JP2008164073A - 導電性すべり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】低摩擦・低摩耗性と、帯電防止に求められる以上の導電性とを併せ持つ導電性すべり軸受を提供する。
【解決手段】相手材と摺動する摺動面1aが導電性樹脂組成物で形成された導電性すべり軸受1であって、上記導電性樹脂組成物は、多孔質体および潤滑剤からなる潤滑性付与材と、繊維状導電材とを樹脂に少なくとも配合してなり、上記導電材は繊維径 0.3μm 以下、繊維長 1μm 以上で、かつアスペクト比 5 以上の形状を有し、上記導電性樹脂組成物中に占める配合割合は、上記潤滑性付与材が 5 体積%以上、60 体積%未満であり、上記導電材が 0.1 体積%以上、5 体積%未満であり、かつ上記樹脂が 40 体積%以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、相手材と摺動する摺動面が導電性樹脂組成物で形成された導電性すべり軸受に関する。
電子写真複写機やプリンター、ファクシミリなどは、装置の小型軽量化や使いやすさ、低コスト化が要求されている。それと共に、これら装置に内蔵される現像装置においても、例えば使いやすく小型軽量化された着脱可能なプロセスカートリッジ化などが進んでいる。このような現像装置の摺動部位における軸受としては、含油焼結すべり軸受や樹脂製すべり軸受等が転がり軸受に代わって多用されている。なかでも含油焼結すべり軸受に比較して温度変化に対する摺動特性の変化が少ない樹脂製すべり軸受が多用されている。
従来の樹脂製すべり軸受は、合成樹脂に潤滑性を有する油を含浸させた含油樹脂摺動部材や、合成樹脂に潤滑性を有する成分を配合した樹脂摺動部材をすべり軸受部に用いている例が一般的である。例えば、含油樹脂摺動部材としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂やポリアセタール樹脂などの合成樹脂に潤滑油を分散保持させたものが知られている。また、樹脂摺動部材としては合成樹脂にポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す)樹脂や変性ポリエチレン樹脂などを配合したものが知られている。例えば芳香族ポリアミド樹脂に変性ポリエチレン樹脂を配合した摺動部品用芳香族ポリアミド樹脂組成物が知られている(特許文献1参照)。これら樹脂製すべり軸受のなかでも含油樹脂摺動部材を軸受部に用いたすべり軸受は、摺動特性に優れた軸受として多用されている。
しかし、従来の摺動部材、特に含油樹脂すべり軸受は、経時的に摺動抵抗が増加しやすいとの問題があった。すなわち、従来の含油樹脂すべり軸受においては、潤滑油が含油樹脂内においてカプセル状に保持されることが多いため、潤滑に寄与するのは樹脂表層部の油のみであって、樹脂内部の油は潤滑に寄与しない。その結果、樹脂表層部の油は極少量となり潤滑特性が低下し、場合によっては焼き付きを生じることがあるなどの問題があった。特に現像装置を構成する現像剤担持体や潜像保持体である感光ローラなどの両軸端に設けられている軸受は、経時的に摺動抵抗が変動すると、回転ムラなどが生じ、良好な画像形成が困難であるとの問題があった。回転ムラなどを防ぐためにより大型のモータを使用して駆動トルクを大きくすると、小型軽量化や低コスト化が困難になる等の問題があった。
また、潤滑性付与材としては固体潤滑材である黒鉛、PTFE樹脂、二硫化モリブデン(以下、MoS2と記す)、窒化硼素(以下、BNと記す)等の固体潤滑剤がある。これらの潤滑性付与材を樹脂、ゴム、コーティング膜等に配合して潤滑性を持たせた材料は一般的に知られている。しかし、上記の固体潤滑剤を配合した場合は摩擦係数の低減には限界があり、さらなる低摩擦化のためには、油による境界潤滑とすることが一般的であり、例えば材料に潤滑油を配合し、摺動界面に絶えず潤滑油が存在する状態を維持して、材料の低摩擦化を実現する必要がある。潤滑油を配合させた樹脂材料は、摺動時にベースの樹脂層が少しずつ摩耗して潤滑油層が摺動部に現れると、潤滑油が摺動部表面に滲み出す。潤滑油の滲み出し具合は制御することが困難であり、潤滑油が滲み出した跡の空孔は樹脂層の強度低下を引き起こすおそれがある。
