JP2008161136A - 樹木の支持施工方法と、支持施工用具 - Google Patents
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Abstract
【課題】公園、歩道、博覧会場、駐車場、プラザ、広場、公開空地等の都市部における種々の場所で、人為的に植設される樹木を支持しながら施工するための樹木の支持施工方法と、支持施工用具に関し、自然環境破壊の観点から、主として木製の杭を使用するにもかかわらず、杭に対する引き抜き抵抗力を作用させることで杭の不用意な抜けを防止することができ、また支持施工のための作業を従来に比べて非常に容易にし、支持施工に使用する部材のコストも低減することのできる樹木の支持施工方法と支持施工用具を提供することを課題とする。
【解決手段】樹木の根鉢に沿って複数の杭を地面に打ち込み、該複数の杭に対して根鉢側への締付力を付与する締付部材と、該締付部材により締め付けられる複数の杭に生じる上向きの引き抜き力に対する抵抗力として、引き上げ抵抗力を生じさせる引き上げ抵抗部材とを取り付けて施工することである。
【選択図】図18
【解決手段】樹木の根鉢に沿って複数の杭を地面に打ち込み、該複数の杭に対して根鉢側への締付力を付与する締付部材と、該締付部材により締め付けられる複数の杭に生じる上向きの引き抜き力に対する抵抗力として、引き上げ抵抗力を生じさせる引き上げ抵抗部材とを取り付けて施工することである。
【選択図】図18
Description
本発明は、樹木の支持施工方法と、支持施工用具、さらに詳しくは、公園、歩道、博覧会場、駐車場、プラザ、広場、公開空地等の都市部における種々の場所で、人為的に植設される樹木を支持しながら施工するための樹木の支持施工方法と、支持施工用具に関する。
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて都市部における種々の場所、たとえば、公園、歩道、博覧会場、駐車場、プラザ、広場、公開空地等の場所で、人為的に植設される樹木を支持しながら施工するための施工方法が実施されている。そして、このような支持施工方法においては、樹木の根鉢を地下部分で固定する必要があり、そのような支持施工方法や支持施工用具として従来から種々の方法や用具が採用されている。
たとえば、根鉢の周囲にワイヤー等の紐状体を掛け回し、その紐状体をアンカー等の打込部材に係止し、その打込部材を地中に打ち込んで根鉢を固定する方法や、そのアンカーに代えて根鉢を載置材に載置し、その載置材に紐状体を掛け回して根鉢を固定する方法、或いは根鉢の側面に沿って杭状の部材を打ち込む方法等が用いられているが、これらの方法に用いられる支持施工用具の多くは金属製のものである。
ところが、これらの支持施工用具は、根鉢を固定する目的で根鉢の周囲に設置されることから、一般には土中に埋設してそのまま放置される。しかし、金属製のこれらの支持施工用具が土中に埋設した状態でそのまま放置されることは、自然環境破壊の観点からは、本来好ましいものでない。
そこで、このような点に鑑みて、たとえば木製の杭を根鉢の側面に沿って打ち込むような方法も行われており、このような方法として、たとえば下記特許文献1のような特許出願がなされている。ところが、この特許文献1に記載された方法で用いる木製の杭は、引き抜き抵抗力が弱く、真上に引き抜くと簡単に引き抜くことができるものであり、このため、樹木に傾倒力が生じたような場合に、根鉢を確実に保持することができないという問題点があった。
さらに、このような木製の杭の引き抜き強度を高める観点から、下記特許文献2のような特許出願もなされている。すなわち、この特許文献2に記載された方法は、根鉢の周面に沿って木製の支持杭を打ち込むとともに、その支持杭に木製の根枷部材を横向きに取り付けて施工される方法である。
しかしながら、この特許文献2に記載された方法では、2つのリングを有する根枷取付具のうちの1つのリングに杭を差し込み、他のリングに根枷部材を差し込むことによって根枷部材が2本の杭に跨がるように取り付けられるため、このようなリングに杭と根枷部材とを差し込んで施工する作業自体が煩雑であるという問題があった。また、上記特許文献2に記載された方法では、計4本の杭で単に根鉢を挟み込んで固定しているにすぎないものであるので、上記のような根枷部材を用いても、杭の引き抜き抵抗力を本質的に強くすることはできなかった。
この点をより詳細に説明すると、上記特許文献2の方法では、杭間に根枷部材を横向きに取り付けて装着される根枷取付具で杭間の下部を固定するとともに、杭間の上部はワイヤー等の締付部材によって固定している。しかし、杭間の上部での締付部材による固定手段と、杭間の下部での根枷取付具による固定手段とは、相互に連動して機能しているようなことが全くなく、それぞれの固定力が個別的に機能しているにすぎない。しかも、これらの固定力は横向きに作用している。従って、杭に対して上向きの引き抜き力が作用しても、上記杭間の上部及び下部で横向きに作用していうる2つの固定手段が連動して杭に上向きに生じる引き抜き力に対する抵抗力を生じさせることがないので、杭の引き抜き抵抗力を本質的に強くすることができなかったのである。
また、特許文献2の方法では、杭と根枷部材の双方が木製のものであり、且つ杭と根枷部材とは、単に金属製のリング状のもので固定されているだけであるので、一定年数の経過によって土中で杭や根枷部材が腐食して分解したような場合、杭や根枷部材による根鉢に対する支持力、固定力が喪失され、金属製のリングのみが土中に残存するので、全体として根鉢に対する支持構造が機能しなくなるおそれがあるという問題があった。
この点をより詳細に説明すると、上記特許文献2の方法では、杭間に根枷部材を横向きに取り付けて装着される根枷取付具で杭間の下部を固定するとともに、杭間の上部はワイヤー等の締付部材によって固定している。しかし、杭間の上部での締付部材による固定手段と、杭間の下部での根枷取付具による固定手段とは、相互に連動して機能しているようなことが全くなく、それぞれの固定力が個別的に機能しているにすぎない。しかも、これらの固定力は横向きに作用している。従って、杭に対して上向きの引き抜き力が作用しても、上記杭間の上部及び下部で横向きに作用していうる2つの固定手段が連動して杭に上向きに生じる引き抜き力に対する抵抗力を生じさせることがないので、杭の引き抜き抵抗力を本質的に強くすることができなかったのである。
また、特許文献2の方法では、杭と根枷部材の双方が木製のものであり、且つ杭と根枷部材とは、単に金属製のリング状のもので固定されているだけであるので、一定年数の経過によって土中で杭や根枷部材が腐食して分解したような場合、杭や根枷部材による根鉢に対する支持力、固定力が喪失され、金属製のリングのみが土中に残存するので、全体として根鉢に対する支持構造が機能しなくなるおそれがあるという問題があった。
