかじめ選定した1つ以上の項目がステップ815の条件を満足した場合は、特徴データ生成部121が、修正された回路定数、電位-電流曲線、水素吸着電荷量、電気化学的表面積、電気二重層容量を、ステップ803で求められたデータと共に、特徴データとして、データ記録装置18に記録する。
ステップ815の判定結果の内、あらかじめ選定した1つ以上の項目を満足しない場合には、回路定数設定部120は、回路定数を修正し、ステップ808から815を、所定回数繰り返す。所定回数繰り返しても、項目を満足しない場合には、異常であるとして終了する(ステップ820)。
[ステップ816]
所定回数以内に、あらかじめ選定した1つ以上の項目がステップ815の条件を満足した場合は、特徴データ生成部121が、修正された回路定数、電位-電流曲線、水素吸着電荷量、電気化学的表面積、電気二重層容量を、ステップ803で求められたデータと共に、特徴データとして、データ記録装置18に記録する。
[ステップ817]
データ処理ブロック12のデータ比較部123は、あらかじめ記憶しておいた正常な電気化学セル1の特徴データである標準データと、新たに取得した特徴データとを比較して良否を判定する。
[ステップ818]
表示部16が、オペレーション部5の比較判定結果を表示する。
データ処理ブロック12のデータ比較部123は、あらかじめ記憶しておいた正常な電気化学セル1の特徴データである標準データと、新たに取得した特徴データとを比較して良否を判定する。
[ステップ818]
表示部16が、オペレーション部5の比較判定結果を表示する。
以上の手順によって、サイクリックボルタンメトリー法による測定において、等価回路ブロック11による信号処理を行うことにより、測定コーナーの電位ピン2の電圧から電池内の最も応答の遅れた部位の電圧変化を推定することができるようになる。また、等価回路ブロック11の回路定数そのものが、診断対象となる電気化学セル1の特徴データとなり、劣化状態の診断が可能な新たな情報が得られる。
[実施形態の効果]
以上のように本実施形態を適用することにより、これまで不可能であった、積層体内の個別の電気化学セル1に付属した電位測定端子を使用して、触媒の電気化学的表面積を初めとする診断データを実用上妥当な精度で測定することを可能とする診断装置と診断方法を得ることができる。
以上のように本実施形態を適用することにより、これまで不可能であった、積層体内の個別の電気化学セル1に付属した電位測定端子を使用して、触媒の電気化学的表面積を初めとする診断データを実用上妥当な精度で測定することを可能とする診断装置と診断方法を得ることができる。
特に、実際のアプリケーションで運用された電気化学セル1に対し、運転に伴う劣化を、電池スタックを分解することなく、可能であれば電池スタックをプラントから取り外すことなく、評価・診断できるようになり、燃料電池の保守及び開発に大きく寄与する。
1…電気化学セル
2…電位ピン
3…制御部
4…信号処理部
5…オペレーション部
6…診断用波形発生装置
7…電圧制御装置
8…可変電流発生装置
9…バイパス切替スイッチ
10…A/D(アナログ/デジタル)変換器
11…等価回路ブロック
12…データ処理ブロック
13…電流計
14…バイパスライン
15…操作入力部
16…表示部
17…出力部
18…データ記録装置
23〜25,29…抵抗要素
26,27…容量要素
28…容量切替スイッチ
119…データ入出力部
120…回路定数設定部
121…特徴データ生成部
122…判定部
123…データ比較部
2…電位ピン
3…制御部
4…信号処理部
5…オペレーション部
6…診断用波形発生装置
7…電圧制御装置
8…可変電流発生装置
9…バイパス切替スイッチ
10…A/D(アナログ/デジタル)変換器
11…等価回路ブロック
12…データ処理ブロック
13…電流計
14…バイパスライン
15…操作入力部
16…表示部
17…出力部
18…データ記録装置
23〜25,29…抵抗要素
26,27…容量要素
28…容量切替スイッチ
119…データ入出力部
120…回路定数設定部
121…特徴データ生成部
122…判定部
123…データ比較部
Claims (12)
- 電解質を一対の電極板で挟持した電気化学セルを、複数個積層することにより構成した積層体について、そこに含まれる電気化学セルを診断対象セルとして診断する電気化学セルの診断装置において、
診断対象セルに設けられた少なくとも一対の電位測定端子と、
前記電位測定端子に接続された等価回路部と、
前記等価回路部に接続された電圧制御装置と、
前記等価回路部に電気的に並列に配置され、前記電位測定端子に接続されるとともに、前記電圧制御装置に接続された可変電流発生装置と、