さらに充填材を加えて機械的強度や耐摩耗性を向上させようとすると、充填材の界面に油が局在化するため、補強効果が十分とならない場合がある。
これらの問題を解決する方法として、樹脂に、多孔質シリカおよび潤滑剤を少なくとも配合してなり、潤滑剤を摺動部表面に継続的に供給することによって優れた低摩擦・低摩耗性を有する摺動材組成物が知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、含油系樹脂摺動材を用いたすべり軸受は、通常の保油体を用いない含油樹脂や固体潤滑剤を配合した摺動材からなるすべり軸受に比べて優れた低摩擦化が可能であるが、単に導電材を配合しただけでは導電性の付与が難しい。
すなわち、配合された導電材が油などの潤滑成分により隠蔽され、導電性能が発現しにくくなったり、また潤滑成分が導電材/樹脂界面に保持され、摺動に必要な潤滑成分が摺動界面に供給されず、耐摩耗性や摩擦トルクが著しく悪化し短寿命となる場合がある。またアルミ等の軟質材からなる軸を摺動相手材として使用する場合、上述の油切れや、配合した導電材により相手材を損傷する場合もある。
特開平3−285952号公報 特開2002−129183号公報
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、潤滑剤を摺動部表面に継続的に供給することが可能となる優れた低摩擦・低摩耗性と、帯電防止に求められる以上の導電性とを併せ持つことができ、軟質相手材を損傷させない導電性すべり軸受を提供することを目的とする。
本発明の導電性すべり軸受は、相手材と摺動する摺動面が、樹脂に、多孔質体および潤滑剤からなる潤滑性付与材と、繊維状導電材とを少なくとも配合してなる導電性樹脂組成物で形成された導電性すべり軸受であって、上記導電性樹脂組成物中に占める配合割合は、上記潤滑性付与材が 5 体積%以上、60 体積%未満であり、上記繊維状導電材が 0.1 体積%以上、5 体積%未満であり、かつ上記樹脂が 40 体積%以上であり、上記繊維状導電材は繊維径 0.3μm 以下、繊維長 1μm 以上で、かつアスペクト比 5 以上の形状を有することを特徴とする。
また、上記繊維状導電材は炭素原子からなることを特徴とする。
また、上記多孔質体は、連通孔を有し、平均粒子径 0.5μm〜100μm であることを特徴とする。
本発明の導電性すべり軸受は、潤滑剤が多孔質体内に保持され、かつ摺動界面において潤滑剤を少量ずつ供給できる潤滑性付与性能と、繊維状導電材により帯電防止に求められる以上の導電性能とを併せ持つことができ、かつ軟質相手材の損傷を防止することができる。特に、繊維径 0.3μm 以下、繊維長 1μm 以上で、かつアスペクト比 5 以上の形状を有する繊維状導電材を用いるので、本発明の導電性すべり軸受は摺動面全体に導電材が分布し優れた導電性を付与できる。また、潤滑剤の供給が継続でき、導電材が導電性すべり軸受の摺動面全体に分散しているので、これらの効果は長期にわたって持続できる。
本発明に用いる潤滑性付与材は、多孔質体に潤滑剤を含浸してなることで、樹脂と、潤滑剤との相溶性により、これまで混練できなかった潤滑剤と樹脂との組み合わせでも、問題なく配合・混練できる。また、樹脂中にも潤滑剤を配合できるので、多量の潤滑剤を配合できる。また、射出成形時等にスクリュがすべる、計量が不安定となってサイクルタイムが長くなる、寸法精度が出にくい、金型表面に潤滑剤が付着して成形面の仕上がりが悪くなるなどの不具合が生じない。
持続性ある摺動特性と導電性とを併せ持つ導電性すべり軸受を得るべく鋭意検討を行なった。この結果、多孔質体および潤滑剤からなる潤滑性付与材と、所定の特徴を有する繊維状導電材とを少なくとも樹脂に所定割合で配合して得られた導電性摺動材組成物を、少なくとも摺動面の構成材料とすることにより、摩擦・摩耗特性が向上するとともに、帯電防止に求められる以上の導電性を併せ持つことができ、かつ、これらの特性が長期間維持できることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
導電性すべり軸受の少なくとも摺動面を形成する導電性樹脂組成物に繊維状導電材を配合することにより、次のような作用が認められた。