さらに、樹木の立設状態を見た上で根鉢を固定するには、根鉢の下部と植穴の底壁面との間に予備客土を入れることが必要となるが、上記特許文献2のような方法で予備客土を入れると、根枷部材をリングに差し込んで固定する作業を行う際に予備客土が支障となり、せっかく収容した予備客土を植穴から排除して根枷部材の取付作業を行うか、或いは予備客土の上で根枷部材等をほとんど地中に埋めない状態で取り付けなければならない事態も生じることとなる。また、杭の他に、その杭を切断して得られた木製の根枷部材を地中に埋設するので、その切断された根枷部材が腐食する際に土中の酸素や窒素を奪取し、その結果、樹木の生育に悪影響を及ぼすおそれがあった。
いずれにしても、上記従来の特許文献1及び2のように木製の杭を用いる方法においては、木製の杭自体が金属製のものに比べると引き抜き抵抗が弱く、その結果、樹木に傾倒力が生じたときに、杭が不用意に抜けるおそれがあり、根鉢を固定して樹木を支持するという本来の機能が喪失されるおそれがあった。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、自然環境破壊の観点から、主として木製の杭を使用するにもかかわらず、杭に対する引き抜き抵抗力を作用させることで杭の不用意な抜けを防止することができ、また支持施工のための作業を従来に比べて非常に容易にし、且つ支持施工に使用する部材のコストも低減することのできる樹木の支持施工方法と支持施工用具を提供することを課題とするものである。
本発明は、このような課題を解決するために、樹木の支持施工方法と、その支持施
工方法に用いる支持施工用具としてなされたもので、樹木の支持施工方法としての特徴は、樹木16の根鉢17に沿って複数の杭1を地面に打ち込み、該複数の杭1に対して根鉢17側への締付力を付与する締付部材と、該締付部材により締め付けられる複数の杭1に生じる上向きの引き抜き力に対する抵抗力として、引き上げ抵抗力を生じさせる引き上げ抵抗部材6とを取り付けて施工することである。
工方法に用いる支持施工用具としてなされたもので、樹木の支持施工方法としての特徴は、樹木16の根鉢17に沿って複数の杭1を地面に打ち込み、該複数の杭1に対して根鉢17側への締付力を付与する締付部材と、該締付部材により締め付けられる複数の杭1に生じる上向きの引き抜き力に対する抵抗力として、引き上げ抵抗力を生じさせる引き上げ抵抗部材6とを取り付けて施工することである。
さらに支持施工用具としての特徴は、樹木16の根鉢17に沿って地面に打ち込むための複数の杭1と、該複数の杭1に対して締付力を付与する締付部材と、該締付部材によって付与される締付力によって複数の杭1に生じる上向きの引き抜き力に対する抵抗力として、引き上げ抵抗力を生じさせる引き上げ抵抗部材6とを具備して構成されていることである。
引き上げ抵抗部材6としては、たとえばロッド10と、該ロッド10の下部に取り付けられた抵抗体32とで構成されるようなものを用いることが可能である。このようなロッド10と抵抗体32とで構成される引き上げ抵抗部材6は、金属製のものであることが望ましい。また、締付部材としては、根鉢に掛け回される掛け回し材7と、該掛け回し材7の端部を取り付けて該掛け回し材7を締め付ける手段とで構成されるようなものを用いることができる。
さらに、根鉢の肩部に肩パット4を設置し、該肩パット4に掛け回し材7を取り付けることも可能である。さらに、杭1を保持しうる保持部2aを有する杭保持体2を、前記保持部2aで保持させるように杭1に取り付けることも可能である。このような
杭保持体2を杭1に取り付けた場合、その杭保持体2に、引き上げ抵抗部材6のロッド10を取り付けることによって、引き上げ抵抗力を好適に生じさせることができる。
さらに、根鉢17の側面に接触させる根鉢側面接触部材3を、杭保持体2の内面側に設けることも可能である。
杭保持体2を杭1に取り付けた場合、その杭保持体2に、引き上げ抵抗部材6のロッド10を取り付けることによって、引き上げ抵抗力を好適に生じさせることができる。
さらに、根鉢17の側面に接触させる根鉢側面接触部材3を、杭保持体2の内面側に設けることも可能である。
本発明においては、上述のように、樹木の根鉢に沿って複数の杭を地面に打ち込み、該複数に対して締付力を付与する締付部材と、該締付部材によって付与される締付力によって複数の杭に生じる上向きの引き抜き力に対する抵抗力として、引き上げ抵抗力を生じさせる引き上げ抵抗部材とを取り付けて施工するため、樹木の傾倒力等によって、前記締付部材による締付力によって複数の杭に引き抜き力が生じたとき、その
引き抜き力に対する抵抗力として、引き上げ抵抗部材による引き上げ抵抗力が生じることとなり、それによって、杭の不用意な抜けが確実に阻止されることとなる。
引き抜き力に対する抵抗力として、引き上げ抵抗部材による引き上げ抵抗力が生じることとなり、それによって、杭の不用意な抜けが確実に阻止されることとなる。
また、引き上げ抵抗部材として、たとえばロッドと、該ロッドの下部に取り付けられた抵抗体とで構成されるようなものを用いる場合には、引き上げ抵抗力がロッドに沿って上下方向に確実に生じ、その結果、引き上げ抵抗部材による引き上げ抵抗力がより好適に生じることとなる。さらに、このようなロッドと抵抗体とで構成される引き上げ抵抗部材として金属製のものを用いる場合には、土中に埋設されて一定年数経過した後においても、引き上げ抵抗部材が腐食することがないので、杭として木製のものを用いる場合、仮に杭が一定年数経過後に腐食して分解したとしても、金属製のロッドが縦方向に垂下したような状態で土中に残存し、その垂下したロッドの下部に金属製の抵抗体が残存することになるので、上記従来の木製の杭と根枷部材とを用いる方法に比べると、一定年数経過後の杭の腐食、分解による根鉢に対する支持力、固定力の低下を、最大限に抑えることができるという効果がある。
さらに、杭の他に、締付部材や引き上げ抵抗部材等を備えただけの簡易な構成の支持施工用具を用いて施工することができるため、施工の作業も容易に行えるとともに、安価な支持施工用具を提供することができるという効果がある。
また、従来の方法のように、根枷部材をリングに差し込んで固定するような煩雑な作業を要しないので、樹木の立設状態を見た上で根鉢を固定する際に、植穴内に予備客土を入れても、施工作業に支障を生じることもない。また、従来の方法のように、杭を切断して得られた根枷部材を地中に埋設するようなこともないので、樹木の生育に悪影響を及ぼすおそれもない。
以下、本発明の実施形態について図面に従って説明する。
(実施形態1)
本実施形態の支持施工用具は、図1乃至図11に示すように、根鉢の側面に沿って地面に打ち込むための木製の杭1と、該杭1を外嵌入して保持する杭保持体2と、該杭保持体2の内側に固着されて根鉢の側面に当接させる根鉢側面接触部材3と、根鉢の肩部に当接させる肩パット4と、根鉢の上面に掛け回す掛け回し材の一例としての掛け回しベルト7と、該掛け回しベルト7に生じる張力を前記肩パット4側から杭保持体2側へ伝達する張力伝達部材5と、杭1の引き上げに対する抵抗力を生じさせる引き上げ抵抗部材6と、前記掛け回しベルト7を締め付けるためのウインチ8とを具備して構成されている。