前記可変電流発生装置からの発生電流を測定する電流測定手段と、
前記電位測定端子と前記電圧制御装置との間に設けられ、前記等価回路部をバイパスするように接続されたバイパス線と、
前記電圧制御装置を前記バイパス線に接続するか前記等価回路部に接続するかを切替えるバイパス切替スイッチと、
前記電圧制御装置に接続され、制御の基準となる波形を発生させる診断用波形発生装置と、
前記等価回路部に接続され、入力されたデータに基づく演算および処理を行うデータ処理部と、
を有することを特徴とする電気化学セルの診断装置。 - 前記データ処理部は、入力されたデータに基づいて、診断対象セルの等価回路定数を設定する回路定数設定部と、
診断対象セルの特徴となる特徴データを生成する特徴データ生成部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の電気化学セルの診断装置。 - 前記特徴データ生成部は、電位測定データ、電流測定データ、前記等価回路部の回路定数に基づく電気化学的表面積、極間水素クロスオーバー、電気二重層容量、電荷移動抵抗、電荷拡散抵抗、サイクリックボルタモグラム、電位ステップ入力に対する電気二重層充放電電流、ファラデー電流の少なくとも1つを、特徴データとして生成可能であることを特徴とする請求項2記載の電気化学セルの診断装置。
- 前記等価回路部は、診断対象セルの内部短絡及び水素クロスオーバーを模擬する回路要素を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電気化学セルの診断装置。
- 前記等価回路部は、診断対象セルのファラデー電流と診断対象セルの触媒表面への水素吸着電位範囲で開閉する切替スイッチを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気化学セルの診断装置。
- 前記等価回路部は、診断対象セルの電気二重層容量とセル平面内の応答遅れを模擬する遅れ要素を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気化学セルの診断装置。
- 前記診断用波形発生装置は、周波数及び振幅が可変な三角波と、複数段のステップ幅及び保持時間が可変な矩形波とを発生可能であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気化学セルの診断装置。
- 電解質を一対の電極板で挟持した電気化学セルを、複数個積層することにより構成した積層体について、そこに含まれる電気化学セルを診断対象セルとして診断する電気化学セルの診断方法において、
診断対象セルの一方の評価対象電極を作用極とし、他方の電極を基準極兼対極とし、作用極側に不活性ガス、対極側に水素ガスを流通させるガス流通処理と、
バイパス切替スイッチが、電圧制御装置をバイパス線を介して診断対象セルに接続する第1の切替処理と、
電圧制御装置によって制御される可変電流発生装置が、診断対象セルに対して、所定のステップ幅と保持時間に設定された多段ステップ上昇波及び下降波を印加することにより、電流測定手段が電流応答を測定する電流応答測定処理と、
回路定数設定部が、前記電流応答測定処理によって得られた測定データに基づいて、電気二重層容量、水素吸着電気量、キャパシタンス変化電位、遅れ時定数、等価抵抗、水素クロスオーバー電流を求め、これに基づいて等価回路部の回路定数を求める回路定数設定処理と、
可変電流発生装置が、診断対象セルに対して、所定の周波数と掃引電位範囲を有する三角波を印加することにより得られる電位−電流曲線を、データ記録部が記録する第1の記録処理と、
特徴データ生成部が、第1の記録処理により記録された電位−電流曲線に基づいて、電気二重層電流を求め、前記電気二重層容量を補正する補正処理と、
バイパス切替スイッチが、電圧制御装置が等価回路部を介して診断対象セルに接続されるように、電圧制御装置のバイパス線との接続を等価回路部との接続に切り替える第2の切替処理と、
可変電流発生装置が、診断対象セルに対して、所定の三角波を印加することにより得られる電位−電流曲線を、データ記録部が記録する第2の記録処理と、
特徴データ生成部が、第2の記録処理により記録された電位-電流曲線の波形データに基づいて、水素吸脱着のピーク及び電気二重層容量の範囲、電位折り返し点の電位を求める第1のデータ生成処理と、
可変電流発生装置が、診断対象セルに対して、三角波の周波数を変更して再度印加することにより得られる電位−電流曲線を、データ記録部が記録する第3の記録処理と、