(1)導電材は繊維径 0.3μm 以下、繊維長 1μm 以上で、かつアスペクト比 5 以上の形状を有するので、導電性すべり軸受の摺動面全体に対し優れた導電性を付与・持続できる。これは導電材が、その形状から同じ配合量でも他の繊維状導電材に較べて非常に本数が多くなるため、導電性摺動材組成物を構成する他材料中で分散した際、導電材同士が非常に絡み合いやすく、導通路となる接点の形成能力に優れるので、極小配合量であっても他材料中に均一で微細な導電性ネットワークを形成することができる。
(2)導電材は炭素原子からなるので帯電防止に求められる以上の導電性を付与できる。
(3)導電材は繊維径 0.3μm 以下、繊維長 1μm 以上で、かつアスペクト比 5 以上の非常に微細な形状を有するので、アルミのような軟質材料を摺動相手材とした場合でも相手材を損傷することなく使用できる。
(4)導電材を所定量配合することで、導電性すべり軸受の摺動特性を損なわずに耐摩耗性を向上させることができ、かつ導電性を付与できる。
(5)導電材は繊維状であるので樹脂に対し充填材としても作用し、樹脂の機械的強度を向上させることができる。
また、すべり軸受の少なくとも摺動面を形成する導電性樹脂組成物に潤滑性付与材を配合することにより、次のような作用が認められた。
(1)摺動界面に継続して潤滑剤を供給できるので、優れた摩擦・摩耗特性を持続できる。
(2)潤滑剤が含浸された多孔質体を配合することで、組成物中の含油量を多くできるので、従来の潤滑剤配合量よりも多く配合できる。
(3)潤滑剤成分が多孔質体に保持されるので、単に多量の潤滑剤を多孔質体に保持させずに配合した場合に比較して、射出成形時等にスクリュがすべる、計量が不安定となってサイクルタイムが長くなる、寸法精度がでにくい、金型表面に潤滑剤が付着して成形面の仕上がりが悪くなるなどの不具合が生じない。
(4)樹脂と潤滑剤との相溶性により、これまで混練できなかった材料の組み合わせでも、問題なく混練できる。
(5)含油樹脂と補強材との併用を考えた場合、潤滑剤と補強材とをそれぞれ単体で配合して混練すれば補強材と樹脂との界面に潤滑剤が局存化し易く、補強効果が十分発揮できない場合、もしくは摺動界面に潤滑剤が供給されなくなる場合が生じる。しかし、潤滑剤を多孔質体に含浸させた潤滑性付与材を補強材と混練すれば、補強材と樹脂との界面に潤滑剤が存在しないため、所定の補強効果が得られる。
本発明に用いる導電材は、繊維径 0.3μm 以下、繊維長 1μm 以上で、かつアスペクト比 5 以上の形状的特徴を有する微小繊維状の導電性物質であれば使用できる。微小繊維形状とすることにより、導電性摺動材組成物を構成する他材料中に安定に分散することができ、導電性摺動材組成物全体に対し優れた導電性を付与・持続することができる。
導電性物質としては、金属、炭素系物質が挙げられるが、これらの中で上記微小繊維状の物質を形成しやすい炭素系物質を用いることが好ましい。炭素系物質としては、炭素繊維が挙げられる。
また、導電材を所定量配合することで、導電性すべり軸受の摺動特性を損なわずに耐摩耗性を向上させることができ、樹脂に対し充填材としても作用し、樹脂の機械的強度を向上させることができる。
このような導電材としては、一例として気相合成法で製造される微小な炭素繊維( Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)やグラファイトウィスカ、単層や複層のカーボンナノチューブ等が挙げられる。
本発明に用いられる導電性樹脂組成物中に占める導電材の配合割合は、 0.1 体積%以上、5 体積%未満であり、好ましくは 0.5 体積%〜3 体積%である。0.1 体積%未満の場合、十分な導電性を付与できず、帯電防止材や導電材として使用できない。5 体積%以上では特に耐摩耗性が著しく悪化し、また相手材の損傷が生じる場合もあるので好ましくない。
本発明の導電性すべり軸受に用いられる潤滑性付与材は、多孔質体に潤滑剤を含浸したものを用いることが好ましい。潤滑剤を含浸した多孔質体を用いることによって、摺動界面に継続して潤滑剤を供給できるので、優れた摩擦・摩耗特性を持続できる。また、潤滑剤が含浸された多孔質体を配合することで、組成物中の含油量を多くできるので、従来の潤滑剤配合量である 5 体積%〜10 体積%よりも多く配合できる。