本実施形態の支持施工用具は、図1乃至図11に示すように、根鉢の側面に沿って地面に打ち込むための木製の杭1と、該杭1を外嵌入して保持する杭保持体2と、該杭保持体2の内側に固着されて根鉢の側面に当接させる根鉢側面接触部材3と、根鉢の肩部に当接させる肩パット4と、根鉢の上面に掛け回す掛け回し材の一例としての掛け回しベルト7と、該掛け回しベルト7に生じる張力を前記肩パット4側から杭保持体2側へ伝達する張力伝達部材5と、杭1の引き上げに対する抵抗力を生じさせる引き上げ抵抗部材6と、前記掛け回しベルト7を締め付けるためのウインチ8とを具備して構成されている。
これらの各部材のうち、杭保持体2と、根鉢側面接触部材3と、肩パット4と、張力伝達部材5との4つの部材は一体化されて根鉢固定体20a、20bを構成している。本実施形態においては、計4個の根鉢固定体20a、20a、20b、20bが根鉢17の周囲に設置されるが、構造の異なる2種類の根鉢固定体20a、20bが、それぞれ2個ずつ用いられる。この点については後述する。
杭1は、図1に示すように、一般の丸太杭の形態に形成されたもので、その下端1aが地面に打ち込み可能に、尖って形成されている。杭保持体2は、図2乃至図5に示すように、前記杭1が外嵌入可能で且つ離脱しにくいように、該杭1の外形とほぼ同径の内径を有する略円筒状に形成された保持部2aを具備して構成されている。杭保持体2の保持部2aには、図2の2点鎖線で示すように、ボルト27、27が2箇所から挿通されており、その2箇所から挿通されたボルト27、27によって、杭保持体2の保持部2a内に嵌入される杭1が固定されることとなる。また、保持部2aの略中央には、孔9が穿設されている。この孔9は、後述する引き上げ抵抗部材6を、
ロッド10等を介して杭保持体2の保持部2aに取り付ける際に、ボルト等を挿通させるためのものである。
ロッド10等を介して杭保持体2の保持部2aに取り付ける際に、ボルト等を挿通させるためのものである。
根鉢側面接触部材3は、細い金属製の枠フレーム3aと、該枠フレーム3aの縦方向に配設された細い金属製の複数本の縦フレーム3bと、該縦フレーム3bに交差するように中央に配設された横フレーム3cとで構成されている。そして、前記杭保持体2の斜め後部側から、前記根鉢側面接触部材3の枠フレーム3aの両側に向かって架設杆2b、2bが架け渡されて固着されている。図2においては、枠フレーム3aと縦フレーム3bは現わされているが、横フレーム3cは架設杆2bの背面側に隠れて現わされていない。この横フレーム3cは後述する図22に現わされている。そして、前記根鉢側面接触部材3は、前記杭保持体2の保持部2aの内面側に固着されている。
肩パット4は、根鉢17の肩部に設置されるもので、肩パット4の構成は、上述の2種類の根鉢固定体20a、20bによって少し異なっている。掛け回しベルト7を掛け回す一方の根鉢固定体20aにおいては、図2乃至図4に示すように、肩パット4の上面に2条のリブ4a、4aが形成されているとともに、該2条のリブ4a、4a間に、掛け回しベルト7が掛け回されて掛止される掛止部4bが形成されている。
掛け回しベルト7の端部を取り付ける他方の根鉢固定体20bにおいては、前記一方の根鉢固定体20aと同様に、肩パット4の上面に2条のリブ4a、4aが形成されているが、掛止部4bは形成されていない。この掛止部4bに代えて、図5に示すように、取付金具14とウインチ8とが取り付けられている。取付金具14とウインチ8とは、同図に示すように、相互に約90度の角度をなすように、ボルト22で同軸的に肩パット4に取り付けられている。
この場合、取付金具14とウインチ8とを同軸的に取り付けているボルト22は、図5に示すように肩パット4の中央よりも右側に位置ずれした位置に取り付けられ、
ベルト7が取り付けられる側のウインチ8の端部8aが肩パット4の略中央に位置するように設定されている。これは、ウインチ8を締め付けたときに、肩パット4を押さえ付ける力が、掛け回しベルト7が取り付けられる側のウインチ8の端部8aに最も強く作用することとなり、従って仮にボルト22が肩パット4の略中央に位置すると、上記ウインチ8の端部8aは左側に位置ずれした位置に存在することとなるので、掛け回しベルト7が取り付けられる側とは反対側のウインチ8の端部が浮き上がり、その結果、肩パット4を押さえ付ける力が低減するおそれがあるからである。
ベルト7が取り付けられる側のウインチ8の端部8aが肩パット4の略中央に位置するように設定されている。これは、ウインチ8を締め付けたときに、肩パット4を押さえ付ける力が、掛け回しベルト7が取り付けられる側のウインチ8の端部8aに最も強く作用することとなり、従って仮にボルト22が肩パット4の略中央に位置すると、上記ウインチ8の端部8aは左側に位置ずれした位置に存在することとなるので、掛け回しベルト7が取り付けられる側とは反対側のウインチ8の端部が浮き上がり、その結果、肩パット4を押さえ付ける力が低減するおそれがあるからである。
張力伝達部材5は、該肩パット4の掛止部4bに掛止される掛け回しベルト7の張力を、前記杭保持体2に伝達するためのもので、図2及び図3に示すように、前記肩パット4と、根鉢側面接触部材3の上面側とに架設されている。この場合、張力伝達部材5は、肩パット4と杭保持体2とに架設されていてもよい。
引き上げ抵抗部材6は、該杭保持体2に取り付けられて、前記杭1の上向きへの引き抜きに対する抵抗力としての引き上げ抵抗力を生じさせるもので、図6乃至図8に示すように、抵抗体32と、ロッド10とを具備して構成されている。抵抗体32は、
上面側4箇所に略半円状に湾曲させたリブ30を備えたプレート6aと、該プレート6aの裏面側に取り付けられた略コ字状の補強部材13とで構成されている。そして、
プレート6aの上部に、前記ロッド10が取り付けられており、さらにロッド10の上部に取付部11が形成されている。そして、この引き上げ抵抗部材6の取付部11の孔12と、杭保持体2に形成された孔9にボルト等が挿通されることで、後述のように引き上げ抵抗部材6が杭保持体2に取り付けられることとなる。
これら、ロッド10、抵抗体32を構成するプレート6a、補強部材13、取付部
11等の、引き上げ抵抗部材6の各構成部材は、すべて金属製のものである。
上面側4箇所に略半円状に湾曲させたリブ30を備えたプレート6aと、該プレート6aの裏面側に取り付けられた略コ字状の補強部材13とで構成されている。そして、
プレート6aの上部に、前記ロッド10が取り付けられており、さらにロッド10の上部に取付部11が形成されている。そして、この引き上げ抵抗部材6の取付部11の孔12と、杭保持体2に形成された孔9にボルト等が挿通されることで、後述のように引き上げ抵抗部材6が杭保持体2に取り付けられることとなる。
これら、ロッド10、抵抗体32を構成するプレート6a、補強部材13、取付部