特徴データ生成部が、第3の記録処理により記録された電位−電流曲線の波形データに基づいて、水素吸脱着のピーク及び電気二重層容量の範囲、電位折り返し点の電位を求める第2のデータ生成処理と、
判定部が、第2及び第3の記録処理により記録された電位−電流曲線の波形データを比較して、水素吸収ピーク位置の差が、所定の閾値以内に収まっているか否かを判定する第1の判定処理と、
第2のデータ生成処理により求めた電位折り返し点の電位と印加された三角波の折り返し点との差が、所定の閾値以内に収まっているか否かを判定する第2の判定処理と、
第2のデータ生成処理により求めた電気二重層容量の電位範囲が、所定の範囲に収まっているか否かを判定する第3の判定処理と、
第1、第2及び第3の判定処理のうち、あらかじめ選定した1つ以上が満足しない場合には、回路定数設定部が回路定数を修正し、第2の記録処理、第1のデータ生成処理、第3の記録処理、第2のデータ生成処理、第1の判定処理、第2の判定処理及び第3の判定処理を、所定回数繰り返す処理と、
所定回数以内に、第1、第2及び第3の判定処理のうち、あらかじめ選定した1つ以上が満足した場合は、修正された回路定数、電位−電流曲線、水素吸着電荷量、電気化学的表面積、電気二重層容量を、回路定数設定処理で求められたデータと共に、データ記録部が、特徴データとして記録する第4の記録処理と、
を含むことを特徴とする電気化学セルの診断方法。 - 前記多段ステップ上昇波と下降波の設定電位が、評価対象電極の自然電位と水素吸脱着範囲の上限と、電気二重層範囲の上限であることを特徴とする請求項8記載の電気化学セルの診断方法。
- 前記三角波の設定範囲が、評価対象電極の自然電位と水素吸脱着範囲の上限であることを特徴とする請求項8又は請求項9記載の電気化学セルの診断方法。
- データ比較部が、データ記録部に記録された特徴データについて、あらかじめ記憶しておいた正常セルの特徴データと新たに取得した特徴データとを比較して良否を判定する第1のデータ比較処理と、
表示部が、判定結果を表示する表示処理と、
を含むことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の電気化学セルの診断方法。 - データ比較部が、データ記録部に記録された特徴データについて、あらかじめ記憶しておいた閾値と比較して、劣化度を診断する第2のデータ比較処理を含むことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の電気化学セルの診断方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006356290A JP2008166189A (ja) | 2006-12-28 | 2006-12-28 | 電気化学セルの診断装置及び診断方法 |
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Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JP2011171119A (ja) * | 2010-02-18 | 2011-09-01 | Toyota Motor Corp | 触媒利用率の測定方法 |
JP2018155614A (ja) * | 2017-03-17 | 2018-10-04 | エスペック株式会社 | 電気化学特性測定システム |
CN113848221A (zh) * | 2021-08-19 | 2021-12-28 | 中国科学院高能物理研究所 | 原位x-射线吸收谱测试装置、方法 |
JP2022534710A (ja) * | 2019-05-31 | 2022-08-03 | シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト | サイクリックボルタンメトリー測定を用いて燃料電池を検査するための方法およびシステム |
-
2006
- 2006-12-28 JP JP2006356290A patent/JP2008166189A/ja active Pending
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JP7326481B2 (ja) | 2019-05-31 | 2023-08-15 | シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト | サイクリックボルタンメトリー測定を用いて燃料電池を検査するための方法およびシステム |
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