潤滑剤成分を多孔質体に保持することで、射出成形時等にスクリュがすべる、計量が不安定となってサイクルタイムが長くなる、寸法精度が出にくい、金型表面に潤滑剤が付着して成形面の仕上がりが悪くなるなどの不具合が生じない。また、樹脂と潤滑剤との相溶性により、これまで混練できなかった材料の組み合わせでも、問題なく混練できる。
含油樹脂と補強材との併用を考えた場合、潤滑剤と補強材とをそれぞれ単体で配合して混練すれば補強材と樹脂との界面に潤滑剤が局存化するため、補強効果が十分発揮できない場合が生じる。しかし、潤滑剤を多孔質体、特に球状多孔質体に含浸させた潤滑性付与材を補強材と混練すれば、補強材と樹脂との界面に潤滑剤が存在しないため、所定の補強効果が得られる。
多孔質体に潤滑剤を含浸する方法は、潤滑剤を多孔質体の有する連通孔に含有させることができる方法であれば、特に制限なく使用できる。例えば、多孔質体と、潤滑剤とを所定量撹拌機に入れ、所定時間撹拌して、潤滑油が含浸された多孔質体を得る方法を挙げることができる。また、多孔質体に潤滑剤を最大限含浸させる場合は、多孔質体の所定量と、過剰な潤滑剤とを撹拌機に入れ、撹拌停止後の潤滑油の液面が低下しなくなるまで撹拌することによって、含浸された多孔質体を得ることができる。
潤滑剤の粘度が高い場合には、球状多孔質体の内部に潤滑剤が浸透し難い。その際は、潤滑剤が溶解する適当な溶媒で希釈し、その希釈液を多孔質体に浸透させ、徐々に乾燥させて溶媒を揮発させることで多孔質体の内部に潤滑剤を含浸させる方法もある。
あるいは多孔質体を潤滑剤中に浸し、真空引きを行なって強制的に多孔質体の内部に潤滑剤を浸透させる方法、常温で固体の潤滑剤の場合、適当な温度に加熱し、潤滑剤を溶融させて含浸させる方法、常温で液体の潤滑剤でも、粘度が高い場合、適当な温度に加熱し、潤滑剤の粘度を低下させて含浸させる方法等が有効な手法である。また、不飽和ポリエステル樹脂などの液状樹脂に球状多孔質シリカ等の油含有物を混合した上で各種織布に含浸させ、それを積層して潤滑性付与材として使用することも可能である。
本発明において潤滑性付与材中に占める潤滑剤の配合量は多孔質体の内部空間容積の 90 体積%〜150 体積%である。多孔質体の内部が適量の潤滑剤で満たされていない場合、潤滑効果が得られない。また、潤滑剤の配合量が多すぎると、多孔質体の内部に潤滑剤が入り切らず、潤滑剤が成形体中で分散して、樹脂の種類によっては、成形体の強度低下を招いたり、あるいは成形時に不具合を起したりする原因となるおそれがある。
本発明に用いられる導電性樹脂組成物中に占める潤滑性付与材の配合割合は、5 体積以上、60 体積%未満であり、より好ましくは 30 体積%〜50 体積%である。5 体積%未満の場合、十分な潤滑性を付与できず、摩擦係数を低減できない。60 体積%以上ではベース樹脂の量が少なくなり過ぎて成形性が悪くなる。また、強度や耐摩耗性が低下する場合もあるので好ましくない。
本発明に使用できる多孔質体としては、連通孔を有し、潤滑剤を含浸・保持できる多孔質体であれば使用できる。平均粒子径は 0.5μm〜100μm 程度のものが好ましく、特に球状のものが好ましい。このような多孔質体として真球状多孔質シリカなどの無機物からなる多孔質体、アクリル樹脂等の有機物からなる多孔質体、球状に成形したフェノール樹脂等の球状高分子体を炭化させながら多孔質化させた多孔質体等が知られている。なお、平均粒子径は顕微鏡法にて測定した値である。
ここで、球状とは長径に対する短径の比が 0.8〜1.0 の球をいい、真球状とは球状よりもより真球に近い球をいう。
これらのなかで、連通孔を有し、潤滑剤を含浸・保持でき、摺動界面のせん断力で破壊する性質があり相手材を傷つけることのない真球状多孔質シリカを用いることが好ましい。好ましい多孔質シリカは非晶質の二酸化ケイ素を主成分とする粉末である。例えば、一次粒子径が 15 nm 以上の微粒子の集合体である沈降性シリカ、あるいはアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含有したケイ酸アルカリ水溶液を有機溶媒中で乳化し、炭酸ガスでゲル化させることにより得られる粒子径が 3〜8 nm の一次微粒子の集合体である真球状多孔質シリカ(特開2000−143228号公報等)等が挙げられる。