11等の、引き上げ抵抗部材6の各構成部材は、すべて金属製のものである。
掛け回しベルト7の先端部29側は、図9に示すように取付金具14の長孔28に挿入され、それによって前記掛け回しベルト7の先端部29側が取付金具14に取り付けられている。この取付金具14には、上述のように該取付金具14とウインチ8とがボルト22によって同軸的に肩パット4に取り付けられる際に、そのボルト22の挿通部分となる挿通孔23が穿設されている。そして、ボルト22が挿通孔23に挿通されて、取付金具14とウインチ8とが肩パット4に取り付けられた状態において、取付金具14は左右に可動しうるように構成されている。これによって、ウインチ8の締付力が、該ウインチ8側に取り付けられた掛け回しベルト7の端部のみならず、取付金具14側に取り付けられた掛け回しベルト7の端部にも好適に作用することとなり、掛け回しベルト7の張力が好適に生じることとなるのである。
尚、ウインチ8は、図10及び図11に示すように、掛け回しベルト7の端部を取り付ける軸部24を具備し、さらに該軸部24の両側のラチェット25と、該ラチェット25に係止可能な係止体26とを具備して構成されている。そして、前述のように、ウインチ8の端部8aが肩パット4の略中央に位置して肩パット4を押さえ付けるのであるが、厳密にはウインチ8の端部8aの下側が肩パット4を押さえ付けることとなる。
この掛け回しベルト7の素材としては、年月の経過に伴って分解する素材、たとえば生分解樹脂、その他、麻、綿、ジュート等の素材を用いることができる。生分解樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の材質のものを用いることができる。また掛け回しベルト7の素材の形態としては、上記生分解樹脂からなる糸であって、たとえばテグス等に用いられるような糸を編成又は織成されたような形態のものを用いることができる。この場合、この掛け回しベルト7の全体を上記のような分解性の素材で構成してもよいが、本実施形態では、図9に示すように、取付金具14の長孔28に挿入される部分となる先端部29のみが分解性の素材で構成されており、それ以外の掛け回しベルト7の部分は、たとえば一般の合成樹脂製素材のように分解しにくい素材のものを用いてもよい。このように構成することで、たとえば掛け回しベルト7の先端部29は比較的高価な生分解樹脂で構成し、先端部29以外の部分を比較的安価な汎用性の合成樹脂で構成し、全体のコストを低減することが可能となる。
次に、上記のような構成からなる樹木の支持施工用具を用いて、樹木の支持施工を行う方法について説明する。先ず、図12に示すように、予め形成された植穴15内に樹木16の根鉢17を収納し、その底壁面18に根鉢17を載置する。
次に、図13に示すように、根鉢17の側面に沿って、杭1をハンマー等で植穴15の底壁面18に打ち込む。この場合、杭1は、同図に示すように、やや内向きに傾いた状態となるように打ち込む。尚、後述する杭保持体2を杭1に外嵌入させる部分においては、根鉢側面接触部材3が根鉢に接触することとなるので、杭1は根鉢に直接接触していないが、上述のように杭1をやや内向きに傾いた状態となるように打ち込むことで、少なくとも下部の部分においては、杭1は根鉢に接触した状態となっている。本実施形態では、計4本の杭1を、根鉢17の側面に沿って略等間隔の位置に打ち込む。
また、底壁面18には予め予備客土19を盛っておくことが望ましい。そして、杭1を底壁面18に打ち込んだ後、その杭1が、所望の高さになるように、杭1の上端部を切断する。この場合の所望の高さとは、図13のように切断後の杭1の上端部が根鉢17の上面からわずかに低くなるような高さである。
次に、上記支持施工用具を根鉢17の周囲に設置する。その際、先ず図14及び図15に示すように、杭保持体2、根鉢側面接触部材3、肩パット4、及び張力伝達部材5からなる根鉢固定体20a、20bに、引き上げ抵抗部材6を取り付けて、引き上げ抵抗部材6を一体化させておく。具体的には、根鉢固定体20a、20bを構成する部材のうちの杭保持体2に穿設された孔9と、引き上げ抵抗部材6の取付部11の孔12とに、ボルト等が挿通されることで、引き上げ抵抗部材6が杭保持体2に取り付けられることとなる。この引き上げ抵抗部材6は、施工現場で杭保持体2に取り付けることも可能であるが、施工現場へ持参する前に、予め杭保持体2に取り付けて根鉢固定体20a、20bに一体化させておいてもよい。
そして、引き上げ抵抗部材6を一体化させた根鉢固定体20a、20bを、図16及び図17に示すように、根鉢17の周囲の略等間隔の位置に4個設置する。この場合、2種類の根鉢固定体20a、20bのうち、掛け回しベルト7を掛け回す一方の根鉢固定体20aは、同図のように根鉢17の周囲における対向する位置に設置され、掛け回しベルト7の端部を取り付ける取付金具14とウインチ8とが取り付けられた他方の根鉢固定体20bも、同図のように根鉢17の周囲における対向する位置に設置される。
このように根鉢固定体20a、20bを根鉢17の周囲に設置するに際しては、前記杭保持体2を杭1に外嵌入させつつ、根鉢2の肩部に肩パット4を設置し、さらに根鉢2の側面に根鉢側面接触部材3を設置する。この場合、根鉢側面接触部材3の外側には杭保持体2が固着されており、その杭保持体2と肩パット4とに張力伝達部材5が架設された状態となっている。
これによって、肩パット4及び根鉢側面接触部材3は根鉢の肩部及び側面に設置されるとともに、その根鉢側面接触部材3が設置されることによって、杭保持体2も根鉢の側面に沿って設置されることとなる。また、杭保持体2に予め取り付けられていた引き上げ抵抗部材6も、根鉢17の周囲の略等間隔の位置に4個設置されることとなる。この場合において、引き上げ抵抗部材6のロッド10が取付部11を介して杭保持体2に取り付けられているので、ロッド10は杭保持体2側からあたかも垂下するような状態で設置され、さらにロッド10の下部に取り付けられた抵抗体32は、底壁面18に設置されることとなる。
次に、図18図乃至図20に示すように、掛け回しベルト7を、根鉢17の肩部に近い上面に掛け回す。この場合、4個の根鉢固定体のうち、相対面する2個の根鉢固定体20aには、その根鉢固定体20aの肩パット4に形成された掛止部4bに単に掛け回しベルト7が挿入されて掛け回わされるだけであるが、他の相対面する2個の根鉢固定体20bの肩パット4には、上述のように取付金具14とウインチ8との双方が同軸的に取り付けられているので、図21に示すように、掛け回しベルト7の両端部を取付金具14とウインチ8とにそれぞれ取り付け、ウインチ8で締め付けることによって、掛け回しベルト7に張力が生じ、それによって根鉢17が固定されることとなる。