本発明においては、粒子径が 3〜8 nm の一次微粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した多孔質シリカが、連通孔を有しており、摺動界面のせん断力で破壊する性質があるため、特に好ましい。真球状シリカ粒子としては、平均粒子径が 0.5μm〜100μm である。このような真球状シリカ粒子は、その内部に潤滑剤を保持することが可能であり、かつ摺動界面において内部に含浸した潤滑剤を少量ずつ供給することが可能である。平均粒子径が 0.5μm 未満では、ハンドリング性が悪い。また、潤滑剤の含浸量が十分でない。平均粒子径が 100μm をこえると、溶融樹脂中での分散性が悪い。また、溶融樹脂の混練時にかかるせん断力により、集合体が破壊し、球状を保持できない可能性がある。取り扱い易さや摺動特性の付与を考慮した場合、平均粒子径は 1μm〜20μm が特に好ましい。このような真球状多孔質シリカとしては、旭硝子社製:サンスフェア、鈴木油脂工業社製:ゴットボール等を例示できる。
また、多孔質シリカとして(株)東海化学工業所製:マイクロイドがある。
粒子径が 3 nm〜8 nm の一次微粒子が集合した真球状シリカ粒子は、比表面積が 200 m2/g〜900 m2/g、好ましくは 300 m2/g〜800 m2/g、細孔体積が 1 ml/g〜3.5 ml/g 、細孔径が 5 nm〜30 nm、好ましくは 20 nm〜30 nm、吸油量が 150 ml/100 g〜400 ml/100 g、好ましくは 300 ml/100 g〜400 ml/100 g の特性を有することが好ましい。また、水に浸漬したのち再度乾燥しても、上記細孔体積および吸油量が浸漬前の 90 体積%以上を保つことが好ましい。
ここで、比表面積および細孔体積は窒素吸着法により、吸油量はJIS K5101に準じて測定した値である。また、上記真球状シリカ粒子の内部と外表面はシラノール基(Si−OH)で覆われていることが、潤滑剤を内部に保持しやすくなるため好ましい。さらに、多孔質シリカは、母材に適した有機系、無機系などの表面処理を行なうことができる。
本発明に使用できる潤滑剤は、常温で液体の潤滑油、常温で固体のワックス、あるいは潤滑油に増ちょう剤を含んだグリース状物質等、潤滑効果を有する物質であれば特に限定されない。
潤滑油としては、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、ポリブテン、ポリ-α-オレフィン、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂とポリオールとのエステル油、リン酸エステル、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等、潤滑油として汎用されているものであれば使用できる。これらの中で、低摩擦が要求される本発明の導電性すべり軸受には、シリコーン油などを用いることで好ましい結果が得られる。シリコーン油は上記真球状多孔質体表面に残存するシラノール基と親和性があるため特に好ましい。シリコーン油としては、官能基を有さないシリコーン油、官能基を有するシリコーン油のいずれも使用できる。
ワックスとしては、炭素数が 24 以上のパラフィン系ワックス、炭素数が 26 以上のオレフィン系ワックス、炭素数が 28 以上のアルキルベンゼン、あるいは結晶性のマイクロクリスタリンワックス等の炭化水素系ワックス、またはミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、炭素数が 18 以上の不飽和脂肪酸(例えばオクタデセン酸、パリナリン酸等)等の高級脂肪酸誘導体ワックスが挙げられる。高級脂肪酸誘導体ワックスとしては、1)ベヘン酸エチル、トリコ酸エチルなどの炭素数が 22 以上の高級脂肪酸メチルおよびエチルエステル、炭素数が略 16 以上の高級脂肪酸と炭素数が 15 以上の高級1価アルコールとのエステル、ステアリン酸オクタデシルエステル、炭素数が 14 以上の高級脂肪酸トリグリセライド等の高級脂肪酸エステル類、2)パルチミン酸
アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド類、3)ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸とアルカリ金属およびアルカリ土類金属との塩類等が挙げられる。
グリース状物質は、基油となる上述の潤滑油に増ちょう剤が添加されている。増ちょう剤を例示すれば、1)石けん系として、カルシウム系石けん、ナトリウム系石けん、リチウム系石けん、バリウム系石けん、アルミニウム系石けん、亜鉛系石けん等、2)コンプレックス石けん系としてカルシウム系コンプレックス石けん、ナトリウム系コンプレックス石けん、リチウム系コンプレックス石けん、バリウム系コンプレックス石けん、アルミニウム系コンプレックス石けん、亜鉛系コンプレックス石けん等、3)非石けん系として、ナトリウムテレフタメート、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物、シリカエアロゲル、モンモリロナイト、ベントン、PTFE樹脂、フルオリネートエチレンプロピレンコポリマー、BN等がある。
本発明に使用できる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等、すべり軸受の摺動材として使用できる形態を形成できる合成樹脂であれば特に限定されない。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等のポリエチレン樹脂、変性ポリエチレン樹脂、水架橋ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、PTFE樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリケトン樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリオキサゾリン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等を例示できる。また、上記合成樹脂から選ばれた2種以上の材料の混合物、すなわちポリマーアロイなどを例示できる。
本発明に用いられる導電性樹脂組成物中に占める樹脂の配合割合は、40 体積%以上である。40 体積%未満の場合、樹脂の量が少なくなり強度が大幅に低下するおそれがあるので好ましくない。
さらに摩擦・摩耗特性を改善して各種機械物性を向上させるために適当な充填材を添加することができる。例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、BN繊維、石英ウール、金属繊維等の繊維類またはこれらを布状に編んだもの、炭酸カルシウム、リン酸リチウム、炭酸リチウム、硫酸カルシウム、硫酸リチウム、タルク、シリカ、クレー、マイカ等の鉱物類、酸化チタンウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカ、硫酸カルシウムウィスカなどの無機ウィスカ類、カーボンブラック、黒鉛、ポリエステル繊維、ポリイミド樹脂やポリベンゾイミダゾール樹脂等の各種熱硬化性樹脂が挙げられる。
また、摺動性を向上させる目的で、アミノ酸化合物やポリオキシベンゾイルポリエステル樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、液晶樹脂、アラミド樹脂のパルプ、PTFE樹脂やBN、MoS2、二硫化タングステン等を配合できる。
また、熱伝導性を向上させる目的で、金属繊維、酸化亜鉛等を配合してもよい。また、上記充填材を複数組み合わせて使用することももちろん可能である。なお、この発明の効果を阻害しない配合量で一般合成樹脂に広く適用しえる添加剤を併用してもよい。例えば離型剤、難燃剤、耐候性改良剤、着色剤等の工業用潤滑剤を適宜添加してもよく、これらを添加する方法も特に限定されるものではない。
さらに、本発明の導電性すべり軸受に用いられる導電性樹脂組成物の潤滑性および導電性を損なわない限り、中間製品または最終製品である導電性すべり軸受の形態において、別途、例えばアニール処理等の化学的または物理的な処理によって機械的特性や導電性などの特性改善のための変性が可能である。