そして、このように張力伝達部材5が肩パット4と杭保持体2とに架設された状態で、肩パット4の掛止部4bに掛け回されている掛け回しベルト7をウインチ8で締め付けると、その締め付けによって掛け回しベルト7に生じる張力が、該掛け回しベルト7が掛け回わされている肩パット4の掛止部4bに伝達され、肩パット4に取り付けられた張力伝達部材5にも張力が作用する。尚、他方の根鉢固定体20bにおいては、肩パット4に掛止部4bは存在しないが、掛け回しベルト7の端部を取り付ける取付金具14とウインチ8とが取り付けられているので、前記一方の根鉢固定体20aの張力伝達部材5の場合と同様に、掛け回しベルト7に生じる張力が、肩パット4に伝達され、肩パット4に取り付けられた張力伝達部材5にも張力が作用することとなる。
一方、杭1には杭保持体2が外嵌入されて該杭保持体2に杭1が保持され、根鉢17の側面に沿って植穴15の底壁面18に杭1が打ち込まれている。従って、上述のようにウインチ8の締め付けによって掛け回しベルト7に張力が生じた場合、その張力は前記張力伝達部材5を介して根鉢側面接触部材3及び杭保持体2に伝達されて、杭1の引抜きに対する抵抗力として上下方向に作用する。この作用の詳細は、樹木に傾倒力が生じた場合の抵抗力として後述する。
さらに、上記のように掛け回しベルト7が根鉢の上面に掛け回わされてウインチ8で締め付けられた後に、植穴17内に土を入れて植穴17を閉塞することによって樹木の支持施工が完了する。
そして、このようにして施工された樹木に傾倒力が生じたとき、その傾倒力に対する抵抗力として掛け回しベルト7に張力が生じ、その張力が、前記掛け回しベルト7が掛け回わされた肩パット4の掛止部4bに伝達されるとともに、掛け回しベルト7が掛け回わされている掛止部4bの部分に、図22の矢印A方向への力が生じ、その力によって前記肩パット4による根鉢17に対する保持力が生じる。
また、その矢印A方向への力の反作用として、前記肩パット4に取り付けられている張力伝達部材5に図22の矢印B方向に示すような力が生じ、杭保持体2に伝達される。掛止部4bの存在しない他方の根鉢固定体20bの肩パット4においても、掛け回しベルト7の端部を取り付ける取付金具14とウインチ8とが取り付けられているので、図22の矢印A方向への力は同様に生じる。従って、矢印B方向への力も張力伝達部材5に同様に生じ、杭保持体2に伝達されることとなる。
この場合において、上記のようにA方向への力が生じたときに、杭1には図22の
矢印C方向への力が生じ、杭1が根鉢側面接触部材3に押し付けられ、その根鉢側面接触部材3を構成する枠フレーム3a、縦フレーム3b、及び横フレーム3cが根鉢17の側面に食い込み、これによっても杭1の引き抜きに対する抵抗力が生じることとなる。従って、このような杭1の引き抜きに対する抵抗力が上記矢印B方向への力と相乗的に作用して、下方向(図22の矢印D方向)に作用することとなる。そして、杭1の引抜きに対する抵抗力が下方向に作用することに連動して、引き上げ抵抗部材6には引上げに対する抵抗力(図20の矢印E方向)が生じることとなる。
矢印C方向への力が生じ、杭1が根鉢側面接触部材3に押し付けられ、その根鉢側面接触部材3を構成する枠フレーム3a、縦フレーム3b、及び横フレーム3cが根鉢17の側面に食い込み、これによっても杭1の引き抜きに対する抵抗力が生じることとなる。従って、このような杭1の引き抜きに対する抵抗力が上記矢印B方向への力と相乗的に作用して、下方向(図22の矢印D方向)に作用することとなる。そして、杭1の引抜きに対する抵抗力が下方向に作用することに連動して、引き上げ抵抗部材6には引上げに対する抵抗力(図20の矢印E方向)が生じることとなる。
また、杭1が根鉢側面接触部材3に押し付けられることで、その杭1に外嵌されている杭保持体2から根鉢側面接触部材3を介して根鉢17側に押圧力が作用することとなる。
本実施形態では、上述のように根鉢の側面に沿って地中に打ち込まれる杭として木製の杭1が用いられ、そのような杭1は、本来は引き抜き抵抗力が弱く、真上に引き抜くと簡単に引き抜くことができるものであるが、本実施形態においては、樹木に傾倒力が生じた場合、その傾倒力が、肩パット4から張力伝達部材5を介して杭保持体2に伝達され、その杭保持体2に保持された杭1の抵抗を最大限に引き出すこととなる。そして、その抵抗力は、根鉢側面接触部材3を介して根鉢17に伝達され、肩パット4が設置されている根鉢の肩面、及び根鉢側面接触部材3が設置されている根鉢の側面ともに、全体で保持されて、樹木が支持されることとなるのである。
さらに、杭1の引き抜きに対しては、上述のように掛け回しベルト7の張力によって、杭1が根鉢側面接触部材3に押し付けられ、その根鉢側面接触部材3を構成する枠フレーム3a、縦フレーム3b、及び横フレーム3cが根鉢17の側面に食い込み、これによっても杭1の引き抜きに対する抵抗力が生じるとともに、掛け回しベルト7の張力が肩パット4から張力伝達部材5を介して杭保持体2に伝達され、杭1の引き抜きに対する抵抗力として作用する。
さらに、杭保持体2には、引き上げ抵抗部材6が取り付けられているため、上述のような杭保持体2に伝達された杭1の引き抜きに対する抵抗力は、引き上げ抵抗部材6のロッド10を介して抵抗体32に伝達され、その杭1の引き抜きに対する抵抗力に連動してロッド10と抵抗体とからなる引き上げ抵抗部材6に強力な引き上げ抵抗力を生じさせ、これによって、杭1の不用意な抜けが確実に阻止されることとなるのである。
特に、ロッド10が杭保持体2から縦方向に垂下するように、該ロッド10の上端部が杭保持体2に取り付けられ、ロッド10の下端部には抵抗体32が取り付けられて、その抵抗体32が根鉢の底部近辺に設置されているので、引き上げ抵抗力がロッド10を伝って有効に作用することとなる。また、ロッド10の上端部が取り付けられた杭保持体2が、張力伝達部材5を介して肩パット4に取り付けられ、その肩パット4に掛け回しベルト7が掛け回わされているので、ロッド10と抵抗体32とで構成される引き上げ抵抗部材6による引き上げ抵抗力が、上記杭保持体2による杭1の保持力、及びその杭保持体2、肩パット4、根鉢側面接触部材3による根鉢の補助力と連動して有効に作用することとなる。
さらに、このようなロッド10と抵抗体32とで構成される引き上げ抵抗部材6が金属製のものであり、また、杭保持体2、根鉢側面接触部材3、肩パット4、張力伝達部材5がすべて金属製のものであるので、土中に埋設されて一定年数経過した後においても、引き上げ抵抗部材6、杭保持体2、根鉢側面接触部材3、肩パット4、張力伝達部材5が腐食することがなく、木製の杭1が一定年数経過後に腐食して分解したとしても、金属製のロッド10が縦方向に垂下したような状態で土中に残存し、その垂下したロッド10の下部に金属製32の抵抗体が残存することになり、さらにロッド10の上端部が取り付けられた金属製の杭保持体2、及びその杭保持体2に取り付けられた、根鉢側面接触部材3、張力伝達部材5、肩パット4がすべて土中に残存することになるので、上記従来のような、木製の杭と根枷部材とを単に金属製リングで固定したにすぎない方法に比べると、一定年数経過後の杭の腐食、分解による根鉢に対する支持力、固定力の低下を、最小限に抑えることができるという効果がある。