本発明の導電性すべり軸受の実施形態を図1に基づいて説明する。図1は導電性すべり軸受の一例を示す斜視図である。
図1に示す導電性すべり軸受1は、円筒状の摺動部1aを上述の導電性樹脂組成物で形成し、これを摺動部1aより大径の円筒状ハウジング2に嵌め、ハウジング2の内側に軸方向に形成した蟻溝に樹脂製回り止め2aを圧入して一体化したものである。円筒状ハウジング2は金属、樹脂、ゴムまたはセラミック材で形成できる。
上記導電性すべり軸受は、摺動部1aに機械的強度が要求されないので、最良の摺動性を有する材料が選択でき、ハウジング2は機械的特性や耐久性に優れた材料を優先的に選択できる。このように導電性すべり軸受は、摺動面とその他の部分を異なる材質で形成し、各部分の機能を分離して持たせることができる。また、機械的強度が強く要求されない使用条件のものでは摺動面とハウジングを同じ材料で一体に形成できる。
導電性すべり軸受1は、円筒状の摺動部1aを上述の導電性樹脂組成物で形成するので、現像ローラ7(図2参照)との摺動界面において発生する静電気を低減し、低減された静電気を帯電させることなく導電性すべり軸受1外へ逃がすことができる。
次に、本発明の導電性すべり軸受を用いた電子写真装置について図2に基づいて説明する。図2は本発明の導電性すべり軸受を用いた電子写真装置の現像装置を示す図である。トナー等の現像剤3を収容する容器4と、容器内4内の現像剤3を攪拌する攪拌部材5と静電潜像保持体6に対向配置された現像ローラ7と、現像ローラ7に内包された磁気部材8と、現像ローラ7に供給される現像剤3の量を規制する現像剤規制部材9、転写装置10とから構成されている。なお、11は帯電器を、12はレーザービームなどの露光器を、13はクリーニング装置を、14は用紙などの経路をそれぞれ示す。攪拌部材5や静電潜像保持体6、現像ローラ7等の支持軸受に、優れた摺動特性と導電性とを併せ持つ本発明の導電性すべり軸受を使用するので、駆動回転させる軸トルクを小さくすることができ、駆動回転にともない発生する静電気を低減するとともに、発生した静電気を帯電することなく電子写真装置の現像装置外へ逃がすことができる。そのため、小型駆動装置が使用でき現像装置の小型軽量化が図れるので、たとえば、静電潜像形成手段や現像剤供給手段、現像手段、帯電防止手段、静電気除去手段等をカートリッジ化したプロセスカートリッジに好適である。
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例6
多孔質体として球状多孔質シリカ、旭硝子社製:サンスフェアH53(平均粒子径 5μm )を、潤滑剤としてシリコーン油、信越シリコーン社製:KF96Hを、樹脂としてポリエチレン樹脂、三井石油化学社製:リュブマーL5000を、それぞれ用意した。球状多孔質シリカの体積を 1 として、その 6 倍の体積のシリコーン油を球状多孔質シリカに含浸して、潤滑性付与材を作製した。得られた潤滑性付与材と、表1に示す導電材とを、表2に示す割合でポリエチレン樹脂に添加して、2軸押出し装置を用いて溶融混練し、ペレットを得た。
このペレットを用いて射出成形を行ない、内径Φ9.2 mm×肉圧 1.5 mm×幅 5.5 mm の試験用すべり軸受を作製し成形性を評価した。
成形性:試験用すべり軸受を作製するための射出成形時に、問題なく成形できれば可と評価して「○」を、成形できない場合は不可と評価して「×」を、それぞれ表2に併記した。
得られた試験用すべり軸受を図3に示す摩擦トルク測定機にセットして以下に示す条件、評価方法で摩擦摩耗試験および導電性試験を行なった。結果を表2に併記した。
<摩擦摩耗試験>
試験機:摩擦トルクは、図3において試験用すべり軸受15をハウジング17に組み込み、アルミニウム合金製相手軸16との摩擦力を静圧空気リニアー軸受18を介してロードセル19にて測定する。荷重は負荷用コイルバネ20で静圧空気リニアー軸受18を介してハウジング17を押し上げ負荷した。21は支点である。
試験用すべり軸受ハウジング:SUS303製
相手軸:アルミニウム合金A5056(Ra=0.8μm )、直径Φ9 mm
面圧: 3 MPa
周速: 4.2 m/min.