特に、ロッド10が杭保持体2から縦方向に垂下するように、該ロッド10の上端部が杭保持体2に取り付けられ、ロッド10の下端部には抵抗体32が取り付けられて、その抵抗体32が根鉢の底部近辺に設置されているので、引き上げ抵抗力がロッド10を伝って有効に作用することとなる。また、ロッド10の上端部が取り付けられた杭保持体2が、張力伝達部材5を介して肩パット4に取り付けられ、その肩パット4に掛け回しベルト7が掛け回わされているので、ロッド10と抵抗体32とで構成される引き上げ抵抗部材6による引き上げ抵抗力が、上記杭保持体2による杭1の保持力、及びその杭保持体2、肩パット4、根鉢側面接触部材3による根鉢の補助力と連動して有効に作用することとなる。
さらに、このようなロッド10と抵抗体32とで構成される引き上げ抵抗部材6が金属製のものであり、また、杭保持体2、根鉢側面接触部材3、肩パット4、張力伝達部材5がすべて金属製のものであるので、土中に埋設されて一定年数経過した後においても、引き上げ抵抗部材6、杭保持体2、根鉢側面接触部材3、肩パット4、張力伝達部材5が腐食することがなく、木製の杭1が一定年数経過後に腐食して分解したとしても、金属製のロッド10が縦方向に垂下したような状態で土中に残存し、その垂下したロッド10の下部に金属製32の抵抗体が残存することになり、さらにロッド10の上端部が取り付けられた金属製の杭保持体2、及びその杭保持体2に取り付けられた、根鉢側面接触部材3、張力伝達部材5、肩パット4がすべて土中に残存することになるので、上記従来のような、木製の杭と根枷部材とを単に金属製リングで固定したにすぎない方法に比べると、一定年数経過後の杭の腐食、分解による根鉢に対する支持力、固定力の低下を、最小限に抑えることができるという効果がある。
このように、本実施形態では、杭保持体2、根鉢側面接触部材3、肩パット4によって、杭1、根鉢の肩部、根鉢の側面が一体的に保持された状態になるとともに、杭1の引き抜きに対しては、上述のように引き上げ抵抗部材6が作用して強力な引き上げ抵抗力を発揮することとなる。この結果、初期の樹木の倒れ込みも非常に少なくなるのである。
(実施形態2)
本実施形態では、根鉢固定体20a、20bの構成が上記実施形態1と相違する。特に、本実施形態では、根鉢固定体20a、20bを構成する構成部材のうち、張力伝達部材5の構成が実施形態1と相違している。すなわち、本実施形態の張力伝達部材5は、上記実施形態1のように、肩パット4から杭保持体2側へ真っ直ぐ垂下して架設されているのではなく、図24に示すように、肩パット4から杭保持体2側に向かって斜めに架設された状態となっている。
本実施形態では、根鉢固定体20a、20bの構成が上記実施形態1と相違する。特に、本実施形態では、根鉢固定体20a、20bを構成する構成部材のうち、張力伝達部材5の構成が実施形態1と相違している。すなわち、本実施形態の張力伝達部材5は、上記実施形態1のように、肩パット4から杭保持体2側へ真っ直ぐ垂下して架設されているのではなく、図24に示すように、肩パット4から杭保持体2側に向かって斜めに架設された状態となっている。
より具体的に説明すると、図23乃至図25に示すように、張力伝達部材5の根元部側が肩パット4に取り付けられ、張力伝達部材5の先端部側が、杭保持体2の保持部2aから外向き、すなわち杭1の軸中心部より外側に偏芯した位置へ外向きに突設された偏芯アタッチメント31に取り付けられることによって、張力伝達部材5が肩パット4から杭保持体2側に向かって斜めに架設された状態となる。
張力伝達部材5の形状は、上述の2種類の根鉢固定体20a、20bによって少し異なっている。掛け回しベルト7を掛け回す一方の根鉢固定体20aにおいては、図23及び図24に示すように張力伝達部材5の上部に略ホームベース形(五角形)の環状の掛止部5aが形成され、該掛止部5aの根元部5c及び根元部5cの近辺が前記肩パット4にボルト21によって固着されているとともに、根元部5c及びその近辺以外の掛止部5aの部分は、図24に示すように肩パット4から離間して形成されている。この肩パット4から離間した掛止部5aの部分に、掛け回しベルト7が掛け回されることとなる。肩パット4に2条のリブ4a、4aが形成されている点は上記実施形態1と同様である。張力伝達部材5の下部には、図23に示すように略円形のリング体5bが形成され、このリング体5bが前記杭保持体2への取り付け部分となる。より具体的には、杭保持体2の保持部2aから外向きに突設された偏芯アタッチメント31に挿通孔31aが穿設され、該挿通孔31aに前記張力伝達部材5のリング体5bを挿通させることによって、該張力伝達部材5が杭保持体2に取り付けられている。
掛け回しベルト7の端部を取り付ける他方の根鉢固定体20bにおいては、張力伝達部材5の上部に、図25に示すように、取付金具14とウインチ8とが取り付けられている。この取付金具14とウインチ8とは、同図に示すように、ボルト22で同軸的に張力伝達部材5の上部を介して肩パット4に取り付けられているが、相互に約90度の角度をなすように、取り付けられる点は、上記実施形態1の場合と同様である。
引き上げ抵抗部材6が、ロッド10及び抵抗体32を具備して構成されている点等は、上記実施形態1と同じであるが、取付部11の取付位置が若干相違している。すなわち、本実施形態では図26に示すように取付部11がロッド10の側面側に取り付けられており、この点で背面側に取り付けられている上記実施形態1の場合と相違している。これは、本実施形態では引き上げ抵抗部材6のロッド10が、取付部11を介して実施形態1のように杭保持体2の保持部2aに取り付けられるのではなく、該保持部2aから外向きに突設された偏芯アタッチメント31に取り付けられるために、このような構造となっているのである。そして、偏芯アタッチメント31の挿通孔31bと、引き上げ抵抗部材6の取付部11の孔12と、図24に示す偏芯アタッチメント9の挿通孔9bとにボルト等が挿通されることで、図27に示すように引き上げ抵抗部材6が杭保持体2に取り付けられることとなる。
張力伝達部材5は、肩パット4と、杭保持体2の外側に突設された偏芯アタッチメント9とに架設された状態となっているが、杭保持体2が取り付けられた杭1の上端部が、肩パット4が設置される根鉢17の肩部よりわずかに下側となるように設定されているため、前記張力伝達部材5は、肩パット4から杭保持体2の偏芯アタッチメント9に向かって斜め下向きとなるように架設された状態となるのである。
本実施形態においても、樹木に傾倒力が生じたとき、その傾倒力に対する抵抗力として掛け回しベルト7に張力が生じ、その張力が、前記掛け回しベルト7が掛け回わされた張力伝達部材5の掛止部5aに伝達され、掛け回しベルト7が掛け回わされている掛止部5aの部分に、図29の矢印A方向への力が生じる。また、矢印A方向への力の反作用として、前記掛止部5aを起点として、張力伝達部材5に図29の矢印B方向に示すような力が斜め方向に生じ、偏芯アタッチメント31に伝達される。掛止部5aの存在しない他方の根鉢固定体20bの張力伝達部材5においても、その根元部には、掛け回しベルト7の端部を取り付ける取付金具14とウインチ8とが取り付けられているので、図29の矢印A方向への力は同様に生じる。従って、矢印B方向への斜め方向の力も同様に生じ、偏芯アタッチメント31に伝達されることとなる。
この場合において、樹木に作用する傾倒力によって、本来は杭1に対して上向きの引き抜き力が生じるが、前記掛け回しベルト7の張力が張力伝達部材5を介して伝達される偏芯アタッチメント31は、杭1の軸中心部から外側に偏芯した位置に設けられているため、前記引き抜き力が杭1の軸中心部に沿って上向きに生じることはない。また、張力伝達部材5が、肩パット4から偏芯アタッチメント31に向かって斜めに架設されているので、その張力伝達部材5に沿って斜め方向に偏芯アタッチメント31に伝達された力は、その反作用である横圧抵抗力として、図29の矢印C方向に示すように杭保持体2側に作用し、さらに杭保持体2から図29の矢印E方向に示すように根鉢17側に作用するとともに、打ち込まれた杭1の引抜きに対する抵抗力として下方向(図29の矢印D方向)にも作用することとなる。このように、樹木の傾倒力によって掛け回しベルト7に作用する張力が、このような両方向に作用する力に変換されることになるのである。この点で引き抜き抵抗力が主として作用する実施形態1の場合と相違する。
また本実施形態では、張力伝達部材5に沿って斜め方向に偏芯アタッチメント31に伝達された力が、杭1の引抜きに対する抵抗力として作用するのみならず、根鉢17側への横圧抵抗力としても作用するので、杭保持体2から根鉢17側に作用する横圧抵抗力は、杭保持体2が外嵌入された杭1の根鉢2側への押圧力として、根鉢側面接触部材3によってさらに増幅され、その根鉢側面接触部材3によって強大な横圧抵抗力が根鉢2に作用することとなる。すなわち、本実施形態では、根鉢側面接触部材3が単に根鉢に接触して杭1の根鉢2側への押圧力を作用させているのみならず、その押圧力をさらに増幅させている点でも上記実施形態1と相違するのである。
このように、本実施形態では、根鉢の肩部側から前記杭の軸中心部より外側に偏芯した位置に跨がって張力伝達部材を斜め下向きに設置し、掛け回しベルトに生じる張力が、前記根鉢の肩部側に設置された張力伝達部材の根元部側から、前記杭の軸中心部より外側に偏芯した位置に設置された張力伝達部材の先端部側に伝達されるようにしたので、根鉢の肩部側から張力伝達部材の先端部側に伝達された張力は、打ち込まれた杭の引抜きに対する抵抗力として上下方向に作用するのみならず、その杭を根鉢に対して横向きに押圧する横圧抵抗力としても作用することとなり、掛け回しベルトに生じた張力がこのような両方向に作用する力に変換されることになる。
また、本実施形態では、杭保持体2、根鉢側面接触部材3、肩パット4を具備するとともに、肩パット4から、杭保持体2の外側に突設された偏芯アタッチメント31に向かって張力伝達部材5を斜め下向きに架設し、その偏芯アタッチメント31が、杭1の軸中心部から外側に偏芯した位置に存在する偏芯構造によって、杭1、根鉢の肩部、根鉢の側面が一体的に保持された状態となり、強力な一体抵抗を生じさせることとなる。また、杭1の引き抜きに対しては、上述のように引き上げ抵抗部材6が作用して強力な抵抗力を発揮することとなる。この結果、初期の樹木の倒れ込みも非常に少なくなるのである。
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、根鉢17の側面に沿って計4本の杭1を地面に打ち込んだが、打ち込む杭1の本数も上記実施形態に限定されるものではない。要は、複数の杭1が根鉢17の側面に沿って打ち込まれていればよいのである。
また上記実施形態では、杭保持体2を円筒状に形成させたが、杭保持体2の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、たとえば四角筒状のようなものであってもよい。また筒状以外の形状、たとえば平面半円状のようなものであってもよい。要は杭1を保持しうる形態のものであればよい。また、このような杭保持体2を設けずに、杭に直接引き上げ抵抗部材6を取り付けてもよい。この場合、たとえば四角筒状の杭の外側に引き上げ抵抗部材6の先端部を打ち込んで取り付けることが可能である。従って、杭保持体2を設けることは本発明に必須の条件ではない。
尚、上記実施形態では、根鉢17の側面に沿って計4本の杭1を地面に打ち込んだが、打ち込む杭1の本数も上記実施形態に限定されるものではない。要は、複数の杭1が根鉢17の側面に沿って打ち込まれていればよいのである。
また上記実施形態では、杭保持体2を円筒状に形成させたが、杭保持体2の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、たとえば四角筒状のようなものであってもよい。また筒状以外の形状、たとえば平面半円状のようなものであってもよい。要は杭1を保持しうる形態のものであればよい。また、このような杭保持体2を設けずに、杭に直接引き上げ抵抗部材6を取り付けてもよい。この場合、たとえば四角筒状の杭の外側に引き上げ抵抗部材6の先端部を打ち込んで取り付けることが可能である。従って、杭保持体2を設けることは本発明に必須の条件ではない。
さらに、上記実施形態では、杭保持体2が外嵌入される杭1の上部は根鉢17に接触されず、杭1をやや内向きに傾いた状態として杭1の下部の部分が根鉢に接触した状態とされていたが、これに限らず、杭1の略全体を根鉢17に接触させてもよく、或いは根鉢17から少し離間させていてもよい。すなわち、本発明において「根鉢17の側面に沿って杭1を地面に打ち込む」とは、杭1を根鉢に接触させるか否かは問わずに杭1を根鉢17の側面に沿わせることを意味する。
さらに上記実施形態では、引き上げ抵抗部材6の抵抗体32が、リブ30を備えたプレート6aと、該プレート6aの裏面側に取り付けられた略コ字状の補強部材13とで構成されていたが、抵抗体32の構成も該実施形態に限定されるものではない。また上記実施形態では、引き上げ抵抗部材6が、ロッド10と、該ロッド10の下部に取り付けられた抵抗体32とを具備して構成されていたため、上記のような好ましい効果が得られたが、引き上げ抵抗部材6の構成も該実施形態に限定されない。さらに、上記実施形態では、取付部11において杭保持体2に形成された孔9にボルト等が挿通されることで、引き上げ抵抗部材6が杭保持体2に取り付けられていたが、引き上げ抵抗部材6の杭保持体2への取付手段は該実施形態に限定されるものではない。また、該実施形態では、引き上げ抵抗部材6が杭保持体2に取り付けられていたが、杭保持体2以外の部分に引き上げ抵抗部材6が取り付けられていてもよい。