温度: 室温
時間: 50 h
雰囲気:大気中
測定項目および評価基準を以下に示す。
摩擦トルク:1.5 kgf・cm 以下を耐摩擦性に優れていると評価して「○」を、それ以外を耐摩擦性に劣ると評価して「×」を、それぞれ表2に併記した。
軸受摩耗量:内径変化量から摩耗深さを算出し、30μm 以下を耐摩耗性に優れていると評価して「○」を、それ以外を耐摩耗性に劣ると評価して「×」を、それぞれ表2に併記した。
相手材表面の損傷状態:試験前後の相手材の状態を目視により観察し損傷がなければ可と評価して「○」を、損傷があれば不可と評価して「×」を、それぞれ表2に併記した。
<導電性試験>
摩擦摩耗試験中の相手軸およびハウジング間の抵抗値を測定した。測定された抵抗値をすべり軸受の抵抗値とし、109Ω以下を導電性に優れると評価して「○」を、それ以外を導電性に劣ると評価して「×」を、それぞれ表2に併記した。
<総合評価>
上記摩擦摩耗試験、成形性試験および導電性試験におけるすべての評価が「○」であるものを、総合評価「○」とし、少なくともいずれかが「×」であるものを総合評価「×」とした。
Figure 2008164073
Figure 2008164073
表2に示すように、実施例は全て優れた摺動特性および導電性を示した。
比較例1は摩擦摩耗特性に優れたが、導電材を配合していないため絶縁体であった。
比較例2は導電材を所定量含んでいるため導電性に優れたが、潤滑性付与材が所定量配合されていないため摩擦トルクが 1.7 kgf・cm と高く摩擦摩耗特性が劣った。
比較例3は潤滑性付与材が所定量の範囲をこえて配合されており樹脂分が少ないので、ペレットは得られたが射出成形できず、軸受は得られなかった。
比較例4は導電材が所定量をこえていたため摩擦トルク測定において軟質材である相手材を損傷し、摩擦トルクも 1.7 kgf・cm と高く耐摩耗性も著しく悪化した。
比較例5は導電材が本発明で開示した特性を有しない導電材であったため、すべり軸受が 109Ω以下の抵抗値とならず導電性を有しなかった。また、摩擦トルク測定において軟質材である相手材を損傷しており、摩擦トルクも 1.8 kgf・cm と高く耐摩耗性も著しく悪化した。
比較例6は使用した導電材がほぼ球状であり、粒子径は 0.055μm である。この導電材を仮に繊維径 0.055μm の繊維とみなした場合、アスペクト比は 1 であり、本発明で開示した特性を有していない。実際、この組成物は 109Ω 以下の導電性を保有せず、また、耐摩耗性も著しく悪化した。
本発明の導電性すべり軸受は優れた摺動特性と導電性とを併せ持つので、電子写真装置などの事務機器やAV機器や、自動車用途などのすべり軸受として好適に利用できる。特に摩擦等に起因する帯電の防止や、通電を要求される場合でも導電性すべり軸受として好適に利用できる。また、アルミのような軟質材を摺動相手材とした場合でも特に相手材を損傷することなく好適に利用できる。
本発明の導電性すべり軸受の一例を示す斜視図である。 本発明の導電性すべり軸受の使用例(電子写真装置の現像装置)を示す図である。 摩擦トルク測定機を示す図である。
符号の説明
1 導電性すべり軸受
1a 摺動部
2 ハウジング部
2a 回り止め
3 現像剤
4 容器
5 攪拌部材
6 静電潜像保持体
7 現像ローラ
8 磁気部材
9 現像剤規制部材
10 転写装置
11 帯電器
12 露光器
13 クリーニング装置
14 用紙などの経路

Claims (3)

  1. 相手材と摺動する摺動面が、樹脂に、多孔質体および潤滑剤からなる潤滑性付与材と、繊維状導電材とを少なくとも配合してなる導電性樹脂組成物で形成された導電性すべり軸受であって、
    前記導電性樹脂組成物中に占める配合割合は、前記潤滑性付与材が 5 体積%以上、60 体積%未満であり、前記繊維状導電材が 0.1 体積%以上、5 体積%未満であり、かつ前記樹脂が 40 体積%以上であり、
    前記繊維状導電材は繊維径 0.3μm 以下、繊維長 1μm 以上で、かつアスペクト比 5 以上の形状を有することを特徴とする導電性すべり軸受。
  2. 前記繊維状導電材は、炭素原子からなることを特徴とする請求項1記載の導電性すべり軸受。
  3. 前記多孔質体は、連通孔を有し、平均粒子径 0.5μm〜100μm であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の導電性すべり軸受。
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