さらに上記実施形態では、締付部材が、掛け回しベルト7とウインチ8とを具備して構成されていたが、締付部材の構成も上記実施形態に限定されるものではない。狭義の掛け回しベルト7のように、平板状の形状に形成されたものの他、たとえば断面円形のロープ状に形成されたものを用いてもよい。さらに、いわゆるワイヤーロープ等のものを用いることも可能である。さらに、ウインチ8に代えて、他の締付手段を用いることも可能である。要は、締付部材としては、根鉢に沿って打ち込まれた複数の杭1に対して締付力を付与することができるようなものであればよい。ここで、「複数の杭1に対して締付力を付与することができる」とは、複数の杭1の1本ずつを締め付けなければならない趣旨ではなく、要は複数の杭1のそれぞれが単に打ち込まれているだけではなく、締付部材の締付力によって、複数の杭1に根鉢側への何らかの力が付与される程度に締め付けられていればよいことを意味するものである。たとえば上記のようなウインチ8等の締付手段で掛け回しベルト7等の掛け回し材に張力が生じることによっても締付力が付与されたことになり、また樹木に傾倒力が生じ、その結果、掛け回し材に張力が生じる場合も締付力が付与されたことになる。
また、根鉢側面接触部材3や肩パット4の形状も該実施形態に限定されるものではない。尚、根鉢側面接触部材3を設けることで、上述のような好ましい効果が得られたが、この根鉢側面接触部材3を設けることは本発明に必須の条件ではない。また、肩パット4も根鉢17の肩部を保護するために必要なものではあるが、肩パット4を設けることは本発明に必須の条件ではない。さらに、杭保持体2、根鉢側面接触部材3、肩パット4、張力伝達部材5、引き上げ抵抗部材6、掛け回しベルト7等を設置する手順も上記実施形態に限定されるものではなく、任意に変更可能である。
尚、本発明においては、上述のように自然環境破壊の観点から、木製の杭1を用いることを主眼とするが、木製のものに限らず、金属製の杭を用いる場合も本発明の範囲に含まれる。また、本発明は、一般の地盤に予め形成された植穴15内に根鉢17を収納して樹木を支持施工する、いわゆる地下支柱の施工に適用することを主眼とするが、このような一般の地盤の他、人工地盤における樹木の支持施工に本発明を適用することも可能である。このような人工地盤に用いる場合には、植穴15の形成は必要なく、根鉢17を埋設するよう人工土壌を積層することによって樹木の支持施工をすることができる。
1…杭 2…杭保持体
3…根鉢側面接触部材 4…肩パット
5…張力伝達部材 6…引き上げ抵抗部材
7…掛け回しベルト 8…ウインチ
14…取付金具
3…根鉢側面接触部材 4…肩パット
5…張力伝達部材 6…引き上げ抵抗部材
7…掛け回しベルト 8…ウインチ
14…取付金具
Claims (14)
- 樹木(16)の根鉢(17)に沿って複数の杭(1)を地面に打ち込み、該複数の杭(1)に対して締付力を付与する締付部材と、該締付部材によって付与される締付力によって複数の杭(1)に生じる上向きの引き抜き力に対する抵抗力として、引き上げ抵抗力を生じさせる引き上げ抵抗部材(6)とを取り付けて施工することを特徴とする樹木の支持施工方法。
- ロッド(10)と、該ロッド(10)の下部に取り付けられた抵抗体(32)とで引き上げ抵抗部材(6)が構成されている請求項1記載の樹木の支持施工方法。
- ロッド(10)と、抵抗体(32)とで構成される引き上げ抵抗部材(6)が、金属製のものである請求項2記載の樹木の支持施工方法。
- 根鉢に掛け回される掛け回し材(7)と、該掛け回し材(7)の端部を取り付けて該掛け回し材(7)を締め付ける手段とで締付部材が構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の樹木の支持施工方法。
- 根鉢の肩部に肩パット(4)を設置し、該肩パット(4)に掛け回し材(7)を取り付ける請求項4記載の樹木の支持施工方法。
- 杭(1)を保持しうる保持部(2a)を有する杭保持体(2)を、前記保持部(2a)で保持させるように杭(1)に取り付ける請求項1乃至5のいずれかに記載の樹木の支持施工方法。
- 杭保持体(2)に、引き上げ抵抗部材(6)のロッド(10)を取り付ける請求項6記載の樹木の支持施工方法。
- 樹木(16)の根鉢(17)に沿って地面に打ち込むための複数の杭(1)と、該複数の杭(1)に対して締付力を付与する締付部材と、該締付部材によって付与される締付力によって複数の杭(1)に生じる上向きの引き抜き力に対する抵抗力として、引き上げ抵抗力を生じさせる引き上げ抵抗部材(6)とを具備して構成されていることを特徴とする樹木の支持施工用具。
- ロッド(10)と、該ロッド(10)の下部に取り付けられた抵抗体(32)とで引き上げ抵抗部材(6)が構成されている請求項8記載の樹木の支持施工用具。
- ロッド(10)と、抵抗体(32)とで構成される引き上げ抵抗部材(6)が、金属製のものである請求項9記載の樹木の支持施工用具。
- 根鉢に掛け回される掛け回し材(7)と、該掛け回し材(7)の端部を取り付けて該掛け回し材(7)を締め付ける手段とで締付部材が構成されている請求項8乃至10のいずれかに記載の樹木の支持施工用具。
- 根鉢の肩部に設置し、掛け回し材(7)を取り付けるための肩パット(4)が、さらに具備されている請求項11記載の樹木の支持施工用具。
- 杭(1)を保持するための杭保持体(2)が、さらに具備されている請求項8乃至12のいずれかに記載の樹木の支持施工用具。
- 杭保持体(2)の内面側に設けられて根鉢(17)の側面に接触させる根鉢側面接触部材(3)が、さらに具備されている請求項8乃至13のいずれかに記載の樹木の支持施工用具。
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JP (1) | JP2008161136A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109496677A (zh) * | 2018-12-05 | 2019-03-22 | 张欣标 | 一种园林树木扶持架 |
US10653079B1 (en) | 2016-08-25 | 2020-05-19 | Ginger Tree Innovations, LLC | Underground tree stake system |
-
2006
- 2006-12-28 JP JP2006355627A patent/JP2008161136A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US10653079B1 (en) | 2016-08-25 | 2020-05-19 | Ginger Tree Innovations, LLC | Underground tree stake system |
CN109496677A (zh) * | 2018-12-05 | 2019-03-22 | 张欣标 | 一种园林树木扶持架 |
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